説明

薄膜トランジスタ

【課題】信頼性が高く、耐酸化性に優れる薄膜トランジスタを提供すること。
【解決手段】基板2上に、ゲート電極3、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7を形成してなる薄膜トランジスタであって、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と感放射線化合物(B)とを含有する感放射線性樹脂組成物からなる保護膜8が、前記ゲート絶縁層4、前記半導体層5、前記ソース電極お6よび前記ドレイン電極7に接触して形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタに係り、さらに詳しくは、信頼性が高く、耐酸化性に優れる薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、カラーフィルタ、薄膜トランジスタ、ブラックマトリックス等の電子部品には、その劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜等として種々の樹脂膜が設けられている。また、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や集積回路素子等の素子には、層状に配置される複数の配線の間を絶縁するために層間絶縁膜としての樹脂膜が設けられている。
【0003】
従来、これらの樹脂膜を形成するための樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂材料が汎用されていた。しかしその一方で、近年の配線やデバイスの高密度化に伴い、これらの樹脂材料にも、基板との密着性が良好で低誘電性等の電気特性の優れた新しい樹脂材料が求められてきた。
【0004】
これに対して、たとえば、特許文献1には、薄膜トランジスタの保護膜を形成するための樹脂材料として、アクリル系感光性樹脂を用い、これを露光および現像することによって、薄膜トランジスタの保護膜を形成する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、アクリル系感光性樹脂を用いることで、保護膜の電気特性の向上は可能となるものの、薄膜トランジスタ素子表面の耐酸化性が低く、さらには、高温・高湿環境下における信頼性が低いという問題があった。そのため、酸化防止効果が高く、高温・高湿環境下における信頼性を向上可能な保護膜を形成可能な樹脂材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−152625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、信頼性が高く、耐酸化性に優れる薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、薄膜トランジスタの保護膜を形成するための樹脂組成物として、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と感放射線化合物(B)とを含有する感放射線性樹脂組成物を用いることにより、薄膜トランジスタを構成する半導体層を含む複数の層との密着性に優れた保護膜を形成することができ、これにより薄膜トランジスタの信頼性を優れたものとすることができることを見出した。加えて、本発明者らは、該保護膜が、酸化防止効果に優れ、そのため、薄膜トランジスタを構成する半導体層の酸化を有効に防止することができ、結果として、薄膜トランジスタを、耐酸化性に優れたものとすることができることも見出した。そして、これらの知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を形成してなる薄膜トランジスタであって、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と感放射線化合物(B)とを含有する感放射線性樹脂組成物からなる保護膜が、前記ゲート絶縁層、前記半導体層、前記ソース電極および前記ドレイン電極に接触して形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタが提供される。
【0010】
好ましくは、前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)は、フェノール基含有単量体の単位40〜80重量%、および、前記フェノール基含有単量体と共重合可能な単量体の単位20〜60重量%含有する。
好ましくは、前記フェノール基含有単量体の単位が、ビニルフェノール単位である。
好ましくは、前記共重合可能な単量体の単位が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保護膜を形成するための感放射線性樹脂組成物として、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と感放射線化合物(B)とを含有するものを用いるため、薄膜トランジスタを構成する半導体層を含む複数の層との密着性に優れ、かつ、優れた酸化防止効果を有する保護膜を形成可能であり、これにより、信頼性が高く、耐酸化性に優れる薄膜トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る薄膜トランジスタの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の薄膜トランジスタは、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を形成してなる薄膜トランジスタであって、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と感放射線化合物(B)とを含有する感放射線性樹脂組成物からなる保護膜が、前記ゲート絶縁層、前記半導体層、前記ソース電極および前記ドレイン電極に接触して形成されていることを特徴とする。
以下においては、まず、本発明で用いる感放射線性樹脂組成物について説明する。
【0014】
(感放射線性樹脂組成物)
本発明で用いる感放射線性樹脂組成物は、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有する薄膜トランジスタの保護膜を形成するための感放射線性樹脂組成物であり、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と感放射線化合物(B)とを含有する。
【0015】
本発明で用いるアルカリ可溶性フェノール樹脂(A)は、フェノール基含有単量体芳香族置換基上にヒドロキシル基を有する単量体の重合体、または、フェノール基含有単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体である。
【0016】
このようなアルカリ可溶性フェノール樹脂(A)としては、たとえば、フェノール化合物とアルデヒド類との縮合反応生成物、フェノール化合物とケトン類との縮合反応生成物、ビニルフェノール系重合体、イソプロペニルフェノール系重合体、これらのフェノール樹脂の水素添加反応生成物などを挙げることができるが、これらのなかでも、ビニルフェノール系重合体が好ましい。
【0017】
本発明で用いるビニルフェノール系重合体は、フェノール基含有単量体であるビニルフェノールの単独重合体、およびフェノール基含有単量体であるビニルフェノールと共重合可能な単量体との共重合体から選択されるものである。
【0018】
ビニルフェノールと共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、ビニルエステル化合物、(メタ)アクリル酸〔アクリル酸および/またはメタクリル酸、以下、(メタ)アクリル酸エステルなども同様。)、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物(ただし、フェノール基を有する化合物を除く)、シアン化ビニル化合物、不飽和二塩基酸およびその無水物などが挙げられる。
【0019】
ビニルエステル化合物の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
芳香族ビニルの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどが挙げられる。
不飽和二塩基酸およびその無水物の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
