説明

走行制御機構

【課題】作業車輌の急発進を有効に防止することができる走行制御機構を提供する。
【解決手段】トラクタ1の始動時において副変速装置19の変速段が所定変速段以上である場合には、制御装置700が始動制御に移行し、トラクタ1のガバナ操作部材(スロットルペダル330及びスロットルレバー141)の操作状態に拘わらず、エンジン出力が最低となるように電子ガバナ機構701が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガバナ機構を有するエンジンと、前記ガバナ機構を人為操作するためのガバナ操作部材と、前記エンジンから駆動輪へ至る走行系伝動経路に介挿されたクラッチ装置及び多段変速装置とを備えた作業車輌に適用される走行制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業車輌に適用された走行制御機構として、ガバナ機構を有するエンジンと、前記ガバナ機構を人為操作するためのガバナ操作部材と、前記エンジンから駆動輪へ至る走行系伝動経路に介挿されたクラッチ装置及び多段変速装置とを備えたものが公知である。
前記ガバナ機構を人為操作するためのガバナ操作部材としては、所定の操作位置でレバー位置が保持される(所定のエンジン出力が保持される)スロットルレバー(ハンドアクセルレバー)及び非操作時には最小出力側(アイドリング側)に自動復帰するスロットルペダル(フートアクセルペダル)を備えているものが公知である(例えば、特許文献1参照)。また、多段変速装置は、当該多段変速装置を人為操作するための変速レバーを用いて人為操作される。
【0003】
このような従来の走行制御機構においては、車輌の始動時(発進時)において、ガバナ操作部材によりエンジン回転数が高回転状態且つ多段変速装置が高速側段に係合している状態でクラッチ装置を係合すると、作業車輌が急発進してしまう問題があった。作業車輌が急発進すると、車輌が前後に揺れて車輌姿勢が不安定となったり、前輪が浮き上がった状態(ウィリー状態)となって操舵不能となったりし易いため、好ましくない。
【特許文献1】特開平9−250365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、作業車輌の急発進を有効に防止することができる走行制御機構の提供を一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明に係る走行制御機構における一の態様は、電子ガバナ機構を有するエンジンと、前記電子ガバナ機構を人為操作するためのガバナ操作部材と、前記ガバナ操作部材への人為操作に応じて前記電子ガバナ機構を作動させる通常制御を行う制御装置と、前記エンジンから駆動輪へ至る走行系伝動系路に介挿されたクラッチ装置及び多段変速装置とを備えた作業車輌に適用される走行制御機構であって、前記多段変速装置の変速段を検出する変速段検出センサを備え、前記制御装置は、前記多段変速装置が所定変速段以上に係合されている状態で車輌停止状態から前記クラッチ装置を係合させて車輌を始動させる際には、前記通常制御に代えて、前記ガバナ操作部材への人為操作に拘わらず前記電子ガバナ機構を強制的に最低出力状態とする始動制御を行うことを特徴とするものである。
【0006】
上記構成の走行制御機構によれば、制御装置による通常制御時には、ガバナ操作部材を人為操作することにより、当該ガバナ操作部材の人為操作に応じてエンジンの電子ガバナ機構が作動して、エンジン出力が制御される。
ここで、車輌停止状態において、変速段検出センサにより検出される多段変速装置の変速段が所定変速段以上に係合されている場合、制御装置は、前記通常制御から始動制御へと移行し、ガバナ操作部材における人為操作位置に関係なく前記電子ガバナ機構が強制的に最低出力状態となる。この結果、クラッチ装置を係合させて車輌を始動させても、エンジン出力が最低出力に保持された状態で車輌が始動(発進)する。
【0007】
このように、車輌の始動時において多段変速装置の変速段が所定変速段以上である場合には、車輌のガバナ操作部材の操作状態に拘わらず、エンジン出力が最低となるように電子ガバナ機構が制御されるため、車輌の急発進を有効に防止することができ、車輌姿勢を安定に保つことができる。
【0008】
好ましくは、前記制御装置は、前記始動制御の実行後に前記ガバナ操作部材が最低出力位置に位置されると前記通常制御に移行する。
【0009】
この場合、始動制御により車輌が始動した後、ガバナ操作部材が最低出力位置に位置するように人為操作されると、制御装置が始動制御から通常制御に移行して、ガバナ操作部材の操作状態に応じてエンジン出力が変更可能に制御される。
このように、ガバナ操作部材を最低出力位置に位置させることをもって始動制御を解除するため、エンジン出力が規制された始動制御から当該規制が解除された通常制御への移行の際に、車速の急激な変化を防止することができ、移行時における車輌姿勢を安定に保つことができる。
【0010】
また、本発明に係る走行制御機構における他の態様は、ガバナ機構を有するエンジンと、前記ガバナ機構を人為操作するためのガバナ操作部材と、前記ガバナ操作部材及び前記ガバナ機構を作動連結する操作リンク機構と、前記エンジンから駆動輪へ至る走行系伝動系路に介挿されたクラッチ装置及び多段変速装置とを備えた作業車輌に適用される走行制御機構であって、前記多段変速装置の変速段を検出する変速段検出センサと、前記ガバナ機構を直接又は間接的に作動させるガバナアクチュエータと、前記変速段検出センサからの信号に基づいて前記ガバナアクチュエータを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記多段変速装置が所定変速段以上に係合されている状態で車輌停止状態から前記クラッチ装置を係合させて車輌を始動させる際には、前記ガバナアクチュエータを作動させて前記ガバナ機構を強制的に最低出力状態とする始動制御を行うことを特徴とするものである。
【0011】
