説明

車両の制御装置及び車両制御用情報の車両間相互利用システム

【課題】メモリに記憶している環境情報がクリアされてしまった場合でも、環境情報を用いた車両の制御を高い制御精度で継続して行えるようにする。
【解決手段】記憶手段12Aの記憶内容がクリアされた場合、車車間通信手段16Aによって自車両2Aを基準とする所定エリア内の他車両2Bに対し、他車両2Bが有する環境情報の送信を要求する。そして、他車両2Bから送信された環境情報を取得し、自車両2Aに関する環境情報として記憶手段12Aに記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御に必要な情報、特に、大気圧等の環境情報の車両間での相互利用を目的とした車両の制御装置及び車両制御用情報の車両間相互利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される車両側装置とセンターとを通信ネットワークにより接続して構成される車両の走行条件学習システムについて開示されている。このシステムは、運転者の操作量等の操作状態や作動部の作動状態に関するデータを車両側装置からセンターに送信し、センターでは車両側装置から送信されたデータに基づき、運転者の運転傾向に適した制御特性を決定し、その制御特性に関連するデータをセンターから車両側装置に送信するようにしたものである。特許文献1の記載によれば、車両の走行条件を学習していく機能を車両側装置ではなくセンターに持たせたことで、走行条件学習システムの低コスト化、及びシステムのアップデートの容易化が可能になったとされている。
【特許文献1】特開2003−4129号公報
【特許文献2】特開昭64−45939号公報
【特許文献3】特開昭61−28739号公報
【特許文献4】特開2000−10605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両の制御、例えば、エンジンの制御に用いる情報の1つに大気圧等の環境情報がある。環境情報は例えば車両の制御を通して学習することができる。例えば、エンジンの制御に用いる大気圧情報は、エアフローメータ等の流量測定手段で測定される吸入空気流量から学習されている。学習された大気圧情報はECUのメモリに記憶され、次回のエンジンの始動時にはメモリに記憶されている大気圧情報に基づいてエンジンの制御が行われる。
【0004】
しかし、メモリの記憶内容は、ECUに接続されるバッテリを取り外した場合等、ECUへの電源供給の遮断に伴ってクリアされてしまう。メモリの記憶内容がクリアされた後では、エンジンの制御精度の悪化を防止するために新たに大気圧情報を取得する必要が生じる。大気圧情報は大気圧センサ等の専用のセンサを車両毎に設けることで取得できるが、センサの数が増えればそれだけコストも高くついてしまう。
【0005】
そこで、上記の従来技術のように通信ネットワークを利用し、センター(サーバ)から車両側装置(車載制御端末)に必要な情報を送信することが考えられる。しかし、大気圧等の環境情報は車両が位置している場所(環境)に依存するため、車両から遠く離れたセンターにおいて車両の位置に応じた環境情報を取得することは難しい。正確な環境情報を送信することができなければ精度の高い車両制御を行うことができない。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、記憶している環境情報がクリアされてしまった場合でも、環境情報を用いた車両の制御を高い制御精度で継続して行えるようにすること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、
自車両に関する環境情報を記憶する記憶手段を有し、記憶されている環境情報を用いて車両の制御を行う制御装置において、
他車両との間で相互に通信可能な車車間通信手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記車車間通信手段によって自車両を基準とする所定エリア内の他車両に対し、当該他車両が有する環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両から送信された環境情報を取得し、自車両に関する環境情報として前記記憶手段に記録する記録手段と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、
前記エリア内の複数の他車両との距離を計測する計測手段と、
計測結果に基づいて複数の他車両の中から最も近い位置にある他車両を選定する近距離車両選定手段とをさらに備え、
前記記録手段は、選定された他車両から送信された環境情報を自車両に関する環境情報として前記記憶手段に記録することを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
環境情報を用いて制御される制御対象の始動を判定する始動判定手段をさらに備え、
前記情報送信要求手段は、前記制御対象の始動時、他車両に対して当該他車両が有する環境情報の送信を要求することを特徴としている。
【0010】
また、第4の発明は、上記の目的を達成するため、
自車両に関する環境情報を車両の制御を通して学習する学習手段と、学習された環境情報の学習値を記憶する記憶手段とを有し、記憶されている環境情報の学習値を用いて車両の制御を行う制御装置において、
他車両との間で相互に通信可能な車車間通信手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記車車間通信手段によって自車両を基準とする所定エリア内の他車両に対し、当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両から送信された環境情報の学習値を取得し、自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録する記録手段と、
