説明

車両の制御装置

【課題】実際のエンジントルクに応じた態様でオートマチックトランスミッションなどを制御する。
【解決手段】ピッチングおよびバウンシングなどの車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するようにエンジンを制御する制振制御が実行される。制振制御を中断した場合、制振制御を中断した後のエンジントルクの挙動が予測される。予測されたエンジントルクの挙動に応じて、オートマチックトランスミッションの変速が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、車両の上下方向の振動(ピッチングおよびバウンシング)を低減するトルクを出力するように駆動源を制御する制振制御を中断した後における駆動源の出力トルクの挙動に応じて変速機もしくはロックアップクラッチを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するように駆動源を制御する制振制御が実用化されている。制振制御では、車両の上下方向の振動を引き起こすトルクを打ち消すトルクを出力するように駆動源が制御される。
【0003】
特開2006−69472号公報(特許文献1)は、車両に備えられた駆動輪に対して、ドライバが要求する基本要求駆動力を発生させるべく、その基本要求駆動力に相当する物理量を演算する基本要求駆動力演算部と、車両に発生させられていると推定される推定駆動力に相当する物理量を求める推定駆動力推定部と、推定駆動力に相当する物理量に基づいて、推定駆動力が発生している場合に車両に発生し得るピッチング振動を求め、このピッチング振動を抑制するための補正値を求めると共に、補正値に基づいて、基本要求駆動力演算部が演算した基本要求駆動力に相当する物理量を補正することで、補正後要求駆動力を求める要求駆動力補正部とを備え、要求駆動力補正部が求めた補正後要求駆動力を駆動輪に発生させるようになっている車両安定化制御システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−69472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、変速機の変速中など、駆動源が車輪と遮断される場合には、駆動源のトルクによる車両の上下方向の振動は発生し得ない。そのため、制振制御が中断される。制振制御が中断された後は、制振制御システム以外の制御システムによって駆動源が制御される。しかしながら、制振制御が中断された直後においては、駆動源の応答遅れなどの影響により、実際の出力トルクが実現すべき目標トルクから乖離する。そのため、駆動源の実際の出力トルクに応じた態様でパワートレーンを構成する機器を制御することが困難であった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、駆動源の実際の出力トルクに応じた態様でパワートレーンを構成する機器を制御することができる車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る車両の制御装置は、駆動源と、駆動源に連結され、かつ変速によりギヤ比を変更可能な変速機とを搭載した車両の制御装置である。この制御装置は、車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するように駆動源を制御する制振制御を実行するための制振制御手段と、制振制御を中断するための中断手段と、制振制御を中断した後の駆動源の出力トルクの挙動を予測するための予測手段と、予測された出力トルクの挙動に基づいて変速機の変速を制御するための変速制御手段とを備える。
【0008】
この構成によると、制振制御により、車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するように駆動源が制御される。制振制御が中断されると、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの挙動が予測される。予測された出力トルクの挙動に基づいて変速機の変速が制御される。たとえば、予想された駆動源の出力トルクの大きさに応じて変速機の摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)の係合力が制御される。これにより、駆動源の実際の出力トルクとの差が小さいトルクに応じて変速機の変速中における摩擦係合要素の係合力を制御することができる。また、駆動源の出力トルクが収束するまで変速の開始が遅延される。これにより、変速中における駆動源の出力トルク(変速機の入力トルク)の変動量を小さくできる。いずれの場合においても、駆動源の実際の出力トルクに応じた態様でパワートレーンを構成する変速機を制御することができる。
【0009】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、変速機は、係合状態にある摩擦係合要素を変更することにより変速を行なう。制御装置は、変速機の変速を行なうか否かを判断するための手段をさらに備える。中断手段は、変速機の変速を行なうと判断されると、制振制御を中断するための手段を含む。予想手段は、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含む。変速制御手段は、変速機の変速を行なうと判断されると変速機が変速を開始するように制御するための手段と、予測された駆動源の出力トルクの大きさに応じて変速機の変速中における摩擦係合要素の係合力を制御するための手段とを含む。
【0010】
この構成によると、制振制御が中断されると、予測された駆動源の出力トルクの大きさに応じて変速機の変速中における摩擦係合要素の係合力が制御される。これにより、駆動源の実際の出力トルクとの差が小さいトルクに応じて係合力を制御することができる。
【0011】
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加え、予測手段は、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含む。
【0012】
この構成によると、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの大きさを精度よく予測することができる。
【0013】
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、制御装置は、変速機の変速を行なうか否かを判断するための手段をさらに備える。中断手段は、変速機の変速を行なうと判断されると、制振制御を中断するための手段を含む。変速制御手段は、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまで変速機の変速の開始を遅延するように制御するための手段を含む。
【0014】
この構成によると、駆動源の出力トルクが収束してから、変速機の変速が開始される。これにより、変速中において駆動源の出力トルク(変速機の入力トルク)の変動量を小さくできる。
【0015】
第5の発明に係る車両の制御装置においては、第4の発明の構成に加え、変速機は、ロックアップクラッチが設けられたトルクコンバータを介して駆動源に連結される。制御装置は、変速機の変速を行なうと判断されると、ロックアップクラッチを係合状態から解放状態にすると判断するための手段と、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでロックアップクラッチの解放の開始を遅延するように制御するための手段とをさらに含む。
【0016】
この構成によると、変速機の変速時には、ロックアップクラッチが解放される。制振制御が中断されると、駆動源の出力トルクが収束してから、ロックアップクラッチの解放が開始される。これにより、ロックアップクラッチが係合状態から解放状態に移行するまでの間において駆動源の出力トルク(トルクコンバータの入力トルク)の変動量を小さくできる。
【0017】
第6の発明に係る車両の制御装置においては、第4または5の発明の構成に加え、予測手段は、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束する時期を予測するための手段を含む。
【0018】
この構成によると、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束する時期を、精度よく予測することができる。
【0019】
