説明

相互接続構造およびこれを形成する方法(細い相互接続開口のための導電性構造)

【課題】電気的抵抗が低い相互接続構造、および、かかる相互接続構造を形成する方法を提供する。
【解決手段】相互接続構造は、少なくとも1つの開口を含む誘電物質を含む。少なくとも1つの開口内には、任意のバリア拡散層、結晶粒成長促進層、凝集めっきシード層、任意の第2のめっきシード層、および導電性構造が配置される。典型的にはCuである金属含有導電性物質を含む導電性構造は、バンブー微細構造を有し、平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きい。いくつかの実施形態では、導電性構造は、(111)結晶方位を有する導電性結晶粒を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体構造体およびこれを製造する方法に関する。更に具体的には、本発明は、グレイン・サイズの大きい導電性構造を用いて、導電性ラインまたはバイアあるいはその両方、特に75nm未満のフィーチャ・サイズを有する細い導電性ラインまたはバイアあるいはその両方の抵抗率を低下させる、シングル・ダマシンまたはデュアル・ダマシン・タイプの相互接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスは、半導体基板上に製造された集積回路を形成する複数の回路を含む。通常、基板の表面上に分散した回路要素を接続するために、信号経路の複雑なネットワークをルーティングする。デバイス全体にわたってこれらの信号を効率的にルーティングするには、例えばシングル・ダマシンまたはデュアル・ダマシン配線構造等の多レベルまたは多層機構の形成が必要である。配線構造は典型的に銅(Cu)を含む。これは、Cuベースの相互接続では、アルミニウム(Al)・ベースの相互接続に比べて、複雑な半導体チップ上の多数のトランジスタ間での信号送信が高速であるからである。
【0003】
典型的な相互接続構造内では、金属バイアは半導体基板に対して垂直に延在し、金属ラインは半導体基板に対して平行に延在する。今日のIC製品チップにおいては、金属ラインおよび金属バイア(例えば導電性フィーチャ)を、二酸化シリコンよりも誘電率が低い誘電物質に埋め込むことによって、信号速度を更に向上させ、隣接する金属ラインでの信号(「クロストーク」として知られる)を軽減させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の相互接続構造における1つの大きな問題は、導電性領域内に多数のエレクトロマイグレーション経路があるために、導電性領域内の導電性物質のエレクトロマイグレーション抵抗力が低いことである。経路が多数あるのは、導電性物質の微細構造および平均グレイン・サイズの結果であると考えられている。当業者に既知であるように、エレクトロマイグレーションは主に、(1)導電性物質と誘電キャップとの間の界面拡散、および(2)導電性物質の結晶粒界に沿ったバルク拡散によって引き起こされる。かかるデバイスのスケーリングのために、今後の半導体技術においてエレクトロマイグレーションの問題は深刻になると予想されている。
【0005】
本発明において対処する1つの問題は、導電性ラインおよびバイアについて見られる高い電気抵抗率である。これは、導電性ラインまたはバイアあるいはその両方のフィーチャ・サイズが75nm未満に縮小すると顕著な問題となる。この高抵抗の大部分は、例えば銅(Cu)フィーチャ等の導電性フィーチャにおける小さいグレイン・サイズ(約0.02ミクロン以下)に起因する可能性がある。結晶粒界の拡散によって、導電性金属における抵抗が上昇することがある。導電性フィーチャ内の導電性金属の小さいグレイン・サイズは、これを形成する際に用いられた以前のプロセス技術によって生じている。もっと大きい寸法の世代において観察された結晶粒成長は、極めて小さいフィーチャでは見られない。表層(overburden)からの粒界運動は小さいフィーチャには拡大しないからである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、従来技術の相互接続構造に見られた高い電気的抵抗を大幅に低減させるか、場合によっては除去する相互接続構造を形成する方法が提供される。本発明の一実施形態では、この方法は、誘電物質に少なくとも1つの開口を形成するステップを含む。その後、少なくとも1つの開口内に結晶粒成長促進層を形成する。結晶粒成長促進層を形成した後、結晶粒成長促進層の露出表面上に凝集めっきシード層を形成する。凝集めっきシード層は、堆積およびその後のアニールによって形成される。第1のアニールは、少なくとも1つの開口内で堆積されためっきシード層の凝集を引き起こす条件下で実行される。凝集の多くは、構造の上部水平表面上でなく、少なくとも1つの開口内で発生する。第1のアニールの後、少なくとも1つの開口内に導電性構造を形成する。導電性構造の形成は、金属含有導電性物質を堆積し、その後で第2のアニールを行って、金属含有導電性物質の結晶粒を成長させることによって行われる。
