車両制御装置
【課題】ドライバに違和感を与えることなくドライバのペダル操作負担を軽減可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】ドライバのアクセル操作状態を検出するアクセル操作状態検出部と、自車両の速度を減速させる減速装置と、自車両の速度を算出する車体速算出部と、検出されたアクセル操作状態と算出された車体速に基づいて目標車体速を設定し、目標車体速となるように制御する速度制御部を有するコントロールユニットと、を備えた。
【解決手段】ドライバのアクセル操作状態を検出するアクセル操作状態検出部と、自車両の速度を減速させる減速装置と、自車両の速度を算出する車体速算出部と、検出されたアクセル操作状態と算出された車体速に基づいて目標車体速を設定し、目標車体速となるように制御する速度制御部を有するコントロールユニットと、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渋滞時の走行では、発進、加速、停止をドライバのアクセル操作及びブレーキ操作によって行っていたため、頻繁に両操作の切り換え(ペダル踏み換え)が発生し、ドライバへの負担が問題となっていた。また、車両を駐車する際、駐車場入り口に設けられた段差等の突起を乗り越すシーンにおいては、アクセル操作及びブレーキ操作の切り換えをより迅速に行わなければならず、ドライバへの負担となっていた。特許文献1には、車体速とアクセルペダルの操作量に基づいて予め設定されたブレーキ制動力を出力する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−329684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、アクセルペダルの戻し操作時に大、中、小の制動力を車体速とアクセルペダルの戻し操作量に基づいて選択/出力し、減速度制御を行っている。しかしながら、予め制動力が決められているため、同一の車体速かつ同一のアクセル戻し操作を行っても、車両重量の変化や路面の勾配変化によってドライバに違和感を与えるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、ドライバに違和感を与えることなくドライバのペダル操作負担を軽減可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両制御装置では、ドライバのアクセル操作状態と算出された車体速に基づいて目標車体速を設定し、減速装置を制御して設定された目標車体速となるように車体速を制御することとした。
【発明の効果】
【0007】
アクセル操作のみで適正な速度制御が行えるため、ドライバの運転負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車両制御装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図である。
【図2】実施例1の油圧ユニットの油圧回路図である。
【図3】実施例1のコントロールユニットで実行されるワンペダル走行モード制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の目標減速度の決定を行うマップである。
【図5】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における基本制御を表すフローチャートである。
【図6】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における路面摩擦係数判別を表すフローチャートである。
【図7】実施例1の路面摩擦係数に応じた各種ゲインを表すゲインマップである。
【図8】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における上り勾配/突起乗り越し制御処理を表すフローチャートである。
【図9】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における制御離脱制御処理を表すフローチャートである。
【図10】実施例1のワンペダル走行モードにおける作用を表すタイムチャートである。
【図11】実施例1のワンペダル走行モードにおける上り勾配走行時の作用を表すタイムチャートである。
【図12】実施例1のワンペダル走行モードにおける突起乗り越し走行時の作用を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。図1は実施例1の車両制御装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図、図2は実施例1の油圧ユニット31の油圧回路図である。実施例1の車両は、駆動源としてエンジン39と、変速機40とを備え、エンジン39から出力された駆動力を変速機40により適宜変速して後輪RR,RLを駆動する後輪駆動方式の車両である。尚、駆動方式は前輪駆動や4輪駆動車であってもよい。また、油圧ユニット31は、P系統とS系統との2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造を有する。
コントロールユニット32は、コンバインセンサ33と、ドライバの操舵状態を検出する操舵角センサ34および各車輪速センサ35FL,35FR,35RL,35RRからの各情報と、ドライバのアクセルペダル操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ37(アクセル操作状態検出部)と、ドライバのブレーキペダル操作量を検出するブレーキスイッチ38と、ドライバにより操作され後述するワンペダル走行モードのON・OFF信号を出力するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)とを入力し、各種演算を行って油圧ユニット31及びエンジンコントローラ36に制御指令を出力する。
油圧ユニット31は、コントロールユニット32からの指令に基づいて左前輪FLのホイルシリンダW/C(FL)、右後輪RRのホイルシリンダW/C(RR)、右前輪FRのホイルシリンダW/C(FR)、左後輪RLのホイルシリンダW/C(RL)の各液圧の保持、増圧または減圧を行う。エンジンコントローラ36は、通常時はアクセル開度に応じてエンジン39の燃料噴射量や回転数、同期タイミング等を制御してエンジントルクの制御を行う。すなわち、エンジン39及びエンジンコントローラ36により加速装置を構成している。
各ホイルシリンダW/Cは、油圧ユニット31から供給されるブレーキ液に応じて対応する各車輪に制動力を付与する。すなわち、ホイルシリンダW/C及び油圧ユニット31により減速装置を構成している。コンバインセンサ33は、加速度センサとヨーレートセンサとを1パッケージ化したもので、加速度センサは、車両前後方向の加速度を検出し、ヨーレートセンサは、車両に作用するヨーレートを検出する。
【0010】
油圧ユニット31のP系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続され、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。また、P系統、S系統それぞれに、ポンプPPとポンプPSとが設けられ、このポンプPPとポンプPSは、1つのモータMによって駆動される。マスタシリンダM/CとポンプPP,PS(以下、ポンプP)の吸入側とは、管路11P,11S(以下、管路11)によって接続されている。この各管路11上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2P,2Sが設けられている。また、管路11上であって、ゲートインバルブ2P,2S(以下、ゲートインバルブ2)とポンプPとの間にはチェックバルブ6P,6S(以下、チェックバルブ6)が設けられ、この各チェックバルブ6は、ゲートインバルブ2からポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。各ポンプPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、管路12P,12S(以下、管路12)によって接続されている。この各管路12上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FL,4RR,4FR,4RL(以下、ソレノイドインバルブ4)が設けられている。また、各管路12上であって、各ソレノイドインバルブ4とポンプPとの間にはチェックバルブ7P,7S(以下、チェックバルブ7)が設けられて、この各チェックバルブ7は、ポンプPからソレノイドインバルブ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0011】
各管路12には、各ソレノイドインバルブ4を迂回する管路17FL,17RR,17FR,17RL(以下、管路17)が設けられ、この管路17には、チェックバルブ10FL,10RR,10FR,10RL(以下、チェックバルブ10)が設けられている。この各チェックバルブ10は、ホイルシリンダW/CからポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。マスタシリンダM/Cと管路12とは管路13P,13S(以下、管路13)によって接続され、管路12と管路13とはポンプPとソレノイドインバルブ4との間において合流する。この各管路13上には、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3P,3S(以下、ゲートアウトバルブ3)が設けられている。また各管路13には、各ゲートアウトバルブ3を迂回する管路18P,18S(以下、管路18)が設けられ、この管路18には、チェックバルブ9P,9S(以下、チェックバルブ9)が設けられている。この各チェックバルブ9は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。ポンプPの吸入側にはリザーバ16P,16S(以下、リザーバ16)が設けられ、このリザーバ16とポンプPとは管路15P,15S(以下、管路15)によって接続されている。リザーバ16とポンプPとの間にはチェックバルブ8P,8S(以下、チェックバルブ8)が設けられて、この各チェックバルブ8は、リザーバ16からポンプPへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。ホイルシリンダW/Cと管路15とは管路14P,14S(以下、管路14)によって接続され、管路14と管路15とはチェックバルブ8とリザーバ16との間において合流する。この各管路14には、それぞれ常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5RR,5FR,5RL(以下、ソレノイドアウトバルブ5)が設けられている。これら各電磁弁の開閉によりドライバのブレーキペダル操作に係らずホイルシリンダ圧を増減圧することができる。尚、具体的な増減圧処理に関しては周知であるため、説明を省略する。
【0012】
