薄膜形成装置
【課題】 ドラム型基板ホルダーの外周面に対して基板の取り付け、取り外しを、簡易な構成で容易に行うことができる薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】 ドラム型基板ホルダー5を水平方向の回転軸を回転中心にして成膜室内に水平状態で回転自在に支持し、基板12を固定保持した基板固定治具13をアームでドラム型基板ホルダー5の外周面上に水平に搬送することで、ドラム型基板ホルダー5の外周面の角部5aに設けた固定装置14で基板固定治具13の端部13bを固定することができる。
【解決手段】 ドラム型基板ホルダー5を水平方向の回転軸を回転中心にして成膜室内に水平状態で回転自在に支持し、基板12を固定保持した基板固定治具13をアームでドラム型基板ホルダー5の外周面上に水平に搬送することで、ドラム型基板ホルダー5の外周面の角部5aに設けた固定装置14で基板固定治具13の端部13bを固定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を外周面に保持した筒状のドラム型基板ホルダーを回転させながら、ドラム型基板ホルダーの外周に面して対向して設置される成膜手段により基板上に多層薄膜を成膜する薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を外周面に保持した多角形又は円筒形のドラム型基板ホルダーを回転させながら、ドラム型基板ホルダーの外周に面して設置された複数のターゲットをスパッタリングして各基板上に多層薄膜を成膜する、いわゆるカルーセル型スパッタ装置が従来より知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1のようなカルーセル型スパッタ装置では、成膜開始前に複数の基板をドラム型基板ホルダーの外周に取り付け、成膜後に成膜された複数の基板をドラム型基板ホルダーの外周から取り外す必要がある。
【0004】
このようなカルーセル型スパッタ装置では、真空チャンバを大気圧に戻し、手作業で取り外す場合があった。
【0005】
このため、排気時間が掛かり、さらに、自動化されていないため、生産性が向上できない場合があった。
【0006】
このため、例えば、バルブ(仕切り弁)で仕切られた成膜室と予備室を備えて、ドラム型基板ホルダーを成膜室と予備室との間を移動可能に設置し、予備室で複数の基板をドラム型基板ホルダーの外周に取り付けて成膜室に移動させ、成膜後にドラム型基板ホルダーを予備室に移動させて基板を交換するようにしたカルーセル型スパッタ装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−234338号公報
【特許文献2】特開2001−185774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2のようなカルーセル型スパッタ装置では、基板交換時にドラム型基板ホルダーを成膜室から予備室に移動させるための移動手段や予備室を有しているので、装置構成が複雑化し、かつ大型化してしまい、改善の余地がある。
【0008】
さらに、上記特許文献2のようなカルーセル型スパッタ装置では、予備室でドラム型基板ホルダー外周面に成膜された基板を取り外したり、新たな基板をドラム型基板ホルダー外周面に取り付けたりする動作は、一般に大気圧下で手作業で行っており、作業性の点で改善の余地がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ドラム型基板ホルダー外周面に対して基板の取り付け、取り外しを、簡易な構成で容易に行うことができるとともに、真空状態で作業性よく行うことができる薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の薄膜形成装置のうち請求項1記載の発明は、真空排気可能な容器内で、回転軸に対し回転自在な基板ホルダーの外周面上に、複数の基板を保持し、基板ホルダーを回転させながら、成膜手段により各基板上に薄膜を成膜する薄膜形成装置であって、基板ホルダーの外周面に脱着可能に固定される、単数の基板及び複数の基板のいずれかを固定保持する基板固定治具及び基板自体のいずれかを、真空排気可能な容器内の前記基板ホルダーに対して搬入及び搬出の両方を行う搬入・搬出手段と、基板ホルダーの外周面に、搬入・搬出手段で搬入される基板固定治具及び基板自体のいずれかを固定解除自在に固定する固定手段とを備える構成を有している。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、上記構成に加え、基板ホルダーが、水平な回転軸を回転中心にして設置され、搬入・搬出手段が、水平方向に基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送する構成を有している。
【0012】
さらに請求項3記載の発明は、搬入・搬出手段が、回転軸の軸方向に基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送する構成を有している。
【0013】
請求項4記載の発明は、搬入・搬出手段が、基板ホルダーの外周面に平行に基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送する構成を有している。
【0014】
請求項5記載の発明は、搬入・搬出手段による搬入・搬出動作及び固定手段による固定動作のいずれもが、減圧環境下で行われる構成を有している。
【0015】
請求項6記載の発明は、固定手段の固定解除が、電気信号による制御によって行われることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7記載の発明は、固定手段が、基板固定治具及び基板自体のいずれかを付勢手段により押さえて保持する機構と、真空排気可能な容器の外側に設けられた駆動装置及び基板ホルダー内部に設けられた駆動装置のいずれかにより付勢手段を縮めて基板固定治具及び基板自体のいずれかの保持を解除する機構を有することを特徴とするものである。
【0017】
請求項8記載の発明は、固定手段が、基板固定治具を磁力により固定する構成を有している。
【0018】
請求項9記載の発明は、搬入・搬出手段が、真空排気可能な容器とバルブを介して設置された搬送室に設置されており、搬送室が真空排気可能であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10記載の発明は、搬送室にバルブを介して接続される仕込取出し室を有し、仕込取出し室が真空排気可能であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11記載の発明は、成膜手段が、スパッタ手段、蒸着手段及びCVD手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせた構成を有していることを特徴とするものである。
【0021】
請求項12記載の発明は、成膜手段で形成された薄膜に、反応ガスを接触させる反応ガス供給手段、プラズマを照射するプラズマ照射手段、イオンを照射するイオン照射手段及び薄膜の一部をエッチングするエッチング手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせを適用可能にしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドラム型基板ホルダーに対する基板の取り外しを自動化することにより、取付・取外が容易になる。
【0023】
これにより、生産性を向上させることができる。
【0024】
さらに、減圧中で基板の交換が可能であるため、基板の汚染を防止することができると共に、排気時間を短縮することで、タクトタイムの短縮が可能である。
【0025】
さらに、本発明の一形態では、ドラム型基板ホルダーを水平に設置することにより、基板もしくは基板固定治具の交換時に水平方向に移送が可能になる。
【0026】
このため、水平の搬送ロボットが使用可能で、ロボットの基板等の保持機能が不要なため構造が簡易になる。
【0027】
さらに、基板を縦に保持して搬送する場合に比べ搬送室が小さくなり、装置全体がコンパクトになる。
【0028】
さらに、本発明の他の形態では、基板を固定保持した基板固定治具ごと、基板ホルダーの外周面上への取り付け、取り外しを行うため構成が簡易になる。
【0029】
さらに、複数の基板を固定保持した基板固定治具を、基板ホルダーの外周面上への取り付け、取り外しするため、作業性がよく、基板の交換作業を短時間で行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置を示す一部破断斜視図であり、本実施形態の薄膜形成装置は、多角形のドラム型基板ホルダーの各外周面に保持した基板に繰り返し成膜を行うカルーセル型スパッタ装置である。
【0031】
本薄膜形成装置1は、成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4を備えており、成膜室2と搬送室3はゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3aを介して連結されている。さらに、搬送室3と仕込取出し室4も、ゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3bを介して連結されている。成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4は、それぞれ排気手段(不図示)を有する。
【0032】
成膜室2内には、正多角形(本実施形態では正八角形)筒状のカルーセル型基板ホルダー(以下、ドラム型基板ホルダーという)5がその中心軸が水平状態に配置されており、ドラム型基板ホルダー5は、図1、図2に示すように、水平方向に設けた回転軸6を回転中心にして回転自在に支持され、下面から離れている。回転軸6の他端側には、ドラム型基板ホルダー5を回転駆動するための駆動モータ7が連結されている。
【0033】
また、回転軸6の成膜室2の側面2aと駆動モータ7の間には、真空シール機構8と、バイアス電極9からバイアス電圧をドラム型基板ホルダー5に印加するためのバイアス導入機構(金属製ブラシやコンデンサーカップリングなど)10が取り付けられている。真空シール機構8、バイアス導入機構10、駆動モータ7は、成膜室2の側面2aに接続した収納容器11内に設置されている。
【0034】
成膜室2内のドラム型基板ホルダー5は、図3に示すように、成膜室2の側面2aに接続されている真空シール機構8、バイアス導入機構10、駆動モータ7が設置されている収納容器11と一体に水平方向に取出し可能であり、定期的に行う成膜室2内及びドラム型基板ホルダー5のメンテナンスなどを容易に行うことができる。
【0035】
収納容器11はガイドレール(不図示)により水平に移動できるように構成されると、容易に移動が可能となる。
【0036】
したがって、この収納容器11と一体的に設置されているドラム型基板ホルダー5は、収納容器11を移動させることにより容易に取り出すことができ、保守も容易にできるようになる。
【0037】
なお、収納容器11には開閉扉が設けられており、真空シール機構8、バイアス導入機構10及び駆動モータ7の保守が容易にできるようになっている。
【0038】
ドラム型基板ホルダー5の外周上の各面には、基板12を固定保持した基板固定治具13(図4参照)が、図5に示すように、各面の角部5aにそれぞれ設けた固定装置14によって固定解除自在に固定される(詳細な後述する)。基板固定治具13は、図4に示したように、基板12が固定保持される中間部の基板固定部13aがその両側の縁部13bよりも盛り上がるように折り曲げられている。
【0039】
これにより、ドラム型基板ホルダー5に設置されたときに、ドラム型基板ホルダー5と基板固定治具13間に隙間が生じる。この隙間にアーム24の基板ハンド部24aを挿入することができる。
【0040】
なお、図5では、ドラム型基板ホルダー5の各外周面間の角部5aに設けられる固定装置14が上方に向いているが、固定装置14を解除して基板固定治具13を搬入搬出するときには、図1に示したように、ドラム型基板ホルダー5の各外周面の一面が常に成膜室2の上面側を向くように水平状態とし、角部に設けられる固定装置14は斜め上方を向いている。
