説明

車両用発電装置

【課題】簡素な構成により、ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更することができる車両用発電装置を提供する。
【解決手段】ブレード26をシャフト36によりハブ24に、ブレード26の車両進行方向に対する迎え角αを変更可能に支持する。シャフト36には磁石40を固定し、磁石40をバネ44により反ナセル22側へ付勢する。ナセル22には、磁石32を磁石40に対して接離可能に配設し、該磁石32をバネ34により反ハブ24側へ付勢する。また、磁石32とブレーキペダル48とをワイヤー46により連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の制動時に、走行体に配設された風車により発電しつつ制動力を得るエアブレーキが知られている(例えば、特許文献1参照)。このエアブレーキでは、風車のブレードの車両進行方向に対する迎え角が可変とされており、非制動時には、ブレードを車両進行方向に対して平行にすることにより、空気抵抗の増大を防いでいる。
【特許文献1】特開平6−312651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更する機構として、油圧ポンプを駆動するためのモータが必要となる油圧回路を用いているため、コストが高くなるという問題がある。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、簡素な構成により、ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更することができる車両用発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両用発電装置は、車両進行方向に沿って延設された第1回転軸と、前記第1回転軸の回転により発電される発電機と、前記第1回転軸に結合されたハブと、前記ハブから前記第1回転軸の径方向外側に延設されたブレードと、前記ブレードから前記第1回軸の径方向内側に延設され、前記ブレードを前記ハブに前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更可能に支持する第2回転軸と、前記第2回転軸により前記ハブに前記ブレードと共に回転可能に支持され、前記第2回転軸に対してオフセットする方向へ延設された第1磁性体と、前記第1磁性体の前記第2回転軸に対してオフセットされた部位と車両進行方向視にて重合する位置に、前記第1磁性体に対して接離可能に配設され、前記第1磁性体に対して接近して前記第1磁性体を磁気吸引することにより、前記第1磁性体を、前記ブレードが車両進行方向に対して迎え角をもつ第1回転位置まで回転させる第2磁性体と、前記第1磁性体を、前記第2磁性体の反対側へ付勢することにより、前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角が前記第1回転位置よりも小さい第2回転位置へ回転させる第1付勢部材と、前記第2磁性体を前記第1磁性体から離間する方向に付勢する第2付勢部材と、車両に配設された操作部又は前記操作部に連動する連動部と前記第2磁性体とに両端を結合され、前記操作部又は前記連動部により作動されて前記第2磁性体を前記第1磁性体に対して接近させるワイヤーと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の車両用発電装置では、第1回転軸が車両進行方向に沿って延設され、ハブが第1回転軸に結合され、ブレードがハブから第1回転軸の径方向外側に延設されており、車両走行時に走行風によりブレードに揚力が発生した場合、ブレード、ハブ、及び第1回転軸が車両進行方向回りに回転し、第1回転軸の回転により発電機が発電される。
【0007】
ブレードは、回転軸の径方向内側に延設された第2回転軸によりハブに支持され、該第2回転軸により車両進行方向に対する迎え角を変更可能とされている。また、第1磁性体が、第2回転軸によりハブにブレードと共に回転可能に支持されている。第1磁性体は、第2回転軸からオフセットする方向へ延設されており、第2磁性体が、第1磁性体の第2回転軸に対してオフセットされた部位と車両進行方向視にて重合する位置に、第1磁性体に対して接離可能に配設されている。
【0008】
第2磁性体は、第2付勢部材により第1磁性体から離間する方向に付勢されており、ワイヤーにより、操作部又は操作部に連動する連動部に結合されている。また、第1磁性体は、第1付勢部材により第2磁性体の反対側へ付勢されている。
