説明

膜厚測定装置及び測定方法

【課題】 膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を精度良く測定することが可能な膜厚測定装置、及び膜厚測定方法を提供する。
【解決手段】 第1波長λの測定光成分、及び第2波長λの測定光成分を含む測定光を測定対象物15へと供給する測定光源28と、測定対象物15の上面からの反射光及び下面からの反射光の干渉光について、第1波長λの干渉光成分、及び第2波長λの干渉光成分に分解する分光光学系30と、第1、第2干渉光成分のそれぞれの各時点での強度を検出する光検出器31、32と、膜厚解析部40とを有して膜厚測定装置1Aを構成する。膜厚解析部40は、第1干渉光成分の検出強度の時間変化での第1位相と、第2干渉光成分の検出強度の時間変化での第2位相との位相差に基づいて、測定対象物15の膜厚の時間変化を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された半導体膜などの膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を測定する膜厚測定装置、及び膜厚測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、例えば、エッチング処理の実行中では、基板上の半導体膜の膜厚が減少するように時間変化する。また、薄膜形成処理の実行中では、半導体膜の膜厚が増加するように時間変化する。このような半導体プロセスでは、処理の終点検出などのプロセス制御のために、半導体膜の膜厚の時間変化のイン・サイチュ(In-Situ)での測定が必要となる。
【0003】
そのような半導体膜の膜厚の測定方法として、半導体膜に所定波長の測定光を照射し、半導体膜の上面からの反射光、及び下面からの反射光が干渉した干渉光を検出する方法が用いられている。この方法では、半導体膜の膜厚が変化すると、上面からの反射光と下面からの反射光との間の光路長差が変化する。したがって、この光路長差の変化に伴う干渉光の検出強度(干渉強度)の時間変化を利用して、各時点での半導体膜の膜厚を測定することができる(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2612089号公報
【特許文献2】特許第2656869号公報
【特許文献3】特許第3491337号公報
【特許文献4】特開昭63−50703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した半導体膜の膜厚の時間変化の測定において、半導体製造プロセスの制御精度の向上等のため、さらなる膜厚の測定精度の向上、特に膜厚の絶対値の測定精度の向上が求められている。しかしながら、従来の測定方法では、充分な膜厚の測定精度が得られない場合がある。
【0006】
例えば、特許文献1に記載された方法では、上記したように上面からの反射光と下面からの反射光との干渉光を検出し、その検出された干渉強度の時間変化から膜厚を算出している。しかしながら、この方法は干渉強度の周期的変化が正確に検出されることを前提としており、例えば光強度の周期的変化が最初に最大となる時点がはっきりしない場合、基準時の膜厚の値が不正確となり、膜厚の絶対値について、その時間変化を正確に測定することが難しいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2では、半導体膜からの反射光のうちで2波長での光強度の時間微分の絶対値を加算した信号を用いて、エッチングの終点検出を行う方法が開示されている。また、特許文献3では、波長可変レーザからの光ビームを照射して半導体膜からの反射光または透過光を検出するとともに、波長を変化させて得られた波長に対する光強度変化の波形から膜厚を求める方法が開示されている。また、特許文献4では、半導体膜からの反射光または透過光を分光して検出し、各波長についての出力のうち極大値と極小値とを用いて膜厚を求める方法が開示されている。しかしながら、これらの方法においても、膜厚の絶対値の時間変化を正確に測定することは難しい。このような問題は、半導体膜以外の膜状の測定対象物の膜厚の時間変化の測定においても、同様に生じるものである。
【0008】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を精度良く測定することが可能な膜厚測定装置、及び膜厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による膜厚測定装置は、第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を測定する膜厚測定装置であって、(1)第1波長を有する第1測定光成分、及び第1波長とは異なる第2波長を有する第2測定光成分を少なくとも含む測定光を測定対象物へと供給する測定光源と、(2)測定光の測定対象物の第1面からの反射光、及び第2面からの反射光が干渉した干渉光について、第1波長の第1干渉光成分、及び第2波長の第2干渉光成分を別々に検出可能に分解する分光手段と、(3)第1干渉光成分、及び第2干渉光成分のそれぞれの各時点での強度を検出する検出手段と、(4)第1干渉光成分の検出強度の時間変化における第1位相と、第2干渉光成分の検出強度の時間変化における第2位相との位相差に基づいて、測定対象物の膜厚の時間変化を求める膜厚解析手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
同様に、本発明による膜厚測定方法は、第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を測定する膜厚測定方法であって、(1)第1波長を有する第1測定光成分、及び第1波長とは異なる第2波長を有する第2測定光成分を少なくとも含む測定光を測定光源から測定対象物へと供給する測定光供給ステップと、(2)測定光の測定対象物の第1面からの反射光、及び第2面からの反射光が干渉した干渉光について、第1波長の第1干渉光成分、及び第2波長の第2干渉光成分を別々に検出可能に分解する分光ステップと、(3)第1干渉光成分、及び第2干渉光成分のそれぞれの各時点での強度を検出する検出ステップと、(4)第1干渉光成分の検出強度の時間変化における第1位相と、第2干渉光成分の検出強度の時間変化における第2位相との位相差に基づいて、測定対象物の膜厚の時間変化を求める膜厚解析ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
