説明

経路案内装置、経路案内方法及び道路地図データ

【課題】右左折信号のある交差点を経路とするか否かを運転者が選択でき、運転者の技量に応じて右左折信号のある交差点を経路とすることができる経路案内装置、経路案内方法及び道路地図データを提供すること。
【解決手段】交差点を通過する際のコストを格納したノードデータと、交差点間の道路を通過する際のコストを格納したリンクデータとに基づき目的地までの経路のコストが小さくなるように該経路を探索する経路案内装置10であって、右折信号又は左折信号を付随する信号機のある前記交差点の右左折を優先的に経路として選択する経路探索手段4と、経路探索手段による経路探索をするか否かを選択する経路探索手法選択手段4と、探索された経路を表示する表示装置5と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの経路を案内する経路案内装置、経路案内方法及び道路地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、自車両の位置を検出する位置検出装置及び道路地図が格納されたナビーゲーションシステムが搭載され、自車両周辺の道路地図や目的地が入力された場合には目的地までの経路を道路地図に表示して運転者を案内する。
【0003】
自車両の位置と目的地とを結ぶ経路の探索方法は種々提案されているが、ダイクストラ法を用いた場合、設定された条件下で通過コストが小さくなる経路が探索される。このため、道路地図には、通過コストを算出するため、道路を通過する際のコストを示すリンクコスト及び交差点における右左折のコストを示すノードコストとが格納されている。そして、いくつかの経路候補について各道路区間の通過コストを算出し、適当な処理回数を経た後又は所定の条件を満たした場合に、通過コストが小さい経路候補を、最適経路として探索する。
【0004】
したがって、道路のリンクコストや交差点のノードコストを調整すれば目的地は同じでも異なる経路を探索することができる。例えば、左側通行の日本では右折する場合に対向車の状況を確認する必要があるため、ノードコストに置ける右折コストを高く設定することで、右折の少ない経路を探索することが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、このような探索では本来右折すべき交差点において左折又は直進するように経路を探索する可能性が高まるため経路が長くなる虞がある。そこで、ノードコストにおいて、右折するために表示される矢印などの右折信号の有無に基づきノードコストを増減する探索方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このような探索方法であれば、右折する交差点でも右折信号がある交差点の右折が優先的に探索されることとなり、運転のしやすさと走行距離とを両立しやすくなる。
【特許文献1】特開2004−354086号公報
【特許文献2】特開2005−321360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の探索方法では、右折コストを左折コストと同程度に低減するのみであり必ずしも右折信号のある交差点を右折する経路が探索されるとは限らない。 また、特許文献2に記載された探索方法には運転者のスキルについて考慮されていない。交差点の右折を含む経路の是非は運転者の運転スキルに依存するものであり、例えば、熟練した運転者であれば交差点の右折が多くても距離が短い経路を所望することが多いと考えられる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、右左折信号のある交差点を経路とするか否かを運転者が選択でき、運転者の技量に応じて右左折信号のある交差点を経路とすることができる経路案内装置、経路案内方法及び道路地図データを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、交差点を通過する際のコストを格納したノードデータと、交差点間の道路を通過する際のコストを格納したリンクデータとに基づき目的地までの経路のコストが小さくなるように該経路を探索する経路案内装置であって、右折信号又は左折信号を付随する信号機のある交差点の右左折を優先的に経路として選択する経路探索手段と、経路探索手段による経路探索をするか否かを選択する経路探索手法選択手段と、探索された経路を表示する表示装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、右左折信号のある交差点を経路とするか否かを運転者が選択でき、運転者の技量に応じて右左折信号のある交差点を経路とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
