説明

金属アミドおよび金属アルコキシド触媒を使用する大環状ポリエステルオリゴマーの重合

金属アミドおよび金属アルコキシド種が、大環状ポリエステルオリゴマーの開環重合を触媒することが見出された。この触媒によって迅速な重合、高いモノマー変換率、高分子量および機械的に良好な材料がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーの重合に関する。特に高いモノマー変換率で急速な重合を提供し、高分子量であって機械的に良好なポリマーを製造するかかる重合のための触媒の種類に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、2004年11月9日出願の米国特許公報(特許文献1)の利益を主張する。これは全目的に関して、本願の一部としてそのまま援用される。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アルキレンテレフタレート)のような直鎖状の熱可塑性ポリエステルは一般的に既知であり、そして市販品として入手可能である。ここでは、アルキレンは典型的に2〜8個の炭素原子を有する。直鎖ポリエステルは、強度、強靭性、高い光沢および溶媒耐性を含む多くの価値の高い特徴を有する。直鎖ポリエステルは、従来、ジオールと、ジカルボン酸またはその官能性誘導体、典型的に二酸ハライドまたはジエステルとの反応によって調製される。直鎖ポリエステルは、押出、圧縮成形および射出成形を含む多くの既知の技術によって製造物品へと製造され得る。
【0004】
最近、エンジニアリング熱可塑性物質複合材のためのマトリックスとして魅力的なユニークな特性を有する大環状ポリエステルオリゴマーが開発されている。所望の特性は、大環状ポリエステルオリゴマーが低い融解粘度を示すという事実から生じ、これによって、それらを高密度の繊維状プレフォームに含浸させることが容易となり、それに続いてポリエステルへの重合が行なわれる。さらに特定の大環状ポリエステルオリゴマーは、得られるポリマーの融点より十分低い温度で融解および重合する。融解時および適切な触媒の存在下で、実質的に等温で重合および結晶化が生じ得る。
【0005】
大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート)オリゴマーの調製および直鎖ポリエステルへのそれらの重合については、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)、米国特許公報(特許文献5)および米国特許公報(特許文献6)に記載され;そしてD.J.ブルネル(D.J.Brunelle)によって、(非特許文献1)において概説されている。かかる重合のために利用される触媒としては様々な有機スズ化合物およびチタン酸エステルが挙げられ、通常、溶液重合プロセスで実行される。これらの触媒を使用する重合は低温で重合を実行可能であるため、特にポリ(ブチレンテレフタレート(「PBT」)の場合に良好である。しかしながら、触媒性能は、大環状ポリエステルオリゴマー中に存在する不純物、特に酸性不純物に対する感応性のため制限される。またかかる触媒では、いくつかのポリエステル重合に関して必要とされる高温において十分な熱安定性が不足する。これは、ポリ(プロピレンテレフタレート)(「PPT」)の場合に顕著である。
【0006】
カマル(Kamau)ら(非特許文献2)は、2時間、窒素下で300℃においての環式PPTオリゴマーの混合物の開環重合を触媒するため、ジ−n−ブチルスズオキシドを使用した。そのようにして製造された直鎖状ポリマーは、22,500のみの粘度平均分子量を有した。特に精製されたPPTダイマーの使用によっても、粘度平均分子量は30,300までのみ増加された。長時間が必要とされ、そして製造された低分子量の脆性材料は、これが商業的に実行可能なプロセスではないことを示す。
【0007】
米国特許公報(特許文献7)は、大環状ポリエステルオリゴマー重合触媒として、塩基性試薬、スズアルコキシド、有機スズ化合物(すなわち、Sn−C結合を含有する化合物)、チタン酸エステルおよび金属アセチルアセトネートの使用を教示する。金属アセチルアセトネートは、特に脂肪族アルコール、特に1,12−ドデカンジオールのようなジオールと組み合わせて、Co(III)アセチルアセトネートおよびFe(III)アセチルアセトネートによって例示される。かかるアセチルアセトネートの熱安定性は、約175〜220℃の範囲で行われるポリ(ブチレンテレフタレート)(「PBT」)の大環状オリゴマーの開環重合に適切である。しかしながら、それらは、例えばPPTの大環状オリゴマーの効率的な重合のために必要とされる高温においては熱安定性が不足する(例えば、(非特許文献3);および(非特許文献4)を参照のこと)。
【0008】
米国特許公報(特許文献8)において、ワング(Wang)およびフェルプス(Phelps)は、大環状ポリエステルオリゴマーの開環重合のための二成分触媒系、アルコールおよびアリール(Ar)チタネート、例えばTi−(X−Ar)4 (式中、XはO、NまたはSであり、そして化合物中に1種類より多いアリール基Arがあってもよい)の使用を教示する。
【0009】
(特許文献9)は、次式:
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、MはSn(II)、Sn(IV)、Al(III)またはMg(II)であり;
R1およびR2は、それぞれ独立してヒドロカルビルであり;
R3は、Hまたはヒドロカルビルであり;
そしてXはC1~4炭素骨格またはヘテロ原子含有C1~4炭素骨格を含む)によって表される化合物を含むポリ(ラクチド)へのラクチドの重合のための触媒を開示する。例証された反応温度は−30℃〜+60℃の範囲であった。
【0012】
従って、大環状ポリエステルオリゴマーから直鎖ポリエステルを調製するための有効かつ効率的な高温プロセスがなお必要とされる。
【0013】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/626,181号
【特許文献2】米国特許第5,039,783号明細書
【特許文献3】米国特許第5,214,158号明細書
