説明

運転操作支援装置及び運転操作支援方法

【課題】運転者に違和感をより低減しつつ、回避支援をすることが可能な運転操作支援の技術を提供する。
【解決手段】障害物に対し自車両MMが緊急回避状況であると判定すると、緊急回避のための制御として操舵制御と制動制御の両方の制御を行い、自車両MMが障害物回避を完了したと判定すると、緊急回避のための制御の解除待機モードに移行し、自車両MMの車両状態が安定したと判定すると上記緊急回避のための制御を解除する。但し、上記解除待機モード中に、運転者による意図的なアクセル操作介入を検出すると、自車両MMの車両状態が安定したと判定する前であっても、制動制御のみ先に解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行に影響する障害物に対する運転操作支援の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
障害物に対する運転操作支援の技術としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1に記載の技術では、ハンドル操舵の小さい状態が所定の解除時間を超えて継続した場合、若しくは、目標とするヨーレートと実際のヨーレートの偏差が予め定めた設定範囲内である状態が所定の解除時間を超えて継続した場合に、操舵と制動の制御による障害物に対する回避走行モードを解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術では、車両状態が安定してから所定時間経過しないと、上記回避走行モードを解除しない。このため、障害物回避後に自車両がその場所に留まることが、後続車の走行に悪影響を及ぼす可能性がある。このとき、後続車の走行に悪影響を及ぼす可能性があるとして、いきなり障害物回避の制御をすべて解除すると、車両の状態によっては運転者に不安感を与えるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、運転者に違和感をより低減しつつ、回避支援をすることが可能な運転操作支援の技術を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、障害物に対する自車両の緊急回避のための制御として操舵制御と制動制御の両方の制御を行った場合に、自車両が障害物回避を完了したと判定すると、緊急回避のための制御の解除待機モードに移行し、自車両の車両状態が安定したと判定すると上記緊急回避のための制御を解除する。但し、上記解除待機モード中に運転者による意図的なアクセル操作介入を検出すると、自車両の車両状態が安定したと判定する前であっても、制動制御を操舵制御より先に解除する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、障害物回避が完了したと判定してから、車両状態が安定したと判定されるまでに、運転者による意図的なアクセル介入が検出された場合には制動制御を先に終了する、その後、車両状態が安定したと判定されたときに操舵制御を解除する。
【0008】
これによって、自車両は、後続車に対しても回避し易い状態となり、且つ自車両を安定させた状態で回避のための制御を解除することが可能になる。この結果、運転者への違和感をより低減しつつ、回避支援を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る車両の概略構成図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係るメインコントローラの基本構成図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る回避制御解除判定手段の構成を説明するための図である。
【図4】障害物回避完了判定の例を説明するための図である。
【図5】アクセル介入の検出の方法を説明するための図である。
【図6】車両状態の安定判定の方法を説明する図である。
【図7】車両状態の安定判定の方法を説明する図である。
【図8】本発明に基づく第1実施形態に係る回避制御解除判定手段の処理を説明する図である。
【図9】本発明に基づく第2実施形態に係る回避制御解除判定手段の構成を説明するための図である。
【図10】本発明に基づく第2実施形態に係る回避制御解除判定手段の処理を説明する図である。
【図11】本発明に基づく第3実施形態に係る回避制御解除判定手段の構成を説明するための図である。
【図12】本発明に基づく第3実施形態に係る回避制御解除判定手段の処理を説明する図である。
【図13】本発明に基づく第4実施形態に係る回避制御解除判定手段の構成を説明するための図である。
【図14】本発明に基づく第4実施形態に係る回避制御解除判定手段の処理を説明する図である。
【図15】アクセル介入検出手段の別例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
(構成)
図1は、本発明の実施形態にかかる運転支援装置が適用された車両を模式的に説明した図である。
【0011】
まず構成を説明する。
自車両MMには制動装置が搭載されている。制動装置は、ブレーキペダル1、電動ブースタ2、マスターシリンダ3、ホイールシリンダ4を備える。ブレーキペダル1は、運転者によって操作(例えば、踏込み操作)される。電動ブースタ2は、ブレーキペダル1に入力された運転者の踏込み力を電力によって倍力する。マスターシリンダ3は、電動ブースタ2によって倍力された入力を、制動液圧に変換する。そして、マスターシリンダ3によって昇圧された制動液圧は、個々の車輪に対応して設けられたホイールシリンダ4に供給される。個々の車輪には、例えば、ブレーキパッド、キャリパ及びディスクロータを主体に構成された周知の油圧式ブレーキ機構が設けられている。そして、個々の車輪における制動力は、ホイールシリンダ4に供給される制動液圧を制御することにより調整される。
【0012】
また、自車両MMにはブレーキコントロールユニット5が搭載されている。ブレーキコントロールユニット5は、ブレーキペダル1に入力された運転者の踏込み力とは別に、各輪のホイールシリンダ4に供給される制動液圧を制御する。このブレーキコントロールユニット5は、車輪に付与する制動力を制御する制動制御手段を構成する。
