複合センサー
【課題】高感度なモーションセンサーとして三軸検知可能であり、また磁界センサーとして使用可能で、簡便な構成で、小型で、かつ低消費電力の複合センサーを提供すること。
【解決手段】傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、前記基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘を有する磁界発生部とを備えた複合センサーであって、
前記磁気検知素子により第1の物理量の外部磁界を検知可能であると共に、
前記錘を有する磁界発生部の位置変動による前記磁気検知素子の出力の差に基づいて第2の物理量を検知することを特徴とする。
【解決手段】傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、前記基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘を有する磁界発生部とを備えた複合センサーであって、
前記磁気検知素子により第1の物理量の外部磁界を検知可能であると共に、
前記錘を有する磁界発生部の位置変動による前記磁気検知素子の出力の差に基づいて第2の物理量を検知することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度などを検知することの可能な複合センサーに関する。特に、簡便な製造方法で実現させた構成を有する複合センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、速度、加速度等を測定するための様々なセンサーが知られている。このようなセンサーとして、たとえば特許文献1に記載の発明を挙げることができる。この文献に開示されたセンサーは、検出素子として磁気検出素子、具体的には複数のGMR素子を用い、錘と一体となった可動コイルに電流が流れた場合にその磁界変化を検知して錘を支える梁抗力に応じた加速度を検知する外部磁界及び加速度をセンシングするセンサーであり、このセンサーはまた、角速度の測定が可能なセンサーでもある。
しかしながら、このセンサーの検知方向は2軸方向が限度であり、特許文献1を見る限り、3軸方向への具体的な解決手段は何ら開示されてはいない。
また、この発明では、錘の周囲に磁気検出素子を複数配置しており、個々の素子が大きく、小型化するには限度があり困難である。
【0003】
また特許文献2には、半導体加速度センサの発明が記載されている。この公報にはSi半導体の微細加工技術を用いて薄膜磁気抵抗素子を上部に有する錘部を形成し、印加加速度については、可動電極(おもり部)が変位し、それによって、センサ内部の上側及び下側のコンデンサ部の静電容量値が変化し、これを回路(C−Fコンバータ等)によって加速度を検出することが開示されている。
また特許文献3には、磁気加速度センサの発明が開示されている。この公報に記載のセンサーはドーム状バネ等に印加される加重から、このバネの有するヒステリシスにより加速度を得ることによって、自動車の速度制御や地震の震度などの検出等に用いる加速度センサーである。
しかしながら、これらの公報にも3軸方向にセンサーを配置させること、また、可動部を固定させて、磁気センサーとして併用させることは、何ら開示されてはいない。
また特許文献4には、磁性薄膜による磁界と電流によるローレンツ力によって、励振部と角速度に応じたコリオリ力を櫛型電極間の静電容量によって検知して、角速度をセンシングする発明が開示されている。
特許文献5〜6には、3軸ベクトル以上の方向に独立して配置されて地磁気を検知対象とする磁気検知素子あるいは磁気センサーが開示されている。
また特許文献7には、センサーを直交座標系の3軸上に配置して、センサー、検知手段、予め出力した絶対値との比較手段および報知手段をもつシステムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−98078号公報
【特許文献2】特開平9−203748号公報
【特許文献3】特開平5−157765号公報
【特許文献4】特開2006−189361号公報
【特許文献5】特開2002−207071号公報
【特許文献6】特開2003−167039号公報
【特許文献7】特開2003−008101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたものであって、高感度なモーションセンサーとして三軸検知可能であり、また磁界センサーとして使用可能で、簡便な構成で、小型で、かつ低消費電力の複合センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、
前記基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘を有する磁界発生部と、
を備えた複合センサーであって、
前記磁気検知素子により第1の物理量の外部磁界を検知可能であると共に、
前記錘を有する磁界発生部の位置変動による前記磁気検知素子の出力の差に基づいて第2の物理量を検知することを特徴とする。
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複合センサーにおいて、前記第2の物理量は加速度または角速度であることを特徴とする。
また請求項3に記載の複合センサーの発明は、請求項1または2に記載の複合センサーにおいて、前記磁界発生部の電流値を変えて加速度または角速度の検知感度の少なくとも1つを可変可能とすることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、
三軸方向の自由度を有する梁に支持された錘と、前記錘に設けられた配線部とからなる磁界発生部と、
を備えた複合センサーであって、
前記磁界発生部は永久磁石と、前記永久磁石を固定する固定磁界部とを有し、前記固定磁界部は空芯コイルまたは鉄心付き電磁石を有し、
前記固定磁界部に電流が流れていないときは、前記磁界発生部の前記三軸方向の少なくとも1方向の平行移動に伴う前記永久磁石による印加される磁力の変化による前記磁気検知素子の出力の差により加速度を検知し、
前記固定磁界部に電流が流れているときは、前記磁気検知素子により内部で発生している磁界分をオフセットとして除いて外部磁界を検知することを特徴とする。
また請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの複合センサーにおいて、前記磁界発生部の回転に伴う前記磁界発生部と前記磁気検知素子との距離の差に基づいて角速度を検知することを特徴とする。
また請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの複合センサーにおいて、前記磁界発生部または前記固定磁界部に電流を流すための磁界発生用電源に信号処理部を設け、各センサーの切り替え比率を変更することを特徴とする。
また請求項7に記載の発明は請求項1〜6のいずれかの複合センサーにおいて、前記磁気検知素子は、TMR(Tunneling Magnetic Resistance、トンネル磁気抵抗効果)素子またはGMR(Giant Magnetic Resistance、巨大磁気抵抗効果)素子の少なくとも1つを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1個のセンサーで2以上の物理量をセンシングすることができ、また小型のセンサーとして用いる構成としている。
さらに、センサーとして加速度センサーの加速度検知の場合、通電を伴わないか、または磁気検知の際の錘(磁石)の固着の際の電流値が十分小さな電流値で検知可能な複合センサーを提供することができる。
また、加速度センサーモードの際の感度も請求項1に記載の発明では電流値によるので、磁石とすることで、低消費電力であり、かつ、高感度なセンサーを提供することができる。
本発明によれば、同一の機構で少なくとも2種類の物理量を検知するセンサーの構成を共通化でき、また検知が必要な場合に、その検知感度を変えて、容易に検知情報を効率よく検知可能であって、外部の測定状態に応じた柔軟な変更が可能となる。
本発明の複合センサーは、錘部の配線に流す電流を調整することによって検知感度を変えることができるので、多数の測定レンジに応じて複数のセンサー部を必要とする従来例に比べ、一個のセンサーでカバーできセンサーの小型化にさらに寄与する。そして本発明では検知部のみならず、信号処理系、センサーによって求められた結果を表示する表示系も共に共通のものを用いることができる。
また、必要に応じて、測定範囲のレンジを優先に設定する場合にも可変設定可能であって、測定範囲を広く設定できるセンサーとすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の複合センサーを、実施形態により、詳細に説明する。
本発明の複合センサーは、傾斜面が設けられた基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、梁に支持された錘を有する磁界発生部とを備えた、外部磁界と加速度あるいは角速度などを検知可能な複合センサーである。
本発明の複合センサーを用いて加速度などの物理量を測定する場合、通常、センサーを水平に設置して測定を行うため、前記の傾斜面は水平面に対して特定の角度を有する面となり、測定すると必ずx軸またはy軸の少なくとも1軸とz軸方向の測定結果を含むことになる。この傾斜面は、たとえば基板を水平方向にセッティングし、基板の上面からエッチング液を用いて加工したりRIE(Reactive Ion Etching)法などにより加工する加工方法を用いて基板の深さ方向に傾斜面を得ることができるが、これら加工方法には限定されない。本発明の複合センサーは、前記したこのような基板の傾斜面に磁気検知素子が設けられると共に、梁に支持された錘を有する磁界発生部とを備えている。
以下、基板、磁気検知素子および磁界発生部について、説明する。
【0009】
(基板)
基板1としては、Siなどの半導体基板、非導電性セラミック、導電性セラミック、金属板に絶縁層を設けた基板等を用いることができる。
これらの基板を用いて異方性エッチング法などによって傾斜面1sを設けることができる。
本発明の複合センサーは、傾斜面を設けた基板の前記傾斜面に磁気検知素子が設けられている。
【0010】
(磁気検知素子)
本発明の複合センサーに使用される磁気検知素子10としては、好ましくは、TMR素子またはGMR素子を用いることができる。
TMR素子としては、図3(A)に示すように、基板1上に反強磁性体層101と、磁性体層102と、絶縁層103とフリー層(フリー磁性体層)104とから構成される。フリー層104は、外部磁界の向きに応じて磁化の方向が変化する層であり、一方、磁性体層102と反強磁性体層101との界面層であるPIN層100は、外部磁化の向きに関わらず磁化の方向が固定される層(磁化固定層)である。また、絶縁層103は、フリー層104およびPIN層100に挟持されトンネル層としての役割を果たす層である。
【0011】
実際には、磁気検知素子10の近傍に、錘を有する磁界発生部を近接させているので、これにより、磁場を磁気検知素子10の膜面内に引き込んで、傾斜方向のうちの、膜面での射影分で実効磁場を発生させて、目的のPIN層方向の磁化変化を起こす。
【0012】
さらに、他の法線成分をもつ膜面においては、90度異なる向きへ向くような構成とすることが可能である。フリー層104とPIN層100とは、通常、90度程度の相対角度を持たせることによって良好な特性を発揮することが可能である。
【0013】
TMR素子としては、基板1の傾斜面1s上に、例えばFe−Niのような反強磁性体層101とCo−Feなどの磁性体層102とで構成されたPIN層100が積層される。そして、このPIN層100の上部に絶縁層103を積層して、さらにその上層にフリー磁性体層104を積層する。絶縁層103としては、SiO2などの絶縁材料や、Al2O3のような非磁性金属酸化物などが用いられる。また、フリー磁性体層104としては、例えばCo−Feなどを用いて形成してもよい。
【0014】
また、各素子部10−1〜10−4(図1(B)参照)はTMR素子に限定されず、図3(B)に示すようなGMR素子を用いることも可能である。なお、本実施形態のGMR素子としてはスピンバルブ型を用いている。
【0015】
GMR素子としては、前記したTMR素子の絶縁層103を非磁性金属層に置き換えることによって得られる。
このようなGMR素子としては、図3(B)図に示すように、基板1上に、例えば、Mn−Irのような反強磁性体層101と、Coなどの磁性体層102と、Cu、Alなどの非磁性金属層106と、Fe−Co、Ni−Feのようなフリー磁性体層104を積層する。そしてこの順番で積層された各層を、電極部107によって両端から挟持するようにして設け、電流を膜内(積層体の膜)に流す構成としている。また、GMR素子としては、図3(C)に示すような縦型GMR素子としてもよく、この場合には、一方の電極部107aをフリー磁性体層104の上部に配置し、もう一方の電極部107bを反強磁性体層101および磁性体層102の側部(一端部)に配置して、電流を膜面に垂直に流す構成としている。
