説明

表面形状の評価方法および評価装置

【課題】第1表面に対向する第2表面による反射像の影響を受けずに被評価物体の表面形状を精度よく評価することができるようにする。
【解決手段】評価装置は、評価対象である板ガラスなどの被評価物体3の表面3aに映し出されたストライプパターン1を、CCDカメラ2によって撮像するように構成されている。ストライプパターン1は、光源の発光面に設けられている。また、被評価物体3の裏面3bには、屈折率が被評価物体3の屈折率に近い反射抑制層20が、裏面3bに接するように配置されている。CCDカメラ2によって撮像された画像は、演算装置としてのコンピュータ4に取り込まれ、コンピュータ4によって画像解析が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状の評価方法および評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の表面形状を検査する方法として、周期的な明暗を有するストライプパターン(例えば、短冊状の黒パターン部が一定間隔で配列しているパターン)を被検査物体に照射し、被検査物体の表面を反射して形成される反射像における明暗周期のずれにもとづいて被検査物体の表面形状を評価する方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、そのような方法を板ガラスのような透明板状体に適用すると、透明板状体の表面による反射像だけでなく、透明板状体の裏面による反射像も同時に撮像される。以下、透明板状体等の被検査物体の表面による反射像を表面反射像といい、透明板状体等の被検査物体の裏面による反射像を裏面反射像という。
【0003】
図34は、表面反射像と裏面反射像とが同時に形成される様子を示す説明図である。図34に示すように、ストライプパターン上の点5から発した光は、被評価物体3の表面3aで反射され、光路8を介してレンズ中心30を経てカメラの受光面7上の撮像点10に結像される。また、被評価物体3を透過した光は、被評価物体3の裏面3bで反射され、光路9を介してレンズ中心30を経て受光面7上の撮像点11に結像される。
【0004】
ここで、ストライプパターンの周期または幅によっては、撮像した画像信号に、以下に示す問題が生ずることがある。図35は、カメラが出力する画像信号例を模式的に示す波形図である。図35(A)は、表面反射像の画像信号を示し、図35(B)は、裏面反射像の画像信号を示す。また、低いレベルはストライプパターンにおける暗部にもとづく画像信号のレベルを示し、高いレベルはストライプパターンにおける明部にもとづく画像信号のレベルを示す。ストライプパターンにおける暗部の幅が広いと、画像信号における低いレベルの部分の幅も大きくなって、表面反射像の画像信号における低いレベルと裏面反射像の画像信号における低いレベルとが重畳することがある。すると、カメラから出力される画像信号が図35(C)に示すような信号になってしまい、本来必要とされる表面反射像の画像信号(図35(A)参照)とは異なった信号にもとづいて表面形状の検査が行われることになる。
【0005】
また、図36に示すように、ストライプパターンにおける暗部の幅が十分に狭くても、表面反射像の画像信号における暗部の位置と裏面反射像の画像信号における暗部の位置との差Tがストライプパターンにおける明暗の周期の整数倍に近いときには、図36(C)に示すような画像信号がカメラから出力される。なお、図36(A)は、表面反射像の画像信号を示し、図36(B)は、裏面反射像の画像信号を示す。この場合にも、表面反射像の画像信号とは異なった信号にもとづいて表面形状の検査が行われることになり、正確な表面形状の評価を行えないという問題が生ずる。
【0006】
裏面反射像の影響を低減して表面形状の評価の精度を低下させないようにした表面形状の評価方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。図37は、特許文献2に記載された板ガラスなどの被評価物体の表面の平坦度を評価するための評価装置の概要を示す模式図である。
【0007】
図37に示すように、評価装置は、載置台(図示せず)上に載せられた検査対象である板ガラスなどの被評価物体3の表面3aに映し出されたストライプパターン1を、撮像手段としてのCCDカメラ2によって撮像するように構成されている。ストライプパターン1は、光源(図示せず)の発光面に設けられている。図38は、ストライプパターン1の一例を示す説明図である。図38において、Lは暗部の幅を示し、Lは明部の幅を示す。L+Lが明暗の周期に相当する。透明樹脂フィルムに黒色部分を着色してストライプパターン1を実現する場合には、明部は透明部分に相当し、暗部は黒色部分に相当する。
【0008】
特許文献2に記載された表面形状の評価方法では、第1ステップとして、被評価物体3に適するストライプパターン1を決定するストライプパターン決定工程が実行され、次いで、第2ステップで、第1ステップで決定されたストライプパターン1を用いて、ストライプパターン1の被評価物体3による反射像にもとづいて画像解析によって被評価物体3の表面形状を評価する表面形状検査工程が実行される。なお、第2ステップでは、第1ステップで決定されたストライプパターン1の被評価物体3の表面3aおよび裏面3bによる反射像のうち、被評価物体3の表面3aによる反射像のみが用いられる。
【0009】
図39は、特許文献2に記載されたストライプパターンを決定する処理の一例を示すフローチャートである。その処理において、まず、1枚毎に異なるパターンが印刷された複数のストライプパターンを用意する(ステップS31)。すなわち、ストライプの周期や幅が異なる複数のストライプパターンを準備する。ストライプパターンは、例えば、インクジェット印刷により、透明樹脂フィルムにパターンを印刷することによって形成される。次いで、1つのストライプパターンを光源に貼付する(ステップS32)。そして、被評価物体3によるストライプパターンの反射像をCCDカメラ2により撮像する(ステップS33)。
【0010】
次いで、演算装置(例えば、コンピュータ)4が、CCDカメラ2により撮像された画像の画像信号を入力し、画像解析処理プログラムに従って画像信号を解析する画像解析処理を実行する(ステップS34)。画像解析処理では、CCDカメラ2の出力信号すなわちCCDカメラ2から入力された画像信号が、図40(C)に示すような状態であるか否か判断する。具体的には、2つの暗部に対応するレベルが重畳していない状態であるか否か判断する。画像信号がそのような状態を示していない場合(NGの場合)には、別のストライプパターンを光源に貼付し、ステップS32,S3の処理を再度実行する。
【0011】
演算装置4が、画像信号において2つの暗部に対応するレベルが重畳していない状態であることを確認したら、そのときに光源に貼付されているストライプパターンを、被評価物体3の表面形状の評価において使用するストライプパターン1として決定する(ステップS37)。以上のようにして、被評価物体3の表面形状の評価に適するストライプパターン1として、CCDカメラ2によって得られた画像信号においては分離するように設定された明暗のパターンを有するストライプパターン1が決定される。
【0012】
図40(C)は、第1ステップで決定されたストライプパターン1を用いた場合におけるCCDカメラ2の出力信号例を示す波形図である。なお、図40(A)は、表面反射像の画像信号を示し、図40(B)は、裏面反射像の画像信号を示す。
【0013】
特許文献2に記載された発明では、ストライプパターンの暗部の幅(信号幅W,Wに相当)と明暗の周期(周期T,Tに相当)を最適化することによって、CCDカメラ2が出力する画像信号において、表面反射像における暗部と裏面反射像における暗部とが重なり合わないように調整されている(図40(C)参照)。そのため、演算装置4による画像解析の際に、表面反射像の画像信号のみを容易に抽出でき、精密な表面形状評価を実施することができる。すなわち、安価な装置構成で裏面反射像の影響を除去して、表面形状を精度よく評価することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−148813号(段落0082−0083、図24)
【特許文献2】特開2005−345383号公報(段落0020−0024,図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献2に記載された表面形状の評価方法では、表面反射像にもとづく暗部と裏面反射像にもとづく暗部とを適切に離反させることができるようなストライプパターンを決定するために、一度で決定できない限り、ストライプパターンを光源に貼付する作業を複数回行わなければならず、実際に表面形状検査を実施する前の準備作業に手間がかかる。また、図40(C)に示された例を参照すると、隣接する2つの低レベルの部分のうち、よりレベルが低い方が表面反射像にもとづく暗部に対応するが、裏面反射の光束が多い場合には2つの低レベルのレベル差が小さくなって表面反射像の画像信号のみを抽出することが難しくなり、結果として表面形状の評価の精度が低下する可能性がある。また、被評価物体の板厚が0.5mm以下の薄い場合には、ストライプパターンにおける隣接するストライプが重畳して観察される可能性がある。表面反射像の画像信号とは異なった信号にもとづいて表面形状の検査が行われることになり、正確な表面形状の評価を行えないという問題が生ずる。
