説明

III族窒化物半導体発光素子、及びIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法

【課題】低減された順方向電圧のIII族窒化物半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】p型クラッド層におけるp型ドーパントの濃度がn型不純物の濃度より大きくなるように、p型クラッド層はp型ドーパント及びn型不純物を含む。p型クラッド層のバンドギャップより大きい励起光を用いた測定によるフォトルミネセンス(PL)スペクトルは、バンド端発光及びドナーアクセプタ対発光のピークを有する。このPLスペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と該PLスペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))は、当該III族窒化物半導体レーザ素子11の順方向駆動電圧(Vf)と相関を有する。このエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))が0.42eV以下であるとき、III族窒化物半導体発光素子の順方向電圧印加に係る駆動電圧が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体発光素子、及びIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、緑色の光を発生する窒化ガリウム系半導体レーザが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Enya Yohei, Yoshizumi Yusuke, Kyono Takashi, Akita Katsushi, Ueno Masaki, Adachi Masahiro, Sumitomo Takamichi, Tokuyama Shinji, Ikegami Takatoshi, Katayama Koji, Nakamura Takao, "531 nm Green Lasing of InGaN Based Laser Diodes on Semi-Polar {20-21} Free-Standing GaN Substrates," Applied Physics Express, Volume 2, Issue 8, pp. 082101 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザダイオードの性能を左右する要因の一つである電気的特性は、例えば以下のように行われてきた:レーザダイオード自体の電気的特性評価を行う;或いは、p型クラッド層やp型ガイド層のための単層の半導体膜の電気的特性評価を行う。これらの特性の評価により、レーザダイオードの電気的特性が管理されている。
【0005】
発明者らの知見によれば、主にp型クラッド層及びp型ガイド層が、レーザダイオードの電気的特性に強く寄与している。これ故に、レーザダイオード構造においてp型クラッド層の電気的特性を独立して評価することが可能であれば、より正確にレーザダイオードの電気的特性を管理することが可能となる。つまり、レーザダイオードにおけるp型クラッド層の電気的特性を単独で評価することが求められる。
【0006】
p型クラッド層の電気的特性に関するより正確な評価は、良好な電気的特性を示すレーザダイオードや発光ダイオードを提供することを可能にする。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、低減された順方向電圧を有するIII族窒化物半導体発光素子を提供することを目的とし、またこのIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子は、(a)基板の主面の上に設けられておりn型III族窒化物半導体からなるn型クラッド層と、(b)前記基板の前記主面の上に設けられておりIII族窒化物半導体からなる活性層と、(c)前記基板の前記主面の上に設けられておりp型III族窒化物半導体からなるp型クラッド層とを備える。前記活性層は前記n型クラッド層と前記p型クラッド層との間に設けられ、前記n型クラッド層、前記活性層及び前記p型クラッド層は、前記基板の前記主面の法線軸にそって配置されており、前記p型クラッド層には、アクセプタのレベルを提供するp型ドーパントが添加されており、前記p型クラッド層は、ドナーのレベルを提供するn型不純物を含み、前記p型ドーパントの濃度は前記n型不純物の濃度より大きく、前記p型クラッド層のフォトルミネセンススペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と該フォトルミネセンススペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))が、0.42エレクトロンボルト以下であり、ここで、前記バンド端発光のエネルギE(BAND)及び前記ドナーアクセプタ対発光のエネルギE(DAP)はエレクトロンボルトの単位で表され、前記n型クラッド層の前記n型III族窒化物半導体のc軸は、前記法線軸に対して傾斜しており、前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体のc軸は、前記法線軸に対して傾斜している。
【0009】
このIII族窒化物半導体発光素子では、n型クラッド層、活性層及びp型クラッド層は基板の主面の法線軸に沿って配置されており、n型クラッド層のn型III族窒化物半導体のc軸及びp型クラッド層のp型III族窒化物半導体のc軸が共に法線軸に対して傾斜し、n型クラッド層とp型クラッド層との間には活性層が設けられる。このIII族窒化物半導体発光素子において、p型クラッド層におけるp型ドーパントの濃度がn型不純物の濃度より大きくなるように、p型クラッド層はp型ドーパント及びn型不純物を含む。これ故に、p型クラッド層のバンドギャップより大きい励起光を用いた測定によるフォトルミネセンススペクトルは、バンド端発光及びドナーアクセプタ対発光のピークを有する。発明者らの検討によれば、このフォトルミネセンススペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と該フォトルミネセンススペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))が当該III族窒化物半導体発光素子の駆動電圧と相関を有することが明らかにされた。このエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))が0.42エレクトロンボルト以下であるとき、これまでのIII族窒化物半導体発光素子に比べて、順方向電圧印加に係る駆動電圧が低減される。
【0010】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型ドーパントはマグネシウムを含み、前記マグネシウム濃度は3×1018cm−3以上であることが好ましい。
【0011】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、p型クラッド層において、電気伝導を担うキャリアは正孔である。マグネシウム濃度が3×1018(3E+18)cm−3以上であるとき、III族窒化物半導体発光素子の電圧特性が悪化しないレベルのキャリア濃度を電気伝導のために提供でき、エネルギー差0.42eV以下のPLスペクトルを提供することに有利である。
【0012】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記n型不純物は酸素を含み、前記酸素濃度は6×1017cm−3以下であることが好ましい。
【0013】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、p型クラッド層において、電気伝導を担うキャリアは正孔である一方で、酸素は電子を提供するドナーとして働く。酸素濃度は6×1017cm−3以下であるとき、p型クラッド層におけるキャリア補償を抑制して、活性化されたアクセプタからキャリアが電気伝導を担うことを可能にする。6×1017cm−3以下の酸素濃度は、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))を0.42エレクトロンボルト以下の値にすることに有利である。
【0014】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型クラッド層はInAlGaN層を含み、前記InAlGaN層は180nm以上であることが好ましい。
【0015】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、p型クラッド層のための四元InAlGaNの電圧特性を良好な精度で評価するためには、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるクラッド成分(クラッド層における励起からの信号成分)の割合を90%以上にすることが好ましく、p型クラッド層の膜厚が0.18μm以上であるとき、p型クラッド層は、他のp型半導体層からの信号成分に対して充分に強いスペクトルを提供できる。
【0016】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記n型クラッド層はInAlGaN層を含むことが好ましい。このIII族窒化物半導体発光素子によれば、n型クラッド層がInAlGaN層を含むとき、良好な光閉じ込め性能を提供できる。
【0017】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体の前記c軸と前記法線軸との成す角度は、10度以上80度以下又は100度以上170度以下の範囲にあることができる。
【0018】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、III族窒化物半導体は、極性c面に基づく性質よりも半極性に基づく性質を示すようになる。これ故に、半極性面上のIII族窒化物半導体発光素子の電気的特性は、c面上のIII族窒化物半導体発光素子と異なるものとなる。
【0019】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型クラッド層はIII族構成元素としてインジウム及びアルミニウムを含み、前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体の前記c軸と前記法線軸との成す角度は、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲にあることが好ましい。
【0020】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、c面に対するオフ角が63度以上80度以下(或いは、100度以上117度以下)の範囲では、p型クラッド層のIII族窒化物半導体におけるインジウム取り込みが良好であり、III族窒化物半導体発光素子は、良好な結晶品質のクラッド層を含むことができる。また、この角度範囲では、0.42エレクトロンボルト以下のエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))を提供することが、上記角度範囲の外側におけるp型クラッド層に比べて容易である。
【0021】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記活性層の発光スペクトルは500nm以上580nm以下の範囲にピーク波長を有することが好ましい。
【0022】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、活性層は、半極性面を用いて、緑色及びその周辺波長域(500nm以上580nm以下の範囲)にピーク波長を有する発光を提供する。この発光素子に、低減された順方向電圧が提供される。
【0023】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子は、前記p型クラッド層の上に設けられたp型コンタクト層を更に備えることができる。前記p型コンタクト層の厚さは、0.06マイクロメートル以下であり、前記p型コンタクト層は、p型III族窒化物半導体からなり、前記p型コンタクト層の前記p型III族窒化物半導体のバンドギャップは、前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体のバンドギャップより小さく、前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は、前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度より大きいことが好ましい。
【0024】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、p型クラッド層のためのIII族窒化物半導体の電圧特性を良好な精度で評価するためには、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるクラッド成分(クラッド層における励起からの信号成分)の割合を90%以上にすることが好ましく、p型コンタクト層の厚さが0.06マイクロメートル以下であるとき、p型コンタクト層からのコンタクト成分がクラッド成分に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。
【0025】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型コンタクト層はp型GaNからなり、前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は、1×1019cm−3以上であることが好ましい。このIII族窒化物半導体発光素子によれば、p型GaNが1×1019cm−3以上のp型ドーパント濃度を有するとき、p型コンタクト層からのコンタクト成分がクラッド成分に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。
【0026】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型コンタクト層は、p型の第1III族窒化物半導体層及びp型の第2III族窒化物半導体層を含み、前記第2III族窒化物半導体層は前記第1III族窒化物半導体層と前記p型クラッド層との間に設けられ、前記第1III族窒化物半導体層のp型ドーパント濃度は前記第2III族窒化物半導体層のp型ドーパント濃度より大きく、前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度は前記第2III族窒化物半導体層のp型ドーパント濃度より小さいことが好ましい。当該III族窒化物半導体発光素子は、前記第1III族窒化物半導体層に接触を成すアノード電極を更に備えることができる。
【0027】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、p型コンタクト層は、単一の層に限定されることなく、第1III族窒化物半導体層及び第2III族窒化物半導体層を含むことができ、これらのIII族窒化物半導体層は互いに異なるp型ドーパント濃度を有する。
【0028】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記基板の前記主面はIII族窒化物からなり、前記基板の前記主面の前記法線軸は前記基板の前記III族窒化物のc軸に対して傾斜することが好ましい。このIII族窒化物半導体発光素子によれば、いわゆる半極性面の法線軸に沿って配列された半導体積層を提供できる。
【0029】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型クラッド層は炭素不純物を含み、前記炭素濃度は、4×1016cm−3以下であることができる。
【0030】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、6×1017cm−3以下の炭素濃度は、炭素が電子を提供するドナーとして働くとき、p型クラッド層におけるキャリア補償を抑制して、活性化されたアクセプタからのキャリアが電気伝導を担うことを可能にする。p型クラッド層において、6×1017cm−3以下の炭素濃度は、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))を0.42エレクトロンボルト以下の値にすることに有利である。
【0031】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子は、前記p型クラッド層に接して設けられたモニタ半導体層を更に備えることができる。前記モニタ半導体層の材料は前記p型クラッド層の材料と同じであり、前記モニタ半導体層のp型ドーパント濃度は、前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度より小さく、前記モニタ半導体層の厚さは前記p型クラッド層の厚さより薄いことが好ましい。
【0032】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、フォトルミネッセンススペクトルは、ドナーアクセプタ対発光だけでなく、バンド端発光も利用する。III族窒化物半導体では、アクセプタ濃度が大きくなるにつれてバンド端発光は弱まる。一方で、p型クラッド層には、その特性から求められる濃度のp型ドーパントが添加される。フォトルミネッセンススペクトルにおいて良好な信号強度のバンド端発光を得るために、p型クラッド層に接して設けられたモニタ半導体層を用いることが有効である。モニタ半導体層のp型ドーパント濃度及び厚さは、p型クラッド層のp型ドーパント濃度及び厚さと独立していることができる。これ故に、モニタ半導体層を用いて、そのp型ドーパント濃度をp型クラッド層のp型ドーパント濃度より小さくでき、またモニタ半導体層の厚さをp型クラッド層の厚さより薄くすることが可能になる。
【0033】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記モニタ半導体層の厚さは5nm以上40nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0034】
このIII族窒化物半導体発光素子によれば、モニタ半導体層の膜厚が5nmより薄いとき、このモニタ半導体層は励起光のエネルギを十分に吸収することができず、充分な強度のバンド端発光がモニタ半導体層から得られない。一方で、モニタ半導体層の膜厚が40nmより厚いとき、p型ドーパント濃度が低めのモニタ半導体層の追加による抵抗増加のため、発光素子の電圧特性が低下する可能性がある。
【0035】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記モニタ半導体層のp型ドーパント濃度は1×1017cm−3以上1×1018cm−3未満の範囲にあることが好ましい。このIII族窒化物半導体発光素子によれば、1017cm−3台のp型ドーパント濃度がモニタ半導体層に好ましい。
【0036】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子では、前記p型クラッド層は水素を含み、前記p型クラッド層の水素濃度は4×1018cm−3以下であることが良い。このIII族窒化物半導体発光素子によれば、水素はp型ドーパントと結合して、p型ドーパントの活性化を妨げる。p型クラッド層中の水素濃度を低減することは、p型ドーパントが深い準位を形成することなく、p型クラッド層におけるキャリア濃度を増加させることになる。
【0037】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法は、(a)n型クラッド層のためのn型III族窒化物半導体層、活性層のためのIII族窒化物半導体層、及びp型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層を基板の上に成長して、前記III族窒化物半導体発光素子のためのエピタキシャル基板を作製する工程と、(b)前記p型III族窒化物半導体層に励起光を照射して、前記p型III族窒化物半導体層のバンド端発光及び前記p型クラッド層におけるドナーアクセプタ対発光を含むフォトルミネセンススペクトルの測定を行う工程と、(c)前記フォトルミネセンススペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と前記フォトルミネセンススペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))を求める工程と、(d)前記差(E(BAND)−E(DAP))を用いて、前記エピタキシャル基板に引き続く工程を適用するか否かの判断を行う工程と、(e)前記判断が肯定的であるとき、電極を形成するための加工を前記エピタキシャル基板に施す工程とを備える。前記励起光の波長は、前記p型クラッド層のための前記p型III族窒化物半導体層におけるバンドギャップ波長より短い。
【0038】
この作製方法によれば、エピタキシャル基板を成長した後に、エピタキシャル成長工程後の工程に進む前に、p型III族窒化物半導体層に励起光を照射して、バンド端発光及びドナーアクセプタ対発光を含むフォトルミネセンススペクトルの測定を行う。この測定におけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)及びドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)を用いて、差(E(BAND)−E(DAP))を生成し、この差(E(BAND)−E(DAP))を用いてエピタキシャル基板に引き続く処理を適用するか否かの判断を行う。差(E(BAND)−E(DAP))は、III族窒化物半導体発光素子の電圧特性との相関を示す。これらの工程を用いて作製されたIII族窒化物半導体発光素子は、p型クラッド層の高い抵抗に起因した電圧特性を示すことはない。
