説明

集積回路

【課題】集積回路素子裏面の電位を基準電位に保ちながら、フレキシブルプリント配線板の面積の増大を抑制できる集積回路を提供すること。
【解決手段】集積回路1は、配線パターン4を有するフレキシブルプリント配線板2と、配線パターン4上の一部に覆設された絶縁性保護膜7と、少なくとも絶縁性保護膜7上の一部に覆設され、かつ基準電位に接続される導電性接着膜8と、導電性接着膜8上に接して配置された集積回路素子1とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集積回路に関し、特に、フレキシブルプリント配線板上に集積回路素子が配置される集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ドライブ装置の光ヘッドにおいては、記録面で反射したレーザー光を受光して電気信号に変換するための受光素子を含む集積回路が用いられる(例えば特許文献1参照。)。この集積回路は通常、フレキシブルプリント配線板(FPC)を用いて構成される。FPCは形状に自由度を有し、柔軟性の高い回路接続が可能となるからである。
【0003】
ところで、近年光ヘッドの性能向上に対する要求が増しており、受光素子にも周波数特性の向上が求められている。そこで従来、半導体プロセス技術、回路技術、実装技術など複数種の技術を駆使することによって受光素子の周波数特性の向上が図られている。
【特許文献1】特開2008−41226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
受光素子の周波数特性を向上させるための具体的な技術のひとつに、受光素子裏面の電位を基準電位とする技術がある。以下、簡単に説明する。
【0005】
図4はFPC100の一部を示している。同図に示すように、FPC100上には基準電圧に接続されたダイパッドエリア101が設けられ、その上に受光素子102が配置される。こうすることで受光素子裏面の電位を基準電位に保つことが可能となり、特に大光量時の周波数特性の劣化が防止される。
【0006】
しかしながら、上記技術ではダイパッドエリアが必要になるため、FPCの面積が大きくなってしまうという問題があった。加えて、FPCは比較的高価であるため、FPCの面積が大きくなった分、光ヘッド全体の価格が高くなってしまうという問題があった。
【0007】
このような問題は受光素子に限って発生するものではなく、集積回路の構成要素としての集積回路素子全般に広く起こり得る問題である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、集積回路素子裏面の電位を基準電位に保ちながら、フレキシブルプリント配線板の面積の増大を抑制できる集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明による集積回路は、配線パターンを有するフレキシブルプリント配線板と、前記配線パターン上の一部に覆設された絶縁性保護膜と、少なくとも前記絶縁性保護膜上の一部に覆設され、かつ基準電位に接続される導電性接着膜と、前記導電性接着膜上に接して配置された集積回路素子とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ダイパッドエリアを設けなくても集積回路素子裏面の電位を基準電位に保つことが可能になり、したがってフレキシブルプリント配線板の面積の増大を抑制できる。
【0011】
また、上記各集積回路において、前記配線パターンは前記基準電位に接続された基準電位パターンを含み、前記絶縁性保護膜は前記基準電位パターンの少なくとも一部を残して前記配線パターン上に覆設され、前記導電性接着膜は前記絶縁性保護膜及び前記基準電位パターンに接触して覆設されることとしてもよい。これによれば、導電性接着膜の電位を基準電位に保つことができる。
【0012】
なお、上記各集積回路において、前記導電性接着膜はエポキシ系導電性接着剤であることが好適であり、前記絶縁性保護膜はカバーレイ又は絶縁レジストであることが好適である。
【0013】
また、上記各集積回路において、前記集積回路素子と前記配線パターンとはボンディングワイヤによって接続されていることとしてもよい。これによれば、ワイヤボンディング法によって集積回路素子をフレキシブルプリント配線板上に実装できる。
【0014】
また、上記集積回路において、前記ボンディングワイヤと前記配線パターンとの接続部は樹脂により封止されていることとしてもよい。これによれば、樹脂によって接続部を保護することができる。
【0015】
また、上記集積回路において、前記集積回路素子は受光面を有する受光素子であり、前記受光面は前記樹脂上に露出していることとしてもよい。こうすれば、受光素子は好適に光ビームを受光できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、集積回路素子裏面の電位を基準電位に保ちながら、フレキシブルプリント配線板の面積の増大を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本実施の形態による集積回路1の一部を拡大してなる平面図である。同図に示すように、集積回路1は、多数の銅箔配線パターン4を有するFPC2と、受光素子3とを備えている。
【0019】
この集積回路1は光ディスクを読み取るために用いられる光ヘッドに備えられるものであり、受光素子3は4分割された受光部(カソード)D1〜D4と各受光部に対応するアノードP1〜P4を備えている。受光部D1〜D4はそれぞれ受光面を有しており、光ディスクで反射してきた光ビームを受光面で受光し、その受光量を示す電気信号を出力する。
【0020】
受光部D1〜D4及びアノードP1〜P4はそれぞれボンディングワイヤによって配線パターン4に接続されている。具体的には、配線パターン4は、図1に示すように、ボンディングワイヤを接続するための複数のボンディングパッド4aと、基準電位(グランド)が接続された基準電位パターン4bとを含んで構成されており、受光部D1〜D4及びアノードP1〜P4はそれぞれいずれかのボンディングパッド4aにボンディングワイヤによって接続されている。
【0021】
受光素子3は、配線パターン4上に、複数の配線を跨って配置されている。以下、具体的に説明する。
【0022】