コントロールユニット32は、各センサの入力信号およびドライバのブレーキペダル操作状態等に基づいてドライバの操作に従う通常ブレーキ制御の演算と、アンチスキッドブレーキ制御(ABS)、車両挙動安定化制御(VDC)、車間距離制御および障害物回避制御等車両の情報を用いてタイヤのスリップや車両挙動を制御するための演算を行う。そして、車両として必要な制動力(全ての輪)を算出し、各車輪に必要な制動力目標値を演算し、各制動力目標値に応じた指令信号を出力する。これらを総称して通常制御モードと記載する。また、コントロールユニット32は、所定の条件が成立しドライバがアクセルペダルを離した際に、各ホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧及び/又はエンジントルクを自動的に制御して車両の速度を制御するワンペダル走行モード制御処理(速度制御モード)を実施する。尚、ワンペダル走行モード制御処理中であっても、ABSやVDCを作動させて車両挙動を制御する場合もある。
【0013】
〔ワンペダル走行モード制御処理〕
図3は、実施例1のコントロールユニット32で実行されるワンペダル走行モード制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。なお、この制御処理は、所定の演算周期で繰り返し実行される。また、コントロールユニット32内には実車体速算出部32aが設けられ、制御フローにおいて使用される実車体速は、各車輪速センサのうち、従動輪FL,FRの車輪速平均値を実車体速として使用する。
(制御介入条件)
ステップS1では、ワンペダル走行モード切換スイッチ41がONであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。これによりドライバにワンペダル走行モード制御を実施する意思があるか否かを確認する。ワンペダル走行モード切換スイッチ41がOFFのときは通常制御モードが実行される。
ステップS2では、ブレーキスイッチ38がOFFであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。すなわち、ドライバによりブレーキ操作が成された場合には即座にワンペダル走行モード制御を離脱し、通常制御モードへと移行する。ブレーキ操作が解除されればワンペダル走行モード制御を選択している限りワンペダル走行モード制御を実施する。
ステップS3では、実車体速度V0が所定車体速V1以下か否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。実車体速が高いときは単に惰性走行を望んでいると考えられ、一方、渋滞時走行のように低車速領域では発進と停止を繰り返すような走行状態では、ワンペダル操作によって利便性が向上すると考えられるからである。
ステップS4では、実操舵角量が所定値S1以下か否かを判定する。YESの場合にはステップS5へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。一般に操舵中は旋回時であることからドライバの操作に委ねることで違和感を抑制する。
【0014】
(制御内容)
ステップS5では、今回の制御周期におけるアクセル開度が前回の制御周期におけるアクセル開度である前回値よりも小さいか否か、もしくはアクセル開度が0か否かを判断し、いずれかの条件が成立したときはステップS6へ進み、それ以外のときはステップS11へ進む。すなわち、ドライバがアクセルペダルを戻している状態、もしくはアクセルペダルを完全に離したときに減速制御が行われ、アクセル開度がON状態を表す一定値もしくは踏み込み操作中のときは上り勾配/突起乗り越し制御を実行する。
ステップS6では、アクセル戻し操作量及び実車体速度より減速度G1を決定する。図4は実施例1の目標減速度G1の決定を行うマップである。コントロールユニット32内には目標加減速度算出部32cが設けられ、この算出部内に設けられたマップは、縦軸に算出する減速度G1を表し、横軸にアクセル戻し操作量が設定されている。尚、アクセル戻し操作量とは単位時間当たりのアクセル操作変化量を意味し、コントロールユニット32内に設けられたアクセル操作変化量算出部32bにより算出する。このマップ内に実車体ごとに減速度特性が設定されており、それぞれの実車体間の値は線形補完によって算出する。アクセル戻し操作量が多く、実車体速度が高いほど大きな減速度が設定される。
ステップS7では、ステップS6で設定された目標減速度G1から目標車体速Vmを決定する。すなわち、実車体速を初期値として目標減速度G1を決定すれば次回制御時の目標車体速Vmが決定できることを意味する。
ステップS8では、ワンペダル走行モード制御の基本制御を実行する。尚、基本制御の詳細については別途説明する。
ステップS9では、路面摩擦係数(路面μ)の判別を行い、K1〜K6の制御ゲインを設定する。尚、路面μ判別処理の詳細については別途説明する。
ステップS10では、エンジン39に対する要求駆動トルク及び油圧ユニット31に対するブレーキ液圧指令値を演算する。具体的には、以下の式により演算される。
要求駆動トルク=max(実駆動トルク+(KT×エンジントルク×ギア比/タイヤ有効半径),0)
ブレーキ液圧指令値=KB×|(目標車体速−実車体速)|
尚、KT,KBは制御ゲインであり、詳細については後述する。
ステップS11では、上り勾配/突起乗り越し制御を実行する。詳細については後述する。
ステップS12では、制御離脱処理を実行する。詳細については後述する。
【0015】
(基本制御処理)
次に、ステップS8において実行される基本制御処理について説明する。図5は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における基本制御を表すフローチャートである。
ステップS81では、実車体速V0が目標車体速Vmよりも大きいか否かを判断し、大きいときはステップS82へ進み、それ以外の時はステップS85へと進む。
ステップS82では、制御ゲインKTが0以外か否かを判断し、0以外のときはステップS83へ進み、KT=0のときはステップS84へ進む。
ステップS83では、KT=K5,KB=K3に設定する。
ステップS84では、KT=0,KB=K3に設定する。
ステップS85では、実車体速V0が目標車体速Vmよりも小さいか否かを判断し、小さいときはステップS86へ進み、それ以外のとき(すなわちVm=V0)のときはステップS89へ進む。
ステップS86では、制御ゲインKBが0以外か否かを判断し、0以外のときはステップS87へ進み、KB=0のときはステップS88へ進む。
ステップS87では、KB=K2,KT=0に設定する。
ステップS88では、KB=0,KT=K1に設定する。
ステップS89では、KT=前回値保持、KB=前回値保持、すなわち前回の制御ゲインをそのまま継続して設定する。
【0016】
(路面摩擦係数判別処理)
次に、ステップS9において実行される路面摩擦係数判別処理について説明する。図6は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における路面摩擦係数判別を表すフローチャートである。
ステップS91では、路面μ値を推定する。具体的には車体減速度と車輪速との関係等に基づいて判断する。例えば、車体減速度が小さいのに車輪速がロック傾向にある場合には低μと判断し、車体減速度が大きいのに車輪速がロックしていない場合には高μと判断する。尚、他の推定ロジック等を適宜採用できるため、特に限定しない。
ステップS92では、路面μ値がμ1以上のときは高μ路と判断してステップS93に進んで高μ路用ゲインK1H〜K6Hを設定し、それ以外のときはステップS94に進んで低μ路用ゲインK1L〜K6Lを設定する。図7は実施例1の路面摩擦係数に応じた各種ゲインを表すゲインマップである。
ゲインK1は制御ゲインKTとして設定される値であり、目標車体速と実車体速との偏差が大きいほど大きな値に設定される。また、路面μが高いほど大きな値に設定される。
ゲインK2は制御ゲインKBとして設定される値であり、時間の経過と共に小さくなるように設定される。また、路面μが高いほど短時間で小さな値となるように設定される。
ゲインK3は制御ゲインKBとして設定される値であり、目標車体速と実車体速との偏差が大きいほど大きな値に設定される。また、路面μが高いほど大きな値に設定される。
ゲインK4は制御ゲインKTとして設定される値であり、時間の経過と共に負値から0に向かうように設定される。また、路面μが高いほど短時間で0となるように設定される。
ゲインK5は制御ゲインKTとして設定される値であり、時間の経過と共に負値から0に向かうように設定される。また、ゲインK4よりもゲイン変化勾配が小さく、路面μが高いほど短時間で0となるように設定される。
ゲインK6は制御ゲインKTとして設定される値であり、目標車体速と実車体速との偏差が大きいほど大きな値に設定され、所定以上偏差が大きいときは一定値が設定される。また、路面μが高いほど短時間で一定値に到達するように設定される。すなわち、路面μが高ければ、駆動力及び制動力の両方について大きな値を与えてもグリップ力が確保されるため、車両は安定している。一方、路面μが低ければ、グリップ力が確保できず車両安定性の低下を招くおそれがある。そこで、低μ路では制御量が小さくなるように変更するものである。
【0017】
(上り勾配/突起乗り越し制御処理)
次に、ステップS11において実行される上り勾配/突起乗り越し制御処理について説明する。図8は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における上り勾配/突起乗り越し制御処理を表すフローチャートである。
ステップS111では、要求駆動トルクが輪止めに当たっていると考えられる所定値Ntよりも小さいときはステップS112へ進み、所定値Nt以上の時は輪止めに当たっていると判断してステップS118に進む。
ステップS112では、実車体速V0が前回制御周期における実車体速V0_z1以下の状態が所定時間T1(msec)継続したか否かを判断し、継続した場合にはステップS113へ進み、継続していない場合にはステップS116へ進む。すなわち、ステップS5においてアクセル開度がON状態を表す一定値もしくは踏み込み操作中と判断されたにも係らず車速が増加しない場合は上り勾配もしくは突起に当接していると判断する。
ステップS113では、実車体速が0以外か否かを判断し、0以外のときはステップS114へ進んで制御ゲインKT=K1,KB=0に設定する。一方、実車体速が0のときはステップS115に進んで突起判断フラグをONに設定すると共に制御ゲインKT=K6,KB=0に設定する。
ステップS116では、実車体速が1km/h以上か否かを判断し、1km/h以上のときは突起を乗越えたと判断してステップS117へ進み、それ以外のときはステップS119に進んで制御ゲインKT=0,KB=0に設定する。尚、1km/hは極低速を表す値であればよく、適宜設定することができる値である。
ステップS117では、突起判断フラグがONか否かを判断し、ONのときはステップS118へ進んで制御ゲインKT=K4,KB=0に設定すると共に、突起判断フラグをOFFに設定する。
【0018】
(制御離脱処理)
次に、ステップS12において実行される制御離脱処理について説明する。図9は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における制御離脱制御処理を表すフローチャートである。
ステップS121では、ブレーキスイッチがOFFか否かを判断し、OFFのときはステップS122へ進み、それ以外のときはステップS126へ進んで制御ゲインKB=0,KT=0に設定する。すなわち、ワンペダル走行モード制御を実行中にドライバによりブレーキペダル操作が成された場合には即座に制御を終了する。
ステップS122では、制御ゲインKBが0か否かを判断し、0のときはステップS124に進み、それ以外のときはステップS123に進んで制御ゲインKB=K2に設定する。すなわち、ワンペダル走行モード制御中におけるブレーキ液圧指令中に制御介入条件が成立しなくなったときは徐々に制御を解除する。