上記構成の走行制御機構によれば、ガバナ操作部材を人為操作することにより、操作リンク機構を介して当該ガバナ操作部材の人為操作に応じてエンジンのガバナ機構が作動して、エンジン出力が変更される。
ここで、車輌停止状態において、変速段検出センサにより検出される多段変速装置の変速段が所定変速段以上に係合されている場合、制御装置は、始動制御を行い、ガバナアクチュエータを作動させる。これにより、ガバナ機構は、直接又は間接的に作動し、強制的に最低出力状態となる。この結果、クラッチ装置を係合させて車輌を始動させても、エンジン出力が最低出力に保持された状態で車輌が始動(発進)する。
【0012】
このように、車輌の始動時において多段変速装置の変速段が所定変速段以上である場合には、制御装置によりガバナアクチュエータが作動して、強制的にエンジン出力が最低となるようにガバナ機構が制御されるため、車輌の急発進を有効に防止することができ、車輌姿勢を安定に保つことができる。
【0013】
好ましくは、前記制御装置は、予め設定された所定時間の経過後、若しくは、予め設定された所定車速への到達後に、前記ガバナアクチュエータを初期状態へ移行させて、前記ガバナ操作部材への人為操作を可能とする。
【0014】
この場合、始動制御により車輌が始動する際、ガバナ機構と作動連結されているガバナ操作部材は、ガバナアクチュエータにより強制的に最低出力位置に位置されている。この状態で始動制御により車輌が始動した後、予め設定された所定時間が経過した場合、若しくは、予め設定された所定車速への到達した場合、制御装置によりガバナアクチュエータが初期状態に移行して、ガバナ操作部材の操作状態に応じてエンジン出力が変更可能となる。
このように、車輌の始動後、所定時間の経過若しくは所定速度への到達をもって始動制御を解除することにより、始動制御解除の際に、発進直後若しくは車速が低い状態においてエンジン出力が変更されることによる車速の急激な変化を防止することができ、移行時における車輌姿勢を安定に保つことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る走行制御機構の一の態様によれば、電子ガバナ機構を有するエンジンを搭載した車輌の始動時において多段変速装置の変速段が所定変速段以上である場合には、車輌のガバナ操作部材の操作状態に拘わらず、エンジン出力が最低となるように電子ガバナ機構が制御されるため、車輌の急発進を有効に防止することができ、車輌姿勢を安定に保つことができる。
また、本発明に係る走行制御機構の他の態様によれば、ガバナ操作部材とガバナ機構とが作動連結された車輌の始動時において多段変速装置の変速段が所定変速段以上である場合には、ガバナアクチュエータにより強制的にエンジン出力が最低となるようにガバナ機構が制御されるため、車輌の急発進を有効に防止することができ、車輌姿勢を安定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る走行制御機構の好ましい実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る走行制御機構が適用されたトラクタ1の左側面図及び右側面図である。また、図3は本発明の第1実施形態に係る走行制御機構が適用されたトラクタ1の伝動機構を示す図である。
【0017】
作業車輌であるトラクタ1は、図1及び図2に示すように、駆動源であるエンジン10からの動力を伝動部20を介して出力部30へ伝達するように構成されている。
本実施の形態においては、前記トラクタ1は、前記出力部30として駆動車軸31及びPTO軸29(図3参照)を有している。
従って、前記伝動部20は、前記エンジン10からの動力を駆動車軸31へ伝達すると共に、前記PTO軸へも伝達するように構成されている。
【0018】
前記伝動部20は、車輌前後方向に沿って連結された前部ハウジングH1、中間ハウジングH2及び後部ハウジングH3を備えている。該前部ハウジングH1、中間ハウジングH2及び後部ハウジングH3は、前記トラクタ1における機体の一部を形成している。前記前部ハウジングH1は、前後方向中間部に一体的に設けられた支壁部1aを有している。また、該前部ハウジングH1は、該前部ハウジングH1のうち、前記支壁部1aより後方に位置する部分を前後にほぼ二分する位置において、該前部ハウジングH1の内部に取付け支持された第1の軸受け枠体4と、前部ハウジングH1の後端に取付け支持された第2の軸受け枠体5とを有する。なお、該第2の軸受け枠体5は、前記中間ハウジングH2の前端に取付け支持させてもよい。前記中間ハウジングH2は前後方向中間部に一体的に設けられた支壁部2aを有している。前記後部ハウジングH3は、前壁3aと、前後方向中間部の支持壁3bと、後端の開口を閉鎖する後蓋3cとを有する。さらに、前記前部ハウジングH1内には、前記エンジン10から駆動輪(駆動車軸31)へ至る走行系伝動系路に介挿されたクラッチ装置2が設けられている。前記クラッチ装置2は、前記エンジン10にフライホイール6を介して作動連結されたクラッチ体7と、前記クラッチ体7の出力側に作動連結された原動軸8とを備えており、当該原動軸8が、前部ハウジングH1内に支持されている。
【0019】
前記クラッチ体7は、運転席近傍に備えられた下記クラッチペダル155の操作に応じて、前記エンジン10から前記原動軸8への動力伝達を係合又は遮断させ得るように構成されている。
前記トラクタ1における走行系伝動機構は、前後進切替え装置3と、高低速切替え装置13と、主変速装置16と、副変速装置19とを備えており、これらの装置は直列接続されている。
前記前後進切替え装置3は、支壁部1a及び第1軸受け枠体4の間において、原動軸8と該原動軸8に平行(図示の形態においては下方)に配置された従動軸9との間に配設されている。前記高低速切替え装置13は、第1軸受け枠体4及び第2軸受け枠体5の間において、従動軸9の延長線上に配置され該従動軸9に連結された駆動軸47と原動軸8の延長線上に配置された中空の従動軸12との間に配設されている。
前記主変速装置16は、中間ハウジング2の前半部内において、従動軸12の延長線上に配置され該従動軸12に連結された中空の駆動軸14と駆動軸47の延長線上に配置された従動軸15との間に配設されている。