第7の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、制御装置は、変速機の変速を行なうか否かを判断するための手段をさらに備える。中断手段は、変速機の変速を行なうと判断されると、制振制御を中断するための手段を含む。予想手段は、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束する時期ならびに制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含む。変速制御手段は、制振制御を中断した後において予め定められた時間内に駆動源の出力トルクが収束する場合、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまで変速機の変速の開始を遅延するように制御するための手段と、制振制御を中断した後において予め定められた時間内に駆動源の出力トルクが収束しない場合、制振制御を中断した後において予め定められた時間が経過するまで変速機の変速の開始を遅延するように制御するとともに、予測された駆動源の出力トルクの大きさに応じて、変速機の変速中における摩擦係合要素の係合力を制御するための手段とを含む。
【0020】
この構成によると、制振制御を中断した後において予め定められた時間内に駆動源の出力トルクが収束する場合、駆動源の出力トルクが収束してから、変速機の変速が開始される。これにより、変速中において変速機の入力トルクの変動量を小さくできる。制振制御を中断した後において予め定められた時間内に駆動源の出力トルクが収束しない場合、制振制御を中断してから予め定められた時間が経過すると、変速機の変速が開始される。これにより、変速が遅延される時間を制限することができる。変速中は、予測された駆動源の出力トルクの大きさに応じて変速機の変速中における摩擦係合要素の係合力が制御される。これにより、駆動源の実際の出力トルクとの差が小さいトルクに応じて変速機の変速中における摩擦係合要素の係合力を制御することができる。
【0021】
第8の発明に係る車両の制御装置においては、第7の発明の構成に加え、予測手段は、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束する時期ならびに制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含む。
【0022】
この構成によると、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束する時期ならびに制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの大きさを、精度よく予測することができる。
【0023】
第9の発明に係る車両の制御装置は、ロックアップクラッチが設けられたトルクコンバータを介して駆動源と変速機とが連結された車両の制御装置である。制御装置は、車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するように駆動源を制御する制振制御を実行するための制振制御手段と、制振制御を中断するための中断手段と、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの挙動を予測するための予測手段と、予測された出力トルクの挙動に基づいてロックアップクラッチを制御するための制御手段とを備える。
【0024】
この構成によると、制振制御により、車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するように駆動源が制御される。制振制御が中断されると、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでの駆動源の出力トルクの挙動が予測される。予測された出力トルクの挙動に基づいてロックアップクラッチが制御される。たとえば、駆動源の出力トルクが収束するまでロックアップクラッチの解放の開始が遅延される。これにより、ロックアップクラッチが係合状態から解放状態に移行するまでの間において駆動源の出力トルク(トルクコンバータの入力トルク)の変動量を小さくできる。そのため、駆動源の実際の出力トルクに応じた態様でパワートレーンを構成するトルクコンバータを制御することができる。
【0025】
第10の発明に係る車両の制御装置においては、第9の発明の構成に加え、制御装置は、ロックアップクラッチを係合状態から解放状態にするか否かを判断するための手段をさらに備える。中断手段は、ロックアップクラッチを係合状態から解放状態にすると判断されると、制振制御を中断するための手段を含む。制御手段は、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束するまでロックアップクラッチの解放の開始を遅延するように制御するための手段を含む。
【0026】
この構成によると、駆動源の出力トルクが収束してから、ロックアップクラッチの解放が開始される。これにより、駆動源の実際のトルクが安定した状態でロックアップクラッチを係合状態から解放状態に移行することができる。そのため、ロックアップクラッチが係合状態から解放状態に移行する間においてトルクコンバータの入力トルクの変動量を小さくできる。
【0027】
第11の発明に係る車両の制御装置においては、第10の発明の構成に加え、予測手段は、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束する時期を予測するための手段を含む。
【0028】
この構成によると、制振制御を中断した時点での制振制御による駆動源の出力トルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において駆動源の出力トルクが収束する時期を、精度よく予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両のパワートレーンを示す概略構成図である。
【図2】オートマチックトランスミッションのプラネタリギヤユニットを示すスケルトン図である。
【図3】オートマチックトランスミッションの作動表を示す図である。
【図4】オートマチックトランスミッションの油圧回路を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における制御システムの構成を示す図である。
【図6】目標エンジントルク、実際のエンジントルクおよび予測されたエンジントルクを示す図である。
【図7】変速中の係合油圧および解放油圧を示す図である。
【図8】第1の実施の形態においてECUが実行するプログラムの制御構造を示す図である。
【図9】目標エンジントルクおよび実際のエンジントルクを示す図である。
【図10】第2の実施の形態における制御システムの構成を示す図である。
【図11】制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIを示す図である。
【図12】第2の実施の形態において変速を指令する信号ならびにロックアップクラッチの解放を指令する信号が出力される時期を示す図である。
【図13】第2の実施の形態においてECUが実行するプログラムの制御構造を示す図である。
【図14】第3の実施の形態における制御システムの構成を示す図である。
【図15】第3の実施の形態において変速を指令する信号が出力される時期を示す図(その1)である。
【図16】第3の実施の形態において変速を指令する信号が出力される時期を示す図(その2)である。
【図17】第3の実施の形態においてECUが実行するプログラムの制御構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0031】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、第1の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、FR以外の車両であってもよい。
【0032】
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、トルクコンバータ2100と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、プロペラシャフト5000と、デファレンシャルギヤ6000と、後輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。
【0033】
