説明

表面処理装置

【課題】被処理物の表面処理量を微小にする
【解決手段】拡散室画成部30の拡散室33を漏出口35を介して処理空間10aに連ねる。好ましくは、隔壁15で拡散室33を処理空間10aから隔て、かつ隔壁15に漏出口35を設ける。処理ガスの導入路29の導入口25を拡散室33内に開口させる。好ましくは、漏出口35を、ガス導入方向25に沿ってまっすぐ下流側の位置Pからずらし、より好ましくは、隔壁15と交差する内壁17の一箇所が上記位置Pになるようにする。す。排気路49の排気口41を拡散室33内に開口させる。好ましくは、排気口41を拡散室33における漏出口35の側とは反対側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理ガスを被処理物に接触させ、被処理物の表面を処理する装置に関し、特に、処理度を極力小さくするのに適した表面処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造において、被処理物に処理ガスを接触させて、エッチング、洗浄、表面改質、成膜等の表面処理を行なう技術は公知である(例えば特許文献1等参照)。被処理物の表面を軽くエッチングして粗面化する処理も知られている(例えば特許文献2等参照)。特許文献2では、エッチングガスをプラズマにより活性化させて被処理物に接触させ、かつ処理時間を制御することで粗面化を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−151494号公報
【特許文献2】特開2008−108590号公報([0029])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の各種表面処理においては、処理の度合いを極力小さくしたい場合がある。例えば粗面化処理において、極めて微小な面粗度を得たい場合がある。しかし、処理時間の制御だけで、そのような微小な処理量を得るのは難しい。処理ガスの供給流量を小さくすることも考えられるが、流量が微小の所定値になるよう調節するのは容易でなく、僅かな調節誤差で所望の微小処理量から大きく外れてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、処理空間の被処理物に処理ガスを接触させ、被処理物の表面を処理する表面処理装置において、
前記処理空間に漏出口を介して連なる拡散室を画成する拡散室画成部と、
前記拡散室内に開口する導入口を有して、処理ガスを前記導入口から前記拡散室の内部に導入する導入路と、
前記拡散室内に開口する排気口を有して、前記拡散室内のガスを前記排気口から排出する排気路と、
を備えたことを特徴とする。
処理ガスは、導入路を経て、導入口から拡散室に導入され、拡散室内に拡散する。この処理ガスの多くが、排気口から排気路へ排出される。処理ガスのごく一部が、漏出口から漏れ出て、処理空間に入る。これにより、被処理物に微量の処理ガスを接触させ、被処理物を微小量だけ表面処理することができる。処理ガスの漏出流量に対して導入流量及び排出流量を十分に大きくし、この導入流量及び排出流量を調節することで、漏出流量が微小になるよう容易に調節することができる。ひいては、所望の微小処理量を容易に得ることができる。
【0006】
前記排気口が、前記拡散室における前記漏出口の側とは反対側に設けられていることが好ましい。
これによって、拡散室内の処理ガスが主に漏出口とは反対側に向かって流れるようにでき、漏出口からの漏れ流量を確実に微量にすることができる。
【0007】
前記導入口からの前記処理ガスの導入方向に沿って前記導入口のまっすぐ下流側には、前記拡散室の内壁の一箇所が位置し、前記漏出口が、前記一箇所からずれて配置されていることが好ましい。
これによって、拡散室に導入された処理ガスが、その導入方向に沿ってまっすぐ流れて漏出口から流出するのを回避、又は抑制できる。
【0008】
前記拡散室画成部が、前記拡散室を前記処理空間から隔てる隔壁を含み、この隔壁に前記漏出口が形成されていることをが好ましい。
これにより、拡散室の容積を広くする一方で、漏出口の開口面積を小さくでき、処理ガスの処理空間への漏出流量を抑えることができる。
【0009】
前記導入口からの前記処理ガスの導入方向に沿って前記導入口のまっすぐ下流側には、前記拡散室における前記隔壁と交差する内壁の一箇所が位置していることが好ましい。
これによって、前記拡散室のガスが前記漏出口を介して前記処理空間に漏れ出る漏出方向が、前記導入口からの前記処理ガスの導入方向に対して交差する。よって、前記導入方向に流れる処理ガスがそのまま漏出口から流出するのを確実に回避でき、又は抑制できる。
