説明

自動車

【課題】インバータの複数のスイッチング素子の一部を含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションオフされた後に、その閉回路異常に起因する不都合が生じるのを抑止する。
【解決手段】閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときには、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御する。これにより、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされた後に、閉回路に電流が流れるのを抑止することができ、閉回路異常に起因する不都合が生じるのを抑止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に関し、詳しくは、駆動輪に動力を入出力可能で回転に伴って逆起電圧を生じる電動機と、複数のスイッチング素子のスイッチングによって電動機を駆動するインバータと、インバータを介して電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、少なくとも駆動輪に制動力を付与可能な制動力付与手段と、を備える自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載され、駆動軸に接続されたモータと、6個のトランジスタのスイッチングによってバッテリからの直流電力を交流電力に変換してモータに供給可能なインバータ回路と、を備え、インバータ回路をゲート遮断した後にインバータ温度が閾値以上のときやインバータ温度の温度変化が閾値以上のときに、インバータ回路の6個のトランジスタのいずれかにオン故障が生じてゲート遮断に異常が生じていると判定し、インバータ回路とバッテリとに介在する遮断器によって両者を切り離す駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この駆動装置では、こうした処理により、ゲート遮断の異常を判定すると共にその異常に起因する影響を他に与えないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−280193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の駆動装置を搭載する自動車では、オン故障したトランジスタを含む閉回路が形成されている状態でイグニッションオフされた後に他の車両によって牽引されると、駆動輪に連結された駆動軸に接続されたモータが回転して閉回路に電流が流れ、モータのロータの永久磁石が減磁したり、モータのステータに巻回されたコイルやモータとインバータとの接続ラインなどが過熱したりする場合がある。
【0005】
本発明の自動車は、インバータの複数のスイッチング素子の一部を含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションオフされた後に、その閉回路異常に起因する不都合が生じるのを抑止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動車は、
駆動輪に動力を入出力可能で回転に伴って逆起電圧を生じる電動機と、複数のスイッチング素子のスイッチングによって前記電動機を駆動するインバータと、前記インバータを介して前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、少なくとも前記駆動輪に制動力を付与可能な制動力付与手段と、を備える自動車であって、
前記複数のスイッチング素子の一部を含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションオフされた所定イグニッションオフ時には、少なくとも前記駆動輪に制動力が付与されるよう前記制動力付与手段を制御する所定制動制御を実行する制御手段、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動車では、複数のスイッチング素子のスイッチングによって電動機を駆動するインバータの複数のスイッチング素子の一部を含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションオフされた所定イグニッションオフ時には、少なくとも駆動輪に制動力が付与されるよう制動力付与手段を制御する所定制動制御を実行する。即ち、所定イグニッションオフ時には、駆動輪や電動機が回転するのを制限するのである。これにより、所定イグニッションオフ後には、本発明の自動車が牽引されるのを抑止することができるから、閉回路に電流が流れるのを抑止することができ、閉回路異常に起因する不都合が生じるのを抑止することができる。
【0009】
こうした本発明の自動車において、前記制動力付与手段は、前記駆動輪および従動輪に制動力を付与可能な手段であり、前記制御手段は、前記所定イグニッションオフ時には、前記所定制動制御として前記駆動輪および前記従動輪に制動力が付与されるよう前記制動力付与手段を制御し、前記所定制動制御の実行中に前記駆動輪が路面から離れたときには、少なくとも前記従動輪に対する制動力の付与が解除されるよう前記制動力付与手段を制御する手段である、ものとすることもできる。即ち、所定イグニッションオフ時には、駆動輪および従動輪に制動力を付与し、その状態で駆動輪が路面から離れたときに従動輪に対する制動力の付与を解除するのである。これにより、車両を、閉回路に電流が流れずに被牽引可能な状態にすることができる。
【0010】
また、本発明の自動車において、前記制御手段は、前記所定制動制御の実行中に、車両の被牽引を許可する被牽引許可指示がなされたときには、前記所定制動制御の実行を終了する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、操作者の意図に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】メイン電子制御ユニット50により実行される所定イグニッションオフ後制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図4】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して接続された駆動軸32に動力を入出力可能で回転に伴って逆起電圧を生じるモータ22と、モータ22を駆動するためのインバータ24と、インバータ24を介してモータ22と電力のやりとりを行なうバッテリ26と、駆動輪39a,39bや従動輪39c,39dのブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ42と、車両全体をコントロールするメイン電子制御ユニット50と、を備える。
【0014】
モータ22は、駆動軸32に接続されると共に永久磁石が埋め込まれたロータと、三相コイルが巻回されたステータと、を備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ24は、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT1〜T6と、トランジスタT1〜T6に逆方向に並列接続された6つのダイオードD1〜D6と、により構成されている。トランジスタT1〜T6は、電力ラインの正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータ22の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ24に電圧が作用している状態でトランジスタT1〜T6のオン時間の割合を制御することにより、三相コイルに回転磁界を形成でき、モータ22を回転駆動することができる。