右左折信号のある交差点を経路とするか否かを運転者が選択でき、運転者の技量に応じて右左折信号のある交差点を経路とすることができる経路案内装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、経路案内装置10のシステム構成図を示す。経路案内装置10は、道路地図のデータを記憶する記録装置1、自車両の位置を検出する位置検出装置2、運転者や乗員の入力を受け付ける入力装置3、現在地から目的地までの経路を探索する経路探索装置4、及び、道路地図や自車両の位置、経路を表示する表示装置5を有するように構成される。
【0012】
経路案内装置10は、主に車両に搭載されナビゲーション装置として利用されるが、携帯電話機、PHS(Personal Handy−Phone System)、携帯情報端末、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、デジタルテレビ受信機等、およそコンピュータを搭載したデバイスに適用できる。
【0013】
入力装置3は、押下式のキーボード、ボタン、リモコン、十字キー、タッチパネル等により構成され、運転者や乗員からの操作を受け付けるためのものである。また、マイクを備え運転者の発する音声を音声認識回路で認識することで操作を入力してもよい。後述するように、本実施の形態の経路案内装置10は目的地を入力すると、現在位置から目的地までの経路探索を行う。目的地は、住所、地名、ランドマーク名、郵便番号、電話番号等で入力することができる。
【0014】
また、入力装置3から右折又は左折信号がある交差点の右左折を優先的に選択して経路を探索する設定を行う右左折信号優先設定が入力できる。右左折信号優先設定の情報は、経路探索装置4に送出される。なお、右左折信号優先設定について詳細は後述する。
【0015】
位置検出装置2は、GPS(Grobal Positioning System)衛星からの電波に基づき自車両の位置を測位して、さらに自律航法等により自車両の位置を推定する。位置検出装置2は、所定の軌道を周回する複数のGPS衛星のうち現在の車両の位置から所定の仰角に入るGPS衛星を好ましくは4つ以上選択し、それらのGPS衛星から発信される電波を受信する。なお、位置を測位するための電波を衛星からでなく、位置の知られた地上の基地局が受信してもよい。
【0016】
GPS衛星が発信する電波は、搬送波を衛星毎に固定の疑似ランダム符号により変調されているので、位置検出装置2は、選択したGPS衛星の疑似ランダム符号を生成して、受信される電波の復調を試みる。そして、GPS電波が復調できる疑似ランダム符号の位相を決定する。
【0017】
GPS衛星の時計とGPS受信部11が保持する時計が完全に一致しているとすれば、GPS衛星で生成され搬送波を変調した疑似ランダム符号の位相と、受信した電波を復調した疑似ランダム符号の位相とは、電波の到達時間の分だけシフトしている。位置検出装置2は、そのシフト分に基づき電波の到達時間を計算し、到達時間と光速cから捕捉したGPS衛星までの距離を算出する。
【0018】
自車両の位置は、緯度・経度・標高で特定される3次元上の1点であると考えられる。このため、位座標置検出装置2は、3つのGPS衛星と自車両の距離を算出し、各GPS衛星との距離を半径とする球面が交差する2点のうち一方をGPS衛星からの電波に基づく自車両の位置として測位する。また、より好適には4つめのGPS衛星を捕捉して、GPS衛星の時計とGPS受信部11が保持する時計の誤差を補正し、より正確に自車両の位置を測位する。測位された位置はWGS(World Geodetic System)基準座標系による位置座標であるため、位置検出装置2はこれを地球固定直交座標系に変換する。
【0019】
ついで、位置検出装置2は、車速センサ及びジャイロセンサを用いて自律航法によりさらに自車両の位置を高精度に推定する。車速センサは、例えば、各輪に備えられたロータの円周上に定間隔で設置された凸部が通過する際の磁束の変化をパルスとして計測して、単位時間あたりのパルス数に基づき各輪毎に車速を計測する。また、ジャイロセンサは、光ファイバージャイロ、震動片型ジャイロ等のヨーレートセンサであり、自車両が回転する時の角速度を検知して検知結果を積分することで角度、すなわち進行方向に変換できる。
【0020】
位置検出装置2は、GPS衛星からの電波により測位された位置に、車速センサによる走行距離及びジャイロセンサによる走行方向を累積しながら自律航法により車両の現在位置を精度よく推定する。さらに、道路地図に、推定した自車両の位置を対応づけるマップマッチング法により、地図上に表示する自車両の位置を高精度に決定する。