【0007】
一実施形態においては、少なくとも1つの開口内で結晶粒成長促進層を形成する前に少なくとも1つの開口内に拡散バリアを形成する。別の実施形態では、凝集めっきシード層を形成するステップと導電性構造を形成するステップとの間に、少なくとも1つの開口内に別のめっきシード層を形成することができる。
【0008】
上述の方法によって、少なくとも1つの開口内に、バンブー微細構造を有し平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きい導電性構造が生成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの開口内の導電性構造は、(111)結晶方位を有する結晶粒を含む。
【0009】
本発明の別の態様においては、電気的抵抗が軽減した相互接続構造が提供される。この相互接続構造は、少なくとも1つの開口を含む誘電物質を含む。少なくとも1つの開口内には、結晶粒成長促進層、結晶粒成長促進層の上面上に位置する凝集めっきシード層、凝集めっきシード層の上面の上に位置する導電性構造が配置される。典型的にはCuである金属含有導電性物質を含む導電性構造は、バンブー微細構造を有し、平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きい。いくつかの実施形態では、導電性構造は、(111)結晶方位を有する導電性結晶粒を含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの開口内に拡散バリアが存在する。拡散バリアは、少なくとも1つの開口を含む誘電物質の露出側壁と結晶粒成長促進層との間に位置する。本発明の更に別の実施形態では、凝集めっきシード層と導電性構造との間に別のめっきシード層が位置している。
【0011】
これより添付図面を参照して一例としてのみ本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に従った相互接続構造を示す図(横断面図)であり、誘電物質に少なくとも1つの開口が設けられた初期段階を示す。
【図2】少なくとも1つの開口内に任意の拡散バリア層を形成した後の図1の相互接続構造を示す図(横断面図)である。
【図3】少なくとも1つの開口内に結晶粒成長促進層を形成した後の図2の相互接続構造を示す図(横断面図)である。
【図4】めっきシード層を形成した後の図3の相互接続構造を示す図(横断面図)である。
【図5】めっきシード層を凝集させる第1のアニールを実行した後の図4の相互接続構造を示す図(横断面図)である。
【図6】少なくとも1つの開口内に導電性構造を形成した後の図5の相互接続構造を示す図(横断面図)である。図示する構造では、右側に閉鎖バイア(closed-via)底部が示されている。
【図7】本発明において形成することができる代替的な相互接続構造を示す図(横断面図)であり、開放バイア(open-via)底部構造を有する相互接続構造を含む。
【図8】本発明において形成することができる代替的な相互接続構造を示す図(横断面図)であり、固定バイア(anchored-via)底部構造を有する相互接続構造を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本発明のいくつかの態様を理解するため、特定の構造、コンポーネント、物質、寸法、処理ステップおよび技法等、多数の具体的な詳細事項を記載する。しかしながら、本発明はこれらの具体的な詳細事項がなくても実施可能であることは当業者には認められよう。他の例では、本発明を曖昧にするのを避けるために、周知の構造または処理ステップについては詳細には記載しない。
【0014】
ある層、領域、または基板としての要素が、別の要素の「上に」または「上方に」あるという場合、これは他の要素の直接上にある可能性があり、または介在する要素が存在することもある。これに対して、ある要素が別の要素の「直接上に」または「直接上方に」あるという場合、介在する要素は存在しない。また、ある要素が別の要素の「下に」または「下方に」あるという場合、これは別の要素の直接下にあるか、もしくは直接下方にある可能性があり、または介在する要素が存在する場合もあることは理解されよう。これに対して、ある要素が別の要素の「直接下に」または「直接下方に」あるという場合、介在する要素は存在しない。
【0015】
これより、以下の説明および本出願の添付図面を参照することにより、本発明の実施形態について更に詳細に記載する。本発明の図面は、本明細書において以下で更に詳細に参照するが、例示的な目的で与えるものであり、このため一定の縮尺どおりに描かれているわけではない。
【0016】
