説明

HIPIMSによる反応性スパッタリング

基板に形成された高いアスペクト比を有するキャビティの表面上に、絶縁層をスパッタ堆積するための方法および装置が提供される。絶縁層に含まれる材料から少なくとも一部が形成されるターゲットおよび基板が、ハウジングによって画定される実質的に閉鎖されたチャンバ内に設けられる。実質的に閉鎖されたチャンバ内でプラズマが点火され、少なくとも一部がターゲットの表面の近傍にプラズマを含むように磁界がターゲットの表面の近傍に生成される。カソードとアノードとの間に高出力電気パルスを反復的に確立するように、電圧を急速に上昇させる。電気パルスの平均出力は少なくとも0.1kWであり、任意でより大きくすることができる。スパッタ堆積の動作パラメータは、金属モードと反応モードとの間の移行モードで、絶縁層のスパッタ堆積を促進するように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年12月7日に出願された米国仮出願第61/012,103号の優先権を主張し、その全体を参照によって本願に援用する。
【0002】
本願は、一般に反応性スパッタリング方法および装置に関し、より詳細には、適切なスパッタ速度およびターゲットと装置のアノードまたは他の部分との間に起きるアーク発生を最小限化するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
反応性マグネトロンスパッタリングは、一般に金属のターゲットから窒化または酸化層を生成するために使用される。反応性マグネトロンスパッタリングを使用することができる用途の例には、摩耗防止目的のためのハードコーティングの製造、フィルターおよび反射防止コーティングのための光学コーティングの製造、および電子機器分野での拡散バリアおよび絶縁層の製造を含む。しかし、従来のスパッタ堆積プロセスによって形成されたそのような層は、層を使用する特定の用途にとって最適ではない硬度、密度、ピンホール含有などの特性を含むことが多い。
【0004】
これらの層のそのような特性を改善する1つの試みとして、パルススパッタリングプロセスが提案されてきた。最近の開発によると、0.5から10%の低いデューティサイクルおよび最大で数メガワットの出力レベルのパルスなど、非常に高い出力と組み合わせた非常に短いパルスによるパルスプラズマによって、例えば、90%超の高い金属蒸気イオン化がもたらされる。そのような堆積プロセスは、一般に、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(「HIPIMS」)と呼ばれる(高出力パルスマグネトロンスパッタリング、または「HPPMS」ともいう)。HIPIMSではまた、層の特性の改善のほかに、イオン化金属を電界によって加速できることにより、3次元特徴への方向性スパッタリングも可能である。この特徴は、一般に半導体用途で最も有益である。
【0005】
半導体チップは、サイズを小型化しながら性能を向上させることを目指して常に開発が行われている。これらの小型チップに課せられた物理的制限によって、単層上に形成される集積回路(IC)での電力消費は制限され、そのようなチップを形成するためのプロセス技術は、適切な小型回路を形成する能力の限界に近付いている。したがって、単層上での水平デバイス密度をさらに増加させるには加工の問題が生じ得るので(例えば、ワイヤボンディング技術)、今後のICは複数の積層された基板上に形成し、水平デバイス密度をさらに増加させる代わりに、積層ICを製造することができる。この3次元集積は、コンピュータ読取可能メモリ、電気光学用途、MEMS、センサー、上記IC撮像装置、表示器および他の用途に適用することができる。
【0006】
積層ICは、複数の基板の平面上に垂直に積層されて設けられた回路を含む。積層された基板のそれぞれに設けられた回路間に電気接続を確立するように、積層された基板にスルーシリコンビア(「TSV」)が形成される。現在の技術では、このようなTSVを、例えば基板に溝または列をレーザードリル加工またはドライエッチングすることによって形成する。次いで、次の金属化の前に、溝を絶縁層で被覆する。溝または列を金属で充填した後、基板を接地し、金属接続が溝または列を形成するように少なくとも一部が除去された平面と反対側の基板の平面で、露出されるようになる。次いで、基板の一方または両方の平面で露出された最終的なTSV接点を、積層ICを形成する複数の基板の別の基板に設けられた対応する接点と位置合わせし、積層された基板が互いに結合されるとそれらの間に電気接続が確立される。しかし、ICの基板の使用可能領域を最大化するように適切に小さい接点を設けるために、TSVは、将来的なデバイスに対応するように、少なくとも10:1、または少なくとも20:1のアスペクト比を有することが望ましい。
【0007】
金属をスパッタ堆積するために、反応性スパッタリング方法が使用されてきた。しかし、窒化物の堆積中、特定の金属のスパッタリング中に窒素を追加することによって、例えばTiNまたはTaNなどの導電層が生成される。(ごく少量の反応性ガスの存在を伴うまたは伴わない)純金属のスパッタリングは、反応性ガスを含むいわゆる「反応モード」とは反対に、「金属モード」における導電性スパッタ堆積として説明されることが多い。それ以外は同一のプロセス特性で、金属モードから、または反応モードから特定のスパッタリング状態になるかどうかによる、ヒステリシスすなわち堆積速度(およびターゲット電圧)の違いは、窒素を追加するときは一般に小さい。非導電性酸化物およびSiなどの非導電性窒化物の堆積は、酸素または窒素を加えたとき、ターゲットおよびシールドの帯電とともに顕著なヒステリシスによって、一般に、より困難を呈する。反応性ガスとして酸素を用いる反応モードでは、SiOまたはAlの堆積速度は大幅に低下し、一般に金属モードでの堆積より5倍以上低くなる。例えばSiを堆積するときなど、反応性ガスとして窒素を用いる反応モード堆積でも、それより顕著ではないが同様の速度低下が見られる。
