説明

発振回路

【課題】MEMS振動子を用いて、発振周波数のばらつきを抑制した発振回路を提供すること。
【解決手段】それぞれ第1端子及び第2端子を有し、それぞれ共振周波数が異なる複数のMEMS振動子11〜14と、入力端子21及び出力端子22を有する増幅回路(反転増幅回路20)と、複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つの第1端子と入力端子21とを接続し、第2端子と出力端子22とを接続することによって、複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つと増幅回路(反転増幅回路20)とを接続する接続回路30と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、微小構造体形成技術の一つで、例えば、ミクロンオーダーの微細な電子機械システムを作る技術やその製品のことをいう。
【0003】
特許文献1には、固定電極及び可動電極を有し、両電極間に発生する静電力により可動電極を駆動させるMEMS振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−224220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、MEMS振動子は、微細な構造を有するため、製造プロセスのばらつきが動作特性に及ぼす影響が大きい。例えば、MEMS振動子は、可動電極の駆動により所定の周波数で振動するが、製造プロセスのばらつきによって可動電極の形状(長さ)がばらついてしまい、安定した振動特性(例えば周波数精度)が得られない場合があった。また、半導体集積回路製造技術を応用して製造されるMEMS振動子に対してトリミングをかけて、水晶振動子と同等の精度で周波数を合わせ込むことは極めて困難である。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、MEMS振動子を用いて、発振周波数のばらつきを抑制した発振回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発振回路は、
それぞれ第1端子及び第2端子を有し、それぞれ共振周波数が異なる複数のMEMS振動子と、
入力端子及び出力端子を有する増幅回路と、
前記複数のMEMS振動子のうちの1つの前記第1端子と前記入力端子とを接続し、前記第2端子と前記出力端子とを接続することによって、前記複数のMEMS振動子のうちの1つと前記増幅回路とを接続する接続回路と、
を含む。
【0008】
「接続する」とは、電気的に接続することであり、直流的に接続する場合のみならず、交流的に接続する場合をも含む。
【0009】
このような発振回路によれば、共振周波数の異なる複数のMEMS振動子のうちの1つと増幅回路とを接続する接続回路を用いて、発振回路で用いるMEMS振動子を選択することができる。これにより、製造プロセスのばらつきによってMEMS振動子の共振周波数がばらついたとしても、目的とする発振周波数により近いMEMS振動子を選択することができる。したがって、発振周波数のばらつきを抑制した発振回路を実現できる。
【0010】
本発明に係る発振回路において、
前記接続回路は、
前記MEMS振動子の前記第1端子と前記入力端子との間の、接続状態を切り換える第1スイッチと、前記MEMS振動子の前記第2端子と前記出力端子との間の、接続状態を切り換える第2スイッチのうち少なくとも一方を含むことができる。
【0011】
第1スイッチ及び第2スイッチは、少なくとも交流的な接続状態を1回以上切り換えられる構成であり、例えば、接続状態を何度も切り換えられるアナログスイッチなどで構成されていてもよいし、接続状態を1度のみ切り換えられるヒューズなどで構成されていてもよい。
【0012】
このような発振回路によれば、第1スイッチ及び第2スイッチのうち少なくとも一方を含むことによって、複数のMEMS振動子のうちの1つと増幅回路とを接続する接続回路を容易に実現できる。例えば、第1スイッチ及び第2スイッチのうち少なくとも一方の状態を、少なくとも交流的に接続しない状態とすることによって、発振回路で用いるMEMS振動子として選択されない状態とすることができる。
【0013】
本発明に係る発振回路において、
前記接続回路は、
前記第1スイッチと、前記第2スイッチと、を含むことができる。
【0014】
このような発振回路によれば、接続回路によって増幅回路と接続されたMEMS振動子以外のMEMS振動子を、増幅回路の入力端子及び出力端子の両方から電気的に切り離すことができる。これにより、接続回路によって増幅回路と接続されたMEMS振動子以外のMEMS振動子が、発振回路にとって不要な負荷となることを防げる。
【0015】
本発明に係る発振回路において、
前記接続回路は、前記増幅回路と接続されなかった前記MEMS振動子の前記第1端子及び前記第2端子を、第1基準電位と接続することができる。
【0016】
このような発振回路によれば、接続回路によって増幅回路と接続されなかったMEMS振動子の第1端子及び第2端子を第1基準電位と接続することにより、接続回路によって増幅回路と接続されなかったMEMS振動子を、増幅回路の入力端子及び出力端子の両方から、より確実に電気的に切り離すことができる。これにより、接続回路によって増幅回路と接続されなかったMEMS振動子が、発振回路の発振を阻害する信号の発信源となることを抑制できる。
【0017】
本発明に係る発振回路において、
前記接続回路は、
前記増幅回路と接続されなかった前記MEMS振動子の前記第1端子と前記第1基準電位との接続状態を切り換える第3スイッチと、
前記増幅回路と接続されなかった前記MEMS振動子の前記第2端子と前記第1基準電位との接続状態を切り換える第4スイッチと、を含むことができる。
【0018】
第3スイッチ及び第4スイッチは、少なくとも交流的な接続状態を1回以上切り換えられる構成であり、例えば、接続状態を何度も切り換えられるアナログスイッチなどで構成されていてもよいし、接続状態を1度のみ切り換えられるヒューズなどで構成されていてもよい。
【0019】
このような発振回路によれば、第3スイッチ及び第4スイッチを接続状態とすることによって、接続回路によって増幅回路と接続されなかったMEMS振動子を、増幅回路の入力端子及び出力端子の両方から、より確実に電気的に切り離すことができる。
【0020】
本発明に係る発振回路において、
前記入力端子と第2基準電位との間に接続された第1キャパシターと、
前記出力端子と前記第2基準電位との間に接続された第2キャパシターと、を含むことができる。
【0021】
このような発振回路によれば、選択されたMEMS振動子、第1キャパシター及び第2キャパシターとで共振回路を構成する発振回路とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る発振回路1を示す回路図。
【図2】アナログスイッチの構成例を示す回路図。
【図3】第2実施形態に係る発振回路2を示す回路図。
【図4】第2実施形態の変形例1に係る発振回路2aを示す回路図。
【図5】第2実施形態の変形例2に係る発振回路2bを示す回路図。
【図6】第3実施形態に係る発振回路3を示す回路図。
【図7】第4実施形態に係る発振回路4を示す回路図。
【図8】第5実施形態に係る発振回路5を示す回路図。
【図9】MEMS振動子の選択方法の一例を説明するための機能ブロック図。
【図10】MEMS振動子の選択方法の一例を示すフローチャート。
【図11】MEMS振動子11〜14の構成例を模式的に示す平面図。
【図12】MEMS振動子11の構成例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0024】
1.第1実施形態に係る発振回路