最初に、本発明のいくつかの実施形態において使用可能な初期相互接続構造10を例示する図1を参照する。具体的には、図1に示す初期相互接続構造10は多レベル相互接続を含み、これは誘電キャッピング層14によって部分的に分離された下部相互接続レベル12および上部相互接続レベル16を含む。下部相互接続レベル12は、1つ以上の半導体デバイスを含む半導体基板の上に位置付けることができ、少なくとも1つの導電性フィーチャ(すなわち導電性領域)20を有する第1の誘電物質18を含む。導電性フィーチャ20は、バリア層22によって第1の誘電物質18から分離されている。上部相互接続レベル16は、少なくとも1つの開口が内部に位置付けられた第2の誘電物質24を含む。図1には2つの開口が示されている。すなわち、参照番号26はシングル・ダマシン構造のためのライン開口を示し、参照番号28Aおよび28Bはそれぞれデュアル・ダマシン構造のためのバイア開口およびライン開口を示す。図1は別個のライン開口とバイアおよびラインのための開口とを示すが、本発明は、ライン開口のみが存在する場合、またはバイアおよびラインの組み合わせのための開口が存在する場合も想定する。少なくとも1つの開口のフィーチャ・サイズは様々である場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの開口のフィーチャ・サイズは75nm未満である。
【0017】
図1に示す初期相互接続構造10は、当技術分野において周知の標準的な相互接続処理を用いて形成することができる。例えば、初期相互接続構造10は、基板(図示せず)の表面に第1の誘電物質18を適用することによって形成することができる。図示しない基板は、半導体物質、絶縁性物質、導電性物質、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。基板が半導体物質から構成される場合、Si、SiGe、SiGeC、SiC、Ge合金、GaAs、InAs、InP、および他のIII/VまたはII/VI化合物半導体等のいずれかの半導体を用いることができる。これらの列挙した半導体物質の種類に加えて、本発明は、半導体基板が、例えばSi/SiGe、Si/SiC、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、またはシリコン・ゲルマニウム・オン・インシュレータ(SGOI)等の多層半導体である場合も想定する。
【0018】
基板が絶縁性物質である場合、絶縁性物質は、有機絶縁体、無機絶縁体、または多層を含むそれらの組合せとすることができる。基板が導電性物質である場合、基板は、例えばポリシリコン、元素金属、元素金属の合金、金属シリサイド、金属窒化物、または多層を含むそれらの組み合わせを含むことができる。基板が半導体物質を含む場合、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイス等の1つ以上の半導体デバイスをその上に製造することができる。
【0019】
下部相互接続レベル12の第1の誘電物質18は、無機誘電体または有機誘電体を含むいずれかのレベル間またはレベル内相互接続誘電体を含むことができる。第1の誘電物質18は、多孔性または非多孔性とすることができる。第1の誘電物質18として使用可能な適切な誘電体のいくつかの例は、限定ではないが、SiO、シルセスキオキサン、Si、C、O、およびHの原子を含むCをドーピングした酸化物(すなわちオルガノシリケート)、熱硬化性ポリアリーレン・エーテル、またはそれらの多層を含む。「ポリアリーレン」という言葉は、本出願において、結合、縮合環、または例えば酸素、硫黄、スルホン、スルホキシド、カルボニル等の不活性連結基によって連結されたアリール部または不活性置換アリール部を示すために用いられる。
【0020】
第1の誘電物質18は典型的に約4.0以下の誘電率を有するが、いっそう典型的には誘電率は約2.8以下である。これらの誘電体は一般に、誘電率が4.0よりも高い誘電物質に比べて寄生クロストークが小さい。第1の誘電物質18の厚さは、用いる誘電物質および下部相互接続12内の誘電体の正確な数に応じて変動し得る。典型的に、通常の相互接続構造では、第1の誘電物質18は200nmから450nmの厚さを有する。
【0021】
また、下部相互接続レベル12は、第1の誘電物質18に埋め込まれた(すなわちその内部に位置する)少なくとも1つの導電性フィーチャ20を有する。導電性フィーチャ20は、バリア層22によって第1の誘電物質18から分離された導電性領域を含む。導電性フィーチャ20を形成するには、リソグラフィを実行し(すなわち第1の誘電物質18の表面にフォトレジストを塗布し、フォトレジストを所望の放射パターンに露光し、従来のレジスト現像剤を用いて露光したレジストを現像する)、第1の誘電物質18に開口をエッチングし(ドライ・エッチングまたはウェット・エッチング)、エッチングした領域をバリア層22で充填し、次いで導電性物質で充填して、導電性領域を形成すれば良い。バリア層22は、Ta、TaN、Ti、TiN、Ru、RuN、W、WN、または他の、導電性物質の拡散を防ぐバリアとして機能することができるいずれかの物質を含むことができ、典型的には堆積プロセスによって形成される。この堆積プロセスは例えば、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、プラズマ増強化学気相堆積(PECVD)、物理気相堆積(PVD)、スパッタリング、化学溶液堆積、またはめっき等である。
