説明

端部検査装置、及び被検査体の端部検査方法

【課題】 被検査体の端部の状態を効率良く検査するとともに、被検査体に生じる欠陥部分の画像を容易に取得する。
【解決手段】 薄膜が形成された円板状の被検査体を回転させながら前記被検査体の端部を撮像することで、前記被検査体の端部の状態を検査する端部検査装置において、被検査体の表面は、平坦部と、平坦部の周縁に設けられ、被検査体の周面に向けて下り傾斜する傾斜部とから構成されており、被検査体の上方から、傾斜部と平坦部の一部を含む被検査体の端部の画像を取得する第1の画像取得手段と、薄膜が形成されていない被検査体の表面の端部を示す基本画像と、第1の画像取得手段により取得された画像とを比較することで、薄膜が傾斜部に形成されているか否かを認識する画像比較手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハなどの被検査体の端部を検査する端部検査装置、及び被検査体の端部検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハ上に形成される回路パターンの集積度は、年々高くなっていると共に、生産過程のウェハの表面処理に用いられる物質の種類が増えてきている。これに伴い、生産過程においてウェハ上に形成される膜の境界部分に位置するウェハの端部付近の観察が重要になってきている。この端面付近の欠陥管理がウェハからできる回路の歩留まりに影響する。
【0003】
このため、半導体ウェハなどの端部周辺を複数の方向から観察して半導体ウェハの端部の状態を検査する他に、半導体ウェハの端部周辺にレーザ光を照射して、半導体ウェハの端部周辺で反射したときに生じる正反射光と散乱反射光とをそれぞれ受光して、それら受光量から傷の有無の検出や表面粗さの算出等、半導体ウェハの端部の状態を検査している(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−351850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体ウェハの端部付近における状態の検査は、被検査体の回転及び半導体ウェハの端部の観察を繰り返しながら、半導体ウェハの全周に亘って行うため、1回の半導体ウェハの検査で得られる画像全てを参照して半導体ウェハの端部における欠陥の有無を判断することになるので、半導体ウェハの端部の検査を効率良く行うことができないという問題がある。また、正反射光及び散乱反射光の受光量から被検査体の端部の状態を検査する場合、傷の有無、及び傷の種類(縦傷、横傷及び斜めの傷等)は検出できるが、この場合、傷自体を像として観察していないため、その傷の生成範囲等を観察することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、被検査体の端部の状態を効率良く検査するとともに、被検査体に生じる欠陥部分の画像を容易に取得することができるようにした端部検査装置、及び被検査体の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の端部検査装置は、薄膜が形成された円板状の被検査体を回転させながら前記被検査体の端部を撮像することで、前記被検査体の端部の状態を検査する端部検査装置において、前記被検査体の表面は、平坦部と、該平坦部の周縁に位置し、被検査体の周面に向けて下り傾斜する傾斜部とから構成されており、前記被検査体の上方から、前記傾斜部と前記平坦部の一部を含む前記被検査体の端部の画像を取得する第1の画像取得手段と、前記薄膜が形成されていない被検査体の表面の端部を示す基本画像と、前記第1の画像取得手段により取得された画像とを比較することで、前記薄膜が前記傾斜部に形成されているか否かを認識する画像比較手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記傾斜部と前記周面との稜線から前記薄膜の外縁部までの距離を、前記第1の画像取得手段によって取得された画像から算出する算出手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
また、前記傾斜部と前記周面との稜線に対して前記薄膜の外縁部が交差している場合に、前記薄膜が交差した箇所における、前記被検査体の周面の画像を取得する第2の画像取得手段と、前記第1の画像取得手段、及び第2の画像取得手段により取得された画像から、前記被検査体の傾斜部から周面における前記薄膜の相関関係を取得する第1の状態取得手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、前記被検査体の周面と前記被検査体の裏面との稜線に対して前記薄膜の外縁部が交差している場合に、前記薄膜が交差した箇所における、前記被検査体の裏面端部の画像を取得する第3の画像取得手段と、前記第2の画像取得手段、及び第3の画像取得手段により得られた画像から、前記被検査体の周面から裏面における前記薄膜の相関関係を取得する第2の状態取得手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記薄膜の相関関係から該薄膜の境界が連続していないと判断された場合に、前記第1の画像取得手段、第2の画像取得手段及び第3の画像取得手段を用いて、前記薄膜が連続していない領域の周辺部の画像を取得することが好ましい。
