説明

画像処理装置、検査装置、画像処理方法および検査方法

【課題】シート状物に生じた波打ちの程度を精度良く検出する。
【解決手段】本発明に係る検査装置は、読取装置20を備える。シート状物は、支持台21の上に支持される。光源221からの光は、レンズ222により平行光としてシート状物に照射される。照射光は、シート状物のなす平面に対して角度θの方向から照射される。撮像部23は、シート状物からの反射光に応じて画像信号を生成する。撮像部23において、レンズ231はテレセントリックレンズであることが望ましい。検査装置は、読取装置20においてこのようにして生成された画像信号に応じて、シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、検査装置、画像処理方法および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等のシート状物には、その表面に波打ち等の凹凸が発生することがある。例えば、内部にゴミ等の異物を含んだ用紙においては、異物の近傍においてパルプ繊維の収縮ムラが生じ、波打ちが顕著に現れて、プリント画質に影響を与えることもある。そのため、用紙の表面状態を検査して、波打ちのような凹凸があるものを除外することが求められる場合がある。
【0003】
物体表面の凹凸を検出する方法としては、例えば特許文献1に記載された技術がある。特許文献1には、物体表面をレーザ顕微鏡で走査し、画像処理によって物体表面の凹凸を検出する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2006−10577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる背景の下になされたものであり、その目的は、シート状物に生じた波打ちの程度を精度良く検出するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明は、所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射手段と、前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力手段とを備える画像処理装置を、その第1の構成として提供する。なお、ここにおいて「画像情報」とは、後述する画像信号と画像データとを含む。
【0006】
また、本発明は、第2の構成として、前記第1の構成において、前記生成手段は、前記範囲を複数に分割してなる小範囲に対応する画像情報を、それぞれの小範囲について生成する構成を採用することができる。
【0007】
また、本発明は、第3の構成として、前記第1の構成において、前記生成手段は、前記シート状物の検査すべき面積に応じた複数の小範囲に対応する画像情報であって、当該小範囲毎の前記反射光の明るさを数値で示す画像情報を生成し、前記出力手段は、前記複数の小範囲に対応する複数の前記画像情報からその最大値と最小値とを特定し、当該最大値と最小値の差分に応じて前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する構成を採用することができる。
【0008】
また、本発明は、第4の構成として、前記第1の構成において、前記生成手段は、前記シート状物の検査すべき面積に応じた複数の小範囲に対応する画像情報であって、当該小範囲毎の前記反射光の明るさを数値で示す画像情報を生成し、前記出力手段は、前記複数の小範囲に対応する複数の前記画像情報からその標準偏差を算出し、当該標準偏差に応じて前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明は、第5の構成として、前記第1の構成において、前記生成手段は、前記シート状物の検査すべき面積に応じた複数の小範囲に対応する画像情報であって、当該小範囲毎の前記反射光の明るさを数値で示す画像情報を生成し、前記出力手段は、前記複数の小範囲に対応する複数の前記画像情報を所定の閾値で二値化し、前記シート状物において波打ちを生じている範囲を表す情報を出力する構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明は、第6の構成として、前記第1の構成において、前記照射手段は、前記シート状物の複数の範囲に光を照射し、前記生成手段は、前記複数の範囲からの前記反射光に対応する画像情報をそれぞれ生成し、前記出力手段は、前記範囲の波打ちを表す情報を前記複数の範囲毎に算出し、これらの情報を合算して前記シート状物に生じている波打ちを表す情報とする構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明は、第7の構成として、前記第1の構成において、前記照射手段は、前記光を平行光となるように照射し、前記生成手段は、主光線が光軸に対して平行になるように反射光を受光する構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明は、第8の構成として、所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射手段と、前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された情報に応じて、前記シート状物の波打ちの程度を判定する判定手段とを備える検査装置を提供する。