を備えることを特徴としている。
【0011】
第5の発明は、第4の発明において、
前記エリア内の複数の他車両との距離を計測する計測手段と、
計測結果に基づいて複数の他車両の中から最も近い位置にある他車両を選定する近距離車両選定手段とをさらに備え、
前記記録手段は、選定された他車両から送信された環境情報の学習値を自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録することを特徴としている。
【0012】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、
前記情報送信要求手段は、前記車車間通信手段によって前記エリア内の他車両に対し、当該他車両が有する環境情報の学習値の送信と併せて学習履歴の送信も要求し、
前記記録手段は、前記他車両から送信された学習履歴から当該他車両における環境情報の学習が完了していると判断される場合に、当該他車両から送信された環境情報の学習値を自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録することを特徴としている。
【0013】
第7の発明は、第4乃至第6の何れか1つの発明において、
環境情報を用いて制御される制御対象の始動を判定する始動判定手段をさらに備え、
前記情報送信要求手段は、前記制御対象の始動時、他車両に対して当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求することを特徴としている。
【0014】
また、第8の発明は、上記の目的を達成するため、
車両毎に搭載された車載制御端末と、複数の前記車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバとから構成され、車両の制御に必要な情報を必要に応じて車両間で利用し合う車両制御用情報の車両間相互利用システムであって、
前記車載制御端末は、
自車両に関する環境情報を記憶する記憶手段と、
記憶されている環境情報を用いて車両の制御を行う制御手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記サーバに対して環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記サーバから送信された環境情報を取得し、自車両に関する環境情報として前記記憶手段に記録する記録手段とを備え、
前記サーバは、
前記車載制御端末から情報送信要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段とを備える
ことを特徴としている。
【0015】
また、第9の発明は、上記の目的を達成するため、
車両毎に搭載された車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバであって、
前記車載制御端末から車両の制御に用いる環境情報の送信の要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段と、
を備えることを特徴としている。
【0016】
また、第10の発明は、上記の目的を達成するため、
車両毎に搭載された車載制御端末と、複数の前記車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバとから構成され、車両の制御に必要な情報を必要に応じて車両間で利用し合う車両制御用情報の車両間相互利用システムであって、
前記車載制御端末は、
自車両に関する環境情報を車両の制御を通して学習する学習手段と、
学習された環境情報の学習値を記憶する記憶手段と、
記憶されている環境情報の学習値を用いて車両の制御を行う制御手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記サーバに対して環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記サーバから送信された環境情報の学習値を取得し、自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録する記録手段とを備え、
前記サーバは、
前記車載制御端末から情報送信要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報の学習値を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段とを備える
ことを特徴としている。
【0017】
また、第11の発明は、上記の目的を達成するため、
車両毎に搭載された車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバであって、
前記車載制御端末から車両の制御に用いる環境情報の学習値の送信の要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報の学習値を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、車車間通信によって自車両の近隣に存在する他車両から当該他車両が有する環境情報を取得することができるので、記憶している環境情報がクリアされてしまった場合でも、環境情報を用いた車両の制御を高い制御精度で継続して行うことができる。
【0019】
第2の発明によれば、自車両のより近くに位置する他車両から環境情報を取得することができるので、自車両の環境により見合った車両制御を行うことが可能となる。
【0020】
第3の発明によれば、車車間通信による他車両からの環境情報の取得を制御対象の始動時に行うことで、環境情報の取得から車両制御が開始されるまでの間の環境の変化によって、環境情報を用いた車両制御の制御精度が悪化してしまうことを防止できる。
