説明

磁気ランダムアクセスメモリ及びその製造方法

【課題】 熱処理後においても安定して動作可能な磁気ランダムアクセスメモリ及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】 実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリは磁化記憶層を持つ。前記磁化記憶層上に、熱処理により前記磁化記憶層から拡散する原子を含む第1の金属層が設けられる。前記第1の金属層上に、第1の界面磁性層が設けられ、前記第1の界面磁性層上に非磁性層が設けられる。前記非磁性層上に第2の界面磁性層が設けられる。前記第2の界面磁性層上に、熱処理により前記磁化参照層から拡散する原子を含む第2の金属層が設けられる。前記第2の金属層上に磁化参照層が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ランダムアクセスメモリ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunneling Magneto Resistive)を利用した磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)が開発されている。この磁気ランダムアクセスメモリには、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)を含む磁気抵抗効果素子が用いられており、大きな磁気抵抗変化率を有する。
【0003】
現在検討されているスピン注入書き込み方式では、面内磁化膜より垂直磁化膜を利用した磁気抵抗効果素子構造の方が微細化と低電流化に適している。しかし、製造工程における熱処理により、垂直磁化膜の構成原子が非磁性層に拡散し、磁気特性が変化するため、安定した動作の磁気ランダムアクセスメモリが得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱処理後においても安定して動作可能な磁気ランダムアクセスメモリ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリは、磁化記憶層を持つ。前記磁化記憶層上に、熱処理により前記磁化記憶層から拡散する原子を含む第1の金属層が設けられる。前記第1の金属層上に、第1の界面磁性層が設けられ、前記第1の界面磁性層上に非磁性層が設けられる。前記非磁性層上に第2の界面磁性層が設けられる。前記第2の界面磁性層上に、熱処理により前記磁化参照層から拡散する原子を含む第2の金属層が設けられる。前記第2の金属層上に磁化参照層が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態において垂直磁化を有する磁気抵抗効果素子の基本構造を示す断面図。
【図2】第1の実施形態において垂直磁化を有する磁気抵抗効果素子の基本構造を示す断面図。
【図3】第1の実施形態における磁気ランダムアクセスメモリを示す断面図。
【図4】第1の実施形態における垂直磁化を有する磁気抵抗効果素子を示す断面図。
【図5】第1の実施形態における磁気抵抗効果素子の磁化曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリについて以下説明する。
【0010】
図1は第1の実施形態において垂直磁化を有する磁気抵抗効果素子1の基本構造を示す断面図である。図1に示すように、磁気抵抗効果素子1は、下部電極2、磁化記憶層3、第1の金属層4、第1の界面磁性層5、非磁性層6、第2の界面磁性層7、第2の金属層8、磁化参照層9、磁化調整層10、上部電極11を有している。なお、図1における矢印は、磁化の向きを表す。
【0011】
第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子1は、図1に示すように、下部電極2上に磁化記憶層3が設けられる。下部電極2には、例えばPt、Ir、Ru、Cuが用いられる。磁化記憶層3は磁化を膜面に対して実質的に垂直に有する垂直磁化膜であり、磁化の向きが可変である。また、磁化記憶層3には、第1の金属原子が含まれる。第1の金属原子とは、例えばPt、Pd等の原子をいう。具体的に、磁化記憶層3には、規則合金層が用いられ、例えばFePd、FePt、CoPt、CoPd等が用いられる。下部電極2の膜厚は、例えば50Å程度で、磁化記憶層3の膜厚は、例えば10Å程度である。下部電極2は、下部電極2上部に形成される磁化記憶層3の配向を制御する層としての役割も有する。
【0012】
磁化記憶層3上には、第1の金属層4が設けられる。第1の金属層4は、例えばTa、Ti、V、Y、Zr、Ybから選ばれる原子と第1の金属原子を含み、これらの原子の合金を含むものである。なお、第1の金属層4は、完全に合金化したものだけでなく、一部が合金化したもの、又は構成元素が部分的に結合したものでもよい。第1の金属層4の膜厚は、例えば5Å程度である。
