説明

電子デバイスの評価素子及び電子デバイスの評価方法

【課題】 電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきをその電子デバイスの形成位置毎に評価することができるようにした電子デバイスの評価素子及び電子デバイスの評価方法を提供する。
【解決手段】 シリコンウエーハW上に形成されるフラッシュメモリ300のセル内におけるコンタクト抵抗のばらつきを評価するための評価素子100であって、セル内のコンタクト部位と同じような構造を持ったユニットを複数個含むホールチェーン20を備え、第1、第2の電極パッド2a,2b間の抵抗値を測定する。次に、第1、第3の電極パッド2a,2c間の抵抗値を測定し、第1、第4の電極パッド2a,2d間の抵抗値を測定し、その後、第1、第5の電極パッド2a,2e間の抵抗値を測定する。ユニット数に対するホールチェーンの抵抗値の増加度合いから、フラッシュメモリ300セル内におけるコンタクト抵抗のばらつきを知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの評価素子及び電子デバイスの評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品となるICチップが多数個形成されたウエーハのスクライブライン上には、通常、ICチップの素子レベルやICレベルでの基本的な構造、電気的特性等を代替評価するためのTEG(test element group)が設けられている。このようなTEGは、その評価の対象や目的に応じて様々な種類と大きさの素子群からなり、多くの場合、ウエーハ面内に一定の間隔をもって複数個設けられている。
【0003】
例えば、シリコンウエーハに設けられた不純物拡散層とメタル配線との間に生じるコンタクト抵抗を評価する場合には、ホールチェーンを有する評価素子をTEGに含めておく。そして、このホールチェーンの総抵抗値を測定することで、不純物拡散層とメタル配線とのコンタクト抵抗を間接的に評価する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図8は、従来例に係る評価素子90の構成例を示す平面図である。図8に示すように、この評価素子90は、ホールチェーン80と、一対の電極パッド95とを有する。これらの中で、ホールチェーン80は、TEG形成領域内に一定間隔で複数設けられた不純物拡散層93と、隣接する不純物拡散層93同士を電気的に接続するメタル配線91等とから構成されている。また、電極パッド95は、プローブ針を接触させるためのものである。
【0005】
ホールチェーン80における1本のメタル配線91と、1つの不純物拡散層93と、この不純物拡散層93をその上方に掛かるメタル配線91に接続させる2つのコンタクトホール(プラグ電極)との組合せ(以下、「ユニット」という。)数は、連鎖数とも呼ばれる。従来、このようなホールチェーンの連鎖数は一水準のみであり、例えば150〜200程度であった。
【0006】
このようなホールチェーン80を用いて、メタル配線91と不純物拡散層93とのコンタクト抵抗を間接的に評価する場合には、図8に示す一対の電極パッド95間に所定の電圧を印加して、ホールチェーン80に電流を流す。そして、このとき流れる電流値を測定する。この電流値と、印加した電圧値とから、ホールチェーン80の総抵抗値(即ち、不純物拡散層93の抵抗値と、メタル配線91の抵抗値と、メタル配線91と不純物拡散層93との間のコンタクト抵抗値との総和)を算出する。
【0007】
次に、この総抵抗値をその連鎖数で割り算して、1ユニット当たりの抵抗値を算出する。この1ユニット当たりの抵抗値は、厳密には、コンタクト抵抗だけでなく、1本のメタル配線91の抵抗値と、1つの不純物拡散層93の抵抗値とを含む値ではあるが、メタル配線91の抵抗値や不純物拡散層93の抵抗値等に比べてコンタクト抵抗は大きく、しかも変動し易い値なので、この1ユニット当たりの抵抗値が規格幅に入っていれば、コンタクト抵抗は一応正常であると判断される。
【0008】
従来の半導体装置の製造工程では、コンタクト抵抗については、主にウエーハ面内でのばらつきを注目していた。これは、ICチップの電気的特性を均一にするためには、ウエーハ全体でのコンタクト抵抗のばらつきをできるだけ小さくすることが重要と考えられていたからである。