【0039】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法では、前記差(E(BAND)−E(DAP))は0.42エレクトロンボルト以下であることが好ましい。この作製方法によれば、より好適な電圧特性を示すIII族窒化物半導体発光素子が提供される。
【0040】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法では、前記フォトルミネセンススペクトルの測定は、絶対温度100度以下の温度で行われることが好ましい。この作製方法によれば、フォトルミネセンススペクトルは、明確なピークを示すバンド端発光及びドナーアクセプタ対発光を含むことができる。
【0041】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法では、前記p型クラッド層の成膜のために前記エピタキシャル基板の引き続く作製における成膜条件を前記差(E(BAND)−E(DAP))に基づき見直す工程を更に備えることができる。
【0042】
この作製方法によれば、電極を作製した後に得られるIII族窒化物半導体発光素子の評価を待つことなく、エピタキシャル基板のフォトルミネセンススペクトル測定の結果に基づき、製造工程に成膜条件に関するフィードバックを行うことができる。この作製方法は、迅速な工程管理を可能にする。
【0043】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法では、前記エピタキシャル基板を作製する前記工程は、p型コンタクト層のための別のp型III族窒化物半導体層を前記基板の上に成長する工程を更に含むことができる。前記別のp型III族窒化物半導体層は、前記p型クラッド層のための前記p型III族窒化物半導体層と前記活性層のための前記III族窒化物半導体層との間に設けられ、前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度より大きく、前記p型コンタクト層のバンドギャップは前記p型クラッド層のバンドギャップより小さく、前記p型コンタクト層の厚さは0.06マイクロメートル以下であり、前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は1×1019cm−3以上であることが好適である。
【0044】
この作製方法によれば、p型クラッド層のためのIII族窒化物半導体の電圧特性を良好な精度で評価するためには、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるクラッド成分(クラッド層における励起からの信号成分)の割合を90%以上にすることが好ましく、p型コンタクト層の厚さが0.06マイクロメートル以下であるとき、p型コンタクト層からのコンタクト成分は、クラッド成分に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。また、p型コンタクト層が1×1019cm−3以上のp型ドーパント濃度を有するとき、p型コンタクト層からのコンタクト成分は、クラッド成分に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。
【0045】
本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法では、前記p型コンタクト層はp型GaNからなることが好ましい。
【0046】
この作製方法によれば、p型GaNからなるコンタクト層は、明確なピークを示すバンド端発光及びドナーアクセプタ対発光を含むフォトルミネセンススペクトルの測定に好適である。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように、本発明の上記の側面によれば、低減された順方向電圧を有するIII族窒化物半導体発光素子が提供される。また、本発明の上記の側面によれば、このIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体発光素子の構造を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、フォトルミネッセンススペクトル及び相関関係を示す図面である。
【図3】図3は、差(E(BAND)−E(DAP))の傾向を示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法における工程を模式的に示す図面である。
【図6】図6は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法における工程を模式的に示す図面である。
【図7】図7は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法における工程を模式的に示す図面である。
【図8】図8は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子に係る実施例を示す図面である。
【図9】図9は、異なる3つの構造のレーザダイオードのためのエピタキシャル基板のフォトルミネッセンススペクトルを示す図面である。
【図10】図10は、フォノンレプリカを含むフォトルミネッセンススペクトルを示す図面である。
【図11】図11は、平均化処理されたフォトルミネッセンススペクトルを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
引き続いて、添付図面を参照しながら、III族窒化物半導体発光素子、エピタキシャル基板、並びにエピタキシャル基板及びIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0050】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体発光素子の構造を概略的に示す図面である。このIII族窒化物半導体発光素子として、本実施の形態では、III族窒化物半導体レーザ素子11を説明する。また、III族窒化物半導体レーザ素子11は、利得ガイド型の構造を有するけれども、本発明の実施の形態は、利得ガイド型の構造に限定されるものではない。III族窒化物半導体レーザ素子11は、アノード電極15、基板17、半導体領域19及びカソード電極41を備える。基板17及び半導体領域19はレーザ構造体13を構成する。基板17は半極性の主面17a及び裏面17bを有する。半導体領域19は、基板17の主面17a上に設けられている。アノード電極15は、レーザ構造体13の半導体領域19上に設けられる。カソード電極41はn型クラッド層21に電気的に結合される。半導体領域19は、n型クラッド層21と、p型クラッド層23と、活性層25とを含み、n型クラッド層21、活性層25及びp型クラッド層23は、基板17の主面17a上に設けられている。n型クラッド層21は、n型III族窒化物半導体からなる。このn型III族窒化物半導体は、III族構成元素としてインジウム及びアルミニウムを含み、例えばn型InAlGaN等からなる。p型クラッド層23は、p型III族窒化物半導体からなる。このp型III族窒化物半導体は、III族構成元素としてインジウム及びアルミニウムを含み、例えばp型InAlGaN等からなる。活性層25は、n型クラッド層21とp型クラッド層23との間に設けられる。n型クラッド層21、活性層25及びp型クラッド層23は、基板17の主面17aの法線軸NXの方向(法線ベクトルNVの方向)に配置されている。p型クラッド層23には、アクセプタのレベル22を提供するp型ドーパント22が添加されている。アクセプタのレベル22は分布しており、その多くはあるエネルギ幅内にある。また、p型クラッド層23は、ドナーのレベル24を提供するn型不純物24を含む。ドナーのレベル24は分布しており、その多くはあるエネルギ幅内にある。p型ドーパント22の濃度はn型不純物24の濃度より大きい。n型クラッド層21のn型III族窒化物半導体のc軸(ベクトルVCの方向に延在する軸)は、法線軸NXに対して傾斜しており、p型クラッド層23のp型III族窒化物半導体のc軸は法線軸NXに対して傾斜している。
【0051】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、p型クラッド層23のフォトルミネセンススペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と該フォトルミネセンススペクトル(「PLスペクトル」と記す)におけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))が、0.42エレクトロンボルト以下である。ここで、バンド端発光のエネルギE(BAND)及びドナーアクセプタ対発光のエネルギE(DAP)はエレクトロンボルトの単位で表される。
【0052】
基板17の主面17aはIII族窒化物からなり、基板17のIII族窒化物のc軸は基板17の主面17aの法線軸NXに対して傾斜する。基板17は六方晶系III族窒化物半導体からなることができる。また、III族窒化物半導体レーザ素子11によれば、いわゆる半極性の主面17aの法線軸NXに沿って配列された半導体層の積層を提供できる。
【0053】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11では、n型クラッド層21、活性層25及びp型クラッド層23は基板17の主面17aの法線軸に沿って配置されており、n型クラッド層21のn型III族窒化物半導体のc軸及びp型クラッド層23のp型III族窒化物半導体のc軸が共に法線軸に対して傾斜し、n型クラッド層21とp型クラッド層23との間には活性層35が設けられる。このIII族窒化物半導体発光素子11において、p型クラッド層23におけるp型ドーパントの濃度がn型不純物の濃度より大きくなるように、p型クラッド層23はp型ドーパント及びn型不純物を含む。これ故に、p型クラッド層23のバンドギャップより大きい励起光を用いた測定によるフォトルミネセンススペクトルは、図2の(a)部に示されるように、バンド端発光及びドナーアクセプタ対発光のピークを有する。発明者らの検討によれば、このPLスペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と該PLスペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))は、図2の(b)部に示されるように、当該III族窒化物半導体レーザ素子11の順方向駆動電圧(Vf)と相関を有することが明らかにされた。このエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))が0.42エレクトロンボルト以下であるとき、これまでのIII族窒化物半導体発光素子に比べて、順方向電圧印加に係る駆動電圧が低減される。図2の(b)部における順方向駆動電圧(Vf)は、100ミリアンペアの電流をレーザダイオードに流すとき、レーザダイオードの端子間の駆動電圧を示す。