図1は、第1実施形態に係る発振回路1を示す回路図である。以下においては、第2基準電位が接地電位GNDである場合を例にとり説明する。また、増幅回路としては非反転増幅回路と反転増幅回路があるが、安定性の面からは反転増幅回路を用いることが望ましい。以下の説明においては、増幅回路として反転増幅回路を用いる場合を例にとり説明する。
【0025】
第1実施形態に係る発振回路1は、それぞれ第1端子及び第2端子を有し、それぞれ共振周波数が異なる複数のMEMS振動子11〜14と、入力端子21及び出力端子22を有する反転増幅回路20と、複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つの第1端子と入力端子21とを接続し、第2端子と出力端子22とを接続することによって、複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つと反転増幅回路20とを接続する接続回路30と、を含む。
【0026】
MEMS振動子11〜14は、例えば、静電型のMEMS振動子や圧電型のMEMS振動子であってもよい。また、MEMS振動子11〜14は、同一基板上に形成されていてもよい。この場合には、MEMS振動子11〜14は、同一の製造プロセスで製造されてもよい。MEMS振動子11〜14の構成例については、「7.MEMS振動子の構成例」の項で詳述される。
【0027】
発振回路1に含まれるMEMS振動子の数は、2以上の自然数で任意に設計できる。図1に示される例では、発振回路1は、4個のMEMS振動子11〜14を含んで構成されている。MEMS振動子11は、第1端子111及び第2端子112を有している。MEMS振動子12は、第1端子121及び第2端子122を有している。MEMS振動子13は、第1端子131及び第2端子132を有している。MEMS振動子14は、第1端子141及び第2端子142を有している。
【0028】
MEMS振動子11〜14は、それぞれ共振周波数が異なっている。例えば、MEMS振動子11の共振周波数をf1、MEMS振動子12の共振周波数をf2、MEMS振動子13の共振周波数をf3、MEMS振動子14の共振周波数をf4とした場合に、共振周波数f1〜f4の大小関係がf2<f1<f3<f4となるようにMEMS振動子11〜14が構成されていてもよい。周波数f1〜f4の値は、MEMS振動子11〜14の製造ばらつきによる周波数のばらつき範囲などを考慮して、MEMS振動子11〜14のいずれかを選択することにより発振回路として要求される目標周波数に対する精度が満たされる程度に近い値に設定しておくことが好ましい。
【0029】
反転増幅回路20は、入力端子21及び出力端子22を有している。反転増幅回路20は、所望の発振条件が満たされるように、複数のインバーター(反転回路)や増幅回路を組み合わせて構成されていてもよい。図1に示される例では、反転増幅回路20は、入力端子21から出力端子22に向かって順に、インバーター201、インバーター202、インバーター203が直列に接続されて構成されている。
【0030】
発振回路1は、反転増幅回路20に対する帰還抵抗を含んで構成されていてもよい。図1に示される例では、インバーター201の入力端子と出力端子とが抵抗51を介して接続され、インバーター202の入力端子と出力端子とが抵抗52を介して接続され、インバーター203の入力端子と出力端子とが抵抗53を介して接続されている。
【0031】
接続回路30は、複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つの第1端子と入力端子21とを接続し、第2端子と出力端子22とを接続することによって、複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つと反転増幅回路20とを接続する。図1には、接続回路30が、MEMS振動子11〜14のうちMEMS振動子11と反転増幅回路20とを接続する状態が示されている。以下においては、接続回路30が、MEMS振動子11〜14のうちMEMS振動子11と反転増幅回路20とを接続する場合を例にとり説明する。
【0032】
接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子11の第1端子111は、反転増幅回路20の入力端子21と少なくとも交流的に接続する。図1に示される例では、MEMS振動子11の第1端子111は、反転増幅回路20の入力端子21と交流的にも直流的にも接続している。
【0033】
接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子11の第2端子112は、反転増幅回路20の出力端子22と少なくとも交流的に接続する。図1に示される例では、MEMS振動子11の第2端子112は、反転増幅回路20の出力端子22と交流的にも直流的にも接続している。
【0034】
図1に示される例では、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子12の第1端子121は、反転増幅回路20の入力端子21とは交流的にも直流的にも接続していない。接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子12の第2端子122は、反転増幅回路20の出力端子22とは交流的にも直流的にも接続していない。
【0035】
また、図1に示される例では、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子13の第1端子131は、反転増幅回路20の入力端子21とは交流的にも直流的にも接続していない。接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子13の第2端子132は、反転増幅回路20の出力端子22とは交流的にも直流的にも接続していない。
【0036】
さらに、図1に示される例では、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子14の第1端子141は、反転増幅回路20の入力端子21とは交流的にも直流的にも接続していない。接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子14の第2端子142は、反転増幅回路20の出力端子22とは交流的にも直流的にも接続していない。
【0037】
第1実施形態に係る発振回路1によれば、共振周波数の異なる複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つと反転増幅回路20とを接続する接続回路30を用いて、発振回路で用いるMEMS振動子(図1に示される例では、MEMS振動子11)を選択することができる。これにより、製造プロセスのばらつきによってMEMS振動子の共振周波数がばらついたとしても、目的とする発振周波数により近いMEMS振動子を選択することができる。したがって、発振周波数のばらつきを抑制した発振回路を実現できる。
【0038】
接続回路30は、MEMS振動子11〜14の第1端子と反転増幅回路20の入力端子21との間の接続状態を切り換える第1スイッチ311、321、331及び341と、MEMS振動子の第2端子と反転増幅回路20出力端子22との間の接続状態を切り換える第2スイッチ312、322、332及び342のうち少なくとも一方を含むことができる。
【0039】
