説明

車載用ナビゲーション装置

【課題】車速パルスを用いずとも正確な車速を算出することによってGPS信号の受信が不可能な地点における自車位置を高精度に算出することができる「車載用ナビゲーション装置」を提供すること。
【解決手段】車速(GPS受信不能期間の直前におけるGPS信号に基づいて算出された第1の車速a)と、映像速度(GPS受信不能期間の開始時における車載カメラの撮影映像に基づいて算出された映像速度b)との相関関係(速度比K)が、GPS受信不能期間においても維持されるとみなした上で、速度比KにGPS受信不能期間内における映像速度b’を乗じることによって、擬似的な第1の車速として第2の車速a’を算出し、この第2の車速a’を自律航法に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置に係り、特に、自車位置を算出するのに好適な車載用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用ナビゲーション装置においては、自車両を目的地までの経路に沿って確実に経路誘導(ルート案内)するために、正確な自車位置を算出することが重要とされていた。
【0003】
このような車載用ナビゲーション装置における自車位置の算出方法としては、大別して、衛星航法と自律航法との2つの算出方法が知られていた。
【0004】
衛星航法においては、GPS衛星から送信される軌道および時刻等に関する情報を含むGPS信号を受信し、受信されたGPS信号に基づいて、自車位置を三次元の絶対座標として算出するようになっている。
【0005】
一方、自律航法においては、ジャイロセンサ等の方位センサによって自車両の方位を算出するとともに、車速パルスによって自車両の移動距離を算出した上で、算出された方位および移動距離に基づいて、一つ手前の算出位置(自車位置)からの変化分としての現在の自車位置を、相対位置として算出するようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−291732号公報
【特許文献2】特開2006−317287号公報
【特許文献3】特開2007−240380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、車載用ポータブルナビゲーション装置と称される車両(主にインパネ上部やフロントミラー)に着脱可能に配設される車載用ナビゲーション装置が、GPS精度の向上、車外への持ち出しが可能および取り付けが簡単等の理由によって普及しつつある。
【0008】
この種の車載用ポータブルナビゲーション装置は、車両への取り付けを簡便、正確かつ安定的に行わしめるために、配線数を極力少なくする製品仕様とされている。
【0009】
このため、車載用ポータブルナビゲーション装置においては、通常の車載用ナビゲーション装置において必須とされている車速パルスは入力せずに、GPS信号を用いた衛星航法のみによって自車位置を算出するようになっていた。
【0010】
ここで、GPS信号には、当初は、精度を劣化させる信号が含まれていたが、2000年5月にこの信号が解消されるようになってからは、GPS信号だけでも十分な自車位置精度を出すことが可能になった。
【0011】
しかしながら、高層ビルの谷間、トンネル内および高架下等においては、GPS信号を受信することができず、自車位置を算出することができないといった問題が生じていた。
【0012】
そこで、このような問題を解決すべく、これまでにも、車載カメラの撮影映像を利用した対応策が講じられていた。
【0013】
この対応策の一例としては、車載カメラによる道路上の白線の撮影映像を認識し、白線の撮影映像が自車両の走行方向の逆方向に相対的に流れる(変位する)速度、すなわち、白線の撮影映像の映像速度を求め、求められた映像速度を車速に換算して自律航法に用いる技術があった。しかし、このような対応策は、道路上に白線が引かれていない場合には対応することができず、また、白線認識のための画像処理にはコストがかかるといった欠点があった。また、白線に限らず、景色の撮影映像の映像速度のみによって車速を求める場合には、車載カメラから景色(撮影対象)までの距離によって映像速度も異なるため、適切な車速を特定することは困難であった。
【0014】
したがって、従来は、車載用ポータブルナビゲーション装置において、自車位置を適切に算出するといった課題については、何等の有効な解決手段も提案されていないのが実情であった。
【0015】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、車速パルスを用いずとも正確な車速を算出することによってGPS信号の受信が不可能な地点における自車位置を高精度に算出することができ、ひいては、経路誘導を確実に行うことができる車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するため、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、自車位置の算出に車速パルスを用いない車載用ナビゲーション装置であって、自車両の周辺における所定の撮影領域を撮影する車載カメラと、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信可能とされたGPS受信手段と、このGPS受信手段によって受信された前記GPS信号に基づいて自車位置を算出する衛星航法手段と、この衛星航法手段によって算出された前記自車位置の時間変化に基づいて第1の車速を算出する第1の車速算出手段と、前記車載カメラの撮影映像の時間変化に基づいて前記撮影映像が前記自車両の走行方向の逆方向に流れる速度である映像速度を算出する映像速度算出手段と、前記GPS受信手段による前記GPS信号の受信が不可能となった時点において、当該時点の直前における前記第1の車速を当該時点における前記映像速度によって除した値である速度比を算出する速度比算出手段と、この速度比算出手段によって算出された前記速度比を記憶する速度比記憶手段と、前記GPS信号の受信が不可能となった時点から前記GPS信号の受信が回復する時点までの間の期間であるGPS受信不能期間において、当該GPS受信不能期間における前記映像速度に前記速度比記憶手段によって記憶された前記速度比を乗じることによって第2の車速を算出する第2の車速算出手段と、この第2の車速算出手段によって算出された前記第2の車速を用いることによって、前記GPS受信不能期間における自車位置を算出する自律航法手段とを備えたことを特徴としている。
【0017】