【0021】
また、第4の発明によれば、車車間通信によって自車両の近隣に存在する他車両から当該他車両が有する環境情報の学習値を取得することができ、記憶している環境情報の学習値がクリアされてしまった場合でも、取得した学習値を初期値として環境情報の学習を再開することができる。これにより、再度学習が完了するまでの時間を短縮することができ、環境情報を用いた車両の制御を高い制御精度で継続して行うことができる。
【0022】
第5の発明によれば、自車両のより近くに位置する他車両から環境情報の学習値を取得することができるので、自車両の環境により見合った車両制御を行うことが可能となる。
【0023】
第6の発明によれば、環境情報の学習値を取得する他車両を既に学習が完了している車両に限定することで、再度学習が完了するまでの時間を確実に短縮することが可能となる。
【0024】
第7の発明によれば、車車間通信による他車両からの環境情報の学習値の取得を制御対象の始動時に行うことで、環境情報の学習値の取得から車両制御が開始されるまでの間の環境の変化によって、環境情報を用いた車両制御の制御精度が悪化してしまうことを防止できる。
【0025】
また、第8及び第9の発明によれば、通信ネットワークを介してサーバから環境情報を取得することができ、しかも、その環境情報は自車両の近隣に存在する他車両が有する環境情報であるので、記憶している環境情報がクリアされてしまった場合でも、環境情報を用いた車両の制御を高い制御精度で継続して行うことができる。
【0026】
また、第10及び第11の発明によれば、通信ネットワークを介してサーバから環境情報の学習値を取得することができるので、記憶している環境情報がクリアされてしまった場合でも、取得した学習値を初期値として環境情報の学習を再開することができる。しかも、取得する学習値は自車両の近隣に存在する他車両が有する環境情報の学習値であるので、再度学習が完了するまでの時間を短縮することができ、環境情報を用いた車両の制御を高い制御精度で継続して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。
【0028】
本実施形態では、本発明を車両間での大気圧学習値の相互利用に適用している。車両のエンジンでは、その制御のためのパラメータとして大気圧情報を用いている。この大気圧情報は、エンジンの運転を通して例えば吸入空気流量から学習され、ECUのメモリに記憶される。しかし、メモリに記憶されている大気圧学習値はECUに接続されるバッテリを取り外した場合にはクリアされる。そこで、本実施形態では、大気圧学習値がクリアされた場合、他の車両から大気圧学習値を取り込んで初期値として使用することにしている。
【0029】
図1は、本実施形態にかかる車両間での大気圧学習値の相互利用システムの概略図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは少なくとも2台の車両によって構成される。各車両2A,2Bには、エンジンを含む車両全体の制御装置であるECU10A,10Bが搭載されている。ECU10A,10Bにはメモリ12A,12Bが備えられている。ECU10A,10Bは、エンジンの運転を通して大気圧を学習し、学習で得られた大気圧学習値をメモリ12A,12Bに記憶する。メモリ12A,12Bの記憶内容は、車載のバッテリ14A,14BからECU10A,10Bへ電力が供給されている間は保持されている。
【0030】
また、各車両2A,2Bには、他の車両との間で情報通信を行うための車車間通信装置16A,16Bが搭載されている。さらに、自車両の現在位置を取得するためのGPS18A,18Bも搭載されている。車車間通信装置16A,16B及びGPS18A,18BはECU10A,10Bに接続され、ECU10A,10Bによってその動作を制御されている。
【0031】
二台の車両2A,2Bは、車車間通信装置16A,16Bを用いることで、メモリ12A,12Bに記憶されている大気圧学習値を相互に利用し合うことができる。例えば、車両2Aにおいてバッテリ14AがECU10Aから外され、メモリ12Aの記憶内容がクリアされたとする。この場合、車両2AのECU10Aは、車車間通信装置16Aによって車両2Bに大気圧学習値の送信を要求する。車両2BのECU10Bは、車両2Aからの情報送信要求を受信したら、メモリ12Bから大気圧学習値を読み出して車車間通信装置16Bによって車両2Aに大気圧学習値を送信する。車両2AのECU10Aは、車両2Bから大気圧学習値が送信されてきたら、それをメモリ12Aに書き込んで大気圧学習値を初期化する。このような動作により、車両2Bで学習された大気圧学習値を車両2Aで利用することが可能になる。
【0032】
車車間通信の方法としては、例えば、無線LANを用いることができる。この場合、車両間の距離が近ければ、図1に示すように、車両同士で直接通信を行うことができる。しかし、電波が届く範囲には限界があるため、車両間の距離がある程度大きくなると車両同士で直接通信を行うことはできない。そこで、ある程度の距離が離れた車両間では、以下に説明するような方法で車車間通信を行うようになっている。
【0033】
図2は、インフラ設備として構築されている通信ネットワーク30を用いる方法を示している。通信ネットワーク30には複数の中継局34,36が接続されている。各中継局34,36は相互に適当な距離を置いて配置され、それぞれカバーできるエリアを有している。ここでは中継局34のカバーエリア内に車両2A,2B,2Cが存在し、中継局36のカバーエリア内に車両2Dが存在するものとする。車両2Aから見た場合、車両2B,2Cは同一のエリア内に存在する。この場合、車両2Aから直接電波が届く距離にある車両2Bとは直接通信し、直接電波が届かない距離にある車両2Cとは中継局34を介して通信する。また、車両2Aと異なるエリアに存在する車両2Dとは、中継局34、通信ネットワーク30及び中継局36を介して通信する。