【0010】
前記被処理物を、前記隔壁に沿って、かつ前記隔壁に近接させて、前記拡散室画成部に対し相対移動させる移動機構を、更に備えたことが好ましい。
被処理物の相対移動により、拡散室内の処理ガスを漏出口から処理空間に引き込むことができる。したがって、導入流量及び排出流量に加えて、被処理物の相対移動速度や、被処理物と隔壁との間の距離をも調節することにより、漏出流量を調節でき、ひいては処理量が所望の微小量になるようにすることができる。
【0011】
前記漏出口を開閉する蓋と、前記被処理物の前記拡散室画成部に対する相対位置に応じて前記蓋を開閉する開閉機構とを、更に備えていてもよい。
これにより、被処理物が処理空間内にあるとき、又は漏出口と対向しているときにだけ漏出口を開いて処理ガスが漏れ出るようにすることができる。蓋が開位置のときの漏出口の開度を調節することで、処理ガスの漏れ流量が確実に微小になるよう調節することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被処理物の表面を微小処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面処理装置の概略構成を示す正面断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う、上記表面処理装置のノズルヘッドの側面断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る表面処理装置の概略構成を示す正面断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る表面処理装置のノズルヘッドの一部を示し、漏出口を開閉する蓋が閉位置の状態での正面断面図である。
【図5】上記第3実施形態に係る表面処理装置の開閉機構を示し、図4のV-V線に沿う側面断面図である。
【図6】上記第3実施形態に係る表面処理装置のノズルヘッドの一部を示し、上記蓋が開位置の状態での正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る表面処理装置1を示したものである。表面処理装置1は、例えばガラス基板からなる被処理物9の表面を僅かに粗面化する。図1に示すように、表面処理装置1は、処理ガス供給源2と、ノズルヘッド3と、排気手段4と、移動機構5を備えている。
【0015】
処理ガス供給源2は、処理ガスをノズルヘッド3に供給する。処理ガスは、活性化等によって反応性を付与又は高められたうえでノズルヘッド3へ送られるようにしてもよい。反応性を付与又は高める手段としては、例えばプラズマ生成装置が挙げられる。プラズマ生成装置は、一対の電極を有している。これら電極間の空間が、電界印加によってプラズマ空間となる。処理ガスをこのプラズマ空間に導入してプラズマ化する。プラズマ化空間は、大気圧近傍であることが好ましい。ここで、大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【0016】
処理ガスの成分は、処理内容に応じて適宜選択される。ガラス基板の粗面化処理の場合、処理ガスとして、例えばフッ素含有化合物を含むフッ素系処理ガスを用いる。フッ素含有化合物として、PFC(パーフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)が挙げられる。PFCとしては、CF、C、C、C等が挙げられる。HFCとしては、CHF、CH、CHF等が挙げられる。フッ素含有化合物として、PFC又はHFCの他、SF、NF、XeF等を用いてもよい。フッ素系処理ガスが、2種以上のフッ素含有化合物を含んでいてもよく、Fを含んでいてもよい。フッ素系処理ガスには水(HO)を添加するのが好ましい。水を添加したフッ素系処理ガスをプラズマ生成装置にてプラズマ化すると、HF、COF等のフッ素系反応成分が生成される。このフッ素系反応成分がガラス基板を構成する酸化シリコンと反応を起こすことで、ガラス基板の表面を粗面化できる。
【0017】
図1及び図2に示すように、ノズルヘッド3は、上側のヘッド本体10と、下側の排気路画成部40とを備えている。ヘッド本体10は、底壁11と、前後の端壁12,12と、右側の外壁13と、左側の外壁14と、上側の隔壁15とを有し、前後方向(図1の紙面と直交する方向、図2の左右方向)に長い直方体の容器状になっている。ヘッド本体10の前後方向の長さは、被処理物9の同方向の寸法より少し大きい。ヘッド本体10の内部には、縦仕切り壁17及び横仕切り壁18が設けられている。図1に示すように、縦仕切り壁17は、ヘッド本体10の左右方向の中間部に垂直に配置されて前後方向に延び、ヘッド本体10の内部を左右2つに仕切っている。図2に示すように、横仕切り壁18は、ヘッド本体10内の長手方向の中間部に垂直に配置され、ヘッド本体10の内部を前後2つに仕切っている。したがって、これら縦横の仕切り壁17,18によってヘッド本体1の内部が4つに仕切られている。横仕切り壁18は、省略してもよい。