【0013】
また自車両MMには操舵装置が搭載されている。操舵装置は、ステアリング6を備える。ステアリング6は運転者によって操作(例えば、回転操作)される。ステアリング6に入力された操舵量は、ステアリング機構を介して操向輪に伝達されることで、ステアリング6の操舵量に応じた舵角が操向輪(例えば、前輪)に設定される。
【0014】
また、車両にはステアコントロールユニット7が搭載されている。ステアコントロールユニット7は、ステアリング6からの入力とは別に、電動モータなどの駆動装置によって、ステアリング機構に対しアシストトルクを入力可能となっている。アシストトルクは例えば車速に応じた値に設定される。これによって、操向輪の舵角は、ステアコントロールユニット7によっても制御することが可能となっている。このステアコントロールユニット7は、操向輪の舵角を制御する操舵制御手段を構成する。
また自車両MMには、メインコントローラが搭載されている。
【0015】
図2はメインコントロールユニット30の構成を示すブロック図である。
メインコントロールユニット30は、運転操作支援装置を統括的に制御する機能を担っており、例えばCPU、ROM、RAM、I/Oインタフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いて構成されている。本実施形態との関係において、メインコントロールユニット30は、障害物への近接を回避すべく、必要に応じて、ブレーキコントロールユニット5及びステアコントロールユニット7を制御することにより、自車両MMの回避操作を支援する。このメインコントロールユニット30には、外界及び車両に関する各種の情報を検出するセンサ等からの検出信号が入力する。
【0016】
自車両MMは、運転操作支援装置で使用するセンサとして、外界環境検出手段41、運転者操作状態検出手段42、及び車両状態検出手段43を備える。
外界環境検出手段41は、車両前方の障害物や道路環境を検出する。本実施形態の外界環境検出手段41は、レーザレーダ20及びカメラ21を備える。
【0017】
レーザレーダ20は、自車両前方の障害物までの距離(相対距離)を検出するセンサである。このレーザレーダ20によって得られる相対距離の単位時間当たりの変化量を求めることにより、障害物に対する自車両MMの相対速度を求める。カメラ21は、車両前方の障害物の位置や道路環境を検出するセンサである。
【0018】
運転者操作状態検出手段42は、運転者が運転のために操作する操作子の操作状態を検出する。本実施形態の運転者操作状態検出手段42は、アクセルペダルセンサ22、ブレーキペダルセンサ23、及び操舵角センサ24を備える。
【0019】
アクセルペダルセンサ22は、運転者によって操作(例えば、踏込み操作)されるアクセルペダルの踏込み量を通じてスロットル開度を検出する。ブレーキペダルセンサ23は、運転者によって操作(例えば、踏込み操作)されるブレーキペダル1の踏込み量を検出する。操舵角センサ24は、運転者によって操作されるステアリング6の操舵量を検出する。
【0020】
車両状態検出手段43は自車両MMの運動状態を検出する。本実施形態の車両状態検出手段43は、車速センサ25、ヨーレートセンサ26、及び加速度センサ27を備える。
車速センサ25は、自車両MMの車速を検出する。ヨーレートセンサ26は、車両の重心を通る鉛直軸回りの回転角(ヨー角)の単位時間当たりの変化量、即ち、ヨー角速度を検出する。加速度センサ27は、車両に発生している前後及び横方向の加速度を検出する。
【0021】
また、メインコントロールユニット30には、マスターシリンダ3から制動液圧に関する情報が入力する。
【0022】
上記メインコントロールユニット30は、これを機能的に捉えた場合、図2に示すように、緊急回避状況判定手段44、回避制御実施判定手段45、回避経路算出手段46、回避操作特定手段47、回避制御選択手段48、回避制御支援量算出手段49、及び回避制御解除判定手段50を備える。
【0023】
緊急回避状況判定手段44は、現在の車速を基準にして自車両MMが障害物に達するまでの到達時間を回避限界時間TTCとして算出し、算出した回避限界時間TTCが予め設定した回避限界閾値時間以下の場合に緊急回避状況であると判定する。上記回避限界時間TTCは、カメラ21によって認識される障害物の位置と、この位置に対応してレーザレーダ20によって検出される相対距離、即ち、自車両MMから障害物までの距離、及び自車両MMと障害物との相対速度に基づいて算出される。
【0024】
回避制御実施判定手段45は、緊急回避状況判定手段44によって算出される回避限界時間TTCと運転者操作状態検出手段42によって検出される運転者の回避操作の有無に基づいて、障害物への近接回避のための支援制御を実施するか否かを判定する。
回避経路算出手段46は、回避制御実施判定手段45によって近接回避のための制御を実施すると判定された場合に、自車両MMに対する障害物との相対位置や相対速度に基づいて、障害物を回避するために必要な経路を算出する。
【0025】
回避操作特定手段47は、回避制御実施判定手段45によって支援制御を実施すると判定された場合に、運転者操作状態検出手段42が検出する運転者の操作状態に基づいて、運転者の回避操作の特定を行う。本実施形態の回避操作特定手段47は、運転者が回避操作を行っているか、どのような回避操作を行っているかを特定する。本実施形態で特定する運転者の障害物に対する回避操作は、運転者が制動操作をしているか、操舵操作を行っているか、それとも制動操作と操舵操作との双方の操作を行っているか、である。
【0026】
回避制御選択手段48は、回避制御実施判定手段45が制御を実施すると判定した場合に、回避操作特定手段47の特定に基づき回避操作のための制御を選択する。例えば、回避制御選択手段48は、回避操作特定手段47が制動操作のみ検出した場合には制動制御を選択し、操舵操作のみまたは操舵操作と制動操作の両方を検出した場合には、操舵制御と制動制御の両方を選択する。また、操舵操作も制動操作も検出しない場合には操舵制御を選択する。
【0027】
回避制御支援量算出手段49は、回避制御選択手段48によって選択された制御に関する回避限界値を算出する。回避限界値は、制動制御のみの場合には回避限界値TTCBを、操舵制御のみの場合には回避限界値TTCSを、操舵制御と制動制御の両方の場合には回避限界値TTCSBを算出する。回避限界値は、選択された制御を実行した場合における、障害物を回避可能な回避限界時間の限界値である。選択する制御によって回避限界値は異なる。