【0015】
ブレーキアクチュエータ42は、ブレーキペダル65の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ40の圧力(ブレーキ圧)と車速Vとにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動力が駆動輪39a,39bや従動輪39c,39dに作用するようブレーキホイールシリンダ46a〜46dの油圧を調整したり、ブレーキペダル65の踏み込みに無関係に、車輪に制動力が作用するようブレーキホイールシリンダ46a〜46dの油圧を調整したりすることができるように構成されている。ブレーキアクチュエータ42は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)44により制御されている。ブレーキECU44は、図示しない信号ラインにより、駆動輪39a,39bや従動輪39c,39dに取り付けられた図示しない車輪速センサからの車輪速や図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力して、運転者がブレーキペダル65を踏み込んだときに駆動輪39a,39bや従動輪39c,39dのいずれかがロックによりスリップするのを防止するアンチロックブレーキシステム機能(ABS)や運転者がアクセルペダル63を踏み込んだときに駆動輪39a,39bのいずれかが空転によりスリップするのを防止するトラクションコントロール(TRC),車両が旋回走行しているときに姿勢を保持する姿勢保持制御(VSC)なども行なう。ブレーキECU44は、メイン電子制御ユニット50と通信しており、メイン電子制御ユニット50からの制御信号によってブレーキアクチュエータ42を駆動制御したり、必要に応じてブレーキアクチュエータ42の状態に関するデータをメイン電子制御ユニット50に出力する。
【0016】
メイン電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に処理プログラムを記憶するROM54と、データを一時的に記憶するRAM56と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。メイン電子制御ユニット50には、モータ22のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ23からの回転位置や、モータ22とインバータ24との接続ライン(電力ライン)に取り付けられた図示しない電流センサからの相電流,バッテリ26の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ26の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ26に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度,イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号,シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP,アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ68からの車速V,車両前後方向の傾きを検出する前後方向角度検出センサ69からの前後方向角度θ,車両の被牽引を許可する被牽引許可スイッチ70からの被牽引許可信号Toなどが入力ポートを介して入力されている。メイン電子制御ユニット50からは、インバータ24へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。メイン電子制御ユニット50は、ブレーキECU44と通信ポートを介して接続されており、ブレーキECU44と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0017】
こうして構成された実施例の電気自動車20では、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accと車速センサ68からの車速Vとに応じて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定すると共に、設定した要求トルクTr*が駆動軸32に出力されるようインバータ24のトランジスタT1〜T6をスイッチング制御する。
【0018】
また、実施例の電気自動車20では、インバータ24のトランジスタT1〜T6のいずれかがオン状態で故障したときには、そのオン故障したトランジスタを含む閉回路が形成される。例えば、トランジスタT1がオン故障したときを考えれば、トランジスタT1〜T6の全てをオフとしようとしてもトランジスタT1がオン故障していることにより、トランジスタT1,モータ22のU相のコイル,V相またはW相のコイル,ダイオードD2またはダイオードD3,トランジスタT1の閉回路が形成される。以下、こうした閉回路が形成される異常を閉回路異常という。閉回路異常が生じている状態でモータ22が回転していると、その回転によって生じる逆起電圧によって閉回路に電流が流れるため、実施例では、走行中に閉回路異常が生じたときには、U相,V相,W相の相電流の最大値を小さくするために、オン故障したトランジスタと同一側(トランジスタT1,T3,T5側またはトランジスタT2,T4,T6側)の残り二つのトランジスタがオンとなるようインバータ24をスイッチング制御するものとした。なお、トランジスタT1〜T6のいずれかがオン故障したか否かの判定は、例えば、モータ22とインバータ24との接続ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの相電流を調べることなどによって行なうことができる。
【0019】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされた後の動作について説明する。図2は、メイン電子制御ユニット50により実行される所定イグニッションオフ後制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときに実行される。
【0020】
所定イグニッションオフ後制御ルーチンが実行されると、メイン電子制御ユニット50のCPU72は、まず、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力を付与する全輪制動処理の実行指示をブレーキECU44に送信する(ステップS100)。この実行指示を受信したブレーキECU44は、予め定められた所定制動力が駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御する。即ち、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときには、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力を付与して駆動輪39a,39b(駆動軸32)や従動輪39c,39dが回転するのを制限するのである。これにより、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされた後に電気自動車20が牽引されるのを抑止することができるから、閉回路に電流が流れるのを抑止することができ、閉回路に電流が流れることによる不都合、例えば、モータ22のロータの永久磁石が減磁したり、モータ22のステータに巻回されたコイルやモータとインバータとの接続ラインなどが過熱したりするなどの不都合が生じるのを抑止することができる。