【0016】
そこで、本発明は、準備作業に手間をかけることなく、第1表面に対向する第2表面による反射像の影響を受けずに被評価物体の表面形状を精度よく評価することができる表面形状の評価方法および評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による表面形状の評価方法は、周期的な明暗を有するパターンを被評価物体の第1表面に照射し、第1表面を反射したパターンを受光し、第1表面に照射されたパターンにおける明暗の基本周期に対する受光画像における明暗周期のずれを検出するために、第1表面に照射されたパターンにおける明暗の基本周期に対する受光画像における領域の明暗を平均化し、平均化された信号にもとづいて第1表面の表面形状を評価する表面形状の評価方法であって、第1表面に対向する第2表面に、第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層を配置することを特徴とする。
【0018】
本発明による他の態様の表面形状の評価方法は、被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であって移動速度既知の運動する輝点または物点である基準体の各反射像をカメラを介して観測し、第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対する各観測反射像のずれ量を得て、各ずれ量、基準体の位置情報およびカメラのレンズ中心位置情報を用いて第1表面のうねり形状の傾きを求め、第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件として、うねり形状の傾きを積分して第1表面のうねり形状を評価する表面形状の評価方法であって、第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層を配置することを特徴とする。
【0019】
本発明による別の態様の表面形状の評価方法は、被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であって周期的な明暗を有するパターンである基準体の各反射像をカメラを介して観測し、第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対する各観測反射像のずれ量を得て、各ずれ量、基準体の位置情報およびカメラのレンズ中心位置情報を用いて第1表面のうねり形状の傾きを求め、第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件として、第1表面の傾きを積分して第1表面のうねり形状を評価する表面形状の評価方法であって、第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層を配置することを特徴とする。
【0020】
本発明による表面形状の評価装置は、周期的な明暗を有するパターンを被評価物体の第1表面に照射する光源と、第1表面を反射したパターンを受光する受光手段と、光源のパターンにおける明暗の基本周期に対する受光手段による受光画像における明暗周期のずれに基づいて第1表面の表面形状を評価する評価手段とを備え、評価手段は、第1表面に照射されたパターンにおける明暗の基本周期に対応した受光画像における領域の明暗を平均化する平均化手段と、平均化手段が出力する平均化信号を用いて第1表面における表面形状の変形箇所と変形量とを特定するための信号を出力する処理手段とを含む表面形状の評価装置であって、第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層が接していることを特徴とする。
【0021】
本発明による他の態様の表面形状の評価装置は、被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であって移動速度既知の運動する輝点または物点である基準体と、基準体の第1表面による各反射像を得るカメラと、第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対するカメラが得た各反射像のずれ量を算出し、各ずれ量、基準体の位置情報およびカメラのレンズ中心位置情報を用いて第1表面のうねり形状の傾きを求め、第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件としてうねり形状の傾きを積分して第1表面のうねり形状を求める演算手段とを含む表面形状の評価装置であって、第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層が接していることを特徴とする。
【0022】
本発明による別の態様の表面形状の評価装置は、被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であり周期的な明暗を有するパターンである基準体と、基準体の第1表面による各反射像を得るカメラと、第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対するカメラが得た各反射像のずれ量を算出し、各ずれ量、基準体の位置情報およびカメラのレンズ中心位置情報を用いて第1表面のうねり形状の傾きを求め、第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件としてうねり形状の傾きを積分して第1表面のうねり形状を求める演算手段とを含む表面形状の評価装置であって、第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層が接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、被評価物体の第1表面に対向する第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層が配置されているので、第1表面に対向する第2表面による反射像の影響を受けずに被評価物体の表面形状を精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】被評価物体に入射する光と被評価物体の表面および裏面反射する光との関係を示す説明図。
【図2】カメラが出力する画像信号例を模式的に示す波形図。
【図3】被評価物体の表面の平坦度を評価するための評価装置を検査対象とともに示す模式図および斜視図。
【図4】表面形状の評価方法を説明するための説明図。
【図5】ストライプパターンの一例を示す説明図。
【図6】演算装置によって実現される機能ブロックの例を示すブロック図。
【図7】ストライプパターンに対応する撮像面の様子を示す説明図。
【図8】本発明による表面形状の評価方法を示すフローチャート。
【図9】受光パターンの明暗を示す画像信号および平均化信号の一例を示す波形図。
【図10】各サンプルの一断面について片面の表面形状を接触式測定機で測定した結果を示す説明図。
【図11】各サンプルについての平均化回路の出力を示す説明図。
【図12】形状値と測定値との相関を示す説明図。
【図13】本発明による表面形状の評価装置の他の構成例を示す構成図。
【図14】本発明による表面形状の評価方法の概略工程を示すフローチャート。
【図15】被測定物のうねり形状の測定状況を示す説明図。
【図16】観測された反射像の軌跡が理想的平面による反射像に対して先行している状況を示す説明図。
【図17】観測された反射像の軌跡が理想的平面による反射像に対して遅延している状況を示す説明図。
【図18】観測された反射像の軌跡が理想的平面による反射像に対して先行する場合の先行の程度とうねり形状の傾きとの関係を示す説明図。
【図19】観測された反射像の軌跡が理想的平面による反射像に対して遅延する場合の遅延の程度とうねり形状の傾きとの関係を示す説明図。
【図20】x軸およびz軸の定義を示す説明図。
【図21】シミュレーションにおいて用いられた光学系を示す説明図。
【図22】うねり形状の一例および本発明による表面形状の評価方法のシミュレーションで得られたうねり形状を示す説明図。
【図23】うねり形状の他の例および本発明による表面形状の評価方法のシミュレーションで得られたうねり形状を示す説明図。
【図24】移動する輝点の一実現例を示す説明図。
【図25】被測定物の全表面にわたるうねり形状の測定の一実施例を示す説明図。
【図26】この発明の他の実施の形態のうねり形状の測定装置の概略構成例を示す構成図。
【図27】(A)は、接触式測定機によって被測定物体の表面形状を測定した結果を示し、(B)は、例2において同じ被測定物に対して本発明による方法を実施して得られた表面形状を示す説明図。
【図28】(A)は、接触式測定機によって被測定物体の表面形状を測定しその微分の絶対値を算出した結果を示し、(B)は、例3において画像を撮像した場合の基本周期からのずれ量の絶対値を示す説明図。
【図29】(A)は、接触式測定機による被測定物体の表面形状の測定結果を示し、(B)は、図28(B)に示された結果を極小値毎に正負反転しそれを積分することによって得られた形状を示す説明図。