【0028】
続いて、回避制御支援量算出手段49は、算出した回避限界値及び回避経路算出手段46が算出した経路に基づいて、回避のために選択した制御による運転者操作に対する支援量、具体的には、目標ヨー角、目標減速度を算出する。回避制御支援量算出手段49は、算出した支援量を、選択した制御に応じて、ステアコントロールユニット7及びブレーキコントロールユニット5の少なくとも一方に出力する。
【0029】
ここで、ステアコントロールユニット7は、出力された目標ヨー角に基づいて、車輪の舵角を制御する。また、ブレーキコントロールユニット5は、出力された目標減速度に基づいて、制動液圧を制御する。これらの制御により、障害物回避のための制動操作や操舵操作が行われる。
回避のための上記制動制御及び操作制御の具体的な処理は、公知の制御を採用すればよい。
【0030】
回避制御解除判定手段50は、選択した制御による障害物回避の完了の検出、及びその完了の検出から選択した制御の解除までの判定処理を行う。
【0031】
次に、上記回避制御解除判定手段50について説明する。
回避制御解除判定手段50は、基本構成である図3に示すように、障害物回避完了判定手段51と、アクセル介入検出手段52と、車両状態安定判定手段53と、制動制御・操舵制御解除タイミング決定手段54と、を備える。
【0032】
障害物回避完了判定手段51は、上述の回避制御実施判定手段45が近接回避のための支援制御を実施すると判定すると、外界環境検出手段41及び車両状態検出手段43の検出する障害物の位置と自車両MMの位置または姿勢とに基づき、障害物回避が完了した地点を判定する。障害物回避完了判定手段51は、例えば、車幅方向からみて、図4に示すように、自車両MMの進行方向先端位置が障害物SBの位置を通過した地点、即ち、回避限界時間TTC=0となる地点、を障害物回避が完了した地点と判定する。
【0033】
アクセル介入検出手段52は、運転者による意図的なアクセル操作介入を検出する。本実施形態のアクセル介入検出手段52は、運転者操作状態検出手段42によりアクセル開度またはアクセルの開速度を検出することで、運転者による意図的なアクセル操作介入を検出する。
【0034】
そのアクセル操作介入の検出例を次に説明する。
「第1のアクセル操作介入検出」
まず、アクセル開度によりアクセル操作介入を検出する場合の例について説明する。
運転者が行うアクセル操作によって、アクセル開度Aoが閾値A1以上である状態を検出し、その閾値A1以上のアクセル開度Aoの継続時間taを検出する。そして、検出した継続時間taが、予め設定した継続時間の閾値Ta以上となった判定された場合に、アクセル介入であると検出する(図5(a)参照)。
【0035】
「第2のアクセル操作介入検出」
次に、アクセル開速度によりアクセル操作介入を検出する場合の例について説明する。
運転者が行うアクセル操作によって、アクセル開速度Vaが閾値A2以上である状態を検出し、その閾値A2以上のアクセル開速度Vaの継続時間tvを検出する。そして、検出した継続時間tvが継続時間の閾値Tv以上となったと判定した場合に、アクセル介入であると検出する(図5(b)参照)。
【0036】
また、車両状態安定判定手段53は、例えば、車両状態検出手段43が検出した操舵角と操舵制御指令としての目標操舵角とを用いて自車両MMの安定状態を判定する。
車両状態安定判定手段53で行う、3つの判定の例を次に説明する。車両状態安定判定手段53は、以下に説明する3つの判定の少なくとも一つを使用して判定する。
【0037】
「第1の安定判定」
第1の判定例は、実操舵角による判定の例である。この第1の判定例は、実操舵角の変化に基づき、図6(a)に示すように、実操舵角の変化の1周期が終了し、且つ実操舵角が0度となる地点を、車両状態が安定した地点と判定する。
【0038】
「第2の安定判定」
第2の判定例は、目標操舵角による判定の例である。この第2の判定例は、目標操舵角の変化に基づき、図6(a)に示すように、目標操舵角の変化の1周期が終了し、且つ目標操舵角が0度となる地点を、車両状態が安定した地点と判定する。
【0039】
「第3の安定判定」
第3の判定例は、実操舵角と目標操舵角の偏差を用いて判定する例である。この第3の判定例では、図7のように、実操舵角と目標操舵角との偏差を連続的に求め、その求めた操舵角偏差が予め設定した閾値A3以上である状態が継続している時間t0を検出する。そして、図7(b)のように、その検出した継続時間t0が予め設定した閾値Th以上となった場合に、車両状態が安定した地点と判定する。
【0040】
ここで、車両状態安定判定手段53は、回避限界時間TTCに基づいて、回避制御実施判定手段45による制御開始判定タイミングからの予め設定した所定の経過時間、または、車速ゼロ(停止)後の制御解除操作に基づいて、車両状態が安定したか否かを判定しても良い。
【0041】
また、制動制御・操舵制御解除タイミング決定手段54は、障害物回避完了判定手段51により障害物回避が完了したと判定された時点以降において、アクセル介入検出手段52の検出情報と車両状態安定判定手段53の判定に基づき、制動制御と操舵制御のそれぞれを終了するタイミングを決定する。
【0042】
次に、回避制御開始後における回避制御解除判定手段50の処理について、図8を参照して説明する。
ステップS101では、回避制御実施判定手段45により、操舵制御と制動制御の回避制御を実施すると判定して、操舵制御及び制動制御の両方の制御を作動するとする。
【0043】
ステップS102では、制御開始後において、障害物回避完了判定手段51に基づき障害物回避が完了したか否かを検出する。障害物回避が完了していなければステップS101に戻る。障害物回避が完了していればステップS103に移行する。ステップS102以降が解除待機モードとなる。
【0044】
ステップS103では、アクセル介入検出手段52がアクセル介入を検出したか否かを判定する。アクセル介入が検出された場合には、ステップS104に移行する。一方、アクセル介入をしない場合にはステップS105に移行する。
【0045】
