説明

車両用運転支援システム

【課題】見通しの悪い交差点に進入する他車を早期に確認でき、安全性が向上する運転支援システムを実現する。
【解決手段】自車の情報を送信すると共に、他車から情報を取得する車車間通信装置と、前記車車間通信手段により取得した他車情報を提供する情報提供手段65と、を有する車両用運転支援システムであって、自車が進入する進入交差点を特定する交差点特定手段61と、特定された前記進入交差点に進入し前記自車と交差するため前記自車と衝突する可能性のある他車を特定する他車特定手段62と、特定された前記進入交差点の道路情報を算出する交差点情報算出手段63と、前記道路情報に基づいて、前記情報提供手段による前記他車情報の情報提供タイミングを変更する情報提供タイミング制御手段64と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車の情報と車車間通信により他車から取得した情報とを用いて情報提供を行う運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車の予想到達点を中心に自車の車速に基づいて予想円を求め、同様にして他車の予想円を求め、これら予想円の重なりから自車と他車の衝突割合を算出してドライバに報知する周辺車両情報提供装置が記載されている。
【0003】
また、車車間通信により取得した他車情報により、交差点での出会い頭事故や右折事故等を防止する運転支援システムも知られている。この運転支援システムは、図8(b)に示すように、自車Aの方位角θaに対する他車Bの方位角θbに基づいて、自車Aが進入する交差点ISにおける自車Aの走行路Raと他車Bの走行路Rbとの交差角度を算出することにより、自車が進入する交差点ISに対して他車Bがどの方向から進入してくるかを予測し、ドライバに情報提供(警報)を行うものである。
【特許文献1】特開2004−145479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の運転支援システムにおいては、例えば、交差点に進入する自車と他車の各走行路の交差角度が鋭角で見通しの悪い交差点である場合、他車の確認が難しいため、安全性が確保できないという課題がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、見通しの悪い交差点に進入する他車を早期に確認でき、安全性が向上する運転支援システムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、自車の情報を送信すると共に、他車から情報を取得する車車間通信手段と、前記車車間通信手段により取得した他車情報を提供する情報提供手段と、を有する車両用運転支援システムであって、自車が進入する進入交差点を特定する交差点特定手段と、特定された前記進入交差点に進入し前記自車と交差するため前記自車と衝突する可能性のある他車を特定する他車特定手段と、特定された前記進入交差点の道路情報を算出する交差点情報算出手段と、前記道路情報に基づいて、前記情報提供手段による前記他車情報の情報提供タイミングを変更する情報提供タイミング制御手段と、を有する。
【0007】
この第1の形態によれば、見通しの悪い交差点に進入する他車を早期に確認でき、安全性を向上することができる。
【0008】
また、第2の形態では、前記道路情報は、前記進入交差点における前記自車の走行路と前記他車の走行路の道路接続角度であり、前記情報提供タイミング制御手段は、前記道路接続角度が鋭角である場合、前記情報提供手段による前記他車の情報提供タイミングを早期化する。この形態によれば、自車と他車の道路接続角度が鋭角の見通しの悪い交差点に進入する他車を早期に確認でき、安全性を向上することができる。
【0009】
また、第3の形態では、前記道路接続角度は、ナビゲーション装置から得られる前記自車の速度及び進行方向の情報から求められる。この形態によれば、道路接続角度の演算処理を簡略化できる。
【0010】
また、第4の形態では、前記道路接続角度は、前記自車、前記他車及び前記進入交差点の各座標から求められる。この形態によれば、自車及び他車の進行方向と交差点進入角度との相違による道路接続角度の誤算出を防止することができる。
【0011】
また、第5の形態では、前記情報提供タイミング制御手段は、自車位置と、自車の進行方向と、前記進入交差点の位置と、他車の進行方向とを用いて、前記進入交差点に接続する他車の走行路がカーブ路か否かを判定し、カーブ路である場合、前記情報提供手段による前記情報提供タイミングを早期化する。この形態によれば、他車の走行路形状を正確に算出し、自車及び他車の進行方向と交差点進入角度との相違による誤算出を防止することができる。
