説明

真空処理装置及び真空処理方法

【課題】真空処理室でプラズマ処理が再開可能な異常が発生した場合に、オペレータによる長時間のウエハの処理再開操作待ちによりウエハに成膜された金属膜の腐食が進行する問題が考慮されていなかった。
【解決手段】本発明はプラズマ処理を行う真空処理室と、洗浄処理を行う洗浄処理装置とを備え、表面に金属膜の単層または金属膜を含む積層膜が成膜されたウエハを腐食性ガスにより、プラズマ処理する真空処理装置において、真空処理室に異常が発生し、プラズマ処理が中断されたウエハを所定時間経過後に、プラズマ処理が中断されたウエハを洗浄処理装置へ搬送し、洗浄処理を行うシーケンスを有する制御手段を備えたことを特徴とする真空処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
真空処理室と洗浄装置を有する真空処理装置及び真空処理方法に係り、真空処理装置での異常発生時に、洗浄処理を施すシーケンスを有する真空処理装置及び真空処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、Alを含む導電膜をCl2やBCl3等のハロゲン系ガスを用いてエッチングすると、レジスト膜除去後にも塩素系残留物が残存し、コロージョン(腐食)が発生する。コロージョン発生の抑制方法として、特許文献1には、レジスト膜のアッシング時に、O2とCF4との混合ガスを用いると、Alのハロゲン化物が、水溶性のAlフッ化物に変換され、レジスト膜を除去した後、水洗することにより、Alフッ化物を除去することができることが開示されている。また、特許文献2には、エッチング処理装置とアッシング処理装置とスピーニング湿式処理装置と乾燥処理する装置とを具備する処理装置が開示されている。
【0003】
高誘電体材料のAl23,HfO3,Ta23、強誘電体材料のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛),PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛),BST(チタン酸バリウムストロンチウム),SBT(タンタル酸ストロンチウムビスマス)等を塩素系等のハロゲン系ガスを用いてエッチングする際も、上記のAlを含む導電膜のエッチングと同様に塩素系等のハロゲン系ガスを用いたエッチング後に洗浄処理を行わないと、高誘電体材料を含む積層膜からなる配線に腐食が発生する。また、特許文献3には、腐食生成物を除去するような後処理工程を無くし、プラズマに使用して残留した塩素成分を防食処理すれば足りる試料の処理方法,装置並びに磁気ヘッドの製造方法が開示されている。
【0004】
上述のように、真空処理室が正常に処理している場合は、エッチングまたはアッシング処理後に洗浄処理を行うことで、残留塩素系ガスを除去し、金属膜の腐食防止が可能であるが、真空処理室であるエッチングまたはアッシング処理中に処理の継続が不可能な重度な異常(エラー)が発生した場合はウエハの処理シーケンスを中断する。その後、オぺレータが重度な異常を修理した後、ウエハの適正な処理(エッチングや、アッシングまたは洗浄処理)を行う。
【0005】
真空処理室であるエッチングまたはアッシング処理中に処理の継続が可能な軽度な異常(エラー)が発生した場合は、ウエハの処理シーケンスは中断せずに、真空処理装置はオペレータのウエハ処理のリトライ操作を待つ。オぺレータは軽度な異常を対処した後、ウエハ処理の再開操作(リトライ操作)を行い、ウエハの処理シーケンスを続行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−84840号公報
【特許文献2】特開平2−224233号公報
【特許文献3】特開2001−110663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において、真空処理室が正常に処理している場合は、エッチングまたはアッシング処理後に洗浄処理を行うことで、ウエハに残留した腐食性ガスを除去し、ウエハに成膜された金属膜の腐食防止あるいは抑制が可能である。しかし、真空処理室での処理中に処理続行不可能な異常(エラー)が発生した場合は、そのままの状態で処理が停止し、洗浄処理室での洗浄処理が施されないため、オペレータによるウエハの処理操作が無い状態が長時間続くとウエハに成膜された金属膜の腐食が進行する問題が考慮されていなかった。
