説明

車両の駆動制御装置

【課題】クルーズコントロールの制御時にも簡単な演算処理により通常制御時と同じ内容の制御入力を通常制御時と同じ制御系の同じ位置(最上流位置)に入力してエンジンのスロットル開度の制御およびトランスミッションの変速制御を行なう。
【解決手段】クルーズコントロールの制御時、擬似アクセルペダル開度演算部93により、目標出力演算部92の目標出力P*に対応する擬似アクセルペダル開度θa*を、特性マップG1、G2と、車速センサ3の検出車速Vとに基づき、目標トルクと回転数の積が目標出力P*となるアクセルペダル開度から逆引き演算して簡単に算出する。さらに、スイッチ8により、制御入力としてのアクセルペダルの開度を、検出アクセルペダル開度θaから擬似アクセルペダル開度θa*に切替え、擬似アクセルペダル開度θa*と検出車速Vとに基づく目標スロットル開度θt*にしたがってエンジンスロットル6を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも車速一定の走行制御を行なうクルーズコントロールの制御機能を備えた車両の駆動制御装置に関し、詳しくは制御の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クルーズコントロールの制御は基本的には車速一定の走行制御であるが、クルーズコントロールの一種であるアダプティブクルーズコントロール(以下、ACCという)の制御は、先行車が存在しなければ車速一定の走行制御を行ない、先行車が存在すれば車間距離(あるいは車間時間)一定の走行制御を行なうものである。
【0003】
そして、これらのクルーズコントロールの制御機能を備えた車両は、エンジンおよびトランスミッションの電子制御のコントローラを備え、ドライバ操作の通常運転が行なわれる通常制御時、アクセルペダル開度(検出アクセルペダル開度)と車速(検出車速)とに基づくフィードバック(以下、FBという)制御により、時々刻々の目標スロットル開度を演算し、目標スロットル開度に基づいてエンジンコントローラ(エンジン制御部)が燃料噴射のスロットル開度(スロットルアクチュエータ開度)を制御する。また、時々刻々の目標回転数にしたがってトランスミッションコントローラ(変速制御部)がトランスミッションの変速制御を行なう。
【0004】
つぎに、例えばACCオン操作によりACCの走行に設定されるACC制御時、先行車が存在しなければ、設定された車速(セット車速)を目標車速として、検出車速を目標車速に近づけるのに必要な駆動力を算出し、この駆動力を発生して一定車速(セット車速)の走行に制御する(例えば、特許文献1(段落[0061]−[0074]、図1、図3等)参照)。
【0005】
また、ACC制御時に先行車が存在すれば、測距レーダ等で先行車との車間距離を計測し、車間距離一定(または車間時間一定)の制御で先行車に追従する走行制御を行なう。
【0006】
図4は前記特許文献1に記載の車両制御装置(本発明の車両の駆動制御装置に対応)の概略のブロック図であり、通常制御時にはアクセル開度検出手段(アクセルペダル開度センサ)100の検出アクセルペダル開度、車速検出手段(車速センサ)200の検出車速とを目標駆動力算出部300に入力し、目標駆動力算出部300により、所定のマップを参照して検出車速と検出アクセルペダル開度の組み合わせに対応する目標駆動力を算出する。さらに、制御量算出部400により、前記目標駆動力と検出車速の積からエンジンの目標出力を算出し、目標出力を得るエンジン制御の目標トルクおよび変速制御の目標回転数を前記マップから選んで算出し、算出した目標トルク、目標回転数および検出アクセルペダル開度にしたがってエンジン制御部(エンジンコントローラ)500のスロットル開度の制御、変速制御部(トランスミッションコントローラ)600の変速制御を実行し、車両をドライバの運転操作に即した走行に制御する。
【0007】
つぎに、ACCスイッチ(図示せず)がオン操作されてACCの走行に設定されるACC制御時は、先行車が存在しなければ、第2目標駆動力算出部700により、設定された車速(セット車速)を目標車速として、検出車速を目標車速に近づけるのに必要な駆動力を第2目標駆動力として算出し、この第2目標駆動力を制御量算出部400に出力する。制御量算出部400は、第2目標駆動力と検出車速の積からエンジンの目標出力を算出し、目標出力からエンジン制御の目標トルクおよび変速制御の目標回転数を算出し、算出した目標トルク、目標回転数にしたがってエンジン制御部500のスロットル開度の制御、変速制御部600の変速制御を実行し、車両をセット車速の定速走行に制御する。