【0012】
また、第6の形態では、前記情報提供タイミング制御手段は、前記自車が前記進入交差点を直進若しくは右折する場合、前記情報提供手段による前記情報提供タイミングを早期化する。この形態によれば、左折時に比べて交差点内にいる時間が長い場合に、交差点に進入する他車を早期に確認でき、交差点での出会い頭事故や右折事故等を防止することができる。
【0013】
また、第7の形態では、前記情報提供タイミング制御手段は、前記自車が前記進入交差点を直進若しくは右折する場合、前記情報提供手段による前記自車の左側から接近する他車情報の情報提供タイミングを早期化する。この形態によれば、交差点で左側から接近する車両との出会い頭事故や右折事故等を防止することができる。
【0014】
また、第8の形態では、前記車車間通信手段により前記他車のナビゲーション装置の経路誘導情報を取得し、前記経路誘導情報から前記他車の走行路を予測する。この形態によれば、自車の進入交差点直前で右折又は左折するような経路誘導情報を持つ他車を除外することができ、他車の特定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、見通しの悪い交差点に進入する他車を早期に確認でき、安全性が向上する運転支援システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0018】
[システム構成]
図1は、本発明に係る実施形態の運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図1において、車両に搭載される運転支援システム1は、同システムを搭載する1台又は複数台の他車(相手車両ともいう。)との間で各種情報を送受する車車間通信装置2と、カーナビゲーション装置3と、自車の走行状態に関する情報を出力する走行状態検出装置4と、これら装置2,3,4から取得した各情報に基づいて自車と自車の周囲に存在する他車との衝突可能性を予測し、衝突を回避するための情報を文字や画像、音声等により出力してドライバに情報提供(警報)する運転支援制御を行うECU5と、を備える。
【0020】
車車間通信装置2は送受信アンテナ21を備え、例えば自車位置の周囲数百mの範囲に存在する他車との間で無線通信により自車情報の配信及び他車情報を受信を行う。尚、他車との距離が数十m程度であれば、DSRC(狭域無線通信方式)等の路車間通信を利用してもよい。
【0021】
カーナビゲーション装置3はGPSアンテナ31及びGPS受信機32を備え、例えば自車の位置情報(緯度、経度、方位等に関する情報)をECU5に出力する。また、カーナビゲーション装置3は地図情報等の画像を表示するディスプレイ33及び経路誘導等で音声メッセージ等を発するスピーカ34を備え、上記ECU5は、これらディスプレイ33及びスピーカ34を利用して、他車位置や他車との衝突を回避するための情報を画像や音声等でドライバに情報提供(警報)を行う。
【0022】
更に、カーナビゲーション装置3は、地図データベース(以下、地図DB)35を備え、ECU5は、この地図DB35から、例えばマップマッチング後の自車の位置座標、前方交差点座標(列)、各交差点までの距離、各交差点の信号機の有無、各交差点での分岐路の交差角度(道路接続角度)、各分岐路の道路情報(道路種別(国道や県道等)、路線番号、道路幅員、車線数等)、自車の走行路情報(道路種別、路線番号、道路幅員、車線数等)を得る(以下、これらの情報をナビ情報という。)。尚、カーナビゲーション装置3にDGPS(デファレンシャルGPS)を内蔵することで、FM多重放送の補正データを受信してGPSの位置情報を補正し、測位精度を高めることもできる。
【0023】
走行状態検出装置4は、例えば自車の車速を検出する車速センサ、加速度を検出する加速センサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車の進行方向(方位)を検出するジャイロメータ等からなる自律航法装置等のセンサ類や、オン/オフ信号を出力するイグニッションスイッチやハザードスイッチ、ブレーキスイッチ、ウインカースイッチ等のスイッチ類を含み、ECU5は、これらセンサ類やスイッチ類から自車の走行状態情報を得る。
【0024】
ECU5は、CPU51、RAM52、ROM53を基本構成とするコンピュータである。ROM53には、車車間通信装置2により異なる車両間で情報の授受を行う通信プログラム、上記車車間通信装置2を介して取得した他車情報やナビ情報、走行状態情報等を利用して他車との衝突可能性を算出するプログラム、自車位置及び他車位置を地図上に表示すると共に、上記衝突可能性に応じてドライバに画像や音声で注意を喚起するための警報を出力するプログラムが夫々格納されている。