【0009】
操作部の操作時には、ワイヤーが、操作部又は連動部により作動され、第2磁性体を第2付勢部材の付勢力に抗して第1磁性体に対して接近させる。これにより、第1磁性体が、第2磁性体から磁気吸引されることにより、第1付勢部材の付勢力に抗して第1回転位置へ回転され、よって、ブレードが車両進行方向に対して迎え角をもつようになる。
【0010】
また、操作部の操作解除後は、第2磁性体が第2付勢部材の付勢力により第1磁性体から離間する方向に移動し、第2磁性体による第1磁性体の磁気吸引が解除される。そして、第1磁性体は、第1付勢部材の付勢力により第2回転位置へ回転され、よって、ブレードの車両進行方向に対する迎え角が減少する。
【0011】
即ち、操作部の操作時には、ブレードの車両進行方向に対する迎え角が増加され、操作部の非操作時には、ブレードの車両進行方向に対する迎え角が、操作時よりも小さくされる。よって、操作部の操作時には、走行風によりブレードに生じる揚力が増大されてブレードの回転力が増大されるため、発電機の発電量が増大すると共に、車両の制動力が向上し、一方、操作部の非操作時には、走行風によりブレードに生じる抗力が減少して車両の空気抵抗が減少する。
【0012】
ここで、本発明では、ワイヤー、磁性体、付勢部材によりブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更できるので、油圧ポンプを駆動するためのモータが必要である油圧回路を用いていた従来と比して、ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更する機構を簡素化でき、コストを低減できる。
【0013】
請求項2に記載の車両用発電装置は、請求項1に記載の車両用発電装置であって、前記操作部は、ブレーキペダルであることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の車両用発電装置では、ブレーキペダルの操作時には、ブレードの車両進行方向に対する迎え角が増加され、ブレーキペダルの非操作時には、ブレードの車両進行方向に対する迎え角が操作時よりも小さくなる。
【0015】
よって、車両制動時には、走行風によりブレードに生じる揚力が増大されてブレードの回転力が増大されるため、発電機の発電量が増大すると共に、車両の制動力が向上し、一方で、車両非制動時には、走行風によりブレードに生じる抗力が減少して車両の空気抵抗が減少する。
【0016】
請求項3に記載の車両用発電装置は、車幅方向両側に車両進行方向に沿って延設された左右一対の回転軸と、前記第1回転軸の回転により発電される左右一対の発電機と、前記第1回転軸に結合された左右一対のハブと、前記ハブから前記第1回転軸の径方向外側に延設された左右一対のブレードと、前記ブレードから前記第1回軸の径方向内側に延設され、前記ブレードを前記ハブに前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更可能に支持する左右一対の第2回転軸と、前記第2回転軸により前記ハブに前記ブレードと共に回転可能に支持され、前記第2回転軸に対してオフセットする方向へ延設された左右一対の第1磁性体と、前記第1磁性体の前記第2回転軸に対してオフセットされた部位と車両進行方向視にて重合する位置に、前記第1磁性体に対して接離可能に配設され、前記第1磁性体に対して接近して前記第1磁性体を磁気吸引することにより、前記第1磁性体を、前記ブレードが車両進行方向に対して迎え角をもつ第1回転位置まで回転させる左右一対の第2磁性体と、前記第1磁性体を、前記第2磁性体の反対側へ付勢することにより、前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角が前記第1回転位置よりも小さい第2回転位置へ回転させる左右一対の第1付勢部材と、前記第2磁性体を前記第1磁性体から離間する方向に付勢する左右一対の第2付勢部材と、車両に配設された操舵部と左側の前記第2磁性体とに両端を結合され、車両の左操舵時に、左側の前記第2磁性体を左側の前記第1磁性体に対して接近させる左側ワイヤーと、前記操舵部と右側の前記第2磁性体とに両端を結合され、車両の右操舵時に、右側の前記第2磁性体を右側の前記第1磁性体に対して接近させる右側ワイヤーと、を有することを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の車両用発電装置では、左右一対の第1回転軸が車幅方向両側に車両進行方向に沿って延設され、左右各々の第1回転軸にはハブが結合され、左右各々のハブからブレードが第1回転軸の径方向外側に延設されており、車両走行時に走行風により左右各々のブレードに揚力が発生した場合、左右各々の第1回転軸が回転することにより左右各々の発電機が発電される。