【0011】
さらに、前記第1の画像取得手段、第2の画像取得手段及び第3の画像取得手段によって取得された欠陥及びその周辺部の画像を用いた差分検出方式によって、前記欠陥が生じた範囲を特定する範囲特定手段を備えていることが好ましい。
【0012】
なお、前記範囲特定手段は、前記欠陥が生じた範囲を特定する他に、欠陥の拡散方向を特定することが可能であり、特定された前記欠陥の拡散方向に基づいて、前記第1の画像取得手段、第2の画像取得手段及び第3の画像取得手段の少なくとも何れかの撮像手段を用いた欠陥画像を新たに取得するが好ましい。
【0013】
また、本発明の被検査体の端部検査方法は、円板状の被検査体を回転させながら前記被検査体の端部を撮像することで、前記被検査体の端部を検査する方法において、前記被検査体の上方から、平坦部の一部と、該平坦部の周縁部に位置し、被検査体の周面に向けて下り傾斜する傾斜部とを含む前記被検査体の表面の端部における画像を取得する第1ステップと、前記薄膜が形成されていない被検査体の表面の端部を示す基本画像と、第1ステップにて取得された画像とを比較することで、前記傾斜部における前記薄膜の外縁端の有無を認識する第2ステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被検査体の端部の状態を効率良く検査することができ、また被検査体の薄膜に欠陥が生じている場合には、欠陥の画像を効率良く取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の端部検査装置10の構成を示す概略図である。端部検査装置10は、保持テーブル11、回転駆動部12、水平駆動部13などを備えている。保持テーブル11は、その上面に載置される半導体ウェハ15を吸着保持する。回転駆動部12は、保持テーブル11を所定の角度回転させる。なお、所定の角度とは、例えば隣り合う検査位置で得られた画像を並べた場合に連続した画像となる角度であり、この角度は、後述するCCD29における撮像範囲に基づいて設定される。
【0016】
水平駆動部13は、保持テーブル11及び回転駆動部12を水平方向に移動させる。ここで、水平方向とは、保持テーブル11の半導体ウェハ15を載置する面に対して平行な方向である。この水平駆動部13を設けることで、半導体ウェハ15を保持テーブル11に載置するときに、半導体ウェハ15の中心と保持テーブル11の回転中心とを一致させる、つまり偏芯状態を補正することができる。
【0017】
この端部検査装置10は、半導体ウェハ15の端部上面の画像を取得する第1画像取得部21と、半導体ウェハ15の周面の画像を取得する第2画像取得部22と、半導体ウェハ15の端部下面の画像を取得する第3画像取得部23とを備えている。
【0018】
第1画像取得部21は、保持テーブル11に吸着保持された半導体ウェハ15の上方に配置される。この第1画像取得部21は、光源25、レンズ26、ハーフミラー27、結像レンズ28及びCCD29から構成される。光源25は、例えばハロゲンランプやLEDが用いられる。光源25から照射される光は、レンズ26を介してハーフミラー27に入射され、該ハーフミラー27にて反射される。この反射した光により半導体ウェハ15が照明される。これにより、半導体ウェハ15は落射照明により照明される。なお、この落射照明により照明される半導体ウェハ15の上面端部は、その上方に配置されたCCD29によって撮像される、つまり明視野像が取得される。
【0019】
第2画像取得部22は、光源30、レンズ31、ハーフミラー32、結像レンズ33及びCCD34から構成される。この第2画像取得部22は、保持テーブル11に吸着保持された半導体ウェハ15の側方に、且つ、CCD34の撮像光軸L2が第1画像取得部21のCCD29の撮像光軸L1と直交するように配置される。
【0020】
第3画像取得部23は、光源35、レンズ36、ハーフミラー37、結像レンズ38及びCCD39から構成される。第3画像取得部23は、保持テーブル11に吸着保持された半導体ウェハ15の下方に、且つ、CCD39の撮像光軸L3が第1画像取得部21のCCD29の撮像光軸L1と略同軸となるように配置される。なお、第2画像取得部22及び第3画像取得部23の構成は、第1画像取得部21と同様の構成であることから、これら画像取得部における詳細は省略する。
【0021】