前記副変速装置19は、中間ハウジング2の後半部内において、従動軸15及び該従動軸15に作動的に連結された中空のカウンタ軸17と、前記従動軸15の延長線上に配置されたプロペラ軸18との間に配設されている。なお、前記中空カウンタ軸17は、前記駆動軸14の延長線上に配置されている。
前記プロペラ軸18の後端は後部ハウジングH3内に延出させてあり、該後端には、左右後輪用のデファレンシャルギヤ機構の入力傘歯車49に対し噛合される小傘歯車21が設けられている。また、中間ハウジングH2の底部には、副駆動軸である前車軸32へ向けて回転動力を出力する前輪駆動力取出しケース22が装着されている。該前輪駆動力取出ケース22には前輪駆動力取出し軸23が支持されており、該前輪駆動力取出し軸23は、前輪駆動クラッチ24を介して、前記プロペラ軸18に接続されている。
【0020】
前記トラクタにおけるPTO系伝動機構は、前端が原動軸8に対し連結された伝動軸25であって、前記中空従動軸12、中空駆動軸14及び中空カウンタ軸17を貫通する伝動軸25と、該伝動軸25の後端に連結するように、後部ハウジングH3内に設けられた伝動軸26と、該伝動軸26の延長線上に配置された他の伝動軸27と、前記伝動軸26及び伝動軸27の間に配設されたPTOクラッチ28と、前記伝動軸27と平行(図示の形態においては下方)に配設され、後端が後蓋3cから後方に延出されたPTO軸29と、前記伝動軸27及びPTO軸29の間に配設された3段の変速段を有するPTO変速装置50とを備えている。
さらに、前記PTO系伝動機構は、前記プロペラ軸18に作動的に連結された伝動軸31と、該伝動軸51及び前記PTO軸29の間に配設されたグランドPTOクラッチ52とを備えている。
又、後部ハウジングH3の上面には、PTO軸29によって駆動される作業機(図示せず)を昇降させるための、左右のリフトアーム33aを備えた油圧リフト装置33を設置してある。
【0021】
前後進切替え装置3は、原動軸8に遊嵌された2個の歯車34,35と、従動軸9に固定された2個の歯車36,37とを有している。歯車34,36は直接に噛合させ、且つ、歯車35,37は中間のアイドラ歯車(図示せず)を介して噛合されている。
前後進切替え装置3は、さらに、歯車34,35の間において原動軸8に固定設置された前進用油圧クラッチ40F及び後進用油圧クラッチ40Rを有している。前進用油圧クラッチ40F及び後進用油圧クラッチ40Rは、共通のクラッチシリンダ内に設けられる。
各油圧クラッチ40F,40Rは、それぞれ周知の摩擦多板式クラッチとされている。斯かる構成において、前進用油圧クラッチ40Fをクラッチ係合状態として歯車34を原動軸8に作動的に連結させると、従動軸9が車輌前進方向に回転する。逆に、後進用油圧クラッチ40Rをクラッチ係合状態として歯車35を原動軸8に作動的に連結させると、従動軸9が車輌後進方向に回転する。
【0022】
高低速切替え装置13は、駆動軸47に遊嵌された2個の歯車43,44と、従動軸12に固定された2個の歯車45,46とを備えている。前記歯車43,44は、それぞれ、前記歯車45,46と噛合されている。
高低速切替え装置13は、さらに、歯車43,44の間に位置するように、駆動軸47に配設された高速用油圧クラッチ48H及び低速用油圧クラッチ48Lを備えている。
高速用油圧クラッチ48H及び低速用油圧クラッチ48Lは、駆動軸47に固定設置された共通のクラッチシリンダを備えている。
高速用油圧クラッチ48Hは、油圧作動型の摩擦多板式クラッチとされており、低速用油圧クラッチ48Lは、スプリング作動型摩擦多板式クラッチとされている。
【0023】
駆動軸47には、高速用油圧クラッチ48H及び低速用油圧クラッチ48Lに共通させた作動油通路が設けられており、当該作動油通路に圧油を供給した場合としない場合とで高速用油圧クラッチ48H又は低速用油圧クラッチ48Lの何れか一方が択一的に係合される。
【0024】
本実施形態の高低速切替え装置13は、油圧クラッチ48H,48Lに対し油圧を作用させると、高速用油圧クラッチ48Hが係合し且つ低速用油圧クラッチ48Lが解放され、且つ、油圧クラッチ48H,48Lに対し油圧の作用を解除すると、高速用油圧クラッチ48Hが解放され、且つ、低速用油圧クラッチ48Lが係合するように、構成されている。
【0025】
前記主変速装置16は、図1に示すように、駆動軸14に固定された4個の歯車53,54,55,56と、従動軸15に遊嵌された4個の歯車57,58,59,60とを備えている。前記固定歯車53〜56は、対応する前記遊嵌歯車57〜60と噛合されている。
さらに、前記主変速装置16は、歯車57,58間及び歯車59,60間に位置するように従動軸15に設けられた2個の複式同期クラッチ61,62を備えており、歯車57〜60を選択的に従動軸15に結合させることにより、4段の変速を得るように構成されている。
【0026】
前記副変速装置19は、図1に示すように、従動軸15からカウンタ軸17へ減速接続する歯車列64,65と、該カウンタ軸17に固定された2個の歯車66,67と、このうちの小径側の歯車67に対し減速歯車機構68を介し接続された歯車69であって、カウンタ軸17以外に支持された歯車69と、歯車69,67に対し選択的に噛合し得るように、プロペラ軸18に相対回転不能且つ軸方向摺動自在とされたシフト歯車70と、歯車66と噛合するように、プロペラ軸18に遊嵌された歯車71と、歯車71をプロペラ軸18に対し結合する位置とプロペラ軸18を従動軸15に対し直結する位置と中立位置とに操作される複式クラッチ72とを備えている。
斯かる構成の副変速装置19は、複式クラッチ72を中立位置に位置させた状態で歯車69,70を噛合させた1速と、複式クラッチ72を中立位置に位置させた状態で歯車67,70を噛合させた2速と、複式クラッチ72によりプロペラ軸18を歯車71に結合させた3速と、複式クラッチ72によりプロペラ軸18を従動軸15に直結させた4速とに応じた回転速度をプロペラ軸19に選択的に得ることができる。
