説明

車両用情報表示装置

【課題】 交差点における走行すべき車線などに関するレーン情報や案内ルートなどに関するルート情報の必要な情報を、運転中の使用者が即座かつ容易に把握することが可能な車両用情報表示装置を提供する。
【解決手段】 右左折のいずれかが予定されている右左折予定分岐点と現在位置との間に、接近時に走行レーンを表示可能なレーン表示対象分岐点が存在する場合に、車両のウインドシールドWSには、レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置を示すレーン位置画像3と、右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示すルート方向画像2とが隣接配置されて表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールドに画像を表示する車両用情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルにあるメータ等の画像をウインドシールドに表示する装置としてヘッドアップディスプレイ(HUD)が知られている。これは、メータ等の画像をウインドシールドに投射し、ウインドシールドに反射した画像を運転者の目に入射させることにより、ウインドシールドの外側前方にその像を結像させて、運転者が前方視界から目を外すことなくメータ等を視認することができるものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−189725号公報
【特許文献2】特開2005−199992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び2には、HUDを用いて、ナビゲーション機能によるルート案内中に、交差点における車線の進行可能な方向や走行すべき車線を案内するレーン情報などを使用者の前方視界の上側へ表示し、他方、案内するルートを矢印や距離で表したルート情報を使用者の前方視界の下側へ表示させる発明が開示されている。
【0005】
しかしながら、運転中の使用者がルート案内中に両方の情報を把握するためには、視線を大きく移動させて上下に振り分けられた表示を確認する必要があり、使用者にとって大変煩雑なものとなっていた。また、走行すべき車線や案内ルートを示す矢印が上下に振り分けて表示されていると、使用者はその関係を容易に理解し難い。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みて為されたものであり、交差点における走行すべき車線などに関するレーン情報や案内ルートなどに関するルート情報の必要な情報を、運転中の使用者が即座かつ容易に把握することが可能な車両用情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の車両用情報表示装置は、
道路データを記憶している記憶手段と、
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
目的地までの推奨ルートを設定するルート設定手段と、
推奨ルートにおいて右左折のいずれかが予定されている右左折予定分岐点での予定されている右左折方向に基づいて、該右左折予定分岐点と現在位置との間のルートにおける複数の走行レーンから走行を推奨する推奨走行レーンを決定する推奨走行レーン決定手段と、
右左折予定分岐点と現在位置との間に走行レーンを表示可能なレーン表示対象分岐点が存在する場合に、該レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置を示すレーン位置画像と、右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示すルート方向画像と、を隣接配置して車両のウインドシールドに表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記本発明によると、右左折予定分岐点と現在位置との間にレーン表示対象分岐点が存在する場合に、レーン位置画像とルート方向画像とを隣接配置して車両のウインドシールドに表示することで、使用者は、視線を大きく動かすことなく前方視界のある箇所に視線を傾けるだけで、レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置の情報と、右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向の情報とを即座かつ容易に把握することができる。また、レーン位置画像とルート方向画像とが隣接することで、これらの関係、例えば先の右左折予定分岐点で右折または左折が予定されているためにその方向へ寄った推奨走行レーンとされているといった関係を、使用者は容易に把握することができる。
