高周波用電子部品
【課題】インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層とを含む低温同時焼成セラミック多層基板を用いて構成された高周波用電子部品の特性および信頼性を向上させる。
【解決手段】電子部品1は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板10を備えている。多層基板10は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。インダクタ用導体層の厚みは、キャパシタ用導体層の厚みよりも大きい。また、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。
【解決手段】電子部品1は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板10を備えている。多層基板10は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。インダクタ用導体層の厚みは、キャパシタ用導体層の厚みよりも大きい。また、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温同時焼成セラミック多層基板を用いて構成された高周波用電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波用電子部品には、低温同時焼成セラミック(以下、LTCCとも記す。)多層基板を用いて構成されたものがある。LTCC多層基板は、後に誘電体層となるセラミックグリーンシート上に所望のパターンの導体層を形成し、このように導体層が形成された複数のグリーンシートを積層し、セラミックと導体層を同時に焼成することによって製造される。導体層は、例えば、導体ペーストを用いてスクリーン印刷によって形成される。また、LTCC多層基板を用いて構成された高周波用電子部品には、それぞれLTCC多層基板内の導体層を用いて構成されたインダクタとキャパシタとを有するものがある。
【0003】
一般的に、LTCC多層基板の導体層を形成するための導体ペーストは、金属粉末とガラスフリットとを有機ビヒクル中に分散させたものである。導体層において、ガラスフリットによるガラス成分は、導体層と誘電体層との接着力を大きくする機能を有する。
【0004】
特許文献1には、BaTiO3系誘電体からなる誘電体層と、その上下主面にそれぞれ形成された電極層とを備えたLTCC多層基板において、焼成時に誘電体層と電極層との界面はがれが発生するのをなくすために、チタン酸バリウム結晶を析出する結晶化ガラスを含む電極ペーストを用いて電極層を形成する技術が記載されている。
【0005】
特許文献2には、高アスペスト比の導体パターンを有する信頼性の高い電子部品を実現するために、絶縁性の基板の上に導体パターンを設け、この導体パターンの表面にめっきによる金属膜を設け、この金属膜を酸化して、導体パターンの表面に金属酸化物層を設ける技術が記載されている。また、特許文献2には、導体パターンを形成している基板の表面の全面に金属酸化物層を形成することにより、例えば、LとCの複合部品などのように微細な導体パターンが必要でない箇所において、微細な導体パターンの電極材料とは異なる導体抵抗値の高い電極材料を用いた場合であっても、信頼性に優れた複合部品などの電子部品を実現できることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−100915号公報
【特許文献2】特開2005−166873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、LTCC多層基板を用いて構成された高周波用電子部品では、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、同じ材料(導体ペースト)を用いて、同じ厚みになるように形成されていた。しかしながら、以下で詳しく説明するように、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層では、特性および信頼性の面における好ましい態様が異なることから、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層を同じ材料を用いて同じ厚みになるように形成する場合には、以下のような問題が生じていた。
【0008】
まず、インダクタ用導体層は、インダクタのQ値を大きくするために、厚みは大きい方がよく、抵抗値は小さい方がよい。導体層に含まれるガラス成分の割合が小さい方が、導体層の抵抗値が小さくなるため、インダクタ用導体層では、ガラス成分の割合は小さい方がよい。
【0009】
また、インダクタ用導体層では、その断面における輪郭が矩形であるよりも円形に近い方が、表皮効果の影響により、インダクタのQ値が大きくなる。一般的に、LTCC多層基板では、導体層を構成する金属材料として、AgやCuのように高周波特性に優れた金属材料が用いられる。しかし、このような高周波特性に優れた金属材料では、一般的に、セラミック材料に比べて焼成温度がはるかに低い。そのため、LTCC多層基板用のグリーンシートの材料としては、焼成温度を低くするために、例えばアルミナ(Al2O3)にガラスを混ぜたものが用いられる。それでも、導体層にAgを用いた場合、グリーンシートと導体層は、Agの融点付近の850〜900℃程度の温度で焼成される。そのため、導体層を構成する金属材料としてAgを用いた場合には、導体層の焼成時に、Agよりなる導体層の一部が溶融状態となり、表面張力により導体層の表面が滑らかな曲面となる。このような導体層の表面の曲面化は、インダクタ用導体層では、インダクタのQ値が大きくなるため好ましい。ここで、導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、Agの焼結が妨げられて、導体層の表面の曲面化が妨げられる。そのため、インダクタ用導体層では、導体層の表面の曲面化を生じさせるために、ガラス成分の割合は小さい方がよい。
【0010】
一方、キャパシタ用導体層は、インダクタ用導体層に比べて、誘電体層に接する面積が大きいことから、厚みが大きくなると、その導体層を挟む2つの誘電体層の剥離や、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生や、多層基板における反りの発生といった、多層基板の構造欠陥が生じやすくなる。そのため、キャパシタ用導体層では、厚みは小さい方がよい。
【0011】
また、キャパシタ用導体層では、その近傍において所望の電界強度が安定して得られるように、厚みを均一にすると共に、誘電体層との接着性を良好にする必要がある。導体層と誘電体層との接着性を良好にするためには、導体ペースト中のガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0012】
また、キャパシタ用導体層では、前述の導体層の表面の曲面化が生じると、以下のような種々の問題が発生する。まず、導体層の厚みの均一性が劣化する。また、導体層の厚みが大きくなるため、多層基板中に気孔が発生しやすくなる。また、キャパシタ用導体層は、通常の焼結でも、収縮により網目状になりやすい。このような導体層において、更に表面の曲面化が生じると、多層基板中に発生する気孔の大きさが著しく大きくなる。これにより、導体層の近傍において所望の電界強度が得られなくなり、その結果、キャパシタンスの低下やQ値の低下が生じる。また、キャパシタ用導体層では、誘電体層に接する面積が大きいことから、導体層の表面の曲面化が生じると、厚み方向に大きく膨張し、面に平行な方向に大きく収縮する。そのため、導体層を挟む2つの誘電体層の剥離や、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生や、多層基板における反りの発生といった、多層基板の構造欠陥が生じやすくなる。前述のように、導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、導体層の表面の曲面化が妨げられる。そのため、これらの点からも、キャパシタ用導体層では、ガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0013】
なお、インダクタ用導体層は、キャパシタ用導体層に比べて、誘電体層に接する面積が小さいことから、厚みが大きいことや導体層の表面の曲面化によって多層基板の構造欠陥が生じる可能性は小さい。
【0014】
このように、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層では特性および信頼性の面における好ましい態様が異なる。そのため、LTCC多層基板において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層を同じ材料を用いて同じ厚みになるように形成する場合には、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することができず、LTCC多層基板を用いた高周波用電子部品の特性および信頼性を向上させることが困難である。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層とを含む低温同時焼成セラミック多層基板を用いて構成された高周波用電子部品であって、特性および信頼性を向上させることができるようにした高周波用電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1および第2の高周波用電子部品は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板を備えている。低温同時焼成セラミック多層基板は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。
【0017】
本発明の第1の高周波用電子部品では、インダクタ用導体層の厚みは、キャパシタ用導体層の厚みよりも大きい。これにより、本発明の第1の高周波用電子部品では、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することが可能になる。
【0018】
本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層の厚みは、8〜30μmの範囲内であり、キャパシタ用導体層の厚みは、2〜20μmの範囲内であってもよい。
【0019】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含み、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さくてもよい。この場合、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であってもよい。
【0020】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在していてもよい。また、本発明の第1の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいてもよい。
【0021】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、複数の導体層は、グランドとして使用される導体層を含み、このグランドとして使用される導体層の厚みは、グランドとして使用されないキャパシタ用導体層の厚みよりも小さくてもよい。
【0022】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていてもよい。
【0023】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていてもよい。
【0024】
本発明の第2の高周波用電子部品では、キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含んでいる。インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。これにより、本発明の第2の高周波用電子部品では、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することが可能になる。
【0025】
本発明の第2の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であってもよい。
【0026】
また、本発明の第2の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在していてもよい。また、本発明の第2の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいてもよい。
【0027】
また、本発明の第2の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていてもよい。
【0028】
また、本発明の第2の高周波用電子部品において、インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1または第2の高周波用電子部品によれば、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することが可能になり、その結果、特性および信頼性を向上させることが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品は、第1および第2の周波数帯域に対応可能な携帯電話機におけるフロントエンドモジュールとして用いられるものである。第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域よりも高周波側に存在する。第1の周波数帯域は、AGSM(American Global System for Mobile Communications)方式で使用される周波数帯域と、EGSM(Extended Global System for Mobile Communications)方式で使用される周波数帯域の少なくとも一方を含んでいてもよい。第2の周波数帯域は、DCS(Digital Cellular System)方式で使用される周波数帯域と、PCS(Personal Communications Service)方式で使用される周波数帯域の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0031】
AGSM方式の送信信号の周波数帯域は824MHz〜849MHzである。AGSM方式の受信信号の周波数帯域は869MHz〜894MHzである。EGSM方式の送信信号の周波数帯域は880MHz〜915MHzである。EGSM方式の受信信号の周波数帯域は925MHz〜960MHzである。DCS方式の送信信号の周波数帯域は1710MHz〜1785MHzである。DCS方式の受信信号の周波数帯域は1805MHz〜1880MHzである。PCS方式の送信信号の周波数帯域は1850MHz〜1910MHzである。PCS方式の受信信号の周波数帯域は1930MHz〜1990MHzである。
【0032】
図1は、本実施の形態に係る高周波用電子部品の側面図である。本実施の形態に係る高周波用電子部品1は、低温同時焼成セラミック多層基板(以下、単に多層基板と記す。)10と、この多層基板10に実装された複数の素子とを備えている。多層基板10は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含んでいる。また、多層基板10は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。多層基板10の複数の誘電体層および複数の導体層については、後で詳しく説明する。
【0033】
また、多層基板10は、複数の誘電体層の積層方向における両側に配置された底面10aおよび上面10bと、底面10aと上面10bとを連結する4つの側面とを有し、直方体形状をなしている。多層基板10に実装された複数の素子は、上面10bに搭載されている。この複数の素子についても、後で詳しく説明する。
【0034】
次に、図2の回路図を参照して、本実施の形態に係る高周波用電子部品1の回路構成について説明する。図2に示したように、本実施の形態に係る高周波用電子部品1は、アンテナ端子ANTと、2つの受信信号端子Rx1,Rx2と、2つの送信信号端子Tx1,Tx2と、2つの制御端子Vc1,Vc2とを備えている。アンテナ端子ANTは、アンテナ20に接続される。受信信号端子Rx1は、第1の周波数帯域の受信信号を出力する。受信信号端子Rx2は、第2の周波数帯域の受信信号を出力する。送信信号端子Tx1には、第1の周波数帯域の送信信号が入力される。送信信号端子Tx2には、第2の周波数帯域の送信信号が入力される。制御端子Vc1には、第1の制御信号が入力される。制御端子Vc2には、第2の制御信号が入力される。端子ANT,Rx1,Rx2,Tx1,Tx2,Vc1,Vc2は、外部回路に接続されるようになっている。
【0035】
高周波用電子部品1は、更に、ダイプレクサ2と、2つのスイッチ回路3,5と、2つのローパスフィルタ(以下、LPFとも記す。)4,6とを備えている。ダイプレクサ2は、アンテナ端子ANTおよびスイッチ回路3,5に接続されている。
【0036】
スイッチ回路3は、3つのポートP1〜P3を有している。ポートP1はダイプレクサ2に接続されている。ポートP2はLPF4に接続されている。ポートP3は受信信号端子Rx1に接続されている。また、スイッチ回路3は、制御端子Vc1に接続されている。そして、スイッチ回路3は、制御端子Vc1からの第1の制御信号の状態に応じて、ポートP2またはポートP3を選択的にポートP1に接続する。
【0037】
スイッチ回路5は、3つのポートP4〜P6を有している。ポートP4はダイプレクサ2に接続されている。ポートP5はLPF6に接続されている。ポートP6は受信信号端子Rx2に接続されている。また、スイッチ回路5は、制御端子Vc2に接続されている。そして、スイッチ回路5は、制御端子Vc2からの第2の制御信号の状態に応じて、ポートP5またはポートP6を選択的にポートP4に接続する。
【0038】
LPF4は、スイッチ回路3のポートP2と送信信号端子Tx1との間に挿入されている。LPF4は、第1の周波数帯域の送信信号に含まれる高調波成分を除去する。LPF6は、スイッチ回路5のポートP5と送信信号端子Tx2との間に挿入されている。LPF6は、第2の周波数帯域の送信信号に含まれる高調波成分を除去する。
【0039】
ダイプレクサ2は、インダクタL3,L4と、キャパシタC1,C2,C3,C4,C5とを有している。インダクタL3およびキャパシタC1,C3の各一端はアンテナ端子ANTに接続されている。インダクタL3およびキャパシタC1の各他端はスイッチ回路3のポートP1に接続されている。キャパシタC2の一端はキャパシタC1の他端に接続されている。キャパシタC2の他端は接地されている。キャパシタC4の一端はキャパシタC3の他端に接続されている。キャパシタC4の他端はスイッチ回路5のポートP4に接続されている。インダクタL4の一端はキャパシタC3の他端に接続されている。インダクタL4の他端は、キャパシタC5を介して接地されている。
【0040】
インダクタL3およびキャパシタC1,C2は、第1の周波数帯域の信号を通過させ、第2の周波数帯域の信号を遮断するローパスフィルタを構成する。キャパシタC3,C4,C5およびインダクタL4は、第2の周波数帯域の信号を通過させ、第1の周波数帯域の信号を遮断するバンドパスフィルタを構成する。
【0041】