【0025】
ECU5は、自車の位置や速度、進行方向(方位)等に関するナビ情報や走行状態情報に加えて、自車の全長等の諸元情報や車両の種別を含む固有の識別(ID)情報(送信元情報)、他車のID情報(送信先情報)を、所定の車車間通信可能な範囲内に存在する他車に対して車車間通信装置2を介して配信する(以下、これらの情報を自車配信情報という。)。同様に、ECU5は他車に関する配信情報(以下、他車配信情報という。)を他車から受信する。
【0026】
尚、本実施形態の車車間通信では、複数車両への配信を同時に行える同報通信方式(ブロードキャスト方式)を適用するが、送信元及び送信先の車両を特定し通信開始時に回線接続を確立するような通信方式を適用してもよい。
【0027】
また、本実施形態の車車間通信は通信間隔が約0.1秒であり、車両のイグニッションスイッチがオフであっても、ハザードランプがオンの場合、停車車両としての把握のために情報が配信されるようになっている。
【0028】
また、路面の交差点や交差点付近等にインフラ装置(例えば、路車間通信で利用されるビーコン等)が設けられている場合には、自車近くに設けられたインフラ装置を利用して、自車は周辺の他車に対して自車情報を配信することもできる。
【0029】
ECU5は、上記他車配信情報や上記ナビ情報、走行状態情報を利用して、自車及び他車が交差する交差点を抽出し、その交差点までの距離と到達時間を予測して衝突する可能性のある他車を特定し、その衝突可能性のある他車の存在を当該交差点手前で自車に情報提供(警報)する。
【0030】
尚、本実施形態では、ナビゲーション装置3のディスプレイ33やスピーカ34を用いて情報提供(警報)を行っているが、例えば、ヘッドアップディスプレイを用いたり、警報音を発するブザーや、ドライバが着座しているシートを振動させるシートバイブレータ等を用いても良い。
【0031】
また、車両に、例えば、自車の周囲を監視する自車の走行路前方を撮像するCCDカメラ、前方車両との車間距離を測定するレーザレーダや、超音波を利用したクリアランスソナー等を設け、ECU5が、これらカメラやレーダ類から得た情報を用いて、自車の前方を走行中或いは前方に駐車している他車を監視して、衝突可能性のある他車を特定してもよい。
【0032】
図2は、本実施形態の運転支援システムを実現するECUの機能ブロック図である。
【0033】
図2において、61は、自車が進入する進入交差点を特定する交差点特定ブロックである。62は、特定された進入交差点に進入し自車と交差するため自車と衝突する可能性のある他車を特定する他車特定ブロックである。63は、自車が進入する交差点における自車と他車の走行路の道路接続角度を算出する交差点情報算出ブロックである。64は、上記道路接続角度に基づいて情報提供タイミングを変更する情報提供タイミング制御ブロックである。65は、上記情報提供タイミングで他車情報を情報提供する情報提供ブロックである。
【0034】
図3は、本実施形態の車両用運転支援システムによる情報提供処理を示すフローチャートである。
【0035】
図3において、ECU5は、自車のナビ情報及び走行状態情報を取得し(S1)、自車位置、進行方向(方位)、ID(送信元情報)、送信先情報等を含む自車配信情報を配信する(S3)。次に、ECU5は、他車から他車配信情報を受信したならば、他車のID、位置、速度、進行方向等の他車情報を取得する(S5,S7)。
【0036】
次に、ECU5は、上記他車情報を地図DB35に入力すると共に、ディスプレイ33の地図画像上に自車及び他車を表示する(S9)。
【0037】
次に、ECU5は、交差点特定ブロック61及び他車特定ブロック62により、自車が進入する交差点と、当該交差点で自車に衝突する可能性のある他車を特定する(S11)。
【0038】
次に、ECU5は、情報提供タイミング制御ブロック64及び情報提供ブロック65により、所定の情報提供タイミングでその衝突可能性のある他車の存在を画像や音声等により情報提供し、ドライバに注意を喚起する(S13,S15)。
【0039】
図6はディスプレイに出力される情報提供画面の一例を示し、自車の進路前方の交差点に右側から他車が接近している場合には、(a)に示す警告文字及び画像を表示すると共に「右から車両が接近中です。」という音声メッセージを出力する。また、自車の進路前方の交差点に左側から他車が接近している場合には、(b)に示す警告文字及び画像を表示すると共に「左から車両が接近中です。」という音声メッセージを出力する。