【0021】
記録装置1は、CD−ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記録媒体により構成される。記録装置1に格納された道路地図には、道路網や交差点などの道路地図情報が、緯度・経度に対応づけて格納されている。道路地図は、実際の道路網をノード(道路と道路が交差する点、すなわち交差点)及びリンク(ノードとノードを接続する道路)に対応づけて、テーブル状のデータベースとして構成される。
【0022】
図2は道路地図が格納されたデータベースの一例を示す。図2(a)は、リンクデータを図2(b)はノードデータのそれぞれ一例を示す。図2(a)に示すように、道路地図データのうちリンクについては、道路を細分化して各リンク毎に情報を格納した複数のリンクデータとして表現される。
【0023】
各リンクデータは、始点ノードNumber(以下、単にNo.とする)、終点ノードNo.、リンク方位、リンクの実際の長さ、属性、の情報が格納されている。そして、属性情報には、さらに、一方通行、道路種別(国道、高速道路、主要地方道路等)、幅員、車線数、速度規制、信号情報等の情報が格納されている。また、さらに信号情報は、信号数、始点リンクNo.及び終点リンクNo.の情報を有する。
【0024】
始点リンクNo.は、当該リンクへの接続が、その経路においていずれのリンクからなさているかを表す。始点リンクNo.が設定されている場合、その始点リンクNo.から対象とするノードを通して当該リンクへ向かう場合、通常(右左折信号に限らず)の信号又は右折若しくは左折信号のいずれかが存在すること表す。例えば、リンクNo.1のリンクからリンクNo.2のリンクへ接続する経路であって、リンクNo.2のリンクに右折するための右折信号がある場合、リンクNo.2のリンクデータには「始点リンクNo.」としてリンクNo.1が設定される。
【0025】
また、図2(b)に示すように、道路地図データのうちノードについては、各ノードに接続する複数のリンクを表す接続リンクNo.が格納されている。
【0026】
この他にも、道路地図のデータには、出発地、目的地、通過点等となる地点を検索するための施設データ、タウンページデータ等を有する。施設データとは、レストラン、食堂等の飲食店に関する情報(営業日、営業時間、駐車場の有無、電話番号、メニュー、値段等)である。また、タウンページデータは、例えば、コンビニエンスストア、百貨店、ホームセンタ、スーパーマーケット、テーマパーク、ゲームセンタ、映画館、劇場等である。
【0027】
図3は、リンクデータ及びノードデータにより表される道路地図の一例を示す。図3では、「◎」が特定ノード、「○」が未探索ノードを示す。これらの意味及び探索方法については後述するが、特定ノードは通過するノードとして確定したもの、未探索ノードは通過するノードの候補である。また、各ノード間において、リンクは「→」で表されている。このうち、黒塗りされている矢印「→」については、矢印の示す方向から矢印の終端のノードに対しリンクしていることを表す。
【0028】
したがって、図3では、リンクNo.11のリンクがノードNo.1の特定ノードにリンクしており、該特定ノードからノードNo.2、ノードNo.3及びノードNo.4のノード、3つのノードが未探索ノードとして示されている。特定ノードからノードNo.2のノードにはリンクNo.12のリンクによりリンクされ、特定ノードからノードNo.3のノードにはリンクNo.13のリンクによりリンクされ、特定ノードからノードNo.4のノードにはリンクNo.14のリンクによりリンクされている。
【0029】
図2のリンクデータと図3の道路地図とにより本実施の形態の道路地図を表すことができる。図4は、リンクNo.12〜14のリンクデータ及びその道路地図の一例を示す。なお、図4において図3と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図4の道路地図に示すように、リンクNo.11のリンクから特定ノードに対し接続され、信号は、リンクNo.11の方向からリンクNo.13の方向に存在し、かつ、右折信号が付随している。
【0030】
また、リンクデータによれば、リンクNo.12のリンクは、ノードNo.1のノードを始点とし、ノードNo.2のノードを終点とする。また、リンク方位は「西」であり、リンク実長は500〔m〕、また、このリンクに接続する信号は存在しない。リンクNo.13のリンクは、ノードNo.1のノードを始点とし、ノードNo.3のノードを終点とする。また、リンク方位は「北」であり、リンク実長は1000〔m〕、このリンクに接続する信号が1つ存在し、その始点リンクNo.は11である。リンクNo.14のリンクは、ノードNo.1のノードを始点とし、ノードNo.4のノードを終点とする。また、リンク方位は「東」であり、リンク実長は2000〔m〕、このリンクに接続する信号が1つ存在し、その始点リンクNo.は11である。
