説明

車両のブレーキ制御装置

【課題】エンジンの吸気負圧を低く抑制しつつ、必要な液圧をホイールシリンダに供給できる車両のブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御スロットルによって目標吸気負圧に制御されるエンジンの吸気負圧を用いてブレーキ操作力を倍力するマスタバックと、該マスタバックで倍力された操作力によってマスタシリンダ圧を発生させるマスタシリンダと、ブレーキ液圧を昇圧するポンプとを備えたブレーキ油圧回路において、前記マスタバックの負圧室の負圧(ブースタ負圧)が大気圧に近いほど小さな閾値を設定し、そのときの要求制動力が前記閾値を超えた場合には、マスタシリンダ圧による制動からポンプアップ圧による制動に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気負圧を利用してブレーキ操作力を倍力する負圧倍力装置を備えると共に、前記吸気負圧を目標圧に制御する手段を備えた車両のブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸気バルブのリフト特性を連続的に変更可能な可変動弁機構と、吸気系の吸入負圧を調整可能な負圧調整弁と、吸気系内の吸入負圧が導入されたマスタバック(負圧倍力装置)と、を備えた車両において、前記マスタバック内に蓄えられた負圧が所定値以下になった場合に、吸気系の吸入負圧を増大させることが開示されている。
特許文献2には、マスタシリンダ液圧に対応する車両の所期減速度と、実際の減速度とのずれ量に基づいて、マスタシリンダ液圧にアシスト液圧を付加すること、また、ブレーキブースタの倍力限界点以降においてもブレーキ操作力が倍力限界点以前と同様に倍力されるように、マスタシリンダ液圧にアシスト液圧を付加すること、が開示されている。
【特許文献1】特開2005−163634号公報
【特許文献2】特開2006−168412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1のものでは、マスタバック内に蓄えられた負圧が低下すると、制動要求の有無や制動力の要求とは無関係に、吸気通路の開口面積を大きく絞って負圧(吸気管負圧)を発生させ、マスタバック内の負圧を増大させようとするので、ポンピングロスが大きく、燃費の悪化を招くという問題があった。
尚、本願において、負圧の低下は、大気圧よりも低い圧力が大気圧に近づくことを示すものとする。
【0004】
また、前記特許文献2のものは、ブレーキブースタに対して必要な負圧を供給した状態でのホイールシリンダ圧の不足分を、ポンプから供給する液圧で補うものであり、エンジンの吸気負圧(吸気管負圧)を低く抑制するものではないから、ポンピングロスによる燃費悪化を抑止できない。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、エンジンの吸気負圧を低く抑制しつつ、必要な液圧をホイールシリンダに供給できる車両のブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明では、吸気絞り量を制御して目標吸気負圧を発生させる手段を備えたエンジンを搭載する車両のブレーキ制御装置であって、前記エンジンの吸気負圧を利用してブレーキ操作力を倍力する負圧倍力手段と、前記負圧倍力手段で倍力されたブレーキ操作力に応じて第1液圧を発生させる第1液圧発生手段と、ポンプによって第2液圧を発生させる第2液圧発生手段と、を備え、要求制動力が閾値よりも小さい場合に、前記第1液圧をホイールシリンダに供給し、前記要求制動力が閾値以上である場合に、前記第1液圧から切り替えて前記第2液圧を前記ホイールシリンダに供給するようにすると共に、前記閾値をエンジンの吸気負圧の発生状態に応じて設定するようにした。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によると、例えば、エンジンの吸気負圧を低く抑制すると、第1液圧が低くなるが、この低い第1液圧で要求制動力を発生させることができるか否かが、吸気負圧の発生状態に応じて設定される閾値と要求制動力との比較に基づいて判断される。
そして、第1液圧で要求制動力を発生させることができる場合には、第1液圧をホイールシリンダに供給する一方、第1液圧で要求制動力を発生させることができない場合には、第1液圧に代えてポンプ(オイルポンプ)によって発生させられる第2液圧をホイールシリンダに供給し、要求制動力が得られるようにする。
【0007】
即ち、吸気負圧の発生状態及び要求制動力に応じて、第1液圧と第2液圧とのいずれかに切り替えられ、たとえ吸気負圧が低く第1液圧が低く制限される場合であっても、要求制動力を発生させることができるから、吸気負圧の制限によってポンピングロスを低減しつつ、必要な制動力を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用エンジン及び車両用のブレーキ制御装置の構成を示す図である。
図1に示すエンジン101は、内燃機関であり、詳細には、火花点火式のガソリン機関である。
【0009】
前記エンジン101の吸気管102には、スロットルモータ103aでスロットルバルブ103bを開閉駆動する電子制御スロットル104が介装される。
そして、前記電子制御スロットル104及び吸気バルブ105を介して、燃焼室106内に空気が吸入される。
燃料は、各気筒の吸気ポート102Aに配設された燃料噴射弁130から噴射される。
【0010】
燃焼排気は、燃焼室106から排気バルブ107を介して排出され、フロント触媒コンバータ108及びリア触媒コンバータ109で浄化された後、大気中に放出される。
前記排気バルブ107は、排気カムシャフト110に軸支されたカム111によって一定のバルブリフト量,バルブ作動角及びバルブタイミングを保って開閉駆動される。
一方、吸気バルブ105は、可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113によって、バルブリフト量及びバルブ作動角、更に、バルブ作動角の中心位相が連続的に変えられるようになっている。
【0011】
マイクロコンピュータを内蔵するエンジンコントロールユニット(ECU)114は、目標吸入空気量及び目標吸気負圧が得られるように、スロットルバルブ103bの目標開度及び吸気バルブ105の目標開特性を設定し、これらの目標に基づいて前記電子制御スロットル104,可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113を制御する。
【0012】
具体的には、前記可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113による吸気バルブ105の開特性の制御によって、エンジン101の吸入空気量を制御し、前記電子制御スロットル104で吸気負圧の発生を制御する。
即ち、前記電子制御スロットル104による吸気負圧の発生は、吸入空気量を制御するためのものではなく、エンジン101の吸気負圧(吸気管負圧)を用いる機器(後述するマスタバック132aや蒸発燃料処理装置やブローバイガス処理装置など)に対して負圧を供給するためのものである。
【0013】
従って、上記エンジン101によると、吸気負圧の低い条件下で運転し、燃費性能・出力性能の向上を図ることができる。
前記エンジンコントロールユニット114には、アクセル開度ACCを検出するアクセルペダルセンサ116、吸入空気量QAを検出するエアフローセンサ115、クランクシャフト120の角度信号POSを出力するクランク角センサ117、スロットルバルブ103bの開度TVOを検出するスロットルセンサ118、エンジン101の冷却水温度TWを検出する水温センサ119、エンジン101の吸気負圧(吸気管負圧)PBを検出する吸気圧センサ142等からの検出信号が入力される。
【0014】
前記クランク角センサ117からの角度信号POSに基づいて、前記エンジンコントロールユニット114でエンジン回転速度NEが算出される。
また、前記エンジン101には、燃料タンク133にて発生した蒸発燃料を、蒸発燃料通路134を介してキャニスタ135に一時的に吸着させ、キャニスタ135から脱離させた蒸発燃料を、パージ制御弁136を備えたパージ通路137を介してスロットルバルブ103b下流の吸気通路に吸引させる、蒸発燃料処理装置が備えられている。
【0015】
更に、前記エンジン101には、クランクケース内に溜まるブローバイガスを、PCV(ポジティブ・クランクケースベンチレーテッド・バルブ)138が介装されるブローバイガスパージ通路139を介してスロットルバルブ103b下流の吸気通路に吸引させ、スロットルバルブ103b上流の新気を、新気通路140を介してシリンダヘッドを経由してクランクケース内に導入するブローバイガス処理装置が備えられている。
【0016】
一方、前記エンジン101の吸気負圧(吸気管負圧)を利用してブレーキ操作力を倍力するマスタバック(負圧倍力装置)132aを含んでなるブレーキ油圧回路が設けられている。
前記ブレーキ油圧回路は、ブレーキペダル131の操作力を倍力する負圧倍力手段としてのマスタバック132a(ブレーキブースタ)と、該マスタバック132aで倍力された操作力に応じてマスタシリンダ圧(第1液圧)を発生するタンデム型のマスタシリンダ203(第1液圧発生手段)と、前記マスタシリンダ圧を各ホイールシリンダ204〜207に供給する油圧ユニット202とから構成される。
【0017】
前記マスタバック132aには、前記スロットルバルブ103b下流の吸気負圧が、負圧導入管132cを介して導入されるようになっており、前記負圧導入管132cの途中には、チェックバルブ210が介装されている。
マイクロコンピュータを内蔵し、前記油圧ユニット202に含まれる電磁弁及びモータを制御するブレーキコントロールユニット(BCU)201には、前記マスタバック132aの負圧室の負圧(ブースタ負圧)BNPを検出する負圧センサ132b(負圧検出手段)、前記ブレーキペダル131のストローク量BSを検出するブレーキペダルセンサ208、前記マスタシリンダ圧MCPを検出する液圧センサ209などからの信号が入力される。
【0018】
前記エンジンコントロールユニット114とブレーキコントロールユニット201とは、通信回路211によって相互通信可能に接続されており、各種センサの検出結果などを相互に送受信する。
図2〜図4は、前記可変バルブリフト機構(VEL)112の構造を詳細に示すものである。
【0019】
図2〜図4に示す可変バルブリフト機構は、一対の吸気バルブ105,105と、シリンダヘッド11のカム軸受14に回転自在に支持された中空状の吸気カムシャフト13と、該吸気カムシャフト13に軸支された回転カムである2つの偏心カム15,15(駆動カム)と、前記吸気カムシャフト13の上方位置に同じカム軸受14に回転自在に支持された制御軸16と、該制御軸16に制御カム17を介して揺動自在に支持された一対のロッカアーム18,18と、各吸気バルブ105,105の上端部にバルブリフター19,19を介して配置された一対のそれぞれ独立した揺動カム20,20と、を備えている。
【0020】
前記偏心カム15,15とロッカアーム18,18とは、リンクアーム25,25によって連係され、ロッカアーム18,18と揺動カム20,20とは、リンク部材26,26によって連係されている。
上記ロッカアーム18,18,リンクアーム25,25,リンク部材26,26が伝達機構を構成する。
【0021】
前記偏心カム15は、図5に示すように、略リング状を呈し、小径なカム本体15aと、該カム本体15aの外端面に一体に設けられたフランジ部15bとからなり、内部軸方向にカム軸挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xが吸気カムシャフト13の軸心Yから所定量だけ偏心している。
また、前記偏心カム15は、吸気カムシャフト13に対し前記バルブリフター19に干渉しない両外側にカム軸挿通孔15cを介して圧入固定されていると共に、カム本体15aの外周面15dが同一のカムプロフィールに形成されている。
【0022】
前記ロッカアーム18は、図4に示すように、略クランク状に屈曲形成され、中央の基部18aが制御カム17に回転自由に支持されている。
また、基部18aの外端部に突設された一端部18bには、リンクアーム25の先端部と連結するピン21が圧入されるピン孔18dが貫通形成されている一方、基部18aの内端部に突設された他端部18cには、各リンク部材26の後述する一端部26aと連結するピン28が圧入されるピン孔18eが形成されている。
【0023】
前記制御カム17は、円筒状を呈し、制御軸16外周に固定されていると共に、図2に示すように軸心P1位置が制御軸16の軸心P2からαだけ偏心している。
前記揺動カム20は、図2及び図6,図7に示すように略横U字形状を呈し、略円環状の基端部22に吸気カムシャフト13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔22aが貫通形成されていると共に、ロッカアーム18の他端部18c側に位置する端部23にピン孔23aが貫通形成されている。
【0024】
また、揺動カム20の下面には、基端部22側の基円面24aと該基円面24aから端部23端縁側に円弧状に延びるカム面24bとが形成されており、該基円面24aとカム面24bとが、揺動カム20の揺動位置に応じて各バルブリフター19の上面所定位置に当接するようになっている。
即ち、図8に示すバルブリフト特性からみると、図2に示すように基円面24aの所定角度範囲θ1がベースサークル区間になり、カム面24bの前記ベースサークル区間θ1から所定角度範囲θ2が所謂ランプ区間となり、更に、カム面24bのランプ区間θ2から所定角度範囲θ3がリフト区間になるように設定されている。
【0025】
また、前記リンクアーム25は、円環状の基部25aと、該基部25aの外周面所定位置に突設された突出端25bとを備え、基部25aの中央位置には、前記偏心カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合穴25cが形成されている一方、突出端25bには、前記ピン21が回転自在に挿通するピン孔25dが貫通形成されている。
更に、前記リンク部材26は、所定長さの直線状に形成され、円形状の両端部26a,26bには前記ロッカアーム18の他端部18cと揺動カム20の端部23の各ピン孔18d,23aに圧入した各ピン28,29の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔26c,26dが貫通形成されている。尚、各ピン21,28,29の一端部には、リンクアーム25やリンク部材26の軸方向の移動を規制するスナップリング30,31,32が設けられている。
【0026】
上記構成において、制御軸16の軸心P2と制御カム17の軸心P1との位置関係によって、図6,7に示すように、バルブリフト量が変化することになり、前記制御軸16を回転駆動させることで、制御カム17の軸心P1に対する制御軸16の軸心P2の位置を変化させる。
前記制御軸16は、図10に示すような構成により、DCサーボモータ(アクチュエータ)121によって所定回転角度範囲内で回転駆動されるようになっており、前記制御軸16の作動角を前記アクチュエータ121で変化させることで、吸気バルブ105のバルブリフト量及びバルブ作動角が連続的に変化する(図9参照)。
