説明

Pim−1活性阻害剤

【課題】Pimの活性を阻害する薬剤を提供する。さらに、癌等のPim活性に関連する疾患の予防または治療剤を提供する。
【解決手段】Pim−1活性阻害剤は、下記一般式(I−a)または(I−b)


で表されるフラボン誘導体化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pim−1の活性を阻害する化合物、およびPim−1の関連する疾患、の予防又は治療への該化合物の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床的に用いられている抗癌剤としては多くの種類のものが知られている。このような臨床的に用いられている抗癌剤の多くがかかえる問題点としては、いったんは効果のあった抗癌剤が効かなくなるという獲得耐性癌細胞が出現したり、固形癌には効きにくいということがある。抗癌剤が固形癌に効きにくくなるのは、固形癌が一定以上の大きさになるとその内部が低酸素状態となることが原因と考えられている。
【0003】
進行性の癌においては、癌細胞内部の増殖速度が周囲の細胞よりも速いため、新しく生成された血管の供給が足りず、血液の供給が不十分となり、低酸素状態となると考えられる。例えば、低酸素状態にある癌細胞が、高い酸素状態にある癌細胞よりも、化学療法、放射線療法に対して耐性を有しており、低酸素状態が、固形癌細胞において薬剤耐性を誘導することが知られている(非特許文献1〜6)。上記文献に記載された結果は、低酸素状態が固形癌細胞において、抗アポトーシス因子を誘導していることを示している。
【0004】
一方、セリン/スレオニンキナーゼであるPim−1は、最初はマウス白血病ウィルス(MuLV)によって引き起こされるT細胞リンパ腫内において白血病ウイルスの挿入によってしばしば活性化される遺伝子として同定されたセリン/スレオニンキナーゼである(非特許文献7)。また、細胞質内のPim−1が種々の造血細胞内においてアポトーシスを阻害するための因子として機能することが報告されている(非特許文献8)。
【0005】
【非特許文献1】Teicher, B.A. Hypoxia and drug resistance. Cancer Metastasis Rev., 13:139-168, 1994
【非特許文献2】Brown, J.M. & Giaccia, A.J. The unique physiology of solid tumors: opportunities (and problems) for cancer therapy. Cancer Res., 58:1408-1416, 1998
【非特許文献3】Brown, J.M. Exploiting the hypoxic cancer cell: mechanisms and therapeutic strategies. Mol. Med. Today, 6:157-162, 2000
【非特許文献4】Luk, C.K., Veinot-Drebot, L., Tjan, E. & Tannock, I.F. Effect of transient hypoxia on sensitivity to doxorubicin in human and murine cell lines. J Natl. Cancer Inst., 82:684-692, 1990
【非特許文献5】Sakata, K., Kwok, T.T., Murphy, B.J., Laderoute, K.R., Gordon, G.R., Sutherland, R.M. Hypoxia-induced drug resistance: comparison to P-glycoprotein-associated drug resistance. Br. J Cancer, 64:809-814, 1991
【非特許文献6】Sanna, K. & Rofstad, E.K. Hypoxia-induced resistance to doxorubicin and methotrexate in human melanoma cell lines in vitro. Int. J Cancer, 58:258-262, 1994
【非特許文献7】Cuypers, H.T., Selten, G., Quint, W., Zijlstra, M., Maandag, E.R., Boelens, W., van Wezenbeek, P., Melief, C., Berns, A. Murine leukemia virus-induced T-cell lymphomagenesis: integration of proviruses in a distinct chromosomal region. Cell, 37:141-150, 1984
【非特許文献8】Selten, G., Cuypers, H.T. & Berns, A. Proviral activation of the putative oncogene Pim-1 in MuLV induced T-cell lymphomas. EMBO J, 4:1793-1798, 1985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、Pimの活性を阻害する薬剤を提供することを課題とする。さらに、癌等のPim活性に依存した疾患の予防または治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、セリン/スレオニンキナーゼPim−1が低酸素環境下において癌細胞中に多く存在することを見出している。従って、Pim−1を不活性化できる物質があれば、固形癌及びPim−1に起因する各種疾患の予防/治療に有効であるといえる。本願発明者らは、これらの知見に基づき、特定の化合物が、Pim−1の活性を阻害することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明はPim−1の特異的阻害剤を提供するものである。また、本発明は、Pim−1の関連する疾患の予防または治療剤を提供するものである。本発明は以下を含む。
【0009】
〔1〕
下記一般式(I−a)または(I−b)

〔式中、R11、R12は、同一または異なって、水素原子、水酸基または−OR16(式中、R16はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示し;
13、R14は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基もしくは−OR17(式中、R17はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示し、または、R13とR14とは互いに結合して−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基を形成していてもよく;
15は、水素原子、水酸基、−OR18(式中、R18はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、ハロゲン化C−Cアルキル基、またはハロゲン化C−Cアルケニル基を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔2〕
前記式(I−a)または(I−b)で表される化合物が、下記式:

からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、〔1〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔3〕
下記一般式(II)

〔式中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはC−Cアルコキシ基を示し;
22は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
23は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、該C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基は−COOR24(式中、R24は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を置換基に有していてもよく;
Xは、硫黄原子、酸素原子またはNR25(式中、R25は水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は水酸基またはC−Cアルコキシ基を置換基に有していてもよい。)を示し;
23が水素原子かつXがNR25のとき、前記式(II)で表される化合物は、下記式(II−a);

(式中、R21、R22、R25は前記と同じである。)で表される化合物であってもよく;
XがNR25のとき、前記式(II)で表される化合物は、R23とR25とが互いに結合した下記式(II-b)

(式中、R21、R22は前記と同じであり、R26は水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は水酸基またはC−Cアルコキシ基を置換基に有していてもよい。)で表される化合物であってもよい。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔4〕
前記式(II)〜(II−b)で表される化合物が、下記式:

からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、〔3〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔5〕
下記一般式(III)

〔式中、Yは、フェニル基またはフリル基を示し;
前記フェニル基およびフリル基は、
−OR33(R33は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
−COOR34(R34は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
フェニル基(該フェニル基は、−COOR35(R35は水素原子またはC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を置換基に有していてもよい。)、
−NR3637(R36、R37はそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)および
−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよく;
31は、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
32は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔6〕
前記式(III)で表される化合物が、下記式(III−a):

〔式中、R31は、ハロゲン原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
Wは、−OR33(R33は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
−COOR34(R34は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
−NR3637(R36、R37はそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)または
−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基を示し;
mは置換基Wの個数を示しm=1〜3である。〕で表される化合物である、〔5〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔7〕
前記式(III)で表される化合物が、下記式(III−b):

〔式中、Zはフェニル基を示し、該フェニル基は、−COOR35(R35は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を置換基に有していてもよい。〕で表される化合物である、〔5〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔8〕
前記式(III−a)で表される化合物が、下記式:

