説明

通信用半導体集積回路

【課題】所定の周波数の局部発振信号を発生する発振器を含むPLL回路を内蔵し、温度が変化してVCOの発振周波数が変動してもPLLループのロックがはずれにくい高周波ICを提供する。
【解決手段】発振周波数帯を切り替え可能なVCO11と可変分周回路12と位相比較回路15とループフィルタ17とを含み、ループフィルタとVCOとの間を切り離した開ループ状態で、複数の所定の固定電圧のいずれかをVCOへ印加する切替えスイッチと、所定の周波数の基準信号に対する可変分周回路の出力の位相の進みまたは遅れを判別する判別回路22と、判別回路の出力に基づいてVCOの周波数帯を切り替える信号を生成する自動バンド切り替え回路23とを設け、2分探査方式でVCOの周波数帯を切り替えながら最適な周波数帯を見つけ、さらにVCOへ印加する固定電圧を2分探査方式で切り替え最適な印加電圧を見つけPLLループをロックさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VCO(電圧制御発振器)の発振周波数を段階的に切り替え可能なPLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路に適用して有効な技術に関し、例えば無線通信の受信信号や送信信号と合成される所定の周波数の発振信号を発生するPLL回路およびそれを内蔵した通信用半導体集積回路に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機のような無線通信システムにおいては、受信信号や送信信号と合成される所定の周波数の局部発振信号を発生する発振器を含むPLL回路を備え、送信信号の変調や受信信号の復調を行う高周波用半導体集積回路(以下、高周波ICと称する)が用いられている。
【0003】
近年、携帯電話機の分野においては、GSM(Global System for Mobile Communication)とDCS(Digital Cellular System)のような2つの周波数帯の信号を扱えるデュアルバンドやさらに多くの周波数帯の信号を扱えるマルチバンド方式の携帯電話機とともに周波数帯域の広いWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式の携帯電話機が普及しつつある。これに伴って、局部発振信号を発生するPLL回路には幅広い周波数範囲で発振動作できることが要望されるようになって来ている。そこで、VCOを複数(例えば16個)の周波数帯に切り替えて使用できるようにすることによって、所望の発振周波数範囲を保持しつつVCOの制御感度を低減できるようにした発明が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この先願発明においては、動作開始前に予めVCOのすべての周波数帯について実際の周波数を測定してメモリに記憶しておいて、発振周波数情報が与えられたときにその周波数情報とメモリ内の周波数測定値とを比較して使用する最適な周波数帯を決定する方式を採用している。しかしながら、かかる方式のPLL回路にあっては、VCOの周波数帯が多くなるほど周波数の測定時間が長くなってしまうとともに、測定結果を記憶するメモリの容量を大きくしなければならないためチップサイズの増大を招くという不具合がある。
【0005】
そこで、本発明者等は、開ループ状態で所定の固定電圧をVCOへ印加可能にする切替えスイッチと、所定の周波数の基準信号に対する上記可変分周回路の出力の位相の進みまたは遅れを判別する判別回路と、該判別回路の出力に基づいてVCOの周波数帯を切り替える信号を生成する自動バンド切り替え回路とを設け、2分探査方式でVCOの周波数帯を切り替えながら最適な周波数帯を見つけて使用周波数帯を決定するようにした発明をなし、先に出願した(特願2003−337000号)。
【特許文献1】特開2003−152535号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GSM方式の無線通信システムにおいては、多重化方式としてTDM(Time Division Multiple Access)方式を採用するとともに、送受信データを8個のタイムスロット(以下、単にスロット称する)からなるフレームという単位で管理するようにしている。そして、GSMの規格ではスロットとスロットとの間に30.46μsのガード期間が許容されており、2分探査方式でVCOの周波数帯を切り替えながら最適な周波数帯を見つけて使用周波数帯を決定する前記先願発明にあっては、そのガード期間内に使用周波数帯を決定することができる。
【0007】
ところで、GSM方式の無線通信システムにおいては、1つのバンドの周波数変動範囲が狭くても、スロットの開始毎に使用周波数帯を決定する自動バンド選択動作を行なうようにしているため、温度変化によってVCOの特性が変化してもそれを補正する形で自動バンド選択が行なわれる。そのため、1つのバンドの周波数変動範囲が狭い前記先願発明のPLL回路を使用したとしても、温度変化によるVCOの特性変化でループのロックがはずれるおそれはほとんどないという利点がある。
【0008】
一方、多重化方式としてスペクトル拡散方式を用い変調方式としてQPSK(Quadrature PSK)を用いるWCDMA方式の無線通信システムがある。WCDMAにおいては、受信と送信を並行して連続して行なう。そのため、前記先願発明を適用したPLL回路を使用すると、送受信の開始前に1回だけバンド選択が行なわれるだけであるので、送受信中にチップの温度が上昇してVCOの特性が大きく変化してPLLループのロックがはずれてしまうおそれがある。そこで、VCOの制御電圧−発振周波数特性の傾きを大きくして1つのバンドの周波数受け持ち範囲を広くすることを考えた。しかしながら、VCOの制御電圧−発振周波数特性の傾きを大きくすると、VCOの発振を開始してからPLLのループがロックするまでの時間が長くなるという問題がある。
【0009】