図2は、半導体ウェハ15に対する画像の取得範囲を示している。詳細には、図2(a)は、半導体ウェハ15の上面図、図2(b)は、図2(a)におけるC−C’断面図である。第1画像取得部21は半導体ウェハ15の上方に位置していることから、半導体ウェハ15を上面から見た場合、第1画像取得部21による半導体ウェハ15上の画像取得範囲は、半導体ウェハ15の上面端部における符号Aで示す範囲となる。この符号Aで示す範囲は、半導体ウェハ15の上面端部に形成された傾斜面(以下、上ベベルと称する)15aと、上ベベル15aに連なる平坦面15bの一部と、半導体ウェハ15の外側を含む範囲である。
【0022】
第2画像取得部22は半導体ウェハ15の側面(以下、アペックスと称する)15cの外側に配置されていることから、第2画像取得部22による半導体ウェハ15の画像取得範囲は、アペックス15cとなる。
【0023】
第3画像取得部23は、上述したように、その撮像光軸L3が第1画像取得部21の撮像光軸L1と略同軸となるように配置されていることから、この第3画像取得部23による半導体ウェハ15の画像取得範囲は、第1画像取得部21の画像取得範囲と略同一で、その下面となるが、この第3画像取得部23は、半導体ウェハ15の下方に配置されることから、第3画像取得部15による画像取得範囲は、下ベベル15dと、下ベベル15dに連なる平坦面15eの一部と、半導体ウェハ15の外側を含む範囲となる。
【0024】
図1に戻って、制御装置45は、水平駆動部13を動作させて保持テーブル11の水平方向における位置を調整する他に、回転駆動部12、第1画像取得部21,第2画像取得部22,第3画像取得部23の動作を制御する。この制御装置45は、画像比較部50、状態取得部51、範囲特定部52を備えている。
【0025】
画像比較部50は、薄膜16が形成された半導体ウェハ15の上ベベル15aの画像(以下、検査画像)、アペックス15cや下ベベル15dの検査画像と、薄膜16が形成されていない半導体ウェハ15の画像(以下、基本画像)とを比較し、薄膜16の境界を特定する。なお、以下では、上ベベル15aの検査画像をPU(n:基準となる検査位置で得られた場合をn=1とする)、アペックス15cの検査画像をPA、下ベベル15dの検査画像をPDと称し、また、上ベベル15aの基本画像をPU、アペックス15cの基本画像をPA、下ベベル15dの基本画像をPDと称して説明する。
【0026】
図3は、半導体ウェハ15の上ベベル15aの検査画像PUと、基本画像PUとの比較の手順を示すものである。検査画像PUと基本画像PUとを比較する方法としては、検査画像PUの各画素の画素値から、基本画像PUにおける同位置の画素の画素値を減ずることが挙げられる。例えば、検査画像PUの各画素のうち薄膜16に該当する画素の画素値は、薄膜16が形成されていない画素の画素値とは異なることから、薄膜16が形成された箇所に該当する画素の画素値と、薄膜16が形成されていない画素の画素値との間に差分が生じる。
【0027】
一方、薄膜16が形成されていない箇所に該当する画素の画素値はだいたい一定である。このため、検査画像PUと基本画像PUとを比較することによって、差分が或る閾値よりも大きく生じている画素の領域を、薄膜16が形成されている領域として特定する。この特定により、半導体ウェハ15に形成される薄膜16の境界が特定される。なお、アペックス15aの検査画像PAと基本画像PAとの比較、下ベベル15dの検査画像PDと基本画像PDとの比較においても同様であるので、ここでは、その詳細を省略する。
【0028】
この画像比較部50は、距離算出部54を備えている。この距離算出部54は、例えば上ベベル15aの検査画像PUと基本画像PUとの比較を行った際に、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から薄膜16の境界B1までの距離D(図3参照)を算出する。つまり、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0に対するY方向の位置は上ベベル15aの検査画像PUや基本画像PUから認識され、検査画像PUと基本画像PUとの比較において薄膜16が形成されていない画素の領域も特定されることから、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0からY方向において、画素値に差分が生じない、又は小さい画素数を特定する。なお、1画素に対する縮尺は予めわかっていることから、特定された画素数と縮尺とから、上ベベル15aとアペックス15cとの境界L0から薄膜16の境界B1までの距離Dが算出される。
【0029】
状態取得部51は、画像比較部50による検査画像PUと基本画像PUとを比較した結果から薄膜16の境界B1の状態を取得する。例えば上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から薄膜16の境界B1までの画素数(又は距離)は、画像比較部50によって算出されることから、これら画像数をX方向のそれぞれについて比較していくことで、半導体ウェハ15の上ベベル15aに形成される薄膜16の状態を取得する。例えばX方向の各位置において、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から薄膜16の境界B1までの距離Dが設計段階での交差範囲内となる場合には、薄膜16が正常に形成されていると認識する。
