錠剤の外観検査装置及びPTP包装機
【課題】 錠剤の振動やポケット内の姿勢に影響を受けることなく正確な検査が行えるようにすること
【解決手段】 3Dカメラ装置は、容器フィルムのポケット部内に供給された錠剤を撮像し、三次元計測法により錠剤の表面の各位置の高さ位置を濃淡画像で表したプロファイル画像を求め、処理装置22に送る。処理装置は、プロファイル画像に基づき錠剤の外観検査を行うもので、プロファイル画像中の錠剤を示す画像データを抽出する錠剤検出部31と、抽出した画像データをその錠剤の表面が平坦になるように補正処理をして平坦化画像を生成する平坦化処理部32と、その平坦化画像に基づいて外観異常の判定を行う欠陥解析部34を備える。平坦化処理部32により錠剤の表面の高さ位置が平坦(水平)に正規化されるので、簡単な閾値処理で異常の有無を判定できる。
【解決手段】 3Dカメラ装置は、容器フィルムのポケット部内に供給された錠剤を撮像し、三次元計測法により錠剤の表面の各位置の高さ位置を濃淡画像で表したプロファイル画像を求め、処理装置22に送る。処理装置は、プロファイル画像に基づき錠剤の外観検査を行うもので、プロファイル画像中の錠剤を示す画像データを抽出する錠剤検出部31と、抽出した画像データをその錠剤の表面が平坦になるように補正処理をして平坦化画像を生成する平坦化処理部32と、その平坦化画像に基づいて外観異常の判定を行う欠陥解析部34を備える。平坦化処理部32により錠剤の表面の高さ位置が平坦(水平)に正規化されるので、簡単な閾値処理で異常の有無を判定できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元計測法を用いて錠剤の外観検査を行う錠剤の外観検査装置及びPTP包装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元計測法を用いた錠剤の外観検査装置としては、従来、特許文献1に開示された技術がある。この特許文献1に開示された技術は、三次元計測法より錠剤の表面全域の高さデータを求め、その高さデータに基づき錠剤の異常の有無を検出することを主な特徴としている。検査対象の錠剤は、表面が中央に行くほど突出する曲面となっている。従って、例えば上面に対して検査をすることを考えると、外周縁に対応する位置がもっとも低く、中心に行くに従って高さ位置は徐々に高くなり、中心が最も高い位置となる。そこで、予め正常品の各座標の適正な高さ位置を設定値としてもち、全座標の高さデータを測定し、測定値と、記憶保持している対応する座標の設定値とを比較して異常の有無を判定する。この外観検査装置によれば、反射光を撮像し明度の差により異物を検出する手法に比べ、精度良く異常を検出できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3640247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1の技術は、全座標の高さデータを測定し、測定値と各座標の設定値とを比較して異常の有無を判定しているので、錠剤が傾いたりしていると正確に異常を検出することができない。つまり、錠剤が傾いた姿勢で収納されていると、正常な錠剤を水平に置いているときに比べ、一方の側の各座標の高さ位置は全体的に高くなり、他方の側の各座標の高さ位置は全体的に低くなる。特に外周囲付近ほどその差が顕著となり、設定値とのずれが大きく異常と判定されるおそれがある。
【0005】
また、各座標ごとに設定値を決める必要があり、その作業が繁雑である。さらに、検査対象の錠剤の寸法形状(直径・膨らみ方等)が異なる都度、設定値を決めなければならず、煩雑さが増し汎用性に欠けるものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)移動する錠剤に光を照射する光照射手段と、その錠剤の表面からの反射光を撮像可能な撮像手段と、その前記撮像手段にて撮像された画像データに基づき、三次元計測法により錠剤の表面の各位置の高さ位置を濃淡画像で表したプロファイル画像を求める手段と、そのプロファイル画像に基づき錠剤の外観検査を行う処理手段と、を備え、前記処理手段は、前記プロファイル画像中の錠剤を示す画像データを抽出する手段と、抽出した画像データをその錠剤の表面が平坦になるように正規化をして平坦化画像を生成する平坦化手段と、その平坦化画像に基づいて外観異常の判定を行う手段を備えるようにした。
【0007】
実施形態では、光照射手段と、撮像手段と、プロファイ画像を求める手段を3Dカメラ装置21で一体に実現したが、別装置で構成しても良い。外観異常の判定を行う手段は、実施形態は、欠陥解析部34に対応し、判定部40を含むものでも良い。錠剤は、通常その表面が膨らんだ曲面となっているが、平坦化手段により求めた平坦化画像は、表面が平坦になるように修正されているので、正常品・良品であれば平面上の各位置の高さ位置を示す濃淡値はほぼ同じ値となる。そして、欠け等があった場合には、その部分が低くなり、バリのように部分的に突出した部分があったり異物の付着等があると、その部分は高くなるので、上記の平坦に補正した高さ位置と異なる値となる。よって、簡単な閾値処理により、外観異常の検査をすることができる。さらに、仮に錠剤が斜めに傾いた状態で置かれていても、平坦化処理をすることで高さ位置を示す濃淡値はほぼ同じ値となるので、上記と同じアルゴリズムで外観異常の判定を行うことができる。よって、錠剤の置かれた姿勢に関係なく精度良く判定ができる。さらに、実施形態に示すように、欠陥の解析を複数のパラメータについて求め、総合的に判断することで欠陥の種類も判定・特定できる。また、平坦に補正・正規化されることから、表面の曲面(湾曲)の寸法形状に関係なく、一律に簡単なアルゴリズムで異常の判定を行える。
【0008】
(2)前記平坦化手段における補正処理は、高次曲線法或いは高次曲面法を用いて前記錠剤の表面を近似したベース面を求め、各位置のベース面からの高さに置き換えて正規化するものとするとよい。錠剤の表面形状は比較的なだらかに変化しているため、これらの高次曲線法や高次曲面法で簡単かつ精度良く近似することができる。
【0009】
(3)一列に並んだ複数の錠剤の同一直線(実施形態の「同一スキャンライン」に対応)に存在する前記平坦化画像における濃淡値の平均値を求め、求めた平均値が前記正規化する値との差から振動による補正値を求め、前記同一直線状に存在する各画素の濃淡値を前記補正値により補正する補正手段を備え、前記外観異常の判定を行う手段は、その補正手段による補正後の画像データに基づいて行うようにするとよい。補正手段は、実施形態では、振動除去部33に対応する。補正値は、実施形態では、正規化する値(128)と平均値との差をそのまま用いているが、適宜の係数を掛けるなどの重み付けをしても良い。水平移動する錠剤が、外部振動の影響を受けて上下に移動することもある。係る場合、振動により上下に移動した際の表面の高さ位置が、通常の状態からずれることになる。この補正手段で補正することで、振動による高さの変化の影響が軽減でき、振動による高さ位置の変化により外観異常と判断されるおそれが可及的に無くなる。
【0010】
(4)本発明のPTP包装機は、搬送する帯状の容器用フィルムに形成されたポケット部に対し、錠剤を供給する錠剤供給装置と、前記錠剤供給装置の下流側に設けられ、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに蓋フィルムを重ねた状態でそれら容器フィルムと蓋フィルムとをシールして密封するシール装置と、そのシール装置の下流側に設けられ、前記容器フィルムと蓋フィルムの所定位置を切断する切断装置と、を備えたPTP包装機であって、前記錠剤供給装置の下流側に上記の(1)から(3)のいずれかに記載の外観検査装置を設け、その外観検査装置で前記ポケット部に供給された前記錠剤の外観異常の検査を行うようにした。ポケット部に供給された錠剤について、その搬送途中で外観異常の有無がわかるので、その異常があった錠剤を含む包装体を破棄することができる。
【発明の効果】
【0011】
錠剤の姿勢に影響を受けることなく正確な外観異常の検査が行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のPTP包装機の好適な一実施形態を示す正面図である。
【図2】容器フィルムを示す図である。
【図3】容器フィルムのポケット部内に錠剤が供給された状態を示す図である。
【図4】本発明の外観検査装置の好適な一実施形態を示すブロック図である。
【図5】プロファイル画像の一例を示す図である。
【図6】処理装置における機能ブロック図である。
【図7】粒子解析した結果の一例を示す図である。
【図8】(a)は、プロファイル画像中の1つの錠剤部分を抽出した画像データであり、(b)は、(a)中における線上の高さ情報をプロットした図である。
【図9】平坦化処理部の機能を説明する図である。
【図10】(a)は、図8(a)に示すプロファイル画像に対し平坦化して得られた平坦化画像を示す図であり、(b)は、図10(a)中における線上の高さ情報をプロットしたものを示す図である。
【図11】平坦化処理部の機能を説明する図である。
【図12】振動除去部の機能を説明する図である。
【図13】欠陥解析部の機能を説明する図である。
【図14】本発明の外観検査装置の好適な他の実施形態を示すブロック図である。