【0018】
ここで、車両左側では、第2磁性体が、左側ワイヤーにより操舵部に連結されており、左操舵時に、左側ワイヤーが、操舵部により作動され、第2磁性体を第2付勢部材の付勢力に抗して第1磁性体に対して接近させる。これにより、車両左側において、第1磁性体が、第2磁性体から磁気吸引されることにより、第1付勢部材の付勢力に抗して第1回転位置へ回転され、よって、ブレードが車両進行方向に対して迎え角をもつようになる。
【0019】
左操舵解除後は、車両左側において、第2磁性体が第2付勢部材の付勢力により第1磁性体から離間する方向に移動し、第2磁性体による第1磁性体の磁気吸引が解除される。そして、第1磁性体は、第1付勢部材の付勢力により第2回転位置へ回転され、よって、ブレードの車両進行方向に対する迎え角が減少する。
【0020】
また、車両右側では、第2磁性体が、右側ワイヤーにより操舵部に連結されており、右操舵時には、右側ワイヤーが、操舵部により作動され、左操舵時の車両左側と同様の作用が得られる。また、右操舵解除後は、車両右側において、右操舵解除後の車両右側と同様の作用が得られる。
【0021】
即ち、左操舵時には、左側のブレードの車両進行方向に対する迎え角が増加され、右側のブレードの車両進行方向に対する迎え角が、左側のブレードのそれよりも小さくされる。また、右操舵時には、右側のブレードの車両進行方向に対する迎え角が増加され、左側のブレードの車両進行方向に対する迎え角が、右側のブレードのそれよりも小さくされる。
【0022】
よって、左操舵時には、左側のブレードの抗力が右側のそれよりも大きくなることにより空気抵抗が車両左側に偏り、右操舵時には、右側のブレードの抗力が左側のそれよりも大きくなることにより空気抵抗が車両右側に偏る。よって、左操舵時及び右操舵時の操舵性(旋回性能)を向上できる。
【0023】
請求項4に記載の車両用発電装置は、請求項1又は請求項3に記載の車両用発電装置であって、前記ブレードは、前記第1付勢部材が前記第2回転位置に位置する場合に、車両進行方向に対して略平行となることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の車両用発電装置では、操作部の非操作時又は非操舵時に、ブレードが車両進行方向に対して略平行となる。よって、操作部の非操作時又は非操舵時に、走行風によりブレードに生じる抗力をより一層低減でき、車両の空気抵抗をより一層低減できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、簡素な構成により、ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更することができる車両用発電装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1乃至図9を用いて、本発明に係る車両用発電装置の一実施形態について説明する。なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0027】
図1には、本発明の車両用発電装置の第1実施形態に係る風力発電装置10を備える車両12が正面図にて示されている。この図に示すように、車両12のルーフ部14の車幅方向中央部には、風力発電装置10の主要構成要素である風車16が配設されている。
【0028】
また、図2及び図3には、風力発電装置10の概略構成が側断面図にて示されている。これらの図に示すように、風力発電装置10は、上記風車16と発電機18とを備えている。風車16は、車両進行方向(車両前後方向)に沿って延設された第1回転軸としての回転軸20と、回転軸20を回転自在に支持するナセル22と、回転軸20の前端部に固定されたハブ24と、回転軸20回りに所定間隔(例えば、図1に示すように120°)で配設され、各々、ハブ24から回転軸20の径方向(以下、回転半径方向という)の外側へ延設された複数枚(例えば、図1に示すように3枚)のブレード26と、を備えている。
【0029】
回転軸20の後端部には発電機18が連結されており、回転軸20の回転により発電機18が発電される。発電機18により発生した電力は、車両12に搭載されたバッテリー19に蓄えられる。
【0030】
