説明

駆動基板、表示装置、電子機器、露光ずれ検査方法およびマスク

【課題】分割露光における表示領域でのショットの継ぎ目の位置を発見しやすく、パターンの継ぎ目検査に要する時間の低減を図ること。
【解決手段】本発明は、複数の露光領域に分割して形成される駆動素子形成領域10と、駆動素子形成領域10内に設けられ、隣接する露光領域の境界となる位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークとを有する駆動基板1である。また、このマークを、矩形から成る露光領域の隅部近傍に配置したり、矩形から成る露光領域において互いに隣接する4つの露光領域の各隅部近傍に設けるものでもある。また、本発明は、素子形成領域を分割露光によって形成するための一露光分に対応した露光パターン領域と、露光パターン領域における分割露光の継ぎ目部分に設けられるマークとを有するマスクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示領域の各画素を駆動する駆動素子を備える駆動基板、表示装置、電子機器、露光ずれ検査方法およびマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置といった表示装置には各画素を駆動するための駆動基板が用いられている。駆動基板は、画像の表示領域にマトリクス状に配置された各画素を駆動するためのTFT(Thin Film Transistor)等の駆動トランジスタが形成されたものである。
【0003】
近年では、表示装置の大型化が進んでおり、これに対応して駆動基板も大きく、かつ精度良く製造する必要が生じている。このような駆動基板の製造に対応するため、駆動素子を形成する表示領域を複数の露光領域に分割する分割露光が行われるようになっている。すなわち、表示領域は画素単位で同じパターンの繰り返しとなることから、表示領域を縦横数個の領域に分割し、各領域ごとに露光(ショット)を行ってつなぎ合わせることで大きな表示領域を構成している。
【0004】
この際、ショットの位置がばらつくとショット間をまたがって接続される配線の断線等の不良が生じてしまうことから、ショット間の位置ずれを検査できるようにした技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−231184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載の技術では、マークがデバイス領域の外に設けられていることから、デバイス領域内でのショットずれを的確に検出できないという問題がある。つまり、分割露光を行う際のショットの継ぎ目で重要なのは表示領域内に形成されるパターンの状態であり、この部分が表示装置の性能を左右することになる。したがって、分割露光では表示領域内におけるショットの継ぎ目での合わせ精度が非常に重要となるが、引用文献1に記載の技術では、表示領域内でのパターンの継ぎ目を迅速かつ正確に検査することができない。
【0007】
本発明は、分割露光における表示領域でのショットの継ぎ目の位置を発見しやすく、パターンの継ぎ目検査に要する時間の低減を図ることができるマスク、駆動基板、表示装置、電子機器および露光ずれ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、駆動対象に対して駆動信号を与える素子を備え、複数の露光領域に分割して形成される駆動素子形成領域と、駆動素子形成領域内に設けられ、隣接する露光領域の境界となる位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークとを有する駆動基板である。
【0009】
このような本発明では、複数の露光領域に分割して駆動素子形成領域を形成するにあたり、駆動素子形成領域内における隣接する露光領域の境界となる継ぎ目の位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークを備えていることから、駆動素子形成領域内での分割露光の継ぎ目を容易に見つけることができ、駆動素子形成領域内での分割露光のずれを的確に検査できるようになる。
【0010】
また、本発明では、マークを矩形から成る露光領域の隅部近傍に配置したり、矩形から成る露光領域において互いに隣接する4つの露光領域の各隅部近傍に設けている。これにより、互いに隣接する4つの露光領域の露光ずれを一箇所にまとまって配置されたマークを用いて迅速に行うことができるようになる。
【0011】
