説明

MEMSセンサおよびその製造方法

【課題】製造に要する時間の短縮を図ることができる、MEMSセンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板2の表面2a上に、平面視四角環状の壁部6が設けられている。壁部6上には、平面視四角環状の第2絶縁層9が設けられており、この第2絶縁層9を介して、平面視四角形状のキャップ10の周縁部が支持されている。シリコン基板2の表面2a上には、第1絶縁層8、壁部6、第2絶縁層9およびキャップ10により、X/Y可動部3、X/Y固定部4、Z可動部5および分離部7を収容する中空部分20が形成されている。そして、キャップ10は、ポリシリコンからなり、シリコン基板2上にドープトポリシリコン層を形成し、ドープトポリシリコン層に分離溝12,14を形成して、ドープトポリシリコン層を分割することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)技術により製造されるセンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、MEMSセンサの携帯電話機への搭載が開始されたことから、そのMEMSセンサの注目度が急激に高まっている。MEMSセンサの代表的なものとして、たとえば、物体の加速度を検出するための加速度センサが知られている。
従来の加速度センサは、SOI (Silicon On Insulator)基板を加工したものに、ガラスまたはシリコンからなるキャップを貼り合わせることにより作製される。
【0003】
具体的には、SOI基板の表層をなすSOI層(シリコン層)を選択的に除去することにより、可動部と、可動部に対向する固定部と、可動部および固定部を取り囲む四角環状の側壁とが形成される。その後、可動部の下方から絶縁層が除去されることにより、可動部は、SOI基板の基層をなすシリコン基板の表面から浮いた状態で、固定部との対向方向に変位(振動)可能とされる。一方、キャップは、側壁の外形に対応した四角板状に形成される。そして、陽極接合法により、キャップの一方面の周縁部と側壁の上面とが接合される。
【0004】
この接合は、陽極接合装置において行われる。陽極接合装置には、内部を真空状態に維持可能な真空チャンバが設けられている。側壁とキャップとの接合時には、SOI基板およびキャップが真空チャンバ内に搬入される。この搬入後、真空チャンバ内は真空状態にされる。真空チャンバ内では、側壁とキャップの一方面の周縁部とが対向するように、側壁とキャップとが位置合わせされた後、これらを互いに押しつけることにより、側壁とキャップの一方面の周縁部とが当接される。そして、SOI基板およびキャップが加熱されつつ、これらの間に電圧が印加されることにより、側壁とキャップとの陽極接合が達成される。これにより、側壁およびキャップによって密閉された真空空間内に可動部および固定部が配置された構成の加速度センサが得られる。
【0005】
加速度センサ(加速度センサが搭載される物体)に加速度が生じると、可動部が変位し、可動部と固定部との間隔が変化する。これに伴って、可動部および固定部からなるコンデンサの静電容量が変化する。したがって、その静電容量の変化に基づいて、加速度センサに生じた加速度を求めることができる。
【特許文献1】特開2007−150098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、側壁とキャップとを良好に接合させるためには、それらの高精度な位置合わせが必要である。そのため、陽極接合装置のスループットが低く、従来の加速度センサの製造には時間がかかるという問題がある。
そこで、本発明の目的は、製造に要する時間の短縮を図ることができる、MEMSセンサおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、半導体基板と、前記半導体基板の一方面上に設けられる環状の支持部と、ポリシリコンからなり、前記支持部にその周縁部が支持されるキャップと、導電材料からなり、前記半導体基板の一方面上に前記支持部および前記キャップにより形成される中空部分に収容され、所定方向に変位可能な可動部と含む、MEMSセンサである。
【0008】