【0013】
第1の金属層4上には、第1の界面磁性層5が設けられる。第1の界面磁性層5には、例えばCo、Fe、CoFe、CoFeBが用いられる。第1の界面磁性層5は、磁化記憶層3等の垂直磁化膜との間の交換結合により垂直磁化を持つ。第1の界面磁性層5の膜厚は、例えば10Å程度である。
【0014】
第1の界面磁性層5上には、トンネル絶縁膜として非磁性層6が設けられる。非磁性層6は、NaCl構造の酸化物であり、この酸化物の(100)面と第1の界面磁性層5と格子不整合度が小さい材料を選択することが望ましい。非磁性層6は、例えば、アモルファスCoFeB合金構造上で結晶成長すると、 [100]方向に優先配向した絶縁膜を得ることができる。非磁性層6には、MgO、CaO、SrO、TiO、VO、NbO等が用いられるが、他の材料でもよい。非磁性層6の膜厚は、例えば10Å程度であり、磁気抵抗硬化素子1の抵抗値を10Ωμm2程度にする。
【0015】
第2の界面磁性層7が、非磁性層6上に設けられる。第2の界面磁性層7には、上記第1の界面磁性層5と同様の材料が用いられる。第2の界面磁性層7は、磁化参照層9等の垂直磁化膜との間の交換結合により垂直磁化を持つ。第2の界面磁性層7の膜厚は、例えば10Å程度である。
【0016】
第2の界面磁性層7上には、第2の金属層8が設けられる。第2の金属層8は、例えばTa、Ti、V、Y、Zr、Ybから選ばれる原子と、第2の金属原子とを含み、これらの原子の合金を含むものである。第2の金属原子とは、Pt、Pd等の原子をいう。なお、第2の金属層8は、完全に合金化したものだけでなく、一部が合金化したもの、又は構成元素が部分的に結合したものでもよい。第2の金属層8の膜厚は、例えば5Å程度である。
【0017】
第2の金属層8上には、磁化参照層9が設けられる。磁化参照層9は磁化を膜面に対して実質的に垂直に有する垂直磁化膜であり、磁化の向きが一方向に固定されており、かつ第2の金属原子を含むものである。垂直磁化膜である磁化参照層9には、例えば、不規則合金、規則合金、人工格子等が用いられる。不規則合金では、CoとCr、Ta、Nb、V、W、Hf、Ti、Zr、Pt、Pd、Fe又はNi等の元素と合金を形成したものが用いられ、例えばCoCr合金、CoPt合金が用いられる。規則合金では、Fe、Co又はNiとPt又はPdとの合金が用いられ、例えばFePt、FePd、CoPtが挙げられる。人工格子では、Fe、Co若しくはNi元素とCr、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Re若しくはAuの元素又はそれらの合金が積層されたものが用いられ、例えばCo/Pd、Co/Pt、Co/Ruが用いられる。他にも、Tb、Dy、Gdなどの遷移金属を含む合金材料、TbFe、TbCo、DyTbFeCo、TbCoFe等も用いることができる。磁化参照層9の膜厚は、例えば60Å程度である。
【0018】
磁化参照層9上には、磁化調整層10が設けられる。磁化調整層10は、磁化参照層9からの漏れ磁場を調整し、磁気記憶層3への磁気的影響を抑え、また磁化参照層9の磁化を所定の一方向に固定するために設けられる反強磁性膜である。磁化調整層10には、例えば、Fe、Ni、Pt、Pd、Ru、Os、IrとMnの合金であるFeMn、NiMn、PtMn、PdMn、PtPdMn、RuMn、OsMn、IrMn、CrPtMn等が用いられる。磁化調整層10の膜厚は、例えば80Å程度である。
【0019】
磁化調整層10上には、上部電極11が設けられる。上部電極11には、例えばRu又はTaからなる膜が用いられる。上部電極11の膜厚は、例えば50Å程度である。
【0020】
なお、上記磁気抵抗効果素子1のように、下部電極2、磁化記憶層3、第1の金属層4、第1の界面磁性層5、非磁性層6、第2の界面磁性層7、第2の金属層8、磁化参照層9、磁化調整層10、上部電極11を順に積層した構造では、磁化記憶層3の磁化を精密に制御できるが、図2に示すように、下部電極2、磁化調整層10、磁化参照層9、第2の金属層8、第1の界面磁性層5、非磁性層6、第2の界面磁性層7、第1の金属層4、磁化記憶層3、上部電極11の順に積層した構造でもよい。
【0021】
次に、第1の実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリの製造方法について以下図3を用いて説明する。
【0022】
図3(a)のように、半導体基板12に素子分離溝が形成され、素子分離絶縁膜13、例えばシリコン酸化膜がこの素子分離溝部に埋め込まれ、STI(Shallow Trench Isolation)構造が形成される。その後、ゲート絶縁膜14およびゲート電極15が形成される。その後、イオン注入によりソース領域16aおよびドレイン領域16bが形成され、選択トランジスタを形成する。