【0018】
図1及び図2に示すように、ヘッド本体10の上側隔壁15の上方に離れて、カバー部材19が配置されている。カバー部材19は、左右方向に上側隔壁15とほぼ同じ幅を有し、前後方向に上側隔壁15とほぼ同じ長さだけ延びる水平な板状になっている。前後の端壁12,12がそれぞれ上側隔壁15より少し上に突出してカバー部材19の長手方向の端部を支持している。
【0019】
カバー部材19と上側隔壁15との間に処理空間10aが形成されている。処理空間10aは、左右に短く、前後方向に長く延びる空間である。処理空間10aの左右の両端部は開口されている。処理空間10aの前後の両端部は、端壁12の上側部分によって塞がれている。
【0020】
図1に示すように、被処理物9が、移動機構5によって白抜き矢印線aの方向に移動され、処理空間10aの内部に通される。処理空間10aの右端の開口が被処理物9の搬入口になっている。処理空間10aの左端の開口が被処理物9の搬出口になっている。被処理物9は、上側隔壁15の上面(処理空間画成面)に近接して処理空間10aを横切るように移動される。
【0021】
移動機構5は、例えばコロ51を有するローラコンベアにて構成されている。被処理物9を支持する支持手段を兼ねている。移動機構5は、ローラコンベアに限られず、移動ステージでもよく、ロボットアームでもよい。被処理物9が支持手段によって静止して支持され、ノズルヘッド3が移動手段によって移動されるようになっていてもよい。
【0022】
処理空間10aの厚さ(カバー部材19と上側隔壁15の離間距離)は、被処理物9を挿通可能な範囲内で出来るたけ小さい。具体的には、処理空間10aの厚さは、1cm以下であり、例えば7mm程度である。なお、処理空間10aの厚さは、上記数値に限定されるものではない。
【0023】
ヘッド本体10には、処理ガスの導入路画成部20及び拡散室画成部30が組み込まれている。処理ガスの導入路画成部20は、次のように構成されている。
図1に示すように、ヘッド本体10の右側の外壁13の下側部には、導入ポート21が設けられている。導入ポート21の内部空間が外壁13の内面に開口している。図2に示すように、導入ポート21は、ヘッド本体10の長手方向に離れて2つ(複数)配置されている。処理ガス供給源2からの供給路2aが分岐(詳細図省略)して、各導入ポート21に連なっている。導入ポート21は、2つに限られず、1つでもよく、3つ以上でもよい。3つ以上の導入ポート21が、ヘッド本体10の長手方向に互いに離れて配置されていてもよい。
【0024】
図1に示すように、ヘッド本体10の内部には、右外壁13に近接して案内壁16が設けられている。案内壁16は、垂直をなして外壁13と平行に前後方向へ延びている。案内壁16の前後の端部が、それぞれ端壁12に接合されている。案内壁16の下端部が底壁11に接合されている。案内壁16の上端部は、ヘッド本体10の上側隔壁15より少し下に離れて位置している。案内壁16と右外壁13との間に、案内路23が形成されている。案内路23は、左右方向には薄く、前後方向に長く、かつ上下に延びている。
【0025】
図1に示すように、案内壁16の上端面と上側隔壁15との間に、導入口24が形成されている。案内路23の上端部が導入口24に連なっている。図2に示すように、導入口24は、前後方向に延びている。図1において太線矢印に示すように、導入ポート21に導入されたガスは、案内路23を経て、導入口24から上側隔壁15の下面に沿って左方向(導入方向25)へ流出する。
【0026】
導入ポート21の内部と、案内路23と、導入口24とにより、処理ガスの導入路29が構成されている。
【0027】
次に、拡散室画成部30について説明する。
図1に示すように、拡散室画成部30は、ヘッド本体10の左右中央の縦仕切り壁17と案内壁16との間の部分によって構成されている。図1及び図2に示すように、底壁11の右側部分と、前後の端壁12,12の右側部分と、案内壁16とによって、拡散室33が形成されている。拡散室33は、前後方向に長く、かつ十分に広い容積を有する直方体状の空間になっている。図2に示すように拡散室33は、横仕切り壁18によって、長手方向に2つに分割されている。図1に示すように、拡散室33の右上の隅部に導入口24が開口している。これにより、導入路29が拡散室33に連なっている。拡散室33と導入路29との連通部(導入口24)は、拡散室33の長手方向のほぼ全長にわたって延びている。