ステップS124では、制御ゲインKTが0か否かを判断し、0のときは本制御フローを終了し、それ以外のときはステップS125に進んで制御ゲインKT=K5に設定する。すなわち、ワンペダル走行モード制御中におけるエンジントルク指令中に制御介入条件が成立しなくなったときは徐々に制御を解除する。
【0019】
〔ワンペダル走行モードにおける作用〕
(基本作動)
図10は実施例1のワンペダル走行モードにおける作用を表すタイムチャートである。初期条件として、平坦、高μ路直進走行で速度制御モード離脱条件が成立していない場合の動作である。時刻t1において、ワンペダル走行モード切換スイッチ41がONとなった状態でドライバがアクセルペダルを戻し始める。このとき、車体速がV1より低いため制御介入条件が成立し、ドライバのアクセル戻し操作量及び実車体速V0から目標減速度G1(すなわち車体速の勾配)を算出し、実車体速V0及び目標減速度G1から目標車体速Vmを演算する。そして、実車体速V0及び目標車体速Vmとの偏差を算出し、当該偏差がゼロとなるようにブレーキ制動力をブレーキ液圧指令によって発生させる。これにより、ドライバはアクセル操作のみによって、車両の加減速度がコントロール可能となる。時刻t2においてアクセル戻し操作が終了し、踏み込み操作が開始されると、ブレーキ液圧は0となり、通常の加速動作が行われる。
また、時刻t3からt4の間において、ワンペダル走行モードによる制御が実行された状態において、ドライバがアクセル戻し操作中、又はアクセルを完全に戻しきっているときに、実車体速V0が目標車体速Vmより低い状態になった場合は、前記偏差がゼロと成るようにエンジンコントローラ36に駆動トルクを要求し、制御指令を出力する。これにより、アクセル踏み増し操作及び戻し操作を頻繁に繰り返さなくても、最適な車体速に制御可能となる。言い換えると、低車速領域においてワンペダル走行モードを選択した場合、ドライバはアクセルペダル操作の仕方によって車両走行状態を制御できるのである。通常は、ブレーキペダルを踏み込まなければ車両を停止させることはできないが、アクセルペダルを素早く離すと素早く制動され、ゆっくり離すとゆっくり制動されるため、特に渋滞走行時のようにドライバの負担が大きい状態では、有利に作用する。また、目標車体速Vmを設定するため、路面勾配や車両重量の違いに影響を受けることなく安定した走行状態を達成することができる。更に、言い換えると、車体速を制御することは、単位時間当たりにおける車両の移動距離を制御することを意味しており、これが減速度を制御することと決定的に異なる点である。
【0020】
(上り勾配走行時)
図11は実施例1のワンペダル走行モードにおける上り勾配走行時の作用を表すタイムチャートである。初期条件として、平坦、高μ路直進走行で速度制御モード離脱条件が成立していない場合の動作である。時刻t1において、上り勾配にさしかかり、ドライバは車体速の維持を望んでアクセルペダルを踏み増す。このとき要求駆動力は輪止めに当たっていると判断できる所定値Ntよりも低い。そして、時刻t1から予め設定された所定時間T1が経過した時刻t2までの間、実車体速が下がり続けているため、上り勾配であると判断する。そして、実車体速V0が0以外であるため、制御ゲインKT=K1,KB=0に設定する。ここで、制御ゲインKTを設定するにあたり、図7に示すように、目標車体速Vmと実車体速V0との偏差が必要である。そこで、制御開始条件である予め設定された所定車体速V1よりも低い所定車体速Vuを目標車体速Vmに設定し、この目標車体速VM(=Vu)と実車体速V0との偏差に基づいて制御ゲインKTを設定する。そして、車体速偏差がなくなるようにエンジントルクアップを実行する。よって、ドライバのアクセルペダル操作に応じたエンジントルクに、所定トルク加算されたエンジントルクが出力され、ドライバは過度にアクセルペダル操作を行うことなく、スムーズに上り勾配を走行することができる。
尚、実車体速V0が目標車体速Vm(=Vu)に到達したときは、エンジントルクの減少及びブレーキ液圧の適宜発生により目標車体速を維持するように制御される。時刻t3において、上り勾配を登り切ったとき、ドライバはアクセルペダルを徐々に閉じる方向に操作する。このとき、目標車体速Vuが設定されていることから、その目標車体速Vuを維持するように適宜エンジントルクやブレーキ液圧が制御される。これにより、ドライバのペダル操作に係る負担を軽減しつつ一定車速による走行を達成する。
例えば、高速道路を走行しているとき、渋滞が生じやすい場所として上り勾配路が挙げられる。これは、ドライバが一定アクセルペダル開度で走行していても自然に車体速の低下を招き、これに伴って後方車両との車間距離が縮まり、後方車両はその様子を見て減速し、といったことが連鎖的に起こることによる。このとき、ドライバが一定のアクセルペダル開度で走行しているときに車体速が低下した場合には、トルクアップを行って車体速を維持するようにアシストすることで、車体速の意図せぬ低下を回避でき、渋滞を緩和することができるものである。また、上記上り勾配路における渋滞のシーンに係らず、立体駐車場等で混雑した場合にも有効に機能する。
【0021】
(突起乗り越し走行時)
図12は実施例1のワンペダル走行モードにおける突起乗り越し走行時の作用を表すタイムチャートである。初期条件として、平坦、高μ路直進走行で速度制御モード離脱条件が成立していない場合の動作である。時刻t1において、突起に差し掛かり、ドライバがアクセルペダルを踏み込んでエンジントルクアップを図る。このとき、輪止めに当接したと判定できる所定値Ntよりも小さい範囲で実車体速V0が上昇していないときは突起と判断し、突起判断フラグをONに設定すると共に、制御ゲインKT=K6,KB=0に設定する。ここで、制御ゲインKTを設定するにあたり、図7に示すように、目標車体速Vmと実車体速V0との偏差が必要である。そこで、目標車輪速Vmとして極低速を表す所定値Vd(例えば、1km/h)を設定し、その偏差に基づいて制御ゲインKT=K6を出力する。ここで、K6はK1に比べて大きなゲインに設定されており、車両が動き始めるまでは大きなトルクアップが行われる。車両が突起を乗越え始めると、実車体速が発生する。よって、制御ゲインKTはK6からK1に切り換えられ、基本制御と同様の車速制御が実行される。時刻t2において、突起判断フラグがONのままで実車体速V0が所定値Vdに到達すると、次は制御ゲインがK1からK4に設定される。この制御ゲインK4は負の値であり、エンジントルクを一気に減少させて突起乗上げ直後の加速を抑制するものである。時刻t3においてエンジントルクを下げているにも係らず実車体速V0が所定値Vdよりも大きくなると、ブレーキ液圧を発生させて所定値Vdとなるように車速制御を行う。
例えば、段差のある駐車場等において、ドライバが段差を乗越えて駐車する場合を検討する。ドライバは段差を乗越えるためにアクセルペダルを大きく踏み込む必要がある。しかし、踏み込みすぎると段差を乗越えることはできるものの、段差乗越え後も意図せぬ車両移動を招き、ドライバに違和感を与える。これに対し、実施例1では、ドライバがさほどアクセルペダルを踏み込む必要も無く、かつ、突起乗越え後にブレーキペダルにあわてて踏み換えなくとも、意図せぬ車両移動を発生させないように制御する。よって、ドライバの心理的,肉体的負担の両方を軽減することができるものである。
【0022】
以上説明したように、実施例1では下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)ドライバのアクセル操作量を検出するアクセル開度センサ37(アクセル操作量検出部)と、自車両に制動力を発生させる油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(制動力発生部)と、自車両に駆動力を発生させるエンジン39及びエンジンコントローラ36(駆動力発生部)と、自車両の車体速を算出する実車体速算出部32a(車体速算出部)と、エンジン39によって検出されたアクセル操作量に対応した駆動力を発生させる通常制御モードと、検出されたアクセル操作量に関連して算出された目標車体速Vmを設定し、実車体速V0が設定された目標車体速Vmに追従するように油圧ユニット31及び駆動力発生部の制御をする速度制御モードを有するコントロールユニット32と、通常制御モードと速度制御モードのいずれかを選択するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)を備え、コントロールユニット32は選択されたモードに応じて車両制御を行う。よって、ドライバの意思に応じた車両制御が行え、速度制御モード選択時にはアクセル操作のみで速度制御が行えるため、ドライバの運転負荷を低減することができる。また、車体速を制御対象とするため、車両重量や路面勾配等の外的変動要因に左右されること無く安定した走行状態を達成することができる。
(2)上記(1)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、検出されたアクセル操作量に基づいて単位時間当たりのアクセル操作変化量を算出するアクセル操作変化量算出部32bと、算出されたアクセル操作変化量と算出された実車体速V0に基づいて、目標加減速度G1を演算する目標加減速演算部32cを有し、演算された目標加減速度G1から目標車体速Vmを算出し、算出された目標車体速Vmに自車両の実車体速V0を追従させる。これにより、加減速度を制御し目標車体速に追従させることで急加速や急減速といった違和感を低減することができる。
(3)上記(2)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出された後、予め設定された所定の時間T1の間、算出された実車体速V0が前回の車体速V0_z1より低い状態を継続した場合は、エンジントルク(駆動力発生部の駆動力)を増加させる。すなわち、上り勾配/突起乗り越しシーンを検出することで、適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
【0023】
(4)上記(3)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出されたときの、算出された車体速がゼロのときは、車体速が検出されたときよりもエンジントルク(駆動力発生部の駆動力)の増加量を多くする。よって、突起乗越しシーンを検出することができ、これに応じた適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
(5)上記(4)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、エンジントルク(駆動力発生部の駆動力)の増加を行い、実車体速V0が算出されたときは、検出されたアクセル操作量に係らず油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(制動力発生部)によって車体速を減速させる。よって、突起乗越え後の不要な飛び出しを防止することができる。
(6)上記(1)に記載の車両制御装置において、走行中の路面の路面摩擦係数を検出するステップS91(路面摩擦係数検出部)を備え、コントロールユニット32は、検出された路面摩擦係数が予め設定された値より高いときは低いときに比べ制動力及び駆動力を発生させるための制御ゲインを大きくした(図7参照)。よって、路面摩擦係数に応じた適切な制動力/駆動力が得られ車両を安定させることができる。