【0008】
現在の水準のHIPIMS電源を、AlターゲットによるAlなどの反応性酸化プロセスに適用するとき、合理的な出力レベルで、多量のアーク発生が間もなく観察され得ることが分かる。アーク発生は、真空システムの部品(ターゲット自体、シールド…)の上に絶縁層が蓄積されたことによって、カソード(ターゲット)とアノードまたは真空処理システムの電気接地との間に、誘電性(コンデンサの原理)によってカソードとアノードとの間の分圧器として作用する、短絡が発生していることを示す。完全に酸化された(不活性化された)ターゲットを用いる反応モードでは、20μ秒(すなわち、20×10−6秒)から200μ秒(すなわち、200×10−6秒)の間の範囲のHIPIMSパルスのパルス長さは、絶縁ターゲット表面に放電を起こすには長すぎる。完全反応(不活性化または酸化)モードでのHIPIMSを用いるスパッタリングでは、スパッタ速度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国仮出願第61/012,103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、当技術分野では、高いアスペクト比を有するTSVに絶縁層を適用するための方法および装置が必要とされている。そのような方法および装置は、最小限のピンホールで高密度の絶縁層を可能にするように高い方向性を提供することができ、最小限のアーク発生で、限られた導電性を有するターゲット材料のスパッタ堆積を促進することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様では、本願は、基板に形成された高いアスペクト比を有するキャビティの表面上に、絶縁層をスパッタ堆積するためのスパッタリング装置を含む。装置は、実質的に閉鎖されたチャンバを画定するハウジング、およびスパッタ堆積中に基板をチャンバ内の適切な位置で支持するためにチャンバの内部に露出されるペデスタルを含む。磁石アセンブリは、キャビティの表面に堆積される絶縁層に含まれる材料から少なくとも一部が形成されたターゲットの表面の近傍に、磁界を生成する。電源は、カソードとアノードとの間の磁界内でプラズマの急速な電圧増加を維持する高出力電気パルスを確立し、電気パルスの平均出力は少なくとも0.1kWである。また、実質的に金属モードと反応モードとの間の移行モードで絶縁層のスパッタ堆積を実行するように、スパッタリング装置の動作パラメータを制御するための制御装置も含む。
【0012】
別の態様では、本願は、基板に形成された高いアスペクト比を有するキャビティの表面上に、絶縁層をスパッタ堆積する方法を含む。方法は、絶縁層に含まれる材料から少なくとも一部が形成されるターゲットおよびハウジングによって画定される実質的に閉鎖されたチャンバ内に基板を設けるステップと、実質的に閉鎖されたチャンバ内でプラズマを点火するステップとを含む。少なくとも一部がターゲットの表面の近傍にプラズマを含むように、磁界がターゲットの表面の近傍に生成される。カソードとアノードとの間に高出力電気パルスを反復的に確立するように、電圧パルス波形の先頭が急速に増加する。電気パルスの平均出力は、少なくとも0.1kWである。
【0013】
上記の要約は、本明細書で説明されるシステムおよび/または方法のいくつかの態様の基本的理解を提供するために、簡略化した要約である。本要約は、本明細書で説明されるシステムおよび/または方法の詳細な概要ではない。これは主要/重要な要素を識別し、またはそのようなシステムおよび/または方法の範囲を概説することを意図するものではない。以下で述べるさらに詳細な説明の序文として、いくつかの概念を簡略化した形態で表すことが、唯一の目的である。
【0014】
本発明は、特定の部品および部品の配置における物理的形態をとることができ、その実施形態を、本明細書で詳細に説明し、本明細書の一部を形成する添付の図面で図示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】溝の実質的に垂直な側壁に導電性材料をスパッタ堆積するための、スパッタリアクタの一部が破断されているHIPIMSスパッタリング装置の例示的な実施形態を示す図である。
【図2】HIPIMSパルスに同期された高周波信号を確立する実施形態を示すタイミング図である。
【図3】約60μ秒間持続するパルスを含む電気パルス中の、様々なDCパルス出力レベルのDC電流の例を示す図である。
【図4】導電性材料がスパッタされる基板を支持するペデスタルに、HIPIMSパルス中にペデスタルに適用される高周波信号によって生成された自己バイアス電圧波形を、時間の関数として示す図である。
【図5A】一定の電気パルス電圧および一定の反応性ガス流量で、HIPIMSを用いる反応性スパッタリング中の電気パルスの平均およびピーク電流を、電気パルス期間の関数として示す図である。
【図5B】一定の電気パルス電圧および一定の反応性ガス流量で、HIPIMSを用いる反応性スパッタリング中の電気パルスの平均およびピーク電流を、電気パルス期間の関数として示す図である。
【図5C】一定の電気パルス電圧および一定の反応性ガス流量で、HIPIMSを用いる反応性スパッタリング中の電気パルスの平均およびピーク電流を、電気パルス期間の関数として示す図である。
【図6A】異なる反応性ガス流量に一定の電気パルス電圧で、HIPIMSを用いる反応性スパッタリング中の電気パルスの平均およびピーク電流を、電気パルス期間の関数として示す図である。
【図6B】異なる反応性ガス流量に一定の電気パルス電圧で、HIPIMSを用いる反応性スパッタリング中の電気パルスの平均およびピーク電流を、電気パルス期間の関数として示す図である。
【図6C】異なる反応性ガス流量に一定の電気パルス電圧で、HIPIMSを用いる反応性スパッタリング中の電気パルスの平均およびピーク電流を、電気パルス期間の関数として示す図である。