図2は図1のA−A'線断面図であり、図3は図1のB−B'線断面図である。両図に示すように、集積回路1は配線パターン4上の一部に複数の配線を跨って覆設された絶縁性保護膜7と、この絶縁性保護膜7上の一部に覆設され、かつ基準電位に接続される導電性接着膜8とを備えている。受光素子3は導電性接着膜8上に接して配置されている。したがって、受光素子3裏面の電位は基準電位に保たれている。
【0023】
導電性接着膜8は次のようにして基準電位に接続される。すなわち、絶縁性保護膜7は、図2及び図3に示すように、基準電位パターン4bの少なくとも一部を残して配線パターン4上に覆設されている。そして、導電性接着膜8は絶縁性保護膜7及び基準電位パターン4b(絶縁性保護膜7が覆設されていない部分)に接触して覆設される。これにより導電性接着膜8は基準電位パターン4bと電気的に接触するので、導電性接着膜8は基準電位に接続されることになる。
【0024】
なお、絶縁性保護膜7は、導電性接着膜8が基準電位パターン4b以外の配線パターン4に接触しないよう覆設される。
【0025】
絶縁性保護膜7の形成は、フィルム張り合わせ、もしくはスクリーン印刷法を用い、FPC2上の所定領域に基準電位パターン4bを露出させたカバーレイ又は絶縁レジストを形成することによって行うことが好適である。このようにして形成した絶縁性保護膜7は、図2及び図3にも示すように配線パターン4に沿って若干の凹凸を有する。
【0026】
導電性接着膜8としてはエポキシ系導電性接着剤を用いることが好適である。集積回路1では、絶縁性保護膜7の表面に上記凹凸があることによって、エポキシ系導電性接着剤を用いて接着した場合の受光素子3の密着性が高められている。また、エポキシ系導電性接着剤を用いることによって受光素子3を極力水平に保つことが可能になっている。
【0027】
また、図2及び図3に示すように、集積回路1の一部(ボンディングワイヤ5と配線パターン4の接続部を含む。)は表面に形成された樹脂層9により封止されている。光ビームを受光する必要があるため、受光素子3の受光部D1〜D4の受光面上には樹脂層9は形成されず、受光部D1〜D4の受光面は樹脂上に露出している。
【0028】
以上説明したように、集積回路1によれば、ダイパッドエリアを設けなくても受光素子3裏面の電位を基準電位に保つことが可能になり、したがってFPC2の面積の増大を抑制できる。そしてこれにより、光ヘッド全体の価格を抑制する効果が得られている。
【0029】
また、従来は、ダイパッドエリア上に受光素子を配置する際、直接的にはリードフレーム等の中間部材を配置し、中間部材内に設けられるダイパッド上に受光素子を配置するという構成が採用されることがあった。ダイパッドと受光素子裏面とは密着性がよいため、ダイパッドを基準電位に接続さえしておけば受光素子裏面の電位を確実に基準電位にすることができるからであるが、集積回路1によれば導電性接着膜8と受光素子裏面とを確実に密着させられるので、中間部材を用いなくとも受光素子3裏面の電位を確実に基準電位に保つことが可能になる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0031】
例えば上記実施の形態では受光素子3を用いる場合について説明したが、受光素子3以外の集積回路素子にも本発明は適用可能である。また、光ヘッドに用いられる集積回路だけでなく、他の用途に用いられる集積回路にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の好ましい実施の形態による集積回路の一部を拡大してなる平面図である。
【図2】図1のA−A'線断面図である。
【図3】図1のB−B'線断面図である。
【図4】受光素子の周波数特性を向上させるための技術によるFPCの平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 集積回路
2 FPC(フレキシブルプリント配線板)
3 受光素子
4 配線パターン
4 配線パターン
4a ボンディングパッド
4b 基準電位パターン
5 ボンディングワイヤ
7 絶縁性保護膜
8 導電性接着膜
9 樹脂層
D1〜D4 受光部(カソード)
P1〜P4 アノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンを有するフレキシブルプリント配線板と、
前記配線パターン上の一部に覆設された絶縁性保護膜と、
少なくとも前記絶縁性保護膜上の一部に覆設され、かつ基準電位に接続される導電性接着膜と、
前記導電性接着膜上に接して配置された集積回路素子とを備えることを特徴とする集積回路。
【請求項2】
前記配線パターンは前記基準電位に接続された基準電位パターンを含み、
前記絶縁性保護膜は前記基準電位パターンの少なくとも一部を残して前記配線パターン上に覆設され、
前記導電性接着膜は前記絶縁性保護膜及び前記基準電位パターンに接触して覆設されることを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記導電性接着膜はエポキシ系導電性接着剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の集積回路。
【請求項4】
前記絶縁性保護膜はカバーレイ又は絶縁レジストであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項5】
前記集積回路素子と前記配線パターンとはボンディングワイヤによって接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項6】
前記ボンディングワイヤと前記配線パターンとの接続部は樹脂により封止されていることを特徴とする請求項5に記載の集積回路。
【請求項7】
前記集積回路素子は受光面を有する受光素子であり、
前記受光面は前記樹脂上に露出していることを特徴とする請求項6に記載の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−218308(P2009−218308A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58904(P2008−58904)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】