【0008】
また、真空処理室で処理が続行可能な異常(エラー)が発生した場合においても、異常(エラー)発生後に、長時間のオペレータによるウエハの処理再開操作待ちによるウエハに成膜された金属膜の腐食が進行する問題も考慮されていなかった。
【0009】
本発明の目的は、真空処理装置で異常が発生した場合に洗浄処理を行うことにより、ウエハに成膜された金属膜の腐食防止あるいは腐食抑制ができる真空処理装置及び真空処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プラズマ処理を行う真空処理室と、洗浄処理を行う洗浄処理装置とを備え、
表面に金属膜の単層または前記金属膜を含む積層膜が成膜されたウエハを腐食性ガスにより、プラズマ処理する真空処理装置において、前記真空処理室に異常が発生し、前記プラズマ処理が中断された前記ウエハを所定時間経過後に、前記プラズマ処理が中断されたウエハを前記洗浄処理装置へ搬送し、洗浄処理を行うシーケンスを有する制御手段を備えたことを特徴とする真空処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、真空処理装置で異常が発生した場合に洗浄処理を行うことにより、ウエハに成膜された金属膜の腐食防止あるいは腐食抑制ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の装置構成を示す図。
【図2】ウエハ処理(エッチング処理)を示すフローチャート。
【図3】ウエハ処理(アッシング処理及び洗浄処理)を示すフローチャート。
【図4】エラー処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1から図6を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る真空処理装置を説明する図であり、真空処理室として、エッチング室とアッシング室を各1つずつ真空搬送室(図示せず)に装備し、洗浄処理装置ユニット14を1つ有した装置構成を示す。真空処理装置1は、カセットが装着される前方向の大気側ブロックと第一の真空処理室9−1及び第二の真空処理室9−2が配置される真空ブロックの2つのブロックで構成されている。真空側ブロックは、ウエハ2(2−1,2−2,2−3)を真空処理する第一の真空処理室9−1及び第二の真空処理室9−2と該第一の真空処理室9−1及び第二の真空処理室9−2にウエハ2を搬入出する真空搬送機構10である真空搬送ロボットと、前記第一の真空処理室9−1及び第二の真空処理室9−2へウエハ2を搬入出するための大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能な室である2つのロードロック室11とで構成されている。また、エッチング室である第一の真空処理室9−1はアルミニウム,ニッケル,クロム,タンタル,チタン,マグネシウム,鉛のいずれか一つからなる金属膜の単層または、前記金属膜を含む積層膜が成膜されたウエハを腐食性ガス(Cl2,BCl3,HCl,HBr等)を含むプラズマ形成用のガスを供給し、プラズマを発生させ、前記ウエハ上に成膜された膜をマスクパターンに沿ってエッチングする。アッシング室である第二の真空処理室9−2は前記ウエハ上に成膜された膜をエッチングするためのマスクであるフォトレジスト膜をプラズマ形成用のガス(O2,H2O,H2,NH3,CF4等)を供給し、発生させたプラズマによりアッシングする。あるいは、前記エッチングで残留した腐食性ガス(Cl2,BCl3,HCl,HBr等)によるウエハに成膜された金属膜の腐食を抑制する目的でプラズマ形成用のガス(O2,H2O,H2,NH3,CF4等)を供給し、発生させたプラズマによりアッシング処理を行う。
【0015】