スイッチ回路3は、ポートP1〜P3と、インダクタL1,L5と、キャパシタC6,C7,C8,C9と、抵抗器R2と、ダイオードD1,D2とを有している。インダクタL1およびキャパシタC9の各一端およびダイオードD1のアノードは、ポートP1に接続されている。キャパシタC9の他端は接地されている。ダイオードD1のカソードおよびインダクタL1の一端は、ポートP2に接続されている。インダクタL1の他端は接地されている。インダクタL5の他端、ダイオードD2のカソードおよびキャパシタC6の一端は、ポートP3に接続されている。ダイオードD2のアノードは、抵抗器R2の一端に接続されていると共に、キャパシタC7を介して接地されている。抵抗器R2の他端は制御端子Vc1に接続されていると共に、キャパシタC8を介して接地されている。キャパシタC6の他端は接地されている。
【0042】
LPF4は、インダクタL6と、キャパシタC10,C11,C12とを有している。インダクタL6およびキャパシタC10,C12の各一端は、送信信号端子Tx1に接続されている。インダクタL6およびキャパシタC10の各他端およびキャパシタC11の一端は、スイッチ回路3のポートP2に接続されている。キャパシタC11,C12の各他端は接地されている。
【0043】
スイッチ回路5は、ポートP4〜P6と、インダクタL2,L7,L9と、キャパシタC13,C14,C15,C16,C17と、抵抗器R1と、ダイオードD3,D4とを有している。インダクタL2,L7およびキャパシタC16の各一端およびダイオードD3のアノードは、ポートP4に接続されている。キャパシタC16の他端は接地されている。ダイオードD3のカソードおよびインダクタL9の一端は、ポートP5に接続されている。インダクタL9の他端は接地されている。インダクタL7の他端、ダイオードD4のカソードおよびキャパシタC13の一端は、ポートP6に接続されている。ダイオードD4のアノードは、抵抗器R1の一端に接続されていると共に、キャパシタC14を介して接地されている。抵抗器R1の他端は制御端子Vc2に接続されていると共に、キャパシタC15を介して接地されている。キャパシタC13の他端は接地されている。キャパシタC17の一端はインダクタL2の他端に接続されている。キャパシタC17の他端はポートP5に接続されている。
【0044】
LPF6は、インダクタL8と、キャパシタC18,C19,C20とを有している。インダクタL8およびキャパシタC18,C20の各一端は、送信信号端子Tx2に接続されている。インダクタL8およびキャパシタC18の各他端およびキャパシタC19の一端は、スイッチ回路5のポートP5に接続されている。キャパシタC19,C20の各他端は接地されている。
【0045】
高周波用電子部品1では、アンテナ端子ANTに入力された第1の周波数帯域の受信信号は、ダイプレクサ2およびスイッチ回路3を通過して、受信信号端子Rx1に送られる。アンテナ端子ANTに入力された第2の周波数帯域の受信信号は、ダイプレクサ2およびスイッチ回路5を通過して、受信信号端子Rx2に送られる。送信信号端子Tx1に入力された第1の周波数帯域の送信信号は、LPF4、スイッチ回路3およびダイプレクサ2を通過して、アンテナ端子ANTに送られる。送信信号端子Tx2に入力された第2の周波数帯域の送信信号は、LPF6、スイッチ回路5およびダイプレクサ2を通過して、アンテナ端子ANTに送られる。
【0046】
図3は、高周波用電子部品1の平面図である。図3に示したように、高周波用電子部品1を構成する素子のうち、インダクタL1,L2、ダイオードD1,D2,D3,D4および抵抗器R1,R2は多層基板10の上面10bに搭載されている。他の素子は、多層基板10内の導体層を用いて構成されている。多層基板10の底面10aには、端子ANT,Rx1,Rx2,Tx1,Tx2,Vc1,Vc2と、後述する複数のグランド端子が配置されている。
【0047】
次に、図4ないし図28を参照して、多層基板10の構成の一例について説明する。図4ないし図27は、それぞれ、上から1層目ないし24層目(最下層)の誘電体層の上面を示している。図28は、上から24層目の誘電体層およびその下の導体層を、上から見た状態で表したものである。図4ないし図27において、丸印はスルーホールを表している。
【0048】
図4に示した1層目の誘電体層101の上面には、導体層111A,111B,112A,112B,113A,113B,114A,114B,115A,115B,116A,116B,117A,117B,118A,118B,119A,119B,119C,119Dが形成されている。
【0049】
ダイオードD1のアノードは導体層111Aに接続され、ダイオードD1のカソードは導体層111Bに接続されている。ダイオードD2のアノードは導体層112Aに接続され、ダイオードD2のカソードは導体層112Bに接続されている。ダイオードD3のアノードは導体層113Aに接続され、ダイオードD3のカソードは導体層113Bに接続されている。ダイオードD4のアノードは導体層114Aに接続され、ダイオードD4のカソードは導体層114Bに接続されている。インダクタL1の一端は導体層115Aに接続され、インダクタL1の他端は導体層115Bに接続されている。インダクタL2の一端は導体層116Aに接続され、インダクタL2の他端は導体層116Bに接続されている。抵抗器R1の一端は導体層117Aに接続され、抵抗器R1の他端は導体層117Bに接続されている。抵抗器R2の一端は導体層118Aに接続され、抵抗器R2の他端は導体層118Bに接続されている。誘電体層101には、上記各導体層に接続された複数のスルーホールが形成されている。
【0050】
図5に示した2層目の誘電体層102の上面には、キャパシタ用導体層204,217Aと、導体層121,122が形成されている。キャパシタ用導体層204は、図2におけるキャパシタC4の一部を構成する。導体層204には、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層113A,116Bが接続されている。キャパシタ用導体層217Aは、図2におけるキャパシタC17の一部を構成する。導体層217Aには、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層113Bが接続されている。
【0051】
導体層121には、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層115A,119Cが接続されている。導体層122には、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層111B,115Bが接続されている。誘電体層102には、それぞれ導体層204,217A,121,122に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0052】
図6に示した3層目の誘電体層103の上面には、キャパシタ用導体層203A,217Bと、導体層131〜143が形成されている。導体層203Aは、図5に示した導体層204と共に図2におけるキャパシタC4を構成すると共に、図2におけるキャパシタC3の一部を構成する。導体層217Bは、図2におけるキャパシタC17の他の一部を構成する。導体層217Bには、誘電体層101,102に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層116Aが接続されている。導体層131〜143には、それぞれ、誘電体層101,102に形成されたスルーホールを介して、図4に示した119A,114A,114B,119B,117A,118A,117B,118B,119C,111A,112A,112B,119Dが接続されている。誘電体層103には、それぞれ導体層203A,131〜143に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0053】
図7に示した4層目の誘電体層104の上面には、キャパシタ用導体層203B,217Cが形成されている。導体層203Bは、図6に示した導体層203Aと共に図2におけるキャパシタC3を構成する。導体層217Cは、図5に示した導体層217Aおよび図6に示した導体層217Bと共に図2におけるキャパシタC17を構成する。導体層217Cには、誘電体層102,103に形成されたスルーホールを介して、図5に示した導体層217Aが接続されている。誘電体層104には、それぞれ導体層203B,217Cに接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0054】
図8に示した5層目の誘電体層105には、誘電体層104に形成された複数のスルーホールに接続された複数のスルーホールが形成されている。
【0055】
図9に示した6層目の誘電体層106の上面には、インダクタ用導体層303A,305A,306A,307A,361と、導体層151,152,153,154,155が形成されている。導体層361は、インダクタ構成部308A,309Aを有している。導体層303A,305A,306A,307Aは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5,L6,L7の各一部を構成する。インダクタ構成部308A,309Aは、それぞれ、図2におけるインダクタL8,L9の各一部を構成する。
【0056】
導体層303Aには、誘電体層104,105に形成されたスルーホールを介して、図7に示した導体層203Bが接続されている。導体層305Aには、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層142を介して、図4に示した導体層112Bが接続されている。導体層306Aには、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図5に示した導体層122を介して、図4に示した導体層111Bが接続されている。導体層307Aには、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層133を介して、図4に示した導体層114Bが接続されている。導体層361におけるインダクタ構成部308A,309Aの境界近傍の位置には、誘電体層104,105に形成されたスルーホールを介して、図7に示した導体層217Cが接続されている。
【0057】
導体層151,152,153,154には、それぞれ、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層135,137,136,138を介して、図4に示した導体層117A,117B,118A,118Bが接続されている。導体層155には、誘電体層104,105に形成されたスルーホールを介して、図7に示した導体層203Bが接続されている。誘電体層106には、誘電体層106の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0058】
図10に示した7層目の誘電体層107の上面には、インダクタ用導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bと、導体層156,157が形成されている。導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5,L6,L7,L8,L9の各一部を構成する。導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bには、それぞれ、誘電体層106に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層303A,305A,306A,307A、インダクタ構成部308A,309Aが接続されている。
【0059】
導体層156には、誘電体層106に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層155が接続されている。導体層157には、誘電体層106に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層152が接続されている。誘電体層107には、誘電体層107の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0060】
図11に示した8層目の誘電体層108の上面には、インダクタ用導体層303C,305C,306C,307C,308C,309Cが形成されている。導体層303C,305C,306C,307C,308C,309Cは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5,L6,L7,L8,L9の各一部を構成する。導体層303C,305C,306C,307C,308C,309Cには、それぞれ、誘電体層107に形成されたスルーホールを介して、図10に示した導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bが接続されている。誘電体層108には、誘電体層108の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0061】
図12に示した9層目の誘電体層109の上面には、インダクタ用導体層303D,304A,305D,306D,307D,309Dと、導体層158が形成されている。導体層303D,304A,305D,306D,307D,309Dは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L4,L5,L6,L7,L9の各一部を構成する。導体層303D,305D,306D,307D,309Dには、それぞれ、誘電体層108に形成されたスルーホールを介して、図11に示した導体層303C,305C,306C,307C,309Cが接続されている。導体層304Aには、誘電体層103〜108に形成されたスルーホールを介して、図6に示した導体層203Aが接続されている。導体層158には、誘電体層103〜108に形成されたスルーホールを介して、図6に示した導体層141が接続されている。誘電体層109には、誘電体層109の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0062】
図13に示した10層目の誘電体層110の上面には、インダクタ用導体層304B,307E,309E,362と、導体層159が形成されている。導体層362は、インダクタ構成部303E,305Eを有している。導体層304B,307E,309Eは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L7,L9の各一部を構成する。導体層304B,307E,309Eには、それぞれ、誘電体層109に形成されたスルーホールを介して、図12に示した導体層304A,307D,309Dが接続されている。また、導体層307Eには、誘電体層102〜109に形成されたスルーホールを介して、図5に示した導体層204が接続されている。インダクタ構成部303E,305Eは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5の各一部を構成する。インダクタ構成部303E,305Eの各端部近傍の部分には、それぞれ、誘電体層109に形成されたスルーホールを介して、図12に示した導体層303D,305Dが接続されている。導体層159には、誘電体層108,109に形成されたスルーホールを介して、図11に示した導体層308Cが接続されている。誘電体層110には、誘電体層110の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0063】
図14に示した11層目の誘電体層111の上面には、インダクタ用導体層304C,309Fが形成されている。導体層304C,309Fは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L9の各一部を構成する。導体層304C,309Fには、それぞれ、誘電体層110に形成されたスルーホールを介して、図13に示した導体層304B,309Eが接続されている。誘電体層111には、それぞれ導体層304C,309Fに接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0064】
図15に示した12層目の誘電体層112の上面には、インダクタ用導体層304D,309Gが形成されている。導体層304D,309Gは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L9の各一部を構成する。導体層304D,309Gには、それぞれ、誘電体層111に形成されたスルーホールを介して、図14に示した導体層304C,309Fが接続されている。誘電体層112には、それぞれ導体層304D,309Gに接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0065】
図16に示した13層目の誘電体層113の上面には、インダクタ用導体層304E,309Hが形成されている。導体層304E,309Hは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L9の各一部を構成する。導体層304E,309Hには、それぞれ、誘電体層112に形成されたスルーホールを介して、図15に示した導体層304D,309Gが接続されている。誘電体層113には、それぞれ導体層304E,309Hに接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0066】
図17に示した14層目の誘電体層114の上面には、インダクタ用導体層309Iと、導体層160が形成されている。導体層309Iは、図2におけるインダクタL9の一部を構成する。導体層309Iには、誘電体層113に形成されたスルーホールを介して、図16に示した導体層309Hが接続されている。導体層160には、誘電体層106〜113に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層305Aが接続されている。誘電体層114には、それぞれ導体層309I,160に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0067】
図18に示した15層目の誘電体層115には、誘電体層114に形成された複数のスルーホールに接続された複数のスルーホールが形成されている。
【0068】
図19に示した16層目の誘電体層116の上面には、キャパシタ用導体層201,207A,210,218が形成されている。導体層201は、図2におけるキャパシタC1の一部を構成する。導体層201には、誘電体層106〜115に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層303Aが接続されている。導体層207Aは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Aには、誘電体層101〜115に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層143を介して、図4に示した導体層119Dが接続されている。導体層210は、図2におけるキャパシタC10の一部を構成する。導体層210には、誘電体層109〜115に形成されたスルーホールを介して、図12に示した導体層306Dが接続されている。導体層218は、図2におけるキャパシタC18の一部を構成する。導体層218には、誘電体層108〜115に形成されたスルーホールおよび図13に示した導体層159を介して、図11に示した導体層308Cが接続されている。誘電体層116には、それぞれ導体層207A,210,218に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0069】