【0021】
続いて、前後方向角度検出センサ69からの前後方向角度θや、被牽引許可スイッチ70からの被牽引許可信号Toを入力し(ステップS110)、入力した被牽引許可信号Toがオンか否かを判定すると共に(ステップS120)、前後方向角度θが、駆動輪39a,39bが路面から離れている駆動輪非接地状態であるか否かを判定するために定められた閾値θref以上か否かを判定し(ステップ130)、被牽引許可信号Toがオフで前後方向角度θが閾値θref未満のときには、車両の被牽引が許可されておらず駆動輪非接地状態でもないと判断して、ステップS110に戻る。なお、実施例では、駆動輪非接地状態として、電気自動車20を牽引するための牽引用車両によって電気自動車20の駆動輪39a,39bが持ち上げられた状態を想定するものとした。
【0022】
ステップS120,S130で、被牽引許可信号Toがオフで前後方向角度θが閾値θref以上のときには、駆動輪非接地状態であると判断し、従動輪39c,39dに対する制動力の付与を解除する従動輪制動解除処理の実行指示をブレーキECU44に送信して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。この実行指示を受信したブレーキECU44は、駆動輪39a,39bに対する制動力の付与が継続されると共に従動輪39c,39dに対する制動力の付与が解除されるようブレーキアクチュエータ42を制御する。これにより、電気自動車20を被牽引可能な状態にすることができる。いま、駆動輪非接地状態で駆動輪39a,39bに対する制動力の付与を継続しているときを考えているから、電気自動車20の被牽引時に、駆動輪39a,39bは回転せず、閉回路に電流は流れない。
【0023】
ステップS120で、被牽引許可信号Toがオンのときには、前後方向角度θが閾値θref以上か否かに拘わらず、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに対する制動力の付与を解除する全輪制動解除処理の実行指示をブレーキECU44に送信して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。この実行指示を受信したブレーキECU44は、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに対する制動力の付与が解除されるようブレーキアクチュエータ42を制御する。これにより、電気自動車20を被牽引可能な状態にすることができる。なお、この場合、駆動輪非接地状態になっていない状態での電気自動車20の被牽引時に、閉回路に電流が流れてしまうことになるが、ユーザーが電気自動車20の被牽引を許可しているため、その意図に対応するものとした。
【0024】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、インバータ24のトランジスタT1〜T6のいずれかがオン故障してそのオン故障したトランジスタを含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときには、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御するから、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされた後に、閉回路に電流が流れるのを抑止することができ、閉回路異常に起因する不都合が生じるのを抑止することができる。
【0025】
また、実施例の電気自動車20では、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときには、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御し、その状態で駆動輪39a,39bが路面から離れている駆動輪非接地状態になったときに従動輪39c,39dに対する制動力の付与が解除されるようブレーキアクチュエータ42を制御するから、電気自動車20を、閉回路に電流が流れずに被牽引可能な状態にすることができる。
【0026】
実施例の電気自動車20では、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときには、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御するものとしたが、駆動輪39a,39bだけに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御するものとしてもよい。
【0027】
実施例の電気自動車20では、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御している状態で駆動輪非接地状態になったときには、従動輪39c,39dに対する制動力の付与が解除されるようブレーキアクチュエータ42を制御するものとしたが、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに対する制動力の付与が解除されるようブレーキアクチュエータ42を制御するものとしてもよい。
【0028】
実施例の電気自動車20では、特に説明していないが、全輪制動処理の実行指示をブレーキECU44に送信する図2の所定イグニッションオフ後制御ルーチンのステップS110の処理を実行した後に、メイン電子制御ユニット50とブレーキECU44との通信を遮断したり前後方向角度検出センサ69や被牽引許可スイッチ70とメイン電子制御ユニット50との通信を遮断したりメイン電子制御ユニット50での演算機能を停止したりするものでは、イグニッションスイッチ60がオンされた後にステップS110以降の処理を実行すればよい。
【0029】
実施例の電気自動車20では、車両の被牽引を許可する被牽引許可スイッチ70を備えるものとしたが、この被牽引許可スイッチ70を備えないものとしてもよい。
【0030】
実施例の電気自動車20では、閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときには、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御するものとしたが、これに加えて、パーキングブレーキを作動させるためのレバーやペダルなどを運転者が操作したか否かに拘わらず、図示しないパーキングブレーキによって駆動輪39a,39bまたは従動輪39c,39dに制動力を付与するものとしたり、シフトポジションSPが駐車ポジションであるか否かに拘わらず、図示しないパーキングロック機構によって駆動輪39a,39bをロックするものとしたりしてもよい。これらの場合、その状態で、駆動輪非接地状態になったり被牽引許可信号Toがオンとなったときに、パーキングブレーキによる駆動輪39a,39bまたは従動輪39c,39dへの制動力の付与を解除するものとしたりパーキングロック機構による駆動輪39a,39bのロックを解除するものとしたりしてもよい。
【0031】