〔式中、R31、R33、R34、R36、R37、nは〔6〕に記載のそれらと同じである。〕からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、〔6〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔9〕
前記式(III−b)で表される化合物が、下記式:

〔式中、R31、R35は〔7〕に記載のそれらと同じである。〕で表される化合物である、〔7〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔10〕
下記一般式(IV)

〔式中、R41は、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはハロゲン原子を示し;
42は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
43、R44は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、−COOR45、−NHCOR46、−OR47、または−SR48(R45、R47、R48は、それぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、R46はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔11〕
前記式(IV)で表される化合物が、下記式:

〔式中、R44、R45は、〔10〕の記載のそれらと同じである。〕からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、〔10〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔12〕
下記一般式(V)

〔式中、R51、R52は、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−C10アリールC−Cアルキル基またはC−C10アリールC−Cアルケニル基を示し;
または、R51、R52は互いに結合して隣接する窒素原子と一緒になって、ヘテロ環式基を形成していてもよい。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔13〕
前記式(V)で表される化合物が、下記式:

で表される、〔12〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔14〕
下記一般式(VI)

〔式中、R61は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
62は、フェニル基、フェニルC−Cアルキル基またはフェニルC−Cアルケニル基を示し、フェニル部分は−COOR64(R64は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)で表される置換基を有していてもよく;
63は、C−Cアルキル基、ハロゲン化C−Cアルキル基、ハロゲン化C−Cアルケニル基または−COOR65(R65は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔15〕
前記式(VI)で表される化合物が、下記式:

で表される化合物から選ばれる、〔14〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔16〕
下記一般式(VII)

〔式中、R71は、フェニル基、フェニルC−Cアルキル基またはフェニルC−Cアルケニル基を示し、フェニル部分は−OR72(R72は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)で表される置換基を有していてもよい。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔17〕
前記式(VII)で表される化合物が、下記式:

で表される化合物から選ばれる、〔15〕に記載のPim−1活性阻害剤。
〔18〕
下記式:

で表されるいずれかの化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
〔19〕
前記Pim−1の活性阻害剤が、アポトーシス誘導剤である、〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤。
〔20〕
〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤を含有する、Pim−1関連性疾患の予防または治療剤。
〔21〕
前記Pim−1関連性疾患が、癌、心臓障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病またはウイルス性疾患である、〔20〕に記載の予防または治療剤。
〔22〕
前記癌が、固形癌である、〔21〕に記載の予防または治療剤。
〔23〕
〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載の式(I−a)〜(VIII−4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物またはその医薬的に許容される塩と、抗癌化合物とを組み合わせてなる、癌治療剤。
〔24〕
〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載のPim−1活性阻害剤の医薬的に有効な量を、Pim−1関連性疾患の患者に投与することを含む、Pim−1活性を阻害する方法。
〔25〕
〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載のPim−1活性阻害剤の医薬的に有効な量を、Pim−1関連性疾患の患者に投与することを含む、Pim−1関連性疾患の予防または治療方法。
〔26〕
Pim−1活性阻害剤の製造のための、〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤の使用。
〔27〕
Pim−1関連性疾患の予防または治療剤の製造のための、〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤の使用。
【0010】
以下に、本明細書において記載する用語、記号等の意義を説明し、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明において、「セリン/スレオニンキナーゼPim−1」(以下、本明細書において、「Pim−1」ともいう)とは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するセリン/スレオニンキナーゼ活性を有するポリペプチドである。また、Pim−1は、マウス白血病ウィルス(MuLV)によって引き起こされたT細胞リンパ腫内でMuLVの挿入によって活性化される遺伝子として同定された(Cuypers, H.T., Selten, G., Quint, W., Zijlstra, M., Maandag, E.R., Boelens, W., van Wezenbeek, P., Melief, C., Berns, A. Murine leukemia virus-induced T-cell lymphomagenesis: integration of proviruses in a distinct chromosomal region. Cell, 37:141-150, 1984)。本発明では、Pim−1の他、その塩を含めてPim−1という。
【0012】
本発明において「Pim-1活性」とは、標的タンパク質をリン酸化する機能を意味する。さらに、標的タンパク質のリン酸化のあとに続いて、細胞のアポトーシス阻害などの反応が引き起こされ、このような活性も含む。「Pim-1活性阻害」とは、Pim-1による標的タンパク質のリン酸化を阻害し、それに続く反応を阻害することを意味する。Pim-1活性阻害のうち、主要なものは、Pim-1のアポトーシス阻害能を阻害すること、すなわちアポトーシス誘導である。
【0013】
本発明において「Pim-1関連性疾患」とは、少なくともPim-1による標的タンパク質のリン酸化のあとに続く、細胞のアポトーシス阻害を含む種々の反応が疾患の原因または疾患の進行に関与する疾患を意味する。
このような疾患としては、具体的には、癌、細胞増殖異常、心臓障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患などが挙げられる。
【0014】
本発明において「抗癌化合物」とは、既存の抗癌効果を有する化合物、たとえばシスプラチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アスパラギナーゼ、イダルビシン、イホスファミド、エトポシド、エノシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、シクロホスファミド、シタラビン、セルモロイキン、ダウノルビシン、ダカルバジン、テガフール、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)、ドセタキセル、ネダプラチン、バクリタキセル、ピラルビシン、ビンクリスチン、ビンテシン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ホスフェストロ−ル、マイトマイシン、ミトキサントロン、メソトレキセート、ラニムスチン、リツキシマブ、リン酸フルダラビン、塩酸イリノテカン、塩酸エピルビシン、塩酸ニムスチン、抗HER2、酒石酸ビノレルビン、酢酸リュウプロレリンなどを意味する。
【0015】
本発明において「アルキル基」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される一価の基であり、骨格中にヘテロ原子または不飽和炭素−炭素結合を含有せず、水素および炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素の部分集合を有する。アルキル基は直鎖状または分枝鎖状の構造を含む。「C1−Cnアルキル基」とは、炭素原子数が1〜nを示す。
【0016】
具体的には例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチル−2−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、1−へキシル基、2−へキシル基、3−へキシル基、2−メチル−1−ペンチル基、3−メチル−1−ペンチル基、4−メチル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−1−ブチル基、2,2−ジメチル−1−ブチル基、2−エチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基等があげられる。(n=6)
本明細書中、メチル基をMe、エチル基をEtと表すことがある。
【0017】
本明細書における「アルケニル基」は、少なくとも1個の二重結合(2個の隣接SP2炭素原子)を有する1価の基である。二重結合および置換分(存在する場合)の配置によって、二重結合の幾何学的形態は、エントゲーゲン(E)またはツザンメン(Z)、シスまたはトランス配置をとることができる。「C1−Cnアルケニル基」とは、炭素原子数が1〜nを示す。アルケニル基としては、直鎖状または分枝鎖状のものが挙げられ、好ましくはC−Cアルケニル基、さらに好ましくはC−Cアルケニル基が挙げられる。
このようなアルケニル基は、具体的には、たとえば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基(シス、トランスを含む)、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
【0018】
本発明において「C1−nアルコキシ基」とは、前記定義の「C1−nアルキル基」が結合したオキシ基であることを意味する。具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、2−メチル−1−プロピルオキシ基、2−メチル−2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、1−ペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メチル−1−ブチルオキシ基、3−メチル−1−ブチルオキシ基、2−メチル−2−ブチルオキシ基、3−メチル−2−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−プロピルオキシ基、1−へキシルオキシ基、2−へキシルオキシ基、3−へキシルオキシ基、2−メチル−1−ペンチルオキシ基、3−メチル−1−ペンチルオキシ基、4−メチル−1−ペンチルオキシ基、2−メチル−2−ペンチルオキシ基、3−メチル−2−ペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、2−メチル−3−ペンチルオキシ基、3−メチル−3−ペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2−エチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基、2,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基等があげられる。(n=6)
【0019】
本発明において「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
【0020】
本発明において「ハロゲン化C1−Cnアルキル基」とは、前記定義「C1−Cnアルキル基」中の任意の水素原子を、前記定義「ハロゲン原子」で置換した基を意味する。
【0021】
本発明において「ハロゲン化C1−Cnアルケニル基」とは、前記定義「C1−Cnアルケニル基」中の任意の水素原子を、前記定義「ハロゲン原子」で置換した基を意味する。
【0022】
本発明において「アルキレンジオキシ基」とは、明細書中、下記式

