説明

薄膜半導体装置及びその製造方法

【課題】イオン注入によりアモルファス化された領域に光照射による活性化を行った場合に、表面に凹凸が発生するのを防止した薄膜半導体素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上にそれぞれ形成されたnチャネル島状半導体層4a及びpチャネル島状半導体層4b、前記島状半導体層4a,4b上に形成されたゲート絶縁膜5、及び前記ゲート絶縁膜5上にそれぞれ形成されたゲート電極6a,6bを具備し、前記nチャネル島状半導体層4aへのn型不純物のイオン注入によりアモルファス化された領域の深さt1,t3と、前記pチャネル島状半導体層4bへのp型不純物のイオン注入によりアモルファス化された領域の深さt1,t2とは、それぞれほぼ同じであるようにイオン注入を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜半導体装置及びその製造方法に係り、特に、光照射により不純物の活性化を行う薄膜半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタの製造においては、ドナー,アクセプタ等の不純物原子をシリコン中に添加し、p型、n型領域を形成する不純物ドーピングと呼ばれる工程がある。これについては、例えば、非特許文献1に記載されている。この不純物ドーピングは、熱拡散やイオン注入により行なわれる。
【0003】
特に、イオン注入は、濃度分布及びドープ量が、加速電圧及びイオンビーム電流の電気的測定により容易にモニターし、制御することができるため、多用されている。また、イオン注入は、低濃度の浅いドーピングにも適するので、ソース・ドレイン領域の形成以外に、チャネル領域のドーピングによるスレッシュフォールド電圧(Vth)の制御等にも用いられる。
【0004】
しかし、一方で、イオン注入は、原理上、打ち込まれたイオンがシリコン原子と衝突し、エネルギーをシリコン原子と交換するため、衝突時にシリコン格子原子を変位させ、シリコンに格子欠陥を引き起こす。注入イオン量が少ない場合は、点欠陥のみであるが、注入イオン量が1015cm−2程度に増大すると、格子欠陥群は互いに重なり合い、非晶質領域(アモルファス領域)が形成される。イオン注入により形成される非晶質領域は、結晶よりも低い温度で溶融することが報告されており、シリコンの場合、非晶質領域は、結晶領域より200℃〜250℃程度低い温度で溶融する。これについては、例えば、非特許文献2に記載がある。
【0005】
イオン注入されたシリコンは、上述した欠陥の存在と、注入されたイオンのほとんどが結晶格子中で置換位置になく、キャリアになっていないことにより、非常に高い電気抵抗を示す。
【0006】
そこで、結晶欠陥とキャリアの回復のため、イオン注入後にアニール処理が行われる。このアニール処理は、通常、活性化処理と呼ばれる。活性化の過程は、非晶質領域が形成されるかどうかで大きく異なる。非晶質領域が形成されない低濃度注入(1014cm−2以下)の場合には、欠陥は400℃以下のアニールでほぼ消失する。一方、非晶質領域が形成されている場合、再結晶化が必要となるため、より高い温度でのアニールが必要となる。
【0007】
活性化処理が不十分な場合、抵抗が下がらないこと以外に、欠陥が接合部等に残留してしまい、逆方向リーク電流や雑音の増加を引き起こす。
【0008】
トランジスタには、LSI等の結晶質シリコン基板に作製されるものと、石英基板やガラス基板上にシリコン薄膜を堆積し、このシリコン薄膜に作製されるものがあり、後者は薄膜トランジスタ(TFT)と呼ばれている。
【0009】
液晶ディスプレイ等の大型基板を備える装置に用いられる薄膜トランジスタは、通常、安価なガラス基板上に作製される。しかし、ガラス基板は、シリコン基板や石英基板と比較して耐熱性が低く、結晶質シリコンにトランジスタを作製する際の活性化処理に用いる800〜1000℃程度のアニール処理を行うことができないため、通常の炉内処理等によるアニール処理温度は、600℃程度以下に制約されている。
【0010】
しかし、現在、TFTにおいてもLSIと同様に、微細化、高速動作の要求が高まってきており、より高温での活性化処理により高い活性化率を得ることが望まれている。そこで、ガラス基板の損傷を伴うことなく、より高い活性化率を達成する手法が求められている。
【0011】
その手法として、非定常加熱による瞬間アニール技術が注目されている。これについては、例えば、非特許文献3に記載されている。
【0012】
この瞬間アニール技術は、高出力のレーザ光、電子ビーム、フラッシュ光等を半導体薄膜表面に照射し、瞬間的に表面層をアニールする技術であり、イオン注入で損傷を受けた半導体膜の結晶性を回復し、更に、注入された不純物を電気的に活性化する方法として開発された。
【0013】
特に、レーザ光は大気中での処理が可能であり、エネルギー制御による加熱量の制御や波長選択による加熱層の厚さ制御が容易であるため、研究開発が盛んに行われている。レーザ光は、照射時間により大別すると、連続波発振(CW)方式とQスイッチ等によるパルス方式とがある。
【0014】
瞬間アニール技術の特徴としては、短時間の加熱であること(CW方式:〜ms、パルス方式:ns〜μs)、熱処理領域を制御する局部的加熱であること、表面層のみの加熱であること、半導体膜融点近くの高温加熱が可能であること、〜10℃/sの急速冷却が可能であること、〜m/sで液体から固体に変化する速い結晶成長速度が可能であること、等が挙げられる。
【0015】
このような特徴により、例えば表面層のみの加熱が可能であるためガラス基板のような耐熱性の低い基板を用いることができるとともに、短時間の加熱であるため、熱拡散が起こらず、イオン注入で制御した不純物濃度分布を維持したままでの活性化が可能となる。
【0016】
LOCOS(Local Oxidation of Silicon)により素子分離を行うLSI製造プロセスと異なり、TFT製造プロセスでは、ガラス基板上に半導体からなる島状半導体層を形成することにより素子分離を行う。島状半導体層の形成方法としては、例えば、半導体層にフォトレジストを塗布した後、露光・現像処理によりフォトレジストの微細パターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして、異方性エッチングを行い、島状半導体層を形成する。加熱に用いる光の波長に対して、ガラス基板はほぼ透明であるため、島状半導体層のみの温度が上昇し、基板自体の温度は上がらない。そのため、島状半導体層と基板との間に極めて大きな温度差が生じる。