そして、このような構成によれば、車速(GPS受信不能期間の直前におけるGPS信号に基づいて算出された第1の車速)と、映像速度(GPS受信不能期間の開始時における車載カメラの撮影映像に基づいて算出された映像速度)との相関関係(速度比)が、GPS受信不能期間においても維持されるとみなした上で、速度比にGPS受信不能期間内における映像速度を乗じることによって、擬似的な第1の車速として第2の車速を算出し、この第2の車速を自律航法に用いることができる。これにより、車速パルスを用いずとも車速パルスに代替し得る正確な車速を算出することによってGPS信号の受信が不可能な地点における自車位置を高精度に算出することができ、ひいては、経路誘導を確実に行うことができる。
【0018】
また、前記速度比算出手段は、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間において、前記映像速度の変化量が閾値変化量以上となった場合には、前記変化量が閾値変化量以上となった時点の直前における前記第2の車速を当該時点における前記映像速度によって除した値である第2の速度比を算出するように形成され、前記速度比記憶手段は、前記速度比算出手段によって前記第2の速度比が算出された場合には、当該第2の速度比を記憶するように形成され、前記第2の車速算出手段は、前記速度比記憶手段によって前記第2の速度比が記憶された場合には、前記GPS受信不能期間のうちの前記変化量が閾値変化量以上となった時点から前記GPS信号の受信が回復または前記変化量が再度前記閾値変化量以上となる時点までの間の一部の期間において、当該一部の期間における前記映像速度に、前記速度比記憶手段によって記憶された前記第2の速度比を乗じることによって、当該第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出を行うように形成され、前記自律航法手段は、前記第2の車速算出手段によって前記第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出が行われた場合には、当該第2の車速を用いることによって、前記一部の期間における自車位置を算出するように形成されていることが好ましい。
【0019】
そして、このような構成によれば、GPS受信不能期間のうちの一部の期間の開始時において映像速度が大きな変化量を示した場合には、実際の車速が変化したのではなく走行環境が変化して車載カメラと撮影対象との距離が変化したと判断した上で、走行環境が変化した一部の期間においては、車速(一部の期間の直前における第2の車速)と、映像速度(一部の期間の開始時における映像速度)との新たな相関関係(第2の速度比)が維持されるとみなして、第2の速度比に一部の期間における映像速度を乗じることによって、新たな算出方法による第2の車速を算出し、この第2の車速を自律航法に用いることができる。これにより、GPS受信不能期間内において車載カメラと撮影対象との距離が変化した場合においても、この変化に追従して車速パルスに代替し得る第2の車速を適切に算出することができ、高精度な自車位置をさらに安定的に算出することができる。
【0020】
さらに、前記速度比算出手段は、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間において、前記映像速度の変化量がN回目(但し、Nは、1以上の任意の自然数)に閾値変化量以上となった場合には、前記変化量がN回目に閾値変化量以上となった時点の直前における前記第2の車速を当該時点における前記映像速度によって除することにより、N回目の前記第2の速度比の算出を行うように形成され、前記速度比記憶手段は、前記速度比算出手段によって前記N回目の第2の速度比の算出が行われた場合には、当該N回目に算出された第2の速度比を記憶するように形成され、前記第2の車速算出手段は、前記速度比記憶手段によって前記N回目に算出された第2の速度比が記憶された場合には、前記GPS受信不能期間のうちの前記変化量がN回目に閾値変化量以上となった時点から前記GPS信号の受信が回復または前記変化量が再度前記閾値変化量以上となる時点までの間のN回目の一部の期間において、当該N回目の一部の期間における前記映像速度に、前記速度比記憶手段によって記憶された前記N回目に算出された第2の速度比を乗じることによって、当該N回目に算出された第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出を行うように形成され、前記自律航法手段は、前記第2の車速算出手段によって前記N回目に算出された第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出が行われた場合には、当該第2の車速を用いることによって、前記N回目の一部の期間における自車位置を算出するように形成されていることが好ましい。
【0021】
そして、このような構成によれば、これにより、GPS受信不能期間の開始後において複数回にわたって車載カメラと撮影対象との距離が変化した場合においても、これらの変化に追従して車速パルスに代替し得る新たな第2の車速を逐次算出することができ、自車位置精度をさらに安定的に確保することができる。
【0022】
さらにまた、加速度センサを備え、前記速度比算出手段は、前記変化量が閾値変化量以上となる時点において、前記加速度センサの算出結果が閾値加速度以下となる場合に、前記第2の速度比を算出するように形成されていることが好ましい。
【0023】
そして、このような構成によれば、加速度センサの算出結果に基づいて実際の車速が大きく変化していないことを確認した上で第2の速度比を算出するようにしたので、第2の車速をさらに適切に算出することができ、自車位置をさらに高精度に算出することができる。
【0024】
また、前記速度比算出手段は、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間において、前記変化量が閾値変化量以上となる第1の時点から前記変化量が再度前記閾値変化量以上となる第2の時点までの間の時間を検出し、検出された前記時間が閾値時間に満たない場合には、前記第2の時点における前記映像速度の変化量を無視して前記第2の時点における前記第2の速度比の算出を行わないように形成されていることが好ましい。
【0025】
そして、このような構成によれば、例えば、トンネル内に、空調用のファンやパイプ等のトンネル上壁面よりも自車両側に近い位置に物体が存在する場合には、このような近い物体を撮影することによって映像速度が一時的に大きな変化量を示すことがあるが、このような短時間変化は無視することによって、GPS受信不能期間の走行環境に適合した正確な第2の車速を算出することができ、自車位置精度をさらに向上させることができる。
【0026】
さらに、前記映像速度算出手段は、前記車載カメラの撮影映像を複数の映像領域に分割し、分割された各映像領域ごとの映像の時間変化に基づいて前記映像領域ごとの映像速度をそれぞれ算出し、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間内の任意の時点において、前記映像領域ごとの映像速度の変化量が前記閾値変化量以上となるような前記映像領域の数が所定数に満たない場合には、前記映像領域ごとの映像速度の変化量が前記閾値変化量以上となるような前記映像領域を除いた他の前記映像領域における前記映像領域ごとの映像速度の平均値を、前記任意の時点における前記第2の車速の算出に用いる前記映像速度とするように形成されていることが好ましい。