これらの単量体は単独で用いても良いし、また、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、得られる保護膜を、薄膜トランジスタを構成する半導体層を含む複数の層との密着性を良好なものとしながら、高い透明性を有するものとすることができるという点より、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いるアルカリ可溶性フェノール樹脂(A)が、フェノール基含有単量体と、共重合可能な単量体との共重合体である場合における、フェノール基含有単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは45〜75重量%、さらに好ましくは50〜75重量%である。また、共重合可能な単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは25〜55重量%、さらに好ましくは25〜50重量%である。共重合可能な単量体の単位の含有量が多くすると、得られる保護膜の透明性を高くすることができる一方で、その含有量が多すぎると、保護膜の、薄膜トランジスタを構成する各層に対する密着性が低下したり、酸化防止効果が不十分となり、得られる薄膜トランジスタの信頼性や耐酸化性が低下する場合がある。
【0021】
本発明で用いるアルカリ可溶性フェノール樹脂(A)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した単分散ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは3,000〜20,000、より好ましくは4,000〜15,000、さらに好ましくは4,500〜12,000である。アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)の平均分子量が低すぎると、酸化防止効果が低下してしまったり、アルカリ溶解性が高いため保護膜形成が困難となるおそれがある。アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)の平均分子量が大きすぎると、アルカリ溶解性の低下により保護膜を形成するのに必要な時間やエネルギーが増加してしまったり、保護膜形成が困難となるおそれがある。
【0022】
本発明で用いる感放射線化合物(B)は、紫外線や電子線等の放射線の照射により、化学反応を引き起こすことのできる化合物である。本発明において感放射線化合物(B)は、感放射線性樹脂組成物により形成される保護膜のアルカリ溶解性を制御できるものが好ましく、特に、光酸発生剤を使用することが好ましい。
【0023】
このような感放射線化合物(B)としては、例えば、アセトフェノン化合物、トリアリールスルホニウム塩、キノンジアジド化合物等のアジド化合物等が挙げられるが、好ましくはアジド化合物、特に好ましくはキノンジアジド化合物である。
【0024】
キノンジアジド化合物としては、例えば、キノンジアジドスルホン酸ハライドとフェノール性水酸基を有する化合物とのエステル化合物を用いることができる。キノンジアジドスルホン酸ハライドの具体例としては、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物の代表例としては、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等が挙げられる。これら以外のフェノール性水酸基を有する化合物としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマー等が挙げられる。
これらの中でも、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール性水酸基を有する化合物との縮合物が好ましく、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド(2.0モル)との縮合物がより好ましい。
【0025】
また、光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物の他、オニウム塩、ハロゲン化有機化合物、α,α’−ビス(スルホニル)ジアゾメタン系化合物、α−カルボニル−α’−スルホニルジアゾメタン系化合物、スルホン化合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物等、公知のものを用いることができる。
これらの感放射線化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明で用いる感放射線性樹脂組成物中における感放射線化合物(B)の含有量は、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは15〜45重量部、さらに好ましくは20〜40重量部の範囲である。感放射線化合物(B)の含有量がこの範囲にあれば、感放射線性樹脂組成物からなる保護膜をパターン化する際に、放射線照射部と放射線未照射部との現像液への溶解度差が大きくなり、放射線感度も高くなり、現像によるパターン化が容易であるので好適である。
【0027】
また、本発明で用いる感放射線性樹脂組成物は、架橋剤(C)をさらに含有することが好ましい。架橋剤(C)としては、加熱により架橋剤分子間に架橋構造を形成するものや、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と反応して樹脂分子間に架橋構造を形成するものであり、具体的には、2以上の反応性基を有する化合物である。
このような反応性基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられ、これらのなかでも、アミノ基、エポキシ基およびイソシアネート基が好ましく、アミノ基およびエポキシ基がより好ましい。また、エポキシ基は、末端エポキシ基、脂環式エポキシ基が好ましく、脂環式エポキシ基がより好ましい。
【0028】
架橋剤(C)の分子量は、特に限定されないが、好ましくは100〜100,000、より好ましくは300〜50,000、さらに好ましくは500〜10,000である。架橋剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
架橋剤(C)の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン類;2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフォン等のアジド類;ナイロン、ポリヘキサメチレンジアミンテレレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド等のポリアミド類;N,N,N’,N’,N’ ’,N’ ’−(ヘキサアルコキシアルキル)メラミン等のメチロール基やイミノ基等を有していても良いメラミン類(商品名「サイメル303、サイメル325、サイメル370、サイメル235、サイメル272、サイメル232、サイメル212、マイコート506」{以上、サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ、マイコートシリーズ);N,N’,N’’,N’’’−(テトラアルコキシアルキル)グリコールウリル等のメチロール基やイミノ基等を有していてもよいグリコールウリル類(商品名「サイメル1170」{サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ);エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアクリレート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)ノルボルナン;1,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサン;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテル、エポキシアクリレート重合体等のエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0030】
このようなエポキシ化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエンを骨格とする3官能性のエポキシ化合物(商品名「XD−1000」、日本化薬社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格および末端エポキシ基を有する15官能性の脂環式エポキシ樹脂、商品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状3官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT301」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)等の脂環構造を有するエポキシ化合物;
【0031】