【図30】評価装置の第1の実施例を示す模式図。
【図31】評価装置の第2の実施例を示す模式図。
【図32】評価装置の第3の実施例を示す模式図。
【図33】評価装置の第4の実施例を示す斜視図。
【図34】表面反射像と裏面反射像とが同時に形成される様子を示す説明図。
【図35】カメラが出力する画像信号例を示す波形図。
【図36】カメラが出力する画像信号例を示す波形図。
【図37】従来の評価装置を検査対象とともに示す模式図。
【図38】ストライプパターンの一例を示す説明図。
【図39】ストライプパターンを決定する処理の一例を示すフローチャート。
【図40】CCDカメラの出力信号例を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、被評価物体3に入射する光と被評価物体3の表面3aおよび裏面3b反射する光との関係を示す説明図である。ここでは、被評価物体3として屈折率(絶対屈折率:以下の屈折率も同様)が1.5である板ガラスを例にする。図1(A)には、屈折率が略1.0の空気中に存在する被評価物体3の例が示されている。被評価物体3に入射した光束は、被評価物体3の表面3aで反射して光Aとして反射されるが、一部は被評価物体3の内部に進み、多くの光束は被評価物体3の裏面3bで反射される。そして、被評価物体3の表面3aから多くの光束が光Bとして出射される。
【0027】
しかし、図1(B)に示すように、被評価物体3の裏面3bに屈折率が略1.5の反射抑制層20を配置した場合には、被評価物体3の内部に進んだ光束の多くは、被評価物体3の裏面3bで反射されず、被評価物体3の裏面3bから反射抑制層20に入射する。従って、光Bの量は少ない。換言すれば、被評価物体3の裏面3bでの反射光は、被評価物体3の表面3aからほぼ出射しない。
【0028】
なお、図1では、厚い被評価物体3が示されているが、光Aをストライプパターンからの光であるとすると、被評価物体3が板厚0.5mm以下の薄い板ガラスである場合には、図1(A)に示された例では、ストライプパターンにおける隣接するストライプが重畳して観察される可能性がある。しかし、図1(B)に示された例では、被評価物体3の裏面3bでの反射光は被評価物体3の表面3aからほぼ出射しないので、隣接するストライプが重畳して観察されないか、または被評価物体3の裏面3bでの反射光の影響すなわち裏面反射像の影響(重畳の程度)が低減される。
【0029】
本発明では、図1(B)に例示された関係を利用して、裏面反射像の影響を低減することによって、表面形状を精度よく評価することができるようにする。
【0030】
図2は、本発明における被評価物体3で反射されたストライプパターンを撮像するカメラが出力する画像信号例を模式的に示す波形図である。図2(A)は、表面反射像の画像信号を示し、図2(B)は、裏面反射像の画像信号を示す。また、低レベルはストライプパターンにおける暗部にもとづく画像信号のレベルを示し、高レベルはストライプパターンにおける明部にもとづく画像信号のレベルを示す。
【0031】
また、図2(C)は、表面反射像と裏面反射像が重畳した画像信号を示す。図2(B)に示すように、裏面反射像における高レベルと低レベルとの差が小さくなるので、図2(C)に示す波形は、図2(A)に示す波形に近くなる。なお、図35に示された従来例では、図35(C)に示す波形と図35(A)に示す波形との差異が大きい。
【0032】
つまり、本発明では、カメラが出力する画像信号をそのまま用いて被評価物体3の表面形状の評価処理を行っても、裏面反射像の影響が排除された評価が実施されていることになる。また、従来例で説明したような適正なストライプパターンを決定するための処理を行う必要はない。
【0033】
図3(A)は、被評価物体の一例である板ガラスなどの被評価物体の表面の平坦度を評価するための評価装置を被評価物体とともに示す模式図である。図3(A)に示すように、評価装置は、評価対象である板ガラスなどの被評価物体3の表面3aに映し出されたストライプパターン1を、撮像手段としてのCCDカメラ2によって撮像するように構成されている。ストライプパターン1は、光源(図示せず)の発光面に設けられている。また、被評価物体3の裏面3bには、屈折率が被評価物体3の屈折率に近い反射抑制層20が、裏面3bに接するように配置されている。
【0034】
反射抑制層20は、例えば、水(屈折率1.33)、アニソール(屈折率1.52)、エタノール(屈折率1.36)を始めとする液体の他、屈折率が1.4〜1.5の植物性や鉱物性の潤滑油等の粘性体を使用することができる。また、反射抑制層20として、ポリエチレン系やポリウレタン系等の屈折率1.5〜1.6の合成樹脂等の他の材質のものを用いることもできる。反射抑制層20を、単独の材料で形成してもよく、複数の材料を組み合わせて形成してもよい。組み合わせる材料は、特に限定されない。例えば、単独では被評価物体の屈折率に対して屈折率が大きく異なる材料であっても、複数の材料を組み合わせて、被評価物体の屈折率と同じ屈折率にしてもよい。
【0035】
CCDカメラ2によって撮像された画像は、パーソナルコンピュータなどの演算装置4に取り込まれ、演算装置4によって画像解析が行われる。
【0036】
なお、ここではCCDカメラ2を例示するが、CCDカメラ2に代えて、エリアカメラ、ラインカメラ、ビデオカメラ、スティルカメラ等いずれの方式のカメラでも使用可能である。また、フォトセンサを配列させたものなど反射像を特定できるものであれば、いずれの受光装置を使用してもよい。
【0037】
CCDカメラ2の光軸と、ストライプパターン1(具体的には、ストライプパターン1が存在する平面)の法線とが、被評価物体3の表面3aの法線方向より同じ角度θになるように、CCDカメラ2とストライプパターン1とが設置される。角度θは、45°であることが好ましい。
【0038】
図3(B)は、図3(A)に示された評価装置を示す斜視図である。図3(B)に示すように、評価装置において、ストライプパターン1が発光面に設けられている光源100から光が被評価物体3に照射される。
【0039】
なお、図3には、被評価物体3の裏面3bの全体に接するように反射抑制層20が設置されている構成が示されているが、反射抑制層20は、少なくとも、光源100からのストライプパターン1による光が照射される部位の裏面3bに設けられていればよい。
【0040】
実施の形態1.
まず、本実施の形態で使用される表面形状の評価方法の前提を説明する。図4は、表面形状の評価方法を説明するための説明図である。
【0041】
光源100からのストライプパターン1による光が被評価物体3に照射され、被評価物体3の表面3aからの反射光がCCDカメラ2の撮像素子で受光される。なお、「光源100からのストライプパターン1による光」は、ストライプパターン1を通過した光を意味するが、以下、ストライプパターン1を通過した光が照射されることを、「ストライプパターン1が照射される」と表現する。
【0042】
また、本実施の形態では、被評価物体3の裏面3bからの反射光は、ほとんどCCDカメラ2に入射しない。
【0043】
演算装置4は、受光にもとづく電気信号(画像信号)にもとづいて表面形状を評価する。被評価物体3の表面が全く平坦であれば、画像信号から得られる明暗のコントラストの状態は、既知であるストライプパターン1のコントラストの状態に一致する。図4(A)には、CCDカメラ2の受光パターン(画像)、CCDカメラ2の撮像素子における画素配列および撮像素子からの明暗を示す画像信号の一例が示されている。被評価物体3において表面変形がない場合には、画像信号における最初の3つの検出領域に例示されているようにコントラスト変化は現れない(図4(A)参照)。
【0044】
しかし、被評価物体3における表面変形部分からの反射光による画像信号中では、コントラスト変化が生ずる。すなわち、被評価物体3の表面変形部分からの受光による模様は、非変形部分からの模様に比べて、拡大していたり縮小したりしている。例えば、拡大している場合にはコントラストは大きくなるが、検出領域から模様がはみ出すことがある。
【0045】
よって、図4(B)に示すように、本来の最大値部分120aと最小値部分120bとが同一検出領域に入らなくなり、検出領域内でのコントラストは小さくなる。コントラストは、各検出領域において、(a−b)/(a+b)で定義される。また、縮小している場合には撮像素子で解像しきれなくなり、図4(C)に示すように、コントラストが小さくなる。従って、画像信号における白部分と黒部分との差を基準値と比較することによって、被評価物体3に表面変形があるかどうか評価できる。
【0046】
なお、パターンの拡大や縮小がない場合でも、画像信号における明部分の値が下がったり、暗部分の値が上がったりすることがある。その場合にも、所定の大きさの検出領域内の明部分と暗部分との差を基準値と比較することによって、被評価物体に表面変形があるかどうか評価できる。図4(A)において、網部分は輝度が下がった白部分であり、その部分を含む検出領域では、検出領域内でのコントラストが小さくなる。
【0047】