【0009】
次に、本発明の車両用情報表示装置において、表示制御手段は、レーン位置画像を、レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンに各々対応する走行指定方向を示す矢印画像が左右に配列したものとして表示し、推奨走行レーンに該当する矢印画像を残余の矢印画像よりも強調して表示するとともに、ルート方向画像を、右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示す矢印画像がレーン位置画像の矢印画像とは異なる形態で表わされたものとして表示するように構成することができる。
【0010】
上記本発明によると、レーン位置画像を、レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンに各々対応する走行指定方向を示す矢印画像が左右に配列したものとして表すことにより、使用者は、各走行レーンの走行指定方向や位置関係など複数の走行レーンの全体構造を即座かつ容易に把握することができる。また、推奨走行レーンに該当する矢印画像を強調表示することにより、複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置やその走行指定方向を即座かつ容易に把握することができる。また、ルート方向画像を、右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示す矢印画像がレーン位置画像の矢印画像とは異なる形態で表わすことにより、使用者は、レーン位置画像における矢印画像とルート方向画像における矢印画像とが隣接していてもそれらを誤認することなく、それぞれを的確に把握することができる。
【0011】
次に、本発明の車両用情報表示装置において、表示制御手段は、レーン位置画像の走行方向前方に対応する側にルート方向画像を隣接配置して表示するように構成することができる。
【0012】
上記本発明によると、レーン位置画像の走行方向前方に対応する側にルート方向画像を隣接配置することにより、使用者は、レーン表示対象分岐点における推奨走行レーンとその先の右左折予定分岐点における右左折方向との対応関係を直感的に理解しやすい。すなわち、推奨走行レーンに沿って進んだ後に右左折をする分岐点があるということが直感的にわかりやすく、また、右左折をする分岐点があるために推奨走行レーンがその方向に寄っているということも直感的にわかりやすい。
【0013】
また、本発明の車両用情報表示装置において、表示制御手段は、レーン位置画像を下段に、ルート方向画像を上段に隣接配置して、ウインドシールドの下部領域に表示するように構成することができる。
【0014】
上記本発明によると、ウインドシールドの下部領域は使用者にとってより見やすく且つより前方視界の邪魔にならない箇所であるので、下部領域にレーン位置画像とルート方向画像とを表示することで、使用者は、前方視界からウインドシールドの下部領域へ視線を微動させるだけで、上記の如き情報をより即座に且つより容易に把握することができる。また、この場合、レーン位置画像を下段に、ルート方向画像を上段に隣接配置することで、使用者は、前方視界における実際の走行方向前方とレーン位置画像における走行方向前方とを容易に対応させることができるので、レーン表示対象分岐点における推奨走行レーンとその先の右左折予定分岐点における右左折方向との対応関係をより直感的に理解しやすくなる。
【0015】
次に、本発明の車両用情報表示装置において、表示制御手段は、ルート方向画像を、右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示す矢印画像とともに該右左折予定分岐点までの距離を示す画像を含むものとして表示するように構成することができる。
【0016】
上記本発明によると、ルート方向画像に、右左折予定分岐点までの距離を示す画像を含めることで、使用者は、先にある右左折予定分岐点での右左折方向とともに、右左折の具体的なタイミングについても容易に把握することができる。
【0017】
次に、本発明の車両用情報表示装置において、表示制御手段は、右左折予定分岐点と現在位置との間にレーン表示対象分岐点が存在しない場合に、右左折予定分岐点における複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置を示す右左折レーン位置画像と、ルート方向画像と、を隣接配置して車両のウインドシールドに表示するように構成することができる。