大気側ブロックは、前面にウエハの有無を検知するマッピング機構やオペレータまたはRGVといったロボットでのカセットの設置に対応するためのインターフェイスを有する複数のカセット載置機構4(4−1,4−2,4−3)と該カセット載置機構4に載置されるカセット内のウエハを抜き取れるように上下動可能に構成された第一の大気搬送ロボットである第一の大気搬送機構6−1と略直方体で内部にウエハ搬送する空間を有する搬送室と前記略直方体の右側面にウエハを洗浄する洗浄処理装置ユニット14とカセット載置機構4の左側にウエハの位置合わせを行う第一のウエハ位置合わせ機構5−1と前記大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能な室であるロードロック室11とで構成されている。
【0016】
洗浄処理装置ユニット14は、図1の下方を洗浄処理装置ユニット14の前面とすると、前面左側面の上段に大気ブロックの第一の大気搬送機構6−1から搬送されるウエハが載置される待機ステージ7と該待機ステージ7に載置されるウエハを抜き取れるように上下動可能に構成された第二の大気搬送ロボットである第二の大気搬送機構6−2と前面右側面にウエハの位置合わせを行う第二のウエハ位置合わせ機構5−2と後面の右側面にウエハを洗浄する洗浄処理室8と該洗浄処理室8で洗浄されたウエハを乾燥させる加熱乾燥処理室12とで構成されている。乾燥処理室はスピン乾燥方式でも良い。洗浄処理室8はエッチング室において、腐食性ガス(Cl2,BCl3,HCl,HBr等)を含むガスでエッチングされたウエハを純水または薬液の洗浄により残留腐食性ガス成分を除去する。加熱乾燥処理室12は、純水または薬液に浸されたウエハを加熱することにより乾燥させる。
【0017】
図1の下方左側面にマンマシンインターフェイス及び上位ホストコンピュータとのインターフェイスである制御コンソール13と、中央に直方体形状搬送室内に第一の大気搬送機構6−1と第一のウエハ位置合わせ機構5−1を配置している。該第一の大気搬送機構6−1は前面のカセット載置機構4または、図1の下方右側面の洗浄処理装置ユニット14と、第一のウエハ位置合わせ機構5−1または切り替え可能なロードロック室11との間でウエハの取出しを行う。また、真空搬送機構10および大気雰囲気内の第一及び第二の大気搬送機構6−1,6−2に付随するハンドについては複数でも良い。また、真空処理室は、エッチング室とアッシング室をそれぞれ複数でも良い。
【0018】
以下に本発明の実施例について説明する。カセット3−1から大気雰囲気下に設けられた第一の大気搬送機構6−1にて搬出された1枚目のウエハ2−1は第一のウエハ位置合わせ機構5−1を経由して、ロードロック室11ならびに前記真空搬送機構10を介して第一の真空処理室9−1へ搬送し、エッチング処理を実行する。連続して同じ処理条件(レシピ)を処理する運用の場合、引き続き2枚目のウエハ2−1は第一のウエハ位置合わせ機構5−1を経由して連続処理可能なように、1枚目のウエハ2−1と同様に第一の真空処理室9−1へ搬送され、エッチング処理が開始される。エッチング処理が終わったウエハ2−1は、前記真空搬送機構10を介して第二の真空処理室9−2へ搬送し、アッシング処理を実行する。アッシング処理が終了したウエハ2−1は、前記真空搬送機構10及び、ロードロック室11ならびに前記第一の大気搬送機構6−1を介して洗浄処理装置ユニット14の待機ステージ7へ搬送される。
【0019】
その後、ウエハ2−1は大気雰囲気下に設けられた第二の大気搬送機構6−2にて第二のウエハ位置合わせ機構5−2を経由して、洗浄処理室8へ搬送され、洗浄処理が開始される。洗浄処理が終わったウエハ2−1は、前記第二の大気搬送機構6−2を介して加熱乾燥処理室12へ搬送され、乾燥処理を実行する。乾燥処理が終わったウエハ2−1は前記第一の大気搬送機構6−1を介して元のカセット3−1に戻される。
【0020】
ロットの処理フローは図2,図3,図4に示すように、先ず、ロット処理に入る前にロット処理条件で設定するレシピ内のリトライ条件設定(S401)をオペレータまたは上位ホストコンピュータが設定する。第一の真空処理室9−1または第二の真空処理室9−2の処理条件であるレシピは、真空処理室で処理する膜種(ウエハ)毎に複数登録できるものである。また、真空処理室で処理中のレシピ以外の設定及び変更であれば、随時オペレータまたは上位ホストコンピュータからの設定及び変更が可能である。
【0021】
