試料表面検査方法および検査装置
【課題】 電子線を使う半導体検査装置のスループットを向上する。
【解決手段】
電子線を試料に向けて照射する電子源14・6と、該試料を保持する試料ステージ14・22と、該電子ビームの試料へ向けた照射によって該試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器14・4と、該検出器14・4に検出された電子に基づいて試料表面の画像を生成する画像処理ユニット14・5と、電子源14・6から試料ステージ14・22への1次電子光学系と試料ステージ14・22から検出器14・4への2次電子光学系を分離するウィーンフィルタ14・3と、を備え、電子銃14・6から放出された電子線はウィーンフィルタ14・3においてクロスオーバを形成すると共に、試料表面から放出された放出電子はウィーンフィルタ14・3においてクロスオーバを形成し、1次電子光学系と2次電子光学系のクロスオーバの位置は、ウィーンフィルタ14・3上で異なっている。
【解決手段】
電子線を試料に向けて照射する電子源14・6と、該試料を保持する試料ステージ14・22と、該電子ビームの試料へ向けた照射によって該試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器14・4と、該検出器14・4に検出された電子に基づいて試料表面の画像を生成する画像処理ユニット14・5と、電子源14・6から試料ステージ14・22への1次電子光学系と試料ステージ14・22から検出器14・4への2次電子光学系を分離するウィーンフィルタ14・3と、を備え、電子銃14・6から放出された電子線はウィーンフィルタ14・3においてクロスオーバを形成すると共に、試料表面から放出された放出電子はウィーンフィルタ14・3においてクロスオーバを形成し、1次電子光学系と2次電子光学系のクロスオーバの位置は、ウィーンフィルタ14・3上で異なっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを用いて検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置に関し、例えば、半導体製造工程におけるウェーハの欠陥を検出する場合のように、電子ビームを検査対象に照射してその表面の性状に応じて変化する二次電子、反射電子(ミラー電子を含む)、後方散乱電子、透過電子等を捕捉して画像データを形成し、その画像データに基づいて検査対象の表面に形成されたパターン等を高いスループットで検査する検査装置、並びにそのような検査装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。また、本発明は、面ビームを用いた写像投影方式による検出装置および該装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおいて、デザインルールは100nmの時代を迎えようとしており、また生産形態はDRAMに代表される少品種大量生産からSOC(Silicon on
chip)のように多品種少量生産へ移行しつつある。それに伴い、製造工程数が増加し、各工程毎の歩留まり向上は必須となり、プロセス起因の欠陥検査が重要になる。
【0003】
そして、半導体デバイスの高集積化、パターンの微細化に伴い、高分解能、高スループットの検査装置が要求されている。100nmデザインルールのウェーハ基板の欠陥を調べるためには、100nm以下の線幅を有する配線におけるパターン欠陥やパーティクル・ビアの欠陥及びこれらの電気的欠陥を見る必要があり、したがって100nm以下の分解能が必要であり、デバイスの高集積化による製造工程の増加により、検査量が増大するため、高スループットが要求されている。また、デバイスの多層化が進むにつれて、層間の配線をつなぐビアのコンタクト不良(電気的欠陥)を検出する機能も、検査装置に要求されている。現在は主に光方式の欠陥検査装置が使用されているが、分解能及びコンタクト不良検査の点では、光方式の欠陥検査装置に代わって、電子ビームを用いた欠陥検査装置が今後は検査装置の主流になると予想される。ただし、電子ビーム方式欠陥検査装置にも弱点があり、それはスループットの点で光方式に劣ることである。
【0004】
このため、高分解能、高スループット、且つ電気的欠陥検出が可能な検査装置の開発が要求されている。光方式での分解能は使用する光の波長の1/2が限界と言われており、実用化されている可視光の例では0.2μm程度である。
【0005】
一方、電子ビームを使用する方式では、通常、走査型電子ビーム方式(SEM方式)が実用化されており、分解能は0.1μm、検査時間は8時間/枚(200mmウェーハ)である。電子ビーム方式はまた、電気的欠陥(配線の断線、導通不良、ビアの導通不良等)も検査可能であることが大きな特徴であるが、検査速度が非常に遅く、検査速度の速い欠陥検査装置の開発が期待されている。
【0006】
ところで、一般に、検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では重要な工程の後、例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理後等に使用されている。
【0007】
電子ビームを用いた走査(SEM)方式の検査装置について説明する。SEM方式の検査装置は電子ビームを細く絞って(このビーム径が分解能に相当する)これを走査してライン状に試料を照射する。一方、ステージを電子ビームの走査方向に直角の方向に移動させることにより、平面状に観察領域を電子ビームで照射する。電子ビームの走査幅は一般に数100μmである。前記細く絞られた電子ビーム(一次電子線と呼ぶ)照射により発生した試料からの二次電子を検出器(シンチレータ+フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)又は半導体方式の検出器(PINダイオード型)等)で検出する。照射位置の座標と二次電子の量(信号強度)を合成して画像化し、記憶装置に記憶し、あるいはCRT(ブラウン管)上に画像を出力する。
【0008】
以上はSEM(走査型電子顕微鏡)の原理であり、この方式で得られた画像から工程途中の半導体(通常はSi)ウェーハの欠陥を検出する。検査速度(スループットに相当する)は一次電子線の量(電流値)、ビーム径及び検出器の応答速度で決まる。ビーム径0.1μm(分解能と同じと考えてよい)電流値100nA、検出器の応答速度100MHzが現在の最高値で、この場合で検査速度は20cm径のウェーハ一枚あたり約8時間と言われている。この検査速度が光方式に比べてきわめて遅い(1/20以下)ことが大きな問題点となっている。特に、ウェーハ上に作られた100nm以下のデザイン・ルールのデバイス・パターン、即ち、100nm以下の線幅や直径100nm以下のビア等の形状欠陥や電気的欠陥の検出及び100nm以下のゴミの高速の検出が必要となっている。
【0009】
電子ビームを用いた走査式の検査装置は例えば特許文献1〜3に開示されている。
【特許文献1】特開2002−26093号公報(第3、4ページ、図2)
【特許文献2】特開2002−161948号公報(第4−6ページ、図1)
【特許文献3】特開2000−161932号公報(第7−9ページ、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上で説明したSEM方式の検査装置では、上記の検査速度がほぼ限界と考えられており、更に高速にする、すなわちスループットを上げるためには新しい方式が必要である。
【0011】
また、検査によっては、例えばリソグラフィー後の検査におけるメモリ・セル部とランダム・ロジック部の境界部分、あるいはパターンが密集して線幅が非常に細くなっているメモリ・セル部のように、欠陥が生じやすい、クリティカルな部分のみ検査したい場合もある。つまり、全面検査による精度の高さよりも、ハイスループットの優先度の方が高く、検査精度については、クリティカルな部分のみきちんと検査してある程度の精度を満たせばよいとするような場合や、欠陥の生じやすい箇所が限定され、その箇所のみを検査すれば、十分な検査精度を確保できるような場合があり、このような場合に、クリティカルな部分のみを選択的に検査できる方式があれば便利であり、高スループットの要請にも応えられることになる。
【0012】
したがって、本発明の目的は、高スループットの要請に応えることができる検査方法および検査装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は電子線装置であり、この装置は、電子ビームを試料に向けて照射する手段と、該電子ビームの前記試料へ向けた照射によって前記試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器と、該検出器に導かれた、前記試料の表面の情報を得た電子に基づいて画像を生成する手段と、試料表面の任意の箇所を選択的に検査する制御手段を備える。画像生成手段は、検出された電子を画像として合成する処理を行う。
【0014】
前記試料の表面の情報を得た電子は、前記試料より発生する二次電子、反射電子、後方散乱電子、透過電子のうちの少なくとも1つ、或いは前記試料の表面付近で反射されたミラー電子、又は試料を透過する透過電子であることが望ましい。
【0015】
本発明の一態様は試料表面検査方法であり、試料表面の任意の領域を被検査領域として選択するステップと、該選択した被検査領域に向けて電子線を照射するステップと、該試料表面の情報を得た電子を検出するステップと、該検出した電子に基づいて試料表面の画像を生成するステップと、該生成された画像を基準画像と比較して比較検査を行うステップを含む。
【0016】
また、前記試料表面の任意の領域を被検査領域として選択するステップは、予め設定されたレシピの指令に基づいて行う。
【0017】
また、前記試料表面の任意の領域を被検査領域として選択するステップは、基板を検査する際のストライプ単位で選択する。
【0018】
また、前記選択した被検査領域に向けて電子線を照射するステップは、前記電子線が試料上を相対移動するように、電子線又は試料を移動させながら行う。
【0019】
また、前記試料表面の情報を得た電子を検出するステップは、複数の画素からなる投影表面上に投影することにより検出する。
【0020】
また、前記選択した被検査領域に向けて電子線を照射するステップは、電子線の照射領域に、検出器上の複数の画素が含まれる面積を有する電子線を用いて行う。
【0021】
また、前記合成された画像を基準画像と比較して比較検査を行うステップにおいて、前記合成された画像と同一ストライプ内のダイの画像が基準画像として用いられる。
【0022】
本発明の一態様は試料表面検査方法であり、試料上の任意に選択した小領域を電子線を用いて検査し、該小領域の画像を得るステップと、該小領域の画像から、欠陥の多い領域を特定するステップと、該小領域において特定された欠陥の多い領域から、試料全面において欠陥が多いと推定される領域を演算し、特定するステップと、該試料全面において欠陥が多いと推定される領域に電子線を照射して試料表面の検査を行うステップとを含む。
【0023】
また、本発明の一態様は試料表面検査装置であり、この装置は、電子線を試料に向けて照射する電子銃と、該試料を保持する試料ステージと、該電子ビームの前記試料へ向けた照射によって該試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器と、該検出器に検出された電子に基づいて試料表面の画像を生成する手段と、該生成された画像を基準画像と比較する比較検査手段と、試料表面の任意の領域を選択的に検査するように制御する制御手段、とを備える。
【0024】
本装置において、前記試料表面の任意の領域は、レシピの指令に基づいて選択する。
【0025】
本装置において、前記試料表面の任意の領域は、検査の際のストライプ単位で選択する。
【0026】
本装置において、前記制御手段は、前記試料上の前記ストライプを前記電子線が照射するように、前記電子線の偏向又は前記ステージの移動により制御する。
【0027】
本装置において、前記検出器は、CCDセンサ又はTDI−CCDセンサである。
【0028】
本装置において、前記電子銃は、複数の画素を含む照射面積を有する電子線を試料に向けて照射するものである。
【0029】
本装置において、前記ステージは、検査中にx−y平面上の少なくとも1方向に連続的に移動するものである。
【0030】
本装置は、試料上の任意の小領域の画像から欠陥の多い領域を特定し、該欠陥の多い領域のダイとの位置関係を算出し、試料全体で欠陥が多いと推定される領域を特定する演算手段を更に備えている。
【0031】
また、本発明の別の態様はデバイス製造方法であり、この方法は、a.ウェーハを準備し、b.ウェーハプロセスを行い、c.プロセスを通したウェーハを上述した検査方法を用いて検査し、d.b、cのステップをくり返し、e.デバイスを組み立てる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の検査方法又は検査装置により、ウェーハ等の基板の欠陥を、高スループットで検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】半導体検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】検査部の構成を示す図である。
【図3】検査部の構成を示す図である。
【図4】検査部の構成を示す図である。
【図5】検査部の構成を示す図である。
【図6】検査部の構成を示す図である。
【図7】検査部の主要構成を示す図である。
【図8】本実施の形態の半導体検査装置を示す正面図である。
【図9】本実施の形態の半導体検査装置を示す平面図である。
【図10】カセットホルダの構成例を示す図である。
【図11】ミニエンバイロメント装置を示す図である。
【図12】ローダハウジングを示す図である。
【図13】電子光学系を示す図である。
【図14−1】電子光学系を示す図である。
【図14−2】試料照射ドームの形状を示す図である。
【図15】制御系の動作を示す図である。
【図16】制御系の動作を示す図である。
【図17】制御系の動作を示す図である。
【図18】制御系の動作を示す図である。
【図19】制御系の動作を示す図である。
【図20】制御系の動作を示す図である。
【図21】制御系の動作を示す図である。
【図22】アライメント手順を示す図である。
【図23】アライメント手順を示す図である。
【図24】アライメント手順を示す図である。
【図25】欠陥検査手順を示す図である。
【図26】欠陥検査手順を示す図である。
【図27】欠陥検査手順を示す図である。
【図28】欠陥検査手順を示す図である。
【図29】欠陥検査手順を示す図である。
【図30】欠陥検査手順を示す図である。
【図31】欠陥検査手順を示す図である。
【図32】制御系の構成を示す図である。
【図33】ユーザインターフェースの構成を示す図である。
【図34】検査手順を示す図である。
【図35】検査手順を示す図である。
【図36】検査対象ダイの設定を示す図である。
【図37】ダイ内部の被検査領域の設定を示す図である。
【図38】検査手順を示す図である。
【図39】検査手順を示す図である。
【図40】検査手順における検査ダイが1個の場合の走査例を示す図である。
【図41】検査対象を示す図である。
【図42】本発明の選択的検査を示す図である。
【図43】本発明の選択的検査を示す図である。
【図44】本発明の選択的検査を示す図である。
【図45】本発明の選択的検査を示す図である。
【図46】電子線装置を示す図である。
【図47】一次電子照射方法を示す図である。
【図48】検査装置を製造ラインに接続した構成を示す図である。
【図49】検査装置を利用する半導体デバイス製造方法の例を示す図である。
【図50】リソグラフィ工程の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る半導体検査装置の実施の形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0035】
1 全体構成
まず、半導体検査装置の好適な全体的な構成について説明する。
【0036】
図1は、検査装置の全体構成を示している。検査装置は検査装置本体1・1、電源ラック1・2、制御ラック1・3、成膜装置1・4、エッチング装置1・5、画像処理ユニット1・6等から構成される。ドライポンプ等の粗引きポンプはクリーンルームの外に置かれる。検査装置本体内部の主要部分は、電子ビーム光学鏡筒、真空搬送系、ステージを収容している主ハウジング、除振台、ターボ分子ポンプ等から構成されている。
【0037】
制御系には二台のCRTを備え、指示命令入力機能(キーボード等)を備えている。上記の電子ビーム鏡筒は主に電子光学系、検出系、光学顕微鏡等から構成されている。電子光学系は電子銃、レンズ等、搬送系は真空搬送ロボット、大気搬送ロボット、カセットローダ、各種位置センサ等から構成されている。
【0038】
ここでは、成膜装置及びエッチング装置、洗浄装置(図示していない)を検査装置本体近くに並べて設置しているが、これらは検査装置本体に組み込んでも良い。これらは、例えば試料の帯電抑制のために又は試料表面のクリーニングに使用される。スパッタ方式を用いると、一台で制膜及びエッチングの両方の機能を持たせることができる。
【0039】
図示していないが、使用用途によってはその関連装置を検査装置本体近くに並べて設置するか、それらの関連装置を検査装置本体に組み込んで使用しても良い。或いは、それらの関連装置に検査装置を組み込んでもよい。例えば、化学的機械研磨装置(CMP)と洗浄装置を検査装置本体に組み込んでも良く、或いは、CVD(化学蒸着法:chemical vapor deposition)装置を検査装置に組み込んでもよく、この場合、設置面積や試料搬送の
ためのユニットの数を節約でき、搬送時間を短縮できるなどのメリットが得られる。
【0040】
同様に、メッキ装置等の成膜装置に検査装置本体に組み込んでも良い。同様にリソグラフィ装置と組み合わせて使用することも可能である。
【0041】
1−1)メインチャンバ、ステージ、真空搬送系外装
図2、図3、図4において、半導体検査装置の検査部の主要構成要素が示されている。半導体検査装置の検査部は、外部環境からの振動を遮断するためのアクティブ除振台2・1と、検査室であるメインチャンバ2・2と、メインチャンバ上部に設置された電子光学装置2・3と、メインチャンバ内部に搭載されたウェーハスキャン用のXYステージ3・1と、XYステージ動作制御用のレーザ干渉測定系3・2と、メインチャンバに付随する真空搬送系2・4を備え、それらは図2、図3に示されるような位置関係で配置されている。また、図2、図3には、アクティブ除振ユニット3・3、定盤3・4、ロードロック室3・5、搬送室3・6、真空搬送ロボット3・7、鏡筒排気用TMP、検出系排気用TMP3・9等が示されている。半導体検査装置の検査部は、更に、検査ユニットの環境制御、及びメンテナンスを可能とするための外装4・1を備えており、図4に示されるような位置関係で配置されている。
【0042】
1−1−1)アクティブ除振台
アクティブ除振台2・1は、アクティブ除振ユニット2・3上に溶接定盤2・4が搭載されており、この溶接定盤上に検査室であるメインチャンバ2・2、メインチャンバ上部に設置された電子光学装置2・3、及びメインチャンバに付随する真空搬送系2・4等を保持している。これにより、検査部における外部環境からの振動を抑制できるようになっている。
【0043】
1−1−2)メインチャンバ
メインチャンバ2・2は、検査環境である真空度(10-4Pa以下)を実現するためにターボ分子ポンプを下部に直接保持しており、ウェーハスキャン用の高精度のXYステージ3・1を内部に備え、外部からの磁気を遮蔽できるようになっている。
【0044】
また、XYステージを高精度に制御するためにレーザ干渉計によるステージ位置の測定系が設置されている。干渉計5・1は、測定誤差を抑えるために真空中に配されおり、直接測定誤差となる干渉計自体の振動を限りなくゼロとするために、この実施の形態では剛性の高いチャンバ壁に直接固定されている。また、図5には、XY軸駆動用のモータ5・2が示されており、さらに、磁性流体シール5・3、ミラー5・4およびボールねじ5・5が示されている。
【0045】
1−1−3)XYステージ
XYステージ3・1は、真空中でウェーハを高精度にスキャンできるように構成されている。XおよびYのストロークは、例えば200mmウェーハ用としてそれぞれ200mm〜300mm、300mmウェーハ用としてそれぞれ300mm〜600mmとなっている。
【0046】
また、真空中でウェーハアライメントを行なうためにXYステージ上にはθステージが設置されている。この実施の形態におけるθステージでは、駆動用として2つの超音波モータ、位置制御用としてリニアスケールが配されている。X、Y及びθ動作を行なう可動部に接続された種々のケーブルは、XステージおよびYステージにそれぞれ保持されたケーブルベアによりクランプされ、チャンバ壁に設置されたフィードスルーを介してメインチャンバ外部へと接続されている。
【0047】
1−2)レーザ干渉測定系
レーザ干渉測定系は、X軸およびY軸に平行で、その延長線上が検査位置に相当する光軸を有するレーザ光学系と、その間に配された干渉計5・1により構成されている。本実施の形態における光学系は、図6、図7に示されるような位置関係で配置されている。溶接定盤上に設置されたレーザ6・1より発射されたレーザ光は、ベンダ6・2により垂直に立ち上げられたのちにベンダ7・1により測定面と平行に曲げられる。さらに、スプリッタ6・4によりX軸測定用とY軸測定用に分配された後に、ベンダ7・3およびベンダ6・6によりそれぞれY軸およびX軸に平行に曲げられ、メインチャンバ内部へと導入される。また、図6、図7には、数カ所のターゲット7・2が示されている。
【0048】
1−3)検査部外装
検査部外装6・1は、メンテナンス用のフレーム構造としての機能を備えられている。本実施の形態では、収納可能な両持ちクレーンが上部に搭載されている。クレーンは横行レールに取付けられ、横行レールはさらに走行レール(縦)に設置されている。走行レールは、通常時には収納状態となっているのに対して、メンテナンス時にはのように上昇し、クレーンの上下方向のストロークを大きくすることが可能となっている。これにより、メンテナンス時には外装に内蔵されたクレーンにより電子光学装置2・3、メインチャンバ天板、XYステージ3・1を装置背面に脱着可能となっている。外装に内蔵されたクレーンの他の実施の形態では、回転可能な片持ち軸を持つクレーン構造が設けられている。
【0049】
また、検査部外装は、環境チャンバとしての機能を兼ね備えることも可能である。これは、必要に応じて温度、湿度管理とともに、磁気遮蔽効果が提供される。
【0050】
2 実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。本実施の形態では、検査対象が、表面にパターンが形成された基板すなわちウェーハである。
【0051】
2−1)搬送系
図8及び図9は、本発明に係る半導体検査装置の主要構成要素を立面図及び平面図で示している。この半導体検査装置8・1は、複数枚のウェーハを収納したカセットを保持するカセットホルダ8・2と、ミニエンバイロメント装置8・3と、ワーキングチャンバを構成するローダハウジング8・5と、ウェーハをカセットホルダ8・2から主ハウジング8・4内に配置されたステージ装置8・6上に装填するローダー8・7と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置8・8とを備え、それらは図8及び図9に示されるような位置関係で配置されている。
【0052】
半導体検査装置8・1は、更に、真空の主ハウジング8・4内に配置されたプレチャージユニット8・9と、ウェーハに電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置上でのウェーハの位置決めを行うためのアライメント制御装置8・10を構成する光学顕微鏡8・11とを備えている。
【0053】
2−1−1)カセットホルダ
カセットホルダ8・2は、複数枚(例えば25枚)のウェーハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセット8・12(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施の形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダ8・2としては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ8・2に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるように構成されている。また、図10の例のカセットホルダでは、箱本体10・1、基板搬送箱10・2、基板搬出入ドア10・3、蓋体10・4、ULPAフィルタ10・5、ケミカルフィルタ10・6およびファンモータ10・7が備えられている。
【0054】
2−1−2)ミニエンバイロメント装置
図8〜図11において、ミニエンバイロメント装置8・3は、雰囲気制御されるミニエンバイロメント空間11・1を構成するハウジング11・2と、ミニエンバイロメント空間11・1内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置11・3と、ミニエンバイロメント空間11・1内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置11・4と、ミニエンバイロメント空間11・1内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウェーハを粗位置決めするプリアライナー11・5とを備えている。
【0055】
ハウジング11・2は、頂壁11・6、底壁11・7及び四周を囲む周壁11・8を有しており、ミニエンバイロメント空間11・1を外部から遮断する構造を有している。
ハウジング11・2の周壁11・8のうちカセットホルダ8・2に隣接する部分には出入り口8・15が形成されている。出入り口8・15近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口8・15をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。
【0056】
ミニエンバイロメント空間11・1内に配置されたプリアライナー11・5は、ウェーハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウェーハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウェーハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウェーハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。
【0057】
2−1−3)主ハウジング
図8〜図9において、ワーキングチャンバ8・16を構成する主ハウジング8・4は、ハウジング本体8・17を備え、そのハウジング本体8・17は、台フレーム8・18上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置8・19の上に載せられたハウジング支持装置8・20によって支持されている。ハウジング支持装置8・20は矩形に組まれたフレーム構造体8・21を備えている。ハウジング本体8・17はフレーム構造体8・21上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁8・22と、頂壁8・23と、底壁8・22及び頂壁8・23に接続されて四周を囲む周壁8・24とを備えていてワーキングチャンバ8・16を外部から隔離している。底壁8・22は、この実施の形態では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。
【0058】
2−1−4)ローダハウジング
図8〜図9及び図12において、ローダハウジング8・5は、第1のローディングチャンバ9・2と第2のローディングチャンバ9・3とを構成するハウジング本体9・4を備えている。ハウジング本体9・4は底壁12・1と、頂壁12・2と、四周を囲む周壁12・3と、第1のローディングチャンバ9・2と第2のローディングチャンバ9・3とを仕切る仕切壁9・5とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁9・5には両ローディングチャンバ間でウェーハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口12・4が形成されている。また、周壁12・3のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口9・6及び9・7が形成されている。
【0059】
2−1−5)ローダー
ローダー8・7は、ミニエンバイロメント装置8・3のハウジング11・2内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット11・14と、第2のローディングチャンバ9・3内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット9・12とを備えている。
【0060】
第1の搬送ユニット11・14は、駆動部11・15に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム11・16を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施の形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。アーム11・16の先端には把持装置9・13が取り付けられている。アーム11・16は、軸11・17および昇降機構11・18と共に設けられている。
【0061】
この第1の搬送ユニット11・14は、カセット内に収容されたウェーハとプリアライナー11・5の間の搬送及びプリアライナー11・5と第2のローディングチャンバ9・2の間の搬送を行う。
【0062】
第2の搬送ユニット9・12も第1の搬送ユニットと構造は基本的に同じであり、ウェーハの搬送をウェーハラックとステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違する。
【0063】
2−1−6)ステージ装置
ステージ装置8・6は、主ハウジング8・4の底壁8・22上に配置された固定テーブル8・32と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル8・33と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル8・34と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル8・35と、回転テーブル8・35上に配置されたホルダ8・36とを備えている。そのホルダ8・36のウェーハ載置面9・14上にウェーハを解放可能に保持する。ホルダ8・36は、ウェーハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置8・6は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面9・14上でホルダに保持されたウェーハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図8において上下方向)に、更にウェーハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。ステージ装置用のサーボモータ9・14、9・15およびエンコーダ9・17、9・18が図9に示されている。