芳香族アミン型多官能エポキシ化合物(商品名「H−434」、東都化成工業社製)、クレゾールノボラック型多官能エポキシ化合物(商品名「EOCN−1020」、日本化薬社製)、フェノールノボラック型多官能エポキシ化合物(エピコート152、154、ジャパンエポキシレジン社製)、ナフタレン骨格を有する多官能エポキシ化合物(商品名EXA−4700、大日本インキ化学株式会社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(商品名「SR−TMP」、坂本薬品工業社製)、多官能エポキシポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業社製)、グリセリンのグリシジルポリエーテル化合物(商品名「SR−GLG」、阪本薬品工業株式会社製)、ジグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR−DGE」、阪本薬品工業株式会社製、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR−4GL」、阪本薬品工業株式会社製)等の脂環構造を有さないエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0032】
これらエポキシ化合物のなかでも、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物が好ましく、感放射線性樹脂組成物を用いて得られる保護膜の耐熱形状保持性に優れることから、脂環構造を有し、かつ、エポキシ基が3個以上の多官能エポキシ化合物が、特に好ましい。
【0033】
感放射線性樹脂組成物における架橋剤(C)の含有量は、特に限定されず、感放射線性樹脂組成物を用いて得られる保護膜にパターンを設ける場合に求められる耐熱性の程度を考慮して任意に設定すればよいが、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは20〜100重量部、より好ましくは25〜90重量部、さらに好ましくは30〜80重量部、特に好ましくは30〜70重量部である。架橋剤(C)が、多すぎても少なすぎても耐熱性が低下する傾向がある。
【0034】
また、感放射線性樹脂組成物は、上記各成分に加えて、接着助剤や酸化防止剤を含有していてもよい。
【0035】
接着助剤は、感放射線性樹脂組成物を用いて得られる保護膜と、薄膜トランジスタを形成する各層との密着性を改良するために使用される。このような接着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましく使用され、例えばカルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、アクリル系ポリマーも接着助剤として用いることができる。接着助剤の含有量は、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0036】
酸化防止剤としては、通常の重合体に使用されている、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等が使用できる。フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−メトキシフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、アルキル化ビスフェノール等を挙げることができる。リン系酸化防止剤の具体例としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)等が挙げられる。また、イオウ系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル等が挙げられる。接着助剤の含有量は、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1.5〜8重量部である。
【0037】
さらに、本発明で用いる感放射線性樹脂組成物は、酸性基を有する化合物を含有していてもよい。
酸性基を有する化合物としては、特に限定されないが、好ましくは脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物であり、更に好ましくは芳香族化合物、複素環化合物である。
これらの酸性基を有する化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
酸性基を有する化合物の酸性基の数は、特に限定されないが、2つ以上の酸性基を有するものが好ましく、特に2つの酸性基を有するものが好ましい。酸性基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
酸性基としては、酸性の官能基であればよく、その具体例としては、スルホン酸基、リン酸基等の強酸性基;カルボキシ基、チオール基及びカルボキシメチレンチオ基等の弱酸性基;が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基、チオール基またはカルボキシメチレンチオ基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。また、これらの酸性基の中でも、酸解離定数pKaが3.5以上5.0以下の範囲にあるものが好ましい。なお、酸性基が2つ以上ある場合は第一解離定数pKa1を酸解離定数とし、第一解離定数pKa1が上記範囲にあるものが好ましい。また、pKaは、希薄水溶液条件下で、酸解離定数Ka=[H][B]/[BH]を測定し、pKa=−logKaにしたがって、求められる。ここでBHは、有機酸を表し、Bは有機酸の共役塩基を表す。
また、pKaの測定方法は、例えばpHメーターを用いて水素イオン濃度を測定し、該当物質の濃度と水素イオン濃度から算出することができる。
本発明において、上述したような酸性基を有する化合物を使用することにより、本発明の感放射線性樹脂組成物から形成される樹脂膜を、より密着性に優れたものとすることができる。
【0039】
また、酸性基を有する化合物は、酸性基以外の置換基を有していてもよい。
このような置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基のほか、ハロゲン原子;アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基;アルキル基又はアリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基;アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基;等のプロトンを有しない極性基、これらのプロトンを有しない極性基で置換された炭化水素基、等を挙げることができる。
【0040】
このような酸性基を有する化合物の具体例としては、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、グリコール酸、グリセリン酸、エタン二酸(「シュウ酸」ともいう。)、プロパン二酸(「マロン酸」ともいう。)、ブタン二酸(「コハク酸」ともいう。)、ペンタン二酸、ヘキサン二酸(「アジピン酸」ともいう。)、1、2―シクロヘキサンジカルボン酸、2−オキソプロパン酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2−ヒドロキシプロパントリカルボン酸、メルカプトこはく酸、ジメルカプトこはく酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、2,3,4−トリメルカプト−1−ブタノール、2,4−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、1,3,4−トリメルカプト−2−ブタノール、3,4−ジメルカプト−1,2−ブタンジオール、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン等の脂肪族化合物;
【0041】
安息香酸、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、o−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、3−フェニルプロパン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(「フタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(「イソフタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(「テレフタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、2−(カルボキシメチル)安息香酸、3−(カルボキシメチル)安息香酸、4−(カルボキシメチル)安息香酸、2−(カルボキシカルボニル)安息香酸、3−(カルボキシカルボニル)安息香酸、4−(カルボキシカルボニル)安息香酸、2−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフタレンカルボン酸、2−メルカプト−7−ナフタレンカルボン酸、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン等の芳香族化合物;