また、本発明では、マークを、露光領域において多層で露光される際の各層で一定量ずれた位置に設けたものでもある。これにより、露光領域において同層での隣接露光領域とのずれを容易に検出できるとともに、多層間でのずれも容易に検出できるようになる。
【0012】
また、本発明は、画像を表示する表示領域と、表示領域の各画素を駆動する素子を備える駆動基板とを有し、この駆動基板が、複数の露光領域に分割して形成される駆動素子形成領域と、駆動素子形成領域内に設けられ、隣接する前記露光領域の境界となる位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークとを有する表示装置である。
【0013】
このような本発明では、表示装置の駆動基板として、複数の露光領域に分割して駆動素子形成領域を形成するにあたり、駆動素子形成領域内における隣接する露光領域の境界となる継ぎ目の位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークを備えていることから、駆動素子形成領域内での分割露光の継ぎ目を容易に見つけることができ、駆動素子形成領域内での分割露光のずれを的確に検査できるようになる。
【0014】
また、本発明は、本体筐体に取り付けられる表示装置を有し、表示装置における各画素を駆動する駆動基板が、複数の露光領域に分割して形成される駆動素子形成領域と、駆動素子形成領域内に設けられ、隣接する前記露光領域の境界となる位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークとを有する電子機器である。
【0015】
このような本発明では、電子機器の表示装置における各画素を駆動する駆動基板として、複数の露光領域に分割して駆動素子形成領域を形成するにあたり、駆動素子形成領域内における隣接する露光領域の境界となる継ぎ目の位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークを備えていることから、駆動素子形成領域内での分割露光の継ぎ目を容易に見つけることができ、駆動素子形成領域内での分割露光のずれを的確に検査できるようになる。
【0016】
また、本発明は、分割露光によって複数の露光領域をつなぎ合わせて形成された素子形成領域における分割露光の継ぎ目部分に設けられるマークの位置を検出する工程と、検出したマークの位置から分割露光における露光ずれを判別する工程とを有する露光ずれ検査方法である。
【0017】
このような本発明では、分割露光による複数の露光領域の継ぎ目部分に設けられるマークの位置を検出し、この検出したマークの位置から分割露光における露光ずれを判別するため、素子形成領域における分割露光の継ぎ目部分で露光ずれを的確に検査できるようになる。
【0018】
また、本発明は、素子形成領域を分割露光によって形成するための一露光分に対応した露光パターン領域と、露光パターン領域における分割露光の継ぎ目部分に設けられるマークとを有するマスクである。
【0019】
このような本発明では、素子形成領域を分割露光によって形成するにあたり、露光パターン領域における分割露光の継ぎ目部分にマークが設けられていることから、素子形成領域内における隣接する露光領域の境界となる継ぎ目の位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークを形成することができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分割露光を行うにあたり、駆動素子形成領域内における分割露光のショット境界にマークを配置したことで、パターニング後の目視検査を効率的に行うことができ、表示装置の性能に重要な部分での露光合わせずれを迅速かつ的確に検査することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基づき説明する。
【0022】
<駆動基板の概要>
図1は、本実施形態に係る駆動基板の概要を説明する模式平面図である。すなわち、駆動基板1は、例えばガラス基板等の支持基板の略中央に設けられる駆動素子形成領域10、駆動素子形成領域10の周辺に配置される電源供給部20、信号線入力部21、走査信号入力部24、電源制御信号入力部25を備えている。駆動素子形成領域10は、複数の画素部30が縦横マトリクス状に配置されており、カラー画像を表示する表示装置では、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)に対応した画素部30の組みによって表示画素が構成されている。