【0064】
なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウェーハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウェーハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。
【0065】
電子ビームに対するウェーハの回転位置やX、Y位置を予め信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウェーハチャック機構は、ウェーハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるように構成されていて、ウェーハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするように構成されている。ウェーハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるように構成されており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
【0066】
なお、この実施の形態では図9で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
【0067】
2−2)ウェーハの搬送方法
次に、カセットホルダ8・2に支持されたカセット8・12からワーキングチャンバ8・16内に配置されたステージ装置8・6までへのウェーハの搬送を順を追って説明する(図8〜図12参照)。
【0068】
カセットホルダ8・2は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施の形態において、カセット8・12がカセットホルダ8・2の昇降テーブル8・13の上にセットされると、昇降テーブル8・13は昇降機構8・14によって降下されカセット8・12が出入り口8・15に整合される。カセットが出入り口8・15に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開き、カセットとミニエンバイロメント装置8・3の出入り口8・15との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置8・3側に出入り口8・15を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口8・15を開く。
【0069】
一方、第1の搬送ユニット11・14のアーム11・16は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口8・15が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウェーハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウェーハとの上下方向の位置調整は、この実施の形態では第1の搬送ユニット11・14の駆動部11・15及びアーム11・16の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
【0070】
アーム11・16によるウェーハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム11・16は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウェーハをプリアライナー11・5の上に載せ、そのプリアライナー11・5によってウェーハの回転方向の向き(ウェーハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット11・14はアームの先端にプリアライナー11・5からウェーハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置9・8の扉8・27が動いて出入り口8・25及び8・37を開き、アーム11・16が伸びてウェーハを第1のローディングチャンバ9・2内のウェーハラック9・11の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置9・8を開いてウェーハラック9・11にウェーハが受け渡される前に、仕切壁9・5に形成された出入り口12・4はシャッタ装置9・10の扉9・19により気密状態で閉じられている。また、シャッタ装置9・8には、シール材8・26および駆動装置8・28が設けられている。
【0071】
上記第1の搬送ユニット11・14によるウェーハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置8・3のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット11・9からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウェーハの上面に付着するのを防止する。気体供給ユニット11・9と共に導管11・11が設けられている。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施の形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置11・4の吸入ダクト11・12から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト11・10を介して回収され再び気体供給ユニット11・9に戻される。
【0072】
ローダハウジング8・5の第1のローディングチャンバ9・2内のウェーハラック9・11内に第1の搬送ユニット11・14によりウェーハが載せられると、シャッタ装置9・8が閉じて、ローディングチャンバ9・2内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ9・2内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ9・2内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバ9・2の真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ9・2内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置9・10が動作して扉9・19で密閉していた出入り口12・4のシャッタ9・5を開き、第2の搬送ユニット9・12のアーム9・20が伸びて先端の把持装置でウェーハラック9・11から1枚のウェーハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウェーハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置9・10が再び動作して扉9・19で出入り口12・4を閉じる。
【0073】
なお、シャッタ装置9・10が開く前にアーム9・20は予めウェーハラック9・11の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置9・10が開く前にシャッタ装置8・29の扉9・9で出入り口9・7、9・1を閉じていて、第2のローディングチャンバ9・3内とワーキングチャンバ8・16内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ9・3内は真空排気される。また、シャッタ装置8・29には、シール材30・30および駆動装置13・31が設けられている。
【0074】
シャッタ装置9・10が出入り口12・4を閉じると、第2のローディングチャンバ9・3内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ9・2内よりも高真空度の真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット11・14のアームはワーキングチャンバ8・16内のステージ装置8・6の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ8・16内のステージ装置8・6では、Yテーブル8・33が、Xテーブル8・34の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット9・12の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図9で上方に移動し、また、Xテーブル8・34は図9で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ9・3がワーキングチャンバ8・16の真空状態と略同じになると、シャッタ装置8・29の扉9・9が動いて出入り口9・7、9・1を開き、アームが伸びてウェーハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ8・16内のステージ装置8・6に接近する。そしてステージ装置8・6の載置面9・14上にウェーハを載置する。ウェーハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置8・29が出入り口9・7、9・1を閉じる。
【0075】
ステージには、ウェーハに逆バイアス電位(リターディング電位)をかける機構があるので、アームがステージへウェーハを置きに行くもしくは取りに行く時、アームをステージと同じもしくは近い電位、またはアームをフローティング電位にしておくことにより、電位のショートによる放電などの不具合を避ける機構を有している。また、別の実施の形態として、ウェーハをステージ装置上に搬送する際にはウェーハへのバイアス電位をオフにしておいてもよい。
【0076】
バイアス電位を制御する場合には、ウェーハがステージに搬送されるまでは電位をオフにしておき、ステージに搬送され載置されてからオンにしてバイアス電位を印加するようにしてもよい。バイアス電位を印加する時機は、タクトタイムを予め設定しておき、それにしたがって印加してもよいし、ステージの上にウェーハが載置された事をセンサで検出し、その検出信号をトリガとして印加するようにしてもよい。また、シャッタ装置8・29が出入口9・7、9・1を閉じたことを検出して、その検出信号をトリガとして印加してもよい。更に、静電チャックを用いる場合には、静電チャックに吸着されたことを確認し、それをトリガとしてバイアス電位を印加するようにしてもよい。
【0077】
以上は、カセット8・12内のウェーハをステージ装置上に搬送するまでの動作について説明したが、ステージ装置8・6に載せられて処理が完了したウェーハをステージ装置8・6からカセット8・12内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウェーハラック9・11に複数のウェーハを載置しておくため、第2の搬送ユニット9・12でウェーハラック9・11とステージ装置8・6との間でウェーハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニット11・14でカセットとウェーハラック9・11との間でウェーハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
【0078】
具体的には、ウェーハラック9・11に、既に処理済のウェーハAと未処理のウェーハBがある場合、まず、ステージ装置8・6に未処理のウェーハBを移動する。この間に、処理済ウェーハAを、アームによりウェーハラックからカセット8・12に移動し、未処理のウェーハCを同じくアームによりカセット8・12から抜き出し、プリアライナ11・5で位置決めした後、ローディングチャンバ9・2のウェーハラック9・11に移動する。
【0079】
このようにすることで、ウェーハラック9・11の中は、ウェーハBを処理中に、処理済のウェーハAが未処理のウェーハCに置き換えることができる。また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置8・6を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウェーハラック9・11からウェーハを移動することで、複数枚のウェーハを同時処理することもできる。
【0080】
上記の実施の形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(1)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(2)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(3)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを一体的に振動防止装置を介して支持したので外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
【0081】
2−3)電子光学系
2−3−1)概要
電子光学系8・8は、ハウジング本体8・17に固定された鏡筒8・38の中に設けられた、図13に概略的に図示する一次電子光学系(以下、単に一次光学系という)13・1と、二次電子光学系(以下、単に二次光学系という)13・2とを備える電子光学系と、検出系13・3とを備える。一次光学系13・1は、電子線を検査対象であるウェーハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃13・4と、電子銃13・4から放出された一次電子線を集束する静電レンズからなるレンズ系13・5と、ウイーンフィルタすなわちE×B分離器13・6と、対物レンズ系13・7とを備え、それらは、図13に示されるように電子銃13・4を最上部にして順に配置されている。この実施の形態の対物レンズ系13・7を構成するレンズは減速電界型対物レンズである。この実施の形態では、電子銃13・4から放出される一次電子線の光軸は、検査対象であるウェーハWに照射される照射光軸(ウェーハの表面に垂直になっている)に関して斜めになっている。対物レンズ系13・7と検査対象であるウェーハWとの間には電極13・8が配置されている。この電極13・8は一次電子線の照射光軸に関して軸対称の形状になっていて、電源13・9によって電圧制御されるようになっている。
【0082】
二次光学系13・2は、E×B型偏向器13・6により一次光学系から分離された二次電子を通す静電レンズから成るレンズ系13・10を備えている。このレンズ系13・10は二次電子像を拡大する拡大レンズとして機能する。
【0083】
検出系13・3は、レンズ系13・10の結像面に配置された検出器13・11及び画像処理部13・12を備えている。
【0084】
一次ビームの入射方向は通常E×BフィルタのE方向(電界の逆方向)であり、この方向と積算型のラインセンサ(TDI:time delay integration)の積算方向とは同じ方向となっている。TDIの積算方向は一次ビーム方向と異なっていても構わない。
【0085】
以下、具体的な実施の形態について説明する。
真空チャンバ、真空排気系、1次光学系、2次光学系、検出器、画像処理器、制御用コンピュータより主に構成されている検査装置の一例である。図14−1にその一例を示す。
【0086】
電子ビームを試料に照射するための1次光学系14・1と試料表面から放出された電子
、例えば、2次電子、反射電子、後方散乱電子等を、検出器に導くための、2次光学系14・2がある。2次光学系は、写像投影式光学系である。1次系と2次系を分離する為に、
E×Bなるビーム分離器14・3が使用される。また、検出器14・4によって検出された電子の画像信号は、光信号、または/及び、電気信号に変換され、画像処理器14・5により処理される。また、このとき、検出器に入射する電子数は、1画素相当エリアに、200個以下でも画像を良好に形成できる。もちろん1画素領域中に200個以上の場合も画像を良好に形成できることは言うまでもない。
【0087】
1次光学系の構成要素である電子銃14・6は、熱フィラメントとして、LaB6が用
いられ、ウェネルト、引出電極14・7によりカソードからの電子を引き出す。その後、2段のAレンズ(アインツェルレンズ)14・8によりビームをアパーチャ14・9に収束させ、クロスオーバーを形成する。その後、2段のアライナ14・10、アパーチャ14・11、3段の4極子レンズ14・12、3段アライナ14・13を通過してビーム分離器に入射して試料面方向に偏向され、アライナ14・14、アパーチャ14・15と2次光学系のPレンズ(対物レンズ)14・16を通過して試料面にほぼ垂直に照射される。
【0088】
アパーチャ14・9により、クロスオーバでの均一性が高く、且つ、輝度の高いビーム領域を通過させ、アパーチャ14・11により、4極子レンズへのビーム入射角度を規定するアライナ(偏向器)14・10は、アパーチャ14・11及び4極子レンズ14・12の光軸中心にビームを入射させるための調整に使用される。4極子レンズ14・12は、ビームの2方向、例えば、X,Y方向の軌道を変えて、ビームの形状を変形することに利用される。例えば、試料照射ビーム形状において、円形、楕円形、矩形、矩形・楕円のx,y方向の形状の割合変更等を実現できる (図14−2参照) 。4極子レンズ通過後、アライナ14・14により、アパーチャ14・15、Pレンズ(対物レンズ)14・16の中心を通過するように調整され、試料表面に入射する。このとき、照射ビームの形状は、2軸の少なくとも一つについて、対称的に形状を形成できる。ビーム形状は非対称であっても良い。試料表面に照射されるビームのエネルギ−は、最終的に、カソードと試料表面に電圧差によって決定される。例えば、カソード-5.0kV、試料表面−4kVの時、
照射ビームエネルギは、1keVとなる (図14−1参照) 。
【0089】
この場合の電圧の誤差は±10V、エネルギー誤差は±20eVである。また、検出電子として、2次電子を用いる場合、ビーム照射エネルギが1.5keV±10eV〜5keV±10eVで用いるときは、試料が負帯電状態となり、その状態からの2次電子が試料から放出され、2次系により拡大・結像されて検出系に導かれる。照射エネルギが50±10eV〜1500eV±10eVでは、試料表面が正帯電状態になり、放出された2次電子が、検出系に導かれる。正帯電の方が、比較的低ダメージで動作できるが、チャージアップの影響またはチャージアップによる表面電位の不均一による影響は受けやすい。負帯電での動作では、安定して像が得やすく、チャージアップの影響またはチャージアップによる表面電位の不均一による像の歪みが正帯電よりも小さくできる。
【0090】
また、アパーチャ14・15の場所において、2次系と1次系のクロスオーバの位置をずらして動作することもある。例えば、2次系は2次系光軸中心上に、2次電子のクロスオーバを形成し、1次系のクロスオーバは2次系の光軸中心よりも50〜500μmずれた位置(X、Yどちらでも良い)に形成して動作させる。これにより、アパーチャ14・15での1次系と2次系の2つのクロスオーバが重なることが無くなり、電流密度の緩和ができるため、ビーム電流量が多い場合の空間電荷効果によるボケの拡大を抑制することが可能となる。これは、例えば、1次系照射ビーム電流密度が1×10-3A/cm2以上のときに、有効となる。それより低い電流密度の時は、光軸中心が同一になっても影響は少ない。
【0091】
試料表面からの放出電子は、2次電子、反射電子、後方散乱電子の1種類以上が利用される。試料表面からの放出エネルギーは、例えば、入射ビームエネルギ1000eV±10eVの時、およそ、各々、0〜10eV、1000eV±10eV、10〜1000eVとなる。
【0092】
電子ビームの代わりに集束イオンビーム(FIB)を用いても良い。FIB源としては液体金属のGaイオン源が一般的であるが、液化しやすい金属を用いる他の液体金属イオン源や、異なる方式のイオン源、例えば放電を用いるデュオプラズマトロン等が使用できる。
【0093】
試料としては、10×10mm程度のチップから2,4,6,8,12インチウェーハまで、種々の試料が用いられる。特に、100nm以下の線幅を持つ配線パターンや直径100nm以下のビアの欠陥やゴミの検出に有効であり、また、それらの電気的欠陥を検出するのに都合がよい。試料は、Siウェーハ、Siに加工を施された半導体デバイスウェーハ、マイクロマシン加工がされたウェーハ、液晶ディスプレイ用基板、ハードディスク用ヘッド加工ウェーハ、等が用いられる。
【0094】
2次光学系14・2では、試料からの放出電子、例えは、2次電子、反射電子、後方散乱電子を検出系に拡大倍率にて、結像させて、導くための写像投影光学系が用いられる例を述べる。コラムのレンズ構成の例としては、Pレンズ(対物レンズ)14・16、アパーチャ14・15、アライナ14・14、ビーム分離器14・3、Pレンズ(中間レンズ)14・17、アライナ14・18、アパーチャ14・19、Pレンズ(投影レンズ)14・20、アライナ14・21、マイクロチャンネルプレート(MCP)ユニットで構成される。コラムの上部フランジにはハーメチックの石英ガラスが設置されている。その上部にリレーレンズ、二次元の電荷結合素子(2D−CCD)が設置され、蛍光面で形成された像が2D−CCDセンサに結像される。
【0095】
試料表面からの放出電子は、Pレンズ(対物レンズ)14・16にてアパーチャ14・15でクロスオーバを形成して、ビーム分離器14・3中心で結像する。ビーム分離器中心にて結像する条件で動作すると、ビーム分離器14・3で発生する2次系ビームの収差の影響を小さく押さえることができるので有効となる。これは、例えば、E×Bにおいてビームを通過させるときに、像高により偏向量・収差が異なってくるため、結像することにより、結像成分の被る収差を最小限に押さえることができるからである。この事は、1次系においても同様の事がいえるため、1次系においても、試料上に結像条件を形成するのみでなく、ビーム分離器中心付近においても結像点を形成することにより、1次ビームの収差低減を行い、試料上での電流密度ムラを小さく押さえることに有効となる。
【0096】
その上部にあるPレンズ(中間レンズ)14・17の中心にビームを調整するため、アライナ14・14が使用される。その上流部にあるPレンズ(投影レンズ)14・20の中心にビームを調整するため、アライナ14・18が使用される。その上部にあるMCP中心にビームを調整するために、アライナ14・21がある。Pレンズ(対物レンズ)14・16の倍率は1.5〜3倍、Pレンズ(中間レンズ)14・17の倍率は1.5〜3、Pレンズ(投影レンズ)14・20の倍率は30〜50である。これらの倍率を達成するには、それぞれの倍率に応じた電圧を各々のレンズに印加して調整を行う。また、焦点の微調整を行うには、専用の焦点補正レンズが、Pレンズ(対物レンズ)系の中に組み込まれており、該電極に印加する電圧の微調整により、焦点あわせを実現する。また、アパーチャ14・15とアパーチャ14・19の位置では、双方とも、クロスオーバを形成する場合、アパーチャ14・15は逆光カット用に用いて、アパーチャ14・19は、収差・コントラストを決定する役割を果たすように使用することも可能である。
【0097】
サイズとして例えば、アパーチャ14・15とアパーチャ14・19は、φ30以上φ2000μm以下、好ましくはφ30以上〜φ1000μm、より好ましくはφ30以上〜φ500μmで使用可能である。この時、アパーチャ14・15で収差、透過率、コントラスト特性を主に決める場合には、アパーチャ14・15を例えばφ30〜φ500μm、アパーチャ14・19はφ1000〜φ2000μmで用いる。アパーチャ14・19で収差、透過率、コントラスト特性を主に決める場合には、例えばアパーチャ14・19をφ30〜φ500μm、アパーチャ14・15はφ1000〜φ2000μmで用いる。
【0098】
また、Pレンズ(中間レンズ)14・17の上下にスティグ電極が設置されて用いることもある。これは、ビーム分離器14・3等によって発生する非点収差を補正するために用いられる。例えば、4、6,8極の電極構成のスティグを用いることが可能である。例えば、8曲の内それぞれ電極に異なった電圧が印加されて非点収差、球面収差の補正に用いることができる。
【0099】
また、反射電子像及び後方散乱電子を用いたときのレンズ動作において、最終段のPレンズ(投影レンズ)14・20が、減速レンズ(負電圧印加レンズ)を用いると、2次電子のノイズカットに有効となる。通常、反射電子量の10〜1000倍程度2次電子量の方が多いため、特に、反射電子・後方散乱電子を用いた結像を行う場合は有効となる。例えば、1次系電子源のカソード電圧−4kV、試料電位−3kVの時、試料からの反射電子エネルギ1keV、検出器電圧が設置電位の時に、P電極の部位では、およそ、反射電子と2次電子のエネルギ差は1keVある。この時、Pレンズ(投影レンズ)電極の負電圧レンズ動作において、中心電圧が、反射電子を通過させて、2次電子をカットオフする条件を用いることが可能である。これらの条件は、シミュレーションによって求めることが可能である。
【0100】
ビーム分離器14・3では、電場と磁場が直行しているE×Bまたは、磁場Bのみで行う分離器が用いられる。E×Bの例では、電界分布を形成するE電極とそれと直交した磁極の面を持ち、直交した方向に磁束密度分布を形成する磁極より構成されている。例えば、2次系の光軸が試料表面より垂直方向であるとき、この2次系の軸に対して、1次系の入射ビームが10〜90度で設定することが可能である。この時、1次系がE×Bにより、
偏向されて試料面に垂直入射でき、また、試料表面からの放出電子が光軸方向つまり試料面から垂直方向にE×Bにて導かれる。これは、E電極に印加する電圧と、B磁極で形成される磁束密度により達成される。例えば、一対のE電極に±2kV±1V、一対のB磁極から並行的に磁束密度分布が形成され、例えば、E×Bの中心部において、1〜60G±1Gの磁極方向の磁束密度を発生する(図14−1参照)。
【0101】
また、E×Bは1次系と2次系の偏向関係を逆にした場合にも適用可能である。即ち、1次系の入射ビーム源を試料の直上方向に設けるとともに、2次系の検出器を1次系の軸と10〜80度の角度をなした方向に設け、E×Bにより1次系のビームには偏向力を加えずに試料に垂直に入射させ、試料から放出された電子(2次系ビーム)に偏向力を加えて検出器の方向に導くことができる。
【0102】
検出器14・4は、MCP等電子増倍管に導入され、増倍された電子が蛍光面に照射され、蛍光像形成がなされる。蛍光面は石英ガラス等のガラス板の片面に蛍光材がコートされているものである。この蛍光像は、リレーレンズ系と2次元CCDにより、撮像される。このリレーレンズ系とCCDはコラムの上部に設置されている。コラムの上部フランジには、ハーメチックガラスが設置され、コラム内の真空環境と外部大気環境とを分離し、かつ、蛍光像を歪・コントラスト劣化を小さくして、CCDに結像して、蛍光像を効率よく撮像できる。
【0103】
CCDの代わりに、積算型のラインイメージセンサ(TDI−CCD)カメラを用いることもできる。この場合、試料はステージにて、例えば、E電極方向または、B磁極方向に、ステージ移動を行いながらTDI撮像を行うことが可能となる。例えば、TDIの積算段数が256段、1段当たり2048個の画素数/段、素子サイズ15×15μm、試料面に対するMCP結像倍率が300倍である時、ライン/スペースが0.1/0.1μ
mのとき試料面サイズがMCP面で30/30μmとなる。そして、リレーレンズ倍率1倍のとき、30μmは2つの素子サイズ相当にて撮像される。このとき、1素子相当の試料位置、つまり0.05×0.05μmの試料サイズから放出された電子は、256素子段数分ステージ移動中に積算されて、総合取得光量が増加して撮像できる。これは、ラインレート100kHz〜600kHz対応等、ステージ速度が速いときに特に有効である。これは、ラインレートが早い時に、1素子当たりの取得電子数、つまり、TDIセンサの1素子当たりの取得光強度が小さくなるために、積算を行って最終取得光強度を高くし、コントラストとS/Nを高めることができるためである。ラインレートは、0.5kHz〜100MHzが用いられ、好ましくは1kHz〜50MHz、より好ましくは20kHz〜10MHzである。これに対応して、ビデオレートも、1タップ当たり1〜120MHz/タップ好ましくは10〜50MHz/タップ、より好ましくは、10〜40MHz/タップで使用される。また、タップ数は、1以上520以下で、好ましくは4以上256以下、より好ましくは32以上128以下で用いられる。
【0104】
CCD、TDIセンサ/カメラは、低ノイズ、高感度の特性を有するものが用いられる。例えば、100〜100000DN/(nJ/cm2)で設定可能であるが、このうち、1000〜50000DN/(nJ/cm2)で使用すると効率がよい。さらに、10
000〜50000DN/(nJ/cm2)で使用すると、高ラインレート時においても
、良好なS/Nで、高品質の画像を得ることができる。
【0105】
また、CCD又はTDIセンサを用いて画像取得がなされるとき、これらのセンサの画素数×段数の領域が、1次ビームの照射エリアとほぼ一致している状態で使用することができ、効率的であると共に、ノイズの低減になる。ノイズは、撮像に使用されるエリア以外の像高の高い部位からの電子もノイズとして、検出器まで到達するものがある。それらを低減するには、有効視野以外の部位のビーム照射を低減することが有効である。CCD、TDIセンサにより取得された像情報は電気信号に変換されて、画像処理器によってデータ処理される。この画像処理により、セル トゥー セル、ダイ トゥー ダイ(Die to Die)ダイ トゥー エニーダイ(Die to Any Die)の像比較が行われ、欠陥検査を行うことができる。例えば、パターン欠陥、パーティクル欠陥、電位コントラスト欠陥(例えば、配線やメッキの電気接続欠陥等)。
【0106】
ステージ14・22は、X,Y,Z、移動機構のうち1つ以上の組み合わせにより設置されたステージが用いられる。
MCPは入ってきた電子を増幅させる機能を有し、そこから出てきた電子は蛍光板により光に変換される。入射電子数が充分多くて増倍する必要にない場合には、MCP無しでも操作も可能である。また、蛍光板の代わりにシンチレータを用いることも可能である。この光の信号(あるいは像信号)はリレーレンズの場合には所定の倍率で、また、FOPの場合には1倍(1対1に光信号を伝える)でTDIへ伝える或いは像を形成する。ホトマルは光信号を増幅して電気信号へ変換するものであり、マルチホトマルはホトマルを複数並べたものである。
【0107】
画像処理器
画像処理器は、像比較、欠陥検出、欠陥分類、画像データ記録、等の機能を有する。
【0108】
上述した電子線検査装置において、1次ビームの照射ビーム形状が、X,Y軸に対して、少なくとも1軸以上に対して対称な照射ビーム形状を使用することができる。このことにより、光軸を中心としたビームによる検出器の電子入射面上で、低収差、低歪みの取得像形成が可能となる。
【0109】
また、検出器としてCCDやTDIを用いる場合では、1画素に対応するエリア、例えば、MCP上において、1画素の形成において、電子の入射量が200個/画素エリア以下にて十分なS/Nを達成でき、画像処理及び欠陥検出に使用できる。これは、例えば、写像投影光学系においては、アパーチャ14・15又は14・19のサイズを規定することにより、ノイズカットと収差低減効果を発生できるため、例えば、径30μm〜1000μmのアパーチャを設置することにより、S/N向上を実現できるので、200電子数/1画素エリアにて、高分解能な良質な画像を取得できる。