ステップS104では、アクセル介入があったとして制動制御を解除して、ステップS105に移行する。なお、操舵制御が作動していない場合には、制動制御の解除を実行しない。以降の実施形態であっても同様である。
【0046】
ステップS105では、車両状態安定判定手段53の判定に基づき、自車両MMが安定状態にあるか否かを判定する。自車両MMが安定状態ではないと判定された場合にはS106に移行する。一方、自車両MMが安定状態と判定した場合にはステップS107に移行する。
【0047】
ステップS106では、制動制御を解除したか否かを判定する。制御制御が解除されている場合には、ステップS105に戻り、車両が安定状態になるまで繰り返す。一方、ステップS106で、制動制御を解除していないと判定した場合にステップS103に移行する。ここで、回避制御として制動制御が選択されていない場合も制動制御が解除されている状態と見なす。
【0048】
また、ステップS107は、ステップS105で自車両MMが安定状態にあると判定された場合に移行して、操舵制御を解除する。またステップS107は、制動制御を解除していない場合には、制動制御も終了する。
【0049】
ここで、制動制御及び操舵制御の解除の処理は、例えば次のように実施する。すなわち、それぞれ解除判定フラグを設け、制御として選択された場合に対応する解除判定フラグをOFFに設定する。そして、制御の終了と判定したら、対応する解除判定フラグをONとする。そして、制動制御手段及び操舵制御手段の処理部において、対応する解除判定フラグがONの場合に、制御を解除する。
【0050】
(動作)
次に、本実施形態の運転操作支援装置の動作例について説明する。
外界環境検出手段41は、予め設定された制御サイクルで自車両走行方向前方の障害物を検出する。また車両状態検出手段43が予め設定された制御サイクルで自車両状態を検出する。そして、緊急回避状況判定手段44は、外界環境検出手段41及び車両状態検出手段43からの情報に基づき、自車両MMが障害物に対して緊急回避状況であるかを検出する。
【0051】
図4のように、自車両MMの進行方向前方に緊急回避すべき障害物SBが存在する場合には、回避経路算出手段46が回避経路を決定すると共に、回避制御選択手段48が回避のための制御を選択する。そして、回避制御支援量算出手段49が、回避制御の支援量を算出し、その算出した制御支援量に基づいて、操舵制御及び制動制御のうち選択された制御によって、障害物を回避する制御が実施される。
【0052】
続けて、障害物回避完了判定手段51が、自車両MMが障害物回避を完了したと判定すると、解除待機モードに移行する。
【0053】
さらに、上記解除待機モードに移行した後に、車両状態安定判定手段53が、車両状態が安定したと判定すると回避のための制御を解除する。これによって、解除待機モードが解除される。
【0054】
このとき、上記回避制御のうち操舵制御と制動制御との両方が選択された場合には、障害物回避完了判定手段51により障害物を回避が完了したと判定した地点から、車両状態安定判定手段53により車両状態が安定したと判定される地点までに、該アクセル介入検出手段52により意図的なアクセル介入が検出された場合には、制動制御を先に解除する。この場合、その後、該車両状態安定判定手段53により車両状態が安定したと判定された後に、操舵制御を解除する。
【0055】
これのように回避制御の解除を行うことで、当初の緊急回避対象である障害物を回避した直後に、後続車の危険を察知して運転者がアクセル介入した場合には、素早く制動解除が出来る。一方、自車両が不安定な場合は操舵制御が継続するので、安定した状態で回避行動を行うことができる。したがって、運転者に違和感を与え難くなる。
【0056】
ここで、回避操作特定手段47,回避経路算出手段46,回避制御選択手段48,及び回避制御支援量算出手段49は、操舵・制動制御回避手段を構成する。
【0057】
(本実施形態の効果)
(1)緊急回避状況判定手段44は、外界環境検出手段41が検出した障害物と車両状態検出手段43が検出した自車両状態とに基づき、障害物に対し自車両MMが緊急回避状況であるか否かを判定する。操舵・制動制御回避手段は、緊急回避状況判定手段44が緊急回避状況と判定すると、緊急回避のための制御として操舵制御及び制動制御の少なくとも一方の制御によって、障害物を回避する制御を実施する。障害物回避完了判定手段51は、外界環境検出手段41が検出した障害物と車両状態検出手段43が検出した自車両状態に基づき、自車両MMが障害物回避を完了したか否かを判定する。車両状態安定判定手段53は、車両状態検出手段43が検出した自車両状態に基づき自車両MMの車両状態が安定しているか否かを判定する。アクセル介入検出手段52は、運転者による意図的なアクセル操作介入を検出する。回避制御解除判定手段50は、障害物回避完了判定手段51が障害物の回避が完了と判定し且つ車両状態安定判定手段53が車両状態が安定したと判定すると、緊急回避のための制御を解除する。
【0058】
ただし、上記回避制御解除判定手段は、緊急回避のための制御として操舵制御及び制動制御の両方の制御が実行された場合に、障害物回避完了判定手段51により障害物の回避が完了したと判定した後であって車両状態安定判定手段53が車両状態が安定したと判定する前に、アクセル介入検出手段52により意図的なアクセル介入を検出したら、制動制御を解除する。
【0059】
これによって、緊急回避対象である障害物を回避した直後に、後続車の危険を察知して運転者がアクセル介入した場合には、制動解除を行うことで、後続車からもうまく回避することが可能となる。また、車両が不安定な場合は操舵制御が継続するので、安定した状態で回避行動を行うことができる。したがって、運転者に違和感を与えにくいようにすることが可能となる。
【0060】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と同様な装置などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。
但し、緊急回避のための制御に対する終了処理である回避制御解除判定手段50の一部が異なる。
【0061】
本実施形態では、図9に示すように、第1実施形態の構成(図3)に対し、運転者状態判定手段55を付加した構成となっている。
【0062】