【0016】
上記したTMR素子などの磁気検知素子は、たとえば以下のような工程により、製造することができる。
まず、基板上に予め形成された傾斜面に対し、所望の層構成を有する素子の各膜を成膜する。成膜される素子の各膜(層)としては、前述した図3(A)〜(B)などの層構成が挙げられる。次に、成膜された各層にフォトリソ法を用いてパターン形状を形成する。そしてパターニングされた素子に保護層を形成する。
【0017】
ここで、磁場中熱処理(外部磁場を印加しながら磁気検知素子を含む基板に熱処理)を施す。このとき、素子を含む基板への磁場印加方向は、基板の傾斜面に対して垂直以外の方向になるように形成する。そして、磁場中での熱処理(以下、磁場中熱処理という)に基づきPIN層の磁化方向がこの磁場中熱処理における印加磁場方向できまり、温度が変更されて(温度が低下して)PIN層の磁化方向が決定する。前記磁場中熱処理として、熱処理温度として、例えば300℃程度でPIN層の磁化される方向を決定した後、250〜200℃程度で異なる外部磁界の方向を(たとえば90度)かえても、この決定された磁化方向は維持される。
【0018】
PIN層の磁化方向が確定した後、さらに、再度磁場中熱処理を施す。このときの磁場印加方向は、基板面に対して平行になるように印加する。そして、磁場中熱処理中、素子が徐々に冷却されて、フリー磁性体層104の磁化容易方向も確定する。このときPIN層100の磁化方向は確定しているのでその方向は変更されない。
【0019】
また、本実施形態では、磁気検知素子として使用される磁気抵抗効果素子に、永久磁石薄膜などの高保磁力を有する部材を用いることも可能である。
図8は、磁気検知素子として磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサーの素子部に、永久磁性体部材を用いた場合の構成を示す図である。図8(A)は、本発明の複合センサーを上部から見た図であり、図8(B)は、図8(A)のA−A線における本発明の複合センサーの側部断面図である。なお、ここでは、磁気検知素子にGMR素子を用い、このGMR素子には、各層の両側に電極を配置して膜内に電流を流す、いわゆる通常型のGMR素子を用いた例を示す。素子部10の両端に引き出し電極薄膜部を設けることができる(図示せず)。また図8に示す例では、素子部10にTMR素子を使用することもできる。
永久磁石薄膜などの高保磁力を有する部材に用いられる永久磁石材料としてはPt−Fe、Baフェライト等のフェライト磁石、Sm−Co磁石、ネオジム磁石等の薄膜などを用いることができる。
【0020】
このようなGMR素子の構成において、フリー磁性体層104の磁化状態によって電子の流れが変わることから、電気抵抗の変化として、フリー磁性体層104の磁界変化を引き起こす、検知対象磁界を検知する。なお、本実施形態においても傾斜面に各膜構成を形成する。その上で、実効的な磁界強度が膜面に対して強度が増す効果を用いて、磁界を検知させる。
【0021】
(磁界発生部)
本発明の複合センサーに使用される磁界発生部は、錘部を有して構成されている。錘部としては非磁性体であっても、磁性体であってもよい。磁界の発生は、永久磁石あるいは電磁石の少なくとも1つを用いて行うことができる。電磁石を用いる場合、コイルに鉄心などの強磁性体を用いることもできる。
【0022】
(錘)
図1(D)に示すように、錘12は、3軸方向の自由度を有する梁11によって支持されている。錘12を支持するための梁11の数は3方向に錘12が可動可能であればよく、特に制限されないが、たとえば錘12の重心が移動する方向と、梁11によって錘12の動く方向とが、一致するように梁11を設ける位置を設定することができる。
錘12を固定したり可動可能にするための固定手段としての磁性体としては、電磁石による磁性体あるいは永久磁石による磁性体を挙げることができる。これらは薄膜状に形成されたものであってもよく、その他の形状、たとえば微小磁石を複数配置した形状であってもよい。本発明の複合センサーに使用される磁界発生部13は、3軸方向の自由度を有する梁11によって支持された錘12を有しており、この錘12自体が磁性体である(すなわち永久磁石でありこの磁石の重みにより錘12が形成されている)構成を採用する場合、この他に磁性体を用いないで磁界発生部13を構成することができる。また錘12自体が磁性体であっても、この他の磁性体を有する構成を採用する場合、あるいは錘12自体が非磁性体である場合、本発明の複合センサーに使用される磁界発生部13は、磁性体を有して構成される。このような磁性体としては、前記同様に、電磁石による磁性体あるいは永久磁石による磁性体を挙げることができ、その形状なども前記同様である。たとえば磁性体として電磁石を採用した場合、コイル状に形成したり、ミアンダー構造(meander structure)を有して形成することもできる。
本発明の複合センサーは、好ましくは、傾斜面1sは基板内に設けられ、磁気検知素子10は基板内に存在し、また錘12は図1にあるように、基板上に設けられる。
以下、本発明の複合センサーを、実施形態により、さらに具体的に説明する。
【0023】
〔実施形態1〕
磁気抵抗素子10を用いた磁気センサー部を有する構成例を示す。モーションセンサーとして、本実施形態1では、加速度センサーを例にして説明する。
図1に、本発明の複合センサーの磁気センサー部についての作製方法を示す。
図1に示すように、基板1として、板状のSi基板を用い、この基板1の片面にKOHを用いて異方性エッチングを行う。これによって傾斜面1sを4辺有する四角錐台の形状のくぼみをSi基板の前記片面に形成させることができる(図1の(A))。この四角錐台のくぼみが形成された前記片面の傾斜面上に、基板の材料のSiを熱酸化させることによって膜状のSiO2層を設け、このSiO2層上に磁気検知素子10を形成させる(図1の(B))。この磁気センサー部については後述する。
その後、図1(C)に示すように、四角錐台の上面にSOI(Silicon On Insulator)基板部11a、12aを貼り合わせにより取り付けたのち、錘12をSiにより、パターニングして形成させる。梁11についてはSiO2により構成させる。SiO2のエッチングにはRIE法を用い、Siのエッチングについては、エッチングする箇所以外をレジスト等でマスクした後に、KOHを用いてエッチングして形成したり、RIEエッチングすることにより形成させることができる(図1の(D))。本実施形態では梁をSiO2で形成させる例を示したが、梁をSiで形成させてもよい。
次に、図2に示すように、磁界発生部として、コイル配線13を錘12上に配置させる。Al、Cu等の配線材を成膜した後にフォトリソグラフ法(フォトリソ法)によりコイル状に形成でき、また、場合によってシャドウマスクを用いてコイル状に形成させることも可能である。図2に示す磁界発生部では、錘12の4辺に沿うようにコイル配線13が形成されている例を示す。そして入力/出力線14は、図2(C)に有るように、梁11の1つの上に形成されている例を示している。
【0024】
本発明のセンサーの場合、梁11は三軸(x軸、y軸、z軸)の自由度をもって形成させることが可能である。そして、それぞれの軸への自由度を有する(方向の)加速度を測定可能とするために、加速度による錘への力を、錘を支える梁の反力(−F)によって、移動(たとえばx軸方向(この場合には−Fx(=Kx・X:ただしKxはx軸方向の梁の弾性率であり、y軸方向およびz軸方向の梁の弾性率は、それぞれ、Ky、Kzで表される。またXはその梁のx方向の変位であり、y軸方向およびz軸方向の梁の変位は、それぞれ、Y、Zで表される。これらは前記したフックの法則に従っている。))を妨げた分を移動量として検知する。その移動量は錘12と磁気検知素子10−1、・・・、10−nとの距離が変わることによって、磁界が変化するので、この磁界の変化量を磁気検知素子10(10−1、・・・、10−n)によって検知して測定することができる。ここで重要なのは、支持部材(梁11)の強度を広い範囲に設定可能であることである。さらに、必要に応じて、一軸(x軸、y軸またはz軸方向のいずれか)、二軸(x軸とy軸、y軸とz軸またはz軸とx軸)、三軸(x軸、y軸、z軸)という選択も自在に設定可能である。高感度に設定するために比較的撓み易くすると実現できる。たとえば2G以上であるような高いG(Gal:重力加速度)に対する場合、撓みにくいものとすることで実現可能である。
なお、0Gより大きく、2G程度までの範囲の測定に本発明の複合センサーを使用する時に、広く安定に3軸方向の加速度を検知させるには、梁11は3本、もしくは4本で支える構造とすることが望ましく、3軸加速度ベクトル成分のそれぞれを十分、分離して検知することができる。
【0025】
ばね性を持つように、たとえば前記した梁11をミアンダー構造(meander structure)を有してもよい。
図2に示す錘12の支持構造は精度と必要な強度に応じて選択可能である。強度が十分でない場合には、必要に応じ、片持ち梁や2本、あるいは3以上でもよい。
また、1軸方向に精度が必要であり、他の軸は検知できる最小限度の範囲程度でもよい場合などの別用途によって、5本以上の本数でもよい。
【0026】
図3に本発明の複合センサーにおいて磁気抵抗素子を用いた例を示す。
トンネル型磁気センサー(TMR磁気センサー:Tunneling Magneto Resistance)は、高感度性が特徴であり、たとえば図3(A)に示すように、フリー磁性体層(磁性金属層)104/絶縁層103/磁性体層(磁性金属層)102/(PIN層100)/反強磁性体層101/基板1の構成で示される構造を有している。ここで用いられる絶縁層103は1nm前後の無機薄膜で構成される。いわゆるスピンバルブ構造をPIN層100として設けるが、このPIN層100は反強磁性体層101と磁性体層102との界面で交換相互作用によって磁化状態が固定されるものであり、磁化固定層とも呼ばれる。TMR磁気センサーは、フリー磁性体層104とPIN層100との相対的な角度によってトンネル確率が変化することによって、抵抗値が変化していく現象を用いてフリー磁性体層の磁化変化を検知する方式である。この方式では、PIN層100の性能はフリー磁性体層104の性能とともに重要である。PIN層100は、磁場中熱処理法により、調整を行い、各面に配置したセンサー素子のそれぞれを1軸検知可能なように形成している。
【0027】
磁気検知素子の外形を設定し、磁気センサー特性と傾斜面に形成させたことを利用し、真空中で磁界中熱処理することで、PIN層に磁化の方向を所望の方向に設定すること(PIN層において、磁化の方向を所望の方向に設定すること)が可能である。磁界中熱処理温度、磁界条件などの製造条件によって、また、PIN層の大きさ、各層の厚さの比などによって、所望の特性を適宜変えることができる。
必要に応じて、磁気検知素子10−1、・・・、10−nの外形形状を方形以外の円形、楕円形、非対称な形等に設定することにより、磁界の感度領域等を変更可能となる。ただし、磁気検知素子の外形形状は同一の形だけで構成しなくてもよい。なお、検知軸を十分設定することができれば、垂直の面に配置する構成でもよい。
【0028】
基板の傾斜面1sは、3面独立に設定できれば3軸方向の検知が可能であるので、3角錐状に形成したり、多角錐や円錐およびその一部に形成させることでもよい。すなわち計測するのはベクトル量であるので、x軸、y軸、z軸に相当する成分を検知することができれば3軸検知可能である。なおこの場合に各軸(x軸、y軸、z軸)は、互いに直交しなくてもよい。すなわち直交座標系以外の座標系(斜方座標系など)であってもよい。
磁界中熱処理時に印加される磁界は一様でも、また、非一様でもよい。磁界中熱処理は真空中で行うことが望ましいが、必要に応じて、減圧下あるいは大気圧下においても可能な場合がある。印加磁界強度は0Oeより大きく10kOe程度まで、実用上、数100Oeから数kOeが好適であり、本発明では、数10Oe以下でも十分機能するデバイスを実現可能である。
【0029】
前記説明において、磁気検知素子として、TMR素子を例にして説明した。しかし本発明では、この磁気検知素子として、図3(B)に示す縦型および、図3(C)に示す通常型のGMR素子を用いることもできる。これらGMR素子の両者の違いは電流の流す向きに関係している。縦型では図3(B)の縦型GMR構成に示すように、膜面(横方向)に対して垂直方向に流し、通常型では図3(C)のGMR構成に示すように膜面方向(横方向)に流す。層構成としては図3(A)のTMR素子における絶縁層103を非磁性金属にしたものである。いずれもPIN層を有し、磁界中熱処理(磁界中でのアニーリング)により、PIN層も着磁方向を感磁軸として構成することができる。