この発明の目的は、受信信号や送信信号と合成される所定の周波数の局部発振信号を発生する発振器を含むPLL回路を内蔵し、温度が変化してVCOの発振周波数が変動してもPLLループのロックがはずれにくい通信用半導体集積回路(高周波IC)を提供することにある。
この発明の他の目的は、VCOの制御電圧−発振周波数特性の傾きを大きくしてもVCOの発振を開始してから比較的短い時間内にPLLループをロックさせることができる通信用半導体集積回路(高周波IC)を提供することにある。
【0010】
この発明のさらに他の目的は、WCDMA方式の無線通信システムのような送受信が比較的長い時間継続して行なわれる無線通信システムを構成するのに好適な通信用半導体集積回路(高周波IC)を提供することにある。
この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添附図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、発振周波数帯を切り替え可能なVCOと可変分周回路と位相比較回路とループフィルタとを含むPLLループにおいて、ループを開いた状態で、ループフィルタの電圧の代わりに複数の所定の固定電圧の中からいずれかの固定電圧をVCOへ印加可能にする切替えスイッチと、所定の周波数の基準信号に対する上記可変分周回路の出力の位相の進みまたは遅れを判別する判別回路と、該判別回路の出力に基づいてVCOの周波数帯を切り替える信号を生成する自動バンド切り替え回路とを設け、2分探査方式でVCOの周波数帯を切り替えながら最適な周波数帯を見つけさらにVCOへ印加する固定電圧を2分探査方式で切り替えながら最適な印加電圧を見つけPLLループを閉じてロックさせるようにしたものである。
【0012】
上記した手段によれば、VCOの制御電圧−発振周波数特性の傾きを大きくすることで1つのバンドが受け持つ周波数変動範囲を広くすることができ、それによって温度が変化してVCOの発振周波数が変動してもPLLループのロックがはずれにくくなる。これとともに、VCOへ印加する固定電圧を2分探査方式で切り替えながら最適な電圧を見つけて閉ループへ移行するため、VCOの制御電圧−発振周波数特性の傾きを大きくしたとしても、自然にロックするのを待つよりは比較的短い時間内にPLLループをロックさせることができる。
【0013】
また、望ましくは、2分探査方式で最適な制御電圧を見つけて閉ループへ移行する際に、制御電圧の高い方の電圧に切り替えてからループを閉じるようにする。VCOを含むPLL回路は、制御電圧が高い方から低い方に引き込む方が周波数の引き込みに要する時間が短いので、ループをロックさせるのに要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明に従うと、温度が変化してVCOの発振周波数が変動してもPLLループのロックがはずれにくくなるとともに、VCOの制御電圧−発振周波数特性の傾きを大きくしたとしてもVCOの発振を開始してから比較的短い時間内にPLLループをロックさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1には、外部からの設定周波数情報に基づいてVCOの使用バンドを自動的に選択する機能を備えた本発明に係るPLL回路の一実施例が示されている。
【0016】
この実施例のPLL回路は、電圧制御発振回路(VCO)11と、該VCO11の発振信号φ0を1/Nに分周する可変分周回路12と、16MHzのような基準発振信号φrを生成する基準発振回路13からの発振信号φrを分周する固定分周回路14と、前記可変分周回路12と固定分周回路14で分周された信号φ1,φr’の位相差を検出する位相比較回路15と、検出された位相差に応じた充電電流または放電電流を生成するチャージポンプ16と、該チャージポンプ16の出力電流に応じた電圧を生成するループフィルタ17とを備え、該ループフィルタ17で平滑された電圧が発振制御電圧Vtとして前記VCO11にフィードバックされるように構成されている。
【0017】
上記VCO11は、特に制限されるものでないが、本実施例では、32個の周波数帯(以下、バンドと称する)を有するように構成されている。固定分周回路14は1/40の分周比を有し、16MHzの基準発振信号φrefを分周して400kHzの信号を生成するように構成されている。ループフィルタ17は、容量C0と、該容量C0と並列に設けられた抵抗R1および容量C1とから2次のフィルタとして構成されている。
【0018】
また、この実施例のPLL回路は、上記チャージポンプ16とループフィルタ17との間に、チャージポンプの電流の代わりに固定電圧をループフィルタ17に供給するための切替えスイッチSW1と、VCO11の制御範囲の電圧Vmin〜Vmaxの間をほぼ均等に分割した複数の固定電圧VD1,VD2,……VDnの中からいずれかを選択して切替えスイッチSW1の一方の端子に印加するスイッチSW2とからなる切替えスイッチ回路18が設けられている。
【0019】
さらに、この切替えスイッチ回路18を制御したり上記可変分周回路12の出力と固定分周回路14の出力を比較してVCO11の使用バンドを切り替える信号を生成したりする自動バンド切り替え回路20が設けられている。なお、この実施例では、位相比較回路15とチャージポンプ16とが別個の回路として示されているが、回路形式によっては位相比較回路15の出力段がチャージポンプの電流源として動作するような回路もあるので、その場合にはチャージポンプは不要とされる。
【0020】
自動バンド切り替え回路20は、基準発振回路13からの基準発振信号φrを計数して計時を行なうタイマとしての周波数カウンタ21と、可変分周回路12の出力φ1と固定分周回路14の出力φr’を比較して可変分周回路12の出力φ1の位相が固定分周回路14の出力φr’の位相よりも進んでいるか遅れているか判別する判別回路22と、該判別回路22の判別結果に応じてVCO11のバンドを切り替えるバンド切替え制御信号VB0〜VB4を生成するバンド切り替え回路23を備える。また、自動バンド切り替え回路20は、外部から設定されるオフセットを保持するレジスタ24と、前記バンド切り替え回路23から出力されたバンド切替え制御信号VB0〜VB4に前記レジスタ24に設定されているオフセットを加算してVCO11に供給するオフセット付与回路としての加算回路25と、上記切替えスイッチ18、周波数カウンタ21、判別回路22、バンド切り替え回路23、レジスタ24、加算回路25を所定の順序で動作させて使用バンドを決定させる制御回路26なども備える。