【非特許文献1】マイクロプロセスハンドブック(難波進編著)工業調査会
【非特許文献2】Laser Annealing of Semiconductors(Edited by J.M.POATE) ACADEMIC PRESS
【非特許文献3】LSIプロセス工学(右高正俊編著)オーム社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
加熱に用いる光は面内に所定の強度分布を有しているため、照射条件によっては、一部の領域で過加熱状態となり、半導体膜が溶融状態になる場合もある。その際に、半導体上にゲート絶縁膜等の熱物性が異なる薄膜が存在すると、この温度差により発生する熱応力により凹凸が発生する等の膜の変形が起こり、配線形成時に十分な導電パスが形成されないことがわかった。
【0018】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされ、高濃度でイオン注入され、アモルファス化された領域に光照射することにより活性化を行った場合に、表面に凹凸が発生するのを防止した薄膜半導体素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、基板上にそれぞれ形成されたnチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層、前記nチャネル島状半導体層へのn型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第1の不純物領域及び第2の不純物領域、前記pチャネル島状半導体層へのp型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第3の不純物領域及び第4の不純物領域、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、及び前記nチャネル島状半導体層の第1の不純物領域及び第2の不純物領域の間の領域、及び前記pチャネル島状半導体層の第3の不純物領域及び第4の不純物領域の間の領域にそれぞれ対応する前記ゲート絶縁膜上の領域に形成されたゲート電極を具備し、前記第1及び第2の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さと、前記第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとは、ほぼ同じであることを特徴とする薄膜半導体素子を提供する。
【0020】
本発明の第2の態様は、基板上にそれぞれ形成されたnチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層、前記nチャネル島状半導体層へのn型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第1の不純物領域及び第2の不純物領域、前記pチャネル島状半導体層へのp型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第3の不純物領域及び第4の不純物領域、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、及び前記nチャネル島状半導体層の第1の不純物領域及び第2の不純物領域の間の領域、及び前記pチャネル島状半導体層の第3の不純物領域及び第4の不純物領域の間の領域にそれぞれ対応する前記ゲート絶縁膜上の領域に形成されたゲート電極を具備し、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層へは、n型不純物及びp型不純物のイオン注入の前に半導体がイオン注入され、それによって前記nチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域が形成されるとともに、前記pチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域が形成され、前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域の深さと、前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域の深さとは、ほぼ同じであることを特徴とする薄膜半導体素子を提供する。
【0021】
本発明の第3の態様は、基板上にそれぞれ形成されたnチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層、前記nチャネル島状半導体層へのn型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第1の不純物領域及び第2の不純物領域、前記pチャネル島状半導体層へのp型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第3の不純物領域及び第4の不純物領域、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、及び前記nチャネル島状半導体層の第1の不純物領域及び第2の不純物領域の間の領域、及び前記pチャネル島状半導体層の第3の不純物領域及び第4の不純物領域の間の領域にそれぞれ対応する前記ゲート絶縁膜上の領域に形成されたゲート電極を具備し、前記nチャネル島状半導体層又はpチャネル島状半導体層へは、n型不純物又はp型不純物のイオン注入の前に半導体がイオン注入され、それによって前記nチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域が形成されるか、又は前記pチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域が形成され、前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域又は前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域の深さと、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層のうち前記半導体がイオン注入されない島状半導体層への前記第1及び第2の不純物領域又は前記第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとは、ほぼ同じであることを特徴とする薄膜半導体素子を提供する。