で表される基であり、nは1〜3の整数であり、好ましくは1または2である。このような基としては、たとえば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、プロピレンジオキシなどが挙げられる。
【0023】
本明細書における「アリール基」は、1価の芳香族炭化水素環を意味し、好ましくはC−C10アリール基が挙げられる。アリール基としては具体的には、たとえば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
【0024】
本発明において「C−C10アリールC1−Cnアルキル基」とは、前記定義「C1−Cnアルキル基」中の任意の水素原子を、C−C10アリール基で置換した基を意味する。
【0025】
本発明において「C−C10アリールC1−Cnアルケニル基」とは、前記定義「C1−Cnアルケニル基」中の任意の水素原子を、C−C10アリール基で置換した基を意味する。
【0026】
本発明において「フェニルC1−Cnアルキル基」とは、前記定義「C1−Cnアルキル基」中の任意の水素原子を、フェニル基で置換した基を意味する。
【0027】
本発明において「フェニルC1−Cnアルケニル基」とは、前記定義「C1−Cnアルケニル基」中の任意の水素原子を、フェニル基で置換した基を意味する。
【0028】
本発明において「ヘテロ環式基」とは、環を構成する原子数が好ましくは3〜n(C3-Cnヘテロ環式基)、さらに好ましくは5〜8であり、環を構成する原子中に1〜3個のヘテロ原子を含み、環中に二重結合を有していてもよく、単環式である非芳香族性または1価の環を意味する。ヘテロ原子としては窒素原子が好ましい。具体的には、窒素原子を1つ含む炭素原子数4〜7(C4〜C7)の5〜8員ヘテロ環式基が挙げられる。たとえば、1‐ピロリジニル基、1‐ピペリジニル基、ヘキサヒドロ‐1H‐アゼピン‐1‐イル基、オクタヒドロアゾシン‐1‐イル基などが挙げられる。
【0029】
本明細書における「塩」とは、本発明に係る化合物と塩を形成し、かつ薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性または塩基性アミノ酸塩などがあげられる。
【0030】
無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などがあげられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などがあげられる。
【0031】
無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられ、有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などがあげられる。
【0032】
酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられ、塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などがあげられる。
【0033】
本明細書においては、化合物の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、本発明には化合物の構造上生ずる総ての幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体等の異性体および異性体混合物を含み、便宜上の式の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、本発明の化合物には、分子内に不斉炭素原子を有し光学活性体およびラセミ体が存在することがありうるが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。また、結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの結晶形が単一であっても結晶形混合物であってもよく、そして、本発明にかかる化合物には無水物と水和物とが包含される。さらに、本発明にかかる化合物が生体内で分解されて生じる、いわゆる代謝物も本発明の特許請求の範囲に包含される。
【0034】
本発明のPim−1活性阻害剤で用いる化合物およびその好ましい態様は下記の通りである。
【0035】
下記一般式(I−a)(フラボン類)または(I−b)(イソフラボン類)で表される化合物。

【0036】
式中、R11、R12は、同一または異なって、水素原子、水酸基または−OR16(式中、R16はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくはC−Cアルキル基を示す。)を示す。
【0037】
13、R14は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または−OR17(式中、R17はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくはC−Cアルキル基を示す。)を示す。また、R13とR14とは互いに結合して−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基を形成していてもよい。
【0038】
15は、水素原子、水酸基、−OR18(式中、R18はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくはC−Cアルキル基を示す。)、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、ハロゲン化C−Cアルキル基またはハロゲン化C−Cアルケニル基を示し、好ましくは、R15は、水素原子、水酸基、−OR18(式中、R18はC−Cアルキル基を示す。)、C−Cアルキル基、またはハロゲン化C−Cアルキル基を示す。
式(I−a)、(I−b)のうちでは、(I−a)で表される化合物が好ましい。
【0039】
上記式(I−a)においては、好ましい態様は下記のとおりである。
(1)R11、R12は、同一または異なって、水素原子または水酸基である。
(2)R11、R12は、6位および7位に位置する。
(3)R11が水酸基、R12、R15が水素原子であり、R11が6位に位置する。
(4)R11、R12が水素原子であり、R15が水素原子である。
(5)R13、R14は、同一または異なって、水素原子、水酸基または−OR17(式中、R17はC−Cアルキル基を示す。)を示す。また、R13とR14とは互いに結合して−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基を形成していてもよい。
(6)R13およびR14のいずれかが水酸基、いずれかが−OR17(式中、R17はC−Cアルキル基を示す。)であるか、またはR13とR14とが互いに結合して−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基であってもよい。
(7)R13、R14が、3'および4'に位置する。
(8)R15は、水素原子、水酸基または−OR18(式中、R18はC−Cアルキル基を示す。)である。
【0040】
より具体的には、たとえば下記式で表される化合物があげられる。

