説明

精密機器の外殻構造、その製造方法及び製造に用いる金型

【課題】外観品質が高く、製造容易且つ安価な精密機器の外郭構造の提供を課題とする。
【解決手段】導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層と、エラストマーからなる外側層とを一体成形してなる精密機器の外殻構造において、前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、前記外側層を構成するエラストマーは、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部が外面側に露呈し、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とが同一面上に位置する精密機器の外殻構造を解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器(例えば、カメラ、プロジェクタ、コンピュータ用マウス、双眼鏡、測距器、測量器、バッテリパック、携帯電話等)の外殻構造と、その製造方法並びに製造に用いる金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラや携帯電話等の精密機器は、その本来の機能に止まらず、嗜好性、趣味性等の要素が要求される。このため、外観としては、複数の色彩や複雑な起伏等を伴う立体形状等を実現することが、美感を大きく向上させるための手段として必要とされている。
【0003】
一方、これらの精密機器の外殻構造は、従来金属製のものが主流であったが、現在では、軽量化、製造コストの低廉化の観点から合成樹脂製の外殻構造も多用される。そして、合成樹脂製の外殻構造はそのまま使用すると外観品質が不十分なことも多いことから、接着剤等を用いて、外装用シート部材を前記合成樹脂製の外殻構造上へ固着する手段が用いられることがある。
【0004】
しかし、精密機器を長時間手に持って使用する際に、使用者の握力や精密機器の重量による負荷が作用することがある。また、使用者の汗や手の温度の上昇に伴い、精密機器に不要な水分や熱伝達が生ずる。これらの要因が重なることで、前記した合成樹脂部品上に接着された外装用シート部材がずれるなどの不具合が発生することがある。
【0005】
このような不具合を回避可能な手段として、例えば、複数の成型部品から成る外装部を有する撮像装置のグリップにおいて、前記外装部に固定されたグリップ部と、前記グリップ部に設けられた指かけ用の金属製の凸形状部とを備え、前記凸形状部は、プレス加工により成形されており、前記グリップ部は、左右一対の金属製グリップ部及び非金属製グリップ部から成り、非金属製グリップ部は、プラスチック及びゴムの一体成型品であることを特徴とするカメラのグリップが公知である(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
また、機器が収納されるインナーキャビネットと、該インナーキャビネットの外周を覆う金属製の外装カバーとからなる機器の外装構造において、前記インナーキャビネットを樹脂で成形するとともに、前記外装カバーを装着し、前記インナーキャビネットに導電性樹脂を用い、外層がエラストマーで内装が前記樹脂によって2色成形したグリップ部を設けたことを特徴とする機器の外装構造(例えば特許文献2参照。)が公知である。
【0007】
更に、美感を向上させるべく、インサート部材を用いる二色成形に関するものとして、インサート部品を第一金型により第一色樹脂で形成した後、このインサート部品を第二金型内に定置した後第二色樹脂を注入してインサート部品の一部が露呈した状態で一体化した成形品を成形するインサート二色成形方法において、前記インサート部品を、幅方向中央の中央部分と幅方向両側の一対の側片部分とが低剛性部により連続し、前記中央部分の幅方向中央の表面が前記両側片部分の表面よりも突出し、かつ、前記中央部分の幅方向中央の裏面が前記両側片部の裏面よりも内側に凹入して形成し、このインサート部品を前記第二金型内に定置し第二色樹脂が注入されたときその圧力で変形して前記インサート部品の全外周面が前記第二金型内に密着するようにしたことを特徴とするインサート二色成形方法(例えば、特許文献3参照。)が公知である。
【0008】
【特許文献1】特開2006−47857号
【特許文献2】特開2001−21975号
【特許文献3】特開平06−312433号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に係る発明は、部分的にプラスチックとエラストマーの二色成形により形成される非金属製グリップ部を備えることによって、エラストマーによる良好なグリップ感を得るとともに、エラストマーとプラスチックを貼着せずに成形し、曲面を多用する外観にエラストマー部を露出させることができるため、デザイン上の自由度を向上する効果を備えると主張するものである。
【0010】
ところで、上記カメラを含めた精密機器は、誤作動防止のため、外からの電磁波を遮断する必要がある。また、前記精密機器は、電磁波を外部へ放出させない対策(EMI対策)を行う必要がある。更に、デジタルカメラに至っては、回路自体から生ずる電磁波が電子データに影響を与える虞があるため、電子データを格納する記録媒体に対して当該電磁波を遮断する必要もある。このように、精密機器の外殻構造は、十分に電磁波を遮断できる能力を確保する必要がある。
