説明

逆流電流防止回路

【課題】逆流電流防止用のダイオードやトランジスタを必要としない逆流電流防止回路を提供する。
【解決手段】制御動作用として使用するMOSトランジスタ17のバックゲートの接続先を、電源電圧Vddと出力端子11の電圧とを比較する第1電圧比較回路22の出力で駆動される第1スイッチ回路19および第2スイッチ回路20で制御し、電源電圧Vddが出力端子11の電圧より低いとき、MOSトランジスタ17の持つ寄生ダイオード18を逆流電流防止用ダイオードとして利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSトランジスタを使用する半導体集積回路装置に係り、特に、MOSトランジスタにおける逆流電流の発生を防ぐ逆流電流防止回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器においては、性能向上のために消費電力を削減して電池の稼動時間を延ばすことが強く要求されている。また、持ち運びの利便性から、小型化も要求されており、それを可能にするための手段として、基板実装部品の削減が強く要望されている。
【0003】
このような携帯機器に搭載される半導体集積回路装置において、例えば、図3(a)に示したシリーズレギュレータの制御トランジスタのように、P型拡散層2とバックゲートに電源電圧Vddが印加されたPチャネルのMOSトランジスタ8がある。このMOSトランジスタ8は図3(b)に示すようにP型拡散層1,2と、N型拡散層4によるバックゲートと、N型ウェル層5の表面に絶縁膜3を介して設けられるゲートとを備え、P型拡散層1とN型ウェル層5およびバックゲートのN型拡散層4とによってPN接合の寄生ダイオード9が構成される。MOSトランジスタ8に逆バイアスがかかったとき、P型拡散層1から寄生ダイオード9を介してP型拡散層2およびバックゲートとなるN型拡散層4に逆流電流が流れる。
【0004】
このような逆流電流を防ぐための従来の技術の一つとしては、図3(c)のようにMOSトランジスタ8のP型拡散層2と電源電圧Vddとの間にアノードに電源電圧Vddが印加された逆流電流防止用ダイオード13を設ける手段がある。
【0005】
また、別の逆流電流を防ぐための従来技術として、図4に示す特許文献1に記載の逆流電流防止用の電流遮断スイッチを設ける手段がある。
【特許文献1】特開平10−341141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図3(a)に示すこの技術は、逆流電流防止用ダイオード13の順方向の電圧降下だけMOSトランジスタ8の動作電源電圧範囲を狭くする。また、基板実装部品を増やすという点で、製造コストおよび実装面積を増やすという問題がある。
【0007】
なお、動作電源電圧範囲を狭くするという問題を解決し、かつ逆流電流を防ぐ方法として、特許文献1で報告されている技術がある。MOSトランジスタに、直列に電流遮断スイッチを配し、電源電圧監視回路により電流遮断スイッチのオン/オフ制御を行う回路がある。
【0008】
例えば、図4のようにバックゲートをソースに、ドレインを電源電圧Vddに、ゲートを電源電圧監視回路16に接続したPチャネルのMOSトランジスタ14を電流遮断スイッチとした回路がある。この回路に逆バイアスがかかったとき、電源電圧監視回路16が検知し、MOSトランジスタ14をオフするよう設定した場合、MOSトランジスタ14のP型拡散層6とバックゲートのN型拡散層7とによって構成される寄生ダイオード15の存在により、逆流電流を遮断することが可能となる。しかしながらこの技術は、出力端子と電源電圧Vdd間で大電流制御が必要な回路に使用する場合、MOSトランジスタ8の動作電源電圧を確保するため、オン抵抗の低いMOSトランジスタ14を使用しなければならない制約がある。
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題を解決することに指向するものであり、逆流電流防止用のダイオードやトランジスタを必要としない逆流電流防止回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した発明は、電源端子と出力端子を有する半導体集積回路装置の逆流電流防止回路において、ソースを電源端子に接続し、ドレインを出力端子に接続し、バックゲートを第1のスイッチ回路を介してソースと接続するとともに、第2のスイッチ回路を介してドレインと接続するMOSトランジスタと、電源端子の電圧と出力端子の電圧を比較し、第1のスイッチ回路および第2のスイッチ回路の制御信号を出力する電圧比較回路とを具備することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載した発明は、請求項1の逆流電流防止回路において、半導体集積回路装置は充電装置であって、電源端子に外部直流電源を接続し、出力端子に電池を接続したことを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、電源端子と出力端子の電圧の高低の比較によって、第1,第2のスイッチを制御し、MOSトランジスタのバックゲートとソースあるいはドレインと接続することでMOSトランジスタの寄生ダイオードを利用して逆流電流を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力端子と電源端子間に接続されたMOSトランジスタのバックゲートを制御することで、寄生ダイオードを利用して逆流電流を防止できるので、従来必要とされた逆流電流防止用ダイオードや逆流電流遮断用スイッチが不要となり、製造コストおよび基板実装面積の削減が可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態1における逆流電流防止回路を示す構成図である。図1に示すように、MOSトランジスタ17は、ソースが電源電圧Vddの電源端子10に接続され、ドレインが出力端子11と接続され、バックゲートは第1スイッチ回路19を介してソースに接続されるとともに、第2スイッチ回路20を介してドレインに接続される。
