説明

車体傾動制御装置、車体傾動制御方法

【課題】旋回走行時に車体を旋回内側に傾動させる制御の精度を向上させる。
【解決手段】旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させる目標対地傾斜角φを算出し、旋回走行時における旋回外側へのロール運動分に相当する補償量φrを算出する。そして、目標対地傾斜角φ及び補償量φrに応じて、駆動モータ3を駆動制御する。また、一次の応答遅れ特性をもつ車両モデル(Gy0(s))に従い、横加速度に応じて補償量φrを算出すると共に、車両モデル(Gy0(s))の時定数を、ロール等価粘性Cφとロール剛性Kφとの比に応じて決定する。また、車両モデル(Gy(s))に従い、運転者のステアリング操作及び車速に応じて、車体の横加速度を推定し、推定した横加速度に応じて補償量φrを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体傾動制御装置、及び車体傾動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の従来技術では、旋回走行時に運転者のステアリング操作に応じて、サスペンションのベルクランクをアクチュエータによって回動させることにより、車体を旋回内側に傾動させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56−93311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、旋回走行時には横加速度に応じたロール運動が生じるので、車体を傾動させたときの地面に対する目標傾斜角度と、実際の傾斜角度との間に差が生じることがある。
本発明の課題は、旋回走行時に車体を旋回内側に傾動させる制御の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、車体をロール方向に沿って傾斜させるアクチュエータを備え、旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させる目標傾斜角を、運転者のステアリング操作に応じて算出する。また、旋回走行時における旋回外側へのロール運動分に相当する補償量を、車体の横加速度に応じて算出し、目標傾斜角と補償量に応じて、アクチュエータを駆動制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る装置によれば、横加速度に応じて旋回外側へのロール運動分に相当する補償量を算出し、目標傾斜角と補償量とに応じてアクチュエータを駆動制御することで、旋回走行時に車体を旋回内側に傾動させる制御の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車体傾動の模式図である。
【図2】サスペンション構造の概略図である。
【図3】車両全体の概略構成図である。
【図4】車体傾動制御処理を示す機能ブロック図である。
【図5】車体傾動制御処理を示すフローチャートである。
【図6】車体傾動に対するロール運動の影響について説明した図である。
【図7】作用効果を示すタイムチャートである。
【図8】シミュレーション結果を示す図である。
【図9】第2実施形態の車体傾動制御処理を示すブロック線図である。
【図10】第3実施形態を示す車両全体の概略構成図である。
【図11】第3実施形態を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
《構成》
図1は、車体傾動の模式図である。
車輪1に対して車体2を、サスペンションを介して懸架しており、このサスペンションは、駆動モータ3の駆動によって車体2を傾斜させることができる。具体的には、旋回走行時に車体2を旋回内側に傾斜させる。
【0009】
図2は、サスペンション構造の概略図である。
左右輪のサスペンション構造は、左右対称の同一構造なので、ここでは左輪側について説明する。このサスペンションは、ダブルウィッシュボーン式のサスペンションであり、車輪1を支持するナックル(アップライト)11は、上側のアッパリンク12及び下側のロアリンク13を介して揺動可能な状態で車体フレーム14に連結してある。
【0010】
アッパリンク12はAアームで構成し、車輪側取付け点及び車体側取付け点の夫々が、ゴムブッシュを介してナックル11及び車体フレーム14に連結してある。また、ロアリンク13もAアームで構成し、車輪側取付け点及び車体側取付け点の夫々が、ゴムブッシュを介してナックル11及び車体フレーム14に連結してある。