図20に示した17層目の誘電体層117の上面には、キャパシタ用導体層207B,209,211A,219Aと、導体層161,162,163が形成されている。導体層207Bは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Bには、誘電体層101〜115に形成されたスルーホール、図6に示した導体層141および図12に示した導体層158を介して、図4に示した導体層112Aが接続されている。導体層209は、図19に示した導体層201と共に図2におけるキャパシタC1を構成すると共に、図2におけるキャパシタC9の一部を構成する。導体層209には、誘電体層110〜116に形成されたスルーホールを介して、図13に示した導体層362が接続されている。導体層211Aは、図19に示した導体層210と共に図2におけるキャパシタC10を構成すると共に、図2におけるキャパシタC11の一部を構成する。導体層211Aには、誘電体層106〜116に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層306Aが接続されている。導体層219Aは、図19に示した導体層218と共に図2におけるキャパシタC18を構成すると共に、図2におけるキャパシタC19の一部を構成する。導体層219Aには、誘電体層106〜116に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層361が接続されている。
【0070】
導体層161には、誘電体層113〜116に形成されたスルーホールを介して、図16に示した導体層304Eが接続されている。導体層162には、誘電体層103〜116に形成されたスルーホールを介して、図6に示した導体層132が接続されている。導体層163には、誘電体層106〜116に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層307Aが接続されている。誘電体層117には、誘電体層117の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0071】
図21に示した18層目の誘電体層118の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層171が形成されている。導体層171には、誘電体層101〜117に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層119A,119B,119C,119Dが接続されている。また、導体層171には、誘電体層114〜117に形成されたスルーホールを介して、図17に示した導体層309Iが接続されている。また、導体層171には、誘電体層116,117に形成されたスルーホールを介して、図19に示した導体層207Aが接続されている。誘電体層118には、導体層171に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0072】
図22に示した19層目の誘電体層119の上面には、キャパシタ用導体層202,205,214,219Bと、導体層172,173が形成されている。導体層202は、図2におけるキャパシタC2の一部を構成する。導体層202には、誘電体層117,118に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層209が接続されている。導体層205は、図2におけるキャパシタC5の一部を構成する。導体層205には、誘電体層113〜118に形成されたスルーホールおよび図20に示した導体層161を介して、図16に示した導体層304Eが接続されている。導体層214は、図2におけるキャパシタC14の一部を構成する。導体層214には、誘電体層101〜118に形成されたスルーホール、図6に示した導体層132および図20に示した導体層162を介して、図4に示した導体層114Aが接続されている。また、導体層214には、誘電体層101〜118に形成されたスルーホール、図6に示した導体層135および図9に示した導体層151を介して、図4に示した導体層117Aが接続されている。導体層219Bは、図2におけるキャパシタC19の一部を構成する。導体層219Bには、誘電体層117,118に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層219Aが接続されている。
【0073】
導体層172には、誘電体層106〜118に形成されたスルーホールおよび図20に示した導体層163を介して、図9に示した導体層307Aが接続されている。導体層173には、誘電体層106〜118に形成されたスルーホールおよび図17に示した導体層160を介して、図9に示した導体層305Aが接続されている。誘電体層119には、それぞれ導体層172,173に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0074】
図23に示した20層目の誘電体層120の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層174が形成されている。導体層174には、誘電体層118,119に形成されたスルーホールを介して、図21に示した導体層171が接続されている。誘電体層120には、導体層174に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0075】
図24に示した21層目の誘電体層121の上面には、キャパシタ用導体層206A,207C,211B,216,220が形成されている。導体層206Aは、図2におけるキャパシタC6の一部を構成する。導体層206Aには、誘電体層106〜120に形成されたスルーホール、図17に示した導体層160および図22に示した導体層173を介して、図9に示した導体層305Aが接続されている。導体層207Cは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Cには、誘電体層101〜120に形成されたスルーホール、図6に示した導体層136および図9に示した導体層153を介して、図4に示した導体層118Aが接続されている。また、導体層207Cには、誘電体層117〜120に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層207Bが接続されている。導体層211Bは、図2におけるキャパシタC11の一部を構成する。導体層211Bには、誘電体層117〜120に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層211Aが接続されている。導体層216は、図2におけるキャパシタC16の一部を構成する。導体層216には、誘電体層110〜120に形成されたスルーホールを介して、図13に示した導体層307Eが接続されている。導体層220は、図2におけるキャパシタC20の一部を構成する。導体層220には、誘電体層116〜120に形成されたスルーホールを介して、図19に示した導体層218が接続されている。誘電体層121には、それぞれ導体層206A,207C,220に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0076】
図25に示した22層目の誘電体層122の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層175が形成されている。導体層175には、誘電体層120,121に形成されたスルーホールを介して、図23に示した導体層174が接続されている。誘電体層122には、導体層175に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0077】
図26に示した23層目の誘電体層123の上面には、キャパシタ用導体層206B,207D,208,212,213,215が形成されている。導体層206Bは、図2におけるキャパシタC6の一部を構成する。導体層206Bには、誘電体層121,122に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層206Aが接続されている。導体層207Dは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Dには、誘電体層121,122に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層207Cが接続されている。導体層208は、図2におけるキャパシタC8の一部を構成する。導体層208には、誘電体層101〜122に形成されたスルーホール、図6に示した導体層138および図9に示した導体層154を介して、図4に示した導体層118Bが接続されている。導体層212は、図2におけるキャパシタC12の一部を構成する。導体層212には、誘電体層116〜122に形成されたスルーホールを介して、図19に示した導体層210が接続されている。導体層213は、図2におけるキャパシタC13の一部を構成する。導体層213には、誘電体層106〜122に形成されたスルーホール、図20に示した導体層163および図22に示した導体層172を介して、図9に示した導体層307Aが接続されている。導体層215は、図2におけるキャパシタC15の一部を構成する。導体層215には、誘電体層101〜122に形成されたスルーホール、図6に示した導体層137、図9に示した導体層152および図10に示した導体層157を介して、図4に示した導体層117Bが接続されている。誘電体層123には、それぞれ導体層206B,208,212,213,215に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0078】
図27に示した24層目の誘電体層124の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層176と導体層177が形成されている。導体層176には、誘電体層122,123に形成されたスルーホールを介して、図25に示した導体層175が接続されている。導体層177には、誘電体層121〜123に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層220が接続されている。誘電体層124には、導体層176に接続された複数のスルーホールと、導体層177に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0079】
図28に示したように、誘電体層124の下面、すなわち多層基板10の底面10aには、前述の各端子ANT,Rx1,Rx2,Tx1,Tx2,Vc1,Vc2を構成する導体層と、3つのグランド端子G1〜G3を構成する導体層と、グランド用導体層181〜184とが形成されている。グランド端子G1〜G3は、グランドに接続されるようになっている。
【0080】
アンテナ端子ANTには、誘電体層106〜124に形成されたスルーホール、図9に示した導体層155および図10に示した導体層156を介して、図7に示した導体層203Bが接続されている。送信信号端子Tx1には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層212が接続されている。送信信号端子Tx2には、誘電体層121〜124に形成されたスルーホールおよび図27に示した導体層177を介して、図24に示した導体層220が接続されている。受信信号端子Rx1には、誘電体層121〜124に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層206Aが接続されている。受信信号端子Rx2には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層213が接続されている。制御端子Vc1には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層208が接続されている。制御端子Vc2には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層215が接続されている。グランド端子G1〜G3およびグランド用導体層181〜184には、誘電体層124に形成された複数のスルーホールを介して、図27に示した導体層176が接続されている。
【0081】
キャパシタC1は、導体層201,209と誘電体層116によって構成されている。キャパシタC2は、導体層202,174と誘電体層119によって構成されている。キャパシタC3は、導体層203A,203Bと誘電体層103によって構成されている。キャパシタC4は、導体層204,203Aと誘電体層102によって構成されている。キャパシタC5は、導体層171,205,174と誘電体層118,119によって構成されている。キャパシタC6は、導体層174,206A,175,206B,176と誘電体層120〜123によって構成されている。キャパシタC7は、導体層207A,207B,171,174,207C,175,207D,176と誘電体層116,117,120〜123によって構成されている。キャパシタC8は、導体層175,208,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC9は、導体層209,171と誘電体層117によって構成されている。キャパシタC10は、導体層210,211Aと誘電体層116によって構成されている。キャパシタC11は、導体層211A,171,174,211B,175と誘電体層117,120,121によって構成されている。キャパシタC12は、導体層175,212,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC13は、導体層175,213,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC14は、導体層171,214,174と誘電体層118,119によって構成されている。キャパシタC15は、導体層175,215,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC16は、導体層174,216,175と誘電体層120,121によって構成されている。キャパシタC17は、導体層217A,217B,217Cと誘電体層102,103によって構成されている。キャパシタC18は、導体層218,219Aと誘電体層116によって構成されている。キャパシタC19は、導体層219A,171,219B,174と誘電体層117〜119によって構成されている。キャパシタC20は、導体層174,220,175と誘電体層120,121によって構成されている。
【0082】
インダクタL3は、導体層303A,303B,303C,303Dおよびインダクタ構成部303Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL4は、導体層304A,304B,304C,304D,304Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL5は、導体層305A,305B,305C,305Dおよびインダクタ構成部305Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL6は、導体層306A,306B,306C,306Dと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL7は、導体層307A,307B,307C,307D,307Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL8は、インダクタ構成部308Aおよび導体層308B,308Cと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL9は、インダクタ構成部309Aおよび導体層309B,309C,309D,309E,309F,309G,309H,309Iと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。
【0083】
図1に示したように、多層基板10内には、複数の誘電体層101〜124の積層方向における異なる位置に配置された3つの領域A1,A2,A3が形成されている。領域A1は、誘電体層102〜104とそれらの上に配置された複数の導体層を含んでいる。領域A1内には、キャパシタ用導体層は配置されているが、インダクタ用導体層は配置されていない。領域A2は、誘電体層106〜114とそれらの上に配置された複数の導体層を含んでいる。領域A2内には、インダクタ用導体層は配置されているが、キャパシタ用導体層は配置されていない。領域A3は、誘電体層116〜124とそれらの上に配置された複数の導体層を含んでいる。領域A3内には、キャパシタ用導体層は配置されているが、インダクタ用導体層は配置されていない。従って、多層基板10において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、複数の誘電体層101〜124の積層方向における異なる位置に配置されている。
【0084】
次に、多層基板10の製造方法について説明する。多層基板10の製造方法では、まず、それぞれ後に誘電体層101〜124となる複数のセラミックグリーンシートを作製する。次に、各グリーンシートに、スルーホール用の複数の孔を形成する。次に、各グリーンシートにおいて、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填してスルーホールを形成する。導体層が配置された誘電体層となるべきグリーンシートでは、スルーホールを形成する際に同時に、導体ペーストを用いて導体層を形成する。導体層は、例えばスクリーン印刷によって形成される。次に、スルーホールおよび導体層が形成された複数のグリーンシートを重ね合わせ、熱と圧力を加えて、複数のグリーンシートの積層体を作製する。次に、この積層体において、バインダ等の有機成分を分解させ、更にセラミックと導体を同時に焼成する。次に、積層体の底面および上面において露出する導体部分にめっきを施す。以上の工程により、多層基板10が完成する。
【0085】
本実施の形態に係る高周波用電子部品1は、多層基板10と、この多層基板10に実装された複数の素子とを備えている。多層基板10は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含んでいる。また、多層基板10は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。なお、多層基板10において、グランド用導体層171,174,175,176は、グランドとして用いられると共に、キャパシタを構成するためにも用いられるため、キャパシタ用導体層に含まれる。
【0086】
多層基板10における誘電体層の材料としては、例えばガラスセラミック材料が用いられる。より具体的に説明すると、多層基板10における誘電体層の材料としては、例えば、骨材がアルミナ(Al2O3)であり、ガラス成分が硼珪酸ガラスである硼珪酸ガラス−アルミナ系のガラスセラミック材料が用いられる。この材料において、アルミナと硼珪酸ガラスの総和に対するアルミナと硼珪酸ガラスのそれぞれの割合は、例えば50重量%ずつである。また、この材料における硼珪酸ガラスは、例えば、Si、B、Al、Sr、CaおよびOを含む。
【0087】
以下、本実施の形態に係る高周波用電子部品1の特徴について説明する。本実施の形態では、多層基板10において、インダクタ用導体層の厚みは、キャパシタ用導体層の厚みよりも大きい。
【0088】