【0031】
このように、本実施の形態の道路地図データでは、リンクNo.11のリンクから見た前方の通常の信号は、リンクNo.13に属性(信号)情報として設定され、右折信号は、リンクNo.14に属性(信号)情報として設定される。これは、リンクNo.11のリンクから、リンクNo.13のリンクへ向かう場合に信号があることを表し、また、リンクNo.11のリンクからリンクNo.14のリンクへ向かう場合に右折信号があることを表す。このとき、道路地図に示すように左折信号がないため、リンクNo.11からリンクNo.12へ向かう場合には、属性として信号のあることを意味する「始点リンクNo.」は設定されない。
【0032】
図5は、リンクNo.12〜14のリンクデータ及びその道路地図の別の一例を示す。なお、図5において図3と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図5の道路地図に示すように、リンクNo.11のリンクから特定ノードに対し接続され、信号は、リンクNo.11の方向からリンクNo.13の方向及びリンクNo.13の方向からリンクNo.11の方向に2つ存在する。また、前者の信号には右折信号が設けられており、後者の信号には左折信号が設けられている。
【0033】
したがって、リンクNo.12及び13のリンクについては図4と同様のリンクデータとなるが、リンクNo.14のリンクからリンクNo.11のリンクの方向に、左折信号が付随した信号があるため、リンクNo.14のリンクデータには、属性情報として新号数が2つとなり、その始点リンクNo.が11と12が記録されている。
【0034】
本実施の形態の経路探索装置は、右折信号及び左折信号の有無がリンクデータに格納されていることから、経路探索時に通常の信号に加え右左折信号の有無に基づき目的地までの経路を探索できる。
【0035】
図1に戻り、表示装置5は、液晶や有機EL、HUD(Head Up Display)等により構成され、道路地図や自車両の位置、目的地及び目的地までの経路等を表示する。また、表示装置5はスピーカを備え、スピーカにより右左折する交差点など経路に沿った進行方向を音声により案内する。
【0036】
また、経路案内装置10は、ネットワークを介して外部のサーバと通信する通信装置を備えていてもよい。ネットワークは、例えば、有線又は無線の公衆通信回線網、携帯電話回線網、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(WideArea Network)、衛星通信回線網等やこれらを適宜組み合わせたものである。
【0037】
また、地上波デジタルテレビ放送、FM多重放送、道路脇(わき)や道路上等に設置されている光ビーコン、電波ビーコン、準天頂衛星等から電波の受信装置を備え、これらを利用して通信してもよい。
【0038】
経路探索装置4の探索方法について説明する。まず、ダイクストラ法について簡単に説明する。図6はダイクストラ法を説明するための図である。ダイクストラ法では、あるノード(例えば出発地)に接続するすべてのリンクのコストを計算しながら計算を行い、一段階分(1ノード分)の展開が終了するとコストの順に並べ替えを行い、未完成経路を展開するものとしないものに分け、展開するものをさらに順に展開していく。
【0039】
図6(a)に示す経路図において、ノードSからノードGまでの経路が最も短い経路を探索する。経路長はリンクに記載したように、例えばSA2、SB3、SC2である。これを順に展開していく。図6(b)は展開結果を、それを短い順に並べ替えた結果を図6(c)に示す。
SA2を展開すると、SAB4.5となる。
SB3を展開するとSBG6、SBC4.5、SBD7、SBA5.5となる。
SC2を展開するとSCB3.5、SCD4となる。
【0040】
また、ノードGを含む四角で囲んだ経路は完成経路であるのでそれ以上は展開しない。完成経路SBG6よりも短い経路があるのでこれらを展開していき、完成経路SBG6よりも長い経路はここで展開を打ち切る。また、スタートしたノードに戻る経路は展開しないこととする。
【0041】
SCB3.5を展開すると、SCBG6.5、SCBD7.5となる。
SCD4を展開すると、SCDB8、SCDG5となる。
SAB4.5を展開すると、SABC6.0、SABG7.5、SABD8.5となる。
SBC4.5を展開すると、SBCD6.5となる。
【0042】
