説明

薄膜トランジスタ及びその製造方法、並びにそれを含む有機電界発光表示装置

【課題】薄膜トランジスタ及びその製造方法、並びにそれを含む有機電界発光表示装置を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板上に位置し、チャンネル領域、イオンを含むソース/ドレイン領域及びオフセット領域を含む半導体層と、前記半導体層上に位置するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に位置するゲート電極と、前記ゲート電極上に位置する第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に位置する第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に位置し、前記半導体層のソース/ドレイン領域とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極とを含み、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え前記ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ及びその製造方法、並びにそれを含む有機電界発光表示装置に関し、特にゲート電極上に所定厚さの第1絶縁膜を形成してイオンドーピングを行うことで、追加のスペーサ形成なしに、自己整合方式によりオフセット領域を形成することができ、第1絶縁膜の厚さを調節してオフセット領域の幅を容易に調節することができる薄膜トランジスタ及びその製造方法、並びにそれを用いる有機電界発光表示装置(有機発光ダイオード;organic light emitting diode(OLED))に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、多結晶シリコン層は、高い電界効果移動度と高速動作回路に適用することができ、CMOS回路構成が可能であるという長所を有しており、薄膜トランジスタ用半導体層の用途として一般的に用いられる。このような多結晶シリコン層を用いる薄膜トランジスタは、主にアクティブマトリクス液晶ディスプレイ装置(AMLCD)の能動素子と有機電界発光ダイオード(OLED)のスイッチング素子及び駆動素子として用いられる。
【0003】
多結晶シリコン層を用いる薄膜トランジスタは、多結晶シリコン層の所定領域にイオンをドーピングしてソース/ドレイン領域を形成する。ここで、イオンがドーピングされないチャンネル領域とイオンがドーピングされたドレイン領域との間の境界付近に強い電界が形成されて漏洩電流が発生したり、ホットキャリアが発生したりしてチャンネル方向に移動することで、素子特性が低下するという問題点がある。
【0004】
この問題点を解決するために、チャンネル領域とソース/ドレイン領域との間に低濃度ドーピング領域を形成するか、またはオフセット領域を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。特許文献1、2に記載のように、従来のオフセット領域を形成する方法は、ゲート電極側面にスペーサなどを形成してイオンをドーピングすることで形成される。スペーサは、絶縁膜を形成した後、これをパターニングして形成するか、またはゲート電極を陽極酸化させて形成する。しかしながら、この方法でスペーサを形成するためには、パターニングのための追加のマスク及びフォト工程や、陽極酸化工程などが必要となり、工程が複雑化する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国出願公開第1997−0072491号明細書
【特許文献2】大韓民国出願公開第2004−0098958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体層内にオフセット領域を形成する際、工程を単純化することができ、オフセット領域の幅の調節が容易な薄膜トランジスタ及びその製造方法、並びにそれを備えた有機電界発光表示装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、前記基板上に位置し、チャンネル領域、イオンを含むソース/ドレイン領域及びオフセット領域を含む半導体層と、前記半導体層上に位置するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に位置するゲート電極と、前記ゲート電極上に位置する第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に位置する第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に位置し、前記半導体層のソース/ドレイン領域とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極とを含み、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え前記ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さいことを特徴とする薄膜トランジスタを提供する。
【0008】