【0027】
ここで、前記トラクタ1の走行制御機構について説明する。
図4に、本実施形態における走行制御機構の構成図を示す。
また、図5に、エンジンユニットを左後方から視た斜視図を示す。また、図6に、エンジンユニット及び伝動ユニットを右後方から視た斜視図を示す。なお、図5及び図6においては、ダッシュボード部を取り外した状態を示している。
図1,図2,図5及び図6に示すように、エンジンユニットは、前記エンジン10と、ステアリング部110と、ダッシュボード部120と、操作レバー部130と、操作ペダル部150と、ボンネット支持部170と、燃料タンク部180と、前記エンジン10の後面に連結されたダッシュボードステイ100とを有しており、前記ステアリング部110は、前記ダッシュボードステイ100を介して前記エンジン10に支持されている。
【0028】
詳しくは、前記ダッシュボードステイ100は、略垂直且つ車輌幅方向に沿った状態で前記エンジンの後面に連結される取付板101と、略垂直且つ車輌前後方向に沿った状態で前記取付板101から後方側へ延在された左右一対の支持板102a,102bとを有している。
なお、本実施の形態においては、前記取付板101は前記エンジン10より車輌幅方向に幅広とされている。そして、前記取付板101のうち前記エンジン10より車輌幅方向外方へ突出する部分の下端部は、前記エンジン10の両側面にそれぞれ連結された補強板109によって支持されている。
【0029】
前記エンジン10には、図4及び図6に示すように、電子ガバナ機構701が設けられており、電子ガバナ機構701の作動に応じて前記エンジン10の出力(回転数)が変更される。
【0030】
前記ステアリング部110は、図5及び図6に示すように、前記一対の支持板102a,102bの後部寄りの間に連結されたバルブブロック111と、略上下方向に延びるように下端部が前記バルブブロック111に連結された中空のステアリングコラム112と、下端部が前記バルブブロック111に内装されたパワーステアリング用バルブ(図示せず)に作動連結された状態で前記ステアリングコラム112に内挿されたステアリングシャフト113と、前記ステアリングシャフト113の上端部に相対回転不能に連結されたステアリングホイール114とを有している。
【0031】
前記操作ペダル部150は、図5及び図6に示すように、前記ダッシュボードステイ100に支持された中空支持部材151と、両端部が外方へ延在された状態で前記中空支持部材151に内挿されたペダル軸152と、前記ペダル軸152の一端側延在部(図示の形態においては左端部)に相対回転自在に外挿されたクラッチボス153と、前記クラッチボス153に支持されたクラッチアーム154と、前記クラッチアーム154の自由端部に設けられたクラッチペダル155と、前記ペダル軸152の他端側延在部(図示の形態においては右端部)に相対回転不能に外挿された左側ブレーキボス156Lと、前記左側ブレーキボス156Lよりも他端側において前記ペダル軸152に相対回転自在に外挿された右側ブレーキボス156Rと、前記左側ブレーキボス156Lに支持された左側ブレーキアーム157Lと、前記左側ブレーキアーム157Lの自由端部に設けられた左側ブレーキペダル158Lと、前記右側ブレーキボス156Rに支持された右側ブレーキアーム157Rと、前記右側ブレーキアーム157Rの自由端部に設けられた右側ブレーキペダル158Rとを備えている。
【0032】
前記クラッチボス153は、クラッチリンク機構(図示せず)を介して前記クラッチ装置2に作動連結されている。
前記ペダル軸152の一端側延在部のうち前記クラッチボス153より車輌幅方向外方に位置する部分は、左ブレーキリンク機構(図示せず)を介して左ブレーキ機構(図示せず)に作動連結されている。
前記右側ブレーキボス157Rは、右側ブレーキリンク機構(図示せず)を介して右側ブレーキ機構(図示せず)に作動連結されている。
【0033】
前記操作レバー部130は、図4及び図5に示すように、レバーの形態をなす前記前後進切替操作部材131と、前記エンジン10の電子ガバナ機構701を操作するためのガバナ操作部材であるスロットルレバー141と、主変速装置16の変速段を切り替える主変速レバー160と、副変速装置19の変速段を切り替える副変速レバー190とを含んでいる。
【0034】
前記スロットルレバー141は、前記ダッシュボードステイ100に間接的に支持されている。
詳しくは、図6に示すように、前記ダッシュボードステイ100には、スロットルレバーステー140が連結されている。
前記スロットルレバーステー140は、前端部が前記ダッシュボードステイ100の前記取付板101に連結された側板140aと、前記側板140aの後端部から車輌幅方向内方へ延びて前記ダッシュボードステイ100の前記右側の支持板101bに連結された後板140bとを有する平面視略L字状とされている。
【0035】
前記スロットルレバー141は、車輌幅方向に沿った基端部142と、前記基端部142の車輌幅方向外端部から略上方へ延びる把持部143とを有している。
前記基端部142は、車輌幅方向内端部が前記スロットルレバーステー140の前記側板140bに軸線回り回転自在に支持されている。
前記把持部143は、上端部が前記ステアリングホイール114の近傍まで延びている。
また、前記スロットルレバー141の操作量は、後述する作動位置検出機構705により電気信号に変換され、前記電子ガバナ機構701を制御する制御装置700(図4)に送信される。前記電子ガバナ機構701は、電気コード704を通じて前記制御装置700と電気的に接続されている。
【0036】
本実施の形態においては、前記電子ガバナ機構701は、前記スロットルレバー141に加えて、スロットルペダル330によっても操作され得るように構成されている。即ち、本実施形態におけるガバナ操作部材は、前記スロットルレバー141及び前記スロットルペダル330を有する。そして、前記スロットルレバー141及び前記スロットルペダル330は、スロットル操作リンク機構300により連動可能に構成される。