この構成によれば、半導体基板の一方面上に、環状の支持部が設けられている。この支持部により、ポリシリコンからなるキャップの周縁部が支持されている。そして、支持部およびキャップにより、半導体基板の一方面上に、所定方向に変位可能な可動部を収容する中空部分が形成されている。
半導体基板と可動部との対向方向が所定方向である場合(可動部が半導体基板との対向方向に変位可能である場合)、半導体基板および可動部は、それらの間隔の変化に応じて静電容量が変化するコンデンサを構成する。MEMSセンサ(MEMSセンサが搭載される物体)に所定方向の物理量(たとえば、加速度)が生じ、または、MEMSセンサに所定方向の物理量(たとえば、音圧などの圧力)が作用し、可動部が所定方向に変位すると、半導体基板と可動部との間隔が変化する。これに伴って、半導体基板および可動部からなるコンデンサの静電容量が変化するので、この静電容量の変化に基づいて、所定方向の物理量を検出することができる。
【0009】
また、可動部に対して半導体基板の一方面と平行な方向に対向する固定部が中空部分に設けられ、固定部と可動部との対向方向が所定方向である場合、固定部および可動部は、それらの間隔の変化に応じて静電容量が変化するコンデンサを構成する。MEMSセンサに所定方向の物理量(たとえば、加速度)が生じ、可動部が固定部との対向方向に変位すると、固定部と可動部との間隔が変化する。これに伴って、固定部および可動部からなるコンデンサの静常容量が変化するので、この静電容量の変化に基づいて、所定方向の物理量を求めることができる。
【0010】
前記MEMSセンサは、たとえば、請求項5に記載の製造方法により製造することができる。この製造方法は、半導体基板上に第1犠牲層を挟んで導電材料層を形成する工程と、前記導電材料層を選択的にその厚さ方向にわたって除去することにより、前記導電材料層を分割し、前記導電材料層の各分割部分からなる環状の壁部および可動部を形成する工程と、前記壁部および前記可動部上を選択的に覆い、前記壁部と前記可動部との間を埋め尽くす第2犠牲層を形成する工程と、前記壁部、前記可動部および前記第2犠牲層上に、ポリシリコンを堆積させ、そのポリシリコン層を形成する工程と、前記ポリシリコン層に、その厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を有する前記ポリシリコン層をマスクとして用いるエッチングにより、前記第2犠牲層を選択的に除去し、前記第1犠牲層における前記可助部と接する部分を除去する工程とを含む。
【0011】
本発明に係るMEMSセンサでは、キャップがポリシリコンからなる。たとえば、請求項5に記載の製造方法では、ポリシリコンの堆積によりポリシリコン層が形成され、そのポリシリコン層がキャップとなる。そのため、キャップと支持部との接合が不要であり、MEMSセンサの製造に陽極接合装置を必要としない。よって、本発明に係るMEMSセンサおよびその製造方法によれば、MEMSセンサの製造に要する時間の短縮を図ることができる。
【0012】
前記製造方法は、請求項6に記載のように、前記第1犠牲層における前記可動部と接する部分の除去後、前記ポリシリコン層の前記貫通孔をポリシリコンにより埋め戻す工程をさらに含んでいてもよい。これにより、請求項4に記載のように、前記キャップにより前記中空部分が密閉された構造を得ることができる。中空部分が密閉されることにより、外部から中空部分への水分などの進入を防止できる。
【0013】
前記キャップは、請求項2に記載のように、不純物が高濃度にドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンを用いて形成されていてもよい。この場合、半導体基板および可動部により構成されるコンデンサの他に、キャップおよび可動部により、それらの間隔の変化に応じて静電容量が変化するコンデンサを構成することができる。MEMSセンサに所定方向の物理量(たとえば、加速度)が生じ、または、MEMSセンサに所定方向の物理量(たとえば、音圧などの圧力)が作用し、可動部が所定方向に変位すると、
半導体基板と可動部との間隔およびキャップと可動部との間隔がそれぞれ変化する。これに伴って、2つのコンデンサの静電容量が変化する。したがって、各コンデンサの静電容量の変化に基づいて所定方向の物理量を求め、たとえば、その求めた各物理量の平均値を所定方向の物理量の検出値とすることにより、所定方向の物理量を精度よく検出することができる。
【0014】