【0054】
バンド端発光はp型クラッド層23のp型III族窒化物半導体のバンドギャップに関連している。また、ドナーアクセプタ対発光は、フォトンがフォノンと相互作用を行う複雑な過程を介して生成されるので、PLスペクトル自体が複雑な形状をしている。これ故に、PLスペクトルからドナーアクセプタ対発光ピーク値を得るために、スペクトル形状のデータ処理(例えば、スムージング処理)を行うことが好ましく、ドナーアクセプタ対発光のスペクトルの裾がバンド端発光のスペクトルと重なるので、正確なピーク位置を特定するために、スペクトル形状のデータ処理(例えば、平均化処理)を行うことが好ましい。
【0055】
再び図1を参照すると、活性層25は窒化ガリウム系半導体層を含み、この窒化ガリウム系半導体層は例えば井戸層25aである。活性層25は窒化ガリウム系半導体からなるいくつか障壁層25bを含む。井戸層25aが障壁層25bの間に設けられ、これは交互に配列されている。井戸層25aは、例えばInGaN等からなり、障壁層25bは例えばGaN、InGaN等からなる。活性層25は、波長360nm以上600nm以下の光を発生するように設けられた量子井戸構造を含むことができる。また、半極性面の利用により、発光スペクトルの範囲は、波長500nm以上580nm以下であることが好適である。n型クラッド層21、p型クラッド層23及び活性層25は、主面17aの法線軸NXに沿って配列されている。III族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ構造体13は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する第1の端面27及び第2の端面29を含む。
【0056】
図1には、直交座標系S及び結晶座標系CRが描かれている。法線軸NXは、直交座標系SのZ軸の方向に向く。主面17aは、直交座標系SのX軸及びY軸により規定される所定の平面に平行に延在する。また、図1には、代表的なc面Scが描かれている。基板17の六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に法線軸NXに対してゼロより大きい角度ALPHAで傾斜している。
【0057】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、絶縁膜31を更に備える。絶縁膜31はレーザ構造体13の半導体領域19の表面19aを覆っており、半導体領域19は絶縁膜31と基板17との間に位置する。基板17は六方晶系III族窒化物半導体からなる。絶縁膜31は開口31aを有し、開口31aは半導体領域19の表面19aと上記のm−n面との交差線LIXの方向に延在し、例えばストライプ形状を成す。アノード電極15は、開口31aを介して半導体領域19の表面19a(例えばp型コンタクト層33)に接触を成しており、上記の交差線LIXの方向に延在する。III族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ導波路は、n型クラッド層21、p型クラッド層23及び活性層25を含み、また上記の交差線LIXの方向に延在する。
【0058】
基板17は自立可能な厚さを有する。基板17は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な端面27、29を得ることができる。また、III族窒化物半導体レーザ素子11では、第1の割断面27及び第2の割断面29は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する。III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器は第1及び第2の割断面27、29を含み、第1の割断面27及び第2の割断面29の一方から他方に、レーザ導波路が延在している。レーザ構造体13は第1の面13a及び第2の面13bを含み、第1の面13aは第2の面13bの反対側の面である。第1及び第2の割断面27、29は、第1の面13aのエッジ13cから第2の面13bのエッジ13dまで延在する。第1及び第2の割断面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。
【0059】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、レーザ共振器を構成する第1及び第2の割断面27、29がm−n面に交差する。これ故に、m−n面と半極性面17aとの交差線の方向に延在するレーザ導波路を設けることができる。これ故に、III族窒化物半導体レーザ素子11は、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有することになる。
【0060】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、n側光ガイド層35及びp側光ガイド層37を含む。n側光ガイド層35は、第1の部分35a及び第2の部分35bを含み、n側光ガイド層35は例えばGaN、InGaN等からなる。p側光ガイド層37は、第1の部分37a及び第2の部分37bを含み、p側光ガイド層37は例えばGaN、InGaN等からなる。キャリアブロック層39は、例えば第1の部分37aと第2の部分37bとの間に設けられる。基板17の裏面17bには別の電極41が設けられ、電極41は例えば基板17の裏面17bを覆っている。
【0061】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは10度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また170度以下であることが好ましい。10度未満の角度では、In取り込が不均一になりクラッド層の結晶性が悪化する結果、クラッドのPL強度が減少し、クラッドのPL強度がコンタクトのPL強度に対して90%以下になる。さらに、バンド端発光も弱まりバンド端発光波長の同定が難しくなる結果、電圧特性の指標であるE(BAND)-E(DAP)を生成しにくくなる。80度を越え100度未満の角度では、In取り込が不均一になりクラッド層の結晶性が悪化する結果、クラッドのPL強度が減少し、クラッドのPL強度がコンタクトのPL強度に対して90%以下になる。さらに、バンド端発光も弱まりバンド端発光波長の同定が難しくなる結果、電圧特性の指標であるE(BAND)-E(DAP)を生成しにくくなる。170度を越える角度では、In取り込が不均一になりクラッド層の結晶性が悪化する結果、クラッドのPL強度が減少し、クラッドのPL強度がコンタクトのPL強度に対して90%以下になる。さらに、バンド端発光も弱まりバンド端発光波長の同定が難しくなる結果、電圧特性の指標であるE(BAND)-E(DAP)を生成しにくくなる。
【0062】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、更には、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは63度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また117度以下であることが好ましい。63度未満の角度では、In取り込が不均一になりクラッド層の結晶性が悪化する結果、クラッドのPL強度が減少し、クラッドのPL強度がコンタクトのPL強度に対して90%以下になる。さらに、バンド端発光も弱まりバンド端発光波長の同定が難しくなる結果、電圧特性の指標であるE(BAND)-E(DAP)を生成しにくくなる。80度を越え100度未満の角度では、In取り込が不均一になりクラッド層の結晶性が悪化する結果、クラッドのPL強度が減少し、クラッドのPL強度がコンタクトのPL強度に対して90%以下になる。さらに、バンド端発光も弱まりバンド端発光波長の同定が難しくなる結果、電圧特性の指標であるE(BAND)-E(DAP)を生成しにくくなる。117度を越える角度では、In取り込が不均一になりクラッド層の結晶性が悪化する結果、クラッドのPL強度が減少し、クラッドのPL強度がコンタクトのPL強度に対して90%以下になる。さらに、バンド端発光も弱まりバンド端発光波長の同定が難しくなる結果、電圧特性の指標であるE(BAND)-E(DAP)を生成しにくくなる。これ故に、角度ALPHAは63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲にあることが好ましい。
【0063】
レーザ共振器のための第1及び第2の端面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。しかしながら、第1及び第2の端面27、29は共振器のための,ミラーとしての平坦性、垂直性を有する。これ故に、第1及び第2の端面27、29をへき開面と区別するために割断面と呼ぶこともある。第1及び第2の端面27、29とこれらの端面27、29間に延在するように向きづけられたレーザ導波路とを用いて、低しきい値のレーザ発振が可能になる。III族窒化物半導体レーザ素子11は、第1及び第2の端面27、29上にそれぞれ設けられた誘電体多層膜43a、43bを更に備えることができる。端面27、29にも端面コートを適用して、端面コートにより反射率を調整できる。
【0064】
PLスペクトルの測定において、p型クラッド層23の膜厚D23が0.18μm以上であるとき、p型クラッド層23は、他のp型半導体層からの信号成分に対して充分に強いスペクトルを提供できる。p型クラッド層23はInAlGaN層を含み、このInAlGaN層は180nm以上であることが好ましい。p型クラッド層23のための四元InAlGaNの電圧特性を良好な精度で評価するためには、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるクラッド成分(クラッド層における励起からの信号成分)の割合を90%以上にすることが好ましい。この割合は、(PLスペクトルにおけるコンタクト成分のDAP発光積分強度)/(全体のDAP発光積分強度) < 0.1によって規定される。
【0065】
また、n型クラッド層21はInAlGaN層を含むことが好ましい。n型クラッド層21がInAlGaN層を含むとき、良好な光閉じ込め性能を提供できる。
【0066】