【0011】
このため、電磁波を遮断すべく、導電性材料を上記特許文献1に係る発明に用いると、外殻構造の製造時において、プラスチックに対して導電性材料を十分に分散溶融状態とするために、高温条件が必要となる。この高温条件が満たされないとプラスチックに導電性材料が外面に浮き出す等の不具合を生じることになり、他方、二色成形にエラストマーに対する高温処理を用いることは、エラストマーの外観品質に悪影響を及ぼすこととなる。従って、このような工程においては一般的に複雑な熱制御が必要となることも多く、また熱制御には設定温度の安定等に時間を要するため、生産効率の低下を伴うことが多い。
【0012】
また、プラスチックを露呈させると外観体裁の悪さを隠すために別途導電性材料等で被覆する必要が生ずる。従って、外観の品質と電磁波の遮断機能の双方を十分に確保し、生産効率を向上させることは非常に困難であった。
【0013】
また、特許文献2は、カメラのグリップについて、エラストマーと導電性樹脂を混合した合成樹脂を二色成形して用い、合成樹脂に導電性樹脂を用いる構成を開示するものである。当該構成によれば、エラストマー一層のみが外面に露呈する構成である。このため、上記特許文献1に係る発明と同様に、導電性能を確保しながら十分にエラストマーの外観品質を得ることは非常に困難であった。そして、外観の装飾性をより向上させるべく、エラストマーを二色以上外側に露呈するように設ける構成を付加しようとすると、異なる二種のエラストマー相互は境界部分で非常に侵食しやすく、その細部の仕上がりにおいて高品質な外観を得ることは極めて困難であった。
【0014】
特許文献3に係る発明は、インサート部材を用いる二色成形に関するものである。合成樹脂製のインサート部材の変形によってインサート後に射出圧縮成形されるエラストマーを不要な箇所への侵入を防止して所定の位置のみに成形する手段を開示する。当該特許文献3に係る発明は、合成樹脂製のインサート部品における中央部分の幅方向中央の表面が前記両側片部分の表面よりも突出し、かつ、前記中央部分の幅方向中央の裏面が前記両側片部の裏面よりも内側に凹入して形成した構成とすることによって、その後の成形時の圧力で大きく変形して前記インサート部品の全外周面が前記第二金型内に密着するものであり、金型等の精度を問題とせずに、長尺の軟質合成樹脂成形物とエラストマーの二色成形を行うことに利点を有する。
【0015】
しかしながら、特許文献3に係る発明は、金型に精度を要求することなく、長尺物であるインサート部品の特殊な形状とその柔軟性によって長尺物に対して行うものであることから、複雑な成形物の形状には適さず、また硬質合成樹脂を対象とすることはできなかった。
【0016】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、電磁波を遮断する機能を確保した上で、複雑な熱制御を不要とし、成形後の塗装を行うことなく良好な外観品質を得ることができる、二色若しくは三色成形(二色成形に更にインサート工程を付加したもの)による精密機器の外殻構造と、その製造方法の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層と、エラストマーからなる外側層とを一体成形してなる精密機器の外殻構造において、前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、前記外側層を構成するエラストマーは、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部が外面側に露呈し、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とが同一面上に位置することを特徴とすることを特徴とする精密機器の外殻構造、
また、エラストマーからなる外側層と、導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層とを射出圧縮成形する精密機器の外殻構造の製造方法において、前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、前記外側層を構成するエラストマーはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、内側層を金型内で射出成形する一次成形工程と、一次成形工程後、前記金型を開いて予め成形された第一エラストマー層を前記内側層上に配置する中間工程と、該中間工程後、金型を閉じた状態とし、第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出成形する二次成形工程によって、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部を外面側に露呈した状態とし、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とを同一面上に位置させることを特徴とする精密機器の外殻構造の製造方法、
