説明

発泡成形体の取付部材、発泡成形部材、発泡成形部材の製造方法並びに発泡成形部材の取付構造

【課題】被取付部材に設けられた複数個の被係止部にそれぞれ係合する複数個の係止部を備えた発泡成形部材を容易に製造することが可能な発泡成形体の取付部材と、この取付部材を備えた発泡成形部材と、この発泡成形部材の製造方法と、この発泡成形部材を被取付部材に取り付けた取付構造とを提供する。
【解決手段】取付部材10は、発泡成形体2を被取付部材20に取り付けるためのものである。取付部材10は、被取付部材20に設けられた被係止部21と係合する係止部11を備えている。取付部材10は、発泡成形体2とインサート成形により一体化される。取付部材10は、複数個の係止部11と、該係止部11同士を連結した連結部12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体を被取付部材に取り付けるための発泡成形体の取付部材に係り、特に、被取付部材に設けられた被係止部と係合する係止部を有しており、発泡成形体とインサート成形により一体化される発泡成形体の取付部材に関する。また、本発明は、この発泡成形体の取付部材が発泡成形体とインサート成形により一体化されてなる発泡成形部材と、この発泡成形部材の製造方法と、この発泡成形部材を該取付部材を介して被取付部材に取り付けた取付構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアの裏側(車内側)には、車両の側面衝突時の衝撃エネルギー吸収(Energy Absorption:EA)のために、硬質ウレタンフォームよりなる衝撃エネルギー吸収材(以下、EA材と略すことがある。)が取り付けられている。このEA材をドアトリムに取り付ける方法として、特開2005−207524(特許文献1)には、第11図に示す構造が記載されている。第11図は、特許文献1の図5に記載されたEA材取付構造を示す断面図である。
【0003】
このEA材取付構造においては、EA材101がドアトリム105に対し取付部材(特許文献1ではクリップと称されている。)102と、該ドアトリム105から突設された突起106とを介して取り付けられている。この突起106は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂よりなる。取付部材102は、EA材101とインサート成形により一体に設けられている。
【0004】
第11図(a)の通り、EA材101は、主体部101aと、該主体部101aの側面からドアトリム105に沿うように側方へ張り出す複数個の張出部101bとを有している。各張出部101bの厚さ(ドアトリム105のEA材取付面と垂直方向の厚さ。以下、同様。)は、主体部101aの厚さよりも小さなものとなっている。ドアトリム105には、これらの張出部101bとそれぞれ対応する位置関係にて、複数個の突起106が設けられている。これらの張出部101bにそれぞれ取付部材102が設けられている。この取付部材102は、突起106が挿入される円筒形状の筒部103と、該筒部103の筒軸心線方向の両端側にそれぞれ設けられた外向き鍔状のフランジ部104とを備えている。この取付部材102は、各張出部101bにおいて、筒部103の筒軸心線方向を該張出部101bの厚さ方向として該張出部101bに埋設されており、各フランジ部104が該張出部101bのドアトリム105側の面及びこれと反対側の面にそれぞれ露呈している。
【0005】
この取付部材102を備えたEA材101を製造する場合には、EA材成形用金型(図示略)の内面から突設された取付部材固定用突起を筒部103に挿入して取付部材102を該EA材成形用金型の内面に取り付けておく。EA材成形用金型の内面には、EA材101の各張出部101bと対応する位置関係にて複数個の取付部材固定用突起が設けられており、これらの取付部材固定用突起にそれぞれ取付部材102を取り付ける。その後、該EA材成形用金型内で発泡合成樹脂原料を発泡させてEA材本体を成形する。これにより、複数個の取付部材102が一体に設けられたEA材101が製造される。
【0006】
この取付部材102を備えたEA材101をドアトリム105に取り付ける場合には、第11図(b)の通り、各突起106を各取付部材102の筒部103に差し込んでEA材101をドアトリム105に重ねる。その後、各突起106の先端に溶着治具(図示略)を押し当て、第11図(c)の通り各突起106の先端を略円盤状に拡径させてフランジ状押さえ部106aを形成する。これにより、EA材101がドアトリム105に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−207524
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、1個の取付部材102に1個の突起106が係合する。そのため、この取付部材102を備えたEA材101を製造する場合には、EA材本体の発泡成形に先立ち、ドアトリム105に設けられた突起106と同数個の取付部材102を1個ずつEA材成形用金型の内面に取り付ける必要があり、EA材の製造作業が煩雑になるおそれがある。EA材の製造作業は、できるだけ簡略化されることが望まれている。
【0009】
本発明は、被取付部材に設けられた複数個の被係止部とそれぞれ係合する複数個の係止部を備えた発泡成形部材を容易に製造することが可能な発泡成形体の取付部材と、この取付部材が発泡成形体とインサート成形により一体化されてなる発泡成形部材と、この発泡成形部材の製造方法と、この発泡成形部材を被取付部材に取り付けた取付構造とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)の発泡成形体の取付部材は、発泡成形体を被取付部材に取り付けるための取付部材であって、該被取付部材に設けられた被係止部と係合する係止部を備えており、該発泡成形体とインサート成形により一体化される発泡成形体の取付部材において、該取付部材は、複数個の該係止部と、該係止部同士を連結した連結部とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発泡成形体の取付部材は、請求項1において、前記連結部に補強用リブが設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の発泡成形体の取付部材は、請求項2において、前記連結部は、前記発泡成形体の前記被取付部材との対峙面に沿って配設される基片部を有しており、該基片部から該対峙面と直交方向に前記補強用リブが突設されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の発泡成形体の取付部材は、請求項2又は3において、前記補強用リブは、前記係止部にそれぞれ連なっていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明(請求項5)の発泡成形部材は、発泡成形体と、該発泡成形体とインサート成形により一体化された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡成形体の取付部材とを有していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6の発泡成形部材は、請求項5において、前記発泡成形体は、主体部と、該主体部から被取付部材に沿うように該主体部の外方へ張り出した複数個の張出部とを有しており、該張出部にそれぞれ前記取付部材の前記係止部が配設されており、各張出部から該主体部にかけて前記連結部が延在していることを特徴とするものである。