図1に示される例では、発振回路1は、MEMS振動子11の第1端子111と反転増幅回路20の入力端子21との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第1スイッチ311、MEMS振動子12の第1端子121と反転増幅回路20の入力端子21との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第1スイッチ321、MEMS振動子13の第1端子131と反転増幅回路20の入力端子21との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第1スイッチ331、MEMS振動子14の第1端子141と反転増幅回路20の入力端子21との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第1スイッチ341を含んで構成されている。
【0040】
また、図1に示される例では、発振回路1は、MEMS振動子11の第2端子112と反転増幅回路20の出力端子22との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第2スイッチ312、MEMS振動子12の第2端子122と反転増幅回路20の出力端子22との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第2スイッチ322、MEMS振動子13の第2端子132と反転増幅回路20の出力端子22との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第2スイッチ332、MEMS振動子14の第2端子142と反転増幅回路20の出力端子22との間の、少なくとも交流的な接続状態を切り換える第2スイッチ342を含んで構成されている。
【0041】
すなわち、図1に示される例では、接続回路30は、複数のMEMS振動子11〜14のそれぞれに対応する第1スイッチ及び第2スイッチを含んで構成されている。
【0042】
第1スイッチ311、321、331及び341並びに第2スイッチ312、322、332及び342は、少なくとも交流的な接続状態を1回以上切り換えられる構成であり、例えば、接続状態を何度も切り換えられるアナログスイッチなどで構成されていてもよいし、接続状態を1度のみ切り換えられるヒューズなどで構成されていてもよい。
【0043】
図2は、アナログスイッチの構成例を示す回路図である。アナログスイッチ300は、入力端子INと出力端子OUTとの間に並列に接続されたNMOSトランジスターTN及びPMOSトランジスターTPを含んで構成されている。NMOSトランジスターTNのバックゲートは接地電位GNDに、PMOSトランジスターTPのバックゲートは正電位である電源電位VDDに接続されている。制御端子CTLから入力される制御信号は、PMOSトランジスターのゲートに入力されるとともに、インバーターINVで反転されてNMOSトランジスターTNのゲートに入力される。したがって、アナログスイッチ300は、制御端子CTLに制御信号として接地電位GNDを入力することによって、入力端子INと出力端子OUTとの間が低抵抗状態(すなわち、スイッチのON状態)となり、制御端子CTLに制御信号として電源電位VDDを入力することによって、入力端子INと出力端子OUTとの間が高抵抗状態(すなわち、スイッチのOFF状態)となる。なお、発振回路1に採用できるスイッチはこれに限らず、種々の公知のスイッチを採用できる。
【0044】
このような発振回路1によれば、第1スイッチ312、322、332及び342並びに第2スイッチ312、322、332及び342のうち少なくとも一方を含むことによって、複数のMEMS振動子11〜14のうちの1つと反転増幅回路20とを接続する接続回路30を容易に実現できる。例えば、第1スイッチ312及び第2スイッチ312のうち少なくとも一方の状態を、少なくとも交流的に接続しない状態とすることによって、MEMS振動子11を発振回路1で用いるMEMS振動子として選択されない状態とすることができる。
【0045】
また、図1に示されるように、接続回路30は、第1スイッチ311、321、331及び341と、第2スイッチ312、322、332及び342と、を含むことができる。
【0046】
このような発振回路1によれば、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子(図1に示される例では、MEMS振動子11)以外のMEMS振動子(図1に示される例では、MEMS振動子12〜14)を、反転増幅回路20の入力端子21及び出力端子22の両方から電気的に切り離すことができる。これにより、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子以外のMEMS振動子が、発振回路1にとって不要な負荷となることを防げる。
【0047】
発振回路1は、反転増幅回路20の入力端子21と第2基準電位(接地電位GND)との間に接続された第1キャパシター41と、反転増幅回路20の出力端子22と第2基準電位(接地電位GND)との間に接続された第2キャパシター42と、を含んで構成されていてもよい。
【0048】
このような発振回路1によれば、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子(図1に示される例では、MEMS振動子11)と、第1キャパシター41及び第2キャパシター42とで共振回路を構成する発振回路とすることができる。
【0049】
2.第2実施形態に係る発振回路
図3は、第2実施形態に係る発振回路2を示す回路図である。以下においては第1実施形態に係る発振回路1とは異なる構成について詳述し、第1実施形態に係る発振回路1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、以下においては、第1基準電位が接地電位GNDである場合を例にとり説明する。
【0050】
第2実施形態に係る発振回路2は、接続回路30は、反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子(図3に示される例では、MEMS振動子12〜14)の第1端子及び第2端子を、第1基準電位(接地電位GND)と接続するように構成されている。
【0051】
また、図3に示される例では、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子11の第1端子111及び第2端子112は、第1基準電位(接地電位GND)とは接続しないように構成されている。
【0052】
図3に示される例では、MEMS振動子12〜14は、第1スイッチ321、331、341及び第2スイッチ322、332、342が理想的なスイッチである場合には反転増幅回路20から電気的に切り離されている。しかし、現実のスイッチにおいては、特に交流信号を完全にカットオフすることは極めて困難である。
【0053】
第2実施形態に係る発振回路2によれば、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子(図3に示される例では、MEMS振動子12〜14)の第1端子及び第2端子を第1基準電位(接地電位GND)と接続することにより、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子12〜14を、反転増幅回路20の入力端子21及び出力端子22の両方から、より確実に電気的に切り離すことができる。これにより、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子が、発振回路の発振を阻害する信号の発信源となることを抑制できる。
【0054】
図3に示されるように、接続回路30は、反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子の第1端子と第1基準電位(接地電位GND)との接続状態を切り換える第3スイッチ313、323、333及び343と、反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子の第2端子と第1基準電位(接地電位GND)との接続状態を切り換える第4スイッチ314、324、334及び344と、を含んで構成されていてもよい。