車体フレーム14における車幅方向の中心位置には、車体前後方向の回動軸を有し、左右両側に向けて均等に突出したリーンアーム15を軸支してある。このリーンアーム15の先端と、ロアリンク13との間に、ショックアブソーバ16及びコイルスプリング17を介装する。また、リーンアーム15の回動軸に、図示しない減速機を介して駆動モータ3を連結する。
【0011】
したがって駆動モータ3を回転させると、車体フレーム14に対してリーンアーム15が回動し、リーンアーム15の左端及び右端が上下方向に変位するので、ショックアブソーバ16及びコイルスプリング17を介してロアリンク13が揺動する。リーンアーム15は、左端が下がれば右端が上がり、左端が上がれば右端が下がるので、左右輪で逆方向のサスペンションストロークが生まれる。
【0012】
すなわち、車両正面視で駆動モータ3を時計回りに回転させると、リーンアーム15の回動(左側を下げる傾動)によって、左輪側がリバウンドストロークとなり、右輪側ではバウンドストロークとなる。このとき、左輪側でロアリンク13を押し下げるリバウンド方向の力が作用し、左輪から受ける反力によって、車体2の左側が持ち上がり、結果として車体2が右側へ傾斜する。
【0013】
逆に、車両正面視で駆動モータ3を反時計回りに回転させると、リーンアーム15の回動(右側を下げる傾動)によって、左輪側がバウンドストロークとなり、右輪側ではリバウンドストロークとなる。このとき、右輪側でロアリンク13を押し下げるリバウンド方向の力が作用し、右輪から受ける反力によって、車体2の右側が持ち上がり、結果として車体2が左側へ傾斜する。
【0014】
図3は、車両全体の概略構成図である。
上記のサスペンション構造を、前輪及び後輪に設け、夫々、個別の駆動モータ3によって駆動制御する。前後輪の駆動モータ3を区別する際は、前輪用を駆動モータ3fとし、後輪用を駆動モータ3rとして説明する。
なお、リーンアーム15を回動させるためのアクチュエータとして駆動モータ3を用いているが、他にも油圧や空気圧を用いたアクチュエータを使用してもよい。また、伸縮方向に推力を発生可能な例えば電磁式ショックアブソーバ等で、左右のサスペンションを夫々逆方向にストロークさせることで、車体を傾斜させてもよい。
【0015】
車両20は、前述し駆動モータ3f及び3rの他に、操舵角センサ21と、車輪速センサ22と、モータ回転角センサ23f及び23rと、旋回状態検出センサ24と、並びに車両制御コントローラ25と、を備える。
操舵角センサ21は、ステアリングホイールの操舵角を検出し、検出値を車両制御コントローラ25に入力する。車輪速センサ22は、車輪の回転速度を検出し、検出値を車両制御コントローラ25に入力する。モータ回転角センサ23f及び23rは、夫々、駆動モータ3f及び3rの回転角を検出し、検出値を車両制御コントローラ25に入力する。旋回状態検出センサ24は、例えば横加速度、ヨーレート、車体ロール角、ロールレートなどの旋回状態を検出し、検出値を車両制御コントローラ25に入力する。
【0016】
車両制御コントローラ25は、車体傾動制御処理を実行し、電流指令値により駆動モータ3f及び3rを駆動することで、車体2の傾斜動作を実現する。
車両制御コントローラ25は、マイクロコンピュータで構成し、操舵角センサ21、車輪速センサ22、モータ回転角センサ23f及び23r、旋回状態検出センサ24から入力した情報に基づき、駆動モータ3f及び3rの動作を制御すると同時に、制御動作の解除も行う。
【0017】
次に、車両制御コントローラ25で実行する車体傾動制御処理について説明する。
図4は、車体傾動制御処理を示すブロック線図である。
目標対地傾斜角算出部213は、車両モデル(Gφ(s))に従い、操舵角及び車速に応じて、車体の目標対地傾斜角(リーン角)φを算出する。
アクチュエータ指令角算出部214は、車両モデル(Gφu(s))に従い、目標対地傾斜角φに応じて、駆動モータ3への指令値となるアクチュエータ指令角φuを算出する。車両モデル(Gφu(s))は、車両を前方(あるいは後方)から見たときの力学モデル(リーンアームがリーンアクチュエータから駆動されたときの力の釣り合い式)から算出され、下記のような位相進み項をもつモデルとなる。
【0018】