【0021】
そして、この制御回路26は前記周波数カウンタ21をリセットするリセット信号RTや可変分周回路12および固定分周回路14をリセットするリセット信号RESを生成する機能を有するように構成されるとともに、制御回路26と可変分周回路12との間にはこのリセット信号RESのレベルを変換するレベル変換回路19が設けられている。
【0022】
図2には、本実施例において使用する電圧制御発振回路(VCO)11の構成例が示されている。
この実施例のVCOはLC共振型発振回路であり、ソースが共通接続されかつ互いにゲートとドレインとが交差結合された一対のNチャネルMOSトランジスタM1,M2と、該トランジスタM1,M2の共通ソースと接地点GNDとの間に接続された定電流源I0と、各トランジスタM1,M2のドレインと電源電圧端子Vccとの間にそれぞれ接続されたインダクタL1,L2と、上記トランジスタM1,M2のドレイン端子間に直列に接続されたバラクタ・ダイオードなどからなる可変容量素子Cv1,Cv2と、トランジスタM1,M12のドレイン端子間に直列に接続された容量C11−スイッチSW1−容量C12と、これらと並列に接続されたC21−SW2−C22,C31―SW3−C32,……C51−SW5−C52とから構成されている。
【0023】
そして、この実施例のVCOにおいては、可変容量素子Cv1,Cv2の接続ノードN0に図1のループフィルタ17からの制御電圧Vtが印加されて発振周波数が連続的に変化される一方、スイッチSW1〜SW5には、自動バンド切り替え回路20からのバンド切替え制御信号VB0〜VB4が供給され、VB0〜VB4がそれぞれハイレベルかロウレベルのいずれかにされることによって発振周波数が段階的(32段階)に変化されるように構成されている。
【0024】
また、容量C11とC12は同一容量値、C21とC22、C31とC32、C41とC42、C51とC52もそれぞれ同一容量値である。ただし、容量C11,C21,C31,C41,C51の容量値はそれぞれ2のm乗(mは0,1,2,……4)の重みを有するように設定されており、バンド切替え制御信号VB0〜VB4の組合せに応じて合成容量値Cが32段階で変化され、VCO11は図3に示す32個のバンド#0〜#31の周波数特性のいずれかで動作するようにされる。
【0025】
VCOがカバーすべき周波数範囲を広くしたい場合、制御電圧Vtによるバラクタ・ダイオードの容量値の変化のみで行なおうとすると、図3に一点鎖線Aで示すように、Vt−fvco特性が急峻になり過ぎ、VCOの感度すなわち周波数変化量と制御電圧変化量との比(Δf/ΔVt)が大きくなってノイズに弱くなる。つまり、制御電圧Vtに僅かなノイズがのっただけでVCOの発振周波数が大きく変化してしまう。
【0026】
この問題を解決するために、この実施例のVCOは、LC共振回路を構成する容量素子を複数個並列に設けて、バンド切替制御信号VB0〜VB4で接続する容量素子を32段階に切り替えてCの値を変化させることで、図3に実線で示すように、32本のVt−fvco特性線に従った発振制御を行なえるように構成され、使用するバンドに応じていずれかの特性を選択して動作させるようにされている。
【0027】
また、前述の先願発明(特願2003−337000号)のように、切替え可能なバンドの数を256本のようにさらに多くすることでさらにノイズに強くすることも可能である。ただし、そのようにすると、温度変化でVCOの発振周波数が変化してPLLのロックがはずれてしまったり、バンドの選択に要する時間が長くなり過ぎてしまうおそれがある。そこで、この実施例では、VCOの切替え可能なバンド数を32本とした。
【0028】
特に制限されるものでないが、この実施例のLC共振型発振回路においては、容量C11〜C52は半導体基板上に形成された金属膜−絶縁膜−金属膜のサンドイッチ構造の容量で構成されている。容量C11〜C52を構成する電極の面積比を適宜設定することにより所望の容量比(2のm乗)を得ることができる。以下、容量C11〜C52をバンド切替え容量と称する。容量C11〜C52として、MOSトランジスタのゲート電極と基板間の容量を用いても良い。インダクタL1,L2は、半導体基板上に形成されたアルミニウム層からなるオンチップの素子として形成することができるが、外付け素子を使用してもよい。
【0029】
次に、図1のPLL回路における自動バンド選択回路20による選択バンドの決定および固定電圧の選択の手順を、図4のタイミングチャートを用いて説明する。
外部より制御回路26に対して発振周波数の切替えを指示する信号OFCが供給されると、制御回路26から、PLLループ上の切替えスイッチ回路18の切替えスイッチSW1を固定電圧VD1〜VDn側に切り替えるスイッチ切替え信号SCと周波数カウンタ21をリセットさせる信号RTが出力されるとともに、外部から供給された可変分周回路12の分周比「N」が可変分周回路12に設定される(タイミングt1)。この分周比が発振周波数情報に相当する。
【0030】
切替えスイッチ回路18の切替えスイッチSW1が最初に固定電圧VD1〜VDn側に切り替えられる際に、スイッチSW2はこれらの電圧のうち例えば最も高い固定電圧VD1を選択する状態に設定され、この固定電圧が制御電圧VtとしてVCO11に供給され、VCOはその固定電圧に応じた周波数で発振を開始する。具体的には、例えば固定電圧として5個の電圧VN-2,VN-1,VN0,VN+1,VN+2(VN-2<VN-1<VN0<VN+1<VN+2)が用意されている場合には、最も高い電圧VN+2が選択される。
【0031】