【0016】
第1電圧比較回路22は、電源電圧Vddを反転入力端子に印加され、非反転入力端子に出力端子11を接続される。第1電圧比較回路22の出力は第2スイッチ回路20を駆動するとともに、インバータ回路21を介して第1スイッチ回路19を駆動する。すなわち、第1スイッチ回路19,第2スイッチ回路20のオン/オフは、出力端子11の電圧と電源電圧Vddの高低により制御される。
【0017】
図1を参照しながら本実施形態1の動作を説明すると、第1電圧比較回路22の出力信号は、電源電圧Vddが出力端子11の電圧より高い場合、第1スイッチ回路19をオンし、第2スイッチ回路20をオフするよう制御する。このときMOSトランジスタ17はバックゲートがソース側に接続された状態となり、通常のMOSトランジスタとして制御可能となる。
【0018】
一方、電源電圧Vddが出力端子11の電圧より低い場合、第1電圧比較回路22の出力信号は第1スイッチ回路19をオフし、第2スイッチ回路20をオンように制御する。このときMOSトランジスタ17はバックゲートがドレイン側に接続された状態となり、このときMOSトランジスタ17がオフするよう設計した場合、MOSトランジスタ17の寄生ダイオード18が、出力端子11から電源電圧Vddに対しての逆流電流防止用ダイオードとなる。
【0019】
図2は本発明の実施形態2における逆流電流防止回路を示す構成図である。本実施形態2は、前述の実施形態1で説明した図1に示す構成とは、電源端子10が外部アダプタ端子23に置きかわり、出力端子11が電池電源端子26に置きかわり、MOSトランジスタ17が充電制御用のMOSトランジスタ25に置きかえられたものである。
【0020】
第2電圧比較回路30は、外部アダプタ端子23に接続した外部直流電源の電圧が反転入力端子に印加され、非反転入力端子には電池が接続される。第2電圧比較回路30の出力は第4スイッチ回路29を駆動するとともに、インバータ回路21を介して第3スイッチ回路28を駆動する。
【0021】
図2を参照しながら本実施形態2の動作説明をすると、携帯機器の外部アダプタ端子23に外部直流電源が装着されたとき、第3スイッチ回路28をオンし、第4スイッチ回路29をオフする。これにより、充電制御用のMOSトランジスタ25のバックゲートがソースに接続され、通常の充電制御動作が可能となる。
【0022】
また、外部直流電源が外されたとき、第3スイッチ回路28をオフし、第4スイッチ回路29をオンして、充電制御用のMOSトランジスタ25のバックゲートはドレインに接続され、このときMOSトランジスタ25がオフするよう設計した場合、MOSトランジスタ25の寄生ダイオード27が、電池電源端子26の電池電源から外部アダプタ端子23に対しての逆流電流防止用ダイオードとなる。
【0023】
通常、携帯機器は充電時以外、外部直流電源は外され電池電源のみで使用するため、電池電源から外部直流電源に向けて逆流電流が流れないよう逆流電流防止用ダイオードをつける必要があるが、本実施形態2により逆流電流防止用ダイオードが不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る逆流電流防止回路は、出力端子と電源端子間に接続されたMOSトランジスタのバックゲートを制御することで、寄生ダイオードを利用して逆流電流を防止でき、MOSトランジスタにおける逆流電流の発生を防ぐ回路として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1に係る逆流電流防止回路の構成を示す回路図
【図2】本発明の実施形態2に係る逆流電流防止回路の構成を示す回路図
【図3】従来の半導体集積回路装置の(a)はシリーズレギュレータの制御トランジスタの回路図、(b)は制御(MOS)トランジスタの断面図、(c)は逆流電流防止用ダイオードを設けた回路図
【図4】従来の逆流電流防止回路の構成を示す回路図
【符号の説明】
【0026】
1,2,6 P型拡散層
3 絶縁膜
4,7 N型拡散層
5 N型ウェル層
8,14,17,25 MOSトランジスタ
9,15、18,27 寄生ダイオード
10 電源端子
11 出力端子
12 制御回路
13 逆流電流防止用ダイオード
16 電源電圧監視回路
19 第1スイッチ回路
20 第2スイッチ回路
21 インバータ回路
22 第1電圧比較回路
23 外部アダプタ端子
24 充電制御回路
26 電池電源端子
28 第3スイッチ回路
29 第4スイッチ回路
30 第2電圧比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子と出力端子を有する半導体集積回路装置の逆流電流防止回路において、
ソースを前記電源端子に接続し、ドレインを前記出力端子に接続し、バックゲートを第1のスイッチ回路を介してソースと接続するとともに、第2のスイッチ回路を介してドレインと接続するMOSトランジスタと、前記電源端子の電圧と前記出力端子の電圧を比較し、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の制御信号を出力する電圧比較回路とを具備することを特徴とする逆流電流防止回路。
【請求項2】
前記半導体集積回路装置は充電装置であって、前記電源端子に外部直流電源を接続し、前記出力端子に電池を接続したことを特徴とする請求項1記載の逆流電流防止回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−109349(P2008−109349A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289696(P2006−289696)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】