【0030】
[モノリシックに構成された複合センサーの実施例]
図4に複合センサーの全体回路ブロック図を示し、全体をモノリシック構造(すなわち1個の半導体結晶上に作られたセンサーも含めた集積回路あるいはモジュール)に形成した一例を示す。チップ部品で構成することも可能であるが、本実施形態2に示す構成では、極めて小さなセンサーモジュールとすることが可能となる。
図4に示すように、各センサ素子部(10−1、・・・、10−n)からの信号をセンサー部m1より、マルチプレクサm2を介して増幅部m3で増幅させ、A/D変換部m4によりA/D変換した後に信号処理部m5からデジタル信号として出力する(図4では「測定データ」として出力)。加速度センサーと磁気センサー(地磁気センサー)の切り替えは磁界発生用電流源m6のON−OFFにより行なわれる。なお3軸検知(x軸、y軸、z軸)の例を示したが、3軸以下の場合も同様にして行うことができる。
より具体的には、図4に示すように、加速度センサーなど各センサー部m1から入力された信号が入力されるとマルチプレクサm2は、各センサ部(各センサー素子:10−1、10−2、・・・10−n(nは2以上の整数))からの信号を順に出力する。増幅器m3はマルチプレクサm2からの出力を増幅する。増幅された増幅器m3からの信号はA/D変換器m4でデジタル信号に変換される。このデジタル信号には、加速度センサーとして使用される場合のときと、角速度センサーとして使用される場合のときと、地磁気センサーとして使用されるときとでは、異なる情報から成り立っている。具体的には加速度センサーとして使用される場合の時では「重力に関する情報」と、y軸(あるいはx軸)方向の加速度に関する情報と、z軸に関する情報とが含まれている。また信号処理部m5として、CPUと、RAMなどのメモリ(揮発/不揮発メモリ)とROMとを有する構成とした場合には、この信号処理部m5に有するROMに、このCPUで読取り可能なコードで記述されたプログラム、アプリケーション、初期データおよび固定データなどが格納されている。
また、図5は図4に示す本発明の複合センサーの一例の動作例を示すフローチャートである。この図中、I群は第1の物理量(たとえば磁気検知(地磁気検知))に関するフローの部分であり、II群は第2の物理量(たとえば加速度検知)に関するフローである。他のフローチャートもこれと同様である。
またメモリには、前記したA/D変換器でデジタル信号に変換されたデータ(たとえばログ付きのデータ)、および前記データを補正するための補正データなどが格納される。またメモリには、CPUの作業用領域も設けられる。
【0031】
CPUは、ROMに格納されているプログラムに従い自由度を有する地磁気、加速度、角速度を求まるための物理量を求める処理を実行する。
例えば地磁気センサーとして各センサー素子(10−1、・・・、10−n)が使用される場合には、前記CPUは地磁気センサーとして検知開始された後にセンサー素子10−1をたとえば第1軸とし、・・・、10−nを第n軸とすると、これら第1軸、・・・、第n軸方向に関する磁気情報に基づいて地磁気の方位とその強度とを算出することができる。なお第1軸から第n軸において、第m番目のデータのみが強度的に得られる場合、あるいは2つ以上の複数の軸でデータの強度がある感度以上に大きい場合などにおいて、これらのデータのみを選択して、地磁気の方位、強度などを算出し、CPUへの負担を軽減したり、演算能力(演算速度など)を向上させたり、表示を早くすることもできる。
また例えば加速度センサーとして各センサー素子10−1、・・・、10−nが使用される場合にも地磁気センサーの場合とおおむね同様であるが、加速度の検知の場合には、基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘が動くことにより各センサー素子10−1、・・・、10−nに印加される磁界強度が変化し、この磁界強度の変化を各センサー部がセンシングすることにより各センサー部からの(3(軸)方向の自由度を有する)加速度に関する信号として得ることができる。
また例えば角速度センサーの場合には、後述する実施形態3(図11参照)で説明するように、複合センサーのz軸周りに回転させながら振動を例えばx方向に励震させてy方向のコリオリ力を検知して角速度を求めるようなジャイロセンサーを角速度センサーとする例を挙げることができる。
【0032】
〔センサーの動作例〕
本発明の複合センサーによる検知動作の流れを図4のフローチャートを用いて説明する。このセンサーは磁気センサーおよび加速度センサーであり一軸測定可能である。このセンサーが測定したデータを、ログを残しながらデータを累積して測定する場合を例にして説明する。
たとえば各センサー素子(センサー部m1)からのデータをその素子毎に別個独立して累積して測定する場合、センサーとして地磁気を測定するためのセンサーであれば、その設定精度として、0.01Oeとし、またセンサーとして重力加速度センサーであれば、その測定精度として0.01G(ガル)の精度に設定を行う。それぞれの測定データを累積していたデータのログとその都度比較して、新しい測定データをログの差が設定以下となればデータを次処理部に送り、電流発生部m6のON/OFFによって測定モードを切り替える。これを繰り返すことでセンサーは機能する。
なお、多軸測定時の各軸毎に測定を行なう場合、図4に示すマルチプレクサm2により切り替えることによって行なうことができる。または、マルチプレクサm2を省略し、各センサ素子(10−1〜10−n)のそれぞれから得られた信号を後段の信号処理回路(増幅部m3、A/D変換部m4、信号処理部m5)に送信するか、または時間差で各センサー素子(10−1〜10−n)からのデータを取り込む取り込み窓を設定することにより、各センサ素子からのデータ出力信号を独立に行って動作させることもできる。
【0033】
次に本発明の第2の複合センサーについて、説明する。
〔実施形態2〕
本発明の複合センサーの作製例を図6に示す。
実施形態1の作製と異なる部分を主に説明する。CoPt、CoCr、フェライト、FePtなどの磁石になりやすい磁性薄膜をスパッタなどで成膜し、図6に示すように、錘12の上にこの錘12の位置にあわせてパターニングして磁界発生部13を形成することができる。その後、錘12を支える梁11を形成させる。なお磁性薄膜は錘12の外形を作成するときに一緒に形成する。
磁界発生部13として、前記した磁性薄膜以外に、微小磁石を取り付けたり、あるいは磁性粉を含む塗料を塗布して薄膜を形成したり、あるいは錘自体を、磁石を用いて形成してもよい。
その後、図7に示すように、固定磁界部取り付け用支柱15、固定磁界取り付け梁16、および固定磁界部17とを設けた構成例とすることができる。この図に示す例では、各部品を組み立てて構成しているが、磁気検知モードの際(磁気測定時)に、可動の錘12を固定させることができる構成であればよく、平面的に構成することも可能である。
加速度の測定には永久磁石による磁界発生部と、磁気検知素子との距離(遠近)による磁気検知素子からの出力差により、加速度を検知する。
外部磁界測定時には固定磁界部に電流を流して錘の磁界発生部13(図7に示す例において、磁性薄膜で構成された薄膜磁石)が磁力で吸着固定される。このときには、磁気検知素子により、内部で発生している磁界分をオフセットとして除き、外部磁界相当分を区別して検知することができ、これによって正味の外部磁界の検知が可能である。
【0034】
本実施形態2に示す本発明の複合センサーでは、図1、図7及び図8を参照すれば明らかなように、梁11が4本の例を示す。
これらの図の例では、錘12を支える梁11が4本であり、3軸方向に自由に可動する例を示す。
磁気センサーも三軸検知可能に配置すれば、加速度も三軸測定(この三軸測定の3軸と梁の自由度の3軸方向とは一般に一致するようにしているが、これらは必ずしも一致しなくてよい。)が可能である。
さらに、わずかな電流を固定磁界部17に流して錘12を固着できるように固定磁界部17と錘12との距離を狭めることが可能となる。このように構成すると、固着させるための配線とぶつかって壊れることがなく、低消費電力向きの構成である。そして加速度を検知する際にはその電流も流していないので、さらに低消費電力の複合センサーを実現できる。
図8は錘12を磁性体で形成し、各面に磁気検知素子10を配置した加速度センサー部の例を示している。
【0035】
図9にモノリシック構造に構成した本実施形態の複合センサーの全体構成例を示す。なお各部をチップ部品で構成することも可能であるが、本構成では、極めて小さなセンサーモジュール(たとえばセンサー素子10−1などが1mm□(1mm四方)、あるいは更に小さい200 μm□など)として実現することが可能である。
図9に示すように、センサー部1mからの各軸毎の信号を、マルチプレクサm2を介して増幅部m3で増幅させ、A/D変換部m4でのA/D変換後に信号処理部m5から信号(測定データ)として出力する。加速度センサーと磁気センサーへの切り替えは、固定磁界部用電源部m7により固定磁界部の電流のON−OFFを通じて行なわれる。本実施形態でも3軸検知の例を示したが、必要に応じて少ない軸の例でもよい。
【0036】
本実施の形態2に示す複合センサーの測定動作の流れを、図10に示すフローチャートを用いて説明する。前記した実施形態1と同様に、本実施形態でも磁気測定および、加速度の一軸測定の例により、測定を累積させる場合の例で示す。累積して測定の設定精度、地磁気測定として、たとえば、0.01Oe以下の精度と、重力加速度の測定時には0.01Gの精度に設定を行い、それぞれの設定以下となればデータを次処理部に送り、固定磁界部用電源部のON、OFFを行い、測定モードを切り替える。この測定モードの切り替えを繰り返すことで別のセンシング(他の物理量の検知)を行って複合センサーとして、機能する。より具体的には、I群は、第1の物理量を測定するセンサーの動作を示すフローであり、II群は、第2の物理量を測定するセンサーの動作を示すフローに分けることができる。地磁気検知に関しては、図10に示すように、I群を地磁気検知とし、II群を加速度検知とした例で説明する。I群では、S102で錘固定用電源をONして磁界検知モード(地磁気検知モード)に移行すると(S13)、磁界検知を開始する(ステップS1)。検知の結果、磁界データを得ると(ステップS2、S3)、後続の信号処理部に磁界データを転送し(ステップS4)、固定磁界部用電源をOFFにする(ステップS101)。そして加速度の検知可能か否かを判定し(ステップS7)、Noの場合には加速度検知可能となるまで判定が行われ(ステップS7/No→ステップS7の判定)、加速度検知可能となれば(ステップS7/Yes)、ステップS8に進み加速度検知が行われ、得られた加速度データが十分な特性であれば信号処理部に加速度データを転送し(ステップS9)、前記したI群のセンシングが、前記同様に行われる。
なお、多軸測定時の各センサー素子(10−1〜10−n)による測定を行うには、図9に示すマルチプレクサm2による切り替えによって行なうことができる。また、マルチプレクサm2を用いずにたとえばソフトウェア的にウインドウ(たとえば周期的にIとIIを切り替える)を実行するなど、別構成で各軸を独立に動作させることも十分可能である。信号処理部にデータを転送するステップと、他の物理量を測定するためにIとIIとを切り替えるステップは同時に行ってもよく、どちらかを先に行ってもよい。他の動作例でも同様である。
【0037】
次に本発明の複合センサーの第3実施形態を説明する。
〔実施形態3〕
図11に本実施形態の複合センサーの構成例を示す。
本実施の形態3では、本発明の複合センサーにおいて、角速度検知可能とする構成の例であり、錘12を磁性体で形成した例を示す。なお、図11における支柱部は存在するがその部分はこの図では省略している。
コリオリ力を検知する方式を採用した例で示す。これは錘12をあらかじめ可動させておき、これに回転モーメントの付加によるコリオリ力(2mv×ω:mは回転している物体の質量、ω:回転速度(角速度)、v:物体の移動速度)を検知する。なお角速度ωと移動速度vとコリオリ力はいずれもベクトルであり、速度vと角速度ωとコリオリ力とは、それぞれ直交する関係にある。
【0038】
可動(励震)させるのは静電力を用いてもよく、磁界検知素子の検知に影響が小さければ、電磁力を用いてもよい。