また、リトライ操作とは第一の真空処理室9−1あるいは第二の真空処理室9−2でのウエハ処理中に異常(エラー)が発生した後のウエハ処理再開操作のことであり、表1に示すように4種類のリトライ操作がある。1つ目は異常(エラー)が発生した状態から残りの処理を再開する操作と、2つ目は異常(エラー)が発生したウエハに対して、処理条件(レシピ)を変更して処理を再開する操作と、3つ目は異常(エラー)が発生した処理室での処理を中断して次の処理室で処理する操作と、4つ目はロット(ウエハ)処理を中断する操作の4種類が選択可能であり、オペレータまたは上位ホストコンピュータは発生した異常(エラー)や真空処理装置1の復旧可能状態より適正なリトライ操作を選択する。
【0022】
【表1】

【0023】
該リトライ条件設定(S401)とは、表2に示すようにリトライ操作待ち時間とアッシング処理の有無を設定する。該リトライ操作待ち時間は、分単位での指定が可能で0分からN分まで指定可能である。N分とはエッチング処理されたウエハがアッシングあるいは洗浄処理されない状態でウエハに成膜された金属膜の腐食が発生し始めるまでの時間を考慮して、ウエハの搬送開始を規定した時間である。あるいは、腐食が発生し始める時間からウエハの搬送時間を差し引いた時間としても良い。該リトライ操作待ち時間に0分が設定された場合は、リトライ操作待ちを行わないこととする。0以外が設定された場合は、設定された時間が経過するまで、オペレータまたは上位ホストコンピュータからのリトライ操作を待つ。
【0024】
該アッシング処理の有無は、腐食防止あるいは腐食抑制でアッシング処理を行うウエハにおいて、エッチング室でエラーが発生したウエハをアッシング処理を行うかまたは、行わないかを設定する。アッシング処理の有りを設定した場合は、アッシング処理を行った後に洗浄処理を実施し、カセットへ戻す。アッシング処理の無しを設定した場合は、アッシング処理は行わずに洗浄処理のみを実施してカセットへ戻す。また、前記リトライ条件設定は、レシピだけでなく、装置のシステムパラメータで設定しても良い。
【0025】
【表2】

【0026】
制御コンソール13に備えられた入力手段(図示せず)により、該リトライ操作待ち時間及びアッシング処理の有無と、ロット処理条件(S402)をオペレータまたは上位ホストコンピュータより設定を行い、該ロット処理条件でロット(ウエハ)処理を開始(S403)する。該ロット処理条件設定(S402)は、ウエハ毎に処理するエッチング処理やアッシング処理または洗浄処理の条件(レシピ)や、処理するウエハ枚数等を設定する。
【0027】
次に、カセットからウエハを1枚取り出し(S404)、第一のウエハ位置合わせ機構5−1にてウエハ位置合せ(S405)を行う。次に、ロードロック室11を経由して第一の真空処理室9−1でエッチング処理(S406からS409)を行った後、第二の真空処理室9−2でアッシング処理(S501からS504)を行う。次にロードロック室11を経由して洗浄処理装置ユニット14へ搬送され、第二のウエハ位置合わせ機構5−2にてウエハ位置合せ(S505)を行う。その後、洗浄処理室8で洗浄処理(S506)を行う。加熱乾燥処理室12で乾燥処理(S507)を行った後に、元のカセット3へウエハを戻す。乾燥処理(S507)後のウエハは別のカセット3に戻しても良い。また、最初のウエハがロードロック室11に搬送された時に、次のウエハがカセット3より搬出され、S404からS409とS501からS509のウエハ処理を行う。カセット内の全てのウエハ処理が完了するか、または、ロット処理条件設定(S402)で指定された枚数のウエハ処理が完了するまでロット処理が繰り返される。
【0028】
上記のようにロット処理時に第一の真空処理室9−1及び第二の真空処理室9−2が正常にウエハを処理できる状態と、第一の真空処理室9−1または第二の真空処理室9−2でのウエハ処理中に異常(エラー)が発生し、エッチングまたはアッシング処理が継続できない状態がある。尚、異常(エラー)の検知は異常検知手段(図示せず)によって行われる。以下に異常発生時のシーケンスについて説明する。
【0029】