【0041】
固定装置14は、ドラム型基板ホルダー5の各面の角部5aにその長手方向に沿って所定間隔で設けた上下動自在な複数の軸15と、基板固定治具13の縁部13bを挟持して固定する一対の上側固定部材16、下側固定部材17と、各軸15を上方に向けて常に付勢するばね18と、上側固定部材16と下側固定部材17による基板固定治具13の縁部13bの固定解除を行う成膜室2の上面側に設けたシリンダー駆動装置19と、各軸15の上端にドラム型基板ホルダー5の長手方向に沿って固着した押え板20を備えている。
【0042】
なお、ばね18は付勢手段であり、ばねに限らず、種々の弾性体であってもよい。
【0043】
上側固定部材16は、その長手方向の両端側がドラム型基板ホルダー5の両端面に固定されており、ドラム型基板ホルダー5の各面の角部5aの上方に所定の隙間を設けてドラム型基板ホルダー5の長手方向に沿って設置されている。上側固定部材16に形成された貫通孔に、軸15が上下方向に移動自在に挿入されている。
【0044】
下側固定部材17は、その貫通する軸15に固着され、上側固定部材16と対向配置されており、下側固定部材17は上側固定部材16に対して軸15と一体に上下動する。
【0045】
さらに、押え板20も各軸15の上端に設置されているため、押え板20も下側固定部材17および軸15も上下する。
【0046】
シリンダー駆動装置19は、所定の基板固定治具13が搬入搬出位置に来たときにその基板固定治具13の両側の固定装置14を解除できるように、押え板20の上方の位置に長手方向に沿って所定間隔で成膜室2の上面に設置されている。
【0047】
シリンダー駆動装置19は伸縮自在な押え軸21を備えており、電気信号によって制御されるシリンダー駆動装置19の駆動によって押え軸21は伸縮可能である。
【0048】
押え軸21が伸びたときにはその先端が押え板20に圧接し、軸15を下方に押し下げることができる。
【0049】
また、ドラム型基板ホルダー5の各面の角部5aの内側には、軸15及び下側固定部材17を押し上げるばね18が設置されている。
【0050】
押え軸21を伸ばして押え板20を押し下げることで下側固定部材17が押し下げられ、上側固定部材16と下側固定部材17の間隔が広がることで固定が解除される。
【0051】
押え軸21を縮めて、ばね18により下側固定部材17が押し上げられることにより、上側固定部材16との間隔が狭まり基板固定治具13の端部を挟むことにより、基板固定治具13が固定される。
【0052】
図5に示した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5の各外周面間の角部5aに固定装置14が設けられているが、ドラム型基板ホルダー5の外周面の両端に設けてもよい。
【0053】
この場合、図4に示したような基板固定治具は縁部のない平坦な基板固定治具でよく、この基板固定治具の両端を固定装置ではさむことになる。
【0054】
また、このような基板固定治具の場合、基板自体を固定装置14で直接固定するようにしてもよい。
【0055】
基板固定治具をドラム型基板ホルダーへ搬入する場合、ドラム型基板ホルダーの外周面に基板固定治具を案内するガイド機構を設けても良い。
【0056】
図6はドラム端基板ホルダーにガイド機構を設けた一部概略断面図である。
【0057】
図6を参照して、ガイド機構70は、ドラム型基板ホルダー5の各外周面に設けられたガイドレール71と、基板固定治具13の裏面に設けられた凸部73とを備え、凸部73がガイドレール71に嵌挿され、滑らかに移動可能となっているものである。
【0058】
図7に示した例では、凸部73は矩形状であり、この形態に対応してガイドレール71に溝が設けられている。
【0059】
ガイド機構は、図7に示したように、基板固定治具に設けられた凸部72が三角形状であり、ガイドレールはその形状に対応したものであってもよい。
【0060】
またガイドレールは、図8に示すように、長尺のガイドレール75だけでなく、図9に示すような短尺のガイド部77を複数個設けても良い。
【0061】
さらに、ガイド機構は下側固定部材17に設けてもよい(図5を参照)。このガイド機構は、基板固定治具13の縁部13bが当接する下側固定部材17の該当箇所に段部を設けるもので、この段部に沿って基板固定治具が滑らかに挿入されるようにしてもよい。
【0062】
このようなガイド機構を設けることにより、ドラム型基板ホルダーに搬送される基板固定治具の位置が確実に決まり、ドラム型基板ホルダーへ水平に挿入する方向から外れた横方向への動きを防止することができる。
【0063】
成膜室2には、ドラム型基板ホルダー5の周面に沿って酸化源22、複数のカソード(ターゲット)23等が配置されている。各カソード23にはスパッタ電源(不図示)がそれぞれ接続されている。なお、本実施形態のカソード23は、2つで一組のカソード(ダブルカソード)である。
【0064】
搬送室3内には、先端に基板ハンド部24aを有する伸縮自在なアーム24が旋回可能に設けられており、ゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3aを通して、ドラム型基板ホルダー5の外周面に対して基板12を保持固定した基板固定治具13の搬入、搬出を行う。
【0065】
なお、アーム24の基板ハンド部24aによる基板12を保持固定した基板固定治具13の搬入搬送面(水平面)は、成膜室2の上面側に位置するドラム型基板ホルダー5の外周面上に略位置している。搬送室3の成膜室2と反対側の側面には、仕込取出し室4がゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3bを介して連結されている。
【0066】
仕込取出し室4内には、成膜前及び成膜後の基板12をそれぞれ保持固定した複数の基板固定治具13が鉛直方向に移動可能に収納される。
【0067】
次に、上記した本実施形態の薄膜形成装置1による成膜工程について説明する。
【0068】
先ず搬送室3の開口部3bのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24を旋回させると共に伸ばして、仕込取出し室4内に収納され、成膜前の基板12を固定保持している基板固定治具13の基板固定部13aの下に基板ハンド部24aを挿入した後、この基板固定治具13を少し下降させて、基板ハンド部24a上に基板固定部13aの下面を載置する。
【0069】
そして、アーム24を縮めて搬送室3内に取り込んだ後に、開口部3bのゲートバルブ(不図示)を閉じて他方側の開口部3aのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24を旋回させると共に伸ばして成膜室2の上面側に位置しているドラム型基板ホルダー5の外周面上に搬送する。
【0070】
なお、成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4は、排気されて所定の圧力に調整されている。
【0071】
この際、図5に示すように、ドラム型基板ホルダー5の搬入・搬出位置にある面の両側の角部5aに設けている固定装置14の各軸15は、押え軸21が押え板20を押圧することにより下方に押し下げられ、上側固定部材16と下側固定部材17との間が開いている。
【0072】
この状態で上側固定部材16と下側固定部材17の間に、基板固定治具13の両側の縁部13bを回転軸の軸方向に挿入する。
【0073】
そして、固定装置14は、シリンダー駆動装置19の駆動によって押え軸21を縮めることによって、ばね18のばね力で軸15と一体に下側固定部材17が上方に移動し、上側固定部材16と下側固定部材17の間に、基板固定治具13の両側の縁部13bを挟持し、基板12が固定保持された基板固定治具13をドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持する。
【0074】
その後、アーム24の基板ハンド部24aを搬送室3内に戻す。
【0075】
そして、駆動モータ7を駆動してドラム型基板ホルダー5を所定角度だけ回転させて、隣接する外周面が成膜室2の上面側を向くようにする。
【0076】
そして、前記同様にして仕込取出し室4内に収納されている基板12が固定保持された基板固定治具13をアーム24によって成膜室2内のドラム型基板ホルダー5の外周面に搬送し、その両側の角部に設けている各固定装置14の上側固定部材16と下側固定部材17の間に基板固定治具13の縁部13bをそれぞれ挟持して、基板12が固定保持された基板固定治具13をドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持する。
【0077】
以下同様にして、ドラム型基板ホルダー5の各外周面(本実施形態では8面)上に基板12が固定保持された基板固定治具13を保持する。
【0078】
そして、開口部3aのゲートバルブを閉め、成膜室2内を所定の圧力に調整し、酸化源22からO2ガスを成膜室2内に導入するとともに、各カソード(ターゲット)23近傍に設けた各ガス供給口(不図示)からアルゴンガスを成膜室2内に導入し、各カソード(ターゲット)23に高周波電圧を印加して放電によるプラズマを発生させる。
【0079】
ドラム型基板ホルダー5の周囲に配置される各カソード(ターゲット)23としては、例えばSiカソードやTiカソードなどを用いることができる。
【0080】
この際、駆動モータ7を駆動してドラム型基板ホルダー5を所定回転数で回転させることによって、各基板固定治具13に保持されている基板12に、例えばSiO2膜、TiO2膜などをそれぞれ所定の膜厚で多層成膜する。
【0081】
なお、ドラム型基板ホルダー5には、バイアス電極9からバイアス導入機構10を介して所定のバイアス電圧が印加されている。
【0082】
そして、各基板12への薄膜形成が終了すると開口部3aのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24の基板ハンド部24aを成膜室2内に搬送し、成膜室2の上面側に位置しているドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持されている基板固定治具13の下に挿入する。
【0083】
そして、シリンダー駆動装置19の駆動によって押え軸21を下方に伸ばして押え板20を押圧する。この押圧によって軸15と一体に下側固定部材17を下降させ、基板固定治具13の縁部13bの挟持状態を解除し、基板ハンド部24a上に載置する。
【0084】
そして、成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13を載置した基板ハンド部24aを搬送室3内に戻した後に開口部3aのゲートバルブ(不図示)を閉じて、他方側の開口部3bのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24を旋回させると共に伸ばして成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13を仕入・取出し室4内に収納する。
【0085】
そして、駆動モータ7を駆動してドラム型基板ホルダー5を所定角度だけ回転させて、隣接する外周面を成膜室2の上面側を向くようにし、この外周面上に保持されている成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13に対しても上記同様にして、アーム24によって仕込取出し室4内に収納する。
【0086】
以下同様にして、ドラム型基板ホルダー5の各外周面上の成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13を、アーム24によって仕込取出し室4内に収納する。
【0087】
そして、仕込取出し室4の取出し口(不図示)を開いて、大気圧下で内部に収納されている成膜後の各基板12を基板固定治具13と共に取り出す。
【0088】