また、本発明は、基板を提供する工程と、前記基板上に多結晶シリコン膜パターンを形成する工程と、前記多結晶シリコン膜パターン上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極上に第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜上から前記多結晶シリコン膜パターンにイオンを注入してチャンネル領域、ソース/ドレイン領域、及びオフセット領域を含む半導体層を形成する工程と、前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程と、前記第2絶縁膜上に前記半導体層のソース/ドレイン領域とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極を形成する工程とを含み、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え前記ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さいことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、基板と、前記基板上に位置し、チャンネル領域、イオンを含むソース/ドレイン領域、及びオフセット領域を含む半導体層と、半導体層上に位置するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に位置するゲート電極と、前記ゲート電極上に位置する第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に位置する第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に位置し、前記半導体層のソース/ドレイン領域とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極と、前記ソース/ドレイン電極に電気的に接続される第1電極と、前記第1電極上に位置し、発光層を含む有機膜層と、前記有機膜層上に位置する第2電極と、を含み、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え前記ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さいことを特徴とする有機電界発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲート電極上に所定厚さの第1絶縁膜を形成し、イオンドーピングを行うことで、自己整合方式によりオフセット領域を形成することができ、オフセット領域の形成に必要なスペーサを形成するための追加のマスク及びフォト工程などが不要であるため工程を単純化することができる。また第1絶縁膜の厚さを調節してオフセット領域の幅を容易に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを示す断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを製造する工程を示す断面図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを製造する工程を示す断面図である。
【図2C】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを製造する工程を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る有機電界発光表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、ここで説明する実施形態に限定されるわけではなく、他の形態で具体化することができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【0014】
ガラスまたはプラスチックである基板100を用意する。基板100上にバッファ層110が位置する。バッファ層110は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜の単層またはこれらの複層とすることができる。
【0015】
バッファ層110上に、チャンネル領域121、ソース/ドレイン領域122、123及びオフセット領域124を含む半導体層120が位置する。半導体層120は多結晶シリコン膜からなる。ソース/ドレイン領域122、123はn型またはp型イオンを含む。p型イオンは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)からなる群から選択することができ、n型イオンは、燐(P)、砒素(As)及びアンチモン(Sb)などからなる群から選択することができる。また、オフセット領域124は、イオンがドーピングされていない領域を示すものである。
【0016】
半導体層120上にゲート絶縁膜130が位置する。ゲート絶縁膜130は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの複層とすることができる。ソース/ドレイン領域122、123及びオフセット領域124上に位置するゲート絶縁膜130の厚さは、ゲート電極140下部に位置するゲート絶縁膜130の厚さよりも薄いことが好ましく、厚さの差が略200〜300Åであることが好ましい。ゲート絶縁膜130の厚さは500〜1500Åとすることができる。チャンネル領域以外に形成されたゲート絶縁膜130の厚さが厚すぎると、後続して形成される第1絶縁膜を薄く形成しなければならない。第1絶縁膜を薄く形成することは工程上困難であるため、ゲート絶縁膜130の一部をエッチングしてゲート絶縁膜の厚さを上記範囲内に調整した上で、第1絶縁膜が適当な厚さに形成されることが好ましい。
【0017】
ゲート絶縁膜130上にゲート電極140が位置する。ゲート電極140は半導体層120のチャンネル領域121に対応して位置する。ゲート電極140の端部は、40度以上90度未満のテーパ角(taper angle)を有することが好ましい。本発明では、ゲート電極140上に第1絶縁膜150を形成した後、半導体層120にイオンをドーピングすることで半導体層120内にオフセット領域124が形成される。しかしながら、ゲート電極140が40度未満のテーパ角度である場合にはオフセット領域が自己整合方式(self−alignment manner)により十分に形成されない場合もある。ゲート電極140が90度以上のテーパ角である場合には、ゲート電極140上の第1絶縁膜150におけるステップカバレッジ特性がよくないため、形成されるオフセット領域の分布が大きくなる。ゲート電極140は、アルミニウム(Al)またはアルミニウム−ネオジム(Al−Nd)のようなアルミニウム合金の単層やクロム(Cr)またはモリブデン(Mo)合金の上にアルミニウム合金が積層された多重層とすることができる。