第一の真空処理室9−1または第二の真空処理室9−2でのウエハ処理中に異常検知手段(図示せず)により、異常を検出(S407,S502)した場合は、エッチング処理またはアッシング処理(S410,S511)を停止し、エッチング処理またはアッシング処理履歴を記憶手段(図示せず)に保存ならびに異常報知手段(図示せず)により上位コンピュータへも処理履歴を報知(S411,S512)する。その後、異常表示手段(図示せず)による異常表示と異常報知手段(図示せず)により、シグナルタワー点灯を行い、オペレータへの報知ならびに上位ホストコンピュータへも異常が発生したことを報知(S412,S513)する。次に発生した異常が、重度な異常(リトライ不可能異常)であるか、軽度な異常(リトライ可能な異常)であるかを異常レベル判断手段(図示せず)により判断(S601)する。重度な異常(リトライ不可能異常)とは、第一の真空処理室9−1または第二の真空処理室9−2のプラズマ発生用高周波電源(図示せず)の故障、前記真空処理室内のウエハバイアス用高周波電源(図示せず)の故障または前記真空処理室内部の部品の破損等の早期復旧が不可能な異常のことである。ここで、ウエハバイアス用高周波電源とは、前記真空処理室内のウエハが載置される電極(図示せず)に印加される高周波電源のことである。また、軽度な異常(リトライ可能な異常)とは、第一の真空処理室9−1または第二の真空処理室9−2のガスバルブ開け忘れによるプロセスガス流量不足、ノイズによる前記真空処理室内の圧力変動またはプラズマ着火検出不可等の早期復旧可能な軽微な異常のことである。
【0030】
発生した異常が異常レベル判断手段(図示せず)によりリトライ不可能な異常と判断した場合は、次ウエハの搬出を停止(S602)する。その後、異常が発生した箇所がエッチング室かつ、リトライ条件設定(S401)にアッシング処理が有りかを判断(S603)する。異常が発生した箇所がエッチング室の場合で、リトライ条件設定(S401)にアッシング処理有りと設定されている場合は、オペレータまたは上位ホストコンピュータの指示無しにアッシング処理(S501からS504)を行った後に洗浄処理装置ユニット14へウエハを搬送し、洗浄処理(S506)及び乾燥処理(S507)を行うことにより、腐食性ガス(Cl2,BCl3,HCl,HBr等)によるウエハに成膜された金属膜の腐食防止または腐食抑制ができる。また、異常が発生した箇所がエッチング室の場合でリトライ条件設定(S401)にアッシング処理無しの場合やエラー発生した箇所がエッチング室またはアッシング室で無い場合は、オペレータまたは上位ホストコンピュータの指示無しに洗浄処理装置ユニット14へウエハを搬送し、洗浄処理(S506)及び乾燥処理(S507)を行うことにより、塩素ガス等によるウエハに成膜された金属膜の腐食防止または腐食抑制ができる。尚、異常発生時に、カセットより搬出済みのウエハで、異常が発生していない第一の真空処理室9−1または第二の真空処理室9−2での処理をしていたウエハは、処理終了後に、洗浄処理装置ユニット14へウエハを搬送し洗浄処理(S506)及び乾燥処理(S507)後に元のカセットまたは別のカセットに搬送される。また、異常発生した時に、第一のウエハ位置合せ機構5−1やロードロック室11上にあったウエハは第一の真空処理室9−1に搬送されていないため、ウエハに成膜された金属膜の腐食発生の危険が無いことから、洗浄浄処理装置ユニット14での処理は行わずに元のカセットまたは別のカセットに戻す。その後、全てのウエハがカセットに戻った時(S510,S514)に、異常表示手段(図示せず)によりエラー表示とシグナルタワー点灯を行い、異常報知手段(図示せず)によりオペレータへの報知ならびに上位ホストコンピュータへも異常が発生したことを報知(S516)し、ロット処理を終了(S515)する。
【0031】
また、発生した異常が異常レベル判断手段(図示せず)によりリトライ可能な異常と判断した場合は、予めレシピとして設定されたリトライ待ち時間に達するまで、真空処理装置はオペレータ操作または上位ホストコンピュータの指示を待つ(S604からS606)。このリトライ操作待ち時間の設定時間内にオペレータ操作または上位ホストコンピュータの指示により、リトライ操作が行われた場合(S606,S607)は、エッチングまたはアッシング処理の再開及び次ウエハの搬入を再開し、正常処理シーケンスと同様に以後、予め設定されたウエハの処理を行う。
【0032】