【0018】
上記本発明によると、右左折予定分岐点と現在位置との間にレーン表示対象分岐点が存在しない場合、すなわち車両が右左折予定分岐点に接近している場合に、右左折予定分岐点における推奨走行レーンの位置を示す右左折レーン位置画像を、右左折方向を示すルート方向画像とともに表示することで、使用者は、両画像を確認することによって右左折予定分岐点における右左折に備えることができる。
【0019】
次に、本発明の車両用情報表示装置において、表示制御手段は、右左折予定分岐点と現在位置との間の距離が一定以下となった場合に、右左折レーン位置画像の表示を省略し、ルート方向画像を拡大して表示するように構成することができる。
【0020】
上記本発明によると、右左折予定分岐点と現在位置との間にレーン表示対象分岐点が存在しなくなって、さらに車両が右左折予定分岐点に接近した場合、車両は既に推奨走行レーンに移っていることが予想されるので、推奨走行レーンの位置を示す右左折レーン位置画像を省略することができ、その一方で右左折方向を示すルート方向画像を拡大して表示することで、使用者は、右左折予定分岐点における右左折の方向をより的確に把握することができる。
【0021】
次に、本発明の車両用情報表示装置において、表示制御手段は、右左折予定分岐点と現在位置との間の距離が一定以下に縮まった場合に表示するルート方向画像を、右左折予定分岐点の分岐構造を表す模式画像に該右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示す矢印画像を重ね合わせたものとして表示するように構成することができる。
【0022】
上記本発明によると、ルート方向画像を、右左折予定分岐点の分岐構造を表す模式画像に右左折方向を示す矢印画像を重ね合わせたものとして表示することにより、使用者は、分岐点の分岐構造を把握しつつ、どのルートに右左折していけば良いかということを理解した上で、右左折を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用情報表示装置が組込まれた車両のコックピット図である。右左折のいずれかが予定されている右左折予定分岐点と現在位置との間に、接近時に走行レーンを表示可能なレーン表示対象分岐点が存在する場合に、車両のウインドシールドWSには、レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置を示すレーン位置画像3と、右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示すルート方向画像2とが隣接配置されて表示される。以下、各々の詳細について説明を行う。
【0024】
なお、分岐点とは、1つの進入経路に対して複数の脱出経路を有するものであり、例えば、交差点はもちろんのこと、交差していない三叉路やT字路なども含む概念である。以下、交差点に代表させて説明する。また、右左折とは、分岐点において直進以外の経路を選択することであり、直進以外の経路とは、法規上ウインカーを出して進行することが予定されている経路である。
【0025】
(1)構成
車両用情報表示装置1の構成について説明する。図5は、車両用情報表示装置1の電気ブロック図であり、図6は、車両用情報表示装置1の機能ブロック図である。車両用情報表示装置(車両用情報表示システム)1は、目的地までの推奨ルートを設定してそれを案内するとともに交差点における推奨走行レーンを決定するナビゲーション装置8と、ウインドシールドWSにレーン位置画像3とルート方向画像2とを表示するHUD表示装置7と、を含んで構成されている。
【0026】
(1−1)ナビゲーション装置
ナビゲーション装置8は、ナビゲーションECU80に、車両の現在位置を検出する位置検出器5や地図データ4Dを記憶しているHDD(Hard Disk Drive)装置4が接続された構造を有する。ここで、ナビゲーションECU80は本発明にいうルート設定手段,推奨走行レーン決定手段に、位置検出器5は本発明にいう位置検出手段に、HDD装置4は本発明にいう記憶手段に該当する。また、ナビゲーション装置8は、図示しないが他にも、車両の現在位置マークと推奨ルートと地図データ等とを重ね合わせて表示するためのLCD等の表示装置や、使用者からの操作入力を受けるための操作スイッチ群、音声案内を行うためのスピーカなどが接続されている。
【0027】