【0023】
各画素部30には、駆動トランジスタを備える駆動部31が設けられている。駆動部31の駆動トランジスタは基板上に形成された薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)から成り、画素部30に設けられる駆動対象を電圧印加によって駆動する。画素部30の駆動対象が有機EL(Electro Luminescence)発光層の場合には、各色に対応した有機EL発光層に与える電界を駆動トランジスタによって制御し、画素部30の駆動対象が液晶層の場合には、液晶に与える電界を駆動トランジスタによって制御する。
【0024】
駆動トランジスタには電源制御線22や走査線23が接続されており、走査信号入力部24によって駆動素子形成領域10の駆動トランジスタを順次駆動することによって画像表示を行うことになる。すなわち、走査線23によって選択された水平画素列に電源制御線22から電源電圧が供給され、信号線入力部21から信号線26を介して垂直画素列方向に入力された画素信号に応じて該当画素の表示が行われる。そして、走査線23による水平画素列の選択および信号線26からの画素信号の入力を同期させることで、駆動素子形成領域10を駆動し、画像の表示を行うことになる。
【0025】
駆動基板1を製造するには、支持基板上に半導体層、絶縁膜層等の各層をCVD(Chemical Vapor Deposition)等の成膜工程によって形成し、不純物注入工程、フォトリソグラフィ工程等によって駆動素子の形成、配線パターニングを行う。
【0026】
本実施形態では、駆動基板1における駆動素子形成領域10の回路形成において、駆動素子形成領域10を複数の露光領域に分割して露光を行う分割露光によって形成している。ここで、分割露光における1回の露光をショットという。本実施形態では、同じ露光パターンについて複数のショットでつなぎ合わせを行い、一つの駆動素子形成領域10の露光を構成することになる。例えば、有機EL(Electro Luminescence)を用いた表示装置を製造する際のパターニング工程では、複数層での合わせ精度を向上するために、各層のマスクにおいて分割露光を行っている。
【0027】
<マスクの構成:分割露光のショット配置>
図2は、マスクの構成および分割露光のショット配置を説明する模式図であり、(a)は、ショットに対応したレチクル上のパターン配置の例を示す模式図、(b)は支持基板上に露光した際のショット配置の例を示す模式図である。図2(a)に示すように、一枚のマスクには分割露光のための露光パターンが複数種類形成されている。中央に設けられるShot_pixは、駆動素子形成領域の露光のためのパターンである。また、Shot_pixの周辺に設けられるShot_L_1、Shot_R_1、Shot_T_1、Shot_B_1は、駆動素子形成領域の周辺に配置される駆動回路を露光するためのパターンである。
【0028】
本実施形態では、駆動素子形成領域の分割露光の一露光分に対応した露光パターンであるShot_pixにおける分割露光の際の継ぎ目部分、すなわち、露光パターンShot_pixの領域における端部にマークMが設けられている。マークMは、矩形から成る露光パターンShot_pixの領域における境界線の少なくとも1辺に設けられていればよい。また、図2(a)に示す例のように、マークMは、露光パターンShot_pixの領域の上下左右の境界線の全てに対応して設けられていてもよい。上下左右の全ての境界線に対応してマークMが設けられることで、露光パターンShot_pixを用いた分割露光の際に上下左右どの方向に隣接する露光パターン領域とでも露光ずれを検証できるようになる。
【0029】
また、マークMが、露光パターンShot_pixの領域の隅部近傍に設けられていることで、互いに隣接する4つの露光パターンShot_pixの各隅部に露光パターンShot_pixと対応したマークMが隅部にまとまって露光されることになり、各露光パターンShot_pixの露光ずれを一箇所にまとまって配置されたマークMを用いて迅速に検査することが可能となる。
【0030】
図2(b)に示すように、ガラス基板上に形成した所定の膜に対するフォトリソグラフィにおいて分割露光を行う際には、図2(a)に示すようなレイアウトのマスクを用い、レチクル中央のShot_pixについて縦横複数回移動させた露光を行う。図2(b)に示す例では、図中縦方向に2回、図中横方向に3回の合計6回露光し、図1に示す駆動素子形成領域10の全体の露光と対応させている。また、図2(a)に示すマスクを用い、周辺の駆動回路となる領域にShot_L_1、Shot_R_1、Shot_T_1、Shot_B_1を露光する。