【0028】
図1に示すように、上側隔壁15によって拡散室33と処理空間10aが部分的に隔てられている。隔壁15を挟んで拡散室33の外側に処理空間10aが配置されている。更に、隔壁15は、漏出口35を有している。拡散室33が、漏出口35を介して処理空間10aに連ねられている。
【0029】
詳述すると、隔壁15の左右方向の中央部には、開口15eが形成されている。開口15eは、隔壁15の長手方向(図1の紙面と直交する方向)のほぼ全長にわたって延びている。隔壁15は、開口15eを挟んで右側の板部15aと、左側の板部15bとを有している。右側板部15aが、処理空間10aにおける搬送方向aの上流側の部分と拡散室33とを仕切っている。
【0030】
開口15eの左右幅方向の中央部に、縦仕切り壁17の上縁部が臨んでいる。開口15eが縦仕切り壁17の上縁部によって、左右2つに分かれている。開口15eの縦仕切り壁17より右側の部分が、漏出口35を構成している。拡散室33が、漏出口35を介して上方へ開口し、ひいては処理空間10aに連なっている。拡散室33内のガスが漏出口35から上方(漏出方向36)へ漏出することができる。漏出方向36は、ほぼ水平な導入方向25に対してほぼ直角に交差している。
【0031】
図1に示すように、処理ガス導入方向25に沿って導入口24のまっすぐ下流側には、拡散室33の内壁の一箇所Pが位置している。この導入口対向箇所Pは、縦仕切り壁17の右側面すなわち隔壁15と交差する内壁に位置している。漏出口35は、上記導入口対向箇所Pからずれて配置されている。しかも、漏出口35は、導入口対向箇所Pを含む壁17には配置されず、その壁17と交差する壁15に配置されている。
【0032】
図1に示すように、縦仕切り壁17の上縁と左側板部15bとの間(開口15eの縦仕切り壁17より左側の部分)は、ガス取り込み口61を構成している。縦仕切り壁17より左側のヘッド本体10の内部は、ガス取り込み室62になっている。詳細な図示は省略するが、取り込み室62は、横仕切り壁18によって前後2つに分かれている。処理空間10aの縦仕切り壁17より左側の部分が、取り込み口61を介してガス取り込み室62と連なっている。上側隔壁15の左側板部15bが、処理空間10aにおける搬送方向aの下流側の部分と、ガス取り込み室62とを仕切っている。
【0033】
図1及び図2に示すように、ヘッド本体10の下部に排気路画成部40が連結されている。排気路画成部40は、前後方向にヘッド本体10とほぼ同じ長さだけ延びる容器状になっている。底壁11の右側部分すなわち拡散室33の底部には、排気口41が形成されている。排気口41は、前後(図1の紙面と直交する方向、図2の左右方向)に延びるスリット状になっており、かつ底壁11を上面から下面へ貫通している。排気口41の上端部が、拡散室33に連なっている。排気口41の下端部が排気路画成部40の内部に連なっている。排気口41は、拡散室33における漏出口35の側とは反対側に配置されている。導入口24から排気口41までの距離は、導入口24から漏出口35までの距離より大きい。言い換えると、漏出口35のほうが排気口41よりも導入口24に近い。
【0034】
なお、底壁11の左側部分には、連通孔63が形成されている。連通孔63は、排気口41と平行に前後に延びるスリット状になっている。ガス取り込み室62が連通孔63を介して排気路画成部40の内部に連なっている。
【0035】
図1及び図2に示すように、排気路画成部40の内部には、2つ(複数)の水平な仕切板43,44が設けられている。これら仕切板43,44は、上下に互いに離れている。2つの仕切板43,44によって、排気路画成部40の内部が上下に3つ(複数)の排気室45,46,47に仕切られている。上段の仕切板43には、多数の小孔状の連通孔43aが形成されている。連通孔43aは、左右に2列をなして前後方向に互いに間隔をおいて配置されている。上段の排気室45と中段の排気室46とが、連通孔43aを介して互いに連通している。下段の仕切板44には、多数の小孔状の連通孔44aが形成されている。連通孔44aは、前後方向に互いに間隔をおいて1列に配置されている。各連通孔44aの大きさは連通孔43aより大きい。連通孔44aの数は連通孔43aの数より少ない。連通孔44aの配置間隔は連通孔43aの配置間隔より大きい。中段の排気室46と下段の排気室47とが、連通孔44aを介して互いに連通している。