【0027】
図10において、DCサーボモータ121は、その回転軸が制御軸16と平行になるように配置され、回転軸の先端には、かさ歯車122が軸支されている。
一方、前記制御軸16の先端に一対のステー123a,123bが固定され、一対のステー123a,123bの先端部を連結する制御軸16と平行な軸周りに、ナット124が揺動可能に支持される。
【0028】
前記ナット124に噛み合わされるネジ棒125の先端には、前記かさ歯車122に噛み合わされるかさ歯車126が軸支されており、DCサーボモータ121の回転によってネジ棒125が回転し、該ネジ棒125に噛み合うナット124の位置が、ネジ棒125の軸方向に変位することで、制御軸16が回転されるようになっている。
ここで、ナット124の位置をかさ歯車126に近づける方向が、バルブリフト量が小さくなる方向で、逆に、ナット124の位置をかさ歯車126から遠ざける方向が、バルブリフト量が大きくなる方向となっている。
【0029】
前記制御軸16の先端には、図10に示すように、制御軸16の角度位置APを検出する角度センサ127が設けられており、該角度センサ127で検出される実際の角度位置が目標角度位置に一致するように、前記エンジンコントロールユニット114が前記DCサーボモータ121の操作量(通電量及び通電方向)をフィードバック制御する。
尚、可変バルブリフト機構(VEL)112の構造は、上記のものに限定されない。
【0030】
図11は、前記可変バルブタイミング機構(VTC)113の構造を示す。
本実施形態の可変バルブタイミング機構113は油圧式機構であり、クランクシャフト120によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、吸気カムシャフト13の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を所定位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
【0031】
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈する4つの隔壁部63が、それぞれハウジング56の周方向に沿って90°間隔で突設されている。
【0032】
前記回転部材53は、吸気カムシャフト13の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
【0033】
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の最大遅角側の回動位置(基準作動状態)において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
【0034】
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送する機関駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に略放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
【0035】
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記ECU114は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、デューティ制御信号に基づいて制御することで、吸気バルブ105の作動角の中心位相を制御する。
【0036】
例えば、電磁アクチュエータ99にオンデューティ0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出される。
従って、遅角側油圧室83の内圧が高、進角側油圧室82の内圧が低となって、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相が遅角される。
【0037】
一方、電磁アクチュエータ99にオンデューティ100%の制御信号(ON信号)を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
このため、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相が進角される。
【0038】
このように、ベーン78a〜78dがハウジング56内で相対回転できる範囲で、吸気カムシャフト13のクランクシャフト120に対する位相が最遅角位置から最進角位置までの間で連続的に変化し、吸気バルブ105の作動角の中心位相が連続的に変化するものである。
尚、可変バルブタイミング機構113としては、上記のように油圧を用いる機構の他、特開2003−129806号公報や特開2001−241339号公報に開示されるように、カムシャフトにブレーキトルクを作用させる可変バルブタイミング機構を用いることができる。
【0039】
更に、特開2007−262914号公報に開示されるような電動モータを駆動源とする可変バルブタイミング機構であってもよい。
図12は、前記ブレーキ油圧回路における油圧ユニット202の詳細を示す図である。
図12に示す油圧ユニット202では、前記マスタシリンダ203から左右の前輪FR,FLそれぞれのホイールシリンダ204,205に接続される、2つの独立したマスタシリンダ圧供給配管2001A,2001Bが設けられており、前記マスタシリンダ圧供給配管2001A,2001Bには、それぞれに遮断弁2002A,2002Bが介装されている。
【0040】
また、モータ2003で駆動されるポンプ2004が設けられ、該ポンプ2004は、吸込口からリザーバタンク2018内のブレーキ液を吸い込み、昇圧して吐出する(第2液圧発生手段)。前記ポンプ2004は、例えばプランジャ又はギアポンプである。
前記ポンプ2004の吐出口と、ホイールシリンダ204,205,206,207それぞれへのポンプアップ圧の供給を制御するIN弁2005A〜2005Dの一方のポートとが、ポンプアップ圧供給配管2006によって接続されている。
【0041】
前記ポンプアップ圧供給配管2006は、前記ポンプ2004の吐出口の下流側で2つに分岐し、分岐後の配管が更に2つに分岐して、IN弁2005A〜2005Dの一方のポートにそれぞれ接続される。
前記ポンプアップ圧供給配管2006の最初の分岐点Xの下流側には、IN弁2005A〜2005Dに向けての流れのみを許容するチェックバルブ2007A,2007Bが介装されている。
【0042】
前記IN弁2005A〜2005Dの他方のポートと、ホイールシリンダ204,205,206,207からの液圧のリリーフを制御するOUT弁2020A〜2020Dの一方のポートとが、それぞれに第1給排配管2008A〜2008Dによって接続されている。
そして、前記OUT弁2020A〜2020Dの他方のポートは、前記ポンプ2004吸込口とリザーバタンク2018とを接続するリザーバ配管2009に接続されている。
【0043】
更に、第1給排配管2008A,2008Bの途中と、前記遮断弁2002A,2002Bの下流側の前記マスタシリンダ圧供給配管2001A,2001Bとをそれぞれに接続する第2給排配管2010A,2010Bが設けられる。
また、給排配管2008C,2008Dの途中と、左右の後輪RR,RLそれぞれのホイールシリンダ206,207とを接続するポンプアップ圧給排配管2011A,2011Bが設けられている。
【0044】
また、前記ポンプ2004の吐出口の直後のポンプアップ圧供給配管2006と、前記ポンプ2004の吸込口の直前の前記リザーバ配管2009とを接続するリリーフ配管2012が設けられ、前記リリーフ配管2012には、ポンプ吐出側の液圧が設定圧を超えたときに開弁するリリーフバルブ2013が介装されている。
尚、前記遮断弁2002A,2002B及びOUT弁2020C,2020Dは、スプリングによって開弁方向に付勢され、電磁コイルへの通電によって閉弁する電磁弁であり、前記IN弁2005A〜2005D及びOUT弁2020A,2020Bは、スプリングによって閉弁方向に付勢され、電磁コイルへの通電によって開弁する電磁弁である。
【0045】
前記ホイールシリンダ204,205,206,207には、ホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ2015A〜2015D(液圧検出手段)がそれぞれに設けられており、前記ホイールシリンダ圧センサ2015A〜2015Dの検出信号(ホイールシリンダ圧信号)は、前記ブレーキコントロールユニット201に入力される。
上記構成において、左右の後輪RR,RLそれぞれのホイールシリンダ206,207に対して、マスタシリンダ圧を供給する経路は設けられておらず、ホイールシリンダ206,207に対しては、ポンプ2004によって生成されるポンプアップ圧(第2液圧)が供給される。
【0046】
ホイールシリンダ206,207に対するポンプアップ圧の給排を制御するIN弁2005C,2005D及びOUT弁2020C,2020Dに対する非通電状態では、IN弁2005C,2005Dが閉状態、OUT弁2020C,2020Dが開状態となる。
この場合、ポンプ2004からのポンプアップ圧は、前記IN弁2005C,2005Dで遮断される一方、OUT弁2020C,2020Dが開状態であるため、ホイールシリンダ206,207とリザーバタンク2018とがOUT弁2020C,2020Dを介して連通するようになり、ホイールシリンダ206,207の液圧は、リザーバタンク2018にリリーフされて、ホイールシリンダ206,207の液圧(ホイールシリンダ圧)が低下する。
【0047】
一方、IN弁2005C,2005D及びOUT弁2020C,2020Dに対する通電状態では、IN弁2005C,2005Dが開状態、OUT弁2020C,2020Dが閉状態となる。
この場合、ポンプ2004からのポンプアップ圧は、前記IN弁2005C,2005Dを介してホイールシリンダ206,207に供給される一方、ホイールシリンダ206,207とリザーバタンク2018との接続がOUT弁2020C,2020Dで遮断されるため、ホイールシリンダ206,207の液圧(ホイールシリンダ圧)が増加する。
【0048】
更に、IN弁2005C,2005Dを非通電とし、OUT弁2020C,2020Dに対して通電すると、IN弁2005C,2005Dが閉状態となり、OUT弁2020C,2020Dも閉状態となるから、ポンプアップ圧のホイールシリンダ206,207に対する給排が止められ、ホイールシリンダ圧が保持されることになる。
一方、左右の前輪FR,FLそれぞれのホイールシリンダ204,205に対しては、マスタシリンダ圧とポンプアップ圧との一方を選択的に供給できるようになっている。
【0049】
即ち、前記IN弁2005A,2005B及びOUT弁2020A,2020Bに対する非通電状態では、前記IN弁2005A,2005B及びOUT弁2020A,2020Bが共に閉状態となり、このときに、遮断弁2002A及び2002Bも非通電とすれば、マスタシリンダ圧がホイールシリンダ204,205に対して供給されることになる。
【0050】
一方、遮断弁2002A及び2002Bに通電すれば、遮断弁2002A及び2002Bが閉状態になって、ホイールシリンダ204,205に対するマスタシリンダ圧の供給が断たれる。
この遮断弁2002A,2002Bへの通電状態(閉弁状態)で、OUT弁2020A,2020Bを非通電、IN弁2005A,2005Bを通電状態にすると、OUT弁2020A,2020Bが閉弁し、IN弁2005A,2005Bが開弁することで、ポンプアップ圧がホイールシリンダ204,205に供給されるようになる。
【0051】
また、遮断弁2002A,2002Bへの通電状態(閉弁状態)で、IN弁2005A,2005Bを非通電、OUT弁2020A,2020Bを通電状態にすると、IN弁2005A,2005Bが閉弁し、OUT弁2020A,2020Bが開弁することで、ポンプアップ圧がホイールシリンダ204,205からリリーフされる。
更に、遮断弁2002A,2002Bへの通電状態(閉弁状態)で、IN弁2005A,2005B及びOUT弁2020A,2020Bを非通電とすれば、ポンプアップ圧のホイールシリンダ204,205に対する給排が停止されることで、ホイールシリンダ圧が保持される。
【0052】
次に、前記エンジンコントロールユニット114によるエンジン制御を、図13のフローチャートに従って説明する。
ステップS1001では、各種信号の読込みを行う。
具体的には、アクセル開度ACC、エンジン回転速度NE、吸入空気量QA、吸気負圧PB、ブースタ負圧BNPなどを読み込む。
【0053】
ステップS1002では、目標吸気負圧(目標吸気管負圧)の設定を行う(負圧制御手段)。
エンジン101の燃費性能・出力性能を考慮すると、吸気負圧(吸気管負圧)はなるべく小さい(なるべく大気圧に近い)ことが望まれる。
これは、吸気負圧(吸気管負圧)が大きいと、ポンピングロスが大きくなり、燃費悪化を招き、また、加速前の吸気負圧が大きいと、加速後の吸気負圧にまで低下させる分だけ空気を、スロットルバルブ103bと吸気バルブ105との間に充填することになり、シリンダ空気量の増大遅れが生じるためである。
【0054】
そこで、後述するように、エンジンコントロールユニット114は、必要な時に必要な大きさの吸気負圧を発生させるようにして、燃費性能・出力性能の改善を図る。
具体的には、下記複数条件のうちの1つが成立した場合には、その成立条件で要求される吸気負圧を目標吸気負圧とし、下記複数条件のうちの複数が同時に成立した場合には、各成立条件それぞれから要求される複数の目標吸気負圧のうちの最大値を選択し、下記複数条件のいずれもが非成立の場合には、目標吸気負圧を0mmHg(大気圧)又は大気圧近傍とする。
(1)キャニスタパージの要求
キャニスタ135に吸着捕集された蒸発燃料を脱離させて、エンジン101に吸引させるためには、エンジン101の吸気管負圧を前記キャニスタ135に作用させることが要求されるため、キャニスタパージを行う条件が成立すると、パージ要求量に応じて目標吸気負圧を決定する。
【0055】
ここで、吸気負圧が小さいと(吸気圧が大気圧に近いと)、パージ量が減り、蒸発燃料の処理を進めることができず、逆に、吸気負圧が大きいと、パージ量は増えるものの、燃費性能や出力性能が低下することになってしまう。
そこで、必要なパージ量を得られる最低限の吸気負圧を、予めシミュレーションや実験で求めておき、そのときに要求されるパージ量に応じて目標吸気負圧を設定する。
(2)ブローバイガスの要求
クランクケース内に溜まったブローバイガスを、エンジン101に吸引させるためには、エンジン101の吸気管負圧をクランクケース内に作用させることが要求される。
【0056】
そのため、ブローバイガスをエンジン101に吸引させる条件が成立すると、処理するブローバイガス量に応じて目標吸気負圧を設定する。
(3−1)ブレーキ液温の低温判定時の要求
ブレーキ液の温度が低いと、ブレーキ液の粘度が高くなって、ポンプ2004の吐出応答が遅くなり、ポンプアップ圧による制動力の制御応答が遅くなってしまう。
【0057】