なお、車両モデルGφ(s)は、車両モデル(Gφu(s))が位相進み項をもつことを考慮し、次数差一以上の位相遅れ特性をもつ車両モデルとする。例えば、旋回方向(ヨー方向)との位相を合わせるために一次の位相遅れ特性で表される車両のヨー応答モデルを用いる。
【0019】
【数1】

【0020】
:車両質量
:重心高
g:重力加速度
φ:ロール慣性
φ:ロール剛性
φ:ロール等価粘性
横加速度推定部210は、車両モデル(Gy(s))に従い、ラック&ピニオン等のステアリング機構のギヤ比(1/N)及び操舵角によって定まる転舵角と、車速とに応じて、横加速度を推定する。この(Gy(s))は、一般的な平面2輪モデルから求められる下記の式を用いる。
【0021】
【数2】

【0022】
【数3】

【0023】
m:車両質量
:重心高
(l):重心位置から前軸(後軸)までの距離
l:l+l
:ヨー慣性
(K):前輪(後輪)のコーナリングパワー
V:車速
N:ステアリングギヤ比
ロール分補償量算出部211では、車両モデル(Gy0(s))に従い、横加速度に応じて、アクチュエータ指令角φuに対するロール分補償量φrを算出する。ロール分補償量φrの絶対値は、横加速度に応じて旋回外側にロールする対地傾斜角の変化量に相当し、ロール分補正量φrの実数は旋回内側に向く値である。車両モデル(Gy0(s))は、例えば下記のような一次遅れ特性をもつ式で求める。
【0024】
【数4】

【0025】
Y(s):横加速度入力
加算部215では、アクチュエータ指令角φuに補償量φrを加算した値を、新たなアクチュエータ指令角φuとし、出力する。
【0026】
図5は、車体傾動制御処理を示すフローチャートである。
ステップS101では、前述した車両モデル(Gy(s))に従い、転舵角及び車速に応じて、車両に作用する横加速度を推定する。
続くステップS102では、前述した車両モデル(Gy0(s))に従い、横加速度に応じてアクチュエータ指令角φuに対する補償量φrを算出する。
【0027】
続くステップS103では、前述した車両モデル(Gφ(s))に従い、操舵角及び車速に応じて、車体の目標対地傾斜角φを算出する。
続くステップS104では、前述した車両モデル(Gφu(s))に従い、目標対地傾斜角φに応じて、駆動モータ3への指令値となるアクチュエータ指令角φuを算出する。
【0028】
続くステップS105では、下記に示すように、アクチュエータ指令角φuに補償量φrを加算し、アクチュエータ指令角φuを補正する。
φu=φu+φr
続くステップS106では、アクチュエータ指令角φuに応じて、駆動モータ3を駆動制御してから、所定のメインプログラムに復帰する。
【0029】
《作用》
先ず、車体傾動に対するロール運動の影響について説明する。
図6は、車体傾動に対するロール運動の影響について説明した図である。
旋回走行時には車体が横加速度を受け、旋回外側にロール運動するので、旋回内側に車体を傾斜させる目標対地傾斜角φをキャンセルする方向に作用する。したがって、目標対地傾斜角φと実際の対地傾斜角との間に、差分が生じてしまう。
【0030】
この現象に対処するため、本実施形態では、転舵角と車速に応じて横加速度を推定し(ステップS101)、この横加速度に応じてロール分補償量φrを算出する(ステップS102)。そして、操舵角と車速に応じて目標対地傾斜角φを算出し(ステップS103)、目標対地傾斜角φに応じてアクチュエータ指令角φuを算出する(ステップS104)。
【0031】
そして、アクチュエータ指令角φuにロール分補償量φrを加算することで、アクチュエータ指令角φuを補償し(ステップS105)、補償後のアクチュエータ指令角φuに応じて、駆動モータ3を駆動制御する(ステップS106)。
これにより、横加速度に応じたロール分補償量φrを考慮することで、走行時に車体を旋回内側に傾動させる制御の精度を向上させることができる。
【0032】
図7は、作用効果を示すタイムチャートである。
旋回外側へのロール分を補償しないと、対地傾斜角をキャンセル方向に作用するので、目標とする対地傾斜角に到達しない。一方、本実施形態のように、旋回外側へのロール分を補償することで、旋回外側へのロール分を見越して、その分、アクチュエータ指令角φuを増加させるので、目標とする対地傾斜角を達成することができる。
【0033】
図8は、シミュレーション結果を示す図である。