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。エンジン1000により、オルタネータおよびエアコンディショナーなどの補機1004が駆動される。エンジン1000の出力トルク(エンジントルクTE)は、電子スロットルバルブ8016の作動量、すなわちスロットル開度などに応じて変化する。なお、エンジン1000の代わりにもしくは加えて、駆動源にモータを用いるようにしてもよい。また、ディーゼルエンジンを用いるようにしてもよい。ディーゼルエンジンにおいては、インジェクタの開弁時間(作動量)、すなわち燃料噴射量に応じて出力トルクが変化する。
【0034】
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ2100を介してエンジン1000に連結される。オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することにより、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。なお、ギヤ段を形成するオートマチックトランスミッションの代わりに、ギヤ比を無段階に変更するCVT(Continuously Variable Transmission)を搭載するようにしてもよい。さ
らに、油圧アクチュエータもしくは電動モータにより変速される常時噛合式歯車からなる自動変速機を搭載するようにしてもよい。
【0035】
オートマチックトランスミッション2000から出力された駆動力は、プロペラシャフト5000およびデファレンシャルギヤ6000を介して、左右の後輪7000に伝達される。
【0036】
ECU8000には、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、エアフローメータ8012と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024と、油温センサ8026と、水温センサ8028と、車輪速センサ8030とがハーネスなどを介して接続されている。
【0037】
シフトレバー8004の位置(ポジション)は、ポジションスイッチ8006により検出され、検出結果を表す信号がECU8000に送信される。シフトレバー8004の位置に対応して、オートマチックトランスミッション2000のギヤ段が自動で形成される。また、ドライバの操作に応じて、ドライバが任意のギヤ段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
【0038】
アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。エアフローメータ8012は、エンジン1000に吸入される空気量を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
【0039】
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。電子スロットルバルブ8016により、エンジン1000に吸入される空気量が調整される。
【0040】
なお、電子スロットルバルブ8016の代わりにもしくは加えて、吸気バルブ(図示せず)や排気バルブ(図示せず)のリフト量や開閉する位相を変更する可変バルブリフトシステムにより、エンジン1000に吸入される空気量を調整するようにしてもよい。
【0041】
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数(以下、エンジン回転数NEとも記載する)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数NI(トルクコンバータ2100のタービン回転数NT)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
【0042】
油温センサ8026は、オートマチックトランスミッション2000の作動や潤滑に用いられるオイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)の温度(油温)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
【0043】
水温センサ8028は、エンジン1000の冷却水の温度(水温)を検出し、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
【0044】
車輪速センサ8030は、2つの前輪ならびに2つの後輪7000のそれぞれに対して設けられる。すなわち、車輪速センサ8030は、4つの車輪のそれぞれに対して設けら
れる。車輪速センサ8030は、各車輪の回転速度を検出し、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
【0045】
ECU8000は、ポジションスイッチ8006、アクセル開度センサ8010、エアフローメータ8012、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024、油温センサ8026、水温センサ8028、車輪速センサ8030などから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)8002に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。なおECU8000により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
【0046】
本実施の形態において、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションであることにより、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることにより、オートマチックトランスミッション2000は後輪7000に駆動力を伝達し得る。なおDレンジにおいて、8速ギヤ段よりも高速のギヤ段を形成可能であるようにしてもよい。
【0047】
図2を参照して、プラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸2102、ならびに入力軸2102と出力軸2104とを直結可能なロックアップクラッチ2106を有するトルクコンバータ2100に接続されている。
【0048】
プラネタリギヤユニット3000は、フロントプラネタリ3100と、リアプラネタリ3200と、C1クラッチ3301と、C2クラッチ3302と、C3クラッチ3303と、C4クラッチ3304と、B1ブレーキ3311と、B2ブレーキ3312と、ワンウェイクラッチ(F)3320とを含む。
【0049】
フロントプラネタリ3100は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。フロントプラネタリ3100は、第1サンギヤ(S1)3102と、1対の第1ピニオンギヤ(P1)3104と、キャリア(CA)3106と、リングギヤ(R)3108とを含む。
【0050】
第1ピニオンギヤ(P1)3104は、第1サンギヤ(S1)3102および第1リングギヤ(R)3108と噛合っている。第1キャリア(CA)3106は、第1ピニオンギヤ(P1)3104が公転および自転可能であるように支持している。
【0051】
第1サンギヤ(S1)3102は、回転不能であるようにギヤケース3400に固定される。第1キャリア(CA)3106は、プラネタリギヤユニット3000の入力軸3002に連結される。
【0052】
リアプラネタリ3200は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。リアプラネタリ3200は、第2サンギヤ(S2)3202と、第2ピニオンギヤ(P2)3204と、リアキャリア(RCA)3206と、リアリングギヤ(RR)3208と、第3サンギヤ(S3)3210と、第3ピニオンギヤ(P3)3212とを含む。
【0053】
第2ピニオンギヤ(P2)3204は、第2サンギヤ(S2)3202、リアリングギヤ(RR)3208および第3ピニオンギヤ(P3)3212と噛合っている。第3ピニオンギヤ(P3)3212は、第2ピニオンギヤ(P2)3204に加えて、第3サンギヤ(S3)3210と噛合っている。
【0054】
リアキャリア(RCA)3206は、第2ピニオンギヤ(P2)3204および第3ピニオンギヤ(P3)3212が公転および自転可能であるように支持している。リアキャリア(RCA)3206は、ワンウェイクラッチ(F)3320に連結される。リアキャリア(RCA)3206は、1速ギヤ段の駆動時(エンジン1000から出力された駆動力を用いた走行時)に回転不能となる。リアリングギヤ(RR)3208は、プラネタリギヤユニット3000の出力軸3004に連結される。
【0055】