【0022】
本発明の第4の態様は、基板上に、nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層をそれぞれ形成する工程、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程、前記nチャネル島状半導体層の、第1の不純物領域形成予定領域及び第2の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第1のゲート電極を形成し、前記nチャネル島状半導体層の、第3の不純物領域形成予定領域及び第4の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第2のゲート電極を形成する工程、前記nチャネル島状半導体層にn型不純物をイオン注入し、第1の不純物領域及び第2の不純物領域を形成する工程、及び前記pチャネル島状半導体層にp型不純物をイオン注入し、第3の不純物領域及び第4の不純物領域を形成する工程を具備し、前記第1及び第2の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さと、前記第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとが、ほぼ同じとなるように、前記n型不純物及びp型不純物のイオン注入を行うことを特徴とする薄膜半導体素子の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の第5の態様は、基板上に、nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層をそれぞれ形成する工程、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程、前記nチャネル島状半導体層の、第1の不純物領域形成予定領域及び第2の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第1のゲート電極を形成し、前記nチャネル島状半導体層の、第3の不純物領域形成予定領域及び第4の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第2のゲート電極を形成する工程、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層に半導体をイオン注入し、前記nチャネル島状半導体層に第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域を、前記pチャネル島状半導体層に第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域をそれぞれ形成する工程、前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域にn型不純物をイオン注入し、第1の不純物領域及び第2の不純物領域を形成する工程、及び前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域にp型不純物をイオン注入し、第3の不純物領域及び第4の不純物領域を形成する工程を具備し、前記第1及び第2のアモルファス領域の深さと、前記第3及び第4のアモルファス領域の深さとが、ほぼ同じとなるように、前記半導体のイオン注入を行うことを特徴とする薄膜半導体素子の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の第6の態様は、基板上に、nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層をそれぞれ形成する工程、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程、前記nチャネル島状半導体層の、第1の不純物領域形成予定領域及び第2の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第1のゲート電極を形成し、前記nチャネル島状半導体層の、第3の不純物領域形成予定領域及び第4の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第2のゲート電極を形成する工程、前記nチャネル島状半導体層又はpチャネル島状半導体層に半導体をイオン注入し、前記nチャネル島状半導体層に第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域を、又は前記pチャネル島状半導体層に第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域を形成する工程、前記nチャネル島状半導体層又は前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域にn型不純物をイオン注入し、第1の不純物領域及び第2の不純物領域を形成する工程、及び前記pチャネル島状半導体層又は前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域にp型不純物をイオン注入し、第3の不純物領域及び第4の不純物領域を形成する工程を具備し、前記第1及び第2のアモルファス領域又は前記第3及び第4のアモルファス領域の深さと、前記第1及び第2の不純物領域又は第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとが、ほぼ同じとなるように、前記半導体のイオン注入、及び前記p型不純物又はn型不純物のイオン注入を行うことを特徴とする薄膜半導体素子の製造方法を提供する。