【0034】
図3は、複数の車両によって構成されるアドホックネットワークを用いる方法を示している。車両2Aが他の車両と車車間通信を行う場合、車両2Aから直接電波が届く距離にある車両2Bとは直接通信する。車両2Aからは直接電波は届かないが車両2Bから直接電波が届く距離にある車両2C,2Dとは、車両2Bを中継ノードとして使用し、車両2Bを介して通信する。同様に、車両2Bからも直接電波は届かないが車両2Dから直接電波が届く距離にある車両2Eとは、車両2Bと車両2Dとを中継ノードとして使用し、これら車両2B,2Dを介して通信する。
【0035】
本実施形態では、車両同士で直接通信できない場合の通信方法として、図2に示す方法と図3に示す方法の何れの方法を用いてもよい。或いは、図2に示す方法と図3に示す方法の双方を用いてもよい。例えば、街中や幹線道路沿いのようにインフラ設備が整っている地域では、図2に示すような既存の通信ネットワークを用いて通信し、田舎のようにインフラ設備が整っていない地域では、図3に示すようなアドホックネットワークを用いて通信してもよい。
【0036】
ところで、システムが多数の車両から構成されている場合、どの車両から取り込んだ大気圧学習値を初期値として使用するかによって学習再開後の学習精度に差が生じる。以下では、図4を参照し、車両2Aの他に複数の車両2B〜2Gが存在している場合において、どの車両から車両2Aに大気圧学習値を取り込むのか具体的に説明する。
【0037】
図4に示すように、車両2Aが他の車両から大気圧学習値を取り込む場合、先ず、車両2Aを中心とする所定エリアが有効エリアとして設定される。大気圧は場所によって異なるため、車両2Aからあまりにも遠く離れている車両の大気圧学習値を用いても、精度の高いエンジン制御を行うことができない。前記の有効エリアは有効な大気圧学習値が得られる範囲との仮定の上で設定されるものであり、有効エリア外の車両2Dは大気圧学習値の取り込み先から除外される。
【0038】
次に、有効エリア内の車両2B,2C,2E,2F,2Gの中から、大気圧学習値の学習が完了している車両が選別される。これは次の理由による。有効エリア内に新車工場やヤードがある場合、そこにある車両は未運転のために大気圧学習が完了していない可能性がある。また、有効エリア内に整備工場にある場合、そこにある車両はバッテリの取り外しによってメモリの記憶内容がクリアされている可能性がある。これらの車両が有する大気圧学習値は精度が低く、車両2Aに取り込んで使用するメリットが無い。そこで、大気圧学習が完了していない車両については、大気圧学習値の取り込み先から除外することにしている。
【0039】
大気圧学習が完了しているか否かは、車車間通信によって各車両の学習完了履歴を参照することで判定することができる。学習完了フラグが立っていれば、その車両については大気圧学習が完了していると判断できる。図4においては、フラグマークが付いている車両2B,2D,2E,2Gにおいて大気圧学習が完了している。ただし、車両2Dは前述のように有効エリア外であるため、大気圧学習値の取り込み先からは除外される。
【0040】
そして、有効エリア内にあり且つ大気圧学習が完了している車両2B,2E,2Gの中から、車両2Aに最も近い車両2Bが大気圧学習値の取り込み先として選択される。車両2Aの位置における大気圧は、車両2Aに最も近接した車両2Bの位置における大気圧に最も近いと考えられる。したがって、車両2Bから大気圧学習値を取得することで、正確な大気圧情報に基づく精度の高いエンジン制御を行うことが可能になる。
【0041】
車両2Aと他の車両との距離は、GPSによって取得される各車両の位置情報から測定することができる。同様に、他の車両が有効エリア内にいるか否かについても、GPSによって取得される各車両の位置情報から判定することができる。なお、距離だけで見れば車両2Fが最も車両2Aに近いが、前述のように車両2Fは大気圧学習が完了していないため、大気圧学習値の取り込み先からは除外される。
【0042】
以上説明した大気圧学習値の取り込み先の選択は、ECUによって実行される学習値クリア後の初期化処理において行われる。図5のフローチャートは、本実施形態においてECUにより実行される初期化処理のルーチンを示している。このルーチンは、ECUによって実行されるエンジン制御ルーチン(メインルーチン)のサブルーチンとして実行される。
【0043】
図5に示すルーチンの最初のステップS100では、メモリに記憶されている大気圧学習値がクリアされたか否か判定する。学習値がクリアされていなければ初期化の必要はないので、その場合には初期化処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0044】
大気圧学習値がクリアされた場合、次のステップS102では、エンジンの始動時か否か判定する。車両のスタートスイッチがオンになることでECUは起動するが、必ずしもエンジンも始動するとは限らない。エンジンの始動は、運転者によるその後の操作により、或いはECUの判断によって行われる。このため、ECUが起動してからエンジンが始動するまでの間には時間的なずれがあり、その間に大気圧が変化する場合が考えられる。例えば、ECUの起動後に車両が輸送され、全くの別の場所でエンジンが始動した場合等である。このような場合、ECUの起動時に初期化を行うと、結果として誤った情報を取得することになりかねない。そこで、本ルーチンでは、エンジンの始動を条件として以降の初期化処理を行い、エンジンが始動していないときには誤った初期化を避けるために初期化処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0045】