なお、角速度を検知する方法として、錘を回転させこれを検知する方法も採用することもできる(たとえばこの場合回転軸方向をz軸に採り、x軸方向に励震し、y軸方向の振動を計測してコリオリ力を検知して測定する。)。この場合、錘の回転は一体となる磁界発生部も回転することを意味する。磁界発生部の回転に連動して、加速度を検知するのと同様に、磁界発生部と磁気検知素子との距離の差(遠近)により、錘と一体となった磁界発生部の回転を検知して、角速度ωを検知できる。図11に示すジャイロセンサーは、コリオリ力を検出して回転速度を検出するタイプのセンサーであり、振動のドライブ方向を縦方向(x方向)とし、角速度検知方向を横方向(y方向)にしている例を示す。このような振動を引き起こさせる振動ドライブとしては、PZT(鉛-亜鉛-チタン系)、ニオブ酸リチウムなどの圧電セラミックス、水晶などの圧電素子を用いた振動ドライブを挙げることができる。このような圧電素子に適宜電圧を印加して振動を周期的に図11に示すような振動ドライブの方向に発生させることができる。
本実施形態3のセンサーでは、加速度以外の実現が難しいジャイロセンサーを実現することができる。その際に小型でかつ、三軸センサーを簡便な構成で実現可能である。また、構成によっては加速度センサーとジャイロセンサーの同時(あるいは同時ではなく時間をずらして)測定が可能であるので、通常ジャイロセンサーとして3個必要であるのに対し(x、yおよびz方向として個別に3個)、本発明では、複合センサーとしてさらに小さな構成で実現可能である。
【0039】
次に本発明の複合センサーの第4実施形態について説明する。
〔実施形態4〕
図4に本実施形態4の複合センサーの構成例を示す。
本発明の複合センサーが、磁界状態や、加速度あるいは角速度が大きく変動する場合(例えば移動中である場合)の物理量の検知について、本実施形態で説明する。その場合に、検知結果の情報に応じ、変化の激しい物理量の検知において、その検知回数を多く設定したり、あるいは検知時間を長く設定し、各検知結果の精度を高めることが、本実施形態に示すように可能である。
図12に、測定回数を増加し、これらの測定結果を累積することにより、測定精度をあげる例を示す。
【0040】
具体的には、1mSの測定時間とし、データ累積回数を100回とすることができる。そして加速度センサーとして使用する場合には、その感度限界は0.2Gとし、地磁気センサーとして使用する場合にはその感度限界を30Oeとする。これらのセンサーを交互に切り替えて周期的に測定し、また、1つのセンサーでデータ累積回数を所定回数繰り返した後に他のセンサーに切り替えるようにすることもできる。その切替時間は、測定時間の十分の1程度(たとえば0.1mS)とすることができる。
本実施形態では、図12のフローチャートに示すように、たとえばまず磁気を検知(地磁気検知)をすることを例にして説明する。磁気検知が開始されると、磁気検知素子により、1以上の磁界の検知が行われる(ステップS1)。これによって磁界データが得られる(ステップS2)。
前記したステップS2により得られた磁界データにより十分な特性が得られたか否かを判定する(ステップS41)。
ステップS41により十分な特性が得られない場合には(ステップS41でNoの場合)、得られるまで磁気検知が行われ、十分な特性が得られた場合には(ステップS41でYesの場合)、信号処理部に得られた磁界データを転送し(ステップS4)、また、磁界発生用電源をONする(ステップS5)。
次いで、錘の配線(コイル)に電流が流されて磁界発生により加速度の検知可能とする(ステップS6)。
加速度の検知を行い(ステップS7)、検知可能であれば(ステップS7でYesの場合)加速度データを格納する(ステップS8)。検知が十分行われない場合(ステップS7でNoの場合)には、再び検知が行われる。前記の格納されたデータが十分な特性(十分な精度と十分な感度)で得られたか否かを判定し(ステップS42)、十分な特性が得られない場合(ステップS42でNoの場合)には、ステップS7に戻って十分な特性が得られるまで再測定を行い、十分な特性が得られた場合(ステップS42でYesの場合)には、信号処理部にデータを転送し(ステップS11)、錘の配線への電源供給のOFFまたは錘の固定を行い(ステップS12)、磁気検知モードに移行し(ステップS13)、以降、前記ステップS1に戻ってステップ1からの動作を繰り返す。
【0041】
なおステップS5とステップS4、およびステップS12とステップS11は、どちらのステップが先でも、後でもよく、また場合によっては同時であってもよい。また本実施形態でも他の実施形態と同様に、信号処理部m5では、センサー素子10−1、・・・、10−nから検知されたデータである地磁気データ、加速度データまたは角速度データの各情報に基づいて、方位データ、各方向別の加速度データまたは各方向別の角速度データを算出し、複合センサーが設置された物のこれらのデータから、各自由度に基づく物理量を算出し、表示等することができる。なおこれらの物理量は、各センサー素子からの検知データを取得した後に各地磁気データ、加速度データまたは角速度データを算出し、これら地磁気データなどの算出データから、メモリなどに保存されているかまたはテーブル形式にされた補正データを用いて前記した算出データを補正して補正後のデータを得る。この補正後のデータをメモリに保存し、あるいは表示等することができる。
【0042】
〔実施形態5〕
図13に本実施形態の動作例を示す。本実施形態の動作説明では、地磁気と加速度を検知する場合について記載するが、加速度に代えて角速度を検知するような複合センサーであってもよい。
本複合センサーは地磁気センサーと加速度センサーとを同一基板に形成させたものであり、磁気センサーモード時に十分な検知特性を有し、モーションセンサーモード時(加速度センサーモード時または角速度センサーモード時)に加速度と角速度の少なくとも何れかの電流値を変える事とした。これにより構造が同じでも磁界感度を変えて、加速度および角速度に応じた測定出力を変化させるようにすることができる。
センサー素子部で十分な分解能を、ダイナミックレンジを持つ場合にセンサー素子に接続する回路側のレンジの切り替えにより比較的容易に実現できる。
たとえば錘と梁を高Gでも壊れなくし、比較的低いGで撓み量が少ない場合でも、検知のセンサー部が高感度であるので広いダイナミックレンジを実現可能となる。このような本実施形態の複合センサーを用いて、ダイナミックレンジにより、適度な感度強度にして、第1及び第2の物理量を好ましくは自動的に検知可能である。より具体的には、図13に示すように、モーションセンサーモード(加速度センサーモードまたは角速度センサーモード)による検知の際に、ステップS201に示すように、たとえば、閾値を設け、たとえば閾値A、Bを設け、閾値Aを越えない場合には小レンジ領域での測定とし、閾値Aを越え、閾値Bを越えない場合には中レンジ領域とし、閾値Bを越えれば大レンジ領域などと3領域に分割してレンジ範囲を分けて測定するなど、自在に換えることができる。
このため、多数の測定レンジに応じて、センサーの数を必要とする従来のセンサーに比して、本実施形態に示す複合センサーでは、その物理量を測定する検知部が1個(1種類:1組)のセンサーで対応可能である。必要に応じて、測定レンジも、可変設定可能であって、測定対象を選ばないセンサーとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の複合センサーの製造工程を示す図であり、(a)は基板に斜面を形成するためのエッチング工程で製造された内部に斜面有する基板であり、(b)は(a)の工程により形成した斜面に磁気検知素子を形成する工程であり、(c)はSOI基板の貼り合わせの工程であり、(d)は錘部を形成するためのパターニング工程である。
【図2】3方向の自由度を有する錘の動作により3方向検知可能な複合センサーの第1の例を示す構成図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)の錘を含む梁の部分での切断断面図であり(この図ではコイルによる発生磁界も示す)、(C)は(A)のA部拡大図であり、(D)は複合センサーを斜め上方向から見た全体構成図である。
【図3】本発明の複合センサーの感知部として磁気抵抗素子を用いた層構成例を示したものであり、(A)はTMR(Tunneling Magneto Resistance)素子を用いた例であり、(B)及び(C)はGMR(Giant Magneto Resistance)素子を用いた例である。
【図4】本発明の複合センサーのセンサー形成用Si基板の電気的な回路ブロック図である。
【図5】本発明の複合センサーの動作例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の複合センサーの他の例を示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図7】本発明の複合センサーのもう1つ別の構成例を示す図である。
【図8】本発明の複合センサーのもう1つ別の構成例を示す図であり、錘部を磁性体で構成しモーションセンサーとして加速度センサーに適用された場合の構成例を示す図である。(A)はその正面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図9】本発明の複合センサーのセンサー形成用Si基板の他の電気的な回路ブロック図である。
【図10】実施の形態2に示す複合センサーの測定動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の複合センサーのもう1つ別の構成例を示す図であり、錘部を磁性体で構成しモーションセンサーとして角速度センサー(ジャイロセンサー)に適用された場合の構成例を示す図である。Z軸が回転軸である場合の例を示す。(A)はその正面図であり、(B)は(A)のA−A線図断面である。
【図12】測定回数を増加し、これらの測定結果を累積して測定(信号の)精度をあげる例を示す複合センサーを用いた動作例を示すフローチャートである。
【図13】ダイナミックレンジを持つ場合に素子に接続する回路側のレンジの切り替えにより容易に実現できる複合センサーを用いた場合の動作例を示すフローチャートである。
【図14】従来のセンサー(特許文献1)の構成例を示す図であり、(A)は特許文献1の図1であり、(B)はその図2をそれぞれ示す。
【図15】従来のセンサー(特許文献2)の構成例を示す図である。
【図16】従来のセンサー(特許文献3)の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基板
10 磁気感知部(センサー素子)
11 梁
12 錘
13 磁界発生部
14 入力/出力線
15 固定磁界部取り付け用支柱
16 固定磁界部取り付け梁
17 固定磁界部
100 PIN層
101 反強磁性体層
102 磁性層
103 絶縁層
104 フリー層(フリー磁性体層)
106 非磁性金属層
107 電極
m1 検知部(センサー部)
m2 マルチプレクサ
m3 増幅部
m4 A/D変換部
m5 信号処理部
m6 磁界発生用電流源
m7 固定磁界部用電源部
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度などを検知することの可能な複合センサーに関する。特に、簡便な製造方法で実現させた構成を有する複合センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、速度、加速度等を測定するための様々なセンサーが知られている。このようなセンサーとして、たとえば特許文献1に記載の発明を挙げることができる。この文献に開示されたセンサーは、検出素子として磁気検出素子、具体的には複数のGMR素子を用い、錘と一体となった可動コイルに電流が流れた場合にその磁界変化を検知して錘を支える梁抗力に応じた加速度を検知する外部磁界及び加速度をセンシングするセンサーであり、このセンサーはまた、角速度の測定が可能なセンサーでもある。
しかしながら、このセンサーの検知方向は2軸方向が限度であり、特許文献1を見る限り、3軸方向への具体的な解決手段は何ら開示されてはいない。
また、この発明では、錘の周囲に磁気検出素子を複数配置しており、個々の素子が大きく、小型化するには限度があり困難である。
【0003】
また特許文献2には、半導体加速度センサの発明が記載されている。この公報にはSi半導体の微細加工技術を用いて薄膜磁気抵抗素子を上部に有する錘部を形成し、印加加速度については、可動電極(おもり部)が変位し、それによって、センサ内部の上側及び下側のコンデンサ部の静電容量値が変化し、これを回路(C−Fコンバータ等)によって加速度を検出することが開示されている。
また特許文献3には、磁気加速度センサの発明が開示されている。この公報に記載のセンサーはドーム状バネ等に印加される加重から、このバネの有するヒステリシスにより加速度を得ることによって、自動車の速度制御や地震の震度などの検出等に用いる加速度センサーである。
しかしながら、これらの公報にも3軸方向にセンサーを配置させること、また、可動部を固定させて、磁気センサーとして併用させることは、何ら開示されてはいない。