上記した膜厚測定装置及び測定方法においては、膜状の測定対象物に対し、第1波長及び第2波長の光成分を含む測定光を供給し、その第1面及び第2面(上面及び下面)からの反射光の干渉光を検出する。そして、第1波長の第1干渉光成分の検出強度の時間変化における位相と、第2波長の第2干渉光成分の検出強度の時間変化における位相との間の位相差を取得し、この位相差から測定対象物の膜厚の時間変化を求めている。このような構成によれば、2波長間での検出強度の時間波形の位相差により、膜状の測定対象物の膜厚の絶対値、及びその時間変化を精度良く測定することが可能となる。
【0012】
ここで、上記した膜厚の時間変化の測定における具体的な測定対象については、測定対象物は基板上の半導体膜であり、所定の処理の実行中における半導体膜の膜厚の時間変化を測定することが好ましい。このような構成では、上述したように、例えばエッチング処理や薄膜形成処理などの半導体プロセスの実行中において、その膜厚の絶対値の時間変化を測定して、処理の終点検出などのプロセス制御を精度良く行うことができる。
【0013】
また、測定装置は、測定光源が、測定光の成分として互いに波長が異なる3成分以上の測定光成分を供給可能に構成され、分光手段及び検出手段は、膜厚の時間変化の測定に用いられる第1波長及び第2波長を変更可能に構成されていることとしても良い。同様に、測定方法は、測定光源が、測定光の成分として互いに波長が異なる3成分以上の測定光成分を供給可能に構成され、分光ステップ及び検出ステップにおいて、膜厚の時間変化の測定に用いられる第1波長及び第2波長を変更することとしても良い。これにより、膜厚の時間変化の状態に応じて、その測定条件を好適に設定、変更することができる。
【0014】
また、上記のように第1波長及び第2波長を変更する構成では、測定対象物について膜厚が減少する時間変化を測定する場合に、2波長の波長間隔を段階的に広げるように第1波長及び第2波長を変更することが好ましい。このような測定の例としては、エッチング処理の実行中における基板上の半導体膜の膜厚の時間変化の測定が挙げられる。
【0015】
測定装置の具体的な構成については、測定光源は、第1波長及び第2波長を含む波長域の白色光を測定光として供給する白色光源である構成を用いることができる。また、分光手段は、干渉光を各波長の干渉光成分へと分解する分光光学系を有し、検出手段は、分光光学系によって分解された各干渉光成分の強度を検出する複数の光検出素子が配列されたマルチチャンネル光検出器を有する構成を用いることができる。また、測定光源、分光手段、及び検出手段については、上記以外にも様々な構成を用いることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の膜厚測定装置及び膜厚測定方法によれば、測定対象物に対し、第1波長及び第2波長の光成分を含む測定光を供給して、その第1面及び第2面からの反射光の干渉光を検出し、第1波長の第1干渉光成分の検出強度の時間変化における位相と、第2波長の第2干渉光成分の検出強度の時間変化における位相との間の位相差を取得し、この位相差から測定対象物の膜厚の時間変化を求めることにより、膜状の測定対象物の膜厚の絶対値、及びその時間変化を精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】測定対象物の膜厚の測定方法について模式的に示す図である。
【図2】測定対象物の膜厚の時間変化の測定原理を概略的に示すグラフである。
【図3】膜厚測定装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】測定光学系の構成の一例を示す図である。
【図5】測定光学系の構成の一例を示す図である。
【図6】分光光学系の構成の一例を示す図である。
【図7】膜厚解析部の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】測定位置設定部の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】膜厚測定の第1の測定例について示すグラフである。
【図10】膜厚測定の第2の測定例について示すグラフである。
【図11】膜厚測定の第3の測定例について示すグラフである。
【図12】波長切換えを伴う膜厚測定方法の一例について示すグラフである。
【図13】膜厚測定のための解析処理の具体例について説明するグラフである。
【図14】膜厚測定のための解析処理の具体例について説明するグラフである。
【図15】膜厚測定のための解析処理の具体例について説明するグラフである。
【図16】膜厚測定のための解析処理の具体例について説明するグラフである。
【図17】膜厚測定のための解析処理の具体例について説明するグラフである。
【図18】膜厚測定のための解析処理の具体例について説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面とともに本発明による膜厚測定装置、及び膜厚測定方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0019】
最初に、本発明による膜厚測定方法、及びその測定原理について、図1、及び図2を用いて説明する。図1は、測定対象物の膜厚の測定方法について模式的に示す図である。また、図2は、測定対象物の膜厚の時間変化の測定原理を概略的に示すグラフである。本膜厚測定方法は、第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物に対し、その膜厚の絶対値の時間変化を測定するものである。ここで、以下においては、測定対象物の第1面を測定光が入射される上面とし、第2面をその反対側の下面として説明する。
【0020】