【図15】処理装置における機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係るPTP包装機の好適な一実施形態を示している。
【0014】
同図に示すように、PP製の容器フィルム1が巻き取られた原反ロール2が装置の上流側に回転自在にセットされる。この原反ロール2から連続して容器フィルム1が引き出され、複数のローラ3に掛け渡されて成型部4に導かれる。成型部4では、容器フィルム1の所定位置に、図2に示すような凹状のポケット部1aを多数成型する。この成型部4は、容器フィルム1を上下から挟み込んで凹状のポケット部1aを成型する成型装置と、その成型装置の上流側に設けられ容器フィルム1の所定部位(ポケット部1aの形成領域)を加熱する加熱装置と、成型したポケット部1aを含むフィルム領域を冷却する冷却装置とを備える。冷却装置で容器フィルム1の温度を降下させてPPの急冷による再結晶化による促進を図るとともにポケット部1aの形状を固定化する。なお本形態では、ポケット部1aの平面領域の形状を円形としている。
【0015】
成型部4を通過したポケット部付きの容器フィルム1は、アイドルローラ5に掛け渡されて所定の経路で搬送される。この容器フィルム1の搬送経路の上方所定位置には錠剤供給装置6が設置され、この錠剤供給装置6から、各ポケット部1aに対して錠剤10が供給される(図3参照)。図3に示すように、錠剤10は、平面が円形状で上面・下面のいずれも中央が膨らんだ外形状を採る。よって、ポケット部1a内に正しい姿勢で供給された場合、錠剤10は、下面の中央(最下点)がポケット部1aの底に接触し、外周縁10aが水平な姿勢をとる。また、ポケット部1aに供給された錠剤10のなかには、図中左から3番目に示すように、斜めに傾いた状態となるものもある。
【0016】
錠剤供給装置6の下流側には、外観検査装置20を構成する3Dカメラ装置21が配置される。本実施形態では、3Dカメラ装置21は、容器フィルム1の上下両側に配置し、それぞれの側から撮像することで、ポケット部1aに供給された錠剤10の上面と下面のそれぞれの面についての良否等の検査が行える。
【0017】
さらに3Dカメラ装置21の下流側にはシール装置11が配置されており、錠剤10の供給を受けた容器フィルム1がそのシール装置11に導かれる。
【0018】
一方、アルミシートからなる蓋フィルム7が巻き取られた原反ロール8は、PTP包装機の搬出端側近傍に回転自在に設置される。その原反ロール8から引き出された蓋フィルム7は、複数のローラ9に掛け渡されて所定の経路を通り、シール装置11に導かれる。そして、このシール装置11にて、蓋フィルム7が容器フィルム1の上面を覆うように被覆されるとともに、両フィルムの接触部位(容器フィルム1のポケット部1aの未形成領域)が熱シールされて密封される。
【0019】
シール装置11は、ヒータを内蔵するシールローラ11aと、表面に容器フィルム1に形成されたポケット部に符合する凹部を有するシール受けローラ11bとを備えている。そして、シール受けローラ11bに形成する凹部の縦横の間隔は、容器フィルム1に形成されるポケット部1aの縦横の間隔と一致させている。これにより、容器フィルム1は、形成されたポケット部をシール受けローラ11bに設けた凹部内に符合するように位置合わせをした状態で掛け渡される。よって、シール受けローラ11bの回転にともない、容器フィルム1も搬送されることになる。そして、その容器フィルム1と蓋フィルム7とが重ね合わされた状態でシールローラ11aとシール受けローラ11b間を通過することにより、その通過時に両ローラで挟まれ、加熱状態で加圧されることにより、ポケット部未形成領域が密着してシールされ、ポケット部内の被包装物が密封される。
【0020】
さらに、このシール装置11の下流側には、フィルムに対して製造年月日等を印刷する刻印装置12,フィルムの所定位置をハーフカットしてポケット部1aの周囲に切断容易線を形成するスリッター装置13、打ち抜き装置14の順に配置される。打ち抜き装置14は、シールされて一体化された容器フィルム1と蓋フィルム7の所定位置を打ち抜いて、n×m個のポケット部1aを備えたPTP包装体を製造するものである。上記した各構成は、基本的に従来のPTP包装機と同様であるのでその詳細な説明を省略する。もちろん、本発明の外観検査装置20は、上記に示すPTP包装機以外の構成にも適用できる。
【0021】
図4は、本発明の外観検査装置の好適な一実施形態を示している。本実施形態では、外観検査装置20は、上下に配置される2つの3Dカメラ装置21と、その3Dカメラ装置21で撮像したそれぞれの画像データを取り込み、前処理・解析・判定を行う処理装置22とを備えている。この処理装置22は、汎用のパーソナルコンピュータや専用のコンピュータで構成される。この処理装置22は、判定結果を上位コンピュータ23に送るようになっている。
【0022】
3Dカメラ装置21は、対象物(錠剤)をスキャンし、対象物の表面の高さ情報をプロファイル画像として出力するものである。すなわち、3Dカメラ装置21は、対象物に対してレーザー光を照射する光照射手段(レーザーラインプロジェクタ等)、対象物からの反射光を撮像するカメラ(CCDカメラ、CMOS等)、同カメラで撮像したデータから対象物の表面の高さ情報(表面形状)を算出する演算手段(制御手段)等を備える。具体的には、光照射手段から出射されるレーザー光にて、対象物である錠剤に線状の像を投影する。CCDカメラは、投影面に対し所定の角度を持った光軸をもち、錠剤の表面の線状の投影を撮像する。そして、演算手段は、三角測量の原理に基づき、線上の各地点の高さ情報を求める。対象物の表面に照射する線状のレーザー光の位置を順次ずらしていき、それぞれのずらした位置における各地点の高さ情報を求める処理を繰り返し行うことで、対象物の全面(1シート分)について高さ情報を求め、これを画像(プロファイル画像)として出力する。このプロファイル画像は、濃淡画像であり、高い位置ほど輝度が大きい値(白・明るい)になり、輝度が低い位置ほど小さい値(黒・暗い)になる。
【0023】
本実施形態のプロファイル画像は、256階調としている。そして、本実施形態のPTP包装機では、錠剤は容器フィルム1のポケット部1aに供給された状態で、容器フィルム1と共に搬送され、3Dカメラ装置21の設置位置を通過するので、その通過にタイミングを合わせて計測を行うことで、錠剤の表面全体の高さ情報を取得できる。さらに、本実施形態では、錠剤1個ずつを撮像するのではなく、最終のPTP包装体を構成する単位となる1シート分(n×m個の錠剤の配列)をまとめて1つのプロファイル画像として求め、出力するようにしている。図5は、プロファイル画像の一例を示している。本実施形態では、2列(1列が5個)の合計10個の錠剤が1シートを構成している。このプロファイル画像上の画素は、位置は対象の平面状の位置(X,Y)、輝度は対象物の高さ情報(Z)に相当する。
【0024】
図6は、処理装置22における機能ブロック図である。図に示すように、処理装置(パソコン)22は、CPU(MPU)の機能として、錠剤検出部31、平坦化処理部21、振動除去部33、欠陥解析部34、判定部40を備えている。また、処理装置22は、記憶手段として、プロファイル画像記憶部35,錠剤情報記憶部36、平坦化画像記憶部36、振動除去画像記憶部38、欠陥情報記憶部39を備えている。各記憶部は、バッファメモリその他の一時的な記憶手段でも良いし、不揮発性メモリでも良い。また、各記憶部は、パソコン内に実装される同じ記憶装置の異なるメモリ領域に実装されて実現されるものでも良いし、異なる記憶装置で実現されても良い。3Dカメラ装置21から送られてきたプロファイル画像は、プロファイル画像記憶部35に格納される。
【0025】
錠剤検出部31は、プロファイル画像記憶部35に格納されたプロファイル画像を読み出し、そのプロファイル画像を粒子解析して画像中の錠剤の位置、大きさ、平均高さを算出する。ここで粒子解析は、処理対象のプロファイル画像(グレースケール画像)の各画素の輝度を所定の閾値と比較し、二値化処理をする。この閾値は、例えば、錠剤の外周縁の高さ位置から一定量だけマージンをとった低い位置を示す輝度(濃度)の値とすると良い。すなわち、例えば容器フィルム1の搬送路の上側に設置した3Dカメラ装置21は、錠剤の上面を撮像するもので、その3Dカメラ装置21で撮像して得られたプロファイル画像は、ポケット部1aの底が最も低い位置にあり、錠剤20の上面中央付近が最も高い位置にあることを表す画像となる。従って、錠剤10は厚みがあることも相まって、その3Dカメラ装置21で撮像された錠剤10の外周縁の高さ位置は、ポケット部1aの底に比べるとある程度高い位置となる。そこで、閾値を係る高さを考慮して設定することで、錠剤10の部分を抽出することができる。そして、図3にも示したように、錠剤10が斜めに傾いた状態でポケット部1a内に供給されることも考慮し、錠剤の厚さの半分よりも適宜のマージンだけ低い値を閾値に設定する。上記の説明では、上側に設置した3Dカメラ装置21を用いて行ったが、容器フィルム1の搬送路の下側に設置した3Dカメラ装置21についても同様である。つまり、係る下側の3Dカメラ装置21は、錠剤10の下面を撮像するものであり、その3Dカメラ装置21で撮像して得られたプロファイル画像は、容器フィルム1の上面(ポケット部1a未形成領域)が最も低い位置にあり、錠剤20の下面中央付近が最も高い位置にあることを表す画像となる。よって、上記と同様に錠剤の厚さを考慮して閾値を設定することで、錠剤の部分を抽出できる。