このような物理量の検出を達成するためには(2つのコンデンサを利用して所定方向の物理量を検出するためには)、請求項3に記載のように、前記可動部は、前記半導体基板と前記キャップとの対向方向に変位可能であり、前記MEMSセンサは、導電材料からなり、前記半導体基板と電気的に接続される基板電極と、導電材料からなり、前記キャップ上に設けられるキャップ電極とをさらに備えるとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
固1は、本発明の一実施形態に係る加速度センサの複式的な断面図である。
加速度センサ1は、MEMS技術により製造されるセンサ(MEMSセンサ)である。
加速度センサ1は、平面視四角形状のシリコン基板2を備えている。
シリコン基板2の表面2a上には、複数のX/Y可動部3と、各X/Y可動部3に対して間隔を空けて対向する複数のX/Y固定部4と、Z可動部5とが設けられている。
【0016】
たとえば、複数のX/Y可動部3には、シリコン基板2の表面2aと平行なX軸方向に間隔を空けて配置され、それぞれX軸方向と直交するY軸方向に延びる複数のX可動部と、Y軸方向に間隔を空けて配置され、それぞれX軸方向に延びる複数のY可動部とが含まれる。各X可動部のY軸方向の一端部は、X軸方向に延びるX連結部(図示せず)により連結されている。これにより、X可動部およびX連結部は、櫛状構造をなしている。また、各Y可動部のX軸方向の一端部は、Y軸方向に延びるY連結部(図示せず)により連結されている。これにより、Y可動部およびY連結部は、櫛状構造をなしている。
【0017】
一方、複数のX/Y固定部4には、各X可動部に対してX軸方向に間隔を空けて対向し、それぞれY軸方向に延びる複数のX固定部と、各Y可動部に対してY軸方向に間隔を空けて対向し、それぞれX軸方向に延びる複数のY固定部とが含まれる。各X固定部のY軸方向の一端部は、X軸方向に延びるX連結部(図示せず)により連結されている。これにより、X固定部およびX連結部は、櫛状構造をなすX可動部およびX連結部に対し、互いの櫛歯が接触せずに噛み合うような櫛状構造をなしている。また、各Y固定部のX軸方向の一端部は、Y軸方向に延びるY連結部(図示せず)により連結されている。これにより、Y固定部およびY連結部は、櫛状構造をなすY可動部およびY連結部に対し、互いの櫛歯が接触せずに噛み合うような櫛状構造をなしている。
【0018】
Z可動部5は、平面視四角形状に形成されている。
なお、図1には、紙面に直交する方向をY軸方向として、X/Y可動部3のうちのX可動部およびX/Y固定部4のうちのX固定部が示されている。X/Y可動部3のうちのY可動部およびX/Y固定部4のうちのY固定部は、それらの図示が省略されている。
また、シリコン基板2の表面2a上には、シリコン基板2の周縁に沿って、平面視四角環状の壁部6が設けられている。この壁部6に囲まれる空間に、X/Y可動部3、X/Y固定部4およびZ可動部5が壁部6から分離して設けられている。
【0019】
さらに、シリコン基板2の表面2a上には、壁部6に囲まれる空間に、3つの分離部7が壁部6から分離して設けられている。
X/Y可動部3、X/Y固定部4、Z可動部5、壁部6および分離部7は、たとえば、リンなどの不純物のドープにより導電性が付与されたポリシリコン(以下、単に「ドープトポリシリコン」という。)からなる。また、X/Y可動部3、X/Y固定部4、Z可動部5、壁部6および分離部7は、同一層に形成され、同一の厚さを有している。
【0020】
シリコン基板2と壁部6および分離部7との各間には、第1絶縁層8が介在されている。第1絶縁層8は、たとえば、酸化シリコンからなる。
そして、X可動部を連結するX連結部およびY可動部を連結するY連結部は、壁部6の内側面に接続されている。これにより、X/Y可動部3は、X連結部およびY連結部を介して、壁部6と電気的に接続されている。また、シリコン基板2とX/Y可動部3との間には、第1絶縁層8は介在されておらず、X/Y可動部3は、シリコン基板2の表面2a上に浮いた状態で、X連結部およびY連結部により、それぞれ対向するX/Y固定部4との対向方向に変位可能に片持ち支持されている。
【0021】
X固定部を連結するX連結部は、1つの分離部7(以下「X分離部7」という。)の側面に接続されている。これにより、X固定部(X/Y固定部4)は、X連結部を介して、X分離部7と電気的に接続されている。