また特許文献4には、磁性薄膜による磁界と電流によるローレンツ力によって、励振部と角速度に応じたコリオリ力を櫛型電極間の静電容量によって検知して、角速度をセンシングする発明が開示されている。
特許文献5〜6には、3軸ベクトル以上の方向に独立して配置されて地磁気を検知対象とする磁気検知素子あるいは磁気センサーが開示されている。
また特許文献7には、センサーを直交座標系の3軸上に配置して、センサー、検知手段、予め出力した絶対値との比較手段および報知手段をもつシステムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−98078号公報
【特許文献2】特開平9−203748号公報
【特許文献3】特開平5−157765号公報
【特許文献4】特開2006−189361号公報
【特許文献5】特開2002−207071号公報
【特許文献6】特開2003−167039号公報
【特許文献7】特開2003−008101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたものであって、高感度なモーションセンサーとして三軸検知可能であり、また磁界センサーとして使用可能で、簡便な構成で、小型で、かつ低消費電力の複合センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、
前記基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘を有する磁界発生部と、
を備えた複合センサーであって、
前記磁気検知素子により第1の物理量の外部磁界を検知可能であると共に、
前記錘を有する磁界発生部の位置変動による前記磁気検知素子の出力の差に基づいて第2の物理量を検知することを特徴とする。
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複合センサーにおいて、前記第2の物理量は加速度または角速度であることを特徴とする。
また請求項3に記載の複合センサーの発明は、請求項1または2に記載の複合センサーにおいて、前記磁界発生部の電流値を変えて加速度または角速度の検知感度の少なくとも1つを可変可能とすることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、
三軸方向の自由度を有する梁に支持された錘と、前記錘に設けられた配線部とからなる磁界発生部と、
を備えた複合センサーであって、
前記磁界発生部は永久磁石と、前記永久磁石を固定する固定磁界部とを有し、前記固定磁界部は空芯コイルまたは鉄心付き電磁石を有し、
前記固定磁界部に電流が流れていないときは、前記磁界発生部の前記三軸方向の少なくとも1方向の平行移動に伴う前記永久磁石による印加される磁力の変化による前記磁気検知素子の出力の差により加速度を検知し、
前記固定磁界部に電流が流れているときは、前記磁気検知素子により内部で発生している磁界分をオフセットとして除いて外部磁界を検知することを特徴とする。
また請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの複合センサーにおいて、前記磁界発生部の回転に伴う前記磁界発生部と前記磁気検知素子との距離の差に基づいて角速度を検知することを特徴とする。
また請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの複合センサーにおいて、前記磁界発生部または前記固定磁界部に電流を流すための磁界発生用電源に信号処理部を設け、各センサーの切り替え比率を変更することを特徴とする。
また請求項7に記載の発明は請求項1〜6のいずれかの複合センサーにおいて、前記磁気検知素子は、TMR(Tunneling Magnetic Resistance、トンネル磁気抵抗効果)素子またはGMR(Giant Magnetic Resistance、巨大磁気抵抗効果)素子の少なくとも1つを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1個のセンサーで2以上の物理量をセンシングすることができ、また小型のセンサーとして用いる構成としている。
さらに、センサーとして加速度センサーの加速度検知の場合、通電を伴わないか、または磁気検知の際の錘(磁石)の固着の際の電流値が十分小さな電流値で検知可能な複合センサーを提供することができる。
また、加速度センサーモードの際の感度も請求項1に記載の発明では電流値によるので、磁石とすることで、低消費電力であり、かつ、高感度なセンサーを提供することができる。
本発明によれば、同一の機構で少なくとも2種類の物理量を検知するセンサーの構成を共通化でき、また検知が必要な場合に、その検知感度を変えて、容易に検知情報を効率よく検知可能であって、外部の測定状態に応じた柔軟な変更が可能となる。
本発明の複合センサーは、錘部の配線に流す電流を調整することによって検知感度を変えることができるので、多数の測定レンジに応じて複数のセンサー部を必要とする従来例に比べ、一個のセンサーでカバーできセンサーの小型化にさらに寄与する。そして本発明では検知部のみならず、信号処理系、センサーによって求められた結果を表示する表示系も共に共通のものを用いることができる。
また、必要に応じて、測定範囲のレンジを優先に設定する場合にも可変設定可能であって、測定範囲を広く設定できるセンサーとすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の複合センサーを、実施形態により、詳細に説明する。
本発明の複合センサーは、傾斜面が設けられた基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、梁に支持された錘を有する磁界発生部とを備えた、外部磁界と加速度あるいは角速度などを検知可能な複合センサーである。
本発明の複合センサーを用いて加速度などの物理量を測定する場合、通常、センサーを水平に設置して測定を行うため、前記の傾斜面は水平面に対して特定の角度を有する面となり、測定すると必ずx軸またはy軸の少なくとも1軸とz軸方向の測定結果を含むことになる。この傾斜面は、たとえば基板を水平方向にセッティングし、基板の上面からエッチング液を用いて加工したりRIE(Reactive Ion Etching)法などにより加工する加工方法を用いて基板の深さ方向に傾斜面を得ることができるが、これら加工方法には限定されない。本発明の複合センサーは、前記したこのような基板の傾斜面に磁気検知素子が設けられると共に、梁に支持された錘を有する磁界発生部とを備えている。
以下、基板、磁気検知素子および磁界発生部について、説明する。
【0009】
(基板)
基板1としては、Siなどの半導体基板、非導電性セラミック、導電性セラミック、金属板に絶縁層を設けた基板等を用いることができる。
これらの基板を用いて異方性エッチング法などによって傾斜面1sを設けることができる。
本発明の複合センサーは、傾斜面を設けた基板の前記傾斜面に磁気検知素子が設けられている。
【0010】
(磁気検知素子)
本発明の複合センサーに使用される磁気検知素子10としては、好ましくは、TMR素子またはGMR素子を用いることができる。
TMR素子としては、図3(A)に示すように、基板1上に反強磁性体層101と、磁性体層102と、絶縁層103とフリー層(フリー磁性体層)104とから構成される。フリー層104は、外部磁界の向きに応じて磁化の方向が変化する層であり、一方、磁性体層102と反強磁性体層101との界面層であるPIN層100は、外部磁化の向きに関わらず磁化の方向が固定される層(磁化固定層)である。また、絶縁層103は、フリー層104およびPIN層100に挟持されトンネル層としての役割を果たす層である。
【0011】
実際には、磁気検知素子10の近傍に、錘を有する磁界発生部を近接させているので、これにより、磁場を磁気検知素子10の膜面内に引き込んで、傾斜方向のうちの、膜面での射影分で実効磁場を発生させて、目的のPIN層方向の磁化変化を起こす。
【0012】
さらに、他の法線成分をもつ膜面においては、90度異なる向きへ向くような構成とすることが可能である。フリー層104とPIN層100とは、通常、90度程度の相対角度を持たせることによって良好な特性を発揮することが可能である。
【0013】
TMR素子としては、基板1の傾斜面1s上に、例えばFe−Niのような反強磁性体層101とCo−Feなどの磁性体層102とで構成されたPIN層100が積層される。そして、このPIN層100の上部に絶縁層103を積層して、さらにその上層にフリー磁性体層104を積層する。絶縁層103としては、SiO2などの絶縁材料や、Al2O3のような非磁性金属酸化物などが用いられる。また、フリー磁性体層104としては、例えばCo−Feなどを用いて形成してもよい。
【0014】
また、各素子部10−1〜10−4(図1(B)参照)はTMR素子に限定されず、図3(B)に示すようなGMR素子を用いることも可能である。なお、本実施形態のGMR素子としてはスピンバルブ型を用いている。
【0015】
GMR素子としては、前記したTMR素子の絶縁層103を非磁性金属層に置き換えることによって得られる。
このようなGMR素子としては、図3(B)図に示すように、基板1上に、例えば、Mn−Irのような反強磁性体層101と、Coなどの磁性体層102と、Cu、Alなどの非磁性金属層106と、Fe−Co、Ni−Feのようなフリー磁性体層104を積層する。そしてこの順番で積層された各層を、電極部107によって両端から挟持するようにして設け、電流を膜内(積層体の膜)に流す構成としている。また、GMR素子としては、図3(C)に示すような縦型GMR素子としてもよく、この場合には、一方の電極部107aをフリー磁性体層104の上部に配置し、もう一方の電極部107bを反強磁性体層101および磁性体層102の側部(一端部)に配置して、電流を膜面に垂直に流す構成としている。
【0016】
上記したTMR素子などの磁気検知素子は、たとえば以下のような工程により、製造することができる。
まず、基板上に予め形成された傾斜面に対し、所望の層構成を有する素子の各膜を成膜する。成膜される素子の各膜(層)としては、前述した図3(A)〜(B)などの層構成が挙げられる。次に、成膜された各層にフォトリソ法を用いてパターン形状を形成する。そしてパターニングされた素子に保護層を形成する。
【0017】
ここで、磁場中熱処理(外部磁場を印加しながら磁気検知素子を含む基板に熱処理)を施す。このとき、素子を含む基板への磁場印加方向は、基板の傾斜面に対して垂直以外の方向になるように形成する。そして、磁場中での熱処理(以下、磁場中熱処理という)に基づきPIN層の磁化方向がこの磁場中熱処理における印加磁場方向できまり、温度が変更されて(温度が低下して)PIN層の磁化方向が決定する。前記磁場中熱処理として、熱処理温度として、例えば300℃程度でPIN層の磁化される方向を決定した後、250〜200℃程度で異なる外部磁界の方向を(たとえば90度)かえても、この決定された磁化方向は維持される。
【0018】
PIN層の磁化方向が確定した後、さらに、再度磁場中熱処理を施す。このときの磁場印加方向は、基板面に対して平行になるように印加する。そして、磁場中熱処理中、素子が徐々に冷却されて、フリー磁性体層104の磁化容易方向も確定する。このときPIN層100の磁化方向は確定しているのでその方向は変更されない。
【0019】
また、本実施形態では、磁気検知素子として使用される磁気抵抗効果素子に、永久磁石薄膜などの高保磁力を有する部材を用いることも可能である。
図8は、磁気検知素子として磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサーの素子部に、永久磁性体部材を用いた場合の構成を示す図である。図8(A)は、本発明の複合センサーを上部から見た図であり、図8(B)は、図8(A)のA−A線における本発明の複合センサーの側部断面図である。なお、ここでは、磁気検知素子にGMR素子を用い、このGMR素子には、各層の両側に電極を配置して膜内に電流を流す、いわゆる通常型のGMR素子を用いた例を示す。素子部10の両端に引き出し電極薄膜部を設けることができる(図示せず)。また図8に示す例では、素子部10にTMR素子を使用することもできる。
永久磁石薄膜などの高保磁力を有する部材に用いられる永久磁石材料としてはPt−Fe、Baフェライト等のフェライト磁石、Sm−Co磁石、ネオジム磁石等の薄膜などを用いることができる。
【0020】
このようなGMR素子の構成において、フリー磁性体層104の磁化状態によって電子の流れが変わることから、電気抵抗の変化として、フリー磁性体層104の磁界変化を引き起こす、検知対象磁界を検知する。なお、本実施形態においても傾斜面に各膜構成を形成する。その上で、実効的な磁界強度が膜面に対して強度が増す効果を用いて、磁界を検知させる。
【0021】
(磁界発生部)