【0026】
さらに錠剤検出部31は、粒子解析により白色として抽出された各錠剤の位置(重心位置)と、大きさ(面積および、縦、横)を求める。また、錠剤毎のグレーレベルの平均値(高さの平均値)も求める。そして、錠剤検出部31は、これら求めた各情報を関連付けて錠剤情報として錠剤情報記憶部36に格納する。図7は、粒子解析例を示している。ここでは、粒子解析後の二値化処理した画像であり、得られた錠剤の領域を矩形で示している。
【0027】
平坦化処理部32は、錠剤情報記憶部36に格納された錠剤情報(各錠剤の位置、大きさ、高さの平均値や2値化画像等)と、プロファイル画像記憶部35に格納された1シート分のプロファイル画像を読み出し、錠剤ごとに錠剤表面が平坦になるように補正処理を行う。すなわち、錠剤10の表面(上面/下面)は中央が最も高い位置にある湾曲した曲面となっているので、正常品であっても高さ位置は平面位置により異なる。さらに、ポケット部1a内に置かれている状態などによっても異なる。つまり錠剤表面の高さ位置のデータは、錠剤の形状、シートに置かれている状態などにより、同じ高さ(平坦・水平)ではない。
【0028】
図8(a)は、プロファイル画像中の1つの錠剤部分を抽出した画像データであり、図8(b)は、図8(a)中における線上の高さ情報をプロットしたものを示している。図8(b)から明らかなように、位置の推移に伴い高さか変化しているのが確認できる。
【0029】
平坦化は、この湾曲した緩やかに変化する表面の推移を直線に変換するものである。すると、正常な錠剤の表面は緩やかな変化であるため、平坦化後の錠剤表面を表す画像は、水平(直線)になるのに対し、欠陥部分は急な変化となるので、正常な表面に対応した水平なベースラインに対し、その高さ方向の位置が大きく異なる。
【0030】
そして、この平坦化の具体的な処理アルゴリズムは、例えば高次曲線法を用いることができる。この高次曲線法は、縦または、横のスキャン方向のベース面の高さの変化を高次曲線でラインごとに近似し、そのベース面からの高さに置き換えた画像に変換する。高次の一例として2次曲線に基づいて説明する。平坦化処理部32は、例えばX軸と平行な直線を処理対象となる注目ライン(例えば図8(a)中に引いた線)に設定し、その注目ラインに存在する各画素のグレーレベル(輝度)の変化について、最小自乗法によりその注目ラインに近似する下記式からなる2次曲線(P(x))の係数(a,b,c)を求める。
P(x)=ax2+bx+c
x:X軸の座標値(ライン上の位置座標)
P(x):注目ラインのグレーレベルの変化に近似する補正2次曲線のxにおける値
【0031】
係数a,b,cを求めることで補正2次曲線の計算式が確定する。この補正2次曲線を用いることで、注目ラインのライン上(X軸上)のグレーレベル(輝度)の変化が、図9中、点線で示すようになっている場合、補正2次曲線は同図中、実線で示すような補正ラインとなる。この実線で示す補正ラインは、錠剤10の表面が微小な凹凸もないなだらかな曲面とした場合の当該表面の高さ位置を示すものとなる。
【0032】
そして、平坦化処理部32は、このような補正2次曲線が水平な直線、すなわち、補正2次曲線上の各点が、同じグレーレベルになるように、プロファイル画像中の注目ラインの各画素のグレーレベルを正規化をする。さらに、上記の正規化をする基準となる「同じグレーレベル」の値は、本実施形態では、プロファイル画像が全体を256階調で表しているので、その中間となる「128」とする。この正規化は、具体的には、下記式を用いてR(x)を算出することで求める。
R(x)=I(x)−P(x)+128
x:X軸の座標値(ライン上の位置座標)
I(x):生画像(プロファイル画像)における値(入力)
P(x):注目ラインのグレーレベルの変化に近似する補正2次曲線のxにおける値
R(x):補正後の正規化したxにおける値(出力)
【0033】
つまり、各座標値(x)の時の補正2次曲線の値と、実際の画像の値の差分を求め、ベースラインとなる「128」を加算した値である。そして、平坦化処理部32は、その注目ラインをY軸方向に1画素分ずつずらし、それぞれの注目ラインについて上記の処理を繰り返し実行することで、表面全体について最終的の正規化して得られた平坦化画像データを求めることができる。図10(a)は、図8(a)に示すプロファイル画像に対し平坦化して得られた平坦化画像を示している。また図10(b)は、図10(a)中における線上の高さ情報をプロットしたものを示している。平坦化処理部32は、このようにして求めた平坦化画像を、平坦化画像記憶部36に格納する。
【0034】
なお、処理対象となる注目ラインであるが、1画素分のラインとしてもよいが、複数画素分の所定の幅を持たせてもよい。所定の幅を持たせた場合には、X軸の座標値が同じ複数画素のグレーレベル(輝度)の平均を各位置で求め、その平均値をI(x)としたり、平均値に基づいてP(x)を求めたりすることで、平坦化をすることができる。
【0035】
例えば、錠剤10表面に欠け、割れ等の凹部が生じている場合、プロファイル画像におけるその凹部の高さ位置は、周辺の領域の高さに比べて低くなる。よって、平坦化画像では、その凹部に対応する位置は、ベースラインである128よりも小さい値となる。逆に、錠剤10表面に異物や毛髪が付着していたり、出っ張りなどの凸部が生じている場合、プロファイル画像におけるその凸部の高さ位置は、周辺の領域の高さに比べて高くなる。よって、平坦化画像では、その凸凹部に対応する位置は、ベースラインである128よりも小さい値となる。一方、正常品の場合でも、錠剤10の表面は微細な凹凸があるので、正規化画像中の各位置の値は、図10(b)にも示すように128を中心に上下に変動する。但し、上記の表面の欠けや異物の付着等の異常発生箇所に比べると、その変位は小さくなる。そこで、128を基準に上下に一定の閾値を設定することで、有情発生箇所を容易に検出することができる。
【0036】
平坦化処理をするアルゴリズムは、上記の高次曲線法に限ることはなく、各種の手法を用いることができる。一例としては、高次曲面法がある。高次曲面法は、指定検査領域のグレーレベルを曲面で近似し、それをベース面とし、各位置の値が、そのベース面からの高さ(ベース面の高さとプロファイル画像の高さの差)になるように補正する。そして、この場合も、ベース面の高さが128となるように正規化する。
【0037】
高次曲面の一例として、2次曲面を取り上げて説明する。まず指定領域の表面形状を近似する2次曲面を求める。実際には平坦化処理部32は、指定検査領域を所定区域(例えば、4x4)に分割し、各々の領域の平均値を求め、代表16点から最小自乗法により係数を求める。具体的は、平坦化処理部32は、指定領域の表面形状に近似する下記式からなる2次曲面(P(x,y))の係数(a,b,c,d)を求める。
P(x,y)=ax2+by2+cxy+dx+ey+f
(x,y):指定検査領域中の2次元座標の位置座標
P(x,y):座標(x,y)における補正2次曲面のグレーレベルの値
【0038】
次いで、平坦化処理部32は、求めた係数から、指定検査領域の各点を下記式に基づいて正規化する。
Q(x,y)=I(x,y)−P(x,y)+128
x,y:指定検査領域内の2次元位置を特定する座標値
I(x,y):生画像(プロファイル画像)のにおける点(x,y)の値
P(x,y):補正2次曲線の(x,y)における値
Q(x,y):補正後の正規化したx,yにおける値(出力画像)
【0039】
さらに、別の方法としては、高次曲線に替えて、スプライン曲線で補正をするスプライン曲線法を用いることもできるし、それ以外の手法もできる。但し、対象が錠剤のように表面の形状が比較的単純な曲面であるので、高次曲面法を用いた処理で高精度な平坦化処理を行える。また、平坦化は各錠剤ごとに独立して実行している。従って、上記の指定検査領域も、図11等に示すように、1個の錠剤10を含む領域を指定検査領域に設定すればよいので、その面積もさほど大きくならないので、平坦化の処理の負荷はさほどかからないで済む。なおまた、各錠剤の存在位置を特定し、錠剤を含む領域で切り出すのは、錠剤情報に基づいて行える。
【0040】
振動除去部33は、外的振動による影響を軽減・除去する補正処理を実行する。すなわち、容器シート(錠剤)の画像取得中に外的振動により、瞬間的に容器シート1全体が上下に動く場合(振動)がある。上述したように、3Dカメラ装置21は、シート全体を同時に撮像するのではなく、対象物に対してライン上のレーザー光を照射し、その照射されている部位を撮像してえらたれ画像から三角測量の原理に基づき当該部位の各位置の高さ位置データを算出することを、照射位置を変えながら繰り返し行うことで、対象物である錠剤10の表面形状の全体を計測するようにしている。そのため、仮にある位置にレーザー光を照射して当該部位の高さ位置データを求め、次に容器フィルム(錠剤)の前進移動に伴いレーザー光を照射する位置も変わるので、その変わった箇所の高さ位置データを取得するが、このとき、上記の外的振動を受け、仮に容器フィルムが上に移動すると、錠剤10の表面の高さ位置もその容器フィルムが上に移動した分だけ全体的に高い位置となる。よって、3Dカメラ装置21から出力されるプロファイル画像は、錠剤10の曲面からなる表面形状による高さの変位に加え、上記の外的振動による高さ方向の移動分も加味されたものとなる。その結果、外的振動による上下の移動は、高さの急激な変化として現れ、平坦化画像でも外的振動があった箇所は、ベースライン(ベース面)に比べて大きく変位したものとなり、そのままでは、係る外的振動の部分は以上有りと判定されてしまうおそれがある。