図1に示す例では、膜状の測定対象物の一例として、基板12上に形成された半導体膜15を示している。このような半導体膜15に対し、膜厚が時間とともに変化する半導体製造プロセスの一例として、エッチング処理を実行することを考える。エッチング処理では、処理の進行にしたがって半導体膜15の膜厚dは時間とともに減少する。
【0021】
このような膜厚dの時間変化について、基板12及び半導体膜15からなる試料10に対し、基板12とは反対側となる半導体膜15の上面(第1面)16側から膜厚測定用の測定光L0を供給する。そして、その上面16からの反射光L1と、下面(第2面、基板12と半導体膜15との境界面)17からの反射光L2とが干渉して生成される干渉光を検出することで、半導体膜15の膜厚dを測定する。なお、図1においては、図の見易さのため、半導体膜15に照射される測定光L0の光路、及び半導体膜15の上面16、下面17からの反射光L1、L2の光路を、それぞれ位置をずらして示している。
【0022】
本測定方法では、具体的には、半導体膜15を含む試料10に対し、第1波長λの第1測定光成分、及び第1波長とは異なる第2波長λの第2測定光成分を少なくとも含む測定光L0を照射する(測定光供給ステップ)。次に、測定光L0の上面16、下面17からの反射光L1、L2の干渉光を波長によって分解して、波長λの第1干渉光成分と波長λの第2干渉光成分とを別々に検出可能な状態とし(分光ステップ)、第1、第2干渉光成分のそれぞれの各時点での強度を検出して、干渉強度の時間による変化を取得する(検出ステップ)。そして、これらの第1、第2干渉光成分の検出強度の時間変化を参照して、半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める(膜厚解析ステップ)。
【0023】
ここで、測定対象の半導体膜15の屈折率をn、時間変化する膜厚をd、測定光L0の波長をλとすると、反射光L1、L2が干渉して生じる干渉光の強度I(t)は、反射光L1、L2の間で生じる光路長差2ndにより、下記の式(1)
【数1】


による時間変化を示す。すなわち、波長λの測定光L0を用いた場合、得られる反射光の干渉強度I(t)は、エッチング処理等による膜厚dの時間変化に伴って余弦波的に変化する。ここで、Aは干渉強度の変動の振幅、Bはオフセットである。
【0024】
このような干渉光の強度I(t)の時間変化の一例を図2に示す。図2のグラフ(a)は、第1波長λの第1干渉光成分の検出強度I(t)の時間変化を示している。この干渉強度Iの各時点での位相φは、その時点での膜厚をdとして
【数2】


となる。ここで、nは波長λでの半導体膜15の屈折率である。この時間変化において、その1周期Δtは、膜厚dがΔd=λ/2nだけ変化する時間に相当する。
【0025】
同様に、図2のグラフ(b)は、第2波長λの第2干渉光成分の検出強度I(t)の時間変化を示している。この干渉強度Iの各時点での位相φは、同様に
【数3】


となる。ここで、nは波長λでの半導体膜15の屈折率である。この時間変化において、その1周期Δtは、膜厚dがΔd=λ/2nだけ変化する時間に相当する。
【0026】
上記の式(2)、(3)、及び図2のグラフ(a)、(b)に示すように、波長λ、λの光成分を含む測定光L0の供給に対する半導体膜15からの反射干渉光において、第1、第2干渉光成分の検出強度の時間変化での位相φ、φ、及びその周期Δt、Δtは、その波長λ、λが異なることにより、膜厚dの変化に対して異なる位相、及び周期となる。なお、これらの干渉強度の時間変化の位相φ、φは、例えば、干渉強度Iの所定範囲(好ましくは2周期以上の範囲)のデータに対して、FFT(高速フーリエ変換)解析を行うことで求めることができる。
【0027】
また、波長λ、λの第1、第2干渉光成分のそれぞれでの位相φ、φについて、2波長間での位相差を求めると、その位相差Δφ12は、下記の式(4)
【数4】


となる。すなわち、第1位相φと第2位相φとの位相差Δφ12は、測定対象物の膜厚dに比例して変化する。したがって、図2のグラフ(c)に示すように、第1、第2干渉光成分の検出強度の時間変化に伴う位相差Δφ12の変化により、半導体層15の膜厚dの絶対値、及びその時間変化を精度良く求めることが可能である。
【0028】
また、このような膜厚dの絶対値の時間変化の測定により、例えば半導体膜15のエッチング処理において、その終点検出、及びそれに基づくプロセス制御を高精度で実行することが可能である。具体的には、エッチング処理において目標とする半導体膜15の最終膜厚がDに設定されているとすると、この目標膜厚Dと、それに対応する目標位相差ΔΦとの関係は、下記の式(5.1)、(5.2)
【数5】


によって表される。したがって、このような関係を利用し、例えば測定された位相差Δφから半導体膜15の膜厚dが所望の膜厚Dまで減少したと判断された時点をエッチング処理の終点とするなどの方法によって、図2のグラフ(c)に示すように、エッチング処理の終点検出を行うことができる。このようなプロセス制御は、例えば半導体膜15の膜厚dが時間とともに増加する薄膜形成処理の制御等においても同様に実行可能である。
【0029】
ここで、図2のグラフ(c)から理解されるように、上記方法によって膜厚dの絶対値を測定することが可能となるのは、位相差Δφ12が0〜2πの範囲内で変化している間(グラフ(c)中の区間Δt12)である。このため、上記方法において絶対値の測定が可能な膜厚の最大値dmaxは、下記の式(6)
【数6】


となる。
【0030】
したがって、測定の開始時において膜厚dが上記の範囲外にある場合には、最初は他の方法で膜厚測定を行い、膜厚dが絶対値の測定が可能な範囲内になった時点で、上記方法による膜厚測定に切り換えることが好ましい。そのような他の膜厚測定の方法としては、例えば、初期値として与えられた膜厚からの相対的な膜厚変化を測定する方法が挙げられる。この場合、1波長の測定光について反射干渉光を検出し、その強度の時間変化から膜厚の変化率(例えばエッチングレート)を求めて、膜厚の初期値から膜厚変化量を差し引くことで膜厚を取得する方法を用いることができる。
【0031】
図3は、膜厚測定装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態では、半導体処理装置(例えばエッチング装置)20の処理チャンバ内に設置された試料10の半導体膜15(図1参照)を測定対象物とした例を示している。本膜厚測定装置1Aは、測定光学系21と、測定光源28と、分光光学系30と、光検出器31、32と、膜厚解析部40とを備えて構成されている。
