説明

車両用制動装置

【課題】車両用制動装置において、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図る。
【解決手段】シリンダ12内に駆動ピストン13で区画された前方圧力室R1及び後方圧力室R2を有するマスタシリンダ11を設け、この前方圧力室R1にホイールシリンダ21FR,21FLを連結し、目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁56を移動することでアキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であると共に、前方圧力室R1からの外部圧で移動する外部ピストン58により駆動弁56を移動することでアキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダRR,21RLに出力可能である圧力制御弁44を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員のブレーキ操作に対して車両に付与する制動力を電子制御する車両用制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制動装置として、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作力や操作量などに対して制動装置の制動力、つまり、この制動装置を駆動するホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御する電子制御制動装置として、アキュムレータに蓄えられた油圧により制動力を制御するECB(Electronically Controlled Brake)が知られている。
【0003】
このECBは、ポンプによって昇圧した油圧をアキュムレータに蓄えておき、運転者の制動要求に応じて調圧制御して制動装置としてのホイールシリンダに供給するものである。即ち、運転者がブレーキペダルを操作すると、マスタシリンダがその操作量に応じた油圧を発生すると共に、作動油の一部がストロークシミュレータに流れ込み、ブレーキペダルの踏力(操作力)に応じたブレーキペダルの操作量が調整される一方、ブレーキECUはペダルストロークに応じて車両の目標減速度を設定し、各車輪に付与する制動力分配を決定し、アキュムレータから各ホイールシリンダに対して所定の油圧を付与するようにしている。
【0004】
ところで、上述したECBは、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作に応じた適正な制動油圧を設定し、アキュムレータから各ホイールシリンダに対して適正な油圧を供給することで、制動力を電気的に制御することから、電源装置の失陥時には、ホイールシリンダに適正な油圧を供給することができない。そこで、電源装置の失陥時であっても、制動装置などの電子制御装置を正常に作動させるものとして、例えば、特許文献1に記載された車両用電源装置がある。
【0005】
この特許文献1に記載された車両用電源装置は、補助電源として、複数のキャパシタで形成されるキャパシタユニットを用いた電源バックアップユニットからなる車両用電源装置であって、バッテリの正常時にもキャパシタユニットからの電力供給を可能にする電力供給部と、この電力供給部を作動させるための強制作動部とを有し、正常時に電力供給部の動作状態を確認するようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−014754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の車両用電源装置にあっては、バッテリと補助電源(キャパシタユニット)を設け、バッテリの正常時にも、キャパシタユニットからの電力供給を可能にする電力供給部を設けこの電力供給部の動作状態を確認するようにしている。通常使用されるバッテリに加えて、補助電源としてキャパシタユニットを車両に搭載することは、製造コストが増加するばかりでなく、車両の重量が増加してしまって燃費の低下を招いてしまう。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図った車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車両用制動装置は、乗員が制動操作する操作部材と、シリンダ内に駆動ピストンが移動自在に支持されることで前方圧力室及び後方圧力室が区画されると共に前記操作部材により前記駆動ピストンを移動することで前記前方圧力室の油圧を出力可能なマスタシリンダと、前記操作部材から前記駆動ピストンに入力される操作力に応じた目標制御圧を設定する制御圧設定手段と、油圧供給源と、前記前方圧力室に連結されて車輪に制動力を発生させるホイールシリンダと、前記目標制御圧に基づいて電磁力により駆動弁を移動することで前記油圧供給源からの油圧を調圧して前記後方圧力室及び前記ホイールシリンダに出力可能であると共に前記前方圧力室からの油圧で移動する外部ピストンにより前記駆動弁を移動することで前記油圧供給源からの油圧を調圧して前記後方圧力室及び前記ホイールシリンダに出力可能である圧力制御弁とを具えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の車両用制動装置では、前記圧力制御弁は、中空形状をなすハウジングに高圧ポートと減圧ポートと制御圧ポートと外部圧ポートが設けられ、前記高圧ポートが前記油圧供給源に連結され、前記減圧ポートがリザーバタンクに連結され、前記制御圧ポートが前記後方圧力室に連結され、前記外部圧ポートが前記前方圧力室に連結され、前記ハウジングに前記駆動弁と前記外部ピストンが直列で且つ相対移動自在に支持されると共に、前記駆動弁が前記高圧ポートと前記制御圧ポートを遮断する方向に付勢支持され、電磁力により前記駆動弁を移動することで前記減圧ポートと前記制御圧ポートを遮断すると共に前記高圧ポートと前記制御圧ポートを連通可能とする一方、前記ソレノイドの電磁力を低減して前記駆動弁の駆動力を低下することで前記減圧ポートと前記制御圧ポートを連通すると共に前記高圧ポートと前記制御圧ポートを遮断可能とし、また、前記前方圧力室からの油圧により前記外部ピストンを介して前記駆動弁を移動することで前記減圧ポートと前記制御圧ポートを遮断すると共に前記高圧ポートと前記制御圧ポートを連通可能とすることを特徴としている。
【0011】
本発明の車両用制動装置では、前記駆動ピストンは段付部を有し、前記前方圧力室の受圧面積が前記後方圧力室の受圧面積より大きく設定されたことを特徴としている。
【0012】
本発明の車両用制動装置では、前記油圧供給源は、アキュムレータを有することを特徴としている。
【0013】
本発明の車両用制動装置では、前記駆動ピストンは、シリンダ内に直列に配置された入力ピストンと加圧ピストンとを有し、前記入力ピストンに前記操作部材の操作力が入力可能であり、前記加圧ピストンの前方に前記前方圧力室が区画されると共に、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に前記後方圧力室が区画され、また、前記入力ピストンに対して反力室が区画され、該反力室に反力制御弁を介して前記油圧供給源が連結されたことを特徴としている。
【0014】
本発明の車両用制動装置では、前記前方圧力室に前輪側の前記ホイールシリンダが連結され、前記後方圧力室に後輪側の前記ホイールシリンダが連結されたことを特徴としている。
【0015】
本発明の車両用制動装置では、前記圧力制御弁で調圧された油圧を前記後方圧力室に出力することで前記前方圧力室の油圧を第1ホイールシリンダ及び第2ホイールシリンダに出力可能であり、前記第1ホイールシリンダと前記第2ホイールシリンダとを連結する油圧ラインに開閉弁が設けられたことを特徴としている。
【0016】
本発明の車両用制動装置では、前記第1ホイールシリンダと前記第2ホイールシリンダとを連結する油圧ラインに前記開閉弁と共に動力分離機構が設けられたことを特徴としている。
【0017】
本発明の車両用制動装置では、前記前方圧力室と前記ホイールシリンダとを連結する油圧ラインにマスタカット弁が設けられ、該マスタカット弁の閉止時に前記圧力制御弁で調圧された油圧を前記ホイールシリンダに出力可能であり、前記マスタカット弁の開放時に前記前方圧力室の油圧を前記ホイールシリンダに出力可能であると共に、前記圧力制御弁で調圧された油圧を前記後方圧力室及び前記ホイールシリンダに出力可能であることを特徴としている。
【0018】
本発明の車両用制動装置では、前記後方圧力室とリザーバタンクとを連結する油圧ラインに負圧防止弁が設けられたことを特徴としている。
【0019】
本発明の車両用制動装置では、前記前方圧力室と前記後方圧力室とを連結する油圧ラインに負圧防止弁が設けられたことを特徴としている。
【0020】
本発明の車両用制動装置では、前記前方圧力室と前記圧力制御弁とを連結する油圧ラインに開閉弁が設けられたことを特徴としている。
【0021】
本発明の車両用制動装置では、前記外部ピストンは段付部を有し、該外部ピストンの前方側で前記駆動弁との間に区画された第1圧力室の受圧面積が、前記外部ピストンの後方側で前記前方圧力室からの油圧が作用する第2圧力室の受圧面積より小さく設定されたことを特徴としている。
【0022】
本発明の車両用制動装置では、前記駆動ピストンは、シリンダ内に直列に配置された入力ピストンと加圧ピストンとを有し、前記入力ピストンに前記操作部材の操作力が入力可能であり、前記加圧ピストンの前方に前記前方圧力室が区画される一方、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に前記後方圧力室が区画され、前記前方圧力室と前記後方圧力室とを連通する連通路が設けられると共に、前記入力ピストンが前記加圧ピストンに接近したときに前記連通路を閉止する閉止部材が設けられ、前記外部ピストンは段付部を有し、該外部ピストンの前方側で前記駆動弁との間に区画された第1圧力室の受圧面積が、前記外部ピストンの後方側で前記前方圧力室からの油圧が作用する第2圧力室の受圧面積より大きく設定されたことを特徴としている。
【0023】
本発明の車両用制動装置では、前記駆動ピストンは、シリンダ内に直列に配置された入力ピストンと加圧ピストンとを有し、前記入力ピストンに前記操作部材の操作力が入力可能であり、前記加圧ピストンの前方に前記前方圧力室が区画される一方、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に前記後方圧力室が区画され、前記圧力制御弁から前記前方圧力室及び前記後方圧力室に油圧を供給可能であり、前記外部ピストンは段付部を有し、該外部ピストンの前方側で前記駆動弁との間に区画された第1圧力室の受圧面積が、前記外部ピストンの後方側で前記前方圧力室からの油圧が作用する第2圧力室の受圧面積より大きく設定されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の車両用制動装置によれば、シリンダ内に駆動ピストンが移動自在に支持されることで前方圧力室及び後方圧力室が区画されると共に操作部材により駆動ピストンを移動することで前方圧力室の油圧を出力可能なマスタシリンダを設け、この前方圧力室に車輪に制動力を発生させるホイールシリンダを連結し、目標制御圧に基づいて電磁力により駆動弁を移動することで油圧供給源からの油圧を調圧して後方圧力室及びホイールシリンダに出力可能であると共に、前方圧力室からの油圧で移動する外部ピストンにより駆動弁を移動することで油圧供給源からの油圧を調圧して後方圧力室及びホイールシリンダに出力可能である圧力制御弁を設けている。
【0025】
従って、電源装置が正常であるとき、圧力制御弁は、目標制御圧に基づいて電磁力により駆動弁を移動して油圧供給源からの油圧を調圧し、適正な制御圧を後方圧力室及びホイールシリンダに出力することで、車輪に対してホイールシリンダが適正な制動力を付与することができる一方、電源装置が失陥したとき、圧力制御弁は、前方圧力室からの油圧により外部ピストンが移動し、この外部ピストンが駆動弁を移動して油圧供給源からの油圧を調圧し、適正な制御圧を後方圧力室及びホイールシリンダに出力することで、車輪に対してホイールシリンダが適正な制動力を付与することができることとなり、常時適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る車両用制動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
【0028】
実施例1の車両用制動装置において、図1に示すように、マスタシリンダ11は、シリンダ12内に駆動ピストン13が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。このシリンダ12は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部の軸方向におけるほぼ中間位置に段部12aが形成されることで、基端部側に小径部12bが形成される一方、先端部側に大径部12cが形成されている。このシリンダ12の内部には、駆動ピストン13が軸方向に沿って移動自在に支持されている。この駆動ピストン13は段付部13aを有することで、シリンダ12の小径部12bに移動自在に嵌合する小径ピストン13bと、大径部12cに移動自在に嵌合する大径ピストン13cが一体に形成されている。
【0029】
従って、駆動ピストン13は、前進側にて、大径ピストン13cがシリンダ12の底部12dに当接する一方、後退側にて、段付部13aがシリンダ12の段部12aに当接することで、その移動ストロークが規制されている。また、駆動ピストン13は、大径ピストン13cの先端部に開口部13dが形成されており、シリンダ12の底部12dとこの開口部13dとの間に張設された反力スプリング14の付勢力により段付部13aが段部12aに当接する位置に付勢支持されている。
【0030】
また、操作部材としてのブレーキペダル15は、上端部が図示しない車体の取付ブラケットに支持軸16により回動自在に支持されており、下端部に運転者が踏み込み操作可能なペダル17が取付けられている。そして、ブレーキペダル15は、中間部に連結軸18によりクレビス19が取付けられ、このクレビス19には操作ロッド20の基端部が連結されており操作ロッド20の先端部が駆動ピストン13の連結部13eに連結されている。従って、運転者がペダル17を踏み込むことでブレーキペダル15が回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して駆動ピストン13に伝達され、この駆動ピストン13が反力スプリング14の付勢力に抗して前進可能となっている。
【0031】
このようにシリンダ12内に駆動ピストン13が移動自在に配置されることで、シリンダ12の空間が、駆動ピストン13の大径ピストン13cにおける前進方向(図1にて左方)に前方圧力室R1が区画されると共に、駆動ピストン13の大径ピストン13bにおける後退方向(図1にて右方)に後方圧力室R2が区画されている。この場合、駆動ピストン13は段付部13aを有していることから、前方圧力室R1の受圧面積A1が後方圧力室R2の受圧面積A2より大きく設定されることで、所定のサーボ比が設定される。
【0032】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(制動装置)を作動させるホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS(Antilock Brake System)22により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ11の前方圧力室R1に連通する第1圧力ポート23には、第1油圧配管24の一端部が連結されており、この第1油圧配管24の他端部は、2つの油圧供給配管25a,25bに分岐され、前輪FR,FLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ21FR,21FLに連結されている。また、マスタシリンダ11の後方圧力室R2に環状の連結通路26を介して連通する第2圧力ポート27には、第2油圧配管28の一端部が連結されており、この第2油圧配管28の他端部は、2つの油圧供給配管29a,29bに分岐され、後輪RR,RLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ21RR,21RLに連結されている。
【0033】
また、第1油圧配管24から分岐した各油圧供給配管25a,25bには、油圧排出配管30a,30bの基端部が連結されており、第2油圧配管28から分岐した各油圧供給配管29a,29bには、油圧排出配管31a,31b基端部が連結されている。そして、各油圧排出配管30a,30b,31a,31bは、先端部が集合して第3油圧配管32を介してリザーバタンク33に連結されている。
【0034】
そして、各油圧供給配管25a,25b,29a,29bには、各油圧排出配管30a,30b,31a,31bとの接続部より上流側(第1、第2油圧配管24,28側)に、それぞれ電磁式の増圧弁34a,34b,35a,35bが配置されている。また、各油圧排出配管30a,30b,31a,31bには、それぞれ電磁式の減圧弁36a,36b,37a,37bが配置されている。この増圧弁34a,34b,35a,35bは、ノーマルオープンタイプの開閉弁であって、電力供給時に閉止する。一方、減圧弁36a,36b,37a,37bは、ノーマルクローズタイプの開閉弁であって、電力供給時に開放する。
【0035】
油圧ポンプ38はモータ39により駆動可能であり、配管40を介してリザーバタンク33に連結されると共に、配管41を介してアキュムレータ42に連結されている。従って、モータ39を駆動すると、油圧ポンプ38はリザーバタンク33に貯留されている作動油をアキュムレータ42に供給して昇圧することができ、アキュムレータ42は、所定圧力の油圧を蓄圧することができる。本実施例では、油圧ポンプ38とアキュムレータ42により油圧供給源が構成されている。
【0036】
アキュムレータ42は、高圧供給配管43を介して圧力制御弁44に連結されている。この圧力制御弁44は、電磁力によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ11の後方圧力室R2及びABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であると共に、マスタシリンダ11の前方圧力室R1からの油圧によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ11の後方圧力室R2及びABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能である。そのため、圧力制御弁44は、制御圧供給配管45を介して第2油圧配管28に連結され、外部圧供給配管46を介して第1油圧配管24に連結され、減圧供給配管47を介して第3油圧配管32に連結されている。
【0037】
また、マスタシリンダ11の前方圧力室R1には、補助ポート48a,48bがシリンダ12及び駆動ピストン13の大径ピストン13cを貫通して形成されており、この補助ポート48a,48bは油圧配管49を介してリザーバタンク33に連結されている。なお、シリンダ12と駆動ピストン13との間には、その要部にワンウェイシール50が装着されることで、油圧の漏洩を防止している。
【0038】
ここで、上述した圧力制御弁44について詳細に説明する。この圧力制御弁44において、図2に示すように、ハウジング51は、下方が開口してコ字断面を有する円筒形状をなし、内部にて、その上部に同じく下方が開口してコ字断面を有する円筒形状の上部支持ブロック52が嵌合する一方、下部に円筒形状をなす下部支持ブロック53が嵌合している。そして、この下部支持ブロック53の下部に上方が開口してコ字断面を有する円筒形状のケース54が嵌合することで、ハウジング51と上部支持ブロック52と下部支持ブロック53とケース54とにより内部が密閉状態となっている。
【0039】
このハウジング51内にて、上下方向におけるほぼ中央部には、上下方向に沿って支持孔55が形成されており、この支持孔55に駆動弁56が移動自在に支持されている。この駆動弁56は棒状をなし、上端部に円柱形状をなして形成された第1支持部56aと、上部でこの第1支持部56aの下方に形成された第1フランジ部56bと、この第1フランジ部56bの下方に所定の長さで円柱形状をなして形成された第2支持部56cと、下端部に形成された第2フランジ部56dとから構成されている。そして、駆動弁56は、第1支持部56aが上部支持ブロック52の支持孔52aに嵌合し、第2支持部56cがハウジング51の支持孔55及び下部支持ブロック53の支持孔53aに嵌合することで、ハウジング51に対して上下方向に沿って移動自在に支持されている。また、ハウジング51と駆動弁56の第1フランジ部56bとの間には、リターンスプリング57が介装されており、駆動弁56は、第1フランジ部56bが上部支持ブロック52の下面に当接する位置に付勢支持されている。
【0040】
従って、駆動弁56は、ハウジング51に上下方向に沿って移動自在に支持されると共に、リターンスプリング57の付勢力により上方に付勢され、第1フランジ部56bが上部支持ブロック52の下面に当接した位置に位置決めされている。
【0041】
また、上部支持ブロック52は、下方に開口する支持孔52aが形成され、この支持孔52aに円柱形状をなす外部ピストン58が上下移動自在に嵌合している。この外部ピストン58は、駆動弁56の上房に直列状態で配置されており、下端面が球面形状をなし、駆動弁56の上面に当接可能となっている。
【0042】
一方、ケース54内の下部には、駆動弁56の第2フランジ部56dに対向して所定間隔をもって鉄製の吸引部材59が固定されており、このケース54の外側には、吸引部材59に対向してコイル60が巻装されている。この吸引部材59は、コイル60に電流を流すことで発生する電磁力により吸引力を発生することができ、この吸引力により第2フランジ56dを介して駆動弁56を吸引することができる。
【0043】