既に説明したように、インダクタ用導体層は、インダクタのQ値を大きくするために、厚みは大きい方がよい。一方、キャパシタ用導体層は、インダクタ用導体層に比べて、誘電体層に接する面積が大きいことから、厚みが大きくなると、その導体層を挟む2つの誘電体層の剥離や、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生や、多層基板10における反りの発生といった、多層基板10の構造欠陥が生じやすくなる。そのため、キャパシタ用導体層の厚みは小さい方がよい。
【0089】
本実施の形態によれば、インダクタ用導体層の厚みをキャパシタ用導体層の厚みよりも大きくしたので、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することができる。具体的には、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層の厚みを大きくしてインダクタのQ値を大きくしながら、キャパシタ用導体層の厚みを小さくして、多層基板10の構造欠陥が発生することを防止することができる。
【0090】
なお、インダクタ用導体層の厚みは、上述のようにインダクタのQ値を大きくするためには大きい方がよいが、大きすぎると多層基板10の構造欠陥が発生しやすくなる。また、移動体通信用の周波数帯域で使用される本実施の形態に係る高周波用電子部品では、表皮効果により、電流は導体層の表面から2〜3μmまでの深さの範囲を通るが、導体層の表面の凹凸も考慮すると、導体層の厚みとしては、8μm以上は必要である。これらのことを考慮すると、インダクタ用導体層の厚みは、8〜30μmの範囲内であることが好ましい。また、キャパシタ用導体層の厚みは、上述のように多層基板10の構造欠陥が発生することを防止するためには小さい方がよい。しかし、キャパシタ用導体層の厚みが小さすぎると、キャパシタ用導体層に網目状の孔が開き、キャパシタのQ値が小さくなると共にキャパシタ用導体層を安定して形成することが困難になる。このことを考慮すると、キャパシタ用導体層の厚みは、2〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0091】
なお、キャパシタ用導体層のうち、導体層171,174,175,176のように、誘電体層の上面のほぼ全面に形成され、グランドとして使用される導体層の厚みは、グランドとして使用されないキャパシタ用導体層の厚みよりも小さくすることが好ましい。
【0092】
また、本実施の形態では、多層基板10において、キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含む。金属材料としては、例えばAgまたはCuが用いられる。ガラス成分は、例えば、CaO−Al2O3−SiO2系のガラスを含む。本実施の形態では、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。
【0093】
前述のように、多層基板10の導体層は導体ペーストを用いて形成される。本実施の形態では、キャパシタ用導体層を形成するためのキャパシタ用導体ペーストは、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層を形成するためのインダクタ用導体ペーストは、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含む。そして、インダクタ用導体ペーストにおける金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体ペーストにおける金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。
【0094】
本実施の形態において用いられる導体ペーストは、金属材料としての金属粉末とガラス成分としてのガラスフリットのうち少なくとも金属粉末を、有機ビヒクル中に分散させたものである。導体ペーストにおける金属材料は、導体層における金属材料と同じものであり、例えばAgまたはCuが用いられる。導体ペーストにおけるガラス成分は、導体層におけるガラス成分と同じであり、例えば、CaO−Al2O3−SiO2系のガラスを含む。導体ペーストは、MnO2、ZrO2等、導体の焼結を抑制する材料を含んでいてもよい。
【0095】
1重量%以下の少量のMnO2をインダクタ用導体ペーストに添加しても、MnO2は、誘電体層となるセラミックグリーンシートに拡散するため、導体の焼結抑制以外の影響は及ぼさない。そのため、MnO2は、インダクタ用導体ペーストの添加剤としては適している。MnO2をインダクタ用導体ペーストに添加した場合には、インダクタ用導体層の周辺における誘電体層にMnO2が存在する。この場合、誘電体層中において、インダクタ用導体層の周辺におけるMnO2の濃度は、他の部分におけるMnO2の濃度よりも高くなる。
【0096】
また、1〜5重量%のZrO2をキャパシタ用導体ペーストに添加した場合には、ZrO2粒子はキャパシタ用導体層に残るため、キャパシタ用導体層は、分散されたZrO2粒子を含むことになる。このZrO2粒子は、導体の焼結抑制の効果の他に、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生を防止する効果も発揮する。
【0097】
既に説明したように、インダクタ用導体層は、インダクタのQ値を大きくするために、抵抗値は小さい方がよい。導体層に含まれるガラス成分の割合が小さい方が、導体層の抵抗値が小さくなるため、インダクタ用導体層では、ガラス成分の割合は小さい方がよい。また、インダクタ用導体層では、その断面における輪郭が矩形であるよりも円形に近い方が、表皮効果の影響により、インダクタのQ値が大きくなる。そのため、焼成時に生じる導体層の表面の曲面化は、インダクタ用導体層では、インダクタのQ値が大きくなるため好ましい。導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、導体の焼結が抑制されるため、導体層の表面の曲面化が妨げられる。そのため、この点からも、インダクタ用導体層では、ガラス成分の割合は小さい方がよい。
【0098】
一方、キャパシタ用導体層では、その近傍において所望の電界強度が安定して得られるように、厚みを均一にすると共に、誘電体層との接着性を良好にする必要がある。導体層と誘電体層との接着性を良好にするためには、導体ペースト中のガラス成分の割合は大きい方がよい。従って、キャパシタ用導体層では、ガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0099】
また、キャパシタ用導体層では、前述の導体層の表面の曲面化が生じると、既に説明したように、以下のような種々の問題が発生する。まず、導体層の厚みの均一性が劣化する。また、多層基板中に気孔が発生することにより、導体層近傍において所望の電界強度が得られなくなり、その結果、キャパシタンスの低下やQ値の低下が生じる。また、多層基板の構造欠陥が生じやすくなる。導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、導体層の表面の曲面化が妨げられことから、上記の種々の問題が発生することを防止するためにも、キャパシタ用導体層では、ガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0100】
本実施の形態では、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。従って、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することができる。具体的には、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合を0にするか、小さくすることにより、インダクタ用導体層の抵抗値を小さくしてインダクタのQ値を大きくすることができる。同時に、キャパシタ用導体層におけるガラス成分の割合を大きくして、キャパシタ用導体層の厚みを均一にすると共に、キャパシタ用導体層と誘電体層との接着性をよくして、キャパシタ用導体層の近傍において所望の電界強度が安定して得られるようにすることができる。また、キャパシタ用導体層におけるガラス成分の割合を大きくすることにより、キャパシタ用導体層の表面の曲面化に伴う上述の種々の問題の発生を防止することができる。
【0101】
なお、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、上述の理由から大きい方がよいが、大きすぎると良好な導体層を形成することができなくなる。このことを考慮すると、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であることが好ましい。また、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、上述のように、0であるか、キャパシタ用導体ペーストにおける金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さいことから、0〜3重量%の範囲内であることが好ましい。
【0102】
なお、本実施の形態では、多層基板10において、インダクタ用導体層でもキャパシタ用導体層でもない導体層のうち、インダクタ用導体層と同一面上に配置された導体層についてはインダクタ用導体層と同じ厚みおよび材料とし、キャパシタ用導体層と同一面上に配置された導体層についてはキャパシタ用導体層と同じ厚みおよび材料としている。また、インダクタ用導体層でもキャパシタ用導体層でもなく、インダクタ用導体層ともキャパシタ用導体層とも同一面上に配置されていない導体層については、キャパシタ用導体層と同じ厚みおよび材料としている。
【0103】
また、本実施の形態では、多層基板10内において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されている。これにより、容易に、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層との間で、厚みおよびガラス成分の割合を異ならせることができる。
【0104】
また、本実施の形態では、多層基板10内に設けられたインダクタL3〜L9は、いずれも、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されている。そのため、本実施の形態によれば、1つのインダクタが1つの導体層によって構成される場合に比べて、1つのインダクタ用導体層が誘電体層に接する面積を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層の厚みを大きくしたり、インダクタ用導体層において表面の曲面化を生じさせたりしても、多層基板10の構造欠陥が生じることを防止することができる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明は、携帯電話機におけるフロントエンドモジュールとして用いられる高周波用電子部品に限らず、低温同時焼成セラミック多層基板と、この低温同時焼成セラミック多層基板内に設けられた1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタとを備えた高周波用電子部品全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品の側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品の回路構成を示す回路図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品の平面図である。
【図4】図3に示した多層基板における1層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図5】図3に示した多層基板における2層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図6】図3に示した多層基板における3層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図7】図3に示した多層基板における4層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図8】図3に示した多層基板における5層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図9】図3に示した多層基板における6層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図10】図3に示した多層基板における7層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図11】図3に示した多層基板における8層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図12】図3に示した多層基板における9層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図13】図3に示した多層基板における10層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図14】図3に示した多層基板における11層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図15】図3に示した多層基板における12層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図16】図3に示した多層基板における13層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図17】図3に示した多層基板における14層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図18】図3に示した多層基板における15層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図19】図3に示した多層基板における16層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図20】図3に示した多層基板における17層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図21】図3に示した多層基板における18層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図22】図3に示した多層基板における19層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図23】図3に示した多層基板における20層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図24】図3に示した多層基板における21層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図25】図3に示した多層基板における22層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図26】図3に示した多層基板における23層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図27】図3に示した多層基板における24層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図28】図3に示した多層基板における24層目の誘電体層およびその下の導体層を示す平面図である。
【符号の説明】
【0107】
1…高周波用電子部品、10…多層基板、A1,A2,A3…領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温同時焼成セラミック多層基板を用いて構成された高周波用電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波用電子部品には、低温同時焼成セラミック(以下、LTCCとも記す。)多層基板を用いて構成されたものがある。LTCC多層基板は、後に誘電体層となるセラミックグリーンシート上に所望のパターンの導体層を形成し、このように導体層が形成された複数のグリーンシートを積層し、セラミックと導体層を同時に焼成することによって製造される。導体層は、例えば、導体ペーストを用いてスクリーン印刷によって形成される。また、LTCC多層基板を用いて構成された高周波用電子部品には、それぞれLTCC多層基板内の導体層を用いて構成されたインダクタとキャパシタとを有するものがある。
【0003】
一般的に、LTCC多層基板の導体層を形成するための導体ペーストは、金属粉末とガラスフリットとを有機ビヒクル中に分散させたものである。導体層において、ガラスフリットによるガラス成分は、導体層と誘電体層との接着力を大きくする機能を有する。
【0004】
特許文献1には、BaTiO3系誘電体からなる誘電体層と、その上下主面にそれぞれ形成された電極層とを備えたLTCC多層基板において、焼成時に誘電体層と電極層との界面はがれが発生するのをなくすために、チタン酸バリウム結晶を析出する結晶化ガラスを含む電極ペーストを用いて電極層を形成する技術が記載されている。
【0005】
特許文献2には、高アスペスト比の導体パターンを有する信頼性の高い電子部品を実現するために、絶縁性の基板の上に導体パターンを設け、この導体パターンの表面にめっきによる金属膜を設け、この金属膜を酸化して、導体パターンの表面に金属酸化物層を設ける技術が記載されている。また、特許文献2には、導体パターンを形成している基板の表面の全面に金属酸化物層を形成することにより、例えば、LとCの複合部品などのように微細な導体パターンが必要でない箇所において、微細な導体パターンの電極材料とは異なる導体抵抗値の高い電極材料を用いた場合であっても、信頼性に優れた複合部品などの電子部品を実現できることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−100915号公報
【特許文献2】特開2005−166873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、LTCC多層基板を用いて構成された高周波用電子部品では、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、同じ材料(導体ペースト)を用いて、同じ厚みになるように形成されていた。しかしながら、以下で詳しく説明するように、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層では、特性および信頼性の面における好ましい態様が異なることから、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層を同じ材料を用いて同じ厚みになるように形成する場合には、以下のような問題が生じていた。
【0008】
まず、インダクタ用導体層は、インダクタのQ値を大きくするために、厚みは大きい方がよく、抵抗値は小さい方がよい。導体層に含まれるガラス成分の割合が小さい方が、導体層の抵抗値が小さくなるため、インダクタ用導体層では、ガラス成分の割合は小さい方がよい。
【0009】