このように本実施形態では、正多角形(本実施形態では正八角形)筒状のドラム型基板ホルダー5を水平方向の回転軸6を回転中心にして成膜室2内に水平状態で回転自在に支持したことで、基板12を固定保持した基板固定治具13をアーム24でドラム型基板ホルダー5の外周面上に水平に搬送することができる。
【0089】
したがって、ドラム型基板ホルダー5の外周面の角部5aに設けた固定装置14で基板固定治具13の端部13bを固定することにより、基板12を固定保持した基板固定治具13をドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持することができる。
【0090】
さらに成膜後には固定装置14による保持を解除するだけでアーム24の水平移動で成膜室2内から取り出すことができるので、基板12を固定保持した基板固定治具13のドラム型基板ホルダー5の外周面上への取り付け、取り外し構成が簡易になり、かつ基板12を固定保持した基板固定治具13のドラム型基板ホルダー5の外周面上への取り付け、取り外しを作業性よく短時間で行うことができる。
【0091】
また、基板12を固定保持した基板固定治具13のドラム型基板ホルダー5の外周面上への取り付け、取り外しを大気圧下で行うことなく、機械的に真空中で行うことができるので、成膜工程時間の短縮を図ることができる。
【0092】
さらに、基板への汚染を防止することができる。
【0093】
また、上記した実施形態では、基板固定治具13上に口径の大きい基板12を1つ固定保持した構成であったが、基板固定治具13上に複数個の小径の基板を固定保持する構成でもよい。
【0094】
例えば、図10に示すように、各基板固定治具13の表面に所定の角度で3つの面をその長手方向に沿って形成し、各面に小径の基板12を複数個(図10では、1つの基板固定治具13の各面に3つずつ小径の基板12を固定し、1つの基板固定治具13の表面全体で9個)固定するようにしてもよい。
【0095】
なお、この場合のドラム型基板ホルダー5は正六角形筒状に形成されている。
【0096】
また、上記した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5は正八角形筒状(図10では正六角形筒状)であったが、これに限定されることなく、これ以外の多角形筒状や円筒形筒状のドラム型基板ホルダーでも本発明を適用することができる。
【0097】
なお、本実施形態のようにドラム型基板ホルダー5にばね18を設置して、固定装置15を成膜室2の上方から固定解除できる機構はドラム型基板ホルダー5に電気装置を設置していないので、ドラム型基板ホルダー5にバイアスをかける場合に好ましい。
【0098】
さらに、上記した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5を水平に回転させることにより、基板固定治具13を水平方向に搬送することができる。これにより搬送時に基板固定治具13を保持する必要がなくアーム24等の搬送装置の構造が簡易になる。
【0099】
さらに、上記した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5の回転軸に平行に基板固定治具13を出し入れすることで、成膜手段等を設置するドラム型基板ホルダー5に対向する外周部の利用範囲を阻害しない。
【0100】
なお、外周部に開口部3aを設置可能であれば、ドラム型基板ホルダー5の上面に平行に、かつ、回転軸の垂直方向に対して基板固定治具13を水平方向に搬送することができる。
【0101】
さらに、開口部3aと反対の収納容器11に開口部を設け、さらにその開口部の外側に別の搬送室およびアームを設置して、基板固定治具13の搬入と搬出を別のアームで行うこともできる。
【0102】
なお、上記の実施形態では、成膜手段としてターゲット23を含むスパッタ成膜手段が説明されたが、スパッタ成膜手段の他に、蒸着成膜手段、CVD成膜手段を設置することもできる。
【0103】
さらに、酸素を含む酸素原子含有ガスを供給して膜を酸化する酸化源5のほかに他の反応ガスを供給して化合物膜とする反応ガス供給手段、プラズマ、ラジカルやイオンを照射して膜の反応性を向上させる反応性向上手段、プラズマやイオン照射して膜の一部をエッチングするエッチング手段を設けることもできる。
【0104】
これらの成膜手段、反応ガス供給手段、反応性向上手段、エッチング手段を複数組合せて設置する装置も本発明に含まれる。
【0105】
また、上記の実施形態では、基板を基板固定治具13に固定して、搬送・固定する場合が説明されたが、アーム24の基板ハンド部24aで取上げ可能な形状もしくは保持可能な形状であれば基板を直接、搬送・固定してもよい。
【0106】
具体的には、基板とドラム型基板ホルダー5の間にアーム24の基板ハンド部24aが挿入できるようにドラム型基板ホルダー5の外表面に凹みを設けてもよい。
【0107】
さらに、別の例では、ドラム型基板ホルダー5の表面に、固定手段で挟持されていないとき(押し下げられていないとき)に基板を押し上げる弾性体を有する押し上げピンを設置しても良い。
【0108】
また、上記の実施形態は、基板上に数〜数百層の多層膜を成膜する場合、フィルムなどを通過させて一層の膜を付ける場合と異なり、基板をドラム型基板ホルダー5に保持して複数回回転させ、成膜後に基板の交換の必要があるので、上記の実施形態のように、自動で、かつ、減圧雰囲気中で基板交換ができることは生産性を向上させるために特に好ましい。
〈実施形態2〉
本実施形態における固定装置は、図11に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された下側固定部材30の上面に、付勢手段を有している回転軸31を回転中心にして開閉自在な上側固定部材32を取り付け、ドラム型基板ホルダーの各外周面の角部内に設けたシリンダー駆動装置33の伸縮自在なシリンダー34の先端を上側固定部材32に揺動自在に連結して構成されている。
【0109】
なお、図では右側の上側固定部材32のみを示しているが、下側固定部材30の上面の左側にも同様にシリンダーに連結された開閉自在な上側固定部材が取り付けられている。他の構成は実施形態1と同様である。
【0110】
本実施形態では、シリンダー34を伸ばすことによって開いている上側固定部材32と下側固定部材30の間に、実施形態1と同様に基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13の縁部13bをアーム(不図示)によって搬入する。
【0111】
そして、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を縮めることによって上側固定部材32を閉じるように移動させ、上側固定部材32と下側固定部材30で基板固定治具13の縁部13bを挟持して、ドラム型基板ホルダーの外周面上に基板を固定保持した基板固定治具13を固定保持する。
【0112】
そして、基板を固定保持した基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、シリンダー駆動装置30を駆動してシリンダー34を伸ばすことによって、上側固定部材32を開くように移動させる。
【0113】
本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0114】
本実施形態での固定装置では、外周部からの固定・解除手段がないので、外周の真空容器側に固定・解除手段を設置できないときに有効である。
〈実施形態3〉
本実施形態における固定装置は、図12に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された下側固定部材35の上方に上側固定部材36を設置し、ドラム型基板ホルダーの各外周面の角部内に設けたシリンダー駆動装置33に設けた伸縮自在なシリンダー34の先端を上側固定部材36に連結して構成されている。
【0115】
シリンダー34は、下側固定部材35に形成した開口穴を通して上側固定部材36に連結されている。他の構成は実施形態1と同様である。
【0116】
本実施形態では、シリンダー34を伸ばすことによって開いている上側固定部材36と下側固定部材35の間に、実施形態1と同様に基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13の縁部13bをアーム(不図示)によって搬入した後、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を縮めることによって上側固定部材36を下方に移動させ、上側固定部材36と下側固定部材35で基板固定治具13の縁部13bを挟持して、ドラム型基板ホルダーの外周面上に基板を固定保持した基板固定治具13を固定保持する。
【0117】
そして、基板を固定保持した基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を伸ばすことによって上側固定部材36を上方に移動させる。本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態4〉
本実施形態における固定装置は、図13に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された上側固定部材36の下面に下側固定部材37を取り付け、成膜室2の上面側に伸縮自在なシリンダー34を有するシリンダー駆動装置33を設けている。
【0118】
下側固定部材37は、上側固定部材36とドラム型基板ホルダー(不図示)間に固着された第1支持部材37aに回転軸38を介して回転自在に接続された第2支持部材37bと、第2支持部材37bに長穴39に挿通されたピン40を介して揺動自在に接続されている第3支持部材37cとで構成されており、第3支持部材37cには、シリンダー駆動装置33のシリンダー34の下方に位置するようにして、先端に押え板41を固着した軸42が取り付けられている。
【0119】
軸42は、上側固定部材36に形成した開口穴に移動自在に挿通されている。
【0120】
なお、第3支持部材37cには、常に上方に付勢している付勢手段(不図示)が接続されている。
【0121】
具体的には、板バネに例示される弾性体で第3支持部材37cが上側固定部材36に押し当てられる。他の構成は実施形態1と同様である。
【0122】
本実施形態では、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を伸ばして押え板41を押圧することにより、軸42が下げられることによって二点鎖線で示すように、第3支持部材37cを下方に移動させて、開いている上側固定部材36と下側固定部材37の第3支持部材37aの間に、実施形態1と同様に基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13の縁部13bをアーム(不図示)によって搬入する。
【0123】
そして、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を縮め、付勢手段(不図示)による付勢力で第3支持部材37cを上方に移動させ、上側固定部材36と下側固定部材37の第3支持部材37cで基板固定治具13の縁部13bを挟持して、ドラム型基板ホルダー5の外周面上に基板を固定保持した基板固定治具13を固定保持する。
【0124】
そして、基板を固定保持した基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を伸ばし、押え板41を押圧して軸42を下げて二点鎖線で示すように、第3支持部材37cを下方に移動させる。本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態5〉
本実施形態における固定装置は、図14に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された下側固定部材61内に電磁石62を埋め込み、下側固定部材61上に載置される基板固定治具13の縁部13bの下面に磁性板63を固着して構成されている。電磁石62は、外部からの電気信号のON/OFFによって、発生される磁力の有効/無効が切り換えられる。
【0125】