【0032】
処理装置20内の試料10の半導体膜15に対し、測定光学系21を介して測定光L0を供給する測定光源28が設けられている。この測定光源28は、図1、図2に関して上述したように、第1波長λの測定光成分、及び第2波長λの測定光成分を少なくとも含む測定光L0を測定対象物の半導体膜15へと供給する。このような測定光源28としては、例えば、第1波長λ及び第2波長λを含む波長域の白色光を測定光L0として供給する白色光源を好適に用いることができる。
【0033】
また、測定光L0が試料10で反射された反射光L1、L2に対し、測定光学系21を介して、分光光学系30、及び光検出器31、32が設けられている。ここで、図4及び図5は、膜厚測定装置1Aにおける測定光学系21の構成の一例を示す図である。本構成例では、試料10に対向して配置される対物レンズ211を含む測定光学系21に対し、測定光源28からの測定光を導光する測定光入力ファイバ281、試料10の画像取得時等に用いられる照明光を導光する照明光入力ファイバ282、及び試料10からの反射光を分光光学系30へと導光する反射光出力ファイバ308が接続されている。
【0034】
このような構成において、図4に示すように、測定光源28からの測定光L0は、入力ファイバ281によって測定光学系21へと入力され、ハーフミラー212を通過し、反射ミラー213で反射されて、対物レンズ211を介して試料10の半導体膜15へと供給される。また、図5に示すように、半導体膜15の上面、下面からの反射光L1、L2は、反射ミラー213、ハーフミラー212、及び反射ミラー214で反射されて、出力ファイバ308を介して分光光学系30へと出力される。
【0035】
分光光学系30は、試料10から測定光学系21を介して入力される反射光を分光する分光手段である。具体的には、分光光学系30は、測定光L0の半導体膜15の上面からの反射光L1、及び下面からの反射光L2が干渉して生成される干渉光について、干渉光のうちで第1測定光成分に起因する波長λの第1干渉光成分と、第2測定光成分に起因する波長λの第2干渉光成分とを別々に検出可能に分解する。
【0036】
図6は、分光光学系30の構成の一例を示す図である。この分光光学系30は、入射スリット301、コリメーティング光学系302、分散素子である回折格子303、及びフォーカシング光学系304を有して構成されている。このような構成において、回折格子303で各波長の干渉光成分へと分解された干渉光は、フォーカシング光学系304を介して波長スペクトル出力面305に結像され、出力面305に配置された光検出器によって波長成分毎に検出される。
【0037】
分光光学系30によって波長成分毎に分解された干渉光に対し、波長λの第1干渉光成分、及び波長λの第2干渉光成分のそれぞれの各時点tでの強度(干渉強度)を検出する検出手段として、光検出器31、32が設けられている。第1光検出器31は、波長λの第1干渉光成分を検出し、その強度を示す検出信号を出力する。また、第2光検出器32は、波長λの第2干渉光成分を検出し、その強度を示す検出信号を出力する。
【0038】
このような検出手段は、例えば図6に示した分光光学系30に対し、その出力面305に配置されて、分光光学系30によって分解された各干渉光成分の強度を検出する複数の光検出素子が配列されたマルチチャンネル光検出器によって構成することができる。この場合、光検出器の複数の光検出素子のうちで、波長λの第1干渉光成分を検出する1または複数の光検出素子が第1光検出器31として機能する。同様に、波長λの第2干渉光成分を検出する1または複数の光検出素子が第2光検出器32として機能する。
【0039】
光検出器31、32からの検出信号は、膜厚解析部40へと入力されている。膜厚解析部40は、図2に関して上述したように、第1干渉光成分の検出強度の時間変化における第1位相φと、第2干渉光成分の検出強度の時間変化における第2位相φとの位相差Δφ12を求め、この位相差に基づいて、測定対象物である半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める膜厚解析手段である。
【0040】
図7は、膜厚解析部40の構成の一例を示すブロック図である。本構成例による膜厚解析部40は、位相解析部41と、測定位相差取得部42と、位相差情報処理部45と、膜厚情報出力部46とを有して構成されている。また、図7においては、分光手段及び検出手段は、分光光学系30と、第1、第2光検出器31、32を含むマルチチャンネル光検出器33とを有する分光測定装置35として構成されている。位相解析部41は、分光測定装置35からの検出信号を入力し、光検出器31で検出された干渉光成分での第1位相φと、光検出器32で検出された干渉光成分での第2位相φとを算出する。
【0041】
測定位相差取得部42は、位相解析部41において算出された第1、第2干渉光成分の位相φ、φについて、その位相差Δφ12を算出する。位相差情報処理部45は、測定位相差取得部42において取得された位相差Δφ12に対して所定のデータ処理を行い、位相差Δφ12に基づいて、測定対象の半導体膜15の膜厚dの絶対値、及びその時間変化に関して必要な情報を導出する。
【0042】
具体的には、位相差情報処理部45は、式(4)に示した関係式に基づいて、測定位相差Δφ12から膜厚dの絶対値を膜厚情報として算出する。あるいは、処理部45は、膜厚dに換算していない位相差Δφ12の情報自体を膜厚dを示す膜厚情報としても良い。また、膜厚情報出力部46は、位相差情報処理部45において求められた半導体膜15の膜厚dについての情報を出力する。
【0043】
また、図7に示す膜厚解析部40では、エッチング処理によって半導体膜15の膜厚dが減少する時間変化を想定し、エッチング処理の終点検出を行う構成を示している。このような終点検出のため、本構成例の膜厚解析部40は、基準膜厚記憶部43と、基準位相差取得部44と、終点情報出力部47とをさらに有している。
【0044】