(7)上記(1)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、ワンペダル走行モード(速度制御モード)選択時に所定の条件が発生したときはワンペダル走行モードを離脱し、通常制御モードに移行する。よって、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることでドライバに操作負担を掛けることが無く、利便性が向上する。
【0024】
(8)上記(7)に記載の車両制御装置において、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキスイッチ38(ブレーキ操作状態検出部)を備え、所定の条件はブレーキスイッチ38がONとなること(ブレーキ操作状態検出部によりブレーキ操作が検出されること)を必要条件とする。すなわち、ドライバの制動意思を尊重することで安全性を向上することができる。
(9)上記(7)に記載の車両制御装置において、所定の条件は算出された実車体速Vmが予め設定された車体速V1以下であることを必要条件とする。すなわち、低車速領域のみ実行し、高車速領域では使用しないため、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることができ、利便性を向上することができる。
(10)上記(7)に記載の車両制御装置において、ドライバの操舵状態を検出する操舵角センサ34(操舵状態検出部)を備え、所定の条件は操舵角センサ34により操舵が検出されたことを必要条件とする。すなわち、操舵中ではワンペダル走行モードによる制御が実行されないため、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることでき、利便性が向上する。
【0025】
(11)ドライバのアクセル操作状態を検出するアクセル開度センサ37(アクセル操作量検出部)と、自車両の速度を減速させる油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(減速装置)と、自車両の速度を算出する実車体速算出部32a(車体速度算出部)と、検出されたアクセル操作状態と算出された自車両の速度に基づいて目標車体速Vmを設定し油圧ユニット31及びホイルシリンダW/Cを制御して設定された目標車体速Vmとなるように車体速度を制御するワンペダル走行モード(速度制御部)を有するコントロールユニット32と、を備えた。すなわち、アクセル操作のみで適正な速度制御が行えるためドライバの運転負荷低減を図ることができる。
(12)上記(11)に記載の車両制御装置において、検出されたアクセル操作状態に基づいて単位時間当たりのアクセル操作変化量を算出するアクセル操作変化量算出部32bと、自車両の速度を加速させるエンジン39及びエンジンコントローラ36(加速装置)と、を有し、コントロールユニット32は、検出されたアクセル操作変化量及び実車体速V0に基づいて目標減速度G1を設定して目標車体速Vmとなるように車体速度を制御する。よって、適正な加減速度によって目標車体速に追従させることができ、ドライバへの違和感の低減を図ることができる。
(13)上記(11)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出された後、予め設定された所定の時間T1の間、算出された車体速が前回の車体速より低い状態を継続した場合は、エンジントルク(加速装置の駆動力)を増加させる。よって、上り勾配/突起乗り越しシーンを検出することで適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
【0026】
(14)上記(13)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出されたときの、算出された実車体速V0がゼロの時は、実車体速V0が検出されたときよりもエンジントルク(加速装置の駆動力)の駆動量を多くする。すなわち、突起乗り越しシーンを検出することで適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
(15)上記(14)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、エンジントルク(加速装置の駆動力)の増加を行い、実車体速V0が算出されたとき(V0=0以外のとき)は、検出されたアクセル操作状態に係らず油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(減速装置)によって実車体速V0を減速させる。よって、突起乗越え後の不要な飛び出しを防止することができる。
(16)上記(12)に記載の車両制御装置において、エンジン39及びエンジンコントローラ36によって、検出されたアクセル操作状態に対応したエンジントルク(駆動力)を発生させる通常制御モード(通常制御部)と、通常制御モードとワンペダル走行モードによる制御のいずれかを選択するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)を備え、コントロールユニット32は選択された制御部に応じて車両制御を行うと共に、ワンペダル走行モードの選択時に所定の条件が発生したときはワンペダル走行モードを離脱し、通常制御部に移行する。すなわち、必要に応じてワンペダル走行モード(速度制御部)を離脱させることで利便性を向上することができる。
【0027】
(17)上記(16)に記載の車両制御装置において、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキスイッチ38(ブレーキ操作状態検出部)を備え、所定の条件はブレーキスイッチ38によりブレーキ操作が検出されることを必要条件とする。よって、ドライバの制動意思を尊重することができ、安全性の向上を図ることができる。
(18)上記(17)に記載の車両制御装置において、所定の条件は算出された実車体速V0が予め設定された車体速V1より大きいことを必要条件とする。よって、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることができ、利便性の向上を図ることができる。
(19)上記(18)に記載の車両制御装置において、ドライバの操舵状態を検出する操舵角センサ34(操舵状態検出部)を備え、所定の条件は操舵角センサにより操舵が検出されたことを必要条件とする。よって、必要に応じて速度制御モードを離脱させることができ、利便性の向上を図ることができる。
(20)通常制御モードとワンペダル走行モード(速度制御モード)を選択するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)を有し、ドライバのアクセル操作量に対応した加減速度に基づいて目標車体速Vmを設定し、ドライバによってワンペダル走行モード(速度制御モード)が選択されたときは設定した目標車体速Vmになるように自車両の制駆動力を制御する速度制御制動力を制御することを特徴とする車両制御方法。すなわち、ドライバの意思に応じた車両制御が行え、速度制御モード選択時にはアクセル操作のみで速度制御が行えるため、ドライバの運転負荷の低減を図ることができる。
【0028】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための実施例1について説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない設計変更等があっても本発明に含まれる。実施例1では、加速制御と減速制御の両方を行う構成としたが、減速制御のみを行う構成でもよい。
アクセル操作量検出部としてアクセル開度センサを用いたが、他にドライバの加速意図を検出する手段であれば適宜流用できる。ブレーキ操作状態検出部としてブレーキスイッチを用いたが、マスタシリンダ液圧センサや、ホイルシリンダ液圧センサ、ブレーキペダルストロークセンサや踏力センサによってブレーキ操作状態を検出してもよい。実施例1ではエンジントルクやブレーキ液圧を制御したが、変速機の変速比等を制御して制駆動力を制御してもよい。実施例1では通常制御モードとして、ABS,VDC,車間距離制御といった制御が含まれるよう構成したが、いずれか一つ、もしくはこれらいずれかの組み合わせが備えられたものであってもよい。選択スイッチとしてドライバによって操作されるワンペダル走行モード切換スイッチを備えた構成としたが、スイッチに限らず、他の条件、例えばナビ情報やVICS情報等によって制御モードを切り換える構成としてもよい。
ワンペダル走行モードを実行する際、目標減速度G1を設定した上で目標車体速Vmを設定したが、目標減速度G1を設定することなく、単に目標車体速Vmを設定する構成としてもよい。実施例1では、駆動源としてエンジンを有する車両について説明したが、駆動源もしくは制動力発生源として電動モータを有する電気自動車およびハイブリッド車両にも適用できる。この場合、減速装置としてブレーキ液圧制御に限らず、電動モータの回生トルク制御等によっても制動力を実現できる。実施例1では、路面μの高低に応じて高μ路用ゲインと低μ路用ゲインの2段階設定としたが、路面μに応じて多段階もしくは無段階に設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
31 油圧ユニット
32 コントロールユニット
32a 実車体速算出部
32b アクセル操作変化量算出部
32c 目標加減速度算出部
34 操舵角センサ(操舵状態検出部)
35 車輪速センサ
36 エンジンコントローラ
37 アクセル開度センサ(アクセル操作状態検出部)
38 ブレーキスイッチ
39 エンジン
41 ワンペダル走行モード切換スイッチ(選択スイッチ)
M/C マスタシリンダ
W/C ホイルシリンダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渋滞時の走行では、発進、加速、停止をドライバのアクセル操作及びブレーキ操作によって行っていたため、頻繁に両操作の切り換え(ペダル踏み換え)が発生し、ドライバへの負担が問題となっていた。また、車両を駐車する際、駐車場入り口に設けられた段差等の突起を乗り越すシーンにおいては、アクセル操作及びブレーキ操作の切り換えをより迅速に行わなければならず、ドライバへの負担となっていた。特許文献1には、車体速とアクセルペダルの操作量に基づいて予め設定されたブレーキ制動力を出力する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−329684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、アクセルペダルの戻し操作時に大、中、小の制動力を車体速とアクセルペダルの戻し操作量に基づいて選択/出力し、減速度制御を行っている。しかしながら、予め制動力が決められているため、同一の車体速かつ同一のアクセル戻し操作を行っても、車両重量の変化や路面の勾配変化によってドライバに違和感を与えるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、ドライバに違和感を与えることなくドライバのペダル操作負担を軽減可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両制御装置では、ドライバのアクセル操作状態と算出された車体速に基づいて目標車体速を設定し、減速装置を制御して設定された目標車体速となるように車体速を制御することとした。
【発明の効果】
【0007】