【0025】
以上の本発明の第1〜第6の態様において、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層の少なくともいずれか一方への半導体のイオン注入を、1014cm−2以上の濃度で行うことが出来る。
【0026】
また、前記アモルファス領域及びアモルファス化された領域の深さを、前記島状半導体層の厚さの50%以下とすることが出来る。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、半導体層中の不純物を光の照射により活性化した場合に、半導体の溶融により半導体層表面に凹凸が生ずるのを防止することが可能である。特に、凹凸が生ずる光照射のフルエンス値の、nチャネル半導体層及びpチャネル半導体層間における相違を解消することが出来、それによってプロセスマージンを拡大することが出来る。
【0028】
また、nチャネル及びpチャネルの少なくともどちらか一方に、半導体イオンを1014cm−2以上の濃度でイオン注入した後、p型、n型の不純物をイオン注入することにより、アモルファス層形成深さと不純物イオンの深さ方向濃度プロファイルとを別箇に制御することができる。これにより、デバイス設計の自由度を高めることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
本発明者は、半導体層に高濃度に不純物、又は半導体及び不純物をイオン注入し、アモルファス化した領域に光、特にレーザ光を照射することにより、不純物の活性化を行った場合に、半導体層の表面に凹凸が発生する現象について、検討を重ねた結果、この凹凸が発生するレーザのフルエンス値が、nチャネル形成領域とpチャネル形成領域とで異なることを見出した。
【0031】
即ち、ポリシリコン層にリンをドープ(P 35keV 2×1015cm−2)した後、所定のフルエンス値のレーザ光の照射によりアニール処理を行ったnチャネルトランジスタと、ポリシリコン層にボロン(BF 50keV 2×1015cm−2)をドープした後、同一フルエンス値のレーザ光の照射によりアニール処理を行ったpチャネルトランジスタの表面状態を観察した。その結果、nチャネルトランジスタでは表面に凹凸が発生しているのに対し、pチャネルトランジスタでは、表面に全く凹凸が生じていなかった。
【0032】
この結果より、凹凸が発生するレーザのフルエンス値が、nチャネル形成領域とpチャネル形成領域とで異なり、CMOSトランジスタの不純物活性化工程では、レーザ照射のプロセスマージンが狭くなってしまうことがわかる。
【0033】
本発明者は、以上の実験におけるイオン注入及びアニール処理後の半導体層の状態の比較を、断面TEM(Transmission Electron Microscope)像の観察により行った。図1はその結果を示し、図1(a)はnチャネルトランジスタ、図1(b)はpチャネルトランジスタの断面をそれぞれ示す。
【0034】
図1から、上述したnチャネルトランジスタでは表面に凹凸が発生しているのに対し、pチャネルトランジスタでは、表面に凹凸が生じていない現象が、半導体層の断面の形状から明らかである。
【0035】
また、不純物のイオン注入によりアモルファス化された領域の厚さが、nチャネルトランジスタでは80nmであるのに対して、pチャネルトランジスタでは50nmであることがわかった。
【0036】
本発明者は、アモルファス層の深さ(厚さ)の違いが、凹凸が発生するフルエンス値の違いの原因であると考え、イオン種の違いの影響を除いた比較実験をPAI(Pre Amorphous Implantation)を用いて実施した。
【0037】
アモルファス層の深さ(厚さ)は、ホウ素(B)のように質量数の小さい原子を除けば、イオン注入の際のイオンの進入深さ(飛程)と相関がある。イオンの飛程は、イオン注入の際の加速電圧によって制御することができ、その値は計算で見積もることができる。下記表1は、各イオン種の各加速電圧での飛程の計算値を示したものである(J. F. Gibbons : Proc. of the IEEE, Vol. 56, No.3, 1968)。
【表1】

【0038】
また、注入されたイオンは、パルスレーザによる加熱の時間領域(数十ns〜1μs)ではほとんど拡散できないため、深さ方向のイオンの濃度プロファイルはほとんど変化しない。図2は、SIMS分析によりイオン注入後のイオンの深さ方向の濃度プロファイルを求めた例である(R. T. Young, et al. : Appl. Phys. Letters, 32(3), p.139, 1978)。横軸のスパッタ時間は、深さに対応し、カウント数はイオン濃度に対応する。なお、LSSモデルは、上述した計算によるイオン濃度分布を示す。
【0039】
図2から、パルスレーザアニール後のイオン濃度分布は、イオン注入後のイオン濃度分布(計算値)からの変化がほとんどないのに対し、熱アニール(ファーネスアニール)後のイオン濃度分布は、イオン注入後のイオン濃度分布(計算値)から大きく変化していることがわかる。
【0040】
TFT製造プロセスにおいて、活性化工程での熱アニールは、製造プロセス中最大温度での処理になり、他の工程での熱アニールでは、このようなイオン濃度分布の変化は起こらない。このように、パルスレーザアニールによる活性化では、イオン注入時の深さ方向の濃度プロファイルが、レーザアニール前の状態にほぼ維持されるため、濃度プロファイルをSIMS等で評価することで、活性化にパルスレーザアニールを用いたか否かを確認することができる。
【0041】
本発明者は、イオン注入によりアモルファス化を行うための半導体イオン種としてSiを用い、不純物イオン種としてBを用い、イオン注入の加速電圧を変えることで、アモルファス層の厚さを変化させて、同一フルエンス値でのレーザアニールを行い、比較する実験を行った。
【0042】
その結果、Siのイオン注入条件が、加速電圧:55keV、濃度:2×1015cm−2、Bのイオン注入条件が、加速電圧:20keV、濃度:2×1015cm−2の場合、アモルファス層の厚さは80nmであり、Siのイオン注入条件が、加速電圧:35keV、濃度:2×1015cm−2、Bのイオン注入条件が、加速電圧:20keV、濃度:2×1015cm−2の場合、アモルファス層の厚さは40nmであった。