Y固定部を連結するY連結部は、他の1つの分離部7(以下「Y分離部7」という。)の側面に接続されている。これにより、Y固定部(X/Y固定部4)は、Y連結部を介して、Y分離部7と電気的に接続されている。
【0022】
残りの1つの分離部7(以下「Z分離部7」という。)は、その下方の第1絶縁層8を貫通する貫通電極(図示せず)を介して、シリコン基板2と電気的に接続されている。
Z可動部5には、図示しない接続部が一体に形成されている。この接続部は、壁部6の内側面に接続されている。これにより、Z可動部5は、接続部を介して、壁部6と電気的に(同電位に)接続されている。また、シリコン基板2とZ可動部5との間には、第1絶縁層8は介在されておらず、Z可動部5は、シリコン基板2の表面2a上に浮いた伏態で、接続部により、X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向(シリコン基板2の表面に垂直な方向)に変位可能に支持されている。
【0023】
壁部6および各分離部7上には、第2絶縁層9が設けられている。具体的には、壁部6上において、第2絶縁層9は、壁部6の内周に沿って、その内周形状に対応した平面視四角環状に形成されている。各分離部7上において、第2絶縁層9は、分離部7の表面を選択的に露出させる開口9aを有するパターンに形成されている。第2絶縁層9は、たとえば、酸化シリコンからなる。
【0024】
また、壁部6上には、第2絶縁層9を介して、平面視四角形状のキャップ10の周縁部が支持されている。これにより、シリコン基板2の表面2a上において、第1絶縁層8、壁部6および第2絶縁層9に側方を取り回まれる空間は、その上方からキャップ10によって密閉状態で覆われている。すなわち、シリコン基板2の表面2a上には、第1絶縁層8、壁部6、第2絶縁層9およびキャップ10により、密閉された中空部分20が形成されている。中空部分20は、真空空間または窒素ガスなどの不活性ガスが充満した空間にされている。この中空部分20に、X/Y可動部3、X/Y固定部4、Z可動部5および分離部7が収容されている。また、キャップ10には、各分離部7上の開口9aと連通する開口10aが形成されている。
【0025】
さらに、壁部6上には、接地用導電部11が設けられている。接地用導電部11は、壁部6の外周に沿った平面視四角環状をなし、その内周縁部が第2絶縁層9上に少し乗り上がった状態に形成されている。接地用導電部11は、キャップ10から離間しており、キャップ10と接地用導電部11との間には、第2絶縁層9上に、四角環状の分離溝12が生じている。
【0026】
また、各分離部7上には、電圧印加用導電部13が設けられている。電圧印加用導電部13は、キャップ10の開口10a内に配置され、第2絶縁層9の開口9aを介して分離部7に接続されている。また、電圧印加用導電部13は、開口10aの側面から離間しており、その開口10aの側面と電圧印加用導電部13との間には、環状の分離溝14が生じている。
【0027】
キャップ10、接地用導電部11および電圧印加用導電部13は、ドープトポリシリコンからなり、同一層に形成されている。
キャップ10、接地用導電部11および電圧印加用導電部13上には、層間絶縁膜15が形成されている。層間絶縁膜15は、たとえば、酸化シリコンからなる。そして、層間絶縁膜15は、分離溝12,14に入り込み、分離溝12,14を埋め尽くしている。これにより、キャップ10、接地用導電部11および電圧印加用導電部13は、互いに絶縁されている。
【0028】
キャップ10および接地用導電部11上には、それぞれ層間絶縁膜15を厚さ方向に貫通する貫通孔15a,15bが形成されている。そして、層間絶縁膜15上には、キャップ10および接地用導電部11と対向する位置に、それぞれキャップ電極16および接地用電極17が配置されている。キャップ電極16および接地用電極17は、それぞれ貫通孔15a,15bに入り込み、それぞれキャップ10および接地用導電部11に接続されている。
【0029】
また、各電圧印加用導電部13上には、それぞれ層間絶縁膜15を厚さ方向に貫通する貫通孔15cが形成されている。そして、層間絶縁膜15上には、各電圧印加用導電部13と対向する位置に、それぞれX/Y/Z電極18が配置されている。各X/Y/Z電極18は、それぞれ貫通孔15cに入り込み、それぞれ電圧印加用導電部13に接続されている。キャップ電極16、接地用電極17およびX/Y/Z電極18は、たとえば、アルミニウムからなる。