アクセル操作のみで適正な速度制御が行えるため、ドライバの運転負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車両制御装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図である。
【図2】実施例1の油圧ユニットの油圧回路図である。
【図3】実施例1のコントロールユニットで実行されるワンペダル走行モード制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の目標減速度の決定を行うマップである。
【図5】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における基本制御を表すフローチャートである。
【図6】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における路面摩擦係数判別を表すフローチャートである。
【図7】実施例1の路面摩擦係数に応じた各種ゲインを表すゲインマップである。
【図8】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における上り勾配/突起乗り越し制御処理を表すフローチャートである。
【図9】実施例1のワンペダル走行モード制御処理における制御離脱制御処理を表すフローチャートである。
【図10】実施例1のワンペダル走行モードにおける作用を表すタイムチャートである。
【図11】実施例1のワンペダル走行モードにおける上り勾配走行時の作用を表すタイムチャートである。
【図12】実施例1のワンペダル走行モードにおける突起乗り越し走行時の作用を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。図1は実施例1の車両制御装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図、図2は実施例1の油圧ユニット31の油圧回路図である。実施例1の車両は、駆動源としてエンジン39と、変速機40とを備え、エンジン39から出力された駆動力を変速機40により適宜変速して後輪RR,RLを駆動する後輪駆動方式の車両である。尚、駆動方式は前輪駆動や4輪駆動車であってもよい。また、油圧ユニット31は、P系統とS系統との2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造を有する。
コントロールユニット32は、コンバインセンサ33と、ドライバの操舵状態を検出する操舵角センサ34および各車輪速センサ35FL,35FR,35RL,35RRからの各情報と、ドライバのアクセルペダル操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ37(アクセル操作状態検出部)と、ドライバのブレーキペダル操作量を検出するブレーキスイッチ38と、ドライバにより操作され後述するワンペダル走行モードのON・OFF信号を出力するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)とを入力し、各種演算を行って油圧ユニット31及びエンジンコントローラ36に制御指令を出力する。
油圧ユニット31は、コントロールユニット32からの指令に基づいて左前輪FLのホイルシリンダW/C(FL)、右後輪RRのホイルシリンダW/C(RR)、右前輪FRのホイルシリンダW/C(FR)、左後輪RLのホイルシリンダW/C(RL)の各液圧の保持、増圧または減圧を行う。エンジンコントローラ36は、通常時はアクセル開度に応じてエンジン39の燃料噴射量や回転数、同期タイミング等を制御してエンジントルクの制御を行う。すなわち、エンジン39及びエンジンコントローラ36により加速装置を構成している。
各ホイルシリンダW/Cは、油圧ユニット31から供給されるブレーキ液に応じて対応する各車輪に制動力を付与する。すなわち、ホイルシリンダW/C及び油圧ユニット31により減速装置を構成している。コンバインセンサ33は、加速度センサとヨーレートセンサとを1パッケージ化したもので、加速度センサは、車両前後方向の加速度を検出し、ヨーレートセンサは、車両に作用するヨーレートを検出する。
【0010】
油圧ユニット31のP系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続され、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。また、P系統、S系統それぞれに、ポンプPPとポンプPSとが設けられ、このポンプPPとポンプPSは、1つのモータMによって駆動される。マスタシリンダM/CとポンプPP,PS(以下、ポンプP)の吸入側とは、管路11P,11S(以下、管路11)によって接続されている。この各管路11上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2P,2Sが設けられている。また、管路11上であって、ゲートインバルブ2P,2S(以下、ゲートインバルブ2)とポンプPとの間にはチェックバルブ6P,6S(以下、チェックバルブ6)が設けられ、この各チェックバルブ6は、ゲートインバルブ2からポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。各ポンプPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、管路12P,12S(以下、管路12)によって接続されている。この各管路12上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FL,4RR,4FR,4RL(以下、ソレノイドインバルブ4)が設けられている。また、各管路12上であって、各ソレノイドインバルブ4とポンプPとの間にはチェックバルブ7P,7S(以下、チェックバルブ7)が設けられて、この各チェックバルブ7は、ポンプPからソレノイドインバルブ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0011】
各管路12には、各ソレノイドインバルブ4を迂回する管路17FL,17RR,17FR,17RL(以下、管路17)が設けられ、この管路17には、チェックバルブ10FL,10RR,10FR,10RL(以下、チェックバルブ10)が設けられている。この各チェックバルブ10は、ホイルシリンダW/CからポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。マスタシリンダM/Cと管路12とは管路13P,13S(以下、管路13)によって接続され、管路12と管路13とはポンプPとソレノイドインバルブ4との間において合流する。この各管路13上には、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3P,3S(以下、ゲートアウトバルブ3)が設けられている。また各管路13には、各ゲートアウトバルブ3を迂回する管路18P,18S(以下、管路18)が設けられ、この管路18には、チェックバルブ9P,9S(以下、チェックバルブ9)が設けられている。この各チェックバルブ9は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。ポンプPの吸入側にはリザーバ16P,16S(以下、リザーバ16)が設けられ、このリザーバ16とポンプPとは管路15P,15S(以下、管路15)によって接続されている。リザーバ16とポンプPとの間にはチェックバルブ8P,8S(以下、チェックバルブ8)が設けられて、この各チェックバルブ8は、リザーバ16からポンプPへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。ホイルシリンダW/Cと管路15とは管路14P,14S(以下、管路14)によって接続され、管路14と管路15とはチェックバルブ8とリザーバ16との間において合流する。この各管路14には、それぞれ常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5RR,5FR,5RL(以下、ソレノイドアウトバルブ5)が設けられている。これら各電磁弁の開閉によりドライバのブレーキペダル操作に係らずホイルシリンダ圧を増減圧することができる。尚、具体的な増減圧処理に関しては周知であるため、説明を省略する。
【0012】
コントロールユニット32は、各センサの入力信号およびドライバのブレーキペダル操作状態等に基づいてドライバの操作に従う通常ブレーキ制御の演算と、アンチスキッドブレーキ制御(ABS)、車両挙動安定化制御(VDC)、車間距離制御および障害物回避制御等車両の情報を用いてタイヤのスリップや車両挙動を制御するための演算を行う。そして、車両として必要な制動力(全ての輪)を算出し、各車輪に必要な制動力目標値を演算し、各制動力目標値に応じた指令信号を出力する。これらを総称して通常制御モードと記載する。また、コントロールユニット32は、所定の条件が成立しドライバがアクセルペダルを離した際に、各ホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧及び/又はエンジントルクを自動的に制御して車両の速度を制御するワンペダル走行モード制御処理(速度制御モード)を実施する。尚、ワンペダル走行モード制御処理中であっても、ABSやVDCを作動させて車両挙動を制御する場合もある。
【0013】
〔ワンペダル走行モード制御処理〕
図3は、実施例1のコントロールユニット32で実行されるワンペダル走行モード制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。なお、この制御処理は、所定の演算周期で繰り返し実行される。また、コントロールユニット32内には実車体速算出部32aが設けられ、制御フローにおいて使用される実車体速は、各車輪速センサのうち、従動輪FL,FRの車輪速平均値を実車体速として使用する。
(制御介入条件)
ステップS1では、ワンペダル走行モード切換スイッチ41がONであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。これによりドライバにワンペダル走行モード制御を実施する意思があるか否かを確認する。ワンペダル走行モード切換スイッチ41がOFFのときは通常制御モードが実行される。
ステップS2では、ブレーキスイッチ38がOFFであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。すなわち、ドライバによりブレーキ操作が成された場合には即座にワンペダル走行モード制御を離脱し、通常制御モードへと移行する。ブレーキ操作が解除されればワンペダル走行モード制御を選択している限りワンペダル走行モード制御を実施する。
ステップS3では、実車体速度V0が所定車体速V1以下か否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。実車体速が高いときは単に惰性走行を望んでいると考えられ、一方、渋滞時走行のように低車速領域では発進と停止を繰り返すような走行状態では、ワンペダル操作によって利便性が向上すると考えられるからである。
ステップS4では、実操舵角量が所定値S1以下か否かを判定する。YESの場合にはステップS5へ移行し、NOの場合にはステップS12へ移行する。一般に操舵中は旋回時であることからドライバの操作に委ねることで違和感を抑制する。
【0014】
(制御内容)