【0055】
図3に示される例では、発振回路2は、MEMS振動子11の第1端子111と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第3スイッチ313、MEMS振動子12の第1端子121と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第3スイッチ323、MEMS振動子13の第1端子131と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第3スイッチ333、MEMS振動子14の第1端子141と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第3スイッチ343を含んで構成されている。
【0056】
また、図3に示される例では、発振回路2は、MEMS振動子11の第2端子112と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第4スイッチ314、MEMS振動子12の第2端子122と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第4スイッチ324、MEMS振動子13の第2端子132と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第4スイッチ334、MEMS振動子14の第2端子142と接地電位GNDとの間の接続状態を切り換える第4スイッチ344を含んで構成されている。
【0057】
すなわち、図3に示される例では、接続回路30は、複数のMEMS振動子11〜14のそれぞれに対応する第3スイッチ及び第4スイッチを含んで構成されている。
【0058】
第3スイッチ313、323、333及び343並びに第4スイッチ314、324、334及び344は、接続状態を1回以上切り換えられる構成であり、例えば、接続状態を何度も切り換えられるアナログスイッチなどで構成されていてもよいし、接続状態を1度のみ切り換えられるヒューズなどで構成されていてもよい。アナログスイッチとしては、例えば、図2に示されるアナログスイッチ300を採用してもよい。なお、発振回路2に採用できるスイッチはこれに限らず、種々の公知のスイッチを採用できる。
【0059】
このような発振回路2によれば、第3スイッチ及び第4スイッチを接続状態とすることによって、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子(図3に示される例では、MEMS振動子12〜14)を、反転増幅回路20の入力端子21及び出力端子22の両方から、より確実に電気的に切り離すことができる。
【0060】
さらに、第2実施形態に係る発振回路2は、上述された効果に加えて、第1実施形態に係る発振回路1と同様の効果も奏する。
【0061】
2−1.第2実施形態の変形例1に係る発振回路
図4は、第2実施形態の変形例1に係る発振回路2aを示す回路図である。発振回路2aは、発振回路2と比較して、第1基準電位が参照電位Vrである点で相違する。参照電位Vrとしては、例えば、発振回路2aに供給される電源電位VDDや、MEMS振動子11〜14を動作させるために供給されるバイアス電位など、任意の電位を採用できる。
【0062】
第2実施形態の変形例1に係る発振回路2aにおいても、第2実施形態に係る発振回路2と同様の理由により、同様の効果を奏する。
【0063】
なお、参照電位Vrは、設計的に特定された電位ではなくてもよい。例えば、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子(図4に示される例では、MEMS振動子12〜14)の第1端子及び第2端子を、1つ以上のスイッチを介して電気的に接続してもよい。図4に示される例では、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子の第1端子及び第2端子が2つのスイッチを介して電気的に接続されている場合と等価な構成である。すなわち、第2実施形態に係る発振回路2は、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子の第1端子及び第2端子を同電位とできるような種々の変形が可能である。
【0064】
2−2.第2実施形態の変形例2に係る発振回路
図5は、第2実施形態の変形例2に係る発振回路2bを示す回路図である。発振回路2bは、発振回路と比較して、第1基準電位を選択するための第5スイッチ315、325、335及び345、並びに、第6スイッチ316、326、336及び346を有している点で相違する。
【0065】
図5に示される例では、第5スイッチ315、325、335及び345の一端は、それぞれ順に、第3スイッチ313、323、333及び343の一端と電気的に接続し、第5スイッチ315、325、335及び345の他端は、第1基準電位として、接地電位GND及び参照電位Vrのうちいずれか一方を選択するための切換スイッチとして構成されている。
【0066】
また、図5に示される例では、第6スイッチ316、326、336及び346の一端は、それぞれ順に、第4スイッチ314、324、334及び344の一端と電気的に接続し、第6スイッチ316、326、336及び346の他端は、第1基準電位として、接地電位GND及び参照電位Vrのうちいずれか一方を選択するための切換スイッチとして構成されている。
【0067】
第5スイッチ315、325、335及び345、並びに、第6スイッチ316、326、336及び346は、例えば、図2に示されるアナログスイッチを組み合わせて構成することが可能である。
【0068】
第5スイッチ315、325、335及び345、並びに、第6スイッチ316、326、336及び346の接続状態は、少なくとも、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されなかったMEMS振動子の第1端子及び第2端子を同電位とする接続状態である。図5に示される例では、第5スイッチ315、325、335及び345によって第1基準電位として参照電位Vrが選択されている場合には、第6スイッチ316、326、336及び346によっても第1基準電位として参照電位Vrが選択される。同様に、第5スイッチ315、325、335及び345によって第1基準電位として接地電位GNDが選択されている場合には、第6スイッチ316、326、336及び346によっても第1基準電位として接地電位GNDが選択される。
【0069】
第2実施形態の変形例2に係る発振回路2bにおいても、第2実施形態に係る発振回路2と同様の理由により、同様の効果を奏する。
【0070】
3.第3実施形態に係る発振回路
図6は、第3実施形態に係る発振回路3を示す回路図である。以下においては第1実施形態に係る発振回路1及び第2実施形態に係る発振回路2とは異なる構成について詳述し、第1実施形態に係る発振回路1又は第2実施形態に係る発振回路2と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
第3実施形態に係る発振回路3は、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されるMEMS振動子の第1端子は、キャパシターを介して反転増幅回路20の入力端子21と接続され、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されるMEMS振動子の第2端子は、キャパシターを介して反転増幅回路20の出力端子22と接続される点で、第2実施形態に係る発振回路2と相違する。