上記運転者状態判定手段55は、運転者状態の精神状態が平常な状態にあるか否かを判定する。運転者状態が平常な状態とは、運転者が緊急回避状況に遭遇し、その結果として、現時点で運転する上で支障をきたす可能性が少ないと見なせる精神状態である。
【0063】
運転者状態が平常な状態にあるか否かの判定は、例えば次のように実施する。すなわち、生体信号を取得するセンサを、運転者の情報を取得可能なステアリング6等に装着する。そして、そのセンサが取得した生体から運転者状態が平常状態であるか否かを判定する。例えば生体信号として運転者の心拍数を検出して、回避中に上昇した心拍数が平常に近い状態に戻っているか否かにより、運転者状態が平常状態であるか否かを判定する。
【0064】
また、本実施形態の制動制御・操舵制御解除タイミング決定手段54は、解除待機モード中に、上記アクセル介入検出手段52によりアクセル介入が検出された場合に、運転者状態判定手段55により運転者が運転行動を続ける上で平常な状態ではないと判定している場合には、制動制御を解除すること中止するか、制動制御を徐々に解除するようにして、制動解除を抑制する。制動制御を徐々に解除する処理は、例えば制動制御の制動目標値を予め設定した所定の勾配を持って小さくすることで実現する。
【0065】
次に、第2実施形態における回避制御開始後の上記回避制御解除判定手段50の処理について図10を参照して説明する。
【0066】
ステップS110は、回避制御実施判定手段45により、操舵制御と制動制御の回避制御を実施すると判定されて、操舵制御と制動制御が作動した場合とする。
そして、ステップS111では、制御開始後、障害物回避完了判定手段51に基づき障害物回避が完了したか否かを判定する。回避が完了していなければS110に戻る。一方、回避が完了していれば、ステップS112へ移行する。
【0067】
ステップS112では、アクセル介入検出手段52がアクセル介入を検出したか否かを判定する。もし、アクセル介入が検出された場合にはS113へ移行する。一方、アクセル介入が無い場合にはステップS117に移行する。
ステップS113では、運転者状態判定手段55により運転者は緊急回避に対し平常状態か否かを判定する。運転者が平常状態であると判定された場合にはS114へ移行し、S114では、制動制御を解除した後にステップS117に移行する。
【0068】
一方、ステップS113で運転者が平常状態でないと判定されてS115へ移行する。ステップS115では、制動制御は終了しないという選択を行ってステップS117に移行する。若しくはステップS115は、予め設定した時定数を持って、緩やかに制動制御を解除するように設定してステップS117に移行する。
【0069】
ステップS117では、車両状態安定判定手段53の判定によって、自車両MMが安定状態にあるか否かを判定する。自車両MMが安定状態でないと判定した場合には、ステップS116に移行する。一方、自車両MMが安定状態と判定した場合には、ステップS118に移行し、ステップS118では操舵制御を解除する。ステップS118は、制動制御を解除していない場合には制動制御も終了する。
【0070】
ステップS116では、既にアクセル介入が検出済みであるか否かを判定する。アクセル介入検出済みの場合にはステップS117に戻り、車両が安定状態になるまで繰り返す。一方、ステップS116においてアクセル介入を未検出と判定した場合には、ステップS112に移行する。
【0071】
(動作)
本実施形態では、緊急回避の制御として制動制御と操舵制御とが選択されている場合に、障害物回避完了判定手段51が、自車両MMが障害物回避を完了したと判定すると、解除待機モードに移行する。
【0072】
この解除待機モード中に運転者によるアクセル介入を検出しても、運転者状態判定手段55による判定によって運転者の状態が緊急回避によって平常状態でないと判定した場合には、自車両MMが安定するまで制動制御の解除を抑制する。具体的には解除を実施しないか、徐々に制動制御を解除するようにする。
【0073】
これによって、運転者が通常の運転行動に戻るには不適切な状態であると判定した場合には、制動制御がそのまま継続するか、緩やかに運転者に制動制御が戻される。この結果、不安定な車両行動となることを抑制可能となる。
【0074】
(本実施形態の効果)
(1)運転者状態判定手段55は、運転者の緊急回避に対する精神状態を判定する。 上記回避制御解除判定手段は、運転者状態判定手段55によって運転者が運転行動を続ける上で平常な状態ではないと判定している状況で、上記アクセル介入検出手段52によりアクセル介入が検出された場合は、上記制動制御の解除を抑制する。
【0075】
これによって、運転者が通常の運転行動に戻るには不適切な状態であると判定された時には制動制御の解除が抑制される。この結果、例えば制動制御が継続するが緩やかに運転者に制御が戻されるので、不安定な行動になる可能性を抑制することができる。
【0076】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記第1及び第2実施形態と同様な装置などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。
但し、緊急回避のための制御に対する終了処理である回避制御解除判定手段50が異なる。
【0077】
本実施形態では、図11に示すように、第1実施形態の構成(図3)に対し、回避前方走行可能判定手段56を付加した構成となっている。なお、第2実施形態における運転者状態判定手段55を付加した構成としても良い。
【0078】
上記回避前方走行可能判定手段56は、外界環境検出手段41の検出に基づき、自車両MMの回避方向前方の障害物を検出し、その回避方向前方の障害物の有無を判定する。さらに、回避前方走行可能判定手段56は、障害物が存在すると判定した場合には、その障害物に対する回避限界時間TTC(=障害物位置に到達するまでの予測時間)に基づいて回避前方走行可能か否かの判定をする。すなわち、回避前方走行可能判定手段56は、回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースあるか否かを判定する。
【0079】