図7に、本実施形態におけるスロットル操作リンク機構300の模式図を示す。また、図8に、図7におけるVIII−VIII断面図を示す。
【0037】
図7及び図8に示すように、前記スロットル操作リンク機構300は、前記スロットルレバー141の基端部142に相対回転不能に設けられたレバー側操作部材301と、前記スロットルレバー141の前記基端部142に対して軸線回り回転自在とされた作動部材305とを備えている。
また、前記作動部材305には、図8に示すように、前記作動部材305の位置(作動角度)を電気的に検出する作動位置検出機構705が設けられている。前記作動位置検出機構705は、前記作動部材305の移動に追従する(図8においては作動部材305に固定された)検出片706と、前記側板140bに対して相対移動不能に固定され、前記検出片706の位置を電気的に検出する検出部707とを有している。
前記作動位置検出機構705で検出された前記作動部材305の作動位置は、電気信号として前記制御装置700へ送られる。
【0038】
前記レバー側操作部材301は、前記スロットルレバーステー140の前記側板140aより車輌幅方向外方において前記スロットルレバー141の基端部142に相対回転不能とされた本体部302と、前記本体部302の周縁から前記側板140aを超えて車輌幅方向内方へ延びる作動片303とを有している。
前記作動片303は、前記側板140aより車輌幅方向内方側に配置された前記作動部材305の一側面(図示の形態のおいては前端面)に係合されている。
【0039】
前記スロットルペダル330は、図7に良く示されるように、車輌幅方向に沿った軸線回り回転自在に支持された基端部331と、前記基端部331からステップ部41の上方へ延在されたロッド部332と、前記ロッド部332の先端部に設けられたペダル部333と、前記基端部に相対回転不能とさされたペダル側アーム部334と、前記基端部331を軸線回り一方側へ付勢する戻しばね335とを有している。
本実施の形態においては、前記戻しばね335は、前記ステップ部41の下方において、一端部が固定され且つ他端部が前記ペダル側アーム部334に連結されている。
前記ペダル側リンク部材315は、前記作動部材305及び前記ペダル側アーム部334の間に延びるペダル側ロッドとを有している。
【0040】
さらに、前記スロットル操作リンク機構300は、図8に示すように、前記スロットルレバーステー140の前記側板140aと前記レバー側操作部材301との間に、摩擦部材320を備えている。
前記摩擦部材320は、前記レバー側操作部材302に対して、前記戻しばね335の付勢力に抗して前記スロットルレバー141の位置を保持し得るような摺動抵抗を生じさせる。
【0041】
斯かる構成の前記スロットル操作リンク機構300は、以下のように作動する。
図7に示すように、前記スロットルペダル330を前記戻しばね335の付勢力に抗して初期位置(例えば、最低出力位置L)から操作位置(例えば、最高出力位置H)へ踏み込み操作すると、前記作動部材305が前記基端部142の軸線(以下、レバー回転中心Rという)回り第1方向R1へ揺動する。この揺動は、前記位置検出機構705により検出され、当該作動部材305の位置が電気信号として前記制御装置700に送られる。前記制御装置700は、電気コード704を介して制御信号を送信し、後述する始動制御時以外においては、検出された前記作動部材305の移動量に応じて前記電子ガバナ機構701を初期位置(最低出力状態)から操作位置(最高出力状態)へ移行させる通常制御を行う。
なお、前記レバー側操作部材301の前記作動片303は、前記レバー回転中心Rを基準にして、前記作動部材305の第2方向側に位置している。
従って、前記スロットルペダル330を踏み込み操作する際には、前記スロットルレバー141は初期位置(最低出力位置L)に位置したままである。
【0042】
前記スロットルペダル330への踏み込み操作を解除すると、前記戻しばね335によって前記スロットルペダル330は操作位置から初期位置へ戻され、前記作動部材305は前記レバー回転中心R回り第2方向R2へ揺動する。この揺動は、前記位置検出機構705により検出され、当該作動部材305の位置が電気信号として前記制御装置700に送られる。前記制御装置700は、電気コード704を介して制御信号を送信し、前記電子ガバナ機構701を初期位置へ戻させる。
なお、前記作動片303は、前記スロットルレバーステー140における前記側板140aに形成された切り欠き内に位置しており、該切り欠きによって前記作動片303の揺動範囲が画されている。従って、前記戻しばね335による付勢力によってレバー回転中心R回り第2方向R2へ揺動する前記作動部材305は、前記作動片303に当接することでレバー回転中心R回り第2方向R2への移動が停止される。
【0043】
これに対し、前記スロットルレバー141を初期位置から操作位置へ揺動操作すると、前記作動片303によって前記作動部材305がレバー回転中心R回り第1方向R1へ揺動する。この揺動は、前記位置検出機構705により検出され、当該作動部材305の位置が電気信号として前記制御装置700に送られる。前記制御装置700は、電気コード704を介して制御信号を送信し、前記電子ガバナ機構701を初期位置から操作位置へ移行させる。
この際、前記スロットルペダル330は、前記戻しばね335の付勢力に抗して、前記ペダル側リンク部材315を介して初期位置から操作位置へ移行している。従って、前記スロットルレバー141は、前記戻しばね335によって初期位置へ戻されようとするが、前述の通り、前記スロットルレバーステー140の前記側板140aと前記レバー側操作部材301との間には前記摩擦部材320が備えられている。
従って、前記スロットルレバー141は、前記摩擦部材320によって操作位置に保持され、前記制御信号は、継続的に送信される。
【0044】
斯かるスロットル操作機構300によれば、以下の効果を奏する。