ナビゲーションECU(Electronic Control Unit)80は、CPU81,ROM82,RAM83,入出力ポート(I/Oポート)84がバス87を介して接続されたマイクロプロセッサからなる。また、車内ネットワークを構築するシリアル通信バス9と内部のバス87とは、シリアル通信インターフェース(I/F)85を介して接続されている。また、通信データを一時的に格納するためにRAM83とは別に設けられたバッファメモリ86を備えている。ROM82は、CPU81が実行するプログラム及びそれに必要なデータを記憶している。RAM83は、CPU81がプログラムを実行する際に作業領域として利用される。
【0028】
HDD4には、地図データ4Dが記憶されている。また、地図データ4Dは、例えばCD−ROM,DVD−ROM,メモリカードなどの記録媒体に記憶させてドライブから入力するようにしてもよい。ここで、地図データ4Dには、道路データ,背景データ,属性データ等が含まれる。道路データには、相互に関係する形状情報と位相情報が含まれている。位相情報は、交差点(ノード)と交差点の接続(リンク)を記述するものであって、推奨ルートの設定などに用いられる。また、交差点における走行レーンの情報も含まれており、例えば交差点の進入方向に複数の走行レーンが存在するものについては、車両の接近時に走行レーンを表示するレーン表示対象交差点としている。
【0029】
リンクとノードについて説明する。リンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードにて分割し、それぞれのノード間をリンクとして規定するものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID),リンクの長さを示すリンク長,リンクの始端と終端の座標,道路名称,道路種別,道路幅員,走行レーン数(車線数),走行レーン毎の進行方向(例えば、直進方向,右方向,左方向等)とその走行レーンの配置等の各データから構成されている。他方、ノードとは、地図上の各道路が交差・分岐・合流するノード毎に固有の番号を付したノードID,ノード座標,ノード名称,ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、分岐地点、合流地点、及び交差点の何れかの地点における走行レーン数,走行レーン毎の進行方向とその走行レーンの配置等の各データから構成されている。
【0030】
位置検出器5は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されたGPS電波をアンテナ511で受信して位置データを取得するGPS受信機51と、地磁気に基づいて方位を検出する地磁気センサ52と、角速度を検出して方位を算出するジャイロスコープ53と、走行距離を検出して距離データを取得する距離センサ54とを備えて構成され、それぞれ51〜54が取得したデータを相互補完することによって、車両の現在位置の検出と正確な走行距離の計測を行う。
【0031】
ナビゲーションECU80は、使用者により操作スイッチ群など(図示せず)から入力された目的地について、現在地から目的地までの推奨ルートを算出する機能を有する。このように自動的に推奨ルートを設定する手法は、例えば、周知のダイクストラ(Dijkstra)法によるコスト計算、すなわち、リンク長,道路種別,道路幅員等を考慮してリンク毎に付されるコスト値を用いて、最小のコストで目的地に到達する経路を計算する方法が採用される。なお、このように設定した推奨ルートにおいて、右左折のいずれかが予定されている交差点を右左折予定交差点とする。右左折とは、着目する交差点(ノード)への進入ルート(リンク)に対し、直進(道なり)以外の脱出ルート(リンク)が選択されている場合であって、道なりであるか否かは、道路種別,リンク属性,路線名称や路線番号の変化や進入・脱出・非経路の幅員関係を考慮して判断される。
【0032】
ナビゲーションECU80は、右左折予定分岐点での予定されている右左折方向に基づいて、右左折予定分岐点と現在位置との間のルートにおける複数の走行レーンから推奨走行レーンを決定する。このように推奨走行レーンを決定する手法は、周知の方法を用いることができる。
【0033】
例えば、図2に示すように、先の右左折予定分岐点BXで右左折(例では右折)が予定されている場合において、その手前の所定距離(例では700m程度)に含まれる交差点(レーン表示対象交差点)AX1〜3では、進入方向の複数の走行レーンの中から、走行指定方向が上記右左折方向のみとなっている走行レーン(右左折専用レーン)の手前の走行レーンを“推奨走行レーン”とする(図2(d)〜(f)参照;画像3Aが推奨走行レーンを表す)。換言すると、走行指定方向が直進を含む方向となっている走行レーン(直進レーン;直進と右左折が兼用されているものを含む)のうち、最も上記右左折方向に寄った走行レーンを“推奨走行レーン”とする。