従って、駆動弁56は、リターンスプリング57の付勢力により上方に付勢されており、第1フランジ部56bが上部支持ブロック52に当接した位置に位置決めされている。そして、コイル60に電流を流すことで発生する電磁力により吸引部材59が吸引力を発生し、この吸引力により第2フランジ部56dを吸引し、駆動弁56をリターンスプリング57の付勢力に抗して下方に移動することができる。
【0044】
更に、ハウジング51内に駆動弁56及び外部ピストン58が嵌合して移動自在に支持されることから、ハウジング51と上部支持ブロック52と駆動弁56と外部ピストン58により、外部ピストン58の軸方向の一方及び他方に位置して第1圧力室R11と第2圧力室R12が区画形成されている。この場合、第1圧力室R11は、上部支持ブロック52と駆動弁56と外部ピストン58により区画され、第2圧力室R12は、上部支持ブロック52と外部ピストン58により区画されている。一方、駆動弁56は、その中心部に軸方向に貫通して連通孔61が形成されており、この連通孔61は、上端部が第1圧力室R11に連通している。また、駆動弁56には、軸方向におけるほぼ中間位置に、径方向に沿って複数の連結ポート61aが形成されると共に、この連結ポート61aの外側に位置して、駆動弁56の外周面に環状の連結溝61bが形成されている。そして、この連通孔61と連結ポート61aと連結溝61bとが、互いに連通状態となっている。
【0045】
ハウジング51にて、外部と支持孔55を連通する高圧ポートP1が形成されると共に、外部とリターンスプリング57を収容する減圧室R13を連通する減圧ポートP2が形成されている。この高圧ポートP1及び減圧ポートP2は、駆動弁56の異なる移動位置にて、連結溝61b及び連結ポート61aを介して連通孔61に連通可能となっている。また、ハウジング51及び上部支持ブロック52にて、外部と支持孔52aを連通する制御圧ポートP3が形成されている。この制御圧ポートP3は、第1圧力室R11に連通している。そして、高圧ポートP1は、高圧供給配管43を介してアキュムレータ42(図1参照)に連結され、減圧ポートP2は、減圧供給配管47を介して第3油圧配管32に連結され、制御圧ポートP3は、制御圧供給配管45を介して第2油圧配管28に連結されている。なお、この減圧ポートP2は、減圧室R13及び連結ポートP21を介して外部ピストン58の外周部に形成された環状溝58aに連通している。
【0046】
この場合、第1圧力室R11から駆動弁56の第1支持部56aが受ける油圧の受圧面積a1と、駆動ピストン13の第2支持部56cが受ける油圧の受圧面積a2との関係は、a1>a2となるように、駆動弁56の各支持部56a,56cの外径が設定されている。そのため、駆動弁56が下方に移動するときにコイル60が付与する電磁力、つまり、このコイル60への電流値は、駆動弁56の前後の受圧面積差a1−a2に対応する駆動力と、リターンスプリング57の付勢力及び各種の摺動抵抗に対応する駆動力との合力が確保できるものとすればよく、この受圧面積差a1−a2を小さく設定することで、消費電力を低減することができる。
【0047】
また、ハウジング51及び上部支持ブロック52にて、外部と支持孔52aを連通する外部圧ポートP4が上述した制御圧ポートP3よりも上方に位置して形成されている。この外部圧ポートP4は、一端部が第2圧力室R12に連通し、他端部が外部圧供給配管46を介して第1油圧配管24に連結されている。
【0048】
この場合、第1圧力室R11に作用する制御圧が外部ピストン58に対して上向きの力として作用する一方、第2圧力室R12に作用する外部圧が外部ピストン58に対して下向きの力として作用する。そして、上部支持ブロック52の支持孔52aに移動自在に嵌合する外部ピストン58は、第1圧力室R11から油圧が作用する受圧面積と、第2圧力室R12から油圧が作用する受圧面積が同じ、つまり、「制御圧×外部ピストン58の受圧面積=外部圧×外部ピストン58の受圧面積」となり、外部ピストン58は、フローティング状態となって上部支持ブロック52への固着が防止される。
【0049】
従って、コイル60に通電していないとき、駆動弁56はリターンスプリング57の付勢力により上部支持ブロック52に当接した位置に位置決めされており、駆動弁56の連通孔61が第1圧力室R11に連通する一方、連結ポート61a及び連結溝61bが減圧室R13を介して減圧ポートP2に連通することで、制御圧ポートP3と減圧ポートP2が連通孔61により連通している。
【0050】
一方、コイル60に通電すると、吸引力により駆動弁56がリターンスプリング57の付勢力に抗して下方に移動する。すると、駆動弁56の連通孔61が第1圧力室R11に連通したまま、連結ポート61a及び連結溝61bが高圧ポートP1に連通することで、高圧ポートP1と制御圧ポートP3が連通孔61により連通することとなる。
【0051】
なお、ハウジング51と上部支持ブロック52との間にはシール部材62が介装され、ハウジング51と下部支持ブロック53との間にはシール部材63が介装され、各支持ブロック52,53と駆動弁56との間にはシール部材64,65が介装され、上部支持ブロック52と外部ピストン58との間にはシール部材66が介装されることで、シール性が確保されている。また、ハウジング51は、ABS22の図示しないケーシングに支持されており、ハウジング51とケーシングとの間にはシール部材67が介装されることで、シール性が確保されている。
【0052】
このように本実施例の車両用制動装置における圧力制御弁44では、コイル60が消磁状態にあるとき、駆動弁56はリターンスプリング57により上部支持ブロック52に接触した位置にあり、駆動弁56の連通孔61が第1圧力室R11に連通する一方、連結ポート61a及び連結溝61bが減圧ポートP2に連通している。従って、制御圧ポートP3と減圧ポートP2が第1圧力室R11及び連通孔61により連通状態にある一方、高圧ポートP1と制御圧ポートP3とが遮断状態にある。
【0053】
この状態から、コイル60に通電すると、発生する吸引力により駆動弁56がリターンスプリング57の付勢力に抗して下方に移動する。このとき、外部ピストン58に対して第1圧力室R11から作用する制御圧と第2圧力室R12から作用する外部圧とが同等になることから、駆動弁56を下方に移動ための駆動力に対して制御圧及び外部圧が悪影響を与えることはなく、適正に駆動弁56を下方に移動することができる。そして、駆動弁56が下方に移動すると、駆動弁56の連通孔61が第1圧力室R11に連通したまま、連結ポート61a及び連結溝61bが高圧ポートP1に切り換わって連通する。そのため、高圧ポートP1と制御圧ポートP3が第1圧力室R11及び連通孔61により連通する一方、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が遮断される。
【0054】
従って、高圧供給配管43から高圧ポートP1を通して作用する圧力、つまり、高圧の作動油は、連結溝61bから連結ポート61aを通って連通孔61に流れ込み、この連通孔61から第1圧力室R11に流れ、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45に制御圧として吐出されることとなる。この場合、コイル60への電流値により駆動弁56の移動量を制御することで、制御圧供給配管45に吐出する制御圧を調整することができる。
【0055】
そして、この状態から、コイル60に通電する電流値を低下すると、発生する吸引力が減少して駆動弁56がリターンスプリング57の付勢力により上方に移動する。すると、駆動弁56の連通孔61が第1圧力室R11に連通したまま、連結ポート61a及び連結溝61bが減圧ポートP2に切り換わって連通する。そのため、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が第1圧力室R11及び連通孔61により連通する一方、高圧ポートP1と制御圧ポートP3が遮断される。
【0056】
従って、第1圧力室R11から制御圧ポートP3を通して制御圧供給配管45に吐出する制御圧、つまり、作動油は、第1圧力室R11から連通孔61に戻され、連結ポート61a及び連結溝61bを介して減圧室P13に流れ、減圧ポートP2から減圧供給配管47に排出される。
【0057】
また、コイル60が消磁され、制御圧ポートP3と減圧ポートP2が第1圧力室R11及び連通孔61により連通状態にある一方、高圧ポートP1と制御圧ポートP3とが遮断状態にある状態にて、外部圧供給配管46から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に外部圧、つまり、作動油が供給されると、外部ピストン58が下方に移動し、この外部ピストン58が駆動弁56を下方に押圧して移動させる。すると、この駆動弁56がリターンスプリング57の付勢力に抗して下方に移動し、前述と同様に、駆動弁56の連通孔61が第1圧力室R11に連通したまま、連結ポート61a及び連結溝61bが高圧ポートP1に連通する。
【0058】
従って、高圧ポートP1と制御圧ポートP3が第1圧力室R11及び連通孔61により連通する一方、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が遮断されることとなり、前述と同様に、高圧供給配管43から高圧ポートP1を通して高圧の作動油が供給され、連結溝61bから連結ポート61aを通して連通孔61に流れ込み、この連通孔61から第1圧力室R11に流れ、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45に制御圧として吐出されることとなる。この場合、外部圧供給配管46から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に作用する外部圧を制御することで、制御圧供給配管45に吐出する制御圧を調整することができる。
【0059】
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、図1に示すように、電子制御ユニット(ECU)71は、ブレーキペダル15から駆動ピストン13に入力される操作力(ペダル踏力)に応じた目標制御圧を設定(制御圧設定手段)し、この設定された目標制御圧を後方圧力室R2に作用させて駆動ピストン13をアシストすることで、前方圧力室R1から適正な制御圧を出力させ、ABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに制動油圧を付与して作動し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を作用させるようにしている。
【0060】
即ち、ブレーキペダル15には、このブレーキペダル15のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72と、そのペダル踏力Fpを検出する踏力センサ73が設けられており、各検出結果をECU71に出力している。また、第1、第2油圧配管24,28には、油圧を検出する第1圧力センサ74及び第2圧力センサ75が設けられている。第1圧力センサ74は、前方圧力室R1から第1油圧配管24を通して前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLへ供給される制御圧PMを検出し、検出結果をECU71に出力している。一方、第2圧力センサ75は、後方圧力室R2から第2油圧配管28を通して後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLへ供給される制御圧PAを検出し、検出結果をECU71に出力している。
【0061】
更に、アキュムレータ42から圧力制御弁44に至る高圧供給配管43には、油圧を検出する圧力センサ76が設けられている。この圧力センサ76は、アキュムレータ42から圧力制御弁44に至る高圧供給配管43を流れる油圧PHを検出し、検出結果をECU71に出力している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ車輪速センサ77が設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
【0062】
従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fp(または、ストロークセンサ72が検出したペダルストロークSp)に基づいて目標制御圧PMTを設定し、圧力制御弁44における駆動弁56を制御する一方、第1圧力センサ74が検出した制御圧PMをフィードバックし、目標制御圧PMTと制御圧PMとが一致するように制御している。この場合、ECU71は、ペダル踏力Fpに対する目標制御圧PMTを表すマップを有しており、このマップに基づいて圧力制御弁44を制御する。
【0063】
なお、マスタシリンダ11のサーボ比は、小径ピストン13bの直径をAA、大径ピストン13cの直径をAMとすると、AM/AAにより設定される。そして、マスタシリンダ11の前方圧力室R1から第1油圧配管24に吐出され、前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与される制御圧PMと、マスタシリンダ11の後方圧力室R2から第2油圧配管28に吐出され、後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに付与される制御圧PAとを同圧とする場合には、ペダル踏力Fpに対する目標制御圧PMTを表すマップにて、その傾きをRp/AAに設定すればよい。ここで、Rpは、ブレーキペダル15のレバー比であり、L2/L1である。
【0064】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、図1及び図2に示すように、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進(図1にて左方へ移動)する。このとき、踏力センサ73はペダル踏力Fpを検出し、ECU71は、このペダル踏力Fpに基づいて目標制御圧PMTを設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧PMTに基づいて圧力制御弁44を制御し、後方圧力室R2に所定の制御圧PAを作用させる。なお、ECU71は、第1圧力センサ74が検出した制御圧PMをフィードバックし、目標制御圧PMTと制御圧PMとが一致するように制御する。
【0065】
即ち、圧力制御弁44にて、コイル60に通電し、発生する吸引力により駆動弁56をリターンスプリング57の付勢力に抗して下方に移動する。すると、連通孔61が連結ポート61a及び連結溝61bを介して高圧ポートP1に連通し、この高圧ポートP1は連通孔61及び第1圧力室R11に通して制御圧ポートP3に連通する一方、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が遮断される。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。すると、第2油圧配管28に供給された油圧が後方圧力室R2に作用して駆動ピストン13をアシストすることから、前方圧力室R1から第1油圧配管24に対して適正な制御油圧PMが吐出される。
【0066】
従って、第1油圧配管24から前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧PMが付与されると共に、第2油圧配管28から後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧PAが付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0067】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、圧力制御弁44のコイル60への電流値を制御することで、各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLへ付与する制動油圧を適正油圧に制御することができない。ところが、本実施例では、圧力制御弁44に、マスタシリンダ11の前方圧力室R1で発生した圧力(外部圧)により作動する外部ピストン58を設け、この外部ピストン58により駆動弁56を制御して適正な制御圧を出力可能としている。
【0068】
電源系統の失陥時に、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進し、この駆動ピストン13の前進により前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が外部圧として第1油圧配管24に吐出され、外部圧供給配管46を通して圧力制御弁44に作用する。
【0069】
この圧力制御弁44にて、外部圧供給配管46から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に外部圧が作用し、外部ピストン58が下方に移動することで駆動弁56を下方に押圧して移動させる。すると、連通孔61が連結ポート61a及び連結溝61bを介して高圧ポートP1に連通し、この高圧ポートP1は連通孔61及び第1圧力室R11に通して制御圧ポートP3に連通する一方、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が遮断される。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。すると、第2油圧配管28に供給された油圧が後方圧力室R2に作用して駆動ピストン13をアシストすることから、前方圧力室R1から第1油圧配管24に対して適正な制御圧PMが吐出される。
【0070】
従って、電源系統が失陥しても、第1油圧配管24から前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧PMが付与されると共に、第2油圧配管28から後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧PAが付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0071】
このように実施例1の車両用制動装置にあっては、シリンダ12内に駆動ピストン13を移動自在に支持することで前方圧力室R1及び後方圧力室R2を区画すると共に、ブレーキペダル15により駆動ピストン13を移動することで前方圧力室R1の油圧を出力可能なマスタシリンダ11を設け、この前方圧力室R1にホイールシリンダ21FR,21FLを連結し、目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁56を移動することでアキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であると共に、前方圧力室R1からの外部圧で移動する外部ピストン58により駆動弁56を移動することでアキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能である圧力制御弁44を設けている。
【0072】
従って、電源系統の正常時に、ECU71は、ペダル踏力Fpに応じた目標制御圧PMTを設定し、この目標制御圧PMTに基づいて圧力制御弁44を制御することで、アキュムレータ42から圧力制御弁44により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、駆動ピストン13をアシストすることとなり、各油圧配管24,28に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0073】
一方、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じて駆動ピストン13が移動して前方圧力室R1が加圧され、前方圧力室R1の油圧が外部圧として圧力制御弁44に作用することで、アキュムレータ42から圧力制御弁44により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、駆動ピストン13をアシストすることとなり、各油圧配管24,28に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0074】
このように本実施例では、電磁力及び外部圧により作動する圧力制御弁44を適用することで、電源系統の状態に拘らず乗員によるブレーキペダル15の操作に応じた制御圧を確実に発生させることができ、その結果、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御を可能とすることができ、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0075】
図3は、本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図4は、実施例2の車両用制動装置における反力制御弁の断面図である。なお、本実施例の車両用制動装置における圧力制御弁の構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図2を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0076】
実施例2の車両用制動装置において、図3に示すように、マスタシリンダ111は、シリンダ112内に駆動ピストンとしての入力ピストン113と加圧ピストン114が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。このシリンダ112は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部に入力ピストン113と加圧ピストン114が同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されている。シリンダ112の基端部側に配置された入力ピストン113は、基端部にブレーキペダル15の操作ロッド20が連結されており、乗員によるブレーキペダル15の操作により操作ロッド20を介して移動可能となっている。また、入力ピストン113は、外周面がシリンダ112の内周面に圧入または螺合して固定された円筒形状をなす前後の支持部材115,116の内周面により移動自在に支持されると共に、円盤形状のフランジ部117がシリンダ112の内周面に移動自在に支持されている。そして、入力ピストン113は、フランジ部117が各支持部材115,116に当接することでその移動ストロークが規制されると共に、支持部材116とブレーキペダル15のブラケット118との間に張設された反力スプリング119によりフランジ部117が支持部材116に当接する位置に付勢支持されている。