【0013】
なお、本発明は、前記第1の構成に対応する画像処理方法や、前記第8の構成に対応する検査方法を提供することも可能である。例えば、本発明は、第9の構成として、所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射ステップと、前記照射ステップにおいて照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成ステップと、前記生成ステップにおいて生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力ステップとを有する画像処理方法を提供する。また、本発明は、第10の構成として、所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射ステップと、前記照射ステップにおいて照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成ステップと、前記生成ステップにおいて生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力ステップと、前記出力ステップにおいて出力された情報に応じて、前記シート状物の波打ちの程度を判定する判定ステップとを有するシート状物の検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1および第9の構成によれば、照射光が決められた方向から照射されるため、照射光の照射方向が一定でない構成を用いた場合よりも、シート状物に現れる波打ちの程度をより明瞭にすることが可能となる。
また、本発明の第2の構成によれば、本構成を有していない場合に比較して、より大きな範囲を短い時間で撮像することが可能となり、検査に要する時間を短縮することが可能となる。
また、本発明の第3の構成によれば、本構成を有していない場合に比較して、シート状物に生じている波打ちを表す情報をより簡易な演算で算出することが可能となる。
また、本発明の第4の構成によれば、本構成を有していない場合に比較して、シート状物に生じている波打ちが多くなってもシート状物に生じている波打ちを表す情報を簡易な演算で算出することが可能となる。
また、本発明の第5の構成によれば、本構成を有していない場合に比較して、シート状物に生じている波打ちを表す情報をより精度良く算出することが可能となる。
また、本発明の第6の構成によれば、シート状物の複数箇所に波打ちが生じる場合などであっても、本構成を有していない場合に比較して、検出精度を高めることが可能となる。
また、本発明の第7の構成によれば、いわゆるテレセントリック光学系を実現することができるので、本構成を有していない場合に比較して、シート状物と受光部の間の距離の変動による影響を受けにくくすることが可能となる。
また、本発明の第8および第10の構成によれば、本構成を有していない場合に比較して、シート状物に現れる波打ちの程度をより精度良く判定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下では、本発明を実施するために好適な一の実施形態と、その実施形態における具体的な動作例とを例示して説明する。
【0016】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態である検査装置1の構成を示すブロック図である。検査装置1の構成は、制御装置10と読取装置20とに大別される。制御装置10は、検査装置1の動作を制御するとともに、画像データに対して画像処理を実行して波打ちを表す情報を出力する。制御装置10としては、例えば、一般的な構成のコンピュータを用いることができるが、具体的な構成は以下の通りである。
【0017】