【0110】
TDIはステージの移動方向に付いて段数分の積分を行う。本実施の形態の場合は256段分の積分を行うが、積算段数は114段以上8192段以下、好ましくは114段以上4096段以下、より好ましくは512段以上4096段以下が適当である。積算方向に若干、一次ビームの照度むらがあり、試料からの信号電子にもむらがあったとしても、積分の効果によりそのむらは平均化され、検出される電子情報は一定の安定したものとなる。従って、ステージの移動方向は1次電子ビームの照度むらの生じ易い方向も考慮して、その照度ムラの生じ易い方向がTDIの積分方向に一致するように決めることができる。TDIの使用により、連続した画像取得が可能になるが、CCDを使用して、ステップアンドリピート方式でステージを走査し、画像取得を行っても良い。
【0111】
試料表面の様子が電子により拡大されて、検出器に像を結ぶとき、画像の分解能をCCD又はTDIの1画素程度にする場合、二次光学系の収差やぼけ等は1画素以内であることが望ましい。E×Bにおいて信号電子が偏向を受けると、収差やぼけが大きくなるので、本実施の形態では、二次光学系において、二次電子、反射電子、後方散乱電子等の信号電子にはE×Bでは偏向力を与えずに直進させるように設定してある。すなわち、二次光学系の中心軸が試料の視野中心とE×B中心と、検出器の中心を通る直線である構成となっている。
【0112】
尚、上記の実施の形態以外であっても二次光学系の像にぼけが生じなければ良く、本件発明がそれを含むことは言うまでもない。
【0113】
2−4)制御系
制御系は主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。メインコントローラにはマン−マシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作はここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時のときの必要な全てのコマンドの入カ等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウェーハ等の試料搬送、位置合わせの制御、他の制御コントローラやステージコントローラヘのコマンドの伝達や情報の受け取り等もメインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、試料観察位置のZ方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系ヘフィードバックし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージからの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
【0114】
制御コントローラは主に電子光学系の制御(電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンフィルタ用などの高精度電源の制御等)を担う。具体的には照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるようにすること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
【0115】
ステージコントローラは主にステージの移動に関する制御を行い精密なX方向およびY方向のμmオーダーの移動(±5μm以下、好ましくは±1μm以下、より好ましくは±0.5μm以下程度の誤差)を可能にしている。また、本ステージでは誤差精度±10秒程度以内で、好ましくは±1秒以内、より好ましくは±0.3秒以内で回転方向の制御(θ制御)も行われる。以下、制御系の構成について具体的に説明する。
【0116】
2−4−1)構成及び機能
本装置は、ウェーハの指定位置を電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡で撮像し表示する機能と、ウェーハの指定位置を電子顕微鏡で撮像し欠陥検出および欠陥分類する機能と、欠陥が検出された位置を電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡で撮像し表示する機能とを提供する。また、上記機能の実現およびメンテナンスのため、電子光学系制御と、真空系制御とウェーハ搬送制御と、構成機器単体操作と、撮像機能と、自動欠陥検査処理と、装置異常検知と、装置起動/停止処理機能とを有する。
【0117】
補助機能は以下のとおりである。
(1)電子光学系制御機能
(a)レンズ電圧印加制御
(a−1)連動制御
(a−2)印加関数による電圧印加
(a−3)多極子レンズ連動電圧印加
(a−4)ウォッブル制御
(b)電子ビーム出力調整
(b−1)プレヒート(Gun)
(b−2)ヒートアップ(Gun)
(b−3)エミッション電流制御(BIAS制御)
(2)真空系制御機能
(a)チャンバ個別真空排気/大気開放
(b)指定チャンバ一括真空排気/大気開放
(3)ウェーハ搬送制御機能
下記動作のステップ動作/全自動動作
(a)ウェーハロード
(b)ウェーハアンロード
(4)構成機器単体操作機能
(5)撮像機能
以下の2つの入力系統を選択し撮像を行う:
(a)CCDカメラ
・光学顕微鏡低倍(ピクセルサイズ:2.75μm/pix)
・光学顕微鏡高倍(ピクセルサイズ:0.25μm/pix)
(b)TDIカメラ
(b−1)TDI−still
(b−2)TDI−scan
EB×80(ピクセルサイズ:0.2μm/pix)
EB×160(ピクセルサイズ:0.1μm/pix)
EB×320(ピクセルサイズ:0.05μm/pix)
EB×480(ピクセルサイズ:0.03μm/pix)。
【0118】
さらに誤操作などによる事故防止のため、操作する者の技術・知識レベルに応じて操作可能項目を制限する機能としてユーザーモード指定機能がある。このユーザーモードは、GUI(グラフィッカルユーザーインターフェース)起動時に入力するユーザーIDおよびパスワードにて指定される。
【0119】
ユーザーモードには、メンテナンスモード、レシピ作成モード、オペレータモードがあり、装置設置後の立ち上げ作業およびメンテナンス作業時にはメンテナンスモードにて操作を行い、レシピの作成時にはレシピ作成モードにて必要な操作および手順を支援し、自動欠陥検査時にはオペレータモードにて作成済みのレシピを使用して検査を行う。各ユーザーモードと装置運用形態の関係は図15のようになる。ここで、
メンテナンスモード....構成機器単体操作、ウェーハ搬送、真空系制御、電子光学系制御、観察(光顕撮像、TDI撮像)、欠陥検査、レビュー
レシピ作成モード.....ウェーハ搬送、観察(光顕撮像、TDI撮像)、欠陥検査、レビュー
オペレータモード.....自動欠陥検査(ウェーハ搬送など必要な機能の自動制御)、レビュー。
【0120】
本装置には、運用に必要な可変パラメータとして装置定数とレシピが存在する。装置固有の(取付け誤差などの)誤差を吸収するパラメータとして装置定数が規定され、自動で欠陥検査を行うために各種条件を規定するパラメータとしてレシピが規定されている。装置定数は、立ち上げ作業時、メンテナンス作業後に設定され、基本的にその後は変更されることが無い。
【0121】
レシピは、搬送レシピ、アライメントレシピ、ダイマップレシピ、フォーカスマップレシピ、検査レシピに分類され、これらのレシピに従って欠陥検査が行われるため、設定作業は検査処理実施前に行われ、複数パターンの設定が保存される。
【0122】
レシピ作成時の手順としては図16のように、ウェーハをステージ上へ搬送(ウェーハロード)するところが最初のステップとなる。ウェーハカセットを装置へ設置後、カセット内の各スロットのウェーハ有無を検出するためのウェーハサーチを行い、検出されたウェーハに対して、ウェーハサイズ、ノッチ/オリフラ種別、(ステージ上にロードされたときの)ノッチ方向を指定し、図17、図18に示される手順でウェーハをロードする。搬送レシピには、これらの条件が保存される。ステージ上にロードされたウェーハのダイの配置方向は、TDIカメラのスキャン方向と必ずしも一致しない(図19)。これを一致させるためにθステージでウェーハを回転させる操作が必要となり、この操作をアライメントと呼ぶ(図20)。アライメントレシピではステージ上にロードされた後のアライメント実行条件が保存される。
【0123】
なお、アライメント実施時にダイの配列を示すダイマップ(図21)が作成され、ダイマップレシピではダイサイズや(ダイの位置を示す起点となる)原点ダイの位置などが保存される。
【0124】
2−4−2)アライメント手順
アライメント(位置決め)手順としては、始めに光学顕微鏡の低倍にて粗い位置決めを行い、次いで光学顕微鏡の高倍により、最後にEB像により詳細な位置決めを行う。
【0125】
A.光学顕微鏡低倍にて撮像
(1)<第1,2,3サーチダイ指定及びテンプレート指定>
(1−1)第1サーチダイ指定及びテンプレート指定
ウェーハ下方に位置するダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得する。このダイが位置決めの基準となるダイであり、左下隅の座標が特徴点の座標となる。今後、このテンプレート画像でパターンマッチングを行うことにより、基板上の任意のダイの正確な位置座標を測定していく。このテンプレート画像には、サーチ領域内でユニークなパターンとなるような画像を選択しなければならない。
【0126】
なお、本実施例では、左下隅をパターンマッチング用テンプレート画像取得位置としたが、これに限られるものではなく、ダイ内の任意の位置を特徴点として選択してよい。ただし、一般的には、ダイの内部や辺の上にある点よりも、隅の方が座標を特定し易いので、四隅のいずれかを選択するのが好適である。また同様に、本実施例では、ウェーハ下方に位置するダイについてパターンマッチング用テンプレート画像を取得したが、これもアライメントが行い易いように任意のダイを選択しても構わないのは当然である。
【0127】
(1−2)第2サーチダイ指定
第1サーチダイの右隣のダイを第2サーチダイとし、第2サーチダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、上記(1−1)で取得したテンプレート画像を用いて自動でパターンマッチを実行することで第1サーチダイで指定したテンプレート画像と一致する第2サーチダイのパターンの厳密な座標値を取得する。
【0128】
なお、本実施例では、第1サーチダイの右隣のダイを第2サーチダイとして例を挙げて説明したが、本発明の第2サーチダイはこれに限られるものではないことは勿論である。要は、正確な特徴点の位置座表を把握した基準点からの、行方向のダイの位置関係をパターンマッチングにより正確に把握することができる点を選択すればよいのである。したがって、例えば、第1サーチダイの左隣のダイを第2サーチダイとすることも可能である。
【0129】
(1−3)第3サーチダイ指定
第2サーチダイの上隣のダイを第3サーチダイとし、第3サーチダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、上記(1−1)で取得したテンプレート画像を用いて自動でパターンマッチを実行することで第1サーチダイで指定したテンプレート画像と一致する第3サーチダイのパターンの厳密な座標値を取得する。
【0130】
なお、本実施例では、第2サーチダイの上隣のダイを第3サーチダイとして例を挙げて説明したが、本発明の第3サーチダイはこれに限られるものではないことは言うまでもない。要は、特徴点の正確な座標を把握したダイを基準として、列方向のダイの特定点の座標の距離を含めた位置関係を把握することができればよいのである。したがって、第1サーチダイの上隣のダイも好適に代替適用可能である。
【0131】
(2)<光顕低倍Y方向パターンマッチング>
(2−1)第2サーチダイのパターンマッチ座標(X2,Y2)と第3サーチダイのパターンマッチ座標(X3,Y3)の関係より、上隣ダイのパターンへの移動量(dX,dY)を算出する。
dX=X3−X2
dY=Y3−Y2
【0132】
(2−2)算出した移動量(dX,dY)を用い、第1サーチダイの上隣のダイのパターンが存在する(と予想される)座標(XN,YN)へステージを移動。
XN=X1+dX
YN=Y1+dY
※(X1,Y1):第1サーチダイのパターンの座標
【0133】
(2−3)ステージ移動後、光顕低倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得し、さらにダイの検出個数(DN)の初期値として1を設定する。
【0134】
(2−4)第1サーチダイのパターン座標(X1,Y1)から現在撮像中のパターンの座標(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
【0135】
(2−5)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけ第1サーチダイを起点としてステージを移動する。
【0136】
(2−6)ステージ移動後、光顕低倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新し、ダイの検出個数を2倍する。これについては図22参照。
【0137】
(2−7)予め指定されたY座標値を超えるまでウェーハ上部へ向けて(2−4)〜(2−6)を繰り返し実行する。
【0138】
なお、本実施例では、精度を高めるため、及び処理回数(繰り返し回数)を低減させ、処理時間を短縮するために、2倍の移動量を繰り返す態様を例にとって説明したが、精度に問題がなく、更に処理時間を短縮させたければ、3倍、4倍というように、2倍以上等の整数倍の高倍率で実行しても構わない。また逆に、問題が無ければ、更に精度を高めるために、固定移動量で移動を繰り返してもよい。これらいずれの場合も、検出個数にもそれを反映させることは言うまでもない。
【0139】
(3)<光顕低倍θ回転>
(3−1)第1サーチダイのパターン座標(X1,Y1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量および、それまでに検出したダイの個数(DN)を用い、回転量(θ)およびY方向ダイサイズ(YD)を算出する(図23参照)。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
θ=tan-1(dX/dY)
YD=sqrt((dX)2+(dY)2)/DN
※sqrt(A)=√A
(3−2)算出した回転量(θ)分だけθステージを回転させる。
【0140】
B.光学顕微鏡高倍にて撮像
(1)光顕低倍の(1)と同様の手順を光顕高倍像を用いて実行する。
(2)光顕低倍の(2)と同様の手順を光顕高倍像を用いて実行する。
(3)光顕低倍の(3)と同様の手順を実行する。
(4)<光顕高倍θ回転後の許容値チェック>
【0141】
(4−1)[第1サーチダイ、光顕高倍のテンプレート指定]
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)を回転前座標(X1,Y1)および回転量(θ)から算出し、座標(X’1,Y’1)へステージを移動、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得。
X’1= x1*cosθ−y1*sinθ
Y’1=x1*sinθ+y1*cosθ
(4−2)光顕高倍Y方向パターンマッチング
【0142】
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)からdYだけY方向へ移動し、パターンマッチを実行することで現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得する。
【0143】
(4−3)回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)から現在撮像中のパターンの座標
(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X’1
dY=YN−Y’1
【0144】
(4−4)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけ第1サーチダイを起点としてステージを移動する。
【0145】
(4−5)ステージ移動後、光顕高倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新する。
【0146】
(4−6)予め指定されたY座標値を超えるまでウェーハ上部へ向けて(4−3)〜(4−5)を繰り返し実行する。
【0147】
(4−7)θの回転量を算出
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量を用い、回転量(θ)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
θ=tan―1(dX/dY)
【0148】
(4−8)光顕高倍θ許容値チェック
(4−7)にて算出した回転量(θ)が既定値以下に収まっていることを確認する。収まっていない場合は、算出した回転量(θ)を用いてθステージ回転後、再度(4−1)〜(4−8)を実行する。ただし、規定回数繰り返して(4−1)〜(4−8)を実行しても許容範囲内に収まらない場合は、エラー扱いとして処理を中断する。
【0149】
C.EB像によるアライメント
(1)<Yサーチ第1ダイ、EBのテンプレート指定>
光顕高倍の(1)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(2)<EB Y方向パターンマッチング>
光顕高倍の(2)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(3)<EB θ回転>
光顕高倍の(3)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(4)<EB θ回転後の許容値チェック>
光顕高倍の(4)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(5)必要に応じ、高倍率のEB像を用いて(1)〜(4)を実行する。
(6)第1サーチダイの座標(X1,Y1)と第2サーチダイの座標(X2,Y2)より、X方向ダイサイズ(XD)の概略値を算出する。
dX=X2−X1
dY=Y2−Y1
XD=sqrt((dX)2+(dY)2)
※sqrt(A)=√A
【0150】
D.ダイマップレシピ作成
(1)<Xサーチ第1ダイ、EBのテンプレート指定>
ウェーハ左端に位置するダイの左下隅がTDIカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得。このテンプレート画像には、サーチ領域内でユニークなパターンとなるような画像を選択しなければならない。
【0151】
(2)<EB X方向パターンマッチング>
(2−1)X方向ダイサイズ概略値(XD)を用い、Xサーチ第1ダイの右隣のダイのパターンが存在する(と予想される)座標(X1+XD,Y1)へステージを移動。
【0152】
(2−2)ステージ移動後、TDIカメラにてEB像を撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得し、さらにダイの検出個数(DN)の初期値として1を設定する。
【0153】
(2−3)Xサーチ第1ダイのパターン座標(X1,Y1)から現在撮像中のパターンの座標(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
【0154】
(2−4)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけXサーチ第1ダイを起点としてステージを移動する。
【0155】
(2−5)ステージ移動後、TDIカメラにてEB像を撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新し、ダイの検出個数を2倍する。
【0156】
(2−6)予め指定されたX座標値を超えるまでウェーハ右方向へ(2−3)〜(2−5)を繰り返し実行する。
【0157】
(3)<X方向傾きを算出>
Xサーチ第1ダイのパターン座標(X1,Y1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量および、それまでに検出したダイの個数(DN)を用い、ステージ直行誤差(Φ)およびX方向ダイサイズ(XD)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
Φ=tan―1(dY/dX)
XD=sqrt((dX)2+(dY)2)/DN
※sqrt(A)=√A
【0158】
(4)<ダイマップ作成>
このように、X方向ダイサイズ(XD)を求め、予め回転量(θ)を算出した際に求めたY方向ダイサイズ(YD)と合わせてダイマップ(理想上のダイの配置情報)を作成する。ダイマップにより、ダイの理想上の配置が分かる。一方、実際の基板上のダイは例えばステージの機械的誤差(ガイド等の部品や組み付けの誤差)、干渉計の誤差(例えばミラー等の組み付けの問題による)やチャージアップによる像の歪みの影響を受け、必ずしも理想的な配置には観察することができない場合があるが、この実際のダイの位置とダイマップ上の理想上の配置との誤差を把握し、この誤差を考慮しこれを自動補正しながら、検査を行っていくようにする。
【0159】
E.フォーカスレシピ作成手順
次に、フォーカスレシピの作成手順について説明する。フォーカスレシピは、基板等の試料の平面上の印の位置における最適なフォーカス位置、若しくはフォーカス位置に関する諸条件の情報を表等の所定の形式で記憶したものである。フォーカスマップレシピではウェーハ上の指定位置のみフォーカス条件が設定され、指定位置間のフォーカス値は、直線補完される(図24参照)。フォーカスレシピ作成手順は次のとおりである。
(1)フォーカス測定対象ダイをダイマップから選択する。
(2)ダイ内でのフォーカス測定点を設定する。
(3)各測定点へステージを移動させ、画像およびコントラスト値を基に、フォーカス値(CL12電圧)の調整を手動で行う。
【0160】
アライメント処理にて作成したダイマップは、ウェーハの両端のダイ座標より算出した理想的な位置情報であり、様々な要因によりダイマップ上のダイ位置と実際のダイ位置には誤差が生じる(図25参照)。この誤差分を吸収するためのパラメータを作成する手順をファインアライメントと呼び、ファインアライメントレシピには、ダイマップ(理想上のダイ配置情報)と実際のダイの位置との誤差情報が保存される。ここで設定された情報は、欠陥検査時に使用される。ファインアライメントレシピではダイマップ上で指定されたダイのみ誤差が測定され、指定ダイ間の誤差は、直線補完される。
【0161】
F.ファインアライメント手順
(1)ファインアライメント用誤差測定対象ダイをダイマップから指定する。
(2)誤差測定対象ダイより基準ダイを選択し、このダイの位置をダイマップとの誤差がゼロの点とする。
(3)基準ダイの左下隅をTDIカメラで撮像し、パターンマッチ用テンプレート画像を取得する。
※サーチ領域内でユニークなパターンをテンプレート画像として選択
(4)近隣の誤差測定対象ダイの左下の(ダイマップ上での)座標(X0,Y0)を取得し、ステージを移動させる。移動後、TDIカメラで撮像し、(3)のテンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、厳密な座標値(X,Y)を取得する。
(5)パターンマッチで取得した座標値(X,Y)とダイマップ上の座標値(X0,Y0)の誤差を保存。
(6)全ての誤差測定対象ダイについて(4)〜(5)を実行する。
【0162】
2−4−3)欠陥検査
欠陥検査は、図26に示すように、電子光学系の条件設定(撮像倍率などの設定)を行い、電子ビームを照射しながらステージを移動させることでTDIスキャン撮像(図27)を行い、設定された検査条件(アレイ検査条件、ランダム検査条件、検査エリア)に従い、検査専用処理ユニット(IPE)によりリアルタイムで欠陥検査が行われる。
【0163】
検査レシピでは、電子光学系の条件、検査対象ダイ、検査エリアおよび検査方法(ランダム/アレイ)などが設定される(図28のA、B)。
【0164】
なお、欠陥検査用に安定した画像を取得するため、位置ズレや速度ムラなどによる撮像画像のブレを抑制するEO補正、理想的なダイマップ上の配置と実際のダイ位置との誤差を吸収するダイ位置補正、有限の測定点で予め測定したフォーカス値を用いウェーハ全領域のフォーカス値を補完するフォーカス調整がリアルタイムで同時に行われる。
【0165】
欠陥検査のスキャン動作において、検査対象ダイの全域を検査する(図29)他に、図30に示すように、スキャン方向と直角方向へのステップ移動量を調整することで間引き検査も可能となる(検査時間の短縮)。更に、単なる間引き検査では、検査時間の短縮は図れるが、間引き検査を行った領域が必ずしも検査上重要な領域であるとは限らないため、検査上特に重要な、クリティカルな領域を任意に選択して検査することも可能である。これにより、検査時間を短縮しつつ、重要な領域についてはきちんと検査を行い、効率的に精度の方も確保できる。
【0166】
検査終了後は、検査結果として欠陥個数、欠陥を含むダイの位置、欠陥サイズ、各ダイ内での欠陥位置、欠陥種別、欠陥画像、比較画像をディスプレイに表示し、これらの情報およびレシピ情報などをファイルへ保存することで過去の検査結果の確認、再現が可能となっている。
【0167】
自動欠陥検査時には各種レシピを選択指定することで、搬送レシピに従ってウェーハがロードされ、アライメントレシピに従ってステージ上でウェーハのアライメントが行われ、フォーカスマップレシピに従ってフォーカス条件の設定が行われ、検査レシピに従って検査が行われ、搬送レシピに従ってウェーハがアンロードされる(図31のA、B)。
【0168】
2−4−4)制御系構成
本装置は、図32に示すように複数のコントローラにより構成されている。メインコントローラは、装置(EBI)のGUI部/シーケンス動作を司り、工場ホストコンピュータまたはGUIからの動作指令を受け取り、VMEコントローラやIPEコントローラへ必要な指示を与える。VMEコントローラは、装置(EBI)構成機器の動作を司り、メインコントローラからの指示に従い、ステージコントローラやPLCコントローラへ指示を与える。IPEコントローラは、メインコントローラからの指示によりIPEノードコンピュータからの欠陥検査情報取得、取得した欠陥の分類および画像表示を行う。IPEノードコンピュータは、TDIカメラから出力される画像の取得ならびに欠陥検査を行う。
【0169】
PLCコントローラは、VMEコントローラからの指示を受け、バルブ等の機器の駆動およびセンサ情報の取得、常時監視が必要な真空度異常などの異常監視を行なう。ステージコントローラは、VMEコントローラからの指示を受け、XY方向への移動およびステージ上に設置されたウェーハの回転を行う。
【0170】
このような分散制御系を構成することで、末端の装置構成機器が変更された場合に各コントローラ間のインターフェースを同一に保つことで上位コントローラのソフトウェアおよびハードウェアの変更が不要となる。また、シーケンス動作が追加・修正された場合でも上位ソフトウェアおよびハードウェアの変更を最小限にとどめることで構成変更への柔軟な対応が可能となる。
【0171】
2−4−5)ユーザーインターフェース構成
図33はユーザーインターフェース部の機器構成を示す。
(1)入力部
ユーザーからの入力を受け付ける機器で「キーボード」、「マウス」、「JOYパッド」から構成される。
(2)表示部
ユーザーへの情報を表示する機器で、モニタ2台で構成される。
モニタ1:CCDカメラまたはTDIカメラでの取得画像を表示
モニタ2:GUI表示
【0172】
座標系について
本装置では、以下3つの座標系を規定する。
(1)ステージ座標系[XS,YS]
ステージ位置制御時の位置指示用の基準座標系
チャンバ左下隅を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。
本座標系は、本装置に1つしか存在しない。
ステージ座標系で示される位置(座標値)は、ステージの中心(ウェーハ中心)とする。
つまり、ステージ座標系において座標値[0,0]を指定した場合、ステージ中心(ウェーハ中心)がステージ座標系の原点に重なるように移動する。
単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。
※λ:レーザ干渉計で用いられるレーザの波長(λ≒632.991[μm])
【0173】
(2)ウェーハ座標系[XW,YW]
ウェーハ上の観察(撮像・表示)する位置を指示するための基準座標
ウェーハ中心を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。
ウェーハ座標系で示される位置(座標値)は、そのとき選択された撮像機器(CCDカメラ、TDIカメラ)での撮像中心とする。
本座標系は、本装置に一つしか存在しない。
単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。
※λ:レーザ干渉計で用いられるレーザの波長(λ≒632.991[μm])
【0174】
(3)ダイ座標系[XD,YD]
各ダイにおける観察(撮像・表示)位置を規定するための基準座標
各ダイの左下隅を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。本座標系はダイ毎に存在する。単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。
※λ:レーザ干渉計で用いられるレーザの波長(λ≒632.991[μm])
【0175】
なお、ウェーハ上のダイは、番号付け(ナンバリング)され、番号付けの基準となるダイを原点ダイと呼ぶ。デフォルトではウェーハ座標系原点に最も近いダイを原点ダイとするが、ユーザーの指定により原点ダイの位置を選択可能とする。
【0176】
※ユーザーインターフェースにより指示される座標および、ステージ移動方向の関係は、以下のとおりである。
(1)ジョイスティック & GUI矢印ボタン
ジョイスティックおよび、GUI矢印ボタンにより、指示される方向は、オペレータが見たい方向とみなし、ステージを指示方向と逆方向に移動させる。
例)
指示方向:右 .... ステージ移動方向:左 (画像が左に移動=視野が右に移動)
指示方向:上 ・・・・ ステージ移動方向:下 (画像が下に移動=視野が上に移動)
【0177】
(2)GUI上で座標を直接入力
GUI上で直接入力される座標は、ウェーハ座標系上でオペレータが見たい場所とみなし、該当ウェーハ座標が撮像画像中心に表示されるようにステージを移動させる。
【0178】
2−5)検査
次に、検査手順について図34を用いて説明する。まず、一般的な検査手順について説明し、次に、選択的検査について説明する。一般に電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に、また、配線工程ではより微細な配線工程部分、すなわち配線工程の1から2工程、及び前工程のゲート配線工程等に利用されている。特に、デザイン・ルールが100nm以下、即ち,100nm以下の線幅を有する配線や直径100nm以下のビア・ホール等の形状欠陥や電気的欠陥を見つけ、また、プロセスにフィードバックすることが重要である。
【0179】