【特許文献1】特開平10−135298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年では半導体装置の微細化と省電力化が進みつつあり、ICチップ内のメタル配線に流れる電流量も小さくなりつつある。特に、フラッシュメモリでは、そのセル電流が数10[μA]以下と極めて小さくなってきている。このような省電力化の著しいフラッシュメモリ等の電気的特性を安定化させるためには、ウエーハ面内でのコンタクト抵抗のばらつきを小さくすることよりも、むしろ、セルのような極めて狭い領域におけるコンタクト抵抗のばらつきを小さくする(即ち、セル内のイレギュラーなコンタクトをより少なくする)ことが重要となってきた。
【0010】
しかしながら、従来のコンタクト抵抗の評価方法は、ウエーハ全面でのコンタクト抵抗のばらつきを知ることを目的としたものであり、この評価方法から算出されたデータは、ホールチェーン80内でのコンタクト抵抗のばらつきと、ウエーハ面内でのコンタクト抵抗のばらつきとの両方を含んだものであった。
従って、従来の評価方法では、セル内のコンタクト抵抗のばらつきと、ウエーハ面内でのコンタクト抵抗のばらつきとが混ざったデータしか得ることができず、セル(又は、ICチップ)内の極めて小さなコンタクト抵抗のばらつきを正しく評価することができなかった。また、従来、このようなセル内の極めて小さなコンタクト抵抗のばらつきだけを評価する評価方法や、その評価に適したTEG等も無かった。
【0011】
本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきをその電子デバイスの形成位置毎に評価することができるようにした電子デバイスの評価素子及び電子デバイスの評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の電子デバイスの評価素子は、基板に形成される電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきを評価するための評価素子であって、前記所定構造体と同種の被試験構造体を含む評価パターンを複数備え、前記評価パターン同士は、含まれる前記被試験構造体の数量がそれぞれ異なり、前記評価パターン同士は前記基板内に近接して形成されることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、前記評価素子は所定領域、例えば電子デバイス近傍のTEGが形成される領域(以下、「TEG形成領域」という。)に形成される。TEG形成領域は、多くの場合、基板内で隣り合う一の電子デバイスと他の電子デバイスとを仕切るスクライブライン上に画定される。このようなTEG形成領域は、通常、基板内に複数設けられている。
また、電子デバイスの「所定構造体」とは、例えば基板上に設けられた導電層と、この導電層を覆う絶縁膜上に設けられ、この絶縁膜に設けられた貫通孔(コンタクトホール、ビアホール等)を介して導電層と電気的に接続する配線層等と、からなるものである。「被試験構造体」は、「所定構造体」とその構造や大きさ等が同じであり、例えば上記導電層と、配線層等とからなるものである。
【0014】
また、各評価パターンに含まれる被試験構造体のそれぞれの数量(個数)は、抵抗値に異常のある被試験構造体が1個でも含まれる可能性が高い境界線(ボーダライン)を跨ぐように設定することが好ましい。例えば、500個に1個程度の不良が見込まれる場合には、一の評価パターンに含まれる被試験構造体の個数を100個とし、他の評価パターンに含まれる被試験構造体の個数を1000個とする。
【0015】
発明1に係る電子デバイスの評価素子によれば、被試験構造体の数量が異なる複数の評価パターンの抵抗値をそれぞれ測定することで、被試験構造体の数量に対する評価パターンの抵抗値の増加度合いを求めることができる。そして、この増加度合いから、被試験構造体の抵抗値のばらつきを知ることができる。
つまり、基板の限定された位置範囲内における被試験構造体の抵抗ばらつきを知ることができる。従って、基板の所定領域に形成された被試験構造体の抵抗ばらつきから、当該所定領域近傍にある電子デバイスに限って、その所定構造体の抵抗ばらつきを評価することが可能である。これにより、例えば、電子デバイスにおける不純物拡散層と、プラグ電極とのコンタクト抵抗のばらつきをその電子デバイスの形成位置毎に評価することが可能である。