即ち、後述する通常制御において、前記電子ガバナ機構701を一時的に操作位置(例えば、エンジン10の高出力状態)に位置させたい場合には、前記スロットルペダル330を踏み込み操作することにより、該スロットルペダル330の踏み込み操作時のみ前記電子ガバナ機構701を操作位置に位置させることができる。
これに対し、前記電子ガバナ機構701を継続的に操作位置に位置させたい場合には、前記スロットルレバー141を前記摩擦部材320の摺動抵抗及び前記戻しばね335の付勢力に抗して初期位置から操作位置へ移行させることにより、該スロットルレバー141への操作力解除後も制御装置700より継続的な制御信号が送信されて、前記電子ガバナ機構701を操作位置に保持することができる。
【0045】
ここで、本実施形態における走行制御機構は、図4に示すように、多段変速装置である副変速装置19の変速段を検出する変速段検出センサ702及びトラクタ1の走行速度を検出する速度センサ703を備えている。
そして、前記制御装置700は、前記副変速装置19が所定変速段以上に係合されている状態で車輌停止状態から前記クラッチ装置2を係合させて車輌を始動させる際には、前記通常制御に代えて、前記ガバナ操作部材(スロットルペダル330及び/又はスロットルレバー141)への人為操作に拘わらず前記電子ガバナ機構701を強制的に最低出力状態とする始動制御を行う。
図9に、本実施形態の走行制御機構における制御フローを示す。
【0046】
走行制御機構は、始動制御時以外は前記通常制御を行っている(ステップS11)。
ここで、前記速度センサ703によりトラクタ1が停止したことが検出された場合(ステップS12においてYes)、前記制御装置700は、前記変速段検出センサ702により検出される副変速装置19の変速段が所定の変速段以上に係合されているか否かを判定する(ステップS13)。例えば、副変速装置19における所定の変速段を2速と設定したとき(副変速装置19の変速段が最低速段以外に係合したときに始動制御させる場合)、前記変速段検出センサ702により検出される副変速装置19の変速段が2速、3速及び4速の何れかに係合している場合(ステップS13においてYes)、前記制御装置700は、前記通常制御から始動制御に移行する(ステップS14)。
【0047】
前記始動制御においては、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141における人為操作位置に関係なく前記電子ガバナ機構701が強制的に最低出力状態に保持される。この結果、クラッチ装置2を係合させてトラクタ1を始動させると(ステップS15でYes)、エンジン出力が最低出力に保持された状態でトラクタ1が始動(発進)する。
なお、トラクタ1の始動前に変速段を再変更して所定の変速段未満(例えば、1速)に再係合された場合(ステップS15でNo且つステップS13でNo)、始動制御を実行せず通常制御が行われる。
【0048】
始動制御によりトラクタ1が始動した後、前記制御装置700は、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141が最低出力位置Lに人為操作されるまで前記始動制御を維持する(ステップS16)。
即ち、始動制御によりトラクタ1が始動した後、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141が最低出力位置Lに位置するように人為操作されると(ステップS16でYes)、制御装置700が始動制御から通常制御に移行して、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141の操作状態に応じてエンジン出力が変更可能に制御される。
【0049】
以上のように、本実施形態の走行制御機構においては、トラクタ1の始動時において副変速装置19の変速段が所定変速段以上である場合には、トラクタ1のガバナ操作部材(スロットルペダル330及びスロットルレバー141)の操作状態に拘わらず、エンジン出力が最低となるように制御装置700により電子ガバナ機構701が制御されるため、トラクタ1の急発進を有効に防止することができ、車輌姿勢を安定に保つことができる。
また、ガバナ操作部材(スロットルペダル330及びスロットルレバー141)を最低出力位置Lに位置させることをもって始動制御を解除するため、エンジン出力が規制された始動制御から当該規制が解除された通常制御への移行の際に、車速の急激な変化を防止することができ、移行時における車輌姿勢を安定に保つことができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、前記変速段検出センサ702が検出する多段変速装置を副変速装置19のみとしたが、これに限られず、例えば、前記主変速装置16の変速段及び前記副変速装置19の変速段を検出することとし、前記ステップS13において前記主変速装置16及び副変速装置19の変速段がともに1速(最低速段)であるとき以外は、前記制御装置700に始動制御を行わせることとしてもよい。また、前記高低速切替え装置13の変速段を検出して始動制御の条件に組み込むこととしてもよい。
【0051】
上記第1実施形態においては、エンジン10の出力を変更する機構として前記電子ガバナ機構701を用いたが、これに限られず、前記ガバナ操作部材であるスロットルペダル330及びスロットルレバー141とスロットル操作リンク機構300を介して作動連結されたガバナ機構11を用いることとしてもよい。以下に説明する。
【0052】
図10に、本発明の第2実施形態係る走行制御機構の構成図を示す。また、図11に、本発明の第2実施形態に係る走行制御機構におけるスロットル操作リンク機構300の模式図を示す。また、図12に、図11におけるXII−XII断面図を示す。なお、前記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0053】
図11及び図12に示すように、前記スロットル操作リンク機構300は、前記作動部材305及び前記ガバナ機構11の間を作動連結するガバナ側リンク部材310を備えている。
そして、前記ガバナ側リンク部材310は、前記作動部材305及び前記ガバナ11の間に延びるガバナ側ロッドを有している。