【特許文献4】米国特許第5,231,161号明細書
【特許文献5】米国特許第5,321,117号明細書
【特許文献6】米国特許第5,466,744号明細書
【特許文献7】米国特許第5,191,013号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0195328号明細書
【特許文献9】国際公開第2002/38574号パンフレット
【特許文献10】米国仮特許出願第60/626,187号明細書
【特許文献11】国際公開第2003/093491号パンフレット
【特許文献12】米国特許第5,407,984号明細書
【特許文献13】米国特許第5,668,186号明細書
【特許文献14】米国特許第6,369,157号明細書
【特許文献15】国際公開第2002/068496号パンフレット
【非特許文献1】サイクリック ポリマーズ 第2版(Cyclic Polymers,Second Edition)[J.A.セムリン(J.A.Semlyn)(編集),(2000),クルワー アカデミック パブリッシャーズ(Kluwer Academic Publishers)(オランダ),第185〜228頁]
【非特許文献2】ポリマーズ フォー アドバンスド テクノロジーズ(Polymers for Advanced Technologies),2003,第14巻,第492〜501頁
【非特許文献3】J.フォン ヘーネ(J.Von Hoene)ら,ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(J.Phys.Chem.),1958,第62巻,第1098〜1101頁
【非特許文献4】R.G.チャールズ(R.G.Charles)ら,ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(J.Phys.Chem.),1958,第62巻,第440〜4頁
【非特許文献5】A.ラバレット(A.Lavalette)ら,バイオマクロモレキュールス(Biomacromolecules),第3巻,第225〜228頁(2002)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態は、少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含む熱可塑性ポリエステルの調製法である。
【0017】
本発明のもう1つの実施形態は、少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R3およびR4は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含む熱可塑性ポリエステルの調製法である。
【0020】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含む熱可塑性ポリエステルの調製法である。
【0023】
本発明のなおもう1つの実施形態は、少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、R8およびR9は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含む熱可塑性ポリエステルの調製法である。
【0026】
本発明のさらなる実施形態において、(フィラーの有無にかかわらず)大環状ポリエステルオリゴマー材料を使用して、物品の形成プロセスにおいてそれを重合させることによって、限定されないが、射出および回転成形、樹脂フィルムインフュージョン、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング、プレプレグまたはフィルムを形成するための粉体コーティング、ホットメルトプレプレグ調製、圧縮成形、ロールラッピングおよび引抜成形を含むプロセスを使用して物品が製造される。これらは全て任意に強化材を伴う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本開示の文脈において、多くの用語が利用される。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪族ヒドロカルビル」は、炭素および水素のみを含有する完全飽和一価ラジカルを示す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「置換脂肪族ヒドロカルビル」は、重合触媒系の作用を阻害しない1つまたは複数(種類)の置換基を含有する脂肪族ヒドロカルビル基を示す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「大環状」分子は、環を形成するように共有結合した8個以上の原子を含有するその分子構造内に少なくとも1個の環を有する環式分子を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「オリゴマー」は、同一または異なる式の2個以上の同定可能な構造繰り返し単位を含有する分子を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「大環状ポリエステルオリゴマー」は、同一または異なる式の2個以上の同定可能なエステル官能性繰り返し単位を含有する大環状オリゴマーを意味する。大環状ポリエステルオリゴマーは、典型的に、変動する環サイズを有する1種の特定の式の多分子を指す。しかしながら、大環状ポリエステルオリゴマーは、また同一または異なる構造繰り返し単位の変動数を有する異なる式の多分子を含んでもよい。大環状ポリエステルオリゴマーは、コ−オリゴエステルまたはマルチ−オリゴエステル、すなわち、1個の環式分子内に、エステル官能性を有する二種以上の異なる構造繰り返し単位を有するポリエステルオリゴマーであってもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、いずれかの炭素原子から水素原子を除去することによるアルカンから誘導される一価の基:−Cn2n+1 (式中、n≧1である)を示す。