【0016】
〔発明2〕 発明2の電子デバイスの評価素子は、発明1の電子デバイスの評価素子において、前記評価パターン同士は、同一の前記被試験構造体を共有することを特徴とするものである。
このような構成であれば、基板の所定領域に形成される試験構造体の個数を削減することが可能であり、評価素子の占有面積の増大をある程度抑制することができる。
【0017】
〔発明3〕 発明3の電子デバイスの評価素子は、基板に形成される電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきを評価するための評価素子であって、前記所定構造体と同種の被試験構造体を含む評価パターンを複数備え、前記評価パターン同士は、含まれる前記被試験構造体の大きさがそれぞれ異なり、前記評価パターン同士は前記基板内に近接して形成されることを特徴とするものである。
【0018】
ここで、「被試験構造体」は、「所定構造体」とその構造自体は同じであるが、構造体を構成する部位の一部又は全ての大きさが異なっている。
発明3に係る電子デバイスの評価素子によれば、被試験構造体の大きさがそれぞれ異なる複数の評価パターンの抵抗値をそれぞれ測定することで、被試験構造体の大きさに対する評価パターンの抵抗値の増加度合いを求めることができる。そして、この増加度合いから、被試験構造体の単位大きさ当たりの抵抗値のばらつきを知ることができる。
【0019】
つまり、基板の限定された位置範囲内における、被試験構造体の単位大きさ当たりの抵抗ばらつきを知ることができる。従って、基板の所定領域に形成された被試験構造体の抵抗ばらつきから、当該所定領域近傍にある電子デバイスに限って、その所定構造体の抵抗ばらつきを評価することが可能である。これにより、例えば、電子デバイスにおけるポリ抵抗のばらつきを、その電子デバイスの形成位置毎に評価することが可能である。
【0020】
〔発明4〕 発明4の電子デバイスの評価方法は、基板に形成される電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきを評価する方法であって、発明1から発明3の何れか一の電子デバイスの評価素子に含まれる、複数の前記評価パターンの抵抗値をそれぞれ測定することを特徴とするものである。
【0021】
このような構成であれば、基板の限定された位置範囲内での被試験構造体の抵抗ばらつきを知ることができる。従って、基板の所定領域に形成された被試験構造体の抵抗ばらつきから、当該所定領域近傍にある電子デバイスに限って、その所定構造体の抵抗ばらつきを評価することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電子デバイスの評価素子及び電子デバイスの評価方法について説明する。
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る評価素子100の構成例を示す平面図である。この評価素子100は、例えばシリコンウエーハ上に形成されるフラッシュメモリのセル内にあるコンタクト部位の抵抗(即ち、コンタクト抵抗)のばらつきを評価するための素子である。
【0023】
図1に示すように、この評価素子100は、ホールチェーン20と、このホールチェーン20の両端と途中とに電気的に接続した複数個の電極パッド2とを有する。例えば、図1に示すように、この評価素子100には5個の電極パッド2a〜2eが設けられている
図2(A)及び(B)は、ホールチェーン20の構成例を示す平面図と、A−A´矢視断面図である。
【0024】
図2(A)に示すように、このホールチェーン20は、メタル配線21と、シリコンウエーハに形成された不純物拡散層23と、このメタル配線21と不純物拡散層23とを電気的に接続するプラグ電極25とを有する。図2(B)に示すように、不純物拡散層23は例えばシリコンウエーハWの表面及びその近傍に島状に複数形成されており、シリコンウエーハW上で隣り合う一の不純物拡散層23と他の不純物拡散層23との間には素子分離層27が形成されている。
【0025】