【0041】
上記式(I−b)においては、好ましい態様は下記のとおりである。
(1)R11、R12は、同一または異なって、水素原子または水酸基である。
(2)R11、R12の少なくとも一つが水酸基である。
(3)R11、R12が、5位および7位に位置する。
(4)R13およびR14のいずれかがハロゲン原子いずれかが水素原子であるか、またはR13とR14とが互いに結合して−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基である。
(5)R15は、水素原子またはハロゲン化C−Cアルキル基である。
【0042】
より具体的には、下記式で表される化合物があげられる。


【0043】
化合物の別の態様として下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。

【0044】
式中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはC−Cアルコキシ基を示し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルコキシ基である。
【0045】
22は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。
【0046】
23は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。
また、該C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基は−COOR24(式中、R24は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)を置換基に有していてもよい。
【0047】
Xは、硫黄原子、酸素原子またはNR25を示す。
25は水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはフェニル基を示し、好ましくは水素原子、C−Cアルキル基またはフェニル基を示す。また、該フェニル基は水酸基またはC−Cアルコキシ基を置換基に有していてもよい。
【0048】
式(II)において、好ましい態様は下記のとおりである。
(1) R21が、水素原子またはハロゲン原子である。
(2) R22が、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基である。
(3)R23が、水素原子はまたは1−カルボキシル−2−メチル−プロピル基である。
(4)Xが、NR25またはSであり、より好ましくはSである。
【0049】
より具体的には、たとえば下記式で表される化合物があげられる。

式(II−4)において、R21は、前記と同じである。
(II−1)〜(II−4)のうちでは、(II−1)〜(II−3)で表される化合物が好ましい。
【0050】
23が水素原子かつXがNR25のとき、前記式(II)で表される化合物は、下記式(II−a)で表される化合物であってもよい。該化合物は式(II)で表される化合物と平衡関係にある化合物である。

【0051】
式中、R21、R22、R25は前記と同じである。
式(II−a)において、好ましい態様は下記のとおりである。
(1)R21が、好ましくは水素原子またはハロゲン原子、さらに好ましくはハロゲン原子である。
(2) R22が、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基、さらに好ましくは水素原子である。
(3)R25が、好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基を示し、さらに好ましくは水酸基を置換基に有するフェニル基である。
【0052】
より具体的には、たとえば下記式で表される化合物があげられる。

【0053】
また、XがNR25のとき、前記式(II)で表される化合物は、R23とR25とが互いに結合した下記式(II-b)で表される化合物であってもよい。

【0054】
式中、R21、R22は前記と同じである。R26は水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはフェニル基を示し、好ましくは水素原子、C−Cアルキル基またはフェニル基を示す。また、該フェニル基は水酸基またはC−Cアルコキシ基を置換基に有していてもよい。
【0055】
式(II−b)において、好ましい態様は下記のとおりである。
(1)R21が、好ましくは水素原子またはハロゲン原子、さらに好ましくはハロゲン原子である。
(2)R22が、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基、さらに好ましくは水素原子である。
(3)R26としては、好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基であり、置換基としては、好ましくはC−Cアルコキシ基、さらに好ましくはメトキシ基である。
【0056】
より具体的には、たとえば下記式で表される化合物があげられる。

【0057】
上記具体的な化合物のうち、より好ましくは、式(II−1)、(II−2)、(II−3)、(II−5)、(II−6)で表される化合物であり、さらに好ましくは式(II−1)、(II−2)で表される化合物である。
【0058】
化合物の別の態様として下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。

【0059】
式中、Yは、フェニル基またはフリル基を示す。
【0060】
前記フェニル基およびフリル基は、−OR33(R33は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)、−COOR34(R34は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)、フェニル基(該フェニル基は、−COOR35(R35は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)を置換基に有していてもよい。)、−NR3637(R36、R37はそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)および−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい。
【0061】
31は、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子またはC−Cアルキル基である。
【0062】
32は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。
【0063】
式(III)の化合物において、好ましい態様は下記のとおりである。
(1) R31が、ハロゲン原子またはC−Cアルキル基である。
(2) R32が、水素原子である。
(3) Yが、フェニル基であり、該フェニル基は、−OR33(R33は水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)、−COOR34(R34は水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)、−NR3637(R36、R37はそれぞれ独立に、水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)および−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい。
(4) Yが、フリル基であり、該フリル基は、−COOR35(R35は水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)を置換基に有していてもよいフェニル基を置換基に有していてもよい。
【0064】
より具体的には、下記式(III−a)または(III−b)で表される化合物があげられる。
式(III−a)で表される化合物。

式中、R31は、ハロゲン原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくはハロゲン原子またはC−Cアルキル基である。
Wは、−OR33(R33は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)、−COOR34(R34は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)、−NR3637(R36、R37はそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)または−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基を示し;
mは置換基Wの個数を示しm=1〜3である。
【0065】
前記−OR33において、R33はより好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
前記−COOR34において、R34はより好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
前記−NR3637において、R36、R37はそれぞれ独立に、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、さらに好ましくはそれぞれ独立にメチル基、エチル基である。
前記−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基において、nは好ましくは1または2である。
【0066】
このような式(III−a)で表される化合物として、具体的にはたとえば下記の化合物が挙げられる。


【0067】
式中、R31、R33、R34、R36、R37、nは前記の通りである。
【0068】
さらに、より好ましい化合物として、下記の化合物が挙げられる。


【0069】
式(III−b)で表される化合物。

【0070】
式中、Zはフェニル基を示し、該フェニル基は、−COOR35(R35は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)を置換基に有していてもよい。
前記−COOR35において、R35はより好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
【0071】
このような式(III−b)で表される化合物として、具体的にはたとえば下記の化合物が挙げられる。

式中、R31、R35は前記と同様である。
さらに、より好ましい化合物として、下記の化合物が挙げられる。

【0072】
化合物の別の態様として下記一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。

【0073】
式中、R41は、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはハロゲン原子を示し、好ましくは水素原子、C−Cアルキル基またはハロゲン原子である。
【0074】
42は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。
【0075】
43、R44は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、−COOR45、−NHCOR46、−OR47、または−SR48(R45、R47、R48は、それぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。R46はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくはC−Cアルキル基である。)を示す。
【0076】
式(IV)の化合物において、さらに好ましい態様は下記のとおりである。
(1) R41が、水素原子またはC−Cアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
(2) R42が、水素原子である。
(3) R43、R44は、いずれかがハロゲン原子、いずれかが−COOR45である。
(4) R43、R44は、いずれかが水素原子、いずれかが−NHCOR46である。
【0077】
具体的には、下記式で表される化合物が挙げられる。

式中、R44、R45、R46は前記と同じである。
これらのうちでは、式(IV−a)で表される化合物が好ましい。
【0078】
式(IV−a)で表される化合物のより好ましい化合物として、下記の化合物が挙げられる。