また、周波数カウンタ21は、リセット信号RTの入力後、水晶発振回路13からの正確な基準発振信号φrにより計数動作を開始し、5μs(マイクロ秒)経過すると制御回路26に経過したことを知らせる信号が送られる。この5μsの時間は、ループフィルタ17の電圧およびループフィルタ17に供給された固定電圧でVCO11の発振周波数が安定するのに要する時間として設定されている時間である。5μsが経過すると、制御回路26は、VCOバンド切替え回路23に対してVCO11へバンド切替え制御信号VB0〜VB4を送るよう指令する信号を与える。これにより、VCO11において選択的に接続される容量素子が決定され、選択バンドが指定される(タイミングt2)。ここで最初の指定バンドは32個のバンド#0〜#31のうち中央のバンド#15である。
【0032】
次に、制御回路26は、VCO11のバンド切替えに要する短い時間(例えば0.5μs)を待ってから、可変分周回路12および固定分周回路14に対してパルス状のリセット信号RESを送る。可変分周回路12と固定分周回路14はカウンタ回路であり、リセット信号RESにより可変分周回路12と固定分周回路14は、一旦「0」にリセットされてからリセットが解除されて計数を開始する。そして、それぞれ設定された分周比「N」と「40」を計数するとそれぞれパルスφ1,φr’を出力する。
【0033】
固定分周回路14は水晶発振回路13からの正確な基準発振信号φr(16MHz)により動作するので、出力パルスφr’の周波数は400kHzで周期は2.5μsである。これらの出力パルスφ1,φr’は位相進み遅れ判別回路22に供給されており、進み遅れ判別回路22は可変分周回路12の出力パルスφ1の立ち上がりが固定分周回路14の出力パルスφr’の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているかを判別する。
【0034】
そして、位相進み遅れ判別回路22は、可変分周回路12の出力パルスφ1が遅れていると判別すると、VCOバンド切替え回路23に対して、VCO11へ現在よりも高い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB4を送るよう指令する信号を与える(タイミングt3)。一方、可変分周回路12の出力パルスφ1が進んでいると判別すると、位相進み遅れ判別回路22はVCOバンド切替え回路23に対して、VCO11へ現在よりも低い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB4を送るよう指令する信号を与える。2回目のバンド切替え制御信号VB0〜VB4により指定されるバンドは、φ1が遅れているときは#15と#31の真中の#23、φ1が進んでいるときは#15と#0の真中の#7である。
【0035】
バンドの切替え指令が行なわれると、制御回路26はVCO11のバンド切替えに要する短い時間(例えば0.5μs)を待ってから、可変分周回路12および固定分周回路14に対して再びリセット信号RESを送る。すると、可変分周回路12と固定分周回路14は、一旦「0」にリセットされてから計数を再開する。そして、それぞれ設定された分周比Nと「40」を計数するとそれぞれパルスφ1,φr’を出力し、進み遅れ判別回路22により可変分周回路12の出力パルスφ1の立ち上がりが固定分周回路14の出力パルスφr’の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているか判別される。
【0036】
そして、可変分周回路12の出力パルスφ1が遅れていると判別すると、進み遅れ判別回路22はVCOバンド切替え回路23に対して、VCO11へ現在よりも高い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB4を送るよう指令する信号を与える(タイミングt4)。一方、可変分周回路12の出力パルスφ1が進んでいると判別すると、進み遅れ判別回路22はVCOバンド切替え回路23に対して、VCO11へ現在よりも低い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB4を送るよう指令する信号を与える。3回目のバンド切替え制御信号VB0〜VB4により指定されるバンドは、#15と#23の真中の#19、#23と#31の真中の#27、#15と#7の真中の#11、または#7と#0の真中の#3のいずれかである。
【0037】
上記動作を5回繰り返すことで、32バンドの中から指定発振周波数(設定分周比Nに対応した周波数)に適したバンドが選択される(タイミングt5)。5回目の判定では4回目の判定で選択されたバンドもしくはそれよりも1つだけ上のバンド(または1つ下のバンドでも可)が選択される。この実施例の自動バンド選択回路20においては、5回目の判定で選択されたバンドにさらにオフセットを加えて最終選択バンドを決定するように構成されている。このオフセットの付加は、リセット信号RESによる可変分周回路12と固定分周回路14の実際のリセット動作のずれに起因する判別誤差を補償するためのものである。オフセットの付加については後に詳しく説明するが、必ず設けなくてはならないものではない。
【0038】
本実施例の自動バンド選択回路においては、上記選択動作終了後に固定電圧VD1〜VDnを切り替えて最適な制御電圧に近い固定電圧を見つけPLLループの引き込みを行なうようにしている。以下、この固定電圧の見つけ方について説明する。
【0039】
先に説明したように、バンド選択が開始される際に、スイッチSW2によって最初に固定電圧として最も高い電圧VN+2が選択されている。電圧の高い方からバンド選択動作に入る方が、電圧の低い方からバンド選択動作に入る場合よりもVCOの出力が安定するまでの時間が短いためである。ただし、最初に固定電圧として中間の電圧VN0を選択して印加するようにしても良い。この実施例では、固定電圧VN+2が印加された状態で上記5回の判定を行い、5回目の判定で決定されたバンド(例えば#16)が選択された後、選択固定電圧が最も高い電圧VN+2から中間の電圧VN0に切り替えられる(タイミングt5)。そして、ループフィルタ17の電圧およびVCO11の発振周波数が安定する待機時間を待ってから、進み遅れ判別回路22により可変分周回路12の出力パルスφ1の立ち上がりが固定分周回路14の出力パルスφr’の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているか判別する(タイミングt6)。