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、自由原子価が芳香族環の炭素原子にある一価基を示す。アリール部分は1個または複数の芳香族環を含有してもよく、そして不活発基、すなわちその存在が重合触媒系の作用を阻害しない基によって置換されてもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、「アルキレン基」は、−Cn2n− (式中、n≧1である)を意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキレン基」は、環式アルキレン基−Cn2n-x− (式中、xは環化によって置換されるHの数を表す)を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「モノ−またはポリオキシアルキレン基」は[−(CH2y−O−]n−(CH2y (式中、yは1より大きい整数であり、そしてnは0より大きい整数である)を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「脂環式基」は、その中に環式構造を含有する非芳香族炭化水素基を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「二価の芳香族基」は、大環状分子の他の部分への結合を有する芳香族基を意味する。例えば、二価の芳香族の基は、メタ−またはパラ−結合された単環式芳香族基を含み得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ポリエステルポリマー複合材」は、繊維状材料または粒子材料のようなもう1つの基材と関連したポリエステルポリマーを意味する。粒子材料の実例は、チョップドファイバー、ガラスミクロスフィアおよび砕石である。従って、ポリエステルポリマー複合材を調製するために、特定のフィラーおよび添加剤を使用することができる。繊維状材料は、より連続的な基材、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維またはアラミド繊維のような有機ポリマーを意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「湿潤(wet−out)」は、空気または他の気体の実質的な量が液体基材と固体基材との間に閉じ込められないような液体基材と固体基材との間の良好で持続した接触の物理的状態を生じるプロセスを意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「繊維」はポリマーまたは天然繊維のような細長い構造を有するいずれかの材料を意味する。材料は、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維またはアラミド繊維のような有機ポリマーであり得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、繊維「トウ」または「ストランド」は、繊維が一緒になった群または繊維の束であり、通常、スプール上に巻き上げられ、またねじれていても、ねじれていなくてもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、「繊維プレフォーム」は所望の形状で一緒に保持された繊維トウのアセンブリおよび/または布である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「プレプレグ」は、複合材のマトリックスを提供するために、そして樹脂に対する繊維の比率が密接に制御されるように、十分な容積で樹脂材料によって含浸された炭素、ガラスまたは他の繊維のような繊維材料である。繊維配置はトウの形態にあり得るか、布へと織られるか、もしくは編まれるか、または一方向性テープにあり得る。
【0046】
式(I)および(II)によって表される金属アミド化合物、ならびに式(III)および(IV)の化合物が大環状ポリエステルオリゴマーの開環重合を有効に触媒することがわかっている。かかる触媒は、重合間、高温で安定であり、そして高いモノマー変換率、高分子量および機械的に良好な材料をもたらす。重合は迅速であり、典型的に5〜30分で、ほぼ定量的な変換率である。
【0047】
本発明で利用されてもよい大環状ポリエステルオリゴマーとしては、限定されないが、次式:
【0048】
【化6】

【0049】
(式中、Aは少なくとも2個の炭素原子を含有するアルキレン基、シクロアルキレンまたはモノ−もしくはポリオキシアルキレン基であり;そしてBは二価芳香族または脂環式基である)の構造繰り返し単位を有する大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート)オリゴマーが挙げられる。
【0050】
好ましい大環状ポリエステルオリゴマーは、1,4−ブチレンテレフタレート(CBT);1,3−プロピレンテレフタレート(CPT);1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(CCT);エチレンテレフタレート(CET);1,2−エチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート(CEN);テレフタル酸およびジ(エチレングリコール)の環式エステルダイマー(CPEOT);ならびに上記構造繰り返し単位の二種以上を含む大環状コ−オリゴマーの大環状ポリエステルオリゴマーである。
【0051】
大環状ポリエステルオリゴマーの合成は、少なくとも1種の式HO−A−OHのジオールを次式:
【0052】
【化7】

【0053】
(式中、AおよびBは上記で定義された通りである)の少なくとも1種の二酸クロライドと接触させることによって達成され得る。この反応は、典型的に、塩基性窒素原子の周囲で立体的な阻害を実質的に有さない少なくとも1種のアミンの存在下で実行されるである。例えば、米国特許公報(特許文献2)を参照のこと。