【0041】
特に、平坦化では錠剤10の1つ1つについて処理しているため、スキャン方向に水平な割れがあるのか、シート全体が動いたのか区別がつかない。そこで、振動除去部33は、まず平坦化画像に対し、図12に示すような同一スキャンラインSL上の各画素の補正後(平坦化処理後)の値の平均値(Iave )を求める。
【0042】
平坦化処理では、各錠剤の表面の補正後のグレースケールの値の平均値が128になるように正規化されているため、振動がなければ同一スキャンラインSLでも平均値は128になることが期待される。しかし、振動があるとその分シフトすると考えられるため、本実施形態では、各スキャンラインSLごとの平均値と128との差が振動による影響とし、振動除去部33は、その値を各画素の平坦化処理後の値から減算することにより振動除去の補正をするようにした。具体的には、振動除去部33は、スキャンラインSLの位置を徐々にずらしながら下記式によりC(x)を求めることで振動除去画像を生成し、生成した振動除去画像を振動除去画像記憶部38に格納する。
C(x)=P(x)−(Iave −128)
C(x):振動除去補正後のX点でのグレーレベル
P(x):平坦化画像のグレーレベル
Iave :同一スキャンラインの平均値(Iave =ΣP(x)/[対象画素数])
【0043】
また、同一スキャンラインSLであるが、ラインの幅は、1画素分としても良いし、複数画素を纏めて1つのラインとして求めても良い。但し、振動の影響を精度良く求めるためには、1画素分ずつにするのがよい。
【0044】
欠陥解析部34は、各種パラメータにより、錠剤10上の欠陥を検出する。すなわち、この欠陥解析部34は、振動除去画像記憶部38に格納された振動除去画像を読み出し、当該画像に対して欠陥モード毎のパラメータで錠剤ごとに粒子解析を行う。この粒子解析のパラメータとして、グレーレベル、欠陥部分の面積・横幅・高さ、円形度、モーメント比等がある。グレーレベルは、閾値と比較することで異常(欠陥)の有無を判断することができる。すなわち、図13(a)に示すように、正規化後に振動による影響を除去する補正を行って得られた振動除去画像は、正常品であればベースラインBL(グレーレベル=128)付近の値を採る。一方、図13(b)に示すように、何かしらの欠陥a,b,cがある場合には、グレーレベルはベースラインBLから大きく離れた値となるので、128よりも所定量だけ大きい第1閾値Th1以上の領域が欠陥領域(凸)とし、128よりも所定量だけ小さい第2閾値Th2以下の領域が欠陥領域(凹)となる。図13(b)の例では、a,cが欠陥領域(凸)となり、cが欠陥領域(凹)となっている。なお、第1閾値Th1,第2閾値Th2のベースラインBLからのズレ量は、同じでも良いし異ならせても良い。さらに、第1閾値以上/第2閾値以下の場合、グレーレベルのピーク(最大値,最小値)から欠陥の高さ・深さを求めることができる。
【0045】
また、図13(a),(b)は、X軸方向に延びる1つのラインについて閾値と比較する例を示しており、この閾値と比較して二値化(Th1以上またはTh2以下であれば1、それ以外は0)する処理を、Y軸方向に適宜ずらしながら繰り返し行うとともに二値化処理した結果を合成することで、1つの錠剤の表面全体について二値化処理した結果が得られる。この二値化処理した結果は、欠陥がないと錠剤表面の全ての領域が「0」になり、欠陥があるとその部分が「1」になる。
【0046】
そこで、欠陥解析部34は、係る1の部分を抽出し、つながった画素に同じラベルをつけるラベリングを行う。これにより、1つの欠陥部分には同じラベルが付され、別の欠陥部分と識別ができる。そして、欠陥解析部34は、ラベリングされた結果から個々の欠陥部分の面積、横幅、縦幅、円計度、モーメント比を求める。つまり、欠陥部分の面積は、例えば、同じラベルが付された画素の数をカウントすることで求めることができる。また、欠陥部分の横幅は、同じラベルが付された画素の横に連続する数の最大値から求められ、欠陥部分の縦幅は、同じラベルが付された画素の縦に連続する数の最大値から求めることができる。さらに、円形度は、どれだけ円に近いかをあらわすパラメータであり、
円形度=(4π×面積)/(周囲長)2
により求めることができる。周囲調は、同じラベルが付された画素の集合体における外周に存在する画素を抽出し、縦或いは横に連続している場合には、画素間の長さは「1」となり、斜めに連続している画素間の長さは「√2」とし、画素間の長さの総和から求めることができる。モーメント比は、欠陥の形状が細長いか否かを表す指数であり、図13(c)に示すように、長手方向の長さをt1、短手方向の長さをt2とした場合に、
モーメント比=t2/t1
により求める。モーメント比が0に近づくほど、細長い形状であると言える。なお、上記のパラメータは、一例であり、例示したものの一部を用いても良いし、さらに別のものを加えても良い。また、パラメータを求める際の演算アルゴリズムも上記のものに限ることはなく、各種のものを用いることができる。
【0047】
そして、欠陥解析部34は、このパラメータの組み合わせで、欠陥モード(異物、毛髪、欠け、割れなど)を分類する。この分類分けは、予め決めたルールに合致するか否かにより行うことができる。また、検出された欠陥は、錠剤ごとに欠陥情報として出力され、欠陥情報記憶部39に格納される。
【0048】
判定部40は、錠剤の有無、異形、欠陥の情報をまとめ、出力する。すなわち、判定部40は、錠剤検出部31で求め、錠剤情報記憶部36に格納された錠剤情報でる錠剤の位置、大きさ、平均高さ情報を、所定の基準値と比較することにより、異形錠あるいは欠錠を判定する。さらに、欠陥解析部34で求め、欠陥情報記憶部39に格納された欠陥情報により、各錠剤の良否を判定する。判定部40は、この判定結果を上位コンピュータ23に通知する。
【0049】
上位コンピュータ23は、送られてきた判定結果に基づき、不良品となるシートを認識し、最終的にPTP包装機で製造された当該不良品のシートからなるPTP包装体を破棄する制御を行う。
【0050】
なお、上記の実施形態では、判定処理まで1つの装置(パソコン)で行うようにしたが、一部の機能を上位コンピュータ23に分けて配置することもできる。例えば、図14に示すように、検査装置20′は、上下に配置される2つの3Dカメラ装置21で撮像したそれぞれの画像データを取り込み、前処理・一次判定(解析)をする処理装置(パソコン)22′と、その処理装置22′で行った解析結果並びに上記画像データに基づき最終的な判定を行う上位コンピュータ23′とにより構成することができる。図15は、検査装置20′の一部を構成する処理装置22′における機能ブロック図である。この図15と、図6とを比較すると明らかなように、ここでは、上述した実施形態における判定部40の機能を無くし、係る判定部40の機能は上位コンピュータ23′で行うようにした。このように一部の機能を上位コンピュータに分けることで、処理装置22′の負荷を軽減し、より小型なコンピュータで実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
20 外観検査装置
21 3Dカメラ装置
22 処理装置
31 錠剤検出部
32 平坦化処理部
33 振動除去部
34 欠陥解析部
40 判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元計測法を用いて錠剤の外観検査を行う錠剤の外観検査装置及びPTP包装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元計測法を用いた錠剤の外観検査装置としては、従来、特許文献1に開示された技術がある。この特許文献1に開示された技術は、三次元計測法より錠剤の表面全域の高さデータを求め、その高さデータに基づき錠剤の異常の有無を検出することを主な特徴としている。検査対象の錠剤は、表面が中央に行くほど突出する曲面となっている。従って、例えば上面に対して検査をすることを考えると、外周縁に対応する位置がもっとも低く、中心に行くに従って高さ位置は徐々に高くなり、中心が最も高い位置となる。そこで、予め正常品の各座標の適正な高さ位置を設定値としてもち、全座標の高さデータを測定し、測定値と、記憶保持している対応する座標の設定値とを比較して異常の有無を判定する。この外観検査装置によれば、反射光を撮像し明度の差により異物を検出する手法に比べ、精度良く異常を検出できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3640247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1の技術は、全座標の高さデータを測定し、測定値と各座標の設定値とを比較して異常の有無を判定しているので、錠剤が傾いたりしていると正確に異常を検出することができない。つまり、錠剤が傾いた姿勢で収納されていると、正常な錠剤を水平に置いているときに比べ、一方の側の各座標の高さ位置は全体的に高くなり、他方の側の各座標の高さ位置は全体的に低くなる。特に外周囲付近ほどその差が顕著となり、設定値とのずれが大きく異常と判定されるおそれがある。
【0005】