また、ナセル22は、車両進行方向を軸方向とする円筒状のシリンダ部28を備えている。このシリンダ部28の後端部には蓋部28Aが設けられ、シリンダ部28の前端部は開口部28Bとされている。蓋部28Aの軸芯部には、軸受30が固定されており、この軸受30により回転軸20が回転自在に支持されている。
【0031】
また、シリンダ部28内には、第2磁性体としてのドーナツ状の磁石32が、車両進行方向に沿って摺動可能に配設されている。磁石32の回転半径方向中央部には、回転軸20を挿通可能な円孔32Aが形成されている。また、磁石32と蓋部28Aとの間には、上下一対の第2付勢部材としてのバネ(引張りコイルバネ)34が配設されている。このバネ34の一端及び他端はそれぞれ、蓋部28A、及び、磁石32の蓋部28Aとの対向面に固定されており、バネ34により蓋部28A側に付勢されている。
【0032】
ここで、磁石32は、自然長状態のバネ34により、シリンダ部28の軸方向中央部(第1スライド位置)に保持される。
【0033】
また、図4及び図5には、ハブ24及びブレード26を車両前方から見た縦断面図が示されている。これらの図に示すように、ハブ24は、車両進行方向を軸方向とする有底円筒状部材とされており、車両後側の蓋部24Aの回転半径方向中央部に回転軸20の前端部が結合されている。
【0034】
また、ハブ24の円周部24Bには、複数(例えば、図示するように3個)の開口部24Cが、回転軸20の回転方向(以下、単に回転方向という)に所定間隔(例えば、図示するように120°間隔)で形成されており、ブレード26の基端側は、開口部24Cからハブ24内に挿入されている。
【0035】
ここで、ブレード26の基端部には、回転半径方向に沿って延在する第2回転軸としてのシャフト36の軸方向一端側が結合され、ハブ24の蓋部24Aには、シャフト36の軸方向両端部を回転自在に支持する一対の支持板38が立設されており、ブレード26は、ハブ24に回転半径方向回りに回動可能に支持されている。
【0036】
即ち、図3に示すように、ブレード26の車両進行方向に対する迎え角(車幅方向視における翼面26Aの車両進行方向に対する角度)αが可変とされている。
【0037】
また、図2乃至図5に示すように、シャフト36には、第1磁性体としての磁石40が固定されている。磁石40は、車幅方向視にて台形状に構成されており、一対の支持板38の間において、長手方向の一端側をシャフト36に固定されている。
【0038】
即ち、磁石40は、シャフト36からオフセットされる方向(シャフト36の径方向)へ延設されており、シャフト36回りに回動可能にハブ24に支持されている。
【0039】
また、ハブ24の蓋部24Aには、各磁石40の長手方向他端側の部位(シャフト36からオフセットされた部位)であるオフセット部40Aと車両方向視にて重合する矩形状の複数(例えば、図示するように3個)の孔42が形成されており、磁石40のオフセット部40Aと、ナセル22内に配設された磁石32とが、孔42を挟んで車両進行方向に対向している。
【0040】
また、図2及び図3に示すように、ハブ24の車両前側の蓋部24Cとオフセット部40Aとの間には、第1付勢部材としてのバネ(引張りコイルバネ)44が配設されている。バネ44の一端及び他端はそれぞれ、蓋部24C、及び、オフセット部40Aの蓋部24C側に固定されており、オフセット部40Aは、バネ44により蓋部24C側に付勢されている。
【0041】
また、オフセット部40Aの反バネ44側には、長手方向他端側へかけてバネ44側に傾斜したテーパ面40Bが形成されている。
【0042】
また、磁石40は、自然長状態のバネ44により、回転半径方向と略平行になる第2回転位置に保持される。磁石40が該第2回転位置に保持された状態では、テーパ面40Bが、回転半径方向外側にかけて反磁石32側へ傾斜することにより、オフセット部40Aと磁石32との間の磁力が減少されている。なお、オフセット部40Aと磁石32との互いに対向する面を略平行にすることが好ましい。この場合、オフセット部40Aと磁石32との間における磁力の均一性が高くなり、オフセット部40Aと磁石32との間の磁力の設定が容易になる。
【0043】
図2に実線で図3に2点鎖線で示すように、磁石32が自然長状態のバネ34により第1スライド位置に保持された状態では、磁石40が第2回転位置において停止する。このような状態は、第1スライド位置に配置された磁石32と、第2回転位置に配置された磁石40との間隔を、磁石32と磁石40との間に磁力が発生しない程度に広く設定するか、もしくは、バネ44の弾性定数を、磁石32と磁石40との間に発生する磁力によりバネ44が伸長されない程度に設定するかによって得ることができる。