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、インタフェース13と、キーボード14と、ディスプレイ15と、スピーカ16とを備える。CPU11は、メモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより、検査装置1の各部の動作を制御する。メモリ12は、例えば、各種プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)や、CPU11のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)を備える。インタフェース13は、周辺機器(キーボード14、ディスプレイ15、スピーカ16および読取装置20)との情報のやりとりを可能にする物理インタフェースである。キーボード14は各種キーを備えた入力装置であり、ユーザによる操作を受け付けてこれを表す制御信号を生成する。ディスプレイ15は画像によりユーザに情報を通知し、スピーカ16は音声によりユーザに情報を通知する。
【0018】
なお、メモリ12が記憶しているプログラムには、検査装置1の動作を制御する基本プログラムP1と、画像データに応じてシート状物に生じている波打ちを検査する検査プログラムP21またはP22とがある。検査プログラムP21またはP22は、基本プログラムP1が実行されている場合において、読取装置20から画像信号の供給を受けたときに実行されるプログラムである。また、検査プログラムP21およびP22は、互いに異なる処理を実行するものであり、後述する動作例1および2にそれぞれ対応している。制御装置10がいずれの検査プログラムを実行するかは、例えば、ユーザがキーボード14やディスプレイ15を用いて選択することができる。なお、メモリ12は、検査プログラムP21およびP22の双方を記憶してもよいし、いずれか一方のみを記憶してもよい。
【0019】
読取装置20は、用紙等のシート状物を光学的に読み取って画像信号を生成する。読取装置20は、例えば図2のような構成を有している。同図に示すように、読取装置20は、支持台21と、照明部22と、撮像部23と、移動部材24とを備える。支持台21は、シート状物を支持する平面状の台座であり、その平面が水平となるように設けられている。シート状物は、撮像対象となる範囲が全体として水平を保つように支持される。また、支持台21は、図示せぬモータ等の駆動手段により図2の紙面に垂直な方向に移動可能となっている。この支持台21の移動方向のことを、以下では「Y軸方向」という。
【0020】
照明部22は、光源221とレンズ222とを備え、シート状物の所定の位置に光を照射する。照明部22は、支持台21の平面に対して所定の角度θだけ傾いている。なお、この角度θは、45°であると好ましい。また、この照明部22において、光源221としては、例えばハロゲンランプを用いるのが好ましく、レンズ222としては、例えばコリメータレンズを用いるのが好ましい。コリメータレンズを用いると、光源221から照射された光を平行光にしてシート状物に照射することができる。なお、ここにおける「平行光」とは、光源221から照射された光が平行またはそれに近い方向に進行する光であれば十分であり、必ずしも完全に平行である必要はない。つまり、「平行光」とは、本実施形態において構成上の効果を奏する程度に平行であればよく、その程度とは、例えば±5°程度の範囲の誤差を許容し得るものである。
【0021】
撮像部23は、レンズ231とセンサ232とを備え、照明部22により照射され、シート状物において反射した光を受光し、その反射光の明るさ(強度)に応じた画像信号を生成する。センサ232により生成される画像信号は、R(レッド)、G(グリーン)およびB(ブルー)の3色の色信号からなり、インタフェース13を介してCPU11に供給される。また、撮像部23は、支持台21の平面に対して垂直となるように設けられている。なお、この撮像部23において、レンズ231としては、例えばテレセントリックレンズを用いるのが好ましい。テレセントリックレンズとは、物体側、像側またはその両側の主光線が無限遠まで光軸と交わらないようなレンズのことである。テレセントリックレンズを用いれば、被写体(すなわちシート状物)とレンズとの距離によらず常に倍率を一定に保つことができる。また、この撮像部23において、センサ232としては、複数の小範囲(画素)を一度に撮像可能なエリアセンサを用いるのが好ましい。本実施形態においては、1392×1040画素に相当するピクセル数の撮像素子を有し、それぞれの撮像素子が11.5μmの撮像分解能を有するエリアセンサを用いている。つまり、このエリアセンサの撮像範囲は、およそ16×12mmである。
【0022】
移動部材24は、照明部22と撮像部23とを移動可能に支持する部材である。移動部材24は、図示せぬモータ等の駆動手段により図2中の矢印Xが示す方向に往復移動する。照明部22および撮像部23は、移動部材24に固定されており、移動部材24と共に移動する。つまり、移動部材24の移動に際して、照明部22と撮像部23との相対的な位置関係に変化はない。なお、移動部材24の移動方向、すなわち図2中の矢印Xが示す方向のことを、以下では「X軸方向」という。X軸方向は、Y軸方向に直交する方向である。