【0027】
そして、このような構成によれば、例えば、トンネル内のファンやパイプの撮影映像は、車載カメラの撮影映像全体に対する面積比が小さいため、このことを利用して、映像領域ごとの映像速度が大きな変化を示した映像領域が少数の場合には、これらの映像領域を無視して他の映像領域についての映像領域ごとの映像速度に基づいて、第2の速度の算出に用いる映像速度を求めることができるので、GPS受信不能期間の走行環境に適合した正確な第2の車速を算出することができ、自車位置精度をさらに向上させることができる。
【0028】
さらにまた、前記車載カメラは、前記自車両の上方を撮影可能に配設されていることが好ましい。
【0029】
そして、このような構成によれば、GPS受信不能期間において、自車両の上方が遮蔽される場合には、自車両の上方の撮影対象の撮影映像に基づいて映像速度を算出し、これを第2の車速の算出に用いることができるので、このような上方が遮蔽されるGPS受信不能期間の走行の際における自車位置の算出に有利となる。
【0030】
また、前記GPS受信不能期間は、前記自車両がトンネル内または高架下を走行している期間とされていることが好ましい。
【0031】
そして、このような構成によれば、トンネルの上壁面または高架道路の底面の撮影映像に基づいて映像速度を算出し、これをトンネル内または高架下を走行している期間における第2の車速の算出に用いることができるので、トンネル内または高架下の走行の際における自車位置の算出に有利となる。
【0032】
さらに、前記車載カメラは、前記自車両の左側方および右側方を撮影可能に配設されており、前記映像速度算出手段は、前記左側方の撮影映像の時間変化に基づいて算出された左側方の映像速度と、前記右側方の撮影映像の時間変化に基づいて算出された右側方の映像速度との平均値を前記第2の車速の算出に用いる前記映像速度とするように形成されていることが好ましい。
【0033】
そして、このような構成によれば、GPS受信不能期間において、自車両の左側方および右側方が遮蔽される場合には、自車両の左側方の撮影対象の撮影映像と右側方の撮影対象の撮影映像との双方に基づいて映像速度を平均値として算出し、これを第2の車速の算出に用いることができるので、このような左側方および右側方が遮蔽されるGPS受信不能期間の走行の際における自車位置の算出に有利となる。特に、道路上の走行の際には、車線変更によって車載カメラと両側方の撮影対象との距離が変化するが、両側方の映像速度の平均値をとれば、映像速度を適切に算出することができる。
【0034】
さらにまた、前記GPS受信不能期間は、前記自車両が高層ビルの谷間を走行している期間とされていることが好ましい。
【0035】
そして、このような構成によれば、ビルの撮影映像に基づいて映像速度を算出し、これをビルの谷間を走行している期間における第2の車速の算出に用いることができるので、ビルの谷間の走行の際における自車位置の算出に有利となる。
【0036】
また、前記車載カメラは、車載用ナビゲーション装置本体に直接搭載されていることが好ましい。
【0037】
そして、このような構成によれば、車載用ナビゲーション装置本体と車載カメラとを一体的に扱うことができ、自車両に対する取り付けをさらに簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、車速パルスを用いずとも正確な車速を算出することによってGPS信号の受信が不可能な地点における自車位置を高精度に算出することができ、ひいては、経路誘導を確実に行うことができる。また、白線認識のような複雑な画像処理は要せず、映像速度によって車速を算出することができるので、コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0040】
本実施形態における車載用ナビゲーション装置は、自車両に着脱可能に配設される車載用ポータブルナビゲーション装置とされているとともに、配線数を削減して自車両への着脱を容易にする観点から、車速パルスは入力されず、自車位置の算出に車速パルスを用いないようになっている。
【0041】
図1は、このような本実施形態における車載用ナビゲーション装置1を示したものである。
【0042】
この図1に示すように、本実施形態における車載用ナビゲーション装置1は、大別して、ナビゲーションのための主たる処理や制御を行うナビゲーションメインユニット2と、このナビゲーションメインユニット2にそれぞれ接続された車載カメラ3、GPS受信手段としてのGPSレシーバ5、記憶装置6、入力操作部7、ディスプレイ8およびスピーカ9とによって構成されている。
【0043】
車載カメラ3は、自車両の周辺の所定の撮影領域を撮影するようになっている。この車載カメラ3は、例えば、魚眼レンズ等の超広角レンズを備え、CCDあるいはCMOS等の固体撮像素子の撮像面に撮影対象の像を結像させるカメラであってもよい。
【0044】
この車載カメラ3は、車載用ナビゲーション装置1の装置本体に、長いケーブル等を介さずに直接搭載されている(装置本体とユニット化されている)ことが好ましい。このようにすれば、車載用ナビゲーション装置1の装置本体を自車両に着脱させる際に、車載カメラ3と装置本体とを一体的に扱うことができるので、車載用ナビゲーション装置1の自車両への着脱がさらに容易となる。
【0045】
GPSレシーバ5は、GPS衛星11から、軌道および時刻等に関する情報を含むGPS信号を受信し、受信されたGPS信号をナビゲーションメインユニット2に入力するようになっている。
【0046】
記憶装置6には、地図データが記憶された記憶媒体が搭載されている。この記憶装置6は、例えば、記憶媒体としてのDVDが搭載されたDVDドライブであってもよいし、または、ハードディスクドライブであってもよい。
【0047】
また、入力操作部7は、例えば、リモコン、リニアエンコーダ、ロータリエンコーダまたは、ディスプレイ8のタッチパネルであってもよい。
【0048】
ナビゲーションメインユニット2について詳述すると、このナビゲーションメインユニット2は主制御部としてのナビCPU12を有している。
【0049】
ナビCPU12には、システムバス15およびカメラインターフェース(I/F)14を介して車載カメラ3が接続されており、この車載カメラ3による撮影映像が、カメラインターフェース14およびシステムバス15を経てナビCPU12に入力されるようになっている。
【0050】
また、ナビCPU12には、GPSレシーバ5が接続されており、このGPSレシーバ5からのGPS信号が、ナビCPU12に入力されるようになっている。
【0051】