【0030】
また、層開絶縁膜15上には、パッシベーション膜19が形成されている。パッシベーション膜19には、それぞれキャップ電極16、接地用電極17およびX/Y/Z電極18の各表面をパッドとして露出させるための開口19a,19b,19cが形成されている。パッシペーション膜19は、たとえば、窒化シリコンからなる。
キャップ電極16およびX/Y/Z電極18には、それぞれ一定電位(たとえば、±5V)に制御された配線(図示せず)が接続される。一方、接地用電極17には、グランド電位(0V)に制御された配線(図示せず)が接続される。
【0031】
これにより、互いに対向するX/Y可動部3およびX/Y固定部4の各組は、X/Y可動部3とX/Y固定部4との間に一定電圧が印加され、その間隔の変化により静電容量が変化するコンデンサを構成している。また、シリコン基板2およびZ可動部5は、それらの間に一定電圧が印加され、その間隔の変化により静電容量が変化するコンデンサを構成している。さらに、キャップ10およびZ可動部5は、それらの間に一定電圧が印加され、その間隔の変化により静電容量が変化するコンデンサを構成している。
【0032】
加速度センサ1(加速度センサ1が搭載される物体)にX軸方向の加速度が生じ、各X可動部(X/Y可動部3)がX軸方向に変位すると、互いに対向するX可動部およびX固定部(X/Y固定部4)からなる各コンデンサの静電容量が変化する。そして、静電容量の変化に伴い、壁部6、接地用導電部11および接地用電極17を介してX可動部に接続された配線と、X分離部7、電圧印加用導電部13およびX/Y/Z電極(X電極)18を介してX固定部に電気的に接続された配線とを含む回路に、その静電容量の変化量に応じた電流が流れる。したがって、その電流に基づいて、加速度センサ1に生じたX軸方向
の加速度を検出することができる。
【0033】
加速度センサ1にY軸方向の加速度が生じ、各Y可動部(X/Y可動部3)がY軸方向に変位すると、互いに対向するY可動部およびY固定部(X/Y固定部4)からなる各コンデンサの静電容量が変化する。そして、静電容量の変化に伴い、壁部6、接地用導電部11および接地用電極17を介してY可動部に接続された配線と、Y分離部7、電圧印加用導電部13およびX/Y/Z電極(Y電極)18を介してY固定部に電気的に接続された配線とを含む回路に、その静電容量の変化量に応じた電流が流れる。したがって、その電流に基づいて、加速度センサ1に生じたY軸方向の加速度を検出することができる。
【0034】
また、加速度センサ1にZ軸方向の加速度が生じ、Z可動部5がZ軸方向に変位すると、シリコン基板2とZ可動部5との間隔およびキャップ10とZ可動部5との間隔がそれぞれ変化する。これに伴って、シリコン基板2およびZ可動部5からなるコンデンサおよびキャップ10およびZ可動部5からなるコンデンサの各静電容量が変化する。
シリコン基板2およびZ可動部5からなるコンデンサの静電容量の変化に伴い、壁部6、接地用導電部11および接地用電極17を介してZ可動部5に接続された配線と、Z分離部7、電圧印加用導電部13およびX/Y/Z電極(Z電極)18を介してシリコン基板2に接続された配線とを含む回路に、その静電容量の変化量に応じた電流が流れる。したがって、その電流に基づいて、加速度センサ1に生じたZ軸方向の加速度を検出することができる。
【0035】
一方、キャップ10およびZ可動部5からなるコンデンサの静電容量の変化に伴い、壁部6、接地用導電部11および接地用電極17を介してZ可動部5に接続された配線と、キャップ電極16を介してキャップ10に接続された配線とを含む回路に、その静電容量の変化量に応じた電流が流れる。したがって、その電流に基づいて、加速度センサ1に生じたZ軸方向の加速度を検出することができる。
【0036】
そして、2つのコンデンサの静電容量の変化に基づいて検出された各加速度の平均値を求め、これをZ軸方向の加速度の検出値とすることにより、Z軸方向の加速度を精度よく検出することができる。
図2A〜2Lは、図1に示す加速度センサの各製造工程における模式的な断面図である。
【0037】