また、各座標ごとに設定値を決める必要があり、その作業が繁雑である。さらに、検査対象の錠剤の寸法形状(直径・膨らみ方等)が異なる都度、設定値を決めなければならず、煩雑さが増し汎用性に欠けるものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)移動する錠剤に光を照射する光照射手段と、その錠剤の表面からの反射光を撮像可能な撮像手段と、その前記撮像手段にて撮像された画像データに基づき、三次元計測法により錠剤の表面の各位置の高さ位置を濃淡画像で表したプロファイル画像を求める手段と、そのプロファイル画像に基づき錠剤の外観検査を行う処理手段と、を備え、前記処理手段は、前記プロファイル画像中の錠剤を示す画像データを抽出する手段と、抽出した画像データをその錠剤の表面が平坦になるように正規化をして平坦化画像を生成する平坦化手段と、その平坦化画像に基づいて外観異常の判定を行う手段を備えるようにした。
【0007】
実施形態では、光照射手段と、撮像手段と、プロファイ画像を求める手段を3Dカメラ装置21で一体に実現したが、別装置で構成しても良い。外観異常の判定を行う手段は、実施形態は、欠陥解析部34に対応し、判定部40を含むものでも良い。錠剤は、通常その表面が膨らんだ曲面となっているが、平坦化手段により求めた平坦化画像は、表面が平坦になるように修正されているので、正常品・良品であれば平面上の各位置の高さ位置を示す濃淡値はほぼ同じ値となる。そして、欠け等があった場合には、その部分が低くなり、バリのように部分的に突出した部分があったり異物の付着等があると、その部分は高くなるので、上記の平坦に補正した高さ位置と異なる値となる。よって、簡単な閾値処理により、外観異常の検査をすることができる。さらに、仮に錠剤が斜めに傾いた状態で置かれていても、平坦化処理をすることで高さ位置を示す濃淡値はほぼ同じ値となるので、上記と同じアルゴリズムで外観異常の判定を行うことができる。よって、錠剤の置かれた姿勢に関係なく精度良く判定ができる。さらに、実施形態に示すように、欠陥の解析を複数のパラメータについて求め、総合的に判断することで欠陥の種類も判定・特定できる。また、平坦に補正・正規化されることから、表面の曲面(湾曲)の寸法形状に関係なく、一律に簡単なアルゴリズムで異常の判定を行える。
【0008】
(2)前記平坦化手段における補正処理は、高次曲線法或いは高次曲面法を用いて前記錠剤の表面を近似したベース面を求め、各位置のベース面からの高さに置き換えて正規化するものとするとよい。錠剤の表面形状は比較的なだらかに変化しているため、これらの高次曲線法や高次曲面法で簡単かつ精度良く近似することができる。
【0009】
(3)一列に並んだ複数の錠剤の同一直線(実施形態の「同一スキャンライン」に対応)に存在する前記平坦化画像における濃淡値の平均値を求め、求めた平均値が前記正規化する値との差から振動による補正値を求め、前記同一直線状に存在する各画素の濃淡値を前記補正値により補正する補正手段を備え、前記外観異常の判定を行う手段は、その補正手段による補正後の画像データに基づいて行うようにするとよい。補正手段は、実施形態では、振動除去部33に対応する。補正値は、実施形態では、正規化する値(128)と平均値との差をそのまま用いているが、適宜の係数を掛けるなどの重み付けをしても良い。水平移動する錠剤が、外部振動の影響を受けて上下に移動することもある。係る場合、振動により上下に移動した際の表面の高さ位置が、通常の状態からずれることになる。この補正手段で補正することで、振動による高さの変化の影響が軽減でき、振動による高さ位置の変化により外観異常と判断されるおそれが可及的に無くなる。
【0010】
(4)本発明のPTP包装機は、搬送する帯状の容器用フィルムに形成されたポケット部に対し、錠剤を供給する錠剤供給装置と、前記錠剤供給装置の下流側に設けられ、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに蓋フィルムを重ねた状態でそれら容器フィルムと蓋フィルムとをシールして密封するシール装置と、そのシール装置の下流側に設けられ、前記容器フィルムと蓋フィルムの所定位置を切断する切断装置と、を備えたPTP包装機であって、前記錠剤供給装置の下流側に上記の(1)から(3)のいずれかに記載の外観検査装置を設け、その外観検査装置で前記ポケット部に供給された前記錠剤の外観異常の検査を行うようにした。ポケット部に供給された錠剤について、その搬送途中で外観異常の有無がわかるので、その異常があった錠剤を含む包装体を破棄することができる。
【発明の効果】
【0011】
錠剤の姿勢に影響を受けることなく正確な外観異常の検査が行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のPTP包装機の好適な一実施形態を示す正面図である。
【図2】容器フィルムを示す図である。
【図3】容器フィルムのポケット部内に錠剤が供給された状態を示す図である。
【図4】本発明の外観検査装置の好適な一実施形態を示すブロック図である。
【図5】プロファイル画像の一例を示す図である。
【図6】処理装置における機能ブロック図である。
【図7】粒子解析した結果の一例を示す図である。
【図8】(a)は、プロファイル画像中の1つの錠剤部分を抽出した画像データであり、(b)は、(a)中における線上の高さ情報をプロットした図である。
【図9】平坦化処理部の機能を説明する図である。
【図10】(a)は、図8(a)に示すプロファイル画像に対し平坦化して得られた平坦化画像を示す図であり、(b)は、図10(a)中における線上の高さ情報をプロットしたものを示す図である。
【図11】平坦化処理部の機能を説明する図である。
【図12】振動除去部の機能を説明する図である。
【図13】欠陥解析部の機能を説明する図である。
【図14】本発明の外観検査装置の好適な他の実施形態を示すブロック図である。
【図15】処理装置における機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係るPTP包装機の好適な一実施形態を示している。
【0014】
同図に示すように、PP製の容器フィルム1が巻き取られた原反ロール2が装置の上流側に回転自在にセットされる。この原反ロール2から連続して容器フィルム1が引き出され、複数のローラ3に掛け渡されて成型部4に導かれる。成型部4では、容器フィルム1の所定位置に、図2に示すような凹状のポケット部1aを多数成型する。この成型部4は、容器フィルム1を上下から挟み込んで凹状のポケット部1aを成型する成型装置と、その成型装置の上流側に設けられ容器フィルム1の所定部位(ポケット部1aの形成領域)を加熱する加熱装置と、成型したポケット部1aを含むフィルム領域を冷却する冷却装置とを備える。冷却装置で容器フィルム1の温度を降下させてPPの急冷による再結晶化による促進を図るとともにポケット部1aの形状を固定化する。なお本形態では、ポケット部1aの平面領域の形状を円形としている。
【0015】
成型部4を通過したポケット部付きの容器フィルム1は、アイドルローラ5に掛け渡されて所定の経路で搬送される。この容器フィルム1の搬送経路の上方所定位置には錠剤供給装置6が設置され、この錠剤供給装置6から、各ポケット部1aに対して錠剤10が供給される(図3参照)。図3に示すように、錠剤10は、平面が円形状で上面・下面のいずれも中央が膨らんだ外形状を採る。よって、ポケット部1a内に正しい姿勢で供給された場合、錠剤10は、下面の中央(最下点)がポケット部1aの底に接触し、外周縁10aが水平な姿勢をとる。また、ポケット部1aに供給された錠剤10のなかには、図中左から3番目に示すように、斜めに傾いた状態となるものもある。
【0016】
錠剤供給装置6の下流側には、外観検査装置20を構成する3Dカメラ装置21が配置される。本実施形態では、3Dカメラ装置21は、容器フィルム1の上下両側に配置し、それぞれの側から撮像することで、ポケット部1aに供給された錠剤10の上面と下面のそれぞれの面についての良否等の検査が行える。
【0017】
さらに3Dカメラ装置21の下流側にはシール装置11が配置されており、錠剤10の供給を受けた容器フィルム1がそのシール装置11に導かれる。
【0018】
一方、アルミシートからなる蓋フィルム7が巻き取られた原反ロール8は、PTP包装機の搬出端側近傍に回転自在に設置される。その原反ロール8から引き出された蓋フィルム7は、複数のローラ9に掛け渡されて所定の経路を通り、シール装置11に導かれる。そして、このシール装置11にて、蓋フィルム7が容器フィルム1の上面を覆うように被覆されるとともに、両フィルムの接触部位(容器フィルム1のポケット部1aの未形成領域)が熱シールされて密封される。
【0019】
シール装置11は、ヒータを内蔵するシールローラ11aと、表面に容器フィルム1に形成されたポケット部に符合する凹部を有するシール受けローラ11bとを備えている。そして、シール受けローラ11bに形成する凹部の縦横の間隔は、容器フィルム1に形成されるポケット部1aの縦横の間隔と一致させている。これにより、容器フィルム1は、形成されたポケット部をシール受けローラ11bに設けた凹部内に符合するように位置合わせをした状態で掛け渡される。よって、シール受けローラ11bの回転にともない、容器フィルム1も搬送されることになる。そして、その容器フィルム1と蓋フィルム7とが重ね合わされた状態でシールローラ11aとシール受けローラ11b間を通過することにより、その通過時に両ローラで挟まれ、加熱状態で加圧されることにより、ポケット部未形成領域が密着してシールされ、ポケット部内の被包装物が密封される。