なお、前記第2目標駆動力は目標駆動力算出部300にも入力され、目標駆動力算出部300は前記マップを参照して仮想的なアクセルペダル開度を逆算し、そのアクセル開度を制御量算出部400に出力する。制御量算出部400は制御量としての前記アクセルペダル開度をエンジン制御部500および変速制御部600に出力し、エンジン制御部500および変速制御部600は必要に応じてこのアクセルペダル開度を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−219066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4の従来装置の場合、通常制御時は、アクセル開度検出手段100の検出アクセルペダル開度と車速検出手段200の検出車速とを制御入力とし、この制御入力に基づき、目標駆動力算出部300、制御量算出部400を介してエンジン制御部500、変速制御部600に至る制御系により制御が行なわれるのに対して、ACC制御時は、第2目標駆動力算出部700により検出車速を目標車速に近づけるのに必要な第2目標駆動力を制御入力として演算し、この駆動力を前記制御系の途中の制御量算出部400に入力してエンジン制御部500、変速制御部600の制御が行なわれる。したがって、通常制御時とACC制御時とでは制御入力の内容および入力位置が異なり、制御の構成が複雑になるとともに通常制御時とACC制御時とで制御特性(応答性等)が異なって制御特性のばらつき等が生じる。しかも、ACC制御時の制御入力の第2目標駆動力が制御系の途中から入力されるので、通常制御の構成では得られるトラクションコントロール等の制御出力がACC制御では得られなくなるおそれもある。
【0010】
すなわち、ACC等のクルーズコントロールの制御機能を備えた従来の車両においては、前記したように通常制御時とクルーズコントロールの制御時とで制御入力の内容および入力位置が異なるため、制御の構成が複雑であり、しかも、通常制御時とクルーズコントロールの制御時とで制御特性に差が生じてクルーズコントロールの機能を十分に発揮することができないおそれがある。また、通常制御の構成では得られるトラクションコントロール等の制御出力が、ACC制御では得られなくなるおそれもある。
【0011】
本発明は、ACC制御等のクルーズコントロールの制御時にも簡単な演算処理により通常制御時と同じ内容の制御入力を通常制御時と同じ制御系の同じ位置(最上流位置)に入力してエンジンのスロットル開度の制御およびトランスミッションの変速制御を行なうようにし、クルーズコントロールの機能を十分に発揮できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明の車両の駆動制御装置は、制御入力としてのアクセルペダル開度と車速とに基づいてエンジンの目標スロットル開度、トランスミッションの目標回転数を演算し、前記目標スロットル開度、前記目標回転数にしたがってエンジンのスロットル開度を制御する車両の駆動制御装置であって、アクセルペダル開度を検出するアクセルペダル開度センサと、車速を検出する車速センサと、クルーズコントロールの目標加速度と目標車速からエンジンの目標出力を演算する目標出力演算手段と、アクセルペダル開度と車速に対してエンジンが発生すべき目標トルクの特性マップおよび、アクセルペダル開度と車速に対するトランスミッションの回転数の特性マップと、前記車速センサの検出車速とに基づき、目標トルクと回転数の積が前記目標出力となる擬似アクセルペダル開度を逆引き演算する擬似アクセルペダル開度演算手段と、クルーズコントロールの制御により、前記制御入力としてのアクセルペダルの開度を、前記アクセルペダル開度センサの検出アクセルペダル開度から前記擬似アクセルペダル開度に切替える開度切替手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明の場合、ACC等のクルーズコントロールの制御時、目標出力演算手段により目標加速度と目標車速からエンジンの目標出力を演算し、擬似アクセルペダル開度演算手段により、前記目標出力に対応する擬似アクセルペダル開度を、アクセルペダル開度と車速に対してエンジンが発生すべき目標トルクの特性マップおよび、アクセルペダル開度と車速に対するトランスミッションの回転数の特性マップと、車速センサの検出車速とに基づき、目標トルクと回転数の積が前記目標出力となるアクセルペダル開度から逆引き演算して簡単に算出する。さらに、開度切替手段により、制御入力としてのアクセルペダルの開度を、アクセル開度検出手段が検出した検出アクセルペダル開度から前記擬似アクセルペダル開度に切替え、擬似アクセルペダル開度と車速とに基づいてエンジンの目標スロットル開度およびを演算し、目標スロットル開度にしたがってエンジンスロットル、トランスミッションを制御する。