【0016】
本発明(請求項7)の発泡成形部材の製造方法は、請求項5又は6に記載の発泡成形部材を製造するための方法であって、発泡成形体成形用金型の内面に設けられた複数個の取付部材係合部にそれぞれ前記取付部材の前記係止部を係合させて該取付部材を該発泡成形体成形用金型の内面に設置する取付部材設置工程と、該取付部材設置工程の後、該発泡成形体成形用金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程とを有していることを特徴とするものである。
【0017】
本発明(請求項8)の発泡成形部材の取付構造は、請求項5又は6に記載の発泡成形部材を被取付部材に取り付けた構造であって、該被取付部材に設けられた複数個の被係止部がそれぞれ前記取付部材の前記係止部と係合したことにより、該発泡成形部材が該被取付部材に取り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明(請求項1)の発泡成形体の取付部材は、被取付部材に設けられた被係止部と係合する係止部を複数個有しており、これらの係止部同士が連結部によって連結されたものとなっている。そのため、この取付部材を用いて発泡成形部材を製造する場合には、上記第11図の従来例のように1個の被係止部(突起106)としか係合しない取付部材102を用いた場合に比べて、発泡成形体成形用金型に取り付けるべき取付部材の個数を少なくすることが可能である。これにより、発泡成形部材の製造作業を簡略化することが可能となる。また、この取付部材にあっては、係止部同士が連結部によって連結されているため、各係止部が別々に発泡成形体にインサートされる場合に比べて、該係止部同士の間の発泡成形体の強度を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項2の通り、連結部に補強用リブを設けることにより、連結部を高強度とすることができる。また、この取付部材を発泡成形体に埋設することにより、発泡成形体の強度を向上させることも可能である。
【0020】
請求項3の通り構成することにより、連結部を、発泡成形体の被取付部材との対峙面と垂直方向の荷重に対し十分な強度を有するように構成することが可能となる。
【0021】
請求項4の通り、補強用リブを、各係止部に連なるように設けることにより、各係止部と連結部との連結強度を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明(請求項5)の発泡成形部材にあっては、かかる本発明の取付部材を備えているので、上記第11図の従来例のように1個の被係止部(突起106)としか係合しない取付部材102を複数個備えた発泡成形部材に比べて、発泡成形体にインサートされる取付部材の個数が少なくて済むため、比較的簡易な製造作業にて製造することが可能である。また、この取付部材は、係止部同士が連結部によって連結されているため、本発明の発泡成形部材は、各係止部が別々に発泡成形体にインサートされたものに比べて、該係止部同士の間の発泡成形体の強度が高くなるように構成することが可能である。
【0023】
請求項6の態様では、発泡成形体は、前述の第11図のEA材101と同様に、主体部と、該主体部から被取付部材に沿うように該主体部の外方へ張り出した複数個の張出部とを有した形状となっており、これらの張出部にそれぞれ取付部材の係止部が配設されている。発泡成形体がこのような形状となっていると、各係止部が被取付部材の各被係止部と係合した状態において該発泡成形体に荷重が加えられた場合には、各張出部の基端部に応力が集中する可能性がある。この態様では、これらの係止部同士が連結部によって連結されており、この連結部が各張出部から主体部にかけて延在しているため、各張出部の基端部をこの連結部により補強して耐久性を向上させることが可能である。
【0024】
本発明(請求項7)の発泡成形部材の製造方法にあっては、かかる本発明の取付部材を発泡成形体にインサート成形して発泡成形部材を製造するため、上記第11図の従来例のように1個の被係止部(突起106)としか係合しない取付部材102を用いて発泡成形部材を製造する場合に比べて、発泡成形体成形用金型の内面に設置すべき取付部材の個数が少なくて済むため、発泡成形部材の製造作業を簡略化することが可能であり、これにより比較的容易に発泡成形部材を製造することが可能となる。
【0025】
本発明(請求項8)の発泡成形部材の取付構造にあっては、被取付部材に設けられた複数個の被係止部をそれぞれ取付部材の各係止部と係合させることにより、発泡成形部材が被取付部材に取り付けられる。本発明では、これらの係止部同士は連結部によって連結されているので、発泡成形体に加えられた荷重がこれらの係止部に広く分散され、局所的に応力が集中することが防止ないし緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施の形態に係る発泡成形体の取付部材の説明図である。
【図2】図1の発泡成形体の取付部材を備えた発泡成形部材の製造方法の説明図である。
【図3】図1の発泡成形体の取付部材を備えた発泡成形部材及びこの発泡成形部材を被取付部材に取り付けた取付構造の説明図である。
【図4】第2の実施の形態に係る発泡成形体の取付部材の平面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る発泡成形体の取付部材の平面図である。
【図6】第4の実施の形態に係る発泡成形体の取付部材の断面図である。
【図7】第5の実施の形態に係る発泡成形部材の断面図及びこの発泡成形部材を製造するための発泡成形体成形用金型の断面図である。
【図8】第6の実施の形態に係る発泡成形部材の断面図及びこの発泡成形部材を製造するための発泡成形体成形用金型の断面図である。
【図9】発泡成形用金型の別の構成例を示す断面図である。
【図10】第7の実施の形態に係る発泡成形体の取付部材の断面図である。
【図11】従来例に係る発泡成形部材の取付構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、発泡成形部材はEA材であり、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造を例示しているが、本発明の発泡成形部材は、EA材に限定されない。また、本発明において、被取付部材は、ドアトリムに限定されない。
【0028】
第1図(a)は、実施の形態に係る発泡成形体の取付部材(以下、取付部材と略す。)の平面図であり、第1図(b)は第1図(a)のB−B線矢視図であり、第1図(c)は第1図(a)のC−C線に沿う断面図であり、第1図(d)は第1図(a)のD−D線に沿う断面図である。第2図(a)は、この取付部材を備えた発泡成形部材としてのEA材を製造するためのEA材成形用金型の縦断面図であり、第2図(b)は、このEA材成形用金型の取付部材係合部としての係合突起付近の拡大断面図である。なお、第2図(a),(b)は、それぞれ、該係合突起の軸心線に沿う断面にて図示されている。第3図(a)は、この取付部材を備えたEA材の平面図であり、第3図(b)は、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造の断面図である。なお、第3図(a)は、EA材をドアトリムと反対側(即ち第3図(b)における上方)から見た図である。第3図(b)は、第3図(a)のB−B線に沿う断面にて図示されている。