基準膜厚記憶部43には、エッチング処理の終点とすべき半導体膜15の膜厚dの値を示す基準膜厚(目標膜厚)Dがあらかじめ記憶されている。基準位相差取得部44は、式(5.1)に示したように、記憶部43から読み出した基準膜厚Dについて、それに対応する基準位相差(目標位相差)ΔΦを算出する。また、位相差情報処理部45は、測定位相差取得部42において取得された測定位相差Δφ12と、基準位相差取得部44において取得された基準位相差ΔΦとの比較を行う。
【0045】
そして、処理部45は、エッチング処理が終点に到達しているかどうかを、例えば測定位相差Δφ12と基準位相差ΔΦとが一致しているかどうかによって判定し、終点に到達していると判定されれば、終点情報出力部47を介してエッチング処理を停止するための終点検出信号を出力する。なお、このような膜厚解析部40は、例えば所定の解析プログラムが実行されているコンピュータによって構成することができる。
【0046】
また、図3に示す膜厚測定装置1Aでは、上記の膜厚解析部40に加えて、測定制御部50が設けられている。測定制御部50は、膜厚解析部40の膜厚情報出力部46からの膜厚情報、あるいはさらに終点情報出力部47からの終点情報を参照し、測定装置1A及び処理装置20の装置各部を制御することで、測定装置1Aにおける膜厚測定動作、及び処理装置20におけるエッチング処理等の動作について必要な制御を行う。
【0047】
また、この測定制御部50には、入力装置51と、表示装置52とが接続されている。入力装置51は、測定装置1Aにおける測定動作、及び処理装置20における処理動作に必要な情報、条件、指示等の操作者による入力に用いられる。この入力装置51は、例えば膜厚解析部40において用いられる測定波長λ、λ、各波長での測定対象物の屈折率n、n、エッチング処理の目標膜厚D等の入力に用いることができる。また、プロセス開始時の膜厚値をさらに入力しても良い。ただし、これらの条件、数値については、膜厚解析部40にあらかじめ用意する構成としても良い。また、表示装置52は、上記した測定動作及び処理動作についての必要な情報の操作者への表示に用いられる。
【0048】
また、本実施形態の膜厚測定装置1Aでは、測定光学系21に対し、XYθステージ22が設けられている。このXYθステージ22は、測定光学系21の位置、角度等をX方向、Y方向、θ方向に調整することで、本膜厚測定装置1Aによる半導体膜15での膜厚dの測定位置、測定条件を調整するために用いられる。また、XYθステージ22は、ステージ制御部23によって駆動制御されている。
【0049】
また、処理装置20内の試料10、及び測定光学系21に対し、さらに撮像装置24、及び測定位置設定部25が設けられている。撮像装置24は、測定装置1Aによる半導体膜15での膜厚dの測定位置を確認するための位置確認用撮像装置である。また、測定位置設定部25は、撮像装置24によって測定光学系21を介して取得された半導体膜15を含む試料10の画像を参照して、試料10に対する膜厚測定位置を設定する。
【0050】
図8は、測定位置設定部25の構成の一例を示すブロック図である。本構成例による測定位置設定部25は、測定画像認識部251と、基準画像記憶部252と、画像比較部253と、制御条件算出部254とを有して構成されている。測定画像認識部251は、撮像装置24で取得された試料10の画像データを入力し、その画像での測定パターンのパターン認識を行う。また、基準画像記憶部252には、半導体膜15での膜厚dの測定位置として設定すべき位置を特定するための基準画像があらかじめ記憶されている。
【0051】
画像比較部253は、認識部251で認識された測定画像での測定パターンと、記憶部252で記憶された基準画像での基準パターンとを、差分画像の算出などの方法によって比較する。また、制御条件算出部254は、画像比較部253での測定画像と基準画像との比較結果に基づいて、測定位置の調整の要否、及び調整が必要な場合にはその制御条件を算出する。そして、この算出部254で求められた制御条件に基づいて、ステージ制御部23を介してXYθステージ22、測定光学系21が駆動制御されることにより、試料10の半導体膜15に対する膜厚dの測定位置、測定条件が設定、制御される。
【0052】
なお、このような試料10の半導体膜15に対する膜厚dの測定位置については、半導体ウエハ上のテグの位置とすることが好ましい。これは、半導体チップ上の位置を測定位置とすると、マスクなどの段差等が影響して、膜厚dを正確に測定できない可能性があるためである。
【0053】
上記実施形態による膜厚測定装置、及び膜厚測定方法の効果について説明する。
【0054】
図1〜図3に示した膜厚測定装置1A及び膜厚測定方法においては、膜状の測定対象物である基板12上の半導体膜15に対し、第1、第2波長λ、λの光成分を含む測定光L0を供給し、上面16及び下面17からの反射光L1、L2の干渉光を分光光学系30及び光検出器31、32によって分光して検出する。そして、光検出器31で検出される波長λの干渉光成分の位相φと、光検出器32で検出される波長λの干渉光成分の位相φとの位相差Δφ12を取得することで、半導体膜15の膜厚dの時間変化を求めている。このような構成によれば、2波長間での検出強度の時間波形の位相差により、測定対象物の膜厚dの絶対値、及びその時間変化を精度良く測定することが可能となる。
【0055】
膜厚測定の具体的な測定対象については、上述したように、測定対象物は基板12上の半導体膜15であり、所定の処理の実行中における半導体膜15の膜厚dの時間変化を測定することが好ましい。このような構成では、半導体膜15の膜厚dが減少または増加するエッチング処理、薄膜形成処理などの半導体プロセスの実行中において、処理の終点検出などのプロセス制御を精度良く行うことができる。また、上記方法は、半導体膜15以外にも、膜状の測定対象物の膜厚dの測定に対して一般に適用可能である。
【0056】
また、膜厚測定装置1Aの具体的な構成については、測定光源28は、第1、第2波長λ、λを含む波長域の白色光を測定光L0として供給する白色光源である構成を用いることができる。これにより、第1、第2波長λ、λの測定光成分を少なくとも含む測定光L0を好適に供給することができる。また、試料10からの反射光L1、L2の干渉光を分光する分光手段、及び干渉光を検出する検出手段の構成については、上述したように、分光手段は、干渉光を各波長の干渉光成分へと分解する分光光学系30を有し、検出手段は、分光光学系30によって分解された各干渉光成分の強度を検出する複数の光検出素子が配列されたマルチチャンネル光検出器を有する構成を用いることができる。