【0018】
ゲート電極140上に第1絶縁膜150が位置する。第1絶縁膜150は、オフセット領域を形成するための絶縁膜である。第1絶縁膜150が形成されると、第1絶縁膜150及びゲート絶縁膜130を介して半導体層120にイオンを注入することになるので、第1絶縁膜150には半導体層120のソース/ドレイン領域122、123に含まれているイオンと同一イオンが含まれることになる。
【0019】
ソース/ドレイン領域122、123上に位置するゲート絶縁膜130及び第1絶縁膜150の厚さの合計は、0を超えソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さい。ここで、「ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さ」とは、(ソース/ドレイン領域に含ませる)イオンをドーピングする時にイオンエネルギーによりイオンが浸透する垂直深さを指す。ソース/ドレイン領域122、123上に位置するゲート絶縁膜130及び第1絶縁膜150の厚さの合計が、ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さい理由としては、ソース/ドレイン領域にイオンがドーピングされる必要があるからである。換言すれば、ソース/ドレイン領域122、123上に位置するゲート絶縁膜130及び第1絶縁膜150の厚さの合計は、ソース/ドレイン領域にイオンがドープされるように設定されるとも言える。更に、オフセット領域124を形成するためには本発明による第1絶縁膜150及びゲート絶縁膜130の厚さの合計を有さなければならないものであって、これはオフセット領域124をより好ましく形成するためである。本発明によれば、ゲート電極140上に所定厚さの第1絶縁膜150を形成し、イオンドーピングを行うことで、自己整合方式によりオフセット領域124を形成することができ、オフセット領域124の形成に必要なスペーサを形成するための追加のマスク及びフォト工程などが不要であるため工程を単純化することができる。また第1絶縁膜150の厚さを調節してオフセット領域124の幅を容易に調節することができるためである。
【0020】
さらに詳しくは、ソース/ドレイン領域122、123に注入されるイオンがp型イオンの場合には、ソース/ドレイン領域122、123上に位置するゲート絶縁膜130及び第1絶縁膜150の厚さの合計は、0を超え1700Å未満であることが好ましい。ソース/ドレイン領域122、123に注入されるイオンがn型イオンの場合には、ソース/ドレイン領域122、123上に位置するゲート絶縁膜130及び第1絶縁膜150の厚さの合計は、0を超え1300Å未満であることが好ましい。第1絶縁膜150は、ソース/ドレイン領域122、123に注入されるイオンが側面に拡散される距離が300〜400Åであることを考慮し、最小500Å以上の厚さを有することが好ましい。第1絶縁膜150は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、またはこれらの二重層とすることができる。
【0021】
第1絶縁膜150上に第2絶縁膜160が位置する。第2絶縁膜160は、半導体層120にイオンが注入された後に形成される絶縁膜であり、第1絶縁膜150とは異なって、半導体層120のソース/ドレイン領域122、123に含まれているイオンと異なるイオンを含んでいる。第2絶縁膜160は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、またはそれらの二重層とすることができる。
【0022】
第2絶縁膜160上に、半導体層120のソース/ドレイン領域122、123とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極171、172が位置する。ソース/ドレイン電極171、172は、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、アルミニウム−ネオジム(Al−Nd)、チタン(Ti)、モリブデンタングステン(MoW)及びアルミニウム(Al)のうちから選択されるいずれか1つで形成することができる。
【0023】
図2Aないし図2Bは、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを製造する工程の断面図である。
【0024】
まず、図2Aに示すように、ガラスまたはプラスチックのような基板200上にバッファ層210を形成する。バッファ層210は、化学的気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)法または物理的気相蒸着(Physical Vapor Deposition)法を利用してシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜のような絶縁膜を用いる単層またはこれらの複層で形成される。このとき、バッファ層210は、前記基板200から発生される水分または不純物の拡散を防止したり、結晶化時に熱の伝達速度を調節したりすることで、非晶質シリコン層の結晶化がよく行われるようにする役割をする。
【0025】