【0031】
<ショット継ぎ目について>
図3は、ショットの継ぎ目について説明する模式図である。図3(a)は分割露光を行った際に形成される露光後のパターンを示している。分割露光を行った隣接するShot_pixの少なくとも一方に位置ずれが生じている場合、境界(継ぎ目)をまたぐパターンPに隙間が生じてしまう。なお、このショットの境界である継ぎ目は説明上の仮想的な境目である。図3(b)は、継ぎ目をまたぐパターンPの拡大図である。このようにパターンPに隙間が生じると、形成される配線パターンの断線を引き起こす原因となる。
【0032】
図4は、ショットのばらつきを考慮して露光後のパターンを延長している例を示す模式図である。図4(a)に示すように、Shot_pixによる露光後のパターンPのうち、隣接するショットに繋がるパターンPの端部をショットのばらつき分を考慮して延長して設けておく。
【0033】
例えば、ショットの位置精度は約0.5〜2μm程度であるため、図4(a)に示すショットの継ぎ目部分にあたるパターンPの端部をばらつき分(例えば、2μm程度)延長して設計している。
【0034】
図4(b)は、このShot_pixについて分割露光した状態を示している。Shot_pixによる露光後のパターンPが延長されている分、隣接するShot_pixの継ぎ目部分においてパターンPが多重に露光されることになる。したがって、図4(c)に示すように、ショットの継ぎ目をまたぐパターンPでは、継ぎ目部分の多重露光によるくびれが生じることになる。
【0035】
このような分割露光を行ってパターニングした後には、ショット継ぎ目を光学顕微鏡により目視検査をする必要がある。しかし、ガラス基板等の支持基板上にはこの様なショット継ぎ目が多数あり、しかも見た目では分かりづらいことから目視検査には時間が掛かってしまう。
【0036】
<マークの例>
図5は、本実施形態で適用されるマークについて説明する模式図である。上記説明したように、分割露光を行う際にはショットの継ぎ目をまたぐパターンPに断線やくびれといった問題が生じやすい。特に、駆動素子形成領域内でこのようなパターンPの断線やくびれが生じると、駆動特性に大きな影響を及ぼすことになる。そこで、本実施形態では、駆動素子形成領域の露光ショットにおいて、ショットの継ぎ目の近傍に隣接ショット間のずれを判別するためのマークMを設けている。この際、マークMはパターンPと干渉しない位置に配置する。
【0037】
図5(a)に示す例では、露光パターンShot_pixにおける継ぎ目をまたぐパターンPの近傍にマークMとなる露光パターンを設けている。マークMは、露光によってパターンPと同時に形成される。したがって、マークMはShot_pixを構成するレチクルに形成されているとともに、露光後の支持基板にも形成されることになる。マークMは、継ぎ目をまたぐパターンPと同じ方向に沿って直線的に設けられ、このパターンPと同じように継ぎ目をまたぐよう設けられる。
【0038】
図5(a)に示すような露光パターンShot_pixを隣接して連続するよう分割露光すると、図5(b)に示すような露光後のパターンが形成される。すなわち、隣接する露光パターンShot_pixをまたぐようパターンPが露光されるとともに、継ぎ目の部分ではマークMが重なって露光されることになる。
【0039】
本実施形態の駆動基板では、このように駆動素子形成領域内で分割露光の境界となる継ぎ目部分にマークMが露光されることから、このマークMの露光ずれを検査すれば分割露光の継ぎ目でのずれを容易に確認することができるようになる。これにより、駆動基板の特性において重要な駆動素子形成領域での分割露光のずれを短時間で的確に検査することができるようになる。特に、マークMが駆動素子形成領域内の継ぎ目部分に設けられているため、駆動素子形成領域内で分割露光の継ぎ目部分を容易に見つけ出すことができ、検査時間の短縮を図ることができる。
【0040】
ここで、マークMによって分割露光のずれを検査するには、露光後のマークMの大きさによって判別すればよい。例えば、分割露光のずれが生じていない場合には、隣接ショットの継ぎ目のマークMは完全に多重露光されるため、この場合の大きさ(幅、長さ)は予め設定された大きさとなる。一方、隣接ショットでいずれかの方向にずれが生じると、隣接ショットの継ぎ目のマークMは完全に多重露光されず、完全に多重露光された場合に対して異なる露光サイズとなる。この露光サイズの差によってずれが発生していることを判別することができる。