【0029】
EA材1は、第3図(a),(b)の通り、硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂成形体よりなるEA材本体2と、該EA材本体2をドアトリム20に取り付けるための取付部材10とを備えている。取付部材10は、インサート成形によりEA材本体2と一体化されている。取付部材10は、第1図(a)の通り、EA材本体2をドアトリム20に係止するための複数個の係止部11と、これらの係止部11同士を連結した連結部12とを備えている。ドアトリム20のEA材取付面には、これらの係止部11とそれぞれ係合する複数個の被係止部としての係止突起21が設けられている。
【0030】
この実施の形態では、EA材本体2は、第3図(a),(b)の通り、略方形盤状の主体部2aと、該主体部2aの側面からドアトリム20に沿うように側方へ張り出した複数個の張出部2bとを有している。この実施の形態では、第3図(a)における主体部2aの上辺の左端側及び右端側、並びに該主体部2aの下辺の左右方向中間付近の計3箇所にそれぞれ張出部2bが配置されているが、張出部2bの個数及び配置はこれに限定されない。EA材本体2のドアトリム20との対峙面(以下、背面ということがある。)は、主体部2aから各張出部2bまで面一状となっている。各張出部2bの厚さ(EA材本体2のドアトリム20との対峙面と垂直方向(即ち第3図(b)における上下方向)における厚さ。以下、同様。)は、主体部2aの厚さよりも小さいものとなっている。各張出部2bの厚さは、主体部2aの厚さの5〜50%特に8〜40%程度であることが好ましい。なお、EA材1が一般的な市販車のドアトリム20に設けられるものである場合には、主体部2aの厚さは50〜130mm程度とされ、各張出部2bの厚さは10〜20mm程度とされる。なお、EA材本体2の形状や寸法等の構成はこれに限定されない。
【0031】
この実施の形態では、取付部材10は計3個の係止部11を有しており、第3図(a)の通り、これらの係止部11がそれぞれEA材本体2の各張出部2bに配設されている。この実施の形態では、各係止部11は、係止突起21が挿入される挿入穴14を有する略円筒形状の筒部13と、該筒部13の筒軸心線方向の一端側(以下、先端側という。)から放射方向へ外向き鍔状に張り出したフランジ部15とを備えている。挿入穴14は、筒部13をその筒軸心線方向に貫通している。フランジ部15は、該筒部13の先端面と面一状に形成されている。なお、筒部13の筒軸心線方向の他端側(以下、後端側という。)にもフランジ部15が設けられていてもよい。この実施の形態では、該フランジ部15は、円形の平面視形状となっているが、フランジ部15の形状はこれに限定されない。筒部13の筒軸心線方向の長さは、各張出部2bの厚さと同等となっている。各張出部2bにおいて、この係止部11は、筒部13の筒軸心線方向を該張出部2bの厚さ方向とし、且つ筒部13の先端側(即ちフランジ部15側)をドアトリム20と反対側に向けて該張出部2bに埋設されており、該張出部2bの背面に筒部13の後端面が露呈し、該張出部2bのドアトリム20と反対側の面(以下、前面ということがある。)にフランジ部15が露呈している。なお、係止部11の個数や配置、形状等の構成はこれに限定されない。例えば、筒部13の筒軸心線方向の長さは、各張出部2bの厚さよりも小さくてもよい。なお、前述の特開2005−207524のクリップ100を、一般的な市販車のドアトリム20にEA材1を取り付けるための規格品として設計した場合には、通常、筒部103の筒軸心線方向の長さが10mm又は12mm、該筒部103の内径が7mm、各フランジ部104の外径が20mm、各フランジ部104の厚みが1mm程度に設定される。本発明においても、取付部材10を、一般的な市販車のドアトリム20にEA材1を取り付けるためのものとして設計する場合には、各係止部11の筒部13及びフランジ部14の形状や寸法は、それぞれ、この規格品のクリップ100の筒部103及びフランジ部104と同様とされることが好ましい。
【0032】
この実施の形態では、第1図(a)〜(d)の通り、連結部12は、EA材本体2の背面に沿って配設される帯板状の基片部16と、該基片部16からEA材本体2の内方へ向って突設された補強用リブ17とを有する略T字形断面形状となっている。該基片部16は、板面をEA材本体2の背面と略平行方向として配設されている。補強用リブ17は、この帯板状基片部16の幅方向の中央付近を該基片部16の長手方向に延在している。取付部材10を、上記のように規格品のクリップ100に倣って一般的な市販車のドアトリム20にEA材1を取り付けるためのものとして設計する場合には、この基片部16の幅W(第1図(c))は2〜30mm特に5〜20mm程度であることが好ましく、この基片部16の厚さt(第1図(c))は0.3〜3mm特に0.5〜2mm程度であることが好ましい。また、補強用リブ17の基片部16からの突出高さH(第1図(c))は1.5〜15mm特に2〜12mm程度であることが好ましく、この補強用リブ17の幅W(第1図(c))は0.3〜3mm特に0.5〜2mm程度であることが好ましい。
【0033】
この実施の形態では、連結部12は、第1図(a)及び第3図(a)の通り、該基片部16が主体部2aの背面の4辺に沿って該主体部2aの背面を周回するように方形枠状に延在した主体部配置部12aと、各張出部2bの基端付近において該基片部16が該主体部配置部12aから各張出部2bに向ってそれぞれ延出した張出部配置部12bとを有している。各張出部配置部12bの先端側において、該基片部16は各係止部11の筒部13の外周面に連なっている。第1図(b),(c)の通り、該基片部16は、その背面が各係止部11の筒部13の後端面と面一状となるように該筒部13の外周面に連なっている。主体部配置部12aにおいては、補強用リブ17は、該主体部配置部12aの全周にわたって延設されている。各張出部配置部12bの補強用リブ17は、第1図(a)〜(c)の通り、該張出部配置部12bの基端側においては、この主体部配置部12aの補強用リブ17に合流しており、該張出部配置部12bの先端側においては、各係止部11の筒部13の外周面に連なっている。なお、連結部12の構成はこれに限定されない。
【0034】
取付部材10は、例えば合成樹脂の射出成形品よりなる。この取付部材10を構成する材料としては、例えばABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)等が好適であるが、これに限定されない。この実施の形態では、取付部材10は、連結部12と各係止部11とが一体成形されたものとなっているが、取付部材10の構成はこれに限定されない。例えば、連結部12と各係止部11とを別々に成形した後、これらを合体させて取付部材10を製造するようにしてもよい。
【0035】
次に、この取付部材10を備えたEA材1の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、EA材1の製造方法はこれに限定されない。