ワンウェイクラッチ(F)3320は、B2ブレーキ3312と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチ(F)3320のアウターレースはギヤケース3400に固定され、インナーレースはリアキャリア(RCA)3206に連結される。
【0056】
図3に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組み合わせで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることにより、前進1速〜8速のギヤ段と、後進1速および2速のギヤ段が形成される。
【0057】
図4を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
【0058】
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)と記載する)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)と記載する)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)と記載する)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)と記載する)4240と、SL5リニアソレノイド(以下、SL(5)と記載する)4250と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTと記載する)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
【0059】
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することにより、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006により調圧され、ライン圧が生成される。
【0060】
プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300により調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を介してマニュアルバルブ4100に供給される。
【0061】
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0062】
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0063】
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧およびRレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0064】
Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、最終的には、C1クラッチ3301、C2クラッチ3302およびC3クラッチ3303に供給される。Rレンジ圧油路4104に供給された油圧は、最終的には、B2ブレーキ3312に供給される。
【0065】
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
【0066】
SL(1)4210は、C1クラッチ3301に供給される油圧を調圧する。SL(2)4220は、C2クラッチ3302に供給される油圧を調圧する。SL(3)4230は、C3クラッチ3303に供給される油圧を調圧する。SL(4)4240は、C4クラッチ3304に供給される油圧を調圧する。SL(5)4250は、B1ブレーキ3311に供給される油圧を調圧する。
【0067】
SLT4300は、アクセル開度センサ8010により検出されたアクセル開度に基づいたECU8000からの制御信号に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を介して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
【0068】
SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(5)4250およびSLT4300は、ECU8000から送信される制御信号により制御される。
【0069】
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3312に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とにより制御される。
【0070】
SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。
【0071】
SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、Rレンジ圧が供給される。
【0072】
図5を参照して、ECU8000に実装される制御システムについて説明する。図5に示すように、ECU8000には、パワートレーンドライバモデル(PDRM: Power train Driver Model)9000と、ドライバーズサポートシステム(DSS: Drivers Support System)9010と、VDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management)システム9020と、制振制御システム9030と、パワートレーンマネージャ(PTM: Power Train Manager)9100と、エンジン制御システム9200と、ECT(Electronic Controlled Transmission)システム9300とが実装される。なお、これらの制御システムを複数のECUに分割して実装するようにしてもよい。
【0073】
パワートレーンドライバモデル9000は、ドライバの操作に基づいて、車両に対する要求駆動力(エンジン1000に対する要求エンジントルク)を設定するために用いられるモデル(関数)である。
【0074】
本実施の形態においては、実験およびシミュレーションの結果などに基づいて予め定められたマップに従って、アクセル開度ならびに車速などから要求駆動力(エンジン1000の出力トルクの要求値)が設定される。なお、ドライバの操作に基づく要求駆動力を設定する方法はこれに限らない。
【0075】
ドライバーズサポートシステム9010は、クルーズコントロールシステム、パーキングアシストシステムおよびプリクラッシュセーフティシステムなどにより、車両の挙動に応じて要求駆動力を自動的に設定する。
【0076】
クルーズコントロールシステムは、ドライバにより設定された車速を維持するシステムである。パーキングアシストシステムは、運転者が設定した位置への駐車を全自動もしくは一部自動で行なうシステムである。たとえば、運転者が設定した位置へ駐車するためのステアリング操作ならびに車速制御が自動で行なわれる。プリクラッシュセーフティシステムは、車両の衝突を防止するシステムである。たとえば、車両が前方を走行する車両に接近すると、減速するように車速が制御される。
【0077】
ドライバーズサポートシステム9010は、これらの制御を行なうために必要な要求駆動力を、設計者により予め作成されたマップなどに基づいて自動的に設定する。
【0078】
VDIMシステム9020は、VSC(Vehicle Stability Control)、TRC(TRaction Control)、ABS(Anti lock Brake System)、EPS(Electric Power Steering)などを統合するシステムであって、アクセル、ステアリング、ブレーキの操作量によるドライバの走行イメージと、各種センサ情報による車両挙動との差を算出し、その差を縮めるように車両の駆動力、ブレーキ油圧などを制御する。
【0079】
VSCは、前後輪が横滑りしそうな状態をセンサが検出して場合において、各輪のブレーキ油圧および要求駆動力などの最適値を自動的に設定し、車両の安定性を確保する制御である。
【0080】
TRCは、滑りやすい路面での発進時および加速時に、駆動輪のスリップをセンサが検出すると、各輪のブレーキ油圧およびエンジン1000の要求駆動力などの最適値を自動的に設定し、最適な駆動力を確保する制御である。
【0081】
ABSは、ブレーキ油圧の最適値を自動的に設定し、車輪のロックを防止する制御システムである。EPSは、電動モータの力によってステアリングホイールの操舵をアシストする制御システムである。
【0082】