【0040】
このとき、φ1の立ち上がりがφr’の立ち上がりよりも進んでいると判定されたとすると、この場合、VCOの発振周波数は図5(A)にハッチングで示すような固定電圧VN0よりも右側の電圧の高い領域にあり、VCOはこの領域で動作していることが分かる。一方、φ1の立ち上がりがφr’の立ち上がりよりも遅れていると判定されたとすると、この場合、VCOの発振周波数は固定電圧VN0よりも左側の電圧の低い領域にあり、VCOはこの領域で動作していることが分かる。
【0041】
そこで、次に、φ1がφr’の立ち上がりよりも進んでいたときはスイッチSW2を切り替えてVCO11に印加する固定電圧をVN0からVN+1に切り替え、φ1がφr’よりも遅れていたときはスイッチSW2を切り替えてVCO11に印加する固定電圧をVN0からVN-1に切り替える(タイミングt7)。そして、ループフィルタ17がVN+1またはVN-1で安定するのを待ってから、再び、進み遅れ判別回路22によりφ1の立ち上がりがφr’の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているか判別する。
【0042】
そして、例えば固定電圧がVN+1にされている状態で、φ1の立ち上がりがφr’の立ち上がりよりも遅れていると判定されたとすると、この場合、VCOの発振周波数は図5(B)にハッチングで示すような固定電圧VN0よりも右側でVN+1よりも左側の領域にあり、VCOはこの領域で動作していることが分かる。また、φ1の立ち上がりがφr’の立ち上がりよりも進んでいると判定されたとすると、この場合、VCOの発振周波数は固定電圧VN+1よりも右側の領域にあり、VCOはこの領域で動作していることが分かる。この実施例では、固定電圧として用意されているのが5個であるため、上記2回の判定で終了するが、固定電圧の種類がもっと多い場合には、上記動作を繰り返して2分探査法で選択すべき固定電圧が判定される。
【0043】
最後の判定でφ1の立ち上がりがφr’の立ち上がりよりも遅れていると判定されたとすると、そのときスイッチSW2で選択されている固定電圧VN+1がそのまま選択され、φ1の立ち上がりがφr’の立ち上がりよりも進んでいると判定されたとすると、スイッチSW2を切り替えてVCO11に印加する固定電圧をVN+1からVN+2に切り替える(タイミングt8)。つまり、VCOが動作している領域の高い側の固定電圧が選択される。電圧の高い方から引き込み動作に入る方が、電圧の低い方から引き込み動作に入る場合よりもロック時間が短くなるためである。
【0044】
その後、ループフィルタ17が選択後の固定電圧で安定するのを待ってから、スイッチSW1を固定電圧の側からループフィルタ17の側に切り替え、そのまま通常のPLLループの周波数引き込み動作に移る(タイミングt9)。以上のような制御によって、PLLループを短時間にロックさせることが可能となる。
【0045】
次に、前述したオフセットの付加について説明する。可変分周回路12と固定分周回路14のリセット動作のずれには、本実施例においては2つの要素がある。1つは、制御回路26から出力されるリセット信号RESを、可変分周回路12に対してはCMOSレベルからECLレベルに変換するレベルシフト回路19を介して供給しているのに対し、固定分周回路14へはレベル変換せずに供給していることから生じる。
【0046】
ここで、可変分周回路12に対してはリセット信号RESをレベル変換して供給し、固定分周回路14に対してはリセット信号RESをレベル変換せずに供給しているのは、可変分周回路12が分周するVCO11の発振信号の周波数はGHz(ギガヘルツ)のオーダーであり、固定分周回路14が分周する16MHzの水晶発振信号よりもずっと高いため、MOSFETよりも高速動作可能なバイポーラ・トランジスタからなるECL回路によって可変分周回路12が構成されているのに対して、固定分周回路14は消費電力低減のためCMOS回路で構成されているためである。
【0047】
可変分周回路12と固定分周回路14のリセット動作にずれが生じる2つ目の要素は、リセット信号RESの供給経路が、制御回路26から固定分周回路14までよりも、制御回路26から可変分周回路12までの方が長いことから生じる遅延時間差である。ここで、リセット信号RESの供給経路に差異が生じる理由は、一般的にはレイアウトでいずれかの分周回路の方が制御回路に近いことであるが、本実施例においては、周波数カウンタ21と固定分周回路14とで回路の一部を共用ないしは兼用しているため、必然的に固定分周回路14の方が可変分周回路12よりも制御回路26に近い位置に配置されることに起因する。かかる供給経路の差異による遅延時間差については、先願(特願2003−337000号)において説明されているとともに、本発明の要旨ではないので説明を省略する。
【0048】
次に、可変分周回路12と固定分周回路14のリセット動作のずれに起因する判別誤差を補償するためにオフセットを加算して最終選択バンドを決定する必要性について説明する。
位相進み遅れ判別回路22により可変分周回路12の出力パルスφ1の立ち上がりが固定分周回路14の出力パルスφr’の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているか判別する実施例の自動バンド選択回路においては、可変分周回路12と固定分周回路14のリセット動作にずれがない場合には、図6(A)に示すように、リセット信号RESによるリセット時に固定分周回路14の出力パルスφr’の立ち上がりと可変分周回路12の出力パルスφ1の立ち上がりとが一致しているため、2.5μs後に行なわれる位相が進んでいるか遅れているかの判別を正確に行なうことができる。
【0049】