本実施形態では、アーム(不図示)によってドラム型基板ホルダー(不図示)の外周面上に、基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13を搬入して、基板固定治具13の縁部13bを下側固定部材61上に載置した後に、アーム(不図示)を引き抜く。
【0126】
そして、電磁石62に通電して磁力を有効にし、この磁力によって基板固定治具13の縁部13bを下側固定部材61上に固定して、ドラム型基板ホルダー(不図示)の外周面上に基板固定治具13を固定保持する。
【0127】
そして、基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、アーム(不図示)を基板固定治具13の下面に入れた後に、電磁石62への通電をOFFにして磁力を無効にして、磁力による基板固定治具13の縁部13bの固定を解除することによって行い、基板固定治具13の下面に入れたアーム(不図示)を引き出して基板固定治具13を搬出する。
【0128】
本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態6〉
本実施形態は、本発明に係る薄膜形成装置をマルチチャンバ(多室)型枚葉式スパッタ成膜装置に適用した場合であり、図15に示すように、中央部に設けた搬送室3の周囲に仕込取出し室4、予備加熱室43、成膜室2、基板冷却室44がそれぞれゲートバルブ45a、45b、45c、45dを介して設置されている。予備加熱室43は、成膜前の基板の予備加熱を行い、基板冷却室44は、スパッタ成膜後の基板を冷却する。搬送室3、仕込取出し室4、成膜室2の構成は、図1〜図5に示した実施形態1と同様であり、本実施形態ではそれらの説明は省略する。なお、成膜室2を複数設置することもできる。
【0129】
本実施形態のようなマルチチャンバ型枚葉式スパッタ成膜装置においても、本発明を適用することにより実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態7〉
図16は、本実施形態に係る薄膜形成装置を示す概略断面図であり、搬送室3の両側にそれぞれゲートバルブ46a、46bを介して仕込取出し室4と成膜室2が連結されている。
【0130】
成膜室2内には、正多角形筒状のドラム型基板ホルダー47がその長手方向が鉛直状態に配置されており、ドラム型基板ホルダー47は、鉛直方向の回転軸48を回転中心にして回転自在に支持されている。回転軸48の他端側には、ドラム型基板ホルダー47を回転駆動するための駆動モータ49が連結されている。ドラム型基板ホルダー47の各外周面には、基板(不図示)を固定保持した基板固定治具50を固定保持する固定部材51が設けられている。成膜室2には、ドラム型基板ホルダー47の周面に沿って不図示の酸化源、カソード等が配置されている。
【0131】
仕込取出し室4には、基板を固定保持した複数の基板固定治具50が保持装置52に取り外し自在に保持されている。搬送室3には、基板を固定保持した基板固定治具50を着脱自在に保持する保持部材53を先端に固着した2つのシリンダー54a、54bが回転軸55に取り付けられている。回転軸55は、鉛直方向に回転自在に支持されており、回転軸55の他端側には駆動モータ56が連結されている。シリンダー54a、54bは水平状態で一直線上に配置されている。
【0132】
本実施形態に係る薄膜形成装置は、成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4は、排気されて所定の圧力に調整された状態でゲートバルブ46aを開き、シリンダー54aを水平に伸ばして仕込取出し室4の基板を固定保持した基板固定治具50を保持部材53で保持した後、シリンダー54aを縮めて搬送室3に戻す。
【0133】
そして、駆動モータ56を駆動して回転軸55を180度回転させて、シリンダー54aを成膜室2側に位置させる。そして、ゲートバルブ46bを開いてシリンダー54aを水平方向に伸ばして、基板を固定保持した基板固定治具50を成膜室2に搬入し、基板を固定保持した基板固定治具50をドラム型基板ホルダー47の外周面に設けた固定部材51に固定する。以下同様にしてドラム型基板ホルダー47の各外周面に設けた固定部材51に、基板を固定保持した基板固定治具50を固定する。
【0134】
そして、ゲートバルブ46bを閉じた後に駆動モータ49を駆動してドラム型基板ホルダー47を回転させ、実施形態1で述べたようにして各基板上に多層成膜を行う。
【0135】
成膜が終了した後、ゲートバルブ46bを開けてシリンダー54aを伸ばして成膜室2に搬入し、成膜後の基板を固定保持した基板固定治具50を保持部材53に保持させる。
【0136】
そして、シリンダー54aを縮めて搬送室3に戻した後、回転軸55を180度回転させて、シリンダー54aを仕込取出し室4側に位置させる。そして、ゲートバルブ46aを開いてシリンダー54aを水平方向に伸ばして、成膜後の基板(不図示)を固定保持した基板固定治具50を仕込取出し室4に搬入し、成膜後の基板を固定保持した基板固定治具50を保持装置52に固定して収納する。
【0137】
そして、仕込取出し室4の取出し口(不図示)を開いて、大気圧下で内部に収納されている成膜後の各基板を基板固定治具50と共に取り出す。
【0138】
なお、保持部材53、固定部材51による基板固定治具50の保持・固定は機械的に挟持する手段、基板固定治具50を強磁性体で構成し電磁石の入り切りにより保持・解除する手段が例示される。
【0139】
なお、基板固定治具50は、保持装置53により搬送方向に平行に、かつ、ドラム型基板ホルダー47の接線方向に挿入することもできる。これにより、ゲートバルブ46bの開口を小さくする事ができる。
【0140】
さらに、基板固定治具50をドラム型基板ホルダー47の外面に沿って挿入することで、基板固定治具50の上下で挟んでドラム型基板ホルダー47に固定することも可能である。
【0141】
このように本実施形態に係る薄膜形成装置おいても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0142】
すなわち、基板12を固定保持した基板固定治具50を、ドラム型基板ホルダー47の外周面上への取り付け、取り外しを大気圧下で行うことなく、機械的に真空中で行うことができるので、成膜工程時間の短縮を図ることができる。
【0143】
さらに、基板への汚染を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように、本発明に係る薄膜形成装置は、基板の取付及び取り外しを真空環境下で行える装置として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置を示す一部破断斜視図。
【図2】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置の成膜室を示す概略構成図。
【図3】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置のドラム型基板ホルダーを引き出した状態を示す一部破断斜視図。
【図4】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置の基板固定治具を示す正面図。
【図5】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略斜視図。
【図6】ガイド機構を示す一部概略断面図である。
【図7】他のガイド機構の形態を示す概略図である。
【図8】長尺のガイドレールを示す概略図である。
【図9】短尺のガイド部を示す概略図である。
【図10】本発明の実施形態1の変形例における、ドラム型基板ホルダーの各面に複数の基板を固定保持した基板固定治具を示す概略斜視図。
【図11】本発明の実施形態2に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図12】本発明の実施形態3に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図13】本発明の実施形態4に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図14】本発明の実施形態5に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図15】本発明の実施形態6に係る薄膜形成装置を示す概略平面図。
【図16】本発明の実施形態7に係る薄膜形成装置を示す概略断面。
【符号の説明】
【0146】
1 薄膜形成装置
2 成膜室(真空容器)
3 搬送室
4 仕込取出し室
5 ドラム型基板ホルダー(基板ホルダー)
6 回転軸
12 基板
13 基板固定治具
14 固定装置(固定手段)
16、32、36 上側固定部材
17、30、35、37、61 下側固定部材
19、33 シリンダー駆動装置
21 押え軸
24 アーム(搬入・搬出手段)
70 ガイド機構
71、75 ガイドレール
72、73 凸部
77 ガイド部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を外周面に保持した筒状のドラム型基板ホルダーを回転させながら、ドラム型基板ホルダーの外周に面して対向して設置される成膜手段により基板上に多層薄膜を成膜する薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を外周面に保持した多角形又は円筒形のドラム型基板ホルダーを回転させながら、ドラム型基板ホルダーの外周に面して設置された複数のターゲットをスパッタリングして各基板上に多層薄膜を成膜する、いわゆるカルーセル型スパッタ装置が従来より知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1のようなカルーセル型スパッタ装置では、成膜開始前に複数の基板をドラム型基板ホルダーの外周に取り付け、成膜後に成膜された複数の基板をドラム型基板ホルダーの外周から取り外す必要がある。
【0004】
このようなカルーセル型スパッタ装置では、真空チャンバを大気圧に戻し、手作業で取り外す場合があった。
【0005】
このため、排気時間が掛かり、さらに、自動化されていないため、生産性が向上できない場合があった。
【0006】
このため、例えば、バルブ(仕切り弁)で仕切られた成膜室と予備室を備えて、ドラム型基板ホルダーを成膜室と予備室との間を移動可能に設置し、予備室で複数の基板をドラム型基板ホルダーの外周に取り付けて成膜室に移動させ、成膜後にドラム型基板ホルダーを予備室に移動させて基板を交換するようにしたカルーセル型スパッタ装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−234338号公報
【特許文献2】特開2001−185774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2のようなカルーセル型スパッタ装置では、基板交換時にドラム型基板ホルダーを成膜室から予備室に移動させるための移動手段や予備室を有しているので、装置構成が複雑化し、かつ大型化してしまい、改善の余地がある。
【0008】
さらに、上記特許文献2のようなカルーセル型スパッタ装置では、予備室でドラム型基板ホルダー外周面に成膜された基板を取り外したり、新たな基板をドラム型基板ホルダー外周面に取り付けたりする動作は、一般に大気圧下で手作業で行っており、作業性の点で改善の余地がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ドラム型基板ホルダー外周面に対して基板の取り付け、取り外しを、簡易な構成で容易に行うことができるとともに、真空状態で作業性よく行うことができる薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の薄膜形成装置のうち請求項1記載の発明は、真空排気可能な容器内で、回転軸に対し回転自在な基板ホルダーの外周面上に、複数の基板を保持し、基板ホルダーを回転させながら、成膜手段により各基板上に薄膜を成膜する薄膜形成装置であって、基板ホルダーの外周面に脱着可能に固定される、単数の基板及び複数の基板のいずれかを固定保持する基板固定治具及び基板自体のいずれかを、真空排気可能な容器内の前記基板ホルダーに対して搬入及び搬出の両方を行う搬入・搬出手段と、基板ホルダーの外周面に、搬入・搬出手段で搬入される基板固定治具及び基板自体のいずれかを固定解除自在に固定する固定手段とを備える構成を有している。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、上記構成に加え、基板ホルダーが、水平な回転軸を回転中心にして設置され、搬入・搬出手段が、水平方向に基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送する構成を有している。