図3は、いくつかのIII族窒化物半導体レーザ素子に関して、III族窒化物半導体レーザ素子個々のフォトルミネッセンススペクトルにおけるエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))を示す図面である。図3を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7におけるエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))が示されている。発明者らは、二次イオン質量分析法を用いてp型クラッド層に含まれるいくつかの元素(Mg、Si、C)の濃度を調べている。
・III族窒化物半導体レーザ素子S1。
マグネシウム濃度:1×1018cm−3
酸素濃度:6×1017cm−3
炭素濃度:7×1016cm−3
・III族窒化物半導体レーザ素子S2。
マグネシウム濃度:2×1018cm−3
酸素濃度:7×1017cm−3
炭素濃度:6×1016cm−3
・III族窒化物半導体レーザ素子S3。
マグネシウム濃度:1×1018cm−3
酸素濃度:9×1017cm−3
炭素濃度:8×1016cm−3
・III族窒化物半導体レーザ素子S4。
マグネシウム濃度:6×1018cm−3
酸素濃度:6×1017cm−3
炭素濃度:4×1016cm−3
・III族窒化物半導体レーザ素子S5。
マグネシウム濃度:1×1019cm−3
酸素濃度:1×1017cm−3
炭素濃度:1×1016cm−3
・III族窒化物半導体レーザ素子S6。
マグネシウム濃度:8×1018cm−3
酸素濃度:2×1017cm−3
炭素濃度:3×1016cm−3
・III族窒化物半導体レーザ素子S7。
マグネシウム濃度:1×1019cm−3
酸素濃度:8×1016cm−3
炭素濃度:3×1016cm−3
【0067】
これらの元素濃度の実験結果として、上記の元素濃度とエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))との関係を説明する。III族窒化物半導体レーザ素子S4〜S7は、発明者らによって行われる改善・改良のための実験において得られたデバイスであり、III族窒化物半導体レーザ素子S1〜S3は、これらの実験の前において得られたデバイスである。改善・改良のための実験では、例えばMg濃度の上昇、酸素濃度の低減、端子濃度の低減を可能にする成膜を目指す。ここに示されていない他の実験における知見も含めるとき、これらの2つのグループは、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))0.42エレクトロンボルト(eV)を境に分けられる。
【0068】
発明者らの検討によれば、これらの元素濃度の観点からも、III族窒化物半導体レーザ素子S1〜S7は、一群(III族窒化物半導体レーザ素子S1〜S3)と別の一群(III族窒化物半導体レーザ素子S4〜S7)とに分けられる。
・III族窒化物半導体レーザ素子S1〜S3におけるは元素濃度の範囲。
Mg濃度:3×1018cm−3未満。
O濃度:6×1017cm−3より大きい。
C濃度:4×1016cm−3より大きい。
・III族窒化物半導体レーザ素子S4〜S7におけるは元素濃度の範囲。
Mg濃度:3×1018cm−3以上1×1020cm−3以下。
O濃度:6×1017cm−3以下6×1016cm−3以上。
C濃度:4×1016cm−3以下4×1015cm−3以上。
【0069】
これらの実験及び更なる実験からの知見に基づく検討によれば、p型クラッド層23中の水素濃度は4×1018cm−3以下であることが好ましい。この上限は、Mg-H複合体の生成によるMg不活性化による電圧特性悪化を防止することに基づく。
【0070】
上記の検討から、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))の上限が0.42eV以下であるとき、低減された順方向電圧をIII族窒化物半導体レーザ素子に提供できる。また、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))は例えば0.3eV以上であることがよい。この下限は、経験的に、Mg濃度を増大させるとDAP発光ピーク位置は長波長側(低エネルギー側)にシフトする。E(BAND)-E(DAP)を0.3eV以下にするために単純にMg濃度を低下させても(DAP発光波長を短波長側にシフト)、Mg濃度の低下による電圧特性の悪化を同時に招いてしまい、結局0.3eV以下にならない。0.3eVという値は、閥値のようなものに基づく。
【0071】
p型クラッド層23のp型ドーパントはマグネシウムを含み、p型クラッド層23において、電気伝導を担うキャリアは正孔である。マグネシウム濃度が3×1018cm−3以上であるとき、III族窒化物半導体レーザ素子11の電圧特性が悪化しないレベルのキャリア濃度を電気伝導のために提供できる。
【0072】
p型クラッド層23のn型不純物は酸素を含み、p型クラッド層23において電気伝導を担うキャリアは正孔である一方で、酸素は電子を提供するドナーとして働く。酸素濃度が6×1017cm−3以下であるとき、p型クラッド層23におけるキャリア補償を抑制して、活性化されたアクセプタからキャリアが電気伝導を担うことを可能にする。6×1017cm−3以下の酸素濃度は、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))を0.42エレクトロンボルト以下の値にすることに有利である。
【0073】
p型クラッド層23は炭素不純物を含み、炭素が電子を提供するドナーとして働くとき、6×1017cm−3以下の炭素濃度は、p型クラッド層におけるキャリア補償を抑制して、活性化されたアクセプタからキャリアが電気伝導を担うことを可能にする。p型クラッド層23において、6×1017cm−3以下の炭素濃度は、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))を0.42エレクトロンボルト以下の値にすることに有利である。
【0074】
p型クラッド層23は水素を含み、水素はp型ドーパントのMgと結合して、p型ドーパントの活性化を妨げる。p型クラッド層23の水素濃度は4×1018cm−3以下であることが良い。p型クラッド層23中の水素濃度を低減することは、p型ドーパントが深い準位を形成することなく、p型クラッド層23におけるキャリア濃度を増加させることになる。
【0075】
図1を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子11は、p型クラッド層23の上に設けられたp型コンタクト層33を更に備えることができる。p型コンタクト層33のp型III族窒化物半導体のバンドギャップは、p型クラッド層23のp型III族窒化物半導体のバンドギャップより小さい。p型コンタクト層33のp型ドーパント濃度は、p型クラッド層23のp型ドーパント濃度より大きいことが良い。
【0076】
p型コンタクト層33の厚さD33は例えば0.06マイクロメートル以下であることが良い。p型クラッド層23のためのIII族窒化物半導体の電圧特性を良好な精度で評価するためには、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるクラッド成分(クラッド層における励起からの信号成分)の割合を90%以上にすることが好ましく、p型コンタクト層33の厚さが0.06マイクロメートル以下であるとき、p型コンタクト層33からのコンタクト成分がクラッド成分に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。
【0077】
p型コンタクト層33は、p型III族窒化物半導体からなる。p型コンタクト層33は例えばp型GaNからなることができ、p型コンタクト層33のp型ドーパント濃度は1×1019cm−3以上であることが好ましい。p型GaNが1×1019cm−3以上のp型ドーパント濃度を有するとき、p型コンタクト層33からのコンタクト成分がクラッド成分に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。
【0078】
図1に示されるように、p型コンタクト層33は、単一の層に限定されることなく、複数のIII族窒化物半導体層を含むことができ、これらのIII族窒化物半導体層は互いに異なるp型ドーパント濃度を有する。p型コンタクト層33は、例えばp型の第1III族窒化物半導体層34a及びp型の第2III族窒化物半導体層34bを含む。第2III族窒化物半導体層34bは第1III族窒化物半導体層34aとp型クラッド層23との間に設けられる。第1III族窒化物半導体層34aのp型ドーパント濃度は第2III族窒化物半導体層34bのp型ドーパント濃度より大きいことが好ましい。p型クラッド層23のp型ドーパント濃度は第2III族窒化物半導体層34bのp型ドーパント濃度より小さいことが好ましい。アノード電極15は、第1III族窒化物半導体層34aに接触を成す。
【0079】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、図1に示されるように、p型クラッド層23に接して設けられた半導体層45を更に備えることができる。この半導体層45の材料は、半導体層45のバンドギャップがp型クラッド層23のバンドギャップと同じになるように、p型クラッド層23の材料と同じである。半導体層45のp型ドーパント濃度はp型クラッド層23のp型ドーパント濃度より小さい。半導体層45の厚さD45はp型クラッド層23の厚さD23より薄いことが好ましい。これ故に、半導体層45は、明りょうなバンド端発光を得るためのモニタ半導体層として利用可能である。
【0080】
既に説明したように、フォトルミネッセンススペクトルは、ドナーアクセプタ対発光だけでなく、バンド端発光も利用する。発明者らの知見によれば、III族窒化物半導体では、アクセプタ濃度が大きくなるにつれてバンド端発光は弱まる。一方で、p型クラッド層23には、その特性から求められる濃度のp型ドーパントが添加される。フォトルミネッセンススペクトルにおいて良好な信号強度のバンド端発光を得るために、p型クラッド層23に接して設けられた半導体層45を用いることが有効である。半導体層45のp型ドーパント濃度及び厚さは、p型クラッド層23のp型ドーパント濃度及び厚さと独立していることができる。これ故に、半導体層45を用いて、そのp型ドーパント濃度をp型クラッド層23のp型ドーパント濃度より小さくでき、また半導体層45の厚さD45をp型クラッド層23の厚さD23より薄くすることが可能になる。
【0081】
半導体層45の厚さD45は40nm以下であることが好ましい。半導体層45の膜厚D45が40nmより厚いとき、p型ドーパント濃度が低めの半導体層45の追加による抵抗増加のため、発光素子の電圧特性が低下する可能性がある。一方で、半導体層45の厚さD45は5nm以上であることが好ましい。この半導体層45の膜厚が5nmより薄いとき、この半導体層45は励起光のエネルギを十分に吸収することができず、充分な強度のバンド端発光が半導体層45から得られない。したがって、半導体層45の好適な厚さは5nm以上40nm以下の範囲にある。
【0082】