【0079】
化合物の別の態様として下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。

【0080】
式中、R51、R52は、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−C10アリールC−Cアルキル基またはC−C10アリールC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子、C−Cアルキル基またはC−C10アリールC−Cアルキル基である。または、R51、R52は互いに結合して隣接する窒素原子と一緒になって、ヘテロ環式基を形成していてもよい。
【0081】
式(V)の化合物において、さらに好ましい態様は下記のとおりである。
(1)R51、R52は、いずれかが水素原子、いずれかがフェニルC−C3アルキル基である。
(2)R51、R52が、互いに結合して、隣接する窒素原子と一緒になって、窒素原子を1つ含むC4〜C7の5〜8員ヘテロ環式基を形成する。
このうち(1)で示される態様が好ましい。
【0082】
(1)、(2)の態様においてより具体的には、たとえば下記式で表される化合物があげられ、(V−1)で表される化合物が好ましい。

【0083】
化合物の別の態様として下記一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。

【0084】
式中、R61は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基またはエチル基である。
62は、フェニル基、フェニルC−Cアルキル基またはフェニルC−Cアルケニル基を示し、好ましくはフェニル基またはフェニルC−Cアルキル基である。
フェニルC−Cアルキル基としては、好ましくはベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。これらのフェニル部分は−COOR64(R64は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基である。)で表される置換基を有していてもよい。
63は、C−Cアルキル基、ハロゲン化C−Cアルキル基、ハロゲン化C−Cアルケニル基または−COOR65(R65は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示し、好ましくはC−Cアルキル基、ハロゲン化C−Cアルキル基または−COOR65(R65は水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)を示し、さらに好ましくはハロゲン化C−Cアルキル基または−COOR65(R65は水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)である。
【0085】
このような化合物としては具体的には、下記の化合物が挙げられる。

【0086】
化合物の別の態様として下記一般式(VII)で表される化合物が挙げられる。

【0087】
式中、R71は、フェニル基、フェニルC−Cアルキル基またはフェニルC−Cアルケニル基を示し、好ましくはフェニル基またはフェニルC−Cアルキル基を示す。フェニルC−Cアルキル基としては、好ましくはベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。
これらのフェニル部分は−OR72(R72は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、好ましくは水素原子またはC−Cアルキル基を示す。)で表される置換基を有していてもよい。−OR72としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0088】
このような化合物としては具体的には、下記の化合物が挙げられる。