そこで、ブレーキ液温が判定温度以下であるときには、マスタシリンダ圧で制動を行わせるべく、スロットルバルブ103bで吸入空気量を制御する場合に発生する吸気負圧と同等の吸気管負圧を目標吸気負圧に設定する。
(3−2)ポンプ連続作動判定時の要求
ポンプ2004を連続して作動させると、モータ2003が過熱する可能がある。
【0058】
そのため、モータ2003の作動が判定時間以上連続したときや、モータ2003の電流の積分値が判定値以上になったときや、モータ2003の温度が判定温度以上になったときに、ポンプの連続作動状態を判定する。
そして、ポンプ2004の連続作動状態を判定すると、マスタシリンダ圧で制動を行わせるべく、スロットルバルブ103bで吸入空気量を制御する場合に発生する吸気負圧と同等の吸気管負圧を目標吸気負圧に設定する。
(3−3)ポンプアップ圧異常の要求
ポンプアップ圧でホイールシリンダ圧が高められない異常が発生した場合に、マスタシリンダ圧で制動を行わせるべく、スロットルバルブ103bで吸入空気量を制御する場合に発生する吸気負圧と同等の吸気管負圧を目標吸気負圧に設定する。
【0059】
ここで、ポンプアップ圧の供給制御状態で、モータ2003が駆動されており、この状態で、ポンプアップ圧が供給されるホイールシリンダの圧力が判定圧以下であるときに、ポンプアップ圧の異常を判定する。
(4)制動からの要求
図14に示すように、マスタバック132aの弁機構が全開する倍力限界点(全負荷点)で得られるマスタシリンダ圧は、マスタバック132aの負圧室の負圧(ブースタ負圧)で変化し、ブースタ負圧が大きいほど倍力限界点でのマスタシリンダ圧は大きくなる。
【0060】
燃費・出力性能を向上させるべく、吸気管負圧を小さく設定してブースタ負圧を抑制すると、ポンプアップ圧による制動の要求が増え、ポンプや電磁弁の耐久性を高くする必要が生じる。
逆に、吸気管負圧を大きく設定してブースタ負圧を高くすれば、マスタシリンダ圧で要求の制動力が得られるから、ポンプアップ圧による制動回数を減らすことができるものの、燃費・出力性能を低下させることになる。
【0061】
ここで、常用の制動の9割ほどは、0.4g以下の制動が占め、この0.4gを倍力限界点(全負荷点)で得られるようにすれば、ほとんどの場合、前記倍力限界点(全負荷点)以前の、ブレーキ操作力を倍力して発生するマスタシリンダ圧で必要な制動を得られることになる。
そこで、常用の制動が、倍力限界点(全負荷点)以前に発生するマスタシリンダ圧で行われるように、常用の制動における減速度の最大値に相当するマスタシリンダ圧が、マスタバック132aの倍力限界点(全負荷点)で得られるように、目標吸気負圧(ブースタ負圧)を設定する(図15参照)。
【0062】
上記のようにして目標吸気負圧を設定すれば、目標吸気負圧を低く抑制して、燃費・出力性能の改善を図りつつ、ポンプアップ圧による制動の回数を削減することができ、ポンプや電磁弁に要求される耐久性を抑制できる。
前述した各条件(1)、(2)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(4)に基づく目標吸気負圧の設定に代えて、以下のようにして目標吸気負圧を設定させることができる。
【0063】
前記条件(1)、(2)、(4)の要求を満たすために、アクセルの高開度域(高負荷域)を除く低・中開度域(低・中負荷域)において、目標吸気負圧を一定値(例えば−100mmHg)とする。
前記アクセルの高開度域であるか否かの判定においては、例えば、そのときのエンジントルクが、そのときの機関回転速度NEにおける最大エンジントルクの90%以上であるときを、高開度領域として判断する。
【0064】
そして、アクセルの高開度域では、吸気負圧の発生よりもエンジン出力の確保を優先し、例えば目標負圧を0mmHg(大気圧)としてスロットルバルブ103bを全開とする(図16のA線)。
一方、前記条件(3−1)、(3−2)、(3−3)のいずれかの要求が発生した場合には、アクセル開度に応じた目標吸気負圧から、条件(3−1)、(3−2)、(3−3)の要求に対応する目標吸気負圧に切り替える。
【0065】
尚、前記アクセルの高開度域の全域において、目標吸気負圧を0mmHg(大気圧)とするのではなく、アクセルの高開度領域に入った後、アクセル開度が高くなるに従って−100mmHgから徐々に目標吸気負圧を低下させる(大気圧に近づける)ようにしてもよい(図16のB線)。
また、図17のC線に示すように、エンジンの負荷(エンジントルク)が高くなるに従って、目標吸気負圧を徐々に低下させる(大気圧に近づける)ようにしても良い。
【0066】
上記のように、アクセルの低・中開度域で若干の吸気負圧を発生させることで、キャニスタパージ、ブローバイガス処理、マスタシリンダ圧による制動を行わせることができる。
また、前記条件(3−1)、(3−2)、(3−3)の要求が発生しなければ、略一定の負圧に制御され、負圧の変動が起きないので、負圧変化に伴うエンジントルク変動の発生頻度を減らして、車両振動などによる運転者の不快感を防止できる。
【0067】
図13のフローチャートのステップS1002で、上記のようにして目標吸気負圧(目標吸気管負圧)を設定すると、次のステップS1003では、前記可変バルブリフト機構(VEL)112及び可変バルブタイミング機構(VTC)113の制御目標を設定し、次のステップS1004では、前記電子制御スロットル(ETB)104の制御目標を設定する。
【0068】
そして、ステップS1005では、前記制御目標に基づいて、前記可変バルブリフト機構(VEL)112,可変バルブタイミング機構(VTC)113及び電子制御スロットル(ETB)104を制御する。
前記制御目標の設定は、例えば、特開2003−184587号公報に開示されるようにして行われる。
【0069】
即ち、アクセル開度及び機関回転速度NEに応じて目標トルクを設定し、この目標トルクが得られる目標吸入空気量を算出し、更に、前記目標吸入空気量を、機関回転速度NE及び排気量(シリンダ総容量)に基づいて目標体積流量比に変換する。
そして、前記目標体積流量比をそのときの目標吸気負圧(目標吸気管負圧)に基づいて補正し、該補正後の目標体積流量比から目標バルブ開口面積を算出する。
【0070】
次いで、そのときの可変バルブタイミング機構(VTC)113による吸気バルブ105の作動角の中心位相と、前記目標バルブ開口面積とから、前記制御軸16の目標角度、即ち、目標バルブリフト量を算出する。
また、前記可変バルブタイミング機構(VTC)113によって可変とされる、吸気バルブ105の作動角の中心位相の目標は、エンジン負荷・エンジン回転速度などから設定する。
【0071】
更に、前記電子制御スロットル(ETB)104の目標開度は、前記目標バルブリフト量及び目標中心位相の条件下で、目標吸気負圧が得られる開度として演算される(負圧制御手段)。
次に、図18のフローチャートに従って、前記ブレーキコントロールユニット201によるブレーキ制御を詳述する。
【0072】
図18のフローチャートにおいて、ステップS1101では、各種信号の読込みを行う。
具体的には、ブレーキペダルの操作量(ストローク量或いはマスタシリンダ圧)、ブースタ負圧、ホイールシリンダ圧などを示す信号の読込みを行う。
ステップS1102では、ABS(Anti lock Braking System),TCS(Traction Control System),VDC(Vehicle Dynamics Control)の作動要求があるか否かを判断する。
【0073】
前記ABSは、制動時の車輪回転速度を検知し、車輪のロックをブレーキ液圧の制御によって防止し、急制動時の車両の安定性を向上させるシステムである。
前記TCSは、駆動輪のスリップ率が最適になるように制御するシステムであり、駆動輪のホイールスピンが発生すると、駆動輪のブレーキ液圧の制御と、エンジントルクの制限とによって、ホイールスピンを減少させる。
【0074】
前記VDCは、前記ABS及びTCSの機能に加え、ドライバによるステアリング操作量、車両のヨーレート、横方向加速度(横G)、車輪速を検知することで、車両のスリップ角(車両進行方向と車輪の操舵方向とでなされる角度)を求め、車両のアンダーステアやオーバーステアの程度を判別し、4輪それぞれのブレーキ液圧制御とエンジン出力制御とを行うことにより、前記アンダーステアやオーバーステアに対抗するモーメントを車両の重心周りに発生させ、車両の安定性を向上させるシステムである。
【0075】
上記ABS,TCS,VDCの作動要求がある場合には、後述するステップS1104以降の制御を行うことなく、ステップS1103へ進み、ABS,TCS,VDCの要求に従って、ブレーキ液圧の増減・保持を制御する。
即ち、前記OUT弁2020A〜2020Dの開制御によってホイールシリンダ204〜207の圧力を個別に減圧制御でき、また、ポンプ2004を作動させた状態でIN弁2005A〜2005Dを開制御することでホイールシリンダ圧を個別に増圧制御できる。
【0076】
更に、遮断弁2002A,2002B、OUT弁2020A〜2020D及びIN弁2005A〜2005Dを閉状態にすることで、ホイールシリンダ204〜207の圧力を個別に保持状態に制御できる。
一方、上記ABS,TCS,VDCの作動要求がない場合には、ステップS1104へ進む。
【0077】
ステップS1104では、ブレーキペダル131の操作量が基準値(例えば0)以上であるか否かに基づいて、制動時であるか否か(運転者による制動要求があるか否か)を判断する。
前記ブレーキペダルの操作量は、ブレーキペダルセンサ208で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BS、液圧センサ209で検出されるマスタシリンダ圧MCP、踏力センサで検出されるブレーキペダル131の踏力などである。
【0078】
非制動時であれば、ステップS1116へ進み、遮断弁2002A,2002Bを開、モータ2003をオフ、IN弁2005A〜2005Dを閉、前輪側のOUT弁2020A,2020Bを閉、後輪側のOUT弁2020C,2020Dを開とする。
これにより、前輪側のホイールシリンダ204,205に対してマスタシリンダが供給され得る状態になり、また、後輪側のホイールシリンダ206,207がリザーバ配管2009と接続され、ホイールシリンダ206,207のシリンダ圧がリリーフされ得る状態になる。
【0079】
一方、制動時であれば、ステップS1105へ進み、ブレーキ操作量に応じて目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出する。
例えば、ブレーキペダルセンサ208で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BSが基準値を越えていることに基づいて、制動状態であると判断すると、図19に示すように、ブレーキペダルセンサ208(要求制動力検出手段)で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BSが大きくなるほど、より大きな目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出する。
【0080】
また、液圧センサ209で検出されるマスタシリンダ圧MCPが基準値を越えていることに基づいて、制動状態であると判断すると、図20に示すように、液圧センサ209(要求制動力検出手段)で検出されるマスタシリンダ圧MCPが高くなるほど、より大きな目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出させることができる。
また、ブレーキペダルの踏力が基準値を越えていることに基づいて、制動状態であると判断すると、踏力が高くなるほど、より大きな目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出させることができる。
【0081】
更に、目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)は、車両の積載状態に応じて決定することができる。
これは、車両に対する積載により、前後輪の荷重が、積載がない場合と比べ変化するためであり、荷重の変化に応じた目標制動力とするものである。
積載状態は、例えば、減速中の各輪のスリップ率などにより検出することができ、また、荷重センサ等で検出することができる。
【0082】
更に、制動時のステアリング舵角と車速などに応じて前後左右輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を決定することができる。
これは、車両の旋回時には、旋回外側の車輪荷重が旋回内側の車輪荷重より大きくなるため、旋回外側の車輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を大きくするものである。
【0083】
上記のように、各車輪の荷重変化などにより、前後左右輪の制動力を変化させるシステムは、電子制御ブレーキシステム(EBD)に搭載されている場合があり、係るこのEBDが搭載されている場合は、本実施例のシステムと協調して作動させることができる。
尚、ブレーキ操作量(ストローク量BS,マスタシリンダ圧MCP,ブレーキペダル踏力)が大きくなるに従って、前輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を後輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)よりもより大きくすることができる。
【0084】
これは、制動による車両の減速度が大きくなるほど、前輪の荷重が増え、相対的に後輪の荷重が減るので、その分、前輪の制動力を増やすものである。
また、ブレーキ操作量(ストローク量BS,マスタシリンダ圧MCP,ブレーキペダル踏力)の増大変化率で目標制動力を補正することができ、具体的には、前記増大変化率が閾値を超えた場合に、前記変化率と前記閾値との偏差に応じて目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を増大補正する。
【0085】
ステップS1106では、前輪のホイールシリンダ圧の制御か、後輪のホイールシリンダ圧の制御かを判定する。
ここで、前輪のホイールシリンダ圧の制御を行う場合には、ステップS1106からステップS1107へ進む。
尚、ステップS1106の判定は、前輪と後輪とでホイールシリンダ圧の制御が異なることを示し、実際には、前輪のホイールシリンダ圧の制御(ステップS1107〜ステップS1114の処理)と後輪のホイールシリンダ圧の制御(ステップS1115の処理)とが並行して実行されるものとする。
【0086】
ステップS1107では、前輪のホイールシリンダ204,205にポンプ2004の吐出圧(ポンプアップ圧)を供給して制動を行う、ポンプアップ圧制動状態であるか否かを判断する。
そして、ポンプアップ圧制動状態であれば、ステップS1113に進んで、ポンプアップ圧による制動を継続させる。
【0087】
一方、ポンプアップ圧制動状態でない場合には、ステップS1108へ進み、ポンピングブレーキ状態であるか否かを判断する(ポンピングブレーキ判定手段)。
ポンプアップ圧制動状態でなく、かつ、ポンピングブレーキ状態でもない場合には、ステップS1109へ進む。