実施例では、駆動輪39a,39bに接続された駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22を備える電気自動車20に適用するものしたが、駆動輪に動力を入出力可能で回転に伴って逆起電圧を生じる電動機を備えるものであればよいから、例えば、図3の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、遊星歯車機構126を介して駆動軸32に接続されたエンジン122およびモータ124と、駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22と、を備えるハイブリッド自動車120に適用するものとしてもよいし、図4の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪39a,39bに接続された駆動軸にモータ22を取り付けると共に、モータ22の回転軸にクラッチ229を介してエンジン122を接続する構成とし、エンジン122からの動力をモータ22の回転軸を介して駆動軸に出力すると共にモータ22からの動力を駆動軸に出力するハイブリッド自動車220に適用するものとしてもよい。
【0032】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ22が「電動機」に相当し、インバータ24が「インバータ」に相当し、バッテリ26が「二次電池」に相当し、ブレーキアクチュエータ42やブレーキホイールシリンダ46a〜46dが「制動力付与手段」に相当し、インバータ24のトランジスタT1〜T6のいずれかがオン故障してそのオン故障したトランジスタを含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときに、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力を付与する全輪制動処理の実行指示をブレーキECU44に送信する図2の所定イグニッションオフ後制御ルーチンを実行するメイン電子制御ユニット50と、全輪制動処理の実行指示を受信したときに駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御するブレーキECU44とが「制御手段」に相当する。
【0033】
ここで、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータ22に限定されるものではなく、駆動輪に動力を入出力可能で回転に伴って逆起電圧を生じるものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「インバータ」は、インバータ24に限定されるものではなく、複数のスイッチング素子のスイッチングによって電動機を駆動するものであれば如何なるタイプのインバータであっても構わない。「二次電池」は、バッテリ26に限定されるものではなく、インバータを介して電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「制動力付与手段」は、ブレーキアクチュエータ42やブレーキホイールシリンダ46a〜46dからなるものに限定されるものではなく、少なくとも駆動輪に制動力を付与可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」は、メイン電子制御ユニット50とブレーキECU44との組み合わせによって構成されるものに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットにより構成されるものなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、インバータ24のトランジスタT1〜T6のいずれかがオン故障してそのオン故障したトランジスタを含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションスイッチ60がオフされたときに、駆動輪39a,39bおよび従動輪39c,39dに制動力が付与されるようブレーキアクチュエータ42を制御するものに限定されるものではなく、複数のスイッチング素子の一部を含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションオフされた所定イグニッションオフ時には、少なくとも駆動輪に制動力が付与されるよう制動力付与手段を制御する所定制動制御を実行するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0034】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0035】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
20 電気自動車、22 モータ、23 回転位置検出センサ、24 インバータ、26 バッテリ、32 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、39c,39d 従動輪、40 ブレーキマスターシリンダ、42 ブレーキアクチュエータ、44 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、46a〜46d ブレーキホイールシリンダ、50 メイン電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、69 前後方向角度検出センサ、70 被牽引許可スイッチ、D1〜D6 ダイオード、T1〜T6 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に動力を入出力可能で回転に伴って逆起電圧を生じる電動機と、複数のスイッチング素子のスイッチングによって前記電動機を駆動するインバータと、前記インバータを介して前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、少なくとも前記駆動輪に制動力を付与可能な制動力付与手段と、を備える自動車であって、
前記複数のスイッチング素子の一部を含む閉回路が形成される閉回路異常が生じている状態でイグニッションオフされた所定イグニッションオフ時には、少なくとも前記駆動輪に制動力が付与されるよう前記制動力付与手段を制御する所定制動制御を実行する制御手段、
を備える自動車。
【請求項2】
請求項1記載の自動車であって、
前記制動力付与手段は、前記駆動輪および従動輪に制動力を付与可能な手段であり、
前記制御手段は、前記所定イグニッションオフ時には、前記所定制動制御として前記駆動輪および前記従動輪に制動力が付与されるよう前記制動力付与手段を制御し、前記所定制動制御の実行中に前記駆動輪が路面から離れたときには、少なくとも前記従動輪に対する制動力の付与が解除されるよう前記制動力付与手段を制御する手段である、
自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車であって、
前記制御手段は、前記所定制動制御の実行中に、車両の被牽引を許可する被牽引許可指示がなされたときには、前記所定制動制御の実行を終了する手段である、
自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−95400(P2012−95400A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238929(P2010−238929)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】