【0072】
図6に示される例では、接続回路30によってMEMS振動子11が反転増幅回路20と接続される場合には、MEMS振動子11の第1端子111は、キャパシター611を介して反転増幅回路20の入力端子21と接続され、MEMS振動子11の第2端子112は、キャパシター612を介して反転増幅回路20の出力端子21と接続される。同様に、接続回路30によってMEMS振動子12が反転増幅回路20と接続される場合には、MEMS振動子12の第1端子121は、キャパシター621を介して反転増幅回路20の入力端子21と接続され、MEMS振動子12の第2端子122は、キャパシター622を介して反転増幅回路20の出力端子21と接続される。また、接続回路30によってMEMS振動子13が反転増幅回路20と接続される場合には、MEMS振動子13の第1端子131は、キャパシター631を介して反転増幅回路20の入力端子21と接続され、MEMS振動子13の第2端子132は、キャパシター632を介して反転増幅回路20の出力端子21と接続される。さらに、接続回路30によってMEMS振動子14が反転増幅回路20と接続される場合には、MEMS振動子14の第1端子141は、キャパシター641を介して反転増幅回路20の入力端子21と接続され、MEMS振動子14の第2端子142は、キャパシター642を介して反転増幅回路20の出力端子21と接続される。
【0073】
すなわち、図6に示される例では、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子11の第1端子111は、反転増幅回路20の入力端子21と交流的に接続される。また、図6に示される例では、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子11の第2端子112は、反転増幅回路20の出力端子22と交流的に接続される。
【0074】
また、図6に示される例では、MEMS振動子11〜14の第1端子は、それぞれ抵抗711、721、731又は741を介して接地電位GNDに接続されている。さらに、図6に示される例では、MEMS振動子11〜14の第2端子は、それぞれ抵抗712、722、732又は742を介して正電位である電源電位VDDに接続されている。
【0075】
MEMS振動子11〜14として静電型のMEMS振動子を用いた場合には、MEMS振動子を構成する電極間に電位差を与える必要がある。図6に示される例では、抵抗711、721、731又は741を介して相対的に低い電位を第1端子に、抵抗712、722、732又は742を介して相対的に高い電位を第2端子に供給することにより、MEMS振動子を構成する電極間に電位差を与えることができる。また、接続回路30によって反転増幅回路20と接続されたMEMS振動子は、キャパシターを介して反転増幅回路20と接続されるため、反転増幅回路20の入力端子21と出力端子22との間に不要な電位差を与えることがない。
【0076】
第3実施形態に係る発振回路3においても、第2実施形態に係る発振回路2と同様の効果を奏する。また、第3実施形態に係る発振回路3は、第2実施形態に係る発振回路2に、キャパシター611、612、621、622、631、632、641及び642を含む構成や、さらに抵抗711、712、721、722、731、732、741及び742を含む構成を適用した発振回路であるが、これらの構成を第1実施形態に係る発振回路1に適用することも可能である。かかる場合には、第3実施形態に係る発振回路3は、第1実施形態に係る発振回路1と同様の効果を奏する。
【0077】
4.第4実施形態に係る発振回路
図7は、第4実施形態に係る発振回路4を示す回路図である。以下においては第1実施形態に係る発振回路1及び第2実施形態に係る発振回路2とは異なる構成について詳述し、第1実施形態に係る発振回路1又は第2実施形態に係る発振回路2と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
第4実施形態に係る発振回路4は、接続回路30を制御してMEMS振動子を選択する処理を行う選択処理回路80を含んで構成されている。以下においては、第1スイッチ311、321、331及び341、第2スイッチ312、322、332及び342、第3スイッチ313、323、333及び343並びに第4スイッチ314、324、334及び344は、いずれも図2に示されるアナログスイッチ300で構成されている場合を例にとり説明する。
【0079】
図7に示される例では、選択処理回路80は、制御信号C1〜C4を出力することによって、接続回路30を制御する。図7における矢印は、各スイッチに対する制御信号C1〜C4を表す。
【0080】
制御信号C1は、MEMS振動子11に関連する制御を行うための信号である。図7に示される例では、制御信号C1は、第1スイッチ311と第2スイッチ312の制御端子に入力されるとともに、インバーター811を介して第3スイッチ313の制御端子に、インバーター812を介して第4スイッチ314の制御端子に入力される。すなわち、第1スイッチ311及び第2スイッチ312と、第3スイッチ313及び第4スイッチ314とは、互いに逆の接続状態となるように構成されている。
【0081】
制御信号C2は、MEMS振動子12に関連する制御を行うための信号である。図7に示される例では、制御信号C2は、第1スイッチ321と第2スイッチ322の制御端子に入力されるとともに、インバーター821を介して第3スイッチ323の制御端子に、インバーター822を介して第4スイッチ324の制御端子に入力される。すなわち、第1スイッチ321及び第2スイッチ322と、第3スイッチ323及び第4スイッチ324とは、互いに逆の接続状態となるように構成されている。
【0082】
制御信号C3は、MEMS振動子13に関連する制御を行うための信号である。図7に示される例では、制御信号C3は、第1スイッチ331と第2スイッチ332の制御端子に入力されるとともに、インバーター831を介して第3スイッチ333の制御端子に、インバーター832を介して第4スイッチ334の制御端子に入力される。すなわち、第1スイッチ331及び第2スイッチ332と、第3スイッチ333及び第4スイッチ334とは、互いに逆の接続状態となるように構成されている。
【0083】
制御信号C4は、MEMS振動子14に関連する制御を行うための信号である。図7に示される例では、制御信号C4は、第1スイッチ341と第2スイッチ342の制御端子に入力されるとともに、インバーター841を介して第3スイッチ343の制御端子に、インバーター842を介して第4スイッチ344の制御端子に入力される。すなわち、第1スイッチ341及び第2スイッチ342と、第3スイッチ343及び第4スイッチ344とは、互いに逆の接続状態となるように構成されている。
【0084】
図7に示される例では、選択処理回路80は、ヒューズF1〜F4を介して正電位である電源電位VDDに接続されている。また、選択処理回路80は、ヒューズF1〜F4の切断状態に基づいて、制御信号C1〜C4を出力するように構成されている。選択処理回路80は、例えば、ヒューズF1の切断状態に基づいて制御信号C1を出力し、ヒューズF2の切断状態に基づいて制御信号C2を出力し、ヒューズF3の切断状態に基づいて制御信号C3を出力し、ヒューズF4の切断状態に基づいて制御信号C4を出力してもよい。
【0085】
第4実施形態に係る発振回路4は、ヒューズF1〜F4を適宜選択して切断することによって、発振回路4で使用するMEMS振動子を簡単に選択できる。
【0086】