【0034】
また、レーン表示対象交差点AX3を通過して、右左折予定交差点BXとの間にレーン表示対象交差点が存在しなくなった場合には、右左折予定交差点BXにおける進入方向の複数の走行レーンの中から、走行指定方向が上記右左折方向のみとなっている走行レーン(右左折専用レーン)を“推奨走行レーン”とする(図2(c)参照)。
【0035】
以上のナビゲーション装置8は、どの交差点で右左折が予定されているか等の推奨ルートに関する情報をルート情報とし、交差点においてどの走行レーンが推奨走行レーンとされているか等の推奨走行レーンに関する情報をレーン情報として、以下に説明するHUD表示装置7に逐次提供する。
【0036】
(1−2)HUD表示装置
HUD表示装置7は、ウインドシールドWSに画像を表示するHUD表示器6がHUDECU70に接続された構造を有する。
【0037】
HUD(Head UP Display)ECU(Electronic Control
Unit)7は、CPU71,ROM72,RAM73,入出力ポート(I/Oポート)74がバス77を介して接続されたマイクロプロセッサからなる。また、車内ネットワークを構築するシリアル通信バス9と内部のバス77とは、シリアル通信インターフェース(I/F)75を介して接続されている。また、通信データを一時的に格納するためにRAM73とは別に設けられたバッファメモリ76を備えている。ROM72は、CPU71が実行するプログラム及びそれに必要なデータを記憶している。RAM73は、CPU71がプログラムを実行する際に作業領域として利用される。
【0038】
HUD表示器6は、HUDECU70から表示命令を受けると、それに基づいて車両のウインドシールドWSにルート方向画像2及びレーン位置画像3を表示する。HUD表示器6は、図9に示すように、ウインドシールドWSの下側から車両の内側へ延出するインストルメントパネルIPの内部に配設されており、スイッチ画像2及び動作応答画像3を映し出した液晶パネル62に対しバックライト63で光を照射すると、液晶パネル62を透過した光がウインドシールドWSに入射し、運転席に着座した運転者DRの目に向けて反射されることでルート方向画像2及びレーン位置画像3が虚像として運転者DRに捕らえられる。
【0039】
HUDECU70のROM72は、HUD表示器6によってルート方向画像2及びレーン位置画像3を表示するのに必要な種々の情報を記憶している。例えば、後述するようなルート方向画像2及びレーン位置画像3の表示形状やレイアウトの情報を記憶している。
【0040】
ルート方向画像2及びレーン位置画像3の表示例について説明する。HUD表示装置7は、図2に示すように、車両Mの現在位置と右左折予定交差点BXとの間の距離が所定距離(例では700m程度)以下となると、右左折予定交差点BXまでの接近状況(第1〜5区間)に応じて、レーン位置画像3が下段、ルート方向画像2が上段と隣接するようにこれらの画像2,3を合成して車両のウインドシールドWSに表示する(図1参照)。
【0041】
ルート方向画像2及びレーン位置画像3は、ウインドシールドWSの下部領域のうち、運転席に着座した使用者の正面、すなわち使用者にとってステアリングホイールの前方に当たる位置に表示される。このように使用者の正面に表示されることにより、使用者は、ルート方向画像2やレーン位置画像3に示される矢印方向などの方向を直感的に理解しやすい。
【0042】
図3に、ルート方向画像2及びレーン位置画像3の拡大図を示す。図は、第1区間における表示である。レーン位置画像3は、レーン表示対象交差点AX1における複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置を示す。すなわち、レーン位置画像3は、レーン表示対象交差点AX1における進入方向の複数の走行レーンを矢印画像31と区画線画像32とにより表すことで、レーン表示対象交差点AX1への進入ルートのレーン構造を使用者に示すとともに、推奨走行レーンに該当する走行レーンを強調表示することにより(推奨走行レーン画像3A)、複数の走行レーンの中での推奨走行レーンの位置を使用者に示す。
【0043】
矢印画像31は、レーン表示対象交差点AX1における進入方向の複数の走行レーンにそれぞれ対応するものであり、矢印が示す方向が各走行レーンの走行指定方向を表す。また、矢印画像31が左右に配列することにより、矢印画像31が表す走行レーンと、使用者から見た実際の走行レーンとが適合する。また、矢印画像31は、走行レーンの区画線を表す区画線画像32と交互に配置されることにより、1組の区画線画像32に挟まれた領域が1つの走行レーンを表している。