【0020】
さらに、このシール装置11の下流側には、フィルムに対して製造年月日等を印刷する刻印装置12,フィルムの所定位置をハーフカットしてポケット部1aの周囲に切断容易線を形成するスリッター装置13、打ち抜き装置14の順に配置される。打ち抜き装置14は、シールされて一体化された容器フィルム1と蓋フィルム7の所定位置を打ち抜いて、n×m個のポケット部1aを備えたPTP包装体を製造するものである。上記した各構成は、基本的に従来のPTP包装機と同様であるのでその詳細な説明を省略する。もちろん、本発明の外観検査装置20は、上記に示すPTP包装機以外の構成にも適用できる。
【0021】
図4は、本発明の外観検査装置の好適な一実施形態を示している。本実施形態では、外観検査装置20は、上下に配置される2つの3Dカメラ装置21と、その3Dカメラ装置21で撮像したそれぞれの画像データを取り込み、前処理・解析・判定を行う処理装置22とを備えている。この処理装置22は、汎用のパーソナルコンピュータや専用のコンピュータで構成される。この処理装置22は、判定結果を上位コンピュータ23に送るようになっている。
【0022】
3Dカメラ装置21は、対象物(錠剤)をスキャンし、対象物の表面の高さ情報をプロファイル画像として出力するものである。すなわち、3Dカメラ装置21は、対象物に対してレーザー光を照射する光照射手段(レーザーラインプロジェクタ等)、対象物からの反射光を撮像するカメラ(CCDカメラ、CMOS等)、同カメラで撮像したデータから対象物の表面の高さ情報(表面形状)を算出する演算手段(制御手段)等を備える。具体的には、光照射手段から出射されるレーザー光にて、対象物である錠剤に線状の像を投影する。CCDカメラは、投影面に対し所定の角度を持った光軸をもち、錠剤の表面の線状の投影を撮像する。そして、演算手段は、三角測量の原理に基づき、線上の各地点の高さ情報を求める。対象物の表面に照射する線状のレーザー光の位置を順次ずらしていき、それぞれのずらした位置における各地点の高さ情報を求める処理を繰り返し行うことで、対象物の全面(1シート分)について高さ情報を求め、これを画像(プロファイル画像)として出力する。このプロファイル画像は、濃淡画像であり、高い位置ほど輝度が大きい値(白・明るい)になり、輝度が低い位置ほど小さい値(黒・暗い)になる。
【0023】
本実施形態のプロファイル画像は、256階調としている。そして、本実施形態のPTP包装機では、錠剤は容器フィルム1のポケット部1aに供給された状態で、容器フィルム1と共に搬送され、3Dカメラ装置21の設置位置を通過するので、その通過にタイミングを合わせて計測を行うことで、錠剤の表面全体の高さ情報を取得できる。さらに、本実施形態では、錠剤1個ずつを撮像するのではなく、最終のPTP包装体を構成する単位となる1シート分(n×m個の錠剤の配列)をまとめて1つのプロファイル画像として求め、出力するようにしている。図5は、プロファイル画像の一例を示している。本実施形態では、2列(1列が5個)の合計10個の錠剤が1シートを構成している。このプロファイル画像上の画素は、位置は対象の平面状の位置(X,Y)、輝度は対象物の高さ情報(Z)に相当する。
【0024】
図6は、処理装置22における機能ブロック図である。図に示すように、処理装置(パソコン)22は、CPU(MPU)の機能として、錠剤検出部31、平坦化処理部21、振動除去部33、欠陥解析部34、判定部40を備えている。また、処理装置22は、記憶手段として、プロファイル画像記憶部35,錠剤情報記憶部36、平坦化画像記憶部36、振動除去画像記憶部38、欠陥情報記憶部39を備えている。各記憶部は、バッファメモリその他の一時的な記憶手段でも良いし、不揮発性メモリでも良い。また、各記憶部は、パソコン内に実装される同じ記憶装置の異なるメモリ領域に実装されて実現されるものでも良いし、異なる記憶装置で実現されても良い。3Dカメラ装置21から送られてきたプロファイル画像は、プロファイル画像記憶部35に格納される。
【0025】
錠剤検出部31は、プロファイル画像記憶部35に格納されたプロファイル画像を読み出し、そのプロファイル画像を粒子解析して画像中の錠剤の位置、大きさ、平均高さを算出する。ここで粒子解析は、処理対象のプロファイル画像(グレースケール画像)の各画素の輝度を所定の閾値と比較し、二値化処理をする。この閾値は、例えば、錠剤の外周縁の高さ位置から一定量だけマージンをとった低い位置を示す輝度(濃度)の値とすると良い。すなわち、例えば容器フィルム1の搬送路の上側に設置した3Dカメラ装置21は、錠剤の上面を撮像するもので、その3Dカメラ装置21で撮像して得られたプロファイル画像は、ポケット部1aの底が最も低い位置にあり、錠剤20の上面中央付近が最も高い位置にあることを表す画像となる。従って、錠剤10は厚みがあることも相まって、その3Dカメラ装置21で撮像された錠剤10の外周縁の高さ位置は、ポケット部1aの底に比べるとある程度高い位置となる。そこで、閾値を係る高さを考慮して設定することで、錠剤10の部分を抽出することができる。そして、図3にも示したように、錠剤10が斜めに傾いた状態でポケット部1a内に供給されることも考慮し、錠剤の厚さの半分よりも適宜のマージンだけ低い値を閾値に設定する。上記の説明では、上側に設置した3Dカメラ装置21を用いて行ったが、容器フィルム1の搬送路の下側に設置した3Dカメラ装置21についても同様である。つまり、係る下側の3Dカメラ装置21は、錠剤10の下面を撮像するものであり、その3Dカメラ装置21で撮像して得られたプロファイル画像は、容器フィルム1の上面(ポケット部1a未形成領域)が最も低い位置にあり、錠剤20の下面中央付近が最も高い位置にあることを表す画像となる。よって、上記と同様に錠剤の厚さを考慮して閾値を設定することで、錠剤の部分を抽出できる。
【0026】
さらに錠剤検出部31は、粒子解析により白色として抽出された各錠剤の位置(重心位置)と、大きさ(面積および、縦、横)を求める。また、錠剤毎のグレーレベルの平均値(高さの平均値)も求める。そして、錠剤検出部31は、これら求めた各情報を関連付けて錠剤情報として錠剤情報記憶部36に格納する。図7は、粒子解析例を示している。ここでは、粒子解析後の二値化処理した画像であり、得られた錠剤の領域を矩形で示している。
【0027】
平坦化処理部32は、錠剤情報記憶部36に格納された錠剤情報(各錠剤の位置、大きさ、高さの平均値や2値化画像等)と、プロファイル画像記憶部35に格納された1シート分のプロファイル画像を読み出し、錠剤ごとに錠剤表面が平坦になるように補正処理を行う。すなわち、錠剤10の表面(上面/下面)は中央が最も高い位置にある湾曲した曲面となっているので、正常品であっても高さ位置は平面位置により異なる。さらに、ポケット部1a内に置かれている状態などによっても異なる。つまり錠剤表面の高さ位置のデータは、錠剤の形状、シートに置かれている状態などにより、同じ高さ(平坦・水平)ではない。
【0028】
図8(a)は、プロファイル画像中の1つの錠剤部分を抽出した画像データであり、図8(b)は、図8(a)中における線上の高さ情報をプロットしたものを示している。図8(b)から明らかなように、位置の推移に伴い高さか変化しているのが確認できる。
【0029】
平坦化は、この湾曲した緩やかに変化する表面の推移を直線に変換するものである。すると、正常な錠剤の表面は緩やかな変化であるため、平坦化後の錠剤表面を表す画像は、水平(直線)になるのに対し、欠陥部分は急な変化となるので、正常な表面に対応した水平なベースラインに対し、その高さ方向の位置が大きく異なる。
【0030】
そして、この平坦化の具体的な処理アルゴリズムは、例えば高次曲線法を用いることができる。この高次曲線法は、縦または、横のスキャン方向のベース面の高さの変化を高次曲線でラインごとに近似し、そのベース面からの高さに置き換えた画像に変換する。高次の一例として2次曲線に基づいて説明する。平坦化処理部32は、例えばX軸と平行な直線を処理対象となる注目ライン(例えば図8(a)中に引いた線)に設定し、その注目ラインに存在する各画素のグレーレベル(輝度)の変化について、最小自乗法によりその注目ラインに近似する下記式からなる2次曲線(P(x))の係数(a,b,c)を求める。
P(x)=ax2+bx+c
x:X軸の座標値(ライン上の位置座標)
P(x):注目ラインのグレーレベルの変化に近似する補正2次曲線のxにおける値
【0031】
係数a,b,cを求めることで補正2次曲線の計算式が確定する。この補正2次曲線を用いることで、注目ラインのライン上(X軸上)のグレーレベル(輝度)の変化が、図9中、点線で示すようになっている場合、補正2次曲線は同図中、実線で示すような補正ラインとなる。この実線で示す補正ラインは、錠剤10の表面が微小な凹凸もないなだらかな曲面とした場合の当該表面の高さ位置を示すものとなる。
【0032】
そして、平坦化処理部32は、このような補正2次曲線が水平な直線、すなわち、補正2次曲線上の各点が、同じグレーレベルになるように、プロファイル画像中の注目ラインの各画素のグレーレベルを正規化をする。さらに、上記の正規化をする基準となる「同じグレーレベル」の値は、本実施形態では、プロファイル画像が全体を256階調で表しているので、その中間となる「128」とする。この正規化は、具体的には、下記式を用いてR(x)を算出することで求める。
R(x)=I(x)−P(x)+128