また、第4実施形態に係る発振回路4においても、第2実施形態に係る発振回路2と同様の効果を奏する。さらに、第4実施形態に係る発振回路4は、第2実施形態に係る発振回路2に、選択処理回路80、インバーター811、812、821、822、831、832、841及び842並びにヒューズF1〜F4を含む構成を適用した発振回路であるが、これらの構成を第3実施形態に係る発振回路3に適用することも可能である。かかる場合には、第4実施形態に係る発振回路4は、第3実施形態に係る発振回路3と同様の効果を奏する。また、選択処理回路80及びヒューズF1〜F4を含む構成を第1実施形態に係る発振回路1に適用することも可能である。かかる場合には、第4実施形態に係る発振回路4は、第1実施形態に係る発振回路1と同様の効果を奏する。
【0087】
5.第5実施形態に係る発振回路
図8は、第5実施形態に係る発振回路5を示す回路図である。以下においては第1実施形態に係る発振回路1、第2実施形態に係る発振回路2及び第4実施形態に係る発振回路4とは異なる構成について詳述し、第1実施形態に係る発振回路、第2実施形態に係る発振回路2又は第4実施形態に係る発振回路4と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
第5実施形態に係る発振回路5は、接続回路30を制御してMEMS振動子を選択する処理を行う選択処理回路80aを含んで構成されている。また、第5実施形態に係る発振回路5は、記憶装置90を含んで構成されている。
【0089】
記憶装置90は、「選択処理回路80aによって選択されるMEMS振動子に関する情報」を記憶する。「選択処理回路80aによって選択されるMEMS振動子に関する情報」は、例えば、選択処理回路80aによって選択されるMEMS振動子に対応する識別コードであったり、制御信号C1〜C4の値の組み合わせであったりしてもよい。記憶装置90は、EEPROMなどの不揮発性メモリーで構成されていてもよい。
【0090】
選択処理回路80aは、記憶装置90に記憶された「選択処理回路80aによって選択されるMEMS振動子に関する情報」に基づいて制御信号C1〜C4を出力するように構成されている。
【0091】
第5実施形態に係る発振回路5は、記憶装置90に「選択処理回路80aによって選択されるMEMS振動子に関する情報」を記憶させることによって、発振回路5で使用するMEMS振動子を簡単に選択できる。
【0092】
また、第5実施形態に係る発振回路5においても、第2実施形態に係る発振回路2と同様の効果を奏する。さらに、第5実施形態に係る発振回路5は、第2実施形態に係る発振回路2に、選択処理回路80a、インバーター811、812、821、822、831、832、841及び842並びに記憶装置90を含む構成を適用した発振回路であるが、これらの構成を第3実施形態に係る発振回路3に適用することも可能である。かかる場合には、第5実施形態に係る発振回路5は、第3実施形態に係る発振回路3と同様の効果を奏する。また、選択処理回路80a及び記憶装置90を含む構成を第1実施形態に係る発振回路1に適用することも可能である。かかる場合には、第5実施形態に係る発振回路5は、第1実施形態に係る発振回路1と同様の効果を奏する。
【0093】
6.MEMS振動子の選択方法
図9は、MEMS振動子の選択方法の一例を説明するための機能ブロック図である。本項においては、第4実施形態に係る発振回路4を例にとり説明する。また、発振回路4において、ヒューズF1〜F4のいずれも切断されていない状態を初期状態とし、初期状態では接続回路30によってMEMS振動子11が反転増幅回路20と接続されているものとする。さらに、MEMS振動子11の共振周波数の設計値をf1、MEMS振動子12の共振周波数の設計値をf2、MEMS振動子13の共振周波数の設計値をf3、MEMS振動子14の共振周波数の設計値をf4とし、f2<f1<f3<f4の大小関係が成立しているものとする。なお、本実施形態においては、発振回路としての目標周波数は、MEMS振動子11の共振周波数の設計値であるf1に等しい値とする。周波数f1〜f4の値は、MEMS振動子11〜14の製造ばらつきによる周波数のばらつき範囲などを考慮して、MEMS振動子11〜14のいずれかを選択することにより発振回路として要求される目標周波数に対する精度が満たされる程度に近い値に設定しておくことが好ましい。
【0094】
MEMS振動子選択装置500は、発振回路4で発振動作に用いるMEMS振動子を決定し、直接的又は間接的に接続回路30を制御することによって、MEMS振動子を選択するための装置である。図9に示される例では、MEMS振動子選択装置500は、周波数測定部510、判定部520及びヒューズ切断部530を含んで構成されている。
【0095】
周波数測定部510は、発振回路4の反転増幅回路20の出力端子22から出力される出力信号Voの入力を受け付け、出力信号Voの周波数foを測定する。また、周波数測定部510は、測定した周波数foの値に関する情報である周波数情報Ifを判定部520に出力する。
【0096】
判定部520は、周波数測定部510が出力した周波数情報Ifの入力を受け付け、選択すべきMEMS振動子がどれであるかを、周波数情報Ifに基づいて判定する。また、判定部520は、判定結果に関する情報である判定結果情報Irをヒューズ切断部530に出力する。
【0097】
ヒューズ切断部530は、判定部520が出力する判定結果情報Irの入力を受け付け、判定結果情報Irに基づいて、必要に応じてヒューズF1〜F4を切断する。図9に示される例では、ヒューズ切断部530は、ヒューズF1を切断するためのレーザー光L1、ヒューズF2を切断するためのレーザー光L2、ヒューズF3を切断するためのレーザー光L3、及び、ヒューズF4を切断するためのレーザー光L4を出力することができる。
【0098】
図10は、MEMS振動子の選択方法の一例を示すフローチャートである。図10に示されるMEMS振動子の選択方法は、発振回路4の出力信号Voの周波数foを測定する測定工程と、測定工程で測定した周波数foに基づいて選択すべきMEMS振動子を判定する判定工程と、判定工程で判定した結果に基づいて発振回路4の接続回路30を制御してMEMS振動子を選択する選択工程と、を含んでいる。
【0099】
図10に示される例では、閾値周波数をft1、ft2及びft3とし、ft1<ft2<ft3の大小関係が成立しているものとする。なお、閾値周波数をft1、ft2及びft3は、例えば、ft1<f2<ft2<f1<ft3の大小関係となるように設定することができる。
【0100】
図10に示される例では、ft2<fo≦ft3の大小関係となる場合には、MEMS振動子選択装置500は、接続回路30を制御してMEMS振動子11を選択する。また、ft3<foの大小関係となる場合には、MEMS振動子選択装置500は、接続回路30を制御してMEMS振動子12を選択する。また、ft1<fo≦ft2の大小関係となる場合には、MEMS振動子選択装置500は、接続回路30を制御してMEMS振動子13を選択する。また、fo≦ft1の大小関係となる場合には、MEMS振動子選択装置500は、接続回路30を制御してMEMS振動子14を選択する。
【0101】
図10に示されるMEMS振動子の選択方法において、まず、MEMS振動子選択装置500の周波数測定部510が、発振回路4の反転増幅回路20の出力端子22から出力される出力信号Voを受け付け、出力信号Voの周波数foを測定する(ステップS100;測定工程)。本実施形態においては、周波数foを測定した後に、周波数測定部510は、周波数情報Ifを判定部520に出力する。
【0102】
測定工程(ステップS100)の後に、ステップS100で測定した周波数foに基づいて、MEMS振動子選択装置500の判定部520が、選択すべきMEMS振動子がどれであるかを判定する(ステップS102〜S106;判定工程)。本実施形態においては、判定部520は、測定した周波数foの値に関する情報である周波数情報Ifに基づいて、選択すべきMEMS振動子がどれであるかを判定する。また、判定部520は、判定結果情報Irをヒューズ切断部530に出力する。