【0054】
斯かる構成の前記スロットル操作リンク機構300は、以下のように作動する。
図11に示すように、前記スロットルペダル330を前記戻しばね335の付勢力に抗して初期位置(例えば、低出力位置L)から操作位置(例えば、高出力位置H)へ踏み込み操作すると、前記作動部材305が前記基端部142の軸線(以下、レバー回転中心Rという)回り第1方向R1へ揺動し、これにより、前記ガバナ側リンク部材310を介して前記ガバナ機構11が初期位置(低出力状態)から操作位置(高出力状態)へ移行する。
なお、前記レバー側操作部材301の前記作動片303は、前記レバー回転中心Rを基準にして、前記作動部材305の第2方向側に位置している。
従って、前記スロットルペダル330を踏み込み操作する際には、前記スロットルレバー141は初期位置(低出力位置L)に位置したままである。
【0055】
前記スロットルペダル330への踏み込み操作を解除すると、前記戻しばね335によって前記スロットルペダル330は操作位置から初期位置へ戻され、前記作動部材305は前記レバー回転中心R回り第2方向R2へ揺動し、これにより、前記ガバナ側リンク部材310を介して前記ガバナ機構11が初期位置へ戻る。
【0056】
ここで、本実施形態における走行制御機構は、図10に示すように、多段変速装置である副変速装置19の変速段を検出する変速段検出センサ702と、トラクタ1の走行速度を検出する速度センサ703と、前記ガバナ機構11を直接又は間接的に作動させるガバナアクチュエータ801と、前記変速段検出センサ702からの信号に基づいて前記ガバナアクチュエータ801を制御する制御装置800とを備えている。
そして、前記制御装置800は、前記副変速装置19が所定変速段以上に係合されている状態で車輌停止状態から前記クラッチ装置2を係合させてトラクタ1を始動させる際には、前記ガバナアクチュエータ801を作動させて前記ガバナ機構11を強制的に最低出力状態とする始動制御を行う。
図13に、本実施形態の走行制御機構における制御フローの一例を示す。
【0057】
走行制御機構は、始動制御時以外は前記ガバナアクチュエータ801が前記ガバナ機構11に介入しない通常制御を行っている(ステップS21)。
ここで、前記速度センサ703によりトラクタ1が停止したことが検出された場合(ステップS22においてYes)、前記制御装置800は、前記変速段検出センサ702により検出される副変速装置19の変速段が所定の変速段以上に係合されているか否かを判定する(ステップS23)。例えば、副変速装置19における所定の変速段を2速と設定したとき(副変速装置19の変速段が最低速段以外に係合したときに始動制御させる場合)、前記変速段検出センサ702により検出される副変速装置19の変速段が2速、3速及び4速の何れかに係合している場合(ステップS23においてYes)、前記制御装置800は、前記通常制御から始動制御に移行する(ステップS24)。
【0058】
前記始動制御においては、前記ガバナアクチュエータ801を作動させて前記ガバナ機構11が強制的に最低出力状態となるように作動する。より詳しくは、例えば、前記ガバナアクチュエータ801が、前記ガバナ機構11が最低出力状態に位置した状態で当該ガバナ機構11の移動を規制する位置に移動する。この結果、クラッチ装置2を係合させてトラクタ1を始動させると(ステップS25でYes)、エンジン出力が最低出力に保持された状態でトラクタ1が始動(発進)する。
なお、トラクタ1の始動前に変速段を再変更して所定の変速段未満(例えば、1速)に再係合された場合(ステップS25でNo及びステップS23でNo)、始動制御を実行せず通常制御が行われる。
また、始動制御時においては、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141を人為操作しようとしても、前記ガバナアクチュエータ801の介入により、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141は最低出力位置Lからの移動が制限される(最低出力位置Lに保持される)。
【0059】
始動制御によりトラクタ1が始動した後、前記制御装置800は、前記速度検出センサ703により予め設定された所定車速への到達を検出するまで前記始動制御を維持する(ステップS26)。
即ち、始動制御によりトラクタ1が始動した後、前記速度検出センサ703により予め設定された所定車速に到達すると(ステップS26でYes)、制御装置800が始動制御から通常制御に移行して、前記ガバナアクチュエータ801の作動が解除され、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141の操作状態に応じて前記ガバナ機構11が作動して、エンジン出力が変更可能となる。
【0060】
以上のように、本実施形態の走行制御機構においては、トラクタ1の始動時において副変速装置19の変速段が所定変速段以上である場合には、制御装置800によりガバナアクチュエータ801が作動して、強制的にエンジン出力が最低となるようにガバナ機構11が制御されるため、トラクタ1の急発進を有効に防止することができ、車輌姿勢を安定に保つことができる。
また、トラクタ1の始動後、所定速度への到達をもって始動制御を解除することにより、始動制御解除の際に、発進直後若しくは車速が低い状態においてエンジン出力が変更されることによる車速の急激な変化を防止することができ、移行時における車輌姿勢を安定に保つことができる。
【0061】
また、本実施形態における走行制御機構においては、図10に示すように、車輌停止状態からの走行時間を計測可能なタイマ802を設けることにより、走行開始後予め設定された所定時間の経過を始動制御の解除条件として設定することも可能である。
図14に、本実施形態の走行制御機構における制御フローの他の例を示す。
始動制御によるトラクタ1の始動(ステップS31〜ステップS35)までは、図12における前記ステップS21〜前記ステップS25と同様である。
【0062】