エンジン始動時の場合、次のステップS104では、車車間通信によって近隣の車両、具体的には、自車両を中心とする有効エリア内の車両から学習情報を取得する。ここでいう学習情報とは、その車両のメモリに記憶されている大気圧学習値と学習完了履歴である。車車間通信では、前述のように、車両同士の直接通信の他、固定の通信ネットワークを用いた通信やアドホックネットワークを用いた通信を利用する。
【0046】
次のステップS106では、ステップS104で取得された各車両の学習完了履歴に基づき、学習完了履歴の有る車両、つまり、学習完了フラグの立っている車両の有無を判定する。学習完了履歴の有る車両が無ければ、大気圧学習値の取り込み先が存在しないことになるので、初期化処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0047】
学習完了履歴が有る車両が存在する場合、次のステップS108では、学習完了履歴が有る各車両の距離情報を取得する。具体的には、車車間通信によって各車両のGPSによる位置情報を取得し、各車両の位置情報と自車両の位置情報とから自車両と各車両との距離を計測する。
【0048】
そして、最後のステップS110では、ステップS108で取得された距離情報に基づき、学習完了履歴が有る車両の中から自車両に最も近い位置にある車両を特定する。そして、ステップS104で既に取得している当該車両の学習情報(大気圧学習値)に基づいて自車両の大気圧学習値を初期化する。
【0049】
上記のルーチンが実行されることにより、メモリに記憶している大気圧学習値がクリアされてしまった場合でも、他の車両から取得した大気圧学習値を初期値として大気圧学習を再開することができる。これにより、再度学習が完了するまでの時間を短縮することができ、大気圧基づくエンジン制御を高い制御精度で継続して行うことができる。
【0050】
本実施形態では、ECUによりステップS100の処理が実施されることで、第1の発明及び第4の発明にかかる「クリア判定手段」が実現されている。また、ステップS104の処理が実施されることで、第1の発明及び第4の発明にかかる「情報送信要求手段」が実現されている。また、ステップS110の処理が実施されることで、第1の発明及び第4の発明にかかる「記録手段」が実現されている。
【0051】
さらに、本実施形態では、ECUによりステップS108の処理が実施されることで、第2の発明及び第5の発明にかかる「計測手段」が実現されている。また、ステップS110の処理が実施されることで、第2の発明及び第5の発明にかかる「近距離車両選定手段」が実現されている。また、ステップS102の処理が実施されることで、第3の発明及び第7の発明にかかる「始動判定手段」が実現されている。また、ステップS106の処理が実施されることで、第6の発明が実現されている。
【0052】
実施の形態2.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態2について説明する。
【0053】
本実施形態では、実施の形態1と同じく、本発明を車両間での大気圧学習値の相互利用に適用している。ただし、実施の形態1は車両間の車車間通信によって相互利用システムを構成しているのに対し、本実施形態は通信ネットワークを利用したクライアント−サーバシステムとして相互利用システムを構成している点に特徴がある。
【0054】
図6は、本実施形態にかかる車両間での大気圧学習値の相互利用システムの概略図である。図6に示すように、本実施形態のシステムは通信ネットワーク30、通信ネットワーク30に設けられた複数の中継局34,36、及びサーバ32を含んでいる。また、本実施形態のシステムには少なくとも2台の車両も含まれる。各車両4A,4Bには、エンジンを含む車両全体の制御装置であるECU20A,20Bが搭載されている。ECU20A,20Bにはメモリ22A,22Bが備えられている。メモリ22A,22Bには大気圧の学習値が記憶されている。メモリ22A,22Bの記憶内容は、車載のバッテリ24A,24BからECU20A,20Bへ電力が供給されている間は保持されている。
【0055】
また、各車両4A,4Bには、無線通信によって通信ネットワーク30に接続するための通信装置26A,26Bが搭載されている。ECU20A,20Bの起動時には、通信装置26A,26Bと最寄りの中継局34,36との間で通信が確立されるようになっている。さらに、自車両の現在位置を取得するためのGPS28A,28Bも搭載されている。本実施形態では、ECU20A,20B、メモリ22A,22B、通信装置26A,26B、及びGPS28A,28Bによって、第8の発明及び第10の発明にかかる「車載制御端末」が構成されている。
【0056】
実施の形態1では、車両間の車車間通信によって大気圧学習値を相互に利用し合っているのに対し、本実施形態では、各車両4A,4Bは中継局34,36と通信ネットワーク30を介してサーバ32と通信し、サーバ32との通信を介してメモリ22A,22Bに記憶されている大気圧学習値を相互に利用し合う。例えば、車両4Aにおいてバッテリ24AがECU20Aから外され、メモリ22Aの記憶内容がクリアされたとする。この場合、車両4AのECU20Aは、サーバ32に大気圧学習値の送信を要求する。サーバ32は、車両4Aからの情報送信要求を受信したら、他の車両4Bに対して大気圧学習値の送信を要求する。そして、情報送信要求に応じて車両4Bから大気圧学習値が送信されてきたら、サーバ32はそれを受け取って車両2Aに転送する。車両4AのECU20Aは、サーバ32から大気圧学習値が送信されてきたら、それをメモリ22Aに書き込んで大気圧学習値を初期化する。このような動作により、車両4Bで学習された大気圧学習値を車両4Aで利用することが可能になる。
【0057】