また、インダクタ用導体層では、その断面における輪郭が矩形であるよりも円形に近い方が、表皮効果の影響により、インダクタのQ値が大きくなる。一般的に、LTCC多層基板では、導体層を構成する金属材料として、AgやCuのように高周波特性に優れた金属材料が用いられる。しかし、このような高周波特性に優れた金属材料では、一般的に、セラミック材料に比べて焼成温度がはるかに低い。そのため、LTCC多層基板用のグリーンシートの材料としては、焼成温度を低くするために、例えばアルミナ(Al2O3)にガラスを混ぜたものが用いられる。それでも、導体層にAgを用いた場合、グリーンシートと導体層は、Agの融点付近の850〜900℃程度の温度で焼成される。そのため、導体層を構成する金属材料としてAgを用いた場合には、導体層の焼成時に、Agよりなる導体層の一部が溶融状態となり、表面張力により導体層の表面が滑らかな曲面となる。このような導体層の表面の曲面化は、インダクタ用導体層では、インダクタのQ値が大きくなるため好ましい。ここで、導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、Agの焼結が妨げられて、導体層の表面の曲面化が妨げられる。そのため、インダクタ用導体層では、導体層の表面の曲面化を生じさせるために、ガラス成分の割合は小さい方がよい。
【0010】
一方、キャパシタ用導体層は、インダクタ用導体層に比べて、誘電体層に接する面積が大きいことから、厚みが大きくなると、その導体層を挟む2つの誘電体層の剥離や、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生や、多層基板における反りの発生といった、多層基板の構造欠陥が生じやすくなる。そのため、キャパシタ用導体層では、厚みは小さい方がよい。
【0011】
また、キャパシタ用導体層では、その近傍において所望の電界強度が安定して得られるように、厚みを均一にすると共に、誘電体層との接着性を良好にする必要がある。導体層と誘電体層との接着性を良好にするためには、導体ペースト中のガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0012】
また、キャパシタ用導体層では、前述の導体層の表面の曲面化が生じると、以下のような種々の問題が発生する。まず、導体層の厚みの均一性が劣化する。また、導体層の厚みが大きくなるため、多層基板中に気孔が発生しやすくなる。また、キャパシタ用導体層は、通常の焼結でも、収縮により網目状になりやすい。このような導体層において、更に表面の曲面化が生じると、多層基板中に発生する気孔の大きさが著しく大きくなる。これにより、導体層の近傍において所望の電界強度が得られなくなり、その結果、キャパシタンスの低下やQ値の低下が生じる。また、キャパシタ用導体層では、誘電体層に接する面積が大きいことから、導体層の表面の曲面化が生じると、厚み方向に大きく膨張し、面に平行な方向に大きく収縮する。そのため、導体層を挟む2つの誘電体層の剥離や、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生や、多層基板における反りの発生といった、多層基板の構造欠陥が生じやすくなる。前述のように、導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、導体層の表面の曲面化が妨げられる。そのため、これらの点からも、キャパシタ用導体層では、ガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0013】
なお、インダクタ用導体層は、キャパシタ用導体層に比べて、誘電体層に接する面積が小さいことから、厚みが大きいことや導体層の表面の曲面化によって多層基板の構造欠陥が生じる可能性は小さい。
【0014】
このように、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層では特性および信頼性の面における好ましい態様が異なる。そのため、LTCC多層基板において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層を同じ材料を用いて同じ厚みになるように形成する場合には、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することができず、LTCC多層基板を用いた高周波用電子部品の特性および信頼性を向上させることが困難である。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層とを含む低温同時焼成セラミック多層基板を用いて構成された高周波用電子部品であって、特性および信頼性を向上させることができるようにした高周波用電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1および第2の高周波用電子部品は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板を備えている。低温同時焼成セラミック多層基板は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。
【0017】
本発明の第1の高周波用電子部品では、インダクタ用導体層の厚みは、キャパシタ用導体層の厚みよりも大きい。これにより、本発明の第1の高周波用電子部品では、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することが可能になる。
【0018】
本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層の厚みは、8〜30μmの範囲内であり、キャパシタ用導体層の厚みは、2〜20μmの範囲内であってもよい。
【0019】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含み、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さくてもよい。この場合、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であってもよい。
【0020】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在していてもよい。また、本発明の第1の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいてもよい。
【0021】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、複数の導体層は、グランドとして使用される導体層を含み、このグランドとして使用される導体層の厚みは、グランドとして使用されないキャパシタ用導体層の厚みよりも小さくてもよい。
【0022】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていてもよい。
【0023】
また、本発明の第1の高周波用電子部品において、インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていてもよい。
【0024】
本発明の第2の高周波用電子部品では、キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含んでいる。インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。これにより、本発明の第2の高周波用電子部品では、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することが可能になる。
【0025】
本発明の第2の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であってもよい。
【0026】
また、本発明の第2の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在していてもよい。また、本発明の第2の高周波用電子部品において、キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいてもよい。
【0027】
また、本発明の第2の高周波用電子部品において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていてもよい。
【0028】
また、本発明の第2の高周波用電子部品において、インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1または第2の高周波用電子部品によれば、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することが可能になり、その結果、特性および信頼性を向上させることが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品は、第1および第2の周波数帯域に対応可能な携帯電話機におけるフロントエンドモジュールとして用いられるものである。第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域よりも高周波側に存在する。第1の周波数帯域は、AGSM(American Global System for Mobile Communications)方式で使用される周波数帯域と、EGSM(Extended Global System for Mobile Communications)方式で使用される周波数帯域の少なくとも一方を含んでいてもよい。第2の周波数帯域は、DCS(Digital Cellular System)方式で使用される周波数帯域と、PCS(Personal Communications Service)方式で使用される周波数帯域の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0031】
AGSM方式の送信信号の周波数帯域は824MHz〜849MHzである。AGSM方式の受信信号の周波数帯域は869MHz〜894MHzである。EGSM方式の送信信号の周波数帯域は880MHz〜915MHzである。EGSM方式の受信信号の周波数帯域は925MHz〜960MHzである。DCS方式の送信信号の周波数帯域は1710MHz〜1785MHzである。DCS方式の受信信号の周波数帯域は1805MHz〜1880MHzである。PCS方式の送信信号の周波数帯域は1850MHz〜1910MHzである。PCS方式の受信信号の周波数帯域は1930MHz〜1990MHzである。
【0032】
図1は、本実施の形態に係る高周波用電子部品の側面図である。本実施の形態に係る高周波用電子部品1は、低温同時焼成セラミック多層基板(以下、単に多層基板と記す。)10と、この多層基板10に実装された複数の素子とを備えている。多層基板10は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含んでいる。また、多層基板10は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。多層基板10の複数の誘電体層および複数の導体層については、後で詳しく説明する。
【0033】
また、多層基板10は、複数の誘電体層の積層方向における両側に配置された底面10aおよび上面10bと、底面10aと上面10bとを連結する4つの側面とを有し、直方体形状をなしている。多層基板10に実装された複数の素子は、上面10bに搭載されている。この複数の素子についても、後で詳しく説明する。
【0034】
次に、図2の回路図を参照して、本実施の形態に係る高周波用電子部品1の回路構成について説明する。図2に示したように、本実施の形態に係る高周波用電子部品1は、アンテナ端子ANTと、2つの受信信号端子Rx1,Rx2と、2つの送信信号端子Tx1,Tx2と、2つの制御端子Vc1,Vc2とを備えている。アンテナ端子ANTは、アンテナ20に接続される。受信信号端子Rx1は、第1の周波数帯域の受信信号を出力する。受信信号端子Rx2は、第2の周波数帯域の受信信号を出力する。送信信号端子Tx1には、第1の周波数帯域の送信信号が入力される。送信信号端子Tx2には、第2の周波数帯域の送信信号が入力される。制御端子Vc1には、第1の制御信号が入力される。制御端子Vc2には、第2の制御信号が入力される。端子ANT,Rx1,Rx2,Tx1,Tx2,Vc1,Vc2は、外部回路に接続されるようになっている。
【0035】
高周波用電子部品1は、更に、ダイプレクサ2と、2つのスイッチ回路3,5と、2つのローパスフィルタ(以下、LPFとも記す。)4,6とを備えている。ダイプレクサ2は、アンテナ端子ANTおよびスイッチ回路3,5に接続されている。
【0036】
スイッチ回路3は、3つのポートP1〜P3を有している。ポートP1はダイプレクサ2に接続されている。ポートP2はLPF4に接続されている。ポートP3は受信信号端子Rx1に接続されている。また、スイッチ回路3は、制御端子Vc1に接続されている。そして、スイッチ回路3は、制御端子Vc1からの第1の制御信号の状態に応じて、ポートP2またはポートP3を選択的にポートP1に接続する。
【0037】
スイッチ回路5は、3つのポートP4〜P6を有している。ポートP4はダイプレクサ2に接続されている。ポートP5はLPF6に接続されている。ポートP6は受信信号端子Rx2に接続されている。また、スイッチ回路5は、制御端子Vc2に接続されている。そして、スイッチ回路5は、制御端子Vc2からの第2の制御信号の状態に応じて、ポートP5またはポートP6を選択的にポートP4に接続する。
【0038】
LPF4は、スイッチ回路3のポートP2と送信信号端子Tx1との間に挿入されている。LPF4は、第1の周波数帯域の送信信号に含まれる高調波成分を除去する。LPF6は、スイッチ回路5のポートP5と送信信号端子Tx2との間に挿入されている。LPF6は、第2の周波数帯域の送信信号に含まれる高調波成分を除去する。
【0039】
ダイプレクサ2は、インダクタL3,L4と、キャパシタC1,C2,C3,C4,C5とを有している。インダクタL3およびキャパシタC1,C3の各一端はアンテナ端子ANTに接続されている。インダクタL3およびキャパシタC1の各他端はスイッチ回路3のポートP1に接続されている。キャパシタC2の一端はキャパシタC1の他端に接続されている。キャパシタC2の他端は接地されている。キャパシタC4の一端はキャパシタC3の他端に接続されている。キャパシタC4の他端はスイッチ回路5のポートP4に接続されている。インダクタL4の一端はキャパシタC3の他端に接続されている。インダクタL4の他端は、キャパシタC5を介して接地されている。
【0040】
インダクタL3およびキャパシタC1,C2は、第1の周波数帯域の信号を通過させ、第2の周波数帯域の信号を遮断するローパスフィルタを構成する。キャパシタC3,C4,C5およびインダクタL4は、第2の周波数帯域の信号を通過させ、第1の周波数帯域の信号を遮断するバンドパスフィルタを構成する。
【0041】
スイッチ回路3は、ポートP1〜P3と、インダクタL1,L5と、キャパシタC6,C7,C8,C9と、抵抗器R2と、ダイオードD1,D2とを有している。インダクタL1およびキャパシタC9の各一端およびダイオードD1のアノードは、ポートP1に接続されている。キャパシタC9の他端は接地されている。ダイオードD1のカソードおよびインダクタL1の一端は、ポートP2に接続されている。インダクタL1の他端は接地されている。インダクタL5の他端、ダイオードD2のカソードおよびキャパシタC6の一端は、ポートP3に接続されている。ダイオードD2のアノードは、抵抗器R2の一端に接続されていると共に、キャパシタC7を介して接地されている。抵抗器R2の他端は制御端子Vc1に接続されていると共に、キャパシタC8を介して接地されている。キャパシタC6の他端は接地されている。
【0042】
LPF4は、インダクタL6と、キャパシタC10,C11,C12とを有している。インダクタL6およびキャパシタC10,C12の各一端は、送信信号端子Tx1に接続されている。インダクタL6およびキャパシタC10の各他端およびキャパシタC11の一端は、スイッチ回路3のポートP2に接続されている。キャパシタC11,C12の各他端は接地されている。
【0043】
スイッチ回路5は、ポートP4〜P6と、インダクタL2,L7,L9と、キャパシタC13,C14,C15,C16,C17と、抵抗器R1と、ダイオードD3,D4とを有している。インダクタL2,L7およびキャパシタC16の各一端およびダイオードD3のアノードは、ポートP4に接続されている。キャパシタC16の他端は接地されている。ダイオードD3のカソードおよびインダクタL9の一端は、ポートP5に接続されている。インダクタL9の他端は接地されている。インダクタL7の他端、ダイオードD4のカソードおよびキャパシタC13の一端は、ポートP6に接続されている。ダイオードD4のアノードは、抵抗器R1の一端に接続されていると共に、キャパシタC14を介して接地されている。抵抗器R1の他端は制御端子Vc2に接続されていると共に、キャパシタC15を介して接地されている。キャパシタC13の他端は接地されている。キャパシタC17の一端はインダクタL2の他端に接続されている。キャパシタC17の他端はポートP5に接続されている。
【0044】
LPF6は、インダクタL8と、キャパシタC18,C19,C20とを有している。インダクタL8およびキャパシタC18,C20の各一端は、送信信号端子Tx2に接続されている。インダクタL8およびキャパシタC18の各他端およびキャパシタC19の一端は、スイッチ回路5のポートP5に接続されている。キャパシタC19,C20の各他端は接地されている。
【0045】
高周波用電子部品1では、アンテナ端子ANTに入力された第1の周波数帯域の受信信号は、ダイプレクサ2およびスイッチ回路3を通過して、受信信号端子Rx1に送られる。アンテナ端子ANTに入力された第2の周波数帯域の受信信号は、ダイプレクサ2およびスイッチ回路5を通過して、受信信号端子Rx2に送られる。送信信号端子Tx1に入力された第1の周波数帯域の送信信号は、LPF4、スイッチ回路3およびダイプレクサ2を通過して、アンテナ端子ANTに送られる。送信信号端子Tx2に入力された第2の周波数帯域の送信信号は、LPF6、スイッチ回路5およびダイプレクサ2を通過して、アンテナ端子ANTに送られる。
【0046】
図3は、高周波用電子部品1の平面図である。図3に示したように、高周波用電子部品1を構成する素子のうち、インダクタL1,L2、ダイオードD1,D2,D3,D4および抵抗器R1,R2は多層基板10の上面10bに搭載されている。他の素子は、多層基板10内の導体層を用いて構成されている。多層基板10の底面10aには、端子ANT,Rx1,Rx2,Tx1,Tx2,Vc1,Vc2と、後述する複数のグランド端子が配置されている。
【0047】
次に、図4ないし図28を参照して、多層基板10の構成の一例について説明する。図4ないし図27は、それぞれ、上から1層目ないし24層目(最下層)の誘電体層の上面を示している。図28は、上から24層目の誘電体層およびその下の導体層を、上から見た状態で表したものである。図4ないし図27において、丸印はスルーホールを表している。
【0048】
図4に示した1層目の誘電体層101の上面には、導体層111A,111B,112A,112B,113A,113B,114A,114B,115A,115B,116A,116B,117A,117B,118A,118B,119A,119B,119C,119Dが形成されている。
【0049】
ダイオードD1のアノードは導体層111Aに接続され、ダイオードD1のカソードは導体層111Bに接続されている。ダイオードD2のアノードは導体層112Aに接続され、ダイオードD2のカソードは導体層112Bに接続されている。ダイオードD3のアノードは導体層113Aに接続され、ダイオードD3のカソードは導体層113Bに接続されている。ダイオードD4のアノードは導体層114Aに接続され、ダイオードD4のカソードは導体層114Bに接続されている。インダクタL1の一端は導体層115Aに接続され、インダクタL1の他端は導体層115Bに接続されている。インダクタL2の一端は導体層116Aに接続され、インダクタL2の他端は導体層116Bに接続されている。抵抗器R1の一端は導体層117Aに接続され、抵抗器R1の他端は導体層117Bに接続されている。抵抗器R2の一端は導体層118Aに接続され、抵抗器R2の他端は導体層118Bに接続されている。誘電体層101には、上記各導体層に接続された複数のスルーホールが形成されている。