【0043】
これらのアモルファス層に対し、ショートパルス(パルス幅30ns)とロングパルス(パルス幅240ns)のパルスレーザによるレーザアニールを行い、光学顕微鏡により表面の凹凸状態を評価した。また、ショット間のフルエンス変動を低減するため、10ショットでの処理を行った。
【0044】
ショートパルス(パルス幅30ns)のフルエンス165mJ/cmでの照射、及びロングパルス(パルス幅240ns)のフルエンス360mJ/cmでの照射の結果をそれぞれ図3及び図4に示す。
【0045】
図3及び図4に示すように、パルス幅に係わらず、アモルファス層の深さ(厚さ)が浅い(薄い)場合(40nm)では表面の凹凸が生じず、アモルファス層厚さが深い(厚い)場合(80nm)では表面の凹凸が生じる結果が得られた。この結果より、nチャネルトランジスタとpチャネルトランジスタとで表面の凹凸発生フルエンスの相違があるのは、アモルファス層の深さが異なることであることがわかった。また、凹凸発生のフルエンス値がアモルファス層の深さが異なることで変化するのは、半導体膜のアモルファス層の深さが深くなることで、レーザアニール時の溶融層が厚くなり、急冷時に生じる応力による変形(凹凸発生)が容易になることが原因であると考えられる。そのため、半導体膜厚に対する溶融層(アモルファス層)の厚さの割合が大きくなりすぎることは、表面の凹凸発生を起こしやすくすることであると考えられる。
【0046】
以上のことから、nチャネルトランジスタとpチャネルトランジスタの形成において、イオン注入により形成されるアモルファス層の深さをほぼ同一とすることにより、表面の凹凸発生を防止できることがわかる。
【0047】
この場合、イオン注入によりアモルファス層が形成されるのは、ソース・ドレイン形成のための不純物の導入の際に限らず、その前にSiやGe等の半導体をイオン注入するプリアモルファス化工程の際にも形成される。そのため、nチャネルトランジスタとpチャネルトランジスタの形成において、イオン注入により形成されるアモルファス層の深さをほぼ同一とするには、次の3つの場合がある。
【0048】
1.nチャネルトランジスタとpチャネルトランジスタの形成のいずれにおいてもプリアモルファス化を行わず、ソース・ドレイン形成のための不純物の導入により形成されたアモルファス層の深さを同一とすること。
【0049】
2.nチャネルトランジスタとpチャネルトランジスタの形成のいずれにおいてもプリアモルファス化を行い、半導体のイオン注入により形成されたアモルファス層の深さを同一とすること。
【0050】
3.nチャネルトランジスタとpチャネルトランジスタの形成のいずれかにおいてプリアモルファス化を行い、半導体のイオン注入により形成されたアモルファス層の深さと、ソース・ドレイン形成のための不純物の導入により形成されたアモルファス層の深さを同一とすること。
【0051】
なお、pチャネルトランジスタの形成において、ソース・ドレイン形成のための不純物としてB+のように質量の小さいイオンを用いる場合には、不純物導入によりアモルファス化は生じないため、プリアモルファス化は必須であるが、BFのような質量の大きいイオンを用いる場合には、不純物導入によりアモルファス化が生じるため、プリアモルファス化は不必要である。
【0052】
半導体イオンは、1014cm−2以上の濃度でイオン注入して、深さ(厚さ)を制御したポリシリコン層のアモルファス化を行い、その後ソース領域およびドレイン領域を形成するための不純物イオンをイオン注入し、これを光照射により活性化することにより、表面凹凸のない薄膜半導体装置の製造が可能である。
【0053】
図5は、本発明の一実施形態に係る薄膜半導体素子を示す断面図である。図5において、ガラス基板2上に、例えばSiO/SiN積層膜からなるアンダーコート膜3が形成された基板1上に、例えば100nmの膜厚のポリシリコンからなる島状半導体層4a,4bが形成されている。この島状半導体層4a,4b上に、例えば30nmの膜厚のSiOからなるゲート絶縁膜5が形成され、更にその上に、例えば膜厚200nmのMoWからなるゲート電極6a,6bが形成されている。
【0054】
図5に示す薄膜半導体素子では、CMOS回路を構成するため、同一基板上にNMOSとPMOSの2つのトランジスタが形成されている。NMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタのソース・ドレイン領域には、高濃度の不純物のイオン注入により、非晶質層が形成されるが、その非晶質層の厚さt、tは、ほぼ同じ深さ(厚さ)とされている。
【0055】
この場合、非晶質層の深さ(厚さ)t、tは、半導体層厚さtとの50%以下であるのが望ましい。即ち、式t≒t≦t/2の関係を満たすのが望ましい。
【0056】
このような構造に対して、パルスレーザアニールによる活性化処理を行うことにより、NMOSとPMOSのいずれにおいても凹凸が生じないCMOS回路を得ることが出来る。
【0057】
以下、以上説明した本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタの製造プロセスについて説明する。
【0058】
図6及び図7は、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタの製造プロセスを工程順に示す断面図である。
【0059】
まず、被処理基板を用意する。この実施形態では、被処理基板としてガラス基板32上にアンダーコート膜33(SiO/SiN)が形成された基板31を用いている。この基板31の略全面に層厚が例えば100nmとなるように、プラズマCVD等によりアモルファスシリコン層34を形成する(図6(a))。その後、温度500℃の雰囲気中でアニール処理を施し、このアモルファスシリコン層34中の水素を離脱させる。
【0060】
次いで、例えばELA(Excimer Laser Annealing)法により、このアモルファスシリコン層34を結晶化して、ポリシリコン層35とする(図6(b))。
【0061】