【0042】
ニコチン酸、イソニコチン酸、2−フロ酸、ピロール−2,3−ジカルボン酸、ピロール−2,4−ジカルボン酸、ピロール−2,5−ジカルボン酸、ピロール−3,4−ジカルボン酸、イミダゾール−2,4−ジカルボン酸、イミダゾール−2,5−ジカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ピラゾール−3,4−ジカルボン酸、ピラゾール−3,5−ジカルボン酸等の窒素原子を含む五員複素環化合物;チオフェン−2,3−ジカルボン酸、チオフェン−2,4−ジカルボン酸、チオフェン−2,5−ジカルボン酸、チオフェン−3,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,5−ジカルボン酸、チアゾール−4,5−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,4−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,5−ジカルボン酸、1,2,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルスルファニル)こはく酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルスルファニル)こはく酸、(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)酢酸、(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)酢酸、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)プロピオン酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)コハク酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)コハク酸、4−(3−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)チオブタンスルホン酸、4−(2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオブタンスルホン酸等の窒素原子と硫黄原子を含む五員複素環化合物;
【0043】
ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,4−ジカルボン酸、ピリダジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,6−ジカルボン酸、ピリダジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−2,4−ジカルボン酸、ピリミジン−2,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,6−ジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、ピラジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、トリアジン−2,4−ジカルボン酸、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジプロピルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン等の窒素原子を含む六員複素環化合物;が挙げられる。
これらの中でも、得られる保護膜と、薄膜トランジスタを構成する半導体層を含む複数の層との密着性をより高めることができるという観点から、酸性基の数は、2つ以上であることが好ましく、2つが特に好ましい。
【0044】
酸性基を2つ有する化合物としては、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、1,2―シクロヘキサンジカルボン酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(「フタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(「イソフタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(「テレフタル酸」ともいう。)ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、2−(カルボキシメチル)安息香酸、3−(カルボキシメチル)安息香酸、4−(カルボキシメチル)安息香酸、2−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフタレンカルボン酸、2−メルカプト−7−ナフタレンカルボン酸、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオールの2つの酸性基を有する芳香族化合物;ピロール−2,3−ジカルボン酸、ピロール−2,4−ジカルボン酸、ピロール−2,5−ジカルボン酸、ピロール−3,4−ジカルボン酸、イミダゾール−2,4−ジカルボン酸-、イミダゾール−2,5−ジカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ピラゾール−3,4−ジカルボン酸、ピラゾール−3,5−ジカルボン、チオフェン−2,3−ジカルボン酸、チオフェン−2,4−ジカルボン酸、チオフェン−2,5−ジカルボン酸、チオフェン−3,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,5−ジカルボン酸、チアゾール−4,5−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,4−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,5−ジカルボン酸、1,2,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)酢酸、(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)酢酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,4−ジカルボン酸、ピリダジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,6−ジカルボン酸、ピリダジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−2,4−ジカルボン酸、ピリミジン−2,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,6−ジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、ピラジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、トリアジン−2,4−ジカルボン酸の2つの酸性基を有する複素環化合物;が好ましい。
これらの化合物を使用することにより、樹脂組成物から形成される樹脂膜と基板との密着性が高いという効果を得ることができる。
【0045】
本発明で用いる感放射線性樹脂組成物中における、酸性基を有する化合物の含有量は、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは1〜45重量部、より好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部の範囲である。酸性基を有する化合物の使用量を上記範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物を液状安定性に優れたものとすることができる。
【0046】