図6(d)は展開結果を示す。完成経路の中で最も距離が短いのは、SCDG5となる。また、これより短い未完成経路はないのでSCDG5が最短の経路として探索される。実際には、距離(リンク実長)をリンクコストに置き換え、さらにリンクコストは距離だけでなく、リンクデータに格納されている道路種別(有料道路、高速道路)、幅員、車線数等がパラメータとなって決定されている。
【0043】
また、目的地に向かわない方向の展開を排除するため、目的までの経路の残りの推定距離が所定以上の経路は展開を打ち切る。これにより、目的地と遠ざかる方向の経路探索を省き経路探索を短時間にできる。
【0044】
また、ノードコストについては、左折コスト、直進コスト及び右折コストのように分けられ、一般的には、直進コストが最も低く、ついで、左折コスト、右折コストの順にコストが高くなる。これは、左折の場合は歩行者の通過待ちが、右折の場合、対向車の通過待ちが必要なるためである。したがって、1つのリンクのみからなる経路と1つのノードを介して接続された2つのリンクからなる経路の距離が同じ場合、ノードを含む経路の方がコストが大きくなる。以下、リンクコスト及びノードコストを単に総コストと称す。
【0045】
本実施の形態では、ユーザが入力装置3から右左折信号優先設定を選択した場合には、右折信号又は左折信号がある交差点を右折又は左折する経路として選択しておき(右折信号又は左折信号がない交差点は経路としない)、その後、総コストに基づき最終的な経路を決定する。これにより、右左折に苦手な運転者に適切な経路を案内できる。なお、ユーザが選択しない場合は、総コストに基づき経路が選択される。
【0046】
図7は経路を探索する手順の概念を示す図である。まず、経路探索におけるノードの種類について説明する。本実施の形態の場合には、「■」により示される確定ノード、「●」により示される未確定ノード、「◎」により示される特定ノード、「○」により示される未探索ノードの4種類がノードの種類である。
【0047】
確定ノードは、既に検索されているノードで、かつ、コストが確定しているノードを示す。未確定ノードは、既に検索されているノードであるが、まだコストが確定されていないノードを示す。特定ノードは、未確定ノードの中からコストが最小とであるとして1つ選ばれたノードである。この特定ノードを基準に特定ノードに接続する未だ探索されていない未探索ノードを探索する。
【0048】
次に、未確定ノードから確定ノードへの移行、及び、未探索ノードから未確定ノードへの移行について説明する。
【0049】
図7(b)では、確定ノード(■)に接続する未確定ノード(●)が5つある。この5つの中で、右左折信号優先設定、又は、総コストが最小となるノードが特定ノード(◎)
とされる。
【0050】
図7(b)では、Iで示した未確定ノードが特定ノードとされた。特定ノードが選択されるとその特定ノード(◎)に接続する3つの末探索ノード(○)が、経路の検索対象のノードとなる。図7(c)はノードIが特定ノードとなり、該特定ノードに接続された3つの探索対象のノードを示す。
【0051】
そして、3つの探索対象のノードを探索することによって、図7(d)に示すように、ノードIは確定ノードに移行し、3つの探索ノードは未確定ノード(●)に移行する。なお、探索するとは、道路地図データからリンクデータ及びノードデータを参照し、リンクコスト及びノードコストを抽出することをいう。
【0052】
以降は、総コストが最小になる未確定ノードを特定ノードに選択する処理を繰り返すことによって探索始点ノード(現在地)から探索終点ノード(目的地)までの経路が設定される。
【0053】
図1に戻り、経路探索装置4及び位置検出装置2は、CPU、ROM、RAM、NV−RAM(Non-Volatile RAM)、ハードディスクドライブ及び通信部等がバスにより接続されたマイコンとして構成される。図1に示したように、経路探索装置4は、右折信号又は左折信号を付随する信号機のある前記交差点の右左折を優先的に経路として選択する経路探索手段と、経路探索手段による経路探索をするか否かを選択する経路探索手法選択手段とを有する。経路探索手法選択手段は、表示装置に選択のための画面を表示し、入力装置からユーザの選択を受け付ける。
【0054】
CPUがROMに格納されたプログラムを実行することで、経路探索手段や経路探索手法選択手段を実現する。また、経路案内装置10が車両に搭載された場合、車載された他のECU(Electorical Controll Unit)とCAN(Controller Area Network)プロトコルによりバスを介して相互に通信を行う。
【0055】
続いて、経路探索の探索手順についてより詳細に説明する。図8は、探索手順の全体を示すフローチャート図である。
【0056】