【0012】
さらに請求項3記載の発明は、搬入・搬出手段が、回転軸の軸方向に基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送する構成を有している。
【0013】
請求項4記載の発明は、搬入・搬出手段が、基板ホルダーの外周面に平行に基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送する構成を有している。
【0014】
請求項5記載の発明は、搬入・搬出手段による搬入・搬出動作及び固定手段による固定動作のいずれもが、減圧環境下で行われる構成を有している。
【0015】
請求項6記載の発明は、固定手段の固定解除が、電気信号による制御によって行われることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7記載の発明は、固定手段が、基板固定治具及び基板自体のいずれかを付勢手段により押さえて保持する機構と、真空排気可能な容器の外側に設けられた駆動装置及び基板ホルダー内部に設けられた駆動装置のいずれかにより付勢手段を縮めて基板固定治具及び基板自体のいずれかの保持を解除する機構を有することを特徴とするものである。
【0017】
請求項8記載の発明は、固定手段が、基板固定治具を磁力により固定する構成を有している。
【0018】
請求項9記載の発明は、搬入・搬出手段が、真空排気可能な容器とバルブを介して設置された搬送室に設置されており、搬送室が真空排気可能であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10記載の発明は、搬送室にバルブを介して接続される仕込取出し室を有し、仕込取出し室が真空排気可能であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11記載の発明は、成膜手段が、スパッタ手段、蒸着手段及びCVD手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせた構成を有していることを特徴とするものである。
【0021】
請求項12記載の発明は、成膜手段で形成された薄膜に、反応ガスを接触させる反応ガス供給手段、プラズマを照射するプラズマ照射手段、イオンを照射するイオン照射手段及び薄膜の一部をエッチングするエッチング手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせを適用可能にしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドラム型基板ホルダーに対する基板の取り外しを自動化することにより、取付・取外が容易になる。
【0023】
これにより、生産性を向上させることができる。
【0024】
さらに、減圧中で基板の交換が可能であるため、基板の汚染を防止することができると共に、排気時間を短縮することで、タクトタイムの短縮が可能である。
【0025】
さらに、本発明の一形態では、ドラム型基板ホルダーを水平に設置することにより、基板もしくは基板固定治具の交換時に水平方向に移送が可能になる。
【0026】
このため、水平の搬送ロボットが使用可能で、ロボットの基板等の保持機能が不要なため構造が簡易になる。
【0027】
さらに、基板を縦に保持して搬送する場合に比べ搬送室が小さくなり、装置全体がコンパクトになる。
【0028】
さらに、本発明の他の形態では、基板を固定保持した基板固定治具ごと、基板ホルダーの外周面上への取り付け、取り外しを行うため構成が簡易になる。
【0029】
さらに、複数の基板を固定保持した基板固定治具を、基板ホルダーの外周面上への取り付け、取り外しするため、作業性がよく、基板の交換作業を短時間で行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置を示す一部破断斜視図であり、本実施形態の薄膜形成装置は、多角形のドラム型基板ホルダーの各外周面に保持した基板に繰り返し成膜を行うカルーセル型スパッタ装置である。
【0031】
本薄膜形成装置1は、成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4を備えており、成膜室2と搬送室3はゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3aを介して連結されている。さらに、搬送室3と仕込取出し室4も、ゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3bを介して連結されている。成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4は、それぞれ排気手段(不図示)を有する。
【0032】
成膜室2内には、正多角形(本実施形態では正八角形)筒状のカルーセル型基板ホルダー(以下、ドラム型基板ホルダーという)5がその中心軸が水平状態に配置されており、ドラム型基板ホルダー5は、図1、図2に示すように、水平方向に設けた回転軸6を回転中心にして回転自在に支持され、下面から離れている。回転軸6の他端側には、ドラム型基板ホルダー5を回転駆動するための駆動モータ7が連結されている。
【0033】
また、回転軸6の成膜室2の側面2aと駆動モータ7の間には、真空シール機構8と、バイアス電極9からバイアス電圧をドラム型基板ホルダー5に印加するためのバイアス導入機構(金属製ブラシやコンデンサーカップリングなど)10が取り付けられている。真空シール機構8、バイアス導入機構10、駆動モータ7は、成膜室2の側面2aに接続した収納容器11内に設置されている。
【0034】
成膜室2内のドラム型基板ホルダー5は、図3に示すように、成膜室2の側面2aに接続されている真空シール機構8、バイアス導入機構10、駆動モータ7が設置されている収納容器11と一体に水平方向に取出し可能であり、定期的に行う成膜室2内及びドラム型基板ホルダー5のメンテナンスなどを容易に行うことができる。
【0035】
収納容器11はガイドレール(不図示)により水平に移動できるように構成されると、容易に移動が可能となる。
【0036】
したがって、この収納容器11と一体的に設置されているドラム型基板ホルダー5は、収納容器11を移動させることにより容易に取り出すことができ、保守も容易にできるようになる。
【0037】
なお、収納容器11には開閉扉が設けられており、真空シール機構8、バイアス導入機構10及び駆動モータ7の保守が容易にできるようになっている。
【0038】
ドラム型基板ホルダー5の外周上の各面には、基板12を固定保持した基板固定治具13(図4参照)が、図5に示すように、各面の角部5aにそれぞれ設けた固定装置14によって固定解除自在に固定される(詳細な後述する)。基板固定治具13は、図4に示したように、基板12が固定保持される中間部の基板固定部13aがその両側の縁部13bよりも盛り上がるように折り曲げられている。
【0039】
これにより、ドラム型基板ホルダー5に設置されたときに、ドラム型基板ホルダー5と基板固定治具13間に隙間が生じる。この隙間にアーム24の基板ハンド部24aを挿入することができる。
【0040】
なお、図5では、ドラム型基板ホルダー5の各外周面間の角部5aに設けられる固定装置14が上方に向いているが、固定装置14を解除して基板固定治具13を搬入搬出するときには、図1に示したように、ドラム型基板ホルダー5の各外周面の一面が常に成膜室2の上面側を向くように水平状態とし、角部に設けられる固定装置14は斜め上方を向いている。
【0041】
固定装置14は、ドラム型基板ホルダー5の各面の角部5aにその長手方向に沿って所定間隔で設けた上下動自在な複数の軸15と、基板固定治具13の縁部13bを挟持して固定する一対の上側固定部材16、下側固定部材17と、各軸15を上方に向けて常に付勢するばね18と、上側固定部材16と下側固定部材17による基板固定治具13の縁部13bの固定解除を行う成膜室2の上面側に設けたシリンダー駆動装置19と、各軸15の上端にドラム型基板ホルダー5の長手方向に沿って固着した押え板20を備えている。
【0042】
なお、ばね18は付勢手段であり、ばねに限らず、種々の弾性体であってもよい。
【0043】
上側固定部材16は、その長手方向の両端側がドラム型基板ホルダー5の両端面に固定されており、ドラム型基板ホルダー5の各面の角部5aの上方に所定の隙間を設けてドラム型基板ホルダー5の長手方向に沿って設置されている。上側固定部材16に形成された貫通孔に、軸15が上下方向に移動自在に挿入されている。
【0044】
下側固定部材17は、その貫通する軸15に固着され、上側固定部材16と対向配置されており、下側固定部材17は上側固定部材16に対して軸15と一体に上下動する。
【0045】
さらに、押え板20も各軸15の上端に設置されているため、押え板20も下側固定部材17および軸15も上下する。
【0046】
シリンダー駆動装置19は、所定の基板固定治具13が搬入搬出位置に来たときにその基板固定治具13の両側の固定装置14を解除できるように、押え板20の上方の位置に長手方向に沿って所定間隔で成膜室2の上面に設置されている。
【0047】
シリンダー駆動装置19は伸縮自在な押え軸21を備えており、電気信号によって制御されるシリンダー駆動装置19の駆動によって押え軸21は伸縮可能である。
【0048】
押え軸21が伸びたときにはその先端が押え板20に圧接し、軸15を下方に押し下げることができる。
【0049】
また、ドラム型基板ホルダー5の各面の角部5aの内側には、軸15及び下側固定部材17を押し上げるばね18が設置されている。
【0050】
押え軸21を伸ばして押え板20を押し下げることで下側固定部材17が押し下げられ、上側固定部材16と下側固定部材17の間隔が広がることで固定が解除される。
【0051】
押え軸21を縮めて、ばね18により下側固定部材17が押し上げられることにより、上側固定部材16との間隔が狭まり基板固定治具13の端部を挟むことにより、基板固定治具13が固定される。
【0052】
図5に示した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5の各外周面間の角部5aに固定装置14が設けられているが、ドラム型基板ホルダー5の外周面の両端に設けてもよい。
【0053】
この場合、図4に示したような基板固定治具は縁部のない平坦な基板固定治具でよく、この基板固定治具の両端を固定装置ではさむことになる。
【0054】
また、このような基板固定治具の場合、基板自体を固定装置14で直接固定するようにしてもよい。
【0055】
基板固定治具をドラム型基板ホルダーへ搬入する場合、ドラム型基板ホルダーの外周面に基板固定治具を案内するガイド機構を設けても良い。
【0056】
図6はドラム端基板ホルダーにガイド機構を設けた一部概略断面図である。
【0057】
図6を参照して、ガイド機構70は、ドラム型基板ホルダー5の各外周面に設けられたガイドレール71と、基板固定治具13の裏面に設けられた凸部73とを備え、凸部73がガイドレール71に嵌挿され、滑らかに移動可能となっているものである。
【0058】
図7に示した例では、凸部73は矩形状であり、この形態に対応してガイドレール71に溝が設けられている。
【0059】
ガイド機構は、図7に示したように、基板固定治具に設けられた凸部72が三角形状であり、ガイドレールはその形状に対応したものであってもよい。
【0060】
またガイドレールは、図8に示すように、長尺のガイドレール75だけでなく、図9に示すような短尺のガイド部77を複数個設けても良い。