図2(B)に示すように、メタル配線21は、シリコンウエーハW上に形成された層間絶縁膜29上に形成されている。また、層間絶縁膜29のメタル配線21と不純物拡散層23とに挟まれた部位にはコンタクトホールHが形成されている。プラグ電極25は、このコンタクトホールH内を埋め込み形成されている。
図2(B)に示すように、不純物拡散層23はその導電型が例えばN型である。また、シリコンウエーハWは、その導電型が例えばP型である。このような構造によって、層間絶縁膜29上に形成された複数本のメタル配線21は、プラグ電極25と不純物拡散層23とによって、直列に接続されている(言い換えれば、シリコンウエーハWに形成された複数の不純物拡散層23は、プラグ電極25とメタル配線21とによって、直列に接続されている。)。
【0026】
ところで、不純物拡散層23、素子分離層27、層間絶縁膜29、コンタクトホールH、プラグ電極25及びメタル配線21等からなる評価素子100は、シリコンウエーハWにフラッシュメモリを形成する際のウエーハプロセスを利用して、フラッシュメモリと並行して形成されたものである。また、この評価素子100は、フラッシュメモリのセル内にある不純物拡散層と、メタル配線と、プラグ電極等からなるコンタクト部位及びその近傍の構造をそのままコピーし、それらを繋ぎ合わせたものである。
【0027】
従って、不純物拡散層23の拡散深さ(Xj)、その不純物種及びその濃度と、素子分離層27、層間絶縁膜29、プラグ電極25、メタル配線21のそれぞれの膜種及びその厚さと、コンタクトホールHの開口径等は、フラッシュメモリのコンタクト部位及びその近傍と同一種類であり、同一の大きさとなっている。
以下で、この1つの不純物拡散層23と、この1つの不純物拡散層23上に形成された2つのプラグ電極25と、これら2つのプラグ電極25の一方に接続する1つのメタル配線21との組合せからなる構造体をユニットと呼ぶ。また、ホールチェーン20におけるユニットの数量を連鎖数とも呼ぶ。
【0028】
図1に戻る。第1の電極パッド2aと第2の電極パッド2bとの間にあるホールチェーン20のユニット数(即ち、連鎖数)をn、第1の電極パッド2aと第3の電極パッド2cとの間のホールチェーン20の連鎖数をn、第1の電極パッド2aと第4の電極パッド2dとの間のホールチェーン20の連鎖数をn、第1の電極パッド2aと第5の電極パッド2eとの間のホールチェーン20の連鎖数をnとしたとき、n1〜n4は例えば、(n,n,n,n)=(10,100,500,1000)である。
【0029】
図3は、評価素子100の形成位置の一例を示す平面図である。図3に示すように、シリコンウエーハWには製品としてのフラッシュメモリ300が複数個形成されている。また、隣り合うフラッシュメモリ300の間は、シリコンウエーハWの面内で縦横に交差するスクライブラインSによって仕切られている。このフラッシュメモリ300を仕切るスクライブラインS上には、TEG形成領域200が複数設けられている。図3に示すように、これらのTEG形成領域200はシリコンウエーハW面内で比較的等間隔に配されている。そして、上述した評価素子100、一つ一つのTEG形成領域200内にそれぞれ形成されている。
【0030】
次に、上述した評価素子100を用いて、この評価素子100の近傍に形成されたフラッシュメモリ300のセル内でのコンタクト抵抗のばらつきを評価する方法について説明する。
図4は、評価素子100を用いたコンタクト抵抗の評価方法を示すフローチャートである。この図4と図1等を参照しながら、コンタクト抵抗の評価方法について説明する。
【0031】
まず始めに、図4のステップS1では、第1の電極パッド2aと、第2の電極パッド2bとにそれぞれプローブ針(図示せず)を当てる。そして、このプローブ針を介して、第1の電極パッド2aと、第2の電極パッド2bとの間のホールチェーン20に一定電圧を印加して電流を流す。このようにして、第1、第2の電極パッド2a,2b間の(即ち、連鎖数がn1のときの)ホールチェーン20の抵抗値を測定する。ここでは、ステップS1で得られた抵抗値をRとする。
【0032】