【0057】
また、膜厚測定に用いられる測定光源、分光手段、及び検出手段については、上記以外にも様々な構成を用いることが可能である。例えば、測定光源については、第1、第2波長λ、λの測定光成分を少なくとも含む測定光L0を供給可能な構成であれば良い。そのような測定光源としては、例えば複数の半導体レーザまたはLEDを組み合わせた構成など、複数の単色光を同時に供給可能な光源が挙げられる。
【0058】
また、分光手段としては、分光光学系以外にも、例えばバンドパスフィルタなどの波長選択フィルタを用いることができる。また、検出手段としては、例えば波長選択フィルタと組み合わせて設置されたフォトダイオードなどの光検出器を用いることができる。この場合、例えば第1波長λに対応する第1波長選択フィルタ及び第1光検出器と、第2波長λに対応する第2波長選択フィルタ及び第2光検出器とによって、分光手段及び検出手段を構成することができる。
【0059】
上記実施形態の膜厚測定装置1A及び膜厚測定方法による測定対象物の膜厚dの測定処理、及び測定条件等について、具体的な測定例とともにさらに説明する。
【0060】
図9は、上記した測定方法による膜厚測定の第1の測定例について示すグラフである。本測定例では、第1波長をλ=335nm、第2波長をλ=405nmとしている。このときの波長間隔はλ−λ=70nmである。また、図9において、グラフ(a)は第1波長λの干渉光成分の検出強度Iの時間変化を示し、グラフ(b)は、第2波長λの干渉光成分の検出強度Iの時間変化を示し、グラフ(c)は、位相差Δφ12に対応する測定対象物の膜厚dの時間変化を示している。これらのグラフに示すように、第1、第2干渉光成分の検出強度の時間変化の位相差により、測定対象物である半導体膜15の膜厚dの絶対値、及びその時間変化を精度良く求めることができる。
【0061】
また、上記の測定例において、波長λ=335nmでの半導体膜15の屈折率をn=2.7とし、波長λ=405nmでの屈折率をn=2.5とし、エッチング処理における目標膜厚をD=100nmとする。このとき、図9のグラフ(d)に示すように、測定された膜厚dの絶対値の時間変化に対して、目標膜厚Dを閾値として設定することにより、エッチング処理の終点を検出することができる。
【0062】
また、測定対象物の膜厚dの絶対値が測定可能な範囲は、位相差が0〜2πの範囲内で変化している間である。本測定例では、絶対値が測定可能な膜厚の最大値dmax
【数7】


と求められる。すなわち、本測定例では、測定対象物の膜厚dが264.99nm以下であれば、上記方法によって膜厚dの絶対値を測定することが可能である。
【0063】
また、上記構成による測定対象物の膜厚dの測定では、測定可能な膜厚dの範囲、及びその測定精度(分解能)は、測定に用いられる光の波長λ、λの設定に依存する。ここで、図10は、上記方法による膜厚測定の第2の測定例について示すグラフであり、グラフ(a)は第1干渉光成分の検出強度Iの時間変化を示し、グラフ(b)は、第2干渉光成分の検出強度Iの時間変化を示し、グラフ(c)は、測定対象物の膜厚dの時間変化を示している。本測定例では、第1波長をλ=600nm、第2波長をλ=790nm、その波長間隔を190nmとしている。
【0064】
また、図11は、上記方法による膜厚測定の第3の測定例について示すグラフであり、グラフ(a)は第1干渉光成分の検出強度Iの時間変化を示し、グラフ(b)は、第2干渉光成分の検出強度Iの時間変化を示し、グラフ(c)は、測定対象物の膜厚dの時間変化を示している。本測定例では、第1波長をλ=405nm、第2波長をλ=600nm、その波長間隔を195nmとしている。
【0065】
これらの図9〜図11のグラフに示すように、測定装置1Aにおいて測定される位相差Δφ12と膜厚dとの対応関係、及び測定可能な膜厚範囲、測定精度は、波長λ、λの設定に依存して変化する。したがって、膜厚測定に用いる波長λ、λを設定、変更することにより、膜厚dの測定条件を設定、あるいは変更することが可能である。
【0066】
この場合、測定光源28は、測定光L0の成分として互いに波長が異なる3成分以上の測定光成分を供給可能に構成されていることが好ましい。また、分光光学系30及び光検出器31、32などによる分光手段及び検出手段は、測定に用いられる波長λ、λを変更可能に構成されていることが好ましい。このような構成では、測定対象物の膜厚dの時間変化の状態に応じて、その測定条件を好適に設定、変更することができる。この場合の測定光源28としては、白色光源、あるいは3種類以上の単色光源を組み合わせた光源等を用いることができる。また、分光手段及び検出手段としては、分光光学系(分光器)とマルチチャンネル光検出器とを組み合わせた構成を用いることができる。
【0067】
また、波長λ、λの変更による膜厚測定条件の調整については、例えば図9〜図11に示したように、波長λ、λの波長域を変更する(ずらす)ことで、測定条件を調整する方法がある。あるいは、波長域はそのままで波長間隔Δλ=λ−λを変更する(広げるまたは狭める)ことで、測定条件を調整する方法がある。また、波長λ、λを変更する構成では、測定対象物について膜厚dが減少する時間変化を測定する場合に、2波長の波長間隔Δλを時間とともに段階的に広げるように第1、第2波長λ、λを変更することが好ましい。このような測定の例としては、エッチング処理の実行中における基板12上の半導体膜15の膜厚dの時間変化の測定が挙げられる。
【0068】
具体的に、例えば図9に示した波長λ=335nm、λ=405nmの例では、測定可能な膜厚dの最大値は、上述したようにdmax=264.99nmである。これに対して、同じ波長域において、波長間隔Δλを狭めてλ=400nm、λ=402nmとした場合を考える。このとき、波長λ、λでの半導体膜15の屈折率を、いずれもn=n=2.5とすると、絶対値が測定可能な膜厚の最大値dmax
【数8】


と求められる。
【0069】