【図7】実質的に透明なAl絶縁層を移行モードでスパッタするためのHIPIMS放電電流のプロットを示す図である。
【図8】様々なパラメータセットでのHIPIMS放電電流のオシロスコープトレースを示す図である。
【図9】本発明の態様による、基板に形成された溝および堆積された絶縁層のSEM写真を示す図である。
【図10】本発明の態様による、絶縁層を備える溝の様々な表面を識別する、溝の概略図である。
【図11】図10で識別された、絶縁層を備えた表面の被覆プロフィールを示す図である。
【図12】低インピーダンスHIPIMS放電をバイアスする、高周波信号を生成するRF電源のインピーダンスマッチングネットワークの例を示す図である。
【図13】図12に示すインピーダンスマッチングネットワークを使用してインピーダンスマッチングの改善を達成した電流および高周波電圧トレースのプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される特定の用語は簡便性のために過ぎず、本発明を制限すると解釈されるべきではない。本明細書で使用される関連用語は、図面を参照すると最も良く理解され、図面では同様の参照番号を使用して同様または同じ要素を識別する。さらに、図面では、特定の特徴はいくらか概略的な形態で示すことができる。
【0017】
複数の部材「の少なくとも1つ」という表現は、本明細書で使用される場合、部材の1つ、または部材の2つ以上の組み合わせを意味することにも留意されたい。例えば、「第1の機器および第2の機器の少なくとも1つ」は、本願では、第1の機器、第2の機器、あるいは第1の機器および第2の機器を意味する。同様に、「第1の機器、第2の機器および第3の機器の少なくとも1つ」は、本願では、第1の機器、第2の機器、第3の機器、第1の機器および第2の機器、第1の機器および第3の機器、第2の機器および第3の機器、または第1の機器および第2の機器および第3の機器を意味する。
【0018】
本願は、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(「HIPIMS」)スパッタリング装置10およびターゲット12から導電性材料を強磁性スパッタし、ターゲット12からの材料を反応性ガスと反応させて絶縁材料を形成し、絶縁材料を半導体基板18に形成された溝16の実質的に垂直な側壁14上に堆積して絶縁層15(図9)を形成するための方法に関する。そのようなスパッタリング装置10の例示的な配置が図1に示されており、これは実質的に閉鎖されたチャンバ24を画定するリアクタハウジング20を含み、ハウジング20内で半導体基板18への絶縁層15のHIPIMSスパッタ堆積が行われる。本明細書では絶縁層15を半導体基板18に形成された溝の表面に堆積すると説明しているが、本技術を使用して、どのようなタイプの基板のどのような表面にも絶縁層15を堆積することができる。表面は、基板に形成された溝または他のタイプのキャビティの実質的に垂直な側壁を任意で含むことができる。さらに、基板は特定の用途に適した材料から形成することができる。しかし、本発明を明確に説明するため、および簡潔性のために、TSVを金属充填する前のTSV形成中の、溝の側壁表面への絶縁層の堆積を、以下で詳細に説明する。
【0019】
金属または金属合金などの導電性材料から作製されたペデスタル28が、スパッタ堆積動作のためにチャンバ内の適切な位置で半導体基板18を支持するように、例えばチャンバ24に露出され、任意で少なくとも一部がチャンバ24へと延びている。図1でペデスタル28に載っていることが示されている半導体基板18は実質的に平坦なウエハであり、上平面32およびチャンバ内でペデスタルに載っている底平面34を有する。半導体基板18に形成された1つまたは複数の溝16は、上平面32で開いており、底平面34によって閉じており、図1に示すように深さD寸法に沿って少なくとも一部が半導体基板18へと延びる、全体的にU字形断面を有する溝16を形成することができる。溝16の側壁は、半導体基板18の上平面32と底平面34との間の溝16の内周面を画定する。それぞれの側壁は、溝の一般にアスペクト比といわれるものが少なくとも10:1となるように、溝の幅Wに対して半導体基板18へと適切な深さDだけ延びることができる。溝の他の実施形態は、任意で少なくとも20:1のアスペクト比を有することができる。アスペクト比は、本明細書では、溝16の幅に対する溝の深さの比として表される。
【0020】
複数の永久磁石37または他の適切な磁界発生装置を含む磁石アセンブリ36が、ターゲットの露出された表面40の近傍に磁界38を生成するように配置されており、ターゲットは少なくとも一部が、以下に説明するように、反応性ガスと反応して溝16の内表面上に堆積される絶縁層15を形成する絶縁材料を形成する導電性材料から形成されている。磁石アセンブリ36によって生成された磁界38は、プラズマ42を、閉じ込め領域と呼ばれる、ターゲット12の露出された表面40の付近、または任意で表面40の上に閉じ込める。さらに、磁界38は、ターゲット12から放出された二次電子の非バイアス軌道を、閉じ込め領域内の不活性スパッタリングガスがイオン化される確率を最大化するように変化させる、電子トラップとしても作用する。
【0021】
例えばアルゴンなどの一般的に不活性ガスである不活性スパッタリングガスが、ガス供給装置48から供給され、制御装置58に動作可能に連結されている質量流量制御装置52を通って、チャンバへと送られる。スパッタリングガスは、ハウジングに形成された入口ポート54を通って流れる。チャンバ内の圧力は、チャンバと動作可能に流体連通された真空ポンプシステム(図示せず)によって維持されている。チャンバの標準圧力は約10−8トルであるが、完全な持続自己スパッタリングを伴わない一般的なスパッタリング動作では、チャンバ圧力は、サブ範囲を含む、約0.1ミリトルから約5ミリトルの範囲内で維持することができる。