本発明の複合センサーに使用される磁界発生部は、錘部を有して構成されている。錘部としては非磁性体であっても、磁性体であってもよい。磁界の発生は、永久磁石あるいは電磁石の少なくとも1つを用いて行うことができる。電磁石を用いる場合、コイルに鉄心などの強磁性体を用いることもできる。
【0022】
(錘)
図1(D)に示すように、錘12は、3軸方向の自由度を有する梁11によって支持されている。錘12を支持するための梁11の数は3方向に錘12が可動可能であればよく、特に制限されないが、たとえば錘12の重心が移動する方向と、梁11によって錘12の動く方向とが、一致するように梁11を設ける位置を設定することができる。
錘12を固定したり可動可能にするための固定手段としての磁性体としては、電磁石による磁性体あるいは永久磁石による磁性体を挙げることができる。これらは薄膜状に形成されたものであってもよく、その他の形状、たとえば微小磁石を複数配置した形状であってもよい。本発明の複合センサーに使用される磁界発生部13は、3軸方向の自由度を有する梁11によって支持された錘12を有しており、この錘12自体が磁性体である(すなわち永久磁石でありこの磁石の重みにより錘12が形成されている)構成を採用する場合、この他に磁性体を用いないで磁界発生部13を構成することができる。また錘12自体が磁性体であっても、この他の磁性体を有する構成を採用する場合、あるいは錘12自体が非磁性体である場合、本発明の複合センサーに使用される磁界発生部13は、磁性体を有して構成される。このような磁性体としては、前記同様に、電磁石による磁性体あるいは永久磁石による磁性体を挙げることができ、その形状なども前記同様である。たとえば磁性体として電磁石を採用した場合、コイル状に形成したり、ミアンダー構造(meander structure)を有して形成することもできる。
本発明の複合センサーは、好ましくは、傾斜面1sは基板内に設けられ、磁気検知素子10は基板内に存在し、また錘12は図1にあるように、基板上に設けられる。
以下、本発明の複合センサーを、実施形態により、さらに具体的に説明する。
【0023】
〔実施形態1〕
磁気抵抗素子10を用いた磁気センサー部を有する構成例を示す。モーションセンサーとして、本実施形態1では、加速度センサーを例にして説明する。
図1に、本発明の複合センサーの磁気センサー部についての作製方法を示す。
図1に示すように、基板1として、板状のSi基板を用い、この基板1の片面にKOHを用いて異方性エッチングを行う。これによって傾斜面1sを4辺有する四角錐台の形状のくぼみをSi基板の前記片面に形成させることができる(図1の(A))。この四角錐台のくぼみが形成された前記片面の傾斜面上に、基板の材料のSiを熱酸化させることによって膜状のSiO2層を設け、このSiO2層上に磁気検知素子10を形成させる(図1の(B))。この磁気センサー部については後述する。
その後、図1(C)に示すように、四角錐台の上面にSOI(Silicon On Insulator)基板部11a、12aを貼り合わせにより取り付けたのち、錘12をSiにより、パターニングして形成させる。梁11についてはSiO2により構成させる。SiO2のエッチングにはRIE法を用い、Siのエッチングについては、エッチングする箇所以外をレジスト等でマスクした後に、KOHを用いてエッチングして形成したり、RIEエッチングすることにより形成させることができる(図1の(D))。本実施形態では梁をSiO2で形成させる例を示したが、梁をSiで形成させてもよい。
次に、図2に示すように、磁界発生部として、コイル配線13を錘12上に配置させる。Al、Cu等の配線材を成膜した後にフォトリソグラフ法(フォトリソ法)によりコイル状に形成でき、また、場合によってシャドウマスクを用いてコイル状に形成させることも可能である。図2に示す磁界発生部では、錘12の4辺に沿うようにコイル配線13が形成されている例を示す。そして入力/出力線14は、図2(C)に有るように、梁11の1つの上に形成されている例を示している。
【0024】
本発明のセンサーの場合、梁11は三軸(x軸、y軸、z軸)の自由度をもって形成させることが可能である。そして、それぞれの軸への自由度を有する(方向の)加速度を測定可能とするために、加速度による錘への力を、錘を支える梁の反力(−F)によって、移動(たとえばx軸方向(この場合には−Fx(=Kx・X:ただしKxはx軸方向の梁の弾性率であり、y軸方向およびz軸方向の梁の弾性率は、それぞれ、Ky、Kzで表される。またXはその梁のx方向の変位であり、y軸方向およびz軸方向の梁の変位は、それぞれ、Y、Zで表される。これらは前記したフックの法則に従っている。))を妨げた分を移動量として検知する。その移動量は錘12と磁気検知素子10−1、・・・、10−nとの距離が変わることによって、磁界が変化するので、この磁界の変化量を磁気検知素子10(10−1、・・・、10−n)によって検知して測定することができる。ここで重要なのは、支持部材(梁11)の強度を広い範囲に設定可能であることである。さらに、必要に応じて、一軸(x軸、y軸またはz軸方向のいずれか)、二軸(x軸とy軸、y軸とz軸またはz軸とx軸)、三軸(x軸、y軸、z軸)という選択も自在に設定可能である。高感度に設定するために比較的撓み易くすると実現できる。たとえば2G以上であるような高いG(Gal:重力加速度)に対する場合、撓みにくいものとすることで実現可能である。
なお、0Gより大きく、2G程度までの範囲の測定に本発明の複合センサーを使用する時に、広く安定に3軸方向の加速度を検知させるには、梁11は3本、もしくは4本で支える構造とすることが望ましく、3軸加速度ベクトル成分のそれぞれを十分、分離して検知することができる。
【0025】
ばね性を持つように、たとえば前記した梁11をミアンダー構造(meander structure)を有してもよい。
図2に示す錘12の支持構造は精度と必要な強度に応じて選択可能である。強度が十分でない場合には、必要に応じ、片持ち梁や2本、あるいは3以上でもよい。
また、1軸方向に精度が必要であり、他の軸は検知できる最小限度の範囲程度でもよい場合などの別用途によって、5本以上の本数でもよい。
【0026】
図3に本発明の複合センサーにおいて磁気抵抗素子を用いた例を示す。
トンネル型磁気センサー(TMR磁気センサー:Tunneling Magneto Resistance)は、高感度性が特徴であり、たとえば図3(A)に示すように、フリー磁性体層(磁性金属層)104/絶縁層103/磁性体層(磁性金属層)102/(PIN層100)/反強磁性体層101/基板1の構成で示される構造を有している。ここで用いられる絶縁層103は1nm前後の無機薄膜で構成される。いわゆるスピンバルブ構造をPIN層100として設けるが、このPIN層100は反強磁性体層101と磁性体層102との界面で交換相互作用によって磁化状態が固定されるものであり、磁化固定層とも呼ばれる。TMR磁気センサーは、フリー磁性体層104とPIN層100との相対的な角度によってトンネル確率が変化することによって、抵抗値が変化していく現象を用いてフリー磁性体層の磁化変化を検知する方式である。この方式では、PIN層100の性能はフリー磁性体層104の性能とともに重要である。PIN層100は、磁場中熱処理法により、調整を行い、各面に配置したセンサー素子のそれぞれを1軸検知可能なように形成している。
【0027】
磁気検知素子の外形を設定し、磁気センサー特性と傾斜面に形成させたことを利用し、真空中で磁界中熱処理することで、PIN層に磁化の方向を所望の方向に設定すること(PIN層において、磁化の方向を所望の方向に設定すること)が可能である。磁界中熱処理温度、磁界条件などの製造条件によって、また、PIN層の大きさ、各層の厚さの比などによって、所望の特性を適宜変えることができる。
必要に応じて、磁気検知素子10−1、・・・、10−nの外形形状を方形以外の円形、楕円形、非対称な形等に設定することにより、磁界の感度領域等を変更可能となる。ただし、磁気検知素子の外形形状は同一の形だけで構成しなくてもよい。なお、検知軸を十分設定することができれば、垂直の面に配置する構成でもよい。
【0028】
基板の傾斜面1sは、3面独立に設定できれば3軸方向の検知が可能であるので、3角錐状に形成したり、多角錐や円錐およびその一部に形成させることでもよい。すなわち計測するのはベクトル量であるので、x軸、y軸、z軸に相当する成分を検知することができれば3軸検知可能である。なおこの場合に各軸(x軸、y軸、z軸)は、互いに直交しなくてもよい。すなわち直交座標系以外の座標系(斜方座標系など)であってもよい。
磁界中熱処理時に印加される磁界は一様でも、また、非一様でもよい。磁界中熱処理は真空中で行うことが望ましいが、必要に応じて、減圧下あるいは大気圧下においても可能な場合がある。印加磁界強度は0Oeより大きく10kOe程度まで、実用上、数100Oeから数kOeが好適であり、本発明では、数10Oe以下でも十分機能するデバイスを実現可能である。
【0029】
前記説明において、磁気検知素子として、TMR素子を例にして説明した。しかし本発明では、この磁気検知素子として、図3(B)に示す縦型および、図3(C)に示す通常型のGMR素子を用いることもできる。これらGMR素子の両者の違いは電流の流す向きに関係している。縦型では図3(B)の縦型GMR構成に示すように、膜面(横方向)に対して垂直方向に流し、通常型では図3(C)のGMR構成に示すように膜面方向(横方向)に流す。層構成としては図3(A)のTMR素子における絶縁層103を非磁性金属にしたものである。いずれもPIN層を有し、磁界中熱処理(磁界中でのアニーリング)により、PIN層も着磁方向を感磁軸として構成することができる。
【0030】
[モノリシックに構成された複合センサーの実施例]
図4に複合センサーの全体回路ブロック図を示し、全体をモノリシック構造(すなわち1個の半導体結晶上に作られたセンサーも含めた集積回路あるいはモジュール)に形成した一例を示す。チップ部品で構成することも可能であるが、本実施形態2に示す構成では、極めて小さなセンサーモジュールとすることが可能となる。
図4に示すように、各センサ素子部(10−1、・・・、10−n)からの信号をセンサー部m1より、マルチプレクサm2を介して増幅部m3で増幅させ、A/D変換部m4によりA/D変換した後に信号処理部m5からデジタル信号として出力する(図4では「測定データ」として出力)。加速度センサーと磁気センサー(地磁気センサー)の切り替えは磁界発生用電流源m6のON−OFFにより行なわれる。なお3軸検知(x軸、y軸、z軸)の例を示したが、3軸以下の場合も同様にして行うことができる。
より具体的には、図4に示すように、加速度センサーなど各センサー部m1から入力された信号が入力されるとマルチプレクサm2は、各センサ部(各センサー素子:10−1、10−2、・・・10−n(nは2以上の整数))からの信号を順に出力する。増幅器m3はマルチプレクサm2からの出力を増幅する。増幅された増幅器m3からの信号はA/D変換器m4でデジタル信号に変換される。このデジタル信号には、加速度センサーとして使用される場合のときと、角速度センサーとして使用される場合のときと、地磁気センサーとして使用されるときとでは、異なる情報から成り立っている。具体的には加速度センサーとして使用される場合の時では「重力に関する情報」と、y軸(あるいはx軸)方向の加速度に関する情報と、z軸に関する情報とが含まれている。また信号処理部m5として、CPUと、RAMなどのメモリ(揮発/不揮発メモリ)とROMとを有する構成とした場合には、この信号処理部m5に有するROMに、このCPUで読取り可能なコードで記述されたプログラム、アプリケーション、初期データおよび固定データなどが格納されている。
また、図5は図4に示す本発明の複合センサーの一例の動作例を示すフローチャートである。この図中、I群は第1の物理量(たとえば磁気検知(地磁気検知))に関するフローの部分であり、II群は第2の物理量(たとえば加速度検知)に関するフローである。他のフローチャートもこれと同様である。
またメモリには、前記したA/D変換器でデジタル信号に変換されたデータ(たとえばログ付きのデータ)、および前記データを補正するための補正データなどが格納される。またメモリには、CPUの作業用領域も設けられる。
【0031】
CPUは、ROMに格納されているプログラムに従い自由度を有する地磁気、加速度、角速度を求まるための物理量を求める処理を実行する。
例えば地磁気センサーとして各センサー素子(10−1、・・・、10−n)が使用される場合には、前記CPUは地磁気センサーとして検知開始された後にセンサー素子10−1をたとえば第1軸とし、・・・、10−nを第n軸とすると、これら第1軸、・・・、第n軸方向に関する磁気情報に基づいて地磁気の方位とその強度とを算出することができる。なお第1軸から第n軸において、第m番目のデータのみが強度的に得られる場合、あるいは2つ以上の複数の軸でデータの強度がある感度以上に大きい場合などにおいて、これらのデータのみを選択して、地磁気の方位、強度などを算出し、CPUへの負担を軽減したり、演算能力(演算速度など)を向上させたり、表示を早くすることもできる。