しかし、例えばパターンの拡大を生じさせる表面歪みが発生したとしても、拡大の態様と検出領域との関係が異なると検出領域内でのコントラストが異なる。一例として、図4(D)に示すパターンと図4(E)に示すパターンとは同じように拡大しているが、検出領域への入り方が異なるので、検出領域内でのコントラストには差がある。本来、画像信号が図4(D)に示すようになった場合と図4(E)に示すようになった場合とでは同様の評価結果が得られるべきであるが、検出領域内のコントラストの相違のみにもとづいて表面形状を評価しようとすると、異なる結果となってしまう可能性がある。すなわち、検出領域内でのコントラストの相違のみにもとづいて表面形状の評価を行おうとするには限界がある。
【0048】
本実施の形態では、以下に説明するように、検出領域内のコントラストの相違にもとづいて、高い精度で表面形状を評価することができ、結果として、歪みの検出可能範囲を広げることができる。
【0049】
図5は、ストライプパターン1の一例を示す説明図である。図5において、Lは暗部の幅を示し、Lは明部の幅を示す。L+Lが明暗の周期(1/f)に相当する。周期の逆数は、パターンの空間周波数fである。以下、空間周波数fを基本周波数、その逆数を基本周期と呼ぶ。なお、透明樹脂フィルムに黒色部分を着色してストライプパターン1を実現する場合には、明部は透明部分に相当し、暗部は黒色部分に相当する。一例として、周期(1/f)は1.0mm程度であり、暗部の幅Lは100μm程度である。
【0050】
図6は、演算装置4によって実現される機能ブロックの例を示すブロック図である。図3に示す演算装置4において、入力回路41は、CCDカメラ2から明暗を示す受光パターンの画像信号を入力し、それをメモリ42に格納する。シェーディング補正回路43は、メモリ41内の画像信号についてシェーディング補正を行って、光源100の光量分布がCCDカメラ2の撮像に与えた影響を除去する。平均化回路44は、シェーディング補正後の各検出領域における各画素の明暗について平均化フィルタ処理を行い、最大値抽出回路45および最小値抽出回路46に平均化された値を出力する。
【0051】
平均化のための検出領域はパターンの基本周波数の逆数(基本周期)に相当している。従って、平均化回路44は、各基本周期毎に画像信号を平均化する積分型のフィルタ等で構成される。最大値抽出回路45は、平均化回路44の出力の最大値を出力し、最小値抽出回路46は、平均化回路44の出力の最小値を出力する。そして、差演算回路47は、最大値抽出回路45の出力値と最小値抽出回路46の出力値との差、および検出領域の位置を示す信号を出力する。これらの最大値および最小値は、被評価物体3に想定されるうねりの周期に相当する領域について抽出される。例えば、この領域の幅は基本周波数の2〜10倍である。
【0052】
次に、図7の説明図、図8のフローチャート、および図9の説明図を参照して表面形状の評価装置の動作を説明する。
【0053】
図7は、ストライプパターン1に対応するCCDカメラ2の撮像面の様子を示す説明図である。ただし、図7には、CCDカメラ2の撮像面の画素のうちE0〜E4の行の画素のみが示されている。また、本実施の形態では、ストライプパターン1における基本周期がCCDカメラ2における5画素に対応するように光学系が設定されている。従って、ここでは、平均化のための検出領域は5画素で構成される。
【0054】
図8は、評価装置の動作を示すフローチャートである。CCDカメラ2による撮像(具体的には、画像信号)は、演算装置4において、入力回路41を介してメモリ42に入力される。シェーディング補正回路43は、その時点で対象としている検出領域の前後数領域(対象としている検出領域を含む)の各画素についての画像信号の平均値を求める(ステップS11)。例えば、図7に示すE1の列のc領域を検出領域としている場合には、E1の列のb,c,d領域の各画素の平均値を求める。この処理によって、その検出領域周辺の背景の光量分布画像(シェーディング画像)に対応したものが得られる。もちろん、平均値をとる対象領域をさらに拡張してもよいし、E1の列の前後の列の領域を、平均値をとる対象領域に含めてもよい。
【0055】
シェーディング補正回路43は、さらに、得られた平均値で各画素の画像信号を割り算する(ステップS11)。この結果、光源100の面上の位置によって発光量に違いがあったとしても、その違いが撮像に与える影響は低減される。
【0056】
なお、シェーディング補正の方法は、上述した方法に限られない。例えば、以下のような方法を用いることもできる。
【0057】
(1)上述した方法において、各領域における各画素の平均をとる代わりに、各領域における各画素の画像信号のうちの中間値を用いる。
【0058】
(2)上述した方法において、得られた平均値で各画像信号を割り算する代わりに、各画像信号から平均値を減算する。
【0059】
(3)各検出領域についてその都度シェーディング補正のための平均値を求めるのではなく、光源100からの光を直接に受光する等の方法によって、あらかじめシェーディング画像を求めておく。そして、各検出領域についてシェーディング補正を行う際に、既に求められているシェーディング画像における画像信号を用いて割り算処理や減算処理を行う。
【0060】
図9は、受光パターンの明暗を示す画像信号および平均化信号の一例を示す波形図である。図9(A),(B),(C)の左側には、受光パターンの明暗を示す画像信号の一例が示されている。本実施の形態ではシェーディング補正回路43が設けられているので、具体的には、シェーディング補正回路43の出力信号が示されていることになる。被評価物体3が平坦である場合には受光パターンに拡大や縮小が生じないので、図9(A)に示されたように、受光パターンの周期は基本周期と一致する。
【0061】
被評価物体3の表面に凹凸があると、屈折作用によってCCDカメラ2による受光パターンにおいてパターンの拡大または縮小が現れる。例えば、表面が凸になっている部分からの透過光ではパターンの拡大が生じ、凹になっている部分からの透過光ではパターンの縮小が生ずる。その結果、図9(B),(C)の左側に示されているように、受光パターンの周期が基本周期からずれる。よって、受光パターンにおけるパターンの周期が基本周期からずれていることを検出できれば、被評価物体3の表面に凹凸があることを検出できる。
【0062】
そこで、平均化回路43は、受光パターンの周期の基本周期からのずれを検出するために、検出領域中のシェーディング補正された各画素の明暗を平均化するようなフィルタ処理を行う(ステップS12)。本実施の形態では、ストライプパターン1における基本周期に対応する5画素によって1つの検出領域が構成されているので、平均化回路43は、5画素について画像信号を平均化する。図9(A),(B),(C)の右側には、平均化回路44の出力信号例が示されている。受光パターンの周期が基本周期と一致しているときには、平均化回路44は、1周期分の各信号を平均化した結果として図9(A)の右側に示すように値が一定である信号を出力する。
【0063】
被評価物体3の表面に凸部分がある場合には、平均化回路44の入力信号において、図9(B)の左側に示すように山部分と谷部分とが広がった信号が現れる。また、被評価物体3の表面に凹部分がある場合には、図9(C)の左側に示すように山部分と谷部分とが狭まった信号が現れる。平均化回路44は、図9(A)に示すように山部分および谷部分が変化していない信号が入力されると一定の所定値を出力するのであるが、図9(B)の左側に示すような受光パターンに拡大があった場合の信号が入力されたときには、平均化回路44は、図9(B)の右側に示すように、所定値に対して凹凸が生じた信号を出力する。
【0064】
また、図9(C)の左側に示すような受光パターンに縮小があった場合の信号が入力されたときにも、図9(C)の右側に示すように、所定値に対して凹凸が生じた信号を出力する。平均化回路44の入力信号において山部分と谷部分との広がりまたは狭まりの程度が大きいほど、すなわち、被評価物体3の表面3aにおける凹凸の程度が大きいほど、平均化回路44の出力信号における凹凸の程度は大きい。
【0065】
本実施の形態では、平均化回路44の出力を評価するために、最大値抽出回路45、最小値抽出回路46および差演算回路47が設けられている。最大値抽出回路45は、平均化回路44からの各検出領域における平均化された信号を入力し、その領域中の最大値を抽出する(ステップS13)。最大値抽出回路45は、例えば、一検出領域すなわち基本周期中の最大値を出力するフィルタで構成される。また、最小値抽出回路46は、平均化回路44からの各検出領域における平均化された信号を入力し、その領域中の最小値を抽出する(ステップS13)。最小値抽出回路46は、例えば、一検出領域すなわち基本周期中の最小値を出力するフィルタで構成される。
【0066】
差演算回路47は、最大値抽出回路45の出力と最小値抽出回路46の出力との差を演算する(ステップS14)。差演算の対象は、一検出領域内、または、近隣の複数の検出領域である。例えば、隣接する2つや3つの検出領域である。隣接する2つの検出領域を差演算対象とした場合には、2つの検出領域内での最大値と最小値との差が差演算回路47から出力される。
【0067】
もちろん、平均化回路44が扱う検出領域のサイズと差演算回路47が扱う範囲のサイズとは、色々に異ならせてよい。例えば、差演算回路47が、平均化回路44が扱う検出領域の2〜10倍の大きさの範囲について最大値と最小値との差を求めるようにしてもよい。また、最大値抽出回路45および最小値抽出回路46の対象領域を、平均化回路44が扱う検出領域と異ならせるようにしてもよい。