これに対し、可変分周回路12と固定分周回路14のリセット動作にずれがあって可変分周回路12のリセットが遅れてなされると、図6(B)に示すように、リセット時に既に可変分周回路12の出力パルスφ1の立ち上がりが固定分周回路14の出力パルスφr’の立ち上がりよりも遅れているため、位相が進んでいるか遅れているかの判別を正確に行なうことができない。つまり、可変分周回路12のリセットが遅れてなされると、可変分周回路12の出力パルスφ1の周期と固定分周回路14の出力パルスφr’の周期が同じでそのときの選択バンドに決定すべき場合であっても、φ1の立ち上がりが遅いと判別して、より周期の短い(周波数の高い)バンドを選択するようにバンド切替え回路23に指令を与えてしまう。
【0050】
そこで、この実施例の自動バンド選択回路では、リセット信号RESによる遅延を含ませたままで判別した結果に基づいて選択したバンドを指定する信号(コード)にオフセットを加えることで、進み遅れ判別回路22の判別結果により決定されたバンドよりも遅延Tdに見合うオフセットの分だけ周波数の低いバンドが最終的に使用バンドとして選択されるようにされている。外部から設定するオフセット値については、予め検査により平均的な遅延Tdを測定してそれに見合うオフセット値を求めておいて、それに個々の製品ごとのばらつきを考慮して実際に設定するオフセット値を決定するようにすれば良い。
【0051】
なお、可変分周回路12へのリセット信号RESの伝達遅延Tdを補償するため、制御回路26から可変分周回路12までのリセット信号RESの供給経路上にTdに相当する遅延を与える遅延回路を設ける方式も考えられる。しかしながら、このような遅延回路を設ける方式にあっては、製造ばらつきによる遅延回路の遅延時間のばらつきによって正確な判別が行なえなくなるおそれがある。これに対して、本実施例においては、外部からオフセットを与えそのオフセットの分だけ選択バンドをずらすため、外部から与えるオフセット値を変更することで製造ばらつきによってリセット信号RESの伝達遅延Tdがばらついても最適なバンドの選択を行なわせることができる。
【0052】
次に、上記実施例のPLL回路を適用した通信用半導体集積回路(高周波IC)及びそれを用いた携帯電話機のような無線通信装置の一実施例を、図7を用いて説明する。この実施例は、いわゆるダイレクトコンバージョン方式の高周波ICに適用したものである。図7において、図1に示されている回路や素子と同一の回路、素子には同一の符号を付して重複した説明は省略する。なお、この実施例は、例えばWCDMA方式の携帯電話機を構成する場合に利用すると好適であるが、GSM方式の携帯電話機を構成する場合にも利用することができる。
【0053】
図7に示す無線通信システムは、信号電波を送受信するアンテナ100と、送信信号と受信信号を分離するデュプレクサ(分波器)110と、送信信号を増幅する高周波電力増幅回路(パワーアンプ)130と、受信信号を復調したり送信信号を変調したりする高周波IC200と、送信データをI,Q信号に変換したり復調されたI,Q信号から受信データを抽出するなどのベースバンド処理を行なったり高周波IC200を制御したりするベースバンド回路300とからなる。この実施例では、高周波IC200およびベースバンド回路300は、各々別個の半導体チップ上にそれぞれ半導体集積回路として構成されている。GSM方式の場合には、デュプレクサ110の代わりに送受信切替えスイッチを用いられ、該スイッチと高周波IC200の受信信号入力端子との間に受信信号から不要波を除去するSAWフィルタなどからなるバンドパスフィルタが設けられる。
【0054】
本実施例の高周波IC200は、大きく分けると、受信系回路と、送信系回路と、それ以外の制御回路やクロック系回路などの送受信系に共通の回路からなる制御系回路とで構成される。
【0055】
受信系回路は、受信信号を増幅するロウノイズアンプ211と、高周波用発振回路(RFPLL)251で生成された発振信号φRF1とロウノイズアンプ211で増幅された受信信号とを合成することで復調およびダウンコンバートを行なうミキサ212と、復調されたI,Q信号をそれぞれ増幅してベースバンド回路300へ出力する高利得増幅部(PGA)213などからなる。
【0056】
送信系回路は、ベースバンド回路300から供給されるI,Q信号を増幅するアンプ231と、増幅されたI,Q信号とRFVCO252で生成された発振信号φRF2とを合成することにより変調およびアップコンバートを行なうミキサ232と、変調された信号を増幅するアンプ233などから構成されている。
【0057】
本実施例においては、ミキサ212で受信信号と合成される高周波信号φRF1を生成するRF−PLL1と、ミキサ233で送信信号と合成される高周波信号φRF2を生成するRF−PLL2として、図1に示されているPLL回路が使用されている。RF−PLL1とRF−PLL2で必要とされる基準クロックφrefを生成する基準発振回路13は共通の回路として設けられている。また、RF−PLL1とRF−PLL2には、ベースバンド回路300からの信号に基づいてこのRF−PLL1とRF−PLL2および上記受信系回路や送信系回路を制御する信号を生成する制御回路261,262が設けられている。
【0058】
制御回路261,262にはコントロールレジスタやデータレジスタなどが設けられ、これらのレジスタにベースバンドIC300からの信号に基づいて前記オフセット値や発振周波数(分周比「N」)の設定が行なわれ、レジスタに設定された値がRF−PLLの自動バンド選択回路20内のオフセット設定用レジスタ24や可変分周回路12に供給される。これとともに、ベースバンドIC300からの指令(コマンドコード等)に基づいて制御回路261,262から自動バンド選択回路20に対して発振周波数切替え制御信号OFCが供給される。制御回路は、RF−PLL1とRF−PLL2および上記受信系回路や送信系回路に共通の回路として設けるようにしても良い。
【0059】