【0077】
シリンダ112の先端部側に配置された加圧ピストン114は断面がコ字形状をなし、外周面がシリンダ112の内周面に移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン114は、前後の端面がシリンダ112と支持部材115に当接することでその移動ストロークが規制されると共に、シリンダ112との間に張設された付勢スプリング120により加圧ピストン114が支持部材115に当接する位置に付勢支持されている。従って、入力ピストン113と加圧ピストン114とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持されており、乗員がブレーキペダル15を操作し、入力ピストン113が所定ストロークS0だけ前進すると、加圧ピストン114に当接して押圧することができる。
【0078】
このようにシリンダ112内に入力ピストン113と加圧ピストン114が同軸上に移動自在に配置されることで、加圧ピストン114における前進方向(図3にて左方)に前方圧力室R1が区画され、加圧ピストン114における後退方向(図3にて右方)、つまり、入力ピストン113と加圧ピストン114との間に後方圧力室R2が区画され、入力ピストン113における後退方向(図3にて右方)、つまり、入力ピストン113と支持部材116の間に循環圧力室R3が区画されている。また、支持部材115と入力ピストン113のフランジ部117との間に反力室R4が形成されている。そして、後方圧力室R2と循環圧力室R3とは、入力ピストン113内に形成された連通路121により連通されている。
【0079】
油圧ポンプ122はモータ123により駆動可能であり、配管124を介してリザーバタンク125に連結されると共に、配管126を介してアキュムレータ127に連結されている。従って、モータ123を駆動すると、油圧ポンプ122はリザーバタンク125に貯留されている作動油をアキュムレータ127に供給して昇圧することができ、アキュムレータ127は、所定圧力の油圧を蓄圧することができる。本実施例では、油圧ポンプ122とアキュムレータ127により油圧供給源が構成されている。
【0080】
アキュムレータ127は、高圧供給配管43を介して圧力制御弁44に連結されている。この圧力制御弁44は、電磁力によりアキュムレータ127に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ111の後方圧力室R2に出力可能であると共に、マスタシリンダ111の前方圧力室R1からの油圧によりアキュムレータ127に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ111の後方圧力室R2に出力可能である。そのため、圧力制御弁44は、制御圧供給配管45を介して第2圧力ポート128に連結され、第2圧力ポート128は加圧ピストン114の外周部に形成された環状溝129を介して後方圧力室R2に連通している。そして、外部圧供給配管46を介して前方圧力室R1の第1圧力ポート130に連結され、減圧供給配管47を介して配管124に連結されている。
【0081】
また、アキュムレータ127は高圧分岐配管131を介して反力制御弁132に連結されている。この反力制御弁132は、電磁力によりアキュムレータ127に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ111の反力室R4に出力可能である。そのため、反力制御弁132は、反力圧供給配管133を介して反力室R4の反力ポート134に連結され、減圧供給配管135を介して配管124に連結されている。
【0082】
また、マスタシリンダ111の前方圧力室R1には、補助ポート136a,136bがシリンダ112及び加圧ピストン114を貫通して形成されており、この補助ポート136a,136bは油圧配管137を介してリザーバタンク125に連結されている。なお、シリンダ112と入力ピストン113と加圧ピストン114等の要部には、Oリング138が装着されると共に、ワンウェイシール139が装着されており、油圧の漏洩を防止している。
【0083】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置を作動させるホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS22により作動可能となっている。そして、前方圧力室R1に連通する第1圧力ポート130には第1油圧配管140が連結され、この第1油圧配管140はABS22を介して前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに連結されている。また、後方圧力室R2に形成された第2圧力ポート128には第2油圧配管141が連結され、この第2油圧配管141はABS22を介して後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに連結されている。
【0084】
ここで、上述した圧力制御弁44及び反力制御弁132について詳細に説明するが、圧力制御弁44は上述した実施例1で説明したものと同様の構造であるため、説明は省略する。
【0085】
反力制御弁132において、図4に示すように、ハウジング151は円筒形状をなし、一端部に第1支持ブロック152が嵌合する一方、他端部に円筒形状をなす第2支持ブロック153が嵌合しており、第2支持ブロック153にコ字断面を有する円筒形状のケース154が嵌合することで、内部が密閉状態となっている。このハウジング151には、支持孔155が形成されており、この支持孔155に駆動弁156が移動自在に支持されている。この駆動弁156は棒状をなし、一端部に形成された第1支持部156aと、この第1支持部156aに隣接して形成された第1フランジ部156bと、所定の長さで円柱形状をなして形成された第2支持部156cと、他端部に形成された第2フランジ部156dとから構成されている。そして、駆動弁156は、第1支持部156aが第1支持ブロック152の支持孔152aに嵌合し、第2支持部156cがハウジング151の支持孔155及び第2支持ブロック153の支持孔153aに嵌合することで、ハウジング151に対して移動自在に支持されている。また、ハウジング151と駆動弁156の第1フランジ部156bとの間には、リターンスプリング157が介装されており、駆動弁156は、このリターンスプリング157の付勢力により第1フランジ部156bが第1支持ブロック152の下面に当接した位置に位置決めされている。
【0086】
ケース154内の下部には、鉄製の吸引部材158が固定されており、このケース154の外側には、吸引部材158に対向してコイル159が巻装されている。この吸引部材158は、コイル159に電流を流すことで発生する電磁力により吸引力を発生することができ、この吸引力により第2フランジ部156dを介して駆動弁156を吸引し、この駆動弁156をリターンスプリング157の付勢力に抗して下方に移動することができる。
【0087】
更に、ハウジング151内に駆動弁156が嵌合して移動自在に支持されることから、第1支持ブロック152と駆動弁156により圧力室R21が区画形成されている。一方、駆動弁156は、その中心部に軸方向に貫通して連通孔160が形成されており、この連通孔160は、一端部が圧力室R21に連通している。また、駆動弁156には、軸方向におけるほぼ中間位置に、径方向に沿って複数の連結ポート160aが形成されると共に、この連結ポート160aの外側に位置して、駆動弁156の外周面に環状の連結溝160bが形成されており、連通孔160と連結ポート160aと連結溝160bが連通している。
【0088】
ハウジング151にて、外部と支持孔155を連通する高圧ポートP11が形成されると共に、外部とリターンスプリング157を収容する減圧室R22を連通する減圧ポートP12が形成されている。この高圧ポートP11及び減圧ポートP12は、駆動弁156の異なる移動位置にて、連結溝160b及び連結ポート160aを介して連通孔160に連通可能となっている。また、第1支持ブロック152にて、外部と圧力室R21を連通する反力圧ポートP13が形成されている。そして、高圧ポートP11は、高圧分岐配管131を介してアキュムレータ127(図3参照)に連結され、減圧ポートP12は、減圧供給配管135を介して配管124に連結され、反力圧ポートP13は、反力圧供給配管133を介して反力ポート134に連結されている。
【0089】
従って、コイル159に通電していないとき、駆動弁156はリターンスプリング157の付勢力により第1支持ブロック152に当接した位置に位置決めされており、駆動弁156の連通孔160が圧力室R21に連通する一方、連結ポート160a及び連結溝160bが減圧室R22を介して減圧ポートP12に連通することで、反力圧ポートP13と減圧ポートP12が連通孔160により連通している。
【0090】
一方、コイル159に通電すると、吸引力により駆動弁156がリターンスプリング157の付勢力に抗して下方に移動する。すると、駆動弁156の連通孔160が圧力室R21に連通したまま、連結ポート160a及び連結溝160bが高圧ポートP11に連通することで、高圧ポートP11と反力圧ポートP13が連通孔160により連通することとなる。
【0091】
なお、ハウジング151と第1支持ブロック152との間にはシール部材161が介装され、ハウジング151と第2支持ブロック153との間にはシール部材162が介装され、各支持ブロック152,153と駆動弁156との間にはシール部材163,164が介装されることで、シール性が確保されている。また、ハウジング151は、ABS22の図示しないケーシングに支持されており、ハウジング151とケーシングとの間にはシール部材165が介装されることで、シール性が確保されている。
【0092】
このように本実施例の車両用制動装置における反力制御弁132では、コイル159が消磁状態にあるとき、駆動弁156はリターンスプリング157により第1支持ブロック152に当接した位置にあり、駆動弁156の連通孔160が圧力室R21に連通する一方、連結ポート160a及び連結溝160bが減圧ポートP12に連通している。従って、反力圧ポートP13と減圧ポートP12が圧力室R21及び連通孔160により連通状態にある一方、高圧ポートP11と反力圧ポートP13とが遮断状態にある。
【0093】
この状態から、コイル159に通電すると、発生する吸引力により駆動弁156がリターンスプリング157の付勢力に抗して移動する。すると、駆動弁156の連通孔160が圧力室R21に連通したまま、第2連結ポート160a及び連結溝160bが高圧ポートP11に切り換わって連通する。そのため、高圧ポートP11と反力圧ポートP13が圧力室R21及び連通孔160により連通する一方、減圧ポートP12と反力圧ポートP13が遮断される。
【0094】
従って、高圧分岐配管131から高圧ポートP11を通して作用する圧力、つまり、高圧の作動油は、連結溝160bから連結ポート160aを通って連通孔160に流れ込み、この連通孔160から圧力室R21に流れ、反力圧ポートP13から反力圧供給配管133に反力圧として吐出されることとなる。この場合、コイル159への電流値により駆動弁156の移動量を制御することで、反力圧供給配管133に吐出する反力圧を調整することができる。
【0095】
そして、この状態から、コイル159に通電する電流値を低下すると、発生する吸引力が減少して駆動弁156がリターンスプリング157の付勢力により移動する。すると、駆動弁156の連通孔160が圧力室R21に連通したまま、連結ポート160a及び連結溝160bが減圧ポートP12に切り換わって連通する。そのため、減圧ポートP12と反力圧ポートP13が圧力室R21及び連通孔160により連通する一方、高圧ポートP11と反力圧ポートP13が遮断される。
【0096】
従って、圧力室R21から反力圧ポートP13を通して反力圧供給配管133に吐出する反力圧、つまり、作動油は、圧力室R21から連通孔160に戻され、連結ポート160a及び連結溝160bを介して減圧室P22に流れ、減圧ポートP12から減圧供給配管135に排出される。
【0097】
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、図3に示すように、電子制御ユニット(ECU)71は、ブレーキペダル15から入力ピストン113に入力される操作力(ペダル踏力)Fpに応じた目標制御圧を設定し、この設定された目標制御圧を後方圧力室R2に作用させて加圧ピストン114をアシストすることで、前方圧力室R1から適正な制御圧を出力させ、ABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに制動油圧を付与して作動し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を作用させるようにしている。
【0098】
即ち、ブレーキペダル15には、このブレーキペダル15のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72と、そのペダル踏力Fpを検出する踏力センサ73が設けられており、各検出結果をECU71に出力している。また、外部圧供給配管46には、油圧を検出する第1圧力センサ74が設けられている。第1圧力センサ74は、前方圧力室R1から圧力制御弁44へ供給される油圧、つまり、前方圧力室R1から第1油圧配管140を通して前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLへ供給される制御圧PMを検出し、検出結果をECU71に出力している。
【0099】
更に、アキュムレータ127から圧力制御弁44に至る高圧供給配管43には、油圧を検出する圧力センサ76が設けられている。この圧力センサ76は、アキュムレータ127から圧力制御弁44に至る高圧供給配管43を流れる油圧PHを検出し、検出結果をECU71に出力している。この場合、圧力センサ76は、アキュムレータ127から反力制御弁132に至る高圧分岐配管131を流れる油圧も同様に検出している。また、反力制御弁132から反力室R4に至る反力圧供給配管133には、油圧を検出する圧力センサ78が設けられている。この圧力センサ78は、反力制御弁132から反力室R4に供給される反力油圧PRを検出し、検出結果をECU71に出力している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ車輪速センサ77が設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
【0100】
従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fp(または、ストロークセンサ72が検出したペダルストロークSp)に基づいて目標制御圧PMTを設定し、圧力制御弁44における駆動弁56を制御する一方、第1圧力センサ74が検出した制御圧PMをフィードバックし、目標制御圧PMTと制御圧PMとが一致するように制御している。
【0101】
また、このときにブレーキペダル15に与える反力は、反力スプリング119によるスプリング力と反力室R4に作用する反力油圧PRとの加算値であり、スプリング力はスプリングの諸元により決まる値で一定となっている。従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fp(または、ストロークセンサ72が検出したペダルストロークSp)に基づいて目標反力油圧PRTを設定し、反力制御弁132における駆動弁156を制御する一方、圧力センサ78が検出した反力油圧PRをフィードバックし、目標反力油圧PRTと反力油圧PRとが一致するように制御している。この場合、ECU71は、ペダル踏力Fpに対する目標反力油圧PRTのマップを有しており、この反力制御弁132を制御する。
【0102】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、図3に示すように、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン113が前進し、所定のストロークS0が維持されたままで加圧ピストン114が前進し、後方圧力室R2の油圧は連通路121を通して循環圧力室R3に流れることとなり、入力ピストン113がフリーの状態となって、後方圧力室R2の油圧が入力ピストン113を介してブレーキペダル15に対する反力として作用することはない。
【0103】
そして、踏力センサ73はペダル踏力Fpを検出し、ECU71は、このペダル踏力Fpに基づいて目標制御圧PMTを設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧PMTに基づいて圧力制御弁44を制御し、後方圧力室R2に所定の制御圧PAを作用させる。なお、ECU71は、第1圧力センサ74が検出した制御圧PMをフィードバックし、目標制御圧PMTと制御圧PMとが一致するように制御する。
【0104】
即ち、圧力制御弁44にて、図2及び図3に示すように、コイル60に通電し、発生する吸引力により駆動弁56をリターンスプリング57の付勢力に抗して下方に移動する。すると、連通孔61が連結ポート61a及び連結溝61bを介して高圧ポートP1に連通し、この高圧ポートP1は連通孔61及び第1圧力室R11に通して制御圧ポートP3に連通する一方、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が遮断される。そのため、アキュムレータ127の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して後方圧力室R2に供給される。すると、この後方圧力室R2に作用した油圧が加圧ピストン114をアシストすることから、前方圧力室R1から第1油圧配管140に対して適正な制御圧PMが吐出される。
【0105】
従って、第1油圧配管140からABS22を介して前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧PMが付与されると共に、第2油圧配管141からABS22を介して後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧PAが付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0106】
また、ECU71は、図3に示すように、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fpに基づいて目標反力油圧PRTを設定する。そして、ECU71は、この目標反力油圧PRTに基づいて反力制御弁132を制御し、反力室R4に所定の反力油圧PRを作用させる。なお、ECU71は、圧力センサ78が検出した反力油圧PRをフィードバックし、目標反力油圧PRTと反力油圧PRとが一致するように制御する。
【0107】
即ち、反力制御弁132にて、図3及び図4に示すように、コイル159に通電し、発生する吸引力により駆動弁156をリターンスプリング157の付勢力に抗して移動する。すると、連通孔160が第2連結ポート160a及び連結溝160bを介して高圧ポートP11に連通し、この高圧ポートP11は連通孔160及び圧力室R21に通して反力圧ポートP13に連通する一方、減圧ポートP12と反力圧ポートP13が遮断される。そのため、アキュムレータ127の油圧が高圧分岐配管131から高圧ポートP11に供給され、連通孔160を通って圧力室R21に供給され、反力圧ポートP13から反力圧供給配管133を通して反力室R4に供給される。すると、この反力室R4に作用した油圧が入力ピストン113を介してブレーキペダル15に作用することとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLの制動力に対応した操作反力を乗員に付与することができる。
【0108】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、図3に示すように、圧力制御弁44のコイル159への電流値を制御することで、各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLへ付与する制動油圧を適正油圧に制御することができない。ところが、本実施例では、圧力制御弁44に、マスタシリンダ111の前方圧力室R1で発生した圧力(外部圧)により作動する外部ピストン58を設け、この外部ピストン58により駆動弁156を制御して適正な制御圧を出力可能としている。
【0109】
電源系統の失陥時に、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン113が所定のストロークS0だけ前進すると、加圧ピストン114に当接して両ピストン113,114が一体となって前進する。すると、前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が外部圧として外部圧供給配管46を通して圧力制御弁44に作用する。
【0110】
この圧力制御弁44にて、図2及び図3に示すように、外部圧供給配管46から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に外部圧が作用し、外部ピストン58が下方に移動することで駆動弁56を下方に押圧して移動させる。すると、連通孔61が連結ポート61a及び連結溝61bを介して高圧ポートP1に連通し、この高圧ポートP1は連通孔61及び第1圧力室R11に通して制御圧ポートP3に連通する一方、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が遮断される。そのため、アキュムレータ127の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して後方圧力室R2に供給される。すると、この後方圧力室R2に作用した油圧が加圧ピストン114をアシストすることから、前方圧力室R1から第1油圧配管140に対して適正な制御圧PMが吐出される。