【0044】
また、推奨走行レーンに該当する矢印画像(推奨走行レーン画像)3Aは、残余の矢印画像31よりも強調表示されている。強調表示は、矢印画像31の通常時の表示状態を異ならせることにより実施することができ、具体的には、矢印画像31の明暗を反転させて表示したり、色相や彩度を変更して表示したり、点滅させて表示したり、またはこれらを組み合わせて表示したりすることで行うことができる。本実施形態では、区画線画像32に挟まれた領域における矢印画像31の明暗を反転させることで推奨走行レーン画像3Aを表示している。
【0045】
ルート方向画像2は、右左折予定交差点BXにて予定されている右左折方向及び右左折予定交差点BXまでの距離を示す。ここで、ウインドシールドWSに表示されたレーン位置画像3は上方が走行方向前方に当たるため、ルート方向画像2は、レーン位置画像3の上方側に隣接配置される。
【0046】
また、ルート方向画像2には、右左折予定交差点BXにて予定されている右左折方向を示す矢印画像21が含まれている。この矢印画像21は、右左折がより理解しやすいように、直進を表す上方に延びた線部分から右左折方向に折れ曲がった形状とされている。
【0047】
また、矢印画像21は、使用者が混同しないように、レーン位置画像3における矢印画像31とは異なる形態で表わされている。すなわち、レーン位置画像3では、区画線画像32が互いに平行に表示され、矢印画像31の線部分が同程度の幅とされて2次元的に表されているのに対し、ルート方向画像2では、矢印画像21の線部分の幅が上方になるに連れて狭まるようになっており、3次元的に表されている。
【0048】
また、ルート方向画像2には、矢印画像21とともに、車両Mの現在位置から右左折予定交差点BXまでの距離を示す画像22も含まれている。なお、距離を示す画像22は、レーン表示対象交差点AX1〜3から右左折予定交差点BXまでの距離を示すものとすることもでき、車両Mがレーン表示対象交差点AX1〜3を通過する度に、通過した表示対象交差点AX1〜3から右左折予定交差点BXまでの距離表示を更新するように構成してもよい。
【0049】
図2(a)〜(f)に示す、車両Mの右左折予定交差点BXまでの接近状況に応じたレーン位置画像3及びルート方向画像2の表示形態について説明する。推奨ルートSR上の右左折予定交差点BXと車両Mとの間にレーン表示対象交差点AX1〜3がある場合に、まず第1のレーン表示対象交差点AX1の手前の第1区間では、図2(f)に示すように、レーン位置画像3は、第1のレーン表示対象交差点AX1への侵入ルートのレーン構造を示すとともに、その中の推奨走行レーンを強調表示する(3A)。
【0050】
次に、車両Mが第1のレーン表示対象交差点AX1を通過すると、第1のレーン表示対象交差点AX1と第2のレーン表示対象交差点AX2との間の第2区間では、図2(e)に示すように、レーン位置画像3は、第2のレーン表示対象交差点AX2への侵入ルートのレーン構造を示すとともに、その中の推奨走行レーンを強調表示する(3A)。また、第3区間においても、図2(e)に示すように、これらと同様に表示される。
【0051】
そして、車両Mが第3のレーン表示対象交差点AX3を通過すると、第4区間では、図2(c)に示すように、レーン位置画像(右左折レーン位置画像3’)は、右左折予定交差点BXへの侵入ルートのレーン構造を示すとともに、その中の推奨走行レーン(ここでは、右折専用レーンが推奨走行レーンとなる)を強調表示する(3A)。なお、本実施形態では、右左折予定交差点BXに接近した場合にも走行レーンが表示されることから、これもレーン表示対象交差点の1つである。
【0052】
その後、車両Mが右左折予定交差点BXに更に接近すると(例では300m程度)、第5区間では、図2(b)に示すように、レーン位置画像3の表示が省略され、拡大されたルート方向画像2Aが表される。この拡大されたルート方向画像2Aは、右左折予定交差点BXの分岐構造を表す模式画像26に、右左折予定交差点BXにて予定されている右左折方向を示す矢印画像25を重ね合わせたものとして構成されている。
【0053】
ここで、矢印画像25は、上記と同様に直進を表す上方に延びた線部分から右左折方向に折れ曲がった形状とされており、これによって、分岐構造を表す模式画像26のうち侵入ルートと脱出ルートに相当する部分に重なっており、これらを覆い隠している。
【0054】