【0022】
バリア層22の厚さは、堆積プロセスの正確な手段および用いる物質に応じて変動し得る。典型的には、バリア層22は4nmから40nmまでの厚さを有するが、いっそう典型的には厚さは7nmから20nmである。バリア層22の形成後、第1の誘電物質18内の開口の残りの領域を導電性物質で充填して、導電性領域を形成する。導電性領域を形成する際に用いる導電性物質は、例えば、ポリシリコン、導電性金属、少なくとも1つの導電性金属を含む合金、導電性金属シリサイド、またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、導電性領域を形成する際に使用可能な導電性物質は、例えばCu、W、またはAl等の金属含有導電性物質であり、本発明のいくつかの実施形態では、CuまたはCu合金(AlCu等)が好適である。限定ではないが、CVD、PECVD、スパッタリング、化学溶液堆積、またはめっきを含む従来の堆積プロセスを用いて、第1の誘電物質18の残りの開口に導電性物質を充填することができる。堆積の後、例えば化学機械研磨(CMP)等の従来の平坦化プロセスを用いることにより、バリア層22および導電性フィーチャ20の各々の上面が第1の誘電物質18の上面と実質的に同一平面である構造を提供することができる。
【0023】
具体的に図示しないが、本明細書で以下に記載する本発明の方法を用いて、バンブー(bamboo)微細構造を有し平均グレイン・サイズが0.05ミクロンより大きい導電性構造を有する導電性フィーチャ20を提供することができる。「平均グレイン・サイズ」という言葉は、本出願全体を通して、導電性構造の導電性物質の平均グレイン・サイズを示すために用いる。平均グレイン・サイズの測定は、当技術分野において周知である標準的な技法を用いて行う。例えば、研磨しエッチングした標本を顕微鏡下に配置し、ある領域の内部の結晶粒の数を数える。次いで、既知の倍率、結晶粒の数、および調べた面積に基づいて、微細構造内部の平均グレイン・サイズを計算する。
【0024】
少なくとも1つの導電性フィーチャ20を形成した後、例えばCVD、PECVD、化学溶液堆積、または蒸着等の従来の堆積プロセスを用いて、下部相互接続レベル12の表面上に誘電キャッピング層14を形成することができる。いくつかの実施形態では誘電キャッピング層14を省略する。誘電キャッピング層14は、例えばSiC、SiNH、SiO、炭素をドーピングした酸素、窒素および水素をドーピングした炭化シリコンSiC(N,H)、またはそれらの多層等、いずれかの適切な誘電キャッピング物質を含む。キャッピング層14の厚さは、これを形成するために用いる技法および層の物質組成に応じて変動し得る。典型的には、キャッピング層14は15nmから55nmまでの厚さを有するが、もっと典型的には厚さは25nmから45nmである。
【0025】
誘電キャッピング層14が存在する場合はその上部露出表面に、または誘電キャッピング層14が存在しない場合には下部相互接続レベル12の上に直接に、第2の誘電物質24を適用することによって、上部相互接続レベル16を形成する。第2の誘電物質24は、下部相互接続レベル12の第1の誘電物質18のものと同一のまたは異なる誘電物質を含むことができるが、同一であることが好ましい。また、第1の誘電物質18のための処理技法および厚さ範囲を、ここで第2の誘電物質24にも適用可能である。上述のようにリソグラフィおよびエッチングを用いて、第2の誘電物質24に少なくとも1つの開口を形成する。エッチングは、ドライ・エッチング・プロセス、ウェット・エッチング・プロセス、またはそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書では、「ドライ・エッチング」という言葉は、反応性イオン・エッチング、イオン・ビーム・エッチング、プラズマ・エッチング、またはレーザ・アブレーション等のエッチング技法を示すために用いる。図1には2つの開口が示されている。すなわち、参照番号26はシングル・ダマシン構造のためのライン開口を示し、参照番号28Aおよび28Bはそれぞれデュアル・ダマシン構造のためのバイア開口およびライン開口を示す。本発明は、開口26のみまたは開口28Aおよび28Bのみを含む構造も想定することを、ここで再び強調しておく。
【0026】
バイア開口28Aおよびライン開口28Bを形成する例では、相互接続レベル12およびレベル16間の電気的接触を形成するために、エッチング・ステップによって、導電性フィーチャ20の上に位置する誘電キャッピング層14の部分を除去する。