【0111】
従って、第1油圧配管140からABS22を介して前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧PMが付与されると共に、第2油圧配管141からABS22を介して後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧PAが付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0112】
このように実施例2の車両用制動装置にあっては、シリンダ112内に入力ピストン113と加圧ピストン114を直列で移動自在に支持することで前方圧力室R1と後方圧力室R2を区画すると共に、ブレーキペダル15により入力ピストン113を移動することで、加圧ピストン114を介して前方圧力室R1の油圧を出力可能なマスタシリンダ111を設け、前方圧力室R1にホイールシリンダ21FR,21FLを連結すると共に、後方圧力室R2にホイールシリンダ21RR,21RLを連結し、目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁56を移動することでアキュムレータ127からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2に出力可能であると共に、前方圧力室R1からの外部圧で移動する外部ピストン58により駆動弁156を移動することでアキュムレータ127からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2に出力可能である圧力制御弁44を設けている。
【0113】
従って、電源系統の正常時に、ECU71は、ペダル踏力Fpに応じた目標制御圧PMTを設定し、この目標制御圧PMTに基づいて圧力制御弁44を制御することで、アキュムレータ127から圧力制御弁44により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、加圧ピストン114をアシストすることとなり、各油圧配管140,141に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0114】
このとき、ECU71は、ペダル踏力Fpに応じた目標反力油圧PRTを設定し、この目標反力油圧PRTに基づいて反力制御弁132を制御することで、アキュムレータ127から反力制御弁132により反力室R4に適正な油圧が供給され、この反力室R4に作用した油圧が入力ピストン113を介してブレーキペダル15に作用することとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLの制動力に対応した操作反力を乗員に付与することができる。
【0115】
一方、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じて入力ピストン113及び加圧ピストン114が一体となって移動して前方圧力室R1が加圧され、前方圧力室R1の油圧が外部圧として圧力制御弁44に作用することで、アキュムレータ127から圧力制御弁44により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、加圧ピストン114をアシストすることとなり、各油圧配管140,141に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0116】
このように本実施例では、電磁力及び外部圧により作動する圧力制御弁44を適用すると共に、電磁力により作動する反力制御弁132を適用することで、電源系統の状態に拘らず乗員によるブレーキペダル15の操作に応じた制御圧を確実に発生させることができると共に、乗員に対してブレーキペダル15の操作に応じた反力を適正に発生させることができ、その結果、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御及び反力制御を可能とすることができ、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0117】
図5は、本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0118】
実施例3の車両用制動装置において、図5に示すように、マスタシリンダ111は、シリンダ112と入力ピストン113と加圧ピストン114とで構成されている。このシリンダ112は円筒形状をなし、内部に入力ピストン113と加圧ピストン114が同軸上に配置されて移動自在に支持されている。入力ピストン113は、基端部にブレーキペダル15の操作ロッド20が連結され、乗員によるブレーキペダル15の操作により移動可能となっている。入力ピストン113は、支持部材115,116により移動自在に支持されると共に、フランジ部117がシリンダ112に移動自在に支持されている。そして、入力ピストン113は、反力スプリング119によりフランジ部117が支持部材116に当接する位置に付勢支持されている。加圧ピストン114は、付勢スプリング120により支持部材115に当接する位置に付勢支持されている。従って、入力ピストン113と加圧ピストン114とは、所定ストロークS0をもって離間した状態で保持されており、乗員がブレーキペダル15を操作し、入力ピストン113が所定ストロークS0だけ前進すると、加圧ピストン114に当接して押圧することができる。
【0119】
加圧ピストン114における前進方向(図5にて左方)に前方圧力室R1が区画され、加圧ピストン114における後退方向(図5にて右方)、つまり、入力ピストン113と加圧ピストン114との間に後方圧力室R2が区画され、入力ピストン113における後退方向(図5にて右方)、つまり、入力ピストン113と支持部材116の間に循環圧力室R3が区画されている。また、支持部材115と入力ピストン113のフランジ部117との間に反力室R4が形成されている。そして、後方圧力室R2と循環圧力室R3とは、入力ピストン113内に形成された連通路121により連通されている。
【0120】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置を作動させるホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS22によりそれぞれ独立して作動可能となっている。即ち、ABS22は、4つの圧力制御弁211,212,213,214を有しており、圧力制御弁212は、上述した実施例2の圧力制御弁44(図2参照)とほぼ同様の構成をなし、圧力制御弁211,213,214は、上述した実施例2の反力制御弁132(図4参照)とほぼ同様の構成をなしている。
【0121】
即ち、油圧ポンプ122はモータ123により駆動可能であり、配管124を介してリザーバタンク125に連結されると共に、配管126を介してアキュムレータ127に連結されている。このアキュムレータ127は、高圧供給配管215を介して第1〜第4圧力制御弁211,212,213,214に連結されている。この圧力制御弁211,212,213,214は、電磁力によりアキュムレータ127に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ111の後方圧力室R2に出力可能であると共に、マスタシリンダ111の前方圧力室R1からの油圧によりアキュムレータ127に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ111の後方圧力室R2に出力可能である。
【0122】
そのため、アキュムレータ127からの高圧供給配管215が各圧力制御弁211,212,213,214の高圧ポートに連結されている。また、第1圧力制御弁211の制御圧ポートは、第1制御圧供給配管216により動力分離機構217に連結され、この動力分離機構217は第1制御圧伝達配管218によりホイールシリンダ21FRに連結されている。第2圧力制御弁212の制御圧ポートは、第2制御圧供給配管219によりマスタシリンダ111の第2圧力ポート128に連結され、第2圧力ポート128は加圧ピストン114の外周部に形成された環状溝129を介して後方圧力室R2に連通している。そして、第2圧力制御弁212の外部圧ポートは、外部圧供給配管220によりマスタシリンダ111の前方圧力室R1に連通する第1圧力ポート130に連結されており、この外部圧供給配管220はホイールシリンダ21FLに連結されている。また、第3圧力制御弁213の制御圧ポートは、第3制御圧供給配管221を介してホイールシリンダ21RRに連結されている。第4圧力制御弁214の制御圧ポートは、第4制御圧供給配管222を介してホイールシリンダ21RLに連結されている。
【0123】
更に、アキュムレータ127は高圧供給配管215を介して反力制御弁132に連結されている。この反力制御弁132は、電磁力によりアキュムレータ127に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ111の反力室R4に出力可能である。そのため、反力制御弁132の反力圧ポートは、反力供給配管223を介してマスタシリンダ111の反力室R4に連通する反力ポート134に連結されている。そして、各圧力制御弁211,212,213,214及び反力制御弁132の減圧ポートは、減圧供給配管224を介して配管124に連結されている。
【0124】
なお、上述した各圧力制御弁211,212,213,214及び反力制御弁132は、上述した実施例1、実施例2で説明した圧力制御弁44及び反力制御弁132とほぼ同様の構成、作用であるため、説明は省略する。
【0125】
上述した動力分離機構217は、マスタシリンダ111側の油圧系と圧力制御弁211側の油圧系の動力を分離することで、電源装置の失陥時に、マスタシリンダ111側の油圧系へのエアの混入による作動不良を防止するものである。即ち、中空形状をなすシリンダ231内には、動力分離ピストン232が移動自在に支持されると共に、付勢スプリング233により一方に付勢支持されており、2つの圧力室R31,R32が区画されている。そして、圧力室R31に連通する第1入力ポート234に第1制御圧供給配管216が連結される一方、圧力室R32に連通する出力ポート235に第2制御圧伝達配管218が連結されている。
【0126】
また、圧力室R32に連通する第2入力ポート236と外部圧供給配管220とは、外部圧分岐配管237により連結されており、この外部圧分岐配管237に開閉弁238が装着されている。この開閉弁238は、ノーマルオープンタイプの開閉弁であって、電力供給時に閉止する。本実施例では、第1ホイールシリンダとして、第1圧力制御弁211により調圧された制御圧により作動するホイールシリンダFRを適用し、第2ホイールシリンダとして、第2圧力制御弁212により調圧された制御圧により作動するホイールシリンダFLを適用しており、このホイールシリンダFR,FLを連結する油圧ラインとしての外部圧分岐配管237に開閉弁238を設けている。なお、シリンダ231には、動力分離ピストン232の側面に連通する補助ポート239が形成され、補助配管240を介して配管124に連結されており、補助ポート239の両側にはワンウェイシール241が装着されて油圧の漏洩を防止している。
【0127】
従って、開閉弁238により外部圧分岐配管237が閉止状態にあるとき、第1圧力制御弁211により調圧された制御圧が動力分離機構217を介してホイールシリンダFRに出力され、第2圧力制御弁212により調圧された制御圧がマスタシリンダ111の後方圧力室R2、加圧ピストン114、前方圧力室R1を介して外部圧供給配管220に吐出されてホイールシリンダ21FLに出力される。一方、開閉弁238により外部圧分岐配管237が開放状態にあるとき、マスタシリンダ111の前方圧力室R1から吐出された制御圧が、動力分離機構217を介してホイールシリンダFRに出力されると共に、外部圧供給配管220を通してホイールシリンダ21FLに出力される。
【0128】
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、電子制御ユニット(ECU)71は、ブレーキペダル15から入力ピストン113に入力される操作力(ペダル踏力)に応じた目標制御圧を設定し、この設定された目標制御圧を後方圧力室R2に作用させて加圧ピストン114をアシストすることで、前方圧力室R1から適正な制御圧を出力させ、ABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに制動油圧を付与して作動し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を作用させるようにしている。
【0129】
即ち、ブレーキペダル15には、このブレーキペダル15のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72と、そのペダル踏力Fpを検出する踏力センサ73が設けられており、各検出結果をECU71に出力している。また、第2圧力制御弁212の外部圧供給配管220には、油圧を検出する第1圧力センサ74が設けられている。第1圧力センサ74は、前方圧力室R1から圧力制御弁44及び前輪FRのホイールシリンダ21FRへ供給される制御圧PMを検出し、検出結果をECU71に出力している。
【0130】
また、アキュムレータ127から各圧力制御弁211,212,213,214及び反力制御弁132に至る高圧供給配管215には、油圧を検出する圧力センサ76が設けられている。この圧力センサ76は、アキュムレータ127から各圧力制御弁211,212,213,214及び反力制御弁132に至る高圧供給配管215を流れる油圧PHを検出し、検出結果をECU71に出力している。また、反力制御弁132から反力室R4に至る反力供給配管223には、油圧を検出する圧力センサ78が設けられている。この圧力センサ78は、反力制御弁132から反力室R4に供給される反力油圧PRを検出し、検出結果をECU71に出力している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ車輪速センサ77が設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
【0131】
更に、第3、第4圧力制御弁213,214の各制御圧供給配管221,222には、油圧を検出する第3、第4圧力センサ251,252が設けられている。第3、第4圧力センサ251,252は、圧力制御弁213,214から後輪RR,RLの各ホイールシリンダ21RR,21RLへ供給される制御圧を検出し、検出結果をECU71に出力している。また、外部圧分岐配管237における動力分離機構217と開閉弁238との間には、油圧を検出する第5圧力センサ253が設けられている。第5圧力センサ253は、第1圧力制御弁211から前輪FRの各ホイールシリンダ21FRへ供給される制御圧を検出し、検出結果をECU71に出力している。
【0132】
従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fpに基づいて目標制御圧を設定し、各圧力制御弁211,212,213,214を制御する一方、各圧力センサ74,251,252,253が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するように制御している。また、このとき、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fpに基づいて目標反力油圧を設定し、反力制御弁132を制御する一方、圧力センサ78が検出した反力油圧をフィードバックし、目標反力油圧と反力油圧とが一致するように制御している。
【0133】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン113が前進し、所定のストロークS0が維持されたままで加圧ピストン114が前進する。そして、踏力センサ73はペダル踏力Fpを検出し、ECU71は、このペダル踏力Fpに基づいて目標制御圧し、この目標制御圧に基づいて各圧力制御弁211,212,213,214を制御する。
【0134】
即ち、第1圧力制御弁211にて、電磁力により駆動弁が移動することで、アキュムレータ127の油圧が配管126から高圧ポートに供給され、制御圧ポートから第1制御圧供給配管216を通して動力分離機構217に供給される。そして、動力分離機構217の動力分離ピストン232が移動することで、制御圧が制御圧伝達配管218を通して前輪FRのホイールシリンダ21FRに付与される。また、第2圧力制御弁212にて、電磁力により駆動弁が移動することで、アキュムレータ127の油圧が配管126から高圧ポートに供給され、制御圧ポートから第2制御圧供給配管219を通して後方圧力室R2に供給される。すると、この後方圧力室R2に作用した油圧が加圧ピストン114をアシストすることから、前方圧力室R1から外部圧供給配管220を通して前輪FLのホイールシリンダ21FLに制御圧として付与される。更に、第3、第4圧力制御弁213,214にて、電磁力により駆動弁が移動することで、アキュムレータ127の油圧が配管126から高圧ポートに供給され、制御圧ポートから第3、第4制御圧供給配管221,222を通して後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧として付与される。
【0135】
従って、ABS22の各圧力制御弁211,212,213,214から前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧がそれぞれ独立して付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0136】
また、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fpに基づいて目標反力油圧を設定し、この目標反力油圧に基づいて反力制御弁132を制御し、反力室R4に所定の反力油圧PRを作用させる。即ち、反力制御弁132にて、電磁力により駆動弁が移動することで、アキュムレータ127の油圧が高圧分岐配管131から高圧ポートに供給され、反力圧ポートから反力圧供給配管223を通して反力室R4に供給される。すると、この反力室R4に作用した油圧が入力ピストン113を介してブレーキペダル15に作用することとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLの制動力に対応した操作反力を乗員に付与することができる。
【0137】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合に、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン113が所定のストロークS0だけ前進すると、加圧ピストン114に当接して両ピストン113,114が一体となって前進する。すると、前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が外部圧として外部圧供給配管220を通して第2圧力制御弁212に作用する。すると、この外部圧供給配管220から外部圧ポートに外部圧が作用し、外部ピストンが移動して駆動弁を押圧して移動させることで、アキュムレータ127の油圧が配管126から高圧ポートに供給され、制御圧ポートから第1制御圧供給配管219を通して後方圧力室R2に供給される。すると、この後方圧力室R2に作用した油圧が加圧ピストン114をアシストすることから、前方圧力室R1から外部圧供給配管220に対して適正な制動油圧が吐出される。
【0138】
従って、外部圧供給配管220から開閉弁238により開放された外部圧分岐配管237及び動力分離機構217を介して前輪FRのホイールシリンダ21FRに制御圧が付与されると共に、外部圧供給配管220から前輪FLのホイールシリンダ21FLに制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0139】
このように実施例3の車両用制動装置にあっては、シリンダ112内に入力ピストン113と加圧ピストン114を直列で移動自在に支持することで前方圧力室R1と後方圧力室R2を区画すると共に、ブレーキペダル15により入力ピストン113を移動することで、加圧ピストン114を介して前方圧力室R1の油圧を出力可能なマスタシリンダ111を設け、目標制御圧に基づいた電磁力によりアキュムレータ127からの油圧を調圧した制御圧をホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに出力可能な各圧力制御弁211,212,213,214を設けると共に、第2圧力制御弁212により前方圧力室R1からの外部圧によりアキュムレータ127からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2に出力可能としている。
【0140】
従って、電源系統の正常時に、ECU71は、ペダル踏力Fpに応じた目標制御圧を設定し、この目標制御圧に基づいて各圧力制御弁211,212,213,214を制御することで、アキュムレータ127からの制御圧を各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLにそれぞれ独立して作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0141】
このとき、ECU71は、ペダル踏力Fpに応じた目標反力油圧を設定し、この目標反力油圧に基づいて反力制御弁132を制御することで、アキュムレータ127から反力制御弁132により反力室R4に適正な油圧が供給され、この反力室R4に作用した油圧が入力ピストン113を介してブレーキペダル15に作用することとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLの制動力に対応した操作反力を乗員に付与することができる。