同様に、図4のステップS2では、第1の電極パッド2aと、第3の電極パッド2cとにそれぞれプローブ針を当てて、第1、第3の電極パッド2a,2c間の(即ち、連鎖数がnのときの)ホールチェーン20の抵抗値Rを測定する。ステップS3では、第1の電極パッド2aと、第4の電極パッド2dとにそれぞれプローブ針を当てて、第1、第4の電極パッド2a,2d間の(即ち、連鎖数がnのときの)ホールチェーン20の抵抗値Rを測定する。ステップS4では、第1の電極パッド2aと、第5の電極パッド2eとにそれぞれプローブ針を当てて、第1、第5の電極パッド2a,2e間の(即ち、連鎖数がnのときの)ホールチェーン20の抵抗値Rを測定する。
【0033】
次に、図4のステップS5では、図4のステップS1〜S4で得られた抵抗値R〜Rから、ホールチェーン20における連鎖数nと抵抗値Rとの関係を明らかにする。ここでは、例えば、以下に示す図5を作図して、連鎖数nと抵抗値Rとの関係を直線で表し、この直線の相関係数とその傾きとを算出する。
図5は、ホールチェーン20における連鎖数n〜nと、抵抗値R〜Rとの関係を示す図である。図5において、横軸はホールチェーン20の連鎖数nを示し、縦軸はホールチェーン20の抵抗値Rを示している。ホールチェーン20の連鎖数nとその抵抗値Rとの間には、理想的には図5の2点鎖線で示す直線、即ち、式(1)に示すような関係が成り立つ。
R=A+n×Runit …(1)
R:ホールチェーン20の抵抗値
A:定数
n:連鎖数、Runit:ユニット1個当たりの抵抗値
また、ホールチェーン20の抵抗値Rは、図2(B)に示したメタル配線21の抵抗の和と、不純物拡散層23の抵抗の和と、不純物拡散層23とメタル配線21との間のコンタクト抵抗の和とを足した値であり、式(2)で表される。
R=ΣRmetal+ΣRdiff+ΣRcont …(2)
ΣRmetal:メタル配線21の抵抗の和
ΣRdiff:不純物拡散層23の抵抗の和
ΣRcont:コンタクト抵抗の和
式(1)に示したように、ホールチェーン20の連鎖数nとその抵抗値Rとの間には、理想的には直線の関係が成り立つはずである。しかしながら、実際には、ホールチェーン20の連鎖数nとその抵抗値Rとの関係は、相関係数r=1となるような完全な直線とはならないことが普通である。その理由は、以下の通りである。
【0034】
即ち、ホールチェーン20の抵抗値Rは、式(2)で示したように、ΣRmetalと、ΣRdiffと、ΣRcontとを足した値である。これらの中で、Rcontは、RmetalやRdiffと比べてその値が大きく、しかも突発的に異常値が出る可能性が高い。このような事情から、図5に示すように、連鎖数n1〜n4と、実際に測定した抵抗値R〜Rとから、連鎖数nと抵抗値Rとの関係を最小二乗法等により式化すると、その相関係数はr=1とはならず、ほとんどの場合においてr<1となってしまう。
【0035】
図5に示した4つの実測点R〜Rを一例として説明すると、図5に示すように、電流を流すホールチェーン20の連鎖数をn=100としたときには、抵抗値Rの値は2点鎖線で示す抵抗Rの理想直線Rideal上にある。このことは、コンタクト抵抗に異常があるユニットは、少なくとも全ユニットの1%未満であることを示唆している。
次に、電流を流すホールチェーン20の連鎖数をn=500としたときには、抵抗値Rの値は理想直線Ridealから多少離れてしてしまう。このことは、500個のユニットの中には、そのコンタクト抵抗値が異常な値であるユニット(以下、「異常ユニット」という。)が含まれている可能性が高いことを示唆している。
【0036】
異常ユニットは、ホールチェーン20の品質によってその出現頻度に大小はあるものの、通常は、ある程度の確率で発生するものである。そのため、ホールチェーン20の連鎖数nが例えば、10や100というように少ないときにはホールチェーン20に異常ユニットが含まれることは稀であるが、その連鎖数nの数を増やしていくとやがてホールチェーン20に異常ユニットが含まれてしまい、その抵抗値Rは理想直線Ridealからある程度乖離したものとなる。
【0037】
このようなホールチェーン20の抵抗値Rのばらつき度合いは、図5の実線で示す直線(関係式)の相関係数rの値から把握することができる。ホールチェーン20の抵抗値Rのばらつき度合いは、相関係数rが1に近いほど小さいといえる。