【0040】
図4は、図3のS11における自車が進入する交差点及び衝突可能性のある他車の特定手順を示すフローチャートである。
【0041】
図4において、ECU5は、ナビ情報から自車の進路前方の交差点情報を算出する(S21)。ここでの交差点情報は、自車の進路前方の1つ又は複数の交差点座標列IS1(x1,y1)・・・ISn(xn,yn)で表わされる。
【0042】
次に、ECU5は、他車の位置及び進行方向の各情報を算出する(S23)。ここでの情報は、他車P1・・・Pnごとの位置座標(x,y)及び方位角θからなる情報P1(x1,y1,θ1)・・・Pn(xn,yn,θn)で表わされる(nは他車の台数)。
【0043】
次に、ECU5は、上記P1(x1,y1,θ1)・・・Pn(xn,yn,θn)を地図DB35に入力し、他車の進路前方の交差点情報を算出する(S25)。ここでの交差点情報は、他車ごとの進路前方の1つ又は複数の交差点座標列ISP1(p1x1,p1y1)・・・ISP1(p1xk,p1yk),・・・,ISPn(pnx1,pny1)・・・ISPn(pnxk,pnyk)で表わされる(kは交差点の数)。
【0044】
次に、ECU5は、自車の交差点座標列ISnと他車ごとの交差点座標列ISPnとを比較し、ISnと一致する点がない(交差する座標がない)ISPnを持つ他車を除外する(S27)。
【0045】
次に、ECU5は、S27で除外されなかった他車の中から、自車の進路前方の最も近い交差点(以下、進入交差点という。)IS1に接近している1台又は複数台の他車Pnを衝突可能性のある車両として特定する(S29)。
【0046】
尚、上記S27,S29では、他車配信情報から他車におけるナビゲーションシステムの経路誘導情報を取得し、この経路誘導情報から他車の走行路を予測することで、経路誘導に従った他車の走行路と自車の走行路とが交差する交差点を抽出できる。これにより、自車の進入交差点直前で右折又は左折するような経路誘導情報を持つ他車を除外することができ、他車の特定精度を高めることができる。
【0047】
図5は、図3のS13における情報提供タイミングの設定手順を示すフローチャートである。
【0048】
図5において、ECU5は、上記S29で特定された他車Pnと自車の進入交差点IS1との距離Dnと到達時間Tnとを算出する(S31)。ここでは、他車ごとの距離及び到達時間の情報P1(D1、T1)・・・Pn(Dn、Tn)が算出される。
【0049】
次に、ECU5は、交差点情報算出ブロック63により、自車の進入交差点IS1における自車の走行路に対する他車の走行路との交差角度(道路接続角度)αを算出する(S33)。
【0050】
次に、ECU5は、情報提供タイミング制御ブロック64により、上記交差角度αが鋭角(つまり、α<90°)ならば、情報提供タイミングを通常のタイミングより早期化する(S35,S43)。ここでは、通常の情報提供タイミングである距離D0及び到達時間T0より長い距離D及び/又は長い到達時間Tでの情報提供タイミングに変更される。
【0051】
次に、ECU5は、自車の進入交差点に進入する他車がカーブ路を走行中ならば、情報提供タイミングを通常のタイミングより早期化する(S37,S43)。ここでの情報提供タイミングもS43と同様に設定される。
【0052】
次に、ECU5は、自車が進入交差点を直進又は右折しようとしているならば、情報提供タイミングを通常のタイミングより早期化する(S39,S43)。ここでの情報提供タイミングもS43と同様に設定される。また、ここでの直進又は右折の判定は、交差点手前で自車の右ウインカースイッチがオンされた場合やブレーキスイッチがオンされた場合を右折と判定し、左右ウインカースイッチがオフ且つブレーキスイッチがオフの場合に直進と判定する。自車が交差点を直進又は右折する場合には、左折時に比べて交差点内にいる時間が長くなり、それだけ他車との衝突可能性が増すので、情報提供タイミングを早期化している。これにより、交差点に進入する他車を早期に確認でき、交差点での出会い頭事故や右折事故等を防止することができる。
【0053】
尚、自車が交差点を直進若しくは右折する場合に、自車の左側から接近する他車の情報提供タイミングを早期化することにより、交差点で左側から接近する車両との出会い頭事故や右折事故等を防止することができる。
【0054】
また、ECU5は、上記交差角度αが鋭角でもなく(S35)、カーブ路でもなく(S37)、直進又は右折でもないならば(S39)、距離D0及び到達時間T0による通常の情報提供タイミングに設定する(S41)。
【0055】