さらに、ナビCPU12には、システムバス15を介してデコーダ16が接続されており、このデコーダ16には、記憶装置6が接続されている。デコーダ16は、記憶装置6がナビCPU12からの読出し要求にしたがって読出した地図データをデコードし、デコードされた地図データをナビCPU12に入力するようになっている。
【0052】
さらにまた、ナビCPU12には、システムバス15および画像インターフェース(I/F)17を介してディスプレイ8が接続されている。
【0053】
また、ナビCPU12には、システムバス15およびユーザインターフェース(I/F)19を介して入力操作部7が接続されている。
【0054】
さらに、ナビCPU12には、音声インターフェース(I/F)18を介してスピーカ9が接続されている。
【0055】
さらにまた、ナビCPU12には、システムバス15を介してメモリ20が接続されている。
【0056】
また、ナビCPU12には、ジャイロセンサ等からなる方位センサ21が接続されており、この方位センサ21によって検出された自車両の方位が、ナビCPU12に入力されるようになっている。
【0057】
ナビCPU12についてさらに詳述すると、このナビCPU12は、衛星航法手段としての衛星航法部22を有しており、この衛星航法部22は、GPSレシーバ5によって受信されて入力されたGPS信号に基づいて自車位置(以下、衛星航法位置と称する)を算出するようになっている。
【0058】
また、ナビCPU12は、第1の車速算出手段としての衛星航法時車速算出部23を有しており、この衛星航法時車速算出部23は、衛星航法部22によって算出された衛星航法位置の時間変化に基づいて、第1の車速としての衛星航法時車速を算出するようになっている。
【0059】
さらに、ナビCPU12は、映像速度算出手段としての映像速度算出部24を有しており、この映像速度算出部24は、車載カメラ3の撮影映像を取得し、取得された撮影映像の時間変化に基づいて、当該撮影映像が自車両の走行方向の逆方向に流れる速度(相対速度)である映像速度を算出するようになっている。
【0060】
さらにまた、ナビCPU12は、速度比算出手段としての速度比算出部25を有している。この速度比算出部25は、GPSレシーバ5によるGPS信号の受信が不可能となった時点において、当該時点の直前において衛星航法時車速算出部23によって最後に算出された衛星航法時車速(以下、GPS受信不能直前車速と称する)を、当該GPS信号の受信が不可能となった時点における映像速度(以下、GPS受信不能開始時映像速度と称する)によって除した値である速度比を算出するようになっている。なお、GPS受信不能直前車速をa〔km/h〕、GPS受信不能開始時映像速度をb〔km/h〕、速度比をKとした場合には、K=a/bの関係式が成立する。
【0061】
この速度比算出部25は、算出された速度比を、速度比記憶手段としてのメモリ20に記憶させるようになっている。
【0062】
また、ナビCPU12は、第2の車速算出手段としての自律航法用車速算出部27を有している。この自律航法用車速算出部27は、GPS信号の受信が不可能となった時点からGPS信号の受信が回復する時点までの間の期間であるGPS受信不能期間において、この期間における映像速度(以下、GPS受信不能期間時映像速度と称する)に、メモリ20によって記憶された速度比を乗じることによって、第2の車速としての自律航法用車速を算出するようになっている。なお、GPS受信不能期間時映像速度をb’〔km/h〕、自律航法用車速をa’〔km/h〕、速度比をKとした場合には、a’=b’×Kの関係式が成立する。
【0063】
さらに、ナビCPU12は、自律航法手段としての自律航法部28を有しており、この自律航法部28は、自律航法用車速算出部27によって算出された自律航法用車速と、方位センサ21によって検出された方位とを用いることによって、GPS受信不能期間における自車位置(以下、自律航法位置と称する)を算出するようになっている。つまり、本実施形態においては、車速パルスに代替する自律航法用車速を用いて自律航法が行われることになる。
【0064】
このような構成によれば、車速(GPS受信不能直前車速)と映像速度(GPS受信不能開始時映像速度)との相関関係(速度比)が、GPS受信不能期間において維持されるとみなした上で、速度比にGPS受信不能期間時映像速度を乗じることによって、擬似的な衛星航法時車速としての自律航法用車速を算出し、この自律航法用車速を自律航法に用いるようにしたので、車速パルスを用いずとも車速パルスに代替し得る正確な車速を算出することによってGPS信号の受信が不可能な地点における自律航法位置を高精度に算出することができる。
【0065】
なお、GPS受信不能期間としては、例えば、自車両がトンネル内、高架下または高層ビルの谷間等を走行している期間を考えることができる。
【0066】
さらに、より好ましい実施形態としては、GPS受信不能期間の開始後における(すなわち開始時を除く)GPS受信不能期間(以下、開始後受信不能期間と称する)において、映像速度の変化量(以下、映像速度変化量と称する)が閾値変化量以上となった場合には、速度比算出部25が、第2の車速比としての修正車速比を算出するようにする。なお、修正車速比は、映像速度変化量が閾値変化量以上となった時点の直前に自律航法用車速算出部27によって最後に算出された自律航法用車速(以下、閾値変化直前車速と称する)を、当該映像速度変化量が閾値変化量以上となった時点における映像速度(以下、閾値変化時映像速度と称する)によって除した値を有する。
【0067】
そして、このように修正車速比が算出された場合には、メモリ20が、速度比算出部25によって算出された修正速度比を記憶するようにする。
【0068】
また、この場合には、自律航法用車速算出部27が、開始後受信不能期間のうちの映像速度変化量が閾値変化量以上となった時点からGPS信号の受信が回復または映像速度変化量が再度閾値変化量以上となる時点までの間の一部の期間(以下、閾値変化以後期間と称する)において、当該閾値変化以後期間における映像速度に、メモリ20に記憶された修正速度比を乗じることによって、修正速度比を用いた自律航法用車速の算出を行うようにする。
【0069】
さらに、この場合には、自律航法部28が、修正速度比を用いて算出された自律航法用車速を用いることによって、閾値変化以後期間における自律航法位置を算出するようにする。
【0070】
このような構成によれば、閾値変化以後期間の開始時において映像速度が大きな変化量を示した場合には、実際の車速が変化したのではなく走行環境(例えば、トンネルの上壁面の高さ)が変化して車載カメラ3と撮影対象との距離が変化したと判断した上で、車速と映像速度との相関関係を、当初の速度比から修正速度比へと修正することができる。そして、閾値変化以後期間においては、修正速度比が維持されるとみなし、修正速度比に閾値変化以後期間における映像速度を乗じることによって、新たな算出方法による自律航法用車速を算出することができる。この結果、GPS受信不能期間内において車載カメラ3と撮影対象との距離が変化した場合においても、この変化に追従して車速パルスに代替し得る自律航法用車速を適切に算出することができ、高精度な自車位置をさらに安定的に算出することができる。