検査されるウェーハは大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密X−Yステージ上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定され、以後、(図34)の手順に従って欠陥検査等が行われる。はじめに光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。光学顕微鏡はこの他に欠陥等の見たい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次に電子光学系の条件設定を行い、電子線像を用いて、光学顕微鏡で設定された情報の修正を行い、精度を向上させる。
【0180】
次いでウェーハの種類(どの工程後か、ウェーハのサイズは200mmか、300mmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下、被検査領域の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行なった後、画像取得を行いながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行なう。一般的なウエハの全面検査の場合には、セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリーへ記憶を行なう。
【0181】
欠陥にはパーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行うこともできる。特に、線幅が100nm以下の配線や直径100nm以下のビア等の前記欠陥を分類するのに有効である。電気的欠陥の検出はコントラスト異状を検出することで達成される。例えば導通不良の場所は電子線照射(500eV程度)により、通常正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別ができる。この場合の電子線照射手段とは、通常検査用の電子線照射手段以外に別途、電位差によるコントラストを際立たせるために設けた低電位(エネルギー)の電子線発生手段(熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位(エネルギーが例えば100eV以下)の電子線を発生・照射している。検査用の電子線を照射すること自体正に帯電させることができる写像投影方式の場合は、仕様によっては、別途低電位の電子線発生手段を設ける必要はない。また、ウェーハ等の試料に基準電位に対して、正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出ができる。
【0182】
電位差によるコントラストは、電位コントラストデータを表示するのに有効な信号の画像に変換して表示してもよい。電位コントラスト画像を解析して、期待している値よりも高い又は低い電圧にある構造体、つまり、絶縁不良又は導通不良や欠陥を識別することができる。例えば、ウェーハ上の異なるダイからそれぞれ電位コントラスト画像を取得し、その差異を検出することで、欠陥を認識する。また、CADデータ等の設計データから被検査ダイの電位コントラスト画像と等価な画像データを生成して、この画像データとウェーハ上の被検査ダイから取得した電位コントラスト画像との差異を検出することで欠陥を認識する。
【0183】
線幅測定装置及び合わせ精度測定にも利用できる。検査されるウェーハの情報、例えばカセットの番号、ウェーハの番号(又はロットナンバ)等は、これらが現在どのような位置や状態にあるか、全て記憶管理されている。したがって、誤って検査を2回以上行ったり、検査をしなかったりするトラブルは発生しない。
【0184】
2−6)検査方法
2−6−1)概要
検査の基本的流れを、図35に示す。まずアライメント動作35・1を含んだウェーハ搬送の後、検査に関係する条件等を設定したレシピを作成する(35・2)。レシピは被検査ウェーハに最低1種類は必要であるが、複数の検査条件に対応するために、1枚の被検査ウェーハに対して、複数のレシピが存在しても構わない。また同一パターンの被検査ウェーハが複数枚ある場合、一種類のレシピで複数のウェーハを検査しても構わない。図35の経路35・3はこの様に過去に作成されたレシピで検査する場合、検査動作直前にレシピの作成が不要である事を示している。以下、図35において、検査動作35・4は、レシピに記載された条件、シーケンスに従いウェーハの検査を行う。欠陥抽出は、検査動作中に欠陥を発見するごと即時行われ、
a)欠陥分類(35・5)を行い、結果出力ファイルに抽出欠陥情報と欠陥分類情報を追加する動作
b)抽出欠陥画像を画像専用結果出力ファイルもしくはファイルに追加する動作
c)抽出欠陥の位置などの欠陥情報を操作画面上に表示する動作
をほぼ並列に実行する。
被検査ウェーハ単位で検査が終了すると、
a)結果出力ファイルをクローズして保存する動作
b)外部からの通信が検査結果を要求する場合、検査結果を送る動作
c)ウェーハを排出する動作
をほぼ並列に実行する。
【0185】
連続的にウェーハを検査する設定がなされている場合、次の被検査ウェーハを搬送して、前記一連の動作を繰り返す。
【0186】
以下、図35フローについて、さらに詳細を述べる。
(1)レシピ作成
レシピとは、検査に関係する条件等の設定ファイルであり保存する事も可能である。検査時もしくは検査前にレシピを使用して装置設定を行うが、一般的なウエハ全面検査の場合にレシピに記載された検査に関係する条件とは、
a)検査対象ダイ
b)ダイ内部被検査領域
c)検査アルゴリズム
d)検出条件(検査感度等、欠陥抽出に必要な条件)
e)観察条件(倍率、レンズ電圧、ステージ速度、検査順序等、観察に必要な条件)などである。
【0187】
この中で、検査対象ダイの設定は、図36に示される様に、操作画面に表示されたダイマップ画面に対して、検査するダイをオペレータが指定する。図36の例では、ウェーハ端面のダイ1と前工程で明らかに不良と判定されたダイ2をグレイアウトして検査対象から削除し、残りを検査対象ダイとしている。また、ウェーハ端面からの距離や前工程で検出されたダイの良否情報をもとに自動的に検査ダイを指定する機能も有している。
【0188】
また、ダイ内部の被検査領域の設定は、図37に示される様に操作画面に表示されたダイ内部被検査領域設定画面に対して、被検査領域をオペレータが光学顕微鏡もしくはEB顕微鏡により取得した画像をもとにマウス等の入力機器で指定する。図37の例では、実線で指した領域37・1と破線で指した領域37・2を設定している。
【0189】
領域37・1は、ダイのほぼ全体を設定領域としている。検査アルゴリズムは隣接ダイ比較法(ダイ−ダイ検査)としこの領域に対する検出条件、観察条件の詳細は、別に設定する。領域37・2は、検査アルゴリズムをアレイ検査(検査)としこの領域に対する検出条件、観察条件の詳細は、別に設定する。すなわち複数の被検査領域の設定が可能でかつ、被検査領域は、それぞれ独自の検査アルゴリズムや検査感度を条件設定できる。また被検査領域は重ね合わせる事も可能で、同じ領域に対して、異なる検査アルゴリズムを同時に処理することも可能である。
【0190】
(2)検査動作
検査は、被検査ウェーハに対して図38の様にある走査幅に細分され走査する。走査幅は、ほぼラインセンサの長さで決まるが、ラインセンサの端部が少し重なる様に設定してある。これは検出した欠陥を最終的に統合処理する場合にライン間の連続性を判断する為や比較検査を行う際に画像アライメントするための余裕を確保するためである。その重ね量は2048ドットのラインセンサに対して16ドット程度である。
【0191】
走査方向およびシーケンスを、模式的に図39に示す。すなわち、検査時間短縮のために双方向動作Aや、機械制限からの単方向動作Bなどが、オペレータより選択できる構成になっている。
【0192】
またレシピの検査対象ダイ設定を元に走査量を減らす動作を自動演算して検査する機能も有している。図40は検査ダイ40・1が1個の場合の走査例で、不要な走査は行わない。また、図41は、セル部40・2とランダム部40・3を示している。
【0193】
2−6−2)選択的検査方法について
以下、選択的検査方法について説明する。選択的検査は、ウエハ全面を検査するのではなく、特に検査したい任意の領域、例えばパターンが密集していて、欠陥が生じ易い、或いはチップ上特に重要な領域についてのみ行うもので、これにより、重要な部分はきちんと検査しつつ、検査時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0194】
具体的には、以下のように検査を行う。まず、前述したように、試料(ウエハを含む種々の基板)が搬送され、検査装置のステージ上に載せられる。次に、アライメントと呼ばれる試料の位置合わせを行なう。まず、試料上に形成されているパターンについて、パターンマッチング等を行ない、試料の回転角を調整し、θずれの位置補正を行なう。次いで、ダイのx−y平面上のずれを記憶し、このずれを補正しながら検査を行なっていく。
【0195】
各々の試料の検査は、予め種々の検査条件が指定されたレシピに基づいて行なう。つまり、原則的にはレシピに基づいて検査装置の種々の設定値、例えば加速電圧、ビーム電流、レンズの設定電圧といったものや、試料のどの領域を検査するかといった運転条件が定められ、その指定に従って検査を行なう。
【0196】
従って、検査装置のオペレーターの方で、検査以前の試料の処理プロセスを把握しており、各々の試料についてどの箇所を検査したい、ということが明確である場合には、レシピに被検査領域の指定を行い、その指定に基づいて検査を行なう。通常は、試料上の全面検査を行なうのが一般的であり、また図30右図のように間引き検査を行なったとしても、1つ置き等の規則的なステージ移動及び偏向しか行なわないのが通例であるが、本発明では、クリティカルな部分のレシピの指定に応じて、柔軟に検査を行なうことが必要なため、被検査領域の座標を指定し、当該指定座標を検査する。
【0197】
この場合、リソグラフィーを例に取れば、図42に示したように、メモリ・セル部とランダム・ロジック部の境界部分を検査すればよいので、この境界部分を含むストライプを検査するようにする。
【0198】
図42を参照すると、ウエハ1には複数のダイ2が並んでいる。そして、ウエハ1には、低パターン密度領域3と高パターン密度領域4が並んでいる。例えば、低パターン密度領域3がランダム・ロジック部に相当し、高パターン密度領域4がメモリ・セル部に相当する。
【0199】
本実施の形態では、図示のように、検査を省略する領域である検査省略領域5が設けられる。そして、ストライプ状の被検査領域6が、低パターン密度領域3と高パターン密度領域4の境界部分に設定される。
【0200】
本発明で使用しているビームは、SEMのような1ピクセル分のビーム径しか持たないのではなく、例えば横幅2048ピクセル分の撮像領域を有する幅の広いビームを用いているため、1ストライプ分で相当に広い幅の領域を検査することができ、例えばSEMの走査幅の2倍程度を撮像幅とすることができる。また、検出器には、TDI−CCDを用いており、TDIの積算速度と同期させて、ステージを連続的に、ストライプと同じ方向に移動させて検査することができるので、ストライプ部分を連続的に、短時間で検査を行なえる。従って、クリティカルな箇所を含むストライプのx座標を指定できれば、極めて高速に選択的な検査が実行できる。
【0201】
なお、境界部分のストライプを1本で済ます例を説明したが、必要に応じて、境界周辺
をもう少し広く検査するために、ストライプを2〜3本以上に設定してもよい。また、レシピの座標は、オペレーターが任意に設定できるが、ダイの幅は一定であるから、1つの境界のx座標と、ダイの幅が分かれば、自動的に演算して総てのダイについて境界座標を算出することが可能である。なお、レシピの作成に当たり、運転者は過去の欠陥履歴を把握している場合が多いので、その履歴の分析結果から、欠陥が多いと予想される箇所を指定して検査するようにすれば、効率的で比較的精度の高い検査が実行できる。例えば、パターン密度が大きいセル部と、パターン密度が比較的小さいランダム部の境界領域では、パターン密度が大きく変化するため、EBリソグラフィーで試料上のパターン形成を行った場合、近接効果補正誤差が発生し易いし、光リソグラフィーを用いてパターン形成を行なった場合においても、OPC(Optical Proximity Correction)の補正誤差が発生し易いので、この場合には、セル部とランダム部の境界領域(通常はx座標)を被検査領域に指定すれば、効率的な検査が実行できる。欠陥が多い箇所の予想には、適宜シュミレーション実験等を利用して行なってもよい。また、パターン設計者が、特に欠陥が発生し易いと考えている領域、或いはパターン上特に重要と考えている領域があれば、その領域を被検査領域に指定してもよい。例えば、パターンが密集して線幅が細くなっており、デザイン上の余裕が少ない箇所があれば、そこを被検査領域に指定すればよい。なお、試料の全面検査と、レシピに基づく選択的検査は、モードにより切り替え可能にしてもよい。
【0202】
また、図42には、ストライプ状の被検査領域6の他に、被検査領域7、9、10が示されている。被検査領域7は、ステージの連続移動、若しくはビームスキャン、又は双方の組み合わせで選択的に検査を行う領域である。被検査領域7は、欠陥が多発すると予想される領域である欠陥多発領域8に対応している。被検査領域9も、ステージの連続移動、若しくはビームスキャン、又は双方の組み合わせで検査が行われる領域である。なお、さらに、本実施の形態では、ステップ・アンド・リピート方式で検査が行われてもよい。また、被検査領域10は、低パターン密度領域であるが選択的に検査が行われる領域の例を示しており、これも本実施の形態に含まれる。
【0203】
また、図43に示すように、レシピではなく、最初に試料上の所定の小さい領域について予備検査を行ない、その結果を分析してダイ内で欠陥が多いと予想される領域を推定し、その領域を選択的に検査するようにしてもよい。最初に予備検査を行なう小領域は、図43の中央に示すように、ダイ1〜2列について、ストライプ幅で全面検査してもよいし、図43の左方に示すように、更にy座標も制限し、例えばダイ2行2列分(合計4個)について行なうようにしてもよい。これらの小領域について画像を取得し、ウエハマップの作成を行なう。ここで作成した、ウエハマップから、選択的に検査を行なう箇所を指定し、これにより検査を行なうことが可能である。同一試料上における、現実の小領域の検査結果から全体の検査箇所を決定するため、それまでの処理工程の状況を反映した形での検査箇所の選択が可能であり、より現状に即した柔軟な対応が可能である。なお、この選択は、画面上にウエハマップを表示し、該ウエハマップの検査したい領域をクリック、又はドラッグして矩形で検査したい領域を囲むことにより指定を可能とすれば、操作上も便利である。
【0204】
更に、それらの被検査領域の選択を、自動的に演算処理するようにしてもよい。例えば、小領域の画像を取得した際、予め被検査パターンのテンプレート等をメモリーに入れておき、これと小領域画像との差分をとり、所定の閾値を超えた箇所を特定し、その特定箇所、即ち欠陥候補の箇所の最も多い部分を含むように被検査領域を決定するようなアルゴリズムを用意しておけばよい。
【0205】
また、図44に示したように、ダイ20の周辺部のスクライブ・ライン21に、検査用の微細なテストパターン23を形成し、このテストパターン23を含むストライプを被検査領域に指定してもよい。図44では、メモリ・セル部24を含むダイ20の4隅にテストパターン23が配置されている。ダイ内の実際のパターンよりも微細なパターンをテストパターンとして形成しておき、このパターンを検査して欠陥が無ければ、ダイ内の実際のパターンも欠陥無く処理出来ている可能性が高いため、これも有効な選択的検査となる。特に、ダイの外側の四隅にそれぞれテストパターンを形成しておき、これらを検査して欠陥が無ければ、テストパターンが試料全体に均等に割り振られているため、試料全体に欠陥が無い可能性が高いと推定できる。
【0206】
なお、本発明では、写像光学系を採用した検査装置であり、検出器にTDI−CCDを用いているため、前述のように、ステージを連続移動させて、ストライプ単位で連続的に検査していくのに非常に有利であり、この検査方法が本装置に最も適した検査方法であるが、ステージ移動をステップ・アンド・リピート方式とし、クリティカルな領域のみをスポット的に選択して検査することも可能である。
【0207】
また、検査に用いる電子は、試料に一次電子ビームを直接照射し、試料から放出された二次電子、反射電子、後方散乱電子の他、試料近傍に逆電界をかけ、一次電子ビームが試料に衝突する前に反射した電子(ミラー電子ともいう)を用いてもよい。更に、試料を透過した透過電子により検査することも可能である。これらは、必要に応じて、レンズやリターディングの設定を変更したり、あるいは必要なハードを追加・変更することにより適応可能となる。
【0208】
検査した画像は、一旦メモリに取り込まれ、そのメモリに入った画像と次に取り込まれた画像、つまり同じストライプのダイの前後同士で比較する。あるいは同一又は異なる試料上のストライプ同士又は設計上のデータのストライプと比較することにより、比較検査を行う。
【0209】
なお、検査時間を短縮するためには、間引き検査、あるいはサンプリング検査を行ってもよい。これは、間引き率、又はサンプリング率を予め定め、この間引き率に従って、ストライプを数行おきに間隔を開けて検査を行うものである。機械的に被検査領域となるストライプを決めてしまうものであるから、必ずしもクリティカルな部分を検査しているとは言えず、精度の面では前述の選択的検査に劣るが、検査時間の短縮は実現できる。また、被検査領域の指定も容易であるため、検査時間の短縮を最重要視するならば、この検査も有効である。本発明で使用している写像投影型検査装置であれば、1行のストライプ幅
がSEMと比較して非常に広いので、検査時間を相当に短縮することが可能である。
【0210】
なお、本発明の選択的検査方法及び装置は、今まで説明してきたように、写像投影型の電子線を用いた検査装置に適用するのが好適であるが、他の方式を採用した検査装置にも適用可能である。検査したい任意の領域を設定すれば、そのストライプを、SEM型の細く絞ったビームを用いて検査してもよい。また、1本のビームのSEM方式で検査速度が遅ければ、例えば、ビーム数を増やしてマルチビームの照射源とし、図45に示すように、各ラスターを複数のビームで同時に走査し検出信号をビーム位置を考慮して画像合成を行えばよい。
【0211】
図45は、マルチビームで欠陥多発生が予想される場所を選択的に検査する場合を例示したものである。ストライプ幅30を9本のビームがすべて走査するように、走査開始点と走査終了点を決め、9本のビームを同時に走査し、各走査点からの2次電子を9個の検出器で互いにクロストーク無しに検出し、各検出器からの信号からSEM画像を合成する。別々に設定された領域31、32、33のSEM画像を比較し、領域32の画像のうち、領域31とも領域33とも異なる画像の部分が欠陥候補となる。
【0212】
更に、本発明で用いた写像投影型の検査装置で、マルチビーム方式を採用してもよい。写像投影型で、ビーム径自体が大きいのに加えて、更に複数のビームで試料を照射するので、大幅な検査時間の短縮が実現できる。写像投影型のマルチビーム検査装置を、図46に示す。電子銃46・1から放出された4本の電子線46・2(46・3〜46・6)は開口絞り46・7で整形され、2段のレンズ46・8、46・9(レンズ系46・50)でウィーンフィルタ46・10の偏向中心面に10μm×12μmの楕円状に結像される。電子線は、図の紙面垂直方向に偏向器46・11によりラスタースキャンされ、4本の電子線全体として1mm×0.25mmの矩形領域を均一にカバーするように結像される。E×B分離器(ウイーンフィルタ)46・10で偏向された複数の電子線はNA絞りでクロスオーバーを結び、レンズ46・20で1/5に縮小され試料Wに200μ×50μmをカバーし、かつ試料面に垂直になるように照射、投影される(ケーラー照明と呼ばれる)。E×B分離器46・10は、電極46・52および磁石46・53を備えている。試料から放出されたパターン画像(試料像F)の情報を持った4本の2次電子線46・12はレンズ46・11、46・13、46・14(レンズ46・13、レンズ46・14はレンズ系46・51)で拡大され、MCP46・15上に全体として4本の電子線46・12で合成された矩形画像(拡大投影像F’)として結像する。この二次電子線46・12による拡大投影像F’は、MCP46・15で1万倍に増感され、蛍光部により光に変換され、TDI−CCD46・16で試料の連続移動速度に同期された電気信号となり、画像表示部46・17で連続した画像として取得され、CRT等に出力する。
【0213】
電子線照射部は試料表面をできるだけ均一に、かつ照射むらを少なくして、矩形または楕円状に電子線で照射する必要があり、また、スループットをあげるためにはより大きな電流で照射領域を電子線照射する必要がある。
【0214】
本実施の形態の一次電子線照射方法を図47により示す。一次電子線47・1は4本の電子線47・2〜47・5で構成され、それぞれのビームは2μm×2.4μmの楕円状しており、それぞれ1本当り200μm×12.5μmの矩形領域をラスタースキャンし、それらが重なり合わないように足し合わせて全体として200μ×50μmの矩形領域を照射する。ビーム46・2は46・2’ヘ有限の時間で到達し次にビームスポット径分(10μm)ずれた46・2の直下にほとんど時間損失なしに戻り、再度前記と同じ有限の時間で46・2〜46・2’に平行に46・2’の直下(46・3’方向)に移動し、これを繰り返して図の点線で示す矩形の照射領域の1/4(200μm×12.5μm)を走査した後はじめの点47・1に戻りこれを高速に繰り返す。
【0215】
他の電子線47・3〜47・5も電子線47・2と同様に同じ速度で走査を繰り返し、全体として図の矩形の照射領域(200μ×50μm)を均一に高速に照射する。
【0216】
均一に照射できれば、前記のラスタースキャンでなくても良い。例えばリサージュ形を描くように走査しても良い。従って、ステージの移動方向は図に示す方向Aである必要は無い。即ち、スキャン方向(図の横方向の高速走査方向)に垂直である必要は無い。
【0217】
本実施の形態では電子線照射むらは±3%程度で照射できた。照射電流は1本の電子線当たり250nAで試料表面で全体として、4本の電子ビームで1.0μAを得ることができた(従来の2倍)。電子線の本数を増やすことにより、電流を増加でき、高スループットを得ることができる。また、照射点が従来に比べて小さく(面積で約1/80)また移動しているのでチャージアップは従来の1/20以下に抑えることができた。
【0218】
なお、本発明において検出される電子は、基板の表面の情報を得ているものであれば何でもよく、例えば、基板付近に逆電界を形成することにより、基板に直接衝突せずに、基板付近で反射するミラー電子(広義には反射電子とも言う)、或いは基板を透過する透過電子等でもよい。特に、ミラー電子を用いた場合には、電子が試料に直接衝突しないので、チャージアップの影響が極めて小さいという利点がある。
【0219】
ミラー電子を利用する場合には、試料に、加速電圧よりも低い負の電位を印加し、試料付近に逆電界を形成する。この負の電位は、基板の表面付近で殆どの電子線が戻される程度の値に設定するのがよい。具体的には、電子銃の加速電圧よりも0.5〜1.0V以上低い電位に設定すればよい。例えば、本発明の場合、加速電圧が−4kVの場合、試料への印加電圧は−4.000kV〜−4.050kVに設定するのが好ましい。更に望ましくは、−4.0005kV〜−4.020kVがよく、更に好ましくは−4.0005kV〜−4.010kVに設定するのが好適である。
【0220】
3)製造ラインの実施の形態
図48は、本発明の装置を使用した製造ラインの例を示す。検査装置48・1で検査されるウェーハのロット番号、製造に経由した製造装置履歴等の情報をSMIFまたはFOUP48・2に備えられたメモリから読み出すか、または、そのロット番号を、SMIF、FOUP又はウェーハカセットのID番号を読むことにより認識できるようになっている。ウェーハの搬送中は水分の量をコントロールしてメタル配線の酸化等を防止している。
【0221】
欠陥検査装置48・1は生産ラインのネットワークシステムと接続することが可能となっており、このネットワークシステム48・3を介して、生産ラインを制御している生産ラインコントロールコンピュータ48・4、各製造装置48・5及び別の検査装置に、被検査物であるウェーハのロット番号などの情報とその検査結果を送ることができる。製造装置には、リソグラフィー関連装置例えば露光装置、コーター、キュア装置、デベロッパ等、又は、エッチング装置、スパッタ装置及びCVD装置などの成膜装置、CMP装置、各種計測装置、他の検査装置、レビュー装置等が含まれる。
【0222】
図49は、本発明の実施の形態の電子線装置を使用する半導体デバイス製造方法の例を示すフロー図である。図49の半導体デバイス製造方法は、以下の主工程を含む。(1)ウエハ49・2を製造するウエハ製造工程49・1又はウエハ49・2を準備するウエハ準備工程、(2)露光に使用するマスク(レチクル)49・12を製作するマスク製造工程49・11又はマスクを準備するマスク準備工程、(3)ウエハに必要な加工を行うウエハプロセッシング工程49・3、(4)ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチッブ組立工程49・4、(5)できたチップ49・5を検査するチップ検査工程49・6及び検査に合格したチップからなる製品(半導体デバイス)49・7を得る工程。なお、これらの主工程は、それぞれ幾つかのサブ工程を含む。図49の右方部分は、そのうちのウエハプロセッシング工程49・3のサブ工程を示す。
【0223】
上記(1)〜(5)の主工程の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼす主工程がウエハプロセッシング工程49・3である。この工程では、設計きれた回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は、以下の工程を含む。(6)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、あるいは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程49・14(CVDやスパッタリング等を用いる)。(7)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程49・14。(8)薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するためのマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程49・13。(9)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程49・14(例えばドライエッチング技術を用いる)。(10)イオン・不純物注入拡散工程49・14。(11)レジスト剥離工程。(12)加工されたウエハを検査する検査工程。なお、ウエハプロセッシング工程49・3は、必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
【0224】
図49のフロー図は、上記(6)、(9)及び(10)をまとめて1つのブロック49・14で示し、付加的なウエハ検査工程49・15を含み、更に繰り返し工程をブロック49・16で示す。上記(12) の加工されたウエハを検査する検査工程に本発明の検査装置を用いることにより、微細なパターンを有する半導体デバイスでもスル―プットよく検査でき、全数検査が可能になり、製品の歩留まり向上、欠陥製品の出荷防止が可能である。
【0225】
図50は、図49の製造方法におけるリソグラフィ工程49・13の詳細を示すフロー図である。図50に示すように、リソグラフィ工程49・13は、(13)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストを被覆するレジスト塗布工程50・1、(14)レジストを露光する露光工程50・2、(15)露光されたレジストを現像してレジストパ夕ーンを得る現像工程50・3、(16)現像されたレジストパターンを安定化させるためのアニール工程50・4からなる。なお、半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、及びリソグラフィ工程は、周知のものである。
【0226】
以上に、本発明の好適な実施の形態について説明した。主として図42〜図45を参照して説明したように、本実施の形態では選択的検査が行われる。検査装置の要求される使用用途に応じて、試料の全面のみならず、検査が特に必要なクリティカルな領域のみを選択的に検査することができるため、検査の精度をある一定の水準に保ちながら、検査時間を大幅に短縮することができる。検査したい領域が限られている場合には、所望の領域のみを検査することが可能であるため、効率よく必要な領域のみを検査することができる。
【0227】
また、写像投影方式を採用し、検出器にTDI−CCDを使用しているため、ステージを連続移動させながら検査することが可能である。部分的検査にありがちな、ステップ・アンド・リピートのステージ移動後の振動の影響を気にする必要がなく、全面検査と同じように検査を行える。また、ビームの照射領域が広いため、クリティカルな領域を1回の
ストライプでカバーでき、高スループットと高い検査精度を実現することができる。
【0228】
このようにして、本実施の形態は、高スループットの要求に応え、そして、高い検査精度での検査を可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明に係る検査方法および検査装置は、半導体製造工程等で使用でき、有用である。
【符号の説明】
【0230】
1 ウェーハ
2 ダイ
3 低パターン密度領域
4 高パターン密度領域
5 検査省略領域
6、7、9、10 被検査領域
8 欠陥多発領域
20 ダイ
21 ストライブ・ライン
22 テストパターン
23 メモリ・セル部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを用いて検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置に関し、例えば、半導体製造工程におけるウェーハの欠陥を検出する場合のように、電子ビームを検査対象に照射してその表面の性状に応じて変化する二次電子、反射電子(ミラー電子を含む)、後方散乱電子、透過電子等を捕捉して画像データを形成し、その画像データに基づいて検査対象の表面に形成されたパターン等を高いスループットで検査する検査装置、並びにそのような検査装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。また、本発明は、面ビームを用いた写像投影方式による検出装置および該装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおいて、デザインルールは100nmの時代を迎えようとしており、また生産形態はDRAMに代表される少品種大量生産からSOC(Silicon on
chip)のように多品種少量生産へ移行しつつある。それに伴い、製造工程数が増加し、各工程毎の歩留まり向上は必須となり、プロセス起因の欠陥検査が重要になる。
【0003】