ステップS1109では、負圧センサ132b(負圧検出手段)で検出されたブースタ負圧BNP(マスタバック132aの負圧室の負圧)に基づき、前記目標制動力の閾値A(第2閾値)及び閾値B(第1閾値)を設定する(閾値設定手段)。
【0088】
前記閾値A及び閾値Bは、図21に示すように、閾値A<閾値Bであって、ブースタ負圧BNPが高いほど、大きな値に設定される。
尚、閾値Bは、マスタバック132aの全負荷点での制動力よりも僅かに低い値に設定される。
また、負圧センサ132bで検出されたブースタ負圧BNPに代えて、前記目標吸気負圧又は実際の吸気負圧に応じて前記閾値A,Bを設定させることができる。
【0089】
ここで、ブレーキ液温が判定温度以下であるときには、閾値A<閾値Bとし、ブレーキ液温が前記判定温度を超える場合には、閾値A=閾値Bとすることができる。
後述するように、前記閾値Aをモータの駆動開始判定に用い、前記閾値Bをマスタシリンダ圧からポンプアップ圧への切り替え判定に用いる。
そして、ポンプ2004によるポンプアップ圧の応答が遅くなるブレーキ液温が低い条件では、実際にポンプアップ圧に切り換えられるよりも前にポンプ2004の駆動を開始させておくことで、応答遅れによるホイールシリンダ圧の落ち込みを防止できることになる。
【0090】
尚、ブレーキ液温は、温度センサで検出させることができる他、例えば、エンジン始動時のエンジン油温が閾値以下で、かつ、エンジン始動後のブレーキ作動回数が閾値以下であるときに、ブレーキ液温が判定温度以下であると推定させることができる。
ステップS1110では、前記目標制動力が閾値A以上であるか否かを判定することで、ポンプ2004(モータ2003)の駆動開始タイミングであるか否かを判断する。
【0091】
そして、目標制動力が閾値A以上になると、ステップS1111へ進んで、前記モータ2003への通電を開始させる。
ステップS1112では、目標制動力が閾値B以上になったか否かを判断する。
目標制動力が閾値B以上になると、ステップS1113に進んで、それまでのマスタシリンダ圧を前輪のホイールシリンダ204,205に供給して制動を行う状態から、ポンプ2004の吐出圧(ポンプアップ圧)をホイールシリンダ204,205に供給して制動を行うポンプアップ圧制動に移行させる(液圧源切替え手段)。
【0092】
一方、目標制動力が閾値A未満であるとき、及び、目標制動力が閾値A以上でかつ閾値B未満であるときには、ステップS1114へ進み、遮断弁2002A,2002Bを開、モータ2003をオフ、IN弁2005A,2005Bを閉、OUT弁2020A,2020Bを閉として、マスタシリンダ圧で制動を行わせる。
一方、図12に示したブレーキ油圧回路では、後輪のホイールシリンダ206,207には、マスタシリンダ圧が供給されず、ポンプアップ圧の供給のみが可能に構成されているので、ステップS1106で後輪の制御を判定した場合には、ステップS1115へ進み、後輪のホイールシリンダ206,207に対してポンプアップ圧の供給制御を行う。
【0093】
図22のフローチャートは、前記ステップS1113における前輪のポンプアップ圧制動(液圧制御手段)の詳細を示す。
まず、ステップS1201では、遮断弁2002A,2002Bを閉弁させ、前輪のホイールシリンダ204,205に対するマスタシリンダ圧の供給を遮断する。
ステップS1202では、ホイールシリンダ圧センサ2015A,2015Bで検出されるホイールシリンダ204,205の実際の圧力と、目標ホイールシリンダ圧(目標制動力)とを比較し、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧よりも低い場合に、増圧要求を判定する。
【0094】
増圧要求が判定されると、ステップS1203へ進み、モータ2003をオンとし、IN弁2005A,2005Bを開、OUT弁2020A,2020Bを閉とし、ポンプアップ圧が前輪のホイールシリンダ204,205に供給されるようにする。
次のステップS1204では、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで増大したか否かを判断する。
【0095】
実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達していない場合には、ステップS1203へ戻り、ポンプアップ圧が前輪のホイールシリンダ204,205に供給される状態を継続させる。
一方、ステップS1204で、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達したと判断されると、ステップS1205へ進み、IN弁2005A,2005Bを閉とし、かつ、モータ2003をオフすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
【0096】
また、ステップS1202で増圧要求状態ではないと判断されると、ステップS1206へ進み、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧よりも高い減圧要求状態であるか否かを判断する。
そして、減圧要求状態であれば、ステップS1207へ進み、IN弁2005A,2005Bを閉、OUT弁2020A,2020Bを開とし、前輪のホイールシリンダ204,205のシリンダ圧を低下されるようにする。
【0097】
ステップS1208では、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで減少したか否かを判断する。
実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達していない場合には、ステップS1207へ戻り、前輪のホイールシリンダ204,205のシリンダ圧を低下させる状態を継続させる。
【0098】
一方、ステップS1208で、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達したと判断されると、ステップS1209へ進み、OUT弁2020A,2020Bを閉とすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
更に、前記ステップS1206で、減圧要求状態でないと判断されると、ステップS1210へ進み、IN弁2005A,2005Bを閉、OUT弁2020A,2020Bも閉とすることで、前輪のホイールシリンダ204,205のシリンダ圧が保持されるようにする。
【0099】
図23のフローチャートは、前記ステップS1115における後輪のポンプアップ圧制動(液圧制御手段)の詳細を示す。
ステップS1251では、ホイールシリンダ圧センサ2015C,2015Dで検出されるホイールシリンダ206,207の実際の圧力と、目標ホイールシリンダ圧とを比較し、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧よりも低い場合に、増圧要求を判定する。
【0100】
増圧要求が判定されると、ステップS1252へ進み、モータ2003をオンとし、IN弁2005C,2005Dを開、OUT弁2020C,2020Dを閉とし、ポンプアップ圧が後輪のホイールシリンダ206,207に供給されるようにする。
次のステップS1253では、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで増大したか否かを判断する。
【0101】
実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達していない場合には、ステップS1252へ戻り、ポンプアップ圧が後輪のホイールシリンダ206,207に供給される状態を継続させる。
一方、ステップS1253で、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達したと判断されると、ステップS1254へ進み、IN弁2005C,2005Dを閉とし、かつ、モータ2003をオフすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
【0102】
また、ステップS1251で増圧要求状態ではないと判断されると、ステップS1255へ進み、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧よりも高い減圧要求状態であるか否かを判断する。
そして、減圧要求状態であれば、ステップS1256へ進み、IN弁2005C,2005Dを閉、OUT弁2020C,2020Dを開とし、後輪のホイールシリンダ206,207のシリンダ圧が低下するようにする。
【0103】
ステップS1257では、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで減少したか否かを判断する。
実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達していない場合には、ステップS1256へ戻り、後輪のホイールシリンダ206,207のシリンダ圧を低下させる状態を継続させる。
【0104】
一方、ステップS1257で、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧に到達したと判断されると、ステップS1258へ進み、OUT弁2020C,2020Dを閉とすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
更に、前記ステップS1255で、減圧要求状態でないと判断されると、ステップS1259へ進み、IN弁2005C,2005Dを閉、OUT弁2020C,2020Dも閉とすることで、後輪のホイールシリンダ206,207のシリンダ圧が保持されるようにする。
【0105】
図18のフローチャートのステップS1108では、前述のように、ポンピングブレーキ状態であるか否かを判断し、ポンピングブレーキ状態でない場合にステップS1109以降へ進む処理については既述した。
一方、ステップS1108においてポンピングブレーキ状態であると判断された場合には、ステップS1109〜ステップS1112を迂回して、ステップS1113へ進み、前輪のホイールシリンダ204,205に対するポンプアップ圧の供給を制御して、ポンプアップ圧で目標の制動力が得られるようにする(ポンピングブレーキ制御手段)。
【0106】
ブレーキペダルを踏み込むと直ぐに緩め、再度ブレーキペダルを踏み込むことを繰り返すポンピングブレーキが行われると、ブレーキ操作に伴って低下したブースタ負圧BNPが回復する前に、再度ブレーキ操作が行われ、吸気負圧が充分に高い条件下であっても、ブレーキ操作に対して実際に得られるマスタシリンダ圧が低下してしまう。
そこで、ポンピングブレーキ状態では、マスタバック132aによるブレーキ操作力の倍力を用いずに、ポンプアップ圧で必要なホイールシリンダ圧にまで昇圧させるようにする。
【0107】
ここで、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値以下になってから、設定時間内に再度ブレーキペダルが前記閾値を超えて踏み込まれた場合に、ポンピングブレーキ状態であると判断する。
前記設定時間は、固定の時間であっても良いし、図24に示すように、エンジン回転速度NE及び吸気負圧(吸気管負圧)PBに基づいて可変に設定することができる。
【0108】
エンジン回転速度NE及び吸気負圧(吸気管負圧)PBに基づいて、前記設定時間を可変に設定する場合には、図24に示すように、機関回転速度NEが高いほど、また、吸気負圧が高いほど、前記設定時間を短く設定する。前記設定時間が短いと、それだけポンピングブレーキ状態の判断がなされ難いことになる。
これは、エンジン回転速度NEが高い状態では、ブースタ負圧BNPが短時間で回復し易く、また、吸気負圧が高い場合には、ブースタ負圧BNPをそれだけ大きくできるため、ポンピングブレーキが行われてもブースタ負圧BNPが低くなり難いためである。
【0109】
ところで、図12に示した油圧ユニット202の構成では、後輪のホイールシリンダ206,207に対しては、マスタシリンダ圧が供給されないようになっていたが、図25に示すように、全てのホイールシリンダ204〜207に対して、マスタシリンダ圧及びポンプアップ圧を供給できる油圧回路とすることができる。
図25に示す油圧回路は、RLホイールシリンダ207及びFRホイールシリンダ204に対するブレーキ液圧を制御するRL,FR系統と、FLホイールシリンダ205及びRRホイールシリンダ206に対するブレーキ液圧を制御するFL,RR系統とを相互に独立に備えている。
【0110】
前記タンデム型のマスタシリンダ203には、RL,FR系統を構成するマスタシリンダ圧供給配管2051A、及び、FL,RR系統を構成するマスタシリンダ圧供給配管2051Bの一端がそれぞれ接続される。
前記マスタシリンダ圧供給配管2051A,2051Bの他端には、ゲートアウト弁2052A,2052Bが接続されている。
【0111】
前記ゲートアウト弁2052A,2052Bの下流側には、共通配管2054A,2054Bを介して、ポンプ2053A,2053Bの吐出口に接続されている。前記ポンプ2053A,2053Bは、例えばプランジャ又はギアポンプである。
前記ポンプ2053A,2053Bの吐出口には、吐出方向の流れのみを許容するチェックバルブ2055A,2055Bが介装されている。
【0112】
前記共通配管2054A,2054Bの途中には、分岐配管2056A,2056Bの一端が接続され、前記分岐配管2056A,2056Bの他端は、それぞれ2つに分岐し、RL,FR系統を構成するIN弁2057A,2057B及びFL,RR系統を構成するIN弁2057C,2057Dに接続される。
IN弁2057A〜2057Dの下流側は、第1給排配管2058A〜2058Dを介して、RL,FR系統を構成するOUT弁2059A,2059B及びFL,RR系統を構成するOUT弁2059C,2059Dに接続されている。
【0113】
更に、前記第1給排配管2058A〜2058Dの途中と、各ホイールシリンダ204〜207とは、第2給排配管2060A〜2060Dによって接続されている。
前記OUT弁2059A〜2059Dの第1給排配管2058A〜2058Dが接続される側とは逆側のポートは、リリーフ配管2061A,2061Bを介して、内部リザーバ2062A,2062Bに接続されている。
【0114】
また、前記ポンプ2053A,2053Bの吸込口は、吸込配管2063A,2063Bを介して前記内部リザーバ2062A,2062Bに接続されている。
更に、前記ゲートアウト弁2052A,2052Bの上流側のマスタシリンダ圧供給配管2051A,2051Bと、前記内部リザーバ2062A,2062Bとが、リザーバ配管2064A,2064Bによって接続されている。
【0115】
前記内部リザーバ2062A,2062Bには、リザーバ配管2064A,2064Bを介して供給されるマスタシリンダ圧の内部リザーバ2062A,2062B内への導入を制限するチェックバルブ2065A,2065Bが設けられている。
マスタシリンダ圧は、前記チェックバルブ2065A,2065Bの閉弁方向に作用し、また、前記ポンプ2053A,2053Bの吸引圧は、前記チェックバルブ2065A,2065Bの開弁方向に作用し、前記リザーバ配管2064A,2064Bを介したホイールシリンダ圧のリリーフは、前記チェックバルブ2065A,2065Bの閉弁方向に作用する。