加速度センサ1の製造工程では、まず、図2Aに示すように、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により、シリコン基板2の表面2a上に、酸化シリコン層21が形成される。酸化シリコン層21は、たとえば、5μmの厚さに形成される。その後、エピタキシャル成長法またはLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により、酸化シリコン層21上に、ドープトポリシリコンが堆積され、ドープトポリシリコン層22が形成される。ドープトポリシリコン層22は、たとえば、25μmの厚さに形成される。ドープトポリシリコン層22の形成後、ドープトポリシリコン層22に対し、たとえば、温度1000℃および気圧10Torrの条件下での水素アニールが10分間にわたって行われる。
【0038】
その後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、ドープトポリシリコン層22が選択的に厚さ方向にわたって除去される。これにより、ドープトポリシリコン層22が分割され、図2Bに示すように、酸化シリコン層21上に、ドープトポリシリコン層22の各分割部分からなるX/Y可動部3、X/Y固定部4、Z可動部5、壁部6および分離部7が形成される。
【0039】
次いで、図2Cに示すように、TEOS−CVD(Tetra Ethyl Ortho Silicate - Chemical Vapor Deposition)法により、シリコン基板2上の全域(X/Y可動部3、X/Y固定部4、Z可動部5、壁部6および分離部7上)に、犠牲層23が形成される。犠牲層23の表面は、CMP (Chemical Mechanical Polishing)法により平坦化される。
そして、図2Dに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、犠牲層23がパターニングされる。このパターニングにより、犠牲層23は、壁部6の内周縁部上よりも内方の部分が残され、その残された部分に、分離部7の表面を選択的に露出させる開口9aが形成される。
【0040】
次に、図2Eに示すように、LPCVD法により、シリコン基板2上の全域(壁部6、分離部7および犠牲層23上)に、ドープトポリシリコンが堆積され、ドープトポリシリコン層24が形成される。
その後、図2Fに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、ドープトポリシリコン層24における犠牲層23と接する部分に、複数のエッチング孔25がそれぞれ厚さ方向に貫通して形成される。
【0041】
次いで、図2Gに示すように、ドープトポリシリコン層24をマスクとして用いるドライエッチングにより、犠牲層23が壁部6および分離部7上にのみ残して除去され、X/Y可動部3およびZ可動部5の下方から酸化シリコン層21が選択的に除去される。その結果、壁部6および分離部7上に残された犠牲層23は、第2絶縁層9となる。また、X/Y可動部3およびZ可動部5は、シリコン基板2の表面2aから浮いた状態になり、それぞれ変位可能となる。そして、酸化シリコン層21は、壁部6および分離部7の各下方に残り、それらを支持する第1絶縁層8となる。
【0042】
その後、温度1100℃および気圧50Torrの条件下での水素アニールが15分間にわたって行われる。この水素アニールによって、ドープトポリシリコン層24におけるエッチング孔25の周囲の部分の角が丸みを帯びる。次いで、図2Hに示すように、LPCVD法により、ドープトポリシリコン層24の各エッチング孔25がドープトポリシリコンで埋め戻される。
【0043】
その後、図2Iに示すように、PECVD法により、ドープトポリシリコン層24上に、酸化シリコンからなるマスク層26が積層される。つづいて、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、マスク層26がパターニングされ、さらに、マスク層26を介してドープトポリシリコン層24がパクーニングされる。これにより、ドープトポリシリコン層24に分離溝12,14が形成され、ドープトポリシリコン層24は、キャップ10、接地用導電部11および電圧印加用導電部13に分割される。
【0044】
次に、図2Jに示すように、PECVD法により、マスク層26上に、酸化シリコンが堆積される。酸化シリコンは、分離溝12,14を埋め尽くし、マスク層26上に所定厚さを有する膜をなす。そして、その酸化シリコンからなる膜は、マスク層26と一体となり、マスク層26とともに層間絶縁膜15を構成する。層間絶縁膜15の表面は、CMP法により平坦化される。