次いで、バッファ層210上に、多結晶シリコン膜を形成し、これをパターニングして多結晶シリコン膜パターン220を形成する。多結晶シリコン膜は、非晶質シリコン膜を形成し、非晶質シリコン膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)工程、SPC法(Solid Phase Crystallization)、ELA法(Excimer Laser Crystallization)、MIC法(Metal Induced Crystallization)、MILC法(Metal Induced Lateral Crystallization)、SLS法(Sequential Lateral Solidification)、またはSGS法(Super Grain Silicon)などのような結晶化法で結晶化して形成することができる。
【0026】
次いで、多結晶シリコン膜パターン220が形成された基板200上にゲート絶縁膜230を形成する。ここで、ゲート絶縁膜230は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの二重層とすることができる。ゲート絶縁膜の厚さは500〜1500Åとすることができる。
【0027】
続いて、ゲート絶縁膜230上に、アルミニウム(Al)またはアルミニウム−ネオジム(Al−Nd)のようなアルミニウム合金の単層や、クロム(Cr)またはモリブデン(Mo)合金の上にアルミニウム合金が積層された多重層をゲート電極用金属層(図示せず)として形成し、フォトエッチング工程によりゲート電極用金属層をエッチングしてゲート電極240を形成する。ゲート電極240の端部は、40〜90度未満のテーパ角を有することが好ましい。ゲート電極240が40度未満のテーパ角を有する場合には、自己整合方式によりオフセット領域が十分に形成されないこともある。ゲート電極240が90度以上のテーパ角を有する場合には、ゲート電極240上に第1絶縁膜250におけるステップカバレッジ特性がよくないため、形成されるオフセット領域の分布(散布)が大きくなる。なお、ゲート電極240を形成する方法は、一般的にゲート電極240をテーパ角で形成する方法と等しく、特に制限されるものではない。
【0028】
ゲート電極用金属層をエッチングしてゲート電極240を形成する際、ゲート電極240下部以外の領域に位置するゲート絶縁膜230の一部をエッチングすることが好ましい。チャンネル領域以外に形成された前記ゲート絶縁膜230の厚さが厚すぎると、後続して形成される第1絶縁膜を薄く形成しなければならない。前記第1絶縁膜を薄く形成することは工程上に困難であるため、ゲート絶縁膜230の一部をエッチングしてゲート絶縁膜の厚さを調整した上で、第1絶縁膜が適当な厚さに形成されることが好ましい。ゲート電極240下部に位置する前記ゲート絶縁膜の厚さとゲート電極240下部以外の領域に位置するゲート絶縁膜の厚さとの差は200〜300Åとすることができる。
【0029】
次いで、図2Bに示すように、ゲート電極240を含む基板200の全面にかけて第1絶縁膜250を形成する。第1絶縁膜250は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜またはこれらの多重層とすることができる。次いで、第1絶縁膜250上から多結晶シリコン膜パターン220にn型またはp型イオン260を注入し、チャンネル領域221、ソース/ドレイン領域222、223、及びオフセット領域224を含む半導体層を形成する。p型イオンとしては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)からなる群から選択することができ、n型イオンとしては、燐(P)、砒素(As)及びアンチモン(Sb)などからなる群から選択することができる。イオン注入は、50〜100keVのイオンエネルギーで注入することができ、1×1014〜1×1016/cmのドーズ量を用いて注入することができる。1×1014/cm未満のドーズ量を注入する場合は、形成されるソース/ドレイン領域の抵抗が大きくてソース/ドレイン領域としての役割を十分に行うことができず、1×1016/cmを超えるドーズ量を注入した場合は、注入されたイオンが活性化せず、ソース/ドレイン領域を非晶質化させて特性によくない影響を及ぼすことになる。
【0030】
第1絶縁膜250はオフセット領域を形成するための絶縁膜である。第1絶縁膜250を形成した後に、第1絶縁膜250及びゲート絶縁膜230を介して多結晶シリコン膜パターン220にイオンが注入されることになるので、第1絶縁膜250には、半導体層のソース/ドレイン領域222、223に含まれているイオンと同一イオンが含まれる。
【0031】
ソース/ドレイン領域222、223上に位置するゲート絶縁膜230及び第1絶縁膜250の厚さの合計は、0を超えソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さい。さらに詳しく説明すると以下のようである。
【0032】
表1及び表2は、イオンシャワードーピングを用いたイオンドーピング時にイオンエネルギーによってイオンが浸透する垂直深さ及び水平に拡散される距離をシミュレーションした結果である。表1はホウ素イオンの場合であって、表2は燐イオンの場合である。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
イオンシャワードーピングを用いてイオンドーピングを行う際に、一般的にイオンエネルギーを100keV程度まで、好ましくは50〜100keVで用いるため、表1及び表2に示すように、ソース/ドレイン領域222、223に注入するイオンがホウ素のようなp型イオンの場合には、ソース/ドレイン領域222、223上に位置する前記ゲート絶縁膜230及び第1絶縁膜250の厚さの合計は、0を超え1700Å未満であることが好ましい。ソース/ドレイン領域222、223に注入されるイオンが燐のようなn型イオンの場合には、ソース/ドレイン領域222、223上に位置する前記ゲート絶縁膜230及び第1絶縁膜250の厚さの合計は、0を超え1300Å未満であることが好ましい。第1絶縁膜250は、ソース/ドレイン領域222、223に注入されたイオンが側面に拡散される距離が300〜400Åであることを考慮し、最小500Å以上の厚さを有することが好ましい。
【0036】