【0023】
続いて、制御装置10の機能構成について、図3の機能ブロック図を参照しながら説明する。制御装置10を機能別に表すと、画像処理部101と、照明制御部102と、撮像制御部103と、X軸駆動部104と、Y軸駆動部105とに分類される。画像処理部101は、上述した検査プログラムP21またはP22に応じて画像処理を実行する機能を有する。照明制御部102は、照明部22の動作を制御する機能を有する。撮像制御部103は、撮像部23の動作を制御する機能を有する。X軸駆動部104は、移動部材24の移動を制御する機能を有する。Y軸駆動部105は、支持台21の移動を制御する機能を有する。照明制御部102、撮像制御部103、X軸駆動部104およびY軸駆動部105の機能は、上述した基本プログラムP1により実現される。
【0024】
ここで、本実施形態におけるシート状物について説明する。本実施形態において、シート状物とは、パルプ繊維を主成分とした基材にワイヤ状の金属を漉き込むようにして埋め込んでなる用紙のことをいう。ワイヤ状の金属は、10〜50mm程度の長さを有し、その直径は10〜50μm程度である。1枚のシート状物には、このような金属が5〜50本程度埋め込まれている。なお、ワイヤ状の金属は、基材に漉き込むようにして埋め込まれているため、シート状物の表面から明瞭に視認される状態ではないが、シート状物の製造過程においてパルプ繊維の収縮ムラが生じることにより、その近傍部分に波打ちを生じさせる。本実施形態の検査装置1は、この波打ちを検出することを目的とするものである。
【0025】
[動作]
以上の構成のもと、検査装置1は、支持台21に置かれたシート状物を撮像し、シート状物の波打ちを表す情報を出力してこれをユーザに通知する。具体的には、制御装置10は、照明部22に光を照射させるとともに、シート状物において反射した反射光を撮像部23に撮像させ、画像信号を生成させる。このとき、撮像部23は、撮像する位置をX軸方向およびY軸方向に移動させながら画像信号を生成してもよい。
【0026】
制御装置10は、生成された画像信号を取得したら、検査プログラムP21またはP22に応じてシート状物に生じている波打ちの検査を行う。なお、検査プログラムP21およびP22に応じて実行される検査は、具体的な手順がそれぞれ異なっている。そこで、以下では、検査プログラムP21およびP22に応じて実行されるそれぞれの検査の方法について説明する。
【0027】
(a)動作例1
ここでは、制御装置10が検査プログラムP21に応じて実行する処理について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。同図に沿って説明すると、はじめに、制御装置10のCPU11は、撮像部23により供給された画像信号にAD変換等の処理を実行し、RGBの各色について8ビットの階調(すなわち256階調)を有する画像データを生成する(ステップSa1)。この画像データにより表される範囲は、シート状物の全体であってもよいし、所定の一部の範囲であってもよい。CPU11は、このようにして生成された画像データをメモリ12に記憶する。このとき、CPU11は、X軸方向およびY軸方向に対応した座標軸を設定し、各画素の相対的な位置関係に対応付けた座標を付与する。このとき設定される座標軸のことを、以下では「x軸」および「y軸」という。x軸はX軸方向に対応する座標軸であり、y軸はY軸方向に対応する座標軸である。
【0028】
次に、CPU11は、メモリ12に記憶された画像データ、すなわちR、GおよびBの色信号からなる画像データから輝度信号を算出する(ステップSa2)。輝度信号の算出は、以下の(1)式による。なお、(1)式において、Y(x,y)は座標(x,y)における輝度信号を表しており、R(x,y)、G(x,y)およびB(x,y)は、それぞれ、座標(x,y)におけるR、GおよびBの各色信号を表している。
Y(x,y)=0.30R(x,y)+0.59G(x,y)+0.11B(x,y) …(1)
【0029】
CPU11は、輝度信号を各画素について算出したら、これをメモリ12に記憶する。このとき、CPU11は、輝度信号にもx軸およびy軸についての座標を付与する。x軸およびy軸についての座標を付与された輝度信号の集合のことを、以下では「輝度画像データ」といい、上述したRGBの色信号からなる画像データと区別する。
【0030】