すなわち、同じ波長域において波長λ、λの波長間隔Δλを狭めた場合、測定可能な膜厚範囲は広くなる。ただし、このように波長間隔を狭めた場合、膜厚測定の分解能、及び測定精度は低下する。一方、波長λ、λの波長間隔Δλを広げた場合、測定可能な膜厚範囲は狭くなるものの、その膜厚測定の分解能、及び測定精度は向上する。したがって、膜厚dの測定においては、このような波長間隔Δλと、測定範囲及び測定精度との関係を考慮し、必要に応じて波長λ、λを切り換えることが好ましい。
【0070】
図12は、波長切換えを伴う膜厚測定方法の一例について示すグラフである。この例では、3種類の異なる測定条件を用いて膜厚測定を行っている。また、ここでは、各波長での半導体膜15の屈折率を2.5で一定とする。第1の測定条件では、第1波長をλ=600nm、第2波長をλ=638.3nm、波長間隔をΔλ=38.3nmに設定している。図12(a)は、このときの位相差Δφ12の時間変化のグラフC1を示し、その測定可能な膜厚範囲は2000nmである。
【0071】
また、第2の測定条件では、第1波長をλ=600nm、第2波長をλ=681.8nm、波長間隔をΔλ=81.8nmに設定している。図12(b)は、このときの位相差の時間変化のグラフC2を示し、その測定可能な膜厚範囲は1000nmである。また、第3の測定条件では、第1波長をλ=600nm、第2波長をλ=789.5nm、波長間隔をΔλ=189.5nmに設定している。図12(c)は、このときの位相差の時間変化のグラフC3を示し、その測定可能な膜厚範囲は500nmである。
【0072】
図12(d)は、これらの第1〜第3の測定条件を用いたときの、波長切換えを伴う膜厚測定方法の例を示している。この例では、エッチング処理による半導体膜15の膜厚dの減少に対し、測定条件の切換え閾値Δφを設定し、位相差Δφ12がこの閾値まで減少した時点で測定条件を切り換える構成としている。すなわち、膜厚dの測定開始時を含む測定区間T1においては、最も測定範囲が広い第1の測定条件(C1)を適用する。
【0073】
そして、位相差が閾値Δφに到達した時点で、第1の測定条件よりも分解能が高い第2の測定条件(C2)に切り換え、測定区間T2で第2の測定条件を適用する。さらに、位相差が再び閾値Δφに到達した時点で、第3の測定条件(C3)に切り換え、測定区間T3で第3の測定条件を適用する。このように、エッチング処理の進行による膜厚減少に伴って、2波長の波長間隔Δλを段階的に広げるように切り換えることにより、半導体膜15の膜厚dを特に高精度で測定することが可能となる。なお、上記した例では、波長λを固定して波長λを変更することで波長間隔を変更しているが、波長λを固定して波長λを変更しても良い。あるいは、波長λ、λをともに変更しても良い。
【0074】
次に、図3に示した膜厚測定装置1Aにおいて、膜厚解析部40で行われる解析処理の具体的な一例を説明する。図13〜図18は、測定対象物の膜厚測定のための解析処理の具体例について説明するグラフである。なお、ここでは、1波長λの測定光について、その反射干渉光の検出強度の時間変化における位相の算出方法等について説明するが、2波長λ、λを用いた測定においても、同様の方法で解析を行うことが可能である。
【0075】
まず、図13のグラフ(a)に示すように、波長λの光について取得された反射干渉光の検出強度の時間変化のデータについて、位相解析に用いる解析区間T(例えば位相解析に用いるデータ数)を設定する。また、この切り出された区間Tの測定データについて、図13のグラフ(b)、及び図14のグラフ(a)に示すように、現在の時点を始点とした時間軸方向とは逆の方向に進む波を考えて、その軸変換を行う。
【0076】
次に、図14のグラフ(b)に示すように、平均強度が0になるようにオフセットを調整し、検出強度データにおいて信号強度が大きい0次成分を除去して、0を中心に振動する時間変化とする。さらに、図15のグラフ(a)に示すように、FFT解析での周波数分解能を上げるため、解析区間を延長する。このとき、検出強度の解析データのうちで、データ延長部分については、その検出強度を0とすることが好ましい。続いて、図15のグラフ(b)に示すように、検出強度の解析データに対し、窓関数を適用する。これは、データ長さが有限長であることに起因して発生する擬似的な周波数信号を除去するためのものである。また、この場合の窓関数としては、具体的には例えばハミング窓を用いることができる。あるいは、例えばガウス窓などの他の窓関数を用いても良い。
【0077】
以上のようにして準備された検出強度の解析データに対し、FFT解析などの所定の解析方法を用いてフーリエ変換を実行し、その結果から検出強度の時間変化における位相φを求める。フーリエ変換を行って得られた結果を図16のグラフに示す。また、ここでの位相はφ=0である。なお、ここでいう位相とは、上記したように時間軸方向とは逆の方向に進む波を考えたときに、現在の時点を原点とする余弦波に対する遅れ位相量をいう。また、その位相の値は、フーリエ変換で得られた強度の実部及び虚部から、atan(虚部/実部)によって求めることができる。
【0078】
また、図13〜図16において示した解析例に対し、検出強度の時間変化が1/4周期経過したときの解析例を、図17、図18に示す。図17のグラフでは、図13のグラフ(a)と同様に、反射干渉光の検出強度の時間変化のデータについて、位相解析に用いる解析区間Tを設定している。また、最終的にフーリエ変換を行って得られた結果を図18のグラフに示す。また、ここでの位相はφ=π/2と求められ、検出強度の時間変化が上記したように1/4周期経過していることがわかる。
【0079】
上記方法による膜厚測定では、第1、第2波長λ、λの干渉光成分のそれぞれについてこのような位相解析を行い、その位相差に基づいて、測定対象物の膜厚dの絶対値の時間変化を求める。膜厚dの時間変化について、例えばエッチングレートなどの膜厚変化率を求めることも可能である。また、エッチング処理の終点検出などのプロセス制御を行う場合には、あらかじめ設定された基準膜厚Dと測定された膜厚d、またはそれらに対応する基準位相差ΔΦと測定された位相差Δφ12とを比較し、両者の値が一致した場合にプロセスの終了信号を出力する等の方法によって、プロセス制御を行うことができる。
【0080】