そして、半導体デバイスの高集積化、パターンの微細化に伴い、高分解能、高スループットの検査装置が要求されている。100nmデザインルールのウェーハ基板の欠陥を調べるためには、100nm以下の線幅を有する配線におけるパターン欠陥やパーティクル・ビアの欠陥及びこれらの電気的欠陥を見る必要があり、したがって100nm以下の分解能が必要であり、デバイスの高集積化による製造工程の増加により、検査量が増大するため、高スループットが要求されている。また、デバイスの多層化が進むにつれて、層間の配線をつなぐビアのコンタクト不良(電気的欠陥)を検出する機能も、検査装置に要求されている。現在は主に光方式の欠陥検査装置が使用されているが、分解能及びコンタクト不良検査の点では、光方式の欠陥検査装置に代わって、電子ビームを用いた欠陥検査装置が今後は検査装置の主流になると予想される。ただし、電子ビーム方式欠陥検査装置にも弱点があり、それはスループットの点で光方式に劣ることである。
【0004】
このため、高分解能、高スループット、且つ電気的欠陥検出が可能な検査装置の開発が要求されている。光方式での分解能は使用する光の波長の1/2が限界と言われており、実用化されている可視光の例では0.2μm程度である。
【0005】
一方、電子ビームを使用する方式では、通常、走査型電子ビーム方式(SEM方式)が実用化されており、分解能は0.1μm、検査時間は8時間/枚(200mmウェーハ)である。電子ビーム方式はまた、電気的欠陥(配線の断線、導通不良、ビアの導通不良等)も検査可能であることが大きな特徴であるが、検査速度が非常に遅く、検査速度の速い欠陥検査装置の開発が期待されている。
【0006】
ところで、一般に、検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では重要な工程の後、例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理後等に使用されている。
【0007】
電子ビームを用いた走査(SEM)方式の検査装置について説明する。SEM方式の検査装置は電子ビームを細く絞って(このビーム径が分解能に相当する)これを走査してライン状に試料を照射する。一方、ステージを電子ビームの走査方向に直角の方向に移動させることにより、平面状に観察領域を電子ビームで照射する。電子ビームの走査幅は一般に数100μmである。前記細く絞られた電子ビーム(一次電子線と呼ぶ)照射により発生した試料からの二次電子を検出器(シンチレータ+フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)又は半導体方式の検出器(PINダイオード型)等)で検出する。照射位置の座標と二次電子の量(信号強度)を合成して画像化し、記憶装置に記憶し、あるいはCRT(ブラウン管)上に画像を出力する。
【0008】
以上はSEM(走査型電子顕微鏡)の原理であり、この方式で得られた画像から工程途中の半導体(通常はSi)ウェーハの欠陥を検出する。検査速度(スループットに相当する)は一次電子線の量(電流値)、ビーム径及び検出器の応答速度で決まる。ビーム径0.1μm(分解能と同じと考えてよい)電流値100nA、検出器の応答速度100MHzが現在の最高値で、この場合で検査速度は20cm径のウェーハ一枚あたり約8時間と言われている。この検査速度が光方式に比べてきわめて遅い(1/20以下)ことが大きな問題点となっている。特に、ウェーハ上に作られた100nm以下のデザイン・ルールのデバイス・パターン、即ち、100nm以下の線幅や直径100nm以下のビア等の形状欠陥や電気的欠陥の検出及び100nm以下のゴミの高速の検出が必要となっている。
【0009】
電子ビームを用いた走査式の検査装置は例えば特許文献1〜3に開示されている。
【特許文献1】特開2002−26093号公報(第3、4ページ、図2)
【特許文献2】特開2002−161948号公報(第4−6ページ、図1)
【特許文献3】特開2000−161932号公報(第7−9ページ、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上で説明したSEM方式の検査装置では、上記の検査速度がほぼ限界と考えられており、更に高速にする、すなわちスループットを上げるためには新しい方式が必要である。
【0011】
また、検査によっては、例えばリソグラフィー後の検査におけるメモリ・セル部とランダム・ロジック部の境界部分、あるいはパターンが密集して線幅が非常に細くなっているメモリ・セル部のように、欠陥が生じやすい、クリティカルな部分のみ検査したい場合もある。つまり、全面検査による精度の高さよりも、ハイスループットの優先度の方が高く、検査精度については、クリティカルな部分のみきちんと検査してある程度の精度を満たせばよいとするような場合や、欠陥の生じやすい箇所が限定され、その箇所のみを検査すれば、十分な検査精度を確保できるような場合があり、このような場合に、クリティカルな部分のみを選択的に検査できる方式があれば便利であり、高スループットの要請にも応えられることになる。
【0012】
したがって、本発明の目的は、高スループットの要請に応えることができる検査方法および検査装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は電子線装置であり、この装置は、電子ビームを試料に向けて照射する手段と、該電子ビームの前記試料へ向けた照射によって前記試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器と、該検出器に導かれた、前記試料の表面の情報を得た電子に基づいて画像を生成する手段と、試料表面の任意の箇所を選択的に検査する制御手段を備える。画像生成手段は、検出された電子を画像として合成する処理を行う。
【0014】
前記試料の表面の情報を得た電子は、前記試料より発生する二次電子、反射電子、後方散乱電子、透過電子のうちの少なくとも1つ、或いは前記試料の表面付近で反射されたミラー電子、又は試料を透過する透過電子であることが望ましい。
【0015】
本発明の一態様は試料表面検査方法であり、試料表面の任意の領域を被検査領域として選択するステップと、該選択した被検査領域に向けて電子線を照射するステップと、該試料表面の情報を得た電子を検出するステップと、該検出した電子に基づいて試料表面の画像を生成するステップと、該生成された画像を基準画像と比較して比較検査を行うステップを含む。
【0016】
また、前記試料表面の任意の領域を被検査領域として選択するステップは、予め設定されたレシピの指令に基づいて行う。
【0017】
また、前記試料表面の任意の領域を被検査領域として選択するステップは、基板を検査する際のストライプ単位で選択する。
【0018】
また、前記選択した被検査領域に向けて電子線を照射するステップは、前記電子線が試料上を相対移動するように、電子線又は試料を移動させながら行う。
【0019】
また、前記試料表面の情報を得た電子を検出するステップは、複数の画素からなる投影表面上に投影することにより検出する。
【0020】
また、前記選択した被検査領域に向けて電子線を照射するステップは、電子線の照射領域に、検出器上の複数の画素が含まれる面積を有する電子線を用いて行う。
【0021】
また、前記合成された画像を基準画像と比較して比較検査を行うステップにおいて、前記合成された画像と同一ストライプ内のダイの画像が基準画像として用いられる。
【0022】
本発明の一態様は試料表面検査方法であり、試料上の任意に選択した小領域を電子線を用いて検査し、該小領域の画像を得るステップと、該小領域の画像から、欠陥の多い領域を特定するステップと、該小領域において特定された欠陥の多い領域から、試料全面において欠陥が多いと推定される領域を演算し、特定するステップと、該試料全面において欠陥が多いと推定される領域に電子線を照射して試料表面の検査を行うステップとを含む。
【0023】
また、本発明の一態様は試料表面検査装置であり、この装置は、電子線を試料に向けて照射する電子銃と、該試料を保持する試料ステージと、該電子ビームの前記試料へ向けた照射によって該試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器と、該検出器に検出された電子に基づいて試料表面の画像を生成する手段と、該生成された画像を基準画像と比較する比較検査手段と、試料表面の任意の領域を選択的に検査するように制御する制御手段、とを備える。
【0024】
本装置において、前記試料表面の任意の領域は、レシピの指令に基づいて選択する。
【0025】
本装置において、前記試料表面の任意の領域は、検査の際のストライプ単位で選択する。
【0026】
本装置において、前記制御手段は、前記試料上の前記ストライプを前記電子線が照射するように、前記電子線の偏向又は前記ステージの移動により制御する。
【0027】
本装置において、前記検出器は、CCDセンサ又はTDI−CCDセンサである。
【0028】
本装置において、前記電子銃は、複数の画素を含む照射面積を有する電子線を試料に向けて照射するものである。
【0029】
本装置において、前記ステージは、検査中にx−y平面上の少なくとも1方向に連続的に移動するものである。
【0030】
本装置は、試料上の任意の小領域の画像から欠陥の多い領域を特定し、該欠陥の多い領域のダイとの位置関係を算出し、試料全体で欠陥が多いと推定される領域を特定する演算手段を更に備えている。
【0031】
また、本発明の別の態様はデバイス製造方法であり、この方法は、a.ウェーハを準備し、b.ウェーハプロセスを行い、c.プロセスを通したウェーハを上述した検査方法を用いて検査し、d.b、cのステップをくり返し、e.デバイスを組み立てる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の検査方法又は検査装置により、ウェーハ等の基板の欠陥を、高スループットで検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】半導体検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】検査部の構成を示す図である。
【図3】検査部の構成を示す図である。
【図4】検査部の構成を示す図である。
【図5】検査部の構成を示す図である。
【図6】検査部の構成を示す図である。
【図7】検査部の主要構成を示す図である。
【図8】本実施の形態の半導体検査装置を示す正面図である。
【図9】本実施の形態の半導体検査装置を示す平面図である。
【図10】カセットホルダの構成例を示す図である。
【図11】ミニエンバイロメント装置を示す図である。
【図12】ローダハウジングを示す図である。
【図13】電子光学系を示す図である。
【図14−1】電子光学系を示す図である。
【図14−2】試料照射ドームの形状を示す図である。
【図15】制御系の動作を示す図である。
【図16】制御系の動作を示す図である。
【図17】制御系の動作を示す図である。
【図18】制御系の動作を示す図である。
【図19】制御系の動作を示す図である。
【図20】制御系の動作を示す図である。
【図21】制御系の動作を示す図である。
【図22】アライメント手順を示す図である。
【図23】アライメント手順を示す図である。
【図24】アライメント手順を示す図である。
【図25】欠陥検査手順を示す図である。
【図26】欠陥検査手順を示す図である。
【図27】欠陥検査手順を示す図である。
【図28】欠陥検査手順を示す図である。
【図29】欠陥検査手順を示す図である。
【図30】欠陥検査手順を示す図である。
【図31】欠陥検査手順を示す図である。
【図32】制御系の構成を示す図である。
【図33】ユーザインターフェースの構成を示す図である。
【図34】検査手順を示す図である。
【図35】検査手順を示す図である。
【図36】検査対象ダイの設定を示す図である。
【図37】ダイ内部の被検査領域の設定を示す図である。
【図38】検査手順を示す図である。
【図39】検査手順を示す図である。
【図40】検査手順における検査ダイが1個の場合の走査例を示す図である。
【図41】検査対象を示す図である。
【図42】本発明の選択的検査を示す図である。
【図43】本発明の選択的検査を示す図である。
【図44】本発明の選択的検査を示す図である。
【図45】本発明の選択的検査を示す図である。
【図46】電子線装置を示す図である。
【図47】一次電子照射方法を示す図である。
【図48】検査装置を製造ラインに接続した構成を示す図である。
【図49】検査装置を利用する半導体デバイス製造方法の例を示す図である。
【図50】リソグラフィ工程の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る半導体検査装置の実施の形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0035】
1 全体構成
まず、半導体検査装置の好適な全体的な構成について説明する。
【0036】
図1は、検査装置の全体構成を示している。検査装置は検査装置本体1・1、電源ラック1・2、制御ラック1・3、成膜装置1・4、エッチング装置1・5、画像処理ユニット1・6等から構成される。ドライポンプ等の粗引きポンプはクリーンルームの外に置かれる。検査装置本体内部の主要部分は、電子ビーム光学鏡筒、真空搬送系、ステージを収容している主ハウジング、除振台、ターボ分子ポンプ等から構成されている。
【0037】
制御系には二台のCRTを備え、指示命令入力機能(キーボード等)を備えている。上記の電子ビーム鏡筒は主に電子光学系、検出系、光学顕微鏡等から構成されている。電子光学系は電子銃、レンズ等、搬送系は真空搬送ロボット、大気搬送ロボット、カセットローダ、各種位置センサ等から構成されている。
【0038】
ここでは、成膜装置及びエッチング装置、洗浄装置(図示していない)を検査装置本体近くに並べて設置しているが、これらは検査装置本体に組み込んでも良い。これらは、例えば試料の帯電抑制のために又は試料表面のクリーニングに使用される。スパッタ方式を用いると、一台で制膜及びエッチングの両方の機能を持たせることができる。
【0039】
図示していないが、使用用途によってはその関連装置を検査装置本体近くに並べて設置するか、それらの関連装置を検査装置本体に組み込んで使用しても良い。或いは、それらの関連装置に検査装置を組み込んでもよい。例えば、化学的機械研磨装置(CMP)と洗浄装置を検査装置本体に組み込んでも良く、或いは、CVD(化学蒸着法:chemical vapor deposition)装置を検査装置に組み込んでもよく、この場合、設置面積や試料搬送の
ためのユニットの数を節約でき、搬送時間を短縮できるなどのメリットが得られる。
【0040】
同様に、メッキ装置等の成膜装置に検査装置本体に組み込んでも良い。同様にリソグラフィ装置と組み合わせて使用することも可能である。
【0041】
1−1)メインチャンバ、ステージ、真空搬送系外装
図2、図3、図4において、半導体検査装置の検査部の主要構成要素が示されている。半導体検査装置の検査部は、外部環境からの振動を遮断するためのアクティブ除振台2・1と、検査室であるメインチャンバ2・2と、メインチャンバ上部に設置された電子光学装置2・3と、メインチャンバ内部に搭載されたウェーハスキャン用のXYステージ3・1と、XYステージ動作制御用のレーザ干渉測定系3・2と、メインチャンバに付随する真空搬送系2・4を備え、それらは図2、図3に示されるような位置関係で配置されている。また、図2、図3には、アクティブ除振ユニット3・3、定盤3・4、ロードロック室3・5、搬送室3・6、真空搬送ロボット3・7、鏡筒排気用TMP、検出系排気用TMP3・9等が示されている。半導体検査装置の検査部は、更に、検査ユニットの環境制御、及びメンテナンスを可能とするための外装4・1を備えており、図4に示されるような位置関係で配置されている。
【0042】
1−1−1)アクティブ除振台
アクティブ除振台2・1は、アクティブ除振ユニット2・3上に溶接定盤2・4が搭載されており、この溶接定盤上に検査室であるメインチャンバ2・2、メインチャンバ上部に設置された電子光学装置2・3、及びメインチャンバに付随する真空搬送系2・4等を保持している。これにより、検査部における外部環境からの振動を抑制できるようになっている。
【0043】
1−1−2)メインチャンバ
メインチャンバ2・2は、検査環境である真空度(10-4Pa以下)を実現するためにターボ分子ポンプを下部に直接保持しており、ウェーハスキャン用の高精度のXYステージ3・1を内部に備え、外部からの磁気を遮蔽できるようになっている。
【0044】
また、XYステージを高精度に制御するためにレーザ干渉計によるステージ位置の測定系が設置されている。干渉計5・1は、測定誤差を抑えるために真空中に配されおり、直接測定誤差となる干渉計自体の振動を限りなくゼロとするために、この実施の形態では剛性の高いチャンバ壁に直接固定されている。また、図5には、XY軸駆動用のモータ5・2が示されており、さらに、磁性流体シール5・3、ミラー5・4およびボールねじ5・5が示されている。
【0045】
1−1−3)XYステージ
XYステージ3・1は、真空中でウェーハを高精度にスキャンできるように構成されている。XおよびYのストロークは、例えば200mmウェーハ用としてそれぞれ200mm〜300mm、300mmウェーハ用としてそれぞれ300mm〜600mmとなっている。
【0046】
また、真空中でウェーハアライメントを行なうためにXYステージ上にはθステージが設置されている。この実施の形態におけるθステージでは、駆動用として2つの超音波モータ、位置制御用としてリニアスケールが配されている。X、Y及びθ動作を行なう可動部に接続された種々のケーブルは、XステージおよびYステージにそれぞれ保持されたケーブルベアによりクランプされ、チャンバ壁に設置されたフィードスルーを介してメインチャンバ外部へと接続されている。
【0047】
1−2)レーザ干渉測定系
レーザ干渉測定系は、X軸およびY軸に平行で、その延長線上が検査位置に相当する光軸を有するレーザ光学系と、その間に配された干渉計5・1により構成されている。本実施の形態における光学系は、図6、図7に示されるような位置関係で配置されている。溶接定盤上に設置されたレーザ6・1より発射されたレーザ光は、ベンダ6・2により垂直に立ち上げられたのちにベンダ7・1により測定面と平行に曲げられる。さらに、スプリッタ6・4によりX軸測定用とY軸測定用に分配された後に、ベンダ7・3およびベンダ6・6によりそれぞれY軸およびX軸に平行に曲げられ、メインチャンバ内部へと導入される。また、図6、図7には、数カ所のターゲット7・2が示されている。
【0048】
1−3)検査部外装
検査部外装6・1は、メンテナンス用のフレーム構造としての機能を備えられている。本実施の形態では、収納可能な両持ちクレーンが上部に搭載されている。クレーンは横行レールに取付けられ、横行レールはさらに走行レール(縦)に設置されている。走行レールは、通常時には収納状態となっているのに対して、メンテナンス時にはのように上昇し、クレーンの上下方向のストロークを大きくすることが可能となっている。これにより、メンテナンス時には外装に内蔵されたクレーンにより電子光学装置2・3、メインチャンバ天板、XYステージ3・1を装置背面に脱着可能となっている。外装に内蔵されたクレーンの他の実施の形態では、回転可能な片持ち軸を持つクレーン構造が設けられている。
【0049】
また、検査部外装は、環境チャンバとしての機能を兼ね備えることも可能である。これは、必要に応じて温度、湿度管理とともに、磁気遮蔽効果が提供される。
【0050】
2 実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。本実施の形態では、検査対象が、表面にパターンが形成された基板すなわちウェーハである。
【0051】
2−1)搬送系
図8及び図9は、本発明に係る半導体検査装置の主要構成要素を立面図及び平面図で示している。この半導体検査装置8・1は、複数枚のウェーハを収納したカセットを保持するカセットホルダ8・2と、ミニエンバイロメント装置8・3と、ワーキングチャンバを構成するローダハウジング8・5と、ウェーハをカセットホルダ8・2から主ハウジング8・4内に配置されたステージ装置8・6上に装填するローダー8・7と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置8・8とを備え、それらは図8及び図9に示されるような位置関係で配置されている。
【0052】
半導体検査装置8・1は、更に、真空の主ハウジング8・4内に配置されたプレチャージユニット8・9と、ウェーハに電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置上でのウェーハの位置決めを行うためのアライメント制御装置8・10を構成する光学顕微鏡8・11とを備えている。
【0053】
2−1−1)カセットホルダ
カセットホルダ8・2は、複数枚(例えば25枚)のウェーハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセット8・12(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施の形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダ8・2としては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ8・2に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるように構成されている。また、図10の例のカセットホルダでは、箱本体10・1、基板搬送箱10・2、基板搬出入ドア10・3、蓋体10・4、ULPAフィルタ10・5、ケミカルフィルタ10・6およびファンモータ10・7が備えられている。
【0054】
2−1−2)ミニエンバイロメント装置
図8〜図11において、ミニエンバイロメント装置8・3は、雰囲気制御されるミニエンバイロメント空間11・1を構成するハウジング11・2と、ミニエンバイロメント空間11・1内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置11・3と、ミニエンバイロメント空間11・1内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置11・4と、ミニエンバイロメント空間11・1内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウェーハを粗位置決めするプリアライナー11・5とを備えている。
【0055】
ハウジング11・2は、頂壁11・6、底壁11・7及び四周を囲む周壁11・8を有しており、ミニエンバイロメント空間11・1を外部から遮断する構造を有している。
ハウジング11・2の周壁11・8のうちカセットホルダ8・2に隣接する部分には出入り口8・15が形成されている。出入り口8・15近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口8・15をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。
【0056】
ミニエンバイロメント空間11・1内に配置されたプリアライナー11・5は、ウェーハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウェーハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウェーハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウェーハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。
【0057】
2−1−3)主ハウジング
図8〜図9において、ワーキングチャンバ8・16を構成する主ハウジング8・4は、ハウジング本体8・17を備え、そのハウジング本体8・17は、台フレーム8・18上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置8・19の上に載せられたハウジング支持装置8・20によって支持されている。ハウジング支持装置8・20は矩形に組まれたフレーム構造体8・21を備えている。ハウジング本体8・17はフレーム構造体8・21上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁8・22と、頂壁8・23と、底壁8・22及び頂壁8・23に接続されて四周を囲む周壁8・24とを備えていてワーキングチャンバ8・16を外部から隔離している。底壁8・22は、この実施の形態では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。
【0058】
2−1−4)ローダハウジング
図8〜図9及び図12において、ローダハウジング8・5は、第1のローディングチャンバ9・2と第2のローディングチャンバ9・3とを構成するハウジング本体9・4を備えている。ハウジング本体9・4は底壁12・1と、頂壁12・2と、四周を囲む周壁12・3と、第1のローディングチャンバ9・2と第2のローディングチャンバ9・3とを仕切る仕切壁9・5とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁9・5には両ローディングチャンバ間でウェーハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口12・4が形成されている。また、周壁12・3のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口9・6及び9・7が形成されている。
【0059】
2−1−5)ローダー
ローダー8・7は、ミニエンバイロメント装置8・3のハウジング11・2内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット11・14と、第2のローディングチャンバ9・3内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット9・12とを備えている。
【0060】
第1の搬送ユニット11・14は、駆動部11・15に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム11・16を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施の形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。アーム11・16の先端には把持装置9・13が取り付けられている。アーム11・16は、軸11・17および昇降機構11・18と共に設けられている。
【0061】
この第1の搬送ユニット11・14は、カセット内に収容されたウェーハとプリアライナー11・5の間の搬送及びプリアライナー11・5と第2のローディングチャンバ9・2の間の搬送を行う。
【0062】
第2の搬送ユニット9・12も第1の搬送ユニットと構造は基本的に同じであり、ウェーハの搬送をウェーハラックとステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違する。
【0063】
2−1−6)ステージ装置
ステージ装置8・6は、主ハウジング8・4の底壁8・22上に配置された固定テーブル8・32と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル8・33と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル8・34と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル8・35と、回転テーブル8・35上に配置されたホルダ8・36とを備えている。そのホルダ8・36のウェーハ載置面9・14上にウェーハを解放可能に保持する。ホルダ8・36は、ウェーハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置8・6は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面9・14上でホルダに保持されたウェーハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図8において上下方向)に、更にウェーハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。ステージ装置用のサーボモータ9・14、9・15およびエンコーダ9・17、9・18が図9に示されている。
【0064】
なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウェーハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウェーハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。
【0065】
電子ビームに対するウェーハの回転位置やX、Y位置を予め信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウェーハチャック機構は、ウェーハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるように構成されていて、ウェーハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするように構成されている。ウェーハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるように構成されており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
【0066】
なお、この実施の形態では図9で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
【0067】
2−2)ウェーハの搬送方法
次に、カセットホルダ8・2に支持されたカセット8・12からワーキングチャンバ8・16内に配置されたステージ装置8・6までへのウェーハの搬送を順を追って説明する(図8〜図12参照)。
【0068】
カセットホルダ8・2は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施の形態において、カセット8・12がカセットホルダ8・2の昇降テーブル8・13の上にセットされると、昇降テーブル8・13は昇降機構8・14によって降下されカセット8・12が出入り口8・15に整合される。カセットが出入り口8・15に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開き、カセットとミニエンバイロメント装置8・3の出入り口8・15との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置8・3側に出入り口8・15を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口8・15を開く。
【0069】
一方、第1の搬送ユニット11・14のアーム11・16は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口8・15が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウェーハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウェーハとの上下方向の位置調整は、この実施の形態では第1の搬送ユニット11・14の駆動部11・15及びアーム11・16の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
【0070】