ステップS5では、今回の制御周期におけるアクセル開度が前回の制御周期におけるアクセル開度である前回値よりも小さいか否か、もしくはアクセル開度が0か否かを判断し、いずれかの条件が成立したときはステップS6へ進み、それ以外のときはステップS11へ進む。すなわち、ドライバがアクセルペダルを戻している状態、もしくはアクセルペダルを完全に離したときに減速制御が行われ、アクセル開度がON状態を表す一定値もしくは踏み込み操作中のときは上り勾配/突起乗り越し制御を実行する。
ステップS6では、アクセル戻し操作量及び実車体速度より減速度G1を決定する。図4は実施例1の目標減速度G1の決定を行うマップである。コントロールユニット32内には目標加減速度算出部32cが設けられ、この算出部内に設けられたマップは、縦軸に算出する減速度G1を表し、横軸にアクセル戻し操作量が設定されている。尚、アクセル戻し操作量とは単位時間当たりのアクセル操作変化量を意味し、コントロールユニット32内に設けられたアクセル操作変化量算出部32bにより算出する。このマップ内に実車体ごとに減速度特性が設定されており、それぞれの実車体間の値は線形補完によって算出する。アクセル戻し操作量が多く、実車体速度が高いほど大きな減速度が設定される。
ステップS7では、ステップS6で設定された目標減速度G1から目標車体速Vmを決定する。すなわち、実車体速を初期値として目標減速度G1を決定すれば次回制御時の目標車体速Vmが決定できることを意味する。
ステップS8では、ワンペダル走行モード制御の基本制御を実行する。尚、基本制御の詳細については別途説明する。
ステップS9では、路面摩擦係数(路面μ)の判別を行い、K1〜K6の制御ゲインを設定する。尚、路面μ判別処理の詳細については別途説明する。
ステップS10では、エンジン39に対する要求駆動トルク及び油圧ユニット31に対するブレーキ液圧指令値を演算する。具体的には、以下の式により演算される。
要求駆動トルク=max(実駆動トルク+(KT×エンジントルク×ギア比/タイヤ有効半径),0)
ブレーキ液圧指令値=KB×|(目標車体速−実車体速)|
尚、KT,KBは制御ゲインであり、詳細については後述する。
ステップS11では、上り勾配/突起乗り越し制御を実行する。詳細については後述する。
ステップS12では、制御離脱処理を実行する。詳細については後述する。
【0015】
(基本制御処理)
次に、ステップS8において実行される基本制御処理について説明する。図5は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における基本制御を表すフローチャートである。
ステップS81では、実車体速V0が目標車体速Vmよりも大きいか否かを判断し、大きいときはステップS82へ進み、それ以外の時はステップS85へと進む。
ステップS82では、制御ゲインKTが0以外か否かを判断し、0以外のときはステップS83へ進み、KT=0のときはステップS84へ進む。
ステップS83では、KT=K5,KB=K3に設定する。
ステップS84では、KT=0,KB=K3に設定する。
ステップS85では、実車体速V0が目標車体速Vmよりも小さいか否かを判断し、小さいときはステップS86へ進み、それ以外のとき(すなわちVm=V0)のときはステップS89へ進む。
ステップS86では、制御ゲインKBが0以外か否かを判断し、0以外のときはステップS87へ進み、KB=0のときはステップS88へ進む。
ステップS87では、KB=K2,KT=0に設定する。
ステップS88では、KB=0,KT=K1に設定する。
ステップS89では、KT=前回値保持、KB=前回値保持、すなわち前回の制御ゲインをそのまま継続して設定する。
【0016】
(路面摩擦係数判別処理)
次に、ステップS9において実行される路面摩擦係数判別処理について説明する。図6は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における路面摩擦係数判別を表すフローチャートである。
ステップS91では、路面μ値を推定する。具体的には車体減速度と車輪速との関係等に基づいて判断する。例えば、車体減速度が小さいのに車輪速がロック傾向にある場合には低μと判断し、車体減速度が大きいのに車輪速がロックしていない場合には高μと判断する。尚、他の推定ロジック等を適宜採用できるため、特に限定しない。
ステップS92では、路面μ値がμ1以上のときは高μ路と判断してステップS93に進んで高μ路用ゲインK1H〜K6Hを設定し、それ以外のときはステップS94に進んで低μ路用ゲインK1L〜K6Lを設定する。図7は実施例1の路面摩擦係数に応じた各種ゲインを表すゲインマップである。
ゲインK1は制御ゲインKTとして設定される値であり、目標車体速と実車体速との偏差が大きいほど大きな値に設定される。また、路面μが高いほど大きな値に設定される。
ゲインK2は制御ゲインKBとして設定される値であり、時間の経過と共に小さくなるように設定される。また、路面μが高いほど短時間で小さな値となるように設定される。
ゲインK3は制御ゲインKBとして設定される値であり、目標車体速と実車体速との偏差が大きいほど大きな値に設定される。また、路面μが高いほど大きな値に設定される。
ゲインK4は制御ゲインKTとして設定される値であり、時間の経過と共に負値から0に向かうように設定される。また、路面μが高いほど短時間で0となるように設定される。
ゲインK5は制御ゲインKTとして設定される値であり、時間の経過と共に負値から0に向かうように設定される。また、ゲインK4よりもゲイン変化勾配が小さく、路面μが高いほど短時間で0となるように設定される。
ゲインK6は制御ゲインKTとして設定される値であり、目標車体速と実車体速との偏差が大きいほど大きな値に設定され、所定以上偏差が大きいときは一定値が設定される。また、路面μが高いほど短時間で一定値に到達するように設定される。すなわち、路面μが高ければ、駆動力及び制動力の両方について大きな値を与えてもグリップ力が確保されるため、車両は安定している。一方、路面μが低ければ、グリップ力が確保できず車両安定性の低下を招くおそれがある。そこで、低μ路では制御量が小さくなるように変更するものである。
【0017】
(上り勾配/突起乗り越し制御処理)
次に、ステップS11において実行される上り勾配/突起乗り越し制御処理について説明する。図8は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における上り勾配/突起乗り越し制御処理を表すフローチャートである。
ステップS111では、要求駆動トルクが輪止めに当たっていると考えられる所定値Ntよりも小さいときはステップS112へ進み、所定値Nt以上の時は輪止めに当たっていると判断してステップS118に進む。
ステップS112では、実車体速V0が前回制御周期における実車体速V0_z1以下の状態が所定時間T1(msec)継続したか否かを判断し、継続した場合にはステップS113へ進み、継続していない場合にはステップS116へ進む。すなわち、ステップS5においてアクセル開度がON状態を表す一定値もしくは踏み込み操作中と判断されたにも係らず車速が増加しない場合は上り勾配もしくは突起に当接していると判断する。
ステップS113では、実車体速が0以外か否かを判断し、0以外のときはステップS114へ進んで制御ゲインKT=K1,KB=0に設定する。一方、実車体速が0のときはステップS115に進んで突起判断フラグをONに設定すると共に制御ゲインKT=K6,KB=0に設定する。
ステップS116では、実車体速が1km/h以上か否かを判断し、1km/h以上のときは突起を乗越えたと判断してステップS117へ進み、それ以外のときはステップS119に進んで制御ゲインKT=0,KB=0に設定する。尚、1km/hは極低速を表す値であればよく、適宜設定することができる値である。
ステップS117では、突起判断フラグがONか否かを判断し、ONのときはステップS118へ進んで制御ゲインKT=K4,KB=0に設定すると共に、突起判断フラグをOFFに設定する。
【0018】
(制御離脱処理)
次に、ステップS12において実行される制御離脱処理について説明する。図9は実施例1のワンペダル走行モード制御処理における制御離脱制御処理を表すフローチャートである。
ステップS121では、ブレーキスイッチがOFFか否かを判断し、OFFのときはステップS122へ進み、それ以外のときはステップS126へ進んで制御ゲインKB=0,KT=0に設定する。すなわち、ワンペダル走行モード制御を実行中にドライバによりブレーキペダル操作が成された場合には即座に制御を終了する。
ステップS122では、制御ゲインKBが0か否かを判断し、0のときはステップS124に進み、それ以外のときはステップS123に進んで制御ゲインKB=K2に設定する。すなわち、ワンペダル走行モード制御中におけるブレーキ液圧指令中に制御介入条件が成立しなくなったときは徐々に制御を解除する。
ステップS124では、制御ゲインKTが0か否かを判断し、0のときは本制御フローを終了し、それ以外のときはステップS125に進んで制御ゲインKT=K5に設定する。すなわち、ワンペダル走行モード制御中におけるエンジントルク指令中に制御介入条件が成立しなくなったときは徐々に制御を解除する。
【0019】
〔ワンペダル走行モードにおける作用〕
(基本作動)
図10は実施例1のワンペダル走行モードにおける作用を表すタイムチャートである。初期条件として、平坦、高μ路直進走行で速度制御モード離脱条件が成立していない場合の動作である。時刻t1において、ワンペダル走行モード切換スイッチ41がONとなった状態でドライバがアクセルペダルを戻し始める。このとき、車体速がV1より低いため制御介入条件が成立し、ドライバのアクセル戻し操作量及び実車体速V0から目標減速度G1(すなわち車体速の勾配)を算出し、実車体速V0及び目標減速度G1から目標車体速Vmを演算する。そして、実車体速V0及び目標車体速Vmとの偏差を算出し、当該偏差がゼロとなるようにブレーキ制動力をブレーキ液圧指令によって発生させる。これにより、ドライバはアクセル操作のみによって、車両の加減速度がコントロール可能となる。時刻t2においてアクセル戻し操作が終了し、踏み込み操作が開始されると、ブレーキ液圧は0となり、通常の加速動作が行われる。
また、時刻t3からt4の間において、ワンペダル走行モードによる制御が実行された状態において、ドライバがアクセル戻し操作中、又はアクセルを完全に戻しきっているときに、実車体速V0が目標車体速Vmより低い状態になった場合は、前記偏差がゼロと成るようにエンジンコントローラ36に駆動トルクを要求し、制御指令を出力する。これにより、アクセル踏み増し操作及び戻し操作を頻繁に繰り返さなくても、最適な車体速に制御可能となる。言い換えると、低車速領域においてワンペダル走行モードを選択した場合、ドライバはアクセルペダル操作の仕方によって車両走行状態を制御できるのである。通常は、ブレーキペダルを踏み込まなければ車両を停止させることはできないが、アクセルペダルを素早く離すと素早く制動され、ゆっくり離すとゆっくり制動されるため、特に渋滞走行時のようにドライバの負担が大きい状態では、有利に作用する。また、目標車体速Vmを設定するため、路面勾配や車両重量の違いに影響を受けることなく安定した走行状態を達成することができる。更に、言い換えると、車体速を制御することは、単位時間当たりにおける車両の移動距離を制御することを意味しており、これが減速度を制御することと決定的に異なる点である。
【0020】
(上り勾配走行時)