【0014】
したがって、クルーズコントロールの制御時に、通常制御時と同じ制御系の最上流のアクセルペダル開度の入力位置に、通常制御時のアクセル開度センサの検出アクセルペダル開度に代えて擬似アクセルベダル開度演算手段が演算した擬似アクセルペダル開度を入力し、通常制御時と同じようにしてエンジンのスロットル開度の制御およびトランスミッションの変速制御が行なえる。そのため、クルーズコントロールの制御時にも通常制御時と同じ内容の制御入力を通常制御時と同じ位置(最上流位置)に入力し、通常制御時と同様の制御でクルーズコントロールの機能を十分に発揮することができる。また、通常制御時およびクルーズコントロールの制御時の制御出力をトラクションコントロール等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の要部の詳細なブロック図である。
【図3】図2の一部の処理を説明する特性図である。
【図4】従来例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、一実施形態について、図1〜図3を参照して詳述する。
【0017】
図1は車両(自車)1に備えられた車両の駆動制御装置の概略のブロック構成を示し、通常走行時は、アクセルペダル開度センサ2の検出アクセルペダル開度θaと車速センサ3の検出車速Vが、エンジンコントローラ4、トランスミッションコントローラ5それぞれに入力される。
【0018】
エンジンコントローラ4は検出アクセルペダル開度θaと検出車速Vに基づき、後述するように要求トルクτ*を算出し、要求トルクτ*とトランスミッションコントローラ5が算出したエンジンの目標回転数R*とからエンジンの目標スロットル開度θt*を算出し、エンジンスロットル6の開度θtを目標スロットル開度θt*にFB制御する。
【0019】
トランスミッションコントローラ5は検出アクセルペダル開度θaと検出車速Vに基づいてエンジンの目標回転数R*を算出し、算出した目標回転数R*をエンジンコントローラ4に供給するとともに、目標回転数R*に応じてトランスミッション7の変速をFB制御する。なお、トランスミッション7は無段変速機、有段変速機のいずれであってもよいが、本実施形態においては、トランスミッション7はCVTの無段変速機である。
【0020】
つぎに、クルーズコントロールの走行に設定されると、エンジンコントローラ4およびトランスミッションコントローラ5の前段のスイッチ(本発明の開度切替手段)8がアクセルペダル開度センサ2側からACCコントローラ9側に切替わり、ACCコントローラ9は検出アクセルペダル開度θaに対応する後述の擬似アクセルペダル開度θa*を発生してエンジンコントローラ4およびトランスミッションコントローラ5に供給する。このとき、エンジンコントローラ4およびトランスミッションコントローラ5は、擬似アクセルペダル開度θa*と検出車速Vに基づき、エンジンスロットル6の開度θt、トランスミッション7の変速を制御する。
【0021】
なお、各コントローラ4、5、9は、マイクロコンピュータのソフトウェア処理(プログラムの実行)によって実現される。また、図1のαは先行車を示す。さらに、スイッチ8はエンジンコントローラ4内で構成されていてもよい。
【0022】
図2は図1のエンジンコントローラ4、トランスミッションコントローラ5、ACCコントローラ9の詳細なブロック構成を示す。
【0023】
エンジンコントローラ4は要求トルク演算部41、スロットル開度演算部42を備える。要求トルク演算部41は入力端子in1にスイッチ8の検出アクセルペダル開度θa、擬似アクセルペダル開度θa*が入力され、入力端子in2に車速センサ3の検出車速Vが入力される。また、要求トルク演算部41には、アクセルペダル開度と車速(現在の車速)に対してエンジンが発生すべき要求トルクを算出する特性マップ(データマップ)G1が予め設定されている。よって、要求トルク演算部41では、検出アクセルペダル開度θaまたは擬似アクセルペダル開度θa*と検出車速Vに対応する要求トルク(目標トルク)τ*が前記特性マップG1から求められ、求められた要求トルクτ*は、出力端子outからスロットル開度演算部42の入力端子in1に出力される。スロットル開度演算部42には、入力端子in2に後述するトランスミッションの回転数演算部51からのエンジンの目標回転数R*が入力されている。そして、スロットル開度演算部42は、入力端子in1の要求トルクτ*と入力端子in2の目標回転数R*に基づいて目標スロットル開度θt*を求めて出力端子outからエンジンスロットル6に出力し、エンジンのスロットル開度θtを目標スロットル開度θt*に制御する。