【0030】
図4に示すように、X方向の何れかの位置において、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から薄膜16の境界B1までの画素数が0となる箇所が生じている場合には、薄膜16の境界B1が、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0に交差していると認識する。この場合、第2画像取得部22によってアペックス15cの検査画像PAが取得される。
【0031】
この場合も、取得されたアペックス15cの検査画像PAと基本画像PAとの比較が行われる。この比較も上ベベル15aの検査画像PAと基本画像PAとの比較と同様であるので、その詳細は省略するが、この比較によって、検査画像PAの各画素と対応する基本画像PAの各画素との差分が閾値よりも大きい画素の領域を薄膜16が形成されている領域として、差分が閾値より小さい画素の領域を薄膜16が形成されていない領域として特定する。
【0032】
さらに、薄膜16の境界B1と、アペックス15cと下ベベル15dとの境界B2までZ方向の画素数が0となる場合には、アペックス15cに形成された薄膜16の境界をB1’とすると、この薄膜16の境界B1’がアペックス15cと下ベベル15dとの境界に交差していると判定し、第3画像取得部23により下ベベル15dの検査画像PDが取得される。この場合も、取得された下ベベル15dの検査画像PDと基本画像PDとの比較が行われる。下ベベル15dの検査画像PDと基本画像PDとの比較の流れや説明は、その詳細を省略する。
【0033】
上ベベル15aの検査画像PUと基本画像PUとの比較時、アペックス15cの検査画像PAと基本画像PAとの比較時、さらには、下ベベル15dの検査画像PDと基本画像PDとの比較時に、画素値の差分が閾値よりも小さい領域が外周方向(X方向)に渉って急激に変化している場合がある。この場合には、薄膜16の境界に連続性がないと判定される。この判定が行われたときには、制御装置45は回動駆動部12を介して現在の検査位置から所定角度正逆回転させて、上ベベル15a、アペックス15c、下ベベル15dの検査画像をそれぞれ取得する。
【0034】
範囲特定部52は、薄膜16の境界に連続性がないと判断されたときに取得される上ベベル15a、アペックス15c、下ベベル15dの検査画像から、欠陥が生じている領域(欠陥領域)を特定する。この欠陥の範囲の特定は、例えば差分検査方式が用いられる。差分検査方式は、周知であるため、ここではその詳細は省略するが、図5に示すように、取得された全ての検査画像を、X方向において複数の領域に分割し、隣り合う領域の検査画像同士を、Y方向の位置座標値が同じもの同士の画素値の差分を算出する。この差分を算出したときに、差分が閾値よりも大きい箇所(図5中斜線にて示す領域)を欠陥が生じている箇所、差分が閾値よりも小さい箇所を欠陥が生じていない箇所であるとする。この差分を全ての領域について算出していくことで、欠陥の有無の他に、欠陥の位置や範囲、さらには欠陥が延びている方向(拡散方向)を特定することができる。生成されている欠陥の位置や範囲が特定されると、その欠陥全体の画像が、第1画像取得部21、第2画像取得部22或いは第3画像取得部23のいずれかを用いて取得される。この取得された欠陥全体の画像は、検査位置とともに制御装置45のメモリに記憶される。なお、欠陥の位置が特定できても、その範囲が特定できない場合には、欠陥を検出した検査位置を制御装置45に記憶しておき、半導体ウェハ15の端部を全周に亘って検査した後に、再度半導体ウェハ15を別の機器で検査すればよい。
【0035】
なお、取得される全ての検査画像を、X方向において複数の領域に分割する代わりに、上述した画像判定部50による検査画像と基本画像との比較を行って、薄膜の境界に連続性のない検査画像を抽出した後、抽出された検査画像に対して、上述した差分検査方式による欠陥の範囲を特定することも可能である。
【0036】
次に、本発明の端部検査装置10における半導体ウェハの検査の流れについて図のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
ステップS1は、薄膜16が形成されていない半導体ウェハ15の基本画像PU、PA、PDをそれぞれ取得する処理である。このステップS1では、薄膜16が形成されていない半導体ウェハ15を保持テーブル11上にセットし、第1画像取得部21、第2画像取得部22及び第3画像取得部23を順次作動させて、上ベベル15aの基本画像PU、アペックス15cの基本画像PA、下ベベル15dの基本画像PDを取得する。ステップS1において、各基本画像が取得されると、ステップS1の処理が終了し、ステップS2へと進む。