次に、PEP(Photo Engraving Process、いわゆるフォトリソグラフィー)によりポリシリコン層35上に所定の形状のレジストマスク(図示せず)を形成し、このレジストマスクをマスクとして、RIE(Reactive Ion Etching)法等のドライエッチングによりポリシリコン層35を島形状に加工し、PMOS領域35a及びNMOS領域35bを形成する。そして、閾値制御のため、PMOS領域35aにはP、NMOS領域35bにはBのチャネルドーピングを行う。
【0062】
その後、PE−CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いて、島形状に加工されたポリシリコンからなるPMOS領域35a並びにNMOS領域35b及びアンダーコート膜33を覆うように、SiOからなるゲート絶縁膜36を形成する。
【0063】
次に、例えばスパッタ法によりゲート電極材料、例えばMo層を成膜する。次いで、RIE等のドライエッチングによりMo層をパターニングし、ゲート電極37a,37bを形成する。即ち、Mo層上にPEPにより所定の形状のレジストマスクを形成した後、このレジストマスクをマスクとしてRIE法により、Mo層の不要部分を除去し、ゲート電極37を形成する(図6(c))。
【0064】
その後、NMOS領域35b上にレジストパターン38bを形成してNMOS領域35bをマスキングした状態で、ゲート電極37aをマスクとして、ポリシリコンからなるPMOS領域35aにBFをイオン注入する。BFはBと異なり、質量が大きいため、ポリシリコンはアモルファス化され、PMOS領域35aにアモルファス領域39aが形成される(図6(d))。
【0065】
そして、レジストパターン38bを除去した後、同様に、PMOS領域35a上にレジストパターン38aを形成してPMOS領域35aをマスキングした状態で、ゲート電極37bをマスクとして、ポリシリコンからなるNMOS領域35bにPを注入する。これにより、ポリシリコンはアモルファス化され、NMOS領域35bにアモルファス領域39bが形成される(図7(a))。
【0066】
この際、PMOS領域35a及びNMOS領域35bに注入する不純物の加速電圧を制御し、図7(b)に示すように、イオン注入によりアモルファス化された領域39a,39bの深さがほぼ同じになるように調整した。また、このときのアモルファス領域39a、39bの厚さt,tは、半導体膜(PMOS領域35a,NMOS領域35b)の膜厚tの半分以下であるのが望ましい。このようにすることにより、PMOSとNMOSとで、表面に凹凸が発生するフルエンス値がほぼ同じになるため、最適フルエンス値の設定が容易になり、過入力による片方のチャネルでの膜ダメージ(表面凹凸発生)を防ぐことができる。
【0067】
その後、図7(b)に示すように、イオン注入により損傷を受けた半導体膜の結晶性を回復し、更に注入された不純物を電気的に活性化するため、レーザ照射により、イオン注入された不純物の活性化を行う。レーザ照射による不純物の活性化は、その後の工程である層間絶縁膜形成後でも可能であるが、クラック等が生じることがあるため、膜構成や膜材料や膜応力等を考慮して、適宜選択することになる。
【0068】
レーザ照射によるPMOS領域35a及びNMOS領域35b中の不純物の活性化により、図7(c)に示すように、PMOS領域35a及びNMOS領域35bに、ソース・ドレイン領域40a,40b(第1〜第4の不純物領域)が形成され、その後、全面にSiOからなる層間絶縁膜41を形成する(図7(c))。
【0069】
その後は、通常の薄膜トランジスタの製造工程に従って、ソース領域及びドレイン領域40a、40bの一部を露出させるように、コンタクトホールを形成し、次いで、コンタクトホールを埋めるように金属の配線層を形成し、パターニングすることにより、ソース電極及びドレイン電極(図示せず)を形成して、TFTが完成する。
【0070】
以上の例では、半導体イオンの注入によるプリアモルファス化工程を行わず、ソース・ドレイン領域形成のための不純物のイオン注入によりアモルファス層が形成される場合について示したが、PMOS領域にイオン注入する不純物としてBFの代わりに質量数の小さいBを用いる場合には、アモルファス化が生じないため、予めPMOS領域にSi等の半導体のイオン注入によるプリアモルファス化工程を実施することも可能である。また、PMOS領域及びNMOS領域の双方にプリアモルファス化工程を実施することも可能である。
【0071】
また、以上の例では、本発明をガラス基板上に成膜された半導体層に半導体素子を形成する薄膜半導体装置に適用した実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、絶縁層上に半導体例えばシリコン層を形成したSIO構造に半導体素子を形成する場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】イオン注入及びアニール処理後の半導体層の断面TEM(Transmission Electron Microscope)像を示す図。
【図2】SIMS分析によるイオン注入後のイオンの深さ方向の濃度プロファイルを示す特性図。
【図3】アモルファス層に対し、ショートパルス(パルス幅30ns)のパルスレーザによるレーザアニールを行った場合の半導体層表面の光学顕微鏡写真図。
【図4】アモルファス層に対し、ロングパルス(パルス幅240ns)のパルスレーザによるレーザアニールを行った場合の半導体層表面の光学顕微鏡写真図。
【図5】本発明の一実施形態に係る薄膜半導体素子を示す断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ(TFT)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ(TFT)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】従来のTFT製造プロセスにおける過加熱になった場合にシリコン膜に生じた凹凸を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1,31…基板、2,32…ガラス基板、3,33…アンダーコート膜(SiO/SiN)…4a,4b,35a,35b…ポリシリコン島状半導体層、5,36…ゲート絶縁膜、6a,6b,37a,37b…ゲート電極、38a,38b…レジストパターン、39a、39b…アモルファス領域、40a,40b…ソース・ドレイン領域、41…層間絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にそれぞれ形成されたnチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層、