【0022】
不活性スパッタリングガスに加えて、ターゲット12から放出される原子と反応することができる反応性ガスが、ガス供給装置48に設けられた反応性ガスタンクからチャンバ24へと供給される。適切な反応性ガスの例は、例えば、酸素および窒素を含むが、他の適切な反応性ガスも本技術の範囲内であると考えられる。1つの実施形態では、ターゲットはアルミニウム原子を放出することができ、アルミニウム原子と反応性ガスとの反応から生成される絶縁材料はAlであり、絶縁層15として堆積することができる。他の適切な絶縁材料の例は、SiおよびSiOを含むが、これに限定されない。
【0023】
プラズマ42は、アルゴンまたは他のスパッタリングガスをチャンバへと流入し、接地されたアノード57および負にバイアスされたカソードにわたるターゲット12に電気的に接続されたDC電源56でDC電圧を選択的に確立することによって、それに点火してプラズマにすることによって開始され、本実施形態ではカソードはターゲット12を含む。開始にはより高いDC電圧が必要であるが、−500VDC、−600VDCなど、約−400から−700VDCの範囲内のターゲットDC電圧、または約−350VDCから約−5kVDCの範囲内の他の適切な電圧(その範囲内のすべての電圧を含む)によって、閉じ込め領域内にプラズマ42の存在を維持することができる。DC電源56からのDC電圧が停止した後も、帯電した粒子はチャンバ24内に残り、減衰するDC電圧に数十μ秒間寄与し、その結果、DC電源56からのDC電圧停止後にアフターグロー効果が生じる。制御装置58もDC電源56に動作可能に連結されており、本明細書で説明するように、DC電源56の出力を制御する。プラズマ42がいったん開始されると、アルゴンまたは他のスパッタリングガスの供給は、プラズマ42が開始されたときの流量から低減することもでき、または任意で、制御装置58からの指示に基づいて、ともに中断することもできる。絶縁層15のHIPIMSスパッタ堆積中、高出力、低デューティサイクルの電気パルスを放電するDC電源の起動および停止も、制御装置58によって制御することができる。
【0024】
例えば、制御装置58は、それぞれのパルスの先頭で少なくとも0.1kWの平均出力の電気パルスを生成するように、DC電源56によって加えられるDC電圧を、任意で反復的および急速に増加させることができる。一般に、HIPIMSスパッタ堆積による電気パルスは、約1kWから約5kWの範囲内の平均出力を有するが、約0.1kWから約7kWまでの高い平均出力を含むこともできる。ピークパルス出力は約30kWから約300kWが一般的であり、約1MWのピーク出力を含む、より高いピーク出力を、それぞれの電気パルスによって生成することも可能である。
【0025】
そのような出力レベルでは、少なくとも10μ秒とすることができるが、より一般的には約40μ秒から200μ秒の短期間である電気パルスで、1kWcm−2またはそれ以上のオーダーの高出力密度を加えることができる。デューティサイクル(オン時間/オフ時間の比)は、約10%またはそれ以下などの低いものとなるが、約2%から約10%のデューティサイクルとすることもできる。
【0026】
可変RF電源62、または他の適切な交流電源がペデスタル28に電気的に接続されており、HIPIMSスパッタリング動作中、ペデスタルに高周波信号を供給し、ペデスタル28上に支持された半導体基板18の近傍に自己バイアス磁界を生成する。自己バイアス磁界は、ターゲット12から半導体基板18に対して垂直方向に放出される材料のイオンを加速するのに効果的であり、したがって、少なくとも10:1、および代替実施形態では少なくとも20:1の高いアスペクト比を有するにもかかわらず、溝の側壁の下側部分および溝12の底面に沿って、最終的な絶縁材料の堆積を促進する。自己バイアス電圧は、可変RF電源62によって生成されペデスタル28に供給された高周波信号の出力を変化させることによって、選択的に制御することができる。本明細書で説明される例示的な実施形態では、高周波信号の出力を、サブ範囲および中間の値を含む、約300ワットから約3,000ワットの範囲内の値に調整することができる。
【0027】
DC電源56および流量制御装置52と同様に、可変RF電源62は、所望のHIPIMSスパッタリングプロセスを実行する必要性に合うように、制御装置58によって制御することができる。図1に示す実施形態では、制御装置は、可変RF電源62からの高周波信号の周波数を、例示的な実施形態ではサブ範囲および中間の値を含む約1MHzから約70MHzの範囲内、他の例示的な実施形態ではサブ範囲および中間の値を含む約1MHzから約50MHzの範囲内の周波数に調整するための、周波数チューナー64を含む。さらに他の例示的な実施形態では、ターゲット周波数を約13.56MHzに調整することができ、他のターゲット周波数には、周波数チューナー64は、高周波信号の周波数を特定のHIPIMSスパッタリング用途に適した許容範囲内に調整することができる。例えば、周波数チューナー64は、高周波信号の周波数を、ターゲット周波数の±5%以内、または他の適切な許容範囲内に調整することができる。しかし、簡潔性および明確性のために、以下では約13.56MHzのターゲット周波数の±5%以内の高周波信号を使用して、スパッタリングプロセスを説明する。
【0028】
制御装置58は、周波数に加えて、ペデスタル28に供給される高周波信号の期間またはデューティサイクルも制御することができる。例えば、制御装置58は、高周波信号のデューティサイクルを、DC電源からのDC電圧のパルスのデューティサイクルより大きい値、しかし任意で著しく大きくはない値に調整することができる。他の実施形態では、制御装置58は、ペデスタル28への高周波信号の供給を、少なくともDC電圧の対応する電気パルスがターゲット12に供給されている間、任意で維持することができ、以下でさらに詳細に説明するように、DC電源によって、ペデスタル28に供給される高周波信号の出力を、ターゲット12およびアノードにかかるDC電圧の停止後にのみ、任意で中断し、または少なくとも低減することができる。