【0044】
ここで、磁石40が第2回転位置に保持された状態では、ブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが略0°となり、ブレード26が車両進行方向に対して略平行となる(図4も参照)。
【0045】
また、磁石32のハブ24側(反バネ34側)には、ワイヤー46の一端が固定され、操作部としてのブレーキペダル48には、ワイヤー46の他端が固定されている。ワイヤー46は、複数のプーリ等の張架機構(図示省略)により張架されており、ブレーキペダル48が操作されて車両前方側に回動した場合に、ワイヤー46の一端がハブ24側へ移動される。
【0046】
図3に示すように、ブレーキペダル48の操作時には、ワイヤー46の一端がシリンダ部28の開口部28Bまで移動することにより、磁石32は、バネ34の付勢力に抗して(バネ34を弾性的に伸長させて)シリンダ部28の前端部(第2スライド位置)まで移動する。
【0047】
磁石32が第2スライド位置まで移動した場合には、磁石40は、磁石32との間の磁力によりバネ44の付勢力に抗して(バネ44を弾性的に伸長させて)車両後方側へ回動する。この場合、図3に実線で示すように、磁石32は、バネ44により、長手方向他端側にかけて車両後方側へ傾斜する第1回転位置に保持される。なお、磁石32を第1回転位置で停止させるストッパを設けてもよい。
【0048】
ここで、磁石40が第1回転位置に保持された状態では、ブレード26が車両進行方向に対して傾斜する(迎え角αがα≠0となる)(図5も参照)。
【0049】
次に、本実施形態における作用及び効果について説明する。
【0050】
図2に実線で示し、図3に2点鎖線で示すように、非制動時、即ち、ブレーキペダル48の非操作時には、ワイヤー46が牽引されないため、ナセル22内の磁石32が、バネ34により第1スライド位置に保持される。これにより、ナセル22内の磁石32とハブ24内の磁石40のオフセット部40Aとの間隔が、磁石32とオフセット部40Aとの間に磁力が発生しない程度に、もしくは、磁石32とオフセット部40Aとの間の磁力によりバネ44が伸長されない程度に維持される。よって、磁石40が、バネ44により第2回転位置に保持され、ブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが0になり、ブレード26が車両進行方向に対して略平行となる(図4も参照)。
【0051】
これにより、車両走行中に、走行風の風力がブレード26の翼面26Aに作用せず、ブレード26に揚力が発生しないため、ブレード26に回転力が生じず、ブレード26の回転によって生じる抗力が発生しない。よって、非制動時の風車16の空気抵抗を低減でき、車両12の加速性能の低下、燃費の悪化を抑制できる。
【0052】
また、図3に実線で示すように、制動時、即ち、ブレーキペダル48の操作時には、ワイヤー46が、ブレーキペダル48に連動し、ナセル22内の磁石32をハブ24側の第2スライド位置までバネ34の付勢力に抗して移動させる。これにより、磁石32とオフセット部40Aとの間隔が狭まることにより、磁石40は、磁石32との間の磁力によりバネ44の付勢力に抗して車両後方側へ回動し、バネ44により第1回転位置に保持される。よって、ブレード26が車両進行方向に対して傾斜する(迎え角αがα≠0となる)(図5も参照)。
【0053】
これにより、車両走行中に、走行風の風力がブレード26の翼面26Aに作用し、ブレード26に揚力が発生するため、ブレード26に回転力が生じる。よって、制動時には、回転軸20を回転させて発電機18に発電を行わせ、バッテリー19に蓄電させることができる。また、制動時には、ブレード26の回転により抗力が発生し、この抗力が車両12に対する制動力となるため、車両12の制動力が向上される。
【0054】
また、ブレーキペダル48の操作が解除された場合には、磁石32がバネ34の付勢力により第1スライド位置に移動され、磁石32と磁石40との間の磁力が0になり、又は弱くなることにより、磁石40がバネ44の付勢力により第2回転位置に回動される。これにより、ブレード26が車両進行方向に対して略平行である元の位置に復帰する。
【0055】
ここで、本実施形態では、ワイヤー46、磁石32、40、バネ34、44によりブレード26の車両進行方向に対する迎え角αを変更できるので、油圧ポンプを駆動するためのモータが必要である油圧回路を用いていた従来と比して、ブレード26の車両進行方向に対する迎え角αを変更する機構を簡素化でき、コストを低減できる。