次いで、図2Cに示すように、第1絶縁膜250上に第2絶縁膜270を形成する。第2絶縁膜270は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜またはそれらの多重層で形成することができる。第1絶縁膜250及び前記第2絶縁膜270の厚さの合計は、4000〜6000Åに形成することができる。
【0037】
次いで、ゲート絶縁膜230、第1絶縁膜250及び第2絶縁膜270の所定領域をエッチングして半導体層のソース/ドレイン領域222、223の所定領域を露出させるコンタクトホール280を形成する。次いで、コンタクトホール280を介してソース/ドレイン領域222、223と接続されるソース/ドレイン電極291、292を形成する。ソース/ドレイン電極291、292は、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、アルミニウム−ネオジム(Al−Nd)、チタン(Ti)、モリブデンタングステン(MoW)及びアルミニウム(Al)のうちから選択されるいずれか1つに形成することができる。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを含む有機電界発光表示装置の断面図である。
【0039】
図3に示すように、本発明の図1の実施形態に係る薄膜トランジスタを含む基板100全面に絶縁膜300が位置される。絶縁膜300は、無機膜であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはシリゲートオンガラスのうちから選択されるいずれか1つまたは有機膜であるポリイミド(polyimide)、ベンゾサイクロブチン系樹脂(benzocyclobutene series resin)またはアクリレート(acrylate)のうちから選択されるいずれか1つに形成することができる。また、無機膜と有機膜との積層構造に形成することもできる。
【0040】
絶縁膜300内に、ソースまたはドレイン電極171、172を露出するビアホール310が位置する。絶縁膜300上にビアホール310を介してソースまたはドレイン電極171、172のうちのいずれか1つと接続される第1電極320が位置する。第1電極320はアノードまたはカソードとすることができる。第1電極320がアノードの場合、アノードは、ITO、IZOまたはITZOのうちからいずれか1つからなる透明導電膜に形成することができ、カソードの場合にカソードは、Mg、Ca、Al、Ag、Baまたはそれらの合金を用いて形成することができる。
【0041】
次いで、第1電極320上に、第1電極320の表面一部を露出させる開口部を有する画素定義膜330が位置し、露出された第1電極320上に発光層を含む有機膜層340が位置する。有機膜層340には、正孔注入層、正孔輸送層、正孔抑制層、電子抑制層、電子注入層及び電子輸送層からなる群から選択される1つまたは複数の層をさらに含むことができる。次いで、有機膜層340上に第2電極350が位置する。
【0042】
したがって、本発明では、ゲート電極上に所定厚さの第1絶縁膜を形成してイオンドーピングを行うことで、自己整合方式によるオフセット領域を形成することができ、オフセット領域の形成に必要なスペーサを形成するために追加のマスク及びフォト工程などが不要で、工程を単純化することができる。また第1絶縁膜の厚さを調節してオフセット領域の幅を容易に調節することができる。
【符号の説明】
【0043】
100、200 基板、
110、210 バッファ層、
120 半導体層、
121、221 チャンネル領域、
122、123、222、223 ソース/ドレイン領域、
124、224 オフセット領域、
130、230 ゲート絶縁膜、
140、240 ゲート電極、
150、250 第1絶縁膜、
160、270 第2絶縁膜、
171、172、291、292 ソース/ドレイン電極、
220 多結晶シリコン膜パターン、
260 n型またはp型イオン、
280 コンタクトホール、
300 絶縁膜、
310 ビアホール、
320 第1電極、
330 画素定義膜、
340 有機膜層、
350 第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置し、チャンネル領域、イオンを含むソース/ドレイン領域、及びオフセット領域を含む半導体層と、
前記半導体層上に位置するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極上に位置する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に位置する第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に位置し、前記半導体層のソース/ドレイン領域とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極と、を含み、
前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え前記ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さいことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記ソース/ドレイン領域にp型イオンが含まれ、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え1700Å未満であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記ソース/ドレイン領域にn型イオンが含まれ、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え1300Å未満であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記第1絶縁膜には、n型またはp型イオンが含