【0029】
さらに他の実施形態では、制御装置58は、DC電源からのDC電圧の電気パルスの開始前に、高周波信号のペデスタル28への伝達を開始し、DC電源56からのDC電圧の電気パルスの間、および任意でその終了後まで、高周波信号のペデスタルへの伝達を維持し、DC電源56からのDC電圧の電気パルスの終了後、高周波信号のペデスタル28への伝達を中断することができる。そのような実施形態が図2のタイミング図に図示されており、高周波信号のオン/オフが線HFによって表され、電気パルスのオン/オフが線VDCとして表されている。したがって、高周波信号は、DC電源56からの電気パルスとエンベロープまたは同期しているといえる。
【0030】
インピーダンスマッチングネットワーク66(図1)が、制御装置58内に動作可能に連結され、任意で組み込まれている。インピーダンスマッチングネットワーク66は、可変RF電源62の出力インピーダンスを、可変RF電源62が高周波信号を供給する負荷の入力インピーダンスとほぼ一致するように調整する。インピーダンスをそのような方法で一致させることによって、出力伝達が最大化され、RF電源62から見た負荷からの反射電力が最小化される。インピーダンスマッチングネットワーク66は、任意で可変または一定とすることができ、電気パルスの発生中、DC電源からの最大DC電流とほぼ同時に自己バイアス磁界の最大電圧を確立するように、動作可能である。
【0031】
自己バイアス磁界の最大電圧と電源56からの電気パルスの最大DC電流がほぼ同時に発生することは、図3および4から見ることができる。図3は、約60μ秒間持続するパルスを含むパルス周期中の、様々なDCパルス出力レベルのDC電流の例を示す。図4は、同じ出力レベルで可変RF電源62によって生成される、半導体基板18での自己バイアス磁界の自己バイアス電圧の対応する反応の例を示す。図3に見られるように、それぞれの別個の出力レベルトレースでの電気パルスの最大DC電流は、この特定のパルスのDC電圧を加えた後、約60μ秒(すなわち、横座標に沿って6.0E−05)で起きる。同様に、図4は、それぞれの出力レベルトレースでの最大自己バイアス電圧もまた、本パルス中、アノード57およびターゲット12にDC電圧パルスを加えた後、約60μ秒(その合理的な近接範囲内)で起きることを示す。したがって、最大DC電流および最大自己バイアス電圧は、それぞれのパルスで実質的に同時に起こり得る。
【0032】
本明細書で説明するHIPIMSスパッタ堆積は、「金属モード」と「反応モード」との間(「移行モード」という)で実質的に実施される。反応性ガスの不在下で、または実質的に反応性ガス(または反応性ガスの超過量)の存在なしで、純金属をスパッタ堆積することは、スパッタリングプロセスの「金属モード」と呼ばれることが多い。チャンバ24内に注入された反応性ガスは、もしあればそのほとんどすべてが、ターゲット12からのスパッタ粒子との反応に消費される。反対に、いわゆる「反応モード」では、チャンバ24に臨界量より多量に存在する反応性ガスとのスパッタ堆積が起きる。反応性ガスの臨界量に達すると、チャンバ24内の反応性ガスの部分的圧力の急上昇を観察することができる。移行モードによるHIPIMSスパッタ堆積は、金属モードと反応モードとの間の状態で行われる。
【0033】
金属モードから反応モードへの変更、またはその反対は、実質的に閉鎖されたチャンバ24への反応性ガスの流量およびHIPIMSスパッタ堆積のための電気パルスの電圧を実質的に一定値に保持することによって、達成することもできる。チャンバ24への反応性ガスの流量を変化させる代わりに、DC電源56からの電気パルスの期間を調整することができる。図5Aの例に示すように、電気パルスの平均放電電流およびピーク電流は、電気パルスの期間の関数としてプロットされる。電気パルスの電圧が約600Vで一定であり、反応性ガス(本例ではO)の流量が約6sccmの場合、3Aから4Aの間の平均電流で約140μ秒のパルス長さが生成される。比較的長いパルス期間によって、ターゲットから放出される粒子は反応性ガスの大部分と反応し、したがって、そのようなパルス期間は金属モードと対応する。
【0034】
電気パルスの期間が短くなると、平均電流は、約50μ秒のパルス長さに対応する、1Aを超えただけの極小値に達するまで低下する。電気パルスの期間を極小値に対応する時間の長さを超えてさらに短くすると、DC電源56によって生成される電気パルスの平均放電電流は急速に上昇し、反応モードへの移行を示す。平均放電電流の急上昇は、例えば、アルミニウムターゲット材料が完全酸化に近付いているために、酸化アルミニウムの二次電子放出係数が、金属アルミニウムの二次電子放出係数に対して、より高いことに起因し得る。移行モードでのHIPIMSスパッタ堆積は、電気パルスの期間が、金属モードを示す平均放電電流に対応する電気パルスの時間の長さと反応モードを示す平均放電電流に対応する電気パルスの時間の長さとの間で持続するときに起きる。より一般的には、移行モードでのHIPIMSスパッタ堆積に対応するパルスの期間は、金属モードと反応モードとの間の平均放電電流の極小値に対応する電気パルスの期間と実質的に同様である。図5bに示す例では、円77で示す、移行モードでHIPIMSスパッタ堆積を実施する電気パルスの期間は、50μ秒よりわずかに低いが50μ秒の合理的な近接範囲内になるように選択されている。電気パルスの期間は50μ秒よりわずかに低くなるように選択されているので、HIPIMSスパッタ堆積は移行モードで実施されるが、任意で金属モードより反応モードに近くなるように行うことができる。
【0035】