【0116】
前記ポンプ2053A,2053Bは、通電がPWM制御されるモータ2067によって駆動される。
前記OUT弁2059A〜2059Dは、スプリングによって閉弁方向に付勢され、電磁コイルへの通電によって開弁する電磁弁であり、前記IN弁2057A〜2057Dは、スプリングによって開弁方向に付勢され、電磁コイルへの通電によって閉弁する電磁弁である。
【0117】
一方、前記ゲートアウト弁2052A,2052Bは、スプリングによって開弁方向に付勢されると共に、閉弁方向に作用する電磁力を発生する電磁コイルへの通電がPWM制御されて、開口面積がPWM信号のデューティに応じてリニアに変化する比例式の電磁弁である。
更に、前記IN弁2057A〜2057Dの上下流間を接続するバイパス配管には、下流側から上流側に向けたブレーキ液の流れを許容するチャックバルブ2068A〜2068Dが介装される。
【0118】
また、前記ゲートアウト弁2052A,2052Bの上下流間を接続するバイパス配管には、上流側から下流側に向けたブレーキ液の流れを許容するチャックバルブ2069A,2069Bが介装される。
図25のシステムにおいて、ゲートアウト弁2052A,2052B、IN弁2057A〜2057D、OUT弁2059A〜2059D、及び、モータ2067を全てオフ状態とすると、マスタシリンダ圧が、前記ゲートアウト弁2052A,2052B及びIN弁2057A〜2057D及び第2給排配管2060A〜2060Dを介して各ホイールシリンダ204〜207に供給される。
【0119】
このとき、マスタシリンダ圧によって、チェックバルブ2065A,2065Bは閉弁し、マスタシリンダ圧が内部リザーバ2062A,2062Bにリリーフされることはない。
一方、ポンプ2053A,2053Bのポンプアップ圧によってホイールシリンダ圧を増大させる場合には、IN弁2057A〜2057D、OUT弁2059A〜2059Dをオフ状態に保ったまま、ゲートアウト弁2052A,2052Bに通電して閉弁させ、前記モータ2067に通電してポンプ2053A,2053Bを駆動する。
【0120】
ポンプ2053A,2053Bの駆動によって負圧が吸い込み側に発生すると、前記チェックバルブ2065A,2065Bが開弁して、ポンプ2053A,2053Bは、マスタシリンダ圧を元圧にブレーキ液を昇圧して吐出し、ポンプ2053A,2053Bで昇圧された液圧が、IN弁2057A〜2057D及び第2給排配管2060A〜2060Dを介して各ホイールシリンダ204〜207に供給される。
【0121】
上記図25のブレーキ油圧回路の制御を、図26のフローチャートに従って説明する。
図26のフローチャートに示す制御は、図18に示した制御の後輪用処理を削除したものである。
ステップS1271では、各種信号の読込みを行う。
具体的には、ブレーキペダルの操作量(ストローク或いはマスタシリンダ圧)、ブースタ負圧、ホイールシリンダ圧などを示す信号の読込みを行う。
【0122】
ステップS1272では、前記ABS(Anti lock Braking System),TCS(Traction Control System),VDC(Vehicle Dynamics Control)の作動要求があるか否かを判断する。
上記ABS,TCS,VDCの作動要求がある場合には、後述するステップS1274以降の制御を行うことなく、ステップS1273へ進み、ABS,TCS,VDCの要求に従って、ブレーキ液圧の増減・保持を制御する。
【0123】
一方、上記ABS,TCS,VDCの作動要求がない場合には、ステップS1274へ進む。
ステップS1274では、ブレーキペダル131の操作量が基準値(例えば0)以上であるか否かに基づいて、制動時であるか否か(運転者による制動要求があるか否か)を判断する。
【0124】
前記ブレーキペダルの操作量は、ブレーキペダルセンサ208で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BS、液圧センサ209で検出されるマスタシリンダ圧MCP、踏力センサで検出されるブレーキペダル131の踏力などである。
非制動時であれば、ステップS1283へ進み、ゲートアウト弁2052A,2052B、IN弁2057A〜2057D、OUT弁2059A〜2059D、及び、モータ2067を全てオフ状態とし、ゲートアウト弁2052A,2052Bを開、IN弁2057A〜2057Dを開、OUT弁2059A〜2059Dを閉の状態にする。
【0125】
従って、ステップS1283へ進んだ場合には、マスタシリンダ圧が各ホイールシリンダ204〜207に供給され得る状態になる。
一方、制動時であれば、ステップS1275へ進み、前記ステップS1105と同様にして、目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出する(要求制動力検出手段)。
ステップS1276では、マスタシリンダ圧を元圧に、ポンプ2053A,2053Bがブレーキ液圧を昇圧するポンプアップ圧制動状態であるか否かを判断する。
【0126】
そして、ポンプアップ圧制動状態であれば、ステップS1282に進んで、ポンプアップ圧制動を継続させる。
一方、ポンプアップ圧制動状態でない場合には、ステップS1277へ進み、ポンピングブレーキ状態であるか否かを判断する。
ポンプアップ圧制動状態でなく、かつ、ポンピングブレーキ状態でもない場合には、ステップS1278へ進む。
【0127】
ステップS1278では、ブースタ負圧BNP(マスタバック132aの負圧室の負圧)に基づき、前記ステップS1109と同様にして、前記目標制動力の閾値A及び閾値Bを設定する(閾値設定手段)。
ステップS1279では、前記目標制動力が閾値A以上であるか否かを判定することで、ポンプ2053A,2053Bの駆動開始タイミングであるか否かを判断する。
【0128】
そして、目標制動力が閾値A以上になると、ステップS1280へ進んで、前記モータ2067への通電を開始させる。
ステップS1281で、目標制動力が閾値B以上になったか否かを判断する。
目標制動力が閾値B以上になると、ステップS1282に進んで、それまでの、マスタシリンダ圧をホイールシリンダ204〜207に供給して制動を行う状態から、ポンプ2053A,2053Bによるポンプアップ圧で制動を行うポンプアップ圧制動に移行させる(液圧源切替え手段)。
【0129】
一方、目標制動力が閾値A未満であるとき、及び、目標制動力が閾値A以上でかつ閾値B未満であるときには、ステップS1283へ進み、ゲートアウト弁2052A,2052Bを開、IN弁2057A〜2057Dを開、OUT弁2059A〜2059Dを閉の状態にし、かつ、ポンプ2053A,2053Bを停止させて、マスタシリンダ圧がホイールシリンダ204〜207に供給される状態とする。
【0130】
前記ステップS1282においては、実際のホイールシリンダ圧と目標ホイールシリンダ圧との比較に基づいて、RL,FR系統、FL,RR系統それぞれにおいて、増圧・減圧・保持のいずれが要求されるかを判断し、該判断に基づいて、図27に示すパターンに従って、ゲートアウト弁2052A,2052B及びモータ2067を制御する(液圧制御手段)。
【0131】
尚、ステップS1282におけるポンプアップ制御時には、前記IN弁2057A〜2057D及びOUT弁2059A〜2059Dを非制御状態(非通電状態)に保持することで、IN弁2057A〜2057Dを開、OUT弁2059A〜2059Dを閉状態に保持させる。
図27において、例えば、RL,FR系統及びFL,RR系統の双方で増圧が要求される場合には、ゲートアウト弁2052A,2052Bを閉(オン)とし、かつ、モータ2067を駆動させることで、マスタシリンダ圧を元圧にポンプ2053A,2053Bが昇圧し、該昇圧されたブレーキ液圧(ポンプアップ圧)が、開制御されているIN弁2057A〜2057Dを介して、各ホイールシリンダ204〜207に供給されるようにする。
【0132】
また、RL,FR系統及びFL,RR系統の双方で減圧が要求される場合には、ゲートアウト弁2052A,2052Bを開(オフ)とし、かつ、モータ2067を停止させることで、ポンプ2053A,2053Bによる昇圧を停止させる。
更に、RL,FR系統及びFL,RR系統の双方でそのときのシリンダ圧を保持することが要求されている場合には、ゲートアウト弁2052A,2052Bを閉(オン)とし、かつ、モータ2067を停止させることで、ホイールシリンダ204〜207とマスタシリンダ203との連通を断ち、しかも、ポンプ2053A,2053Bによる昇圧が行われない状態とする。
【0133】
ここで、前述のように、増圧要求時と保持要求時とでは、ゲートアウト弁2052A,2052Bを共に閉(オン)とする一方で、モータ2067の駆動・停止を切り換えることで、増圧状態と保持状態とに切り替えている。
しかし、例えば、RL,FR系統で増圧が要求され、FL,RR系統で保持が要求される場合、モータ2067はポンプ2053A,2053Bを同時に駆動するので、ポンプ2053Aを駆動させ、ポンプ2053Bを停止させることはできない。
【0134】
そこで、例えば、RL,FR系統の増圧要求とFL,RR系統の保持要求とが重なった場合には、ゲートアウト弁2052Aを閉(オン)とし、ゲートアウト弁2052Bを中間開度とし、モータ2067を駆動させる。
ゲートアウト弁2052Aを閉(オン)とし、モータ2067をオンさせてポンプ2053Aを駆動すると、RL,FR系統のホイールシリンダ207,204には、ポンプ2053Aで昇圧されたブレーキ液圧が供給され、シリンダ圧が昇圧することになる。
【0135】
一方、ゲートアウト弁2052Bが中間開度とされるFL,RR系統では、供給配管2054Bとリザーバ配管2064Bとが、中間開度に制御されるゲートアウト弁2052Bを介して連通されることで、供給配管2054Bの一部のブレーキ液がリザーバ配管2064Bに流れ、吸込配管2063Bを経由してポンプ2053Bに再度吸い込まれることになるため、ホイールシリンダ圧が保持されることになる。
【0136】
即ち、中間開度に制御されるゲートアウト弁2052Bを介してブレーキ液が循環することで、シリンダ圧が保持されるものであり、循環量が多ければホイールシリンダ圧は低い値で保持され、逆に、循環量が少なければホイールシリンダ圧は高い値に保持される。
そして、ゲートアウト弁2052Bの開度とモータの回転数によって循環量が変化し、循環量に応じて保持圧が決まるから、ゲートアウト弁2052Bの開度とモータの回転数を制御することで、ホイールシリンダ圧の増圧・減圧が可能である。
【0137】
前記ゲートアウト弁2052A,2052Bを中間開度とする制御は、電磁コイルへの通電のデューティ制御におけるONデューティの設定によって行われる。
また、例えば、RL,FR系統の増圧要求とFL,RR系統の減圧要求とが重なった場合には、ゲートアウト弁2052Aを閉(オン)とし、ゲートアウト弁2052Bを開とし、モータ2067を駆動させる。
【0138】
図28は、車輪毎(ホイールシリンダ204〜207毎)にホイールシリンダ圧を独立に制御する場合の、増圧・減圧・保持の要求に対するIN弁2057A〜2057D及びOUT弁2059A〜2059Dの開閉制御のパターンを示す。
尚、前記ステップS1282のポンプアップ制御においては、前述のように、IN弁2057A〜2057D及びOUT弁2059A〜2059Dは非制御状態に保持される。
【0139】
図28に示すパターンに従ったIN弁2057A〜2057D及びOUT弁2059A〜2059Dの開閉制御は、前記ステップS1273において、ABS,TCS,VDCの要求に従って行われる。
具体的には、増圧要求に対しては、IN弁2057A〜2057Dを開、OUT弁2059A〜2059Dを閉に制御し、減圧要求に対しては、IN弁2057A〜2057Dを閉、OUT弁2059A〜2059Dを開に制御し、保持要求に対しては、IN弁2057A〜2057Dを閉、OUT弁2059A〜2059Dを閉に制御する。
【0140】
上記実施形態によると、ポンピングロスを低減させるべく吸気負圧が制限され、これによってブースタ負圧が比較的低い場合には、係るブースタ負圧によって目標制動力が得られないと、マスタシリンダ圧に代えてポンプアップ圧をホイールシリンダに供給して、目標制動力が得られるようにする。
従って、吸気負圧の制限によってポンピングロスを低減しつつ、必要な制動力を発生させることができる。
【0141】
即ち、そのときのブースタ負圧に応じた閾値と目標制動力とを比較させるので、吸気負圧の制限状態であっても目標制動力が得られる場合には、ポンプ2004,2053A,2053Bが無用に駆動されることがなく、そのときのブースタ負圧で目標制動力に見合うマスタシリンダ圧が得られない場合にのみポンプ2004,2053A,2053Bを駆動して、目標制動力が得られるようにする。
【0142】
換言すれば、そのときの吸気負圧に応じて、マスタバック132aによる倍力で発生させることができる制動力が変化しても、前記倍力で得られる制動力を最大限に用いつつ、不足分をポンプ2004,2053A,2053Bの駆動で補うから、吸気負圧を低く制限しても必要な制動力が得られ、かつ、ポンプ2004,2053A,2053Bが無用に駆動されることがなく、燃費の向上を図ることができる。
【0143】
図29のタイムチャートは、ブレーキペダルの踏込みが比較的小さい場合、即ち、目標制動力が比較的小さい場合の動作を示す。
図29の場合、ブレーキペダルの踏込みが比較的小さく、目標制動力が閾値A,Bを超えないので、ブレーキ操作に応じて発生するマスタシリンダ圧がそのままホイールシリンダに供給され、マスタシリンダ圧=ホイールシリンダ圧となる。
【0144】
従って、そのときの目標吸気負圧が低い場合であっても、ブレーキペダルの踏込みが比較的小さく、目標制動力が比較的小さい場合には、ポンプアップ圧を用いることなく、マスタシリンダ圧で目標制動力が得られることになる。
図30のタイムチャートは、図29に示した、比較的小さいブレーキペダルの踏込み状態から、ブレーキペダルから足を離したときの動作を示す。
【0145】
ブレーキペダルの踏込みが比較的小さく、ポンプアップ圧を用いることなく、マスタシリンダ圧で目標制動力が得られていたので、ブレーキペダルから足が離された場合も、マスタシリンダ圧の低下に伴ってホイールシリンダ圧が低下し、制動力が徐々に低下する。
一方、図31のタイムチャートは、ブレーキペダルの踏込みが比較的大きい場合、即ち、目標制動力が比較的大きい場合の動作を示す。
【0146】
ブレーキペダルの踏込み開始直後で、目標制動力が閾値A,B未満であれば、ブレーキペダルの踏込みに伴って増大するマスタシリンダ圧がそのままホイールシリンダに供給されるが、ブレーキペダルが更に踏み込まれ、目標制動力が閾値A以上になると、ポンプモータの駆動が開始される。
そして、ブレーキペダルが更に踏み込まれ、目標制動力が閾値B以上になると、ポンプによって昇圧されたポンプアップ圧をホイールシリンダに供給し、マスタバック132aの全負荷点での制動力(マスタシリンダ圧)を超える要求を、ポンプアップ圧によって実現する。
【0147】