【0089】
この他、化合物の別の態様として下記式(VIII−1)〜(VIII−4)で表される化合物も好ましく用いることができる。

【0090】
前記本発明で用いる化合物およびこれらの好ましい化合物は、市販品または市販品から公知の方法により誘導して得ることができる。
【0091】
本発明で用いる化合物の製造における原料化合物・各種試薬は、塩や水和物あるいは溶媒和物を形成していてもよく、いずれも出発原料、使用する溶媒等により異なり、また反応を阻害しない限りにおいて特に限定されない。用いる溶媒についても、出発原料、試薬等により異なり、また反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されないことは言うまでもない。本発明で用いる化合物がフリー体として得られる場合、前記化合物が形成していてもよい塩またはそれらの水和物の状態に常法に従って変換することができる。
【0092】
本発明で用いる化合物が化合物の塩または水和物として得られる場合、前記の化合物のフリー体に常法に従って変換することができる。
また、本発明で用いる化合物について得られる種々の異性体(例えば幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、互変異性体、等)は、通常の分離手段、例えば再結晶、ジアステレオマー塩法、酵素分割法、種々のクロマトグラフィー(例えば薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、等)を用いることにより精製し、単離することができる。
【0093】
Pim−1は低酸素環境下に有る固形癌細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、関節腔内細胞、その他の低酸素環境下に有る組織、細胞に多く存在している。したがって前記のPim−1の活性を阻害する化合物、Pim−1の分解を促進する化合物(ユビキチン/プロテアゾーム系による)あるいはPim−1の遺伝子発現を阻害する化合物のいずれについても、癌、アポトーシス誘導、抗癌剤増強、抗癌剤耐性解除、あるいは、細胞増殖異常、心臓障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患の予防または治療効果を有する化合物である。また、この効果の一部はアポトーシス誘導効果により発揮されるものである。
【0094】
Pim−1の活性を阻害する化合物は、アポトーシスを誘導する薬剤の候補となるので、癌の治療・予防への応用、抗癌剤の増強剤(耐性解除剤)として使用できる。固形癌の殆どは低酸素下環境下に存在するために、Pim−1が誘導され、その抗アポトーシス作用により抗癌作用が減弱する。本発明になるPim−1の活性を阻害する化合物を既存の抗癌効果を有する化合物、たとえばシスプラチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)などと併用するととりわけ制癌効果が著明に増強される。
【0095】
したがって、本発明の別の態様としては、前記Pim−1活性阻害剤と、化学療法治療剤とを組み合わせてなる、併用癌治療剤が挙げられる。
このような併用癌治療剤は、前記式のいずれかで表される化合物またはその好ましい態様のいずれかで表される化合物と公知の抗癌効果を有する化合(抗癌化合物)との配合剤であっても、前記式のいずれかで表される化合物またはその好ましい態様を含む薬剤と、公知の抗癌効果を有する化合物を含む薬剤(化学療法治療剤)とからなるキットであってもよい。
【0096】
さらに、Pim−1の活性を阻害する化合物は、アポトーシスを誘導する薬剤となるので、閉塞性循環器障害、動脈硬化、心筋梗塞などの予防または治療剤としても有用である。例えば、動脈内膜では、Pim−1が誘導され、その抗アポトーシス作用により動脈内膜が肥厚し、循環器障害を惹起する。リウマチ関節炎においても関節腔における線維芽細胞の異常増殖が認められる。関節腔局所のアポトーシス低下の関与が推定されている。従って、Pim−1の活性を阻害する化合物は、アポトーシスを誘導する薬剤の候補となり、リウマチ関節炎などの治療剤として用いることができる。本発明になるPim−1の活性を阻害する化合物を既存の循環器系薬剤、抗リウマチ薬などと併用するととりわけ医療効果が著明に増強される。
【0097】
また、Pim−1の活性を阻害する化合物は、血管内皮細胞のアポトーシス、増殖阻害を介する血管新生阻害、血管平滑筋細胞のアポトーシス、増殖阻害を介する循環器障害改善効果などの効果も有する。細胞増殖異常、循環器障害、高血圧症、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患患者の予防・治療剤として有用である。
なかんずく、循環器障害、高血圧症、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症においては局所低酸素環境が病態の増悪因子に繋がることがよく知られており、Pim−1が低酸素環境下で誘導され、抗アポトーシス作用を介して病態増悪に関与する可能性が容易に想定できる。
【0098】
このように、本発明のPim−1の活性阻害剤は、Pim−1関連性疾患の予防または治療剤として有効である。たとえば、抗癌剤、アポトーシス誘導剤、抗癌剤増強剤として用いることができるほか、あるいは、細胞増殖異常、循環器障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患患者の予防または治療剤が挙げられる。
【0099】
上述したPim−1の活性を阻害する化合物は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤等の生理学的に認められる担体とともに製剤化し、投与できる。上記化合物をPim−1関連疾患の予防・治療にとして使用する場合は、好ましくは90%、更に好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上に精製された化合物を使用することが好ましい。
【0100】
上記化合物は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等として経口的に、あるいはエアロゾル化して吸入剤の形で、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。
【0101】
例えば、本発明の化合物を生理学的に許容し得る担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤等とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴム等の結合剤、結晶性セルロース等の賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の膨化剤、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリン等の甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリー等の香味剤等が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂等の液状担体を含有することができる。注射剤は、本発明のポリペプチドを通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール等)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール等)、酸化防止剤等を配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法等により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
【0102】
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等)に対して投与することができ、癌の予防・治療剤、アポトーシス誘導剤、又は抗癌剤増強剤あるいは、増殖異常、循環器障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患患者の予防・治療にとして用いることができる。
【0103】
投与量は患者の、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性差、薬剤に対する感受性差などにより著しく異なるが、通常成人として1日あたり、約0.03−1000mg、好ましくは0.1−500mg、さらに好ましくは0.1−100mgを1日1−数回に分けて投与する。注射剤の場合は、通常約1μg/kg−3000μg/kgであり、好ましくは約3μg/kg−1000μg/kgである。
【0104】
上記癌治療・予防剤、抗癌剤増強剤の対象となる癌としては、例えば、膵臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆道癌、脾臓癌、腎癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、甲状腺癌、膵臓癌、脳腫瘍及び血液腫瘍等が挙げられ、また、細胞内の酸素濃度が低下している固形癌に特に有効である。
【0105】
本発明の化合物を癌治療・予防剤、アポトーシス誘導剤、抗癌剤増強剤、あるいは、増殖異常、循環器障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患患者の予防・治療に用いる場合、患者に直接投与する以外に、公知の製剤学的方法によって製剤化して投与を行うことが可能である。
例えば、薬理学上許容される担体又は媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤等と適宜組み合わせて製剤化して投与することができる。患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射等の他、鼻腔内的、経気管支的、筋肉的、又は経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法等により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。癌の予防又は治療において患者に投与する場合には、化学療法剤を併用することも有効である。循環器障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患患者の予防・治療に用いる場合には、それぞれの分野で用いられている既剤と併用することも可能である。
【0106】
本発明のPim−1活性を阻害する方法としては、前記Pim−1活性阻害剤の医薬的に有効な量を、Pim−1関連性疾患の患者に投与する方法が挙げられる。また、本発明のPim−1関連性疾患の予防または治療方法は、Pim−1活性阻害剤の医薬的に有効な量を、Pim−1関連性疾患の患者に投与することを含む。化合物についての好ましい態様は前記のとおりである。
【0107】
本発明の使用は、Pim−1活性阻害剤の製造のための、前記Pim−1の活性阻害剤を使用を含む。また、Pim−1関連性疾患の予防または治療剤の製造のための、前記Pim−1の活性阻害剤の使用を含む。化合物についての好ましい態様は前記のとおりである。
【0108】
本発明で用いる化合物のスクリーニング方法は、上述したPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする。具体的には、本発明で用いる化合物のスクリーニング方法は、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩と被検物質とを接触させ、Pim−1のリン酸化活性を測定することにより実施することができる。また、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩と被検物質とを接触させ、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩のアポトーシス誘導能の阻害効果を測定することにより実施することができる。
【0109】
いずれの場合においても、被検物質の非存在下における活性と比較して、活性物質の存在を確認することによってスクリーニングを行う。この方法によって、アポトーシス誘導剤などのPim−1活性化剤のスクリーニングの実施も可能である。また、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害することにより、癌細胞を含む種々の細胞の増殖阻害活性を評価できることで本発明を構成する新規医薬化合物をスクリーニングすることが可能である。
【0110】
本発明で用いるスクリーニング方法において用いられる被検試料としては、例えば、細胞抽出物、植物抽出物、精製又は粗精製タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成低分子化合物、天然化合物、遺伝子ライブラリー等が挙げられる。本発明のスクリーニング方法は、細胞内で行ってもよいが、試験管内で行うことも可能である。
【0111】
細胞内で行う場合、Pim−1を生成する細胞を用いて行うことができるが、Pim−1をコードするDNAを含有する組換ベクターで形質転換された形質転換細胞を用いることもできる。試験管内で行う場合、Pim−1と、Pim−1の基質ペプチドとを、適当な反応バッファー中で混合し、そのリン酸化能を測定することによって実施する。基質ペプチドとしては、Pim−1によってリン酸化されるペプチドであれば特に制限なく用いることができ、反応条件は従来公知のキナーゼにおいて用いられる条件でよい。特異的な活性化合物を見出すためにはAkt、mTORなどの他のセリン/スレオニンキナーゼや多数知られるチロシンキナーゼのリン酸化活性を測定することにより実施することができる。
【0112】
本発明で用いるスクリーニング方法は、上述した形質転換細胞を用いて行うことができる。以下、上述した形質転換細胞を用いて本発明で用いるスクリーニング方法を行なう場合について説明する。
前記スクリーニング方法においては、上述した形質転換細胞を、Pim−1の基質ペプチド、及び[32P]−ATPと共に培養し、32Pの基質ペプチドへの取り込みを測定することにより、Pim−1のリン酸化活性を測定する。この測定を被検物質の存在下、及び非存在下で行い、両者を比較し、スクリーニングを行う。すなわち、被検物質の存在下と、非存在下でPim−1のリン酸化活性を測定し、被検物質の存在下の方が非存在下よりもリン酸化活性が低い場合は、被検物質はPim−1の阻害効果を有するものであることがわかる。
【0113】
また、スクリーニング方法は、Pim−1のリン酸化活性を測定することに代え、アポトーシス誘導能を測定することによって実施することができる。すなわち、Pim−1はアポトーシス誘導を阻害するので、被検物質の存在下と、非存在下でアポトーシス誘導能の阻害効果を測定し、この阻害が減少すれば、被検物質はPim−1の活性を阻害し、アポトーシス誘導能を有し、本発明を構成する医薬品に有効であることがわかる。
【0114】
Pim−1は低酸素環境下に有る固形癌細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、関節腔内細胞、その他の低酸素環境下に有る組織、細胞に多く存在していることから、Pim−1の活性を阻害する効果を有する化合物は、癌、細胞増殖異常、心臓障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病、ウイルス性疾患の予防または治療効果を有する化合物であると考えられる。また、該化合物は、アポトーシス誘導、抗癌剤増強、抗癌剤耐性解除の効果を有する。この効果の一部または全部はアポトーシス誘導効果により発揮されるものである。
【0115】
リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質の結合に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量の変化を指標として検出することができる。また、リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質のリン酸化された状態を認識する抗体を用いて検出することができる。
【0116】
リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質の結合に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量の変化を指標として検出する場合について説明する。(図1)
【0117】
Pim−1によってリン酸化される基質ペプチドの結合配列をレポーター遺伝子の発現ベクターに連結し、これを宿主細胞に導入する。また、同じ宿主細胞に、Pim−1を発現するベクターを導入すると、2つの発現ベクターが導入された細胞が製造される。なお、Pim−1を発現するベクターとしては上述したものが用いられる。
【0118】
また、上記レポーター遺伝子の発現ベクターは、Pim−1を発現するベクターと同様にして製造することができ、宿主細胞としては、上述したものを特に制限なく用いることができる。
【0119】
本発明において用いられる、Pim−1によってリン酸化される基質ペプチドとしては、リン酸化されることによって結合配列に結合するものである。このような基質ペプチドとしては、例えばc−Myb、Nuclear Factor Activating(NFAT)及びP21等が挙げられる。例えば、c−mybはリン酸化されると、結合配列に結合し、レポーター遺伝子が発現され、そのレポーター遺伝子の発現を検出することにより、c−mybがリン酸化されたか否かが検出される。
【0120】
レポーター遺伝子としては、特に限定されないが、安定でかつ活性の定量が容易なものが好ましい。このようなレポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、HIS3遺伝子、グリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP)等をコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。レポーター遺伝子は、遺伝子本来のプロモータを有するものであってもよいし、プロモータ部分が他の遺伝子由来のものと置換されたものを用いてもよい。レポーター遺伝子は、応答配列の下流に機能的に連結されていればよい。
【0121】
すなわち、上述したスクリーニング方法においては、被検物質がPim−1を阻害する活性を有している場合、レポーター遺伝子の発現が抑制又は阻害されるので、そのレポーター遺伝子の発現を検出することにより、被検物質がPim−1の活性を促進又は阻害するか否かを検出することが可能となる。
【0122】
次に、リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質のリン酸化された状態を認識する抗体を用いて検出する場合について説明する。(図2)
抗体を用いる場合、例えば、Pim−1によってリン酸化される基質のリン酸化された状態を認識する抗体(一次抗体)を用いる。96穴プレートに基質蛋白(ビオチン化p21蛋白)とPim−1蛋白を入れついでATPを加えてまず通常は1〜4時間インキュベートする。ストレプトアビチンを固相化した96穴プレートを用意する。次にストレプトアビチンを固相化した96穴プレートをblocking bufferにて洗う。ついでPim−1とPim−1によってリン酸化される基質ペプチドとを、被検物質の存在下又は非存在下に緩衝液中で混合し、通常は1〜4時間インキュベートする。この操作により、基質ペプチドはPim−1によってリン酸化される。これらのリン酸化された混合物を、ストレプトアビチンを固相化した96穴プレートの穴に入れ、一定時間(1-2時間)インキュベーションする。この操作により、基質ペプチドはストレプトアビチンに結合する。ついで1次抗体を加えてインキュベーションする(1-2時間)。リン酸化された基質ペプチドは1次抗体に結合し,リン酸化されていない基質ペプチドは一次抗体と結合しない。リン酸化された基質ペプチドは一次抗体と結合しているので、ついで2次抗体を加えて、基質ペプチドがリン酸化されているか否かを調べることができる。
【0123】
二次抗体の結合の検出には、例えば二次抗体に酵素を結合したものを用いる場合には、基質の酵素的変化、例えば発色の程度を吸光度計により検出する。また、二次抗体に蛍光物質を結合したものを用いる場合には、蛍光光度計により検出する。これらの結果を、被検物質の存在下の場合と非存在下の場合とを比較することにより、被検物質がPim−1のリン酸化活性を促進するか阻害するかを調べることができる。
【0124】
用いられる基質としては、例えば、P21タンパク質等が挙げられる。
なお、用いる抗体としては、リン酸化された基質タンパク質、又はリン酸化されていない基質タンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。該抗体は、例えばP21タンパク質(リン酸化されているもの、及びされていないもの)を抗原として用い、従来公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【発明の効果】
【0125】
本発明によりPim−1を標的とした新規なPim−1活性阻害剤が提供される。このようなPim−1活性阻害剤は、細胞毒性が少なく、新規なPim−1関連疾患の予防または治療剤となる。たとえば、癌、心臓障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病またはウイルス性疾患の予防または治療剤として有用である。また、本発明のPim−1活性阻害剤に用いる化合物と、公知の抗癌化合物との併用により、アポトーシス誘導が促進され、抗癌効果を相乗的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0126】
以下に、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0127】
〔実施例1〕
図2に示すスクリーニング系を用い、表1に示す各種化合物(ChemDiv社製)のp21リン酸化阻害活性と293細胞に対する障害活性を検討した(化合物番号は化合物の式の番号に対応)。被検物質は1−10μMの範囲にて添加するが、DMSOにて溶解してあるために、293細胞に対する障害活性のコントロールとして2%DMSOを添加した群を作成し、これをコントロール(Medium)とした。
表1に示すように10μMの濃度にて30%以上のp21リン酸化阻害活性を示した。すなわち、本化合物はPim−1活性を有効に阻害していることが明らかになった。
正常細胞に対する副作用の指標として293細胞に対する障害活性を検討した。それぞれ10μMの化合物を添加して96時間培養後、DMSOコントロールを1として生細胞をMTS法にて算出した。表1および図3にその結果を示す。
【0128】
【表1】