【0023】
次に、図3(b)のように、第1の絶縁膜17として、例えばシリコン酸化膜をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により形成し、ソース領域16aが露出するようにリソグラフィ法およびRIE(Reactive Ion Etching)にて開口部を形成する。
【0024】
次に、スパッタ法又はCVD法により、この開口部内にフォーミングガスの雰囲気下において第1のコンタクトプラグ18を形成するためW膜をCVDにより成膜する。さらに、このW膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化する。これにより第1の絶縁膜17内にソース領域16aに連通する第1のコンタクトプラグ18を形成する。ゲート電極15はワードラインに接続される。また、ソース領域16aはビットラインに接続され、ドレイン領域16bは、磁気抵抗効果素子1に接続される引き出し線と接続される。
【0025】
次に、第1の絶縁膜17および第1のコンタクトプラグ18上にCVD法によりCVD窒化膜19を形成する。その後、ドレイン領域16bに連通するコンタクトホールを形成し、第2のコンタクトプラグ20を形成するためW膜を成膜する。さらに、CMPにより平坦化することにより、第2のコンタクトプラグ20を形成する。
【0026】
次に、磁気抵抗効果素子1を形成する。以下、図4を用いて具体的に磁気抵抗効果素子1の形成について説明する。第2のコンタクトプラグ20上部に下部電極2として膜厚が50ÅのIr層を形成する。下部電極2には、他にもPt、Ru、Cuが用いられる。
【0027】
次に、下部電極2上に磁化記憶層3として膜厚が10ÅのCoPd層を形成する。その後、磁化記憶層3上に第1の拡散防止層31として膜厚が5ÅのTi層を形成し、第1の拡散防止層31上に、第1の界面磁性層5として膜厚が10Åのアモルファス状のCoFeB層を形成する。第1の拡散防止層31には、他にもTa、V、Y、Zr、Ybから選ばれる原子が用いられる。
【0028】
次に、第1の界面磁性層5上に非磁性層6として膜厚が10Åのアモルファス状のMgOからなるトンネル膜を形成し、非磁性層6上に第2の界面磁性層7として膜厚が10Åのアモルファス状のCoFeB層を形成する。
【0029】
次に、第2の界面磁性層7上に第2の拡散防止層32として膜厚が5ÅのTi層を形成し、第2の拡散防止層32上に磁化参照層9として膜厚が60ÅのFePd層を形成する。第2の拡散防止層32には、他にもTa、V、Y、Zr、Ybから選ばれる原子を含むものである。
【0030】
次に、磁化参照層9上に磁化調整層10として膜厚が80ÅのPtMn層を形成し、磁化調整層10上に上部電極11として膜厚が50ÅのRu層を形成する。上部電極11には、他にもTa等が用いられる。
【0031】
以上の製造過程により磁気抵抗効果素子1が形成する。なお、磁気抵抗効果素子1の積層順は、上記に限らず、下部電極2、磁化調整層10、磁化参照層9、第1の拡散防止層31、第1の界面磁性層5、非磁性層6、第2の界面磁性層7、第2の拡散防止層32、磁化記憶層3、上部電極11の順に積層してもよい。
【0032】
なお、上部電極11は、磁化調整層10を形成せず、磁化参照層9直上に形成してもよい。以上において、下部電極2、磁化記憶層3、第1の拡散防止層31、第1の界面磁性層5、非磁性層6、第2の界面磁性層7、第2の拡散防止層32、磁化参照層9、磁化調整層10、上部電極11は、例えばスパッタ法を用いて形成される。
【0033】
次に、真空中において300〜350℃で1時間程度アニールを行う。これにより、非磁性層6として用いられるMgOが結晶化し、アニールによって第1の界面磁性層5および第2の界面磁性層7として用いられるアモルファス状のCoFeBが結晶であるCoFeとなる。なお、このアニールは窒素雰囲気下において行ってもよい。また、RTA(Rapid Thermal Annealiing)により、真空中において400℃で10〜30秒程度ランプアニールを行ってもよい。このアニールの際、磁気抵抗効果素子1に熱が加わり、磁化記憶層3および磁化参照層9から第1の金属原子および第2の金属原子、例えばPd原子が、例えばTi層からなる第1の拡散防止層31および第2の拡散防止層32へそれぞれ拡散する。これにより、第1の拡散防止層31は、例えばTiとPdとの合金を含む第1の金属層4となり、第2の拡散防止層32は、例えばTiとPdとの合金を含む第2の金属層8となる。
【0034】
なお、第1の金属層4および第2の金属層8も第1の拡散防止層31および第2の拡散防止層32と同様に、その後の熱処理において磁化記憶層3および磁化参照層9を構成する原子の非磁性層6への拡散を抑制することができる。
【0035】