硬質合成樹脂からなる内側層を金型内で射出成形する一次成形工程と、一次成形工程後前記金型を開いて予め成形された第一エラストマー層を前記内側層上に配置する中間工程と、該中間工程後金型を閉じた状態とし、第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出成形する二次成形工程を備える精密機器の外殻構造の製造工程中、二次成形工程に用いる金型において、硬質合成樹脂層の外形輪郭と相似形でより大きい内側輪郭で、且つ、第一エラストマー層の厚さ寸法より小さい高さ寸法となる突出部を備えたことを特徴とする金型を、課題を解決するための手段の基本とする。
【0018】
尚、本発明における「同一面上」とは、同一平面上であることのみならず、同一曲面上であることも含む趣旨である。
また、「内側層の外面と外側層の外面とが同一面上に位置する」とは、夫々の層の外面の全ての部分を同一面上とする必要はなく、同一面上にあることが必要な部分のみについて、同一面上であればよい。
更に、請求項1及び請求項2に係る発明においては、内側層である硬質合成樹脂層と、外側層であるエラストマー層とが同一面上にあればよいため、エラストマー層を構成する第一エラストマー層及び第二エラストマー層を設け、第一エラストマー層及び第二エラストマー層相互が同一平面上にない段差を設けたものも含む趣旨である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る精密機器の外殻構造によれば、導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層と、エラストマーからなる外側層とを一体成形してなる精密機器の外殻構造において、前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、前記外側層を構成するエラストマーは、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部が外面側に露呈し、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とが同一面上に位置することから、ポリエステル系エラストマーと、導電性材料として炭素繊維を混入した硬質合成樹脂との組合わせによって、複雑な熱制御を行うことなく、十分な導電性を確保した外観体裁の良い精密機器の外殻構造を実現することができる。
【0020】
一方、請求項2に係る発明によれば、請求項1の構成に加え、操作ボタンの周縁部若しくは螺子の取着部分となる位置で、内側層に形成した貫通穴若しくは切欠部の周縁部外面側から起立する周壁を形成し、外側層が前記周壁を一体として囲む構成を備えたことから、例えばカメラのグリップ部等といった柔軟性を要求される部分と、操作ボタンの周縁部や螺子の取着部分のように操作や取着に適した硬度を有する部分とを併せて形成することができる。この結果、柔軟性を要求される部分では手触りがよく高級感を付与することができる。また、操作ボタンの周縁部や螺子の取着部分のように操作や取着に適した硬度を有する部分では、操作ボタンの押し込み操作性や、螺子の良好な取着を可能とし、繰り返しの操作によって外側層が剥離する虞を低減し、耐久性を向上させることができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、上記請求項1若しくは請求項2に係る発明の構成に加えて、外側層を構成するエラストマーが、第一エラストマー層と第二エラストマー層とからなり、第一エラストマーの外面と第二エラストマーの外面が溝を介して同一面上に位置する構成としたことによって、内側層、第一エラストマー層、第二エラストマー層の全ての層が一体成形された状態で、外面で同一面上に位置することとなり、良好な外観品質を確保する。このため、当該外殻構造のみでカメラ等の対象物を被覆することができ、成形後の塗装や別途被覆手段を設ける等の必要がなく、製造時の省力化や製造コストの低廉化を実現することができる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、エラストマーからなる外側層と、導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層とを射出圧縮成形する精密機器の外殻構造の製造方法において、前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、前記外側層を構成するエラストマーはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、内側層を金型内で射出成形する一次成形工程と、一次成形工程後、前記金型を開いて予め成形された第一エラストマー層を前記内側層上に配置する中間工程と、該中間工程後、金型を閉じた状態とし、第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出成形する二次成形工程によって、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部を外面側に露呈した状態とし、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とを同一面上に位置させる精密機器の外殻構造の製造方法としたことから、一定温度で一次成形工程を処理した後、中間工程において金型を開放することで、自然冷却されることから、複雑な熱制御を行う必要がなく、二次成形工程での第一エラストマー層との融着を容易とすることができる。