半導体層45のp型ドーパント濃度は1×1017cm−3以上1×1018cm−3未満の範囲にあることが好ましい。1017cm−3台のp型ドーパント濃度が、良好なバンド端発光を得るために半導体層45に好ましい。
【0083】
図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。工程S101では、III族窒化物半導体レーザ素子の作製のための基板(基板は、図5の(a)部に符号「51」として参照される)を準備する。基板51の六方晶系III族窒化物半導体のc軸(図1のベクトルVC)は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸方向に法線軸NXに対して有限な角度(図1に示された角度ALPHA)で傾斜している。これ故に、基板51は、六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性の主面51aを有する。図5の(a)部において、エピタキシャル基板はほぼ円板形の部材として描かれているけれども、基板生産物SPの形状はこれに限定されるものではない。
【0084】
工程S102では、III族窒化物半導体レーザ素子のためのエピタキシャル基板を形成する。工程S103では、図5の(a)部に示されるように、n型クラッド層のためのn型III族窒化物半導体層53及び発光層のためのIII族窒化物半導体層55を基板51の主面51a上に成長炉10aで成長する。必要な場合には、n型III族窒化物半導体層53及びIII族窒化物半導体層55の成長に先立って、基板51の主面51a上に成長炉10aで成長することができる。次いで、図5の(b)部に示されるように、工程S104では、p型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層57を基板51の主面51a上に成長炉10aで成長する。必要な場合には、工程S105では、p型III族窒化物半導体層57の成長の後に、及び/又はp型III族窒化物半導体層57の成長の前に、図6の(a)部に示されるように、p型III族窒化物半導体層57に接するようにp型III族窒化物半導体層59を成長炉10aで成長する。工程S106では、図6の(b)部に示されるように、p型III族窒化物半導体層57の成長の後に、p型コンタクト層のためのp型III族窒化物半導体層61を基板51の主面51a上に成長炉10aで成長する。
【0085】
III族窒化物半導体発光素子のためのエピタキシャル基板Eは、基板51の主面51a上に設けられておりn型クラッド層のためのn型III族窒化物半導体層53と、基板51の主面51a上に設けられており活性層のためのIII族窒化物半導体層55と、基板51の主面51a上に設けられておりp型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層57とを備える。n型III族窒化物半導体層53、III族窒化物半導体層55及びp型III族窒化物半導体層57は、基板51の主面51a上に設けられている。p型III族窒化物半導体層57は、アクセプタのレベルを提供するp型ドーパントとドナーのレベルを提供するn型不純物とを含む。p型III族窒化物半導体層57は、p型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層57のPLスペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と該PLスペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))が0.42エレクトロンボルト以下であるように設けられる。
【0086】
これらの工程により、エピタキシャル基板Eが作製される。図7の(a)部は、エピタキシャル基板Eの一例を示す。
・基板51:{20−21}面を有するGaNウエハ。
・バッファ層52:厚さ1.1μm、SiドープGaN。
・n型III族窒化物半導体層53:厚さ1.2μm、SiドープInAlGaN。InAlGaNのIn組成0.03及びAl組成0.14。
・III族窒化物半導体層55の構成層。
n側光ガイド層:厚さ0.250μm、SiドープGaN層;厚さ0.115μm、SiドープInGaN層(In組成0.03)。
活性層(量子井戸構造)。
井戸層:厚さ3nm、アンドープInGaN(In組成0.03)。
障壁層:厚さ15nm、アンドープGaN。
p側光ガイド層:厚さ0.075μm、MgドープInGaN層(In組成0.03);厚さ0.050μnm、MgドープInGaN層(In組成0.03);厚さ0.200μm、MgドープGaN層。
電子ブロック層:厚さ0.020μm、MgドープGaN層。
・p型III族窒化物半導体層57:厚さ0.4μm、MgドープInAlGaN。
InAlGaNのIn組成0.03及びAl組成0.14。
・p型III族窒化物半導体層59:厚さ0.050μm、MgドープInAlGaN。InAlGaNのIn組成0.03及びAl組成0.14。
・p型III族窒化物半導体層61:厚さ0.050μm、Mgドープp+GaN。
【0087】
工程S107において、図7の(a)部に示されるように、エピタキシャル基板Eに励起光L(Ex)を照射して、p型III族窒化物半導体層(p型クラッド層)57のバンド端発光及びp型クラッド層におけるドナーアクセプタ対発光を含むPLスペクトルL(PL)の測定を行う。測定装置10bは、励起光源9a、検出器9b、温度コントローラ9c及び筐体9dを含む。図7の(b)部に示されるように、励起光源9aからの励起光L(Ex)がエピタキシャル基板Eのエピ表面から入射して、この光はp型III族窒化物半導体層(p型クラッド層)57によって吸収される。この励起は、バンド間の励起及びドナー・アクセプタレベル間の励起の両方を含む。励起光L(Ex)の波長は、p型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層57におけるバンドギャップ波長(バンドギャップEg)より短く、例えば波長244nm(E=5.0eV)のAr−SHGレーザ光を用いることができる。温度コントローラ9cは、PL測定が、絶対温度100K以下、好ましくは10K以下、更に好ましくはHe温度で行われることを可能にする。低温におけるPL測定によってp型クラッド層から明瞭な信号を得ることができる。PLスペクトルの測定を絶対温度100度以下の温度で行うとき、明確なピークを示すバンド端発光及びドナーアクセプタ対発光を含むことができる。
【0088】
工程S108では、PLスペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)とドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))を求める。ここで、E(BAND)及びE(DAP)の単位は例えばエレクトロンボルトで行う。
【0089】
工程S109では、上記の差(E(BAND)−E(DAP))を用いて、エピタキシャル基板Eに引き続く工程を適用するか否かの判断を行う。判断は、例えば差(E(BAND)−E(DAP))を基準値と比較することにより行うことができる。
【0090】
この作製方法によれば、エピタキシャル基板Eを成長した後に、エピタキシャル成長工程後の工程に進む前に、p型III族窒化物半導体層57に励起光L(Ex)を照射して、バンド端発光及びドナーアクセプタ対発光を含むPLスペクトルの測定を行う。このPL測定におけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)及びドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)を用いて、差(E(BAND)−E(DAP))を生成し、この差(E(BAND)−E(DAP))を用いてエピタキシャル基板に引き続く処理を適用するか否かの判断を行う。既に説明したように、差(E(BAND)−E(DAP))はIII族窒化物半導体レーザ素子の電圧特性(例えばVf)との相関を示す。これらの工程を用いて作製されたIII族窒化物半導体レーザ素子では、p型クラッド層の高い抵抗に起因した電圧特性が改善される。
【0091】
工程S109における基準値としては、InAlGaNといったp型クラッド層では、0.42エレクトロンボルトを用いることができる。差(E(BAND)−E(DAP))が、これまで達成できなかった0.42エレクトロンボルト以下であるとき、p型InAlGaNクラッド層を有するIII族窒化物半導体レーザ素子により好適な電圧特性を提供できる。
【0092】
工程S110では、工程S109における判断が肯定的であるとき、III族窒化物半導体レーザ素子のための電極を形成するための加工をエピタキシャル基板Eに施す。
【0093】
必要な場合には、工程S111では、差(E(BAND)−E(DAP))に基づき、p型クラッド層の成膜のリファインのためにエピタキシャル基板Eの引き続く作製における成膜条件を見直すことを行っても良い。この作製方法によれば、電極を作製した後に得られるIII族窒化物半導体発光素子の評価を待つことなく、エピタキシャル基板EのPLスペクトル測定の結果に基づき、製造工程に細かな成膜条件に関するフィードバックを行うことができる。
【0094】
工程S112では、工程S109における判断が否定的であるとき、III族窒化物半導体レーザ素子のための電極を形成するための加工をエピタキシャル基板Eに施さない決定を行う。この場合には、工程S112において、差(E(BAND)−E(DAP))に基づき、p型クラッド層の成膜のためにエピタキシャル基板Eの引き続く作製における成膜条件を見直す。この作製方法によれば、電極を作製した後に得られるIII族窒化物半導体発光素子の評価を待つことなく、エピタキシャル基板Eのフォトルミネセンススペクトル測定の結果に基づき、製造工程に成膜条件に関する速やかなフィードバックが可能になる。この作製方法は、迅速な工程管理を可能にする。
【0095】
既に説明したように、エピタキシャル基板を作製する工程S102では、p型コンタクト層のためのp型III族窒化物半導体層61を基板51上に成長する。p型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層57は、p型III族窒化物半導体層61と発光層のためのIII族窒化物半導体層55との間に設けられる。p型III族窒化物半導体層61のp型ドーパント濃度はp型III族窒化物半導体層57のp型ドーパント濃度より大きく、p型III族窒化物半導体層61のバンドギャップはp型III族窒化物半導体層57のバンドギャップより小さい。p型III族窒化物半導体層61の厚さは0.06マイクロメートル以下であることが好適であり、p型III族窒化物半導体層61のp型ドーパント濃度は1×1019cm−3以上であることが好適である。
【0096】