【0054】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するためのもう1つの方法は、同時係属の米国特許公報(特許文献10)に記載されるように、N−複素環式カルベン触媒を使用して、少なくとも1種のBのジエステルを少なくとも1種の式HO−A−OHのジオールと反応させることによる。ここで、AおよびBは上記で定義された通りである。これによって、著しい量の大環状ポリエステルオリゴマーを含有する混合物が導かれる。
【0055】
高度に阻害されていない(unhindered)アミンまたはトリエチルアミンのような少なくとも1種の他の第三級アミンとのその混合物の存在下で、二酸クロライドとビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタレートのような少なくとも1種のビス(ヒドロキシアルキル)エステルとの縮合によって、大環状ポリエステルオリゴマーを調製することも可能である。縮合反応は、実質的に不活性な有機溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼンまたはそれらの混合物中で実行される。例えば、米国特許公報(特許文献4)を参照のこと。
【0056】
最近の論文(非特許文献5)に、1,5−ペンタンジオールの使用は、いくつかの直鎖ポリエステルと一緒に比較的高収率のダイマー環式エステルを導くが、ジメチルテレフタレートおよびジ(エチレングリコール)またはビス(2−ヒドロキシエチル)チオエーテルの酵素触媒反応がダイマー環式エステルの本質的に完全な形成を導くプロセスが記載されている。
【0057】
リパーゼ、プロテアーゼまたはエステラーゼのような酵素触媒を使用して、溶媒中の直鎖ポリエステルオリゴマーから大環状ポリエステルオリゴマーを調製することもできる(ブルゲル(Brugel)およびジ コシモ(Di Cosimo)への(特許文献11))。
【0058】
大環状ポリエステルオリゴマーまたは大環状コ−オリゴエステルのもう1つの調製方法は、有機スズまたはチタネート化合物の存在下での直鎖ポリエステルポリマーの解重合である。この方法において、直鎖ポリエステル、有機溶媒およびスズまたはチタン化合物のようなエステル転移反応触媒の混合物を加熱することによって、直鎖ポリエステルは大環状ポリエステルオリゴマーに変換される。o−キシレンおよびo−ジクロロベンゼンのような通常使用される溶媒は、酸素および水を実質的に含まない(例えば、米国特許公報(特許文献12)および米国特許公報(特許文献13)を参照のこと)。
【0059】
コポリエステルを製造するために大環状コ−オリゴエステルを利用することも本発明の範囲内である。従って、特記されない限り、大環状ポリエステルオリゴマーに関連する組成物、物品またはプロセスの実施形態は、大環状コ−オリゴエステルを利用する実施形態も含む。
【0060】
本発明の一実施形態において、触媒は、次式
【0061】
【化8】

【0062】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される化合物である。好ましい化合物は、R1=R2=メチルまたはエチルであるものである。
【0063】
本発明のもう1つの実施形態において、触媒は、次式
【0064】
【化9】

【0065】
(式中、R3およびR4は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される化合物である。好ましい化合物は、R3=R4=メチルまたはエチルであるものである。
【0066】
本発明のもう1つの実施形態において、触媒は、次式
【0067】
【化10】

【0068】
(式中、R、R6およびR7は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される化合物である。典型的に、R5=R6=R7である。一例は、R5=R6=R7=イソプロピルである場合である。
【0069】
本発明のもう1つの実施形態において、触媒は、次式
【0070】
【化11】

【0071】
(式中、R8およびR9は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される化合物である。典型的に、R8=R9である。1つのかかる例は、R8=R9=メチルであるアルミニウムアセチルアセトネートである。
【0072】
重合反応は、重合が生じる温度まで反応混合物を加熱することによって、高温で、典型的に約180℃〜約280℃の範囲で実行される。典型的に、大環状ポリエステルオリゴマーはその融点より高温まで加熱されるため、処理時に、それはより粘性が低くなり、そして操作がより容易となり得る。不活発な雰囲気下で撹拌を利用してもよい。
【0073】
重合反応は、溶媒の有無にかかわらず実行されてもよい。溶媒は、1種または複数の反応物を溶解するため、そして/または反応物を混合するために使用されてよい。溶媒は、反応が実行される媒体としても使用されてよい。実例となる溶媒としては、o−ジクロロベンゼンおよびメタ−テルフェニルのような高沸点化合物が挙げられる。好ましい実施形態において、重合反応において溶媒は使用されない。
【0074】
使用される触媒の量は、典型的に、ポリマーを調製するために使用される大環状ポリエステルオリゴマーによって形成される反応混合物の重量に対して1000〜10,000ppmの範囲である。
【0075】
本発明の一態様において、(フィラーの有無にかかわらず)大環状ポリエステルオリゴマー材料を使用して、物品の形成プロセスにおいてそれを重合させることによって、限定されないが、射出および回転成形、樹脂フィルムインフュージョン、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング、プレプレグまたはフィルムを形成するための粉体コーティング、ホットメルトプレプレグ調製、圧縮成形、ロールラッピングおよび引抜成形を含むプロセスを使用して物品が製造される。これらは全て任意に強化材を伴う。唯一の条件は、高分子量ポリエステルを形成する大環状ポリエステルオリゴマーの重合が可能であることである。すなわち、大環状ポリエステルオリゴマーは少なくともその融点まで加熱されなければならない。一般的に、かかるプロセスの多くは、処理される樹脂が低い融解粘度を有することを必要とし;従って、低い融解粘度、粘度を有する大環状ポリエステルオリゴマーがかかる処理のために特に適切である(例えば、米国特許公報(特許文献14)を参照のこと)。