本発明による膜厚測定装置、及び膜厚測定方法は、上記実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、膜厚測定に用いられる測定光源、分光手段、及び検出手段については、図3はその構成の一例を示すものであり、具体的には、上記以外にも様々な構成を用いることが可能である。また、測定された反射干渉光の検出強度から膜厚dを求めるための具体的な位相算出方法、及び膜厚解析方法等についても、上記した解析例に限られるものではなく、具体的には様々な方法を用いて良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を精度良く測定することが可能な膜厚測定装置、及び膜厚測定方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1A…膜厚測定装置、10…試料、12…基板、15…半導体膜(測定対象物)、16…上面(第1面)、17…下面(第2面)、20…処理装置、21…測定光学系、22…XYθステージ、23…ステージ制御部、24…撮像装置、25…測定位置設定部、28…測定光源、30…分光光学系、31…第1光検出器、32…第2光検出器、33…マルチチャンネル光検出器、35…分光測定装置、40…膜厚解析部、41…位相解析部、42…測定位相差取得部、43…基準膜厚記憶部、44…基準位相差取得部、45…位相差情報処理部、46…膜厚情報出力部、47…終点情報出力部、50…測定制御部、51…入力装置、52…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を測定する膜厚測定装置であって、
第1波長を有する第1測定光成分、及び前記第1波長とは異なる第2波長を有する第2測定光成分を少なくとも含む測定光を前記測定対象物へと供給する測定光源と、
前記測定光の前記測定対象物の前記第1面からの反射光、及び前記第2面からの反射光が干渉した干渉光について、前記第1波長の第1干渉光成分、及び前記第2波長の第2干渉光成分に分解する分光手段と、
前記第1干渉光成分、及び前記第2干渉光成分のそれぞれの各時点での強度を検出する検出手段と、
前記第1干渉光成分の検出強度の時間変化における第1位相と、前記第2干渉光成分の検出強度の時間変化における第2位相との位相差に基づいて、前記測定対象物の膜厚の時間変化を求める膜厚解析手段と
を備えることを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項2】
前記測定対象物は基板上の半導体膜であり、所定の処理の実行中における前記半導体膜の膜厚の時間変化を測定することを特徴とする請求項1記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
前記測定光源は、前記測定光の成分として互いに波長が異なる3成分以上の測定光成分を供給可能に構成され、前記分光手段及び前記検出手段は、膜厚の時間変化の測定に用いられる前記第1波長及び前記第2波長を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
前記測定対象物について膜厚が減少する時間変化を測定する場合に、2波長の波長間隔を段階的に広げるように前記第1波長及び前記第2波長を変更することを特徴とする請求項3記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
前記測定光源は、前記第1波長及び前記第2波長を含む波長域の白色光を前記測定光として供給する白色光源であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
前記分光手段は、前記干渉光を各波長の干渉光成分へと分解する分光光学系を有し、
前記検出手段は、前記分光光学系によって分解された各干渉光成分の強度を検出する複数の光検出素子が配列されたマルチチャンネル光検出器を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の膜厚測定装置。
【請求項7】
第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を測定する膜厚測定方法であって、
第1波長を有する第1測定光成分、及び前記第1波長とは異なる第2波長を有する第2測定光成分を少なくとも含む測定光を測定光源から前記測定対象物へと供給する測定光供給ステップと、
前記測定光の前記測定対象物の前記第1面からの反射光、及び前記第2面からの反射光が干渉した干渉光について、前記第1波長の第1干渉光成分、及び前記第2波長の第2干渉光成分に分解する分光ステップと、
前記第1干渉光成分、及び前記第2干渉光成分のそれぞれの各時点での強度を検出する検出ステップと、
前記第1干渉光成分の検出強度の時間変化における第1位相と、前記第2干渉光成分の検出強度の時間変化における第2位相との位相差に基づいて、前記測定対象物の膜厚の時間変化を求める膜厚解析ステップと
を備えることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項8】
前記測定対象物は基板上の半導体膜であり、所定の処理の実行中における前記半導体膜の膜厚の時間変化を測定することを特徴とする請求項7記載の膜厚測定方法。
【請求項9】
前記測定光源は、前記測定光の成分として互いに波長が異なる3成分以上の測定光成分を供給可能に構成され、前記分光ステップ及び前記検出ステップにおいて、膜厚の時間変化の測定に用いられる前記第1波長及び前記第2波長を変更することを特徴とする請求項7または8記載の膜厚測定方法。
【請求項10】
前記測定対象物について膜厚が減少する時間変化を測定する場合に、2波長の波長間隔を段階的に広げるように前記第1波長及び前記第2波長を変更することを特徴とする請求項9記載の膜厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−230515(P2010−230515A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78772(P2009−78772)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】