このため、非常に短時間で効率よく、外観体裁の良い精密機器の外殻構造を製造することができる。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、上記請求項4の製造方法に加えて、二次成形工程における金型は、前記硬質合成樹脂層の外形輪郭と相似形で且つより大きい輪郭の突出部を備えており、二次成形工程において金型が第一エラストマー層を押圧し、該押圧力によって第一エラストマー層が変形して前記突出部内空間を満たし、次いで第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出することで、成形空間のうち突出部の外側の領域に第二エラストマー層を形成することから、二次成形工程において金型が第一エラストマー層を押圧し、該押圧力によって第一エラストマー層が変形して前記突出部内空間を満たし、次いで第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出することで、突出部内空間へ第二エラストマー層が侵入せず、成形空間のうち突出部より外側の領域に、非常に体裁の良い状態で、第二エラストマー層を形成することができる。また、突出部の押圧後の成形によって、第一エラストマーと第二エラストマーの表面側の境界に溝部を形成することで、第一エラストマー部材の輪郭をより明瞭とすることができる。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、硬質合成樹脂からなる内側層を金型内で射出成形する一次成形工程と、一次成形工程後前記金型を開いて予め成形された第一エラストマー層を前記内側層上に配置する中間工程と、該中間工程後金型を閉じた状態とし、第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出成形する二次成形工程を備える精密機器の外殻構造の製造工程中、二次成形工程に用いる金型において、硬質合成樹脂層の外形輪郭と相似形でより大きい内側輪郭で、且つ、第一エラストマー層の厚さ寸法より小さい高さ寸法となる突出部を備えた金型とすることで、上記請求項5に係る製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層と、エラストマーからなる外側層とを一体成形してなる精密機器の外殻構造において、前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、前記外側層を構成するエラストマーは、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部が外面側に露呈し、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とが同一面上に位置し、操作ボタンの周縁部若しくは螺子の取着部分となる位置で、内側層に形成した貫通穴若しくは切欠部の周縁部外面側から起立する周壁を形成し、三色成形となる部分は、外側層が前記周壁を一体として囲む構成を備え、外側層を構成するエラストマーが、第一エラストマー層と第二エラストマー層とからなり、第一エラストマーの外面と第二エラストマーの外面が溝を介して同一面上に位置するものとした精密機器の外殻構造によって、エラストマーは、ポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体とすることで、硬質合成樹脂からなる内側層の熱処理後の自然冷却のみで不具合を生じることなく、十分な導電性を確保した外観体裁の良い精密機器の外殻構造を実現することができる。
【0026】
また、エラストマーからなる外側層と、導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層とを射出圧縮成形する精密機器の外殻構造の製造方法において、前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、前記外側層を構成するエラストマーはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、内側層を金型内で射出成形する一次成形工程と、一次成形工程後、前記金型を開いて予め成形された第一エラストマー層を前記内側層上に配置する中間工程と、該中間工程後、金型を閉じた状態とし、第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出成形する二次成形工程によって、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部を外面側に露呈した状態とし、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とを同一面上に位置させ、二次成形工程における金型は、第一エラストマー層の外形輪郭と相似形で且つより大きい輪郭で、第二エラストマー層の厚さ寸法よりも小さい寸法となる突出部を備えており、二次成形工程において金型が第一エラストマー層を押圧し、該押圧力によって第一エラストマー層が変形して前記突出部内空間を満たし、次いで第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出することで、突出部内空間へ第二エラストマー層が侵入することがなく、成形空間のうち突出部の外側の領域に第二エラストマー層を形成する精密機器の外殻構造の製造方法を実現した。