【0071】
さらに、より好ましい実施形態としては、開始後受信不能期間において、映像速度変化量がN回目(但し、Nは、1以上の任意の自然数)に閾値変化量以上となった場合には、速度比算出部25が、N回目の第2の車速比としてのN回目の修正車速比を算出するようにする。ここで、N回目の修正車速比は、映像速度変化量がN回目に閾値変化量以上となった時点の直前における自律航法用車速(以下、N回目の閾値変化直前車速と称する)を、当該映像速度変化量がN回目に閾値変化量以上となった時点における映像速度(以下、N回目の閾値変化時映像速度と称する)によって除した値を有する。
【0072】
そして、このように、N回目の修正車速比が算出された場合には、メモリ20が、速度比算出部25によって算出されたN回目の修正速度比を記憶するようにする。
【0073】
また、この場合には、自律航法用車速算出部27が、GPS受信不能期間のうちの映像速度変化量がN回目に閾値変化量以上となった時点からGPS信号の受信が回復または映像速度変化量が再度閾値変化量以上となる時点までの間の一部の期間(以下、N回目の閾値変化以後期間と称する)において、当該N回目の閾値変化以後期間における映像速度に、メモリ20に記憶されたN回目の修正速度比を乗じることによって、N回目の修正速度比を用いたN回目の自律航法用車速の算出を行うようにする。
【0074】
さらに、この場合には、自律航法部28が、算出されたN回目の自律航法用車速を用いることによって、N回目の閾値変化以後期間における自律航法位置を算出するようにする。
【0075】
そして、このような構成によれば、開始後受信不能期間内において複数回にわたって車載カメラと撮影対象との距離が変化した場合においても、これらの変化に追従して車速パルスに代替し得る自律航法用車速を逐次算出することができ、自車位置精度をさらに安定的に確保することができる。
【0076】
さらに、より好ましい実施形態としては、ナビゲーションメインユニット2内に加速度センサを配設した上で、開始後受信不能期間内における映像速度変化量が閾値変化量以上となる時点において、加速度センサの算出結果が閾値加速度以下となる場合に、速度比算出部25が修正速度比を算出するようにする。
【0077】
そして、このような構成によれば、加速度センサの算出結果に基づいて実際の車速が大きく変化していないことを確認した上で修正速度比を算出することができるので、自律航法用車速をさらに適切に算出することができ、自車位置をさらに高精度に算出することができる。
【0078】
さらに、より好ましい実施形態としては、開始後受信不能期間において、速度比算出部25が、映像速度変化量が閾値変化量以上となる第1の時点から映像速度変化量が再度閾値変化量以上となる第2の時点までの間の時間を検出し、検出された時間が閾値時間に満たない場合には、第2の時点における映像速度の変化量を無視して第2の時点における修正速度比の算出を行わないようにする。
【0079】
このような構成は、例えば、車載カメラ3を自車両の上方を撮影可能に配設した上で、GPS受信不能期間としてのトンネル内の走行期間において、車載カメラ3によるトンネルの上壁面の撮影映像についての映像速度を自律航法用車速の算出に用いる場合に有効となる。すなわち、トンネル内において、空調用のファンやパイプ等のトンネル上壁面よりも自車両側に近い位置に物体が存在する場合には、このような近い物体を一時的に撮影することによって映像速度が大きな変化量を示すことがある。しかし、このような映像速度の変化は、自車両がファンやパイプを通過する僅かな時間において生じるものに過ぎず、トンネル内の上壁面の高さの変化のような走行環境の大きな変化を起因としたものではない。そこで、このような短時間変化は無視することによって、GPS受信不能期間の走行環境(トンネルの上壁面の高さ)に適合した正確な自律航法用車速を算出することができ、自車位置精度をさらに向上させることができる。
【0080】
さらに、より好ましい実施形態としては、映像速度算出部24が、車載カメラ3による撮影映像を複数の映像領域に分割(例えば、25分割)し、分割された各映像領域ごとの映像の時間変化に基づいて映像領域ごとの映像速度をそれぞれ算出するようにする。そして、開始後受信不能期間における任意の時点において、映像領域ごとの映像速度の変化量が閾値変化量以上となるような映像領域の数が所定数に満たない場合には、その所定数に満たない映像領域を除いた他の映像領域についての映像領域ごとの映像速度の平均値を、前記任意の時点における自律航法用車速の算出に用いる映像速度とする。
【0081】
このような構成も、例えば、前述したようなトンネル内の走行における自律航法用車速の算出に好適な構成となる。すなわち、トンネル内のファンやパイプの撮影映像は、車載カメラ3の撮影映像全体に対する面積比が小さい。そこで、このことを利用して、映像領域ごとの映像速度が大きな変化を示した映像領域が少数の場合には、これらの少数の映像領域が、自律航法用車速の算出には寄与すべきでないファンやパイプを撮影したものであるとみなして無視し、トンネルの上壁面を撮影したものとみなされる他の映像領域ついての映像領域ごとの映像速度に基づいて、自律航法用車速を求めることができる。これにより、GPS受信不能期間の走行環境に適合した正確な自律航法用車速を算出することができ、自車位置精度をさらに向上させることができる。
【0082】
さらに、より好ましい実施形態としては、複数台の車載カメラ3を、自車両の左側方および右側方を撮影可能に配設した上で、映像速度算出部24が、左側方の撮影映像の時間変化に基づいて算出された左側方の映像速度と、右側方の撮影映像の時間変化に基づいて算出された右側方の映像速度との平均値を、自律航法用車速の算出に用いる映像速度の算出結果とするように構成する。
【0083】
このような構成によれば、例えば、ビルの谷間を走行する場合等、GPS受信不能期間において、自車両の左側方および右側方が遮蔽される場合には、自車両の左側方の撮影対象(例えば、左側方のビルの壁面)の撮影映像と右側方の撮影対象(例えば、右側方のビルの壁面)の撮影映像との双方に基づいて映像速度を平均値として算出し、これを自律航法用車速の算出に用いることができる。ここで、道路上の走行の際には、車線変更によって例えば車載カメラ3と自車両の左側方の撮影対象との距離が変化することは当然に起こり得るが、前述のように左右の両側方の映像速度の平均値をとれば、このような走行の実情を加味した上で適切な映像速度を算出することができる。
【0084】
以上の構成の他にも、本実施形態における車載用ナビゲーション装置1は、ナビゲーションのための種々の構成を有している。
【0085】