【0050】
図5に示した2層目の誘電体層102の上面には、キャパシタ用導体層204,217Aと、導体層121,122が形成されている。キャパシタ用導体層204は、図2におけるキャパシタC4の一部を構成する。導体層204には、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層113A,116Bが接続されている。キャパシタ用導体層217Aは、図2におけるキャパシタC17の一部を構成する。導体層217Aには、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層113Bが接続されている。
【0051】
導体層121には、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層115A,119Cが接続されている。導体層122には、誘電体層101に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層111B,115Bが接続されている。誘電体層102には、それぞれ導体層204,217A,121,122に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0052】
図6に示した3層目の誘電体層103の上面には、キャパシタ用導体層203A,217Bと、導体層131〜143が形成されている。導体層203Aは、図5に示した導体層204と共に図2におけるキャパシタC4を構成すると共に、図2におけるキャパシタC3の一部を構成する。導体層217Bは、図2におけるキャパシタC17の他の一部を構成する。導体層217Bには、誘電体層101,102に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層116Aが接続されている。導体層131〜143には、それぞれ、誘電体層101,102に形成されたスルーホールを介して、図4に示した119A,114A,114B,119B,117A,118A,117B,118B,119C,111A,112A,112B,119Dが接続されている。誘電体層103には、それぞれ導体層203A,131〜143に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0053】
図7に示した4層目の誘電体層104の上面には、キャパシタ用導体層203B,217Cが形成されている。導体層203Bは、図6に示した導体層203Aと共に図2におけるキャパシタC3を構成する。導体層217Cは、図5に示した導体層217Aおよび図6に示した導体層217Bと共に図2におけるキャパシタC17を構成する。導体層217Cには、誘電体層102,103に形成されたスルーホールを介して、図5に示した導体層217Aが接続されている。誘電体層104には、それぞれ導体層203B,217Cに接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0054】
図8に示した5層目の誘電体層105には、誘電体層104に形成された複数のスルーホールに接続された複数のスルーホールが形成されている。
【0055】
図9に示した6層目の誘電体層106の上面には、インダクタ用導体層303A,305A,306A,307A,361と、導体層151,152,153,154,155が形成されている。導体層361は、インダクタ構成部308A,309Aを有している。導体層303A,305A,306A,307Aは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5,L6,L7の各一部を構成する。インダクタ構成部308A,309Aは、それぞれ、図2におけるインダクタL8,L9の各一部を構成する。
【0056】
導体層303Aには、誘電体層104,105に形成されたスルーホールを介して、図7に示した導体層203Bが接続されている。導体層305Aには、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層142を介して、図4に示した導体層112Bが接続されている。導体層306Aには、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図5に示した導体層122を介して、図4に示した導体層111Bが接続されている。導体層307Aには、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層133を介して、図4に示した導体層114Bが接続されている。導体層361におけるインダクタ構成部308A,309Aの境界近傍の位置には、誘電体層104,105に形成されたスルーホールを介して、図7に示した導体層217Cが接続されている。
【0057】
導体層151,152,153,154には、それぞれ、誘電体層101〜105に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層135,137,136,138を介して、図4に示した導体層117A,117B,118A,118Bが接続されている。導体層155には、誘電体層104,105に形成されたスルーホールを介して、図7に示した導体層203Bが接続されている。誘電体層106には、誘電体層106の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0058】
図10に示した7層目の誘電体層107の上面には、インダクタ用導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bと、導体層156,157が形成されている。導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5,L6,L7,L8,L9の各一部を構成する。導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bには、それぞれ、誘電体層106に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層303A,305A,306A,307A、インダクタ構成部308A,309Aが接続されている。
【0059】
導体層156には、誘電体層106に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層155が接続されている。導体層157には、誘電体層106に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層152が接続されている。誘電体層107には、誘電体層107の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0060】
図11に示した8層目の誘電体層108の上面には、インダクタ用導体層303C,305C,306C,307C,308C,309Cが形成されている。導体層303C,305C,306C,307C,308C,309Cは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5,L6,L7,L8,L9の各一部を構成する。導体層303C,305C,306C,307C,308C,309Cには、それぞれ、誘電体層107に形成されたスルーホールを介して、図10に示した導体層303B,305B,306B,307B,308B,309Bが接続されている。誘電体層108には、誘電体層108の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0061】
図12に示した9層目の誘電体層109の上面には、インダクタ用導体層303D,304A,305D,306D,307D,309Dと、導体層158が形成されている。導体層303D,304A,305D,306D,307D,309Dは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L4,L5,L6,L7,L9の各一部を構成する。導体層303D,305D,306D,307D,309Dには、それぞれ、誘電体層108に形成されたスルーホールを介して、図11に示した導体層303C,305C,306C,307C,309Cが接続されている。導体層304Aには、誘電体層103〜108に形成されたスルーホールを介して、図6に示した導体層203Aが接続されている。導体層158には、誘電体層103〜108に形成されたスルーホールを介して、図6に示した導体層141が接続されている。誘電体層109には、誘電体層109の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0062】
図13に示した10層目の誘電体層110の上面には、インダクタ用導体層304B,307E,309E,362と、導体層159が形成されている。導体層362は、インダクタ構成部303E,305Eを有している。導体層304B,307E,309Eは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L7,L9の各一部を構成する。導体層304B,307E,309Eには、それぞれ、誘電体層109に形成されたスルーホールを介して、図12に示した導体層304A,307D,309Dが接続されている。また、導体層307Eには、誘電体層102〜109に形成されたスルーホールを介して、図5に示した導体層204が接続されている。インダクタ構成部303E,305Eは、それぞれ、図2におけるインダクタL3,L5の各一部を構成する。インダクタ構成部303E,305Eの各端部近傍の部分には、それぞれ、誘電体層109に形成されたスルーホールを介して、図12に示した導体層303D,305Dが接続されている。導体層159には、誘電体層108,109に形成されたスルーホールを介して、図11に示した導体層308Cが接続されている。誘電体層110には、誘電体層110の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0063】
図14に示した11層目の誘電体層111の上面には、インダクタ用導体層304C,309Fが形成されている。導体層304C,309Fは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L9の各一部を構成する。導体層304C,309Fには、それぞれ、誘電体層110に形成されたスルーホールを介して、図13に示した導体層304B,309Eが接続されている。誘電体層111には、それぞれ導体層304C,309Fに接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0064】
図15に示した12層目の誘電体層112の上面には、インダクタ用導体層304D,309Gが形成されている。導体層304D,309Gは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L9の各一部を構成する。導体層304D,309Gには、それぞれ、誘電体層111に形成されたスルーホールを介して、図14に示した導体層304C,309Fが接続されている。誘電体層112には、それぞれ導体層304D,309Gに接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0065】
図16に示した13層目の誘電体層113の上面には、インダクタ用導体層304E,309Hが形成されている。導体層304E,309Hは、それぞれ、図2におけるインダクタL4,L9の各一部を構成する。導体層304E,309Hには、それぞれ、誘電体層112に形成されたスルーホールを介して、図15に示した導体層304D,309Gが接続されている。誘電体層113には、それぞれ導体層304E,309Hに接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0066】
図17に示した14層目の誘電体層114の上面には、インダクタ用導体層309Iと、導体層160が形成されている。導体層309Iは、図2におけるインダクタL9の一部を構成する。導体層309Iには、誘電体層113に形成されたスルーホールを介して、図16に示した導体層309Hが接続されている。導体層160には、誘電体層106〜113に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層305Aが接続されている。誘電体層114には、それぞれ導体層309I,160に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0067】
図18に示した15層目の誘電体層115には、誘電体層114に形成された複数のスルーホールに接続された複数のスルーホールが形成されている。
【0068】
図19に示した16層目の誘電体層116の上面には、キャパシタ用導体層201,207A,210,218が形成されている。導体層201は、図2におけるキャパシタC1の一部を構成する。導体層201には、誘電体層106〜115に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層303Aが接続されている。導体層207Aは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Aには、誘電体層101〜115に形成されたスルーホールおよび図6に示した導体層143を介して、図4に示した導体層119Dが接続されている。導体層210は、図2におけるキャパシタC10の一部を構成する。導体層210には、誘電体層109〜115に形成されたスルーホールを介して、図12に示した導体層306Dが接続されている。導体層218は、図2におけるキャパシタC18の一部を構成する。導体層218には、誘電体層108〜115に形成されたスルーホールおよび図13に示した導体層159を介して、図11に示した導体層308Cが接続されている。誘電体層116には、それぞれ導体層207A,210,218に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0069】
図20に示した17層目の誘電体層117の上面には、キャパシタ用導体層207B,209,211A,219Aと、導体層161,162,163が形成されている。導体層207Bは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Bには、誘電体層101〜115に形成されたスルーホール、図6に示した導体層141および図12に示した導体層158を介して、図4に示した導体層112Aが接続されている。導体層209は、図19に示した導体層201と共に図2におけるキャパシタC1を構成すると共に、図2におけるキャパシタC9の一部を構成する。導体層209には、誘電体層110〜116に形成されたスルーホールを介して、図13に示した導体層362が接続されている。導体層211Aは、図19に示した導体層210と共に図2におけるキャパシタC10を構成すると共に、図2におけるキャパシタC11の一部を構成する。導体層211Aには、誘電体層106〜116に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層306Aが接続されている。導体層219Aは、図19に示した導体層218と共に図2におけるキャパシタC18を構成すると共に、図2におけるキャパシタC19の一部を構成する。導体層219Aには、誘電体層106〜116に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層361が接続されている。
【0070】
導体層161には、誘電体層113〜116に形成されたスルーホールを介して、図16に示した導体層304Eが接続されている。導体層162には、誘電体層103〜116に形成されたスルーホールを介して、図6に示した導体層132が接続されている。導体層163には、誘電体層106〜116に形成されたスルーホールを介して、図9に示した導体層307Aが接続されている。誘電体層117には、誘電体層117の上面に形成された複数の導体層に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0071】
図21に示した18層目の誘電体層118の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層171が形成されている。導体層171には、誘電体層101〜117に形成されたスルーホールを介して、図4に示した導体層119A,119B,119C,119Dが接続されている。また、導体層171には、誘電体層114〜117に形成されたスルーホールを介して、図17に示した導体層309Iが接続されている。また、導体層171には、誘電体層116,117に形成されたスルーホールを介して、図19に示した導体層207Aが接続されている。誘電体層118には、導体層171に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0072】
図22に示した19層目の誘電体層119の上面には、キャパシタ用導体層202,205,214,219Bと、導体層172,173が形成されている。導体層202は、図2におけるキャパシタC2の一部を構成する。導体層202には、誘電体層117,118に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層209が接続されている。導体層205は、図2におけるキャパシタC5の一部を構成する。導体層205には、誘電体層113〜118に形成されたスルーホールおよび図20に示した導体層161を介して、図16に示した導体層304Eが接続されている。導体層214は、図2におけるキャパシタC14の一部を構成する。導体層214には、誘電体層101〜118に形成されたスルーホール、図6に示した導体層132および図20に示した導体層162を介して、図4に示した導体層114Aが接続されている。また、導体層214には、誘電体層101〜118に形成されたスルーホール、図6に示した導体層135および図9に示した導体層151を介して、図4に示した導体層117Aが接続されている。導体層219Bは、図2におけるキャパシタC19の一部を構成する。導体層219Bには、誘電体層117,118に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層219Aが接続されている。
【0073】
導体層172には、誘電体層106〜118に形成されたスルーホールおよび図20に示した導体層163を介して、図9に示した導体層307Aが接続されている。導体層173には、誘電体層106〜118に形成されたスルーホールおよび図17に示した導体層160を介して、図9に示した導体層305Aが接続されている。誘電体層119には、それぞれ導体層172,173に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0074】
図23に示した20層目の誘電体層120の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層174が形成されている。導体層174には、誘電体層118,119に形成されたスルーホールを介して、図21に示した導体層171が接続されている。誘電体層120には、導体層174に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0075】