【0038】
ステップS2は、薄膜16が形成された半導体ウェハ15の上ベベル15aの検査画像PUを取得する処理である。このステップS2では、薄膜16が形成されていない半導体ウェハ15を保持テーブル11から取り外し、薄膜16が形成された半導体ウェハ15を保持テーブル11にセットする。その後、保持テーブル11にセットされた状態を基準位置として、基準位置における半導体ウェハ15の上ベベル15aの検査画像PUを、第1画像取得部21を用いて取得する。上ベベル15aの検査画像を取得するとステップS2の処理が終了し、ステップS3へ進む。
【0039】
ステップS3は、薄膜16の境界を特定する処理である。このステップS3では、画像比較部50が作動して、取得された検査画像PUと基本画像PUとの比較を行い、上ベベル15aにおける薄膜16の境界B1を特定する。この薄膜16の境界B1を特定する処理がなされると、ステップS4に進む。
【0040】
ステップS4は、特定された薄膜16の境界B1が上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0に交差しているか否かを判定する処理である。この判定で、薄膜16の境界B1が、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0に交差していると判定された場合にはステップS5に進み、交差していないと判定された場合には、ステップS10に進む。
【0041】
ステップS5は、アペックス15cの検査画像PAを取得する処理である。このステップS5では、第2画像取得部22が作動して、アペックス15cの検査画像PAが取得される。この処理が終了すると、ステップS6に進む。
【0042】
ステップS6は、取得されたアペックス15cの検査画像PAと基本画像PAとの比較を行い、アペックス15cに形成された薄膜16の境界B1’を特定する処理である。薄膜16の境界B1’を特定する処理がなされると、ステップS7に進む。
【0043】
ステップS7は、特定された薄膜16の境界B1’がアペックス15cと下ベベル15dとの境界B2に交差しているか否かを判定する処理である。この判定で、薄膜16の境界B1’が、アペックス15cと下ベベル15dとの境界B2に交差していると判定された場合にはステップS8に進み、交差していないと判定された場合には、ステップS10に進む。
【0044】
ステップS8は、下ベベル15dの検査画像を取得する処理である。このステップS8では、第3画像取得部23が作動して、下ベベル15dの検査画像PDが取得される。この処理が終了すると、ステップS9に進む。
【0045】
ステップS9は、取得された下ベベル15dの検査画像PDと基本画像PDとの比較を行い、下ベベル15dに形成された薄膜16の境界を特定する処理である。薄膜16の境界を特定する処理がなされると、ステップS10に進む。
【0046】
ステップS10は、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から、薄膜16の境界B1までの距離Dを算出する処理である。つまり、ステップS3によって、薄膜16の境界B1が特定されていることから、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から薄膜の境界B1までの画素数から、実際の距離Dを算出する。この上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から、薄膜16の境界B1までの距離Dを算出する処理が終了すると、ステップS11へと進む。
【0047】
ステップS11は、半導体ウェハ15に形成される薄膜16の境界B1において、連続性がある境界であるか否かを判定する処理である。このステップS11で、連続性がないと判定された場合にはステップS12に進み、連続性があると判定された場合には、ステップS14に進む。
【0048】
ステップS12は、欠陥領域の特定を行う処理である。この欠陥領域の特定を行う流れは、上述しているが、現在の検査位置から、半導体ウェハ15がセットされた保持テーブル11を所定の角度正逆回転させたときの検査画像を取得し、取得された検査画像から、欠陥領域や、欠陥が広がる方向などを特定する処理である。この処理が実行されると、ステップS13に進む。
【0049】
ステップS13は、特定された欠陥領域の画像を取得する処理である。このステップS13では、ステップS12で特定された欠陥領域に基づいて、第1画像取得部21、第2画像取得部22、及び第3画像取得部23を作動させて、欠陥領域の画像を取得する。この処理が終了するとステップS14に進む。
【0050】