【0061】
さらに、ガイド機構は下側固定部材17に設けてもよい(図5を参照)。このガイド機構は、基板固定治具13の縁部13bが当接する下側固定部材17の該当箇所に段部を設けるもので、この段部に沿って基板固定治具が滑らかに挿入されるようにしてもよい。
【0062】
このようなガイド機構を設けることにより、ドラム型基板ホルダーに搬送される基板固定治具の位置が確実に決まり、ドラム型基板ホルダーへ水平に挿入する方向から外れた横方向への動きを防止することができる。
【0063】
成膜室2には、ドラム型基板ホルダー5の周面に沿って酸化源22、複数のカソード(ターゲット)23等が配置されている。各カソード23にはスパッタ電源(不図示)がそれぞれ接続されている。なお、本実施形態のカソード23は、2つで一組のカソード(ダブルカソード)である。
【0064】
搬送室3内には、先端に基板ハンド部24aを有する伸縮自在なアーム24が旋回可能に設けられており、ゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3aを通して、ドラム型基板ホルダー5の外周面に対して基板12を保持固定した基板固定治具13の搬入、搬出を行う。
【0065】
なお、アーム24の基板ハンド部24aによる基板12を保持固定した基板固定治具13の搬入搬送面(水平面)は、成膜室2の上面側に位置するドラム型基板ホルダー5の外周面上に略位置している。搬送室3の成膜室2と反対側の側面には、仕込取出し室4がゲートバルブ(不図示)を設けた開口部3bを介して連結されている。
【0066】
仕込取出し室4内には、成膜前及び成膜後の基板12をそれぞれ保持固定した複数の基板固定治具13が鉛直方向に移動可能に収納される。
【0067】
次に、上記した本実施形態の薄膜形成装置1による成膜工程について説明する。
【0068】
先ず搬送室3の開口部3bのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24を旋回させると共に伸ばして、仕込取出し室4内に収納され、成膜前の基板12を固定保持している基板固定治具13の基板固定部13aの下に基板ハンド部24aを挿入した後、この基板固定治具13を少し下降させて、基板ハンド部24a上に基板固定部13aの下面を載置する。
【0069】
そして、アーム24を縮めて搬送室3内に取り込んだ後に、開口部3bのゲートバルブ(不図示)を閉じて他方側の開口部3aのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24を旋回させると共に伸ばして成膜室2の上面側に位置しているドラム型基板ホルダー5の外周面上に搬送する。
【0070】
なお、成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4は、排気されて所定の圧力に調整されている。
【0071】
この際、図5に示すように、ドラム型基板ホルダー5の搬入・搬出位置にある面の両側の角部5aに設けている固定装置14の各軸15は、押え軸21が押え板20を押圧することにより下方に押し下げられ、上側固定部材16と下側固定部材17との間が開いている。
【0072】
この状態で上側固定部材16と下側固定部材17の間に、基板固定治具13の両側の縁部13bを回転軸の軸方向に挿入する。
【0073】
そして、固定装置14は、シリンダー駆動装置19の駆動によって押え軸21を縮めることによって、ばね18のばね力で軸15と一体に下側固定部材17が上方に移動し、上側固定部材16と下側固定部材17の間に、基板固定治具13の両側の縁部13bを挟持し、基板12が固定保持された基板固定治具13をドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持する。
【0074】
その後、アーム24の基板ハンド部24aを搬送室3内に戻す。
【0075】
そして、駆動モータ7を駆動してドラム型基板ホルダー5を所定角度だけ回転させて、隣接する外周面が成膜室2の上面側を向くようにする。
【0076】
そして、前記同様にして仕込取出し室4内に収納されている基板12が固定保持された基板固定治具13をアーム24によって成膜室2内のドラム型基板ホルダー5の外周面に搬送し、その両側の角部に設けている各固定装置14の上側固定部材16と下側固定部材17の間に基板固定治具13の縁部13bをそれぞれ挟持して、基板12が固定保持された基板固定治具13をドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持する。
【0077】
以下同様にして、ドラム型基板ホルダー5の各外周面(本実施形態では8面)上に基板12が固定保持された基板固定治具13を保持する。
【0078】
そして、開口部3aのゲートバルブを閉め、成膜室2内を所定の圧力に調整し、酸化源22からO2ガスを成膜室2内に導入するとともに、各カソード(ターゲット)23近傍に設けた各ガス供給口(不図示)からアルゴンガスを成膜室2内に導入し、各カソード(ターゲット)23に高周波電圧を印加して放電によるプラズマを発生させる。
【0079】
ドラム型基板ホルダー5の周囲に配置される各カソード(ターゲット)23としては、例えばSiカソードやTiカソードなどを用いることができる。
【0080】
この際、駆動モータ7を駆動してドラム型基板ホルダー5を所定回転数で回転させることによって、各基板固定治具13に保持されている基板12に、例えばSiO2膜、TiO2膜などをそれぞれ所定の膜厚で多層成膜する。
【0081】
なお、ドラム型基板ホルダー5には、バイアス電極9からバイアス導入機構10を介して所定のバイアス電圧が印加されている。
【0082】
そして、各基板12への薄膜形成が終了すると開口部3aのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24の基板ハンド部24aを成膜室2内に搬送し、成膜室2の上面側に位置しているドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持されている基板固定治具13の下に挿入する。
【0083】
そして、シリンダー駆動装置19の駆動によって押え軸21を下方に伸ばして押え板20を押圧する。この押圧によって軸15と一体に下側固定部材17を下降させ、基板固定治具13の縁部13bの挟持状態を解除し、基板ハンド部24a上に載置する。
【0084】
そして、成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13を載置した基板ハンド部24aを搬送室3内に戻した後に開口部3aのゲートバルブ(不図示)を閉じて、他方側の開口部3bのゲートバルブ(不図示)を開き、アーム24を旋回させると共に伸ばして成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13を仕入・取出し室4内に収納する。
【0085】
そして、駆動モータ7を駆動してドラム型基板ホルダー5を所定角度だけ回転させて、隣接する外周面を成膜室2の上面側を向くようにし、この外周面上に保持されている成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13に対しても上記同様にして、アーム24によって仕込取出し室4内に収納する。
【0086】
以下同様にして、ドラム型基板ホルダー5の各外周面上の成膜後の基板12が固定保持された基板固定治具13を、アーム24によって仕込取出し室4内に収納する。
【0087】
そして、仕込取出し室4の取出し口(不図示)を開いて、大気圧下で内部に収納されている成膜後の各基板12を基板固定治具13と共に取り出す。
【0088】
このように本実施形態では、正多角形(本実施形態では正八角形)筒状のドラム型基板ホルダー5を水平方向の回転軸6を回転中心にして成膜室2内に水平状態で回転自在に支持したことで、基板12を固定保持した基板固定治具13をアーム24でドラム型基板ホルダー5の外周面上に水平に搬送することができる。
【0089】
したがって、ドラム型基板ホルダー5の外周面の角部5aに設けた固定装置14で基板固定治具13の端部13bを固定することにより、基板12を固定保持した基板固定治具13をドラム型基板ホルダー5の外周面上に保持することができる。
【0090】
さらに成膜後には固定装置14による保持を解除するだけでアーム24の水平移動で成膜室2内から取り出すことができるので、基板12を固定保持した基板固定治具13のドラム型基板ホルダー5の外周面上への取り付け、取り外し構成が簡易になり、かつ基板12を固定保持した基板固定治具13のドラム型基板ホルダー5の外周面上への取り付け、取り外しを作業性よく短時間で行うことができる。
【0091】
また、基板12を固定保持した基板固定治具13のドラム型基板ホルダー5の外周面上への取り付け、取り外しを大気圧下で行うことなく、機械的に真空中で行うことができるので、成膜工程時間の短縮を図ることができる。
【0092】
さらに、基板への汚染を防止することができる。
【0093】
また、上記した実施形態では、基板固定治具13上に口径の大きい基板12を1つ固定保持した構成であったが、基板固定治具13上に複数個の小径の基板を固定保持する構成でもよい。
【0094】
例えば、図10に示すように、各基板固定治具13の表面に所定の角度で3つの面をその長手方向に沿って形成し、各面に小径の基板12を複数個(図10では、1つの基板固定治具13の各面に3つずつ小径の基板12を固定し、1つの基板固定治具13の表面全体で9個)固定するようにしてもよい。
【0095】
なお、この場合のドラム型基板ホルダー5は正六角形筒状に形成されている。
【0096】
また、上記した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5は正八角形筒状(図10では正六角形筒状)であったが、これに限定されることなく、これ以外の多角形筒状や円筒形筒状のドラム型基板ホルダーでも本発明を適用することができる。
【0097】
なお、本実施形態のようにドラム型基板ホルダー5にばね18を設置して、固定装置15を成膜室2の上方から固定解除できる機構はドラム型基板ホルダー5に電気装置を設置していないので、ドラム型基板ホルダー5にバイアスをかける場合に好ましい。
【0098】
さらに、上記した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5を水平に回転させることにより、基板固定治具13を水平方向に搬送することができる。これにより搬送時に基板固定治具13を保持する必要がなくアーム24等の搬送装置の構造が簡易になる。
【0099】
さらに、上記した実施形態では、ドラム型基板ホルダー5の回転軸に平行に基板固定治具13を出し入れすることで、成膜手段等を設置するドラム型基板ホルダー5に対向する外周部の利用範囲を阻害しない。
【0100】
なお、外周部に開口部3aを設置可能であれば、ドラム型基板ホルダー5の上面に平行に、かつ、回転軸の垂直方向に対して基板固定治具13を水平方向に搬送することができる。
【0101】
さらに、開口部3aと反対の収納容器11に開口部を設け、さらにその開口部の外側に別の搬送室およびアームを設置して、基板固定治具13の搬入と搬出を別のアームで行うこともできる。
【0102】
なお、上記の実施形態では、成膜手段としてターゲット23を含むスパッタ成膜手段が説明されたが、スパッタ成膜手段の他に、蒸着成膜手段、CVD成膜手段を設置することもできる。
【0103】
さらに、酸素を含む酸素原子含有ガスを供給して膜を酸化する酸化源5のほかに他の反応ガスを供給して化合物膜とする反応ガス供給手段、プラズマ、ラジカルやイオンを照射して膜の反応性を向上させる反応性向上手段、プラズマやイオン照射して膜の一部をエッチングするエッチング手段を設けることもできる。
【0104】
これらの成膜手段、反応ガス供給手段、反応性向上手段、エッチング手段を複数組合せて設置する装置も本発明に含まれる。
【0105】
また、上記の実施形態では、基板を基板固定治具13に固定して、搬送・固定する場合が説明されたが、アーム24の基板ハンド部24aで取上げ可能な形状もしくは保持可能な形状であれば基板を直接、搬送・固定してもよい。