【0036】
第3図(a)のEA材成形用金型(以下、単に金型と呼ぶことがある。)40は、上型41と、下型42とを備えている。この実施の形態では、該EA材成形用金型40内において、EA材本体2は、ドアトリム20との対峙面を上向きにして成形される。この実施の形態では、下型41のキャビティ面には、EA材本体2の主体部2aを成形するための主体部成形用凹部44と、各張出部2bを成形するための複数個(この実施の形態では3個)の張出部成形用凹部45とが設けられている。各張出部成形用凹部45は、主体部成形用凹部44よりも深さが小さいものとなっている。この実施の形態では、各張出部成形用凹部45の底面から、取付部材10の各係止部11に係合する取付部材係合部としての係合突起43が突設されている。これらの係合突起43が取付部材10の各係止部11の挿入穴14にそれぞれ挿入されることにより、取付部材10が下型42内に保持される。
【0037】
各張出部成形用凹部45の底面からの係合突起43の起立高さは、第2図(a),(b)の通り、各係止部11の筒部13の先端面(即ちフランジ部15)が該張出部成形用凹部45の底面に当接するまで係合突起43を挿入穴14に挿入した状態において、該係合突起43の先端面(上端面)が筒部13の後端面と面一状となる(即ち筒部13の筒軸心線方向の長さと同等である)か又は該筒部13の後端面から若干(好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.5mm程度)挿入穴14内に後退する(即ち筒部13の筒軸心線方向の長さよりも短い)大きさとなっていることが好ましい。各係合突起43に取付部材10の各係止部11を係合させて上型41と下型42とを型締めしたときには、各係止部11の筒部13の後端面が上型41のキャビティ面に実質的に密着する(筒部13の後端面と上型41のキャビティ面との間に好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.3mm程度の隙間があく)ようになっている。各係合突起43の太さは、挿入穴14の内径と同等となっているか、それよりも若干(好ましくは0.1〜0.8mm特に0.3〜0.6mm程度)細くなっており、各係合突起43を各挿入穴14に挿入可能であり、且つ各係合突起43を各挿入穴14に挿入した状態において、各係合突起43の外周面が実質的に各挿入穴14の内周面に密着するようになっている。なお、EA材成形用金型40の構成はこれに限定されない。
【0038】
EA材1を製造する場合には、まず、上型41と下型42とを型開きした状態において、第2図(a),(b)の通り各係止部11の筒部13の先端側(即ちフランジ部15側)を下向きにして各係合突起43を各係止部11の挿入穴14に挿入し、取付部材10を下型42内に取り付ける。その後、下型42内にEA材本体2の発泡合成樹脂原料を注入し、上型41と下型42とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。この発泡合成樹脂は、下型42のキャビティ底面から上型41のキャビティ天井面まで膨張して主体部成形用凹部44内及び各張出部成形用凹部45内を充填する。これにより、EA材本体2が成形される。該主体部成形用凹部44内を充填した発泡合成樹脂によりEA材本体2の主体部2aが成形され、各張出部成形用凹部45内を充填した発泡合成樹脂により、該主体部2aから側方へ張り出した3個の張出部2bが成形される。また、この際、取付部材10の各係止部11の筒部13とフランジ部14の背面側、並びに連結部12の補強用リブ17及び基片部16の前面側が該発泡合成樹脂中に埋没することにより、取付部材10がEA材本体2と一体化される。連結部12のうち主体部配置部12aが主体部2aに配設され、各張出部配置部12bが各張出部2bから主体部2aにかけて配設されている。
【0039】
この発泡合成樹脂が硬化した後、上型41と下型42とを型開きしてEA材本体2及び取付部材10を脱型する。取付部材10の各係止部11は、各々のフランジ部15が該EA材本体2の各張出部2bの前面に露出し、各々の筒部13の後端面が各張出部2bの背面に露出したものとなっている。このフランジ部15及び筒部13の後端面の中央に挿入穴14が開口している。脱型後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、EA材1が完成する。
【0040】
次に、このEA材1のドアトリム20への取付構造について説明する。
【0041】
ドアトリム20のEA材取付面には、EA材1と一体化された取付部材10の各係止部11とそれぞれ対応する位置関係にて、複数個(この実施の形態では3個)の被係止部としての係止突起21が設けられている。この係止突起21は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂よりなる。
【0042】
このEA材1をドアトリム20に取り付ける場合には、第3図(b)の通り、各係止突起21を取付部材10の各係止部11の挿入穴14に差し込んでEA材1をドアトリム20のEA材取付面に重ねる。その後、各係止突起21の先端に溶着治具(図示略)を押し当て、第3図(b)の通り各係止突起21の先端を略円盤状に拡径させてフランジ状押さえ部21aを形成する。これにより、EA材1がドアトリム20に固定される。
【0043】
[取付部材10の作用効果]
本発明の取付部材10は、ドアトリム20に設けられた係止突起21と係合する係止部11を複数個有しており、これらの係止部11同士が連結部12によって連結されたものとなっている。そのため、この取付部材10を用いてEA材1を製造する場合には、係止部11を1個だけ有した従来の取付部材を用いた場合に比べて、EA材成形用金型40に取り付けるべき取付部材10の個数を少なくすることが可能である。この実施の形態では、1個の取付部材10が、EA材本体2の3箇所の張出部2bにそれぞれ配設される係止部11を3個全て備えているため、この1個の取付部材10をEA材成形用金型40に取り付けるだけでよい。これにより、EA材1の製造作業を簡略化することが可能となる。また、この取付部材10にあっては、係止部11同士が連結部12によって連結されているため、各係止部11が別々にEA材本体2にインサートされる場合に比べて、該係止部11同士の間のEA材本体2の強度を向上させることが可能となる。
【0044】
この実施の形態では、連結部12に補強用リブ17が設けられている。そのため、連結部12を高強度とすることができる。また、この取付部材10をEA材本体2に埋設することにより、EA材本体2の強度を向上させることも可能である。
【0045】
この実施の形態では、連結部12は、EA材本体2の背面に沿って配設される基片部16と、該基片部16からEA材本体2の内方へ向って突設された補強用リブ17とを有する略T字形断面形状となっているので、連結部12を、EA材本体2の背面と垂直方向の荷重に対し十分な強度を有するように構成することが可能である。
【0046】
この実施の形態では、補強用リブ17は、各係止部11に連なっているので、各係止部11と連結部12との連結強度を向上させることが可能である。
【0047】