まず、ユーザにより入力装置3から、右左折信号優先設定又は総コストを優先するかの設定が入力される(S10)。図9は、経路探索手法選択手段が表示する右左折信号優先設定の設定画面の一例を示す。ユーザは表示装置5に表示された設定画面をタッチパネルや選択キーにより選択できる。また、音声により所望の設定を入力してもよい。また、前回の設定がデフォルトとして残っているので、そのまま何も入力しない場合もある。本実施の形態では、右左折信号優先設定の設定がなされたものとするが、総コストを優先した場合の経路探索についても簡単に説明する。
【0057】
ついで、ユーザにより入力装置3から、目的地が設定され(S20)、また、自車両の現在地が位置検出装置2により推定される(S30)。
【0058】
経路探索装置4は、目的地と現在地とに基づき初期経路計算を行う(S40)。初期経路計算について詳細は後述する。
【0059】
経路探索装置4は、経路が探索されると案内を開始する(S50)。案内は、表示装置5に道路地図及び現在の車両の位置を表示すると共に、「道なり」「右折」「左折」等の音声をスピーカから出力して行う。
【0060】
ついで、経路探索装置4は再計算するか否かを判定する(S60)。再計算の実行判定について詳細は後述する。
【0061】
再計算する場合(S70のYes)、経路の再計算を行い(S80)、再計算しない場合(S70のNo)、案内が終了するか否かを判定する(S90)。案内が終了するか否かは、例えば、目的地に到達したか否かにより判定される。案内が終了するまで、再計算するか否か(S60)以降の処理を繰り返す。
【0062】
続いて、ステップS40の初期経路計算について図10〜12のフローチャート図に基づき説明する。説明のため、図4及び図7の道路地図を使用する。
【0063】
まず、経路探索装置4は、探索始点ノードを確定する(S110)。探索始点ノードは、探索開始時であれば自車両の現在位置又は最寄りのノードであり、探索の途中であれば未確定ノードである。
【0064】
経路探索装置4は、探索終点ノードを確定する(S120)。探索終点ノードは、目的地に最寄りのノードである。
【0065】
ついで、経路探索装置4は、始点ノードを未確認ノードとして登録する(S130)。そして、通常、複数ある未確定ノードから総コストが最小となるノードを特定する(S140)。コストの算出には周知のダイクストラ法又はそれを修正したアルゴリズムを用いる。
【0066】
図7(b)を例に取れば、未確定ノードはC、F、I、G,Hであるので、ノードSから各未確定ノード、SAC、SBDF、SBDG、SBEF、SBDIまでのコストを算出する。なお、より詳細には、これらの各経路と残りの経路を考慮して残りの総コストが大きい経路は排除し、各経路から総コストが最小の経路を決定する。本実施例では、目的地の方向が例えばノードKの方向であるとして、SBDI、SBDF、SBDGを選択対象とし、さらに、ノードコストに右左折コストが必要となるSBDF、SBDGの展開が終了される。これにより、SBDIのコストが最小となり、ノードIが特定ノードとして選択される。
【0067】
ついで、特定ノードが終点ノードと一致したか否かを判定する(S150)。総コストが最小なノードを経由して特定ノードが終点ノードと一致すれば、経路の探索は終了する(S150のYes)。
【0068】
特定ノードが終点ノードと一致しない場合(S150のNo)、ステップS200に進む。
【0069】
ステップS200において、経路探索手段は、まず信号フラグにOFFを設定する(S200)。信号フラグは、後述するように特定ノードに接続するリンクに右左折信号があるか否かを判定するためのフラグである。フラグをOFFにするとは、信号がないこと(初期化)に相当する。信号フラグの状態はNV−RAMに格納されている。
【0070】
ついで、経路探索手段は、特定ノードに接続する全てのリンクを探索する(S210)。すなわち、特定ノードに接続する全てのリンクのリンクデータを参照する。リンクデータには右左折信号の有無として、始点リンクNo.が記録されている。
【0071】
ついで、経路探索手段は、ユーザにより右左折信号優先設定がなされているか否かを判定する(S230)。かかる判定により、右左折信号のある交差点を優先的に通過したいユーザには右左折信号のある交差点を経由する経路が探索され、目的地までの総コストを優先したいユーザには距離や到達時間の短い経路の探索が可能となる。
【0072】
右左折信号優先設定がある場合(S220のYes)、経路探索手段はいずかのリンクに右左折信号の付随した信号機があるか否かを判定する(S230)。例えば、図4に示すように、ノードNo.1のノードが特定ノードである場合、リンクNo.12〜14のリンクデータから信号機の有無を判定する。図4ではリンクNo.13と14に信号機がある。
【0073】