他の実施形態では、制御装置58は、移行モードでHIPIMSスパッタ堆積を実施する電気パルスの期間を変化させる代わりに、電気パルスの周波数を任意で変化させることができる。パルスの期間を同一に維持したまま、制御装置58の周波数チューナー64によって周波数を変化させて、金属モードと反応モードとの間の移行モードで絶縁層15の堆積を実行する電気パルスの所望の平均放電電流を確立することができる。
【0036】
高感度の電子デバイスを製造するための半導体基板18の作製など、いくつかの実施形態では、非常に過渡的なHIPIMS電気パルスは、半導体基板18を損傷する可能性がある。そのような損傷を最小限化するために、絶縁層15をHIPIMSスパッタ堆積する前に、(チャンバ24以外の別個の堆積チャンバ内で)溝16の表面に誘電層を任意で堆積することができる。誘電層は、HIPIMSスパッタ堆積中、電気パルスからの放射によって生じる損傷から半導体基板18を保護するために十分な厚さのものとする。誘電層は、HFバイアス、HFマグネトロンスパッタリング、PECVD、原子層堆積(「ALD」)を用いない従来のDCパルスマグネトロンスパッタリング、または他の適切な堆積プロセスによって製造することができる。したがって、絶縁層15は、本明細書で説明するように、移行モードでHIPIMSスパッタ堆積によって堆積されるとき、誘電層によって溝16の表面から隔離される。
【0037】
絶縁層15のHIPIMSスパッタ堆積の前に誘電層が堆積されるかどうかにかかわらず、絶縁層15を有する溝12を、導電性材料で被覆または他の方法によって充填することができる。別の任意のステップとして、例えば、スルーシリコンビアを形成するために、半導体基板18の底平面34の少なくとも一部分を、例えば、研削、研磨、または他の適切なプロセスによって除去することができる。半導体基板18の底平面34の一部分を除去することによって、導電性材料を半導体基板18の新しく形成される底平面34に溝16内で露出し、半導体基板18に別の半導体基板を積層することを可能にする。半導体基板18の底平面34の露出された接点を他の半導体基板と位置合わせすることによって、基板間の電気接続を確立することができ、したがってICを上に形成することができる半導体基板の積層配置が形成される。
【0038】
実験例
HIPIMSスパッタ堆積方法による、上記の装置を使用する堆積操作を実施した。例えば、OC Oerlikon Balzers AG社によって製造されているエリコンクラスターツールなどの単一基板真空処理システムで、ターゲット12の下に回転磁石アレーを配置して、200mmシリコン基板18上にAlをHIPIMSによって反応的にスパッタした。堆積パラメータを以下のTable 1 (表1)に示す。
【0039】
一定の電気パルス電圧および反応性ガス(0)流量のセットでは、HIPIMS電気パルスの長さは、500Hzの周波数で10%の高い電気パルスデューティサイクルにより、金属モードでHIPIMSスパッタ堆積が実施された、約200μ秒の最大値から調整される。このモードで堆積された薄膜は、Al含有量の高いAlの混合物を含み、茶色がかった色調であるが、多少透明である。この開始点から、HIPIMS電気パルスの長さを徐々に低減し、電気パルスの平均放電電流を記録する。デューティサイクルが低下すると、平均放電電流が極小値まで低下する。この最小値を超えると、電流は再び増加し、反応モードへの移行を示す。増加する電流、したがって堆積される出力は、酸化したAlの二次電子放出係数が金属性Alに対して高いことによるものである。この移行領域では、透明なAl絶縁層および高い堆積速度(金属モードで経験するものとほぼ同様)を経験した。電気パルス期間をさらに低減することによって、ターゲットが実質的に完全酸化するようになり、堆積速度が大幅に低下する。図5a〜5cのプロットは、一定のO流量と電気パルス電圧の様々なセットの平均電流およびピーク電流を、HIPIMS電気パルス長さの関数として示す。
【0040】
【表1】

【0041】
最初に、DC電源56を、600Vの電気パルスを生成するように一定電圧モードに設定し、その結果を図5a、5bおよび5cに示す。上述の図5aは、約600Vの一定電圧および約6sccmの反応性ガス(O)流量で、電気パルスの期間を約140μ秒から約40μ秒まで変化させた結果を示す。堆積した絶縁層15は、Alであった。同様に、図5bは、約600Vの一定電気パルス電圧および約8sccmの一定の反応性ガス(O)流量で、電気パルスの期間を約140μ秒から約30μ秒まで変化させた結果を示す。この実験で選択された移行モードの電気パルスの期間は、円77によって示されている。最終的な絶縁層15は、移行モードで堆積されたとき、実質的に透明である。同様に、図5cは、約600Vの一定電気パルス電圧および約12sccmの一定の反応性ガス(O)流量で、電気パルスの期間を約140μ秒から約60μ秒まで変化させた結果を示す。
【0042】
図6A〜6Cは、約8sccmの一定の反応性ガス(O)流量および異なる電気パルス電圧(それぞれ500V、600V、および700V)でのHIPIMS電気パルスの平均およびピーク電流のプロットを、HIPIMS電気パルス期間の関数として示す。やはり、図6Bは、約600Vの一定の電気パルス電圧および約8sccmの一定の反応性ガス流量でのパルス期間を識別する円77を含む。円77内に該当するパルス期間で堆積された絶縁層は、実質的に透明なAlが高速で堆積される。これらのHIPIMS堆積操作を通して、Table 2 (表2)の特定の堆積速度を観察した。これらの観察から、移行モードでのHIPIMS絶縁堆積速度は、反応モードより8倍以上高いことが判断できる。本明細書で説明されるように移行モードで絶縁層として堆積された、最終的なAlの光学的特性を、分光エリプソメトリによって測定し、以下のTable 3 (表3)にまとめた。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