ロール分の補償を行った場合、補償を行わなかったときよりも、目標対地傾斜角φに対する実際の対地傾斜角は、36%程度改善した。このように、旋回外側へのロール運動分に相当する補償量を算出し、この補償量によってアクチュエータ指令角φuを補償してからアクチュエータを駆動制御することで、旋回走行時に車体を旋回内側に傾動させる制御の精度を向上させることができる。
【0034】
補償量φrの算出には、一次の応答遅れ特性をもつ車両モデル(Gy0(s))を用い、その時定数は、ロール等価粘性Cφとロール剛性Kφとの比に応じて決定する。これにより、車両のサスペンションのコイルスプリング、スタビライザ、ショックアブソーバなどの特性を予め考慮するので、ロール応答を見込んだ補償量φrを算出することが可能となる。
【0035】
また、車両モデル(Gy(s))に従い、転舵角及び車速に応じて、車体の横加速度を推定する。これにより、横加速度センサがなくても、本実施形態の作用効果を得ることができる。
また、一端が左輪のサスペンションに連結されると共に、他端が右輪のサスペンションに連結され、車体前後方向の回動軸を介して揺動可能な状態で車体に軸支されたリーンアーム15を備えている。そして、駆動モータ3によってリーンアーム15を回動軸で回動させることで、車体をロール方向に沿って傾斜させる構成とした。これにより、比較的、簡易な構造で、車体をロール方向に沿って傾斜させることができる。
【0036】
以上より、駆動モータ3が「アクチュエータ」に対応し、目標対地傾斜角算出部213とステップS103の処理とが「目標傾斜角算出手段」に対応し、ロール分補償量算出部211とステップS102の処理とが「補償量算出手段」に対応する。また、アクチュエータ指令角算出部214と加算部215とステップS104〜106の処理とが「制御手段」に対応する。また、横加速度推定部210とステップS101の処理とが「横加速度推定手段」に対応する。
【0037】
《効果》
(1)本実施形態の車体傾動制御装置によれば、旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させる目標対地傾斜角φを算出し、旋回走行時における旋回外側へのロール運動分に相当する補償量φrを算出する。そして、目標対地傾斜角φ及び補償量φrに応じて、駆動モータ3を駆動制御する。
このように、横加速度に応じて旋回外側へのロール運動分に相当する補償量φrを算出し、目標対地傾斜角φと補償量φrとに応じて駆動モータ3を駆動制御することで、旋回走行時に車体を旋回内側に傾動させる制御の精度を向上させることができる。
【0038】
(2)本実施形態の車体傾動制御装置によれば、一次の応答遅れ特性をもつ車両モデル(Gy0(s))に従い、横加速度に応じて補償量φrを算出すると共に、車両モデル(Gy0(s))の時定数を、ロール等価粘性Cφとロール剛性Kφとの比に応じて決定する。
これにより、車両のサスペンションのコイルスプリング、スタビライザ、ショックアブソーバなどの特性を予め考慮するので、ロール応答を見込んだ補償量φrを算出することが可能となる。
【0039】
(3)本実施形態の車体傾動制御装置によれば、車両モデル(Gy(s))に従い、運転者のステアリング操作及び車速に応じて、車体の横加速度を推定し、推定した横加速度に応じて補償量φrを算出する。
このように、推定した横加速度に応じて、補償量φrを算出することにより、横加速度センサがなくても、本実施形態の作用効果を得ることができる。
【0040】
(4)本実施形態の車体傾動制御装置によれば、一端が左輪のサスペンションに連結されると共に、他端が右輪のサスペンションに連結され、車体前後方向の回動軸を介して揺動可能な状態で車体に軸支されたリーンアーム15を備える。そして、駆動モータ3によって、このリーンアーム15を回動軸で回動させることで、車体をロール方向に沿って傾斜させる。
このように、比較的、簡易な構造で、車体をロール方向に沿って傾斜させることができる。
【0041】
(5)本実施形態の車体傾動制御方法によれば、旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させる目標対地傾斜角φを算出し、旋回走行時における旋回外側へのロール運動分に相当する補償量φrを算出する。そして、補償量φrによって目標対地傾斜角φを補償すると共に、補償した目標対地傾斜角φに応じて駆動モータ3を駆動制御することで、旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させる。