すなわち、ナビCPU12は、マップマッチング処理部29を有しており、このマップマッチング処理部12は、自律航法部28によって算出された自律航法位置および衛星航法部22によって算出された電波航法位置が、地図上の該当する道路上にない場合には、自車位置を地図上の該当する道路上に補正させるマップマッチング処理を行うようになっている。このマップマッチング処理は、記憶装置6から地図データを読み出し、読み出された地図データを用いて行われるようになっている。このマップマッチング処理部29によるマップマッチング処理が適切に行われた場合には、マップマッチング処理後の自車位置が、最終的な自車位置の算出結果となる。
【0086】
また、ナビCPU12は、地図描画部31を有しており、この地図描画部31は、記憶装置6から読み出された地図データを用いることによって自車位置周辺の地図を生成し、生成された地図をシステムバス15および画像インターフェース17を介してディスプレイ8に表示するようになっている。
【0087】
さらに、ナビCPU12は、自車位置描画部32を有しており、この自車位置描画部32は、マップマッチング処理部29によるマップマッチング処理の結果に基づいて、自車位置周辺の地図上に、自車位置を示す自車位置マークを表示させるようになっている。
【0088】
さらにまた、ナビCPU12は、目的地設定部33を有しており、この目的地設定部33は、ナビCPU12によってディスプレイ8に表示された目的地設定用の操作画面に対する入力操作部7を用いたユーザの入力操作に応じた目的地を設定するようになっている。
【0089】
また、ナビCPU12は、経路探索部35を有しており、この経路探索部35は、自車位置から目的地までの推奨経路を探索する経路計算を、記憶装置6から読み出された地図データを用いて行うようになっている。
【0090】
さらに、ナビCPU12は、経路誘導部36を有しており、この経路誘導部36は、経路探索部35によって探索された推奨経路に沿って自車を目的地まで経路誘導(ルート案内)するようになっている。この経路誘導は、ディスプレイ8への案内画像(例えば、地図上への推奨経路の重畳表示画像や交差点拡大図)の表示によるものであってもよく、または、スピーカ9からの案内音声(例えば、交差点右左折案内)の出力によるものであってもよく、あるいは、これら表示と音声との双方によるものであってもよい。
【0091】
次に、本実施形態における車載用ナビゲーション装置1のより具体的な動作例について、場合を分けて説明する。
(第1の動作例)
第1の動作例としては、図2に示すように、自車両の上方を撮影する車載カメラ3が搭載されているとともに、自車両の例えばインパネ上部に取り付けれた車載用ナビゲーション装置1について、自車両がトンネル内に進入する場合における動作について説明する。
【0092】
なお、初期状態(図2における時刻t)において、自車両は、トンネルの入口の手前を走行しているものとする。また、初期状態においては、衛星航法部22による衛星航法位置の算出および映像速度算出部24による映像速度の算出が、自車両の走行にともなっいて継続的に行われているものとする。
【0093】
そして、初期状態から、自車両がトンネル内に進入すると、GPSレシーバ5によるGPS信号の受信が不可能となり、衛星航法位置が算出不能となる。これにより、GPS受信不能期間が開始する(図2における時刻t)。
【0094】
このとき、図2に示すように、速度比算出部25により、図2に示すGPS受信不能直前車速a〔km/h〕をGPS受信不能開始時映像速度b〔km/h〕によって除することによって、速度比K(=a/b)を算出するとともに、算出された速度比Kをメモリ20に記憶させる。なお、図2に示すように、GPS受信不能期間の開始直前と開始直後においては、車速がともに一致しているとみなしている。
【0095】
ここで、GPS受信不能開始時映像速度bのような車載カメラ3の撮影映像の映像速度の具体的な算出方法について触れておく。
【0096】
映像速度の算出にあたっては、まず、図3(a)に示すように、車載カメラ3の撮影映像を示す画像データとして、時刻(t)における画像データと、時刻(t+1)における画像データとを用意する。これら両画像データは、縦横に配置された複数のドットによって構成されているとともに、縦横双方のドット数が互いに一致している。なお、図3(a)においては、以下の説明を分かり易くするために、簡単なモデルとして、10個のドットが縦に並んだ1列分のドット列が、横方向に10列分並べられた10×10ドットの画像データが示されているが、実際の画像データは、さらに多数のドットによって構成される。また、図3(a)において、各ドット内の濃淡は、画像の濃淡を表している。さらに、図3(a)においては、自車両の走行方向が、図3(a)における右方向に相当している。
【0097】
次いで、図3(b)に示すように、時刻(t)における画像データから走行方向逆方向側端部より走行方向に向かってドット列を何列カットし、また、時刻(t+1)における画像データから走行方向側端部より走行方向逆方向に向かってドット列を何列カットすれば、互いの画像データが一致するかを求める。具体的には、ドット列のカット数を0列からn列(nは、通常は画面幅の半分程度)まで順次増加させて行き、各カット数のドット列カットが行われた際に、その都度、ドット列カットが行われた後の画像データのデータ列から相関係数を算出する。
【0098】
ここで、相関係数の算出に用いる時刻(t)における画像データのデータ列は、図3(b)に示すように、図3(a)の状態から左側のn列分(図3(b)において2列分)のドット列カットが行われた後の時刻(t)における画像データの各ドットを、先頭のドットxから順次縦方向に繋ぎ合わせた1列データ{x}(i=1,2・・・,k)(但し、kは、ドット列カットが行われた後の画像データの総ドット数)とされている。なお、xと同じ列の末尾のドットx10には、隣の列の先頭のドットx11が繋がっている。
【0099】
また、相関係数の算出に用いる時刻(t+1)における画像データのデータ列は、図3(b)に示すように、図3(a)の状態から右側のn列分(図3(b)における2列分)のドット列カットが行われた後の時刻(t+1)における画像データの各ドットを、先頭のドットyから順次縦方向に繋ぎ合わせた1列データ{y}(i=1,2・・・,k)(但し、kは、ドット列カットが行われた後の画像データの総ドット数)とされている。なお、yと同じ列の末尾のドットy10には、隣の列の先頭のドットy11が繋がっている。
【0100】
そして、このようなデータ列{x}、{y}を用いることによって、相関係数Cは次の(1)式のように算出される。
【0101】
【数1】

【0102】