【0076】
例えば、大環状ポリエステルオリゴマーから物品を製造するための成形プロセスは、少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーおよび式I〜IVのいずれかによって表される少なくとも1種の触媒を金型に配置する工程と、オリゴマーの重合が生じるように十分高い温度まで金型の内容物を加熱する工程とを含む。これはオリゴマーの融点よりも高く、典型的に約180℃〜約280℃の範囲である。融解オリゴマーの低い粘度のため、射出成形プロセスで典型的な5,000psi〜20,000psiよりも非常に低い圧力で融解オリゴマーおよび触媒を金型に射出することができる。
【0077】
圧縮成形において、オリゴマーおよび触媒をプレス内の上部ダイと下部ダイとの間に配置する。オリゴマーおよび触媒は、典型的に繊維状ベース材料上に装填される。金型が均一に充填されるように十分な圧力によって金型のダイを一緒にプレスし、そして重合が生じるように十分高い温度まで金型の内容物を加熱する。圧縮成形は、トラックおよび自動車パネル、バンパービーム、様々なトレイおよび機械ハウジングのような穏やかな特徴および外形を有する、薄くて一般的に平坦なプラスチック複合材部品を製造するために使用される。
【0078】
回転成形において、成形プロセスは、内容物が金型の内側の意図された領域上を回転するように、二軸に対して同時に金型を回転させ、内容物が加熱される前に回転を開始し、そして内容物が重合および固化するまで金型を回転し続ける工程をさらに含む。回転成形は、多種多様な流体貯蔵タンク、トラクターフェンダーおよび大型の子供用おもちゃのような中空熱可塑性物品を製造するためのプロセスである。
【0079】
樹脂フィルムインフュージョンにおいて、触媒を含む大環状ポリエステルオリゴマーの層またはフィルムが、金型中で繊維状材料の乾燥層に隣接して配置され、そして金型の内容物が加熱される時にオリゴマーおよび触媒が繊維状材料の乾燥層中に注入される樹脂フィルムインフュージョンは、一表面において主に平坦であり、そして詳細特徴を有し得るプラスチック複合材物品を製造するためのプロセスである。かかる物品の実例は、典型的に炭素繊維およびエポキシ樹脂で製造された複合材から構成されるエアクラフトウイングスキンである。
【0080】
様々な大環状ポリエステルオリゴマーから様々な大きさおよび形状の物品を製造するために、本発明の組成物および方法を使用することもできる。本発明によって製造され得る代表的な物品としては、限定されないが、自動車体パネルおよびシャシー部品、バンパービーム、エアクラフトウィングスキン、風車ブレード、流体貯蔵タンク、トラクターフェンダー、テニスラケット、ゴルフシャフト、ウィンドサーフィンマスト、おもちゃ、ロッド、チューブ、バーストック、自転車フォークおよび機械ハウジングが挙げられる。
【0081】
物品の製造において、1種または複数の様々な種類のフィラーが含まれてもよい。特定のフィラーは、所望の目的または特性を達成するためにしばしば含まれ、そして得られるポリエステルポリマー中に存在してもよい。例えばフィラーの目的は、ポリエステルポリマー製品の強度を増加させることであり得る。高レベルの熱伝導性および低レベルの導電性を必要とする適用において、フィラーとして窒化ホウ素が使用される。またフィラーは、特定の密度を達成するため、より高価な材料の代替として、そして/または当業者に認識されるような他の所望の特性を提供するために、重量または容積を提供してもよい。
【0082】
フィラーの実例は、特に、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チョップドファイバー、フライアッシュ、ガラスミクロスフィア、マイクロバルーン、砕石、ナノクレイ、直鎖状ポリマーおよびモノマーである。フィラーは、大環状ポリエステルオリゴマーおよび環式エステルの間の重合反応の前、間または後に添加されてもよい。フィラーは一般的に、フィラーおよびフィラーを添加する目的次第で、全重合反応混合物(すなわち、オリゴマーおよび触媒およびフィラーおよびいずれかの存在する他の添加剤の合計)の重量に対して約0.1重量%と70重量%との間の量で添加される。例えば、パーセンテージは、好ましくは、炭酸カルシウムの場合、25重量%と50重量%との間であり、ナノクレイの場合、2重量%と5重量%との間であり、そしてガラスミクロスフィアの場合、25重量%と70重量%との間である。ポリエステルポリマー複合材を調製するためにフィラーを使用することができる。
【0083】
さらに、物品の製造において追加的な成分(例えば、添加剤)が添加されてもよい。実例となる添加剤としては、着色剤、顔料、磁気材料、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤、難燃剤、潤滑油および離型剤が挙げられる。
【0084】
本明細書中に数値範囲が列挙されるが、特記されない限り、この範囲は、その終点、ならびに範囲内の全整数および分数を含むように意図される。範囲を定義する場合、本発明の範囲が列挙された具体的な値に限定される意図はない。
【実施例】
【0085】
本発明を以下の実施例においてさらに定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示すが、実例として与えられているだけであることは理解されなければならない。上記の検討およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、そしてそれらの精神および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適応させるために、本発明の様々な変更および修正を実行することができる。
【0086】
略語の意味は以下の通りである:「min」は分を意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「Mn」は数平均分子量を意味し、「Mw」は重量平均分子量を意味し、そして「GPC」はゲル透過クロマトグラフィーを意味する。
【0087】
(実験)
(材料)
ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウム(「アルミニウムアミド」、CAS番号32093−39−3、95%)をストレム ケミカルズ インコーポレイテッド(Strem Chemicals,Inc.)(マサチューセッツ州、ニューバリーポート(Newburyport,Massachusetts))から得、そしてそのまま使用した。
【0088】
テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(CAS番号3275−24−9)およびテトラキス(ジエチルアミノ)チタン(CAS番号4419−47−0)をアルドリッチ ケミカル カンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin))から得、そしてそのまま使用した。ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)の製造間の仕上げ工程の間に、バッグフィルター上で単離された直鎖オリゴマーから温グリコール抽出によって、CPTをポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)から単離した。(特許文献15)に記載されるように、CBTをポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)から単離した。
【0089】
CPEOTは以下の通り調製された:オーバーヘッドスターラーおよびディーン−スターク(Dean−Stark)トラップを備えた22Lジャケット付き樹脂ケトルに、9.246Lのトルエン、265.3グラム(2.50モル)のジエチレングリコールおよび485.5g(2.50モル)のジメチルテレフタレートを添加した。ジメチルテレフタレートが溶解するまで、得られた混合物を撹拌しながら80℃まで加熱し、次いで300gの固定化カンジダ アンタルチカ リパーゼ(Candida antartica lipase)B(ノボザイム(Novozyme)435)を添加した。8.5L/分で窒素をスパージングしながら、得られた混合物を80℃に維持し、そしてスパージングによって消失するトルエンを定期的に置換した。24時間後、窒素スパージングを休止して、そして反応混合物を80℃でケトルから排出した。70℃および50mm真空下で生成物混合物からトルエンを蒸留し、得られた固体(1050g)を三等分に分け、そして各部を11Lの還流クロロホルムで3時間抽出した。熱クロロホルム抽出物を濾過し、酵素触媒を除去し、そして得られた濾液を約3.5Lまで濃縮し、室温まで冷却し、濾過し、そして回収された白色固体を空気乾燥させ、総量490g(収率83%、純度99%)の3,6,9,16,19,22−ヘキサオキサトリシクロ[22.2.2.211,14]トリアコンタ−11,13,24,26,27,29−ヘキサエン−2,10,15,23−テトロンを得た。これは「環式ポリ(ジエチレングリコールテレフタレート)」またはCPEOTとしても既知である。
【0090】
(実施例1)
ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウムを使用するCPEOTの重合
完全に融解するまで、CPEOT(0.5g、1.06mmol)を250℃までホットブロックにおいて加熱した。ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウム(0.009g、0.0252mmol)を添加し、そして混合物を迅速に撹拌して、触媒および大環状エステルを完全に混合した。5分以内、混合物は非常に粘性であり、流動しなかった。
【0091】
(実施例2)
ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウムを使用する環式ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(CPT)の重合
完全に融解するまで、CPT(0.5g、1.21mmol)を260℃までホットブロックにおいて加熱した。ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウム(0.009g、0.0252mmol)を添加し、そして混合物を迅速に撹拌して、触媒および大環状エステルを完全に混合した。5分以内、混合物は非常に粘性であり、流動しなかった。
【0092】
(実施例3)
ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウムを使用する環式ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)の重合
完全に融解するまで、CBT(0.5g、1.20mmol)を250℃までホットブロックにおいて加熱した。ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウム(0.009g、0.0252mmol)を添加し、そして混合物を迅速に撹拌して、触媒および大環状エステルを完全に混合した。1分以内、混合物は非常に粘性であり、流動しなかった。
【0093】
(実施例4)
アルミニウムアミドを使用する窒化ホウ素の存在下でのCPTの重合
融解するまで、CPT(5g)を265℃までアルミニウム金型中で加熱した。窒化ホウ素(1.5g)を融解モノマー中に撹拌した。ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウム(「アルミニウムアミド」)(0.09g、0.28mmol)によって重合を開始した。重合を15分間続行し、硬質のオフホワイト色均質固体が得られた。GPC分析によって、Mn=10,000およびMw=16,100が示された。
【0094】
(実施例5)
テトラキス(ジメチルアミノ)チタンを使用するCPTの重合
1gのCPTおよび10mgのテトラキス(ジメチルアミノ)チタンを含有する混合物を270℃のホットブロックに10分間置いた。GPC分析によって、Mn=14,700およびMw=32,000が示され、変換率は98%であった。
【0095】
(実施例6)