本実施形態によれば、通信ネットワーク30に接続可能な圏内にある多数の車両間で大気圧学習を相互利用することができる。しかし、サーバ32が大気圧学習値の取り込み先としてどの車両を選択するかによって、サーバ32から送信された大気圧学習値を初期値として学習を再開した後の学習精度に差が生じる。以下では、図7を参照し、情報送信を要求している車両4Aの他に複数の車両4B〜4Eが通信ネットワーク30に接続している場合において、サーバ32がどの車両から大気圧学習値を取り込むのか具体的に説明する。
【0058】
図7に示すように、通信ネットワーク30には複数の中継局34,36,38が設けられ、各車両4A〜4Eは何れかの中継局34,36,38との間で通信を行っている。サーバ32は、先ず、車両4Aが通信している中継局34と、その中継局34から一定範囲にある中継局36とを有効エリアとして設定し、それら中継局34,36と通信している車両4B,4C,4Eを選択する。有効エリア外の中継局38と通信している車両4Dは大気圧学習値の取り込み先から除外される。
【0059】
次に、サーバ32は、有効エリア内の車両4B,4C,4Eの中から、大気圧学習値の学習が完了している車両を選別する。大気圧学習が完了しているか否かは、各車両の学習完了履歴を参照することで判定することができる。学習完了フラグが立っていれば、その車両については大気圧学習が完了していると判断できる。図7においては、フラグマークが付いている車両4B,4Eにおいて大気圧学習が完了している。
【0060】
そして、サーバ32は、有効エリア内にあり且つ大気圧学習が完了している車両4B,4Eの中から、車両4Aに最も近い車両4Bが大気圧学習値の取り込み先として選択する。車両4Aと他の車両との距離は、GPSによって取得される各車両の位置情報から測定することができる。大気圧学習が完了している車両のうち車両4Aに最も近い車両4Bから大気圧学習値を取得し、それを車両4Aに転送することで、車両4Aでは正確な大気圧情報に基づく精度の高いエンジン制御を行うことが可能になる。
【0061】
以上説明したサーバ内の処理は、車両からの学習情報の送信要求を受けて実行される。車両のECUは、学習値クリア後の初期化処理においてサーバに学習情報の送信を要求する。図8のフローチャートは、本実施形態においてECUにより実行される初期化処理のルーチンを示している。このルーチンは、ECUによって実行されるエンジン制御ルーチン(メインルーチン)のサブルーチンとして実行される。
【0062】
ECUは、図8に示すルーチンの最初のステップS200において、メモリに記憶されている大気圧学習値がクリアされたか否か判定する。学習値がクリアされていなければ初期化の必要はないので、その場合には初期化処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0063】
大気圧学習値がクリアされた場合、次のステップS202では、エンジンの始動時か否か判定する。エンジンが始動していないときには誤った初期化を避けるために初期化処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0064】
エンジン始動時の場合には、次のステップS204で、サーバに対して学習情報の送信を要求する。ここでいう学習情報とは他の車両で学習された大気圧学習値である。
【0065】
次のステップS206では、学習情報の受信の有無を判定する。一定期間待ってもサーバから学習情報(大気圧学習値)が送信されてこない場合には、大気圧学習値を取り込むのに適当な車両が存在しなかったか、或いは、通信ネットワークに何等かの障害が生じているものと予想される。この場合はタイムアウトとなり、初期化処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0066】
学習情報を受信した場合には、最後のステップS208に進む。ステップS208では、受信した学習情報(大気圧学習値)に基づいて自車両の大気圧学習値を初期化する。
【0067】
一方、サーバにより実行される学習情報の送信処理のルーチンをフローチャートで示すと図9のようになる。図9に示すルーチンの最初のステップS300において、サーバは、車両からの学習情報(大気圧学習値)の送信要求の有無を判定する。何れかの車両から学習情報の送信を要求された場合には、以降の送信処理を実施する。情報送信要求が無い場合には送信処理を終了する。
【0068】
学習情報の送信要求が有った場合、次のステップS302では、サーバに接続中の車両の中から有効エリア内に存在する車両を検索する。有効エリアは、前述のように、情報送信要求の有った車両(情報送信要求車両)を基準として設定されるエリアである。そして、検索条件に該当する各車両から学習情報を取得する。ここでいう学習情報とは、その車両のメモリに記憶されている大気圧学習値と学習完了履歴である。
【0069】
次のステップS304では、ステップS302で取得した各車両の学習完了履歴に基づき、学習完了履歴の有る車両、つまり、学習完了フラグの立っている車両の有無を判定する。学習完了履歴の有る車両が無ければ、大気圧学習値の取り込み先として適当な車両が存在しないことになるので、その場合には送信処理を終了する。
【0070】
学習完了履歴の有る車両が存在する場合、次のステップS306では、学習完了履歴が有る各車両の距離情報を取得する。具体的には、各車両のGPSによる位置情報を取得し、各車両の位置情報と情報送信要求車両の位置情報とから、情報送信要求車両に対する各車両の距離を計測する。
【0071】
そして、最後のステップS308では、ステップS306で取得された距離情報に基づき、学習完了履歴が有る車両の中から情報送信要求車両に最も近い位置にある車両を特定する。そして、ステップS302で既に取得している当該車両の学習情報(大気圧学習値)を情報送信要求車両に転送する。