【0041】
マークMは、矩形領域に設けられた露光パターンShot_pixの隅部近傍に設けるようにしてもよい。マークMを露光パターンShot_pixの隅部に設けることで、矩形領域に設けられた露光パターンShot_pixにおいて互いに隣接する4つの露光パターンShot_pixの互いの露光ずれを一括して検査することができるようになる。
【0042】
図6は、矩形領域に設けられる露光パターンの4つが縦横に隣接する例を示す図である。このように、4つの露光パターンShot_pixが互いに隣接する場合、その隣接する隅部にマークMを設けることで、隅部に集中する各マークの位置関係によって4つの露光パターンShot_pixの互いの露光ずれを短時間で検査できるようになる。図6に示す隅部に設けられるマークMの具体例を、図7〜図9の隅部拡大図に示す。
【0043】
図7に示すマークの例は、隣接する4つの露光パターンShot_pixの各隅部に斜め直線のマークMが設けられ、4つのマークMで×型を構成する例である。4つの露光パターンShot_pixの各隅部に斜め直線のマークMが設けられることで、位置ずれなく4つの露光パターンShot_pixが露光されると各露光パターンShot_pixのマークMによって正確な×印が構成されることになる。×印が正確に構成されていない場合には、各マークMの位置関係を検出すれば、各露光パターンShot_pixの相対的な位置ずれを判別することができるようになる。
【0044】
図8に示すマークの例は、隣接する4つの露光パターンShot_pixの各隅部に斜め直線のマークMが設けられ、4つのマークMで菱形を構成する例である。4つの露光パターンShot_pixの各隅部に斜め直線のマークMが設けられることで、位置ずれなく4つの露光パターンShot_pixが露光されると各露光パターンShot_pixのマークMによって正確な菱形が構成されることになる。菱形が正確に構成されていない場合には、各マークMの位置関係を検出すれば、各露光パターンShot_pixの相対的な位置ずれを判別することができるようになる。
【0045】
図9に示すマークの例は、隣接する4つの露光パターンShot_pixの各隅部に円弧状のマークMが設けられ、4つのマークMで○型を構成する例である。4つの露光パターンShot_pixの各隅部に円弧状のマークMが設けられることで、位置ずれなく4つの露光パターンShot_pixが露光されると各露光パターンShot_pixのマークMによって正確な○型が構成されることになる。○型が正確に構成されていない場合には、各マークMの位置関係を検出すれば、各露光パターンShot_pixの相対的な位置ずれを判別することができるようになる。
【0046】
<他のマークの例>
図10は他のマークの例を示す模式図である。このうち、図10(a)に示すマークの例は、露光パターン内の切り欠きによって構成する例である。すなわち、隣接する露光パターンShot_pixにおいて継ぎ目をまたぐパターンPがある場合、そのパターンPの継ぎ目部分の端部の一部を切り欠きhにしてマークMとしている。これにより、露光パターンShot_pixを隣接して露光すると、継ぎ目をまたぐパターンPの継ぎ目部分に切り欠きh同士が向かい合う状態となる。
【0047】
隣接する露光パターンShot_pixが位置ずれなく露光されると、向かい合う切り欠きhが正確に矩形となる。一方、向かい合う切り欠きhが正確な矩形になっていない場合には、両切り欠きhの位置関係を検出することで、各露光パターンShot_pixの相対的な位置ずれを判別することができるようになる。
【0048】
図10(b)に示すマークの例は、多層膜の層間において異なる位置に設けられた例である。駆動素子形成領域におけるパターン露光では、多層配線に対応するため各層の形成と露光とを繰り返し行う。例えば、第1層の配線パターンを形成するには、支持基板上に第1層の配線パターンとなる導電膜を形成し、レジストを塗布した状態で第1層の配線パターンに対応した露光およびパターニングを行う。次いで、この上に絶縁膜を介して第2層の配線パターンとなる導電膜を形成し、レジストを塗布した状態で第2層の配線パターンに対応した露光およびパターニングを行う。このような多層配線では、層間におけるパターンの位置合わせが重要となる。
【0049】