[交差点における交差角度(道路接続角度)αの算出方法(S33)]
<カーブ路でない場合>
図7に示すように、自車の進入交差点に接続している分岐路がカーブ路でない場合、地図DB35から自車の進入交差点における他車の走行路の交差角度を取得し、他車配信情報から他車の位置、速度、進行方向(方位)を取得することで、自車の進入交差点に進入しようとしている他車の走行路の交差角度αが求められる。
【0056】
<カーブ路の場合>
地図DB35から得られる交差点での分岐路の交差角度だけでは、その分岐路がカーブ路かどうかを判定することはできない。また、図8(a)に示すように、他車Bの走行路Rbがカーブ路の場合、他車Bの方位角θbと交差点ISにおける走行路Rbの交差角度αが異なるため交差点ISへの進入角度を誤算出してしまうという不都合がある。この場合、例えば、交差点ISでの衝突可能性が低く情報提供(警報)の必要ない場面にもかかわらず情報提供(警報)を行ってしまい、実際に運転しているドライバを混乱させる虞がある。
【0057】
そこで、本実施形態では、他車Bの走行路Rbがカーブ路である場合であっても、以下のように自車Aの方位角θaと他車Bの位置及び方位角θbとから交差点進入角度を算出している。
【0058】
即ち、図8(a)において、車両の方位角θは真北を0度とし、時計回り方向に増えるとし、自車Aの方位角θa、他車Bの方位角θb、他車Bと交差点ISとを結ぶ線分Lの傾きφとする。ここで、他車Bの走行路Rbの交差角度αを求めるため、交差点ISと他車Bとを結ぶ線分Lを底辺、線分Lと他車Bの進行方向とのなす角を底角とする二等辺三角形を描くと、他車Bの走行路Rbの交差角度αは、2・φ−θb±π(±の符号はθbとφの大小で決まる。)により算出できる。
【0059】
そして、自車Aの方位角θaと他車Bの走行路Rbの交差角度αとの差を計算することで、自車Aの走行路Raの方位角θaに対する他車Bの走行路Rbの交差点進入角度α−θaを求めることができる。
【0060】
尚、交差点近傍(交差点手前10m以下)では上記カーブ路の影響が出にくいので上記算出は行わず、交差点から10mを超える地点を走行中に上記方法で交差点進入角度を算出する。
【0061】
上記交差点進入角度の算出によれば、他車Bが交差点手前のカーブ路を走行している場合であっても交差点進入角度α−θaを精度良く算出することができる。しかも、複雑な計算を必要とせず、簡単な演算処理で求めることができる。
【0062】
<他のカーブ路の算出方法>
次に、地図DBを用いた交差点進入角度の算出方法について説明する。
【0063】
図9(a)において、他車B1とB4、B5とB8は、カーブ路を走行しているため夫々の方位角からでは交差点ISへの進入角度が判定できない。この場合、自車Aの位置と進入交差点(iii)と他車Bの交差点座標(iv)を利用して他車Bの走行路の交差角度を算出する。例えば、車両B4の場合、図9(b)のように進入交差点(iii)を中心とした∠A(iii)(iv)の角度から算出する。これにより、交差角度の演算処理を簡略化できる。
【0064】
また、図9(c)のように、自車Aの進入交差点(iii)と他車B4との直線距離L0と道路に沿った距離(道のり)L1とを比較し、これらの差が所定値を超える場合、2点を結ぶ円弧を描き、その円弧の長さが距離が道のりと等しくなるように曲率を設定する。これによりできる円弧1,2は2パターンであるが、他車B4の位置における円弧の接線を描き、その接線の傾きが他車の進行方向に近い方の円弧2を近似的な走行路とする。
【0065】
具体的には、他車B4の進行方向と円弧2の接線方向が略等しいことにより、円弧2が他車B4の近似的な走行路となる。また、交差点(iii)における円弧2の接線と交差点(iii)と自車位置とを結ぶ線分の角度を求めれば、その角度が交差点への交差角度となる。
【0066】
更に単純化すると、図8(a)で述べた内容と同様になる。即ち、図9(d)に示すように、交差点(iii)と他車B4を底辺とした二等辺三角形を描くと、∠(iii)B4T=∠T(iii)B4となり、∠A(iii)B4と∠(iii)B4Tを求めることで交差点への進入角角度αが求まる。∠(iii)B4Tは他車B4の進行方向ベクトルと線分Lの傾き角度から求まる。∠A(iii)B4は点A,(iii),B4の夫々の座標から求めることができる。
【0067】
上記実施形態によれば、自車と他車の道路接続角度が鋭角の見通しの悪い交差点に進入する他車を早期に確認でき、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る実施形態の運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の運転支援システムを実現するECUの機能ブロック図である。