以上により形成した磁気抵抗効果素子1の構造に対して、第2のコンタクトプラグ20上の磁気抵抗効果素子1を残すようにSiOx、SiNなどのハードマスクを形成し、リソグラフィ法およびIBE(Ion Beam Etching)又はRIEにより上部電極11、磁化調整層10、磁化参照層9、第2の拡散防止層32、第2の界面磁性層7、非磁性層6、第1の界面磁性層5、第1の拡散防止層31、磁化記憶層3、下部電極2をエッチングにより加工する。この際に、非磁性層6として用いられる、例えばMgO膜が薄い場合、磁気抵抗効果素子1には貴金属などが用いられているため、エッチングによる側面への残渣が付着し、磁気抵抗効果素子1にリーク電流が生じるおそれがある。そのため、非磁性層6の部分についてはテーパー角を制御する必要がある。このテーパー角は80度以上が望ましく、特に85度以上が望ましい。
【0036】
次に、酸素又は水素の拡散の防止層(図示なし)をALD(Atomic Layer Deposition)、CVD又はPVD(Physical Vapor Deposition)の方法により形成する。この防止膜には、例えばSiN、AlOx等が用いられる。
【0037】
次に、図3(c)のように、CVD法によりCVD窒化膜19上に磁気抵抗効果素子1を覆うように、第2の絶縁膜21として、例えばシリコン酸化膜を形成する。
【0038】
次に、磁気抵抗効果素子1の上部電極11に接続する第3のコンタクトプラグ22および第2のコンタクトプラグ18に接続する第4のコンタクトプラグ23を形成する。これは、第2の絶縁膜21をリソグラフィ法およびRIEにより加工し、コンタクトホールを形成した後に、Alを埋め込み、CMP処理することにより形成する。
【0039】
次に、第2の絶縁膜21、第3のコンタクトプラグ22および第4のコンタクトプラグ23上に第1の酸化膜24を形成する。その後、リソグラフィ法およびRIEを用いて、第1の酸化膜24を、第3のコンタクトプラグ22および第4のコンタクトプラグ23が露出するように加工し、第1の配線25、26を形成するための溝を形成する。その後、この溝にAlを埋め込み、CMP処理をすることにより、第1の配線25、26を形成する。
【0040】
次に、図3(d)のように、第1の酸化膜24および第1の配線25、26上に第3の絶縁膜27を形成する。さらに、リソグラフィ法およびRIEにより第3の絶縁膜27を第1の配線25が露出するように加工し、ビアホールを形成する。その後、このビアホールにAlを埋め込み、CMP処理することによってビアプラグ28を形成する。
【0041】
次に、第3の絶縁膜27およびビアプラグ28上に第2の酸化膜29を形成する。その後、リソグラフィ法およびRIEによって第2の酸化膜29をビアプラグ28が露出するように加工し、溝を形成する。さらに、この溝にAlを埋め込みCMP処理をすることによって第2の配線30を形成する。
【0042】
なお、ダマシンプロセスを用いてCu配線を施してもよい。この場合はSiN、Ta、TaN、Ru、Cuなどのバリア膜、シード層を形成し、Cuめっきによる埋め込みプロセスにより配線する。以上により、磁気ランダムアクセスメモリを形成する。
【0043】
以上の磁気抵抗効果素子1の構造において、第1の金属層4および第2の金属層8を設けない場合および設けた場合のそれぞれにおいて、350℃において30分間の熱処理を行い、試料振動型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)によって磁気抵抗効果素子1に垂直な方向に磁場を印加し、磁化特性の測定を行なった。図5(a)、(b)のグラフの横軸は磁気抵抗効果素子に印加される外部磁場の強さを、縦軸は磁気抵抗効果素子における磁化の強さを示す。第1の金属層4および第2の金属層8を設けない場合においては、図5(a)のように磁化記憶層3における磁化を反転するのに必要な磁場の大きさがばらついており、磁化特性が劣化している。一方、本実施形態における第1の金属層4および第2の金属層8を設けた構造においては、図5(b)のように磁化記憶層3における磁化を反転するのに必要な磁場の大きさが定まっており、磁化特性の顕著な劣化は見られていない。これは、第1の拡散防止層31および第2の拡散防止層32が、磁化記憶層3および磁化参照層9から非磁性層6へのPd原子の拡散を抑制しているためである。この際、磁化記憶層3および磁化参照層9から拡散する第1の金属原子および第2の金属原子であるPd原子と、第1の拡散防止層31および第2の拡散防止層32を構成するTi原子とがそれぞれ合金を形成する。これにより、本実施形態に係る構造における電気特性評価では、RA値10Ωcm2、磁気抵抗(MR:Magneto Resistive)比100%以上という結果が得られる。