化合物濃度はすべて10μM
【0129】
〔実施例2〕
実施例1において、化合物の濃度を変化させて、化合物のp21リン酸化阻害活性の濃度依存性を検討した。図4に示すようにそれぞれの化合物は、濃度依存的にPim−1によるp21のリン酸化を抑制した。
【0130】
〔実施例3〕
低分子化合物の正常ヒト肺動脈血管平滑筋細胞(HPASMC)の増殖に対する効果について検討した。血管平滑筋細胞(KURABO社製)は血管平滑筋細胞増殖用培地(HuMedia-SG2; KURABO社製)に懸濁し、5x103/wellの細胞密度で96well plate(corning社製)に播き、一晩生着させた。DMEM(10%FBS含有)培地に各化合物を10uMの濃度で添加し、低酸素状態(1%O2)で48時間培養後、細胞数をMTSアッセイ法(CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay; Promega社製)にて測定した。図5は相対値を示す。値は溶媒コントロール(0.1%DMSO)に対する相対値である。
【0131】
化合物I-a-1、I-a-2、III-3は、10μMの濃度にて血管平滑筋細胞の増殖を抑制した(表1および図5)。293細胞に対する毒性のない1-a-1, I-a-2,III-3 は血管平滑筋細胞の増殖に対する抑制効果を有することがわかる。
【0132】
〔実施例4〕
化合物の抗癌剤感受性増強効果について検討した。細胞としては、子宮ガン細胞株Hela細胞を用いた。細胞2×10個を、25μg/mlのシスプラチンの存在下で低酸素分圧下(1%酸素、5%二酸化炭素、以下、本実施例において同じ)、又は正常酸素分圧下(20%酸素、5%二酸化炭素、以下、本実施例において同じ)で6時間培養を行った。一部には化合物を10μM加えた。培養を行った後、生理加リン酸バッファー(pH7.4)で2回洗浄を行い、試料を調整した。なお、培養に用いた培地はDulcecco's Modified Eagle's Medium/F-12である(以下、本明細書において特に限定しない限り、同一の培地を用いるものとする)。
【0133】
上記細胞について、プロピジウムヨーダイド(PI)及びFITCを結合した抗アネキシンVで染色し、FACScalibur(Becton Dickinson社製)でFACS解析を行った。
【0134】
FACS解析の結果を図6に示す。図6において、Normoxiaは正常酸素分圧下を意味し、Hyposiaは低酸素分圧下を意味する(以下、本明細書において同じ)。本実施例におけるFACS解析について説明すると、細胞は、PI及び抗アネキシンVで染色され、それぞれの染色の強弱によって分割され、図6に示すように分布する。この図においては、右下段が早期アポトーシス細胞を示し、右上段が後期アポトーシス細胞を示す。また、左下段は生細胞を示す。右下段及び右上段の総計をアポトーシス細胞として、図中に割合を%で示した。
【0135】
図6に示すように、本細胞系においては、コントロールとしてのDMSOを同量加えた場合にはシスプラチンの存在下、正常酸素分圧下で培養することにより、低酸素分圧下の死細胞70%に比べ、約90%のアポトーシスが誘導された。一方本発明で用いた化合物(化合物II−2、I−a−1、III−7、VI−2、I−a−2、IV−1、VIII−3、III−3)(ChemDiv社製)を10μM加えると、低酸素下でも正常酸素分圧下でも約90%にアポトーシスが誘導された(表1および図7)。すなわち、通常は、低酸素分圧下においては、正常酸素分圧下よりもアポトーシス誘導が阻害されるが、前記本発明の化合物を加えることによってこの低酸素誘導アポトーシス阻害が解除され低酸素化での抗癌剤耐性が解除された。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明によりPim−1を標的とした新規なPim−1活性阻害剤が提供される。このようなPim−1活性阻害剤は、細胞毒性が少なく、新規なPim−1関連疾患の予防または治療剤となる。たとえば、癌、心臓障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病またはウイルス性疾患の予防または治療剤として有用である。また、本発明のPim−1活性阻害剤に用いる化合物と、公知の抗癌化合物との併用により、アポトーシス誘導が促進され、抗癌効果を相乗的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1はMybのリン酸化反応を用いるスクリーニング系を示す図である。
【図2】図2はp21のリン酸化反応を用いるスクリーニング系を示す図である。
【図3】図3は293細胞に対する毒性を示すグラフである。縦軸は、DMSOコントロールを1としたときの相対的な値を示し、横軸は用いた化合物を示す。
【図4】図4は化合物のPim−1活性阻害活性の用量依存性を示すグラフである。縦軸は、p21リン酸化阻害活性を示し、横軸は各化合物濃度を示す。
【図5】図5は血管平滑筋細胞に対する増殖抑制効果を示すグラフである。
【図6】図6はFACS解析の結果を示すグラフである。
【図7】図7は抗癌剤耐性解除の効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I−a)または(I−b)