【0056】
なお、本実施形態では、操作部をブレーキペダル48とし、制動時にブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが変更される構成を例に採って本発明を説明したが、例えば、専用の操作部を設け、必要に応じてこの操作部が操作された際に、ブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが変更される構成等も適用可能である。
【0057】
また、本実施形態では、磁石40が第2回転位置に位置する場合に、ブレード26が車両進行方向に対して略平行となる構成を例に採って本発明を説明したが、磁石40が第1回転位置から第2回転位置に回転する際に、ブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが減少すればよく、磁石40が第2回転位置に位置する場合に、ブレード26が車両進行方向に対して傾斜していてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、ブレーキペダル48にワイヤー46の他端を固定し、ブレーキペダル48によりワイヤー46が作動される構成を例に採って本発明を説明したが、ブレーキペダル48に連動するプッシュ・ロッド等の連動部にワイヤー46の他端を固定し、該連動部によりワイヤー46が作動される構成等も適用可能である。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態に係る車両風力発電装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0060】
図6には、本発明の車両用発電装置の第2実施形態に係る風力発電装置100を備える車両12が正面図にて示されている。この図に示すように、車両12のルーフ部14の車幅方向両側部には、風力発電装置100の主要構成要素である左右一対の風車16が配設されている。
【0061】
また、図7及び図8には、風力発電装置100の概略構成が車両上下方向から見た断面図にて示されている。これらの図に示すように、左右一対の風車16の車両前方側には、前輪50を操舵する操舵部としてのステアリング機構52が配設されている。
【0062】
ステアリング機構52の車両左側に配設されたナックルアーム等の可動部54には、左側ワイヤーとしてのワイヤー56の一端が結合され、該ワイヤー56の他端が、左側に配設された風車16の磁石32のハブ24側に結合されている。
【0063】
また、ステアリング機構52の車両右側に配設されたナックルアーム等の可動部58には、右側ワイヤーとしてのワイヤー60の一端が結合され、該ワイヤー60の他端が、右側に配設された風車16の磁石32のハブ24側に結合されている。
【0064】
ここで、ワイヤー56、60は、複数のプーリ等の張架機構(図示省略)により張架されており、ワイヤー56の他端が、左操舵時の可動部54の動きに連動してハブ24側へ移動され、また、ワイヤー60の他端が、右操舵時の可動部58の動きに連動してハブ24側へ移動されるように構成されている。また、ワイヤー56は、右操舵時の可動部54の動きに連動することがなく、ワイヤー60は、左操舵時の可動部58の動きに連動することがないように構成されている。
【0065】
また、ワイヤー56は、左操舵時に他端がシリンダ部28の開口部28Bまで移動するように設定されており、これにより、左側の磁石32は、左操舵時にバネ34の付勢力に抗して第2スライド位置まで移動する。また、ワイヤー60は、右操舵時に他端がシリンダ部28の開口部28Bまで移動するように設定されており、これにより、右側の磁石32は、右操舵時にバネ34の付勢力に抗して第2スライド位置まで移動する。
【0066】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0067】
図7に示すように、車両直進時、即ち、非操舵時には、ワイヤー56、60が牽引されないため、左右のナセル22内の磁石32が、バネ34により第1スライド位置に保持される。これにより、左右のハブ24内の磁石40が、バネ44により第2回転位置に保持され、左右のブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが0になり、左右のブレード26が車両進行方向に対して略平行となる。
【0068】