【0142】
一方、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じて入力ピストン113及び加圧ピストン114が一体となって移動して前方圧力室R1が加圧され、前方圧力室R1の油圧が外部圧として第2圧力制御弁212に作用することで、アキュムレータ127から第2圧力制御弁212により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、加圧ピストン114をアシストすることとなり、適正な制御圧を供給することができ、この制御油を各ホイールシリンダ21FR,21FLに作用させ、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0143】
このとき、マスタシリンダ111の前方圧力室R1で発生した制御圧が外部圧供給配管220に吐出され、開閉弁238により開放された外部圧分岐配管237を通って動力分離機構217に供給され、更に第1制御圧伝達配管218から前輪FRのホイールシリンダ21FRに付与されると共に、この外部圧供給配管220から直接前輪FLのホイールシリンダ21FLに付与されることとなる。そのため、例えば、電源系統の失陥時にアキュムレータ127を有する高圧系にエアが混入しても、このエアがマスタシリンダ111の油圧供給系に混入することはなく、前方圧力室R1で発生した制御圧をホイールシリンダ21FR,21FLに適正に供給することができ、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0144】
このように本実施例では、電磁力及び外部圧により作動する各圧力制御弁211,212,213,214を適用すると共に、電磁力により作動する反力制御弁132を適用することで、電源系統の状態に拘らず乗員によるブレーキペダル15の操作に応じた制御圧を確実に発生させることができると共に、乗員に対してブレーキペダル15の操作に応じた反力を適正に発生させることができ、その結果、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御及び反力制御を可能とすることができ、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
【実施例4】
【0145】
図6は、本発明の実施例4に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0146】
実施例4の車両用制動装置において、図6に示すように、マスタシリンダ11は、シリンダ12内に駆動ピストン13が軸方向に移動自在に支持されて構成され、駆動ピストン13は反力スプリング14の付勢力により一方方向に付勢支持されている。そして、ブレーキペダル15は、操作ロッド20の先端部が駆動ピストン13に連結されている。従って、運転者がペダル17を踏み込むことでブレーキペダル15が回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して駆動ピストン13に伝達され、この駆動ピストン13を反力スプリング14の付勢力に抗して前進可能となっている。そして、シリンダ12内に、駆動ピストン13により前方圧力室R1と後方圧力室R2が区画されている。
【0147】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(制動装置)を作動させるホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS22により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ11は、2つの油圧配管24,28が連結されており、第1油圧配管24に連結される後述する外部圧供給配管46には、連結配管311を介して通電時に開放されているシミュレータカット弁312を介してストロークシミュレータ313が接続されている。このストロークシミュレータ313は、運転者によるブレーキペダル15の操作踏力に応じたペダルストロークを発生させるものである。各油圧配管24,28には、通電時に閉止されているマスタカット弁314,315が装着されており、これらマスタカット弁314,315よりも上流側(マスタシリンダ11側)に、各油圧配管24,28の油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ316,317がそれぞれ装着されている。
【0148】
油圧ポンプ38はモータ39により駆動可能であり、配管40を介してリザーバタンク33に連結されると共に、配管41を介してアキュムレータ42に連結されている。このアキュムレータ42は、高圧供給配管43を介して圧力制御弁44に連結されている。この圧力制御弁44は、電磁力によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であると共に、マスタシリンダ11の前方圧力室R1からの油圧によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ11の後方圧力室R2及びABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能である。そのため、圧力制御弁44は、制御圧供給配管45を介して第2油圧配管28に連結され、外部圧供給配管46を介して第1油圧配管24に連結され、減圧供給配管47を介して第3油圧配管32に連結されている。
【0149】
また、マスタシリンダ11の前方圧力室R1と圧力制御弁44とを連結する外部圧供給配管46には、通電時に閉止する開閉弁318が設けられている。更に、マスタシリンダ11の後方圧力室R2と第3油圧配管32とを連結する連結配管319には、通電時に開放する負圧防止弁320が設けられている。また、各油圧配管24,28の先端部には、前輪の各油圧供給配管25a,25bと後輪の油圧供給配管29a,29bが連結配管321により連結され、この連結配管321に通電時に開放する開閉弁322が設けられている。
【0150】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進する。このとき、ストロークセンサ72はペダルストロークSpを検出し、ECU71は、このペダルストロークSpに基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁44を制御し、ABS22に対して所定の制御圧を作用させる。
【0151】
即ち、通常、マスタカット弁314,315は閉止される一方、シミュレータカット弁312は開放され、また、開閉弁318は閉止され、負圧防止弁320は開放され、開閉弁322は開放されている。そのため、圧力制御弁44にて、コイル60に通電し、発生する吸引力により駆動弁56を移動すると、高圧ポートP1が連通孔61を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。すると、第2油圧配管28に供給された油圧がABS22に吐出される。このとき、外部圧供給配管46に設けられた開閉弁318が閉止状態にあるため、マスタシリンダ11の前方圧力室R1の油圧が外部圧供給配管46を通して圧力制御弁44に作用することはない。また、連結配管319に設けられた負圧防止弁320が開放状態にあるため、マスタシリンダ11の駆動ピストン13が前進するとき、リザーバタンク33から後方圧力室R2に油圧が補充されるため、駆動ピストン13が適正に作動する。
【0152】
従って、第2油圧配管28の制御圧が後輪側の油圧供給配管29a,29bに供給されると共に、開閉弁322により開放されている連結配管321を介して前輪側の油圧供給配管25a,25bに供給される。つまり、制動油圧が前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0153】
なお、マスタカット弁314,315は閉止され、シミュレータカット弁312は開放されており、運転者がブレーキペダル15を踏み込み操作すると、マスタシリンダ11はその操作量に応じた油圧を発生する。即ち、前方圧力室R1の油圧が第1油圧配管24からシミュレータカット弁312を経由してストロークシミュレータ313へ作用するため、ブレーキペダル15の踏力に応じてこのブレーキペダル15の操作量が調整される。即ち、操作踏力に応じたペダル操作量(ペダルストローク)が生成される。このペダルストロークは、ストロークセンサ72により検出されるが、マスタシリンダ圧センサ316,317が検出した油圧からも算出可能であり、それぞれのペダルストロークが一致しない場合には、各センサ72,316,317の異常、あるいはマスタシリンダ11、各油圧供給配管24,28の異常と判定する。
【0154】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、マスタカット弁314,315は開放される一方、シミュレータカット弁312は閉止され、また、開閉弁318は開放され、負圧防止弁320は閉止され、開閉弁322は閉止されている。そのため、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進し、この駆動ピストン13の前進により前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が外部圧として第1油圧配管24に吐出され、外部圧供給配管46を通して圧力制御弁44に吐出されると共に、マスタカット弁314を通してABS22の前輪側に吐出される。
【0155】
すると、圧力制御弁44にて、外部圧供給配管46から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に外部圧が作用し、外部ピストン58が移動することで駆動弁56を押圧して移動させると、高圧ポートP1は連通孔61を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。そして、この第2油圧配管28からマスタカット弁315を通して後方圧力室R2に作用してアシストすると共に、ABS22の後輪側に吐出される。
【0156】
従って、マスタシリンダ11の前方圧力室R1の油圧が第1油圧配管24を通して前輪側の油圧供給配管25a,25bに供給されると共に、後方圧力室R2の油圧が第2油圧配管28を通して後輪側の油圧供給配管29a,29bに供給される。つまり、制動油圧が前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0157】
このように実施例4の車両用制動装置にあっては、シリンダ12内に駆動ピストン13を移動自在に支持することで前方圧力室R1及び後方圧力室R2を区画すると共に、ブレーキペダル15により駆動ピストン13を移動することで前方圧力室R1の油圧を出力可能なマスタシリンダ11を設け、前方圧力室R1及び後方圧力室R2にマスタカット弁314,315を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLを連結し、マスタカット弁314,315の閉止時に圧力制御弁44で調圧された油圧をホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに出力可能であり、マスタカット弁314,315の開放時に前方圧力室R1の油圧をホイールシリンダ21FR,21FLに出力可能であると共に、圧力制御弁44で調圧された油圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能としている。
【0158】
従って、電源系統の正常時に、ECU71は、ペダルストロークSpに応じた目標制御圧を設定し、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁44を制御することで、アキュムレータ42から圧力制御弁44により第2油圧配管28に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0159】
一方、電源系統の失陥時には、マスタカット弁314,315が開放されることで、ブレーキペダル15の操作に応じて駆動ピストン13が移動して前方圧力室R1が加圧され、前方圧力室R1の油圧が外部圧として圧力制御弁44に作用することで、アキュムレータ42から圧力制御弁44により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、駆動ピストン13をアシストすることとなり、各油圧配管24,28に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0160】
また、本実施例では、マスタシリンダ11の前方圧力室R1と圧力制御弁44とを連結する外部圧供給配管46に、通電時に閉止する開閉弁318を設けている。従って、電源系統の正常時に、開閉弁318により外部圧供給配管46が閉止状態となるため、マスタシリンダ11の前方圧力室R1の油圧が圧力制御弁44に作用することはなく、回生協調制御を可能とすることができる一方、電源系統の失陥時に、開閉弁318により外部圧供給配管46が開放状態となるため、マスタシリンダ11の前方圧力室R1の油圧を外部圧として圧力制御弁44に作用させることができる。
【0161】
また、マスタシリンダ11の後方圧力室R2とリザーバタンク33とを連結する連結配管319に、通電時に開放する負圧防止弁320を設けている。従って、電源系統の正常時に、負圧防止弁320により連結配管319が開放状態となるため、マスタシリンダ11における駆動ピストン13の前進時に、リザーバタンク33から後方圧力室R2に油圧が補充されるため、駆動ピストン13を適正に作動させることができる一方、電源系統の失陥時に、負圧防止弁320により連結配管319が閉止状態となるため、後方圧力室R2からの油圧の漏洩を防止することができる。
【0162】
更に、前輪FR,FLの油圧供給配管25a,25bと後輪RR,RLの油圧供給配管29a,29bとを連結する連結配管321に、通電時に開放する開閉弁322を設けている。従って、電源系統の正常時に、開閉弁322により連結配管321が開放状態となるため、圧力制御弁44で調圧された油圧を各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させることができる一方、電源系統の失陥時に、開閉弁322により連結配管321が閉止状態となるため、圧力制御弁44で調圧された油圧によりマスタシリンダ11を適正にアシストすることができる。
【0163】
このように本実施例では、電磁力及び外部圧により作動する圧力制御弁44を適用することで、電源系統の状態に拘らず乗員によるブレーキペダル15の操作に応じた制御圧を確実に発生させることができ、その結果、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御を可能とすることができ、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
【実施例5】
【0164】
図7は、本発明の実施例5に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0165】
実施例5の車両用制動装置において、図7に示すように、マスタシリンダ11は、シリンダ12内に駆動ピストン13が軸方向に移動自在に支持されて構成され、駆動ピストン13は反力スプリング14の付勢力により一方方向に付勢支持されている。そして、ブレーキペダル15は、操作ロッド20の先端部が駆動ピストン13に連結されている。従って、運転者がブレーキペダル15を踏み込むことで回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して駆動ピストン13に伝達され、この駆動ピストン13を反力スプリング14の付勢力に抗して前進可能となっている。そして、シリンダ12内に、駆動ピストン13により前方圧力室R1と後方圧力室R2が区画されている。
【0166】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(制動装置)を作動させるホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS22により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ11は、2つの各油圧配管24,28が連結されており、第1油圧配管24に連結される外部圧供給配管46には、連結配管311を介してストロークシミュレータ313が接続されている。また、各油圧配管24,28には、通電時に閉止されているマスタカット弁314,315が装着されており、これらマスタカット弁314,315よりも上流側(マスタシリンダ11側)に、各油圧配管24,28の油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ316,317がそれぞれ装着されている。
【0167】
油圧ポンプ38はモータ39により駆動可能であり、配管40を介してリザーバタンク33に連結されると共に、配管41を介してアキュムレータ42に連結されている。このアキュムレータ42は、高圧供給配管43を介して圧力制御弁44に連結されている。この圧力制御弁44は、電磁力によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であると共に、マスタシリンダ11の前方圧力室R1からの油圧によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ11の後方圧力室R2及びABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能である。そのため、圧力制御弁44は、制御圧供給配管45を介して第2油圧配管28に連結され、外部圧供給配管46を介して第1油圧配管24に連結され、減圧供給配管47を介して第3油圧配管32に連結されている。
【0168】
また、マスタシリンダ11の前方圧力室R1と圧力制御弁44とを連結する外部圧供給配管46には、通電時に閉止する開閉弁318が設けられている。更に、マスタシリンダ11の前方圧力室R1に連通する第1油圧配管24と後方圧力室R2に連通する第2油圧配管28とを連結する連結配管411が設けられ、この連結配管411には、通電時に開放する負圧防止弁412が設けられている。また、各油圧配管24,28の先端部には、前輪の各油圧供給配管25a,25bと後輪の油圧供給配管29a,29bが連結配管321により連結され、この連結配管321に通電時に開放する開閉弁322が設けられている。
【0169】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進する。このとき、ストロークセンサ72はペダルストロークSpを検出し、ECU71は、このペダルストロークSpに基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁44を制御し、ABS22に対して所定の制御圧を作用させる。
【0170】
即ち、通常、マスタカット弁314,315は閉止され、開閉弁318は閉止され、負圧防止弁412は開放され、開閉弁322は開放されている。そのため、圧力制御弁44にて、コイル60に通電し、発生する吸引力により駆動弁56を移動すると、高圧ポートP1が連通孔61を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。すると、第2油圧配管28に供給された油圧がABS22に吐出される。このとき、外部圧供給配管46に設けられた開閉弁318が閉止状態にあるため、マスタシリンダ11の前方圧力室R1の油圧が外部圧供給配管46を通して圧力制御弁44に作用することはない。また、連結配管411に設けられた負圧防止弁412が開放状態にあるため、マスタシリンダ11の駆動ピストン13が前進するとき、前方圧力室R1から第1油圧配管24に吐出された油圧が連結配管411を通って第2油圧配管28に流れ、後方圧力室R2に補充されるため、駆動ピストン13が適正に作動する。
【0171】
従って、第2油圧配管28の制御圧が後輪側の油圧供給配管29a,29bに供給されると共に、開閉弁322により開放されている連結配管321を介して前輪側の油圧供給配管25a,25bに供給される。つまり、制動油圧が前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0172】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、マスタカット弁314,315は開放され、開閉弁318は開放され、負圧防止弁412は閉止され、開閉弁322は閉止されている。そのため、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進し、この駆動ピストン13の前進により前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が外部圧として第1油圧配管24に吐出され、外部圧供給配管46を通して圧力制御弁44に吐出されると共に、マスタカット弁314を通してABS22の前輪側に吐出される。
【0173】
すると、圧力制御弁44にて、外部圧供給配管46から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に外部圧が作用し、外部ピストン58が移動することで駆動弁56を押圧して移動させると、高圧ポートP1は連通孔61を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通孔61を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。そして、この第2油圧配管28からマスタカット弁315を通して後方圧力室R2に作用してアシストすると共に、ABS22の後輪側に吐出される。
【0174】
従って、マスタシリンダ11の前方圧力室R1の油圧が第1油圧配管24を通して前輪側の油圧供給配管25a,25bに供給されると共に、後方圧力室R2の油圧が第2油圧配管28を通して後輪側の油圧供給配管29a,29bに供給される。つまり、制動油圧が前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0175】