排気路画成部40の排気室45〜47の段数は、3つに限られず、1つ又は2つでもよく、4つ以上でもよい。
【0036】
図1及び図2に示すように、排気路画成部40の底部には2つ(複数)の排気管48が設けられている。これら排気管48は、排気路画成部40の長手方向に互いに離れて配置されている。なお、排気管48の数は、1つでもよく、3つ以上でもよい。下段の排気室47が排気管48の内部に連なっている。排気管48が、互いに合流して排気手段4が接続されている。排気手段4は、排気ポンプにて構成されている。排気手段4にはスクラバ等の排ガス処理設備(図示省略)が付設されている。排気口41、上段排気室45、連通孔43a、中段排気室46、連通孔44a、下段排気室47、排気管48によって、排気路49が構成されている。
【0037】
上記構成の表面処理装置1を用いて、被処理物9を粗面化処理する方法を説明する。
被処理物9をコンベア5に載せ、ノズルヘッド3へ向けて搬送し、処理空間10aの内部に挿通する。
HF等のフッ素系反応成分を含む処理ガスを処理ガス供給源2から供給路2aを経て複数の導入ポート21からそれぞれ案内路23の下部に導入する。図1において、太線矢印にて示すように、処理ガスは、案内路23内を上昇しながら前後方向(図1の紙面と直交する方向)に拡がる。案内路23によって、処理ガスを隔壁15の近傍まで案内できる。案内路23の上端部を過ぎた処理ガスは、外壁13と上側隔壁15とで作る隅角部においてほぼ直角に曲がり、導入口24を通って、上側隔壁15の下面に沿う導入方向25に沿って拡散室33内に流入する。処理ガスは、拡散室33内に広く拡散する。処理ガスの供給流量をある程度の大きさにすることにより、処理ガスを拡散室33内まで確実に到達させることができ、かつ空気等の雰囲気ガスが導入路29内に入り込んで逆流するのを防止できる。
【0038】
処理ガス供給と併行して、排気手段4を駆動する。これにより、拡散室33内のガス、ひいては拡散室33に流入した処理ガスの大部分が、排気口41へ向けて流れる。排気口41に吸引されたガスは、排気口41、上段排気室45、連通孔43a、中段排気室46、連通孔44a、下段排気室47、排気管48を順次経て排出される。広い排気室45,46,47と狭い連通孔43a,連通孔44aを交互に通過することで、排出ガス流を排気路画成部40の長手方向(図1の紙面と直交する方向)に均一化できる。ひいては、拡散室33内でのガス流を拡散室画成部30の長手方向(図1の紙面と直交する方向)に均一化できる。
【0039】
拡散室33内に供給された処理ガスのうち一部が、漏出口35から上方へ拡散して処理空間10aへ漏れ出る。拡散室33内の処理ガスの大部分は、排気手段4の吸引によって漏出口35とは反対側の排気口41へ向けて流れるため、漏出口35から漏出する処理ガス量を微量にすることができる。導入口24からの処理ガス導入方向25に対し漏出口35がずれて配置されており、更にガス漏出方向36が導入方向25に対しほぼ直角に交差しているため、処理ガスが導入口24から導入方向25に沿ってまっすぐ流れてそのまま漏出口35から流出するのを防止できる。したがって、漏出口35からの処理ガスの漏出流量を確実に微量にすることができる。
【0040】
この微量の漏出処理ガスが、処理空間10aの被処理物9の下面に接触する。これにより、処理ガス中のHF等のフッ素系反応成分と被処理物9の表面分子との反応が起き、被処理物9の表面を粗面化できる。被処理物9に接触する処理ガス量が微量であるため、粗面化の度合いを極めて小さくでき、微小の面粗度(処理量)を得ることができる。
【0041】
処理ガスの漏出流量に対して、供給源2及び排気手段4による導入流量及び排出流量を十分に大きくでき、この導入流量及び排出流量を調節することで、漏出流量が微小になるよう容易に調節することができる。ひいては、所望の微小面粗度を容易に得ることができる。また、被処理物9の移動速度によって処理時間を調節でき、ひいては処理度を調節できる。さらには、被処理物9が上側隔壁15に近接して処理空間10aを横切るように移動することにより、拡散室33内の処理ガスの一部を被処理物9の側に引き込むことができる。したがって、上記導入流量及び排出流量に加えて、移動機構5による被処理物9の移動速度や、被処理物9と隔壁15との間の距離をも調節することにより、漏出流量を調節できる。この結果、所望の微小な処理量を得ることができる。
【0042】