また、矢印画像25は、図4に示すように、矢印画像25の枠の中を矢印方向に向かって段階的に点灯させていく流れ表示を行っている。これによって、使用者は右左折方向を理解しやすい。すなわち、当該流れ表示では、図4(a)のように矢印画像25が枠だけで中が点灯していない状態から、図4(b)〜(d)のように矢印方向に向かって段階的に点灯させつつ点灯領域を増大させていき、最終的には図4(e)のように矢印画像25の枠の中を全て点灯させる。その後、図4(a)に戻り、同じ点灯処理を繰り返す。
【0055】
その他、HUD表示装置70は、ルート方向画像2及びレーン位置画像3の他に、図示しないが、車速センサからのセンサ信号に基づいて演算された車速などの種々の情報も、ウインドシールドWSの下部領域にこれらとまとめて表示する。
【0056】
(2)動作
車両用情報表示装置1の動作について説明する。図8は、ナビゲーション装置8及びHUD表示装置7が行う処理を表すフローチャートである。
【0057】
まず、ナビゲーション装置8は、現在位置から右左折予定交差点BXまでの距離が所定距離(1:例では700m程度)以下となると(T1:YES)、その右左折予定交差点BXでの右左折方向に基づいて、現在位置から右左折予定交差点BXまでのルートにおける推奨走行レーンを決定する(T2)。そして、右左折予定交差点BXにおける右左折方向及びそこまでの距離などに関するルート情報と、直近のレーン表示対象交差点AX1〜3におけるレーン構造及びその中の推奨走行レーン位置などに関するレーン情報をHUD表示装置7に送信する(T3)。
【0058】
他方、HUD表示装置7は、ルート情報及びレーン情報を受信すると(S1:YES)、これらの情報に基づいて上述したルート方向画像2及びレーン位置画像3をウインドシールドWSに表示する(S2;図2(f),図3)。
【0059】
そして、ナビゲーション装置8は、車両が右左折予定交差点BXに更に近づいて、現在位置から右左折予定交差点BXまでの距離が所定距離(2:例では300m程度)以下となるまで、ルート情報とレーン情報とをHUD表示装置7へ逐次送信する(T4:NO →T3→T4)。この間、図2に示すように、車両Mの進行状況によって直近(進行方向において直近)のレーン表示対象交差点AX1〜3が変わるため、ナビゲーション装置8が送信するレーン情報は、レーン表示対象交差点AX1〜3を通過する度に対象が変化する。
【0060】
他方、HUD表示装置7は、逐次受信するレーン情報に基づいてレーン位置画像3を表示する(S3:NO →S1:YES →S2→S3)。これにより、レーン位置画像3は、直近のレーン表示対象交差点AX1〜3のレーン構造を表すように随時更新されていく(図2(f)→(e)→(d)→(c))。
【0061】
その後、ナビゲーション装置8は、現在位置から右左折予定交差点BXまでの距離が所定距離(2:例では300m程度)以下となると(T4:YES)、ルート方向画像2の拡大表示命令をHUD表示装置7に送信する(T5)。
【0062】
他方、HUD表示装置7は、拡大表示命令を受信すると(S3:YES)、上述したように、レーン位置画像3の表示を省略し、拡大されたルート方向画像2Aを表示する(S4;図2(b),図4)。
【0063】
以上の処理が終了すると、ナビゲーション装置8及びHUD表示装置7は、最初に戻る(→T1,S1)。そして、車両が次の右左折予定交差点BXに所定距離(1:例では700m程度)まで接近すると(T1:YES)、再び同様の処理を行う。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの形式に限定されるものではなく、これらに具現された発明と同一性の範囲内において適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用情報表示装置が組込まれた車両のコックピット図
【図2】車両の現在位置に対応したルート方向画像及びレーン位置画像の表示例を示す図
【図3】ルート方向画像及びレーン位置画像の表示例を表す図
【図4】右左折時のルート方向画像の表示例を示す図
【図5】本発明の車両用情報表示装置の電気ブロック図
【図6】本発明の車両用情報表示装置の機能ブロック図
【図7】HUD表示器の説明図
【図8】本発明の車両用情報表示装置が行う処理を表すフローチャート
【符号の説明】
【0066】
1 車両用情報表示装置
2 ルート方向画像
3 レーン位置画像
4 HDD装置(記憶手段)
4D 地図データ
5 位置検出器(位置検出手段)
6 HUD表示器
62 液晶パネル
63 バックライト
7 HUD表示装置
70 HUDECU(表示制御手段)
8 ナビゲーション装置
80 ナビゲーションECU(ルート設定手段,推奨走行レーン決定手段)