輝度画像データは、シート状物において波打ちが生じている範囲とそうでない範囲とでは、輝度信号の値が異なっている。また、輝度画像データは、光源221の照射ムラに起因するノイズを含んでいる。そのため、CPU11は、波打ちが生じている範囲を精度良く特定するための画像処理を実行する。具体的には、CPU11は、輝度画像データに対して平坦化処理を実行し、輝度信号の階調差を緩和させ(ステップSa3)、その後、輝度画像データに対してガウスフィルタ(ガウシアンフィルタ)を適用し、波打ちが生じている範囲を強調させる(ステップSa4)。なお、このステップにおいては、20×20画素のサイズのガウスフィルタを用い、これを5回適用する処理を行っている。
【0031】
続いて、CPU11は、シート状物の波打ちのレベル(程度)を示す情報を算出して出力する(ステップSa5)。具体的には、CPU11は、輝度画像データにおける輝度信号の最大値と最小値とを特定してこれらの差分を波打ちを表す情報として算出し、この差分をあらかじめ決められた閾値と比較して波打ちのレベルを判定する。波打ちのレベルをどのようにして決定するかは任意であるが、例えば、上述の差分が所定の閾値以上であれば「1(波打ちあり)」であるとし、上述の差分が所定の閾値未満であれば「0(波打ちなし)」であるとしてもよい。もちろん、波打ちのレベルを3段階以上に分けてもよい。
【0032】
検査プログラムP21に応じて実行される処理は、以上の通りである。CPU11は、この検査プログラムP21を実行することにより出力された情報(すなわち、シート状物の波打ちのレベルを示す情報)に応じて、ユーザに対する通知を行う。上述した例のように、波打ちがある場合には「1」、波打ちがない場合には「0」という情報が出力される場合であれば、CPU11は、出力結果が「1」であればスピーカ16から警告音を発させるようにしてもよい。もちろん、出力結果が「0」であるときにも何らかの通知を行うようにしてもよいし、また、音声による通知ではなく、ディスプレイ15を用いた画像による通知であってもよい。
【0033】
(b)動作例2
続いて、制御装置10が検査プログラムP22に応じて実行する処理について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、このときCPU11が実行する処理のうち、ステップSb1〜Sb4の処理は、上述した動作例1のステップSa1〜Sa4の処理と同様である。そこで、ここでは、これらのステップの説明を省略し、ステップSb5以降の処理について説明する。
【0034】
ガウスフィルタを適用する処理(ステップSb4)が終了したら、CPU11は、輝度画像データに対して膨張処理を実行する(ステップSb5)。膨張処理とは、波打ちが生じている範囲を強調するための処理であり、注目画素の輝度信号を近傍にある画素の輝度信号を参照して書き換える処理である。この膨張処理について、以下では具体例を挙げながら説明する。
【0035】
図6は、膨張処理の手順を説明するための図である。なお、以下の説明においては、波打ちが生じている範囲に対応する画素の輝度信号をY0(ないしそれ以上)とする。また、輝度信号Y0は、波打ちが生じていない範囲に対応する画素の輝度信号よりも大きい(すなわち明るい)とする。
【0036】
まず、CPU11は、注目画素の近傍にある所定数の画素(以下「近傍画素」という。)を参照する。注目画素と近傍画素を表したのが図6である。同図においては、黒く塗り潰された画素P1が注目画素である。また、近傍画素とは、注目画素P1の上下左右にある画素であり、同図においてハッチングで示した画素である。なお、近傍画素の数は任意であり、図6に示した近傍画素はあくまでも一例である。
【0037】
CPU11は、注目画素の輝度信号と近傍画素の輝度信号とを比較し、注目画素の輝度信号よりも大きい輝度信号を有する近傍画素が存在するか否かを判断する。そして、注目画素の輝度信号よりも大きい輝度信号を有する近傍画素が1つでも存在した場合には、CPU11は、注目画素の輝度信号を近傍画素の輝度信号の最大値に書き換える。例えば、図6に示す例において、注目画素P1の輝度信号がY1(ただし、Y0>Y1)であるとともに、輝度信号が最大である近傍画素がP2であり、その輝度信号がY0であったとすると、注目画素P1の輝度信号はY0へと書き換えられる。
【0038】
CPU11は、このような膨張処理を輝度画像データの全ての画素に対して実行する。また、CPU11は、この膨張処理を輝度画像データに対して5回実行する。その結果、輝度画像データに波打ちが生じている範囲に対応する画素が含まれていた場合には、その画素の近傍の輝度信号がより大きな値へと書き換えられることになる。その結果、波打ちが生じている範囲に対応する画素が増加するとともに、波打ちが生じている範囲も膨張処理前よりも大きくなる。
【0039】
膨張処理が終了したら、CPU11は輝度画像データに二値化処理を実行する(ステップSb6)。この処理に際しては、二値化のための閾値を特定する必要があるが、CPU11は、輝度画像データを構成する各輝度信号の平均値に応じて閾値を算出する。例えば、CPU11は、輝度画像データを構成する各輝度信号の平均値に所定の係数(例えば、1.03)を乗じた値を閾値とする。もちろん、閾値はその他の方法で算出してもよいし、あらかじめ記憶された値を用いるようにしてもよい。