縦仕切り壁17の上端部より左側の処理空間10a内のガスは、取り込み口61から取り込み室62に入る。このガスには、粗面化反応後の処理済み処理ガスも含まれている。取り込み室62内のガスは、連通孔63を通過して上段排気室45に入り、排気口41からのガスと混ざる。上段排気室45で混合されたガスが、連通孔43a、中段排気室46、連通孔44a、下段排気室47、排気管48を順次経て排出される。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、上側隔壁15が、左右の板部15b,15aだけでなく、中央の板部15cをも有している。中央板部15cは、幅方向を左右に向け、図3の紙面と直交する前後方向に延びている。縦仕切り壁17の上縁が、中央板部15cの下面に突き当てられている。上側隔壁15の右側の板部15aと中央板部15cとの間に漏出口35が形成されている。上側隔壁15の左側の板部15bと中央板部15cとの間にガス取り込み口61が形成されている。
【0044】
第2実施形態では、漏出口35の巾を第1実施形態より狭くでき、漏出口35から漏出する処理ガスの量を第1実施形態より少なくできる。したがって、粗面化処理の度合いを一層小さくできる。
【0045】
図4〜図6は、本発明の第3実施形態を示したものである。図4に示すように、第3実施形態のノズルヘッド3には、漏出口35を開閉する蓋70と、開閉機構80が設けられている。蓋70は、上側隔壁15の右側の板部15aに一体に連なっている。板部15aの下面には、切り込み71が形成されている。切り込み71は、断面三角形状をなして上側隔壁15の長手方向(図4の紙面と直交する方向)に真っ直ぐ延びている。板部15aにおける切り込み71より左側の部分が、蓋70として提供されている。
【0046】
上側隔壁15における切り込み71の上端部の周辺の薄肉部分が、蓋70の回動支点72になっている。蓋70が、支点72を中心にして閉位置(図4)と開位置(図6)との間で回転するようになっている。
【0047】
図4に示すように、閉位置の蓋70は、水平になり、漏出口35を塞いでいる。蓋70の先端縁(支点72側とは反対側の縁)は、下向きの斜面になっている。中央板部15cの右縁は、上向きの斜面になっている。閉位置の蓋70の先端縁が中央板部15cの右縁に当接し、蓋70が中央板部15cにて支持されている。
【0048】
図4に示すように、開位置の蓋70は、先端が中央板部15cより上に離れるように水平な上側隔壁15に対して斜め上に傾斜している。これにより、漏出口35が開口されている。
【0049】
図4及び図5に示すように、開閉機構80は、作動部材81と、位置検出器82と、制御部83と、駆動部84を備えている。
【0050】
縦仕切り壁17の拡散室33側の面には、板状のベース86が固定されている。ベース86の表側(拡散室33側)の面に作動部材81が取り付けられている。図5に示すように、作動部材81は、ほぼ水平に延びる杆部81cと、この杆部81cの一端(図5において左)に設けられた作用部81aと、杆部81cの他端(図5において右)に設けられた連結部81bとを一体に有する板状になっている。作用部81aは、杆部81cの一端部から上方へ直角に突出している。連結部81bは、杆部81cの他端部から下方へ直角に突出している。
【0051】
図4及び図5に示すように、杆部81cの中央部が、回転軸87を介してベース86に連結されている。図5に示すように、杆部81cは、回転軸87を中心として、水平な位置(図5の実線)と、作用部81a側の端部が上向きになるよう傾斜した位置(図5の二点鎖線)との間で回転可能になっている。図4及び図5の実線に示すように、杆部81cが水平位置のとき、閉位置の蓋70の下面に作用部81aの上端部が突き当たっている。図6及び図5の二点鎖線に示すように、杆部81cが傾斜位置のとき、作用部81aが蓋70を押し上げて開位置にし、漏出口35が開口される。
【0052】
位置検出器82は、被処理物9の位置を検出する。図4に示すように、位置検出器82は、レーザ等の検査光82bを発し、非接触で物体の位置を検出する非接触センサであることが好ましい。位置検出器82による被処理物9の位置検出は、処理空間10aへの入り口で行ってもよく、処理空間10aより被処理物9の移動方向の上流側に離れた場所で行ってもよい。漏出口35の真上又は近傍で被処理物9の位置検出を行ってもよい。
【0053】