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記ゲート電極下部に位置するゲート絶縁膜の厚さは、前記ソース/ドレイン領域上のゲート絶縁膜の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記ゲート電極下部に位置するゲート絶縁膜の厚さと前記ソース/ドレイン領域上のゲート絶縁膜の厚さとの差は、200〜300Åであることを特徴とする請求項5に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記ゲート電極の端部は40度以上90度未満のテーパ角を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記第1絶縁膜は500Å以上の厚さを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
基板を提供する工程と、
前記基板上に多結晶シリコン膜パターンを形成する工程と、
前記多結晶シリコン膜パターン上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、前記ゲート電極上に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上から前記多結晶シリコン膜パターンにイオンを注入してチャンネル領域、ソース/ドレイン領域、及びオフセット領域を含む半導体層を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程と、
前記第2絶縁膜上に前記半導体層のソース/ドレイン領域とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極を形成する工程と、を含み、
前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え前記ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さいことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
前記イオンはp型イオンであり、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え1700Å未満であることを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記イオンはn型イオンであり、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え1300Å未満であることを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記ゲート電極を形成するためのパターニング時に前記ゲート電極下部以外の領域に位置する前記ゲート絶縁膜の所定領域をエッチングすることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記ゲート電極下部に位置するゲート絶縁膜の厚さと前記ゲート電極下部以外の領域に位置する前記ゲート絶縁膜の厚さとの差が、200〜300Åであることを特徴とする請求項12に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記ゲート電極の端部は、40度以上90度未満のテーパ角を有するように形成することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記第1絶縁膜は、500Å以上の厚さで形成することを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
基板と、
前記基板上に位置し、チャンネル領域、ソース/ドレイン領域、及びオフセット領域を含む半導体層と、
前記半導体層上に位置するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極上に位置する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に位置する第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に位置し、前記半導体層のソース/ドレイン領域とそれぞれ電気的に接続されるソース/ドレイン電極と、
前記ソース/ドレイン電極に電気的に接続される第1電極と、
前記第1電極上に位置し、発光層を含む有機膜層と、
前記有機膜層上に位置する第2電極と、を含み、
前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え前記ソース/ドレイン領域に含まれたイオンの垂直浸透深さより小さいことを特徴とする有機電界発光表示装置。
【請求項17】
前記ソース/ドレイン領域にp型イオンが含まれ、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え1700Å未満であることを特徴とする請求項16に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項18】
前記ソース/ドレイン領域にn型イオンが含まれ、前記ソース/ドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜及び前記第1絶縁膜の厚さの合計は、0を超え1300Å未満であることを特徴とする請求項16に記載の有機電界発光表示装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−232635(P2010−232635A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10672(P2010−10672)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】