【0040】
二値化処理を実行した結果、輝度画像データの各画素は、「1」または「0」のいずれかの値を輝度信号として有することとなる。なお、波打ちが生じている範囲に対応する画素の輝度信号が波打ちが生じていない範囲に対応する画素の輝度信号よりも大きい場合には、前者が「1」となり、後者が「0」となる。その後、CPU11は、二値化処理後の輝度画像データからオブジェクトを抽出する(ステップSb7)。具体的には、CPU11は、輝度信号が「1」である画素が所定の数以上連続した固まりを形成した場合に、これをオブジェクトとして特定する。オブジェクトの抽出を行ったら、CPU11は、抽出したオブジェクトの個数を特定する(ステップSb8)。そして、CPU11は、このとき特定した個数をシート状物に生じている波打ちの個数として出力する(ステップSb9)。
【0041】
検査プログラムP22に応じて実行される処理は、以上の通りである。CPU11は、この検査プログラムP22を実行することにより出力された情報(すなわち、シート状物の波打ちの個数を示す情報)に応じてシート状物の波打ちの程度を判定し、ユーザに対する通知を行う。判定および通知の方法は任意であるが、例えば、波打ちの個数が所定の閾値以上である場合を波打ちが生じている状態と判定し、スピーカ16から警告音を発させたり、ディスプレイ15に所定の画像を表示させたりするようにしてもよい。このとき、二値化処理後の輝度画像データを表示させてもよい。
【0042】
[変形例]
以上においては、一の好適な実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の態様にて実施することも可能である。本発明においては、例えば、上述した実施形態に対して以下のような変形を適用することができる。
【0043】
上述の実施形態においては、撮像部23は、支持台21の平面に対して垂直な方向からの反射光を受光する構成であると説明したが、これ以外の方向からの反射光を受光する構成であってもよい。シート状物の材質にもよるが、例えば、照明部22からの照射光に対する正反射光を撮像部23が受光するように構成してもよい。また、照明部22が支持台21の平面に対してなす角度θは45°が好ましいとしたが、もちろんその他の角度であってもよい。上述の角度θを0°に近づけた場合、波打ちに起因する明暗の差がより明瞭に現れる。
【0044】
また、上述の動作例1においては、ステップSa5においてシート状物の波打ちのレベルを示す情報を算出する際に、輝度信号の最大値と最小値とを特定してこれらの差分を算出し、この差分をあらかじめ決められた閾値と比較することにより波打ちのレベルを特定するとした。しかしながら、シート状物の波打ちのレベルを示す情報を算出する方法は、これに限らず、例えば、輝度信号から標準偏差を算出して、この標準偏差をあらかじめ決められた閾値と比較することにより波打ちのレベルを特定するようにしてもよい。
【0045】
また、上述の動作例2においては、シート状物の波打ちを表す情報として波打ちの個数を表す情報を出力するとしたが、これに代えて、波打ちが生じている面積を示す情報を出力するようにしてもよい。また、波打ちの個数を表す情報と面積を表す情報とを併せて用いて、これらに応じて波打ちのレベルを表す情報を出力するようにしてもよい。
【0046】
また、上述の実施形態においては、シート状物の所定の一部の範囲を撮像してシート状物の波打ちを表す情報を出力するとしたが、例えば、シート状物の複数の範囲を撮像し、波打ちのレベル、個数または面積を表す情報をそれぞれの範囲毎に算出するようにしてもよい。このとき、それぞれの範囲毎に算出された情報を合算し、これをシート状物に生じている波打ちを表す情報として出力してもよい。
【0047】
また、上述の実施形態においては、シート状物の一例としてワイヤ状の金属が埋め込まれた用紙を挙げたが、本発明に係るシート状物はこれに限らず、例えば、ワイヤが埋め込まれていない用紙や紙(パルプ繊維)以外の材質の物体であってもよい。また、シート状物に埋め込まれている物体についても、上述した実施形態ではワイヤ状の金属であるとしたが、繊維状でなくともよい。シート状物に埋め込まれる物体は、例えば、チップ状またはテープ状であってもよいし、大バルクハウゼン効果を有する磁性体や金属、プラスチックなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態である検査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】検査装置が備える読取装置の構成を示す図である。