p型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層57の電圧特性を良好な精度で評価するためには、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるクラッド成分(クラッド層における励起からの信号成分)の割合を90%以上にすることが好ましく、p型コンタクト層のためのp型III族窒化物半導体層61の厚さが0.06マイクロメートル以下であるとき、p型III族窒化物半導体層61からのPL成分(コンタクト成分)は、p型III族窒化物半導体層57からのPL成分(クラッド成分)に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。また、p型III族窒化物半導体層61が1×1019cm−3以上のp型ドーパント濃度を有するとき、p型III族窒化物半導体層61からのコンタクト成分は、クラッド成分に対して大きな割合を占めることなく、フォトルミネッセンススペクトルに含まれるコンタクト成分の割合を10%程度以下に下げることに有効である。p型コンタクト層のためのp型III族窒化物半導体層61はp型GaNからなることが好ましい。p型GaNからなるコンタクト層は、明確なピークを示すバンド端発光及びドナーアクセプタ対発光を含むフォトルミネセンススペクトルの測定に好適である。
【0097】
(実施例1)
実施例1では、オフ角度75度の半極性{20−21}面を有するGaN基板上に、図8の(a)部に示されるレーザダイオードのための半導体積層を有機金属気相成長法により成長する。原料にはトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)及びビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(CpMg)を用いる。n型InAlGaNクラッド層は摂氏870度で成長する。光ガイド層は摂氏840度で成長する。InGaN発光層は摂氏715度で成長する。p型InAlGaNクラッド層は摂氏870度で成長する。p型GaNコンタクト層は摂氏870度で成長する。p型GaNコンタクト層の厚さは0.05μmであり、p型GaNコンタクト層のMg濃度は3×1020cm−3である。
【0098】
実施例1におけるIII族窒化物半導体レーザダイオードのp型クラッドInAlGaN層におけるは元素濃度の範囲。
Mg濃度:1×1019cm−3
O濃度:1×1017cm−3
C濃度:1×1016cm−3
H濃度:2×1018cm−3
エネルギ差(E(BAND)−E(DAP)):0.39エレクトロンボルト(eV)。
順方向駆動電圧:6.0V。
【0099】
(実施例2)
実施例1では、75度のオフ角度を有する半極性{20−21}面を有するGaN基板上に、図8の(b)部に示されるレーザダイオードのための半導体積層を有機金属気相成長法により成長する。n型InAlGaNクラッド層は摂氏870度で成長する。光ガイド層は摂氏840度で成長する。InGaN発光層は摂氏725度で成長する。p型InAlGaNクラッド層は摂氏870度で成長する。p型GaNコンタクト層は摂氏870度で成長する。p型GaNコンタクト層は2層構造を有する。第1GaN層の厚さは0.010μmであり、そのMg濃度は3×1020cm−3である。第2GaN層の厚さは0.04μmであり、そのMg濃度は3×1019cm−3である。
【0100】
実施例2におけるIII族窒化物半導体レーザダイオードのp型クラッドInAlGaN層におけるは元素濃度の範囲。
Mg濃度:1×1019cm−3
O濃度:8×1016cm−3
C濃度:3×1016cm−3
H濃度:1×1018cm−3
エネルギ差(E(BAND)−E(DAP)):0.39エレクトロンボルト(eV)。
順方向駆動電圧:5.9V。
【0101】
(実施例3)
【0102】
図9は、Ar−SHGレーザ光を用いて得られるPLスペクトルを示す。図9において、短い波長領域の鋭いピークがバンド端発光を示し、長い波長領域における大きなピークがドナーアクセプタ対(DAP)発光を示す。図9には、3つのスペクトルSPL1、SPL2、SPL3が示されている。2つのスペクトルSPL1、SPL2は、同じp型クラッド層の構造を有するけれども、異なるコンタクト層の構造(単層のコンタクト層、2層のコンタクト層)を有するデバイスから得られる。残りの1つのスペクトルSPL3は、2層のコンタクト層であり、2層のp型クラッド層の構造を有する。図9のPLスペクトルは、p型クラッド層の構造に大きく依存するけれども、p型コンタクト層の構造には大きく依存しない。これは、Ar−SHGレーザ光の励起エネルギはp型コンタクト層でも吸収されるけれども図9のPLスペクトルは主にp型クラッド層(本実施例では、InAlGaN層)の状態をよく示していることを表す。
【0103】
図10の(a)部を参照すると、バンド端発光及びDAP発光を含むPLスペクトルが示されている。このPLスペクトルは、細かな構造を有しており、このまま、つまり生の測定スペクトルは、ピークの特定に不向きである。生の測定スペクトルにおける細かな構造は、フォノンレプリカに起因するものと考えられる。
フォノンレプリカとは、図10の(b)部に示されるように、フォノンを媒介とした間接遷移T(PHONON)に起因する発光であり、これに起因するピークは、価電子帯Ev及び伝導帯Ecとの間のバンド端と連動して動き、またフォノン準位が離散的なであるので、離散的に配列されたピークを持つ。これ故に、生の測定スペクトルにおける最大強度の位置から、DAP発光ピーク波長を見積もるとき、発明者らの知見によれば、その見積もりは、フォノンレプリカの影響を強く受けて、DAP発光ピーク波長の位置を正確に同定することは容易ではない。このため、フォノンレプリカの影響を取り除いた解析を行うことが好適であり、このために、平均化処理を行うことができる。
【0104】
平均化処理の一例に関して説明する。図10の(a)部には、スペクトル部分SP1、SP2、SP3、SP4、SP5が示されている。スペクトル部分SP1、SP2、SP3にはフォノンレプリカの影響が現れており、スペクトル部分SP4、SP5はフォノンレプリカの影響が現れていない。フォノンレプリカの影響が現れていないスペクトル部分SP4、SP5に対する接線L1(TANG)、L2(TANG)(図11の(a)部における2つの破線)を引き、これらの接線の交点をピーク位置とする。図11の(a)部は、生のPLスペクトルPL0とソフトウエハ処理による平均化処理を加工されたPLスペクトルPL(AVR)を示す。平均化処理によるPLスペクトルPL(AVR)におけるピーク位置の波長は、生のスペクトルPL0における接線の交点位置の波長とほぼ同じであり、これは、いずれの方法においても、フォノンレプリカに起因する細かな構造の影響が除かれることを示す。
【0105】
平均化処理することによってフォノンレプリカによるピークの影響を低減してDAP発光ピーク波長を同定したとき、既に説明したように、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))は駆動電圧(Vf)と明らかに強い相関関係を示す。この相関は、駆動電圧(Vf)がp型クラッド層の電圧特性と強く関連していることを示唆している。これは、バンドギャップに対する相対的なドナー準位及び/又はバンドギャップに対する相対的なアクセプタ準位の深さが駆動電圧特性と関係していることを示す。
【0106】
図11の(b)部は、改善・改良前のp型クラッド層の構造を模式的に示す図面であり、図11の(c)部は、本実施の形態に係るp型クラッド層の構造を模式的に示す図面である。図11の(b)部及び(c)部には、伝導帯Ec、価電子帯Ev、半導体内である程度のエネルギ範囲に分布する多数のアクセプタ準位を代表した平均のアクセプタ準位EA(AVR)、半導体内である程度のエネルギ範囲に分布する多数のドナー準位を代表した平均のドナー準位ED(AVR)が示されている。図11の(b)部に示されるように、アクセプタ準位がその平均として深い(つまり、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))に対応する波長差が大きくなる)とき、価電子帯Evから平均のアクセプタ準位EA(AVR)に電子が励起されにくくなり、電気伝導に寄与できるキャリア数(正孔数)が減少する。この結果、p型クラッド層の電圧特性が悪くなると考えられる。図11の(c)部に示されるように、アクセプタ準位がその平均として適切な値(つまり、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))に対応する波長差が小さくなる)であるとき、価電子帯Ev又は平均のアクセプタ準位EA(AVR)に電子が励起されるようになり、電気伝導に寄与できるキャリア数(正孔数)が増加する。この結果、p型クラッド層の電圧特性が良好になると考えられる。
【0107】
以上説明したように、エネルギ差(E(BAND)−E(DAP))の改善により、駆動電圧(Vf)に関する情報を抽出できる。III族窒化物半導体レーザ素子が、所定のエネルギ差(E(BAND)−E(DAP))が得られるようにドナー及びアクセプタを制御したp型クラッド層を有するとき、改善された駆動電圧(Vf)の特性を有する。また、プロセス前の段階におけるp型クラッド層の駆動電圧(Vf)の電気特性の管理指標としても有効である。
【0108】
本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本実施の形態によれば、低減された順方向電圧を有するIII族窒化物半導体レーザ素子が提供される。また、このIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法が提供される。さらに、低減された順方向電圧を有するIII族窒化物半導体発光素子のためのエピタキシャル基板が提供することを目的とする。
【符号の説明】
【0110】
11…III族窒化物半導体レーザ素子、13…レーザ構造体、15…アノード電極、17…基板、17a…主面、17b…裏面、19…半導体領域、19a…半導体領域表面、21…n型クラッド層、23…p型クラッド層、25…活性層、25a…井戸層、25b…障壁層、27、29…端面、ALPHA…角度、Sc…c面、NX…法線軸、31…絶縁膜、31a…絶縁膜開口、35…n側光ガイド層、37…p側光ガイド層、39…電子ブロック層、41…カソード電極、43a、43b…誘電体多層膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体発光素子であって、
基板の主面の上に設けられておりn型III族窒化物半導体からなるn型クラッド層と、
前記基板の前記主面の上に設けられておりIII族窒化物半導体からなる活性層と、
前記基板の前記主面の上に設けられておりp型III族窒化物半導体からなるp型クラッド層と、
を備え、
前記活性層は前記n型クラッド層と前記p型クラッド層との間に設けられ、
前記n型クラッド層、前記活性層及び前記p型クラッド層は、前記基板の前記主面の法線軸にそって配置されており、
前記p型クラッド層には、アクセプタのレベルを提供するp型ドーパントが添加されており、
前記p型クラッド層は、ドナーのレベルを提供するn型不純物を含み、