また、感放射線性樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、特に限定されず、感放射線性樹脂組成物の溶剤として公知のもの、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノンなどの直鎖のケトン類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコールエーテル類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのジエチレングリコール類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトンなどの飽和γ−ラクトン類;トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの溶剤は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の含有量は、アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは400〜2,000重量部、より好ましくは450〜1,600重量部、さらに好ましくは500〜1,200重量部の範囲である。
【0047】
さらに、本発明で用いる感放射線性樹脂組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、所望により、増感剤、界面活性剤、潜在的酸発生剤、光安定剤、消泡剤、顔料、染料、フィラー等のその他の配合剤;等を含有していてもよい。
【0048】
増感剤の具体例としては、2H−ピリド−(3,2−b)−1,4−オキサジン−3(4H)−オン類、10H−ピリド−(3,2−b)−1,4−ベンゾチアジン類、ウラゾール類、ヒダントイン類、バルビツール酸類、グリシン無水物類、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、アロキサン類、マレイミド類等が挙げられる。
【0049】
界面活性剤は、ストリエーション(塗布筋あと)の防止、現像性の向上等の目的で使用される。その具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;メタクリル酸共重合体系界面活性剤;アクリル酸共重合体系界面活性剤;等が挙げられる。
【0050】
潜在的酸発生剤は、感放射線性樹脂組成物の耐熱性および耐薬品性を向上する目的で使用される。その具体例としては、加熱により酸を発生するカチオン重合触媒である、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、スルホニウム塩及びベンゾチアゾリウム塩が好ましい。
【0051】
光安定剤は、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、金属錯塩系等の紫外線吸収剤、ヒンダ−ドアミン系(HALS)等、光により発生するラジカルを捕捉するもの等のいずれでもよい。これらのなかでも、HALSはピペリジン構造を有する化合物で、感放射線性樹脂組成物に対し着色が少なく、安定性がよいため好ましい。具体的な化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0052】
本発明で用いる感放射線性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、上述した各成分を公知の方法により混合すればよい。
混合の方法は特に限定されないが、上述した各成分を、溶剤に溶解または分散して得られる溶液または分散液を混合するのが好ましい。これにより、感放射線性樹脂組成物は、溶液または分散液の形態で得られる。
【0053】
上述した各成分を溶剤に溶解または分散する方法は、常法に従えばよい。具体的には、攪拌子とマグネティックスターラーを使用した攪拌、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロール等を使用して行なうことができる。また、各成分を溶剤に溶解または分散した後に、例えば、孔径が0.5μm程度のフィルター等を用いて濾過してもよい。
【0054】
感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常、1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。固形分濃度がこの範囲にあれば、溶解安定性、塗布性や形成される保護膜の膜厚均一性、平坦性等が高度にバランスされ得る。
【0055】
(薄膜トランジスタ)
次いで、本発明の薄膜トランジスタについて、説明する。図1は、本発明に係る薄膜トランジスタの一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明の一例に係る薄膜トランジスタ1は、基板2上に、ゲート電極3、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7を有し、これらの表面に、上述した感放射線性樹脂組成物からなる保護膜8が形成されることにより、構成されている。なお、図1においては、単一の薄膜トランジスタ1を示したが、基板2上に複数の薄膜トランジスタ1が形成されているような構成(たとえば、アクティブマトリックス基板など)であってもよい。また、図1に示す薄膜トランジスタ1は、本発明の薄膜トランジスタの一例であり、以下において、図1に示す薄膜トランジスタ1を例示して説明を行なうが、本発明の薄膜トランジスタは、図1に示す態様に限定されるものではない。
【0056】
基板2としては、特に限定されず、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、脂環式オレフィンポリマーなどの柔軟性のあるプラスチック基板、石英、ソーダガラス、無機アルカリガラスなどのガラス基板、シリコンウェハーなどのシリコン基板などを挙げることができる。
【0057】
ゲート電極3は、導電性材料で形成されている。導電性材料としては、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。またドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など)が挙げられる。これらのなかでも、クロムおよびモリブデンが好ましく、クロムがより好ましい。ゲート電極3は、たとえば、上述した導電性材料を、スパッタリング法などにより基板2上に形成し、次いで、エッチング処理を行なうことにより、基板2上に所定パターンで形成される。
【0058】
ゲート絶縁層4としては、特に限定されず、たとえば、シリコン酸化物(SiOx)またはシリコン窒化物(SiNx)などの無機絶縁物質膜、ポリイミドなどの有機絶縁物質膜が挙げられる。ゲート絶縁層4は、たとえば、CVD法などにより、基板2およびゲート電極3上に形成される。
【0059】
半導体層5としては、たとえば、モルファスシリコン層や、p型またはn型のドーパントがドープされたシリコン層が挙げられる。また、半導体層5は、モルファスシリコン層とp型またはn型のドーパントがドープされたシリコン層とが適宜積層されたものであってもよい。半導体層5は、たとえば、CVD法などにより、モルファスシリコンや、p型またはn型のドーパントがドープされたシリコンを、ゲート絶縁層4上に堆積させ、次いで、所定のパターン形状となるようにパターンニングすることにより、形成される。
【0060】
ソース電極6およびドレイン電極7は、導電性材料で形成されている。導電性材料としては、上述のゲート電極3と同様のものを用いることができる。ソース電極6およびドレイン電極7は、たとえば、上述した導電性材料を、スパッタリング法などによりゲート絶縁層4および半導体層5上に形成し、次いで、エッチング処理を行なうことにより、ゲート絶縁層4および半導体層5上に所定パターンで形成される。
【0061】
保護膜8は、上述した感放射線性樹脂組成物からなり、図1に示すように、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7と接触した状態で形成される。保護膜8の形成方法としては、特に限定されず、例えば、塗布法やフィルム積層法等の方法を用いることができる。
【0062】
塗布法は、例えば、感放射線性樹脂組成物を、ゲート電極3、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7が形成された基板2上に塗布した後、加熱乾燥して溶剤を除去する方法である。感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて異なるが、通常、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で、通常、0.5〜90分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜30分間で行なえばよい。
【0063】