【図3】本実施形態の車両用運転支援システムによる情報提供処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のS11における衝突可能性のある他車の特定手順を示すフローチャートである。
【図5】図3のS13における情報提供タイミングの設定手順を示すフローチャートである。
【図6】ディスプレイに出力される情報提供画面の一例を示す図である。
【図7】図5のS33における交差点における交差角度(道路接続角度)の算出方法を説明する図である。
【図8】図5のS33における交差点における交差角度(道路接続角度)の算出方法を説明する図である。
【図9】図5のS33における交差点における交差角度(道路接続角度)の算出方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
1 運転支援システム
2 車車間通信装置
3 カーナビゲーション装置
4 走行状態検出装置
5 ECU
21 送受信アンテナ
31 GPSアンテナ
32 GPS受信機
33 ディスプレイ
34 スピーカ
35 地図DB
51 CPU
52 RAM
53 ROM
61 交差点特定ブロック
62 他車特定ブロック
63 交差点情報算出ブロック
64 情報提供タイミング制御ブロック
65 情報提供ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の情報を送信すると共に、他車から情報を取得する車車間通信手段と、前記車車間通信手段により取得した他車情報を提供する情報提供手段と、を有する車両用運転支援システムであって、
自車が進入する進入交差点を特定する交差点特定手段と、
特定された前記進入交差点に進入し前記自車と交差するため前記自車と衝突する可能性のある他車を特定する他車特定手段と、
特定された前記進入交差点の道路情報を算出する交差点情報算出手段と、
前記道路情報に基づいて、前記情報提供手段による前記他車情報の情報提供タイミングを変更する情報提供タイミング制御手段と、を有することを特徴とする車両用運転支援システム。
【請求項2】
前記道路情報は、前記進入交差点における前記自車の走行路と前記他車の走行路の道路接続角度であり、
前記情報提供タイミング制御手段は、前記道路接続角度が鋭角である場合、前記情報提供手段による前記他車の情報提供タイミングを早期化することを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援システム。
【請求項3】
前記道路接続角度は、ナビゲーション装置から得られる前記自車の速度及び進行方向の情報から求められることを特徴とする請求項2に記載の車両用運転支援システム。
【請求項4】
前記道路接続角度は、前記自車、前記他車及び前記進入交差点の各座標から求められることを特徴とする請求項2に記載の車両用運転支援システム。
【請求項5】
前記情報提供タイミング制御手段は、自車位置と、自車の進行方向と、前記進入交差点の位置と、他車の進行方向とを用いて、前記進入交差点に接続する他車の走行路がカーブ路か否かを判定し、カーブ路である場合、前記情報提供手段による前記情報提供タイミングを早期化することを特徴とする請求項2に記載の車両用運転支援システム。
【請求項6】
前記情報提供タイミング制御手段は、前記自車が前記進入交差点を直進若しくは右折する場合、前記情報提供手段による前記情報提供タイミングを早期化することを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援システム。
【請求項7】
前記情報提供タイミング制御手段は、前記自車が前記進入交差点を直進若しくは右折する場合、前記情報提供手段による前記自車の左側から接近する他車情報の情報提供タイミングを早期化することを特徴とする請求項6に記載の車両用運転支援システム。
【請求項8】
前記車車間通信手段により前記他車のナビゲーション装置の経路誘導情報を取得し、
前記経路誘導情報から前記他車の走行路を予測することを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−323185(P2007−323185A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150361(P2006−150361)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】