前記nチャネル島状半導体層へのn型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第1の不純物領域及び第2の不純物領域、
前記pチャネル島状半導体層へのp型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第3の不純物領域及び第4の不純物領域、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、及び
前記nチャネル島状半導体層の第1の不純物領域及び第2の不純物領域の間の領域、及び前記pチャネル島状半導体層の第3の不純物領域及び第4の不純物領域の間の領域にそれぞれ対応する前記ゲート絶縁膜上の領域に形成されたゲート電極
を具備し、前記第1及び第2の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さと、前記第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとは、ほぼ同じであることを特徴とする薄膜半導体素子。
【請求項2】
基板上にそれぞれ形成されたnチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層、
前記nチャネル島状半導体層へのn型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第1の不純物領域及び第2の不純物領域、
前記pチャネル島状半導体層へのp型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第3の不純物領域及び第4の不純物領域、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、及び
前記nチャネル島状半導体層の第1の不純物領域及び第2の不純物領域の間の領域、及び前記pチャネル島状半導体層の第3の不純物領域及び第4の不純物領域の間の領域にそれぞれ対応する前記ゲート絶縁膜上の領域に形成されたゲート電極
を具備し、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層へは、n型不純物及びp型不純物のイオン注入の前に半導体がイオン注入され、それによって前記nチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域が形成されるとともに、前記pチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域が形成され、前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域の深さと、前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域の深さとは、ほぼ同じであることを特徴とする薄膜半導体素子。
【請求項3】
基板上にそれぞれ形成されたnチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層、
前記nチャネル島状半導体層へのn型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第1の不純物領域及び第2の不純物領域、
前記pチャネル島状半導体層へのp型不純物のイオン注入により所定の間隔を隔てて形成された第3の不純物領域及び第4の不純物領域、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、及び
前記nチャネル島状半導体層の第1の不純物領域及び第2の不純物領域の間の領域、及び前記pチャネル島状半導体層の第3の不純物領域及び第4の不純物領域の間の領域にそれぞれ対応する前記ゲート絶縁膜上の領域に形成されたゲート電極
を具備し、
前記nチャネル島状半導体層又はpチャネル島状半導体層へは、n型不純物又はp型不純物のイオン注入の前に半導体がイオン注入され、それによって前記nチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域が形成されるか、又は前記pチャネル島状半導体層に所定の間隔を隔てて第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域が形成され、前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域又は前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域の深さと、前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層のうち前記半導体がイオン注入されない島状半導体層への前記第1及び第2の不純物領域又は前記第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとは、ほぼ同じであることを特徴とする薄膜半導体素子。
【請求項4】
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層の少なくともいずれか一方への半導体のイオン注入は、1014cm−2以上の濃度でされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の薄膜半導体素子。
【請求項5】
前記アモルファス領域及びアモルファス化された領域の深さは、前記島状半導体層の厚さの50%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜半導体素子。