右左折信号の信号機がある場合(S230のYes)、信号フラグをONに設定する(S240)。また、右左折信号の信号機がない場合(S230のNo)、信号フラグをONにせず、ステップS250に進む。
【0074】
ついで、経路探索装置4は、特定ノードに接続するリンクNo.12〜14のリンクについて、順番にコストを計算する。
〔右左折信号機の優先設定がある場合〕
まず、信号フラグがONか否かを判定する(S250)。信号フラグがONの場合(S250のYes)、リンクに信号があるか否かをリンク毎に順に判定する(S260)。
【0075】
リンクNo.12のリンクの場合、信号機はないのでステップS290に進む。ステップS290では、特定ノードに接続するすべての接続リンクが終了したか否かが判定される(S290)。
【0076】
まだ、リンクNo.13と14のリンクが残っているので、経路探索手段は4はステップS250以下の処理を繰り返す。
【0077】
リンクNo.13のリンクについては、信号機があるので(S260のYes)、経路探索装置4は接続するリンクNo.13のリンクを経由してノードNo.3のノードまでのコストを計算する(S270)。また、ノードNo3.のノードを未確定ノードとして登録する(S280)。
【0078】
同様に、リンクNo.14のリンクについては、信号機があるので(S260のYes)、経路探索装置4は接続するリンクNo.14のリンクを経由してノードNo.4のノードまでのコストを計算する。また、ノードNo4.のノードを未確定ノードとして登録する。
【0079】
特定ノードに接続する全てのリンクについて処理が終了したので(S290のYes)、ステップS140に戻る。
【0080】
〔右左折信号優先設定がない場合〕
右左折信号機の優先設定がない場合、ステップS220及びステップS250の判定はNoであるため、リンクNo.12〜14のリンクデータについて、それぞれコスト計算(S270)され、ノードNo2〜4の各ノードが未確定ノードとして登録される(S280)。
【0081】
特定ノードに接続する全てのリンクについて処理が終了したら(S290のYes)、ステップS140に戻る。
【0082】
以上の処理結果を整理する。
(a1)右左折信号機の優先設定がある場合、ノードNo.2のノードへのリンクは信号機がないため、コスト計算もされず、未確定ノードとして登録もされないため、経路として選択されることがない。
(a2)右左折信号機の優先設定がある場合、ノードNo.3のノードへのリンクは信号機があるため、コスト計算され、未確定ノードとして登録される。
(a3)右左折信号機の優先設定がある場合、ノードNo.4のノードへのリンクは信号機があるため、コスト計算され、未確定ノードとして登録される。
(a4)右左折信号機の優先設定がない場合、ノードNo.2〜4のノードへの全てのリンクについて、コスト計算され、未確定ノードとして登録される。
【0083】
ステップS140では、上述したように、未確定ノードを含む全ての経路のコストを比較して、総コストが最小となる特定ノードを決定する。
【0084】
経路探索装置4は、特定ノードと終点ノードが一致したら(S150のYes)、ステップS300へ進む。
【0085】
すなわち、経路リンクをRAMやハードディスクドライブなどの記憶領域に格納する(S300)。経路リンクとは、ノードSから終点ノードに至る、すなわち、現在位置から目的地までの経路を示す全てのリンクである。
【0086】
経路探索装置4は、経路リンクに基づき経路表示用データを作成する(S310)。経路表示用データは、表示装置5の道路地図に経路リンクを表示するためのデータである。例えば、経路は道路地図の道路部分とは異なる視認性の高い色で表示される。
【0087】
また、経路探索装置4は、経路リンクに基づき経路案内用データを作成する(S320)。経路案内用データは、スピーカから音声により経路を案内するためのデータである。
【0088】
そして、経路探索装置4は、経路表示用データにより経路を表示し(S330)、また、所定のタイミングで経路案内データによる案内を行う。
【0089】
以上のような処理により、ユーザが右左折信号を優先的に経路とする設定をすれば、右左折信号のある交差点のうち総コストが最小となる経路を探索することができるので、右折や左折の苦手な運転者であっても、運転が容易で総コストも比較的小さい経路を探索できる。また、右折や左折が得意な運転者であれば、総コストが最小となる経路を探索することができるので煩わしさを感じることがない。
【0090】
〔再計算実行判定〕
続いて、ステップS60の再計算実行判定について説明する。本実施の形態では、右左折信号優先設定があるか否かにより経路が変わるので、右左折信号優先設定に変化がある場合に再計算を実行する。