図7は、450Vの一定電圧および約11sccmの反応性ガス(O)流量で45μ秒間の電気パルス、および200Vの一定電圧および約6sccmの反応性ガス(O)流量で200μ秒間の電気パルスの放電電流の変化のオシロスコープトレースを示す。堆積された最終的なAl絶縁層は、どちらも実質的に透明であった。これらの絶縁層の特性を以下のTable 4 (表4)にまとめた。
【0046】
【表4】

【0047】
溝の表面の大部分の上に絶縁層を堆積する所望の方向のHIPIMSスパッタ堆積を達成するために、RF可変電源からの高周波信号で生成された重畳電界によって強くイオン化されたHIPIMS放電で生成されたイオンの加速を含む、別の堆積操作を実施した。成長する薄膜の絶縁性質のために、高周波(HF)バイアスを使用した。HF信号は、密度の増加にかかわらず、電圧の加速を持続することが可能な適切なインピーダンスマッチングネットワークを介して適用した。放電電流を時間の関数として測定し、図8のグラフに示した。
【0048】
Al絶縁層を、ディープシリコンエッチング(「DSE」)によって作製された約2.5:1および約10:1のアスペクト比の溝へと堆積した。図9は、これらの被覆された溝のSEM断面を示す。図10に図示されている場所における、Alステップの被覆をこれらの断面から定量的に分析し、結果を図11のグラフにまとめた。アスペクト比10:1の溝では、約15%の底面被覆を達成することができることが分かる。溝の縁部の被覆は3から4%の間であるが、これらの値は最適化されたHFバイアスマッチワークによって改善することができることが明らかであり、図8で測定および再現したように、電圧低下を低減することが可能である。そのような最適化されたHFバイアスマッチワークの例は図12に図示されており、0.6μHのコイルとともに2つの調整可能な真空コンデンサを含む。図13は、結果をオシロスコープトレースとしてグラフで示し、約300AまでのHIPIMS電流でHFバイアス電圧が約180Vであることを示している。
【0049】
例示的な実施形態を上記で説明した。上記のデバイスおよび方法は、本発明の一般的な範囲から逸脱することなく、改変および修正を組み込むことができることが、当業者には明らかであろう。そのような修正および改変はすべて、本発明の範囲内とする。さらに、「comprising」が使用される場合は特許請求の範囲における移行句として解釈されるため、明細書または特許請求の範囲のいずれかで「includes」という用語が使用される限り、そのような用語は「comprising」という用語と同様に包括的であるものとする。
【符号の説明】
【0050】
10 スパッタリング装置
12 ターゲット
14 側壁
15 絶縁層
16 溝
18 半導体基板
20 ハウジング
24 チャンバ
28 ペデスタル
32 上平面
34 底平面
36 磁石アセンブリ
37 永久磁石
40 表面
42 プラズマ
48 ガス供給装置
52 質量流量制御装置
54 入口ポート
56 DC電源
57 アノード
58 制御装置
62 可変RF電源
64 周波数チューナー
66 インピーダンスマッチングネットワーク
77 円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された高いアスペクト比を有するキャビティの表面上に絶縁層をスパッタ堆積するためのスパッタリング装置であって、
実質的に閉鎖されたチャンバを画定するハウジングと、
スパッタ堆積中に前記基板を前記チャンバ内の適切な位置で支持するために前記チャンバの内部に露出されるペデスタルと、
前記キャビティの表面に堆積される前記絶縁層に含まれる材料から少なくとも一部が形成されたターゲットの表面の近傍に、磁界を生成するための磁石アセンブリと、
カソードとアノードとの間の磁界内でプラズマの急速な電圧増加を維持する高出力電気パルスを確立するための、前記電気パルスの平均出力が少なくとも0.1kWである電源と、
実質的に金属モードと反応モードとの間の移行モードで、前記絶縁層のスパッタ堆積を実行するように、スパッタリング装置の動作パラメータを制御するための制御装置と、を備えているスパッタリング装置。
【請求項2】
実質的に閉鎖されたチャンバへの反応性スパッタガスの流量を調節するための可変速度流量制御装置をさらに備えており、前記移行モードでスパッタ堆積を実行するように前記制御装置によって制御される動作パラメータが反応性スパッタガスの流量である、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記反応性スパッタガスが酸素および窒素からなる群から選択された、請求項2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記絶縁層に含まれる前記ターゲットの材料が、シリコンおよびアルミニウムからなる群から選択された、請求項1から3の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記絶縁層のスパッタ堆積中に前記電気パルスの電圧が実質的に一定に維持されている、請求項1から4の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
実質的に前記移行モードで前記絶縁層のスパッタ堆積を実行するように前記制御装置によって制御される前記動作パラメータが電気パルスの期間である、請求項1から5の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記電気パルスの期間が前記制御装置によって制御され、前記電気パルスの電圧および前記実質的に閉鎖されたチャンバへの反応性ガスの流量の少なくとも一方が実質的に一定の値に維持される、請求項1から6の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
実質的に前記移行モードで前記絶縁層のスパッタ堆積を実行するように前記制御装置によって制御される前記動作パラメータが前記電気パルスの周波数である、請求項1から7の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項9】