【0103】
判定工程(ステップS102〜S106)の後に、MEMS振動子選択装置500のヒューズ切断部530が、判定工程で判定した結果に基づいて、発振回路4の接続回路30を制御してMEMS振動子を選択する(ステップS112〜118;選択工程)。本実施形態においては、ヒューズ切断部530は、判定部520が出力した判定結果情報Irに基づいて、発振回路4の接続回路30を制御してMEMS振動子を選択する。また、本実施形態においては、ヒューズ切断部530が、必要に応じて発振回路4のヒューズF1〜F4を切断することによって、発振回路4の選択処理回路80を介して接続回路30を間接的に制御してMEMS振動子を選択させる。
【0104】
図10に示される例では、ステップS100の後に、判定部520が、ft2<fo≦ft3の大小関係となるか否かを判定する(ステップS102)。判定部520が、ft2<fo≦ft3の大小関係となるものと判定した場合(ステップS102でYESの場合)には、ヒューズ切断部530が、接続回路30を制御してMEMS振動子11を選択する(ステップS112)。より具体的には、ヒューズ切断部530はレーザー光L1〜L4のいずれも出力しない。これによって、発振回路4は初期状態を維持し、接続回路30によってMEMS振動子11が反転増幅回路20と接続されている状態(すなわち、MEMS振動子11を選択した状態)となる。
【0105】
ステップS102において、判定部520が、ft2<fo≦ft3の大小関係とならないものと判定した場合(ステップS102でNOの場合)には、判定部520が、ft3<foの大小関係となるか否かを判定する(ステップS104)。判定部520が、ft3<foの大小関係となるものと判定した場合(ステップS104でYESの場合)には、ヒューズ切断部530が、接続回路30を制御してMEMS振動子12を選択させる(ステップS114)。より具体的には、ヒューズ切断部530はレーザー光L1を出力してヒューズF1を切断するとともに、レーザー光L2を出力してヒューズF2を切断する。これによって、第1スイッチ311及び321、第2スイッチ312及び322、第3スイッチ313及び323、並びに、第4スイッチ314及び324の接続状態が切り換わり、接続回路30によってMEMS振動子12が反転増幅回路20と接続されている状態(すなわち、MEMS振動子12を選択した状態)となる。
【0106】
ステップS104において、判定部520が、ft3<foの大小関係とならないものと判定した場合(ステップS104でNOの場合)には、判定部520が、ft1<fo≦ft2の大小関係となるか否かを判定する(ステップS106)。判定部520が、ft1<fo≦ft2の大小関係となるものと判定した場合(ステップS106でYESの場合)には、ヒューズ切断部530が、接続回路30を制御してMEMS振動子13を選択させる(ステップS116)。より具体的には、ヒューズ切断部530はレーザー光L1を出力してヒューズF1を切断するとともに、レーザー光L3を出力してヒューズF3を切断する。これによって、第1スイッチ311及び331、第2スイッチ312及び332、第3スイッチ313及び333、並びに、第4スイッチ314及び334の接続状態が切り換わり、接続回路30によってMEMS振動子13が反転増幅回路20と接続されている状態(すなわち、MEMS振動子13を選択した状態)となる。
【0107】
ステップS106において、判定部520が、ft1<fo≦ft2の大小関係とならないものと判定した場合(ステップS106でNOの場合)には、ヒューズ切断部530が、接続回路30を制御してMEMS振動子14を選択させる(ステップS118)。より具体的には、ヒューズ切断部530はレーザー光L1を出力してヒューズF1を切断するとともに、レーザー光L4を出力してヒューズF4を切断する。これによって、第1スイッチ311及び341、第2スイッチ312及び342、第3スイッチ313及び343、並びに、第4スイッチ314及び344の接続状態が切り換わり、接続回路30によってMEMS振動子14が反転増幅回路20と接続されている状態(すなわち、MEMS振動子14を選択した状態)となる。
【0108】
選択工程(ステップS112〜S118)のいずれかが終了した後、MEMS振動子の選択方法の全工程が終了する。
【0109】
このように、初期状態にある発振回路4の出力信号Voの周波数foに基づいて選択すべきMEMS振動子を決定して、直接的又は間接的に接続回路30を制御することによって、MEMS振動子を選択することによって、複数のMEMS振動子のうち、出力信号Voが所望の周波数に近くなるMEMS振動子を容易に選択できる。したがって、発振周波数のばらつきを抑制した発振回路を実現できる。
【0110】
7.MEMS振動子の構成例
図11は、MEMS振動子11〜14の構成例を模式的に示す平面図である。図12は、MEMS振動子11の構成例を模式的に示す断面図である。なお、図12は、図11のII−II線断面図である。
【0111】
なお、本実施形態に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0112】
図11に示されるように、MEMS振動子11は、基板1010の上方に設けられた第1電極1120及び第2電極1130を含んで構成されている。MEMS振動子12は、基板1010の上方に設けられた第1電極1220及び第2電極1230を含んで構成されている。MEMS振動子13は、基板1010の上方に設けられた第1電極1320及び第2電極1330を含んで構成されている。MEMS振動子14は、基板1010の上方に設けられた第1電極1420及び第2電極1430を含んで構成されている。
【0113】
図12に示されるように、基板1010は、支持基板1012と、第1下地層1014と、第2下地層1016とを有することができる。
【0114】
支持基板1012としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。支持基板1012として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。
【0115】
第1下地層1014は、支持基板1012の上方に(より具体的には支持基板1012上に)形成されている。第1下地層1014としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1下地層1014は、MEMS振動子11〜14と、支持基板1012に形成された他の素子(図示せず)と、を電気的に分離することができる。
【0116】
第2下地層1016は、第1下地層1014上に形成されている。第2下地層1016の材質としては、例えば、窒化シリコンが挙げられる。
【0117】
MEMS振動子11〜14の基本的な構成は同様であるので、以下の説明においては、MEMS振動子11の構成を中心に説明し、MEMS振動子12〜14の構成に対応する符号を順に括弧内に記載する。
【0118】
MEMS振動子11(12、13、14)の第1電極1120(1220、1320、1420)は、基板1010上に形成されている。第1電極1120(1220、1320、1420)の形状は、例えば、層状又は薄膜状である。
【0119】