制振制御システム9030は、ピッチングおよびバウンシングなどの車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するようにエンジン1000を制御する制振制御を実行する。制振制御は、ロックアップクラッチ2106が係合状態である場合に実行される。
【0083】
制振制御システム9030は、車両の実際の駆動力などから、車両モデルを用いて算出される車両のピッチングおよびバウンシングを抑制するための要求駆動力を設定する。車両のピッチングおよびバウンシングを抑制するための要求駆動力を設定する方法については、従来の技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0084】
パワートレーンマネージャ9100は、調停部9102において、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020および制振制御システム9030から要求される要求駆動力を調停し、車両の目標駆動力を設定する。
【0085】
たとえば、パワートレーンマネージャ9100は、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020および制振制御システム9030から要求された要求駆動力を加算した駆動力が目標駆動力として設定される。
【0086】
また、車両の運転状態に応じて、最大の要求駆動力、もしくは最小の要求駆動力がエンジン1000の制御に用いる要求駆動力として決定される。予め定められた条件が満たされた場合には、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020および制振制御システム9030のうちの特定のシステムから要求される要求駆動力が目標駆動力として決定される。なお、要求駆動力を調停する方法はこれらに限らない。
【0087】
設定された目標駆動力は、変換部9104において、たとえば、目標駆動力に後輪7000の半径を乗算し、オートマチックトランスミッション2000ならびにデファレンシャルギヤ6000のギヤ比で除算することにより、エンジン1000の目標エンジントルク(出力トルクの目標値)に変換される。
【0088】
得られた目標エンジントルクは、エンジン制御システム9200ならびにECTシステム9300に入力される。
【0089】
さらに、パワートレーンマネージャ9100は、判断部9106において、オートマチックトランスミッション2000の変速を行なうか否かを判断する。たとえば、アクセル開度、車速および目標駆動力などをパラメータに有する変速マップに従ってオートマチックトランスミッション2000のギヤ段を決定し、決定されたギヤ段への変速を行なうか否かを判断する。なお、変速を行なうか否かを判断する方法はこれに限らない。
【0090】
オートマチックトランスミッション2000の変速を行なうと判断されると、変速指令部9108からECTシステム9300に対して変速を指令する信号が出力される。
【0091】
また、オートマチックトランスミッション2000の変速を行なうと判断されると、パワートレーンマネージャ9100の中断部9110により、制振制御が中断される。
【0092】
したがって、図6に示すように、制振制御システム9030から要求される要求駆動力を考慮せずに、他のシステムから要求される要求駆動力に基づいて目標駆動力が設定される。なお、図6においては、制振制御システム9030からの要求駆動力に基づいて設定される目標エンジントルクを「TP」と示す。制振制御システム9030以外のシステムからの要求駆動力に基づいて設定される目標エンジントルクを「TB」と示す。
【0093】
ところで、制振制御が中断されたことにより目標エンジントルクがステップ的に変化した場合であっても、図6に示すように、制振制御システムを中断した直後において目標エンジントルクと実際のエンジントルクとは異なり得る。
【0094】
そこで、予測部9112により、制振制御を中断した後のエンジントルクの挙動が予測される。
【0095】
より具体的には、制振制御を中断した時点での制振制御による目標エンジントルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでのエンジントルクの大きさ、ならびにその変化態様が予測される。
【0096】
ここで、制振制御を中断した時点での制振制御による目標エンジントルクの位相とは、周期的に変化する目標エンジントルクを中断した時期を意味する。したがって、目標エンジントルクの位相とは、目標エンジントルクの変化傾向と略同じ意味である。
【0097】
制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでのエンジントルクの大きさ、ならびにその変化態様は、実験およびシミュレーションなどの結果に基づいて予め開発者により作成された関数あるいはマップなどを用いて算出される。なお、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでのエンジントルクの大きさ、ならびにその変化態様を予測する方法はこれらに限らない。
【0098】
図5に戻って、ECTシステム9300は、オートマチックトランスミッション2000ならびにロックアップクラッチ2106を制御する。
【0099】
本実施の形態において、ECTシステム9300の変速制御部9302は、パワートレーンマネージャ9100の変速指令部9108から変速を指令する信号を受信すると、オートマチックトランスミッション2000が変速を開始するように制御する。すなわち、パワートレーンマネージャ9100によって決定されたギヤ段を形成するようにオートマチックトランスミッション2000が制御される。
【0100】
また、ECTシステム9300は、パワートレーンマネージャ9100によって予測されたエンジントルクの挙動に基づいて、オートマチックトランスミッション2000の変速を制御する。
【0101】
本実施の形態においては、予測されたエンジントルクの大きさに応じて、オートマチックトランスミッション2000の変速中における摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)の過渡的な係合力が制御される。
【0102】
たとえば、図7に示すように、変速により係合状態から解放状態にされる摩擦係合要素に供給される油圧(以下、解放油圧とも記載する)および変速により解放状態から係合状態にされる摩擦係合要素に供給される油圧(以下、係合油圧とも記載する)のうちの少なくともいずれか一方の大きさならびに変化態様が、予測されたエンジントルクの大きさに応じて制御される。
【0103】
たとえば、予測されたエンジントルクが大きいほど、変速中における摩擦係合要素の係合力、すなわちトルク容量が大きくなるように制御される。なお、係合力を制御する方法はこれに限らない。
【0104】
なお、制振制御を中断した後のエンジントルクの挙動をECTシステム9300が予測するようにしてもよい。
【0105】
図8を参照して、ECU8000が実行するプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU8000は、制振制御を実行する。
【0106】
S102にて、オートマチックトランスミッション2000の変速を行なうか否かを判断する。変速を行なう場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでないと(S102にてNO)、処理はS100に戻される。S104にて、ECU8000は、制振制御を中断する。
【0107】
S106にて、ECU8000は、制振制御を中断した時点での制振制御による目標エンジントルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでのエンジントルクの大きさ、ならびにその変化態様を予測する。
【0108】
S108にて、ECU8000は、オートマチックトランスミッション2000の変速を開始する。S110にて、ECU8000は、予測されたエンジントルクの大きさに応じて、オートマチックトランスミッション2000の変速中における摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)の過渡的な係合力を制御する。
【0109】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態における制御システムの動作について説明する。
【0110】
車両の走行中は、ピッチングならびにバウンシングを低減するために、制振制御が実行される(S100)。ところが、オートマチックトランスミッション2000の変速中には、オートマチックトランスミッション2000内の摩擦係合要素の係合力が変化するため、ピッチングならびにバウンシングを低減するためのトルクを車輪に伝達することが困難になる。