しかし、リトライ条件設定(S401)のリトライ操作待ち時間の設定時間内にオペレータ操作または上位ホストコンピュータの指示によるリトライ操作が行われない場合(S605)は、次ウエハの搬出を停止(S602)する。その後、異常が発生した箇所がエッチング室の場合で、リトライ条件設定(S401)にアッシング処理有りと設定されている場合は、オペレータまたは上位ホストコンピュータの指示無しにアッシング処理(S501からS504)を行った後に洗浄処理装置ユニット14へウエハを搬送し、洗浄処理(S506)及び乾燥処理(S507)を行うことにより、腐食性ガス(Cl2,BCl3,HCl,HBr等)によるウエハに成膜された金属膜の腐食防止また腐食抑制ができる。また、異常が発生した箇所がエッチング室の場合でリトライ条件設定(S401)にアッシング処理無しの場合や異常が発生した箇所がエッチング室やアッシング室で無い場合は、オペレータ操作または上位ホストコンピュータの指示無しに洗浄処理装置ユニット14へウエハを搬送し、洗浄処理(S506)及び乾燥処理(S507)を行うことにより腐食性ガス(Cl2,BCl3,HCl,HBr等)によるウエハに成膜された金属膜の腐食防止または腐食抑制ができる。尚、異常発生時に、カセットより搬出済みのウエハで、異常が発生していない第一の真空処理室9−1または第二の真空処理室9−2での処理をしていたウエハは、処理終了後に、洗浄処理装置ユニット14へウエハを搬送し、洗浄処理(S506)及び乾燥処理(S507)後に元のカセットまたは別のカセットに戻される。また、異常発生時に、第一のウエハ位置合せ機構5−1やロードロック室11上にあったウエハはエッチング室である第一の真空処理室9−1に搬送されておらず、ウエハに成膜された金属膜の腐食の危険性が無いことから、洗浄処理装置ユニット14での処理は行わずに元のカセットまたは別のカセットに戻される。その後、全てのウエハがカセットに戻った時(S510,S514)に、異常表示手段(図示せず)により異常表示とシグナルタワー点灯を行い、異常報知手段(図示せず)によりオペレータへの報知ならびに上位ホストコンピュータへも異常が発生したことを報知(S516)し、ロット処理を終了(S515)する。
【0033】
上記異常発生時のシーケンスは真空処理装置1に備えられた制御手段(図示せず)によって、実行される。
【0034】
上述した本願発明により、従来では異常が発生した場合、オペレータまたは上位ホストコンピュータからの操作が無い場合に長時間、処理途中のウエハが放置されるケースが多々あり、この長時間のウエハ放置によりウエハに成膜された金属膜が腐食する危険性があったが、オペレータまたは上位ホストコンピュータからの操作無しに、自動で(強制的に)洗浄処理を行うことで、腐食性ガス(Cl2,BCl3,HCl,HBr等)によるウエハに成膜された金属膜の腐食防止または腐食抑制ができる。
【0035】
更に、自動での洗浄処理後に異常報知手段(図示せず)によるオペレータまたは上位ホストコンピュータへエラー報知(S516)することにより、オペレータまたは上位ホストコンピュータは、異常ロット(ウエハ)であることが判別可能である。また、記憶手段(図示せず)に保存されたウエハ処理履歴情報(エッチング処理(S409,S411)やアッシング処理(S504,S512)または洗浄処理(S508)の処理状況をウエハ毎に保存)、または上位ホストコンピュータに報知されたウエハ処理履歴情報(S409,S411,S504,S512,S508)を参照することで、追加でエッチングまたはアッシング処理が必要であるかを判断でき、再度、ロット処理の開始を行うことで、廃棄の可能性があるウエハの救済が可能となる。
【0036】
尚、リトライ条件設定(S401)のリトライ操作待ち時間は、発生する異常の内容によって、エッチングまたはアッシング処理開始前に発生するものと、エッチングまたはアッシング処理中に発生するものと、エッチングまたはアッシング処理終了間際に発生する異常とでは、ウエハに成膜された金属膜の腐食に至るまでの時間が変わってくるため、リトライ操作待ち時間は上記複数の異常毎に設定することができる。あるいは上記複数の異常に1つのリトライ操作待ち時間で対応しても良い。
【0037】