図10(b)に示すマークでは、第1層の配線パターンを形成する分割露光での継ぎ目をまたぐようマークM1を形成する。これにより、第1層の配線パターンを形成する際の分割露光のずれを検査することができる。また、第2層の配線パターンを形成する分割露光での継ぎ目をまたぐようマークM2を形成する。このマークM2は、マークM1と異なる位置に設ける。これにより、第2層の配線パターンを形成する際の分割露光のずれを検査することができる。さらに、マークM1とマークM2とが異なる位置にあることで、マークM1とマークM2との相対位置関係によって層間における位置ずれを検査することができる。
【0050】
<露光ずれ検査方法>
本実施形態に係るマスクを用いて駆動素子形成領域の分割露光を行った露光パターンの検査を行うには、次のような手順となる。先ず、分割露光によって複数の露光領域をつなぎ合わせ、駆動素子形成領域の露光を行い、駆動素子形成領域の分割露光における継ぎ目のマークの位置を検出する。マークの位置の検出は、例えば光学顕微鏡を用いたり、光学顕微鏡によって取り込んだ映像を画像処理することで検出してもよい。分割露光を行った際には、分割露光における隣接の露光領域の継ぎ目部分に両露光領域の各マークの位置が検出されることになる。
【0051】
次に、検出したマークの位置によって隣接する露光領域のずれを判別する。先に検出した継ぎ目部分でのマークには、隣接する露光領域の一方のマークと他方のマークとが検出されている。この2つのマークの間隔を計測し、予め決められた基準値との比較によって、隣接する露光領域の露光ずれを判別することが可能となる。
【0052】
また、一つの基準(例えば、基板の原点)からの各マークの位置(座標)を検出すれば、分割露光の各露光領域のおのおの露光ずれ量を検査することも可能である。さらに、多層膜の各層を分割露光によって形成する場合、図10(b)に示すような多層間のマークの位置を上記と同様に検出すれば、同じ分割露光位置での多層間での露光ずれを検出することが可能である。
【0053】
次に、本実施形態に係る表示装置の適用例について説明する。
【0054】
<表示装置>
本実施形態に係る表示装置は、図11に示すようにフラット型のモジュール形状のものを含む。例えば絶縁性の基板上2002に、発光領域、薄膜トランジスタ、受光素子等からなる画素をマトリックス状に集積形成した画素アレイ部2002aを設ける、この画素アレイ部(画素マトリックス部)2002aを囲むように接着剤2021を配し、ガラス等の対向基板2006を貼り付けて表示モジュールとする。この透明な対向基板2006には必要に応じて、カラーフィルタ、保護膜、遮光膜等を設けてもよい。表示モジュールには、外部から画素アレイ部2002aへの信号等を入出力するためのコネクタとして例えばFPC(フレキシブルプリントサーキット)2023を設けてもよい。
【0055】
<表示装置の適用例>
以上説明した本実施形態に係る表示装置は、図12〜図15に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。以下に、本実施形態が適用される電子機器の一例について説明する。
【0056】
図12は、本実施形態が適用されるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本実施形態に係る表示装置を用いることにより作成される。
【0057】
図13は、本実施形態が適用されるデジタルカメラを示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本実施形態に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0058】
図14は、本実施形態が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本実施形態に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0059】
図15は、本実施形態が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本実施形態に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0060】
図16は、本実施形態が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145として本実施形態に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0061】
<表示撮像装置>