【0111】
よって、変速を行なう場合(S102にてYES)、制振制御が中断される(S104)。その後、制振制御を中断した時点での制振制御による目標エンジントルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでのエンジントルクの大きさ、ならびにその変化態様が予測される(S106)。
【0112】
オートマチックトランスミッション2000の変速が開始すると(S108)、予測されたエンジントルクの大きさに応じて、オートマチックトランスミッション2000の変速中における摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)の過渡的な係合力が制御される(S110)。
【0113】
これにより、実際のエンジントルクとの差が小さいトルクを用いて、変速中における摩擦係合要素の係合力を制御することができる。そのため、摩擦係合力の係合力を、実際のエンジントルク、すなわちオートマチックトランスミッション2000に実際に入力されるトルクに対して過不足がないようにすることができる。その結果、実際のエンジントルクに応じた態様で、パワートレーンを構成するオートマチックトランスミッション2000を制御することができる。
【0114】
なお、パワートレーンマネージャ9100もしくはECTシステム9300の代わりに、制振制御システム9030が、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでの実際のエンジントルクの挙動を予測するようにしてもよい。
【0115】
より具体的には、図9に示すように、制振制御が中断されて変速が開始された後において、目標エンジントルクが徐々に減衰するように制振制御システム9030が要求駆動力を設定することによって、実際のエンジントルクの挙動を予測するようにしてもよい。
【0116】
このようにすれば、パワートレーンマネージャ9100、制振制御システム9030およびECTシステム9300との間で、予測されたエンジントルクを通信するための専用のインターフェースなどを設けなくても、ECTシステム9300予測されたエンジントルクに基づいてオートマチックトランスミッション2000を制御することができる。
【0117】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、制振制御を中断した後においてエンジントルクが収束するまでオートマチックトランスミッション2000の変速の開始を遅延する点で前述の第1の実施の形態と相違する。また、本実施の形態は、制振制御を中断した後においてエンジントルクが収束するまでロックアップクラッチ2106の解放の開始が遅延される点で前述の第1の実施の形態と相違する。
【0118】
その他の構成については、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
【0119】
図10を参照して、パワートレーンマネージャ9100の予測部9120は、制振制御を中断した後のエンジントルクの挙動として、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束する時期を予測する。
【0120】
より具体的には、予測部9120は、制振制御を中断した時点での制振制御による目標エンジントルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束する時期を予測する。すなわち、図11に示すように、制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIが予測される。
【0121】
制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIは、実験およびシミュレーションなどの結果に基づいて予め開発者により作成された関数あるいはマップなどを用いて算出される。なお、制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIを予測する方法はこれらに限らない。
【0122】
変速指令部9122は、図12に示すように、制振制御を中断してから時間TIが経過すると、変速指令部9122からECTシステム9300に対して変速を指令する信号を出力する。したがって、ECTシステム9300の変速制御部9302は、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでオートマチックトランスミッション2000の変速の開始を遅延するように制御する。
【0123】
なお、本実施の形態において、変速中の摩擦係合要素の係合力ならびにその変化態様は、制振制御システム9030以外の制御システムからの要求駆動力などを考慮して設定された目標エンジントルクTBに応じて制御される。
【0124】
さらに、パワートレーンマネージャ9100のロックアップ判断部9124は、オートマチックトランスミッション2000の変速を行なうと判断されると、ロックアップクラッチ2106を係合状態から解放状態にすると判断する。
【0125】
したがって、オートマチックトランスミッション2000の変速を行なうと判断されることは、ロックアップクラッチ2106を係合状態から解放状態にすると判断されることを意味する。
【0126】
パワートレーンマネージャ9100のロックアップ指令部9126は、図12に示すように、制振制御を中断してから時間TIが経過すると、ロックアップ指令部9126からECTシステム9300に対してロックアップクラッチ2106の解放を指令する信号を出力する。
【0127】
ECTシステム9300のロックアップ制御部9304は、ロックアップ指令部9126からロックアップクラッチ2106の解放を指令する信号を受信すると、ロックアップクラッチ2106の解放を開始する。
【0128】
したがって、ECTシステム9300のロックアップ制御部9304は、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでロックアップクラッチ2106の解放の開始を遅延するように制御する。
【0129】
図13を参照して、本実施の形態においてECU8000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
【0130】
S200にて、ECU8000は、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束する時期、すなわち制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIを予測する。
【0131】
S202にて、ECU8000は、制振制御を中断してから時間TIが経過したか否かを判断する。時間TIが経過すると(S202にてYES)、処理はS204に移される。もしそうでないと(S202にてNO)、処理はS202に戻される。
【0132】
S204にて、ECU8000は、オートマチックトランスミッション2000の変速を開始する。S206にて、ECU8000は、ロックアップクラッチ2106の解放を開始する。
【0133】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態における制御システムの動作について説明する。
【0134】
制振制御が中断されると(S104)、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束する時期、すなわち制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIが予測される(S200)。
【0135】
制振制御を中断してから時間TIが経過すると(S202にてYES)、オートマチックトランスミッション2000の変速が開始される(S204)。また、ロックアップクラッチ2106の解放が開始される(S206)。
【0136】
これにより、オートマチックトランスミッション2000の変速中ならびにロックアップクラッチ2106が係合状態から解放状態に移行するまでの間において実際のエンジントルクの変動量を小さくできる。そのため、実際のエンジントルクに応じた態様で、パワートレーンを構成するオートマチックトランスミッション2000ならびにトルクコンバータ2100を制御することができる。
【0137】