【0027】
第2の誘電物質24の全露出表面(開口内の壁表面を含む)上に任意の拡散バリア30を形成することによって、拡散バリア特性を有する任意の拡散バリア30を設けることができる。これによって得られる任意のバリア層30を含む構造を、例えば図2に示す。任意の拡散バリア30は、バリア層22のものと同一のまたは異なる物質を含む。従って、任意の拡散バリア30は、Ta、TaN、Ti、TiN、Ru、RuN、W、WN、または他の、導電性物質の拡散を防ぐバリアとして機能することができるいずれかの物質を含むことができる。また、これらの物質を組み合わせて多層積層拡散バリアを形成することも想定される。例えば、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、プラズマ増強化学気相堆積(PECVD)、物理気相堆積(PVD)、スパッタリング、化学溶液堆積、またはめっき等の堆積プロセスを用いて、任意の拡散バリア30を形成することができる。
【0028】
任意の拡散バリアが存在する場合、任意の拡散バリア30の厚さは、バリア内の物質層の数、これを形成する際に用いる技法、および拡散バリア自体の物質に応じて変動し得る。典型的に、任意の拡散バリア30は4nmから40nmまでの厚さを有するが、いっそう典型的には厚さは7nmから20nmである。
【0029】
図3は、任意の拡散バリア30の上に結晶粒成長促進層(GGPL)32を形成した後の図2の構造を示す。任意の拡散バリア30が存在しない実施形態においては、GGPL32は、開口の各々を含む第2の誘電物質24の露出表面上に形成される。GGPL32は、平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きい導電性物質の形成を助けるいずれかの物質、典型的には金属または金属合金によって構成される。GGPL32に適切な物質の例は、限定ではないが、Ru、Co、Ir、Rh、Mo、Re、Hf、Nb、およびそれらの合金を含む。いくつかの実施形態では、GGPL32として、Ru、Ir、Co、またはRhを用いることが好ましい。
【0030】
GGPL32は、例えば化学気相堆積(CVD)、プラズマ増強化学気相堆積(PECVD)、原子層堆積(ALD)、および物理気相堆積(PVD)を含む従来の堆積プロセスを用いて形成することができる。GGPL32の厚さは、例えばGGPL32の組成物質、およびこれを形成する際に用いた技法を含む多数の要因に応じて変動し得る。典型的に、GGPL32は0.5nmから10nmまでの厚さを有するが、より典型的には厚さは6nm未満である。
【0031】
GGPL32と後に堆積されるめっきシード層(複数の層)/金属含有導電性物質との間の低い界面エネルギによって、GGPL32は、バンブー微細構造を有し平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きい導電性構造を形成するのを助ける。
【0032】
図4は、めっきシード層34を形成した後に得られる構造を示す。めっきシード層34は、少なくとも1つの開口内でこの後に形成される金属含有導電性物質の成長を助ける。めっきシード層34は、後に本明細書中で更に詳しく説明する導電性構造38の形成に用いるもの等の導電性金属または金属合金を含むことができる。典型的に、導電性構造38が金属含有導電性物質としてCuを含む場合、めっきシード層34は、Cu、CuAl、CuIr、CuTa、CuRh、またはCuの他の合金すなわちCu含有合金を含む。
【0033】
めっきシード層34は、例えばALD、CVD、PECVD、PVD、化学溶液堆積、および他の同様の堆積プロセスを含む従来の堆積プロセスによって形成することができる。めっきシード層34の厚さは変動し得るが、当業者に周知の範囲内である。典型的に、めっきシード層34は2nmから80nmまでの厚さを有する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態においては、めっきシード層34は30℃以下の堆積温度で形成され、好適な堆積温度は20℃から−30℃である。かかる低温堆積によって、この後少なくとも1つの開口内で導電性物質の凝集が起こることを回避する。
【0035】
図5は、図4に示す構造に第1のアニールを行った後に形成される構造を示す。第1のアニールは、めっきシード層34の実質的な凝集を引き起こす条件のもとで行われる。図5では、この第1のアニールによって形成される凝集めっきシード層を34’として示す。図5では凝集めっきシード層34’を連続的な層として示すが、凝集めっきシード層34’は、層内に切れ目を含む不連続的なものである場合がある。凝集めっきシード層34’が不連続的である場合、下にある拡散バリアまたは第2の誘電物質の部分が露出することがある。めっきシード層34の凝集の多くは、相互接続構造の水平表面上でなく、少なくとも1つの開口内で発生することが観察されている。
【0036】