テトラキス(ジエチルアミノ)チタンを使用するCPTの重合
1gのC3GTおよび14mgのテトラキス(ジエチルアミノ)チタンを含有する混合物を270℃のホットブロックに10分間置いた。GPC分析によって、Mn=12,800およびMw=28,900が示され、変換率は94%であった。
【0096】
(実施例7)
テトラキス(ジメチルアミノ)チタンを使用するCPEOTの重合
1gのCPEOTおよび11mgのテトラキス(ジメチルアミノ)チタンを含有する混合物を270℃のホットブロックに10分間置いた。GPC分析によって、Mn=9,490およびMw=31,900が示され、変換率は83%であった。
【0097】
(実施例8)
テトラキス(ジエチルアミノ)チタンを使用するCPEOTの重合
1gのCPEOTおよび16mgのテトラキス(ジエチルアミノ)チタンを含有する混合物を270℃のホットブロックに10分間置いた。GPC分析によって、Mn=13,700およびMw=24,800が示され、変換率は93%であった。
【0098】
(実施例9)
ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウムダイマーを使用するCPEOTおよびCPTの混合物の重合
CPEOTおよびCPTの1:1モル比混合物5gならびに0.0434g(0.138mmol)のビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウムダイマーを混合し、そして240℃で1時間加熱した。GPC分析によって、Mn=16400およびMw=31800が示され、変換率は95.4%であった。
【0099】
(実施例10)
アルミニウムイソプロポキシドを使用する環式ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)の重合
融解するまで、環式ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(5g)を265℃までホットブロックにおいて加熱した。アルミニウムイソプロポキシド(17mg、0.0751mmol)を添加し、重合を開始した。重合を5分間続行し、硬質の半結晶ポリマーが得られた。GPC分析によって、Mn=8610およびMw=15800が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含むことを特徴とする熱可塑性ポリエステルの調製法。
【請求項2】
少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【化2】

(式中、R3およびR4は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含むことを特徴とする熱可塑性ポリエステルの調製法。
【請求項3】
少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【化3】

(式中、R、R6およびR7は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含むことを特徴とする熱可塑性ポリエステルの調製法。
【請求項4】
少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーを、少なくとも1種の次式
【化4】

(式中、R8およびR9は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される触媒と接触させる工程を含むことを特徴とする熱可塑性ポリエステルの調製法。
【請求項5】
約180℃〜約280℃の温度で実行されることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
フィラーの存在下で大環状ポリエステルオリゴマーを触媒と接触させることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項7】
フィラーの重量が、オリゴマーおよび触媒およびフィラーおよびいずれかの他の存在する添加剤の総重量の0.1%〜70%であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フィラーが、窒化ホウ素、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チョップドファイバー、フライアッシュ、ガラスミクロスフィア、マイクロバルーン、砕石、ナノクレイ、直鎖状ポリマーおよびモノマーよりなる群の少なくとも一員であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
大環状ポリエステルオリゴマーから物品を製造する方法であって、次の工程:
(a)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーならびに請求項1、2、3および/または4に記載の触媒のいずれか1種もしくは複数を金型に提供する工程と、
(b)オリゴマーの重合が生じる温度まで金型の内容物を加熱する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
大環状ポリエステルオリゴマーが溶融され、そして金型中に射出されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
内容物が金型の内側の意図された領域上を回転するように、二軸に対して同時に金型を回転させ、内容物が加熱される前に回転を開始し、そして内容物が重合および固化するまで金型を回転し続ける工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
触媒を含む大環状ポリエステルオリゴマーの層またはフィルムが、金型中で繊維状材料の乾燥層に隣接して配置され、そして金型の内容物が加熱されるときにオリゴマーおよび触媒が繊維状材料の乾燥層中に注入されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
金型が繊維状プレフォームを含有し、そして大環状ポリエステルオリゴマーおよび触媒がプレフォーム中に注入されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