図32のタイムチャートは、ブレーキペダルが大きく踏込まれた状態から、ブレーキペダルから足を離したときの動作を示す。
この場合、ブレーキペダルの踏込み動作の途中で、ポンプアップ圧制動が開始されているので、目標制動力が閾値A,Bを横切って低下しても、ポンプアップ制御は停止されず、目標制動力が0になるまでポンプのオン・オフ及びポンプアップ圧の給排を制御することで、ホイールシリンダ圧を目標制動力に制御する。
【0148】
ところで、エンジン101に備えられた前記可変バルブリフト機構(VEL)112や前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が生じたり、図12や図25に示したブレーキ油圧回路に異常が生じたりすると、記述した通常制御では、所期の制動力を得られなくなる場合が生じる。
そこで、前記異常に対するフェイルセールとして、図33〜図35のフローチャートに示すような処理を実行する。
【0149】
図33のフローチャートは、前記可変バルブリフト機構(VEL)112に異常が生じた場合の処理を示す。
ステップS1301では、前記可変バルブリフト機構(VEL)112に異常が生じているか否かを判断する。
例えば、目標バルブリフト量に実際のバルブリフト量が近づかない場合、具体的には、両者の偏差が所定値以上である状態が所定時間以上継続している場合に、前記可変バルブリフト機構(VEL)112の異常を判定できる。
【0150】
また、実際のバルブリフト量を検出するためのセンサが故障したときに、前記可変バルブリフト機構(VEL)112の異常を判定させることができる。
ステップS1301で、前記可変バルブリフト機構(VEL)112に異常が生じていると判断されると、ステップS1302へ進み、前記可変バルブリフト機構(VEL)112によるバルブリフト量の変更制御を停止させ、前記電子制御スロットル(ETB)104によってエンジン101の吸入空気量を制御させるようにする。
【0151】
そして、ステップS1303では、ブレーキペダル操作がなされているか否かを判別し、ブレーキペダル操作がなされると、ステップS1304へ進み、前記図18又は図26のフローチャートに従って、ブレーキペダル操作量に応じた目標制動力と閾値A,Bとの比較に基づいて、マスタシリンダ圧の供給と、ポンプアップ圧の供給とを切り換える制御を行わせる。
【0152】
但し、前記可変バルブリフト機構(VEL)112の異常が、吸気バルブ105のバルブリフト量が小さい状態で固着した異常である場合、目標吸入空気量に基づき前記電子制御スロットル(ETB)104を制御しても、大きな吸気負圧を発生させることができない場合が生じる。
従って、バルブリフト量が小さい状態で固着した場合、若しくは、可変バルブリフト機構(VEL)112の異常全般に対して、ポンプアップ圧による制動を行わせることができる。
【0153】
図34のフローチャートは、前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が生じた場合の処理を示す。
ステップS1311では、前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が生じているか否かを判断する(吸気負圧診断手段)。
例えば、目標スロットル開度に実際のスロットル開度が近づかない場合、具体的には、両者の偏差が所定値以上である状態が所定時間以上継続している場合に、前記電子制御スロットル(ETB)104の異常を判定できる。
【0154】
また、実際のスロットル開度を検出するためのセンサが故障したときに、前記電子制御スロットル(ETB)104の異常を判定させることができる。
前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が生じている場合には、ステップS1312へ進み、前記可変バルブリフト機構(VEL)112によってエンジン101の吸入空気量を制御させる。
【0155】
そして、ステップS1313では、ブレーキペダル操作がなされているか否かを判別し、ブレーキペダル操作がなされると、ステップS1314へ進み、ポンプアップ圧の供給によって目標制動力が得られるようにする(第2液圧供給制御手段)。
換言すれば、ステップS1314では、ステップS1113又はステップS1282のポンプアップ圧制動を実行する。
【0156】
これは、前記電子制御スロットル(ETB)104の異常によって、吸気負圧の制御が行えなくなるためであり、ポンプアップ圧の供給によって目標制動力が得られるようにすることで、吸気負圧に影響されることなく、目標制動力が得られるようにする。
但し、電子制御スロットル(ETB)104が全閉付近の開度に固着する異常が生じた場合には、吸気負圧が大きい状態に固定されることになるので、マスタシリンダ圧の供給によって制動を行わせることができる。
【0157】
図35のフローチャートは、ブレーキ油圧回路に異常が生じた場合の処理を示す。
ステップS1321では、ブレーキペダル操作がなされているか否かを判別し、ブレーキペダル操作がなされると、ステップS1322へ進む。
ステップS1322では、マスタシリンダ圧の供給系(マスタバック132aやマスタシリンダ203)に異常が生じているか否かを判断する(第1液圧診断手段)。
【0158】
例えば、マスタシリンダ圧で制動させている状態で、目標ホイールシリンダ圧(目標制動力)と実際のホイールシリンダ圧との偏差が所定以上である状態が所定時間以上継続すると、マスタシリンダ圧の供給系に異常が生じていると判断する。
マスタシリンダ圧の供給系に異常が生じている場合には、ステップS1323へ進み、前記電子制御スロットル(ETB)104及び前記可変バルブリフト機構(VEL)112を通常に制御する。
【0159】
次のステップS1324では、ポンプアップ圧によって目標制動力が得られるように制御することで、マスタシリンダ圧の異常があっても、所期の制動力が得られるようにする(第2液圧供給制御手段)。
換言すれば、ステップS1324では、ステップS1113又はステップS1282のポンプアップ圧制動を実行する。
【0160】
一方、ステップS1322で、マスタシリンダ圧の供給系に異常が生じていないと判断された場合には、ステップS1325へ進む。
ステップS1325では、ポンプアップ圧の供給系(ポンプ・モータ)に異常が生じているか否かを判断する(第2液圧診断手段)。
例えば、ポンプアップ圧で制動させている状態で、目標ホイールシリンダ圧(目標制動力)と実際のホイールシリンダ圧との偏差が所定以上である状態が所定時間以上継続すると、ポンプアップ圧の供給系に異常が生じていると判断する。
【0161】
ポンプアップ圧の供給系に異常が生じている場合には、ステップS1326へ進み、前記可変バルブリフト機構(VEL)112における目標バルブリフト量を、吸気バルブ105のバルブリフト量を可変としないエンジンと同等に固定し、前記電子制御スロットル(ETB)104によって吸入空気量を制御させる。
そして、ステップS1327では、ポンプアップ圧の供給を行わずに、マスタシリンダ圧をホイールシリンダに供給する(第1液圧供給制御手段)。
【0162】
ここで、前記電子制御スロットル(ETB)104によって吸入空気量を制御させることで、大きな吸気負圧が発生するので、マスタシリンダ圧によって目標制動力を発生させることが可能である。
尚、図33〜図35のフローチャートに示す処理は、異常が単独で生じた場合を前提とするものである。
【0163】
ところで、前記図1に示したエンジン101では、燃料噴射弁130が吸気ポート102Aに配置されるが、図36に示すように、燃料噴射弁130が燃焼室106内に直接燃料が噴射する筒内直接噴射式エンジンにも、本願発明に係るブレーキ制御装置を用いることができる。
図36に示したエンジン101は、図1に示したエンジン101に対して、燃料噴射弁130の設置場所を、吸気ポート102Aからシリンダブロックに変更し、燃料噴射弁130の噴孔が直接燃焼室106内に向けられるようにしてある。
【0164】
更に、図36に示す筒内直接噴射式エンジン101では、吸気バルブ105の開特性を可変とする可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113を備えず、吸気バルブ105は、吸気カムシャフト141に軸支されたカム141Aによって一定のバルブリフト量,バルブ作動角及びバルブタイミングを保って開閉駆動される。
従って、図36に示す筒内直接噴射式エンジン101では、吸入空気量が電子制御スロットル(ETB)104によって制御される。
【0165】
図36において、図1に共通する構成部品には同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
尚、筒内直接噴射式エンジン101であって、かつ、可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113などの吸気バルブ105の開特性を可変とする機構を備えるエンジンであってもよい。
【0166】
前記筒内直接噴射式エンジン101では、燃焼室106内に混合気を成層化して燃焼させる成層燃焼が可能で、成層燃焼では、空燃比を大幅にリーン化させることができる。
そして、空燃比を大幅にリーン化させる場合には、空燃比が濃い場合よりも空気量を増やしてエネルギー量を確保する必要が生じ、空気量を増やすために前記電子制御スロットル(ETB)104の開度を大きくすることで、ポンピングロスが小さくなり、燃費がよくなる。
【0167】
しかし、前記電子制御スロットル(ETB)104の開度を大きくすることは、ポンピングロスを低下させることになる一方で、吸気負圧を低下させることになるので、ポンプアップ圧による制動を用いることで、ポンピングロスの低減を図りつつ、制動力を確保できるようにする。
図37のフローチャートは、図36に示した筒内直接噴射式エンジン101における燃焼制御を示す。
【0168】
ステップS1351では、アクセル開度ACC、エンジン回転速度NE、冷却水温度TW、車速VSPなどの信号を読み込む。
ステップS1352では、目標エンジントルクtTeを決定する。前記目標エンジントルクtTeは、アクセル開度ACC及び車速VSPに基づいて設定される基本値を、エンジン101の出力を駆動輪に伝達する変速機の変速比やトルクコンバータのトルク比などに応じて補正して決定される。
【0169】
ステップS1353では、燃焼方式を決定する。
エンジン101における燃焼方式としては、均質ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、成層リーン燃焼の3種類が設定されている。
前記均質ストイキ燃焼・均質リーン燃焼は、吸気行程中の噴射によって均質混合気を燃焼室106内に生成するモードであって、均質ストイキ燃焼は、理論空燃比の均質混合気を生成させ、均質リーン燃焼は、理論空燃比よりもリーンである空燃比(空燃比=20〜30)の均質混合気を生成させる。
【0170】
また、成層リーン燃焼は、平均空燃比としては40程度としつつ、圧縮行程での噴射によって点火プラグ周囲の領域に比較的濃い混合気を生成し、点火プラグによる安定した着火燃焼を可能にするモードである。
燃焼方式の決定においては、図38に示すように、予め目標エンジントルクtTeとエンジン回転速度NEとに応じて区分される領域毎に燃焼方式を記憶したマップを参照し、そのときの目標エンジントルクtTeとエンジン回転速度NEとに対応する燃焼方式を求める。
【0171】
そして、均質ストイキ燃焼が選択されると、ステップS1354へ進み、均質ストイキ燃焼のための燃料噴射制御を実行する。
均質ストイキ燃焼においては、燃料噴射量を理論空燃比相当量に設定する一方、前記酸素センサ129から出力される排気中酸素濃度に応じた信号に基づいて理論空燃比に対する実際の空燃比のリッチ・リーンを判別し、このリッチ・リーンの判断結果に基づいてフィードバック補正係数を設定し、該フィードバック補正係数で前記燃料噴射量を補正する。
【0172】
そして、前記フィードバック補正係数で補正された燃料噴射量に基づいて、吸気行程で前記燃料噴射弁130による燃料噴射を行わせる。
また、均質リーン燃焼が選択されると、ステップS1355へ進み、均質リーン燃焼のための燃料噴射制御を実行する。
均質リーン燃焼においては、燃料噴射量を空燃比=20〜30のリーン空燃比相当量に設定する一方、前記酸素センサ129の出力に基づく空燃比フィードバック制御を停止し、前記燃料噴射量に基づいて、吸気行程で前記燃料噴射弁130による燃料噴射を行わせる。
【0173】
更に、成層リーン燃焼が選択されると、ステップS1356へ進み、成層リーン燃焼のための燃料噴射制御を実行する。
成層リーン燃焼においては、燃料噴射量を空燃比=40程度のリーン空燃比相当量に設定する一方、前記酸素センサ129の出力に基づく空燃比フィードバック制御を停止し、前記燃料噴射量に基づいて、圧縮行程で前記燃料噴射弁130による燃料噴射を行わせる。
【0174】
前記均質ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、成層リーン燃焼では、それぞれの目標空燃比で目標エンジントルクが得られる吸入空気量になるように、前記電子制御スロットル(ETB)104の開度が制御される。
前記均質リーン燃焼や成層リーン燃焼においては、空燃比が理論空燃比よりもリーンに設定されることから、空燃比が濃い場合と同じトルクを発生させるためには、シリンダ内により多くの空気を吸引させる必要が生じ、吸入空気量を増やすためにスロットル開度を大きくすることで、ポンピングロスが小さくなる。
【0175】
特に成層リーン燃焼時には、空燃比を大きくリーン化するため、スロットル開度がより大きく制御されることになるが、これによって、マスタバック132aのブースト負圧が不足するようになると、マスタバック132aによるブレーキ操作力の倍力が不能になってしまう。
そこで、マスタバック132aで要求される必要最小限の吸気負圧を発生させるべく、図39のフローチャートに従って、前記電子制御スロットル(ETB)104の開度を強制的に変更する(負圧制御手段)。
【0176】
まず、ステップS1381では、成層リーン燃焼状態であるか否かを判断し、成層リーン燃焼状態であれば、ステップS1382へ進む。
ステップS1382では、そのときのブースタ負圧(又は吸気負圧)が閾値SL1(許容最小値)よりも小さいか否かを判断する。
ここで、ブースタ負圧が閾値SL1(許容最小値)よりも小さく、大気圧に近い場合には、ステップS1383へ進み、ブースタ負圧が閾値(許容最小値)となる開度に前記電子制御スロットル(ETB)104の目標開度を変更する。
【0177】
具体的には、目標エンジントルクtTeとエンジン回転速度NEとに応じて、吸気負圧が目標値になるスロットル開度を記憶したマップを参照し、そのときの目標エンジントルクtTe及びエンジン回転速度NEの条件で、吸気負圧が目標値になるスロットル開度を検索し、該検索したスロットル開度を、前記電子制御スロットル(ETB)104の目標開度とする(負圧制御手段)。
【0178】
ステップS1383での目標スロットル開度の変更は、目標スロットル開度をより小さく変更することになり、これによって吸入空気量が減少するから、目標エンジントルクtTeを発生させるためには、燃料噴射量を増やす必要が生じ、空燃比はよりリッチに変更されることになる。