MEMS振動子11(12、13、14)の第2電極1130(1230、1330、1430)は、第1電極1120(1220、1320、1420)と間隔を空けて形成されている。第2電極1130(1230、1330、1430)は、基板10上に形成された支持部1132(1232、1332、1432)と、支持部1132(1232、1332、1432)に支持されており第1電極1120(1220、1320、1420)の上方に配置された梁部1134(1234、1334、1434)と、を有する。支持部1132(1232、1332、1432)は、例えば、第1電極1120(1220、1320、1420)と空間をあけて対向配置されている。第2電極1130(1230、1330、1430)は、片持ち梁状に形成されている。
【0120】
第1電極1120(1220、1320、1420)及び第2電極1130(1230、1330、1430)の間に電圧が印加されると、梁部1134(1234、1334、1434)は、電極1120(1220、1320、1420)と1130(1230、1330、1430)との間に発生する静電力により振動することができる。すなわち、図11及び図12に示されるMEMS振動子11〜14は、静電型のMEMS振動子である。なお、MEMS振動子11(12、13、14)は、第1電極1120(1220、1320、1420)及び第2電極1130(1230、1330、1430)を減圧状態で気密封止する被覆構造体を有していてもよい。これにより、梁部1134(1234、1334、1434)の振動時における空気抵抗を減少させることができる。
【0121】
第1電極1120(1220、1320、1420)及び第2電極1130(1230、1330、1430)の材質としては、例えば、所定の不純物をドーピングすることにより導電性が付与された多結晶シリコンが挙げられる。
【0122】
MEMS振動子11〜14は、梁部1134、1234、1334及び1434の厚さDが同一に構成されていてもよい。また、MEMS振動子11〜14は、梁部1134、1234、1334及び1434の幅Wが同一に構成されていてもよい。これらにより、MEMS振動子11〜14の共振周波数を、梁部1134、1234、1334及び1434の長さL11、L12、L13及びL14で制御することができる。
【0123】
梁部1134、1234、1334及び1434の長さL11、L12、L13及びL14が長いほどMEMS振動子11〜14の共振周波数は低くなり、梁部1134、1234、1334及び1434の長さL11、L12、L13及びL14が短いほどMEMS振動子11〜14の共振周波数は高くなる。図11に示されるように、本実施形態においては、梁部1134、1234、1334及び1434は、L14<L13<L11<L12の大小関係が成立するように構成されている。したがって、MEMS振動子11〜14の共振周波数f1〜f4は、f2<f1<f3<f4の大小関係が成立する。
【0124】
図11に示されるように、MEMS振動子11〜14は、同一の基板1010上に形成されている。また、MEMS振動子11〜14は、同一の基板1010上に同一の製造プロセスで形成されていてもよい。これによって、製造ばらつきに起因するMEMS振動子11〜14の共振周波数がずれる方向(設計値よりも大きくなる又は小さくなる傾向)が、通常は同一となるので、MEMS振動子11〜14の共振周波数の大小関係が崩れない。したがって、発振回路として目的とする周波数に近いMEMS振動子を、より確実に選択することができる。
【0125】
なお、MEMS振動子11〜14としては、上述された構成に限らず、種々の公知のMEMS振動子を採用できる。
【0126】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0127】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0128】
1,2,2a,2b,3,4,5 発振回路、11〜14 MEMS振動子、20 反転増幅回路、21 入力端子、22 出力端子、30 接続回路、41 第1キャパシター、42 第2キャパシター、51〜53 抵抗、80,80a 選択処理回路、90 記憶装置、111,121,131,141 第1端子、112,122,132,142 第2端子、201〜203 インバーター、300 アナログスイッチ、311,321,331,341 第1スイッチ、312,322,332,342 第2スイッチ、313,323,333,343 第3スイッチ、314,324,334,344 第4スイッチ、315,325,335,345 第5スイッチ、316,326,336,346 第6スイッチ、500 MEMS振動子選択装置、510 周波数測定部、520 判定部、530 ヒューズ切断部、611,612,621,622,631,632,641,642 キャパシター、711,712,721,722,731,732,741,742 抵抗、811,812,821,822,831,832,841,842 インバーター、1010 基板、1012 支持基板、1014 第1下地層、1016 第2下地層、1120,1220,1320,1420 第1電極、1130,1230,1330,1430 第2電極、1132,1232,1332,1432 支持部、1134,1234,1334,1434 梁部、C1〜C4 制御信号、CTL 制御端子、F1〜F4 ヒューズ、GND 接地電位、If 周波数情報、IN 入力端子、INV インバーター、Ir 判定結果情報、L1〜L4 レーザー光、OUT 出力端子、TN NMOSトランジスター、TP PMOSトランジスター、VDD 電源電位、Vo 出力信号、Vr 参照電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第1端子及び第2端子を有し、それぞれ共振周波数が異なる複数のMEMS振動子と、
入力端子及び出力端子を有する増幅回路と、
前記複数のMEMS振動子のうちの1つの前記第1端子と前記入力端子とを接続し、前記第2端子と前記出力端子とを接続することによって、前記複数のMEMS振動子のうちの1つと前記増幅回路とを接続する接続回路と、
を含む、発振回路。
【請求項2】
請求項1に記載の発振回路において、
前記接続回路は、
前記MEMS振動子の前記第1端子と前記入力端子との間の接続状態を切り換える第1スイッチと、前記MEMS振動子の前記第2端子と前記出力端子との間の接続状態を切り換える第2スイッチのうち少なくとも一方を含む、発振回路。
【請求項3】
請求項2に記載の発振回路において、
前記接続回路は、
前記第1スイッチと、前記第2スイッチと、を含む、発振回路。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発振回路において、
前記接続回路は、前記増幅回路と接続されなかった前記MEMS振動子の前記第1端子及び前記第2端子を、第1基準電位と接続する、発振回路。
【請求項5】
請求項4に記載の発振回路において、
前記接続回路は、
前記増幅回路と接続されなかった前記MEMS振動子の前記第1端子と前記第1基準電位との接続状態を切り換える第3スイッチと、
前記増幅回路と接続されなかった前記MEMS振動子の前記第2端子と前記第1基準電位との接続状態を切り換える第4スイッチと、を含む、発振回路。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発振回路において、
前記入力端子と第2基準電位との間に接続された第1キャパシターと、
前記出力端子と前記第2基準電位との間に接続された第2キャパシターと、を含む、発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195829(P2012−195829A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59214(P2011−59214)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】