次に、図4のステップS6では、ステップS5で求めた直線(関係式)の相関係数rと、その傾きRunitとが、所定の管理値内(許容範囲内)にあるか否かを判定する。ここで、相関係数rと傾きRunitとが管理値内にある場合、即ち、評価素子100におけるコンタクト抵抗Rcontのばらつきは小さく、Rcontの数値自体にも問題がない場合には、ステップS7へ進む。ステップS7では、この評価素子100近傍のフラッシュメモリ300(図3参照。)は、この評価素子100と同様にそのセル内のコンタクト抵抗に問題はなく、合格(pass)と判断する。これにより、図4のフローチャートを終了する。
【0038】
一方、ステップS6で、相関係数r及び傾きRunitのどちらか一方、又はその両方が管理値内にない場合、即ち、評価素子100のコンタクト抵抗Rcontがばらついていたり、その値自体に問題がある場合には、ステップS8へ進む。ステップS8では、この評価素子100近傍のフラッシュメモリ300(図3参照。)は、この評価素子100と同様にそのセル内のコンタクト抵抗に問題があると推察されるので、不合格(fail)と判断して、図4のフローチャートを終了する。
【0039】
このように、本発明の第1実施形態に係る評価素子100によれば、ホールチェーン20の連鎖数をn〜nの多水準にして、そのときの抵抗値R〜Rをそれぞれ測定することで、連鎖数に対するホールチェーン20の抵抗値の増加度合いを求めることができる。そして、この増加度合いから、1ユニット当たりの抵抗値Runitのばらつきを知ることができる。つまり、シリコンウエーハWに複数あるTEG形成領域200のそれぞれで、その領域内におけるRunitのばらつきをそれぞれ知ることができる。
【0040】
従って、例えば、図3に示すTEG形成領域200a内におけるRunitのばらつきが分かれば、このTEG形成領域200aの近傍にあるフラッシュメモリ300に限って、そのセル内でのコンタクト抵抗Rcontのばらつきを評価することが可能である。即ち、コンタクト抵抗Rcontのばらつきを、フラッシュメモリ300の形成位置毎に評価することが可能である。
【0041】
また、ホールチェーン20は、各連鎖数n〜nの間でユニットを共有する形態を採っているので、連鎖数の増加数に対してユニットの増加数を抑えることができる。これにより、評価素子100の占有面積の増大を効果的に抑制することができる。
この第1実施形態では、シリコンウエーハWが本発明の基板に対応し、フラッシュメモリ300が本発明の電子デバイスに対応している。また、フラッシュメモリ300のセル内のコンタクト部位が本発明の所定構造体に対応し、セル内のコンタクト抵抗が本発明の所定構造体の抵抗に対応している。
【0042】
さらに、1つの不純物拡散層23と、この1つの不純物拡散層23上に形成された2つのプラグ電極25と、これら2つのプラグ電極25の一方に接続する1つのメタル配線21との組合せであるユニットが、本発明の被試験構造体に対応している。また、第1、第2の電極パッド2a,2bに挟まれた(即ち、連鎖数がnであるときの)ホールチェーン20や、連鎖数がn2〜n4であるときのそれぞれのホールチェーン20が本発明の複数の評価パターンに対応している。
(2)第2実施形態
図6は本発明の第2実施形態に係るホールチェーン120の構成例を示す断面図である。図6において、図2(A)及び(B)に示したホールチェーン20と同一の機能、構成を有する部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図6に示すホールチェーン120において、図2(A)及び(B)に示したホールチェーン20と異なる点は、不純物拡散層23が下層メタル配線123に置き換わっている点と、この下層メタル配線123とメタル配線(以下、「上層メタル配線」ともいう。)21との間にはコンタクトホールHではなくビアホールhが形成されている点と、このビアホールh内にはプラグ電極25よりもその断面の径が小さい第2のプラグ電極125が設けられている点とである。図6に示すように、下層メタル配線123とシリコンウエーハWとの間には絶縁膜124が設けられている。
【0044】
このような構成であれば、ホールチェーン120の抵抗値R´は、上層メタル配線121の抵抗の和と、下層メタル配線123の抵抗の和と、下層メタル配線123と上層メタル配線21との間の抵抗(以下、「ビア抵抗」という)の和とを足した値であり、式(3)で表される。
R´=ΣRU.metal+ΣRL.metal+ΣRvia …(3)