これにより、車両直進時には、走行風の風力が、左右のブレード26の翼面26Aに作用せず、左右のブレード26に揚力が発生しないため、左右のブレード26に回転力が生じず、左右のブレード26の回転によって生じる抗力が発生しない。よって、車両直進時の風車16の空気抵抗を低減でき、車両12の加速性能の低下、燃費の悪化を抑制できる。
【0069】
また、図8に示すように、左操舵時には、ワイヤー56の他端が、左側の可動部54の動きに連動してハブ24側へ移動し、左側のナセル22内の磁石32がバネ34の付勢力に抗して第2スライド位置へ移動する。これにより、左側のハブ24内の磁石40がバネ44の付勢力に抗して第1回転位置に回動し、左側のブレード26が車両進行方向に対して傾斜する。
【0070】
また、左操舵時には、右側のワイヤー60が、右側の可動部58の動きに連動しないため、右側のハブ24内の磁石40が、バネ44により第2回転位置に保持され、右側のブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが0になり、右側のブレード26が車両進行方向に対して略平行となる。
【0071】
これにより、左操舵時には、走行風の風力が左側のブレード26の翼面26Aに作用し、左側のブレード26に揚力が発生するため、左側のブレード26に回転力が生じる。よって、左操舵時には、左側の回転軸20を回転させて左側の発電機18(図2及び図3参照)に発電を行わせ、バッテリー19(図2及び図3参照)に蓄電させることができる。
【0072】
また、左操舵時、左側(操舵方向内側)の風車16では、ブレード26の回転により抗力が発生し、右側(操舵方向外側)の風車16では、ブレード26が非回転であることにより抗力が発生しない。よって、左操舵時には、車両12の空気抵抗が左側に偏るため、車両12の操舵性が向上する。
【0073】
また、図9に示すように、右操舵時には、ワイヤー60の他端が、右側の可動部58の動きに連動してハブ24側へ移動し、右側のナセル22内の磁石32がバネ34の付勢力に抗して第2スライド位置へ移動する。これにより、右側のハブ24内の磁石40がバネ44の付勢力に抗して第1回転位置に回動し、右側のブレード26が車両進行方向に対して傾斜する。
【0074】
また、右操舵時には、左側のワイヤー56が、左側の可動部54の動きに連動しないため、左側のハブ24内の磁石40が、バネ44により第2回転位置に保持され、左側のブレード26の車両進行方向に対する迎え角αが0になり、左側のブレード26が車両進行方向に対して略平行となる。
【0075】
これにより、右操舵時には、走行風の風力が右側のブレード26の翼面26Aに作用し、右側のブレード26に揚力が発生するため、右側のブレード26に回転力が生じる。よって、右操舵時には、右側の回転軸20を回転させて右側の発電機18(図2及び図3参照)に発電を行わせ、バッテリー19(図2及び図3参照)に蓄電させることができる。
【0076】
また、右操舵時、右側(操舵方向内側)の風車16では、ブレード26の回転により抗力が発生し、左側(操舵方向外側)の風車16では、ブレード26が非回転であることにより抗力が発生しない。よって、右操舵時には、車両12の空気抵抗が右側に偏るため、車両12の操舵性が向上する。
【0077】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1実施形態に係る風力発電装置を備える車両を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示す側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示す側断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る風力発電装置が備えるハブ及びブレードを示す正面断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る風力発電装置が備えるハブ及びブレードを示す正面断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る風力発電装置を備える車両を示す正面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示す平面断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示す平面断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0079】
10 風力発電装置(車両用発電装置)
12 車両
18 発電機