アーム11・16によるウェーハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム11・16は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウェーハをプリアライナー11・5の上に載せ、そのプリアライナー11・5によってウェーハの回転方向の向き(ウェーハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット11・14はアームの先端にプリアライナー11・5からウェーハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置9・8の扉8・27が動いて出入り口8・25及び8・37を開き、アーム11・16が伸びてウェーハを第1のローディングチャンバ9・2内のウェーハラック9・11の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置9・8を開いてウェーハラック9・11にウェーハが受け渡される前に、仕切壁9・5に形成された出入り口12・4はシャッタ装置9・10の扉9・19により気密状態で閉じられている。また、シャッタ装置9・8には、シール材8・26および駆動装置8・28が設けられている。
【0071】
上記第1の搬送ユニット11・14によるウェーハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置8・3のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット11・9からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウェーハの上面に付着するのを防止する。気体供給ユニット11・9と共に導管11・11が設けられている。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施の形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置11・4の吸入ダクト11・12から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト11・10を介して回収され再び気体供給ユニット11・9に戻される。
【0072】
ローダハウジング8・5の第1のローディングチャンバ9・2内のウェーハラック9・11内に第1の搬送ユニット11・14によりウェーハが載せられると、シャッタ装置9・8が閉じて、ローディングチャンバ9・2内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ9・2内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ9・2内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバ9・2の真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ9・2内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置9・10が動作して扉9・19で密閉していた出入り口12・4のシャッタ9・5を開き、第2の搬送ユニット9・12のアーム9・20が伸びて先端の把持装置でウェーハラック9・11から1枚のウェーハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウェーハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置9・10が再び動作して扉9・19で出入り口12・4を閉じる。
【0073】
なお、シャッタ装置9・10が開く前にアーム9・20は予めウェーハラック9・11の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置9・10が開く前にシャッタ装置8・29の扉9・9で出入り口9・7、9・1を閉じていて、第2のローディングチャンバ9・3内とワーキングチャンバ8・16内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ9・3内は真空排気される。また、シャッタ装置8・29には、シール材30・30および駆動装置13・31が設けられている。
【0074】
シャッタ装置9・10が出入り口12・4を閉じると、第2のローディングチャンバ9・3内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ9・2内よりも高真空度の真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット11・14のアームはワーキングチャンバ8・16内のステージ装置8・6の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ8・16内のステージ装置8・6では、Yテーブル8・33が、Xテーブル8・34の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット9・12の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図9で上方に移動し、また、Xテーブル8・34は図9で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ9・3がワーキングチャンバ8・16の真空状態と略同じになると、シャッタ装置8・29の扉9・9が動いて出入り口9・7、9・1を開き、アームが伸びてウェーハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ8・16内のステージ装置8・6に接近する。そしてステージ装置8・6の載置面9・14上にウェーハを載置する。ウェーハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置8・29が出入り口9・7、9・1を閉じる。
【0075】
ステージには、ウェーハに逆バイアス電位(リターディング電位)をかける機構があるので、アームがステージへウェーハを置きに行くもしくは取りに行く時、アームをステージと同じもしくは近い電位、またはアームをフローティング電位にしておくことにより、電位のショートによる放電などの不具合を避ける機構を有している。また、別の実施の形態として、ウェーハをステージ装置上に搬送する際にはウェーハへのバイアス電位をオフにしておいてもよい。
【0076】
バイアス電位を制御する場合には、ウェーハがステージに搬送されるまでは電位をオフにしておき、ステージに搬送され載置されてからオンにしてバイアス電位を印加するようにしてもよい。バイアス電位を印加する時機は、タクトタイムを予め設定しておき、それにしたがって印加してもよいし、ステージの上にウェーハが載置された事をセンサで検出し、その検出信号をトリガとして印加するようにしてもよい。また、シャッタ装置8・29が出入口9・7、9・1を閉じたことを検出して、その検出信号をトリガとして印加してもよい。更に、静電チャックを用いる場合には、静電チャックに吸着されたことを確認し、それをトリガとしてバイアス電位を印加するようにしてもよい。
【0077】
以上は、カセット8・12内のウェーハをステージ装置上に搬送するまでの動作について説明したが、ステージ装置8・6に載せられて処理が完了したウェーハをステージ装置8・6からカセット8・12内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウェーハラック9・11に複数のウェーハを載置しておくため、第2の搬送ユニット9・12でウェーハラック9・11とステージ装置8・6との間でウェーハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニット11・14でカセットとウェーハラック9・11との間でウェーハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
【0078】
具体的には、ウェーハラック9・11に、既に処理済のウェーハAと未処理のウェーハBがある場合、まず、ステージ装置8・6に未処理のウェーハBを移動する。この間に、処理済ウェーハAを、アームによりウェーハラックからカセット8・12に移動し、未処理のウェーハCを同じくアームによりカセット8・12から抜き出し、プリアライナ11・5で位置決めした後、ローディングチャンバ9・2のウェーハラック9・11に移動する。
【0079】
このようにすることで、ウェーハラック9・11の中は、ウェーハBを処理中に、処理済のウェーハAが未処理のウェーハCに置き換えることができる。また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置8・6を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウェーハラック9・11からウェーハを移動することで、複数枚のウェーハを同時処理することもできる。
【0080】
上記の実施の形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(1)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(2)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(3)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを一体的に振動防止装置を介して支持したので外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
【0081】
2−3)電子光学系
2−3−1)概要
電子光学系8・8は、ハウジング本体8・17に固定された鏡筒8・38の中に設けられた、図13に概略的に図示する一次電子光学系(以下、単に一次光学系という)13・1と、二次電子光学系(以下、単に二次光学系という)13・2とを備える電子光学系と、検出系13・3とを備える。一次光学系13・1は、電子線を検査対象であるウェーハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃13・4と、電子銃13・4から放出された一次電子線を集束する静電レンズからなるレンズ系13・5と、ウイーンフィルタすなわちE×B分離器13・6と、対物レンズ系13・7とを備え、それらは、図13に示されるように電子銃13・4を最上部にして順に配置されている。この実施の形態の対物レンズ系13・7を構成するレンズは減速電界型対物レンズである。この実施の形態では、電子銃13・4から放出される一次電子線の光軸は、検査対象であるウェーハWに照射される照射光軸(ウェーハの表面に垂直になっている)に関して斜めになっている。対物レンズ系13・7と検査対象であるウェーハWとの間には電極13・8が配置されている。この電極13・8は一次電子線の照射光軸に関して軸対称の形状になっていて、電源13・9によって電圧制御されるようになっている。
【0082】
二次光学系13・2は、E×B型偏向器13・6により一次光学系から分離された二次電子を通す静電レンズから成るレンズ系13・10を備えている。このレンズ系13・10は二次電子像を拡大する拡大レンズとして機能する。
【0083】
検出系13・3は、レンズ系13・10の結像面に配置された検出器13・11及び画像処理部13・12を備えている。
【0084】
一次ビームの入射方向は通常E×BフィルタのE方向(電界の逆方向)であり、この方向と積算型のラインセンサ(TDI:time delay integration)の積算方向とは同じ方向となっている。TDIの積算方向は一次ビーム方向と異なっていても構わない。
【0085】
以下、具体的な実施の形態について説明する。
真空チャンバ、真空排気系、1次光学系、2次光学系、検出器、画像処理器、制御用コンピュータより主に構成されている検査装置の一例である。図14−1にその一例を示す。
【0086】
電子ビームを試料に照射するための1次光学系14・1と試料表面から放出された電子
、例えば、2次電子、反射電子、後方散乱電子等を、検出器に導くための、2次光学系14・2がある。2次光学系は、写像投影式光学系である。1次系と2次系を分離する為に、
E×Bなるビーム分離器14・3が使用される。また、検出器14・4によって検出された電子の画像信号は、光信号、または/及び、電気信号に変換され、画像処理器14・5により処理される。また、このとき、検出器に入射する電子数は、1画素相当エリアに、200個以下でも画像を良好に形成できる。もちろん1画素領域中に200個以上の場合も画像を良好に形成できることは言うまでもない。
【0087】
1次光学系の構成要素である電子銃14・6は、熱フィラメントとして、LaB6が用
いられ、ウェネルト、引出電極14・7によりカソードからの電子を引き出す。その後、2段のAレンズ(アインツェルレンズ)14・8によりビームをアパーチャ14・9に収束させ、クロスオーバーを形成する。その後、2段のアライナ14・10、アパーチャ14・11、3段の4極子レンズ14・12、3段アライナ14・13を通過してビーム分離器に入射して試料面方向に偏向され、アライナ14・14、アパーチャ14・15と2次光学系のPレンズ(対物レンズ)14・16を通過して試料面にほぼ垂直に照射される。
【0088】
アパーチャ14・9により、クロスオーバでの均一性が高く、且つ、輝度の高いビーム領域を通過させ、アパーチャ14・11により、4極子レンズへのビーム入射角度を規定するアライナ(偏向器)14・10は、アパーチャ14・11及び4極子レンズ14・12の光軸中心にビームを入射させるための調整に使用される。4極子レンズ14・12は、ビームの2方向、例えば、X,Y方向の軌道を変えて、ビームの形状を変形することに利用される。例えば、試料照射ビーム形状において、円形、楕円形、矩形、矩形・楕円のx,y方向の形状の割合変更等を実現できる (図14−2参照) 。4極子レンズ通過後、アライナ14・14により、アパーチャ14・15、Pレンズ(対物レンズ)14・16の中心を通過するように調整され、試料表面に入射する。このとき、照射ビームの形状は、2軸の少なくとも一つについて、対称的に形状を形成できる。ビーム形状は非対称であっても良い。試料表面に照射されるビームのエネルギ−は、最終的に、カソードと試料表面に電圧差によって決定される。例えば、カソード-5.0kV、試料表面−4kVの時、
照射ビームエネルギは、1keVとなる (図14−1参照) 。
【0089】
この場合の電圧の誤差は±10V、エネルギー誤差は±20eVである。また、検出電子として、2次電子を用いる場合、ビーム照射エネルギが1.5keV±10eV〜5keV±10eVで用いるときは、試料が負帯電状態となり、その状態からの2次電子が試料から放出され、2次系により拡大・結像されて検出系に導かれる。照射エネルギが50±10eV〜1500eV±10eVでは、試料表面が正帯電状態になり、放出された2次電子が、検出系に導かれる。正帯電の方が、比較的低ダメージで動作できるが、チャージアップの影響またはチャージアップによる表面電位の不均一による影響は受けやすい。負帯電での動作では、安定して像が得やすく、チャージアップの影響またはチャージアップによる表面電位の不均一による像の歪みが正帯電よりも小さくできる。
【0090】
また、アパーチャ14・15の場所において、2次系と1次系のクロスオーバの位置をずらして動作することもある。例えば、2次系は2次系光軸中心上に、2次電子のクロスオーバを形成し、1次系のクロスオーバは2次系の光軸中心よりも50〜500μmずれた位置(X、Yどちらでも良い)に形成して動作させる。これにより、アパーチャ14・15での1次系と2次系の2つのクロスオーバが重なることが無くなり、電流密度の緩和ができるため、ビーム電流量が多い場合の空間電荷効果によるボケの拡大を抑制することが可能となる。これは、例えば、1次系照射ビーム電流密度が1×10-3A/cm2以上のときに、有効となる。それより低い電流密度の時は、光軸中心が同一になっても影響は少ない。
【0091】
試料表面からの放出電子は、2次電子、反射電子、後方散乱電子の1種類以上が利用される。試料表面からの放出エネルギーは、例えば、入射ビームエネルギ1000eV±10eVの時、およそ、各々、0〜10eV、1000eV±10eV、10〜1000eVとなる。
【0092】
電子ビームの代わりに集束イオンビーム(FIB)を用いても良い。FIB源としては液体金属のGaイオン源が一般的であるが、液化しやすい金属を用いる他の液体金属イオン源や、異なる方式のイオン源、例えば放電を用いるデュオプラズマトロン等が使用できる。
【0093】
試料としては、10×10mm程度のチップから2,4,6,8,12インチウェーハまで、種々の試料が用いられる。特に、100nm以下の線幅を持つ配線パターンや直径100nm以下のビアの欠陥やゴミの検出に有効であり、また、それらの電気的欠陥を検出するのに都合がよい。試料は、Siウェーハ、Siに加工を施された半導体デバイスウェーハ、マイクロマシン加工がされたウェーハ、液晶ディスプレイ用基板、ハードディスク用ヘッド加工ウェーハ、等が用いられる。
【0094】
2次光学系14・2では、試料からの放出電子、例えは、2次電子、反射電子、後方散乱電子を検出系に拡大倍率にて、結像させて、導くための写像投影光学系が用いられる例を述べる。コラムのレンズ構成の例としては、Pレンズ(対物レンズ)14・16、アパーチャ14・15、アライナ14・14、ビーム分離器14・3、Pレンズ(中間レンズ)14・17、アライナ14・18、アパーチャ14・19、Pレンズ(投影レンズ)14・20、アライナ14・21、マイクロチャンネルプレート(MCP)ユニットで構成される。コラムの上部フランジにはハーメチックの石英ガラスが設置されている。その上部にリレーレンズ、二次元の電荷結合素子(2D−CCD)が設置され、蛍光面で形成された像が2D−CCDセンサに結像される。
【0095】
試料表面からの放出電子は、Pレンズ(対物レンズ)14・16にてアパーチャ14・15でクロスオーバを形成して、ビーム分離器14・3中心で結像する。ビーム分離器中心にて結像する条件で動作すると、ビーム分離器14・3で発生する2次系ビームの収差の影響を小さく押さえることができるので有効となる。これは、例えば、E×Bにおいてビームを通過させるときに、像高により偏向量・収差が異なってくるため、結像することにより、結像成分の被る収差を最小限に押さえることができるからである。この事は、1次系においても同様の事がいえるため、1次系においても、試料上に結像条件を形成するのみでなく、ビーム分離器中心付近においても結像点を形成することにより、1次ビームの収差低減を行い、試料上での電流密度ムラを小さく押さえることに有効となる。
【0096】
その上部にあるPレンズ(中間レンズ)14・17の中心にビームを調整するため、アライナ14・14が使用される。その上流部にあるPレンズ(投影レンズ)14・20の中心にビームを調整するため、アライナ14・18が使用される。その上部にあるMCP中心にビームを調整するために、アライナ14・21がある。Pレンズ(対物レンズ)14・16の倍率は1.5〜3倍、Pレンズ(中間レンズ)14・17の倍率は1.5〜3、Pレンズ(投影レンズ)14・20の倍率は30〜50である。これらの倍率を達成するには、それぞれの倍率に応じた電圧を各々のレンズに印加して調整を行う。また、焦点の微調整を行うには、専用の焦点補正レンズが、Pレンズ(対物レンズ)系の中に組み込まれており、該電極に印加する電圧の微調整により、焦点あわせを実現する。また、アパーチャ14・15とアパーチャ14・19の位置では、双方とも、クロスオーバを形成する場合、アパーチャ14・15は逆光カット用に用いて、アパーチャ14・19は、収差・コントラストを決定する役割を果たすように使用することも可能である。
【0097】
サイズとして例えば、アパーチャ14・15とアパーチャ14・19は、φ30以上φ2000μm以下、好ましくはφ30以上〜φ1000μm、より好ましくはφ30以上〜φ500μmで使用可能である。この時、アパーチャ14・15で収差、透過率、コントラスト特性を主に決める場合には、アパーチャ14・15を例えばφ30〜φ500μm、アパーチャ14・19はφ1000〜φ2000μmで用いる。アパーチャ14・19で収差、透過率、コントラスト特性を主に決める場合には、例えばアパーチャ14・19をφ30〜φ500μm、アパーチャ14・15はφ1000〜φ2000μmで用いる。
【0098】
また、Pレンズ(中間レンズ)14・17の上下にスティグ電極が設置されて用いることもある。これは、ビーム分離器14・3等によって発生する非点収差を補正するために用いられる。例えば、4、6,8極の電極構成のスティグを用いることが可能である。例えば、8曲の内それぞれ電極に異なった電圧が印加されて非点収差、球面収差の補正に用いることができる。
【0099】
また、反射電子像及び後方散乱電子を用いたときのレンズ動作において、最終段のPレンズ(投影レンズ)14・20が、減速レンズ(負電圧印加レンズ)を用いると、2次電子のノイズカットに有効となる。通常、反射電子量の10〜1000倍程度2次電子量の方が多いため、特に、反射電子・後方散乱電子を用いた結像を行う場合は有効となる。例えば、1次系電子源のカソード電圧−4kV、試料電位−3kVの時、試料からの反射電子エネルギ1keV、検出器電圧が設置電位の時に、P電極の部位では、およそ、反射電子と2次電子のエネルギ差は1keVある。この時、Pレンズ(投影レンズ)電極の負電圧レンズ動作において、中心電圧が、反射電子を通過させて、2次電子をカットオフする条件を用いることが可能である。これらの条件は、シミュレーションによって求めることが可能である。
【0100】
ビーム分離器14・3では、電場と磁場が直行しているE×Bまたは、磁場Bのみで行う分離器が用いられる。E×Bの例では、電界分布を形成するE電極とそれと直交した磁極の面を持ち、直交した方向に磁束密度分布を形成する磁極より構成されている。例えば、2次系の光軸が試料表面より垂直方向であるとき、この2次系の軸に対して、1次系の入射ビームが10〜90度で設定することが可能である。この時、1次系がE×Bにより、
偏向されて試料面に垂直入射でき、また、試料表面からの放出電子が光軸方向つまり試料面から垂直方向にE×Bにて導かれる。これは、E電極に印加する電圧と、B磁極で形成される磁束密度により達成される。例えば、一対のE電極に±2kV±1V、一対のB磁極から並行的に磁束密度分布が形成され、例えば、E×Bの中心部において、1〜60G±1Gの磁極方向の磁束密度を発生する(図14−1参照)。
【0101】
また、E×Bは1次系と2次系の偏向関係を逆にした場合にも適用可能である。即ち、1次系の入射ビーム源を試料の直上方向に設けるとともに、2次系の検出器を1次系の軸と10〜80度の角度をなした方向に設け、E×Bにより1次系のビームには偏向力を加えずに試料に垂直に入射させ、試料から放出された電子(2次系ビーム)に偏向力を加えて検出器の方向に導くことができる。
【0102】
検出器14・4は、MCP等電子増倍管に導入され、増倍された電子が蛍光面に照射され、蛍光像形成がなされる。蛍光面は石英ガラス等のガラス板の片面に蛍光材がコートされているものである。この蛍光像は、リレーレンズ系と2次元CCDにより、撮像される。このリレーレンズ系とCCDはコラムの上部に設置されている。コラムの上部フランジには、ハーメチックガラスが設置され、コラム内の真空環境と外部大気環境とを分離し、かつ、蛍光像を歪・コントラスト劣化を小さくして、CCDに結像して、蛍光像を効率よく撮像できる。
【0103】
CCDの代わりに、積算型のラインイメージセンサ(TDI−CCD)カメラを用いることもできる。この場合、試料はステージにて、例えば、E電極方向または、B磁極方向に、ステージ移動を行いながらTDI撮像を行うことが可能となる。例えば、TDIの積算段数が256段、1段当たり2048個の画素数/段、素子サイズ15×15μm、試料面に対するMCP結像倍率が300倍である時、ライン/スペースが0.1/0.1μ
mのとき試料面サイズがMCP面で30/30μmとなる。そして、リレーレンズ倍率1倍のとき、30μmは2つの素子サイズ相当にて撮像される。このとき、1素子相当の試料位置、つまり0.05×0.05μmの試料サイズから放出された電子は、256素子段数分ステージ移動中に積算されて、総合取得光量が増加して撮像できる。これは、ラインレート100kHz〜600kHz対応等、ステージ速度が速いときに特に有効である。これは、ラインレートが早い時に、1素子当たりの取得電子数、つまり、TDIセンサの1素子当たりの取得光強度が小さくなるために、積算を行って最終取得光強度を高くし、コントラストとS/Nを高めることができるためである。ラインレートは、0.5kHz〜100MHzが用いられ、好ましくは1kHz〜50MHz、より好ましくは20kHz〜10MHzである。これに対応して、ビデオレートも、1タップ当たり1〜120MHz/タップ好ましくは10〜50MHz/タップ、より好ましくは、10〜40MHz/タップで使用される。また、タップ数は、1以上520以下で、好ましくは4以上256以下、より好ましくは32以上128以下で用いられる。
【0104】
CCD、TDIセンサ/カメラは、低ノイズ、高感度の特性を有するものが用いられる。例えば、100〜100000DN/(nJ/cm2)で設定可能であるが、このうち、1000〜50000DN/(nJ/cm2)で使用すると効率がよい。さらに、10
000〜50000DN/(nJ/cm2)で使用すると、高ラインレート時においても
、良好なS/Nで、高品質の画像を得ることができる。
【0105】
また、CCD又はTDIセンサを用いて画像取得がなされるとき、これらのセンサの画素数×段数の領域が、1次ビームの照射エリアとほぼ一致している状態で使用することができ、効率的であると共に、ノイズの低減になる。ノイズは、撮像に使用されるエリア以外の像高の高い部位からの電子もノイズとして、検出器まで到達するものがある。それらを低減するには、有効視野以外の部位のビーム照射を低減することが有効である。CCD、TDIセンサにより取得された像情報は電気信号に変換されて、画像処理器によってデータ処理される。この画像処理により、セル トゥー セル、ダイ トゥー ダイ(Die to Die)ダイ トゥー エニーダイ(Die to Any Die)の像比較が行われ、欠陥検査を行うことができる。例えば、パターン欠陥、パーティクル欠陥、電位コントラスト欠陥(例えば、配線やメッキの電気接続欠陥等)。
【0106】
ステージ14・22は、X,Y,Z、移動機構のうち1つ以上の組み合わせにより設置されたステージが用いられる。
MCPは入ってきた電子を増幅させる機能を有し、そこから出てきた電子は蛍光板により光に変換される。入射電子数が充分多くて増倍する必要にない場合には、MCP無しでも操作も可能である。また、蛍光板の代わりにシンチレータを用いることも可能である。この光の信号(あるいは像信号)はリレーレンズの場合には所定の倍率で、また、FOPの場合には1倍(1対1に光信号を伝える)でTDIへ伝える或いは像を形成する。ホトマルは光信号を増幅して電気信号へ変換するものであり、マルチホトマルはホトマルを複数並べたものである。
【0107】
画像処理器
画像処理器は、像比較、欠陥検出、欠陥分類、画像データ記録、等の機能を有する。
【0108】
上述した電子線検査装置において、1次ビームの照射ビーム形状が、X,Y軸に対して、少なくとも1軸以上に対して対称な照射ビーム形状を使用することができる。このことにより、光軸を中心としたビームによる検出器の電子入射面上で、低収差、低歪みの取得像形成が可能となる。
【0109】
また、検出器としてCCDやTDIを用いる場合では、1画素に対応するエリア、例えば、MCP上において、1画素の形成において、電子の入射量が200個/画素エリア以下にて十分なS/Nを達成でき、画像処理及び欠陥検出に使用できる。これは、例えば、写像投影光学系においては、アパーチャ14・15又は14・19のサイズを規定することにより、ノイズカットと収差低減効果を発生できるため、例えば、径30μm〜1000μmのアパーチャを設置することにより、S/N向上を実現できるので、200電子数/1画素エリアにて、高分解能な良質な画像を取得できる。
【0110】
TDIはステージの移動方向に付いて段数分の積分を行う。本実施の形態の場合は256段分の積分を行うが、積算段数は114段以上8192段以下、好ましくは114段以上4096段以下、より好ましくは512段以上4096段以下が適当である。積算方向に若干、一次ビームの照度むらがあり、試料からの信号電子にもむらがあったとしても、積分の効果によりそのむらは平均化され、検出される電子情報は一定の安定したものとなる。従って、ステージの移動方向は1次電子ビームの照度むらの生じ易い方向も考慮して、その照度ムラの生じ易い方向がTDIの積分方向に一致するように決めることができる。TDIの使用により、連続した画像取得が可能になるが、CCDを使用して、ステップアンドリピート方式でステージを走査し、画像取得を行っても良い。
【0111】
試料表面の様子が電子により拡大されて、検出器に像を結ぶとき、画像の分解能をCCD又はTDIの1画素程度にする場合、二次光学系の収差やぼけ等は1画素以内であることが望ましい。E×Bにおいて信号電子が偏向を受けると、収差やぼけが大きくなるので、本実施の形態では、二次光学系において、二次電子、反射電子、後方散乱電子等の信号電子にはE×Bでは偏向力を与えずに直進させるように設定してある。すなわち、二次光学系の中心軸が試料の視野中心とE×B中心と、検出器の中心を通る直線である構成となっている。
【0112】
尚、上記の実施の形態以外であっても二次光学系の像にぼけが生じなければ良く、本件発明がそれを含むことは言うまでもない。
【0113】
2−4)制御系
制御系は主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。メインコントローラにはマン−マシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作はここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時のときの必要な全てのコマンドの入カ等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウェーハ等の試料搬送、位置合わせの制御、他の制御コントローラやステージコントローラヘのコマンドの伝達や情報の受け取り等もメインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、試料観察位置のZ方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系ヘフィードバックし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージからの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
【0114】
制御コントローラは主に電子光学系の制御(電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンフィルタ用などの高精度電源の制御等)を担う。具体的には照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるようにすること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
【0115】