【0106】
具体的には、基板とドラム型基板ホルダー5の間にアーム24の基板ハンド部24aが挿入できるようにドラム型基板ホルダー5の外表面に凹みを設けてもよい。
【0107】
さらに、別の例では、ドラム型基板ホルダー5の表面に、固定手段で挟持されていないとき(押し下げられていないとき)に基板を押し上げる弾性体を有する押し上げピンを設置しても良い。
【0108】
また、上記の実施形態は、基板上に数〜数百層の多層膜を成膜する場合、フィルムなどを通過させて一層の膜を付ける場合と異なり、基板をドラム型基板ホルダー5に保持して複数回回転させ、成膜後に基板の交換の必要があるので、上記の実施形態のように、自動で、かつ、減圧雰囲気中で基板交換ができることは生産性を向上させるために特に好ましい。
〈実施形態2〉
本実施形態における固定装置は、図11に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された下側固定部材30の上面に、付勢手段を有している回転軸31を回転中心にして開閉自在な上側固定部材32を取り付け、ドラム型基板ホルダーの各外周面の角部内に設けたシリンダー駆動装置33の伸縮自在なシリンダー34の先端を上側固定部材32に揺動自在に連結して構成されている。
【0109】
なお、図では右側の上側固定部材32のみを示しているが、下側固定部材30の上面の左側にも同様にシリンダーに連結された開閉自在な上側固定部材が取り付けられている。他の構成は実施形態1と同様である。
【0110】
本実施形態では、シリンダー34を伸ばすことによって開いている上側固定部材32と下側固定部材30の間に、実施形態1と同様に基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13の縁部13bをアーム(不図示)によって搬入する。
【0111】
そして、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を縮めることによって上側固定部材32を閉じるように移動させ、上側固定部材32と下側固定部材30で基板固定治具13の縁部13bを挟持して、ドラム型基板ホルダーの外周面上に基板を固定保持した基板固定治具13を固定保持する。
【0112】
そして、基板を固定保持した基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、シリンダー駆動装置30を駆動してシリンダー34を伸ばすことによって、上側固定部材32を開くように移動させる。
【0113】
本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0114】
本実施形態での固定装置では、外周部からの固定・解除手段がないので、外周の真空容器側に固定・解除手段を設置できないときに有効である。
〈実施形態3〉
本実施形態における固定装置は、図12に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された下側固定部材35の上方に上側固定部材36を設置し、ドラム型基板ホルダーの各外周面の角部内に設けたシリンダー駆動装置33に設けた伸縮自在なシリンダー34の先端を上側固定部材36に連結して構成されている。
【0115】
シリンダー34は、下側固定部材35に形成した開口穴を通して上側固定部材36に連結されている。他の構成は実施形態1と同様である。
【0116】
本実施形態では、シリンダー34を伸ばすことによって開いている上側固定部材36と下側固定部材35の間に、実施形態1と同様に基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13の縁部13bをアーム(不図示)によって搬入した後、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を縮めることによって上側固定部材36を下方に移動させ、上側固定部材36と下側固定部材35で基板固定治具13の縁部13bを挟持して、ドラム型基板ホルダーの外周面上に基板を固定保持した基板固定治具13を固定保持する。
【0117】
そして、基板を固定保持した基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を伸ばすことによって上側固定部材36を上方に移動させる。本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態4〉
本実施形態における固定装置は、図13に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された上側固定部材36の下面に下側固定部材37を取り付け、成膜室2の上面側に伸縮自在なシリンダー34を有するシリンダー駆動装置33を設けている。
【0118】
下側固定部材37は、上側固定部材36とドラム型基板ホルダー(不図示)間に固着された第1支持部材37aに回転軸38を介して回転自在に接続された第2支持部材37bと、第2支持部材37bに長穴39に挿通されたピン40を介して揺動自在に接続されている第3支持部材37cとで構成されており、第3支持部材37cには、シリンダー駆動装置33のシリンダー34の下方に位置するようにして、先端に押え板41を固着した軸42が取り付けられている。
【0119】
軸42は、上側固定部材36に形成した開口穴に移動自在に挿通されている。
【0120】
なお、第3支持部材37cには、常に上方に付勢している付勢手段(不図示)が接続されている。
【0121】
具体的には、板バネに例示される弾性体で第3支持部材37cが上側固定部材36に押し当てられる。他の構成は実施形態1と同様である。
【0122】
本実施形態では、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を伸ばして押え板41を押圧することにより、軸42が下げられることによって二点鎖線で示すように、第3支持部材37cを下方に移動させて、開いている上側固定部材36と下側固定部材37の第3支持部材37aの間に、実施形態1と同様に基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13の縁部13bをアーム(不図示)によって搬入する。
【0123】
そして、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を縮め、付勢手段(不図示)による付勢力で第3支持部材37cを上方に移動させ、上側固定部材36と下側固定部材37の第3支持部材37cで基板固定治具13の縁部13bを挟持して、ドラム型基板ホルダー5の外周面上に基板を固定保持した基板固定治具13を固定保持する。
【0124】
そして、基板を固定保持した基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、シリンダー駆動装置33を駆動してシリンダー34を伸ばし、押え板41を押圧して軸42を下げて二点鎖線で示すように、第3支持部材37cを下方に移動させる。本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態5〉
本実施形態における固定装置は、図14に示すように、ドラム型基板ホルダー(不図示)の各外周面の角部の上方に固定された下側固定部材61内に電磁石62を埋め込み、下側固定部材61上に載置される基板固定治具13の縁部13bの下面に磁性板63を固着して構成されている。電磁石62は、外部からの電気信号のON/OFFによって、発生される磁力の有効/無効が切り換えられる。
【0125】
本実施形態では、アーム(不図示)によってドラム型基板ホルダー(不図示)の外周面上に、基板(不図示)を固定保持した基板固定治具13を搬入して、基板固定治具13の縁部13bを下側固定部材61上に載置した後に、アーム(不図示)を引き抜く。
【0126】
そして、電磁石62に通電して磁力を有効にし、この磁力によって基板固定治具13の縁部13bを下側固定部材61上に固定して、ドラム型基板ホルダー(不図示)の外周面上に基板固定治具13を固定保持する。
【0127】
そして、基板固定治具13の固定保持を解除する場合には、アーム(不図示)を基板固定治具13の下面に入れた後に、電磁石62への通電をOFFにして磁力を無効にして、磁力による基板固定治具13の縁部13bの固定を解除することによって行い、基板固定治具13の下面に入れたアーム(不図示)を引き出して基板固定治具13を搬出する。
【0128】
本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態6〉
本実施形態は、本発明に係る薄膜形成装置をマルチチャンバ(多室)型枚葉式スパッタ成膜装置に適用した場合であり、図15に示すように、中央部に設けた搬送室3の周囲に仕込取出し室4、予備加熱室43、成膜室2、基板冷却室44がそれぞれゲートバルブ45a、45b、45c、45dを介して設置されている。予備加熱室43は、成膜前の基板の予備加熱を行い、基板冷却室44は、スパッタ成膜後の基板を冷却する。搬送室3、仕込取出し室4、成膜室2の構成は、図1〜図5に示した実施形態1と同様であり、本実施形態ではそれらの説明は省略する。なお、成膜室2を複数設置することもできる。
【0129】
本実施形態のようなマルチチャンバ型枚葉式スパッタ成膜装置においても、本発明を適用することにより実施形態1と同様の効果を得ることができる。
〈実施形態7〉
図16は、本実施形態に係る薄膜形成装置を示す概略断面図であり、搬送室3の両側にそれぞれゲートバルブ46a、46bを介して仕込取出し室4と成膜室2が連結されている。
【0130】
成膜室2内には、正多角形筒状のドラム型基板ホルダー47がその長手方向が鉛直状態に配置されており、ドラム型基板ホルダー47は、鉛直方向の回転軸48を回転中心にして回転自在に支持されている。回転軸48の他端側には、ドラム型基板ホルダー47を回転駆動するための駆動モータ49が連結されている。ドラム型基板ホルダー47の各外周面には、基板(不図示)を固定保持した基板固定治具50を固定保持する固定部材51が設けられている。成膜室2には、ドラム型基板ホルダー47の周面に沿って不図示の酸化源、カソード等が配置されている。
【0131】
仕込取出し室4には、基板を固定保持した複数の基板固定治具50が保持装置52に取り外し自在に保持されている。搬送室3には、基板を固定保持した基板固定治具50を着脱自在に保持する保持部材53を先端に固着した2つのシリンダー54a、54bが回転軸55に取り付けられている。回転軸55は、鉛直方向に回転自在に支持されており、回転軸55の他端側には駆動モータ56が連結されている。シリンダー54a、54bは水平状態で一直線上に配置されている。
【0132】
本実施形態に係る薄膜形成装置は、成膜室2と搬送室3と仕込取出し室4は、排気されて所定の圧力に調整された状態でゲートバルブ46aを開き、シリンダー54aを水平に伸ばして仕込取出し室4の基板を固定保持した基板固定治具50を保持部材53で保持した後、シリンダー54aを縮めて搬送室3に戻す。
【0133】
そして、駆動モータ56を駆動して回転軸55を180度回転させて、シリンダー54aを成膜室2側に位置させる。そして、ゲートバルブ46bを開いてシリンダー54aを水平方向に伸ばして、基板を固定保持した基板固定治具50を成膜室2に搬入し、基板を固定保持した基板固定治具50をドラム型基板ホルダー47の外周面に設けた固定部材51に固定する。以下同様にしてドラム型基板ホルダー47の各外周面に設けた固定部材51に、基板を固定保持した基板固定治具50を固定する。
【0134】
そして、ゲートバルブ46bを閉じた後に駆動モータ49を駆動してドラム型基板ホルダー47を回転させ、実施形態1で述べたようにして各基板上に多層成膜を行う。
【0135】
成膜が終了した後、ゲートバルブ46bを開けてシリンダー54aを伸ばして成膜室2に搬入し、成膜後の基板を固定保持した基板固定治具50を保持部材53に保持させる。
【0136】
そして、シリンダー54aを縮めて搬送室3に戻した後、回転軸55を180度回転させて、シリンダー54aを仕込取出し室4側に位置させる。そして、ゲートバルブ46aを開いてシリンダー54aを水平方向に伸ばして、成膜後の基板(不図示)を固定保持した基板固定治具50を仕込取出し室4に搬入し、成膜後の基板を固定保持した基板固定治具50を保持装置52に固定して収納する。