【実施例】
【0027】
図1は本発明の実施例に係る精密機械の外殻構造の一例であるカメラのグリップ部を示す斜視図、図2は本発明の実施例に係るカメラのグリップ部における硬質合成樹脂部材を示す平面図、図3は本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)コア側金型と一次成形用金型を閉じて第一射出空間を形成した状態を示す断面図、(イ)第一射出空間内に硬質合成樹脂を射出した状態を示す断面図、図4は本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、硬質合成樹脂部材を成形後に型を開いた状態を示す断面図、図5は本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)硬質合成樹脂部材の嵌合用凹部32に第一エラストマー部材を挿入する状態、及び(イ)挿入後状態を示す断面図、図6は本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程におけるコア側金型と二次成形用金型との関係を示す断面図、図7は本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)コア側金型と二次成形用金型を閉じて第二射出空間を形成した状態を示す断面図、(イ)第二射出空間内に第二エラストマーを射出した状態を示す断面図、図8は本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)二次成形用金型を開いた状態を示す断面図、(イ)完成したカメラのグリップ部を示す断面図、図9は本発明の他の実施例に係るカメラのグリップ部を示す(ア)斜視図、(イ)操作スイッチとの関係を示す斜視図、(ウ)B−B断面図、図10は図9とは他端側となるカメラのグリップ部を示す(ア)正面図及び(イ)そのC−C断面図である。尚、本実施例においては、本発明の硬質合成樹脂層3に相当ものとして硬質合成樹脂部材30、第一エラストマー層1に相当するものとして第一エラストマー部材10、第二エラストマー層2に相当するものとして第二エラストマー部材20の用語を用いる。
【0028】
本発明の実施例に係る精密機器の外殻構造として、特に、カメラにおける三色成形によって形成したグリップ部を例示する。本発明の実施例に係るデジタルカメラのグリップ部は、装飾を目的とした三色成形、より詳しくは、射出による二色成形とインサート成形の組み合わせによる。
【0029】
グリップ部は、内側層となる硬質合成樹脂部材30と外側層となる第一エラストマー部材10及び第二エラストマー部材20からなる。第二エラストマー部材20は、前記第一エラストマー部材10の周縁を囲み一体として設けている。また、内側層と第一エラストマー部材10を一体とし、且つ、内側層と第二エラストマー部材10を一体として成形している。
【0030】
上記硬質合成樹脂部材30は、ポリカーボネート及びASA(アクリロニトリルースチレンーアクリル酸エステル)樹脂を主成分とし、導電性材料として炭素繊維を20重量%程度混入したものである。また、第一エラストマー部材10及び第二エラストマー部材20は、いずれもポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体を主成分とするポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いている。このブロック共重合体は、ポリエステルの硬質ブロック間にポリエーテルの軟質ブロックを介在した分子構造を備えたものである。
【0031】
尚、本発明における炭素繊維の含有率は、上記実施例に示した20重量%に限定するものではなく、概ね10重量%乃至30重量%程度で良好な導電性、外観を発揮することができる。炭素繊維の含有率が10重量%に満たない状態では導電性の著しい低下を招き、他方、炭素繊維の含有率が30重量%を越えると、表面に炭素繊維が浮き出して、外観を損なう傾向が顕著となる。
【0032】
第一エラストマー部材10の周縁を囲む第二エラストマー部材20には、第一エラストマー部材10との境界位置に、溝70を形成している。
【0033】
次に、操作ボタンに対応する切欠部を有する他の実施例のカメラのグリップ部を図9(ア)に、また切欠部内に操作スイッチを配置した状態を同図9(イ)に示す。
【0034】
上記図9(ウ)のグリップ部のB−B断面構成を示すように、操作ボタンの周縁部となる位置で、内側層に形成した切欠部の周縁部外面側から起立する周壁34を形成し、外側層である第二エラストマー20が前記周壁34を一体として囲む構成である。