本実施形態に係る表示装置は、以下のような表示撮像装置に適用可能である。また、この表示撮像装置は、先に説明した各種電子機器に適用可能である。図17には、表示撮像装置の全体構成を表すものである。この表示撮像装置は、I/Oディスプレイパネル2000と、表示ドライブ回路1200と、受光ドライブ回路1300と、画像処理部1400と、アプリケーションプログラム実行部1100とを備えている。
【0062】
I/Oディスプレイパネル2000は、複数の画素が全面に渡ってマトリクス状に配置された有機電界発光素子からなり、線順次動作をしながら表示データに基づく所定の図形や文字などの画像を表示する機能(表示機能)を有すると共に、後述するようにこのI/Oディスプレイ2000に接触または近接する物体を撮像する機能(撮像機能)を有するものである。
【0063】
表示ドライブ回路1200は、I/Oディスプレイパネル2000において表示データに基づく画像が表示されるように(表示動作を行うように)、このI/Oディスプレイパネル2000の駆動を行う(線順次動作の駆動を行う)回路である。
【0064】
受光ドライブ回路1300は、I/Oディスプレイパネル2000において受光データが得られるように(物体を撮像するように)、このI/Oディスプレイパネル2000の駆動を行う(線順次動作の駆動を行う)回路である。なお、各画素での受光データは、例えばフレーム単位でフレームメモリ1300Aに蓄積され、撮像画像として画像処理部14へ出力されるようになっている。
【0065】
画像処理部1400は、受光ドライブ回路1300から出力される撮像画像に基づいて所定の画像処理(演算処理)を行い、I/Oディスプレイ2000に接触または近接する物体に関する情報(位置座標データ、物体の形状や大きさに関するデータなど)を検出し、取得するものである。なお、この検知する処理の詳細については後述する。
【0066】
アプリケーションプログラム実行部1100は、画像処理部1400による検知結果に基づいて所定のアプリケーションソフトに応じた処理を実行するものであり、例えば検知した物体の位置座標を表示データに含むようにし、I/Oディスプレイパネル2000上に表示させるものなどが挙げられる。なお、このアプリケーションプログラム実行部1100で生成される表示データは表示ドライブ回路1200へ供給されるようになっている。
【0067】
次に、図18を参照してI/Oディスプレイパネル2000の詳細構成例について説明する。このI/Oディスプレイパネル2000は、表示エリア(センサエリア)2100と、表示用Hドライバ2200と、表示用Vドライバ2300と、センサ読み出し用Hドライバ2500と、センサ用Vドライバ2400とを有している。
【0068】
表示エリア(センサエリア)2100は、有機電界発光素子からの光を変調して表示光を出射すると共にこのエリアに接触または近接する物体を撮像する領域であり、発光素子(表示素子)である有機電界発光素子と後述する受光素子(撮像素子)とがそれぞれマトリクス状に配置されている。
【0069】
表示用Hドライバ2200は、表示ドライブ回路1200から供給される表示駆動用の表示信号および制御クロックに基づいて、表示用Vドライバ2300と共に表示エリア2100内の各画素の有機電界発光素子を駆動するものである。
【0070】
センサ読み出し用Hドライバ2500は、センサ用Vドライバ2400と共にセンサエリア2100内の各画素の受光素子を線順次駆動し、受光信号を取得するものである。
【0071】
次に、図19を参照して、表示エリア2100内の各画素とセンサ読み出し用Hドライバ2500との接続関係について説明する。この表示エリア2100では、赤(R)用の画素3100と、緑(G)用の画素3200と、青(B)用の画素3300とが並んで配置されている。
【0072】
各画素の受光センサ3100c,3200c,3300cに接続されたコンデンサに蓄積された電荷は、それぞれのバッファアンプ3100f,3200f,3300fで増幅され、読み出しスイッチ3100g,3200g,3300gがオンになるタイミングで、信号出力用電極を介してセンサ読み出し用Hドライバ2500へ供給される。なお、各信号出力用電極には定電流源4100a,4100b,4100cがそれぞれ接続され、センサ読み出し用Hドライバ2500で感度良く受光量に対応した信号が検出されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施形態に係る駆動基板の概要を説明する模式平面図である。
【図2】分割露光のショット配置を説明する模式図である。