そして、第3実施形態では、回避前方走行可能判定手段56により回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースがあると判定された場合には、回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースが無いと判定した場合に比べて、車両状態の安定判定基準が緩やかとなる方向に基準を移動する。
【0080】
たとえば、操舵角偏差で判定する場合には(図7参照)、閾値であるThの値を、安全に走行可能なスペースがあると判定された場合には、回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースが無いと判定した場合に比べて小さく設定する。
【0081】
次に、第3実施形態における回避制御開始後の上記回避制御解除判定手段50の処理について図12を参照して説明する。
ステップS120は、回避制御実施判定手段45により、操舵制御と制動制御の回避制御を実施すると判定された状態で、操舵制御と制動制御が作動しているとする。
ステップS121では、制御開始後、障害物回避完了判定手段51に基づき障害物回避が完了したか否かを検出する。障害物回避が完了していなければS120に戻る。一方、障害物回避が完了した場合には、ステップS122に移行する。
【0082】
ステップS122では、アクセル介入検出手段52によりアクセル介入が検出されるか否かを判定する。アクセル介入が検出された場合にはステップS123へ移行し、ステップS123は、制動制御を解除して、ステップS124へ移行する。一方、ステップS122でアクセル介入が検出されなかった場合は制動制御継続状態でステップS124へ移行する。
【0083】
ステップS124では、回避前方走行可能判定手段56により、回避前方が走行可能か否かを判定する。回避前方が走行可能であればステップS125へ移行し、回避前方が走行可能でないと判定した場合にステップS126に移行する。
ステップS125では、車両状態安定判定手段53における車両状態の安定判定基準を緩やかにして、126へ移行する。
【0084】
ステップS126では、車両状態安定判定手段53により、自車両MMが安定状態にあるか否かを判定する。自車両MMが安定状態ではないと判定した場合にはステップS127へ移行する。一方、自車両MMが安定状態と判定した場合には、ステップS128に移行し、ステップS128では操舵制御を解除する。ステップS128は、制動制御を解除していない場合には制動制御も終了する。
【0085】
ステップS127では、制動制御を解除しているか否かを判定する。制動制御を解除していればS124に戻り、繰り返す。そして、S127において制動制御を解除していない場合には、S122に戻る。
【0086】
(動作)
本実施形態では、回避前方走行可能判定手段56により回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースがあると判定された場合には、回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースが無いと判定した場合に比べて、車両状態安定判定基準を緩やかにする。
【0087】
このため、回避後の周囲(前方)の状況に応じて、より安全性が高いと判定される状況では、より早く運転者による通常の運転操作に戻すことができ、運転者に違和感を与えにくくすることができる。
【0088】
(本実施形態の効果)
(1)回避前方走行可能判定手段56は、外界環境検出手段41の検出に基づき、自車両MMの回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースがあるか否かを判定する。そして、回避前方走行可能判定手段56により回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースがあると判定された場合、自車両MMが安全に走行可能なスペースが無いと判定した場合に比べて、車両状態安定判定手段53における車両状態の安定判定基準を車両状態が安定している方向に移動する。
【0089】
回避方向前方に自車両MMが安全に走行可能なスペースがあると判定されたときに、車両状態安定判定基準を緩やかにする方向に移動させるので、回避後の周囲(前方)の状況に応じて、より安全性が高いと判定される状況では、より早く運転者による通常の運転操作に戻すことができ、運転者に違和感を与えにくくすることができる。
【0090】
「第4実施形態」
次に、第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様な装置などについては同一の符号を付して説明する。
【0091】
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。
但し、緊急回避のための制御に対する終了処理である回避制御解除判定手段50が異なる。
【0092】
本実施形態では、図13に示すように、第1実施形態の構成(図3)に対し、操舵介入検出手段57を付加した構成となっている。なお、第2実施形態における運転者状態判定手段55、及び第3実施形態における回避前方走行可能判定手段56を付加した構成としても良い。
【0093】
上記操舵介入検出手段57は、運転者による操舵介入を検出する。具体的には、操舵介入検出手段57は、運転者操作状態検出手段42か検出する運転者の操舵操作による操舵トルクが閾値S1以上である状態を検出する。そして、操舵介入検出手段57は、その閾値S1以上の操舵トルクの継続時間tsを検出し、検出した継続時間tsが継続時間の閾値Ts以上となった時に、操舵介入であると検出する。
【0094】
そして、本実施形態では、アクセル介入検出手段52によりアクセル介入が検出された後、車両状態安定判定手段53により車両状態が安定したと判定される前であっても、操舵介入検出手段57により操舵介入が検出された場合には、その時点で操舵制御を解除する。
【0095】
次に、第4実施形態における回避制御開始後の上記回避制御解除判定手段50の処理について図14を参照して説明する。
ステップS130では、回避制御実施判定手段45により、操舵制御と制動制御の回避制御を実施すると判定された状態で、操舵制御と制動制御が作動しているとする。
【0096】