前記始動制御によるトラクタ1の始動に伴い、前記制御装置800は、前記タイマ802による計測を開始する(ステップS36)。
【0063】
始動制御によりトラクタ1が始動した後(即ち、前記タイマ802による計測を開始した後)、前記制御装置800は、前記タイマ802により予め設定された所定時間が経過するするまで、前記始動制御を維持する(ステップS37)。
即ち、始動制御によりトラクタ1が始動した後、前記タイマ802により予め設定された所定時間に到達すると(ステップS37でYes)、制御装置800は、計測時間をリセットした上で(ステップS38)、始動制御から通常制御に移行して、前記ガバナアクチュエータ801の作動が解除され、前記スロットルペダル330及びスロットルレバー141の操作状態に応じて前記ガバナ機構11が作動して、エンジン出力が変更可能となる。
【0064】
このように、トラクタ1の始動後、所定時間の経過をもって始動制御を解除することとしても、始動制御解除の際に、発進直後若しくは車速が低い状態においてエンジン出力が変更されることによる車速の急激な変化を防止することができ、移行時における車輌姿勢を安定に保つことができる。
【0065】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る走行制御機構が適用されたトラクタの左側面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る走行制御機構が適用されたトラクタの右側面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る走行制御機構が適用されたトラクタの伝動機構を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態における走行制御機構の構成図である。
【図5】図5は、エンジンユニットを左後方から視た斜視図である。
【図6】図6は、エンジンユニット及び伝動ユニットを右後方から視た斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態におけるスロットル操作リンク機構の模式図である。
【図8】図8は、図7におけるVIII−VIII断面図である。
【図9】図9は、本実施形態の走行制御機構における制御フローである。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態係る走行制御機構の構成図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態に係る走行制御機構におけるスロットル操作リンク機構の模式図である。
【図12】図12は、図11におけるXII−XII断面図である。
【図13】図13は、本実施形態の走行制御機構における制御フローの一例である。
【図14】図14は、本実施形態の走行制御機構における制御フローの他の例である。
【符号の説明】
【0067】
1 トラクタ(作業車輌)
2 クラッチ装置
10 エンジン
11 ガバナ機構
19 副変速装置(多段変速装置)
141 スロットルレバー(ガバナ操作部材)
300 操作リンク機構
330 スロットルペダル(ガバナ操作部材)
700,800 制御装置
701 電子ガバナ機構
702 変速段検出センサ
801 ガバナアクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ガバナ機構を有するエンジンと、前記電子ガバナ機構を人為操作するためのガバナ操作部材と、前記ガバナ操作部材への人為操作に応じて前記電子ガバナ機構を作動させる通常制御を行う制御装置と、前記エンジンから駆動輪へ至る走行系伝動系路に介挿されたクラッチ装置及び多段変速装置とを備えた作業車輌に適用される走行制御機構であって、
前記多段変速装置の変速段を検出する変速段検出センサを備え、
前記制御装置は、前記多段変速装置が所定変速段以上に係合されている状態で車輌停止状態から前記クラッチ装置を係合させて車輌を始動させる際には、前記通常制御に代えて、前記ガバナ操作部材への人為操作に拘わらず前記電子ガバナ機構を強制的に最低出力状態とする始動制御を行うことを特徴とする走行制御機構。
【請求項2】
前記制御装置は、前記始動制御の実行後に前記ガバナ操作部材が最低出力位置に位置されると前記通常制御に移行することを特徴とする請求項1に記載の走行制御機構。
【請求項3】
ガバナ機構を有するエンジンと、前記ガバナ機構を人為操作するためのガバナ操作部材と、前記ガバナ操作部材及び前記ガバナ機構を作動連結する操作リンク機構と、前記エンジンから駆動輪へ至る走行系伝動系路に介挿されたクラッチ装置及び多段変速装置とを備えた作業車輌に適用される走行制御機構であって、
前記多段変速装置の変速段を検出する変速段検出センサと、前記ガバナ機構を直接又は間接的に作動させるガバナアクチュエータと、前記変速段検出センサからの信号に基づいて前記ガバナアクチュエータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記多段変速装置が所定変速段以上に係合されている状態で車輌停止状態から前記クラッチ装置を係合させて車輌を始動させる際には、前記ガバナアクチュエータを作動させて前記ガバナ機構を強制的に最低出力状態とする始動制御を行うことを特徴とする走行制御機構。
【請求項4】
前記制御装置は、予め設定された所定時間の経過後、若しくは、予め設定された所定車速への到達後に、前記ガバナアクチュエータを初期状態へ移行させて、前記ガバナ操作部材への人為操作を可能とすることを特徴とする請求項3に記載の走行制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−47044(P2009−47044A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212892(P2007−212892)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】