凝集めっきシード層34’は、少なくとも1つの開口内部にかなり大きい金属の結晶粒を有すると考えられる。これらの大きい金属の結晶粒は、後に堆積する金属含有導電性物質の結晶粒成長のためのシード・クリスタリット(seed crystallite)である。例えばシード・クリスタリットのような、これらの大きい金属の結晶粒は、すでに少なくとも1つの開口内に存在するので、後の導電性物質堆積アニールの間に大きいグレイン・サイズを有する導電性構造を得ることができる。
【0037】
めっきシード層34の実質的な凝集を引き起こす第1のアニールは、典型的に200℃から400℃までの温度で行われるが、より典型的には温度は250℃から300℃である。一実施形態では、第1のアニールは、例えばH、N、またはそれらの混合物等の還元性雰囲気において実行される。別の実施形態では、第1のアニールは真空下で行われる。第1のアニールは、少なくとも1つの開口内でめっきシード層34の充分な凝集を引き起こす時間期間にわたって行われる。典型的には、アニールは100分以下の時間期間にわたって実行されるが、より典型的にはこの時間期間は30分以下である。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態においては、凝集めっきシード層34’の上に別のめっきシード層(図示せず)を形成することができる。この別のめっきシード層は、めっきシード層34と同一のまたは異なるめっきシード物質を含むことができる。典型的には、別のめっきシード層(図示せず)は、めっきシード層34と同一のめっきシード物質で構成される。別のめっきシード層は、めっきシード層34に関して上述した堆積技法の1つを用いて形成することができる。また、別のめっきシード層は、めっきシード層34について上述した範囲内の厚さを有することができる。別のめっきシード層は、この後の導電性構造の形成中にこの下にある拡散バリアまたは第2の誘電物質の部分の露出を確実に防ぐために用いられる。
【0039】
図6は、少なくとも1つの開口内に導電性構造38を形成した後の構造を示す。図6に示す相互接続構造は本発明の1つの可能な実施形態を表し、図7および図8に示す相互接続構造は本発明の他の可能な実施形態を表す。図6に、閉鎖バイア底部相互接続構造を示す。図7では、開放バイア底部構造内に導電性構造38が形成されている。開放バイア相互接続構造を形成するには、イオン衝撃または別の同様の方向性エッチング・プロセスを利用してバイア28Aの底部から任意の拡散バリア30を除去し、その後で他の要素を堆積する。図8に、固定バイア底部相互接続構造を示す。固定バイア底部相互接続構造を形成するには、最初に選択的エッチング・プロセスを用いて導電性フィーチャ20内にくぼみをエッチングする。次いで、上述の技法の1つを用いることによって、任意の拡散バリア30を形成し、バイアおよびくぼみの底部からこれを選択的に除去する。次いで、他の要素すなわちGGPL32、凝集めっきシード層34’、および導電性構造38を上述したように形成する。
【0040】
図示した構造の各々において、導電性構造38は、導電性フィーチャ20のものと同一のまたは異なる金属含有導電性物質を含むことができるが、同一であることが好ましい。導電性構造38の形成に用いる導電性物質はポリシリコンを含まないことに留意すべきである。好ましくは、導電性構造38の金属含有導電性物質として、Cu、Al、W、またはそれらの合金が用いられ、最も好適なのはCuまたはAlCuである。導電性構造38の金属含有導電性物質は、導電性フィーチャ20の形成において上述したものと同一の堆積プロセスを用いて形成する。少なくとも1つの開口内に金属含有導電性物質を堆積した後、第2のアニールを行うことで、導電性構造38を形成する。導電性構造38の形成において用いられる第2のアニールは、典型的に80℃から300℃までの温度で実行されるが、より典型的には温度は100℃から200℃である。第2のアニールは典型的に、例えばN、He、およびAr等の不活性雰囲気において実行される。第2のアニールの時間は変動し得る。典型的には、更に一例としては、第2のアニールは60分以下の時間期間にわたって実行する。
【0041】
このように形成された導電性構造38は上述したような金属含有導電性物質を含む。導電性構造38は更に、バンブー微細構造を有し、平均グレイン・サイズは0.05ミクロンよりも大きい。一実施形態においては、導電性構造38の平均グレイン・サイズは0.05ミクロンから0.5ミクロンまでである。別の実施形態では、導電性構造38の平均グレイン・サイズは0.08ミクロンから0.2ミクロンまでである。いくつかの実施形態では、導電性構造38は(111)結晶方位を有する導電性結晶粒を含む。本明細書において用いる場合、「バンブー微細構造」という言葉は、導電性構造38の導電性物質を構成する結晶粒の全てが相互接続の横断面寸法よりも大きいことを示す。相互接続構造の長さに沿ってバンブー微細構造と多結晶微細構造との混合物である近バンブー微細構造(near bamboo microstructure)は、バンブー微細構造とは異なる。