【0044】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、熱処理により磁化記憶層3および磁化参照層9から拡散する第1の金属原子および第2の金属原子と、第1の拡散防止層31および第2の拡散防止層32に含まれる原子とがそれぞれ合金化し、それぞれ第1の金属層4および第2の金属層8を形成する。これにより、磁化記憶層3および磁化参照層9からの拡散原子が非磁性層6に拡散せず、熱処理後においても安定して動作が可能な磁気抵抗効果素子1を得ることができる。
【0045】
なお、上述した第1の実施形態において、第1の金属層4および第2の金属層8を設けることを前提に説明したが、第1の金属層4および第2の金属層8の一方を設けなくてもよい。この場合、磁気ランダムアクセスメモリの製造工程を少なくすることで、製造コストを抑えることができる。
【0046】
なお、本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1…磁気抵抗効果素子
2…下部電極
3…磁化記憶層
4…第1の金属層
5…第1の界面磁性層
6…非磁性層
7…第2の界面磁性層
8…第2の金属層
9…磁化参照層
10…磁化調整層
11…上部電極
12…半導体基板
13…素子分離絶縁膜
14…ゲート絶縁膜
15…ゲート電極
16a…ソース領域
16b…ドレイン領域
17…第1の絶縁膜
18…第1のコンタクトプラグ
19…CVD窒化膜
20…第2のコンタクトプラグ
21…第2の絶縁膜
22…第3のコンタクトプラグ
23…第4のコンタクトプラグ
24…第1の酸化膜
25…第1の配線
26…第1の配線
27…第3の絶縁膜
28…ビアプラグ
29…第2の酸化膜
30…第2の配線
31…第1の拡散防止層
32…第2の拡散防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属原子を含む磁化記憶層と、
前記磁化記憶層上に設けられ、前記第1の金属原子を含む第1の金属層と、
前記第1の金属層上に設けられた第1の界面磁性層と、
前記第1の界面磁性層上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層上に設けられた第2の界面磁性層と、
前記第2の界面磁性層上に設けられ、第2の金属原子を含む第2の金属層と、
前記第2の金属層上に設けられた前記第2の金属原子を含む磁化参照層と、
を有する磁気抵抗効果素子を備えた磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項2】
第2の金属原子を含む磁化参照層と、
前記磁化参照層上に設けられ、前記第2の金属原子を含む第2の金属層と、
前記第2の金属層上に設けられた第1の界面磁性層と、
前記第1の界面磁性層上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層上に設けられた第2の界面磁性層と、
前記第2の界面磁性層上に設けられ、第1の金属原子を含む第1の金属層と、
前記第1の金属層上に設けられた前記第1の金属原子を含む磁化記憶層と、
を有する磁気抵抗効果素子を備えた磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項3】
前記磁化参照層の前記第2の金属層とは反対の側に設けられた磁化調整層を有する請求項1又は請求項2に記載の磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項4】
前記第1の金属層および前記第2の金属層はTa、Ti、V、Y、Zr又はYbから選ばれる元素を含む請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項5】
磁化記憶層を形成するステップと、
前記磁化参照層上に第1の拡散防止層を形成するステップと、
前記第1の拡散防止層上に第1の界面磁性層を形成するステップと、
前記第1の界面磁性層上に非磁性層を形成するステップと、
前記非磁性層上に第2の界面磁性層を形成するステップと、
前記第2の界面磁性層上に第2の拡散防止層を形成するステップと、
前記第2の拡散防止層上に磁化参照層を形成するステップと、
熱処理により、前記磁化記憶層から拡散する第1の金属原子と前記第1の拡散防止層を構成する原子とが合金を形成し、かつ前記磁化参照層から拡散する第2の金属原子と前記第2の拡散防止層を構成する原子とが合金を形成するステップと、
を有する磁気抵抗効果素子を備えた磁気ランダムアクセスメモリの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−99741(P2012−99741A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247871(P2010−247871)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】