前記電気パルスの周波数が前記制御装置によって制御され、前記電気パルスの電圧および前記実質的に閉鎖されたチャンバへの反応性ガスの流量の少なくとも一方が実質的に一定の値に維持される、請求項8に記載のスパッタリング装置。
【請求項10】
前記基板の近傍に自己バイアス磁界を生成するように、前記基板を支持するための前記ペデスタルに高周波信号を適用するために、前記ペデスタルに電気的に接続されている可変電源をさらに備えている、請求項1から9の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項11】
前記絶縁層のインピーダンスが増加するように電圧の増加を持続させるため、供給される負荷のインピーダンスを前記可変電源によって生成される高周波信号とマッチングするためのインピーダンスマッチングネットワークをさらに含む、請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項12】
前記インピーダンスマッチングネットワークが、前記高出力電気パルスを確立する前記電源によって供給される最大放電電流とほぼ同時に最大自己バイアス電圧を確立する、請求項11に記載のスパッタリング装置。
【請求項13】
移行モードで堆積される前記絶縁層の特定の堆積速度が少なくとも2.5Å/kWsである、請求項1から12の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項14】
移行モードで堆積される前記絶縁層の特定の堆積速度が約2.5Å/kWsから約4.2Å/kWsの範囲内である、請求項1から13の一項に記載のスパッタリング装置。
【請求項15】
基板に形成された高いアスペクト比を有するキャビティの表面上に絶縁層をスパッタ堆積する方法であって、
前記絶縁層に含まれる材料から少なくとも一部が形成されるターゲットおよびハウジングによって画定される実質的に閉鎖されたチャンバ内に前記基板を提供するステップと、
前記実質的に閉鎖されたチャンバ内でプラズマを点火するステップと、
ターゲットの表面の近傍に前記プラズマを少なくとも部分的に含むように、前記ターゲットの表面の近傍に磁界を提供するステップと、
カソードとアノードとの間に高出力電気パルスを反復的に確立するように電圧を急速に増加させ、前記電気パルスの平均出力は少なくとも0.1kWであるステップと、
実質的に金属モードと反応モードとの間の移行モードで、前記絶縁層の前記スパッタ堆積を促進するように、動作パラメータを制御するステップと、
前記ターゲットからの材料と前記実質的に閉鎖されたチャンバ内の反応性ガスとを反応させて絶縁材料を形成し、前記絶縁材料を前記キャビティの表面上に堆積するステップと、を備えている方法。
【請求項16】
前記絶縁材料を前記キャビティの表面上にスパッタ堆積する前に、誘電層を前記キャビティの表面上に堆積するステップをさらに備えており、前記誘電層は前記絶縁層を前記キャビティの表面から隔離させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
実質的に移行モードで、前記絶縁層のスパッタ堆積を促進するように、前記動作パラメータを制御するステップが、前記電気パルスの平均放電電流を実質的に最小限化するように前記電気パルスの期間を制御するステップを備えている、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記電気パルスの電圧および前記実質的に閉鎖されたチャンバへの反応性ガスの流量の少なくとも一方を実質的に一定の値に維持するステップをさらに備えている、請求項15から17の一項に記載の方法。
【請求項19】
実質的に移行モードで、前記絶縁層のスパッタ堆積を促進するように、前記動作パラメータを制御するステップが、前記電気パルスの周波数を制御するステップをさらに備えている、請求項15から18の一項に記載の方法。
【請求項20】
前記電気パルスの電圧および前記実質的に閉鎖されたチャンバへの反応性ガスの流量の少なくとも一方を実質的に一定の値に維持するステップをさらに備えている、請求項15から19の一項に記載の方法。
【請求項21】
前記基板の近傍に自己バイアスの磁界を生成するように、前記実質的に閉鎖されたチャンバ内で前記基板を支持するための支持部に高周波信号を適用するステップをさらに備えている、請求項15から20の一項に記載の方法。
【請求項22】
前記絶縁層のインピーダンスが増加するように電圧の増加を持続させるため、供給される負荷のインピーダンスを可変電源によって生成される高周波信号とマッチングするステップをさらに備えている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記インピーダンスマッチングネットワークが、前記高出力電気パルスを確立する前記電源によって供給される最大放電電流とほぼ同時に最大自己バイアス電圧を確立する、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図12】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−506759(P2011−506759A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536473(P2010−536473)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066898
【国際公開番号】WO2009/071667
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(507288730)オーツェー・エリコン・バルザース・アーゲー (9)
【Fターム(参考)】