【0042】
導電性物質を堆積した後、相互接続構造に平坦化を行うことができる。平坦化プロセスは第2のアニール前または後に行うことができ、これによって、上部相互接続レベル16の上部水平表面よりも上に存在する任意の拡散バリア30、GGPL32、凝集めっきシード層34’、および導電性構造38を除去する。
【0043】
本出願の方法は、相互接続構造の相互接続レベルのいずれか1つまたは全てにおける導電性フィーチャのような導電性構造を形成する際に適用可能である。同じ基本的な処理ステップを用いて、例えば電界効果トランジスタ等の他の半導体構造体を形成することができる。この場合、導電性物質はゲート電極であり、本発明の微細構造および平均グレイン・サイズを有する。
【0044】
相互接続構造内の導電性構造38のグレイン・サイズおよび形態の効果には以下が含まれる。(i)導電性構造38の比較的大きいグレイン・サイズによって提供される導電性構造38は、他の形態と比べて結晶粒界の数が少なく、電子拡散効果が小さく(従来技術のものよりも約10%から30%小さい)、電気抵抗が比較的低い(従来技術のものよりも約10%から30%低い)。これらの特性のために、本発明の相互接続構造は、従来の相互接続構造よりも優れた性能を発揮する。(ii)バンブー微細構造では、導電性構造内部に生じるエレクトロマイグレーション経路が少なく、エレクトロマイグレーション抵抗が高く、(6mA/μmよりも大きい)電流密度に耐えられ、従って回路の信頼性が優れている。
【0045】
本発明について、その好適な実施形態に関連付けて具体的に図示し記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において前述および他の変更を実施可能であることは当業者には理解されよう。従って、本発明は記載し図示した正確な形態および詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの開口を含む誘電物質と、
前記少なくとも1つの開口内に位置する結晶粒成長促進層と、
前記結晶粒成長促進層の上面の上に位置する凝集めっきシード層と、
前記少なくとも1つの開口内かつ前記凝集めっきシード層の上面の上に位置する導電性構造であって、バンブー微細構造を有し平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きい金属含有導電性物質を含む、導電性構造と、
を含む、相互接続構造。
【請求項2】
前記導電性構造が、(111)結晶方位を有する導電性結晶粒を含む、請求項1に記載の相互接続構造。
【請求項3】
前記誘電物質が、SiO、シルセスキオキサン、Si、C、O、およびHの原子を含むCをドーピングした酸化物、または熱硬化性ポリアリーレン・エーテルの1つである、請求項1または2に記載の相互接続構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの開口が、ライン開口、バイア開口、ライン開口およびバイア開口の組み合わせ、またはそれらの組み合わせである、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項5】
前記結晶粒成長促進層が、Ru、Co、Ir、Rh、Mo、Re、Hf、Nb、またはそれらの合金を含む、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項6】
前記結晶粒成長促進層が0.5nmから10nmの厚さを有する、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項7】
前記結晶粒成長促進層の下に位置する拡散バリアを更に含み、前記拡散バリアが、Ta、TaN、Ti、TiN、Ru、RuN、W、WN、または他の、導電性物質の拡散を防ぐバリアとして機能することができるいずれかの物質を含む、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項8】
前記凝集めっきシード層がCuまたはCu含有合金を含む、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項9】
前記凝集めっきシード層と前記導電性構造との間に別のめっきシード層が位置している、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項10】
前記導電性構造の前記金属含有導電性物質が、導電性金属、少なくとも1つの導電性金属を含む合金、または導電性金属シリサイドを含む、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項11】
前記金属含有導電性物質が、Cu、Al、W、およびAlCuから成る群から選択された導電性金属である、請求項10に記載の相互接続構造。
【請求項12】