【図3】検査装置が備える制御装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】制御装置が実行する処理を示すフローチャートである(動作例1)。
【図5】制御装置が実行する処理を示すフローチャートである(動作例2)。
【図6】膨張処理の手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1…検査装置、10…制御装置、11…CPU、12…メモリ、13…インタフェース、14…キーボード、15…ディスプレイ、16…スピーカ、20…読取装置、21…支持台、22…照明部、221…光源、222…レンズ、23…撮像部、231…レンズ、232…センサ、24…移動部材、101…画像処理部、102…照明制御部、103…撮像制御部、104…X軸駆動部、105…Y軸駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、
前記範囲を複数に分割してなる小範囲に対応する画像情報を、それぞれの小範囲について生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、
前記シート状物の検査すべき面積に応じた複数の小範囲に対応する画像情報であって、当該小範囲毎の前記反射光の明るさを数値で示す画像情報を生成し、
前記出力手段は、
前記複数の小範囲に対応する複数の前記画像情報からその最大値と最小値とを特定し、当該最大値と最小値の差分に応じて前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、
前記シート状物の検査すべき面積に応じた複数の小範囲に対応する画像情報であって、当該小範囲毎の前記反射光の明るさを数値で示す画像情報を生成し、
前記出力手段は、
前記複数の小範囲に対応する複数の前記画像情報からその標準偏差を算出し、当該標準偏差に応じて前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、
前記シート状物の検査すべき面積に応じた複数の小範囲に対応する画像情報であって、当該小範囲毎の前記反射光の明るさを数値で示す画像情報を生成し、
前記出力手段は、
前記複数の小範囲に対応する複数の前記画像情報を所定の閾値で二値化し、前記シート状物において波打ちを生じている範囲を表す情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記照射手段は、
前記シート状物の複数の範囲に光を照射し、
前記生成手段は、
前記複数の範囲からの前記反射光に対応する画像情報をそれぞれ生成し、
前記出力手段は、
前記範囲の波打ちを表す情報を前記複数の範囲毎に算出し、これらの情報を合算して前記シート状物に生じている波打ちを表す情報とする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記照射手段は、前記光を平行光となるように照射し、
前記生成手段は、主光線が光軸に対して平行になるように反射光を受光する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力手段と、
前記出力手段により出力された情報に応じて、前記シート状物の波打ちの程度を判定する判定手段と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射ステップと、
前記照射ステップにおいて照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成ステップと、
前記生成ステップにおいて生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
所定の平面に対して平行になるように支持されたシート状物の所定の範囲に、前記平面と所定の角度をなす方向から光を照射する照射ステップと、
前記照射ステップにおいて照射された光のうちの前記シート状物において所定の方向に反射した反射光を受光し、受光した反射光に応じた画像情報を生成する生成ステップと、
前記生成ステップにおいて生成された画像情報に応じて、前記シート状物に生じている波打ちを表す情報を出力する出力ステップと、
前記出力ステップにおいて出力された情報に応じて、前記シート状物の波打ちの程度を判定する判定ステップと
を有することを特徴とするシート状物の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−58032(P2008−58032A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232608(P2006−232608)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】