【0072】
車両のECUにより図8に示すルーチンが実行され、サーバにより図9に示すルーチンが実行されることにより、メモリに記憶している大気圧学習値がクリアされてしまった場合でも、他の車両から取得した大気圧学習値を初期値として大気圧学習を再開することができる。これにより、再度学習が完了するまでの時間を短縮することができ、大気圧基づくエンジン制御を高い制御精度で継続して行うことができる。
【0073】
本実施形態では、ECUによりステップS200の処理が実施されることで、第8の発明及び第10の発明にかかる「クリア判定手段」が実現されている。また、ステップS204の処理が実施されることで、第8の発明及び第10の発明にかかる「情報送信要求手段」が実現されている。また、ステップS208の処理が実施されることで、第8の発明及び第10の発明にかかる「記録手段」が実現されている。
【0074】
また、本実施形態では、サーバによりステップS302の処理が実施されることで、第8の発明、第9の発明、第10の発明及び第11の発明にかかる「情報送信要求手段」が実現されている。また、ステップS308の処理が実施されることで、第8の発明、第9の発明、第10の発明及び第11の発明の発明にかかる「情報転送手段」が実現されている。
【0075】
その他.
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施の形態では、本発明を車両間での大気圧学習値の相互利用に適用しているが、大気圧以外の環境情報(車両固有でない、車両の置かれている環境に依存する情報)、例えば、大気温や湿度等の学習値の相互利用にも適用することができる。また、学習値だけでなく計測値の相互利用にも適用することができる。また、車両間で相互利用する環境情報は、エンジン制御以外の車両制御に用いられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる車両間での大気圧学習値の相互利用システムの概略図である。
【図2】距離が離れた車両間でも利用可能な車車間通信の一例を示す図である。
【図3】距離が離れた車両間でも利用可能な車車間通信の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1において複数の車両の中から大気圧学習値を取り込む車両を選定する手順について説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1においてECUにより実行される初期化処理のルーチンのフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる車両間での大気圧学習値の相互利用システムの概略図である。
【図7】本発明の実施の形態2において複数の車両の中から大気圧学習値を取り込む車両を選定する手順について説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態2においてECUにより実行される初期化処理のルーチンのフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2においてサーバにより実行される送信処理のルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
2A〜2G,4A〜4E 車両
10A,10B,20A,20B ECU
12A,12B,22A,22B メモリ
14A,14B,24A,24B バッテリ
16A,16B 車車間通信装置
18A,18B,28A,28B GPS
26A,26B 通信装置
30 通信ネットワーク
32 サーバ
34,36,38 中継局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に関する環境情報を記憶する記憶手段を有し、記憶されている環境情報を用いて車両の制御を行う制御装置において、
他車両との間で相互に通信可能な車車間通信手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記車車間通信手段によって自車両を基準とする所定エリア内の他車両に対し、当該他車両が有する環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両から送信された環境情報を取得し、自車両に関する環境情報として前記記憶手段に記録する記録手段と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記エリア内の複数の他車両との距離を計測する計測手段と、
計測結果に基づいて複数の他車両の中から最も近い位置にある他車両を選定する近距離車両選定手段とをさらに備え、
前記記録手段は、選定された他車両から送信された環境情報を自車両に関する環境情報として前記記憶手段に記録することを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
環境情報を用いて制御される制御対象の始動を判定する始動判定手段をさらに備え、
前記情報送信要求手段は、前記制御対象の始動時、他車両に対して当該他車両が有する環境情報の送信を要求することを特徴とする請求項1又は2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
自車両に関する環境情報を車両の制御を通して学習する学習手段と、学習された環境情報の学習値を記憶する記憶手段とを有し、記憶されている環境情報の学習値を用いて車両の制御を行う制御装置において、