【0068】
そして、演算結果である差信号と、そのときに対象としていた検出領域の位置を示す位置信号を出力する。被評価物体3の表面3aに歪みがない場合には、図9(A)に示すように平均化回路44の出力は一定になるので、差演算回路47が出力する差信号は値0を示す。しかし、被評価物体3の表面3aに凹凸がある場合には、差信号は0ではない値を示す。しかも、差信号の値は凹凸の程度に対応している。従って、差演算回路47が出力する差信号の値および位置信号にもとづいて、被評価物体3の表面3aの変形の程度および変形している位置を特定できる。換言すれば、差演算回路47が出力する差信号の値および位置信号にもとづいて被評価物体3の表面形状の評価を行うことができる(ステップS15)。
【0069】
なお、ステップS15の表面形状の評価は、検査者によって実行されてもよいが、演算装置4に、差信号の値と位置信号とにもとづく評価結果を決定して出力する評価機能を含めるようにしてもよい。評価機能による評価結果の出力は、例えば、画面表示や印刷出力である。また、評価機能は、例えば、差信号の値をあらかじめ決められているしきい値と比較し、しきい値を越えている場合に、欠点がある旨を、被評価物体3の表面3aにおける対応位置を示すデータとともに出力するような機能である。
【0070】
また、例えば、図4(D),(E)に示されたような場合であっても、差演算回路47が近隣の複数の検出領域にわたって、または検出領域を越えた範囲を演算対象の範囲として最小値と最大値との差を出力するようにすれば、図4(D)と図4(E)に示された場合とで、同様の差信号が出力される。よって、本発明による方法によれば、凹凸の検出可能範囲をより広げることができる。
【0071】
また、被評価物体3の表面形状に変化があるが受光パターンの拡大や縮小がない場合で、CCDカメラ2から出力される画像信号における明部分の値が下がったり暗部分の値が上がったりしたときにも、平均化回路44によって平均化された信号には凹凸が現れる。従って、本実施の形態の方法によって、そのような表面形状の変化も検出される。
【0072】
なお、平均化回路44、最大値抽出回路45、最小値抽出回路46および差演算回路47は、メモリ42に格納された被評価物体2の所定領域における全面に対応した画像信号を逐次的に処理してもよいし、メモリ42内の2次元画像を一括処理するようにしてもよい。また、検出領域内の明暗を示す信号を平均化する方法に代えて領域内の明暗の標準偏差を出力してもよいし、平均化処理された信号の微分をとって被評価物体2の表面形状を評価することもできる。
【0073】
[例1]次に、接触式測定機による測定結果と、本実施の形態の評価装置における評価を比較した結果について説明する。図10(A)〜(E)は、5枚の板ガラスをサンプルA〜Eとして、それぞれ、一断面について片面の表面形状を接触式測定機で測定した結果を示す。各サンプルA〜Eは、厚さ0.7mm,300mm角の板ガラスである。また、被評価物体である各サンプルA〜Eには、半ピッチが10〜15mm程度のうねりがある。
【0074】
図11(A)〜(E)は、サンプルA〜Eと光軸を30゜傾け、CCDカメラ2においてf25のレンズを用い絞りF16という条件での、平均化回路44の出力を示す。使用したストライプパターン1は白黒の1ピッチが6mmであり、サンプル面上では1画素が1mm強、画像上では1ピッチが5画素程度になるようにした。図11(A)〜(E)に示す結果が得られたそれぞれのサンプルA〜Eは、図10(A)〜(E)に示す結果が得られたそれぞれのサンプルA〜Eと同じものである。
【0075】
上述したように、図11(A)〜(E)には、受光パターンの周期が基本周期とずれた部分、すなわち、板ガラスの表面の凹凸がある箇所に対応した部分に山部分または谷部分が現れている。実際には、板ガラスの表面形状とパターンの位相との関係に応じて、板ガラスの表面の凹部分が図11(A)〜(E)における山部分に対応したり谷部分に対応したりする。しかし、山部分に対応した場合も谷部分に対応した場合も、山部分と谷部分との差の絶対値と、板ガラスの表面の凹凸の程度との間には相関がある。
【0076】
また、図11(A)〜(E)は、サンプルの帯状の一領域についての受光パターンの周期が基本周期とずれた部分の分布を示しているが、そのような分布にもとづいてその断面についての表面平坦度を直ちに評価できる。そして、サンプルの全断面についての分布を出力するようにすれば、サンプルの全面の表面平坦度を直ちに評価できる。
【0077】
図12は、形状値と測定値との相関を示す説明図である。形状値として、各サンプルの表面形状における隣り合う凸部と凹部の差のうちの最大値(真の値)を用いている。また、測定値として、上述した実施の形態の評価装置において、各サンプルについての差演算回路47から出力された差信号のうちの最大値を用いている。図12に示すように、形状値と測定値とはよく相関している。相関係数は0.81となっている。
【0078】
実施の形態2.
図13は、本発明による表面形状の評価装置の第2の実施の形態の構成例を示す構成図である。なお、本実施の形態では、表面形状の評価装置としてのうねり形状の測定装置を示す。図13に示すように、測定装置は、移動する輝点6から発せられ被評価物体3としての板ガラスの表面で反射された光を受光して反射像を形成するCCDカメラ2と、CCDカメラ2による反射像の軌跡を入力してうねり形状を算出する計算機等の演算装置4とを含む。
【0079】
なお、ここではCCDカメラ2を例示するが、CCDカメラ2に代えて、エリアカメラ、ラインカメラ、ビデオカメラ、スティルカメラ等いずれの方式のものでも使用可能である。また、フォトセンサを配列させたものなど輝点6の反射像を特定できるものであれば、いずれの受光装置を使用してもよい。
【0080】
図14は、本実施の形態における表面形状の評価方法の概略工程を示すフローチャートである。図14に示すように、この発明による表面形状の評価方法では、まず、移動速度が既知の移動する輝点6の被評価物体3の表面での反射光をCCDカメラ2で受光し、移動する反射像を得る(ステップS21)。被評価物体3の表面にうねりがある場合には、CCDカメラ2で撮像される反射像の軌跡は、うねりの全くない理想的平面が与える反射像の軌跡からずれる。すなわち、理想的平面が与える反射像の軌跡に対して先行したり遅れたりする。
【0081】
そこで、得られた反射像の理想的平面による反射像に対するずれ(先行情報または遅延情報)から、被評価物体3の表面のうねり形状の傾き(微分値)を算出する(ステップS22)。そして、被評価物体3の表面がほぼ平面であることを拘束条件として、積分演算によってうねり形状を得る(ステップS23)。
【0082】
次に、図15〜図20の説明図を参照して、図13に示された装置および図14に示された表面形状の評価方法について説明する。
【0083】
図15は、被測定物のうねり形状の測定状況を示す説明図である。図15に示すように、輝点6の反射像19は、CCDカメラ2の受光素子による受光面7に結像する。輝点6を出射した光は、光路8を経て被評価物体3の表面で反射されて受光面7に到達する。なお、ここでは、輝点6が所定の一定速度で移動する場合を例にする。
【0084】
上述したように、板ガラス表面にうねりがある場合には、得られた反射像19の各時刻における位置は、理想的表面で反射された光による反射像の位置に対して、先行したり遅れたりする。図16は、反射像19の軌跡が理想的平面による反射像26に対して先行している状況を示す説明図である。また、図17は、反射像19の軌跡が理想的平面による反射像26に対して遅延している状況を示す説明図である。図16および図17において、実線で示される光路8Aは実際の光路を示している。輝点6から出射した光は、板ガラス表面の反射点12で反射された後CCDカメラ2のレンズ中心30を経て受光面7に到達し反射像19を形成する。
【0085】
破線で示される光路8Bは、板ガラス表面が理想的平面である場合において、輝点6から出射した光が板ガラス表面の反射点13で反射された後CCDカメラ2のレンズ中心30を経て受光面7に到達する光路を示す。この場合、受光面7において、図16および図17に示された反射像26が形成される。ただし、反射像26は、板ガラス表面が理想的平面であると仮定した場合において形成される像であって、現実に形成されるものではない。
【0086】
輝点6は所定の速度で移動させられるので、板ガラス表面が理想的表面であるならば、反射像26も受光素子による受光面7において所定速度で移動する。輝点6の移動速度が決まっていれば、演算装置4は各時刻において、理想的表面で反射された光による反射像26の位置を認識できる。演算装置4は、理想的表面で反射された光による反射像26の位置を認識できるので、実際に得られた反射像19の位置の反射像26からのずれ量(先行量または遅延量)を知ることができる。
【0087】
図18は、反射像19の軌跡が理想的平面による反射像26に対して先行する場合の先行の程度とうねり形状の傾き(微分値)との関係を示す説明図である。また、図19は、反射像19の軌跡が理想的平面による反射像26に対して遅延する場合の遅延の程度とうねり形状の傾き(微分値)との関係を示す説明図である。