図11は実施例1のワンペダル走行モードにおける上り勾配走行時の作用を表すタイムチャートである。初期条件として、平坦、高μ路直進走行で速度制御モード離脱条件が成立していない場合の動作である。時刻t1において、上り勾配にさしかかり、ドライバは車体速の維持を望んでアクセルペダルを踏み増す。このとき要求駆動力は輪止めに当たっていると判断できる所定値Ntよりも低い。そして、時刻t1から予め設定された所定時間T1が経過した時刻t2までの間、実車体速が下がり続けているため、上り勾配であると判断する。そして、実車体速V0が0以外であるため、制御ゲインKT=K1,KB=0に設定する。ここで、制御ゲインKTを設定するにあたり、図7に示すように、目標車体速Vmと実車体速V0との偏差が必要である。そこで、制御開始条件である予め設定された所定車体速V1よりも低い所定車体速Vuを目標車体速Vmに設定し、この目標車体速VM(=Vu)と実車体速V0との偏差に基づいて制御ゲインKTを設定する。そして、車体速偏差がなくなるようにエンジントルクアップを実行する。よって、ドライバのアクセルペダル操作に応じたエンジントルクに、所定トルク加算されたエンジントルクが出力され、ドライバは過度にアクセルペダル操作を行うことなく、スムーズに上り勾配を走行することができる。
尚、実車体速V0が目標車体速Vm(=Vu)に到達したときは、エンジントルクの減少及びブレーキ液圧の適宜発生により目標車体速を維持するように制御される。時刻t3において、上り勾配を登り切ったとき、ドライバはアクセルペダルを徐々に閉じる方向に操作する。このとき、目標車体速Vuが設定されていることから、その目標車体速Vuを維持するように適宜エンジントルクやブレーキ液圧が制御される。これにより、ドライバのペダル操作に係る負担を軽減しつつ一定車速による走行を達成する。
例えば、高速道路を走行しているとき、渋滞が生じやすい場所として上り勾配路が挙げられる。これは、ドライバが一定アクセルペダル開度で走行していても自然に車体速の低下を招き、これに伴って後方車両との車間距離が縮まり、後方車両はその様子を見て減速し、といったことが連鎖的に起こることによる。このとき、ドライバが一定のアクセルペダル開度で走行しているときに車体速が低下した場合には、トルクアップを行って車体速を維持するようにアシストすることで、車体速の意図せぬ低下を回避でき、渋滞を緩和することができるものである。また、上記上り勾配路における渋滞のシーンに係らず、立体駐車場等で混雑した場合にも有効に機能する。
【0021】
(突起乗り越し走行時)
図12は実施例1のワンペダル走行モードにおける突起乗り越し走行時の作用を表すタイムチャートである。初期条件として、平坦、高μ路直進走行で速度制御モード離脱条件が成立していない場合の動作である。時刻t1において、突起に差し掛かり、ドライバがアクセルペダルを踏み込んでエンジントルクアップを図る。このとき、輪止めに当接したと判定できる所定値Ntよりも小さい範囲で実車体速V0が上昇していないときは突起と判断し、突起判断フラグをONに設定すると共に、制御ゲインKT=K6,KB=0に設定する。ここで、制御ゲインKTを設定するにあたり、図7に示すように、目標車体速Vmと実車体速V0との偏差が必要である。そこで、目標車輪速Vmとして極低速を表す所定値Vd(例えば、1km/h)を設定し、その偏差に基づいて制御ゲインKT=K6を出力する。ここで、K6はK1に比べて大きなゲインに設定されており、車両が動き始めるまでは大きなトルクアップが行われる。車両が突起を乗越え始めると、実車体速が発生する。よって、制御ゲインKTはK6からK1に切り換えられ、基本制御と同様の車速制御が実行される。時刻t2において、突起判断フラグがONのままで実車体速V0が所定値Vdに到達すると、次は制御ゲインがK1からK4に設定される。この制御ゲインK4は負の値であり、エンジントルクを一気に減少させて突起乗上げ直後の加速を抑制するものである。時刻t3においてエンジントルクを下げているにも係らず実車体速V0が所定値Vdよりも大きくなると、ブレーキ液圧を発生させて所定値Vdとなるように車速制御を行う。
例えば、段差のある駐車場等において、ドライバが段差を乗越えて駐車する場合を検討する。ドライバは段差を乗越えるためにアクセルペダルを大きく踏み込む必要がある。しかし、踏み込みすぎると段差を乗越えることはできるものの、段差乗越え後も意図せぬ車両移動を招き、ドライバに違和感を与える。これに対し、実施例1では、ドライバがさほどアクセルペダルを踏み込む必要も無く、かつ、突起乗越え後にブレーキペダルにあわてて踏み換えなくとも、意図せぬ車両移動を発生させないように制御する。よって、ドライバの心理的,肉体的負担の両方を軽減することができるものである。
【0022】
以上説明したように、実施例1では下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)ドライバのアクセル操作量を検出するアクセル開度センサ37(アクセル操作量検出部)と、自車両に制動力を発生させる油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(制動力発生部)と、自車両に駆動力を発生させるエンジン39及びエンジンコントローラ36(駆動力発生部)と、自車両の車体速を算出する実車体速算出部32a(車体速算出部)と、エンジン39によって検出されたアクセル操作量に対応した駆動力を発生させる通常制御モードと、検出されたアクセル操作量に関連して算出された目標車体速Vmを設定し、実車体速V0が設定された目標車体速Vmに追従するように油圧ユニット31及び駆動力発生部の制御をする速度制御モードを有するコントロールユニット32と、通常制御モードと速度制御モードのいずれかを選択するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)を備え、コントロールユニット32は選択されたモードに応じて車両制御を行う。よって、ドライバの意思に応じた車両制御が行え、速度制御モード選択時にはアクセル操作のみで速度制御が行えるため、ドライバの運転負荷を低減することができる。また、車体速を制御対象とするため、車両重量や路面勾配等の外的変動要因に左右されること無く安定した走行状態を達成することができる。
(2)上記(1)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、検出されたアクセル操作量に基づいて単位時間当たりのアクセル操作変化量を算出するアクセル操作変化量算出部32bと、算出されたアクセル操作変化量と算出された実車体速V0に基づいて、目標加減速度G1を演算する目標加減速演算部32cを有し、演算された目標加減速度G1から目標車体速Vmを算出し、算出された目標車体速Vmに自車両の実車体速V0を追従させる。これにより、加減速度を制御し目標車体速に追従させることで急加速や急減速といった違和感を低減することができる。
(3)上記(2)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出された後、予め設定された所定の時間T1の間、算出された実車体速V0が前回の車体速V0_z1より低い状態を継続した場合は、エンジントルク(駆動力発生部の駆動力)を増加させる。すなわち、上り勾配/突起乗り越しシーンを検出することで、適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
【0023】
(4)上記(3)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出されたときの、算出された車体速がゼロのときは、車体速が検出されたときよりもエンジントルク(駆動力発生部の駆動力)の増加量を多くする。よって、突起乗越しシーンを検出することができ、これに応じた適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
(5)上記(4)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、エンジントルク(駆動力発生部の駆動力)の増加を行い、実車体速V0が算出されたときは、検出されたアクセル操作量に係らず油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(制動力発生部)によって車体速を減速させる。よって、突起乗越え後の不要な飛び出しを防止することができる。
(6)上記(1)に記載の車両制御装置において、走行中の路面の路面摩擦係数を検出するステップS91(路面摩擦係数検出部)を備え、コントロールユニット32は、検出された路面摩擦係数が予め設定された値より高いときは低いときに比べ制動力及び駆動力を発生させるための制御ゲインを大きくした(図7参照)。よって、路面摩擦係数に応じた適切な制動力/駆動力が得られ車両を安定させることができる。
(7)上記(1)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、ワンペダル走行モード(速度制御モード)選択時に所定の条件が発生したときはワンペダル走行モードを離脱し、通常制御モードに移行する。よって、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることでドライバに操作負担を掛けることが無く、利便性が向上する。
【0024】
(8)上記(7)に記載の車両制御装置において、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキスイッチ38(ブレーキ操作状態検出部)を備え、所定の条件はブレーキスイッチ38がONとなること(ブレーキ操作状態検出部によりブレーキ操作が検出されること)を必要条件とする。すなわち、ドライバの制動意思を尊重することで安全性を向上することができる。
(9)上記(7)に記載の車両制御装置において、所定の条件は算出された実車体速Vmが予め設定された車体速V1以下であることを必要条件とする。すなわち、低車速領域のみ実行し、高車速領域では使用しないため、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることができ、利便性を向上することができる。
(10)上記(7)に記載の車両制御装置において、ドライバの操舵状態を検出する操舵角センサ34(操舵状態検出部)を備え、所定の条件は操舵角センサ34により操舵が検出されたことを必要条件とする。すなわち、操舵中ではワンペダル走行モードによる制御が実行されないため、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることでき、利便性が向上する。
【0025】
(11)ドライバのアクセル操作状態を検出するアクセル開度センサ37(アクセル操作量検出部)と、自車両の速度を減速させる油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(減速装置)と、自車両の速度を算出する実車体速算出部32a(車体速度算出部)と、検出されたアクセル操作状態と算出された自車両の速度に基づいて目標車体速Vmを設定し油圧ユニット31及びホイルシリンダW/Cを制御して設定された目標車体速Vmとなるように車体速度を制御するワンペダル走行モード(速度制御部)を有するコントロールユニット32と、を備えた。すなわち、アクセル操作のみで適正な速度制御が行えるためドライバの運転負荷低減を図ることができる。