ステップS14は、半導体ウェハ15の全周に亘って検査が実行されたか否かを判定する処理である。このステップS13で、半導体ウェハ15の全周に亘って検査が実行されていると判定された場合には、半導体ウェハ15の検査が終了する。一方、全周に亘って検査が実行されていない場合には、ステップS15に進み、保持テーブルを所定の角度回転させる。その後、ステップS2に戻って、異なる検査位置における半導体ウェハ15の端部の検査が上述した手順で実行される。
【0051】
これによれば、上ベベル15aの検査画像PUを基本画像PUと比較して薄膜16の形成状態が正常となり、また、薄膜16の境界B1に連続性があることが特定されている限りは、アペックス15cの検査画像PA、下ベベル15dの検査画像PDをそれぞれ取得する必要はないことから、取得される検査画像の画像数を低減させることができるとともに、各検査画像を比較する必要もないことから半導体ウェハ16の欠陥の有無を効率良く検出することができる。
【0052】
また、上ベベル15aの検査画像PUを基本画像PUと比較したときに薄膜16の形成状態が正常となり、また薄膜16の境界に連続性があることが特定された場合には、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0から薄膜16の境界B1までの距離Dを算出することから、実際に形成される薄膜16の形成状態を把握することで、薄膜16の形成状態を管理することが可能となる。
【0053】
薄膜16の境界B1が、上ベベル15aとアペックス15cとの境界B0に交差している場合や、アペックス15cと下ベベル15dとの境界B2に交差している場合に、アペックス15cや下ベベル15dの検査画像を取得することから、欠陥部分の画像を効率良く取得することができる。
【0054】
また、薄膜16の境界B1に連続性がない場合に検査位置周辺の検査画像を取得することで、薄膜16の境界B1の荒れに起因する欠陥部分の画像を効率的に取得することができる。
【0055】
さらに、差分検出方式を用いて、取得した検査画像に対する欠陥の範囲を特定するから、欠陥が生じている範囲や欠陥が拡散する方向、さらには、欠陥自体の種類をも特定することができる。
【0056】
本実施形態では、上ベベル15a、アペックス15c、下ベベル15dの基本画像PU、PA、PDは、薄膜15の欠陥検出を行う前に、薄膜15が形成されていない半導体ウェハ15を実際に保持テーブル11に保持することにより取得しているが、予め、これら基本画像を取得しておくことも可能である。また、これら基本画像は、検査時に撮像する全ての回転角度位置に対して取得された基本画像であってもよいし、半導体ウェハがどの回転位置であっても同一形状であれば、特定の回転位置における基本画像であってもよい。各回転角度位置で基本画像を取得している場合、検査画像PU,PA,PDとの差分をとる際には、同位置回転角度位置の基本画像を用いたほうがよい。
【0057】
本実施形態では、3つの画像取得部を有する端部検査装置の例を取り上げているが、これに限定する必要はなく、1つの画像取得部を備えた端部検査装置であってもよい。つまり、画像取得部が1つの場合には、初期の状態では上ベベルの検査画像を取得できるように画像取得部を配置しておき、アペックス及び下ベベルの検査画像を取得する必要がある場合にのみ、上ベベルの検査画像を取得する位置から、アペックスの検査画像を取得する位置、又は下ベベルの検査画像を取得する位置へと、画像取得部を移動させればよい。
【0058】
本実施形態では、上ベベルに薄膜の境界がある場合にのみ、上ベベルとアペックスとの境界から薄膜の境界までの距離を算出しているが、これに限定する必要はなく、例えばアペックスに薄膜の境界がある場合に、下ベベルとアペックスの境界から薄膜の境界までの距離を算出する、或いは下ベベルに薄膜の境界がある場合に、下ベベルと平坦面との境界から薄膜の境界までの距離を算出することも可能である。このように、各境界から薄膜の境界までの距離を算出することで、薄膜のタレの状態を把握することができる。
【0059】
本実施形態では、距離算出部を画像比較部に設けた実施形態としているが、これに限定される必要はなく、例えば状態取得部に設けることも可能である。
【0060】
本実施形態では、端部検査装置としているが、半導体ウェハなどの被検査体の表面全体を検査する検査装置に、本発明の端部検査装置における機能を付加することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の端部検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】半導体ウェハの構成を示す説明図である。
【図3】薄膜が上ベベルに形成されている場合の検査画像と基本画像との比較を行う際の流れを示す図である。
【図4】薄膜が、上ベベルからアペックスに跨って形成されている場合の検査画像と基本画像との比較を行う際の流れを示す図である。
【図5】薄膜の境界に連続性がない場合に、欠陥領域を特定する流れを示す図である。