【0088】
図18および図19において、αは、レンズ中心30から光路8Bに延ばしたベクトルを基準とした場合のレンズ中心30から光路8Aに延ばしたベクトルが形成する角度である。βは、レンズ中心30から光路8Bに延ばしたベクトルを基準とした場合のレンズ中心30から鉛直下方に延ばしたベクトルが形成する角度である。γは、輝点6から鉛直下方に延ばしたベクトルを基準とした場合の輝点6から光路8Aに延ばしたベクトルが形成する角度である。そして、δは、反射点12の垂線ベクトルを基準とした場合の反射点12におけるうねり表面の法線ベクトルが形成する角度(法線ベクトルの傾き)である。
【0089】
いずれの角度も、基準とするベクトルから反時計方向に傾く場合に正の値をとるとする。従って、図18に示された状況において、α<0,δ<0であり、図19に示された状況において、α>0,δ>0である。
【0090】
【数1】

【0091】
法線ベクトルの傾きδは、(1)式のように表される。うねり形状をz=f(x)なる関数で表現すると、うねり形状の傾き(微分値)=tanδは、(2)式で表される。x軸およびz軸は図20に示すようにとられ、x=0の点は、例えば、被評価物体3の表面の左端に設定される。
【0092】
【数2】

【0093】
従って、うねり形状zは、(3)式のように求められる。(3)式において、Cは積分定数である。被評価物体3としてフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板として利用される板ガラスを想定すると、板ガラスの表面形状は、細かなうねりがあるかもしれないがほぼ平坦である。従って、(4)式に示す関係が成り立つと考えてよい。すなわち、板ガラス表面におけるうねりの平均値は0であるという条件を付加する。すると、(3)式における積分定数Cは、(4)式の拘束条件を満足するように決定することができる。ただし、(4)式において、理想的表面をz=0の平面としている。
【0094】
【数3】

【0095】
【数4】

【0096】
具体的には以下のような処理が行われる。演算装置4は、CCDカメラ2から各時刻における受光面7における反射像19を入力し、各時刻における反射像19の位置情報を得る。また、輝点6の移動速度はあらかじめ定められている一定速度であるので、各時刻における輝点6の位置および理想的平面による反射像26の位置情報も認識できる。反射像19,26の受光面7における位置は、板ガラス表面における反射点12,13の位置に対応している。
【0097】
また、レンズ中心30の位置も定まったものである。各時刻における輝点6の位置が認識でき、各時刻における反射点12,13の位置は反射像19,26の受光面7における位置から決定でき、また、レンズ中心30の位置も既知であるので、演算装置4は、各時刻における各角度α,β,γを算出することができる。従って、(1)式にもとづいて各時刻におけるδを計算できる。なお、各時刻における反射点12の位置は、(2)式〜(4)式におけるxの値である。
【0098】
各時刻におけるδが算出されたので、演算装置4は、容易に各時刻におけるtanδ(=f’(x))の値を算出できる。各時刻におけるf’(x)が、f’(x1),f’(x2),f’(x3),・・・,f’(xn)のようにn個得られたとし、Δ(x)を以下のように定義する。
Δ(x1)=(f’(x1)+f’(x2))×(x2−x1)/2
Δ(x2)=(f’(x2)+f’(x3))×(x3−x2)/2


Δ(x(n-1) )=(f’(x(n-1) )+f’(xn))×(xn−x(n-1) )/2
【0099】
うねり形状は、f’(x)を数値積分することにより求めることができる。具体的には、演算装置4は、
f(xn)=Δ(x1)+Δ(x2)+・・・+Δ(x(n-1) )
を算出することにより、各xにおけるうねりの高さを得る。
【0100】
このようにして得られたうねり形状は必ずしも(4)式を満たすとは限らないが、演算装置4は、(3)式における積分定数Cを、
C=−(f(x1)+f(x2))×(x2−x1)/2
−(f(x2)+f(x3))×(x3−x2)/2


−(f(x(n-1) )+f(xn))×(xn−x(n-1) )/2
のように定めることにより、(4)式を満たすうねり形状を得ることができる。
【0101】
[例2]次に、本実施の形態の方法によって被評価物体として板ガラスを実測した例を示す。この例では、図21に示された光学系位置関係を用いた。図21において、aは被評価物体3(この例では、板ガラス)の端部とCCDカメラ2のレンズ中心30からおろした垂線との間の距離、bは被評価物体3の幅、cはストライプパターン上の点とレンズ中心30との間の距離、hは理想的平面(板ガラスの表面のうねりの平均的平面)からのレンズ中心30の高さである。
【0102】
シミュレーションにおいて、輝点6、理想的平面およびレンズ中心30の位置関係は既知であるとした。具体的には、a=450mm、b=250mm、c=1300mm、h=28.43mmとした。
また、被測定物体3の表面のうねり形状を振幅a1 ,a2 、波長L1 ,L2 を有する(5)式で表される関数で表現した。
【0103】
【数5】

【0104】
図22(A)は、(5)式においてa1 =0.00005mm、L1 =10mm、a2 =0.0mm、L2 =20.0mmとした場合のうねり形状を示す波形図である。図22(B)は、図21に示された位置関係を有する光学系および図22(A)に示された表面形状を有する被測定物を対象として上述した測定方法を実施した場合に得られたうねり形状を示す波形図である。図22(B)に示すうねり形状は、図22(A)に示されたうねり形状とほぼ一致している、すなわち、本発明による方法によって、うねり形状が正しく測定できることが確認された。
【0105】
図23(A)は、(5)式においてa1 =0.00005mm、L1 =10mm、a2 =0.00005mm、L2 =20.0mmとした場合のうねり形状を示す波形図である。図23(B)は、図21に示された位置関係を有する光学系および図23(A)に示された表面形状を有する被測定物を対象として上述した測定方法を実施した場合に得られたうねり形状を示す波形図である。図23(B)に示すうねり形状は、図23(A)に示されたうねり形状とほぼ一致している、すなわち、本発明による方法によって、表面形状が正しく測定できることが確認された。
【0106】
また、本発明による表面形状の評価方法では、観測値にもとづく角度算出計算および積分のための加減算処理を行えばよいので、演算装置4の演算量はさほど多くない。
【0107】
図24は、移動する輝点6の一実現例を示す説明図である。この例では、レーザ光源21からの光を移動可能なミラー22で反射させ、反射光がスクリーン23に照射されるようにする。このようにした場合、反射光のスクリーン23における照射点を、輝点6として使用することができる。ここで、スクリーン23上で輝点6が等速で移動するようにミラー22を移動させれば、等速で移動する輝点6が実現される。なお、図24にはミラー22が移動していく形態が示されているが、実際にミラー22が移動する形態に代えて、ポリゴンミラーのような回転ミラーと補正ミラーとを用いて、ミラー移動を容易に実現することができる。
【0108】
なお、上記の実施の形態では、被評価物体3の表面における異なる地点による各反射像19を形成可能な基準体であって位置が特定されうる基準体として、等速で移動する輝点6を用いた例について説明した。しかし、移動速度があらかじめ決められていれば、輝点6の移動速度が等速でなくても本発明を適用できる。また、基準体として、そのように作成された輝点6に限らず、自身が移動する物理的な点(物点)を使用してもよい。
【0109】
物点として、例えば、そのものが移動する点光源や、照明環境下に置かれた移動可能な点を用いることができる。物点として移動する点光源を用いた場合には反射像19は明点となり、物点として照明環境下に置かれた移動可能な点を場合には反射像19は暗点となる。なお、輝点および物点は数学的な意味での点ではなく、現実には、ある程度の広がりをもつ領域となる。
【0110】
上記の実施の形態では一次元のうねり形状を測定する場合について説明したが、被測定物体3の全表面にわたってうねり形状を測定する場合には、例えば、図25に示すように、被測定物体3を光路8Aと直交する方向に移動させればよい。そして、演算装置4は、被測定物体3の表面の各列(図25において破線間で示される仮想的な各列)について上述した演算を実施する。なお、図25には被測定物1が移動する場合を示したが、輝点6を、光路8Aと直交する方向に移動させてもよい。
【0111】
図26は、この発明の他の実施の形態の表面形状の評価装置の概略構成例を示す構成図である。本実施の形態では、被評価物体3としての板ガラスの表面における異なる地点による各反射像19を形成可能な基準体であって位置が特定されうる基準体として、移動する輝点6に代えて、輝度ピッチが既知であるストライプパターン61が用いられる。ストライプパターン61の各高輝度部分62からの光の板ガラス表面による反射像はCCDカメラ2で撮像された後、演算装置4に入力する。
【0112】