フィルム積層法は、感放射線性樹脂組成物を、樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布した後に加熱乾燥により溶剤を除去してBステージフィルムを得、次いで、このBステージフィルムを、ゲート電極3、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7が形成された基板2上に積層する方法である。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて適宜選択することができるが、加熱温度は、通常、30〜150℃であり、加熱時間は、通常、0.5〜90分間である。フィルム積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
【0064】
保護膜8の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜30μmである。
【0065】
また、感放射線性樹脂組成物が架橋剤(C)を含む場合には、ゲート電極3、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7が形成された基板2上に形成した後に、架橋反応を行なうことができる。このような架橋は、架橋剤(C)の種類に応じて適宜方法を選択すればよいが、通常、加熱により行なう。加熱方法は、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。加熱温度は、通常、180〜250℃であり、加熱時間は、保護膜8の面積や厚さ、使用機器等により適宜選択され、例えばホットプレートを用いる場合は、通常、5〜60分間、オーブンを用いる場合は、通常、30〜90分間の範囲である。加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、酸素を含まず、かつ、保護膜8を酸化させないものであればよく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。特に、酸素含有量が0.1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下の不活性ガス、特に窒素が好適である。これらの不活性ガスは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
また、保護膜8は、パターン化されていてもよい。保護膜8をパターン化する方法としては、例えば、パターン化前の保護膜に活性放射線を照射して潜像パターンを形成し、次いで潜像パターンを有する保護膜に現像液を接触させることによりパターンを顕在化させる方法などが挙げられる。
【0067】
活性放射線としては、感放射線性樹脂組成物に含有される感放射線化合物(B)を活性化させ、感放射線化合物(B)を含む感放射線性樹脂組成物のアルカリ可溶性を変化させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、紫外線、g線やi線等の単一波長の紫外線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線;電子線のような粒子線;等を用いることができる。これらの活性放射線を選択的にパターン状に照射して潜像パターンを形成する方法としては、常法に従えばよく、例えば、縮小投影露光装置等により、紫外線、g線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線を所望のマスクパターンを介して照射する方法、または電子線等の粒子線により描画する方法等を用いることができる。活性放射線として光線を用いる場合は、単一波長光であっても、混合波長光であってもよい。照射条件は、使用する活性放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、波長200〜450nmの光線を使用する場合、照射量は、通常10〜1,000mJ/cm、好ましくは50〜500mJ/cmの範囲であり、照射時間と照度に応じて決まる。このようにして活性放射線を照射した後、必要に応じ、保護膜を60〜130℃程度の温度で1〜2分間程度加熱処理する。
【0068】
次に、パターン化前の保護膜に形成された潜像パターンを現像して顕在化させる。現像液としては、通常、アルカリ性化合物の水性溶液が用いられる。アルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アミン、アンモニウム塩を使用することができる。アルカリ性化合物は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。これらの化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア水;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、N−メチルピロリドン等の環状アミン類;等が挙げられる。これらアルカリ性化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
アルカリ水性溶液の水性媒体としては、水;メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤を使用することができる。アルカリ水性溶液は、界面活性剤等を適当量添加したものであってもよい。
潜像パターンを有する保護膜に現像液を接触させる方法としては、例えば、パドル法、スプレー法、ディッピング法等の方法が用いられる。現像は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜55℃、より好ましくは10〜30℃の範囲で、通常、30〜180秒間の範囲で適宜選択される。
【0070】
このようにして目的とするパターンが形成された保護膜8を、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7と接触した状態で形成した後、必要に応じて、現像残渣を除去するために、リンス液でリンスすることができる。リンス処理の後、残存しているリンス液を圧縮空気や圧縮窒素により除去する。
さらに、必要に応じて、感放射線化合物(B)を失活させるために、薄膜トランジスタ1が形成されている基板2全面に、活性放射線を照射することもできる。活性放射線の照射には、上記潜像パターンの形成に例示した方法を利用できる。照射と同時に、または照射後に保護膜8を加熱してもよい。加熱方法としては、例えば、薄膜トランジスタ2をホットプレートやオーブン内で加熱する方法が挙げられる。温度は、通常、100〜300℃、好ましくは120〜200℃の範囲である。
【0071】
本発明において、保護膜8は、パターン化した後に、架橋反応を行なうことができる。架橋は、上述した方法にしたがって行なえばよい。
なお、保護膜8上には、保護膜8を貫通して形成されたコンタクトホールを介して、ドレイン電極7と電気的に接続された透明電極が形成されていてもよい。
【0072】
本発明の薄膜トランジスタにおいては、保護膜8として、上述した感放射線性樹脂組成物からなるものを用いるものであるため、保護膜8を、それぞれ異なる材料から構成されるゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7のいずれに対しても密着性に優れたものとすることができ、そのため、本発明の薄膜トランジスタは、優れた信頼性(特に、高温、高湿条件下における信頼性)を有するものである。加えて、本発明の薄膜トランジスタにおいては、保護膜8として、上述した感放射線性樹脂組成物からなるものを用いるものであるため、保護膜8の優れた酸化防止効果(特に、感放射線性樹脂組成物に含有されるアルカリ可溶性フェノール樹脂(A)による酸素捕捉機能)により、半導体層5の酸化を有効に防止することができ、そのため、本発明の薄膜トランジスタは、耐酸化性にも優れるものである。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0074】
《合成例1》
p−t−ブトキシスチレン100部、および重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル4部を、溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル150部に溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、10時間重合させた。そして、反応溶液に硫酸を加えて反応温度を90℃に保持して10時間反応させ、p−t−ブトキシスチレン単位を脱保護してp−ビニルフェノール単位に変換した。そして、得られた共重合体に酢酸エチルを加え、水洗を5回繰り返し、酢酸エチル相を分取し、溶剤を除去することで、p−ビニルフェノールの単独重合体(A1)を得た。
【0075】
《合成例2》