ステップS131では、制御開始後、障害物回避完了判定手段51に基づき障害物回避が完了したか否かを検出する。障害物回避が完了していなければステップS130に戻る。一方、障害物回避が完了していれば、ステップS132へ移行する。
【0097】
ステップS132では、アクセル介入検出手段52によりアクセル介入が検出されたか否かを判定する。アクセル介入が検出された場合には、ステップS133へ移行する。一方、アクセル介入が検出されていない場合にはステップS136に移行する。
ステップS133では、制動制御を解除してステップS134に移行する。ステップS134では、操舵介入検出手段57により操舵介入が検出されたか否かを判定する。操舵介入が検出されなかった場合は操舵制御継続状態でステップS136へ移行する。一方、操舵介入を検出した場合にはステップS135に移行する。
【0098】
ステップS135では、操舵制御を解除してステップS136に移行する。
ステップS136では、車両状態安定判定手段53により、車両が安定状態にあるか否かを判定する。自車両MMが安定状態ではないと判定された場合にはステップS137へ移行する。自車両MMが安定状態であると判定した場合にはステップS138に移行する。
【0099】
ステップS137では、制動制御を解除しているか否かを判定する。制動制御を解除していればステップS134に戻る。一方、制動制御を解除していない場合には、ステップS132に戻る。
ステップS138では、操舵制御を解除していなければ操舵制御を解除する。同様に、制動制御を解除していなければ制動制御を解除する。
【0100】
また、本実施形態では、アクセル介入閾値変更手段を備える。アクセル介入閾値変更手段は、アクセル介入を検出するためのアクセル介入閾値を変更する。すなわち、アクセル介入閾値変更手段は、アクセル介入が検出される直前のアクセル開度状態に応じて、アクセル開速度Va及びアクセル開速度Vaの継続時間tvに対する閾値Tvの少なくとも一方を変更する。
【0101】
このアクセル介入閾値変更手段を含むアクセル介入検出手段52の処理を、図15を参照して説明する。
まず、ステップS140は、予め定められたアクセル介入条件を設定する。例えば、アクセル開速度の閾値Vaを初期値Z1として、その閾値Z1以上のアクセル開速度が継続する時間の閾値である継続時間の介入閾値Tvを初期値ZTと設定する。
【0102】
ステップS141では、回避制御実施判定手段45により、操舵制御と制動制御の回避制御を実施すると判定されたとして、操舵制御と制動制御を作動する。
ステップS142では、回避制御開始後において、運転者操作状態検出手段42により、アクセル開度があるか否かを検出する。アクセル開度が無い、即ち、アクセルを踏んでいない状況であればステップS143へ移行する。一方、ステップS142において、アクセル開度が有ると判定された場合にはステップS144へ移行する。ステップS144は、アクセル開度が有る場合に、閾値の設定変更をする。
【0103】
ステップS144での上記変更について説明する。
アクセル開速度の閾値Vaであれば、現在のZ1から所定値αだけ減じたものを新たに閾値Z1として設定する。また継続時間の介入閾値ZTに関しては、現在のZTに所定値βを加算したものを新たに閾値ZTとして設定する。このように、閾値変更はZ1またはZTの少なくともいずれか1つを変更する。設定変更を終えるとステップS143へ移行する。
【0104】
ステップS143では、更なる意図的なアクセル操作があるか否かを検出する。意図的なアクセル操作有りと判定した場合にはステップS145に移行する。一方、意図的なアクセル操作が無いと判定した場合にはステップS148へ移行する。
【0105】
ステップS145は、現時点から予め設定した所定時間T1期間内における、アクセル開速度の変化を検出して、開速度閾値Z1以上の開速度が継続時間ZT以上継続したか否かを検出する。T1期間終了時にまだ、開速度閾値Z1以上の開速度が継続している場合は、そのまま検出を行い、継続時間ZTまで検出を続ける。但し、途中で閾値Z1以下になった場合はその時点で終了する。
【0106】
そして、ステップS145において、閾値を満たすと判定した場合にはステップS146へ移行し、閾値に満たさない場合には148へ移行する。
ステップS146は、アクセル介入有りと判定するものである。そして、ステップS147へ進み、ステップS147で制動制御を解除する。その後ステップS148に移行する。
【0107】
ステップS148では、制動制御を解除したか否かを判定する。制動制御を解除していればこのタスクは終了し、制動制御を解除していなければ、ステップS142に戻り、このルーチンを繰り返す。
【0108】
(動作)
アクセル介入検出手段52によりアクセル介入が検出された後、該車両状態安定判定手段53により車両状態が安定したと判定される前に、該操舵介入検出手段57により操舵介入が検出された場合に、その時点で操舵制御を解除する。
【0109】
この結果、アクセルだけでなく、操舵も自分で操作するという意思を示した時に、運転者に運転操作を戻すこととなる。これによって、回避制御解除後における運転者への運転操作に対する戻し方において、運転者の違和感を低減できる。
【0110】
また、アクセル介入検出手段52として、アクセル介入が検出される直前のアクセル開度状態に応じて、アクセル開速度及びアクセル開速度の継続時間に対する少なくとも一方の閾値を変更する。これによって、回避中に運転者が無意識でアクセルを踏み続けている状況か否かというアクセル操作状況に応じて、アクセル介入基準を変更することで、回避中のアクセル状況により、アクセル介入操作で解除しにくいといったことが起こりにくく、運転者の違和感を低減できる。
【0111】
(本実施形態の効果)
(1)操舵介入検出手段57は、運転者による意図的な操舵介入を検出する。上記回避制御解除判定手段は、アクセル介入検出手段52によりアクセル介入が検出された後、車両状態安定判定手段53により車両状態が安定したと判定される前に、操舵介入検出手段57により操舵介入が検出されると、操舵制御を解除する。
【0112】
アクセル介入が検出された後、車両状態が安定したと判定される前に、操舵介入が検出された場合に、その時点で操舵制御を解除することとした。これによって、アクセルだけでなく、操舵も自分で操作するという意思を示した時に、運転者に運転操作を戻すので、回避制御解除後における運転者への運転操作に対する戻し方において、運転者の違和感を低減できる。