制御部83は、マイクロコンピュータ等にて構成されている。位置検出器82の検出信号線82sが制御部83に接続されている。制御部83からの制御信号線83sが駆動部84に接続されている。駆動部84は、作動部材81を回転させる駆動力を出力する。駆動部84として、モータ、電磁アクチュエータ、流体圧アクチュエータ等を用いることができる。この実施形態では、駆動部84の出力部が、連繋手段85を介して連結部81bに連結されている。連繋手段85は、例えば連結ロッド又は連結ワイヤにて構成されている。ベース86には、連繋手段85における連結部81bの近傍部分を案内する連繋ガイド88が設けられている。
【0054】
駆動部84が、連繋手段85を介して連結部81bを押し引きする。これにより、作動部材81が水平位置と傾斜位置との間で回転される。
連繋手段85は、連結ロッドや連結ワイヤに限られず、チェーン、ベルト、ギア列等にて構成されていてもよい。駆動部84の出力部を回転軸87又は杆部81cに直接的に接続してもよい。
【0055】
第3実施形態では、制御部83が位置検出器82の検出信号に基づいて駆動部84を動作させ、作動部材81の姿勢を制御する。これにより、被処理物9のノズルヘッド3に対する相対位置に応じて、蓋70を開閉操作する。以下、詳述する。
【0056】
今、被処理物9の全体がノズルヘッド3の外部に位置しているものとする。このとき、作動部材81が水平位置にあり、蓋70が閉位置にあり、漏出口35が閉塞されている。移動機構5にて被処理物9をノズルヘッド3の処理空間10aに向けてa方向へ搬送しながら、位置検出器82にて被処理物9の位置を検出する。検出信号を制御部83に入力する。制御部83は、入力信号に基づいて被処理物9の移動方向の先端部(図4において左端部)が処理空間10aに達したか否かを判断する。位置検出器82が処理空間10aより被処理物9の移動方向の上流側に離れた場所で位置検出する場合、被処理物9の移動速度等を加味することで、上記判断を行うことができる。
【0057】
被処理物9の移動方向の先端部が処理空間10a内に入ったとき、制御部83の指令によって、駆動部84が連繋手段85を介して連結部81bを図5において左方向へ引く。これによって、作動部材81が図5において時計まわりに回転し、傾斜位置になる。このとき、図6に示すように、作用部81aが蓋70を開位置まで押し上げる。これによって、漏出口35が開く。したがって、拡散室33内の処理ガスが漏出口35から処理空間10aへ漏れ出ることができる。この結果、被処理物9を粗面化処理することができる。処理ガスは、蓋70の傾斜した下面に沿って被処理物9の移動方向の下流側へ向けて流れ出る。被処理物9の移動によって、処理ガスが漏れ出るのを促すことができる。蓋70の開位置における傾斜角度を調節することによって、漏出口35の開口度を調節でき、ひいては処理ガスの漏れ量を調節できる。
【0058】
被処理物9の全体が処理空間を通り過ぎたとき、制御部83の指令によって、駆動部84が連繋手段85を介して連結部81bを図5において右方向へ押す。これによって、作動部材81が図5において反時計まわりに回転し、水平位置になる。これに伴って、蓋70が自重又は支点72の周辺部の弾性復元力によって閉位置まで戻る。これによって、漏出口35が塞がれ、処理ガスの漏出が停止される。図示は省略するが、作動部材81を傾斜位置から水平位置にさせたとき、蓋70が開位置から閉位置になるよう、蓋70に対して下向き、又は図4において反時計まわりの回転力を付与するバネ等の力付与手段を設けてもよい。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、上側隔壁15を省略してもよい。拡散室33の処理空間10aに臨む側のほぼ全面が開放されて漏出口を構成していてもよい。
案内壁16及び案内路23を省略し、処理ガスが導入ポート21から拡散室33内に直接導入されるようにしてもよい。この場合、導入ポート21が、導入路29の末端の導入口を構成し、かつヘッド本体10内の縦仕切り壁17と右外壁13との間の空間全体が拡散室33になる。
導入口24が、拡散室における漏出口と同じ側(隔壁15)に設けられていてもよい。
導入口24が、拡散室における漏出口の側とは反対側(底板11)に設けられていてもよい。この場合の導入口の位置は、平面視で、すなわち該導入口からの処理ガス導入方向に沿って矢視して、漏出口からずらして配置することが好ましい。
排気口41が、拡散室における漏出口の側と交差する側部の内壁に設けられていてもよい。
排気口41が、拡散室における漏出口と同じ側に設けられていてもよい。
排気経路61,62,63を、ヘッド本体10とは分離して別途に設けてもよい。更には、排気経路61,62,63を、ノズルヘッド3から分離して別途に設けてもよい。或いは、排気経路61,62,63を省略してもよい。
カバー部材19を省略してもよい。