p−t−ブトキシスチレン100部の代わりに、p−t−ブトキシスチレン75部およびメタクリル酸メチル25部を用いた以外は、合成例1と同様にして、p−ビニルフェノールとメタクリル酸メチルとの共重合体(A2)を得た。得られた共重合体(A2)における、各単量体単位の比率は、p−ビニルフェノール単位:メタクリル酸メチル単位=75:25(重量比)であった。
【0076】
《合成例3》
p−t−ブトキシスチレン100部の代わりに、p−t−ブトキシスチレン50部およびメタクリル酸メチル50部を用いた以外は、合成例1と同様にして、p−ビニルフェノールとメタクリル酸メチルとの共重合体(A3)を得た。得られた共重合体(A3)における、各単量体単位の比率は、p−ビニルフェノール単位:メタクリル酸メチル単位=50:50(重量比)であった。
【0077】
《合成例4》
乾燥空気気流下、4つ口フラスコ内で4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.61部、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン17.3部、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24部及びシクロペンタノン102.5部を仕込み、40℃で溶解させた。その後、無水ピロメリット酸6.54部、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物9.67部、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物12.41部及びシクロペンタノン30部を加え、50℃で3時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度35%のポリイミド溶液を得た。
【0078】
《合成例5》
スチレン20部、ブチルメタクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート25部、メタクリル酸30部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.5部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部を窒素気流中で撹拌しながら80℃で5時間加熱した。得られた樹脂溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度35%のアクリル樹脂溶液を得た。
【0079】
《実施例1》
合成例1で得られたp−ビニルフェノールの単独重合体(A1)100部、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド(2.0モル)との縮合物(商品名「TS200」、東洋合成工業社製、感放射線化合物(B))30部、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(商品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製、脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、架橋剤(C))40部、3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名「SH6040」、東レ・ダウコーニング社製、接着助剤)1部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「Irganox1010」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、酸化防止剤)3部、および溶剤としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル500部を混合することにより、感放射線性樹脂組成物を得た。
【0080】
《実施例2》
合成例1で得られたp−ビニルフェノールの単独重合体(A1)の代わりに、合成例2で得られたp−ビニルフェノールとメタクリル酸メチルとの共重合体(A2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物を得た。
【0081】
《実施例3》
合成例1で得られたp−ビニルフェノールの単独重合体(A1)の代わりに、合成例3で得られたp−ビニルフェノールとメタクリル酸メチルとの共重合体(A3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物を得た。
【0082】
《比較例1》
合成例1で得られたp−ビニルフェノールの単独重合体(A1)100部の代わりに、合成例4で得られたポリイミド溶液285部(固形分換算で、100部)を用い、かつ、溶剤としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル500部の代わりに、溶剤としてのシクロペンタノン315部を用いた以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物を得た。
【0083】
《比較例2》
合成例1で得られたp−ビニルフェノールの単独重合体(A1)100部の代わりに、合成例5で得られたアクリル樹脂溶液285部(固形分換算で、100部)を用い、かつ、溶剤としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル500部の代わりに、溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート315部を用いた以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物を得た。
【0084】
《評価》
そして、上記実施例1〜3、比較例1,2にて得られた感放射線性樹脂組成物を用いて、下記方法に従い、シリコン酸化度、薄膜トランジスタ信頼性、および透明性の各評価を行った。
【0085】
<シリコン酸化度>
シリコン酸化度の測定を行うための測定用試料を、次の方法により作製した。
すなわち、まず、アモルファスシリコン基板(シリコン基板上に化学気相成長法(CVD)により200nmの厚さのアモルファスシリコン薄膜を製膜した基板)上に、上記にて得られた感放射線性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚2.5μmの樹脂膜を形成した。次いで、露光工程、現像工程を経て樹脂膜についてパターニングを行い、パターニングを行なった樹脂膜全面に高圧水銀灯を用いて光を照射することで、樹脂膜中に残存する分解していない感放射線化合物を分解し、その後、窒素雰囲気中において230℃で30分間加熱することで、樹脂膜が形成されたアモルファスシリコン基板からなる測定用試料を得た。
【0086】
そして、得られた測定用試料について、樹脂膜を剃刀を用いて剥がし、アモルファスシリコンを露出させた。そして、露出させたアモルファスシリコン表面について、X線光電子分析装置(ESCA)(KRATOS社製AXIS−ULTRA DLD)を用いて、酸化珪素の元素比率を測定した。なお、ESCAによる測定は、酸素、炭素、窒素、硫黄および珪素の各元素を分析対象とし、さらに、珪素元素については、酸化珪素と純珪素とに波形分離を行うことで、酸化珪素の元素比率を算出した。本実施例においては、上記測定を、作製直後の測定用試料、および、温度60℃、湿度90%に設定した恒温恒湿槽内に保持した後の測定用試料のそれぞれについて行い、作製直後の測定用試料の酸化珪素の元素比率に対する、恒温恒湿槽内に保持した後の測定用試料の酸化珪素の元素比率から、恒温恒湿槽内に保持した際における酸化珪素の元素比率の増加率を算出し、これをシリコン酸化度とした。結果を表1に示す。
シリコン酸化度が低いほど、感放射線性樹脂組成物からなる樹脂膜の酸化防止効果が高く、そのため、該樹脂膜を、図1に示す薄膜トランジスタ1の保護膜8とした場合における、半導体層5の酸化をより効果的に防止することができ、結果として、薄膜トランジスタ1の耐酸化性を高めることができるため、好ましい。
【0087】
<薄膜トランジスタ信頼性>
薄膜トランジスタ信頼性の評価を行うために、図1に示す薄膜トランジスタ1の試料を、以下の方法にしたがって作製した。
すなわち、まず、基板2としてのガラス基板(コーニング社、製品名コーニング1737)上に、クロムからなるゲート電極3を形成するために、200nm厚のクロム膜をスパッタリング法により形成した。そして、形成したクロム膜をパターニングするために、エッチングのマスクとして使用するポジ型フォトレジスト(日本ゼオン社製、ZPP−1800U3)をスピンコート法により、クロム膜上に塗布し、ホットプレートを用いて溶媒を除去することで、厚み1.5μmのレジスト膜を形成した。次いで、露光工程、および現像工程を行なうことで、レジスト膜をパターニングし、硝酸二アンモニウムセリウムをエッチング液に用いて、ウェットエッチングによりクロム膜のパターニングを行うことで、基板2上に、クロムからなるゲート電極3を形成した。次いで、レジスト膜を、モノエタノールアミン(MEA)とジメチルスルホキシド(DMSO)の混合溶液(MEA/DMSO=7/3)の剥離液を用いて除去した。