また例えば加速度センサーとして各センサー素子10−1、・・・、10−nが使用される場合にも地磁気センサーの場合とおおむね同様であるが、加速度の検知の場合には、基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘が動くことにより各センサー素子10−1、・・・、10−nに印加される磁界強度が変化し、この磁界強度の変化を各センサー部がセンシングすることにより各センサー部からの(3(軸)方向の自由度を有する)加速度に関する信号として得ることができる。
また例えば角速度センサーの場合には、後述する実施形態3(図11参照)で説明するように、複合センサーのz軸周りに回転させながら振動を例えばx方向に励震させてy方向のコリオリ力を検知して角速度を求めるようなジャイロセンサーを角速度センサーとする例を挙げることができる。
【0032】
〔センサーの動作例〕
本発明の複合センサーによる検知動作の流れを図4のフローチャートを用いて説明する。このセンサーは磁気センサーおよび加速度センサーであり一軸測定可能である。このセンサーが測定したデータを、ログを残しながらデータを累積して測定する場合を例にして説明する。
たとえば各センサー素子(センサー部m1)からのデータをその素子毎に別個独立して累積して測定する場合、センサーとして地磁気を測定するためのセンサーであれば、その設定精度として、0.01Oeとし、またセンサーとして重力加速度センサーであれば、その測定精度として0.01G(ガル)の精度に設定を行う。それぞれの測定データを累積していたデータのログとその都度比較して、新しい測定データをログの差が設定以下となればデータを次処理部に送り、電流発生部m6のON/OFFによって測定モードを切り替える。これを繰り返すことでセンサーは機能する。
なお、多軸測定時の各軸毎に測定を行なう場合、図4に示すマルチプレクサm2により切り替えることによって行なうことができる。または、マルチプレクサm2を省略し、各センサ素子(10−1〜10−n)のそれぞれから得られた信号を後段の信号処理回路(増幅部m3、A/D変換部m4、信号処理部m5)に送信するか、または時間差で各センサー素子(10−1〜10−n)からのデータを取り込む取り込み窓を設定することにより、各センサ素子からのデータ出力信号を独立に行って動作させることもできる。
【0033】
次に本発明の第2の複合センサーについて、説明する。
〔実施形態2〕
本発明の複合センサーの作製例を図6に示す。
実施形態1の作製と異なる部分を主に説明する。CoPt、CoCr、フェライト、FePtなどの磁石になりやすい磁性薄膜をスパッタなどで成膜し、図6に示すように、錘12の上にこの錘12の位置にあわせてパターニングして磁界発生部13を形成することができる。その後、錘12を支える梁11を形成させる。なお磁性薄膜は錘12の外形を作成するときに一緒に形成する。
磁界発生部13として、前記した磁性薄膜以外に、微小磁石を取り付けたり、あるいは磁性粉を含む塗料を塗布して薄膜を形成したり、あるいは錘自体を、磁石を用いて形成してもよい。
その後、図7に示すように、固定磁界部取り付け用支柱15、固定磁界取り付け梁16、および固定磁界部17とを設けた構成例とすることができる。この図に示す例では、各部品を組み立てて構成しているが、磁気検知モードの際(磁気測定時)に、可動の錘12を固定させることができる構成であればよく、平面的に構成することも可能である。
加速度の測定には永久磁石による磁界発生部と、磁気検知素子との距離(遠近)による磁気検知素子からの出力差により、加速度を検知する。
外部磁界測定時には固定磁界部に電流を流して錘の磁界発生部13(図7に示す例において、磁性薄膜で構成された薄膜磁石)が磁力で吸着固定される。このときには、磁気検知素子により、内部で発生している磁界分をオフセットとして除き、外部磁界相当分を区別して検知することができ、これによって正味の外部磁界の検知が可能である。
【0034】
本実施形態2に示す本発明の複合センサーでは、図1、図7及び図8を参照すれば明らかなように、梁11が4本の例を示す。
これらの図の例では、錘12を支える梁11が4本であり、3軸方向に自由に可動する例を示す。
磁気センサーも三軸検知可能に配置すれば、加速度も三軸測定(この三軸測定の3軸と梁の自由度の3軸方向とは一般に一致するようにしているが、これらは必ずしも一致しなくてよい。)が可能である。
さらに、わずかな電流を固定磁界部17に流して錘12を固着できるように固定磁界部17と錘12との距離を狭めることが可能となる。このように構成すると、固着させるための配線とぶつかって壊れることがなく、低消費電力向きの構成である。そして加速度を検知する際にはその電流も流していないので、さらに低消費電力の複合センサーを実現できる。
図8は錘12を磁性体で形成し、各面に磁気検知素子10を配置した加速度センサー部の例を示している。
【0035】
図9にモノリシック構造に構成した本実施形態の複合センサーの全体構成例を示す。なお各部をチップ部品で構成することも可能であるが、本構成では、極めて小さなセンサーモジュール(たとえばセンサー素子10−1などが1mm□(1mm四方)、あるいは更に小さい200 μm□など)として実現することが可能である。
図9に示すように、センサー部1mからの各軸毎の信号を、マルチプレクサm2を介して増幅部m3で増幅させ、A/D変換部m4でのA/D変換後に信号処理部m5から信号(測定データ)として出力する。加速度センサーと磁気センサーへの切り替えは、固定磁界部用電源部m7により固定磁界部の電流のON−OFFを通じて行なわれる。本実施形態でも3軸検知の例を示したが、必要に応じて少ない軸の例でもよい。
【0036】
本実施の形態2に示す複合センサーの測定動作の流れを、図10に示すフローチャートを用いて説明する。前記した実施形態1と同様に、本実施形態でも磁気測定および、加速度の一軸測定の例により、測定を累積させる場合の例で示す。累積して測定の設定精度、地磁気測定として、たとえば、0.01Oe以下の精度と、重力加速度の測定時には0.01Gの精度に設定を行い、それぞれの設定以下となればデータを次処理部に送り、固定磁界部用電源部のON、OFFを行い、測定モードを切り替える。この測定モードの切り替えを繰り返すことで別のセンシング(他の物理量の検知)を行って複合センサーとして、機能する。より具体的には、I群は、第1の物理量を測定するセンサーの動作を示すフローであり、II群は、第2の物理量を測定するセンサーの動作を示すフローに分けることができる。地磁気検知に関しては、図10に示すように、I群を地磁気検知とし、II群を加速度検知とした例で説明する。I群では、S102で錘固定用電源をONして磁界検知モード(地磁気検知モード)に移行すると(S13)、磁界検知を開始する(ステップS1)。検知の結果、磁界データを得ると(ステップS2、S3)、後続の信号処理部に磁界データを転送し(ステップS4)、固定磁界部用電源をOFFにする(ステップS101)。そして加速度の検知可能か否かを判定し(ステップS7)、Noの場合には加速度検知可能となるまで判定が行われ(ステップS7/No→ステップS7の判定)、加速度検知可能となれば(ステップS7/Yes)、ステップS8に進み加速度検知が行われ、得られた加速度データが十分な特性であれば信号処理部に加速度データを転送し(ステップS9)、前記したI群のセンシングが、前記同様に行われる。
なお、多軸測定時の各センサー素子(10−1〜10−n)による測定を行うには、図9に示すマルチプレクサm2による切り替えによって行なうことができる。また、マルチプレクサm2を用いずにたとえばソフトウェア的にウインドウ(たとえば周期的にIとIIを切り替える)を実行するなど、別構成で各軸を独立に動作させることも十分可能である。信号処理部にデータを転送するステップと、他の物理量を測定するためにIとIIとを切り替えるステップは同時に行ってもよく、どちらかを先に行ってもよい。他の動作例でも同様である。
【0037】
次に本発明の複合センサーの第3実施形態を説明する。
〔実施形態3〕
図11に本実施形態の複合センサーの構成例を示す。
本実施の形態3では、本発明の複合センサーにおいて、角速度検知可能とする構成の例であり、錘12を磁性体で形成した例を示す。なお、図11における支柱部は存在するがその部分はこの図では省略している。
コリオリ力を検知する方式を採用した例で示す。これは錘12をあらかじめ可動させておき、これに回転モーメントの付加によるコリオリ力(2mv×ω:mは回転している物体の質量、ω:回転速度(角速度)、v:物体の移動速度)を検知する。なお角速度ωと移動速度vとコリオリ力はいずれもベクトルであり、速度vと角速度ωとコリオリ力とは、それぞれ直交する関係にある。
【0038】
可動(励震)させるのは静電力を用いてもよく、磁界検知素子の検知に影響が小さければ、電磁力を用いてもよい。
なお、角速度を検知する方法として、錘を回転させこれを検知する方法も採用することもできる(たとえばこの場合回転軸方向をz軸に採り、x軸方向に励震し、y軸方向の振動を計測してコリオリ力を検知して測定する。)。この場合、錘の回転は一体となる磁界発生部も回転することを意味する。磁界発生部の回転に連動して、加速度を検知するのと同様に、磁界発生部と磁気検知素子との距離の差(遠近)により、錘と一体となった磁界発生部の回転を検知して、角速度ωを検知できる。図11に示すジャイロセンサーは、コリオリ力を検出して回転速度を検出するタイプのセンサーであり、振動のドライブ方向を縦方向(x方向)とし、角速度検知方向を横方向(y方向)にしている例を示す。このような振動を引き起こさせる振動ドライブとしては、PZT(鉛-亜鉛-チタン系)、ニオブ酸リチウムなどの圧電セラミックス、水晶などの圧電素子を用いた振動ドライブを挙げることができる。このような圧電素子に適宜電圧を印加して振動を周期的に図11に示すような振動ドライブの方向に発生させることができる。
本実施形態3のセンサーでは、加速度以外の実現が難しいジャイロセンサーを実現することができる。その際に小型でかつ、三軸センサーを簡便な構成で実現可能である。また、構成によっては加速度センサーとジャイロセンサーの同時(あるいは同時ではなく時間をずらして)測定が可能であるので、通常ジャイロセンサーとして3個必要であるのに対し(x、yおよびz方向として個別に3個)、本発明では、複合センサーとしてさらに小さな構成で実現可能である。
【0039】
次に本発明の複合センサーの第4実施形態について説明する。
〔実施形態4〕
図4に本実施形態4の複合センサーの構成例を示す。
本発明の複合センサーが、磁界状態や、加速度あるいは角速度が大きく変動する場合(例えば移動中である場合)の物理量の検知について、本実施形態で説明する。その場合に、検知結果の情報に応じ、変化の激しい物理量の検知において、その検知回数を多く設定したり、あるいは検知時間を長く設定し、各検知結果の精度を高めることが、本実施形態に示すように可能である。
図12に、測定回数を増加し、これらの測定結果を累積することにより、測定精度をあげる例を示す。
【0040】
具体的には、1mSの測定時間とし、データ累積回数を100回とすることができる。そして加速度センサーとして使用する場合には、その感度限界は0.2Gとし、地磁気センサーとして使用する場合にはその感度限界を30Oeとする。これらのセンサーを交互に切り替えて周期的に測定し、また、1つのセンサーでデータ累積回数を所定回数繰り返した後に他のセンサーに切り替えるようにすることもできる。その切替時間は、測定時間の十分の1程度(たとえば0.1mS)とすることができる。
本実施形態では、図12のフローチャートに示すように、たとえばまず磁気を検知(地磁気検知)をすることを例にして説明する。磁気検知が開始されると、磁気検知素子により、1以上の磁界の検知が行われる(ステップS1)。これによって磁界データが得られる(ステップS2)。
前記したステップS2により得られた磁界データにより十分な特性が得られたか否かを判定する(ステップS41)。
ステップS41により十分な特性が得られない場合には(ステップS41でNoの場合)、得られるまで磁気検知が行われ、十分な特性が得られた場合には(ステップS41でYesの場合)、信号処理部に得られた磁界データを転送し(ステップS4)、また、磁界発生用電源をONする(ステップS5)。
次いで、錘の配線(コイル)に電流が流されて磁界発生により加速度の検知可能とする(ステップS6)。