このように実施例5の車両用制動装置にあっては、シリンダ12内に駆動ピストン13を移動自在に支持することで前方圧力室R1及び後方圧力室R2を区画すると共に、ブレーキペダル15により駆動ピストン13を移動することで前方圧力室R1の油圧を出力可能なマスタシリンダ11を設け、前方圧力室R1及び後方圧力室R2にマスタカット弁314,315を介してホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLを連結し、マスタカット弁314,315の閉止時に圧力制御弁44で調圧された油圧をホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに出力可能であり、マスタカット弁314,315の開放時に前方圧力室R1の油圧をホイールシリンダ21FR,21FLに出力可能であると共に、圧力制御弁44で調圧された油圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能としている。
【0176】
従って、電源系統の正常時に、ECU71は、ペダルストロークSpに応じた目標制御圧を設定し、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁44を制御することで、アキュムレータ42から圧力制御弁44により第2油圧配管28に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0177】
一方、電源系統の失陥時には、マスタカット弁314,315が開放されることで、ブレーキペダル15の操作に応じて駆動ピストン13が移動して前方圧力室R1が加圧され、前方圧力室R1の油圧が外部圧として圧力制御弁44に作用することで、アキュムレータ42から圧力制御弁44により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、駆動ピストン13をアシストすることとなり、各油圧配管24,28に適正な制御圧を供給することができ、この制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0178】
また、本実施例では、マスタシリンダ11の前方圧力室R1に連通する第1油圧配管24と後方圧力室R2に連通する第2油圧配管28とを連結する連結配管411に、通電時に開放する負圧防止弁412を設けている。従って、電源系統の正常時に、負圧防止弁412により連結配管411が開放状態となるため、マスタシリンダ11における駆動ピストン13の前進時に、前方圧力室R1から第1油圧配管24に吐出された油圧が連結配管411を通って第2油圧配管28に流れ、後方圧力室R2に補充されるため、駆動ピストン13を適正に作動させることができる一方、電源系統の失陥時に、負圧防止弁412により連結配管411が閉止状態となるため、圧力制御弁44からの制御圧を後方圧力室R2のみに作用させることで、加圧ピストン14を適正にアシストすることができる。また、電源系統の正常時に、前方圧力室R1から吐出された油圧の一部が後方圧力室R2に流れるため、前方圧力室R1からストロークシミュレータ313に流れる油圧供給量が低減することとなり、シミュレータカット弁を廃止することができ、構造の簡素化及び低コスト化に寄与することができる。
【実施例6】
【0179】
図8は、本発明の実施例6に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図9は、実施例6の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0180】
実施例6の車両用制動装置において、図8に示すように、マスタシリンダ11は、シリンダ12内に駆動ピストン13が軸方向に移動自在に支持されて構成され、駆動ピストン13は反力スプリング14の付勢力により一方方向に付勢支持されている。そして、ブレーキペダル15は、操作ロッド20の先端部が駆動ピストン13に連結されている。従って、運転者がブレーキペダル15を踏み込むことで回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して駆動ピストン13に伝達され、この駆動ピストン13を反力スプリング14の付勢力に抗して前進可能となっている。そして、シリンダ12内に、駆動ピストン13により前方圧力室R1と後方圧力室R2が区画されている。
【0181】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS22により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ11は、2つの各油圧配管24,28が連結されており、第1油圧配管24に連結される外部圧供給配管46には、連結配管311を介してストロークシミュレータ313が接続されている。また、各油圧配管24,28には、通電時に閉止されているマスタカット弁314,315が装着されており、これらマスタカット弁314,315よりも上流側(マスタシリンダ11側)に、各油圧配管24,28の油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ316,317がそれぞれ装着されている。
【0182】
油圧ポンプ38はモータ39により駆動可能であり、配管40を介してリザーバタンク33に連結されると共に、配管41を介してアキュムレータ42に連結されている。このアキュムレータ42は、高圧供給配管43を介して圧力制御弁511に連結されている。この圧力制御弁511は、電磁力によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であると共に、マスタシリンダ11の前方圧力室R1からの油圧によりアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ11の後方圧力室R2及びABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能である。
【0183】
即ち、この圧力制御弁511において、図9に示すように、ハウジング512は円筒形状をなし、内部に形成された貫通孔513には、軸方向に沿って複数の段部が形成されることで下方に向かって大径となる3つの支持孔513a,513b,513cが形成されている。そして、この貫通孔513には、駆動弁514が上下に移動自在に支持されており、この駆動弁514は、各支持孔513a,513b,513cに移動自在に支持される支持部514a,514b,514c及び大径部514dを有している。そして、この駆動弁514は、リターンスプリング515により上方に付勢支持されることで、大径部514dが段部512aに当接する位置に付勢支持される一方、ソレノイド516に通電することで、発生する電磁力により下方に移動可能となっている。
【0184】
そして、ハウジング512には、高圧ポートP1と減圧ポートP2と制御圧ポートP3が形成されている。一方、駆動弁514には、軸方向に沿った第1貫通孔517aと径方向に沿った貫通孔517bとが交差する連通路517が形成されている。
【0185】
また、ハウジング512の貫通孔513の上部には、支持孔513aより大径の支持孔513dが形成されている。そして、この貫通孔513には、駆動弁514の上方に直列をなして外部ピストン518が上下に移動自在に支持されており、この外部ピストン518は、各支持孔513a,513dに移動自在に支持される支持部518a,518bを有している。
【0186】
そして、ハウジング512内に駆動弁514及び外部ピストン518が移動自在に支持されることで、ハウジング512と駆動弁514と外部ピストン518により、外部ピストン518の前方側に位置して第1圧力室R11が形成され、ハウジング512と外部ピストン518により、外部ピストン518の後方側に位置して第2圧力室R12が区画形成されている。また、ハウジング512には、外部圧ポートP4と調整圧ポートP5が形成されている。なお、制御圧ポートP3は、駆動弁514と外部ピストン518との間の第1圧力室R11に連通している。また、減圧ポートP2と調整圧ポートP5が外部で連通している。
【0187】
この場合、外部ピストン518は段付部を有し、前方側で駆動弁514との間に区画された第1圧力室R11の受圧面積a11が、外部ピストン518の後方側で前方圧力室R1からの油圧が作用する第2圧力室R12の受圧面積a12より小さく設定されている。即ち、第1圧力室R11から外部ピストン518の支持部518aが受ける油圧の受圧面積a11と、前方圧力室R1から外部ピストン518の支持部518bが受ける油圧の受圧面積a12との関係は、a11<a12となるように、外部ピストン518の各支持部558a,558bの外径が設定されている。
【0188】
従って、ソレノイド516に通電していないとき、駆動弁514はリターンスプリング515の付勢力により上方に位置決めされており、連通路517により制御圧ポートP3と第1圧力室R11と減圧ポートP2が連通し、高圧ポートP1が遮断されている。一方、ソレノイド516に通電すると、電磁力により駆動弁514がリターンスプリング515の付勢力に抗して下方に移動する。すると、連通路517により高圧ポートP1と第1圧力室R11と制御圧ポートP3が連通し、減圧ポートP2が遮断されることとなる。また、外部圧ポートP4に外部圧が作用すると、外部ピストン518が下方に移動し、駆動弁514をリターンスプリング515の付勢力に抗して下方に移動することから、前述と同様に、連通路517により高圧ポートP1と第1圧力室R11と制御圧ポートP3が連通する。
【0189】
そして、図8に示すように、油圧ポンプ38及びアキュムレータ42からの高圧供給配管43が圧力制御弁511の高圧ポートP1に連結されている。また、圧力制御弁511は、制御圧ポートP3が制御圧供給配管45を介して第2油圧配管28に連結され、外部圧ポートP4が外部圧供給配管46を介して第1油圧配管24に連結され、減圧ポートP2が減圧供給配管47を介して第3油圧配管32に連結されている。
【0190】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進する。このとき、ストロークセンサ72はペダルストロークSpを検出し、ECU71は、このペダルストロークSpに基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁511を制御し、ABS22に対して所定の制御圧を作用させる。
【0191】
即ち、通常、マスタカット弁314,315は閉止され、開閉弁318は閉止され、負圧防止弁412は開放され、開閉弁322は開放されている。そのため、圧力制御弁511にて、ソレノイド516に通電し、発生する電磁力により駆動弁514を移動すると、高圧ポートP1が連通路517を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通路517を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。すると、第2油圧配管28に供給された油圧がABS22に吐出される。
【0192】
従って、第2油圧配管28の制御圧が後輪側の油圧供給配管29a,29bに供給されると共に、開閉弁322により開放されている連結配管321を介して前輪側の油圧供給配管25a,25bに供給される。つまり、制動油圧が前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0193】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、マスタカット弁314,315は開放され、開閉弁318は開放され、負圧防止弁412は閉止され、開閉弁322は閉止されている。そのため、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により駆動ピストン13が前進し、この駆動ピストン13の前進により前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が外部圧として第1油圧配管24に吐出され、外部圧供給配管46を通して圧力制御弁511に吐出されると共に、マスタカット弁314を通してABS22の前輪側に吐出される。
【0194】
すると、圧力制御弁511にて、外部圧供給配管46から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に外部圧が作用し、外部ピストン518が移動することで駆動弁514を押圧して移動させると、高圧ポートP1は連通路517を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通路517を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管28に供給される。
【0195】
この場合、外部ピストン518は、第1圧力室R11の受圧面積a11が第2圧力室R12の受圧面積a12より小さく設定されていることから、圧力制御弁511は、前方圧力室R1から第2圧力室R12に作用した油圧に対して駆動弁514を押圧する駆動力が増大し、前方圧力室R1から吐出された油圧より高い油圧を制御圧供給配管45に吐出する。そして、この圧力制御弁511からの制御圧が第2油圧配管28からマスタカット弁315を通して後方圧力室R2に作用して駆動ピストン13をアシストすると共に、ABS22の後輪側に吐出される。
【0196】
従って、マスタシリンダ11の前方圧力室R1の油圧が増圧されて第1油圧配管24を通して前輪側の油圧供給配管25a,25bに供給されると共に、後方圧力室R2の油圧が第2油圧配管28を通して後輪側の油圧供給配管29a,29bに供給される。つまり、制動油圧が前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0197】
なお、電源系統に故障が発生して失陥した場合にて、マスタシリンダ11のサーボ比Rsは下記にように定義される。
Rs=[A1−(A1−A2)]×(a12/a11
12>a11
>(A2−A2)×(a12/a11
【0198】
このように実施例6の車両用制動装置にあっては、シリンダ12内に駆動ピストン13を移動自在に支持することで前方圧力室R1及び後方圧力室R2を区画すると共に、ブレーキペダル15により駆動ピストン13を移動することで前方圧力室R1の油圧を出力可能なマスタシリンダ11を設け、前方圧力室R1にホイールシリンダ21FR,21FLを連結し、目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁514を移動することでアキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であると共に、前方圧力室R1からの外部圧で移動する外部ピストン518により駆動弁514を移動することでアキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能である圧力制御弁511を設け、外部ピストン518の前方側で駆動弁514との間に区画された第1圧力室R11の受圧面積a11が、後方側で前方圧力室R1からの油圧が作用する第2圧力室R12の受圧面積a12より小さく設定している。
【0199】
従って、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じて駆動ピストン13が移動して前方圧力室R1が加圧され、前方圧力室R1の油圧が外部圧として圧力制御弁511に作用することで、アキュムレータ42から圧力制御弁511で増圧された油圧が後方圧力室R2に作用して駆動ピストン13をアシストすることとなり、各油圧配管24,28に適正な制御圧を供給することができ、適正な制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0200】
また、マスタシリンダ11の後方圧力室R2に前方圧力室R1より高い油圧を導入することで、サーボ比を高く設定して操作反力を確保することができ、安全性を向上することができる。
【実施例7】
【0201】
図10は、本発明の実施例7に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0202】
実施例7の車両用制動装置において、図10に示すように、マスタシリンダ611は、シリンダ612内に駆動ピストンとしての入力ピストン613と加圧ピストン614が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。シリンダ612の基端部側に配置された入力ピストン613は、基端部にブレーキペダル15の操作ロッド20が連結されており、乗員によるブレーキペダル15の操作により操作ロッド20を介して移動可能となっている。また、入力ピストン613は、外周面がシリンダ12の第1内周面612aに嵌合し、軸方向に沿って移動自在に支持され、フランジ部613aの外周面がシリンダ612の第1内周面612aより大径の第2内周面612bに嵌合し、軸方向に沿って移動自在に支持されている。そして、フランジ部613aが第1内周面612aと第2内周面612bとの間の段部612cに当接することで、前進側の移動ストロークが規制され、フランジ部613aが支持部材615に当接することで、後退側の移動ストロークが規制される。
また、入力ピストン613は、支持部材615とブラケット616との間に介装された反力スプリング617によりフランジ部613aが支持部材615に当接する位置に付勢支持されている。
【0203】
加圧ピストン614は、シリンダ612にて、入力ピストン613より先端部側に配置され、外周面がシリンダ612の第1内周面612aに移動自在に支持され、フランジ部614aの外周面がシリンダ612の第3内周面612dに移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン614は、フランジ部614aが蓋部材618または段部612eに当接することで、移動ストロークが規制される。また、加圧ピストン614は、支持板619との間に介装された付勢スプリング620の付勢力により、フランジ部614aが段部612eに当接する位置に付勢支持されている。
【0204】
また、上述したように、シリンダ612内に入力ピストン613と加圧ピストン614が同軸上に相対移動自在に配置されることで、前方圧力室R1と、後方圧力室R2と、循環圧力室R3と、反力室R4とが区画される。そして、後方圧力室R2と循環圧力室R3は、入力ピストン613内に形成された連通路621により連通されると共に、入力ピストン613が加圧ピストン614に接近したときに、このシール部材(閉止部材)622が加圧ピストン614の後端面に取付けられている。
【0205】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS22により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ611の前方圧力室R1に連通する第1圧力ポート623に第1油圧配管624が連結されており、この第1油圧配管624が油圧供給配管25a,25bを介してホイールシリンダ21FR,21FLに連結されている。また、マスタシリンダ611の循環圧力室R3に連通する第2圧力ポート625には、第2油圧配管626が連結されており、この第2油圧配管626が油圧供給配管29a,29bを介してホイールシリンダ21RR,21RLに連結されている。
【0206】
また、各油圧供給配管25a,25bには油圧排出配管30a,30bが連結され、各油圧供給配管29a,29bには油圧排出配管31a,31bが連結されており、各油圧排出配管30a,30b,31a,31bは、先端部が集合して第3油圧配管32に連結され、この第3油圧配管32は、マスタシリンダ611の第4圧力ポート627に連結され、第5圧力ポート627から油圧給排配管629を介してリザーバタンク33に連結されている。
【0207】
そして、各油圧供給配管25a,25b,29a,29bに増圧弁34a,34b,35a,35bが配置され、各油圧排出配管30a,30b,31a,31bに減圧弁36a,36b,37a,37bが配置されている。
【0208】
油圧ポンプ38はモータ39により駆動可能であり、配管40を介してリザーバタンク33に連結されると共に、配管41を介してアキュムレータ42に連結されている。この油圧ポンプ38及びアキュムレータ42は、高圧供給配管630を介して圧力制御弁631に連結されている。この圧力制御弁631は、電磁力により作動してアキュムレータ42に蓄圧された油圧を調圧してマスタシリンダ611の後方圧力室R2及びABS22のホイールシリンダ21RR,21RLに出力可能であり、後方圧力室R2への油圧により加圧ピストン614を前進させ、マスタシリンダ611の前方圧力室R1からの油圧をABS22のホイールシリンダ21FR,21FLに出力可能である。
【0209】
この圧力制御弁631は、前述した実施例6の圧力制御弁511とほぼ同様の構成をなしており、外部ピストンの形状が相違している。即ち、ハウジング512内に駆動弁514及び外部ピストン632が移動自在に支持されることで、外部ピストン518の前方側に第1圧力室R11が形成され、外部ピストン518の後方側に位置して第2圧力室R12が区画形成されている。この場合、外部ピストン632は段付部を有し、前方側で駆動弁514との間に区画された第1圧力室R11の受圧面積a11が、外部ピストン518の後方側で前方圧力室R1からの油圧が作用する第2圧力室R12の受圧面積a12より大きく設定されている。即ち、第1圧力室R11から外部ピストン632が受ける油圧の受圧面積a11と、前方圧力室R1から外部ピストン632が受ける油圧の受圧面積a12との関係は、a11<a12となるように、外部ピストン632の外径が設定されている。
【0210】