なお、WCDMA方式では送信と受信が並行して行なわれるが、GSM方式では送信スロットと受信スロットを切り替えながら送信と受信を時間的にずらして行なうので、GSM方式の携帯電話機を構成する高周波ICに適用する場合には、図7におけるダウンコンバートを行なうミキサ212とアップコンバートを行なうミキサ232に供給される高周波発振信号φRF1,φRF2を生成するRF−PLL回路を共用させるように構成することができる。
【0060】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものでない。例えば前記実施例においては、VCO11が32個のいずれかのバンドに切り替えられるように構成されているが、16バンドあるいは64バンド等であっても良い。
【0061】
また、前記実施例においては、バンド選択動作時に、最後の判定でVCOが印加された固定電圧よりも高い領域で動作していると判定された場合には、そのときの固定電圧よりも高い固定電圧を選択するようにしているが、最後の判定でVCOが印加された固定電圧をそのまま用いるとともに、最後の判定でVCOが印加された固定電圧よりも低い領域で動作していると判定された場合には、そのときの固定電圧よりも低い固定電圧を選択するようにしても良い。このような制御は、特に温度上昇によりVCOの発振周波数が高くなるVCOを用いている場合に有効である。
【0062】
さらに、例えばVCOの発振周波数が温度上昇により低くなる特性のVCOを用いていて、バンド選択の際にVCOがその選択バンドの周波数変動範囲の最小電圧に近い領域で動作していると判定した場合には、1つ下のバンドを選択するようにしてもよい。逆に、温度上昇によりVCOの発振周波数が高くなる特性のVCOを用いていて、バンド選択の際にVCOがそのバンドの周波数変動範囲の最大電圧に近い領域で動作していると判定した場合には、1つ上のバンドを選択するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である携帯電話機のような無線通信システムに用いられる高周波ICに適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、無線LAN用の高周波ICその他、受信信号や送信信号と合成されて周波数変換や変復調を行なう高周波信号を生成するPLL回路を有する高周波ICに対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るPLL回路の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の実施例のPLL回路を構成するVCO(電圧制御発振回路)の一実施例を示す回路図である。
【図3】図2のVCOにおける制御電圧Vtと発振周波数fvcoとの関係を示す特性図である。
【図4】図1のPLL回路におけるバンド選択の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】図5(A)は図1の実施例のPLL回路のバンド選択時に固定電圧をVN0に切り替えて位相の進み遅れ判別回路でVCOの出力の位相が進んでいると判定したときのVCOの動作領域を示す説明図、図5(B)は固定電圧をVN+1に切り替えて位相の進み遅れ判別回路でVCOの出力の位相が遅れていると判定したときのVCOの動作領域を示す説明図である。
【図6】図6(A)は本発明に先立って検討したPLL回路のバンド選択時における可変分周回路および固定分周回路のリセットタイミング、図6(B)は図1のPLL回路のバンド選択時における可変分周回路および固定分周回路のリセットタイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】本発明に係るPLL回路を適用した通信用半導体集積回路(高周波IC)及びそれを用いた無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
11 発振回路(RF−VCO)
12 可変分周回路
13 基準発振回路
14 固定分周回路
15 位相比較回路
16 チャージポンプ
17 ループフィルタ
18 切替え回路
19 レベル変換回路
20 自動バンド選択回路
24 オフセット設定用レジスタ
25 オフセット付与回路(加算回路)
26 制御回路
100 送受信用アンテナ
110 デュプレクサ(分波器)
120 フィルタ
130 高周波電力増幅回路
200 高周波IC
211 ロウノイズアンプ
212 復調&ダウンコンバート用ミキサ
213 高利得増幅回路
232 変調&アップコンバート用ミキサ
261,262 制御回路
300 ベースバンド回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯で発振動作可能に構成された発振回路と、該発振回路の出力信号を指定された分周比で分周する可変分周回路と、所定の周波数を有する基準信号を所定の分周比で分周する固定分周回路と、前記可変分周回路の出力信号の位相と前記固定分周回路の出力信号の位相とを比較して位相差を検出する位相比較回路と、該位相比較回路の出力に応じた制御電圧を生成するループフィルタとを含み、該ループフィルタにより生成された制御電圧により前記可変発振回路の発振周波数を制御するループと、前記ループを開いた状態で、該位相比較回路の出力に代えて前記ループフィルタに所定レベルの電圧を供給可能な切替え手段と、該切替え手段により前記所定レベルの電圧をループフィルタに供給することで所定レベルの制御電圧を前記発振回路に供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と前記固定分周回路の出力信号の位相とを比較して前記発振回路の発振周波数帯を選択するバンド選択回路とを備えた通信用半導体集積回路であって、
前記切替え手段により前記発振回路へ第1の所定レベルの制御電圧を印加して前記バンド選択回路により周波数帯の選択を行なった後、前記第1の所定レベルとは異なる他の所定レベルの制御電圧を印加して、前記位相比較回路の比較結果に基づいて前記発振回路が制御電圧−発振周波数特性線上のどの領域で動作しているか判定することを特徴とする通信用半導体集積回路。
【請求項2】