WS ウインドシールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを記憶している記憶手段と、
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
目的地までの推奨ルートを設定するルート設定手段と、
前記推奨ルートにおいて右左折のいずれかが予定されている右左折予定分岐点での予定されている右左折方向に基づいて、該右左折予定分岐点と現在位置との間のルートにおける複数の走行レーンから走行を推奨する推奨走行レーンを決定する推奨走行レーン決定手段と、
前記右左折予定分岐点と現在位置との間に走行レーンを表示可能なレーン表示対象分岐点が存在する場合に、該レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンの中での前記推奨走行レーンの位置を示すレーン位置画像と、前記右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示すルート方向画像と、を隣接配置して車両のウインドシールドに表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用情報表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記レーン位置画像を、前記レーン表示対象分岐点における複数の走行レーンに各々対応する走行指定方向を示す矢印画像が左右に配列したものとして表示し、前記推奨走行レーンに該当する矢印画像を残余の矢印画像よりも強調して表示するとともに、前記ルート方向画像を、前記右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示す矢印画像が前記レーン位置画像の矢印画像とは異なる形態で表わされたものとして表示する請求項1に記載の車両用情報表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記レーン位置画像の走行方向前方に対応する側に前記ルート方向画像を隣接配置して表示する請求項1または2に記載の車両用情報表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記レーン位置画像を下段に、前記ルート方向画像を上段に隣接配置して、前記ウインドシールドの下部領域に表示する請求項3に記載の車両用情報表示装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記ルート方向画像を、前記右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示す矢印画像とともに該右左折予定分岐点までの距離を示す画像を含むものとして表示する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用情報表示装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記右左折予定分岐点と現在位置との間に前記レーン表示対象分岐点が存在しない場合に、前記右左折予定分岐点における複数の走行レーンの中での前記推奨走行レーンの位置を示す右左折レーン位置画像と、前記ルート方向画像と、を隣接配置して車両のウインドシールドに表示する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用情報表示装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記右左折予定分岐点と現在位置との間の距離が一定以下となった場合に、前記右左折レーン位置画像の表示を省略し、前記ルート方向画像を拡大して表示する請求項6に記載の車両用情報表示装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記右左折予定分岐点と現在位置との間の距離が一定以下に縮まった場合に表示する前記ルート方向画像を、前記右左折予定分岐点の分岐構造を表す模式画像に該右左折予定分岐点にて予定されている右左折方向を示す矢印画像を重ね合わせたものとして表示する請求項7に記載の車両用情報表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−121031(P2007−121031A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311562(P2005−311562)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】