従って、ソレノイド516に通電していないとき、駆動弁514はリターンスプリング515の付勢力により上方に位置決めされており、連通路517により制御圧ポートP3と第1圧力室R11と減圧ポートP2が連通し、高圧ポートP1が遮断されている。一方、ソレノイド516に通電すると、電磁力により駆動弁514がリターンスプリング515の付勢力に抗して下方に移動する。すると、連通路517により高圧ポートP1と第1圧力室R11と制御圧ポートP3が連通し、減圧ポートP2が遮断されることとなる。また、外部圧ポートP4に外部圧が作用すると、外部ピストン632が下方に移動し、駆動弁514をリターンスプリング515の付勢力に抗して下方に移動することから、前述と同様に、連通路517により高圧ポートP1と第1圧力室R11と制御圧ポートP3が連通する。
【0211】
そして、油圧ポンプ38及びアキュムレータ42からの高圧供給配管630が圧力制御弁631の高圧ポートP1に連結されている。また、圧力制御弁631は、制御圧ポートP3が制御圧供給配管633を介して第2油圧配管626に連結されている。
【0212】
また、マスタシリンダ611の反力室R4に連通する第3圧力ポート634には、第4油圧配管635の一端部が連結され、他端部は第3油圧配管32に連結されると共に、圧力制御弁631の減圧ポートP2に連結されている。そして、この第4油圧配管635には、反力制御弁636が装着されており、この反力制御弁636は、ノーマルオープンタイプの開閉弁であって、電力供給時に閉止する。また、第4油圧配管635には、ストロークシュミレータ637が設けられている。
【0213】
更に、圧力制御弁631の高圧ポートP1と第1油圧配管624との間には、連結配管638が架設されており、この連結配管638に連通弁639が装着されている。この連通弁639は、ノーマルクローズタイプの開閉弁であって、電力供給時に開放する。また、圧力制御弁631の外部ポートP4には、外部圧供給配管640の一端部が連結され、他端部が第1油圧配管624に連結されている。従って、前方圧力室R1の油圧が第1油圧配管624及び外部圧供給配管640を通して外部ポートP4に外部圧として作用することで、外部ピストン632を下方に移動することができる。
【0214】
ECU71は、ブレーキペダル15から入力ピストン613に入力される操作力(ペダルストロークまたはペダル踏力)に応じた目標制御圧を設定(制御圧設定手段)し、圧力制御弁631によりこの設定された目標制御圧を後輪側のホイールシリンダ21RR,21RLに出力させると共に、後方圧力室R2に作用させて加圧ピストン614をアシストし、前方圧力室R1から前輪側のホイールシリンダ21FR,21FLに出力される。そのため、ABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに適正な制動油圧が付与されて作動し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を作用させる。
【0215】
即ち、ブレーキペダル15には、ペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72と、ペダル踏力Fpを検出する踏力センサ73が設けられており、各検出結果をECU71に出力している。また、第1油圧配管36には、制御圧(マスタシリンダ圧)Pmを検出する第1圧力センサ74が設けられており、検出結果をECU71に出力している。第4油圧配管635における反力制御弁636より第3圧力ポート634側には、反力室R4の反力油圧Pfを検出する圧力センサ78が設けられており、検出結果をECU71に出力している。連通配管638には、アキュムレータ42から圧力制御弁631を介して連通配管638に供給される油圧を検出する圧力センサ76が設けられており、検出結果をECU71に出力している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、車輪速度を検出する車輪速センサ77が設けられており、検出結果をECU71に出力している。
【0216】
ここで、本実施例の車両用制動装置による制動力制御について具体的に説明する。運転者がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により操作ロッド20を介して入力ピストン613が反力スプリング617の付勢力に抗して前進する。このとき、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排が停止されるものの、後方圧力室R2と循環圧力室R3が連通路621により連通していることから、後方圧力室R2の油圧が連通路621を通って循環圧力室R3に流れ、入力ピストン613は微小前進する。
【0217】
また、ブレーキペダル15を踏み込まれたとき、踏力センサ73はペダル踏力Fpを検出し、ECU71は、このペダル踏力Fpに基づいて目標制御圧Pmtを設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧Pmtに基づいて圧力制御弁631を制御し、所定の制御圧を出力させる。
【0218】
即ち、圧力制御弁631にて、ソレノイド516に通電し、発生する電磁力により駆動弁514を移動すると、高圧ポートP1が連通路517を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通路517を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管633を通して第2油圧配管626に供給される。すると、第2油圧配管626に供給された油圧がマスタシリンダ611の第2圧力ポート625から環状圧力室R3に供給され、連通路621を通って後方圧力室R2に作用し、加圧ピストン614をアシストすることから、この加圧ピストン614が前方圧力室R1を加圧し、前方圧力室R1から第1油圧配管624に対して適正な制御油圧が吐出される。
【0219】
従って、第1油圧配管624から前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧が付与されると共に、第2油圧配管626から後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して運転者のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0220】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、圧力制御弁631のソレノイド516へ通電することで、各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLへ付与する制動油圧を適正油圧に制御することができない。ところが、本実施例では、反力室R4の第3圧力ポート634に連結された第4油圧配管635に電磁式の反力制御弁636を設けており、非通電時には、第4油圧配管635を開放してリザーバタンク33に連通している。
【0221】
そのため、電源系統の失陥時に、運転者がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により操作ロッド20を介して入力ピストン613が反力スプリング617の付勢力に抗して前進する。このとき、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排が許可されていることから、入力ピストン613が前進する。この場合、入力ピストン613が所定ストローク前進すると、入力ピストン613の前面が加圧ピストン614の背面に当接することから、連通路621がシール部材622により閉止される。そして、入力ピストン613と共に加圧ピストン614が前進し、この加圧ピストン614の前進により前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が外部圧として第1油圧配管624に吐出され、外部圧供給配管640を通して圧力制御弁631に吐出される。
【0222】
すると、圧力制御弁631にて、外部圧供給配管640から外部圧ポートP4を介して第2圧力室R12に外部圧が作用し、外部ピストン632が移動することで駆動弁514を押圧して移動させると、高圧ポートP1は連通路517を介して制御圧ポートP3に連通する。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管43から高圧ポートP1に供給され、連通路517を通って第1圧力室R11に供給され、制御圧ポートP3から制御圧供給配管633を通して第2油圧配管626に供給される。
【0223】
この場合、外部ピストン632は、第1圧力室R11の受圧面積a11が第2圧力室R12の受圧面積a12より大きく設定されていることから、圧力制御弁631は、前方圧力室R1から第2圧力室R12に作用した油圧に対して駆動弁514を押圧する駆動力が減少し、前方圧力室R1から吐出された油圧より低い油圧を外部圧供給配管640に吐出する。そして、この圧力制御弁631からの制御圧が第2油圧配管626から環状圧力室R3に作用することで、入力ピストン613を介して加圧ピストン614をアシストする。
【0224】
従って、マスタシリンダ611の前方圧力室R1の油圧が増圧されて第1油圧配管624を通して前輪側の油圧供給配管25a,25bに供給される。つまり、制動油圧が前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに付与されることとなり、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0225】
なお、電源系統に故障が発生して失陥した場合にて、マスタシリンダ611のサーボ比Rsは下記にように定義される。
Rs=[A1−(A2−A3)]×(a12/a11
1=A2−A3
Rs=A1/(A1−A1×a12/a11)=1/(1−a12/a11)=a11/(a11−a12
11>a12
11/(a11−a12)>A/A3
【0226】
このように実施例7の車両用制動装置にあっては、シリンダ612内に入力ピストン613と加圧ピストン614を移動自在に支持することで、前方圧力室R1、後方圧力室R2、循環圧力室R3、反力室R4を区画し、後方圧力室R2と循環圧力室R3を連通路621により連通すると共に、入力ピストン613が加圧ピストン614に接近したときにこの連通路621を閉止するシール部材622を加圧ピストン614に設け、アキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を循環圧力室R3から連通路621を通して後方圧力室R2に出力可能である圧力制御弁631を設け、外部ピストン632の前方の第1圧力室R11の受圧面積a11を後方側の第2圧力室R12の受圧面積a12より大きく設定している。
【0227】
従って、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じて入力ピストン613が加圧ピストン614を押圧し、この加圧ピストン614が移動して前方圧力室R1が加圧され、前方圧力室R1の油圧が外部圧として圧力制御弁631に作用することで、アキュムレータ42から圧力制御弁631で増圧された油圧が環状圧力室R3に作用して入力ピストン613を介して加圧ピストン614をアシストすることとなり、各油圧配管624,626に適正な制御圧を供給することができ、適正な制御油をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0228】
また、入力ピストン613が加圧ピストン614に接近したときにシール部材622が連通路621を閉止し、圧力制御弁631から循環圧力室R3に前方圧力室R1より低い油圧を導入することで、サーボ比を高く設定して操作反力を確保することができ、安全性を向上することができる。
【実施例8】
【0229】
図11は、本発明の実施例8に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0230】
実施例8の車両用制動装置において、図11に示すように、マスタシリンダ711は、シリンダ712にバックアップパストン713と加圧ピストン714が直列に配設され、それぞれ軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、バックアップパストン713に入力ピストン715が軸方向に沿って移動自在に支持されて構成されている。
【0231】
バックアップピストン713は、シリンダ712内に位置して円筒形状をなす本体116と、この本体716の軸方向における一端部に固定された蓋部717と、本体717の軸方向における他端部からシリンダ712外に突出して円筒形状をなす支持部718とから構成されている。そして、バックアップピストン713は、本体716の外周面がシリンダ712の第1内周面712aに嵌合し、軸方向に沿って移動自在に支持されている。また、バックアップピストン713は、本体716における基端部側の外周部に円盤形状をなすフランジ部713aが一体に形成されており、このフランジ部713aの外周面がシリンダ712の第1内周面712aより大径の第2内周面712bに嵌合し、軸方向に沿って移動自在に支持されている。更に、バックアップピストン713は、支持部718が支持部材719の貫通孔719aに移動自在に嵌合しており、フランジ部713aが第1内周面712aと第2内周面712bとの間の段部712cに当接することで、前進側の移動ストロークが規制され、フランジ部713aが支持部材719に当接することで、後退側の移動ストロークが規制される。
【0232】
加圧ピストン714は、シリンダ712にて、バックアップピストン713より先端部側に配置され、外周面がシリンダ712の第1内周面712aに移動自在に支持されている。また、加圧ピストン714は、フランジ部714aが一体に形成され、このフランジ部714aの外周面がシリンダ712の第3内周面712dに移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン714は、フランジ部714aがシリンダ712の底部または段部712eに当接することで、移動ストロークが規制される。また、加圧ピストン714は、支持板720との間に介装された付勢スプリング721の付勢力により、フランジ部714aが段部712eに当接する位置に付勢支持されている。
【0233】
入力ピストン715は、円筒形状をなし、先端部に押圧部材722が固定されており、外周面がバックアップピストン713の内周面に嵌合し、軸方向に沿って移動自在に支持されている。そして、バックアップピストン713の蓋部717と支持板725との間に付勢スプリング724が介装されており、入力ピストン715は、バックアップピストン713に対して離間する方向に付勢され、バックアップピストン713の段部713bに当接した位置に付勢支持されている。
【0234】
一方、ブレーキペダル15には操作ロッド20が連結され、操作ロッド20の先端部がバックアップピストン713内を通って入力ピストン715内に進入し、連結部720aが係止部715aにより拘束されることで、入力ピストン715に連結されている。また、シリンダ712(支持部材719)とバックアップピストン713の支持板723との間には、付勢スプリング726が介装されている。
【0235】
従って、ペダル17を踏み込むと、ブレーキペダル15が支持軸16を支点として回動し、その操作力(ペダルストローク)が操作ロッド20を介して入力ピストン715に伝達され、この入力ピストン715が付勢スプリング724,726の付勢力に抗して前進することができる。この場合、ドライバがブレーキペダル15を踏み込むと、操作ロッド20を介して入力ピストン715が前進し、押圧部材722が付勢スプリング724の付勢力に抗して前進することとなることから、押圧部材722及び付勢スプリング724等によりストロークシュミレータ(操作力吸収機構)が構成されている。
【0236】
また、上述したように、シリンダ712内にバックアップピストン713と加圧ピストン714と入力ピストン715が同軸上に相対移動自在に配置されることで、前方圧力室R1と、後方圧力室R2と、循環圧力室R3と、反力室R4と、圧力吸収室R5が区画される。そして、後方圧力室R2と循環圧力室R3は、シリンダ12に形成された連通路727により連通されている。
【0237】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLが設けられており、ABS22により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ711の前方圧力室R1に連通する第1圧力ポート731には第1油圧配管624が連結されている。また、マスタシリンダ711の循環圧力室R3に連通する第2圧力ポート732には、第2油圧配管626が連結されている。また、第3油圧配管32は、マスタシリンダ711の第4圧力ポート733に連結され、第5圧力ポート734から油圧給排配管735を介してリザーバタンク33に連結されている。また、マスタシリンダ711の反力室R4に連通する第3圧力ポート736には、第4油圧配管635が連結されている。
【0238】
また、マスタシリンダ711には、前方圧力室R1に連通する戻しポート737a,737bが形成され、戻し配管738を介してリザーバタンク33に連結されている。この場合、シリンダ712における戻しポート737aの前後にはワンウェイシール739が装着されている。更に、マスタシリンダ711には、圧力吸収室R5に連通する給排ポート740a,740bが形成されており、油圧給排配管735を介してリザーバタンク33に連結されている。この場合、シリンダ712における給排ポート740aの前後にはワンウェイシール741が装着されている。
【0239】
この場合、本実施例では、バックアップピストン713と入力ピストン715との間に圧力吸収室(操作力吸収室)R5が区画されており、バックアップピストン713が支持部材719に当接した後退位置に保持されているとき、圧力吸収室R5は給排ポート740a,740bから油圧給排配管735を通してリザーバタンク33に連通している。そのため、ブレーキペダル15が踏み込まれて入力ピストン715が前進すると、圧力吸収室R5の容積が減少し、油圧がリザーバタンク33に排出されることで、ブレーキペダル15の操作力が吸収される。一方、バックアップピストン713の保持が解除されているとき、ブレーキペダル15が踏み込まれて入力ピストン715が前進すると、この入力ピストン715と共にバックアップピストン713が前進する。すると、シリンダ712の給排ポート740aに対して、バックアップピストン713の給排ポート740bがずれて連通しなくなる。そのため、圧力吸収室R5の容積が減少せず、ブレーキペダル15の操作力が吸収されずに、入力ピストン715を介してバックアップピストン713に伝達される。
【0240】
なお、本実施例のABS22については、上述した実施例7とほぼ同様であるため、説明は省略する。
【0241】
従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力Fp(または、ストロークセンサ82が検出したペダルストロークSp)に基づいて目標制御圧Pmtを設定し、圧力制御弁631における駆動弁514を駆動制御する一方、第1圧力センサ74が検出した制御圧Pmをフィードバックし、目標制御圧Pmtと制御圧Pmとが一致するように制御している。この場合、ECU71は、ペダル踏力Fpに対する目標制御圧Pmtを表す制御マップを有しており、この制御マップに基づいて圧力制御弁631を駆動制御する。
【0242】
また、圧力制御弁631や反力制御弁636を作動する電源系統の正常運転時には、この圧力制御弁631を制御して出力油圧を調圧すると共に、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排を制限(停止)する。そのため、運転者によりブレーキペダル15が踏み込まれたとき、操作ロッド20を介して入力ピストン715が前進し、バックアップピストン713を押圧して移動する。この場合、反力室R4から第3圧力ポート736を通して反力制御弁636までの第4油圧配管635が閉回路となっていることから、バックアップピストン713が微小前進するとき、後方圧力室R2の油圧が連通路112を通って循環圧力室R3に流れると共に、バックアップピストン713に対して入力ピストン715が相対的に前進し、圧力吸収室R5の油圧がリザーバタンク33に排出される。
【0243】
一方、電源系統の失陥時には、圧力制御弁631を電気的に制御することができず、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排を許可(可能)する。そのため、運転者によりブレーキペダル15が踏み込まれたとき、操作ロッド20を介して入力ピストン715が前進し、反力制御弁636が開放状態にあることから、バックアップピストン713を押圧し、反力室R4の油圧が第3圧力ポート736から反力制御弁636を通ってリザーバタンク33に排出されることとなり、バックアップピストン713が前進し、加圧ピストン714を押圧する。
【0244】
ところで、電源系統の正常運転時に、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排が制限され、且つ、アキュムレータ42から圧力制御弁631を通して後方圧力室R2に制御圧が作用することから、運転者によりブレーキペダル15が踏み込まれても、バックアップピストン713が大きく前進することはない。この場合、バックアップピストン713が支持部材719に当接した位置に長期間にわたって保持されると、マスタシリンダ711やブレーキ油圧の温度変化によりシール部材などが熱膨張を繰り返し、固着してしまうおそれがある。
【0245】
そこで、本実施例では、電源系統の正常運転時にて、バックアップピストン713が作動するマスタシリンダ711の作動状態を判定し、このときに、反力室R4の油圧に基づいてバックアップピストン713の作動不良を判定するようにしている。即ち、ブレーキペダル15が踏み込まれると、操作ロッド20を介して入力ピストン715が前進してバックアップピストン713を押圧することから、このバックアップピストン713が微小前進して反力室R4の油圧が変動するため、この反力室R4の油圧に基づいてバックアップピストン713の作動不良を判定することができる。
【0246】