ΣRU.metal:上層メタル配線21の抵抗の和
ΣRL.metal:下層メタル配線123の抵抗の和
ΣRvia:ビア抵抗の和
そして、これら3つのパラメータの中では、特に、ビア抵抗が他の2つのパラメータと比べてその値が大きく、しかも突発的に異常値が出る可能性が高い。
【0045】
従って、このようなホールチェーン120を有する評価素子100´を用いてビア抵抗のばらつき評価を行う場合には、ホールチェーン120におけるユニットの連鎖数nと抵抗値R´との関係を直線で表し、この直線(関係式)の相関係数とその傾きを求める。これにより、シリコンウエーハWに複数あるTEG形成領域200のそれぞれで、その領域内におけるビア抵抗Rviaのばらつきをそれぞれ知ることができる。そして、その結果から、フラッシュメモリ300のセル内でのビア抵抗のばらつきを、フラッシュメモリ300の形成位置毎に評価することが可能である。
【0046】
この第2実施形態では、フラッシュメモリ300のセル内のビア抵抗が、本発明の所定構造体の抵抗に対応している。また、1つの下層メタル配線123と、この1つの下層メタル配線123上に形成された2つのプラグ電極125と、これら2つのプラグ電極125の一方に接続する1つの上層メタル配線21との組合せであるユニットが、本発明の被試験構造体に対応している。
(3)第3実施形態
図7(A)及び(B)は本発明の第3実施形態に係るホールチェーン220の構成例を示す平面図と、B−B´矢視断面図である。図7において、図2(A)及び(B)に示したホールチェーン20と同一の機能、構成を有する部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
図7(A)及び(B)に示すホールチェーン220において、図2(A)及び(B)に示したホールチェーン20と異なる点は、不純物拡散層23がポリシリコン抵抗体(以下、「ポリ抵抗体」という。)223a,223bに置き換わっている点と、メタル配線21が複数個の電極パッド221に置き換わっている点と、これらポリ抵抗体223a,223bと電極パッド221との間にはコンタクトホールHではなくビアホールhが形成されている点と、このビアホールh内にはプラグ電極25よりもその断面の径が小さい第3のプラグ電極225が設けられている点とである。
【0048】
また、図7に示すように、ポリ抵抗体223a,223bとシリコンウエーハWとの間には絶縁膜224が設けられている。ここで、ポリ抵抗体とは、例えばリン等の導電型不純物がドープされたポリシリコンからなるパターンのことである。
ところで、このホールチェーン220では、図7(A)に示すように、ポリ抵抗体223aの平面視での長さをL1とし、ポリ抵抗体223bの平面視での長さをL2としたとき、L1とL2との間には、式(4)に示すような関係がある。
L2=x×L1 …(4)
x:1,10,100,500,…等の自然数
また、ポリ抵抗体223aの平面視での幅をW1とし、ポリ抵抗体223bの平面視での幅をW2としたとき、W1=W2である。図7(A)及び(B)では、作図の便宜上からポリ抵抗体を2つしか記載しないが、このホールチェーン220は、例えば平面視での長さがL1のx倍であり、かつそのxの値がそれぞれ異なる複数個のポリ抵抗223c,223d,…を備えている。
【0049】
このような構成であれば、ホールチェーン220の抵抗値R´´は、電極パッド221の抵抗の和と、ポリ抵抗体223a,223b,223c,…等の抵抗の和と、これらポリ抵抗体223a等と電極パッド221との間の抵抗(ビア抵抗)の和とを足した値であり、式(5)で表される。
R´´=ΣRpad+ΣRpoly+ΣRvia …(5)
ΣRpad:電極パッド221a,221b,…の抵抗の和
ΣRpoly:ポリ抵抗体223a,223b…の抵抗の和
ΣRvia:ビア抵抗の和
また、式(5)に示す3つのパラメータの中では、特に、ポリ抵抗体223a等の抵抗値が、他の2つのパラメータと比べてその値が大きく、しかも突発的に異常値が出る可能性が高い。
【0050】
従って、このようなホールチェーン220を有する評価素子100´´を用いてポリ抵抗のばらつき評価を行う場合には、上記xの数値を増やしながら、そのときのホールチェーン220の抵抗値R´´を順次測定する。