【0024】
トランスミッションコントローラ5はトランスミッション7の回転数演算部51を備え、回転数演算部51は、要求トルク演算部41と同様、入力端子in1にスイッチ8の検出アクセルペダル開度θa、擬似アクセルペダル開度θa*が入力され、入力端子in2に車速センサ3の検出車速Vが入力される。また、回転数演算部51には、アクセルペダル開度と車速(現在の車速)に対してトランスミッション7の回転数を演算する特性マップ(データマップ)G2が予め設定されている。よって、回転数演算部51では、検出アクセルペダル開度θaまたは擬似アクセルペダル開度θa*と検出車速Vとに対応するトランスミッションの目標回転数R*が前記特性マップG2から求められて出力端子outからスロットル開度演算部42の入力端子in2およびトランスミッション7に出力され、トランスミッション7の回転数が制御される。なお、トランスミッション7の回転数は、エンジンからトランスミッション7への入力軸の回転数であり、本発明のトランスミッションの回転数である。
【0025】
ACCコントローラ9は、目標速度演算部91、目標出力演算部(本発明の目標出力演算手段)92、擬似アクセルペダル開度演算部(本発明の擬似アクセルペダル開度演算手段)93を備える。
【0026】
クルーズコントロールの設定操作により、ACCコントローラ9の前段の図示省略した目標加速度設定部は、例えば測距レーダにより先行車αが検出されない(先行車αが存在しない)ときに目標速度演算部91の入力端子in1に一定車速(設定車速)に制御するための目標加速度A*を入力し、前記測距レーダにより先行車αが検出される(先行車αが存在する)ときは目標速度演算部91の入力端子in1に一定の車間時間の車速に制御するための目標加速度A*を入力する。また、目標速度演算部91の入力端子in2には検出車速Vが入力される。そして、目標速度演算部91は例えば目標加速度A*の積分により求められる到達車速と検出車速(現在車速)Vとの差から、目標車速V*を演算して出力端子outから出力する。
【0027】
目標出力演算部92は入力端子in1に目標加速度A*が入力され、入力端子in2に目標車速V*が入力される。そして、目標出力演算部92は、目標加速度A*と目標車速V*とに基づき、例えばP*=(r+M×A*)×V*、r:車両1の走行負荷(既値)、M:車両1の重量の周知の式の演算からエンジンの目標出力P*を求めて出力端子outから出力する。擬似アクセルペダル開度演算部93は入力端子in1に目標出力P*が入力されて、入力端子in2に検出車速Vが入力される。そして、擬似アクセルペダル開度演算部93は、後述する逆引き演算により目標出力P*のアクセルペダル開度を擬似アクセルペダル開度θa*として算出し、算出した擬似アクセルペダル開度θa*を出力端子outからスイッチ8に出力する。
【0028】
ところで、前記特性マップG1、G2の積(G1×G2)は、(特性マップG1の要求トルクτ*)×(特性マップG2の目標回転数R*)であり、検出車速Vに依存した目標出力(エンジン出力)P*である。
【0029】
図3はアクセルペダル開度に対するエンジンのトルクτ、出力Pおよび、トランスミッション7の回転数Rの特性の一例を示し、この特性例からも要求トルクτ*、目標出力(エンジン出力)P*および、目標回転数R*、の関係は明らかである。
【0030】
そして、アクセルペダル開度と車速に対して求められる特性マップG1、G2の積(G1×G2)が検出車速Vに依存した目標出力(エンジン出力)P*を意味しており、この関係から、目標出力P*と検出車速Vに対するアクセルペダル開度を求めるマップ(逆引きマップ)を導き出すことができる。そこで、擬似アクセルペダル開度演算部93は、特性マップG1、G2の積(G1×G2)のエンジン出力(目標出力P*)と、車速、アクセルペダル開度の組み合わせとのマップが逆引きマップとして設定され、該逆引きマップの車速センサ3の検出車速V(および目標出力P*)に対応するアクセルペダル開度を擬似アクセルペダル開度θa*として逆引き演算する。
【0031】
さらに、通常制御時は、スイッチ8がアクセルペダル開度センサ2側に保持され、アクセルペダル開度センサ2の検出アクセルペダル開度θaがエンジンコントローラ4の要求トルク演算部41、トランスミッションコントローラ5の回転数演算部51に入力され、検出アクセルペダル開度θaと検出車速Vを入力として、エンジンコントローラ4からエンジンスロットル6に至るエンジン制御系および、トランスミッションコントローラ5からトランスミッション7に至るトランスミッション制御系により、エンジンのスロットル開度、トランスミッションの変速がFB制御される。
【0032】