かかる本発明の取付部材10を備えたEA材1にあっては、係止部11を1個だけ有した取付部材を複数個備えてなる従来品に比べて、EA材本体2にインサートされる取付部材10の個数が少なくて済む。特に、この実施の形態では、1個の取付部材10が、EA材本体2の3箇所の張出部2bにそれぞれ配設される係止部11を3個全て備えているため、EA材本体2にこの取付部材10を1個インサートするだけで済む。そのため、比較的簡易な製造作業にて製造することが可能である。また、この取付部材10は、係止部11同士が連結部12によって連結されているため、本発明のEA材1は、各係止部11が別々にEA材本体2にインサートされたものに比べて、該係止部11同士の間のEA材本体2の強度が高くなるように構成することが可能である。
【0048】
この実施の形態では、EA材本体2は、主体部2aと、該主体部2aからドアトリム20に沿うように該主体部2aの外方へ張り出した複数個の張出部2bとを有した形状となっており、これらの張出部2bにそれぞれ取付部材10の係止部11が配設されている。EA材本体2がこのような形状となっていると、各係止部11が取付部材20の各係止突起21と係合した状態において該EA材本体2に荷重が加えられた場合には、各張出部2bの基端部に応力が集中する可能性がある。この実施の形態では、これらの係止部11同士が連結部12によって連結されており、この連結部12が各張出部2bから主体部2aにかけて延在しているため、各張出部2bの基端部がこの連結部12によって補強され、耐久性が高いものとなっている。
【0049】
本発明のEA材1の取付構造にあっては、ドアトリム20の複数個の係止突起21をそれぞれ取付部材10の各係止部11と係合させることにより、EA材1がドアトリム20に取り付けられる。本発明では、これらの係止部11同士は連結部12によって連結されているので、EA材本体2に加えられた荷重がこれらの係止部11に広く分散され、局所的に応力が集中することが防止ないし緩和される。
【0050】
[取付部材の連結部の別の構成例]
第4図及び第5図は、それぞれ、取付部材の係止部同士を連結した連結部の別の構成例を示す平面図である。
【0051】
上記の実施の形態における取付部材10にあっては、連結部12が、EA材本体2の主体部2aの背面の4辺に沿って該主体部2aの背面を周回するように方形枠状に延在した主体部配置部12aと、EA材本体2の各張出部2bの基端付近において該主体部配置部12aから各張出部2bに向ってそれぞれ延出した張出部配置部12bとを有した形状となっているが、取付部材の形状はこれに限定されない。例えば、第4図の取付部材10Aのように、連結部12の主体部配置部12aは、EA材本体2の主体部2aの背面をその中央部から周縁部近傍まで覆う板状であってもよい。また、第5図の取付部材10Bのように、連結部12の主体部配置部12aは、主体部2aの背面の中央付近から各張出部2bに向って放射状に枝分かれした形状であってもよい。第4,5図の取付部材10A,10Bのその他の構成は、第1〜3図の取付部材10と同様であり、第4,5図において第1〜3図と同一符号は同一部分を示している。なお、図示の形状はあくまで一例であり、連結部12は、図示以外の形状であってもよい。
【0052】
[取付部材の係止部の別の構成例]
上記の実施の形態では、各係止部11の筒部13の先端側にのみフランジ部15が設けられているが、筒部13の後端側にもフランジ部が設けられてもよい。
【0053】
第6図は、このように構成された取付部材の係止部の断面図である。なお、第6図は、第1図(c)と同様部分の断面を示している。この実施の形態では、筒部13の後端側にも、該筒部13の外周面から放射方向へ外向き鍔状に張り出すフランジ部18が設けられている。この実施の形態では、この筒部13の後端側のフランジ部18は、該筒部13の先端側のフランジ部15と同一の形状及び大きさ(外径及び厚さ)となっているが、両者の形状や大きさは異なっていてもよい。この実施の形態における取付部材10のその他の構成は、前述の実施の形態と同様であり、第6図において第1図と同一符号は同一部分を示している。
【0054】
図示は省略するが、この実施の形態では、各係止部11は、筒部13、フランジ部15の背面側及びフランジ部18の前面側が各張出部2bに埋設される。
【0055】
なお、係止部11は、筒部13の後端側にのみフランジ部18が設けられた構成であってもよい。本発明では、フランジ部15,18は省略されてもよい。
【0056】
[EA材本体の張出部の別の構成例]
上記の各実施の形態では、EA材本体2の各張出部2bの厚さは、係止部11の筒部13の筒軸心線方向の長さと同等となっているが、これらは同等でなくてもよい。例えば、第7図及び第8図のように、EA材本体2の各張出部2bの厚さは筒部13の筒軸心線方向の長さよりも大きくてもよい。
【0057】
第7図(a)は、張出部2bの厚さが筒部13の筒軸心線方向の長さよりも大きい場合のEA材本体2の構成例を示す断面図であり、第7図(b)は、このEA材本体2を成形するためのEA材成形用金型40の要部断面図である。
【0058】
この実施の形態では、EA材本体2の各張出部2bの背面側に凹部2cが設けられており、各張出部2bにおいて、この凹部2cの底面と該張出部2bの前面との間に取付部材10の各係止部11が埋設されている。即ち、この実施の形態では、各張出部2bの厚さは、実質的に、各係止部11の筒部13の筒軸心線方向の長さと凹部2cの深さとを合計した大きさとなっている。
【0059】
この実施の形態では、各張出部2bにおいて、凹部2cは筒部13と同心状に形成されている。該凹部2cは、奥側ほど(即ち各張出部2bの前面に接近するほど)径が小さくなるテーパ形状となっている。該凹部2cの底面から張出部2cの前面までの距離が筒部13の筒軸心線方向の長さと実質的に同等となっている。この実施の形態では、各係止部11は、第6図の実施の形態と同様に、筒部13の前後両端側にフランジ部15,18がそれぞれ設けられた構成となっている。各張出部2bにおいて、各係止部11は、筒部13の先端側のフランジ部15が該張出部2bの前面に露出し、後端側のフランジ部18が凹部2cの底面に露出するように埋設されている。この実施の形態では、凹部2cの底面の直径は、挿入穴14の内径よりも大きく且つフランジ部18の外径よりも小さいものとなっている。なお、凹部2cの配置、形状及び大きさはこれに限定されない。例えば、凹部2cの底面の直径はフランジ部18の外径と同等であってもよく、フランジ部18の外径よりも大きくてもよい。また、取付部材10の係止部11は、第1図のように筒部13の前端側にのみフランジ部15が設けられた構成であってもよく、あるいはフランジ部15,18が省略された構成であってもよい。
【0060】