【図3】ショットの継ぎ目について説明する模式図である。
【図4】ショットのばらつきを考慮して露光後のパターンを延長している例を示す模式図である。
【図5】本実施形態で適用されるマークについて説明する模式図である。
【図6】矩形領域に設けられる露光パターンの4つが縦横に隣接する例を示す図である。
【図7】4つのマークMで×型を構成する例を説明する隅部拡大図である。
【図8】4つのマークMで菱形を構成する例を説明する隅部拡大図である。
【図9】4つのマークMで○型を構成する例を説明する隅部拡大図である。
【図10】露光パターン内の切り欠きによって構成する例を説明する隅部拡大図である。
【図11】フラット型のモジュール形状の例を示す模式図である。
【図12】本実施形態が適用されるテレビを示す斜視図である。
【図13】本実施形態が適用されるデジタルカメラを示す斜視図である。
【図14】本実施形態が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図15】本実施形態が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。
【図16】本実施形態が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図である。
【図17】表示撮像装置の構成を表すブロック図である。
【図18】I/Oディスプレイパネルの構成例を表すブロック図である。
【図19】各画素とセンサ読み出し用Hドライバとの接続関係を説明するための回路図である。
【符号の説明】
【0074】
1…駆動基板、10…駆動素子形成領域、20…電源供給部、21…信号線入力部21、24…走査信号入力部、25…電源制御信号入力部、30…画素部、M…マーク、P…パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象に対して駆動信号を与える素子を備え、複数の露光領域に分割して形成される駆動素子形成領域と、
前記駆動素子形成領域内に設けられ、隣接する前記露光領域の境界となる位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークと
を有する駆動基板。
【請求項2】
前記マークは、矩形から成る前記露光領域の隅部近傍に設けられている
請求項1記載の駆動基板。
【請求項3】
前記マークは、矩形から成る前記露光領域において互いに隣接する4つの露光領域の各隅部近傍に設けられている
請求項1記載の駆動基板。
【請求項4】
前記マークは、前記露光領域において多層で露光される際の各層で一定量ずれた位置に設けられている
請求項1記載の駆動基板。
【請求項5】
画像を表示する表示領域と、
前記表示領域の各画素を駆動する素子を備える駆動基板とを有し、
前記駆動基板が、
複数の露光領域に分割して形成される駆動素子形成領域と、
前記駆動素子形成領域内に設けられ、隣接する前記露光領域の境界となる位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークとを有する
表示装置。
【請求項6】
本体筐体に取り付けられる表示装置を有し、
前記表示装置における各画素を駆動する駆動基板が、
複数の露光領域に分割して形成される駆動素子形成領域と、
前記駆動素子形成領域内に設けられ、隣接する前記露光領域の境界となる位置に両露光領域の露光ずれを判別するマークとを有する
電子機器。
【請求項7】
分割露光によって複数の露光領域をつなぎ合わせて形成された素子形成領域における分割露光の継ぎ目部分に設けられるマークの位置を検出する工程と、
検出した前記マークの位置から分割露光における露光ずれを判別する工程と
を有する露光ずれ検査方法。
【請求項8】
素子形成領域を分割露光によって形成するための一露光分に対応した露光パターン領域と、
前記露光パターン領域における分割露光の継ぎ目部分に設けられるマークと
を有するマスク。
【請求項9】
前記マークは、矩形から成る前記露光パターン領域の隅部近傍に設けられている
請求項8記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−258398(P2009−258398A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107487(P2008−107487)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】