【0035】
当該構成によって操作ボタンの周縁部位置の硬度を向上させることで、操作ボタンの押し込みやすさを向上させることができる。また、同構成によって、外殻構造自体の強度を確保することができ、精密機器への当該外装構造の取着を容易とすることができる。
【0036】
更に、切欠部に変えて貫通穴を有するカメラの他端側のグリップについて図10に示す。図10(イ)に示すように、操作ボタンの周縁部となる位置で内側層に形成した貫通穴の周縁部外面側から起立する周壁34を形成し、外側層である第二エラストマー部材20が前記周壁34を一体として囲む構成である。
【0037】
当該貫通穴によっても、切欠部と同様に操作ボタンの周縁部位置の硬度を向上させることで、操作ボタンの押し込みやすさを向上させることができる。また、同構成によって、外殻構造自体の強度を確保することができ、精密機器への当該外装構造の取着を容易とすることができる。
【0038】
次に、本発明の実施例に係るカメラのグリップ部の製造方法について示す。
(一次工程)
コア側金型4とキャビティ側の一次成形用金型5の組合わせによって形成される射出空間に硬質合成樹脂を射出し、内側層となる硬質合成樹脂部材30を成形する。このときの樹脂温度は250℃乃至280℃程度である。コア側金型4は、図3(ア)(イ)に示すように、一次工程の製造物である硬質合成樹脂部材30について、その内側面のみならず外側面の一部である外表部31を成形するものである。
【0039】
また、本実施例ではコア側金型4は約70℃、キャビティ側の一次成形用金型5は約90℃程度で保持されている。尚、コア側金型4の温度は60℃以上であることが望ましい。当該コア側金型4の温度が60℃未満になると、炭素繊維が表面に浮き出した状態となり、外観品質が低下するからである。
また、キャビティ側の一次成形用金型の温度は50℃以上であることが望ましい。キャビティ側の一次成形用金型の温度が50℃未満になると、後記二次工程で使用する第一エラストマー部材10及び第二エラストマー部材20との接着性に支障を生ずるためである。
【0040】
次に、図4に示すように、硬質合成樹脂部材30の射出成形後、型開きを行う。型開きによって、硬質合成樹脂部材30は自然冷却される。自然冷却によって硬質合成樹脂部材30の表面温度(即ち、二次工程におけるエラストマーとの溶着面)は低下して60℃以下(本実施例による実測値では56℃)程度となる。
【0041】
型開き時において、硬質合成樹脂製の硬質合成樹脂部材30は、コア側金型4内に配置される。前記硬質合成樹脂部材30はその一部に第一エラストマー部材10を嵌入する嵌合用凹部32を有する。
【0042】
(中間工程(インサート工程))
第一エラストマー部材10は別工程において予め成形されたものであり、前記硬質合成樹脂部材30に形成された嵌合用凹部32に対応する凸部を備えている。また、嵌合用凹部32内には内面側に開口する逃し穴33を形成している。逃し穴33は、嵌合用凹部32内の圧力が極端に高まることを防止し、硬質合成樹脂部材及び金型の変形等を防止するために設けたものである。硬質合成樹脂部材30の嵌合用凹部32に対して第一エラストマー部材10の凸部を嵌入する。
【0043】
(二次工程)
図5(ア)(イ)に示すように、第一エラストマー部材10を硬質合成樹脂製の内装部材に嵌合した後、図6乃至図7に示すように、前記コア側金型4とキャビティ側の二次成形用金型6を閉型する。このときの樹脂温度は200℃乃至227℃程度である。また、コア側金型4は約70℃、キャビティ側の二次形用金型6は約47℃程度で保持されている。
図7に示すように、キャビティ側の金型を二次成形用金型6とすることによって、第二エラストマー部材20を形成するための第二射出空間62となる。
【0044】
尚、キャビティ側の二次成形用金型6の型温は、30℃乃至60℃の範囲とすることが好ましい。当該二次成形用金型6の型温が、60℃を超えると、第二エラストマー部材20にバリを生じやすくなる。また、キャビティ側の二次形用金型6の型温が、30℃を下回ると、硬質合成樹脂部材30との接着に支障を生ずるためである。
【0045】
ここで、二次成形工程における金型は、前記第一エラストマー部材10の外形輪郭と相似形の輪郭で且つ第一エラストマー部材10より大きい輪郭の空間(突出部内空間61)を有する突出部60を備えている。従って、図6の如く断面として示すと、突出部の内幅W2は第一エラストマー部材の外幅W1よりも大きいものとして表れる。
【0046】
コア側金型4とキャビティ側の二次成形用金型6の閉型によって、突出部内空間61に第一エラストマー部材10が入り込み、突出部60の内面に沿って変形する。このとき、突出部60の縁面63と第一エラストマー部材10の変形形成された端面11とが同一平面上に位置するように設定している。
【0047】
この設定(突出部60の縁面と変形された第一エラストマー部材10の端面とが同一平面上に位置する設定)を決定する要素としては、第一エラストマー部材10の嵩高さ、大きさ、材質、突出部60の嵩高さ、突出部内空間61の大きさ等がある。
【0048】