このように、横加速度に応じて旋回外側へのロール運動分に相当する補償量φrを算出し、目標対地傾斜角φと補償量φrとに応じて駆動モータ3を駆動制御することで、旋回走行時に車体を旋回内側に傾動させる制御の精度を向上させることができる。
【0042】
《第2実施形態》
《構成》
第2実施形態は、横加速度をセンサ(旋回状態検出センサ24)によって検出するものである。
図9は、第2実施形態の車体傾動制御処理を示すブロック線図である。
ここでは、前述した横加速度推定部210を省略し、横加速度センサ値をロール分補償量算出部211に入力していることを除いては、前述した第1実施形態と同一であり、同一部分については、詳細な説明を省略する。
【0043】
《作用》
本実施形態では、横加速度推定部210を省略した代わりに、横加速度センサ値に応じて、ロール分補償量φrを算出している。
これにより、横加速度を推定する演算処理を省略することができると共に、横加速度の推定誤差がロール分補償量φrに影響を与えることもない。
その他の作用効果については、前述した第1実施形態と同様である。
以上より、旋回状態検出センサ24が「横加速度検出手段」に対応する。
【0044】
《効果》
(1)本実施形態の車体傾動制御装置によれば、車体の横加速度を検出する旋回状態検出センサ24を備え、この旋回状態検出センサ24で検出した横加速度センサ値に応じてロール分補償量φrを算出する。
このように、車体の横加速度を検出し、検出した横加速度センサ値に応じてロール分補償量φrを算出することで、横加速度を推定する演算処理を省略することができると共に、横加速度の推定誤差がロール分補償量φrに影響を与えることもない。
【0045】
《第3実施形態》
《構成》
第3実施形態は、ヨーレート制御を加えたものである。
図10は、第3実施形態を示す車両全体の概略構成図である。
ステアリング系統には、運転者のステアリング操作とは独立して前輪の転舵角を制御可能なステアリング制御機構30を備えている。ステアリング制御機構30は、例えばステアリングバイワイヤや、舵角比可変機構(VGR)等である。
図11は、第3実施形態を示すブロック線図である。
目標ヨーレート算出部310は、車両モデル(Gγ(s))に従い、操舵角と車速に応じて、目標ヨーレートを算出する。車両モデル(Gγ(s))は、平面二輪モデルから算出される下記のようなヨーレート応答モデルを用いる。
【0046】
【数5】

【0047】
目標転舵角算出部311では、車両モデル(Gf(s))に従い、目標ヨーレートを達成するのに必要な目標転舵角を算出し、ステアリング制御機構30を駆動制御する。
横加速度推定部210は、前述した車両モデル(Gy(s))に従い、転舵角及び車速に応じて横加速度を推定するが、数2のパラメータを、上記数5のパラメータと同一にする。すなわち、横加速度を推定する車両モデル(Gy(s))のパラメータを、目標ヨーレートを算出する車両モデル(Gγ(s))のパラメータと同一にする。
【0048】
その他の構成については、前述した第1実施形態と同一である。
なお、本実施形態では、車体のヨーレートを制御するために、運転者のステアリング操作とは独立して前輪の転舵角を制御可能なステアリング制御機構30を備えているが、これに限定されるものではない。すなわち、左右輪における駆動力差や制動力差を利用して車体にヨーモーメントを付与することで、車体のヨーレートを制御してもよい。
【0049】
《作用》
本実施形態では、ヨーレート制御を加え、横加速度を推定する車両モデル(Gy(s))のパラメータを、目標ヨーレートを算出する車両モデル(Gγ(s))のパラメータと同一にしている。
これにより、ヨーレート制御の特性に合ったロール運動分の補償量φrを算出することができる。
その他の作用効果については、前述した第1実施形態と同様である。
以上より、目標ヨーレート算出部310と目標転舵角算出部311とが「ヨーレート制御手段」に対応する。
【0050】
《効果》
(1)本実施形態の車体傾動制御装置によれば、目標ヨーレート算出部310で車体の目標ヨーレートを算出し、この目標ヨーレートに車体のヨーレートが追従するように、前輪の転舵角を制御する。そして、横加速度を推定する車両モデル(Gy(s))のパラメータを、目標ヨーレートを算出する車両モデル(Gγ(s))のパラメータと同一にする。