【0091】
図13は、再計算実行判定の処理手順を示すフローチャート図である。まず、経路探索装置4は車両が停車したか否かを判定する(S410)。車両が停車した場合、自車両の位置が固定されるので経路探索が容易になる。車両が停車したか否かは例えば車速センサの検出値により判定される。
【0092】
車両が停車した場合(S410のYes)、右左折信号優先設定に変化があるか否かを判定する(S420)。そして、右左折信号を優先的に経路とする設定に変化がある場合(S420のYes)、経路の再計算を実行する(S430)。経路の再計算を実行する場合、ステップS40の処理が実行される。
【0093】
以上のように、本実施の形態の経路案内装置10は、右左折信号優先設定がある場合は右左折信号のない交差点を右左折する経路が選択されることがないので、初心者やペーパードライバのように右折や左折の苦手な運転者でも安心して走行することができる。また、右左折信号優先設定がない場合は、総コストが最小となる経路を探索することができるので熟練したドライバもとっても都合がよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】経路案内装置のシステム構成図である。
【図2】道路地図が格納されたデータベースの一例を示す図である。
【図3】リンクデータ及びノードデータにより表される道路地図の一例である。
【図4】リンクNo.12〜14のリンクデータ及びその道路地図の一例である。
【図5】リンクNo.12〜14のリンクデータ及びその道路地図の一例である。
【図6】ダイクストラ法を説明するための図である。
【図7】経路を探索する手順の概念を示す図である
【図8】探索手順の全体を示すフローチャート図である。
【図9】右左折信号優先設定の設定画面の一例である。
【図10】初期経路計算の処理手順を示すフローチャート図である。
【図11】初期経路計算の処理手順を示すフローチャート図である。
【図12】初期経路計算の処理手順を示すフローチャート図である。
【図13】再計算実行判定の処理手順を示すフローチャート図である
【符号の説明】
【0095】
1 記録装置
2 位置検出装置
3 入力装置
4 経路探索装置
5 表示装置
6 右左折信号優先設定
10 経路案内装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を通過する際のコストを格納したノードデータと、前記交差点間の道路を通過する際のコストを格納したリンクデータとに基づき目的地までの経路のコストが小さくなるように該経路を探索する経路案内装置であって、
右折信号又は左折信号を付随する信号機のある前記交差点の右左折を優先的に経路として選択する経路探索手段と、
前記経路探索手段による経路探索をするか否かを選択する経路探索手法選択手段と、
探索された経路を表示する表示装置と、
を有することを特徴とする経路案内装置。
【請求項2】
前記リンクデータには、右折信号又は左折信号を介して接続するリンクのリンク番号が設定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の経路案内装置。
【請求項3】
交差点を通過する際のコストを格納したノードデータと、前記交差点間の道路を通過する際のコストを格納したリンクデータに基づき目的地までの経路のコストが小さくなるように該経路を探索する経路探索装置の経路案内方法であって、
右折信号又は左折信号を付随する信号機のある前記交差点を右左折する経路を探索するように入力されるステップと、
前記リンクデータから、右折信号又は左折信号を介して接続するリンクのリンク番号を抽出するステップと、
右折信号又は左折信号を介して接続する前記リンクから経路のコストが小さくなる経路を探索するステップと、
探索された経路を表示するステップと、
を有することを特徴とする経路案内方法。
【請求項4】
交差点を通過する際のコストを格納したノードデータと、前記交差点間の道路を通過する際のコストを格納したリンクデータとを有する道路地図データにおいて、
第1のリンクから第2のリンクに右折信号又は左折信号を介して接続する場合、前記第2のリンクのリンクデータに前記第1のリンクのリンク番号が設定されている、
ことを特徴とする道路地図データ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−255919(P2007−255919A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77140(P2006−77140)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】