第7図(b)は、この凹部2c付きEA材本体2を成形するための発泡成形用金型40の張出部成形用凹部45付近の拡大断面図である。この実施の形態でも、下型42の各張出部成形用凹部45の底面から、それぞれ、取付部材10の各係止部11に係合する係合突起43が突設されている。張出部成形用凹部45の底面からの係合突起43の突出高さは、実質的に、各係止部11の筒部13の筒軸心線方向の長さと同等か、それよりも若干(好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.5mm程度)短いものとなっている。上型41のキャビティ面からは、凹部2cを形成するための凹部形成用凸部46が突設されている。この実施の形態では、各張出部成形用凹部45の深さは、この凹部形成用凸部46の突出高さ分だけ第2図よりも深くなっている(即ち、実質的に、この凹部形成用凸部46の突出高さ分だけ第1図よりも厚さの大きい張出部2bが成形される)。この凹部形成用凸部46の外形は、実質的に、凹部2cの内部形状と合致する形状となっている。即ち、この実施の形態では、該凹部形成用凸部46は、先端(下端)側ほど直径が小さくなる切頭円錐形状となっている。この凹部形成用凸部46は、下型42の張出部成形用凹部45と同数個設けられており、上型41と下型42とを型締めしたときに、それぞれ下型42の各張出部成形用凹部45内に配置され、その先端面(下端面)が係合突起43の先端面(上端面)と対峙するようになっている。この際、各凹部形成用凸部46は、各係合突起43と同軸状に配置される。第7図(a)の通り、この型締め状態において、各凹部形成用凸部46の先端面は、各係合突起43に係合した係止部11の後端側のフランジ部18の背面に密着するか、又は若干(好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.5mm程度)の隙間をあけて該フランジ部18の背面に対峙する。
【0061】
この実施の形態における取付部材10、EA材本体2及びEA材成形用金型40のその他の構成は前述の実施の形態と同様であり、第7図(a),(b)において第1〜3図と同一符号は同一部分を示している。
【0062】
上記の凹部形成用凸部46付きEA材成形用金型40を用いたEA材1の製造方法は、前述の実施の形態と同様である。この実施の形態では、各凹部形成用凸部46の突出高さ分だけ第1図よりも厚さの大きい張出部2bが成形され、この凹部形成用凸部46により、各張出部2bの背面に凹部2cが形成される。そして、前述の通り、各係止部11の先端側のフランジ部15が各張出部2bの前面に露出し、後端側のフランジ部18が凹部2cの底面に露出したものとなる。
【0063】
なお、この実施の形態では各張出部2bの背面に凹部2cが設けられているが、各張出部2bの前面に凹部が設けられてもよい。
【0064】
第8図(a)は、張出部2bの厚さが筒部13の筒軸心線方向の長さよりも大きい場合のEA材本体2のさらに別の構成例を示す断面図であり、第8図(b)は、このEA材本体2を成形するためのEA材成形用金型の40の要部断面図である。
【0065】
この実施の形態では、各張出部2bの背面及び前面の双方に凹部2c,2dが設けられており、各張出部2bにおいて、これらの凹部2c,2dの底面同士の間に取付部材10の各係止部11が埋設されている。即ち、この実施の形態では、各張出部2bの厚さは、実質的に、各係止部11の筒部13の筒軸心線方向の長さとこれらの凹部2c,2dの深さとを合計した大きさとなっている。
【0066】
この実施の形態では、各張出部2bにおいて、凹部2c,2dはそれぞれ筒部13と同心状に形成されている。各張出部2bの背面側の凹部2cの構成は、前述の第7図の実施の形態と同様である。この実施の形態では、各張出部2bの前面側の凹部2dは、奥側ほど(即ち各張出部2bの背面に接近するほど)径が小さくなるテーパ形状となっている。これらの凹部2c,2dの底面同士の間隔が筒部13の筒軸心線方向の長さと実質的に同等となっている。この実施の形態でも、各係止部11は、第6図の実施の形態と同様に、筒部13の前後両端側にフランジ部15,18がそれぞれ設けられた構成となっている。各張出部2bにおいて、各係止部11は、筒部13の先端側のフランジ部15が凹部2dの底面に露出し、後端側のフランジ部18が凹部2cの底面に露出するように埋設されている。この実施の形態では、凹部2dの底面の直径は、フランジ部15の外径よりも大きなものとなっている。なお、各凹部2c,2dの配置、形状及び大きさ等の構成はこれに限定されない。例えば、凹部2dの底面の直径はフランジ部15の外径と同等であってもよく、フランジ部15の外径よりも小さくてもよい。また、取付部材10の係止部11は、第1図のように筒部13の前端側にのみフランジ部15が設けられた構成であってもよく、あるいはフランジ部15,18が省略された構成であってもよい。
【0067】
第8図(b)は、この凹部2c,2d付きEA材本体2を成形するための発泡成形用金型40の張出部成形用凹部45付近の拡大断面図である。この実施の形態では、各張出部成形用凹部45の底面に、それぞれ、凹部2dを形成するための凹部形成用凸部47が設けられている。この凹部形成用凸部47の外形は、実質的に、凹部2dの内部形状と合致する形状となっている。即ち、この実施の形態では、該凹部形成用凸部47は、先端(上端)側ほど直径が小さくなる切頭円錐形状となっている。この実施の形態では、各凹部形成用凸部47の上面の中心から、それぞれ、取付部材10の各係止部11に係合する係合突起43が突設されている。張出部成形用凹部45の底面からの係合突起43の突出高さは、実質的に、各係止部11の筒部13の筒軸心線方向の長さと同等か、それよりも若干(好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.5mm程度)短いものとなっている。上型41のキャビティ面からは、凹部2cを形成するための凹部形成用凸部46が突設されている。この凹部形成用凸部46の構成は、前述の第7図の実施の形態と同様である。なお、各凹部2c,2dの配置、形状及び大きさ等の構成はこれに限定されない。
【0068】
この実施の形態では、各張出部成形用凹部45の深さは、これらの凹部形成用凸部46,47の突出高さ分だけ第2図よりも深くなっている(即ち、実質的に、これらの凹部形成用凸部46,47の突出高さ分だけ第1図よりも厚さの大きい張出部2bが成形される)。
【0069】
上型41と下型42とを型締めしたときには、上型41の各凹部形成用凸部46が下型42の各張出部成形用凹部45内に配置され、その先端面(下端面)が係合突起43の先端面(上端面)と対峙するようになっている。この際、各凹部形成用凸部46は、各係合突起43と同軸状に配置される。この型締め状態において、各凹部形成用凸部46の先端面は、各係合突起43に係合した係止部11の後端側のフランジ部18の背面に密着するか、又は若干(好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.5mm程度)の隙間をあけて該フランジ部18の背面に対峙する。
【0070】
この実施の形態における取付部材10、EA材本体2及びEA材成形用金型40のその他の構成は前述の実施の形態と同様であり、第8図(a),(b)において第1〜3図及び第7図と同一符号は同一部分を示している。
【0071】
上記の凹部形成用凸部46,47付きEA材成形用金型40を用いたEA材1の製造方法は、前述の実施の形態と同様である。この実施の形態では、各凹部形成用凸部46,47の突出高さ分だけ第1図よりも厚さの大きい張出部2bが成形され、これらの凹部形成用凸部46,47により、各張出部2bの背面及び前面にそれぞれ凹部2c,2dが形成される。そして、前述の通り、各係止部11の先端側のフランジ部15が凹部2dの底面に露出し、後端側のフランジ部18が凹部2cの底面に露出したものとなる。
【0072】
なお、図示は省略するが、第7,8図とは逆に、EA材本体2の各張出部2bの厚さが筒部13の筒軸心線方向の長さよりも小さくてもよい。
【0073】