この場合、マスタシリンダ711における各油路面積を下記条件が成立するように設定する必要がある。この場合、アキュムレータ42の油圧が圧力制御弁631により調圧され、制御圧供給配管45によりマスタシリンダ711の後方圧力室R2及び循環圧力室R3に作用するブレーキ圧をPb、第2圧力センサ75が検出する反力室R4の反力油圧をPf、踏力センサ73が検出するペダル踏力をFp、バックアップピストン713における前方ブレーキ圧面積をAbf、後方ブレーキ圧面積をAbr、反力室R4の面積をAfiとする。また、マスタシリンダ711におけるシリンダ712の第1内周面712aの油路面積をA1、第2内周面712bの油路面積をA2、バックアップピストン713が貫通する貫通孔719aの面積をA3とするとき、
前方ブレーキ圧面積Abf=A1
後方ブレーキ圧面積Abr=A2−A3
反力室R4の面積Afi=A2−A1
となる。
【0247】
そして、ブレーキペダル15が踏み込まれるとき、バックアップピストン713が移動して反力室R4の油圧が上昇する条件は、下記数式に表す条件である。
Fp+Pb×Abr>Pb×Abf
即ち、バックアップピストン713が固着する圧力に対して、ブレーキペダル15からその圧力以上の操作力が入力されればよい。このときの反力室R4の反力油圧Pfは、下記数式により求めることができる。
PF=(Fp+Pb×Abr−Pb×Abf)/Afi
【0248】
ここで、本実施例の車両用制動装置による制動力制御について具体的に説明する。運転者がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により操作ロッド20を介して入力ピストン715が付勢スプリング726の付勢力に抗して前進する。このとき、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排が停止されるものの、後方圧力室R2と循環圧力室R3が連通路727により連通していることから、後方圧力室R2の油圧が連通路727を通って循環圧力室R3に流れ、バックアップピストン713は微小前進すると共に、押圧部材722が付勢スプリング724を撓ませることで操作力が吸収される。
【0249】
また、ブレーキペダル15が踏み込まれたとき、踏力センサ73はペダル踏力Fpを検出し、ECU71は、このペダル踏力Fpに基づいて目標制御圧Pmtを設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧Pmtに基づいて圧力制御弁631を制御し、所定の制御圧を出力させる。
【0250】
即ち、圧力制御弁631にて、ソレノイド516に通電し、発生する電磁力により駆動弁514をリターンスプリング515の付勢力に抗して下方に移動する。すると、駆動弁514の連通路517により高圧ポートP1と制御圧ポートP3が連通する一方、減圧ポートP2と制御圧ポートP3が遮断される。そのため、アキュムレータ42の油圧が高圧供給配管630から高圧ポートP1に供給され、連通路517を通って制御圧ポートP3に流れ、この制御圧ポートP3から制御圧供給配管45を通して第2油圧配管626に供給される。すると、第2油圧配管626に供給された油圧がマスタシリンダ711の第2圧力ポート732から連通路727を通って後方圧力室R2に作用し、加圧ピストン714をアシストすることから、この加圧ピストン714が前方圧力室R1を加圧し、前方圧力室R1から第1油圧配管624に対して適正な制御油圧が吐出される。
【0251】
従って、第1油圧配管624から前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧が付与されると共に、第2油圧配管626から後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して運転者のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0252】
このとき、ECU71は、反力制御弁636が閉止することで、反力室R4から第3圧力ポート736を通して反力制御弁636までの第4油圧配管635が閉回路となっている状態で、ブレーキペダル15が踏み込まれるため、圧力センサ78が検出した反力室R4の油圧Pfが上昇したかどうかを判定する。ここで、ECU71は、反力室R4の油圧Pfが上昇したと判定したら、バックアップピストン713が固着せずに正常に作動していると判定する一方、反力室R4の油圧Pfが上昇しないと判定したら、バックアップピストン713が固着して正常に作動していないとして警告ランプを点灯する。
【0253】
このように電源系統の正常運転時におけるブレーキ操作時に、反力室R4における油圧の上昇に基づいてバックアップピストン713の作動不良を容易に判定することができる。
【0254】
また、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、反力室R4の第3圧力ポート736に連結された第4油圧配管635に反力制御弁636が非通電状態であって、第4油圧配管635を開放してリザーバタンク33に連通している。
【0255】
そのため、電源系統の失陥時に、運転者がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により操作ロッド20を介して入力ピストン715が付勢スプリング726の付勢力に抗して前進する。このとき、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排が許可されていることから、入力ピストン715と共にバックアップピストン713が前進する。この場合、バックアップピストン713が所定ストローク前進すると、シリンダ712の給排ポート737aとバックアップピストン713の給排ポート737bがずれて連通しなくなり、圧力吸収室R5内の油圧がリザーバタンク33に排出されなくなる。そのため、入力ピストン715はバックアップピストン713を適正に移動することができる。
【0256】
そして、入力ピストン715と共にバックアップピストン713が前進すると、このバックアップピストン713が加圧ピストン714を押圧し、加圧ピストン714が前進することにより前方圧力室R1が加圧されることで、この前方圧力室R1の油圧が第1油圧配管624に吐出される。そして、この前方圧力室R1から第1油圧配管624に吐出された油圧は、外部圧供給配管640を通して圧力制御弁631の外部ポートP4に外部圧として作用することで、外部ピストン632を下方に移動し、駆動弁514を下方に移動する。すると、前述と同様に、駆動弁514の連通路517により高圧ポートP1と制御圧ポートP3が連通し、アキュムレータ42の油圧がこの圧力制御弁631により調圧され、制御圧供給配管45を通して第2油圧配管626に供給され、マスタシリンダ711の後方圧力室R2に作用し、加圧ピストン714をアシストする。
【0257】
従って、電源系統が失陥しても、第1油圧配管724から前輪FR,FLのホイールシリンダ21FR,21FLに制御圧が付与されると共に、第2油圧配管626から後輪RR,RLのホイールシリンダ21RR,21RLに制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して運転者のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0258】
このように実施例8の車両用制動装置にあっては、シリンダ712内にバックアップピストン713、加圧ピストン714、入力ピストン715を移動自在に支持することで、前方圧力室R1、後方圧力室R2、循環圧力室R3、反力室R4、圧力吸収室R5を区画し、後方圧力室R2と循環圧力室R3を連通路727により連通し、アキュムレータ42からの油圧を調圧した制御圧を後方圧力室R2及びホイールシリンダ321,321RLに出力可能である圧力制御弁631を設けると共に、マスタシリンダ711の作動状態に応じて反力室R4に対する油圧の給排を制御する反力制御弁636を設けている。
【0259】
従って、電源系統の正常時に、ECU71は、運転者が踏み込んだブレーキペダル15のペダル踏力Fpに応じた目標制御圧Pmtを設定し、この目標制御圧Pmtに基づいて圧力制御弁631を制御することで、アキュムレータ42から圧力制御弁631により後方圧力室R2に適正な油圧が供給され、加圧ピストン714をアシストすることとなり、各油圧配管624,626に適正な制御圧を供給することができ、この制御油圧をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して運転者のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0260】
一方、電源系統の失陥時には、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排が許可されるため、運転者がブレーキペダル15を踏み込むと、その操作力によりバックアップピストン713が前進し、加圧ピストン714を押圧して移動することから、この加圧ピストン714により前方圧力室R1が加圧されて油圧を出力し、この油圧を外部圧として圧力制御弁631を作動することができ、前述と同様に、制御油圧をABS22を介して各ホイールシリンダ21FR,21FL,21RR,21RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して運転者のブレーキペダル15の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0261】
このとき、圧力制御弁631にて、外部ピストン632の前方の第1圧力室R11の受圧面積a11を後方側の第2圧力室R12の受圧面積a12より大きく設定していることから、圧力制御弁631から循環圧力室R3に前方圧力室R1より低い油圧を導入することで、サーボ比を高く設定して操作反力を確保することができ、安全性を向上することができる。
【0262】
また、実施例8の車両用制動装置では、電源系統の正常運転時には、反力制御弁636により反力室R4に対する油圧の給排を停止し、第2圧力センサ75が検出した反力室R4の油圧の上昇に基づいてバックアップピストン713の固着(作動不良)を判定するようにしている。従って、電源系統の正常運転時におけるブレーキ操作時に、反力室R4の油圧に基づいてバックアップピストン713の作動不良を容易に判定することができる。
【0263】
なお、上述した各実施例では、本発明の圧力制御弁をスプール式の三方弁に適用して説明したが、ポペット式の三方弁に適用しても前述と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0264】
以上のように、本発明に係る車両用制動装置は、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保するようにしたものであり、いずれの種類の制動装置に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図2】実施例1の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
【図3】本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図4】実施例2の車両用制動装置における反力制御弁の断面図である。
【図5】本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図6】本発明の実施例4に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図7】本発明の実施例5に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図8】本発明の実施例6に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図9】実施例6の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
【図10】本発明の実施例7に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図11】本発明の実施例8に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【符号の説明】
【0266】
11,111,611,711 マスタシリンダ
12,112,612,712 シリンダ
13 駆動ピストン
14,119,617,726 反力スプリング
15 ブレーキペダル(操作部材)
20 操作ロッド
21FR,21FL,21RR,21RL ホイールシリンダ
22 ABS
24,140,624 第1油圧配管
28,141,626 第2油圧配管
32 第3油圧配管
33 リザーバタンク
38,122 油圧ポンプ(油圧供給源)
42,127 アキュムレータ(油圧供給源)
43,215,630 高圧供給配管
44,212,213,214,511,631 圧力制御弁
45,216,219,221,222,633 制御圧供給配管
46,220,624 外部圧供給配管
47,224 減圧供給配管
56,514 駆動弁
57,515 リターンスプリング
58,518,632 外部ピストン
71 電子制御ユニット、ECU(制御圧設定手段)
72 ストロークセンサ
73 踏力センサ
74 第1圧力センサ
75 第2圧力センサ
76 圧力センサ
78 圧力センサ
113,613 入力ピストン(駆動ピストン)
114,614 加圧ピストン(駆動ピストン)
120,620 付勢スプリング
121,621 連通路
131 高圧分岐配管
132,636 反力制御弁
133,223 反力圧供給配管
135 減圧供給配管
217 動力分離機構
237 外部圧分岐配管
238 開閉弁
251 第3圧力センサ
252 第4圧力センサ
253 第5圧力センサ
312 シミュレータカット弁
313 ストロークシミュレータ
314,315 マスタカット弁
318 開閉弁
320,412 負圧防止弁
622 シール部材(閉止部材)
635 第4油圧配管
1 前方圧力室
2 後方圧力室
3 循環圧力室
4 反力室
5 圧力吸収室
11 第1圧力室
12 第2圧力室
13 減圧室
1 高圧ポート
2 減圧ポート
3 制御圧ポート
4 外部圧ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が制動操作する操作部材と、シリンダ内に駆動ピストンが移動自在に支持されることで前方圧力室及び後方圧力室が区画されると共に前記操作部材により前記駆動ピストンを移動することで前記前方圧力室の油圧を出力可能なマスタシリンダと、前記操作部材から前記駆動ピストンに入力される操作力に応じた目標制御圧を設定する制御圧設定手段と、油圧供給源と、前記前方圧力室に連結されて車輪に制動力を発生させるホイールシリンダと、前記目標制御圧に基づいて電磁力により駆動弁を移動することで前記油圧供給源からの油圧を調圧して前記後方圧力室及び前記ホイールシリンダに出力可能であると共に前記前方圧力室からの油圧で移動する外部ピストンにより前記駆動弁を移動することで前記油圧供給源からの油圧を調圧して前記後方圧力室及び前記ホイールシリンダに出力可能である圧力制御弁とを具えたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制動装置において、前記圧力制御弁は、中空形状をなすハウジングに高圧ポートと減圧ポートと制御圧ポートと外部圧ポートが設けられ、前記高圧ポートが前記油圧供給源に連結され、前記減圧ポートがリザーバタンクに連結され、前記制御圧ポートが前記後方圧力室に連結され、前記外部圧ポートが前記前方圧力室に連結され、前記ハウジングに前記駆動弁と前記外部ピストンが直列で且つ相対移動自在に支持されると共に、前記駆動弁が前記高圧ポートと前記制御圧ポートを遮断する方向に付勢支持され、電磁力により前記駆動弁を移動することで前記減圧ポートと前記制御圧ポートを遮断すると共に前記高圧ポートと前記制御圧ポートを連通可能とする一方、前記ソレノイドの電磁力を低減して前記駆動弁の駆動力を低下することで前記減圧ポートと前記制御圧ポートを連通すると共に前記高圧ポートと前記制御圧ポートを遮断可能とし、また、前記前方圧力室からの油圧により前記外部ピストンを介して前記駆動弁を移動することで前記減圧ポートと前記制御圧ポートを遮断すると共に前記高圧ポートと前記制御圧ポートを連通可能とすることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用制動装置において、前記駆動ピストンは段付部を有し、前記前方圧力室の受圧面積が前記後方圧力室の受圧面積より大きく設定されたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両用制動装置において、前記油圧供給源は、アキュムレータを有することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記駆動ピストンは、シリンダ内に直列に配置された入力ピストンと加圧ピストンとを有し、前記入力ピストンに前記操作部材の操作力が入力可能であり、前記加圧ピストンの前方に前記前方圧力室が区画されると共に、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に前記後方圧力室が区画され、また、前記入力ピストンに対して反力室が区画され、該反力室に反力制御弁を介して前記油圧供給源が連結されたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記前方圧力室に前輪側の前記ホイールシリンダが連結され、前記後方圧力室に後輪側の前記ホイールシリンダが連結されたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記圧力制御弁で調圧された油圧を前記後方圧力室に出力することで前記前方圧力室の油圧を第1ホイールシリンダ及び第2ホイールシリンダに出力可能であり、前記第1ホイールシリンダと前記第2ホイールシリンダとを連結する油圧ラインに開閉弁が設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用制動装置において、前記第1ホイールシリンダと前記第2ホイールシリンダとを連結する油圧ラインに前記開閉弁と共に動力分離機構が設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記前方圧力室と前記ホイールシリンダとを連結する油圧ラインにマスタカット弁が設けられ、該マスタカット弁の閉止時に前記圧力制御弁で調圧された油圧を前記ホイールシリンダに出力可能であり、前記マスタカット弁の開放時に前記前方圧力室の油圧を前記ホイールシリンダに出力可能であると共に、前記圧力制御弁で調圧された油圧を前記後方圧力室及び前記ホイールシリンダに出力可能であることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用制動装置において、前記後方圧力室とリザーバタンクとを連結する油圧ラインに負圧防止弁が設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項11】
請求項9に記載の車両用制動装置において、前記前方圧力室と前記後方圧力室とを連結する油圧ラインに負圧防止弁が設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項12】
請求項9に記載の車両用制動装置において、前記前方圧力室と前記圧力制御弁とを連結する油圧ラインに開閉弁が設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項13】
請求項3に記載の車両用制動装置において、前記外部ピストンは段付部を有し、該外部ピストンの前方側で前記駆動弁との間に区画された第1圧力室の受圧面積が、前記外部ピストンの後方側で前記前方圧力室からの油圧が作用する第2圧力室の受圧面積より小さく設定されたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項14】
請求項1または2に記載の車両用制動装置において、前記駆動ピストンは、シリンダ内に直列に配置された入力ピストンと加圧ピストンとを有し、前記入力ピストンに前記操作部材の操作力が入力可能であり、前記加圧ピストンの前方に前記前方圧力室が区画される一方、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に前記後方圧力室が区画され、前記前方圧力室と前記後方圧力室とを連通する連通路が設けられると共に、前記入力ピストンが前記加圧ピストンに接近したときに前記連通路を閉止する閉止部材が設けられ、前記外部ピストンは段付部を有し、該外部ピストンの前方側で前記駆動弁との間に区画された第1圧力室の受圧面積が、前記外部ピストンの後方側で前記前方圧力室からの油圧が作用する第2圧力室の受圧面積より大きく設定されたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項15】
請求項1または2に記載の車両用制動装置において、前記駆動ピストンは、シリンダ内に直列に配置された入力ピストンと加圧ピストンとを有し、前記入力ピストンに前記操作部材の操作力が入力可能であり、前記加圧ピストンの前方に前記前方圧力室が区画される一方、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に前記後方圧力室が区画され、前記圧力制御弁から前記前方圧力室及び前記後方圧力室に油圧を供給可能であり、前記外部ピストンは段付部を有し、該外部ピストンの前方側で前記駆動弁との間に区画された第1圧力室の受圧面積が、前記外部ピストンの後方側で前記前方圧力室からの油圧が作用する第2圧力室の受圧面積より大きく設定されたことを特徴とする車両用制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−132966(P2008−132966A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262433(P2007−262433)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】