x:X軸の座標値(ライン上の位置座標)
I(x):生画像(プロファイル画像)における値(入力)
P(x):注目ラインのグレーレベルの変化に近似する補正2次曲線のxにおける値
R(x):補正後の正規化したxにおける値(出力)
【0033】
つまり、各座標値(x)の時の補正2次曲線の値と、実際の画像の値の差分を求め、ベースラインとなる「128」を加算した値である。そして、平坦化処理部32は、その注目ラインをY軸方向に1画素分ずつずらし、それぞれの注目ラインについて上記の処理を繰り返し実行することで、表面全体について最終的の正規化して得られた平坦化画像データを求めることができる。図10(a)は、図8(a)に示すプロファイル画像に対し平坦化して得られた平坦化画像を示している。また図10(b)は、図10(a)中における線上の高さ情報をプロットしたものを示している。平坦化処理部32は、このようにして求めた平坦化画像を、平坦化画像記憶部36に格納する。
【0034】
なお、処理対象となる注目ラインであるが、1画素分のラインとしてもよいが、複数画素分の所定の幅を持たせてもよい。所定の幅を持たせた場合には、X軸の座標値が同じ複数画素のグレーレベル(輝度)の平均を各位置で求め、その平均値をI(x)としたり、平均値に基づいてP(x)を求めたりすることで、平坦化をすることができる。
【0035】
例えば、錠剤10表面に欠け、割れ等の凹部が生じている場合、プロファイル画像におけるその凹部の高さ位置は、周辺の領域の高さに比べて低くなる。よって、平坦化画像では、その凹部に対応する位置は、ベースラインである128よりも小さい値となる。逆に、錠剤10表面に異物や毛髪が付着していたり、出っ張りなどの凸部が生じている場合、プロファイル画像におけるその凸部の高さ位置は、周辺の領域の高さに比べて高くなる。よって、平坦化画像では、その凸凹部に対応する位置は、ベースラインである128よりも小さい値となる。一方、正常品の場合でも、錠剤10の表面は微細な凹凸があるので、正規化画像中の各位置の値は、図10(b)にも示すように128を中心に上下に変動する。但し、上記の表面の欠けや異物の付着等の異常発生箇所に比べると、その変位は小さくなる。そこで、128を基準に上下に一定の閾値を設定することで、有情発生箇所を容易に検出することができる。
【0036】
平坦化処理をするアルゴリズムは、上記の高次曲線法に限ることはなく、各種の手法を用いることができる。一例としては、高次曲面法がある。高次曲面法は、指定検査領域のグレーレベルを曲面で近似し、それをベース面とし、各位置の値が、そのベース面からの高さ(ベース面の高さとプロファイル画像の高さの差)になるように補正する。そして、この場合も、ベース面の高さが128となるように正規化する。
【0037】
高次曲面の一例として、2次曲面を取り上げて説明する。まず指定領域の表面形状を近似する2次曲面を求める。実際には平坦化処理部32は、指定検査領域を所定区域(例えば、4x4)に分割し、各々の領域の平均値を求め、代表16点から最小自乗法により係数を求める。具体的は、平坦化処理部32は、指定領域の表面形状に近似する下記式からなる2次曲面(P(x,y))の係数(a,b,c,d)を求める。
P(x,y)=ax2+by2+cxy+dx+ey+f
(x,y):指定検査領域中の2次元座標の位置座標
P(x,y):座標(x,y)における補正2次曲面のグレーレベルの値
【0038】
次いで、平坦化処理部32は、求めた係数から、指定検査領域の各点を下記式に基づいて正規化する。
Q(x,y)=I(x,y)−P(x,y)+128
x,y:指定検査領域内の2次元位置を特定する座標値
I(x,y):生画像(プロファイル画像)のにおける点(x,y)の値
P(x,y):補正2次曲線の(x,y)における値
Q(x,y):補正後の正規化したx,yにおける値(出力画像)
【0039】
さらに、別の方法としては、高次曲線に替えて、スプライン曲線で補正をするスプライン曲線法を用いることもできるし、それ以外の手法もできる。但し、対象が錠剤のように表面の形状が比較的単純な曲面であるので、高次曲面法を用いた処理で高精度な平坦化処理を行える。また、平坦化は各錠剤ごとに独立して実行している。従って、上記の指定検査領域も、図11等に示すように、1個の錠剤10を含む領域を指定検査領域に設定すればよいので、その面積もさほど大きくならないので、平坦化の処理の負荷はさほどかからないで済む。なおまた、各錠剤の存在位置を特定し、錠剤を含む領域で切り出すのは、錠剤情報に基づいて行える。
【0040】
振動除去部33は、外的振動による影響を軽減・除去する補正処理を実行する。すなわち、容器シート(錠剤)の画像取得中に外的振動により、瞬間的に容器シート1全体が上下に動く場合(振動)がある。上述したように、3Dカメラ装置21は、シート全体を同時に撮像するのではなく、対象物に対してライン上のレーザー光を照射し、その照射されている部位を撮像してえらたれ画像から三角測量の原理に基づき当該部位の各位置の高さ位置データを算出することを、照射位置を変えながら繰り返し行うことで、対象物である錠剤10の表面形状の全体を計測するようにしている。そのため、仮にある位置にレーザー光を照射して当該部位の高さ位置データを求め、次に容器フィルム(錠剤)の前進移動に伴いレーザー光を照射する位置も変わるので、その変わった箇所の高さ位置データを取得するが、このとき、上記の外的振動を受け、仮に容器フィルムが上に移動すると、錠剤10の表面の高さ位置もその容器フィルムが上に移動した分だけ全体的に高い位置となる。よって、3Dカメラ装置21から出力されるプロファイル画像は、錠剤10の曲面からなる表面形状による高さの変位に加え、上記の外的振動による高さ方向の移動分も加味されたものとなる。その結果、外的振動による上下の移動は、高さの急激な変化として現れ、平坦化画像でも外的振動があった箇所は、ベースライン(ベース面)に比べて大きく変位したものとなり、そのままでは、係る外的振動の部分は以上有りと判定されてしまうおそれがある。
【0041】
特に、平坦化では錠剤10の1つ1つについて処理しているため、スキャン方向に水平な割れがあるのか、シート全体が動いたのか区別がつかない。そこで、振動除去部33は、まず平坦化画像に対し、図12に示すような同一スキャンラインSL上の各画素の補正後(平坦化処理後)の値の平均値(Iave )を求める。
【0042】
平坦化処理では、各錠剤の表面の補正後のグレースケールの値の平均値が128になるように正規化されているため、振動がなければ同一スキャンラインSLでも平均値は128になることが期待される。しかし、振動があるとその分シフトすると考えられるため、本実施形態では、各スキャンラインSLごとの平均値と128との差が振動による影響とし、振動除去部33は、その値を各画素の平坦化処理後の値から減算することにより振動除去の補正をするようにした。具体的には、振動除去部33は、スキャンラインSLの位置を徐々にずらしながら下記式によりC(x)を求めることで振動除去画像を生成し、生成した振動除去画像を振動除去画像記憶部38に格納する。
C(x)=P(x)−(Iave −128)
C(x):振動除去補正後のX点でのグレーレベル
P(x):平坦化画像のグレーレベル
Iave :同一スキャンラインの平均値(Iave =ΣP(x)/[対象画素数])
【0043】
また、同一スキャンラインSLであるが、ラインの幅は、1画素分としても良いし、複数画素を纏めて1つのラインとして求めても良い。但し、振動の影響を精度良く求めるためには、1画素分ずつにするのがよい。
【0044】
欠陥解析部34は、各種パラメータにより、錠剤10上の欠陥を検出する。すなわち、この欠陥解析部34は、振動除去画像記憶部38に格納された振動除去画像を読み出し、当該画像に対して欠陥モード毎のパラメータで錠剤ごとに粒子解析を行う。この粒子解析のパラメータとして、グレーレベル、欠陥部分の面積・横幅・高さ、円形度、モーメント比等がある。グレーレベルは、閾値と比較することで異常(欠陥)の有無を判断することができる。すなわち、図13(a)に示すように、正規化後に振動による影響を除去する補正を行って得られた振動除去画像は、正常品であればベースラインBL(グレーレベル=128)付近の値を採る。一方、図13(b)に示すように、何かしらの欠陥a,b,cがある場合には、グレーレベルはベースラインBLから大きく離れた値となるので、128よりも所定量だけ大きい第1閾値Th1以上の領域が欠陥領域(凸)とし、128よりも所定量だけ小さい第2閾値Th2以下の領域が欠陥領域(凹)となる。図13(b)の例では、a,cが欠陥領域(凸)となり、cが欠陥領域(凹)となっている。なお、第1閾値Th1,第2閾値Th2のベースラインBLからのズレ量は、同じでも良いし異ならせても良い。さらに、第1閾値以上/第2閾値以下の場合、グレーレベルのピーク(最大値,最小値)から欠陥の高さ・深さを求めることができる。
【0045】
また、図13(a),(b)は、X軸方向に延びる1つのラインについて閾値と比較する例を示しており、この閾値と比較して二値化(Th1以上またはTh2以下であれば1、それ以外は0)する処理を、Y軸方向に適宜ずらしながら繰り返し行うとともに二値化処理した結果を合成することで、1つの錠剤の表面全体について二値化処理した結果が得られる。この二値化処理した結果は、欠陥がないと錠剤表面の全ての領域が「0」になり、欠陥があるとその部分が「1」になる。
【0046】