【図6】半導体ウェハの端部を検査する流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
10…端部検査装置,15…半導体ウェハ,15a…上ベベル,15c…アペックス,15d…下ベベル,21…第1画像取得部,22…第2画像取得部,23…第3画像取得部,45…制御装置,50…画像比較部,51…状態取得部,52…範囲特定部,54…距離算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が形成された円板状の被検査体を回転させながら前記被検査体の端部を撮像することで、前記被検査体の端部の状態を検査する端部検査装置において、
前記被検査体の表面は、平坦部と、該平坦部の周縁に位置し、被検査体の周面に向けて下り傾斜する傾斜部とから構成されており、
前記被検査体の上方から、前記傾斜部と前記平坦部の一部を含む前記被検査体の端部の画像を取得する第1の画像取得手段と、
前記薄膜が形成されていない被検査体の表面の端部を示す基本画像と、前記第1の画像取得手段により取得された画像とを比較することで、前記薄膜が前記傾斜部に形成されているか否かを認識する画像比較手段と、
を備えたことを特徴とする端部検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の端部検査装置において、
前記傾斜部と前記周面との稜線から前記薄膜の外縁部までの距離を、前記第1の画像取得手段によって取得された画像から算出する算出手段を備えていることを特徴とする端部検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の端部検査装置において、
前記傾斜部と前記周面との稜線に対して前記薄膜の外縁部が交差している場合に、前記薄膜が交差した箇所における、前記被検査体の周面の画像を取得する第2の画像取得手段と、
前記第1の画像取得手段、及び第2の画像取得手段により取得された画像から、前記被検査体の傾斜部から周面における前記薄膜の相関関係を取得する第1の状態取得手段と、
を備えていることを特徴とする端部検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の端部検査装置において、
前記被検査体の周面と前記被検査体の裏面との稜線に対して前記薄膜の外縁部が交差している場合に、前記薄膜が交差した箇所における、前記被検査体の裏面端部の画像を取得する第3の画像取得手段と、
前記第2の画像取得手段、及び第3の画像取得手段により得られた画像から、前記被検査体の周面から裏面における前記薄膜の相関関係を取得する第2の状態取得手段と、
を備えていることを特徴とする端部検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の端部検査装置において、
前記薄膜の相関関係から該薄膜の境界が連続していないと判断された場合に、前記第1の画像取得手段、第2の画像取得手段及び第3の画像取得手段の少なくとも1つを用いて、前記薄膜が連続していない領域の周辺部の画像を取得することを特徴とする端部検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の端部検査装置において、
前記第1の画像取得手段、第2の画像取得手段及び第3の画像取得手段によって取得された欠陥及びその周辺部の画像を用いた差分検出方式によって、前記欠陥が生じた範囲を特定する範囲特定手段を備えていることを特徴とする端部検査装置。
【請求項7】
請求項6記載の端部検査装置において、
前記範囲特定手段は、前記欠陥が生じた範囲を特定する他に、欠陥の拡散方向を特定することが可能であり、
特定された前記欠陥の拡散方向に基づいて、前記第1の画像取得手段、第2の画像取得手段及び第3の画像取得手段の少なくとも何れかを用いて、被検査体に生じた欠陥の画像を取得することを特徴とする端部検査装置。
【請求項8】
円板状の被検査体を回転させながら前記被検査体の端部を撮像することで、前記被検査体の端部を検査する方法において、
前記被検査体の上方から、平坦部の一部と、該平坦部の周縁部に位置し、被検査体の周面に向けて下り傾斜する傾斜部とを含む前記被検査体の表面の端部における画像を取得する第1ステップと、
前記薄膜が形成されていない被検査体の表面の端部を示す基本画像と、第1ステップにて取得された画像とを比較することで、前記傾斜部における前記薄膜の外縁端の有無を認識する第2ステップと、
を備えたことを特徴とする被検査体の端部検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−20021(P2009−20021A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183543(P2007−183543)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】