ステージコントローラは主にステージの移動に関する制御を行い精密なX方向およびY方向のμmオーダーの移動(±5μm以下、好ましくは±1μm以下、より好ましくは±0.5μm以下程度の誤差)を可能にしている。また、本ステージでは誤差精度±10秒程度以内で、好ましくは±1秒以内、より好ましくは±0.3秒以内で回転方向の制御(θ制御)も行われる。以下、制御系の構成について具体的に説明する。
【0116】
2−4−1)構成及び機能
本装置は、ウェーハの指定位置を電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡で撮像し表示する機能と、ウェーハの指定位置を電子顕微鏡で撮像し欠陥検出および欠陥分類する機能と、欠陥が検出された位置を電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡で撮像し表示する機能とを提供する。また、上記機能の実現およびメンテナンスのため、電子光学系制御と、真空系制御とウェーハ搬送制御と、構成機器単体操作と、撮像機能と、自動欠陥検査処理と、装置異常検知と、装置起動/停止処理機能とを有する。
【0117】
補助機能は以下のとおりである。
(1)電子光学系制御機能
(a)レンズ電圧印加制御
(a−1)連動制御
(a−2)印加関数による電圧印加
(a−3)多極子レンズ連動電圧印加
(a−4)ウォッブル制御
(b)電子ビーム出力調整
(b−1)プレヒート(Gun)
(b−2)ヒートアップ(Gun)
(b−3)エミッション電流制御(BIAS制御)
(2)真空系制御機能
(a)チャンバ個別真空排気/大気開放
(b)指定チャンバ一括真空排気/大気開放
(3)ウェーハ搬送制御機能
下記動作のステップ動作/全自動動作
(a)ウェーハロード
(b)ウェーハアンロード
(4)構成機器単体操作機能
(5)撮像機能
以下の2つの入力系統を選択し撮像を行う:
(a)CCDカメラ
・光学顕微鏡低倍(ピクセルサイズ:2.75μm/pix)
・光学顕微鏡高倍(ピクセルサイズ:0.25μm/pix)
(b)TDIカメラ
(b−1)TDI−still
(b−2)TDI−scan
EB×80(ピクセルサイズ:0.2μm/pix)
EB×160(ピクセルサイズ:0.1μm/pix)
EB×320(ピクセルサイズ:0.05μm/pix)
EB×480(ピクセルサイズ:0.03μm/pix)。
【0118】
さらに誤操作などによる事故防止のため、操作する者の技術・知識レベルに応じて操作可能項目を制限する機能としてユーザーモード指定機能がある。このユーザーモードは、GUI(グラフィッカルユーザーインターフェース)起動時に入力するユーザーIDおよびパスワードにて指定される。
【0119】
ユーザーモードには、メンテナンスモード、レシピ作成モード、オペレータモードがあり、装置設置後の立ち上げ作業およびメンテナンス作業時にはメンテナンスモードにて操作を行い、レシピの作成時にはレシピ作成モードにて必要な操作および手順を支援し、自動欠陥検査時にはオペレータモードにて作成済みのレシピを使用して検査を行う。各ユーザーモードと装置運用形態の関係は図15のようになる。ここで、
メンテナンスモード....構成機器単体操作、ウェーハ搬送、真空系制御、電子光学系制御、観察(光顕撮像、TDI撮像)、欠陥検査、レビュー
レシピ作成モード.....ウェーハ搬送、観察(光顕撮像、TDI撮像)、欠陥検査、レビュー
オペレータモード.....自動欠陥検査(ウェーハ搬送など必要な機能の自動制御)、レビュー。
【0120】
本装置には、運用に必要な可変パラメータとして装置定数とレシピが存在する。装置固有の(取付け誤差などの)誤差を吸収するパラメータとして装置定数が規定され、自動で欠陥検査を行うために各種条件を規定するパラメータとしてレシピが規定されている。装置定数は、立ち上げ作業時、メンテナンス作業後に設定され、基本的にその後は変更されることが無い。
【0121】
レシピは、搬送レシピ、アライメントレシピ、ダイマップレシピ、フォーカスマップレシピ、検査レシピに分類され、これらのレシピに従って欠陥検査が行われるため、設定作業は検査処理実施前に行われ、複数パターンの設定が保存される。
【0122】
レシピ作成時の手順としては図16のように、ウェーハをステージ上へ搬送(ウェーハロード)するところが最初のステップとなる。ウェーハカセットを装置へ設置後、カセット内の各スロットのウェーハ有無を検出するためのウェーハサーチを行い、検出されたウェーハに対して、ウェーハサイズ、ノッチ/オリフラ種別、(ステージ上にロードされたときの)ノッチ方向を指定し、図17、図18に示される手順でウェーハをロードする。搬送レシピには、これらの条件が保存される。ステージ上にロードされたウェーハのダイの配置方向は、TDIカメラのスキャン方向と必ずしも一致しない(図19)。これを一致させるためにθステージでウェーハを回転させる操作が必要となり、この操作をアライメントと呼ぶ(図20)。アライメントレシピではステージ上にロードされた後のアライメント実行条件が保存される。
【0123】
なお、アライメント実施時にダイの配列を示すダイマップ(図21)が作成され、ダイマップレシピではダイサイズや(ダイの位置を示す起点となる)原点ダイの位置などが保存される。
【0124】
2−4−2)アライメント手順
アライメント(位置決め)手順としては、始めに光学顕微鏡の低倍にて粗い位置決めを行い、次いで光学顕微鏡の高倍により、最後にEB像により詳細な位置決めを行う。
【0125】
A.光学顕微鏡低倍にて撮像
(1)<第1,2,3サーチダイ指定及びテンプレート指定>
(1−1)第1サーチダイ指定及びテンプレート指定
ウェーハ下方に位置するダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得する。このダイが位置決めの基準となるダイであり、左下隅の座標が特徴点の座標となる。今後、このテンプレート画像でパターンマッチングを行うことにより、基板上の任意のダイの正確な位置座標を測定していく。このテンプレート画像には、サーチ領域内でユニークなパターンとなるような画像を選択しなければならない。
【0126】
なお、本実施例では、左下隅をパターンマッチング用テンプレート画像取得位置としたが、これに限られるものではなく、ダイ内の任意の位置を特徴点として選択してよい。ただし、一般的には、ダイの内部や辺の上にある点よりも、隅の方が座標を特定し易いので、四隅のいずれかを選択するのが好適である。また同様に、本実施例では、ウェーハ下方に位置するダイについてパターンマッチング用テンプレート画像を取得したが、これもアライメントが行い易いように任意のダイを選択しても構わないのは当然である。
【0127】
(1−2)第2サーチダイ指定
第1サーチダイの右隣のダイを第2サーチダイとし、第2サーチダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、上記(1−1)で取得したテンプレート画像を用いて自動でパターンマッチを実行することで第1サーチダイで指定したテンプレート画像と一致する第2サーチダイのパターンの厳密な座標値を取得する。
【0128】
なお、本実施例では、第1サーチダイの右隣のダイを第2サーチダイとして例を挙げて説明したが、本発明の第2サーチダイはこれに限られるものではないことは勿論である。要は、正確な特徴点の位置座表を把握した基準点からの、行方向のダイの位置関係をパターンマッチングにより正確に把握することができる点を選択すればよいのである。したがって、例えば、第1サーチダイの左隣のダイを第2サーチダイとすることも可能である。
【0129】
(1−3)第3サーチダイ指定
第2サーチダイの上隣のダイを第3サーチダイとし、第3サーチダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、上記(1−1)で取得したテンプレート画像を用いて自動でパターンマッチを実行することで第1サーチダイで指定したテンプレート画像と一致する第3サーチダイのパターンの厳密な座標値を取得する。
【0130】
なお、本実施例では、第2サーチダイの上隣のダイを第3サーチダイとして例を挙げて説明したが、本発明の第3サーチダイはこれに限られるものではないことは言うまでもない。要は、特徴点の正確な座標を把握したダイを基準として、列方向のダイの特定点の座標の距離を含めた位置関係を把握することができればよいのである。したがって、第1サーチダイの上隣のダイも好適に代替適用可能である。
【0131】
(2)<光顕低倍Y方向パターンマッチング>
(2−1)第2サーチダイのパターンマッチ座標(X2,Y2)と第3サーチダイのパターンマッチ座標(X3,Y3)の関係より、上隣ダイのパターンへの移動量(dX,dY)を算出する。
dX=X3−X2
dY=Y3−Y2
【0132】
(2−2)算出した移動量(dX,dY)を用い、第1サーチダイの上隣のダイのパターンが存在する(と予想される)座標(XN,YN)へステージを移動。
XN=X1+dX
YN=Y1+dY
※(X1,Y1):第1サーチダイのパターンの座標
【0133】
(2−3)ステージ移動後、光顕低倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得し、さらにダイの検出個数(DN)の初期値として1を設定する。
【0134】
(2−4)第1サーチダイのパターン座標(X1,Y1)から現在撮像中のパターンの座標(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
【0135】
(2−5)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけ第1サーチダイを起点としてステージを移動する。
【0136】
(2−6)ステージ移動後、光顕低倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新し、ダイの検出個数を2倍する。これについては図22参照。
【0137】
(2−7)予め指定されたY座標値を超えるまでウェーハ上部へ向けて(2−4)〜(2−6)を繰り返し実行する。
【0138】
なお、本実施例では、精度を高めるため、及び処理回数(繰り返し回数)を低減させ、処理時間を短縮するために、2倍の移動量を繰り返す態様を例にとって説明したが、精度に問題がなく、更に処理時間を短縮させたければ、3倍、4倍というように、2倍以上等の整数倍の高倍率で実行しても構わない。また逆に、問題が無ければ、更に精度を高めるために、固定移動量で移動を繰り返してもよい。これらいずれの場合も、検出個数にもそれを反映させることは言うまでもない。
【0139】
(3)<光顕低倍θ回転>
(3−1)第1サーチダイのパターン座標(X1,Y1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量および、それまでに検出したダイの個数(DN)を用い、回転量(θ)およびY方向ダイサイズ(YD)を算出する(図23参照)。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
θ=tan-1(dX/dY)
YD=sqrt((dX)2+(dY)2)/DN
※sqrt(A)=√A
(3−2)算出した回転量(θ)分だけθステージを回転させる。
【0140】
B.光学顕微鏡高倍にて撮像
(1)光顕低倍の(1)と同様の手順を光顕高倍像を用いて実行する。
(2)光顕低倍の(2)と同様の手順を光顕高倍像を用いて実行する。
(3)光顕低倍の(3)と同様の手順を実行する。
(4)<光顕高倍θ回転後の許容値チェック>
【0141】
(4−1)[第1サーチダイ、光顕高倍のテンプレート指定]
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)を回転前座標(X1,Y1)および回転量(θ)から算出し、座標(X’1,Y’1)へステージを移動、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得。
X’1= x1*cosθ−y1*sinθ
Y’1=x1*sinθ+y1*cosθ
(4−2)光顕高倍Y方向パターンマッチング
【0142】
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)からdYだけY方向へ移動し、パターンマッチを実行することで現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得する。
【0143】
(4−3)回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)から現在撮像中のパターンの座標
(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X’1
dY=YN−Y’1
【0144】
(4−4)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけ第1サーチダイを起点としてステージを移動する。
【0145】
(4−5)ステージ移動後、光顕高倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新する。
【0146】
(4−6)予め指定されたY座標値を超えるまでウェーハ上部へ向けて(4−3)〜(4−5)を繰り返し実行する。
【0147】
(4−7)θの回転量を算出
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量を用い、回転量(θ)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
θ=tan―1(dX/dY)
【0148】
(4−8)光顕高倍θ許容値チェック
(4−7)にて算出した回転量(θ)が既定値以下に収まっていることを確認する。収まっていない場合は、算出した回転量(θ)を用いてθステージ回転後、再度(4−1)〜(4−8)を実行する。ただし、規定回数繰り返して(4−1)〜(4−8)を実行しても許容範囲内に収まらない場合は、エラー扱いとして処理を中断する。
【0149】
C.EB像によるアライメント
(1)<Yサーチ第1ダイ、EBのテンプレート指定>
光顕高倍の(1)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(2)<EB Y方向パターンマッチング>
光顕高倍の(2)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(3)<EB θ回転>
光顕高倍の(3)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(4)<EB θ回転後の許容値チェック>
光顕高倍の(4)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(5)必要に応じ、高倍率のEB像を用いて(1)〜(4)を実行する。
(6)第1サーチダイの座標(X1,Y1)と第2サーチダイの座標(X2,Y2)より、X方向ダイサイズ(XD)の概略値を算出する。
dX=X2−X1
dY=Y2−Y1
XD=sqrt((dX)2+(dY)2)
※sqrt(A)=√A
【0150】
D.ダイマップレシピ作成
(1)<Xサーチ第1ダイ、EBのテンプレート指定>
ウェーハ左端に位置するダイの左下隅がTDIカメラ中央付近に位置するようにユーザー操作にてステージを移動し、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得。このテンプレート画像には、サーチ領域内でユニークなパターンとなるような画像を選択しなければならない。
【0151】
(2)<EB X方向パターンマッチング>
(2−1)X方向ダイサイズ概略値(XD)を用い、Xサーチ第1ダイの右隣のダイのパターンが存在する(と予想される)座標(X1+XD,Y1)へステージを移動。
【0152】
(2−2)ステージ移動後、TDIカメラにてEB像を撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得し、さらにダイの検出個数(DN)の初期値として1を設定する。
【0153】
(2−3)Xサーチ第1ダイのパターン座標(X1,Y1)から現在撮像中のパターンの座標(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
【0154】
(2−4)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけXサーチ第1ダイを起点としてステージを移動する。
【0155】
(2−5)ステージ移動後、TDIカメラにてEB像を撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新し、ダイの検出個数を2倍する。
【0156】
(2−6)予め指定されたX座標値を超えるまでウェーハ右方向へ(2−3)〜(2−5)を繰り返し実行する。
【0157】
(3)<X方向傾きを算出>
Xサーチ第1ダイのパターン座標(X1,Y1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量および、それまでに検出したダイの個数(DN)を用い、ステージ直行誤差(Φ)およびX方向ダイサイズ(XD)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
Φ=tan―1(dY/dX)
XD=sqrt((dX)2+(dY)2)/DN
※sqrt(A)=√A
【0158】
(4)<ダイマップ作成>
このように、X方向ダイサイズ(XD)を求め、予め回転量(θ)を算出した際に求めたY方向ダイサイズ(YD)と合わせてダイマップ(理想上のダイの配置情報)を作成する。ダイマップにより、ダイの理想上の配置が分かる。一方、実際の基板上のダイは例えばステージの機械的誤差(ガイド等の部品や組み付けの誤差)、干渉計の誤差(例えばミラー等の組み付けの問題による)やチャージアップによる像の歪みの影響を受け、必ずしも理想的な配置には観察することができない場合があるが、この実際のダイの位置とダイマップ上の理想上の配置との誤差を把握し、この誤差を考慮しこれを自動補正しながら、検査を行っていくようにする。
【0159】
E.フォーカスレシピ作成手順
次に、フォーカスレシピの作成手順について説明する。フォーカスレシピは、基板等の試料の平面上の印の位置における最適なフォーカス位置、若しくはフォーカス位置に関する諸条件の情報を表等の所定の形式で記憶したものである。フォーカスマップレシピではウェーハ上の指定位置のみフォーカス条件が設定され、指定位置間のフォーカス値は、直線補完される(図24参照)。フォーカスレシピ作成手順は次のとおりである。
(1)フォーカス測定対象ダイをダイマップから選択する。
(2)ダイ内でのフォーカス測定点を設定する。
(3)各測定点へステージを移動させ、画像およびコントラスト値を基に、フォーカス値(CL12電圧)の調整を手動で行う。
【0160】
アライメント処理にて作成したダイマップは、ウェーハの両端のダイ座標より算出した理想的な位置情報であり、様々な要因によりダイマップ上のダイ位置と実際のダイ位置には誤差が生じる(図25参照)。この誤差分を吸収するためのパラメータを作成する手順をファインアライメントと呼び、ファインアライメントレシピには、ダイマップ(理想上のダイ配置情報)と実際のダイの位置との誤差情報が保存される。ここで設定された情報は、欠陥検査時に使用される。ファインアライメントレシピではダイマップ上で指定されたダイのみ誤差が測定され、指定ダイ間の誤差は、直線補完される。
【0161】
F.ファインアライメント手順
(1)ファインアライメント用誤差測定対象ダイをダイマップから指定する。
(2)誤差測定対象ダイより基準ダイを選択し、このダイの位置をダイマップとの誤差がゼロの点とする。
(3)基準ダイの左下隅をTDIカメラで撮像し、パターンマッチ用テンプレート画像を取得する。
※サーチ領域内でユニークなパターンをテンプレート画像として選択
(4)近隣の誤差測定対象ダイの左下の(ダイマップ上での)座標(X0,Y0)を取得し、ステージを移動させる。移動後、TDIカメラで撮像し、(3)のテンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、厳密な座標値(X,Y)を取得する。
(5)パターンマッチで取得した座標値(X,Y)とダイマップ上の座標値(X0,Y0)の誤差を保存。
(6)全ての誤差測定対象ダイについて(4)〜(5)を実行する。
【0162】
2−4−3)欠陥検査
欠陥検査は、図26に示すように、電子光学系の条件設定(撮像倍率などの設定)を行い、電子ビームを照射しながらステージを移動させることでTDIスキャン撮像(図27)を行い、設定された検査条件(アレイ検査条件、ランダム検査条件、検査エリア)に従い、検査専用処理ユニット(IPE)によりリアルタイムで欠陥検査が行われる。
【0163】
検査レシピでは、電子光学系の条件、検査対象ダイ、検査エリアおよび検査方法(ランダム/アレイ)などが設定される(図28のA、B)。
【0164】
なお、欠陥検査用に安定した画像を取得するため、位置ズレや速度ムラなどによる撮像画像のブレを抑制するEO補正、理想的なダイマップ上の配置と実際のダイ位置との誤差を吸収するダイ位置補正、有限の測定点で予め測定したフォーカス値を用いウェーハ全領域のフォーカス値を補完するフォーカス調整がリアルタイムで同時に行われる。
【0165】
欠陥検査のスキャン動作において、検査対象ダイの全域を検査する(図29)他に、図30に示すように、スキャン方向と直角方向へのステップ移動量を調整することで間引き検査も可能となる(検査時間の短縮)。更に、単なる間引き検査では、検査時間の短縮は図れるが、間引き検査を行った領域が必ずしも検査上重要な領域であるとは限らないため、検査上特に重要な、クリティカルな領域を任意に選択して検査することも可能である。これにより、検査時間を短縮しつつ、重要な領域についてはきちんと検査を行い、効率的に精度の方も確保できる。
【0166】
検査終了後は、検査結果として欠陥個数、欠陥を含むダイの位置、欠陥サイズ、各ダイ内での欠陥位置、欠陥種別、欠陥画像、比較画像をディスプレイに表示し、これらの情報およびレシピ情報などをファイルへ保存することで過去の検査結果の確認、再現が可能となっている。
【0167】
自動欠陥検査時には各種レシピを選択指定することで、搬送レシピに従ってウェーハがロードされ、アライメントレシピに従ってステージ上でウェーハのアライメントが行われ、フォーカスマップレシピに従ってフォーカス条件の設定が行われ、検査レシピに従って検査が行われ、搬送レシピに従ってウェーハがアンロードされる(図31のA、B)。
【0168】
2−4−4)制御系構成
本装置は、図32に示すように複数のコントローラにより構成されている。メインコントローラは、装置(EBI)のGUI部/シーケンス動作を司り、工場ホストコンピュータまたはGUIからの動作指令を受け取り、VMEコントローラやIPEコントローラへ必要な指示を与える。VMEコントローラは、装置(EBI)構成機器の動作を司り、メインコントローラからの指示に従い、ステージコントローラやPLCコントローラへ指示を与える。IPEコントローラは、メインコントローラからの指示によりIPEノードコンピュータからの欠陥検査情報取得、取得した欠陥の分類および画像表示を行う。IPEノードコンピュータは、TDIカメラから出力される画像の取得ならびに欠陥検査を行う。
【0169】
PLCコントローラは、VMEコントローラからの指示を受け、バルブ等の機器の駆動およびセンサ情報の取得、常時監視が必要な真空度異常などの異常監視を行なう。ステージコントローラは、VMEコントローラからの指示を受け、XY方向への移動およびステージ上に設置されたウェーハの回転を行う。
【0170】
このような分散制御系を構成することで、末端の装置構成機器が変更された場合に各コントローラ間のインターフェースを同一に保つことで上位コントローラのソフトウェアおよびハードウェアの変更が不要となる。また、シーケンス動作が追加・修正された場合でも上位ソフトウェアおよびハードウェアの変更を最小限にとどめることで構成変更への柔軟な対応が可能となる。
【0171】
2−4−5)ユーザーインターフェース構成
図33はユーザーインターフェース部の機器構成を示す。
(1)入力部
ユーザーからの入力を受け付ける機器で「キーボード」、「マウス」、「JOYパッド」から構成される。
(2)表示部
ユーザーへの情報を表示する機器で、モニタ2台で構成される。
モニタ1:CCDカメラまたはTDIカメラでの取得画像を表示
モニタ2:GUI表示
【0172】
座標系について
本装置では、以下3つの座標系を規定する。
(1)ステージ座標系[XS,YS]
ステージ位置制御時の位置指示用の基準座標系
チャンバ左下隅を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。
本座標系は、本装置に1つしか存在しない。
ステージ座標系で示される位置(座標値)は、ステージの中心(ウェーハ中心)とする。
つまり、ステージ座標系において座標値[0,0]を指定した場合、ステージ中心(ウェーハ中心)がステージ座標系の原点に重なるように移動する。
単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。
※λ:レーザ干渉計で用いられるレーザの波長(λ≒632.991[μm])
【0173】
(2)ウェーハ座標系[XW,YW]
ウェーハ上の観察(撮像・表示)する位置を指示するための基準座標
ウェーハ中心を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。
ウェーハ座標系で示される位置(座標値)は、そのとき選択された撮像機器(CCDカメラ、TDIカメラ)での撮像中心とする。
本座標系は、本装置に一つしか存在しない。
単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。
※λ:レーザ干渉計で用いられるレーザの波長(λ≒632.991[μm])
【0174】
(3)ダイ座標系[XD,YD]
各ダイにおける観察(撮像・表示)位置を規定するための基準座標
各ダイの左下隅を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。本座標系はダイ毎に存在する。単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。
※λ:レーザ干渉計で用いられるレーザの波長(λ≒632.991[μm])
【0175】
なお、ウェーハ上のダイは、番号付け(ナンバリング)され、番号付けの基準となるダイを原点ダイと呼ぶ。デフォルトではウェーハ座標系原点に最も近いダイを原点ダイとするが、ユーザーの指定により原点ダイの位置を選択可能とする。
【0176】
※ユーザーインターフェースにより指示される座標および、ステージ移動方向の関係は、以下のとおりである。
(1)ジョイスティック & GUI矢印ボタン
ジョイスティックおよび、GUI矢印ボタンにより、指示される方向は、オペレータが見たい方向とみなし、ステージを指示方向と逆方向に移動させる。
例)
指示方向:右 .... ステージ移動方向:左 (画像が左に移動=視野が右に移動)
指示方向:上 ・・・・ ステージ移動方向:下 (画像が下に移動=視野が上に移動)
【0177】
(2)GUI上で座標を直接入力
GUI上で直接入力される座標は、ウェーハ座標系上でオペレータが見たい場所とみなし、該当ウェーハ座標が撮像画像中心に表示されるようにステージを移動させる。
【0178】
2−5)検査
次に、検査手順について図34を用いて説明する。まず、一般的な検査手順について説明し、次に、選択的検査について説明する。一般に電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に、また、配線工程ではより微細な配線工程部分、すなわち配線工程の1から2工程、及び前工程のゲート配線工程等に利用されている。特に、デザイン・ルールが100nm以下、即ち,100nm以下の線幅を有する配線や直径100nm以下のビア・ホール等の形状欠陥や電気的欠陥を見つけ、また、プロセスにフィードバックすることが重要である。
【0179】
検査されるウェーハは大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密X−Yステージ上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定され、以後、(図34)の手順に従って欠陥検査等が行われる。はじめに光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。光学顕微鏡はこの他に欠陥等の見たい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次に電子光学系の条件設定を行い、電子線像を用いて、光学顕微鏡で設定された情報の修正を行い、精度を向上させる。
【0180】
次いでウェーハの種類(どの工程後か、ウェーハのサイズは200mmか、300mmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下、被検査領域の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行なった後、画像取得を行いながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行なう。一般的なウエハの全面検査の場合には、セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリーへ記憶を行なう。
【0181】
欠陥にはパーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行うこともできる。特に、線幅が100nm以下の配線や直径100nm以下のビア等の前記欠陥を分類するのに有効である。電気的欠陥の検出はコントラスト異状を検出することで達成される。例えば導通不良の場所は電子線照射(500eV程度)により、通常正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別ができる。この場合の電子線照射手段とは、通常検査用の電子線照射手段以外に別途、電位差によるコントラストを際立たせるために設けた低電位(エネルギー)の電子線発生手段(熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位(エネルギーが例えば100eV以下)の電子線を発生・照射している。検査用の電子線を照射すること自体正に帯電させることができる写像投影方式の場合は、仕様によっては、別途低電位の電子線発生手段を設ける必要はない。また、ウェーハ等の試料に基準電位に対して、正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出ができる。
【0182】
電位差によるコントラストは、電位コントラストデータを表示するのに有効な信号の画像に変換して表示してもよい。電位コントラスト画像を解析して、期待している値よりも高い又は低い電圧にある構造体、つまり、絶縁不良又は導通不良や欠陥を識別することができる。例えば、ウェーハ上の異なるダイからそれぞれ電位コントラスト画像を取得し、その差異を検出することで、欠陥を認識する。また、CADデータ等の設計データから被検査ダイの電位コントラスト画像と等価な画像データを生成して、この画像データとウェーハ上の被検査ダイから取得した電位コントラスト画像との差異を検出することで欠陥を認識する。
【0183】
線幅測定装置及び合わせ精度測定にも利用できる。検査されるウェーハの情報、例えばカセットの番号、ウェーハの番号(又はロットナンバ)等は、これらが現在どのような位置や状態にあるか、全て記憶管理されている。したがって、誤って検査を2回以上行ったり、検査をしなかったりするトラブルは発生しない。
【0184】