前記導電性構造が、開放バイア底部、固定バイア底部構造、または閉鎖バイア底部に存在する、前出の請求項のいずれかに記載の相互接続構造。
【請求項13】
少なくとも1つの開口を含む誘電物質と、
前記少なくとも1つの開口内に位置する拡散バリアと、
前記拡散バリア上に位置する結晶粒成長促進層と、
前記結晶粒成長促進層上に位置する凝集めっきシード層と、
前記凝集めっきシード層上に位置する別のめっきシード層と、
前記少なくとも1つの開口内に位置する銅含有導電性構造であって、バンブー微細構造を有し、平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きく、(111)結晶方位を有する銅結晶粒を有する、銅含有導電性構造と、
を含む、相互接続構造。
【請求項14】
誘電物質に少なくとも1つの開口を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口内に結晶粒成長促進層を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口内に凝集めっきシード層を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口内に前記凝集めっきシード層の上に導電性構造を形成するステップであって、前記導電性構造が、バンブー微細構造を有し平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きい金属含有導電性物質を含む、ステップと、
を含む、相互接続構造を形成する方法。
【請求項15】
前記結晶粒成長促進層を形成する前に前記少なくとも1つの開口内に拡散バリアを形成するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶粒成長促進層を形成する前記ステップが400℃以下の堆積温度で行われる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記凝集めっきシード層を形成する前記ステップが、めっきシード層を堆積することおよび前記めっきシード層をアニールすることを含む、請求項14から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記アニールが、還元性雰囲気または真空下で200℃から400℃までの温度で実行される、請求項14から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記凝集めっきシード層の上に別のめっきシード層を形成するステップを更に含む、請求項14から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記導電性構造を形成する前記ステップが、前記少なくとも1つの開口内に前記金属含有導電性物質を堆積することおよび前記金属含有導電性物質をアニーリングすることを含む、請求項14から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記アニーリングが80℃から300℃までの温度で実行される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記導電性構造が(111)結晶方位を有する結晶粒を含む、請求項14から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
誘電物質に少なくとも1つの開口を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口内に拡散バリアを形成するステップと、
前記拡散バリアの上面上に結晶粒成長促進層を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口内に凝集めっきシード層を形成するステップと、
前記凝集めっきシード層の上に別のめっきシード層を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口内に銅含有導電性構造を形成するステップであって、前記銅含有導電性構造が、バンブー微細構造を有し、平均グレイン・サイズが0.05ミクロンよりも大きく、(111)結晶方位を有する銅結晶粒を有する、ステップと、
を含む、相互接続構造を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504886(P2013−504886A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529193(P2012−529193)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062407
【国際公開番号】WO2011/032812
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】