そして、上記xの値と抵抗値R´´との関係を直線で表し、この直線(関係式)の相関係数とその傾きを求める。これにより、シリコンウエーハWに複数あるTEG形成領域200のそれぞれで、その領域内におけるポリ抵抗体の単位長さ当たりの抵抗のばらつきを知ることができる。そして、その結果から、フラッシュメモリ300のセル内でのポリ抵抗のばらつきを、フラッシュメモリ300の形成位置毎に評価することが可能である。
【0051】
この第3実施形態では、ポリ抵抗体223aや、ポリ抵抗体223bが本発明の被試験構造体に対応している。また、ポリ抵抗体223aと、このポリ抵抗体223aの上に形成された2つのプラグ電極225と、ポリ抵抗体223aを平面視で両側から挟む一対の電極パッド221との組合せや、ポリ抵抗体223bと、このポリ抵抗体223bの上に形成された2つのプラグ電極225と、ポリ抵抗体223bを平面視で両側から挟む一対の電極パッド221との組合せが本発明の評価パターンに対応している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態に係る評価素子100の構成例を示す平面図。
【図2】ホールチェーン20の構成例を示す平面図と、A−A´矢視断面図。
【図3】評価素子100の形成位置の一例を示す平面図。
【図4】評価素子100を用いたコンタクト抵抗の評価方法を示すフローチャート。
【図5】ホールチェーン20における連鎖数n〜nと、抵抗値R〜Rとの関係を示す図。
【図6】第2実施形態に係るホールチェーン120の構成例を示す断面図。
【図7】第3実施形態に係るホールチェーン220の構成例を示す平面図と、B−B´矢視断面図。
【図8】従来例に係る評価素子90の構成例を示す平面図。
【符号の説明】
【0053】
2,2a〜2e,221 電極パッド、20,120,220 ホールチェーン、21,121 (上層メタル)配線、23 不純物拡散層、25,125,225 プラグ電極、27 素子分離層、29 層間絶縁膜、123 下層メタル配線、124,224 絶縁膜、223a〜223d ポリ抵抗体、100,100´,100´´ 評価素子、300 フラッシュメモリ、H コンタクトホール、h ビアホール、 S スクライブライン、W ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成される電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきを評価するための評価素子であって、
前記所定構造体と同種の被試験構造体を含む評価パターンを複数備え、
前記評価パターン同士は、含まれる前記被試験構造体の数量がそれぞれ異なり、
前記評価パターン同士は前記基板内に近接して形成されることを特徴とする電子デバイスの評価素子。
【請求項2】
前記評価パターン同士は、同一の前記被試験構造体を共有することを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの評価素子。
【請求項3】
基板に形成される電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきを評価するための評価素子であって、
前記所定構造体と同種の被試験構造体を含む評価パターンを複数備え、
前記評価パターン同士は、含まれる前記被試験構造体の大きさがそれぞれ異なり、
前記評価パターン同士は前記基板内に近接して形成されることを特徴とする電子デバイスの評価素子。
【請求項4】
基板に形成される電子デバイス内の所定構造体の抵抗ばらつきを評価する方法であって、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電子デバイスの評価素子に含まれる、複数の前記評価パターンの抵抗値をそれぞれ測定することを特徴とする電子デバイスの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−41420(P2006−41420A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222988(P2004−222988)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】