(12)上記(11)に記載の車両制御装置において、検出されたアクセル操作状態に基づいて単位時間当たりのアクセル操作変化量を算出するアクセル操作変化量算出部32bと、自車両の速度を加速させるエンジン39及びエンジンコントローラ36(加速装置)と、を有し、コントロールユニット32は、検出されたアクセル操作変化量及び実車体速V0に基づいて目標減速度G1を設定して目標車体速Vmとなるように車体速度を制御する。よって、適正な加減速度によって目標車体速に追従させることができ、ドライバへの違和感の低減を図ることができる。
(13)上記(11)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出された後、予め設定された所定の時間T1の間、算出された車体速が前回の車体速より低い状態を継続した場合は、エンジントルク(加速装置の駆動力)を増加させる。よって、上り勾配/突起乗り越しシーンを検出することで適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
【0026】
(14)上記(13)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、アクセル操作変化量算出部32bによって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出されたときの、算出された実車体速V0がゼロの時は、実車体速V0が検出されたときよりもエンジントルク(加速装置の駆動力)の駆動量を多くする。すなわち、突起乗り越しシーンを検出することで適切な車両の走行速度制御を実行することができる。
(15)上記(14)に記載の車両制御装置において、コントロールユニット32は、エンジントルク(加速装置の駆動力)の増加を行い、実車体速V0が算出されたとき(V0=0以外のとき)は、検出されたアクセル操作状態に係らず油圧ユニット31及びホイルシリンダW/C(減速装置)によって実車体速V0を減速させる。よって、突起乗越え後の不要な飛び出しを防止することができる。
(16)上記(12)に記載の車両制御装置において、エンジン39及びエンジンコントローラ36によって、検出されたアクセル操作状態に対応したエンジントルク(駆動力)を発生させる通常制御モード(通常制御部)と、通常制御モードとワンペダル走行モードによる制御のいずれかを選択するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)を備え、コントロールユニット32は選択された制御部に応じて車両制御を行うと共に、ワンペダル走行モードの選択時に所定の条件が発生したときはワンペダル走行モードを離脱し、通常制御部に移行する。すなわち、必要に応じてワンペダル走行モード(速度制御部)を離脱させることで利便性を向上することができる。
【0027】
(17)上記(16)に記載の車両制御装置において、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキスイッチ38(ブレーキ操作状態検出部)を備え、所定の条件はブレーキスイッチ38によりブレーキ操作が検出されることを必要条件とする。よって、ドライバの制動意思を尊重することができ、安全性の向上を図ることができる。
(18)上記(17)に記載の車両制御装置において、所定の条件は算出された実車体速V0が予め設定された車体速V1より大きいことを必要条件とする。よって、必要に応じてワンペダル走行モードを離脱させることができ、利便性の向上を図ることができる。
(19)上記(18)に記載の車両制御装置において、ドライバの操舵状態を検出する操舵角センサ34(操舵状態検出部)を備え、所定の条件は操舵角センサにより操舵が検出されたことを必要条件とする。よって、必要に応じて速度制御モードを離脱させることができ、利便性の向上を図ることができる。
(20)通常制御モードとワンペダル走行モード(速度制御モード)を選択するワンペダル走行モード切換スイッチ41(選択スイッチ)を有し、ドライバのアクセル操作量に対応した加減速度に基づいて目標車体速Vmを設定し、ドライバによってワンペダル走行モード(速度制御モード)が選択されたときは設定した目標車体速Vmになるように自車両の制駆動力を制御する速度制御制動力を制御することを特徴とする車両制御方法。すなわち、ドライバの意思に応じた車両制御が行え、速度制御モード選択時にはアクセル操作のみで速度制御が行えるため、ドライバの運転負荷の低減を図ることができる。
【0028】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための実施例1について説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない設計変更等があっても本発明に含まれる。実施例1では、加速制御と減速制御の両方を行う構成としたが、減速制御のみを行う構成でもよい。
アクセル操作量検出部としてアクセル開度センサを用いたが、他にドライバの加速意図を検出する手段であれば適宜流用できる。ブレーキ操作状態検出部としてブレーキスイッチを用いたが、マスタシリンダ液圧センサや、ホイルシリンダ液圧センサ、ブレーキペダルストロークセンサや踏力センサによってブレーキ操作状態を検出してもよい。実施例1ではエンジントルクやブレーキ液圧を制御したが、変速機の変速比等を制御して制駆動力を制御してもよい。実施例1では通常制御モードとして、ABS,VDC,車間距離制御といった制御が含まれるよう構成したが、いずれか一つ、もしくはこれらいずれかの組み合わせが備えられたものであってもよい。選択スイッチとしてドライバによって操作されるワンペダル走行モード切換スイッチを備えた構成としたが、スイッチに限らず、他の条件、例えばナビ情報やVICS情報等によって制御モードを切り換える構成としてもよい。
ワンペダル走行モードを実行する際、目標減速度G1を設定した上で目標車体速Vmを設定したが、目標減速度G1を設定することなく、単に目標車体速Vmを設定する構成としてもよい。実施例1では、駆動源としてエンジンを有する車両について説明したが、駆動源もしくは制動力発生源として電動モータを有する電気自動車およびハイブリッド車両にも適用できる。この場合、減速装置としてブレーキ液圧制御に限らず、電動モータの回生トルク制御等によっても制動力を実現できる。実施例1では、路面μの高低に応じて高μ路用ゲインと低μ路用ゲインの2段階設定としたが、路面μに応じて多段階もしくは無段階に設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
31 油圧ユニット
32 コントロールユニット
32a 実車体速算出部
32b アクセル操作変化量算出部
32c 目標加減速度算出部
34 操舵角センサ(操舵状態検出部)
35 車輪速センサ
36 エンジンコントローラ
37 アクセル開度センサ(アクセル操作状態検出部)
38 ブレーキスイッチ
39 エンジン
41 ワンペダル走行モード切換スイッチ(選択スイッチ)
M/C マスタシリンダ
W/C ホイルシリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのアクセル操作状態を検出するアクセル操作状態検出部と、
自車両の速度を減速させる減速装置と、
自車両の速度を算出する車体速算出部と、前記検出されたアクセル操作状態と前記算出された車体速に基づいて目標車体速を設定し前記減速装置を制御して前記設定された目標車体速となるように車体速を制御する速度制御部を有するコントロールユニットと、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記検出されたアクセル操作状態に基づいて単位時間当たりのアクセル操作変化量を算出するアクセル操作変化量算出部と、
自車両の速度を加速させる加速装置と、
を有し、
前記コントロールユニットは、前記検出されたアクセル操作変化量及び前記車体速に基づいて目標減速度を設定して前記目標車体速となるように車体速を制御することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
自車両の速度を加速させる加速装置を有し、
前記コントロールユニットは、前記アクセル操作変化量算出部によって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出された後、予め設定された所定の時間の間、前記算出された車体速が前回の車体速より低い状態を継続した場合は、前記加速装置の駆動力を増加させることを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記アクセル操作変化量算出部によって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出されたときの前記算出された車体速がゼロの時は、車体速が検出されたときよりも前記加速装置の駆動力の駆動量を多くすることを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記加速装置の駆動力の増加を行い、前記車体速が算出されたときは、前記検出されたアクセル操作状態に係らず前記減速装置によって車体速を減速させることを特徴とする車両制御装置。
【請求項1】
ドライバのアクセル操作状態を検出するアクセル操作状態検出部と、
自車両の速度を減速させる減速装置と、
自車両の速度を算出する車体速算出部と、前記検出されたアクセル操作状態と前記算出された車体速に基づいて目標車体速を設定し前記減速装置を制御して前記設定された目標車体速となるように車体速を制御する速度制御部を有するコントロールユニットと、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記検出されたアクセル操作状態に基づいて単位時間当たりのアクセル操作変化量を算出するアクセル操作変化量算出部と、
自車両の速度を加速させる加速装置と、
を有し、
前記コントロールユニットは、前記検出されたアクセル操作変化量及び前記車体速に基づいて目標減速度を設定して前記目標車体速となるように車体速を制御することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
自車両の速度を加速させる加速装置を有し、
前記コントロールユニットは、前記アクセル操作変化量算出部によって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出された後、予め設定された所定の時間の間、前記算出された車体速が前回の車体速より低い状態を継続した場合は、前記加速装置の駆動力を増加させることを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記アクセル操作変化量算出部によって前回のアクセル操作量以上に変化したことが検出されたときの前記算出された車体速がゼロの時は、車体速が検出されたときよりも前記加速装置の駆動力の駆動量を多くすることを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記加速装置の駆動力の増加を行い、前記車体速が算出されたときは、前記検出されたアクセル操作状態に係らず前記減速装置によって車体速を減速させることを特徴とする車両制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−63122(P2011−63122A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215567(P2009−215567)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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