図24に示した21層目の誘電体層121の上面には、キャパシタ用導体層206A,207C,211B,216,220が形成されている。導体層206Aは、図2におけるキャパシタC6の一部を構成する。導体層206Aには、誘電体層106〜120に形成されたスルーホール、図17に示した導体層160および図22に示した導体層173を介して、図9に示した導体層305Aが接続されている。導体層207Cは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Cには、誘電体層101〜120に形成されたスルーホール、図6に示した導体層136および図9に示した導体層153を介して、図4に示した導体層118Aが接続されている。また、導体層207Cには、誘電体層117〜120に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層207Bが接続されている。導体層211Bは、図2におけるキャパシタC11の一部を構成する。導体層211Bには、誘電体層117〜120に形成されたスルーホールを介して、図20に示した導体層211Aが接続されている。導体層216は、図2におけるキャパシタC16の一部を構成する。導体層216には、誘電体層110〜120に形成されたスルーホールを介して、図13に示した導体層307Eが接続されている。導体層220は、図2におけるキャパシタC20の一部を構成する。導体層220には、誘電体層116〜120に形成されたスルーホールを介して、図19に示した導体層218が接続されている。誘電体層121には、それぞれ導体層206A,207C,220に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0076】
図25に示した22層目の誘電体層122の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層175が形成されている。導体層175には、誘電体層120,121に形成されたスルーホールを介して、図23に示した導体層174が接続されている。誘電体層122には、導体層175に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0077】
図26に示した23層目の誘電体層123の上面には、キャパシタ用導体層206B,207D,208,212,213,215が形成されている。導体層206Bは、図2におけるキャパシタC6の一部を構成する。導体層206Bには、誘電体層121,122に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層206Aが接続されている。導体層207Dは、図2におけるキャパシタC7の一部を構成する。導体層207Dには、誘電体層121,122に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層207Cが接続されている。導体層208は、図2におけるキャパシタC8の一部を構成する。導体層208には、誘電体層101〜122に形成されたスルーホール、図6に示した導体層138および図9に示した導体層154を介して、図4に示した導体層118Bが接続されている。導体層212は、図2におけるキャパシタC12の一部を構成する。導体層212には、誘電体層116〜122に形成されたスルーホールを介して、図19に示した導体層210が接続されている。導体層213は、図2におけるキャパシタC13の一部を構成する。導体層213には、誘電体層106〜122に形成されたスルーホール、図20に示した導体層163および図22に示した導体層172を介して、図9に示した導体層307Aが接続されている。導体層215は、図2におけるキャパシタC15の一部を構成する。導体層215には、誘電体層101〜122に形成されたスルーホール、図6に示した導体層137、図9に示した導体層152および図10に示した導体層157を介して、図4に示した導体層117Bが接続されている。誘電体層123には、それぞれ導体層206B,208,212,213,215に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0078】
図27に示した24層目の誘電体層124の上面には、グランドとして使用されるグランド用導体層176と導体層177が形成されている。導体層176には、誘電体層122,123に形成されたスルーホールを介して、図25に示した導体層175が接続されている。導体層177には、誘電体層121〜123に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層220が接続されている。誘電体層124には、導体層176に接続された複数のスルーホールと、導体層177に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
【0079】
図28に示したように、誘電体層124の下面、すなわち多層基板10の底面10aには、前述の各端子ANT,Rx1,Rx2,Tx1,Tx2,Vc1,Vc2を構成する導体層と、3つのグランド端子G1〜G3を構成する導体層と、グランド用導体層181〜184とが形成されている。グランド端子G1〜G3は、グランドに接続されるようになっている。
【0080】
アンテナ端子ANTには、誘電体層106〜124に形成されたスルーホール、図9に示した導体層155および図10に示した導体層156を介して、図7に示した導体層203Bが接続されている。送信信号端子Tx1には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層212が接続されている。送信信号端子Tx2には、誘電体層121〜124に形成されたスルーホールおよび図27に示した導体層177を介して、図24に示した導体層220が接続されている。受信信号端子Rx1には、誘電体層121〜124に形成されたスルーホールを介して、図24に示した導体層206Aが接続されている。受信信号端子Rx2には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層213が接続されている。制御端子Vc1には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層208が接続されている。制御端子Vc2には、誘電体層123,124に形成されたスルーホールを介して、図26に示した導体層215が接続されている。グランド端子G1〜G3およびグランド用導体層181〜184には、誘電体層124に形成された複数のスルーホールを介して、図27に示した導体層176が接続されている。
【0081】
キャパシタC1は、導体層201,209と誘電体層116によって構成されている。キャパシタC2は、導体層202,174と誘電体層119によって構成されている。キャパシタC3は、導体層203A,203Bと誘電体層103によって構成されている。キャパシタC4は、導体層204,203Aと誘電体層102によって構成されている。キャパシタC5は、導体層171,205,174と誘電体層118,119によって構成されている。キャパシタC6は、導体層174,206A,175,206B,176と誘電体層120〜123によって構成されている。キャパシタC7は、導体層207A,207B,171,174,207C,175,207D,176と誘電体層116,117,120〜123によって構成されている。キャパシタC8は、導体層175,208,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC9は、導体層209,171と誘電体層117によって構成されている。キャパシタC10は、導体層210,211Aと誘電体層116によって構成されている。キャパシタC11は、導体層211A,171,174,211B,175と誘電体層117,120,121によって構成されている。キャパシタC12は、導体層175,212,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC13は、導体層175,213,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC14は、導体層171,214,174と誘電体層118,119によって構成されている。キャパシタC15は、導体層175,215,176と誘電体層122,123によって構成されている。キャパシタC16は、導体層174,216,175と誘電体層120,121によって構成されている。キャパシタC17は、導体層217A,217B,217Cと誘電体層102,103によって構成されている。キャパシタC18は、導体層218,219Aと誘電体層116によって構成されている。キャパシタC19は、導体層219A,171,219B,174と誘電体層117〜119によって構成されている。キャパシタC20は、導体層174,220,175と誘電体層120,121によって構成されている。
【0082】
インダクタL3は、導体層303A,303B,303C,303Dおよびインダクタ構成部303Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL4は、導体層304A,304B,304C,304D,304Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL5は、導体層305A,305B,305C,305Dおよびインダクタ構成部305Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL6は、導体層306A,306B,306C,306Dと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL7は、導体層307A,307B,307C,307D,307Eと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL8は、インダクタ構成部308Aおよび導体層308B,308Cと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。インダクタL9は、インダクタ構成部309Aおよび導体層309B,309C,309D,309E,309F,309G,309H,309Iと、これらを直列に接続するスルーホールによって構成されている。
【0083】
図1に示したように、多層基板10内には、複数の誘電体層101〜124の積層方向における異なる位置に配置された3つの領域A1,A2,A3が形成されている。領域A1は、誘電体層102〜104とそれらの上に配置された複数の導体層を含んでいる。領域A1内には、キャパシタ用導体層は配置されているが、インダクタ用導体層は配置されていない。領域A2は、誘電体層106〜114とそれらの上に配置された複数の導体層を含んでいる。領域A2内には、インダクタ用導体層は配置されているが、キャパシタ用導体層は配置されていない。領域A3は、誘電体層116〜124とそれらの上に配置された複数の導体層を含んでいる。領域A3内には、キャパシタ用導体層は配置されているが、インダクタ用導体層は配置されていない。従って、多層基板10において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、複数の誘電体層101〜124の積層方向における異なる位置に配置されている。
【0084】
次に、多層基板10の製造方法について説明する。多層基板10の製造方法では、まず、それぞれ後に誘電体層101〜124となる複数のセラミックグリーンシートを作製する。次に、各グリーンシートに、スルーホール用の複数の孔を形成する。次に、各グリーンシートにおいて、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填してスルーホールを形成する。導体層が配置された誘電体層となるべきグリーンシートでは、スルーホールを形成する際に同時に、導体ペーストを用いて導体層を形成する。導体層は、例えばスクリーン印刷によって形成される。次に、スルーホールおよび導体層が形成された複数のグリーンシートを重ね合わせ、熱と圧力を加えて、複数のグリーンシートの積層体を作製する。次に、この積層体において、バインダ等の有機成分を分解させ、更にセラミックと導体を同時に焼成する。次に、積層体の底面および上面において露出する導体部分にめっきを施す。以上の工程により、多層基板10が完成する。
【0085】
本実施の形態に係る高周波用電子部品1は、多層基板10と、この多層基板10に実装された複数の素子とを備えている。多層基板10は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含んでいる。また、多層基板10は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有している。複数の導体層は、1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含んでいる。なお、多層基板10において、グランド用導体層171,174,175,176は、グランドとして用いられると共に、キャパシタを構成するためにも用いられるため、キャパシタ用導体層に含まれる。
【0086】
多層基板10における誘電体層の材料としては、例えばガラスセラミック材料が用いられる。より具体的に説明すると、多層基板10における誘電体層の材料としては、例えば、骨材がアルミナ(Al2O3)であり、ガラス成分が硼珪酸ガラスである硼珪酸ガラス−アルミナ系のガラスセラミック材料が用いられる。この材料において、アルミナと硼珪酸ガラスの総和に対するアルミナと硼珪酸ガラスのそれぞれの割合は、例えば50重量%ずつである。また、この材料における硼珪酸ガラスは、例えば、Si、B、Al、Sr、CaおよびOを含む。
【0087】
以下、本実施の形態に係る高周波用電子部品1の特徴について説明する。本実施の形態では、多層基板10において、インダクタ用導体層の厚みは、キャパシタ用導体層の厚みよりも大きい。
【0088】
既に説明したように、インダクタ用導体層は、インダクタのQ値を大きくするために、厚みは大きい方がよい。一方、キャパシタ用導体層は、インダクタ用導体層に比べて、誘電体層に接する面積が大きいことから、厚みが大きくなると、その導体層を挟む2つの誘電体層の剥離や、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生や、多層基板10における反りの発生といった、多層基板10の構造欠陥が生じやすくなる。そのため、キャパシタ用導体層の厚みは小さい方がよい。
【0089】
本実施の形態によれば、インダクタ用導体層の厚みをキャパシタ用導体層の厚みよりも大きくしたので、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することができる。具体的には、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層の厚みを大きくしてインダクタのQ値を大きくしながら、キャパシタ用導体層の厚みを小さくして、多層基板10の構造欠陥が発生することを防止することができる。
【0090】
なお、インダクタ用導体層の厚みは、上述のようにインダクタのQ値を大きくするためには大きい方がよいが、大きすぎると多層基板10の構造欠陥が発生しやすくなる。また、移動体通信用の周波数帯域で使用される本実施の形態に係る高周波用電子部品では、表皮効果により、電流は導体層の表面から2〜3μmまでの深さの範囲を通るが、導体層の表面の凹凸も考慮すると、導体層の厚みとしては、8μm以上は必要である。これらのことを考慮すると、インダクタ用導体層の厚みは、8〜30μmの範囲内であることが好ましい。また、キャパシタ用導体層の厚みは、上述のように多層基板10の構造欠陥が発生することを防止するためには小さい方がよい。しかし、キャパシタ用導体層の厚みが小さすぎると、キャパシタ用導体層に網目状の孔が開き、キャパシタのQ値が小さくなると共にキャパシタ用導体層を安定して形成することが困難になる。このことを考慮すると、キャパシタ用導体層の厚みは、2〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0091】
なお、キャパシタ用導体層のうち、導体層171,174,175,176のように、誘電体層の上面のほぼ全面に形成され、グランドとして使用される導体層の厚みは、グランドとして使用されないキャパシタ用導体層の厚みよりも小さくすることが好ましい。
【0092】
また、本実施の形態では、多層基板10において、キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含む。金属材料としては、例えばAgまたはCuが用いられる。ガラス成分は、例えば、CaO−Al2O3−SiO2系のガラスを含む。本実施の形態では、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。
【0093】
前述のように、多層基板10の導体層は導体ペーストを用いて形成される。本実施の形態では、キャパシタ用導体層を形成するためのキャパシタ用導体ペーストは、金属材料とガラス成分とを含み、インダクタ用導体層を形成するためのインダクタ用導体ペーストは、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含む。そして、インダクタ用導体ペーストにおける金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体ペーストにおける金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。
【0094】
本実施の形態において用いられる導体ペーストは、金属材料としての金属粉末とガラス成分としてのガラスフリットのうち少なくとも金属粉末を、有機ビヒクル中に分散させたものである。導体ペーストにおける金属材料は、導体層における金属材料と同じものであり、例えばAgまたはCuが用いられる。導体ペーストにおけるガラス成分は、導体層におけるガラス成分と同じであり、例えば、CaO−Al2O3−SiO2系のガラスを含む。導体ペーストは、MnO2、ZrO2等、導体の焼結を抑制する材料を含んでいてもよい。
【0095】
1重量%以下の少量のMnO2をインダクタ用導体ペーストに添加しても、MnO2は、誘電体層となるセラミックグリーンシートに拡散するため、導体の焼結抑制以外の影響は及ぼさない。そのため、MnO2は、インダクタ用導体ペーストの添加剤としては適している。MnO2をインダクタ用導体ペーストに添加した場合には、インダクタ用導体層の周辺における誘電体層にMnO2が存在する。この場合、誘電体層中において、インダクタ用導体層の周辺におけるMnO2の濃度は、他の部分におけるMnO2の濃度よりも高くなる。
【0096】
また、1〜5重量%のZrO2をキャパシタ用導体ペーストに添加した場合には、ZrO2粒子はキャパシタ用導体層に残るため、キャパシタ用導体層は、分散されたZrO2粒子を含むことになる。このZrO2粒子は、導体の焼結抑制の効果の他に、導体層に接する誘電体層におけるクラックの発生を防止する効果も発揮する。
【0097】
既に説明したように、インダクタ用導体層は、インダクタのQ値を大きくするために、抵抗値は小さい方がよい。導体層に含まれるガラス成分の割合が小さい方が、導体層の抵抗値が小さくなるため、インダクタ用導体層では、ガラス成分の割合は小さい方がよい。また、インダクタ用導体層では、その断面における輪郭が矩形であるよりも円形に近い方が、表皮効果の影響により、インダクタのQ値が大きくなる。そのため、焼成時に生じる導体層の表面の曲面化は、インダクタ用導体層では、インダクタのQ値が大きくなるため好ましい。導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、導体の焼結が抑制されるため、導体層の表面の曲面化が妨げられる。そのため、この点からも、インダクタ用導体層では、ガラス成分の割合は小さい方がよい。