オリゴマーおよび触媒がプレス内の上部ダイと下部ダイとの間に配置され、そして金型がオリゴマーおよび触媒によって均一に充填されるように金型のダイが一緒にプレスされることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
大環状ポリエステルオリゴマーおよび重合触媒からプレプレグを形成する方法であって、次の工程:
(a−1)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーならびに請求項1、2、3および/または4に記載の触媒のいずれか1種もしくは複数を溶媒中に溶解して、それらの溶液を形成する工程と;
(a−2)溶液を繊維状ベース材料と接触させる工程と;
(a−3)溶媒を除去する工程と;
を含むか、あるいは
(b−1)剥離ベース材料を提供する工程と;
(b−2)その上に、少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーならびに請求項1、2、3および/または4に記載の触媒のいずれか1種もしくは複数の層をコーティングする工程と;
(b−3)加熱下で繊維状ベース材料に対して剥離ベース材料をプレスする工程と;
を含むか、あるいは
(c−1)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーならびに請求項1、2、3および/または4に記載の触媒のいずれか1種もしくは複数を粉体として提供する工程と;
(c−2)工程c−1の粉体のコーティングを繊維状ベース材料中に含浸させる工程と;
(c−3)オリゴマーを軟化させる工程と;
(c−4)熱および圧力をかけて、繊維状ベース材料中でオリゴマーの流動および重合を生じさせる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
繊維状ベース材料が、布織物、繊維トウまたは一方向性プレプレグテープであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
繊維強化物品を製造するための引抜成形法であって、次の工程:
(a)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーならびに請求項1、2、3および/または4に記載の触媒のいずれか1種もしくは複数を提供する工程と;
(b)繊維状ストランドを細長いダイ中に引き入れる工程と;
(c)ダイ中で、大環状ポリエステルオリゴマーおよび触媒を繊維状ストランドと、その周囲で接触させる工程と;
(d)加熱して、大環状ポリエステルオリゴマーの重合を生じさせ、繊維状ストランドの周囲で高分子量ポリエステル樹脂マトリックスを形成する工程と;
(e)所望の断面を有するダイの出口部分にポリエステルマトリックスを引き入れ、それによって物品を形成する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
大環状ポリエステルオリゴマーが連続的にダイの外で溶融され、そして液体の形態でダイ中に注入されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
大環状ポリエステルオリゴマーから中空プラスチック複合材物品を製造するためのフィラメントワインディング法であって、次の工程:
(a)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーならびに請求項1、2、3および/または4に記載の触媒のいずれか1種もしくは複数を提供する工程と;
(b)大環状ポリエステルオリゴマーおよび重合触媒を繊維状ストランドと接触させる工程と;
(c)繊維状ストランドをマンドレル上に巻き上げる工程と;
(d)重合が生じる温度まで大環状ポリエステルオリゴマーを加熱する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
大環状ポリエステルオリゴマーから管状物品を製造するためのロールラッピング法であって、次の工程:
(a)強化繊維のシートまたはテープを、少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマーならびに請求項1、2、3および/または4に記載の触媒のいずれか1種もしくは複数で含浸させることによって、プレプレグを形成する工程と
(b)マンドレル上でプレプレグを回転させる工程と;
(c)重合が生じる温度まで大環状ポリエステルオリゴマーを加熱する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
少なくとも1種のフィラーが大環状ポリエステルオリゴマーと接触して存在することを特徴とする請求項9、15、17、19および20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
フィラーの重量が、オリゴマーおよび触媒およびフィラーおよびいずれかの他の存在する添加剤の総重量の0.1%〜70%であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
フィラーが、窒化ホウ素、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チョップドファイバー、フライアッシュ、ガラスミクロスフィア、マイクロバルーン、砕石、ナノクレイ、直鎖状ポリマーおよびモノマーよりなる群の少なくとも一員であることを特徴とする請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2008−519893(P2008−519893A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541297(P2007−541297)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040636
【国際公開番号】WO2006/053070
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】