このように、横加速度を推定する車両モデル(Gy(s))のパラメータを、目標ヨーレートを算出する車両モデル(Gγ(s))のパラメータと同一にすることで、ヨーレート制御の特性に合ったロール運動分の補償量φrを算出することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車輪
2 車体
3f 前側駆動モータ
3r 後側駆動モータ
11 ナックル
12 アッパリンク
13 ロアリンク
14 車体フレーム
15f 前側リーンアーム
15r 後側リーンアーム
16 ショックアブソーバ
17 コイルスプリング
20 車両
21 操舵角センサ
22 車輪速センサ
23f 前側モータ回転角センサ
23r 後側モータ回転角センサ
24 旋回状態検出センサ
25 車両制御コントローラ
210 横加速度推定部
211 ロール分補償量算出部
213 目標対地傾斜角算出部
214 アクチュエータ指令角算出部
215 加算部
30 ステアリング制御機構
310 目標ヨーレート算出部
311 目標転舵角算出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体をロール方向に沿って傾斜させるアクチュエータと、
旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させる目標傾斜角を、運転者のステアリング操作に応じて算出する目標傾斜角算出手段と、
旋回走行時における旋回外側へのロール運動分に相当する補償量を、車体の横加速度に応じて算出する補償量算出手段と、
前記目標傾斜角算出手段で算出した目標傾斜角、及び前記補償量算出手段で算出した補償量に応じて、前記アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を備えることを特徴とする車体傾動制御装置。
【請求項2】
前記補償量算出手段は、
一次の応答遅れ特性をもつ車両モデルに従い、車体の横加速度に応じて前記補償量を算出すると共に、前記車両モデルの時定数を、ロール等価粘性とロール剛性との比に応じて決定することを特徴とする請求項1に記載の車体傾動制御装置。
【請求項3】
車両モデルに従い、運転者のステアリング操作及び車速に応じて、車体の横加速度を推定する横加速度推定手段を備え、
前記補償量算出手段は、
前記横加速度推定手段で推定した横加速度に応じて前記補償量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車体傾動制御装置。
【請求項4】
車体の横加速度を検出する横加速度検出手段を備え、
前記補償量算出手段は、
前記横加速度検出手段で検出した横加速度に応じて前記補償量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車体傾動制御装置。
【請求項5】
車体の目標ヨーレートを設定し、前記目標ヨーレートに車体のヨーレートを追従させるヨーレート制御手段を備え、
前記横加速度推定手段は、
前記横加速度を推定する車両モデルのパラメータを、前記目標ヨーレートを設定する車両モデルのパラメータと同一にすることを特徴とする請求項3に記載の車体傾動制御装置。
【請求項6】
一端が左輪のサスペンションに連結されると共に、他端が右輪のサスペンションに連結され、車体前後方向の回動軸を介して揺動可能な状態で車体に軸支されたリーンアームを備え、
前記アクチュエータは、
前記リーンアームを前記回動軸で回動させることで、車体をロール方向に沿って傾斜させることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の車体傾動制御装置。
【請求項7】
旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させる目標傾斜角を、運転者のステアリング操作に応じて算出し、
旋回走行時における旋回外側へのロール運動分に相当する補償量を、車体の横加速度に応じて算出し、
前記目標傾斜角及び前記補償量に応じてアクチュエータを駆動制御することで、旋回走行時に車体をロール方向に沿って旋回内側に傾斜させることを特徴とする車体傾動制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−23018(P2013−23018A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158114(P2011−158114)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】