本願発明は、エッチング室またはアッシング室での異常に限定するものではない。ロードロック室11でエラーが発生した場合は、エッチング室以降のウエハは正常にアッシング処理及び洗浄処理や乾燥処理を行った後に元のカセットまたは別のカセットに戻す。ロードロック室11のウエハは搬送可能で、第一の真空処理室9−1に搬送されていなければ、洗浄処理及び乾燥処理を行わずに元のカセットまたは別のカセットに戻す。もし、第一の真空処理室9−1に搬送されていれば、洗浄処理及び乾燥処理を行い、元のカセットまたは別のカセットに戻す。
【0038】
また、一方のロードロック室11を真空搬送室への搬入専用、他方のロードロック室11を真空搬送室からの搬出専用に使っている場合に、搬出専用のロードロック室11で異常が発生した場合は、洗浄処理室8への搬送ができなくなり、ウエハに成膜された金属膜の腐食防止または腐食抑制が不可能となる。この対応として、アッシング室にあるウエハをアッシング処理終了後に搬入専用のロードロック室11に一旦、退避させ、エッチング室にあるウエハをエッチング処理後にアッシング室へ搬送し、アッシング処理を行うことにより、ウエハに成膜された金属膜の腐食防止または腐食抑制が可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 真空処理装置
2 ウエハ
3 カセット
4 カセット載置機構
5−1 第一のウエハ位置合わせ機構
5−2 第二のウエハ位置合わせ機構
6−1 第一の大気搬送機構
6−2 第二の大気搬送機構
7 待機ステージ
8 洗浄処理室
9−1 第一の真空処理室
9−2 第二の真空処理室
10 真空搬送機構
11 ロードロック室
12 加熱乾燥処理室
13 制御コンソール
14 洗浄処理装置ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理を行う真空処理室と、洗浄処理を行う洗浄処理装置とを備え、
表面に金属膜の単層または前記金属膜を含む積層膜が成膜されたウエハを腐食性ガスにより、プラズマ処理する真空処理装置において、
前記真空処理室に異常が発生し、前記プラズマ処理が中断された前記ウエハを所定時間経過後に、前記プラズマ処理が中断されたウエハを前記洗浄処理装置へ搬送し、洗浄処理を行うシーケンスを有する制御手段を備えたことを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空処理装置において、
前記異常が発生した真空処理室でプラズマ処理されたウエハの搬送開始を待機させる時間を予め設定する手段を有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の真空処理装置において、
前記制御手段は、前記異常が発生した真空処理室でプラズマ処理が中断された後、前記予め設定された時間内に前記ウエハのプラズマ処理が再開されない時、前記ウエハを前記洗浄処理装置に搬送し、洗浄処理を行うシーケンスを有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項4】
請求項2記載の真空処理装置において、
複数の前記ウエハの集合体であるロット処理が異常終了したことをオペレータまたは上位ホストコンピュータに報知する異常報知手段を有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項5】
プラズマ処理を行う真空処理室と、洗浄処理を行う洗浄処理装置とを備えたプラズマ処理装置により、表面に金属膜の単層または前記金属膜を含む積層膜が成膜されたウエハを腐食性ガスにより、プラズマ処理する真空処理方法であって、異常が発生したことを検知後、所定時間の経過後に前記真空処理室でのプラズマ処理において、
前記ウエハを前記洗浄処理装置で洗浄処理を行うことを特徴とする真空処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−233721(P2011−233721A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102861(P2010−102861)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】