【0088】
次いで、基板2およびゲート電極3上に、シリコン窒化物からなるゲート絶縁層4を形成するために、450nm厚のシリコン窒化物膜をCVD法により形成した。
【0089】
次いで、ゲート絶縁層4上に、半導体層5を形成するために、250nm厚のa−Si層(アモルファスシリコン層)および50nm厚のn+Si層をそれぞれCVD法により順次形成した。そして、形成したa−Si層およびn+Si層をアイランド状にパターニングするために、エッチングのマスクとして使用するポジ型フォトレジスト(日本ゼオン社製、ZPP−1800U3)をスピンコート法によりn+Si層上に塗布し、ホットプレートを用いて溶媒を除去することで、1.5厚のμmのレジスト膜を形成した。次いで、露光工程、および現像工程を行なうことで、レジスト膜をパターニングし、ドライエッチングにより、a−Si層およびn+Si層を図1に示すアイランド状にパターニングすることで、半導体層5を形成した。その後、レジスト膜を、モノエタノールアミン(MEA)とジメチルスルホキシド(DMSO)の混合溶液(MEA/DMSO=7/3)の剥離液にて除去した。
【0090】
次いで、ゲート絶縁層4および半導体層5上に、クロムからなるソース電極6およびドレイン電極7を形成するために、200nm厚のクロム膜をスパッタリング法により形成した。そして、形成したクロム膜をパターニングするために、エッチングのマスクとして使用するポジ型フォトレジスト(日本ゼオン社製、ZPP−1800U3)をスピンコート法により、クロム膜上に塗布し、ホットプレートを用いて溶媒を除去することで1.5μmのレジスト膜を形成した。次いで、露光工程、および現像工程を行なうことで、レジスト膜をパターニングし、硝酸二アンモニウムセリウムをエッチング液に用いて、ウェットエッチングによりクロム膜をパターニングすることで、ソース電極6およびドレイン電極7を形成した。また、本実施例では、ソース電極6およびドレイン電極7のパターニングの際に用いたフォトレジストを利用して、半導体層5表面に位置するn+Si層について、六フッ化硫黄ガスを用いてドライエッチングを行った。次いで、レジスト膜をモノエタノールアミン(MEA)とジメチルスルホキシド(DMSO)の混合溶液(MEA/DMSO=7/3)の剥離液を用いて除去した。そして、引き続き、ゲート電極3、ゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7を形成した基板2について、超純水で30秒間リンスを行い、リンス時に付着した超純水を窒素を用いて表面から除去した。
【0091】
次いで、上記にて得られた感放射線性樹脂組成物からなる保護膜8を形成するために、上記にて得られた感放射線性樹脂組成物を、スピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚2.5μmの樹脂膜を形成した。次いで、露光工程、現像工程を経て、樹脂膜をパターニングし、パターニングした樹脂膜全面に高圧水銀灯を用いて光を照射することで、樹脂膜中に残存する分解していない感放射性化合物を分解させた。そして、窒素雰囲気中において230℃で30分間加熱し、これにより、保護膜8を形成することで、図1に示す薄膜トランジスタ1の試料を得た。
【0092】
そして、上記にて得られた薄膜トランジスタ1の試料について、その作製直後に、半導体パラメータアナライザ(Agilent社製 4156A)を用いて、ゲート電圧の変化に対するソースドレイン間の電流の変化を測定した。本実施例では、ゲート電圧が−3Vの時のソースドレイン間の電流の値と、ゲート電圧が10Vの時のソースドレイン間の電流の値との比率を、ON/OFF比として観測した。本実施例では、この作製直後に測定したON/OFF比を、初期ON/OFF比とした。続いて、測定を行なった試料を、温度60℃、湿度90%に設定した恒温恒湿槽(エスペック社製プラチナスPR−2KP)中に保持し、保持後1時間ごとに、上記した方法にしたがって、ON/OFF比の測定を繰り返し行ない、ON/OFF比が、初期ON/OFF比に対して10分の1となった時間を、薄膜トランジスタ信頼性として観測した。結果を表1に示す。
ON/OFF比が、初期ON/OFF比に対して10分の1となるまでの時間が長いほど、信頼性に優れるため、好ましい。
【0093】
<透明性>
感放射線性樹脂組成物を用いて得られる保護膜の透明性の評価を行うための試験用試料を、以下の方法にしたがって作製した。
すなわち、まず、ガラス基板(コーニング社、コーニング1737)上に、上記にて得られた感放射線性樹脂組成物を、スピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、ガラス基板上に、膜厚2.5μmの樹脂膜を形成した。次いで、現像工程を行い、樹脂膜全面に高圧水銀灯を用いて光を照射し、樹脂膜中に残存する分解していない感放射線化合物を分解させた。次いで、窒素雰囲気中において230℃で30分間加熱することにより、樹脂膜が形成されガラス基板からなる試験用試料を得た。
【0094】
そして、得られた試験用試料について、分光光度計(日本分光株式会社製、紫外可視分光光度計V−560)を用いて、波長400nmでの透過率の測定を行うことで、樹脂膜の透明性を評価した。結果を表1に示す。
波長400nmでの透過率が高いほど、樹脂膜の透明性が高く、そのため、該樹脂膜を、図1に示す薄膜トランジスタ1の保護膜8とした場合における、薄膜トランジスタ1の透明性を向上させることができるため、好ましい。
【0095】
【表1】

【0096】
表1に示すように、実施例1〜3の結果より、本発明所定の感放射線性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜は、シリコン酸化度が低く、そのため、該保護膜は、酸化防止効果が高く、半導体層としてのアモルファスシリコン層の酸化をより効果的に防止することが可能であった。また、実施例1〜3においては、薄膜トランジスタとした場合においても、保護膜8と、それぞれ異なる材料から構成されるゲート絶縁層4、半導体層5、ソース電極6およびドレイン電極7との間の密着性が高く、そのため、薄膜トランジスタは、信頼性に優れたものであった。さらに、実施例1〜3の感放射線性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜は、十分な透明性を備えるものであった。
【0097】
一方、感放射線性樹脂組成物を構成する樹脂として、ポリイミド樹脂を用いた場合、およびアクリル樹脂を用いた場合においては、シリコン酸化度が低く、また、薄膜トランジスタとした場合の信頼性に劣る結果となった(比較例1,2)。
【符号の説明】
【0098】
1…薄膜トランジスタ
2…基板
3…ゲート電極
4…ゲート絶縁膜
5…半導体層
6…ソース電極
7…ドレイン電極
8…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を形成してなる薄膜トランジスタであって、
アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)と感放射線化合物(B)とを含有する感放射線性樹脂組成物からなる保護膜が、前記ゲート絶縁層、前記半導体層、前記ソース電極および前記ドレイン電極に接触して形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(A)は、フェノール基含有単量体の単位40〜80重量%、および、前記フェノール基含有単量体と共重合可能な単量体の単位20〜60重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記フェノール基含有単量体の単位が、ビニルフェノール単位であることを特徴とする請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記共重合可能な単量体の単位が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位であることを特徴とする請求項2または3に記載の薄膜トランジスタ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−71424(P2011−71424A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222860(P2009−222860)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】