【0113】
(2)アクセル介入閾値変更手段は、上記アクセル開速度及び介入閾値の少なくとも一方を、アクセル介入が検出される直前のアクセル開度状態に応じて変更する、
これによって、回避中に運転者が無意識でアクセルを踏み続けている状況か否かというアクセル操作状況に応じて、アクセル介入基準を変更出来る。この結果、回避中のアクセル状況により、アクセル介入操作で解除しにくいといったことが起こりにくく、運転者の違和感を低減するようにできる。
【符号の説明】
【0114】
5 ブレーキコントロールユニット(制動制御手段)
7 ステアコントロールユニット(操舵制御手段)
20 レーザレーダ(外界環境検出手段)
21 カメラ(外界環境検出手段)
22 アクセルペダルセンサ(運転者操作状態検出手段)
23 ブレーキペダルセンサ(運転者操作状態検出手段)
24 操舵角センサ(運転者操作状態検出手段)
25 車速センサ(車両状態検出手段)
26 ヨーレートセンサ(車両状態検出手段)
27 加速度センサ(車両状態検出手段)
30 メインコントロールユニット
41 外界環境検出手段
42 運転者操作状態検出手段
43 車両状態検出手段
44 緊急回避状況判定手段
45 回避制御実施判定手段
46 回避経路算出手段
47 回避操作特定手段
48 回避制御選択手段
49 回避制御支援量算出手段
50 回避制御解除判定手段
51 障害物回避完了判定手段
52 アクセル介入検出手段
53 車両状態安定判定手段
54 制動制御・操舵制御解除タイミング決定手段
55 運転者状態判定手段
56 回避前方走行可能判定手段
57 操舵介入検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも障害物を検出する外界環境検出手段と、自車両状態を検出する車両状態検出手段と、
外界環境検出手段が検出した障害物と車両状態検出手段が検出した自車両状態とに基づき、障害物に対し自車両が緊急回避状況であるか否かを判定する緊急回避状況判定手段と、
緊急回避状況判定手段が緊急回避状況と判定すると、緊急回避のための制御として操舵制御及び制動制御の少なくとも一方の制御によって障害物を回避する制御を実施する操舵・制動制御回避手段と、
外界環境検出手段が検出した障害物と車両状態検出手段が検出した自車両状態に基づき、自車両が障害物回避を完了したか否かを判定する障害物回避完了判定手段と、
車両状態検出手段が検出した自車両状態に基づき自車両の車両状態が安定しているか否かを判定する車両状態安定判定手段と、
運転者によるアクセル操作介入を検出するアクセル介入検出手段と、
障害物回避完了判定手段が障害物の回避が完了と判定し且つ車両状態安定判定手段が車両状態が安定したと判定すると、緊急回避のための制御を解除する回避制御解除判定手段と、を備え、
上記回避制御解除判定手段は、緊急回避のための制御として操舵制御及び制動制御の両方の制御が実行された場合に、障害物回避完了判定手段により障害物の回避が完了したと判定した後であって車両状態安定判定手段が車両状態が安定したと判定する前に、アクセル介入検出手段がアクセル介入を検出したら、制動制御の解除を判定することを特徴とする運転操作支援装置。
【請求項2】
運転者の緊急回避に対する精神状態を判定する運転者状態判定手段を有し、
上記回避制御解除判定手段は、運転者状態判定手段によって運転者が運転行動を続ける上で平常な状態ではないと判定しているときに、上記アクセル介入検出手段がアクセル介入を検出した場合には、上記制動制御の解除を抑制するように判定することを特徴とする請求項1に記載した運転操作支援装置。
【請求項3】
外界環境検出手段の検出に基づき、自車両の回避方向前方に自車両が安全に走行可能なスペースがあるか否かを判定する回避前方走行可能判定手段を有し、
回避前方走行可能判定手段により回避方向前方に自車両が安全に走行可能なスペースがあると判定された場合、自車両が安全に走行可能なスペースが無いと判定した場合に比べて、車両状態安定判定手段における車両状態の安定判定基準を車両状態が安定している方向に移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した運転操作支援装置。
【請求項4】
運転者による意図的な操舵介入を検出する操舵介入検出手段を有し、
上記回避制御解除判定手段は、アクセル介入検出手段によりアクセル介入が検出された後、車両状態安定判定手段により車両状態が安定したと判定される前に、操舵介入検出手段により操舵介入が検出されると、操舵制御の解除を判定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した運転操作支援装置。
【請求項5】
上記アクセル介入検出手段は、予め設定したアクセル開速度の継続時間が予め設定した介入閾値以上の場合にアクセル介入と検出し、
上記アクセル開速度及び介入閾値の少なくとも一方を、アクセル介入が検出される直前のアクセル開度状態に応じて変更するアクセル介入閾値変更手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した運転操作支援装置。
【請求項6】
障害物に対し自車両が緊急回避状況であると判定すると、緊急回避のための制御として操舵制御及び制動制御の少なくとも一方の制御を行い、
自車両が障害物回避を完了したと判定すると、緊急回避のための制御の解除待機モードに移行し、その後、自車両の車両状態が安定したと判定すると上記緊急回避のための制御を解除し、
緊急回避のための制御として操舵制御及び制動制御の両方が実行された場合に、 上記解除待機モード中且つ自車両の車両状態が安定したと判定する前に、運転者による意図的なアクセル操作介入を検出すると、制動制御を操舵制御より先に解除することを特徴とする運転操作支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−6505(P2012−6505A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144806(P2010−144806)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】