【0045】
次いで、図2Kに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、層間絶縁膜15に、貫通孔15a,15b,15cが形成される。
その後、スパッタ法により、貫通孔15a,15b,15c内および層間絶縁膜15上に、アルミニウム膜が形成される。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、そのアルミニウム膜がパターニングされ、図2Lに示すように、キャップ10、壁部6および分離部7上に、それぞれキャップ電極16、接地用電極17およびX/Y/Z電極18が形成される。
【0046】
そして、層間絶縁膜15上に、開口19a,19b,19cを有するパッシベーション膜19が形成されると、図1に示す加速度センサ1が得られる。
以上のように、シリコン基板2の表面2a上に、平面視四角環状の壁部6が設けられている。壁部6上には、平面視四角環状の第2絶縁層9が設けられており、この第2絶縁層9を介して、平面視四角形状のキャップ10の周縁部が支持されている。シリコン基板2の表面2a上には、第1絶縁層8、壁部6、第2絶縁層9およびキャップ10により、X/Y可動部3、X/Y固定部4、Z可動部5および分離部7を収容する中空部分20が形成されている。
【0047】
そして、キャップ10は、ポリシリコンからなり、シリコン基板2上にドープトポリシリコン層24を形成し、ドープトポリシリコン層24に分離溝12,14を形成して、ドープトポリシリコン層24を分割することにより形成される。そのため、キャップ10と第2絶縁層9との接合が不要であり、加速度センサ1の製造に陽極接合装置を必要としない。よって、加速度センサ1の製造に要する時間の短縮を図ることができる。
【0048】
また、加速度センサ1の製造過程において、犠牲層23を除去するためにドープトポリシリコン層24に形成されるエッチング孔25は、犠牲層23の除去後に、ドープトポリシリコンにより埋め戻される。これにより、キャップ10により中空部分20が密閉された構造を得ることができる。中空部分20が密閉されることにより、外部から中空部分20への水分などの進入を防止できる。
【0049】
また、加速度センサ1では、シリコン基板2およびZ可動部5により構成されるコンデンサの他に、キャップ10およびZ可動部5によりコンデンサが構成されるので、Z可動部5がZ軸方向に変位したときに、各コンデンサの静電容量の変化に基づいて、加速度センサ1に生じたZ軸方向の加速度を求め、その求めた各加速度の平均値をZ軸方向の加速度の検出値とすることにより、Z軸方向の加速度を精度よく検出することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することが可能である。たとえば、Z分離部7が図示しない貫通電極を介してシリコン基板2と電気的に接続され、Z分離部7上にX/Y/Z電極(Z電極)18が設けられ、一定電位に制御された配線がX/Y/Z電極18に接続される構成を採用したが、貫通電極およびZ分離部7上のX/Y/Z電極18が省略されて、シリコン基板2の裏面に基板電極が設けられ、一定電位に制御された配線が基板電極に接続される構成が採用されてもよい。
【0051】
また、MEMSセンサの一例として、物体の加速度を検出するための加速度センサを取り上げたが、本発明は、加速度センサに限らず、音圧を検出する圧力センサなどに適用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る加速度センサの模式的な断面図である。
【図2A】図2Aは、図1に示す加速度センサの製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2C】図2Cは、図2Bの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2D】図2Dは、図2Cの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2E】図2Eは、図2Dの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2F】図2Fは、回2Eの