実施形態では、処理空間10aがヘッド本体10の上側に設けられていたが、これに限定されるものではなく、処理空間が拡散室画成部の下側又は左右や前後の側部に設けられていてもよい。
第3実施形態(図4〜図6)において、蓋70が、上側隔壁15の右側板部15aとは別の部材にて構成されていてもよい。蓋70は、回転式に限られず、スライド式であってもよい。
本発明は、粗面化に限られず、洗浄、表面改質(撥水化、親水化等)成膜等の種々の表面処理に適用できる。
本発明は、プラズマ表面処理に限られず、フッ酸ベーパ、熱CVD等のプラズマを用いない表面処理にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、液晶表示装置や半導体装置の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 表面処理装置
2 処理ガス供給源
2a 供給路
3 ノズルヘッド
4 排気手段
5 移動機構
9 被処理物
10 ヘッド本体
10a 処理空間
11 底壁
12 端壁
13 右外壁
14 左外壁
15 隔壁
15a 右側板部
15b 左側板部
15c 中央側板部
15e 開口
16 案内壁
17 縦仕切り壁
18 横仕切り壁
19 カバー部材
20 処理ガス導入路画成部
21 導入ポート
23 案内路
24 導入口
25 導入方向
29 導入路
30 拡散室画成部
33 拡散室
35 漏出口
36 漏出方向
40 排気路画成部
41 排気口(排気路)
43 仕切板
43a 連通孔(排気路)
44 仕切板
44a 連通孔(排気路)
45 上段排気室(排気路)
46 中段排気室(排気路)
47 下段排気室(排気路)
48 排気管
49 排気路
51 コロ
61 取り込み口
62 ガス取り込み室
63 連通孔
70 蓋
71 切り込み
72 支点
80 開閉機構
81 作動部材
81a 作用部
81b 連結部
81c 杆部
82 位置検出器
82b 検査光
82s 検出信号線
83 制御部
83s 制御信号線
84 駆動部
85 連繋手段
86 ベース
87 回転軸
88 連繋ガイド
a 被処理物の移動方向
P 導入口対向箇所(拡散室の内壁の一箇所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間の被処理物に処理ガスを接触させ、被処理物の表面を処理する表面処理装置において、
前記処理空間に漏出口を介して連なる拡散室を画成する拡散室画成部と、
前記拡散室内に開口する導入口を有して、処理ガスを前記導入口から前記拡散室の内部に導入する導入路と、
前記拡散室内に開口する排気口を有して、前記拡散室内のガスを前記排気口から排出する排気路と、
を備えたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記排気口が、前記拡散室における前記漏出口の側とは反対側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記導入口からの前記処理ガスの導入方向に沿って前記導入口のまっすぐ下流側には、前記拡散室の内壁の一箇所が位置し、前記漏出口が、前記一箇所からずれて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記拡散室画成部が、前記拡散室を前記処理空間から隔てる隔壁を含み、この隔壁に前記漏出口が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記導入口からの前記処理ガスの導入方向に沿って前記導入口のまっすぐ下流側には、前記拡散室における前記隔壁と交差する内壁の一箇所が位置していることを特徴とする請求項4に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記被処理物を、前記隔壁に沿って、かつ前記隔壁に近接させて、前記拡散室画成部に対し相対移動させる移動機構を、更に備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記漏出口を開閉する蓋と、前記被処理物の前記拡散室画成部に対する相対位置に応じて前記蓋を開閉する開閉機構とを、更に備えたことを特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−71222(P2011−71222A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219503(P2009−219503)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】