ストライプパターン61において輝度ピッチは既知であるから、演算装置4は、被評価物体3の受光面7における理想的平面による反射像26の各位置を認識することができる。演算装置4は、理想的平面による反射像26の各位置からの実際の反射像19の位置のずれにもとづいて、上述した演算によってうねり形状を算出する。このように、移動する輝点6の時間情報(各時刻における反射像19,26の位置情報)に代えて、ストライプパターン61の空間情報(各高輝度部分62に対応した反射像19,26の位置情報)を用いても、板ガラス表面のうねり形状を測定することができる。
【0113】
[例3]次に、本実施の形態の方法によって被測定物として板ガラスを実測した例を示す。この例では、図21に示された光学系位置関係を用い、具体的には図26に示された装置を用いた。図21において、aは被測定物体3の端部とレンズ中心30からおろした垂線との間の距離、bは被測定物1の幅、cは輝点6とレンズ中心30との間の距離、hは理想的平面(被測定物体3の表面のうねりの平均的平面)からのレンズ中心30の高さである。
【0114】
ストライプパターン1の設置位置、理想的平面、およびレンズ中心30の位置関係は既知であるとした。具体的には、a=225mm、b=300mm、c=750mm、h=60mmとした。また、使用したストライプパターン1の高輝度部および低輝度部の1周期を1mmとした。従って、被評価物体3の中心上では1周期は0.5mmである。そして、CCDカメラ2において絞りF16、焦点距離55mmのレンズを用いた。ストライプパターン1における画素分解能は約0.09mm、被評価物体3の中心上で画素分解能は約0.04mmとなり、ストライプパターン1における1周期は11〜12画素に相当する。
【0115】
図27(A)は、接触式測定機によって被評価物体3の表面形状を測定した結果を示す。また、図27(B)は、同じ被評価物体3に対して本実施の形態による方法を実施して得られた表面形状を示す。図27(B)に示された表面形状は、図27(A)に示された表面形状にほぼ一致しているので、本発明によって表面形状が正しく測定できていることがわかる。
【0116】
図10に示された各形状のサンプルの表面形状を測定した例では、各サンプルにおいて半ピッチが10〜15mm程度のうねりがあるのに対して、パターンの白黒の1ピッチが6mmであるような比較的両者が近接している条件で測定が行われた。
【0117】
そのような条件では、基本周期からのずれ量と表面形状との間に直接相関があるので凹凸のレベルに高い相関がある。従って、図10に示された各形状のサンプルの表面形状を測定した例ではサンプル面で1画素が1mm程度になるようにしたが、そのような解像度の低い条件でも十分に凹凸レベルを評価することができる。
【0118】
一方、上記の例(図27(B)に示された波形を得た例)のように、被評価物体3の中心上での1周期が0.5mmというような、うねりの半ピッチに比べて十分小さい場合には、既に説明したような最大値と最小値との差を算出するまでもなく、表面形状の変化の絶対値(うねり形状の傾きの絶対値)は基本周期からのずれ量の絶対値に関しても相関がある。よって、そのような場合には、画像から算出した基本周期のずれ量の絶対値をピーク毎にプラスマイナス反転させて積分することによって、表面形状を算出することができる。そのような算出方法によれば計算が簡易化される。なお、ピーク毎に正負反転させるのは、絶対値で得られるデータを本来の凹凸に関するデータに戻すためである。また、ずれ量の絶対値に代えてずれ量の二乗値を用いても、値は異なるものの、同様の結果が得られる。
【0119】
[例4]図28(B)は、例3と同一の条件で画像を撮像した場合の基本周期からのずれ量の絶対値を示す。ただし、この例では、演算装置4は、基本周期でスムージング処理を施して平均化された値を算出し、算出された値と、5周期分の平均であるシェーディング信号との差の絶対値を、基本周期からのずれ量の絶対値とする。すなわち、平均化信号の増減の絶対値を、明暗周期の基本周期からのずれ量とする。
【0120】
被評価物体3の変形によって基本周期からのずれが生ずるときには、パターンの位相によって、スムージング幅に明るい部分が多い場合と暗い部分が多い場合とのどちらの可能性もある。そこで、どちらの場合も評価できるように絶対値をとっている。図28(A)は、接触式測定機によって被評価物体3の表面形状を測定し、その微分の絶対値を算出した結果を示す。
【0121】
また、図29(A)は、接触式測定機による被測定物体3の表面形状の測定結果を示す。図29(B)は、図29(B)に示された結果を極小値毎に正負反転し、それを積分することによって得られた形状を示す。両者の形状は酷似しているので、基本周期のずれ量の絶対値(または二乗値)をピーク毎にプラスマイナス反転させて積分することによって、表面形状を評価できることがわかる。
【0122】
以上に説明したように、本実施の形態では、被評価物体3の表面3aからの反射光による受光画像における明暗周期の基本周期からのずれにもとづいて被評価物体3の表面形状を評価するので、表面形状における歪み等を短時間でより精度よく評価できる。また、受光画像における基本周期に対応した領域の明暗を平均化し、平均化された信号にもとづいて被評価物体3の表面形状を評価することによって、歪み等の検出可能範囲を広げることができる。
【0123】
また、被評価物体3の裏面3bに、該裏面3bに到来した光の反射を抑制する反射抑制層20が配置されているので、裏面反射像の影響が低減されたCCDカメラ2からの画像信号を用いて、被評価物体3の表面形状を精度よく評価することができる。
【実施例】
【0124】
以下、具体的な実施例を説明する。
【0125】
実施例1.
図30は、評価装置の第1の実施例を示す模式図である。本実施例では、評価装置は、被評価物体の一例であるガラス基板として利用される板ガラス300の搬送経路に設けられている。また、搬送経路には、板ガラス300を搬送するための複数の駆動ローラ201,202,203が設けられている。光源(図示せず)は、いずれか1つ以上の駆動ローラの直上に向けてストライプパターン1を照射するような位置に設置されている。図30には、駆動ローラ202の直上に対して光を照射する位置に設置されていることが例示されている。なお、本実施例および以下の実施例において、板ガラス300の屈折率は1.5であるとする。
【0126】
駆動ローラ202の近傍には、駆動ローラ202に対して水滴を噴射する水噴射装置210が設けられている。水噴射装置210から噴射された水滴は駆動ローラ202の表面に付着する。駆動ローラ202は、水滴が付着した状態で回転するので、ストライプパターン1が照射される位置では、板ガラス300の裏面3bに水が存在する状態になる。従って、光が照射される位置では、図1(B)に示された状態に相当する状態ができる。
【0127】
よって、CCDカメラ2に接続された演算装置4がステップS11〜S15の処理(図8参照)またはステップS21〜S23の処理(図14参照)を実行することによって、裏面反射像の影響を受けることなく、板ガラス300の表面形状を精度よく評価することができる。
【0128】
なお、評価装置は板ガラス300の搬送経路に設けられているが、本実施例において、板ガラス300が搬送されているときに評価が実行されることは必須のことではなく、板ガラス300が載置台等に載置された状態(静止している状態)で評価を行ってもよい。
【0129】
また、水噴射装置210から水滴を駆動ローラ202の表面に噴射することに代えて、他の手段によって、駆動ローラ202の表面に水を付着させるようにしてもよい。例えば、水分を含むことが可能な部材(例えば、スポンジ)を駆動ローラ202に接触させるようにしてもよい。また、板ガラス300が静止している状態で評価を実施する場合には、水分を含むことが可能な部材を、板ガラス300における評価部位の裏面に接触させるようにしてもよい。
【0130】
実施例2.
図31は、評価装置の第2の実施例を示す模式図である。本実施例でも、評価装置は、被評価物体の一例である板ガラス300の搬送経路に設けられている。また、搬送経路には、板ガラス300を搬送するための複数の駆動ローラ221,222,223が設けられている。光源(図示せず)が、ストライプパターン1を照射する位置の裏面(具体的には、搬送される板ガラス300の裏面側)には水蒸気雰囲気220が設けられている。例えば、板ガラス300の裏面が水蒸気に曝されるように形成された水蒸気室が設けられる。
【0131】
従って、評価のための光が照射される位置では、板ガラス300の裏面3bに水が存在する状態になる。従って、光が照射される位置では、図1(B)に示された状態に相当する状態ができる。よって、CCDカメラ2に接続された演算装置4がステップS11〜S15の処理(図8参照)を実行することによって、裏面反射像の影響を受けることなく、板ガラス300の表面形状を精度よく評価することができる。
【0132】
なお、評価装置は板ガラス300の搬送経路に設けられているが、本実施例において、板ガラス300が搬送されているときに評価が実行されることは必須のことではなく、板ガラス300が載置された状態(静止している状態)で評価を行ってもよい。
【0133】
また、水蒸気室には水蒸気または湯気が充満されるが、板ガラス300の屈折率に近い値の屈折率の液体であれば、水以外の液体が気化したものを充満させてもよい。
【0134】
実施例3.