尚、成層リーン燃焼で、ブースタ負圧が閾値SL1(許容最小値)よりも小さくなってしまう運転条件であるときに、均質リーン燃焼や均質ストイキ燃焼に切り換えることができる。
【0179】
成層リーン燃焼を、均質リーン燃焼や均質ストイキ燃焼に切り換えると、目標空燃比がよりリッチに変更されるから、同じトルクを発生させるためには、スロットル開度を小さくして吸入空気量を減少させる必要が生じ、吸気負圧は増大することになる(負圧制御手段)。
図40のフローチャートは、マスタバック132aによる倍力が、前記筒内直接噴射式エンジン101の吸気負圧を用いて行われる場合における、ポンプアップ圧の供給制御を示す。
【0180】
図40のフローチャートに示すブレーキ制御は、図12に示したブレーキ油圧回路が用いられる場合の制御を示す。
また、図40のフローチャートは、図18のフローチャートに対して、目標制動力の算出を行うステップと、前輪・後輪の判断を行うステップとの間に、成層リーン燃焼であるか否か、及び/又は、ブースタ負圧が閾値以下であるか否かを判断するステップを追加してあり、他のステップについては、図18のフローチャートのステップと同様な処理を行う。
【0181】
ステップS1361では、ブレーキペダルの操作量(ストローク或いはマスタシリンダ圧)、ブースタ圧、ホイールシリンダ圧などを示す信号の読込みを行う。
ステップS1362では、ABS(Anti lock Braking System),TCS(Traction Control System),VDC(Vehicle Dynamics Control)の作動要求があるか否かを判断する。
【0182】
上記ABS,TCS,VDCの作動要求がある場合には、ステップS1363へ進み、ABS,TCS,VDCの要求に従って、ブレーキ液圧の増減・保持を制御する。
一方、上記ABS,TCS,VDCの作動要求がない場合には、ステップS1364へ進む。
ステップS1364では、ブレーキペダル131の操作量が基準値(例えば0)以上であるか否かに基づいて、制動時であるか否か(運転者による制動要求があるか否か)を判断する。
【0183】
前記ブレーキペダルの操作量は、ブレーキペダルセンサ208で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BS、液圧センサ209で検出されるマスタシリンダ圧MCP、踏力センサで検出されるブレーキペダル131の踏力などである。
前記制動時ではない場合には、ステップS1377へ進み、遮断弁2002A,2002Bを開、モータ2003をオフ、IN弁2005A〜2005Dを閉、前輪側のOUT弁2020A,2020Bを閉、後輪側のOUT弁2020C,2020Dを開とする。
【0184】
これにより、前輪側のホイールシリンダ204,205に対してマスタシリンダ圧が供給され得る状態になり、また、後輪側のホイールシリンダ206,207がリザーバ配管2009と接続され、ホイールシリンダ206,207のシリンダ圧がリリーフされ得る状態になる。
一方、制動時であれば、ステップS1365へ進み、前記ステップS1105と同様にして、目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出する(要求制動力検出手段)。
【0185】
ステップS1366では、成層リーン燃焼であるか否かの判断、及び/又は、ブースタ負圧が閾値SL2(>SL1)以下であるか否かの判断を行う。
成層リーン燃焼が選択される運転領域では、前述のように、空燃比を大きくリーン化させて、スロットル開度を大きくし、これによるポンピングロスの低下によって燃費をよくする。
【0186】
しかし、スロットル開度を大きくすると、吸気負圧が低下し、マスタバック132aの倍力で得られるマスタシリンダ圧が低下し、吸気負圧を充分に確保するために、スロットル開度を小さくすると、ポンピングロスが増大して燃費を悪化させることになってしまう。
そこで、図40のフローチャートに示すブレーキ制御では、吸気負圧が低下する成層リーン燃焼時に、そのときの吸気負圧を用いたマスタバック132aの倍力によって目標制動力が得られない場合には、ポンプアップ圧によって制動を行うようにしてある。
【0187】
前記ステップS1366の判断は、吸気負圧が低く抑制される成層リーン燃焼であるか否かを判断することで、ポンプアップ圧による制動の必要性があるか否かを判断するものであり、成層リーン燃焼であるか否かを判断するか、そのときのブースタ負圧が成層リーン燃焼状態でのブースタ負圧になっているかを判断する。
ステップS1366で、成層リーン燃焼であると判断されるか、及び/又は、ブースタ負圧が成層リーン燃焼状態でのブースタ負圧であると判断されると、ステップS1367へ進む。
【0188】
ステップS1367では、前輪のホイールシリンダ圧の制御か、後輪のホイールシリンダ圧の制御かを判定する。
ここで、前輪のホイールシリンダ圧の制御を行う場合には、ステップS1367からステップS1368へ進む。
尚、ステップS1367の判定は、前輪と後輪とでホイールシリンダ圧の制御が異なることを示し、実際には、前輪のホイールシリンダ圧の制御(ステップS1368〜ステップS1375の処理)と後輪のホイールシリンダ圧の制御(ステップS1376の処理)とが並行して実行される。
【0189】
ステップS1368では、前輪のホイールシリンダ204,205に、ポンプ2004の吐出圧(ポンプアップ圧)を供給して制動を行うポンプアップ圧制動状態であるか否かを判断する。
そして、ポンプアップ圧制動状態であれば、ステップS1374に進んで、ポンプアップ圧制動を継続させる。
【0190】
一方、ポンプアップ圧制動状態でない場合には、ステップS1369へ進み、ポンピングブレーキ状態であるか否かを判断する(ポンピングブレーキ判定手段)。
ポンプアップ圧制動状態でなく、かつ、ポンピングブレーキ状態でもない場合には、ステップS1370へ進む。
ステップS1370では、ブースタ負圧BNP(マスタバック132aの負圧室の負圧)に基づき、前記ステップS1109と同様にして、前記目標制動力の閾値A及び閾値Bを設定する(閾値設定手段)。
【0191】
ステップS1371では、前記目標制動力が閾値A以上であるか否かを判定することで、ポンプ2004(モータ2003)の駆動開始タイミングであるか否かを判断する。
そして、目標制動力が閾値A以上になると、ステップS1372へ進んで、前記モータ2003への通電を開始させる。
ステップS1373で、目標制動力が閾値B以上になったか否かを判断する。
【0192】
目標制動力が閾値B以上になると、ステップS1374に進んで、それまでのマスタシリンダ圧を前輪のホイールシリンダ204,205に供給して制動を行う状態から、ポンプ2004の吐出圧(ポンプアップ圧)をホイールシリンダ204,205に供給して制動を行うポンプアップ圧制動に移行させる(液圧源切替え手段)。
一方、目標制動力が閾値A未満であるとき、及び、目標制動力が閾値A以上でかつ閾値B未満であるときには、ステップS1375へ進み、遮断弁2002A,2002Bを開、モータ2003をオフ、IN弁2005A,2005Bを閉、OUT弁2020A,2020Bを閉として、マスタシリンダ圧で制動を行わせる。
【0193】
一方、ステップS1367で後輪の制御を判定した場合には、ステップS1376へ進み、後輪のホイールシリンダ206,207に対してポンプアップ圧の供給制御を行う。
前記ステップS1374、ステップS1376における制御の詳細は、図22,図23のフローチャートに示したとおりである。
尚、筒内直接噴射式エンジン101と図25に示したブレーキ油圧回路とを組み合わせることができ、その場合、図26のフローチャートのステップS1274において制動状態であると判断された直後に、成層リーン燃焼であるか否かの判断、及び/又は、ブースタ負圧が閾値SL2以下であるか否かの判断を行わせる。
【0194】
そして、成層リーン燃焼であると判断されるか、及び/又は、ブースタ負圧が成層リーン燃焼状態でのブースタ負圧であると判断された場合に、ステップS1275に進み、成層リーン燃焼でないと判断されるか、及び/又は、ブースタ負圧が成層リーン燃焼状態でのブースタ負圧でないと判断された場合に、ステップS1283へ進むようにする。
上記ブレーキ制御によると、そのときの吸気負圧を用いた倍力で目標制動力を得られない場合にポンプアップ圧での制動を行わせるから、筒内直接噴射式エンジン101の成層リーン燃焼で発生させる吸気負圧を低く抑制しつつ、目標制動力での制動を実現できる。
【0195】
また、ポンプアップ圧をホイールシリンダに供給するので、マスタシリンダ圧の不足を補うためにブレーキ用のバキュームタンクを備える必要がなく、ブレーキ油圧回路の製造コストを下げ、また、エンジンルーム内における部品レイアウトの自由度が高まる。
ところで、上記の筒内直接噴射式エンジン101に備えられた前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が生じたり、図12や図25に示したブレーキ油圧回路に異常が生じたりすると、記述した通常制御では、所期の制動力を得られなくなる場合が生じる。
【0196】
そこで、前記異常に対するフェイルセールとして、図41及び図42のフローチャートに示すような処理を実行する。
図41のフローチャートは、前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が発生した場合の対策を示す。
ステップS1401では、前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が生じているか否かを判断する(吸気負圧診断手段)。
【0197】
例えば、目標スロットル開度に実際のスロットル開度が近づかない場合、具体的には、両者の偏差が所定値以上の状態が所定時間以上継続している場合に、前記電子制御スロットル(ETB)104の異常を判定できる。
また、実際のスロットル開度を検出するためのセンサが故障したときに、前記電子制御スロットル(ETB)104の異常を判定させることができる。
【0198】
前記電子制御スロットル(ETB)104に異常が生じている場合には、ステップS1402へ進む。
ステップS1402では、前記電子制御スロットル(ETB)104が低開度域(全閉付近)で動かなくなっているか否かを判断する。
前記電子制御スロットル(ETB)104が中・高開度域で動かなくなっている場合には、ステップS1403へ進み、エンジン回転速度NEが設定回転速度以上になったときに、燃料カットを実行して、エンジン出力を制限する。
【0199】
即ち、前記電子制御スロットル(ETB)104が中・高開度で固着していて、吸入空気量を減少させることができない場合には、吸入空気量に見合った燃料を噴射すると、目標エンジントルクよりも大きくなってしまうので、燃料カットを実行することで、過剰に大きなエンジントルクが発生することを防止する。
ステップS1403での処理は、エンジントルクを制限できればよく、燃料カットの代わりに、同一気筒に対する燃料噴射を間引いて行わせたり、一部気筒を休止させたりしてもよい。
【0200】
また、ステップS1403に進んだ場合の燃焼方式は、均質ストイキ燃焼・均質リーン燃焼・成層リーン燃料のいずれであってもよく、また、強制的に成層リーン燃料を行わせる(目標空燃比をリーン化させる)ことで、エンジントルクを制限することもできる。
一方、前記電子制御スロットル(ETB)104が低開度で固着していている場合には、ステップS1404へ進む。
【0201】
ステップS1404では、燃焼方式を均質ストイキ燃焼に設定し、吸入空気量が少ない状態で走行に必要なエンジントルクが得られるようにする。
ステップS1405では、制動時であるか否かを判断し、制動時であれば、ステップS1406へ進み、制動の開始時からポンプアップ圧による制動を行わせる(第2液圧供給制御手段)。
【0202】
従って、前記電子制御スロットル(ETB)104が中・高開度で固着していて、通常に吸気負圧を発生させることができなくなっていても、必要な制動力を発生させることができる。
尚、前記電子制御スロットル(ETB)104が低開度で固着していている場合には、大きな吸気負圧を発生させることができるので、マスタシリンダ圧による制動を行わせることができる。
【0203】
図42のフローチャートは、ブレーキ油圧回路に異常が生じた場合の対策を示す。
ステップS1411では、ブレーキペダル操作がなされているか否か(制動時であるか否か)を判別し、制動時であれば、ステップS1412へ進む。
ステップS1412では、マスタシリンダ圧の供給系(マスタバック・マスタシリンダ)に異常が生じているか否かを判断する。
【0204】
例えば、マスタシリンダ圧で制動させている状態で、目標ホイールシリンダ圧(目標制動力)と実際のホイールシリンダ圧との偏差が所定以上の状態が所定時間以上継続すると、マスタシリンダ圧の供給系に異常が生じていると判断する。
マスタシリンダ圧の供給系に異常が生じている場合には、ステップS1413へ進み、ポンプアップ圧によって目標制動力が得られるように制御することで、マスタシリンダ圧の異常があっても、所期の制動力が得られるようにする(第2液圧供給制御手段)。
【0205】
一方、ステップS1412で、マスタシリンダ圧の供給系に異常が生じていないと判断された場合には、ステップS1414へ進む。
ステップS1414では、ポンプアップ圧の供給系(ポンプ・モータ)に異常が生じているか否かを判断する(第2液圧診断手段)。
例えば、ポンプアップ圧で制動させている状態で、目標ホイールシリンダ圧(目標制動力)と実際のホイールシリンダ圧との偏差が所定以上の状態が所定時間以上継続すると、ポンプアップ圧の供給系に異常が生じていると判断する。
【0206】
ポンプアップ圧の供給系に異常が生じている場合には、ステップS1415へ進み、図43に示すように、成層リーン燃焼領域で均質リーン燃焼を行わせる燃焼方式の変更を行い、更に、次のステップS1416では、ポンプアップ圧による制動を行わずに、マスタシリンダ圧で制動を行わせるようにする(第1液圧供給制御手段)。
成層リーン燃焼における目標空燃比は、均質リーン燃焼における目標空燃比に比べてリーンであるため、同じ目標エンジントルクを発生させるのに、成層リーン燃焼は均質リーン燃焼よりも多くの空気量を必要とする。
【0207】
従って、成層リーン燃焼は、均質リーン燃焼に比べて、スロットル開度がより高くなり、吸気負圧が低下する。
換言すれば、成層リーン燃焼から均質リーン燃焼に切り換えれば、スロットル開度がより小さく制御され、吸気負圧が増大することになる。
そこで、ポンプアップ圧による制動が不能な場合には、成層リーン燃焼から均質リーン燃焼に切り換えることで、より大きな吸気負圧を発生させ、マスタシリンダ圧で必要な制動力を発生させることができるようにする。
【0208】
尚、本願発明に係るブレーキ制御装置は、ガソリン火花エンジンとの組み合わせに限定されるものではなく、電子制御スロットル(ETB)104を備えたディーゼルエンジンにも適用可能である。
即ち、吸気負圧を発生させるために電子制御スロットル(ETB)104の開度を小さくするディーゼルエンジンにおいても、そのときのブースタ負圧に応じた閾値よりも目標制動力が高い場合に、ポンプアップ圧による制動を行わせるようにすれば、前記吸気負圧の目標を低く抑制しても、必要な制動力を発生させることができ、ポンピングロスの低減を図りつつ、制動力を確保することができる。