【請求項6】
基板上に、nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層をそれぞれ形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層の、第1の不純物領域形成予定領域及び第2の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第1のゲート電極を形成し、前記nチャネル島状半導体層の、第3の不純物領域形成予定領域及び第4の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第2のゲート電極を形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層にn型不純物をイオン注入し、第1の不純物領域及び第2の不純物領域を形成する工程、及び
前記pチャネル島状半導体層にp型不純物をイオン注入し、第3の不純物領域及び第4の不純物領域を形成する工程
を具備し、前記第1及び第2の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さと、前記第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとが、ほぼ同じとなるように、前記n型不純物及びp型不純物のイオン注入を行うことを特徴とする薄膜半導体素子の製造方法。
【請求項7】
基板上に、nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層をそれぞれ形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層の、第1の不純物領域形成予定領域及び第2の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第1のゲート電極を形成し、前記nチャネル島状半導体層の、第3の不純物領域形成予定領域及び第4の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第2のゲート電極を形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層に半導体をイオン注入し、前記nチャネル島状半導体層に第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域を、前記pチャネル島状半導体層に第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域をそれぞれ形成する工程、
前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域にn型不純物をイオン注入し、第1の不純物領域及び第2の不純物領域を形成する工程、及び
前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域にp型不純物をイオン注入し、第3の不純物領域及び第4の不純物領域を形成する工程
を具備し、前記第1及び第2のアモルファス領域の深さと、前記第3及び第4のアモルファス領域の深さとが、ほぼ同じとなるように、前記半導体のイオン注入を行うことを特徴とする薄膜半導体素子の製造方法。
【請求項8】
基板上に、nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層をそれぞれ形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層の、第1の不純物領域形成予定領域及び第2の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第1のゲート電極を形成し、前記nチャネル島状半導体層の、第3の不純物領域形成予定領域及び第4の不純物領域形成予定領域の間の領域上に第2のゲート電極を形成する工程、
前記nチャネル島状半導体層又はpチャネル島状半導体層に半導体をイオン注入し、前記nチャネル島状半導体層に第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域を、又は前記pチャネル島状半導体層に第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域を形成する工程
前記nチャネル島状半導体層又は前記第1のアモルファス領域及び第2のアモルファス領域にn型不純物をイオン注入し、第1の不純物領域及び第2の不純物領域を形成する工程、及び
前記pチャネル島状半導体層又は前記第3のアモルファス領域及び第4のアモルファス領域にp型不純物をイオン注入し、第3の不純物領域及び第4の不純物領域を形成する工程
を具備し、前記第1及び第2のアモルファス領域又は前記第3及び第4のアモルファス領域の深さと、前記第1及び第2の不純物領域又は第3及び第4の不純物領域を形成するためのイオン注入によりアモルファス化された領域の深さとが、ほぼ同じとなるように、前記半導体のイオン注入、及び前記p型不純物又はn型不純物のイオン注入を行うことを特徴とする薄膜半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記nチャネル島状半導体層及びpチャネル島状半導体層の少なくともいずれか一方への半導体のイオン注入は、1014cm−2以上の濃度でされていることを特徴とする請求項7又は8に記載の薄膜半導体素子。
【請求項10】
前記アモルファス領域及びアモルファス化された領域の深さは、前記島状半導体層の厚さの50%以下であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の薄膜半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−135644(P2010−135644A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311478(P2008−311478)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】