図32は、評価装置の第3の実施例を示す模式図である。本実施例でも、評価装置は、被評価物体の一例である板ガラス300の搬送経路に設けられている。また、搬送経路には、板ガラス300を搬送するための複数の駆動ローラ231,232,233が設けられている。光源(図示せず)は、いずれか1つ以上の駆動ローラの直上に向けてストライプパターン1を照射するような位置に設置されている。図32には、駆動ローラ232の直上に向けて光を照射する位置に設置されていることが例示されている。
【0135】
例えば金属製の駆動ローラ232の外周囲は、屈折率1.5〜1.6の合成樹脂232aで被覆されている。また、駆動ローラ232自体の材質をポリウレタン等の合成樹脂にしてもよい。第3の実施例でも、ストライプパターン1が照射される位置では、屈折率が板ガラス300の屈折率と略等しい反射抑制層(本実施例では、合成樹脂232a)が板ガラス300の裏面3bに接する状態になる。従って、ストライプパターン1が照射される位置では、図1(B)に示された状態に相当する状態ができる。
【0136】
よって、CCDカメラ2に接続された演算装置4がステップS11〜S15の処理(図8参照)を実行することによって、裏面反射像の影響を受けることなく、板ガラス300の表面形状を精度よく評価することができる。
【0137】
実施例4.
図33は、評価装置の第4の実施例を示す斜視図である。本実施例では、板ガラス300における評価部位(ストライプパターン1が照射される位置に相当)の裏面に、屈折率1.5程度のフィルム(シート)241が貼付される。フィルム241として、例えば、フジコピアン社製のFIXFILM-PTG を使用することができる。
【0138】
なお、第3の実施例における合成樹脂232aとして、フジコピアン社製のFIXFILM-PTG を使用してもよい。
【0139】
第4の実施例でも、ストライプパターン1が照射される位置では、板ガラス300の裏面3bに屈折率が板ガラス300の屈折率と略等しい反射抑制層(本実施例では、シート241)が接する状態になる。よって、CCDカメラ2に接続された演算装置4がステップS11〜S15の処理(図8参照)を実行することによって、裏面反射像の影響を受けることなく、板ガラス300の表面形状を精度よく評価することができる。
【0140】
なお、上記の実施の形態および実施例において、反射抑制層として種々の材質のものを例示したが、本発明において使用可能な反射抑制層は、被評価物体3の屈折率に近い屈折率の物質であれば、それらに限られない。
【0141】
また、反射抑制層の屈折率が被評価物体3の屈折率と同じであることが最も好ましいが、演算装置4がCCDカメラ2からの画像信号から表面反射像における暗部と明部とを区別可能になるのであれば、それらの屈折率は同じでなくてもよく、例えば、屈折率の差が0.2以下であればよい。
【0142】
また、上記の実施の形態および実施例において、被評価物体3は、例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、および太陽電池に用いられるガラス基板として利用される板ガラスであるが、自動車、船舶、航空機、建築物等の窓ガラス等に用いられる板ガラス(素板)や樹脂板等の被評価物体の評価に本発明を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、被評価物体の表面の平坦度を評価するときに好適に適用される。
【符号の説明】
【0144】
1 ストライプパターン
2 CCDカメラ
3 被評価物体
3a 表面
3b 裏面
4 演算装置
5 ストライプパターン上の点
6 輝点
7 受光面
8,8A,8B,9 光路
10,11 撮像点
12,13 反射点
19,26 反射像
20 反射抑制層
21 レーザ光源
22 ミラー
23 スクリーン
30 レンズ中心
31,32 反射点
41 入力回路
42 メモリ
43 シェーディング補正回路
44 平均化回路
45 最大値抽出回路
46 最小値抽出回路
47 差演算回路
61 高輝度部分
100 光源
201,202,203,221,222,223,231,232,233 駆動ローラ
210 水噴射装置
232a 合成樹脂
241 フィルム(シート)
300 板ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な明暗を有するパターンを被評価物体の第1表面に照射し、
前記第1表面を反射したパターンを受光し、
前記第1表面に照射されたパターンにおける明暗の基本周期に対する受光画像における明暗周期のずれを検出するために、前記第1表面に照射されたパターンにおける明暗の基本周期に対する受光画像における領域の明暗を平均化し、
平均化された信号にもとづいて前記第1表面の表面形状を評価する表面形状の評価方法であって、
前記第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層を配置する
ことを特徴とする表面形状の評価方法。
【請求項2】
平均化された信号にもとづいて受光画像における明暗周期のずれ部分およびずれ量を測定し、測定結果にもとづいて前記被評価物体の表面形状を評価する請求項1に記載の表面形状の評価方法。
【請求項3】
平均化された信号中における振幅の大きい部分とその近傍の振幅の小さい部分との差によって前記被評価物体の表面形状を評価する請求項1または2に記載の表面形状の評価方法。
【請求項4】
明暗周期のずれ量として平均化された信号の増減の絶対値または二乗値を用いる
請求項3に記載の表面形状の評価方法。
【請求項5】
被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であって移動速度既知の運動する輝点または物点である基準体の前記各反射像をカメラを介して観測し、
前記第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対する各観測反射像のずれ量を得て、
前記各ずれ量、前記基準体の位置情報および前記カメラのレンズ中心位置情報を用いて前記第1表面のうねり形状の傾きを求め、
前記第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件として、前記うねり形状の傾きを積分して前記第1表面のうねり形状を評価する表面形状の評価方法であって、
前記第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層を配置する
ことを特徴とする表面形状の評価方法。
【請求項6】
被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であって周期的な明暗を有するパターンである基準体の前記各反射像をカメラを介して観測し、
前記第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対する各観測反射像のずれ量を得て、前記各ずれ量、前記基準体の位置情報および前記カメラのレンズ中心位置情報を用いて前記第1表面のうねり形状の傾きを求め、
前記第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件として、前記第1表面の傾きを積分して前記第1表面のうねり形状を評価する表面形状の評価方法であって、
前記第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層を配置する
ことを特徴とする表面形状の評価方法。
【請求項7】
前記反射抑制層が液体、粘性体、またはフィルムである請求項1から請求項6のうちのいずれかに記載の表面形状の評価方法。
【請求項8】
前記液体は水である請求項7に記載の表面形状の評価方法。
【請求項9】
周期的な明暗を有するパターンを被評価物体の第1表面に照射する光源と、
前記第1表面を反射したパターンを受光する受光手段と、
前記光源のパターンにおける明暗の基本周期に対する前記受光手段による受光画像における明暗周期のずれに基づいて前記第1表面の表面形状を評価する評価手段とを備え、
前記評価手段は、前記第1表面に照射されたパターンにおける明暗の基本周期に対応した受光画像における領域の明暗を平均化する平均化手段と、前記平均化手段が出力する平均化信号を用いて前記第1表面における表面形状の変形箇所と変形量とを特定するための信号を出力する処理手段とを含む表面形状の評価装置であって、
前記第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層が接している
ことを特徴とする表面形状の評価装置。
【請求項10】
被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であって移動速度既知の運動する輝点または物点である基準体と、
前記基準体の前記第1表面による各反射像を得るカメラと、
前記第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対する前記カメラが得た各反射像のずれ量を算出し、前記各ずれ量、前記基準体の位置情報および前記カメラのレンズ中心位置情報を用いて前記第1表面のうねり形状の傾きを求め、前記第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件として前記うねり形状の傾きを積分して前記第1表面のうねり形状を求める演算手段とを含む表面形状の評価装置であって、
前記第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層が接している
ことを特徴とする表面形状の評価装置。
【請求項11】
被測定物体の第1表面における異なる地点による各反射像を形成するものであって位置を特定可能であり周期的な明暗を有するパターンである基準体と、
前記基準体の前記第1表面による各反射像を得るカメラと、
前記第1表面が理想的平面である場合の各反射像に対する前記カメラが得た各反射像のずれ量を算出し、前記各ずれ量、前記基準体の位置情報および前記カメラのレンズ中心位置情報を用いて前記第1表面のうねり形状の傾きを求め、前記第1表面がほぼ平坦であることを拘束条件として前記うねり形状の傾きを積分して前記第1表面のうねり形状を求める演算手段とを含む表面形状の評価装置であって、
前記第1表面に対向する第2表面に、該第2表面に到来した光の反射を抑制する反射抑制層が接している
ことを特徴とする表面形状の評価装置。
【請求項12】
前記反射抑制層が液体、粘性体、またはフィルムである請求項9、10または11に記載の表面形状の評価装置。
【請求項13】
前記液体は水である請求項12に記載の表面形状の評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2012−21781(P2012−21781A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157449(P2010−157449)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】