【0209】
また、上記実施形態では、ホイールシリンダ圧センサ2015A〜2015D(液圧検出手段)によって各ホイールシリンダ204〜207におけるホイールシリンダ圧を検出させたが、ホイールシリンダ圧を推定させ、該推定結果に基づいてポンプ圧を制御させることができる。
図44に示すように、ホイールシリンダ204〜207の液量とホイールシリンダ圧とに、一定の相関があり、前記相関を用いてホイールシリンダ204〜207の液量からホイールシリンダ圧を推定することができる。
【0210】
前記ホイールシリンダ204〜207の液量QWは、例えば、図25のブレーキ油圧回路の場合、ポンプ2053A,2053Bからの吐出による液量Qw1と、ゲートアウト弁2052A,2052Bから流出する液量Qw2とから求められる。
QW=Qw1−Qw2
ここで、前記ポンプ2053A,2053Bからの吐出による液量Qw1は、ポンプ2053A,2053Bの吐出流量q1を積分した値である。
【0211】
Qw1=∫q1dt
また、前記ポンプ2053A,2053Bの吐出流量q1は、ポンプ2053A,2053Bの1回転当たりの吐出液量Vpと、モータ2067の回転数Nと、ポンプ2053A,2053B内部のリーク流量qLとから、以下のように算出される。
q1=Vp×N−qL
前記吐出液量Vpは、ポンプ2053A,2053B毎に定まる固定値であり、モータ2067の回転数Nは、モータ電流及びモータ電圧から、図45に示すようにして求めることができる。
【0212】
更に、ポンプ吐出圧(ホイールシリンダ圧)と前記リーク流量qLとには、図46に示すように一定の相関があるので、ホイールシリンダ圧の前回の推定結果から、前記リーク流量qLを求めることができる。
即ち、モータ電流及びモータ電圧を検出することで、ポンプの吐出流量q1が求まり、このポンプの吐出流量q1を積分することで、ポンプからの吐出による液量Qw1が求まることになる。
【0213】
一方、ゲートアウト弁2052A,2052Bから流出する液量Qw2は、図47に示すように、ホイールシリンダ圧とマスタシリンダ圧との差圧と、ゲートアウト弁2052A,2052Bのソレノイド電流とから求めることができる。
前記差圧を求めるためのホイールシリンダ圧は、前回の推定結果を用い、前記マスタシリンダ圧は、液圧センサ209による検出値を用いる。
【0214】
ここで、前記ゲートアウト弁2052A,2052Bは、スプリングによって開弁方向に付勢され、電磁力で閉弁するから、ソレノイド電流が小さく、ゲートアウト弁2052A,2052Bの前後における差圧が大きいほど、前記液量Qw2は多くなる。
上記のように、前記ゲートアウト弁2052A,2052Bのソレノイド電流と、マスタシリンダ圧とを検出することで、前記液量Qw2を求めることができ、前記液量Qw1と前記液量Qw2との差分から、ホイールシリンダの液量QWが求まる。
【0215】
そして、前記ホイールシリンダ204〜207の液量QWに基づいて、図44のテーブルを参照して、ホイールシリンダ圧が推定される。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】本発明の実施形態におけるエンジンの構成図。
【図2】本発明の実施形態における可変バルブリフト機構VELを示す断面図(図3のA−A断面図)。
【図3】上記可変バルブリフト機構VELの側面図。
【図4】上記可変バルブリフト機構VELの平面図。
【図5】上記可変バルブリフト機構VELに使用される偏心カムを示す斜視図。
【図6】上記可変バルブリフト機構VELの低リフト時の作用を示す断面図(図3のB−B断面図)。
【図7】上記可変バルブリフト機構VELの高リフト時の作用を示す断面図(図3のB−B断面図)。
【図8】上記可変バルブリフト機構VELにおける揺動カムの基端面とカム面に対応したバルブリフト特性図。
【図9】上記可変バルブリフト機構VELのバルブリフトの特性図。
【図10】上記可変バルブリフト機構VELにおける制御軸の回転駆動機構を示す斜視図。
【図11】本発明の実施形態における可変バルブタイミング機構VTCを示す断面図。
【図12】本発明の実施形態におけるブレーキの油圧回路図。
【図13】本発明の実施形態におけるVTC,VEL及びETBの制御を示すフローチャート。
【図14】本発明の実施形態におけるマスタバックにおけるブレーキ踏力とマスタシリンダ圧との相関を示す図。
【図15】本発明の実施形態における目標ブースタ負圧の設定を説明するための図。
【図16】本発明の実施形態における吸気負圧の特性を示す図。
【図17】本発明の実施形態における吸気負圧の特性を示す図。
【図18】図12のブレーキ油圧回路の制御を示すフローチャート。
【図19】本発明の実施形態におけるブレーキペダルのストローク量と目標制動力との相関を示す図。
【図20】本発明の実施形態におけるマスタシリンダ圧と目標制動力との相関を示す図。
【図21】本発明の実施形態におけるポンプアップ圧制動の開始の判断に用いる閾値とブースタ圧との相関を示す図。
【図22】図12のブレーキ油圧回路におけるポンプアップ圧制御を示すフローチャート。
【図23】図12のブレーキ油圧回路におけるポンプアップ圧制御を示すフローチャート。
【図24】本発明の実施形態におけるポンピングブレーキの判定に用いる時間の閾値と、吸気負圧及びエンジン回転速度との相関を示す図。
【図25】本発明の実施形態におけるブレーキの油圧回路図。
【図26】図25のブレーキ油圧回路の制御を示すフローチャート。
【図27】図25のブレーキ油圧回路におけるポンプアップ圧制御のパターンを示す図。
【図28】図25のブレーキ油圧回路におけるホイールシリンダ毎の油圧制御のパターンを示す図。
【図29】本発明の実施形態においてブレーキペダルを小さく操作した場合の圧力変化を示すタイムチャート。
【図30】本発明の実施形態においてブレーキペダルを小さく操作した場合の圧力変化を示すタイムチャート。
【図31】本発明の実施形態においてブレーキペダルを大きく操作した場合の圧力変化を示すタイムチャート。
【図32】本発明の実施形態においてブレーキペダルを大きく操作した場合の圧力変化を示すタイムチャート。
【図33】本発明の実施形態における可変バルブリフト機構(VEL)に異常が発生した場合の処理を示すフローチャート。
【図34】本発明の実施形態における電子制御スロットル(ETB)に異常が発生した場合の処理を示すフローチャート。
【図35】本発明の実施形態におけるブレーキ油圧回路に異常が発生した場合の処理を示すフローチャート。
【図36】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンを示す図。
【図37】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンの燃焼方式の切り替え制御を示すフローチャート。
【図38】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンの各燃焼方式の領域を示す図。
【図39】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンのスロットル開度の補正処理を示すフローチャート。
【図40】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンの吸気負圧を用いるブレーキ油圧回路の制御を示すフローチャート。
【図41】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンの電子制御スロットル(ETB)に異常が発生した場合の処理を示すフローチャート。
【図42】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンを組み合わされるブレーキ油圧回路に異常が発生した場合の処理を示すフローチャート。
【図43】本発明の実施形態における筒内直接噴射式エンジンの各燃焼方式の領域を変更する処理を示す図。
【図44】本発明の実施形態におけるホイールシリンダ液量とホイールシリンダ圧との相関を示す線図。
【図45】本発明の実施形態におけるモータ電流及びモータ電圧とモータ回転数Nとの相関を示す線図。
【図46】本発明の実施形態におけるポンプ吐出圧と内部リーク流量との相関を示す線図。
【図47】本発明の実施形態におけるゲートアウト弁のソレノイド電流及びゲートアウト弁の前後差圧と、ゲートアウト弁を流れる流量との相関を示す線図。
【符号の説明】
【0217】
101…内燃機関、104…電子制御スロットル(ETB)、105…吸気バルブ、112…可変バルブリフト機構(VEL)、113…可変バルブタイミング機構(VTC)、114…エンジンコントロールユニット(ECU)、115…エアフローセンサ、116…アクセルペダルセンサ、117…クランク角センサ、118…スロットルセンサ、131…ブレーキペダル、132a…マスタバック(負圧倍力手段)、132b…負圧センサ(負圧検出手段)、201…ブレーキコントロールユニット(BCU)、202…油圧ユニット、203…マスタシリンダ(第1液圧発生手段)、204〜207…ホイールシリンダ、208…ブレーキペダルセンサ、209…液圧センサ、2002A,2002B…遮断弁、2003…モータ、2004…ポンプ(第2液圧発生手段)、2005A〜2005D…IN弁、2020A〜2020D…OUT弁、2015A〜2015D…ホイールシリンダ圧センサ(液圧検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気絞り量を制御して目標吸気負圧を発生させる負圧制御手段を備えたエンジンを搭載する車両のブレーキ制御装置であって、
前記エンジンの吸気負圧を利用してブレーキ操作力を倍力する負圧倍力手段と、
前記負圧倍力手段で倍力されたブレーキ操作力に応じて第1液圧を発生させる第1液圧発生手段と、
ポンプによって第2液圧を発生させる第2液圧発生手段と、
要求制動力を検出する要求制動力検出手段と、
前記要求制動力が閾値よりも小さい場合に、前記第1液圧をホイールシリンダに供給し、前記要求制動力が閾値以上である場合に、前記第1液圧から切り替えて前記第2液圧を前記ホイールシリンダに供給する液圧源切替え手段と、
前記エンジンの吸気負圧の発生状態に応じて前記閾値を設定する閾値設定手段と、
を備えたことを特徴とする車両のブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記負圧倍力手段の負圧室の負圧を検出する負圧検出手段を備え、
前記閾値設定手段が、前記負圧室の負圧に応じて前記閾値を設定することを特徴とする請求項1記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記閾値設定手段が、前記目標負圧に応じて前記閾値を設定することを特徴とする請求項1記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記閾値設定手段が、液圧源の切替えを判断するための第1閾値と、前記ポンプの駆動開始を判断するための第2閾値(≦前記第1閾値)とを設定し、
前記液圧源切替え手段が、前記要求制動力が前記第2閾値以上になった時点で前記ポンプの駆動を開始させ、前記要求制動力が前記第1閾値以上になった時点で、前記第1液圧から切り替えて前記第2液圧を前記ホイールシリンダに供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記閾値設定手段が、液温が基準温度以下であるときに、前記第1閾値と前記第1閾値よりも小さい第2閾値を設定し、液温が前記基準温度を超えるときに、前記第1閾値と前記第2閾値とを同じ値に設定することを特徴とする請求項4記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記要求制動力検出手段が、ブレーキペダルのストローク量、前記ブレーキペダルの踏力、前記第1液圧のうちの少なくとも1つに基づいて、要求制動力を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記ホイールシリンダ内の液圧を検出する液圧検出手段と、
前記第2液圧が前記ホイールシリンダに供給される状態で、前記ホイールシリンダ内の液圧が要求制動力に対応する圧力になるように、前記ポンプの発生油圧の前記ホイールシリンダへの供給を制御する液圧制御手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項8】
ポンピングブレーキの実施を判定するポンピングブレーキ判定手段と、
ポンピングブレーキの実施が判定されたときに、前記液圧源切替え手段に優先して、前記第1液圧から前記第2液圧への切り替えを行うポンピングブレーキ制御手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記ポンピングブレーキ判定手段が、ブレーキペダルの解放後から設定時間内に再度ブレーキペダルが操作されたときに、ポンピングブレーキの実施を判定することを特徴とする請求項8記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項10】
前記ポンピングブレーキ判定手段が、エンジンの吸気負圧が小さく、エンジン回転速度が低いほど前記設定時間を長く設定することを特徴とする請求項9記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項11】
前記負圧制御手段の異常の有無を診断する吸気負圧診断手段と、
前記負圧制御手段の異常が診断された場合に、前記液圧源切替え手段による前記ホイールシリンダへの第1液圧の供給を禁止して、前記第2液圧を前記ホイールシリンダに供給する第2液圧供給制御手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項12】
前記第2液圧発生手段の異常の有無を診断する第2液圧診断手段と、
前記第2液圧発生手段の異常が診断された場合に、前記液圧源切替え手段による前記ホイールシリンダへの第2液圧の供給を禁止して、前記第1液圧を前記ホイールシリンダに供給し、かつ、前記負圧制御手段における目標吸気負圧を増大させる第1液圧供給制御手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の車両のブレーキ制御装置。
【請求項13】
前記負圧倍力手段及び/又は前記第1液圧発生手段の異常の有無を診断する第1液圧診断手段と、
前記負圧倍力手段及び/又は前記第1液圧発生手段の異常が診断された場合に、前記液圧源切替え手段による前記ホイールシリンダへの第1液圧の供給を禁止して、前記第2液圧を前記ホイールシリンダに供給する第2液圧供給制御手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の車両のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2009−220603(P2009−220603A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64021(P2008−64021)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】