そして、第二エラストマー部材20の成形材料である第二エラストマー部材20を第二射出空間62へ射出することで、成形空間のうち突出部60より外側の領域に第二エラストマー部材20を形成する。二次成形工程における金型の突出部の高さ寸法H1は、第二エラストマー層の厚さ寸法T1よりも小さい寸法であり(図8(ア)部分拡大図を参照。)、且つ、突出部60の縁面と変形された第一エラストマー部材10の端面とが同一平面上に位置する設定したことから、第二エラストマー部材20は突出部内空間61には入り込まず、第一エラストマー部材10の一部の側面を囲み融着する。また、第二エラストマー部材20の他の部分は、硬質合成樹脂層3と融着する。このとき、突出部60によって、第二エラストマー部材20における第一エラストマー部材10との境界部分に溝70が形成される。
【0049】
図8に示すように、閉型されていたコア側金型4とキャビティ側の二次成形用金型6を開き、デジタルカメラのグリップ部Gを取出すことで、工程が終了する。
【0050】
本実施例では、上記工程によって、内側層である硬質合成樹脂層3と、第一エラストマー層1と、第二エラストマー層2の全ての層が、外部に露呈する構成とすることができ、直接高い硬度を有する硬質合成樹脂層3と、グリップ力を発揮する第一エラストマー層1及び第二エラストマー層2を兼備し、更に、第一エラストマー層1と第二エラストマー層2による品質の高い装飾を簡単に実現することができる。
【0051】
尚、本発明は、上記実施例に限るものではなく、グリップ部G以外の箇所について行うこともできる。例えば、カメラを対象とした場合には、カメラ本体背面の液晶スクリーンを除いた部分や上部に三色成形による装飾を設けることもできるし、当該箇所やカメラ底部の三脚を取着する部分(雲台)等を二色成形による硬質合成樹脂層3を設けることができる。
【0052】
また、本発明は、精密機器としてカメラや携帯電話を例示しているが、本発明はこれらに限るものではなく、他の電子機器や、アナログの精密機器(例えば、アナログの一眼レフカメラや腕時計等)に用いることもできる。
【0053】
本発明の実施例によれば、外側層を構成するエラストマーは、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を使用しているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、上記実施例に係るエラストマーに加えて、二種のポリエステルブロックの共重合体(ポリエステルブロックと他のポリエステルブロックとの共重合体)とすることもできるし、更に、当該構成に加えて、ポリウレタン系エラストマーを含有する構成とすることもできる。
【0054】
また、本発明の実施例によれば、内側層を構成する硬質合成樹脂としては、PC(ポリカーボネート)/ASA(アクリロニトリルースチレンーアクリル酸エステル)樹脂に炭素繊維を10重量%乃至30重量%含んだものであるが、本発明は上記実施例に限定するものではなく、例えば、PC/ASA樹脂の一部に、PC(ポリカーボネート)/ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂を使用することもできるし、更にその一部をPC(ポリカーボネート)樹脂とすることもできる。
【0055】
一方、上記実施例では、第一エラストマー層10は一箇所のみ外部に露呈する構成としているが、本発明は当該構成に限るものではなく、第一エラストマー層10が複数個所において外部に露呈する構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例に係る精密機械の外殻構造の一例であるカメラのグリップ部を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るカメラのグリップ部における硬質合成樹脂部材を示す平面図である。
【図3】本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)コア側金型と一次成形用金型を閉じて第一射出空間を形成した状態を示す断面図、(イ)第一射出空間内に硬質合成樹脂を射出した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、硬質合成樹脂部材を成形後に型を開いた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)硬質合成樹脂部材の嵌合用凹部に第一エラストマー部材を挿入する状態、及び(イ)挿入後状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程におけるコア側金型と二次成形用金型との関係を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)コア側金型と二次成形用金型を閉じて第二射出空間を形成した状態を示す断面図、(イ)第二射出空間内に第二エラストマーを射出した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例に係るカメラのグリップの製造工程中、(ア)二次成形用金型を開いた状態を示す断面図、(イ)完成したカメラのグリップ部を示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施例に係るカメラのグリップ部を示す(ア)斜視図、(イ)操作スイッチとの関係を示す斜視図、(ウ)B−B断面図である。