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAX内にエンジントルクが収束する場合、制振制御を中断した後においてエンジントルクが収束するまでオートマチックトランスミッション2000の変速の開始を遅延するように制御する点で、前述の第1の実施の形態と相違する。また、本実施の形態は、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAX内にエンジントルクが収束しない場合、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAXが経過するまでオートマチックトランスミッション2000の変速の開始を遅延するように制御するとともに、予測されたエンジントルクの大きさに応じて、オートマチックトランスミッション2000の変速中における摩擦係合要素の係合力を制御する点で前述の第1の実施の形態と相違する。
【0138】
その他の構成については、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
【0139】
図14を参照して、パワートレーンマネージャ9100の予測部9130は、制振制御を中断した後のエンジントルクの挙動として、エンジントルクが収束する時期、大きさ、ならびにその変化態様を予測する。
【0140】
より具体的には、パワートレーンマネージャ9100の予測部9130は、制振制御を中断した時点での制振制御による目標エンジントルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束する時期を予測する。すなわち、制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIが予測される。
【0141】
さらに、予測部9130は、制振制御を中断した時点での制振制御による目標エンジントルクの振幅および位相から、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでのエンジントルクの大きさ、ならびにその変化態様を予測する。
【0142】
本実施の形態において、変速指令部9132は、図15に示すように、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAX内にエンジントルクが収束する場合、制振制御を中断してから時間TIが経過すると、ECTシステム9300に対して変速を指令する信号を出力する。
【0143】
したがって、ECTシステム9300の変速制御部9302は、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAX内にエンジントルクが収束する場合、制振制御を中断した後においてエンジントルクが収束するまでオートマチックトランスミッション2000の変速の開始を遅延するように制御する。
【0144】
この場合、変速中の摩擦係合要素の係合力ならびにその変化態様は、制振制御システム9030以外の制御システムからの要求駆動力などを考慮して設定された目標エンジントルクTBに応じて制御される。
【0145】
また、変速指令部9132は、図16に示すように、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAX内にエンジントルクが収束しない場合、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAXが経過すると、ECTシステム9300に対して変速を指令する信号を出力する。
【0146】
したがって、ECTシステム9300の変速制御部9302は、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAX内にエンジントルクが収束しない場合、制振制御を中断した後において最大遅延時間TIMAXが経過するまでオートマチックトランスミッション2000の変速の開始を遅延するように制御する。
【0147】
この場合、ECTシステム9300の変速制御部9302は、最大遅延時間TIMAXが経過した後において、予測されたエンジントルクの大きさに応じて、オートマチックトランスミッション2000の変速中における摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)の過渡的な係合力を制御する。
【0148】
図17を参照して、本実施の形態においてECU8000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
【0149】
S300にて、ECU8000は、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束する時期、すなわち制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIを予測する。
【0150】
S302にて、ECU8000は、制振制御を中断してから時間TIが経過したか否かを判断する。時間TIが経過すると(S302にてYES)、処理はS304に移される。もしそうでないと(S302にてNO)、処理はS302に戻される。
【0151】
S304にて、ECU8000は、実際のエンジントルクが収束したか否かを判断する。たとえば、予め定められた時間内におけるエンジン回転数NEの変動量がしきい値以下であると、エンジントルクが収束したと判断される。なお、エンジントルクが収束したか否かを判断する方法はこれに限らない。
【0152】
エンジントルクが収束すると(S304にてYES)、処理はS306に移される。もしそうでないと(S304にてNO)、処理はS308に移される。
【0153】
S306にて、ECU8000は、オートマチックトランスミッション2000の変速を開始する。
【0154】
S308にて、ECU8000は、制振制御を中断してから最大遅延時間TIMAXが経過したか否かを判断する。最大遅延時間TIMAXが経過すると(S308にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでないと(S308にてNO)、処理はS304に戻される。
【0155】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態における制御システムの動作について説明する。
【0156】
制振制御が中断されると(S104)、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束する時期、すなわち制振制御を中断してから実際のエンジントルクが収束するまでの時間TIが予測される(S300)。さらに、制振制御を中断した後において実際のエンジントルクが収束するまでのエンジントルクの挙動が予測される(S106)。
【0157】
制振制御を中断してから時間TIが経過すると(S302にてYES)、実際のエンジントルクが収束したか否かが判断される(S304)。実際のエンジントルクが収束すると(S304にてYES)、オートマチックトランスミッション2000の変速が開始される(S306)。
【0158】
これにより、オートマチックトランスミッション2000の変速中において実際のエンジントルクの変動量を小さくできる。そのため、実際のエンジントルクに応じた態様で、パワートレーンを構成するオートマチックトランスミッション2000を制御することができる。
【0159】
実際のエンジントルクが収束していなくても(S304にてNO)、制振制御を中断してから最大遅延時間TIMAXが経過すると(S308にてYES)、オートマチックトランスミッション2000の変速が開始される(S108)。これにより、変速が遅延される時間を制限することができる。
【0160】
変速中は、予測されたエンジントルクの大きさに応じて、オートマチックトランスミッション2000の変速中における摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)の過渡的な係合力が制御される(S110)。
【0161】
これにより、実際のエンジントルクとの差が小さいトルクを用いて、変速中における摩擦係合要素の係合力を制御することができる。そのため、摩擦係合力の係合力を、実際のエンジントルク、すなわちオートマチックトランスミッション2000に実際に入力されるトルクに対して過不足がないようにすることができる。その結果、実際のエンジントルクに応じた態様で、パワートレーンを構成するオートマチックトランスミッションを制御することができる。
【0162】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