2−6)検査方法
2−6−1)概要
検査の基本的流れを、図35に示す。まずアライメント動作35・1を含んだウェーハ搬送の後、検査に関係する条件等を設定したレシピを作成する(35・2)。レシピは被検査ウェーハに最低1種類は必要であるが、複数の検査条件に対応するために、1枚の被検査ウェーハに対して、複数のレシピが存在しても構わない。また同一パターンの被検査ウェーハが複数枚ある場合、一種類のレシピで複数のウェーハを検査しても構わない。図35の経路35・3はこの様に過去に作成されたレシピで検査する場合、検査動作直前にレシピの作成が不要である事を示している。以下、図35において、検査動作35・4は、レシピに記載された条件、シーケンスに従いウェーハの検査を行う。欠陥抽出は、検査動作中に欠陥を発見するごと即時行われ、
a)欠陥分類(35・5)を行い、結果出力ファイルに抽出欠陥情報と欠陥分類情報を追加する動作
b)抽出欠陥画像を画像専用結果出力ファイルもしくはファイルに追加する動作
c)抽出欠陥の位置などの欠陥情報を操作画面上に表示する動作
をほぼ並列に実行する。
被検査ウェーハ単位で検査が終了すると、
a)結果出力ファイルをクローズして保存する動作
b)外部からの通信が検査結果を要求する場合、検査結果を送る動作
c)ウェーハを排出する動作
をほぼ並列に実行する。
【0185】
連続的にウェーハを検査する設定がなされている場合、次の被検査ウェーハを搬送して、前記一連の動作を繰り返す。
【0186】
以下、図35フローについて、さらに詳細を述べる。
(1)レシピ作成
レシピとは、検査に関係する条件等の設定ファイルであり保存する事も可能である。検査時もしくは検査前にレシピを使用して装置設定を行うが、一般的なウエハ全面検査の場合にレシピに記載された検査に関係する条件とは、
a)検査対象ダイ
b)ダイ内部被検査領域
c)検査アルゴリズム
d)検出条件(検査感度等、欠陥抽出に必要な条件)
e)観察条件(倍率、レンズ電圧、ステージ速度、検査順序等、観察に必要な条件)などである。
【0187】
この中で、検査対象ダイの設定は、図36に示される様に、操作画面に表示されたダイマップ画面に対して、検査するダイをオペレータが指定する。図36の例では、ウェーハ端面のダイ1と前工程で明らかに不良と判定されたダイ2をグレイアウトして検査対象から削除し、残りを検査対象ダイとしている。また、ウェーハ端面からの距離や前工程で検出されたダイの良否情報をもとに自動的に検査ダイを指定する機能も有している。
【0188】
また、ダイ内部の被検査領域の設定は、図37に示される様に操作画面に表示されたダイ内部被検査領域設定画面に対して、被検査領域をオペレータが光学顕微鏡もしくはEB顕微鏡により取得した画像をもとにマウス等の入力機器で指定する。図37の例では、実線で指した領域37・1と破線で指した領域37・2を設定している。
【0189】
領域37・1は、ダイのほぼ全体を設定領域としている。検査アルゴリズムは隣接ダイ比較法(ダイ−ダイ検査)としこの領域に対する検出条件、観察条件の詳細は、別に設定する。領域37・2は、検査アルゴリズムをアレイ検査(検査)としこの領域に対する検出条件、観察条件の詳細は、別に設定する。すなわち複数の被検査領域の設定が可能でかつ、被検査領域は、それぞれ独自の検査アルゴリズムや検査感度を条件設定できる。また被検査領域は重ね合わせる事も可能で、同じ領域に対して、異なる検査アルゴリズムを同時に処理することも可能である。
【0190】
(2)検査動作
検査は、被検査ウェーハに対して図38の様にある走査幅に細分され走査する。走査幅は、ほぼラインセンサの長さで決まるが、ラインセンサの端部が少し重なる様に設定してある。これは検出した欠陥を最終的に統合処理する場合にライン間の連続性を判断する為や比較検査を行う際に画像アライメントするための余裕を確保するためである。その重ね量は2048ドットのラインセンサに対して16ドット程度である。
【0191】
走査方向およびシーケンスを、模式的に図39に示す。すなわち、検査時間短縮のために双方向動作Aや、機械制限からの単方向動作Bなどが、オペレータより選択できる構成になっている。
【0192】
またレシピの検査対象ダイ設定を元に走査量を減らす動作を自動演算して検査する機能も有している。図40は検査ダイ40・1が1個の場合の走査例で、不要な走査は行わない。また、図41は、セル部40・2とランダム部40・3を示している。
【0193】
2−6−2)選択的検査方法について
以下、選択的検査方法について説明する。選択的検査は、ウエハ全面を検査するのではなく、特に検査したい任意の領域、例えばパターンが密集していて、欠陥が生じ易い、或いはチップ上特に重要な領域についてのみ行うもので、これにより、重要な部分はきちんと検査しつつ、検査時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0194】
具体的には、以下のように検査を行う。まず、前述したように、試料(ウエハを含む種々の基板)が搬送され、検査装置のステージ上に載せられる。次に、アライメントと呼ばれる試料の位置合わせを行なう。まず、試料上に形成されているパターンについて、パターンマッチング等を行ない、試料の回転角を調整し、θずれの位置補正を行なう。次いで、ダイのx−y平面上のずれを記憶し、このずれを補正しながら検査を行なっていく。
【0195】
各々の試料の検査は、予め種々の検査条件が指定されたレシピに基づいて行なう。つまり、原則的にはレシピに基づいて検査装置の種々の設定値、例えば加速電圧、ビーム電流、レンズの設定電圧といったものや、試料のどの領域を検査するかといった運転条件が定められ、その指定に従って検査を行なう。
【0196】
従って、検査装置のオペレーターの方で、検査以前の試料の処理プロセスを把握しており、各々の試料についてどの箇所を検査したい、ということが明確である場合には、レシピに被検査領域の指定を行い、その指定に基づいて検査を行なう。通常は、試料上の全面検査を行なうのが一般的であり、また図30右図のように間引き検査を行なったとしても、1つ置き等の規則的なステージ移動及び偏向しか行なわないのが通例であるが、本発明では、クリティカルな部分のレシピの指定に応じて、柔軟に検査を行なうことが必要なため、被検査領域の座標を指定し、当該指定座標を検査する。
【0197】
この場合、リソグラフィーを例に取れば、図42に示したように、メモリ・セル部とランダム・ロジック部の境界部分を検査すればよいので、この境界部分を含むストライプを検査するようにする。
【0198】
図42を参照すると、ウエハ1には複数のダイ2が並んでいる。そして、ウエハ1には、低パターン密度領域3と高パターン密度領域4が並んでいる。例えば、低パターン密度領域3がランダム・ロジック部に相当し、高パターン密度領域4がメモリ・セル部に相当する。
【0199】
本実施の形態では、図示のように、検査を省略する領域である検査省略領域5が設けられる。そして、ストライプ状の被検査領域6が、低パターン密度領域3と高パターン密度領域4の境界部分に設定される。
【0200】
本発明で使用しているビームは、SEMのような1ピクセル分のビーム径しか持たないのではなく、例えば横幅2048ピクセル分の撮像領域を有する幅の広いビームを用いているため、1ストライプ分で相当に広い幅の領域を検査することができ、例えばSEMの走査幅の2倍程度を撮像幅とすることができる。また、検出器には、TDI−CCDを用いており、TDIの積算速度と同期させて、ステージを連続的に、ストライプと同じ方向に移動させて検査することができるので、ストライプ部分を連続的に、短時間で検査を行なえる。従って、クリティカルな箇所を含むストライプのx座標を指定できれば、極めて高速に選択的な検査が実行できる。
【0201】
なお、境界部分のストライプを1本で済ます例を説明したが、必要に応じて、境界周辺
をもう少し広く検査するために、ストライプを2〜3本以上に設定してもよい。また、レシピの座標は、オペレーターが任意に設定できるが、ダイの幅は一定であるから、1つの境界のx座標と、ダイの幅が分かれば、自動的に演算して総てのダイについて境界座標を算出することが可能である。なお、レシピの作成に当たり、運転者は過去の欠陥履歴を把握している場合が多いので、その履歴の分析結果から、欠陥が多いと予想される箇所を指定して検査するようにすれば、効率的で比較的精度の高い検査が実行できる。例えば、パターン密度が大きいセル部と、パターン密度が比較的小さいランダム部の境界領域では、パターン密度が大きく変化するため、EBリソグラフィーで試料上のパターン形成を行った場合、近接効果補正誤差が発生し易いし、光リソグラフィーを用いてパターン形成を行なった場合においても、OPC(Optical Proximity Correction)の補正誤差が発生し易いので、この場合には、セル部とランダム部の境界領域(通常はx座標)を被検査領域に指定すれば、効率的な検査が実行できる。欠陥が多い箇所の予想には、適宜シュミレーション実験等を利用して行なってもよい。また、パターン設計者が、特に欠陥が発生し易いと考えている領域、或いはパターン上特に重要と考えている領域があれば、その領域を被検査領域に指定してもよい。例えば、パターンが密集して線幅が細くなっており、デザイン上の余裕が少ない箇所があれば、そこを被検査領域に指定すればよい。なお、試料の全面検査と、レシピに基づく選択的検査は、モードにより切り替え可能にしてもよい。
【0202】
また、図42には、ストライプ状の被検査領域6の他に、被検査領域7、9、10が示されている。被検査領域7は、ステージの連続移動、若しくはビームスキャン、又は双方の組み合わせで選択的に検査を行う領域である。被検査領域7は、欠陥が多発すると予想される領域である欠陥多発領域8に対応している。被検査領域9も、ステージの連続移動、若しくはビームスキャン、又は双方の組み合わせで検査が行われる領域である。なお、さらに、本実施の形態では、ステップ・アンド・リピート方式で検査が行われてもよい。また、被検査領域10は、低パターン密度領域であるが選択的に検査が行われる領域の例を示しており、これも本実施の形態に含まれる。
【0203】
また、図43に示すように、レシピではなく、最初に試料上の所定の小さい領域について予備検査を行ない、その結果を分析してダイ内で欠陥が多いと予想される領域を推定し、その領域を選択的に検査するようにしてもよい。最初に予備検査を行なう小領域は、図43の中央に示すように、ダイ1〜2列について、ストライプ幅で全面検査してもよいし、図43の左方に示すように、更にy座標も制限し、例えばダイ2行2列分(合計4個)について行なうようにしてもよい。これらの小領域について画像を取得し、ウエハマップの作成を行なう。ここで作成した、ウエハマップから、選択的に検査を行なう箇所を指定し、これにより検査を行なうことが可能である。同一試料上における、現実の小領域の検査結果から全体の検査箇所を決定するため、それまでの処理工程の状況を反映した形での検査箇所の選択が可能であり、より現状に即した柔軟な対応が可能である。なお、この選択は、画面上にウエハマップを表示し、該ウエハマップの検査したい領域をクリック、又はドラッグして矩形で検査したい領域を囲むことにより指定を可能とすれば、操作上も便利である。
【0204】
更に、それらの被検査領域の選択を、自動的に演算処理するようにしてもよい。例えば、小領域の画像を取得した際、予め被検査パターンのテンプレート等をメモリーに入れておき、これと小領域画像との差分をとり、所定の閾値を超えた箇所を特定し、その特定箇所、即ち欠陥候補の箇所の最も多い部分を含むように被検査領域を決定するようなアルゴリズムを用意しておけばよい。
【0205】
また、図44に示したように、ダイ20の周辺部のスクライブ・ライン21に、検査用の微細なテストパターン23を形成し、このテストパターン23を含むストライプを被検査領域に指定してもよい。図44では、メモリ・セル部24を含むダイ20の4隅にテストパターン23が配置されている。ダイ内の実際のパターンよりも微細なパターンをテストパターンとして形成しておき、このパターンを検査して欠陥が無ければ、ダイ内の実際のパターンも欠陥無く処理出来ている可能性が高いため、これも有効な選択的検査となる。特に、ダイの外側の四隅にそれぞれテストパターンを形成しておき、これらを検査して欠陥が無ければ、テストパターンが試料全体に均等に割り振られているため、試料全体に欠陥が無い可能性が高いと推定できる。
【0206】
なお、本発明では、写像光学系を採用した検査装置であり、検出器にTDI−CCDを用いているため、前述のように、ステージを連続移動させて、ストライプ単位で連続的に検査していくのに非常に有利であり、この検査方法が本装置に最も適した検査方法であるが、ステージ移動をステップ・アンド・リピート方式とし、クリティカルな領域のみをスポット的に選択して検査することも可能である。
【0207】
また、検査に用いる電子は、試料に一次電子ビームを直接照射し、試料から放出された二次電子、反射電子、後方散乱電子の他、試料近傍に逆電界をかけ、一次電子ビームが試料に衝突する前に反射した電子(ミラー電子ともいう)を用いてもよい。更に、試料を透過した透過電子により検査することも可能である。これらは、必要に応じて、レンズやリターディングの設定を変更したり、あるいは必要なハードを追加・変更することにより適応可能となる。
【0208】
検査した画像は、一旦メモリに取り込まれ、そのメモリに入った画像と次に取り込まれた画像、つまり同じストライプのダイの前後同士で比較する。あるいは同一又は異なる試料上のストライプ同士又は設計上のデータのストライプと比較することにより、比較検査を行う。
【0209】
なお、検査時間を短縮するためには、間引き検査、あるいはサンプリング検査を行ってもよい。これは、間引き率、又はサンプリング率を予め定め、この間引き率に従って、ストライプを数行おきに間隔を開けて検査を行うものである。機械的に被検査領域となるストライプを決めてしまうものであるから、必ずしもクリティカルな部分を検査しているとは言えず、精度の面では前述の選択的検査に劣るが、検査時間の短縮は実現できる。また、被検査領域の指定も容易であるため、検査時間の短縮を最重要視するならば、この検査も有効である。本発明で使用している写像投影型検査装置であれば、1行のストライプ幅
がSEMと比較して非常に広いので、検査時間を相当に短縮することが可能である。
【0210】
なお、本発明の選択的検査方法及び装置は、今まで説明してきたように、写像投影型の電子線を用いた検査装置に適用するのが好適であるが、他の方式を採用した検査装置にも適用可能である。検査したい任意の領域を設定すれば、そのストライプを、SEM型の細く絞ったビームを用いて検査してもよい。また、1本のビームのSEM方式で検査速度が遅ければ、例えば、ビーム数を増やしてマルチビームの照射源とし、図45に示すように、各ラスターを複数のビームで同時に走査し検出信号をビーム位置を考慮して画像合成を行えばよい。
【0211】
図45は、マルチビームで欠陥多発生が予想される場所を選択的に検査する場合を例示したものである。ストライプ幅30を9本のビームがすべて走査するように、走査開始点と走査終了点を決め、9本のビームを同時に走査し、各走査点からの2次電子を9個の検出器で互いにクロストーク無しに検出し、各検出器からの信号からSEM画像を合成する。別々に設定された領域31、32、33のSEM画像を比較し、領域32の画像のうち、領域31とも領域33とも異なる画像の部分が欠陥候補となる。
【0212】
更に、本発明で用いた写像投影型の検査装置で、マルチビーム方式を採用してもよい。写像投影型で、ビーム径自体が大きいのに加えて、更に複数のビームで試料を照射するので、大幅な検査時間の短縮が実現できる。写像投影型のマルチビーム検査装置を、図46に示す。電子銃46・1から放出された4本の電子線46・2(46・3〜46・6)は開口絞り46・7で整形され、2段のレンズ46・8、46・9(レンズ系46・50)でウィーンフィルタ46・10の偏向中心面に10μm×12μmの楕円状に結像される。電子線は、図の紙面垂直方向に偏向器46・11によりラスタースキャンされ、4本の電子線全体として1mm×0.25mmの矩形領域を均一にカバーするように結像される。E×B分離器(ウイーンフィルタ)46・10で偏向された複数の電子線はNA絞りでクロスオーバーを結び、レンズ46・20で1/5に縮小され試料Wに200μ×50μmをカバーし、かつ試料面に垂直になるように照射、投影される(ケーラー照明と呼ばれる)。E×B分離器46・10は、電極46・52および磁石46・53を備えている。試料から放出されたパターン画像(試料像F)の情報を持った4本の2次電子線46・12はレンズ46・11、46・13、46・14(レンズ46・13、レンズ46・14はレンズ系46・51)で拡大され、MCP46・15上に全体として4本の電子線46・12で合成された矩形画像(拡大投影像F’)として結像する。この二次電子線46・12による拡大投影像F’は、MCP46・15で1万倍に増感され、蛍光部により光に変換され、TDI−CCD46・16で試料の連続移動速度に同期された電気信号となり、画像表示部46・17で連続した画像として取得され、CRT等に出力する。
【0213】
電子線照射部は試料表面をできるだけ均一に、かつ照射むらを少なくして、矩形または楕円状に電子線で照射する必要があり、また、スループットをあげるためにはより大きな電流で照射領域を電子線照射する必要がある。
【0214】
本実施の形態の一次電子線照射方法を図47により示す。一次電子線47・1は4本の電子線47・2〜47・5で構成され、それぞれのビームは2μm×2.4μmの楕円状しており、それぞれ1本当り200μm×12.5μmの矩形領域をラスタースキャンし、それらが重なり合わないように足し合わせて全体として200μ×50μmの矩形領域を照射する。ビーム46・2は46・2’ヘ有限の時間で到達し次にビームスポット径分(10μm)ずれた46・2の直下にほとんど時間損失なしに戻り、再度前記と同じ有限の時間で46・2〜46・2’に平行に46・2’の直下(46・3’方向)に移動し、これを繰り返して図の点線で示す矩形の照射領域の1/4(200μm×12.5μm)を走査した後はじめの点47・1に戻りこれを高速に繰り返す。
【0215】
他の電子線47・3〜47・5も電子線47・2と同様に同じ速度で走査を繰り返し、全体として図の矩形の照射領域(200μ×50μm)を均一に高速に照射する。
【0216】
均一に照射できれば、前記のラスタースキャンでなくても良い。例えばリサージュ形を描くように走査しても良い。従って、ステージの移動方向は図に示す方向Aである必要は無い。即ち、スキャン方向(図の横方向の高速走査方向)に垂直である必要は無い。
【0217】
本実施の形態では電子線照射むらは±3%程度で照射できた。照射電流は1本の電子線当たり250nAで試料表面で全体として、4本の電子ビームで1.0μAを得ることができた(従来の2倍)。電子線の本数を増やすことにより、電流を増加でき、高スループットを得ることができる。また、照射点が従来に比べて小さく(面積で約1/80)また移動しているのでチャージアップは従来の1/20以下に抑えることができた。
【0218】
なお、本発明において検出される電子は、基板の表面の情報を得ているものであれば何でもよく、例えば、基板付近に逆電界を形成することにより、基板に直接衝突せずに、基板付近で反射するミラー電子(広義には反射電子とも言う)、或いは基板を透過する透過電子等でもよい。特に、ミラー電子を用いた場合には、電子が試料に直接衝突しないので、チャージアップの影響が極めて小さいという利点がある。
【0219】
ミラー電子を利用する場合には、試料に、加速電圧よりも低い負の電位を印加し、試料付近に逆電界を形成する。この負の電位は、基板の表面付近で殆どの電子線が戻される程度の値に設定するのがよい。具体的には、電子銃の加速電圧よりも0.5〜1.0V以上低い電位に設定すればよい。例えば、本発明の場合、加速電圧が−4kVの場合、試料への印加電圧は−4.000kV〜−4.050kVに設定するのが好ましい。更に望ましくは、−4.0005kV〜−4.020kVがよく、更に好ましくは−4.0005kV〜−4.010kVに設定するのが好適である。
【0220】
3)製造ラインの実施の形態
図48は、本発明の装置を使用した製造ラインの例を示す。検査装置48・1で検査されるウェーハのロット番号、製造に経由した製造装置履歴等の情報をSMIFまたはFOUP48・2に備えられたメモリから読み出すか、または、そのロット番号を、SMIF、FOUP又はウェーハカセットのID番号を読むことにより認識できるようになっている。ウェーハの搬送中は水分の量をコントロールしてメタル配線の酸化等を防止している。
【0221】
欠陥検査装置48・1は生産ラインのネットワークシステムと接続することが可能となっており、このネットワークシステム48・3を介して、生産ラインを制御している生産ラインコントロールコンピュータ48・4、各製造装置48・5及び別の検査装置に、被検査物であるウェーハのロット番号などの情報とその検査結果を送ることができる。製造装置には、リソグラフィー関連装置例えば露光装置、コーター、キュア装置、デベロッパ等、又は、エッチング装置、スパッタ装置及びCVD装置などの成膜装置、CMP装置、各種計測装置、他の検査装置、レビュー装置等が含まれる。
【0222】
図49は、本発明の実施の形態の電子線装置を使用する半導体デバイス製造方法の例を示すフロー図である。図49の半導体デバイス製造方法は、以下の主工程を含む。(1)ウエハ49・2を製造するウエハ製造工程49・1又はウエハ49・2を準備するウエハ準備工程、(2)露光に使用するマスク(レチクル)49・12を製作するマスク製造工程49・11又はマスクを準備するマスク準備工程、(3)ウエハに必要な加工を行うウエハプロセッシング工程49・3、(4)ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチッブ組立工程49・4、(5)できたチップ49・5を検査するチップ検査工程49・6及び検査に合格したチップからなる製品(半導体デバイス)49・7を得る工程。なお、これらの主工程は、それぞれ幾つかのサブ工程を含む。図49の右方部分は、そのうちのウエハプロセッシング工程49・3のサブ工程を示す。
【0223】
上記(1)〜(5)の主工程の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼす主工程がウエハプロセッシング工程49・3である。この工程では、設計きれた回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は、以下の工程を含む。(6)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、あるいは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程49・14(CVDやスパッタリング等を用いる)。(7)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程49・14。(8)薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するためのマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程49・13。(9)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程49・14(例えばドライエッチング技術を用いる)。(10)イオン・不純物注入拡散工程49・14。(11)レジスト剥離工程。(12)加工されたウエハを検査する検査工程。なお、ウエハプロセッシング工程49・3は、必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
【0224】
図49のフロー図は、上記(6)、(9)及び(10)をまとめて1つのブロック49・14で示し、付加的なウエハ検査工程49・15を含み、更に繰り返し工程をブロック49・16で示す。上記(12) の加工されたウエハを検査する検査工程に本発明の検査装置を用いることにより、微細なパターンを有する半導体デバイスでもスル―プットよく検査でき、全数検査が可能になり、製品の歩留まり向上、欠陥製品の出荷防止が可能である。
【0225】
図50は、図49の製造方法におけるリソグラフィ工程49・13の詳細を示すフロー図である。図50に示すように、リソグラフィ工程49・13は、(13)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストを被覆するレジスト塗布工程50・1、(14)レジストを露光する露光工程50・2、(15)露光されたレジストを現像してレジストパ夕ーンを得る現像工程50・3、(16)現像されたレジストパターンを安定化させるためのアニール工程50・4からなる。なお、半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、及びリソグラフィ工程は、周知のものである。
【0226】
以上に、本発明の好適な実施の形態について説明した。主として図42〜図45を参照して説明したように、本実施の形態では選択的検査が行われる。検査装置の要求される使用用途に応じて、試料の全面のみならず、検査が特に必要なクリティカルな領域のみを選択的に検査することができるため、検査の精度をある一定の水準に保ちながら、検査時間を大幅に短縮することができる。検査したい領域が限られている場合には、所望の領域のみを検査することが可能であるため、効率よく必要な領域のみを検査することができる。
【0227】
また、写像投影方式を採用し、検出器にTDI−CCDを使用しているため、ステージを連続移動させながら検査することが可能である。部分的検査にありがちな、ステップ・アンド・リピートのステージ移動後の振動の影響を気にする必要がなく、全面検査と同じように検査を行える。また、ビームの照射領域が広いため、クリティカルな領域を1回の
ストライプでカバーでき、高スループットと高い検査精度を実現することができる。
【0228】
このようにして、本実施の形態は、高スループットの要求に応え、そして、高い検査精度での検査を可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明に係る検査方法および検査装置は、半導体製造工程等で使用でき、有用である。
【符号の説明】
【0230】
1 ウェーハ
2 ダイ
3 低パターン密度領域
4 高パターン密度領域
5 検査省略領域
6、7、9、10 被検査領域
8 欠陥多発領域
20 ダイ
21 ストライブ・ライン
22 テストパターン
23 メモリ・セル部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面を検査する検査装置であって、
電子線を試料に向けて照射する電子銃と、
該試料を保持する試料ステージと、
該電子ビームの前記試料へ向けた照射によって該試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器と、
該検出器に検出された電子に基づいて試料表面の画像を生成する手段と、
前記電子銃から前記試料ステージへの1次電子光学系と前記試料ステージから前記検出器への2次電子光学系を分離するウィーンフィルタと、
を備え、
前記電子銃から放出された電子線は前記ウィーンフィルタにおいてクロスオーバを形成すると共に、前記試料表面から放出された放出電子は前記ウィーンフィルタにおいてクロスオーバを形成し、前記1次電子光学系と前記2次電子光学系のクロスオーバの位置は、前記ウィーンフィルタ上で異なっていることを特徴とする試料表面検査装置。
【請求項2】
前記2次電子光学系は、前記試料ステージと前記ウィーンフィルタとの間に配置された第1のアパーチャと、前記ウィーンフィルタと前記検出器との間に配置された第2のアパーチャとを備え、
前記第2のアパーチャのサイズは、第1のアパーチャのサイズより大きいことを特徴とする試料表面検査装置。
【請求項3】
前記検出器は、一次電子ビームが試料に衝突する以前に反射したミラー電子を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の試料表面検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の試料表面検査装置を用いて半導体ウェーハの位置決めを行う方法であって、
光学顕微鏡にてウェーハ内に存在するダイの位置決めを行うステップと、
前記光学顕微鏡の倍率を上げて、前記ダイの位置決めを行うステップと、
前記検出器に検出された電子に基づいて生成された試料表面の画像に基づいて前記ダイの位置決めを行うステップと、
を備える位置決め方法。
【請求項1】
試料の表面を検査する検査装置であって、
電子線を試料に向けて照射する電子銃と、
該試料を保持する試料ステージと、
該電子ビームの前記試料へ向けた照射によって該試料の表面の情報を得た電子を検出する検出器と、
該検出器に検出された電子に基づいて試料表面の画像を生成する手段と、
前記電子銃から前記試料ステージへの1次電子光学系と前記試料ステージから前記検出器への2次電子光学系を分離するウィーンフィルタと、
を備え、
前記電子銃から放出された電子線は前記ウィーンフィルタにおいてクロスオーバを形成すると共に、前記試料表面から放出された放出電子は前記ウィーンフィルタにおいてクロスオーバを形成し、前記1次電子光学系と前記2次電子光学系のクロスオーバの位置は、前記ウィーンフィルタ上で異なっていることを特徴とする試料表面検査装置。
【請求項2】
前記2次電子光学系は、前記試料ステージと前記ウィーンフィルタとの間に配置された第1のアパーチャと、前記ウィーンフィルタと前記検出器との間に配置された第2のアパーチャとを備え、
前記第2のアパーチャのサイズは、第1のアパーチャのサイズより大きいことを特徴とする試料表面検査装置。
【請求項3】
前記検出器は、一次電子ビームが試料に衝突する以前に反射したミラー電子を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の試料表面検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の試料表面検査装置を用いて半導体ウェーハの位置決めを行う方法であって、
光学顕微鏡にてウェーハ内に存在するダイの位置決めを行うステップと、
前記光学顕微鏡の倍率を上げて、前記ダイの位置決めを行うステップと、
前記検出器に検出された電子に基づいて生成された試料表面の画像に基づいて前記ダイの位置決めを行うステップと、
を備える位置決め方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−1】
【図14−2】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−1】
【図14−2】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【公開番号】特開2010−272528(P2010−272528A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137983(P2010−137983)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【分割の表示】特願2004−64629(P2004−64629)の分割
【原出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【分割の表示】特願2004−64629(P2004−64629)の分割
【原出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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