一方、クルーズコントロールの制御時は、スイッチ8の切替えにより、アクセルペダル開度センサ2の検出アクセルペダル開度θaに代えてACCコントローラ9の擬似アクセルペダル開度θa*がエンジンコントローラ4の要求トルク演算部41、トランスミッションコントローラ5の回転数演算部51に入力され、擬似アクセルペダル開度θa*と検出車速Vを入力として、エンジンコントローラ4からエンジンスロットル6に至るエンジン制御系および、トランスミッションコントローラ5からトランスミッション7に至るトランスミッション制御系により、エンジンのスロットル開度、トランスミッションの変速が制御される。
【0033】
したがって、本実施形態の場合、クルーズコントロールの制御が、前記逆引き演算により擬似アクセルペダル開度θa*を簡単に演算し、エンジン制御系およびトランスミッション制御系の最も上流の入力であるアクセルペダル開度を検出アクセルペダル開度θaから擬似アクセルペダル開度θa*に切替え、通常制御時と同じ制御系を用いて通常制御時と同様にして行なうことができる。この場合、制御の構成が極めて簡単になる。また、エンジン制御系およびトランスミッション制御系の入力は、通常制御、クルーズコントロールの制御のいずれであってもアクセルペダル開度と車速である。そして、クルーズコントロールの制御時、制御入力としてのアクセルペダル開度を擬似アクセルペダル開度θa*とする制御で応答性よくエンジンスロットル6のアクセル開度の制御およびトランスミッション7の変速制御を行なうことができる。そのため、通常制御時とクルーズコントロールの制御時とで制御の応答性等に差がなく、簡単な構成でクルーズコントロールの制御精度を向上し、クルーズコントロールの機能を十分に発揮することができる。また、制御出力を通常制御時だけでなくACC制御時にもトラクションコントロール等に利用することができる。
【0034】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、クルーズコントロールは一定速度で走行するだけの機能を備えたものであってもよい。
【0035】
つぎに、前記実施形態においては、ACCコントローラ9の目標速度演算部91により目標加速度A*と検出速度Vから目標車速V*を演算したが、目標車速V*は設定される構成であってもよい。また、図1の各コントローラ4、5、9の構成等は前記実施形態と異なっていてもよいのは勿論である。さらに、トランスミッション7は有段変速機であってもよい。
【0036】
そして、本発明は、クルーズコントロールの機能を備えた種々の車両の駆動制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 アクセルペダル開度センサ
3 車速センサ
6 エンジンスロットル
7 トランスミッション
8 スイッチ
92 目標出力演算部
93 擬似アクセルペダル開度演算部
A* 目標加速度
P* 目標出力
R* 目標回転数
V 検出車速
V* 目標車速
θa 検出アクセルペダル開度
θa* 擬似アクセルペダル開度
θt* 目標スロットル開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御入力としてのアクセルペダル開度と車速とに基づいてエンジンの目標スロットル開度、トランスミッションの目標回転数を演算し、前記目標スロットル開度、前記目標回転数にしたがってエンジンのスロットル開度を制御する車両の駆動制御装置であって、
アクセルペダル開度を検出するアクセルペダル開度センサと、
車速を検出する車速センサと、
クルーズコントロールの目標加速度と目標車速からエンジンの目標出力を演算する目標出力演算手段と、
アクセルペダル開度と車速に対してエンジンが発生すべき目標トルクの特性マップおよび、アクセルペダル開度と車速に対するトランスミッションの回転数の特性マップと、前記車速センサの検出車速とに基づき、目標トルクと回転数の積が前記目標出力となる擬似アクセルペダル開度を逆引き演算する擬似アクセルペダル開度演算手段と、
クルーズコントロールの制御により、前記制御入力としてのアクセルペダルの開度を、前記アクセルペダル開度センサの検出アクセルペダル開度から前記擬似アクセルペダル開度に切替える開度切替手段とを備えたことを特徴とする車両の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−284989(P2010−284989A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138143(P2009−138143)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】