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2G】図2Gは、図2Fの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2H】図2Hは、図2Gの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2I】図2Iは、図2Hの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2J】図2Jは、図2Iの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2K】図2Kは、図2Jの次の工程を模式的に示す断面図である。
【図2L】図2Lは、図2Kの次の工程を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 加速度センサ(MEMSセンサ)
2 シリコン基板(半導体基板)
2a 表面(一方面)
3 X/Y可動部(可動部)
5 Z可動部(可動部)
6 壁部(支持部)
8 第1絶縁層(支持部)
9 第2絶縁層(支持部)
10 キャップ
16 キャップ電極
18 X/Y/Z電極(基板電極)
20 中空部分
21 酸化シリコン層(第1犠牲層)
22 ドープトポリシリコン層(導電材料層)
23 犠牲層(第2犠牲層)
24 ドープトポリシリコン層(ポリシリコン層)
25 エッチング孔(貫通孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の一方面上に設けられる環状の支持部と、
ポリシリコンからなり、前記支持部にその周縁部が支持されるキャップと、
導電材料からなり、前記半導体基板の一方面上に前記支持部および前記キャップにより形成される中空部分に収容され、所定方向に変位可能な可動部と含む、MEMSセンサ。
【請求項2】
前記キャップは、不純物が高濃度にドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンからなる、請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記可動部は、前記半導体基板と前記キャップとの対向方向に変位可能であり、
導電材料からなり、前記半導体基板と電気的に接続される基板電極と、
導電材料からなり、前記キャップ上に設けられるキャップ電極とをさらに含む、請求項2に記載のMEMSセンサ。
【請求項4】
前記キャップは、前記中空部分を密閉している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のMEMSセンサ。
【請求項5】
半導体基板上に第1犠牲層を挟んで導電材料層を形成する工程と、
前記導電材料層を選択的にその厚さ方向にわたって除去することにより、前記導電材料層を分割し、前記導電材料層の各分割部分からなる環状の壁部および可動部を形成する工程と、
前記壁部および前記可動部上を選択的に覆い、前記壁部と前記可動部との間を埋め尽くす第2犠牲層を形成する工程と、
前記壁部、前記可動部および前記第2犠牲層上に、ポリシリコンを堆積させ、そのポリシリコン層を形成する工程と、
前記ポリシリコン層に、その厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を有する前記ポリシリコン層をマスクとして用いるエッチングにより、前記第2犠牲層を選択的に除去し、前記第1犠牲層における前記可動部と接する部分を除去する工程とを含む、MEMSセンサの製造方法。
【請求項6】
前記第1犠牲層における前記可動部と接する部分の除去後、前記ポリシリコン層の前記貫通孔をポリシリコンにより埋め戻す工程をさらに含む、請求項5に記載のMEMSセンサの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図2L】
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【公開番号】特開2009−272477(P2009−272477A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122229(P2008−122229)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】