[取付部材の発泡成形用金型への係合構造(取付部材係合部)の別の構成例]
上記の各実施の形態では、下型42に設けられた各張出部成形用凹部45の底面から、取付部材10の各係止部11に係合する取付部材係合部としての係合突起43が突設されているが、取付部材係合部(係合突起43)の配置はこれに限定されない。例えば、第9図のように、上型41に取付部材係合部(係合突起43)が設けられてもよい。第9図(a)は、このように上型41に取付部材係合部が設けられたEA材成形用金型40の縦断面図であり、第9図(b)は、このEA材成形用金型40の取付部材係合部付近における上型の拡大断面図である。
【0074】
この実施の形態では、上型41のキャビティ面から取付部材係合部としての係合突起43が突設されている。上型41のキャビティ面には、取付部材10の各係止部11の配置と対応する位置関係にて複数個の係合突起43が配設されている。これらの係合突起43は、それぞれ、第9図(a)の通り、上型41と下型42とを型締めしたときに、下型42の各張出部成形用凹部45内に配置され、その先端面(下端面)が該張出部成形用凹部45の底面に対峙する。
【0075】
上型41のキャビティ面からの係合突起43の起立高さは、第9図(a),(b)の通り、各係止部11の筒部13の筒軸心線方向の長さと同等か、それよりも若干(好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.5mm程度)短いものとなっている。各係合突起43に取付部材10の各係止部11を係合させて上型41と下型42とを型締めしたときには、各係止部11の筒部13の先端面(即ちフランジ部15)が下型42の各張出部成形用凹部45の底面に実質的に密着する(筒部13の先端面と張出部成形用凹部45の底面との間に好ましくは0.1〜1mm特に0.1〜0.3mm程度の隙間があく)ようになっている。
【0076】
このEA材成形用金型40のその他の構成は前述の実施の形態と同様であり、第9図(a),(b)において第2図と同一符号は同一部分を示している。
【0077】
この実施の形態では、EA材1を製造する場合には、まず、上型41と下型42とを型開きした状態において、第9図(a),(b)の通り各係止部11の筒部13の後端側を上型41側にして各係合突起43を各係止部11の挿入穴14に挿入し、取付部材10を上型41のキャビティ面に取り付ける。その後、下型42内にEA材本体2の発泡合成樹脂原料を注入し、上型41と下型42とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。その後の工程は、前述の実施の形態と同様である。
【0078】
[取付部材の係止部と被取付部材の被係止部との係合構造の別の構成例]
上記の実施の形態では、ドアトリム20から突設された各係止突起21を取付部材10の各係止部11の挿入穴14に挿入した後、この係止突起21の先端部に溶着治具を押し付けて拡径させることにより、EA材1をドアトリム20に固定しているが、本発明における取付部材の係止部と被取付部材の被係止部との係合構造はこれに限定されない。
【0079】
第10図(a)〜(c)は、取付部材の係止部と被取付部材の被係止部との係合構造の別の構成例を示す断面図である。なお、第10図(a)は、別の構成例に係る取付部材10Cの係止部11Aの第1図(c)と同様部分の断面図であり、第10図(b)は第10図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第10図(c)は、この係止部11Aと、別の構成例に係るドアトリム20Aの被係止部としての係止突起21Aとが係合した状態を示す、第10図(b)と同様部分の断面図である。
【0080】
この実施の形態における取付部材10Cは、第10図(a),(b)に示す係止部11Aを複数個備えており、これらの係止部11A同士が連結部12によって連結されている。ドアトリム20Aには、この取付部材10Cの各係止部11Aと弾性的に係合するように構成された複数個の係止突起21Aが設けられている。
【0081】
第10図(c)の通り、この係止突起21Aは、ドアトリム20AのEA材取付面から立設された1対の突出部22と、これらの突出部22から側方(各突出部22の該EA材取付面からの突出方向と直交方向)へ張り出す爪部23とを有している。これらの突出部22は、相互間に所定の間隔をあけて配置されている。これらの突出部22は、弾性を有した合成樹脂により形成されており、該突出部22,22同士は互いに接近方向に弾性的に変形可能となっている。なお、この実施の形態では、該突出部22はドアトリム20Aと同一の材料により一体に形成されている。これらの突出部22の側面からそれぞれ反対方向へ爪部23が突設されている。各爪部23は、各突出部22の先端側ほど該突出部22の側面からの張り出し高さが小さくなるテーパ形状となっている。
【0082】
この実施の形態では、ドアトリム20AのEA材取付面からの各突出部22の突出高さは、第10図(c)の通り、係止部11Aの筒部13の筒軸心線方向の長さと実質的に同一か、それよりも若干小さいものとなっている。具体的には、各突出部22の突出高さは、筒部13の筒軸心線方向の長さの85〜95%特に85〜90%程度であることが好ましい。これにより、筒部13の後端側がドアトリム20AのEA材取付面に当接するまで各突出部22を係止部11Aの挿入穴14に挿入した状態において、各突出部22の先端が該筒部13の先端面から突出しないようになっている。
【0083】
このドアトリム20Aのその他の構成は、前述の実施の形態のドアトリム20と同様である。
【0084】
この実施の形態では、取付部材10Cの各係止部11Aは、挿入穴14の内周面に、この係止突起21Aの各爪部23が係合する係合部19が設けられたものとなっている。この実施の形態では、該係合部19は、筒部13をその外周側から挿入穴14まで貫通した貫通孔よりなる。即ち、挿入穴14に係止突起21Aが挿入されると、該係止突起21Aの爪部23がこの貫通孔に入り込んでこの貫通孔の縁部に係合するようになる。なお、係合部19の構成はこれに限定されない。例えば、係合部19は、挿入穴14の内周面から該挿入穴14の内方へ張り出した凸段部や、該挿入穴14の内周面に凹設された凹段部等により形成されてもよい。
【0085】
この実施の形態では、挿入穴14の内周面に、その周方向に間隔をおいて2個の係合部19(貫通孔)が設けられている。各係合部19を構成する貫通孔は、それぞれ、筒部13をその直径方向に貫通しており、且つこれらの貫通孔同士は、筒部13の軸心を挟んで正対するように配設されている。なお、係合部19の個数や配置はこれに限定されない。この実施の形態では、第10図(a)の通り、筒部13の内周側から見た各係合部19の形状(各係合部19を構成する貫通孔の開口形状)は、直交する2辺が筒部13の筒軸心線方向及びこれと直交方向に延在した略正方形状となっているが、係合部19の形状はこれに限定されない。係合部19の形状は、係止突起21Aの爪部23の形状に応じて種々の形状とすることができる。あるいは、例えば取付部材10Cの取付誤差を吸収するために、この係合部19を構成する貫通孔を、筒部13の周方向に長い長穴状としてもよい。
【0086】