1000 エンジン、1004 補機、2000 オートマチックトランスミッション、2100 トルクコンバータ、2102 入力軸、2104 出力軸、2106 ロックアップクラッチ、5000 プロペラシャフト、6000 デファレンシャルギヤ、7000 後輪、8000 ECU、8002 ROM、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 エアフローメータ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ、8026 油温センサ、8028 水温センサ、8030 車輪速センサ、9000 パワートレーンドライバモデル、9010 ドライバーズサポートシステム、9020 VDIMシステム、9030 制振制御システム、9100 パワートレーンマネージャ、9102 調停部、9104 変換部、9106 判断部、9108,9122,9132 変速指令部、9110 中断部、9112,9120,9130 予測部、9124 ロックアップ判断部、9126 ロックアップ指令部、9200 エンジン制御システム、9300 ECTシステム、9302 変速制御部,9304 ロックアップ制御。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、前記駆動源に連結され、かつ変速によりギヤ比を変更可能な変速機とを搭載した車両の制御装置であって、
車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するように前記駆動源を制御する制振制御を実行するための制振制御手段と、
前記制振制御を中断するための中断手段と、
前記制振制御を中断した後の前記駆動源の出力トルクの挙動を予測するための予測手段と、
予測された出力トルクの挙動に基づいて前記変速機の変速を制御するための変速制御手段とを備える、車両の制御装置。
【請求項2】
前記変速機は、係合状態にある摩擦係合要素を変更することにより変速を行ない、
前記制御装置は、前記変速機の変速を行なうか否かを判断するための手段をさらに備え、
前記中断手段は、前記変速機の変速を行なうと判断されると、前記制振制御を中断するための手段を含み、
前記予想手段は、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまでの前記駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含み、
前記変速制御手段は、
前記変速機の変速を行なうと判断されると前記変速機が変速を開始するように制御するための手段と、
予測された前記駆動源の出力トルクの大きさに応じて前記変速機の変速中における摩擦係合要素の係合力を制御するための手段とを含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記制振制御を中断した時点での前記制振制御による前記駆動源の出力トルクの振幅および位相から、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまでの前記駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含む、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記変速機の変速を行なうか否かを判断するための手段をさらに備え、
前記中断手段は、前記変速機の変速を行なうと判断されると、前記制振制御を中断するための手段を含み、
前記変速制御手段は、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまで前記変速機の変速の開始を遅延するように制御するための手段を含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記変速機は、ロックアップクラッチが設けられたトルクコンバータを介して前記駆動源に連結され、
前記制御装置は、
前記変速機の変速を行なうと判断されると、前記ロックアップクラッチを係合状態から解放状態にすると判断するための手段と、
前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまで前記ロックアップクラッチの解放の開始を遅延するように制御するための手段とをさらに含む、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記予測手段は、前記制振制御を中断した時点での前記制振制御による前記駆動源の出力トルクの振幅および位相から、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束する時期を予測するための手段を含む、請求項4または5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記変速機の変速を行なうか否かを判断するための手段をさらに備え、
前記中断手段は、前記変速機の変速を行なうと判断されると、前記制振制御を中断するための手段を含み、
前記予想手段は、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束する時期ならびに前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまでの前記駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含み、
前記変速制御手段は、
前記制振制御を中断した後において予め定められた時間内に前記駆動源の出力トルクが収束する場合、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまで前記変速機の変速の開始を遅延するように制御するための手段と、
前記制振制御を中断した後において予め定められた時間内に前記駆動源の出力トルクが収束しない場合、前記制振制御を中断した後において前記予め定められた時間が経過するまで前記変速機の変速の開始を遅延するように制御するとともに、予測された前記駆動源の出力トルクの大きさに応じて、前記変速機の変速中における前記摩擦係合要素の係合力を制御するための手段とを含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記予測手段は、前記制振制御を中断した時点での前記制振制御による前記駆動源の出力トルクの振幅および位相から、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束する時期ならびに前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまでの前記駆動源の出力トルクの大きさを予測するための手段を含む、請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
ロックアップクラッチが設けられたトルクコンバータを介して駆動源と変速機とが連結された車両の制御装置であって、
車両の上下方向の振動を低減するトルクを出力するように前記駆動源を制御する制振制御を実行するための制振制御手段と、
前記制振制御を中断するための中断手段と、
前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまでの前記駆動源の出力トルクの挙動を予測するための予測手段と、
予測された出力トルクの挙動に基づいて前記ロックアップクラッチを制御するための制御手段とを備える、車両の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記ロックアップクラッチを係合状態から解放状態にするか否かを判断するための手段をさらに備え、
前記中断手段は、前記ロックアップクラッチを係合状態から解放状態にすると判断されると、前記制振制御を中断するための手段を含み、
前記制御手段は、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束するまで前記ロックアップクラッチの解放の開始を遅延するように制御するための手段を含む、請求項9に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記予測手段は、前記制振制御を中断した時点での前記制振制御による前記駆動源の出力トルクの振幅および位相から、前記制振制御を中断した後において前記駆動源の出力トルクが収束する時期を予測するための手段を含む、請求項10に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−241376(P2010−241376A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95005(P2009−95005)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】