【0098】
一方、キャパシタ用導体層では、その近傍において所望の電界強度が安定して得られるように、厚みを均一にすると共に、誘電体層との接着性を良好にする必要がある。導体層と誘電体層との接着性を良好にするためには、導体ペースト中のガラス成分の割合は大きい方がよい。従って、キャパシタ用導体層では、ガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0099】
また、キャパシタ用導体層では、前述の導体層の表面の曲面化が生じると、既に説明したように、以下のような種々の問題が発生する。まず、導体層の厚みの均一性が劣化する。また、多層基板中に気孔が発生することにより、導体層近傍において所望の電界強度が得られなくなり、その結果、キャパシタンスの低下やQ値の低下が生じる。また、多層基板の構造欠陥が生じやすくなる。導体ペースト中のガラス成分の割合が大きいと、導体層の表面の曲面化が妨げられことから、上記の種々の問題が発生することを防止するためにも、キャパシタ用導体層では、ガラス成分の割合は大きい方がよい。
【0100】
本実施の形態では、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さい。従って、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層の両方を、特性および信頼性の面で好ましい態様に形成することができる。具体的には、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合を0にするか、小さくすることにより、インダクタ用導体層の抵抗値を小さくしてインダクタのQ値を大きくすることができる。同時に、キャパシタ用導体層におけるガラス成分の割合を大きくして、キャパシタ用導体層の厚みを均一にすると共に、キャパシタ用導体層と誘電体層との接着性をよくして、キャパシタ用導体層の近傍において所望の電界強度が安定して得られるようにすることができる。また、キャパシタ用導体層におけるガラス成分の割合を大きくすることにより、キャパシタ用導体層の表面の曲面化に伴う上述の種々の問題の発生を防止することができる。
【0101】
なお、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、上述の理由から大きい方がよいが、大きすぎると良好な導体層を形成することができなくなる。このことを考慮すると、キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であることが好ましい。また、インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、上述のように、0であるか、キャパシタ用導体ペーストにおける金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さいことから、0〜3重量%の範囲内であることが好ましい。
【0102】
なお、本実施の形態では、多層基板10において、インダクタ用導体層でもキャパシタ用導体層でもない導体層のうち、インダクタ用導体層と同一面上に配置された導体層についてはインダクタ用導体層と同じ厚みおよび材料とし、キャパシタ用導体層と同一面上に配置された導体層についてはキャパシタ用導体層と同じ厚みおよび材料としている。また、インダクタ用導体層でもキャパシタ用導体層でもなく、インダクタ用導体層ともキャパシタ用導体層とも同一面上に配置されていない導体層については、キャパシタ用導体層と同じ厚みおよび材料としている。
【0103】
また、本実施の形態では、多層基板10内において、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されている。これにより、容易に、インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層との間で、厚みおよびガラス成分の割合を異ならせることができる。
【0104】
また、本実施の形態では、多層基板10内に設けられたインダクタL3〜L9は、いずれも、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されている。そのため、本実施の形態によれば、1つのインダクタが1つの導体層によって構成される場合に比べて、1つのインダクタ用導体層が誘電体層に接する面積を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、インダクタ用導体層の厚みを大きくしたり、インダクタ用導体層において表面の曲面化を生じさせたりしても、多層基板10の構造欠陥が生じることを防止することができる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明は、携帯電話機におけるフロントエンドモジュールとして用いられる高周波用電子部品に限らず、低温同時焼成セラミック多層基板と、この低温同時焼成セラミック多層基板内に設けられた1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタとを備えた高周波用電子部品全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品の側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品の回路構成を示す回路図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る高周波用電子部品の平面図である。
【図4】図3に示した多層基板における1層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図5】図3に示した多層基板における2層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図6】図3に示した多層基板における3層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図7】図3に示した多層基板における4層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図8】図3に示した多層基板における5層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図9】図3に示した多層基板における6層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図10】図3に示した多層基板における7層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図11】図3に示した多層基板における8層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図12】図3に示した多層基板における9層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図13】図3に示した多層基板における10層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図14】図3に示した多層基板における11層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図15】図3に示した多層基板における12層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図16】図3に示した多層基板における13層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図17】図3に示した多層基板における14層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図18】図3に示した多層基板における15層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図19】図3に示した多層基板における16層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図20】図3に示した多層基板における17層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図21】図3に示した多層基板における18層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図22】図3に示した多層基板における19層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図23】図3に示した多層基板における20層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図24】図3に示した多層基板における21層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図25】図3に示した多層基板における22層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図26】図3に示した多層基板における23層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図27】図3に示した多層基板における24層目の誘電体層の上面を示す平面図である。
【図28】図3に示した多層基板における24層目の誘電体層およびその下の導体層を示す平面図である。
【符号の説明】
【0107】
1…高周波用電子部品、10…多層基板、A1,A2,A3…領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板を備えた高周波用電子部品であって、
前記低温同時焼成セラミック多層基板は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有し、
前記複数の導体層は、前記1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、前記1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含み、
前記インダクタ用導体層の厚みは、前記キャパシタ用導体層の厚みよりも大きいことを特徴とする高周波用電子部品。
【請求項2】
前記インダクタ用導体層の厚みは、8〜30μmの範囲内であり、前記キャパシタ用導体層の厚みは、2〜20μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の高周波用電子部品。
【請求項3】
前記キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、
前記インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含み、
前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の高周波用電子部品。
【請求項4】
前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の高周波用電子部品。
【請求項5】
前記インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項6】
前記キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項7】
前記複数の導体層は、グランドとして使用される導体層を含み、このグランドとして使用される導体層の厚みは、グランドとして使用されないキャパシタ用導体層の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項8】
前記インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、前記低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項9】
前記インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項10】
1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板を備えた高周波用電子部品であって、
前記低温同時焼成セラミック多層基板は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有し、
前記複数の導体層は、前記1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、前記1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含み、
前記キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、
前記インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含み、
前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さいことを特徴とする高周波用電子部品。
【請求項11】
前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であることを特徴とする請求項10記載の高周波用電子部品。
【請求項12】
前記インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在することを特徴とする請求項10または11記載の高周波用電子部品。
【請求項13】
前記キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項14】
前記インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、前記低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項15】
前記インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていることを特徴とする請求項10ないし14のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項1】
1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板を備えた高周波用電子部品であって、
前記低温同時焼成セラミック多層基板は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有し、
前記複数の導体層は、前記1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、前記1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含み、
前記インダクタ用導体層の厚みは、前記キャパシタ用導体層の厚みよりも大きいことを特徴とする高周波用電子部品。
【請求項2】
前記インダクタ用導体層の厚みは、8〜30μmの範囲内であり、前記キャパシタ用導体層の厚みは、2〜20μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の高周波用電子部品。
【請求項3】
前記キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、
前記インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含み、
前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の高周波用電子部品。
【請求項4】
前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の高周波用電子部品。
【請求項5】
前記インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項6】
前記キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項7】
前記複数の導体層は、グランドとして使用される導体層を含み、このグランドとして使用される導体層の厚みは、グランドとして使用されないキャパシタ用導体層の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項8】
前記インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、前記低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項9】
前記インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項10】
1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタを含む低温同時焼成セラミック多層基板を備えた高周波用電子部品であって、
前記低温同時焼成セラミック多層基板は、積層された複数の誘電体層と、それぞれ積層方向に隣接する2つの誘電体層の間に配置された複数の導体層とを有し、
前記複数の導体層は、前記1以上のインダクタを構成するための1以上のインダクタ用導体層と、前記1以上のキャパシタを構成するための2以上のキャパシタ用導体層とを含み、
前記キャパシタ用導体層は、金属材料とガラス成分とを含み、
前記インダクタ用導体層は、金属材料とガラス成分のうち少なくとも金属材料を含み、
前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0であるか、前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合よりも小さいことを特徴とする高周波用電子部品。
【請求項11】
前記キャパシタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、2〜8重量%の範囲内であり、前記インダクタ用導体層における金属材料に対するガラス成分の割合は、0〜3重量%の範囲内であることを特徴とする請求項10記載の高周波用電子部品。
【請求項12】
前記インダクタ用導体層の周辺における誘電体層には、MnO2が存在することを特徴とする請求項10または11記載の高周波用電子部品。
【請求項13】
前記キャパシタ用導体層は、ZrO2粒子を含んでいることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項14】
前記インダクタ用導体層とキャパシタ用導体層は、前記低温同時焼成セラミック多層基板内において、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【請求項15】
前記インダクタは、複数の誘電体層の積層方向における異なる位置に配置され直列に接続された複数のインダクタ用導体層を用いて構成されていることを特徴とする請求項10ないし14のいずれかに記載の高周波用電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2009−81306(P2009−81306A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250125(P2007−250125)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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