前記p型ドーパントの濃度は前記n型不純物の濃度より大きく、
前記p型クラッド層のフォトルミネセンススペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と該フォトルミネセンススペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))が、0.42エレクトロンボルト以下であり、ここで、前記バンド端発光のエネルギE(BAND)及び前記ドナーアクセプタ対発光のエネルギE(DAP)はエレクトロンボルトの単位で表され、
前記n型クラッド層の前記n型III族窒化物半導体のc軸は、前記法線軸に対して傾斜しており、
前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体のc軸は、前記法線軸に対して傾斜している、III族窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記p型ドーパントはマグネシウムを含み、
前記マグネシウムの濃度は3×1018cm−3以上である、請求項1に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記n型不純物は酸素を含み、
前記酸素の濃度は6×1017cm−3以下である、請求項1又は請求項2に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記p型クラッド層はInAlGaN層を含み、
前記InAlGaN層は180nm以上である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記n型クラッド層はInAlGaN層を含む、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体の前記c軸と前記法線軸との成す角度は、10度以上80度以下又は100度以上170度以下の範囲にある、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体の前記c軸と前記法線軸との成す角度は、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲にある、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項8】
前記活性層の発光スペクトルは、500nm以上580nm以下の範囲にピーク波長を有する、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項9】
前記p型クラッド層の上に設けられたp型コンタクト層を更に備え、
前記p型コンタクト層の厚さは、0.06マイクロメートル以下であり、
前記p型コンタクト層は、p型III族窒化物半導体からなり、
前記p型コンタクト層の前記p型III族窒化物半導体のバンドギャップは、前記p型クラッド層の前記p型III族窒化物半導体のバンドギャップより小さく、
前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は、前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度より大きい、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項10】
前記p型コンタクト層はp型GaNからなり、
前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は、1×1019cm−3以上である、請求項9に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項11】
前記p型コンタクト層は、p型の第1III族窒化物半導体層及びp型の第2III族窒化物半導体層を含み、
前記第2III族窒化物半導体層は前記第1III族窒化物半導体層と前記p型クラッド層との間に設けられ、
前記第1III族窒化物半導体層のp型ドーパント濃度は前記第2III族窒化物半導体層のp型ドーパント濃度より大きく、
前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度は前記第2III族窒化物半導体層のp型ドーパント濃度より小さく、
当該III族窒化物半導体発光素子は、前記第1III族窒化物半導体層に接触を成すアノード電極を更に備える、請求項9又は請求項10に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項12】
前記基板の前記主面はIII族窒化物からなり、
前記基板の前記主面の前記法線軸は、前記基板の前記III族窒化物のc軸に対して傾斜する、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項13】
前記p型クラッド層は炭素不純物を含み、
前記炭素不純物の濃度は4×1016cm−3以下である、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項14】
前記p型クラッド層に接して設けられたモニタ半導体層を更に備え、
前記モニタ半導体層の材料は前記p型クラッド層の材料と同じであり、
前記モニタ半導体層のp型ドーパント濃度は、前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度より小さく、
前記モニタ半導体層の厚さは前記p型クラッド層の厚さより薄い、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項15】
前記モニタ半導体層の厚さは5nm以上40nm以下の範囲にある、請求項14に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項16】
前記モニタ半導体層のp型ドーパント濃度は1×1017cm−3以上1×1018cm−3未満の範囲にある、請求項14又は請求項15に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項17】
前記p型クラッド層は水素を含み、
前記p型クラッド層の水素の濃度は4×1018cm−3以下である、請求項1〜請求項16のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項18】
III族窒化物半導体発光素子を作製する方法であって、
n型クラッド層のためのn型III族窒化物半導体層、活性層のためのIII族窒化物半導体層、及びp型クラッド層のためのp型III族窒化物半導体層を基板の上に成長して、前記III族窒化物半導体発光素子のためのエピタキシャル基板を作製する工程と、
前記p型III族窒化物半導体層に励起光を照射して、前記p型III族窒化物半導体層のバンド端発光及び前記p型クラッド層におけるドナーアクセプタ対発光を含むフォトルミネセンススペクトルの測定を行う工程と、
前記フォトルミネセンススペクトルにおけるバンド端発光ピーク値のエネルギE(BAND)と前記フォトルミネセンススペクトルにおけるドナーアクセプタ対発光ピーク値のエネルギE(DAP)との差(E(BAND)−E(DAP))を生成する工程と、
前記差(E(BAND)−E(DAP))を用いて、前記エピタキシャル基板に引き続く工程を適用するか否かの判断を行う工程と、
前記判断が肯定的であるとき、電極を形成するための加工を前記エピタキシャル基板に施す工程と、
を備え、
前記励起光の波長は、前記p型クラッド層のための前記p型III族窒化物半導体層におけるバンドギャップ波長より短い、III族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項19】
前記差(E(BAND)−E(DAP))は0.42エレクトロンボルト以下であり、ここで、前記バンド端発光のエネルギE(BAND)及び前記ドナーアクセプタ対発光のエネルギE(DAP)はエレクトロンボルトの単位で表される、請求項18に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項20】
前記フォトルミネセンススペクトルの測定は、絶対温度100度以下の温度で行われる、請求項18又は請求項19に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項21】
前記p型クラッド層の成膜のために前記エピタキシャル基板の引き続く作製における成膜条件を前記差(E(BAND)−E(DAP))に基づき見直す工程を更に備える、請求項18〜請求項20のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項22】
前記エピタキシャル基板を作製する前記工程は、前記p型クラッド層のための前記p型III族窒化物半導体層を成長した後に、p型コンタクト層のための別のp型III族窒化物半導体層を前記基板の上に成長する工程を更に含み、
前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は前記p型クラッド層のp型ドーパント濃度より大きく、
前記p型コンタクト層のバンドギャップは前記p型クラッド層のバンドギャップより小さく、
前記p型コンタクト層の厚さは0.06マイクロメートル以下であり、
前記p型コンタクト層のp型ドーパント濃度は1×1019cm−3以上である、請求項18〜請求項21のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項23】
前記p型コンタクト層はp型GaNからなる、請求項22に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項24】
前記p型ドーパントはマグネシウムを含み、
前記マグネシウムの濃度は3×1018cm−3以上である、請求項18〜請求項23のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項25】
前記n型不純物は酸素を含み、
前記酸素の濃度は6×1017cm−3以下である、請求項18〜請求項24のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。
【請求項26】
前記p型クラッド層のための前記p型III族窒化物半導体層は炭素不純物を含み、
前記炭素の濃度は4×1016cm−3以下である、請求項18〜請求項25のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子を作製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−26452(P2013−26452A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160077(P2011−160077)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】