このようにして、ドット列のカット数ごとの相関係数Cを求めた上で、図4のグラフに示すように、相関係数Cが最も1に近いカット数に相当するドットの走行方向への変位量〔ドット〕を、映像速度とする。なお、映像速度は、カット数に相当するドットの変位量を時速〔km/h〕や秒速〔m/s〕に換算したものであってもよいし、あるいは、ドット単位のまま扱うようにしてもよい。なお、図3(b)においては、2列分のドット列カットによって、時刻(t)における画像データと時刻(t+1)における画像データとが互いに一致するため、2ドットあるいはその時速への換算値が映像速度となる。
【0103】
さて、図2に戻って、自車両がトンネル内を走行しているGPS受信不能期間(例えば、図2における時刻t)においては、自律航法用車速算出部27により、映像速度算出部24によって逐次算出されるGPS受信不能期間時映像速度b’〔km/h〕に、メモリ20から読み出した速度比Kを乗じることによって、自律航法用車速a’(=b’×K)〔km/h〕を逐次算出する。
【0104】
そして、自律航法部28により、自律航法用車速算出部27によって逐次算出される自律航法用車速a’を用いることによって、自律航法位置を逐次算出する。
【0105】
このような動作により、トンネル内において衛星航法を行うことができない場合であっても、車速パルスを要することなく、車速パルスに代替し得る自律航法用車速を算出して自律航法を行うことができる。
(第2の動作例)
第2の動作例としては、図5に示すように、自車両の上方を撮影する車載カメラ3を備えた上で、自車両がトンネル内に進入し、トンネル内の走行中にトンネルの上壁面の高さが変化する場合における車載用ナビゲーション装置1の動作について説明する。
【0106】
なお、第1の動作例と同様に、初期状態(図5における時刻t)において、自車両は、トンネルの入口の手前を走行しているものとする。また、初期状態においては、衛星航法部22による衛星航法位置の算出および映像速度算出部24による映像速度の算出が、自車両の走行にともなって継続的に行われているものとする。
【0107】
そして、初期状態から、自車両がトンネル内に進入すると、GPSレシーバ5によるGPS信号の受信が不可能となり、GPS受信不能期間が開始する(時刻t)。
【0108】
このとき、図5に示すように、速度比算出部25により、図5に示すGPS受信不能直前車速a〔km/h〕をGPS受信不能開始時映像速度b〔km/h〕によって除することによって、速度比K(=a/b)を算出するとともに、算出された速度比Kをメモリ20に記憶させる。
【0109】
そして、自車両がトンネル内を走行しているGPS受信不能期間(例えば、時刻t)においては、自律航法用車速算出部27により、映像速度算出部24によって逐次算出されるGPS受信不能期間時映像速度b〔km/h〕に、メモリ20から読み出した速度比Kを乗じることによって、自律航法用車速a(=b×K)〔km/h〕を逐次算出する。
【0110】
そして、自律航法部28により、自律航法用車速算出部27によって逐次算出される自律航法用車速aを用いることによって、自律航法位置を逐次算出する。
【0111】
次いで、自車両が、トンネルの上壁面の高さが変化する位置に到達すると、映像速度変化量が、閾値変化量以上となり、閾値変化以後期間が開始する。
【0112】
これにより、速度比算出部25は、図5に示すように、閾値変化直前車速aを閾値変化時映像速度bによって除することによって、修正速度比K’を算出し、算出された修正速度比K’を、メモリ20に記憶させる(時刻t)。
【0113】
そして、閾値変化以後期間(例えば、時刻t)においては、自律航法用車速算出部27により、映像速度算出部24によって逐次算出されるGPS受信不能期間時映像速度b〔km/h〕に、メモリ20から読み出した修正速度比K’を乗じることによって、閾値変化以後期間における自律航法用車速a(=b×K’)〔km/h〕を逐次算出する。
【0114】
そして、自律航法部28により、自律航法用車速算出部27によって逐次算出される自律航法用車速aを用いることによって、閾値変化以後期間における自律航法位置を逐次算出する。
【0115】
このような動作により、トンネルの上壁面の高さが変化した場合であっても、この変化に追従して常に適切な自律航法を行うことができる。
【0116】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0117】
例えば、車載カメラ3を自車両の上方を撮影可能に配設するような場合には、マップマッチング処理によって自車両がトンネルや高架下の付近に到達した場合に車載カメラ3を起動することによって、電力消費量を抑えるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、第1の動作例を説明するための説明図
【図3】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、映像速度の算出方法の一例を説明するための画像データを示す図
【図4】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、映像速度の算出方法の一例を説明するための相関係数を示すグラフ
【図5】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、第1の動作例を説明するための説明図
【符号の説明】
【0119】
1 車載用ナビゲーション装置
3 車載カメラ
5 GPSレシーバ
20 メモリ
22 衛星航法部
23 衛星航法時車速算出部
24 映像速度算出部
25 速度比算出部
27 自律航法用車速算出部
28 自律航法部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置の算出に車速パルスを用いない車載用ナビゲーション装置であって、
自車両の周辺における所定の撮影領域を撮影する車載カメラと、
GPS衛星から送信されるGPS信号を受信可能とされたGPS受信手段と、
このGPS受信手段によって受信された前記GPS信号に基づいて自車位置を算出する衛星航法手段と、
この衛星航法手段によって算出された前記自車位置の時間変化に基づいて第1の車速を算出する第1の車速算出手段と、
前記車載カメラの撮影映像の時間変化に基づいて前記撮影映像が前記自車両の走行方向の逆方向に流れる速度である映像速度を算出する映像速度算出手段と、
前記GPS受信手段による前記GPS信号の受信が不可能となった時点において、当該時点の直前における前記第1の車速を当該時点における前記映像速度によって除した値である速度比を算出する速度比算出手段と、
この速度比算出手段によって算出された前記速度比を記憶する速度比記憶手段と、
前記GPS信号の受信が不可能となった時点から前記GPS信号の受信が回復する時点までの間の期間であるGPS受信不能期間において、当該GPS受信不能期間における前記映像速度に前記速度比記憶手段によって記憶された前記速度比を乗じることによって第2の車速を算出する第2の車速算出手段と、