そこで、欠陥解析部34は、係る1の部分を抽出し、つながった画素に同じラベルをつけるラベリングを行う。これにより、1つの欠陥部分には同じラベルが付され、別の欠陥部分と識別ができる。そして、欠陥解析部34は、ラベリングされた結果から個々の欠陥部分の面積、横幅、縦幅、円計度、モーメント比を求める。つまり、欠陥部分の面積は、例えば、同じラベルが付された画素の数をカウントすることで求めることができる。また、欠陥部分の横幅は、同じラベルが付された画素の横に連続する数の最大値から求められ、欠陥部分の縦幅は、同じラベルが付された画素の縦に連続する数の最大値から求めることができる。さらに、円形度は、どれだけ円に近いかをあらわすパラメータであり、
円形度=(4π×面積)/(周囲長)2
により求めることができる。周囲調は、同じラベルが付された画素の集合体における外周に存在する画素を抽出し、縦或いは横に連続している場合には、画素間の長さは「1」となり、斜めに連続している画素間の長さは「√2」とし、画素間の長さの総和から求めることができる。モーメント比は、欠陥の形状が細長いか否かを表す指数であり、図13(c)に示すように、長手方向の長さをt1、短手方向の長さをt2とした場合に、
モーメント比=t2/t1
により求める。モーメント比が0に近づくほど、細長い形状であると言える。なお、上記のパラメータは、一例であり、例示したものの一部を用いても良いし、さらに別のものを加えても良い。また、パラメータを求める際の演算アルゴリズムも上記のものに限ることはなく、各種のものを用いることができる。
【0047】
そして、欠陥解析部34は、このパラメータの組み合わせで、欠陥モード(異物、毛髪、欠け、割れなど)を分類する。この分類分けは、予め決めたルールに合致するか否かにより行うことができる。また、検出された欠陥は、錠剤ごとに欠陥情報として出力され、欠陥情報記憶部39に格納される。
【0048】
判定部40は、錠剤の有無、異形、欠陥の情報をまとめ、出力する。すなわち、判定部40は、錠剤検出部31で求め、錠剤情報記憶部36に格納された錠剤情報でる錠剤の位置、大きさ、平均高さ情報を、所定の基準値と比較することにより、異形錠あるいは欠錠を判定する。さらに、欠陥解析部34で求め、欠陥情報記憶部39に格納された欠陥情報により、各錠剤の良否を判定する。判定部40は、この判定結果を上位コンピュータ23に通知する。
【0049】
上位コンピュータ23は、送られてきた判定結果に基づき、不良品となるシートを認識し、最終的にPTP包装機で製造された当該不良品のシートからなるPTP包装体を破棄する制御を行う。
【0050】
なお、上記の実施形態では、判定処理まで1つの装置(パソコン)で行うようにしたが、一部の機能を上位コンピュータ23に分けて配置することもできる。例えば、図14に示すように、検査装置20′は、上下に配置される2つの3Dカメラ装置21で撮像したそれぞれの画像データを取り込み、前処理・一次判定(解析)をする処理装置(パソコン)22′と、その処理装置22′で行った解析結果並びに上記画像データに基づき最終的な判定を行う上位コンピュータ23′とにより構成することができる。図15は、検査装置20′の一部を構成する処理装置22′における機能ブロック図である。この図15と、図6とを比較すると明らかなように、ここでは、上述した実施形態における判定部40の機能を無くし、係る判定部40の機能は上位コンピュータ23′で行うようにした。このように一部の機能を上位コンピュータに分けることで、処理装置22′の負荷を軽減し、より小型なコンピュータで実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
20 外観検査装置
21 3Dカメラ装置
22 処理装置
31 錠剤検出部
32 平坦化処理部
33 振動除去部
34 欠陥解析部
40 判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する錠剤に光を照射する光照射手段と、
その錠剤の表面からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
その前記撮像手段にて撮像された画像データに基づき、三次元計測法により錠剤の表面の各位置の高さ位置を濃淡画像で表したプロファイル画像を求める手段と、
そのプロファイル画像に基づき錠剤の外観検査を行う処理手段と、を備え、
前記処理手段は、前記プロファイル画像中の錠剤を示す画像データを抽出する手段と、抽出した画像データをその錠剤の表面が平坦になるように正規化して平坦化画像を生成する平坦化手段と、その平坦化画像に基づいて外観異常の判定を行う手段を備えることを特徴とする錠剤の外観検査装置。
【請求項2】
平坦化手段における補正処理は、高次曲線法或いは高次曲面法を用いて前記錠剤の表面を近似したベース面を求め、各位置のベース面からの高さに置き換えて正規化するものである請求項1に記載の錠剤の外観検査装置。
【請求項3】
一列に並んだ複数の錠剤の同一直線上に存在する前記平坦化画像における濃淡値の平均値を求め、求めた平均値が前記正規化する値との差から振動による補正値を求め、
前記同一直線状に存在する各画素の濃淡値を前記補正値により補正する補正手段を備え、
前記外観異常の判定を行う手段は、その補正手段による補正後の画像データに基づいて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の錠剤の外観検査装置。
【請求項4】
搬送する帯状の容器用フィルムに形成されたポケット部に対し、錠剤を供給する錠剤供給装置と、
前記錠剤供給装置の下流側に設けられ、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに蓋フィルムを重ねた状態でそれら容器フィルムと蓋フィルムとをシールして密封するシール装置と、
そのシール装置の下流側に設けられ、前記容器フィルムと蓋フィルムの所定位置を切断する切断装置と、
を備えたPTP包装機であって、
前記錠剤供給装置の下流側に請求項1から3のいずれかに記載の外観検査装置を設け、その外観検査装置で前記ポケット部に供給された前記錠剤の外観異常の検査を行うことを特徴とするPTP包装機。
【請求項1】
移動する錠剤に光を照射する光照射手段と、
その錠剤の表面からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
その前記撮像手段にて撮像された画像データに基づき、三次元計測法により錠剤の表面の各位置の高さ位置を濃淡画像で表したプロファイル画像を求める手段と、
そのプロファイル画像に基づき錠剤の外観検査を行う処理手段と、を備え、
前記処理手段は、前記プロファイル画像中の錠剤を示す画像データを抽出する手段と、抽出した画像データをその錠剤の表面が平坦になるように正規化して平坦化画像を生成する平坦化手段と、その平坦化画像に基づいて外観異常の判定を行う手段を備えることを特徴とする錠剤の外観検査装置。
【請求項2】
平坦化手段における補正処理は、高次曲線法或いは高次曲面法を用いて前記錠剤の表面を近似したベース面を求め、各位置のベース面からの高さに置き換えて正規化するものである請求項1に記載の錠剤の外観検査装置。
【請求項3】
一列に並んだ複数の錠剤の同一直線上に存在する前記平坦化画像における濃淡値の平均値を求め、求めた平均値が前記正規化する値との差から振動による補正値を求め、
前記同一直線状に存在する各画素の濃淡値を前記補正値により補正する補正手段を備え、
前記外観異常の判定を行う手段は、その補正手段による補正後の画像データに基づいて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の錠剤の外観検査装置。
【請求項4】
搬送する帯状の容器用フィルムに形成されたポケット部に対し、錠剤を供給する錠剤供給装置と、
前記錠剤供給装置の下流側に設けられ、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに蓋フィルムを重ねた状態でそれら容器フィルムと蓋フィルムとをシールして密封するシール装置と、
そのシール装置の下流側に設けられ、前記容器フィルムと蓋フィルムの所定位置を切断する切断装置と、
を備えたPTP包装機であって、
前記錠剤供給装置の下流側に請求項1から3のいずれかに記載の外観検査装置を設け、その外観検査装置で前記ポケット部に供給された前記錠剤の外観異常の検査を行うことを特徴とするPTP包装機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2012−159456(P2012−159456A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20696(P2011−20696)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(503449591)日本エフ・エーシステム株式会社 (1)
【出願人】(000206093)大森機械工業株式会社 (138)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(503449591)日本エフ・エーシステム株式会社 (1)
【出願人】(000206093)大森機械工業株式会社 (138)
【Fターム(参考)】
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