【図10】本発明の他の実施例に係るカメラの他端側のグリップ部を示す(ア)正面図及び(イ)そのC−C拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 第一エラストマー層
10 第一エラストマー部材
11 端面
2 第二エラストマー層
20 第二エラストマー部材
3 硬質合成樹脂層
30 硬質合成樹脂部材
31 外表部
32 嵌合用凹部
33 逃し穴
34 周壁
4 コア側金型
5 一次成形用金型
50 第一射出空間
6 二次成形用金型
60 突出部
61 突出部内空間
62 第二射出空間
63 縁面
70 溝
71 切欠部
72 貫通穴
8 操作ボタン
G グリップ部
H1 高さ寸法
T1 厚さ寸法
W1 外幅
W2 内幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層と、エラストマーからなる外側層とを一体成形してなる精密機器の外殻構造において、
前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、
前記外側層を構成するエラストマーは、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、
内側層、外側層の夫々の少なくとも一部が外面側に露呈し、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とが同一面上に位置することを特徴とする精密機器の外殻構造。
【請求項2】
操作ボタンの周縁部若しくは螺子の取着部分となる位置で、内側層に形成した貫通穴若しくは切欠部の周縁部外面側から起立する周壁を形成し、外側層が前記周壁を一体として囲む構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の精密機器の外殻構造。
【請求項3】
外側層を構成するエラストマーが、第一エラストマー層と第二エラストマー層とからなり、
第一エラストマーの外面と第二エラストマーの外面が溝を介して同一面上に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の精密機器の外殻構造。
【請求項4】
エラストマーからなる外側層と、導電性材料を含有する硬質合成樹脂からなる内側層とを射出圧縮成形する精密機器の外殻構造の製造方法において、
前記内側層に含有する導電性材料は炭素繊維とし、
前記外側層を構成するエラストマーはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとのブロック共重合体を含有し、
内側層を金型内で射出成形する一次成形工程と、一次成形工程後、前記金型を開いて予め成形された第一エラストマー層を前記内側層上に配置する中間工程と、該中間工程後、金型を閉じた状態とし、第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出成形する二次成形工程によって、内側層、外側層の夫々の少なくとも一部を外面側に露呈した状態とし、且つ、外面側に露呈する内側層の外面と外側層の外面とを同一面上に位置させることを特徴とする精密機器の外殻構造の製造方法。
【請求項5】
二次成形工程における金型は、第一エラストマー層の外形輪郭と相似形で且つより大きい輪郭で、第二エラストマー層の厚さ寸法よりも小さい寸法となる突出部を備えており、二次成形工程において金型が第一エラストマー層を押圧し、該押圧力によって第一エラストマー層が変形して前記突出部内空間を満たし、次いで第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出することで、突出部内空間へ第二エラストマー層が侵入せず、成形空間のうち突出部の外側の領域に第二エラストマー層を形成することを特徴とする請求項4記載の精密機器の外殻構造の製造方法。
【請求項6】
硬質合成樹脂からなる内側層を金型内で射出成形する一次成形工程と、一次成形工程後前記金型を開いて予め成形された第一エラストマー層を前記内側層上に配置する中間工程と、該中間工程後金型を閉じた状態とし、第二エラストマー層の成形材料であるエラストマーを射出成形する二次成形工程を備える精密機器の外殻構造の製造工程中、二次成形工程に用いる金型において、
硬質合成樹脂層の外形輪郭と相似形でより大きい内側輪郭で、且つ、第一エラストマー層の厚さ寸法より小さい高さ寸法となる突出部を、備えたことを特徴とする金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−213341(P2008−213341A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54969(P2007−54969)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【出願人】(390027753)フルヤ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】