この第2の車速算出手段によって算出された前記第2の車速を用いることによって、前記GPS受信不能期間における自車位置を算出する自律航法手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記速度比算出手段は、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間において、前記映像速度の変化量が閾値変化量以上となった場合には、前記変化量が閾値変化量以上となった時点の直前における前記第2の車速を当該時点における前記映像速度によって除した値である第2の速度比を算出するように形成され、
前記速度比記憶手段は、前記速度比算出手段によって前記第2の速度比が算出された場合には、当該第2の速度比を記憶するように形成され、
前記第2の車速算出手段は、前記速度比記憶手段によって前記第2の速度比が記憶された場合には、前記GPS受信不能期間のうちの前記変化量が閾値変化量以上となった時点から前記GPS信号の受信が回復または前記変化量が再度前記閾値変化量以上となる時点までの間の一部の期間において、当該一部の期間における前記映像速度に、前記速度比記憶手段によって記憶された前記第2の速度比を乗じることによって、当該第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出を行うように形成され、
前記自律航法手段は、前記第2の車速算出手段によって前記第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出が行われた場合には、当該第2の車速を用いることによって、前記一部の期間における自車位置を算出するように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記速度比算出手段は、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間において、前記映像速度の変化量がN回目(但し、Nは、1以上の任意の自然数)に閾値変化量以上となった場合には、前記変化量がN回目に閾値変化量以上となった時点の直前における前記第2の車速を当該時点における前記映像速度によって除することにより、N回目の前記第2の速度比の算出を行うように形成され、
前記速度比記憶手段は、前記速度比算出手段によって前記N回目の第2の速度比の算出が行われた場合には、当該N回目に算出された第2の速度比を記憶するように形成され、
前記第2の車速算出手段は、前記速度比記憶手段によって前記N回目に算出された第2の速度比が記憶された場合には、前記GPS受信不能期間のうちの前記変化量がN回目に閾値変化量以上となった時点から前記GPS信号の受信が回復または前記変化量が再度前記閾値変化量以上となる時点までの間のN回目の一部の期間において、当該N回目の一部の期間における前記映像速度に、前記速度比記憶手段によって記憶された前記N回目に算出された第2の速度比を乗じることによって、当該N回目に算出された第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出を行うように形成され、
前記自律航法手段は、前記第2の車速算出手段によって前記N回目に算出された第2の速度比を用いた前記第2の車速の算出が行われた場合には、当該第2の車速を用いることによって、前記N回目の一部の期間における自車位置を算出するように形成されていること
を特徴とする請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
加速度センサを備え、
前記速度比算出手段は、前記変化量が閾値変化量以上となる時点において、前記加速度センサの算出結果が閾値加速度以下となる場合に、前記第2の速度比を算出するように形成されていること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記速度比算出手段は、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間において、前記変化量が閾値変化量以上となる第1の時点から前記変化量が再度前記閾値変化量以上となる第2の時点までの間の時間を検出し、検出された前記時間が閾値時間に満たない場合には、前記第2の時点における前記映像速度の変化量を無視して前記第2の時点における前記第2の速度比の算出を行わないように形成されていること
を特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記映像速度算出手段は、前記車載カメラの撮影映像を複数の映像領域に分割し、分割された各映像領域ごとの映像の時間変化に基づいて前記映像領域ごとの映像速度をそれぞれ算出し、前記GPS受信不能期間の開始後における当該GPS受信不能期間内の任意の時点において、前記映像領域ごとの映像速度の変化量が前記閾値変化量以上となるような前記映像領域の数が所定数に満たない場合には、前記映像領域ごとの映像速度の変化量が前記閾値変化量以上となるような前記映像領域を除いた他の前記映像領域における前記映像領域ごとの映像速度の平均値を、前記任意の時点における前記第2の車速の算出に用いる前記映像速度とするように形成されていること
を特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記車載カメラは、前記自車両の上方を撮影可能に配設されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記GPS受信不能期間は、前記自車両がトンネル内または高架下を走行している期間とされていること
を特徴とする請求項7に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記車載カメラは、前記自車両の左側方および右側方を撮影可能に配設されており、
前記映像速度算出手段は、前記左側方の撮影映像の時間変化に基づいて算出された左側方の映像速度と、前記右側方の撮影映像の時間変化に基づいて算出された右側方の映像速度との平均値を前記第2の車速の算出に用いる前記映像速度の算出結果とするように形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項10】
前記GPS受信不能期間は、前記自車両が高層ビルの谷間を走行している期間とされていること
を特徴とする請求項9に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項11】
前記車載カメラは、車載用ナビゲーション装置本体に直接搭載されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−168614(P2009−168614A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6917(P2008−6917)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】