他車両との間で相互に通信可能な車車間通信手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記車車間通信手段によって自車両を基準とする所定エリア内の他車両に対し、当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両から送信された環境情報の学習値を取得し、自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録する記録手段と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
前記エリア内の複数の他車両との距離を計測する計測手段と、
計測結果に基づいて複数の他車両の中から最も近い位置にある他車両を選定する近距離車両選定手段とをさらに備え、
前記記録手段は、選定された他車両から送信された環境情報の学習値を自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録することを特徴とする請求項4記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記情報送信要求手段は、前記車車間通信手段によって前記エリア内の他車両に対し、当該他車両が有する環境情報の学習値の送信と併せて学習履歴の送信も要求し、
前記記録手段は、前記他車両から送信された学習履歴から当該他車両における環境情報の学習が完了していると判断される場合に、当該他車両から送信された環境情報の学習値を自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録することを特徴とする請求項4又は5記載の車両の制御装置。
【請求項7】
環境情報を用いて制御される制御対象の始動を判定する始動判定手段をさらに備え、
前記情報送信要求手段は、前記制御対象の始動時、他車両に対して当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求することを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
車両毎に搭載された車載制御端末と、複数の前記車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバとから構成され、車両の制御に必要な情報を必要に応じて車両間で利用し合う車両制御用情報の車両間相互利用システムであって、
前記車載制御端末は、
自車両に関する環境情報を記憶する記憶手段と、
記憶されている環境情報を用いて車両の制御を行う制御手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記サーバに対して環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記サーバから送信された環境情報を取得し、自車両に関する環境情報として前記記憶手段に記録する記録手段とを備え、
前記サーバは、
前記車載制御端末から情報送信要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段とを備える
ことを特徴とする車両制御用情報の車両間相互利用システム。
【請求項9】
車両毎に搭載された車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバであって、
前記車載制御端末から車両の制御に用いる環境情報の送信の要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段と、
を備えることを特徴とするサーバ。
【請求項10】
車両毎に搭載された車載制御端末と、複数の前記車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバとから構成され、車両の制御に必要な情報を必要に応じて車両間で利用し合う車両制御用情報の車両間相互利用システムであって、
前記車載制御端末は、
自車両に関する環境情報を車両の制御を通して学習する学習手段と、
学習された環境情報の学習値を記憶する記憶手段と、
記憶されている環境情報の学習値を用いて車両の制御を行う制御手段と、
前記記憶手段の記憶内容がクリアされたことを判定するクリア判定手段と、
前記記憶内容がクリアされた場合、前記サーバに対して環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記サーバから送信された環境情報の学習値を取得し、自車両に関する環境情報の学習値の初期値として前記記憶手段に記録する記録手段とを備え、
前記サーバは、
前記車載制御端末から情報送信要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報の学習値を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段とを備える
ことを特徴とする車両制御用情報の車両間相互利用システム。
【請求項11】
車両毎に搭載された車載制御端末と通信ネットワークによって接続されるサーバであって、
前記車載制御端末から車両の制御に用いる環境情報の学習値の送信の要求が有った場合、前記車載制御端末が搭載される車両を基準とする所定エリア内の他車両の車載制御端末に対して当該他車両が有する環境情報の学習値の送信を要求する情報送信要求手段と、
前記他車両の車載制御端末から送信された環境情報の学習値を取得し、情報送信要求の有った前記車載制御端末に転送する情報転送手段と、
を備えることを特徴とするサーバ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−176372(P2007−176372A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378149(P2005−378149)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】