この実施の形態では、筒部13の後端側にも、該筒部13の外周面から放射方向へ外向き鍔状に張り出すフランジ部18が設けられている。各係止部11Aは、第10図(c)の通り、筒部13の先端側のフランジ部15、該筒部13、及び該筒部13の後端側のフランジ部18の前面側がEA材本体2に埋設されるようにして該EA材本体2と一体化されている。この実施の形態では、EA材本体2は、その主体部から側方へ張り出す張出部2bを備えておらず、各係止部11Aは、EA材本体2の主体部に埋設されている。このEA材本体2の主体部の背面の所定位置に各係止部11Aが埋設されて各々のフランジ部18が露出しており、それらの中央にそれぞれ挿入穴14が開口している。
【0087】
この係止部11Aを備えた取付部材10Cのその他の構成は、前述の各実施の形態における取付部材10,10A又は10Bと同様であり、第10図(a)〜(c)において第1〜5図と同一符号は同一部分を示している。
【0088】
この取付部材10CがEA材本体2と一体化されてなるEA材1をドアトリム20Aに取り付ける場合、該ドアトリム20Aの各係止突起21Aを対応するEA材1の各係止部11Aの挿入穴14に挿入しつつ、EA材1をドアトリム20Aに押し付ける。この際、各係止突起21Aにおいては、各爪部23が挿通穴14の内周面に押し付けられることにより、突出部22,22同士が接近方向に撓みながら該挿入穴14に差し込まれる。そして、第10図(c)の通り、各係止部11Aの後端側のフランジ部18がドアトリム20AのEA材取付面に当接するまで突出部22,22が挿入穴14に差し込まれると、各爪部23が各係合部19(貫通孔)に達する。これにより、突出部22,22同士を接近方向に撓ませていた力が解除されて該突出部22,22がそれぞれ元形状に復帰し、これにより各爪部23が各係合部19(貫通孔の縁部)に係合する。これにより、各係止部11Aが各係止突起21Aに係止され、EA材1がドアトリム20Aに取り付けられる。
【0089】
この実施の形態にあっては、EA材1をドアトリム20Aに取り付ける場合には、各係止突起21Aを各係止部11Aの挿入穴14に挿入しつつEA材1をドアトリム20Aに押し付けるだけでよいため、EA材1を容易にドアトリム20Aに取り付けることができる。
【0090】
また、この実施の形態では、各係止突起21Aを各係止部11Aの挿入穴14に挿入した後、各係止突起21Aの先端に押さえ部21aを形成する必要がないので、各係止部11Aの前面側は、EA材本体2の表面に露出させなくてもよい。これにより、EA材本体2に、各係止部11Aの筒部13の長さと同等の厚さを有する張出部2bを複数個設けてこれらの張出部2bにそれぞれ各係止部11Aを配設する必要がなく、各係止部11AをEA材本体2の主体部に配設することができるので、各係止部11Aの配置の自由度が向上すると共に、EA材1を設置するのに要するスペースが比較的狭くても済む。
【0091】
この実施の形態のその他の作用効果は、前述の第1〜3図の実施の形態と同様である。
【0092】
[その他の構成]
上記の各実施の形態では、ドアトリムから被係止部として複数個の係止突起が突設され、取付部材の各係止部にはそれぞれこの係止突起が係合する挿入穴が設けられているが、これとは逆に、取付部材の各係止部からそれぞれ係止突起が突設され、ドアトリムにはこの係止突起がそれぞれ係合する複数個の挿入穴が設けられてもよい。
【0093】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
【0094】
上記の実施の形態は、EA材及びその取付用取付部材、並びにそのドアトリムへの取付構造への本発明の適用例を示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材及びその取付用取付部材、並びにその取付構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 EA材(発泡成形部材)
2 EA材本体(発泡成形体)
10,10A〜10C 取付部材
11,11A 係止部
12 連結部
13 筒部
14 挿入穴
15 フランジ部
16 基片部
17 補強用リブ
18 フランジ部
19 係合部
20,20A ドアトリム
21,21A 係止突起(被係止部)
22 突出部
23 爪部
40 EA材成形用金型
43 係合突起(取付部材係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形体を被取付部材に取り付けるための取付部材であって、
該被取付部材に設けられた被係止部と係合する係止部を備えており、
該発泡成形体とインサート成形により一体化される発泡成形体の取付部材において、
該取付部材は、
複数個の該係止部と、
該係止部同士を連結した連結部と
を備えていることを特徴とする発泡成形体の取付部材。
【請求項2】
請求項1において、前記連結部に補強用リブが設けられていることを特徴とする発泡成形体の取付部材。
【請求項3】
請求項2において、前記連結部は、前記発泡成形体の前記被取付部材との対峙面に沿って配設される基片部を有しており、
該基片部から該対峙面と直交方向に前記補強用リブが突設されていることを特徴とする発泡成形体の取付部材。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記補強用リブは、前記係止部にそれぞれ連なっていることを特徴とする発泡成形体の取付部材。
【請求項5】
発泡成形体と、
該発泡成形体とインサート成形により一体化された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡成形体の取付部材と
を有していることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項6】
請求項5において、前記発泡成形体は、主体部と、該主体部から被取付部材に沿うように該主体部の外方へ張り出した複数個の張出部とを有しており、
該張出部にそれぞれ前記取付部材の前記係止部が配設されており、各張出部から該主体部にかけて前記連結部が延在していることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の発泡成形部材を製造するための方法であって、
発泡成形体成形用金型の内面に設けられた複数個の取付部材係合部にそれぞれ前記取付部材の前記係止部を係合させて該取付部材を該発泡成形体成形用金型の内面に設置する取付部材設置工程と、
該取付部材設置工程の後、該発泡成形体成形用金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程と
を有していることを特徴とする発泡成形部材の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の発泡成形部材を被取付部材に取り付けた構造であって、
該被取付部材に設けられた複数個の被係止部がそれぞれ前記取付部材の前記係止部と係合したことにより、該発泡成形部材が該被取付部材に取り付けられていることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−52643(P2012−52643A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197845(P2010−197845)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】