前記判定結果に応じて前記第1の所定レベルの制御電圧または他の所定レベルの制御電圧のいずれかを前記発振回路へ印加した状態から前記ループを閉じて周波数のロック動作を開始するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項3】
前記所定レベルの制御電圧を3つ以上用意し、これらの制御電圧を切り替えて前記発振回路が制御電圧−発振周波数特性線上のどの領域で動作しているか判定し、該判定結果に応じて前記3つ以上の所定レベルの制御電圧のいずれかを前記発振回路へ印加した状態から前記ループを閉じて周波数のロック動作を開始することを特徴とする請求項2に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項4】
前記発振回路の判定可能な動作領域は2のn(nは正の整数)乗個であり、前記制御電圧を切り替えて2分探査方式で前記発振回路の動作領域を判定することを特徴とする請求項3に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項5】
前記発振回路の制御電圧−発振周波数特性は制御電圧が高くなるほど周波数が高くなる正の特性であって、前記発振回路が制御電圧−発振周波数特性線上の当該所定レベルの制御電圧よりも高い制御電圧に対応した領域で動作している場合には当該所定レベルの制御電圧よりも高い他の所定レベルの制御電圧を前記発振回路へ印加した状態から前記ループを閉じて周波数のロック動作を開始し、前記発振回路が制御電圧−発振周波数特性線上の当該所定レベルの制御電圧よりも低い制御電圧に対応した領域で動作している場合には当該所定レベルの制御電圧を前記発振回路へ印加した状態から前記ループを閉じて周波数のロック動作を開始することを特徴とする請求項1に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項6】
前記バンド選択回路は、前記可変分周回路の出力信号の位相と前記固定分周回路の出力信号の位相との比較と、その比較結果による選択する発振周波数帯の変更とを繰り返し実行して2分探査方式で最終的な選択周波数帯を決定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の通信用半導体集積回路。
【請求項7】
前記判定結果と前記発振回路の発振周波数の温度特性とに応じて当該周波数帯を維持または隣接周波数帯に切り替えて他の所定レベルの制御電圧を前記発振回路へ印加した状態から前記ループを閉じて周波数のロック動作を開始するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項8】
前記発振回路の制御電圧−発振周波数特性は制御電圧が高くなるほど発振周波数が高くなる正の特性であって、
前記発振回路の発振周波数の温度特性は温度が高くなるほど発振周波数が低くなる負の特性であり、前記発振回路が制御電圧−発振周波数特性線上の当該所定レベルの制御電圧よりも低い制御電圧に対応した領域で動作していると判定された場合には当該発振周波数帯よりも発振周波数の低い隣接発振周波数帯に切り替え、
前記発振回路の発振周波数の温度特性は温度が高くなるほど発振周波数が高くなる正の特性であり、前記発振回路が制御電圧−発振周波数特性線上の当該所定レベルの制御電圧よりも高い制御電圧に対応した領域で動作していると判定された場合には当該発振周波数帯よりも発振周波数の高い隣接発振周波数帯に切り替えることを特徴とする請求項7に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項9】
第1の周波数の第1局部発振信号を用いてWCMDA方式の受信信号を処理するとともに、第2の周波数の第2局部発振信号を用いてWCMDA方式の送信信号を処理する通信用半導体集積回路であって、
前記第1局部発振信号と前記第2局部発振信号がそれぞれ別個の発振回路により生成されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の通信用半導体集積回路。
【請求項10】
所定の周波数の局部発振信号を用いてGSM方式の受信信号および送信信号を処理する通信用半導体集積回路であって、前記局部発振信号が前記発振回路により生成されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の通信用半導体集積回路。
【請求項11】
連続した1つの周波数帯で発振動作可能に構成された発振回路と、該発振回路の出力信号を指定された分周比で分周する可変分周回路と、所定の周波数を有する基準信号を所定の分周比で分周する固定分周回路と、前記可変分周回路の出力信号の位相と前記固定分周回路の出力信号の位相とを比較して位相差を検出する位相比較回路と、該位相比較回路の出力に応じた電圧を生成するループフィルタとを含み、該ループフィルタにより生成された電圧により前記発振回路の発振周波数を制御するループと、前記ループを開いた状態で該位相比較回路の出力に代えて前記ループフィルタに所定レベルの電圧を供給可能な切替え手段と、該切替え手段により前記所定レベルの電圧をループフィルタに供給することで所定レベルの制御電圧を前記発振回路に供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と前記固定分周回路の出力信号の位相とを比較して前記発振回路が電圧−周波数特性線上のどの領域で動作しているかを、前記制御電圧を切り替えて2分探査方式で判定し、該判定結果に応じた所定レベルの制御電圧を前記発振回路へ印加した状態から前記ループを閉じて周波数のロック動作を開始するようにしたことを特徴とする通信用半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−279392(P2006−279392A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93839(P2005−93839)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】