【0137】
そして、仕込取出し室4の取出し口(不図示)を開いて、大気圧下で内部に収納されている成膜後の各基板を基板固定治具50と共に取り出す。
【0138】
なお、保持部材53、固定部材51による基板固定治具50の保持・固定は機械的に挟持する手段、基板固定治具50を強磁性体で構成し電磁石の入り切りにより保持・解除する手段が例示される。
【0139】
なお、基板固定治具50は、保持装置53により搬送方向に平行に、かつ、ドラム型基板ホルダー47の接線方向に挿入することもできる。これにより、ゲートバルブ46bの開口を小さくする事ができる。
【0140】
さらに、基板固定治具50をドラム型基板ホルダー47の外面に沿って挿入することで、基板固定治具50の上下で挟んでドラム型基板ホルダー47に固定することも可能である。
【0141】
このように本実施形態に係る薄膜形成装置おいても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0142】
すなわち、基板12を固定保持した基板固定治具50を、ドラム型基板ホルダー47の外周面上への取り付け、取り外しを大気圧下で行うことなく、機械的に真空中で行うことができるので、成膜工程時間の短縮を図ることができる。
【0143】
さらに、基板への汚染を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように、本発明に係る薄膜形成装置は、基板の取付及び取り外しを真空環境下で行える装置として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置を示す一部破断斜視図。
【図2】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置の成膜室を示す概略構成図。
【図3】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置のドラム型基板ホルダーを引き出した状態を示す一部破断斜視図。
【図4】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置の基板固定治具を示す正面図。
【図5】本発明の実施形態1に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略斜視図。
【図6】ガイド機構を示す一部概略断面図である。
【図7】他のガイド機構の形態を示す概略図である。
【図8】長尺のガイドレールを示す概略図である。
【図9】短尺のガイド部を示す概略図である。
【図10】本発明の実施形態1の変形例における、ドラム型基板ホルダーの各面に複数の基板を固定保持した基板固定治具を示す概略斜視図。
【図11】本発明の実施形態2に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図12】本発明の実施形態3に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図13】本発明の実施形態4に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図14】本発明の実施形態5に係る薄膜形成装置の固定装置を示す概略断面。
【図15】本発明の実施形態6に係る薄膜形成装置を示す概略平面図。
【図16】本発明の実施形態7に係る薄膜形成装置を示す概略断面。
【符号の説明】
【0146】
1 薄膜形成装置
2 成膜室(真空容器)
3 搬送室
4 仕込取出し室
5 ドラム型基板ホルダー(基板ホルダー)
6 回転軸
12 基板
13 基板固定治具
14 固定装置(固定手段)
16、32、36 上側固定部材
17、30、35、37、61 下側固定部材
19、33 シリンダー駆動装置
21 押え軸
24 アーム(搬入・搬出手段)
70 ガイド機構
71、75 ガイドレール
72、73 凸部
77 ガイド部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な容器内で、回転軸に対し回転自在な基板ホルダーの外周面上に、複数の基板を保持し、前記基板ホルダーを回転させながら、成膜手段により前記各基板上に薄膜を成膜する薄膜形成装置であって、
前記基板ホルダーの外周面に脱着可能に固定される、単数の基板及び複数の基板のいずれかを固定保持する基板固定治具及び基板自体のいずれかを、前記真空排気可能な容器内の前記基板ホルダーに対して搬入及び搬出の両方を行う搬入・搬出手段と、
前記基板ホルダーの外周面に、前記搬入・搬出手段で搬入される前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを固定解除自在に固定する固定手段とを備える薄膜形成装置。
【請求項2】
前記基板ホルダーが、水平な回転軸を回転中心にして設置され、
前記搬入・搬出手段が、水平方向に前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記搬入・搬出手段は、前記回転軸の軸方向に前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記搬入・搬出手段は、前記基板ホルダーの外周面に平行に前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記搬入・搬出手段による搬入・搬出動作及び前記固定手段による固定動作のいずれもが、減圧環境下で行われることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記固定手段の固定解除が、電気信号による制御によって行われることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記固定手段が、前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを付勢手段により押さえて保持する機構と、前記真空排気可能な容器の外側に設けられた駆動装置及び前記基板ホルダー内部に設けられた駆動装置のいずれかにより前記付勢手段を縮めて前記基板固定治具及び基板自体のいずれかの保持を解除する機構を有することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
前記固定手段が、前記基板固定治具を磁力により固定することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記搬入・搬出手段が、前記真空排気可能な容器とバルブを介して設置された搬送室に設置されており、前記搬送室が真空排気可能であることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項10】
前記搬送室にバルブを介して接続される仕込取出し室を有し、前記仕込取出し室が真空排気可能であることを特徴とする請求項9記載の薄膜形成装置。
【請求項11】
前記成膜手段が、スパッタ手段、蒸着手段及びCVD手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせた構成を有していることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項12】
前記成膜手段で形成された薄膜に、反応ガスを接触させる反応ガス供給手段、プラズマを照射するプラズマ照射手段、イオンを照射するイオン照射手段及び薄膜の一部をエッチングするエッチング手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせを適用可能にしたことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項1】
真空排気可能な容器内で、回転軸に対し回転自在な基板ホルダーの外周面上に、複数の基板を保持し、前記基板ホルダーを回転させながら、成膜手段により前記各基板上に薄膜を成膜する薄膜形成装置であって、
前記基板ホルダーの外周面に脱着可能に固定される、単数の基板及び複数の基板のいずれかを固定保持する基板固定治具及び基板自体のいずれかを、前記真空排気可能な容器内の前記基板ホルダーに対して搬入及び搬出の両方を行う搬入・搬出手段と、
前記基板ホルダーの外周面に、前記搬入・搬出手段で搬入される前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを固定解除自在に固定する固定手段とを備える薄膜形成装置。
【請求項2】
前記基板ホルダーが、水平な回転軸を回転中心にして設置され、
前記搬入・搬出手段が、水平方向に前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記搬入・搬出手段は、前記回転軸の軸方向に前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記搬入・搬出手段は、前記基板ホルダーの外周面に平行に前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを搬送することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記搬入・搬出手段による搬入・搬出動作及び前記固定手段による固定動作のいずれもが、減圧環境下で行われることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記固定手段の固定解除が、電気信号による制御によって行われることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記固定手段が、前記基板固定治具及び基板自体のいずれかを付勢手段により押さえて保持する機構と、前記真空排気可能な容器の外側に設けられた駆動装置及び前記基板ホルダー内部に設けられた駆動装置のいずれかにより前記付勢手段を縮めて前記基板固定治具及び基板自体のいずれかの保持を解除する機構を有することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
前記固定手段が、前記基板固定治具を磁力により固定することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記搬入・搬出手段が、前記真空排気可能な容器とバルブを介して設置された搬送室に設置されており、前記搬送室が真空排気可能であることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項10】
前記搬送室にバルブを介して接続される仕込取出し室を有し、前記仕込取出し室が真空排気可能であることを特徴とする請求項9記載の薄膜形成装置。
【請求項11】
前記成膜手段が、スパッタ手段、蒸着手段及びCVD手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせた構成を有していることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項12】
前記成膜手段で形成された薄膜に、反応ガスを接触させる反応ガス供給手段、プラズマを照射するプラズマ照射手段、イオンを照射するイオン照射手段及び薄膜の一部をエッチングするエッチング手段のいずれか、或いはこれらの組み合わせを適用可能にしたことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【国際公開番号】WO2005/075701
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517827(P2005−517827)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002050
【国際出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/002050
【国際出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]