20 回転軸(第1回転軸)
24 ハブ
26 ブレード
26A 翼面
32 磁石(第2磁性体)
34 バネ(第2付勢部材)
36 回転軸(第2回転軸)
40 磁石(第1磁性体)
44 バネ(第1付勢部材)
46 ワイヤー
52 操舵部
56 ワイヤー(左側ワイヤー)
58 ワイヤー(右側ワイヤー)
100 風力発電装置(車両用発電装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両進行方向に沿って延設された第1回転軸と、
前記第1回転軸の回転により発電される発電機と、
前記第1回転軸に結合されたハブと、
前記ハブから前記第1回転軸の径方向外側に延設されたブレードと、
前記ブレードから前記第1回軸の径方向内側に延設され、前記ブレードを前記ハブに前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更可能に支持する第2回転軸と、
前記第2回転軸により前記ハブに前記ブレードと共に回転可能に支持され、前記第2回転軸に対してオフセットする方向へ延設された第1磁性体と、
前記第1磁性体の前記第2回転軸に対してオフセットされた部位と車両進行方向視にて重合する位置に、前記第1磁性体に対して接離可能に配設され、前記第1磁性体に対して接近して前記第1磁性体を磁気吸引することにより、前記第1磁性体を、前記ブレードが車両進行方向に対して迎え角をもつ第1回転位置まで回転させる第2磁性体と、
前記第1磁性体を、前記第2磁性体の反対側へ付勢することにより、前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角が前記第1回転位置よりも小さい第2回転位置へ回転させる第1付勢部材と、
前記第2磁性体を前記第1磁性体から離間する方向に付勢する第2付勢部材と、
車両に配設された操作部又は前記操作部に連動する連動部と前記第2磁性体とに両端を結合され、前記操作部又は前記連動部により作動されて前記第2磁性体を前記第1磁性体に対して接近させるワイヤーと、
を有することを特徴とする車両用発電装置。
【請求項2】
前記操作部は、ブレーキペダルであることを特徴とする請求項1に記載の車両用発電装置。
【請求項3】
車幅方向両側に車両進行方向に沿って延設された左右一対の回転軸と、
前記第1回転軸の回転により発電される左右一対の発電機と、
前記第1回転軸に結合された左右一対のハブと、
前記ハブから前記第1回転軸の径方向外側に延設された左右一対のブレードと、
前記ブレードから前記第1回軸の径方向内側に延設され、前記ブレードを前記ハブに前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角を変更可能に支持する左右一対の第2回転軸と、
前記第2回転軸により前記ハブに前記ブレードと共に回転可能に支持され、前記第2回転軸に対してオフセットする方向へ延設された左右一対の第1磁性体と、
前記第1磁性体の前記第2回転軸に対してオフセットされた部位と車両進行方向視にて重合する位置に、前記第1磁性体に対して接離可能に配設され、前記第1磁性体に対して接近して前記第1磁性体を磁気吸引することにより、前記第1磁性体を、前記ブレードが車両進行方向に対して迎え角をもつ第1回転位置まで回転させる左右一対の第2磁性体と、
前記第1磁性体を、前記第2磁性体の反対側へ付勢することにより、前記ブレードの車両進行方向に対する迎え角が前記第1回転位置よりも小さい第2回転位置へ回転させる左右一対の第1付勢部材と、
前記第2磁性体を前記第1磁性体から離間する方向に付勢する左右一対の第2付勢部材と、
車両に配設された操舵部と左側の前記第2磁性体とに両端を結合され、車両の左操舵時に、左側の前記第2磁性体を左側の前記第1磁性体に対して接近させる左側ワイヤーと、
前記操舵部と右側の前記第2磁性体とに両端を結合され、車両の右操舵時に、右側の前記第2磁性体を右側の前記第1磁性体に対して接近させる右側ワイヤーと、
を有することを特徴とする車両用発電装置。
【請求項4】
前記ブレードは、前記第1付勢部材が前記第2回転位置に位置する場合に、車両進行方向に対して略平行となることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−223649(P2008−223649A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64436(P2007−64436)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】