加速度の検知を行い(ステップS7)、検知可能であれば(ステップS7でYesの場合)加速度データを格納する(ステップS8)。検知が十分行われない場合(ステップS7でNoの場合)には、再び検知が行われる。前記の格納されたデータが十分な特性(十分な精度と十分な感度)で得られたか否かを判定し(ステップS42)、十分な特性が得られない場合(ステップS42でNoの場合)には、ステップS7に戻って十分な特性が得られるまで再測定を行い、十分な特性が得られた場合(ステップS42でYesの場合)には、信号処理部にデータを転送し(ステップS11)、錘の配線への電源供給のOFFまたは錘の固定を行い(ステップS12)、磁気検知モードに移行し(ステップS13)、以降、前記ステップS1に戻ってステップ1からの動作を繰り返す。
【0041】
なおステップS5とステップS4、およびステップS12とステップS11は、どちらのステップが先でも、後でもよく、また場合によっては同時であってもよい。また本実施形態でも他の実施形態と同様に、信号処理部m5では、センサー素子10−1、・・・、10−nから検知されたデータである地磁気データ、加速度データまたは角速度データの各情報に基づいて、方位データ、各方向別の加速度データまたは各方向別の角速度データを算出し、複合センサーが設置された物のこれらのデータから、各自由度に基づく物理量を算出し、表示等することができる。なおこれらの物理量は、各センサー素子からの検知データを取得した後に各地磁気データ、加速度データまたは角速度データを算出し、これら地磁気データなどの算出データから、メモリなどに保存されているかまたはテーブル形式にされた補正データを用いて前記した算出データを補正して補正後のデータを得る。この補正後のデータをメモリに保存し、あるいは表示等することができる。
【0042】
〔実施形態5〕
図13に本実施形態の動作例を示す。本実施形態の動作説明では、地磁気と加速度を検知する場合について記載するが、加速度に代えて角速度を検知するような複合センサーであってもよい。
本複合センサーは地磁気センサーと加速度センサーとを同一基板に形成させたものであり、磁気センサーモード時に十分な検知特性を有し、モーションセンサーモード時(加速度センサーモード時または角速度センサーモード時)に加速度と角速度の少なくとも何れかの電流値を変える事とした。これにより構造が同じでも磁界感度を変えて、加速度および角速度に応じた測定出力を変化させるようにすることができる。
センサー素子部で十分な分解能を、ダイナミックレンジを持つ場合にセンサー素子に接続する回路側のレンジの切り替えにより比較的容易に実現できる。
たとえば錘と梁を高Gでも壊れなくし、比較的低いGで撓み量が少ない場合でも、検知のセンサー部が高感度であるので広いダイナミックレンジを実現可能となる。このような本実施形態の複合センサーを用いて、ダイナミックレンジにより、適度な感度強度にして、第1及び第2の物理量を好ましくは自動的に検知可能である。より具体的には、図13に示すように、モーションセンサーモード(加速度センサーモードまたは角速度センサーモード)による検知の際に、ステップS201に示すように、たとえば、閾値を設け、たとえば閾値A、Bを設け、閾値Aを越えない場合には小レンジ領域での測定とし、閾値Aを越え、閾値Bを越えない場合には中レンジ領域とし、閾値Bを越えれば大レンジ領域などと3領域に分割してレンジ範囲を分けて測定するなど、自在に換えることができる。
このため、多数の測定レンジに応じて、センサーの数を必要とする従来のセンサーに比して、本実施形態に示す複合センサーでは、その物理量を測定する検知部が1個(1種類:1組)のセンサーで対応可能である。必要に応じて、測定レンジも、可変設定可能であって、測定対象を選ばないセンサーとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の複合センサーの製造工程を示す図であり、(a)は基板に斜面を形成するためのエッチング工程で製造された内部に斜面有する基板であり、(b)は(a)の工程により形成した斜面に磁気検知素子を形成する工程であり、(c)はSOI基板の貼り合わせの工程であり、(d)は錘部を形成するためのパターニング工程である。
【図2】3方向の自由度を有する錘の動作により3方向検知可能な複合センサーの第1の例を示す構成図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)の錘を含む梁の部分での切断断面図であり(この図ではコイルによる発生磁界も示す)、(C)は(A)のA部拡大図であり、(D)は複合センサーを斜め上方向から見た全体構成図である。
【図3】本発明の複合センサーの感知部として磁気抵抗素子を用いた層構成例を示したものであり、(A)はTMR(Tunneling Magneto Resistance)素子を用いた例であり、(B)及び(C)はGMR(Giant Magneto Resistance)素子を用いた例である。
【図4】本発明の複合センサーのセンサー形成用Si基板の電気的な回路ブロック図である。
【図5】本発明の複合センサーの動作例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の複合センサーの他の例を示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図7】本発明の複合センサーのもう1つ別の構成例を示す図である。
【図8】本発明の複合センサーのもう1つ別の構成例を示す図であり、錘部を磁性体で構成しモーションセンサーとして加速度センサーに適用された場合の構成例を示す図である。(A)はその正面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図9】本発明の複合センサーのセンサー形成用Si基板の他の電気的な回路ブロック図である。
【図10】実施の形態2に示す複合センサーの測定動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の複合センサーのもう1つ別の構成例を示す図であり、錘部を磁性体で構成しモーションセンサーとして角速度センサー(ジャイロセンサー)に適用された場合の構成例を示す図である。Z軸が回転軸である場合の例を示す。(A)はその正面図であり、(B)は(A)のA−A線図断面である。
【図12】測定回数を増加し、これらの測定結果を累積して測定(信号の)精度をあげる例を示す複合センサーを用いた動作例を示すフローチャートである。
【図13】ダイナミックレンジを持つ場合に素子に接続する回路側のレンジの切り替えにより容易に実現できる複合センサーを用いた場合の動作例を示すフローチャートである。
【図14】従来のセンサー(特許文献1)の構成例を示す図であり、(A)は特許文献1の図1であり、(B)はその図2をそれぞれ示す。
【図15】従来のセンサー(特許文献2)の構成例を示す図である。
【図16】従来のセンサー(特許文献3)の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基板
10 磁気感知部(センサー素子)
11 梁
12 錘
13 磁界発生部
14 入力/出力線
15 固定磁界部取り付け用支柱
16 固定磁界部取り付け梁
17 固定磁界部
100 PIN層
101 反強磁性体層
102 磁性層
103 絶縁層
104 フリー層(フリー磁性体層)
106 非磁性金属層
107 電極
m1 検知部(センサー部)
m2 マルチプレクサ
m3 増幅部
m4 A/D変換部
m5 信号処理部
m6 磁界発生用電流源
m7 固定磁界部用電源部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、前記基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘を有する磁界発生部とを備えた複合センサーであって、
前記磁気検知素子により第1の物理量の外部磁界を検知可能であると共に、
前記錘を有する磁界発生部の位置変動による前記磁気検知素子の出力の差に基づいて第2の物理量を検知することを特徴とする複合センサー。
【請求項2】
前記第2の物理量は加速度または角速度であることを特徴とする請求項1に記載の複合センサー。
【請求項3】
前記磁界発生部の電流値を変えて加速度または角速度の検知感度の少なくとも1つを可変可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載の複合センサー。
【請求項4】
傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、
三軸方向の自由度を有する梁に支持された錘と、前記錘に設けられた配線部とからなる磁界発生部と、
を備えた複合センサーであって、
前記磁界発生部は永久磁石と、前記永久磁石を固定する固定磁界部とを有し、前記固定磁界部は空芯コイルまたは鉄心付き電磁石を有し、
前記固定磁界部に電流が流れていないときは前記磁界発生部の前記三軸方向の少なくとも1方向の平行移動に伴う前記永久磁石による印加される磁力の変化による前記磁気検知素子の出力の差により加速度を検知し、
前記固定磁界部に電流が流れているときは前記磁気検知素子により内部で発生している磁界分をオフセットとして除いて外部磁界を検知することを特徴とする複合センサー。
【請求項5】
前記磁界発生部の回転に伴う前記磁界発生部と前記磁気検知素子との距離の差に基づいて角速度を検知することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合センサー。
【請求項6】
前記磁界発生部または前記固定磁界部に電流を流すための磁界発生用電源に信号処理部を設け、各センサーの切り替え比率を変更することが可能な請求項1〜5のいずれかに記載の複合センサー。
【請求項7】
前記磁気検知素子は、TMR(Tunneling Magnetic Resistance)素子またはGMR(Giant Magnetic Resistance)素子の少なくとも1つを用いたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合センサー。
【請求項1】
傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、前記基板上に梁により支持され3軸方向の自由度を有する錘を有する磁界発生部とを備えた複合センサーであって、
前記磁気検知素子により第1の物理量の外部磁界を検知可能であると共に、
前記錘を有する磁界発生部の位置変動による前記磁気検知素子の出力の差に基づいて第2の物理量を検知することを特徴とする複合センサー。
【請求項2】
前記第2の物理量は加速度または角速度であることを特徴とする請求項1に記載の複合センサー。
【請求項3】
前記磁界発生部の電流値を変えて加速度または角速度の検知感度の少なくとも1つを可変可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載の複合センサー。
【請求項4】
傾斜面を有する基板の前記傾斜面に設けられた磁気検知素子と、
三軸方向の自由度を有する梁に支持された錘と、前記錘に設けられた配線部とからなる磁界発生部と、
を備えた複合センサーであって、
前記磁界発生部は永久磁石と、前記永久磁石を固定する固定磁界部とを有し、前記固定磁界部は空芯コイルまたは鉄心付き電磁石を有し、
前記固定磁界部に電流が流れていないときは前記磁界発生部の前記三軸方向の少なくとも1方向の平行移動に伴う前記永久磁石による印加される磁力の変化による前記磁気検知素子の出力の差により加速度を検知し、
前記固定磁界部に電流が流れているときは前記磁気検知素子により内部で発生している磁界分をオフセットとして除いて外部磁界を検知することを特徴とする複合センサー。
【請求項5】
前記磁界発生部の回転に伴う前記磁界発生部と前記磁気検知素子との距離の差に基づいて角速度を検知することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合センサー。
【請求項6】
前記磁界発生部または前記固定磁界部に電流を流すための磁界発生用電源に信号処理部を設け、各センサーの切り替え比率を変更することが可能な請求項1〜5のいずれかに記載の複合センサー。
【請求項7】
前記磁気検知素子は、TMR(Tunneling Magnetic Resistance)素子またはGMR(Giant Magnetic Resistance)素子の少なくとも1つを用いたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−122041(P2009−122041A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298082(P2007−298082)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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