〔式中、R11、R12は、同一または異なって、水素原子、水酸基または−OR16(式中、R16はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示し;
13、R14は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基もしくは−OR17(式中、R17はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示し、または、R13とR14とは互いに結合して−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基を形成していてもよく;
15は、水素原子、水酸基、−OR18(式中、R18はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、ハロゲン化C−Cアルキル基、またはハロゲン化C−Cアルケニル基を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項2】
前記式(I−a)または(I−b)で表される化合物が、下記式:

からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項3】
下記一般式(II)

〔式中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはC−Cアルコキシ基を示し;
22は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
23は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、該C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基は−COOR24(式中、R24は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を置換基に有していてもよく;
Xは、硫黄原子、酸素原子またはNR25(式中、R25は水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は水酸基またはC−Cアルコキシ基を置換基に有していてもよい。)を示し;
23が水素原子かつXがNR25のとき、前記式(II)で表される化合物は、下記式(II−a);

(式中、R21、R22、R25は前記と同じである。)で表される化合物であってもよく;
XがNR25のとき、前記式(II)で表される化合物は、R23とR25とが互いに結合した下記式(II-b)

(式中、R21、R22は前記と同じであり、R26は水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は水酸基またはC−Cアルコキシ基を置換基に有していてもよい。)で表される化合物であってもよい。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項4】
前記式(II)〜(II−b)で表される化合物が、下記式:

からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項3に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項5】
下記一般式(III)

〔式中、Yは、フェニル基またはフリル基を示し;
前記フェニル基およびフリル基は、
−OR33(R33は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
−COOR34(R34は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
フェニル基(該フェニル基は、−COOR35(R35は水素原子またはC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を置換基に有していてもよい。)、
−NR3637(R36、R37はそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)および
−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよく;
31は、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
32は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項6】
前記式(III)で表される化合物が、下記式(III−a):

〔式中、R31は、ハロゲン原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
Wは、−OR33(R33は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
−COOR34(R34は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)、
−NR3637(R36、R37はそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)または
−O(CH2nO−(式中、nは1〜3の整数を示す。)で表されるアルキレンジオキシ基を示し;
mは置換基Wの個数を示しm=1〜3である。〕で表される化合物である、請求項5に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項7】
前記式(III)で表される化合物が、下記式(III−b):

〔式中、Zはフェニル基を示し、該フェニル基は、−COOR35(R35は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を置換基に有していてもよい。〕で表される化合物である、請求項5に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項8】
前記式(III−a)で表される化合物が、下記式:


〔式中、R31、R33、R34、R36、R37、nは請求項6に記載のそれらと同じである。〕からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項6に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項9】
前記式(III−b)で表される化合物が、下記式:

〔式中、R31、R35は請求項7に記載のそれらと同じである。〕で表される化合物である、請求項7に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項10】
下記一般式(IV)

〔式中、R41は、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基またはハロゲン原子を示し;
42は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
43、R44は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、−COOR45、−NHCOR46、−OR47、または−SR48(R45、R47、R48は、それぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し、R46はC−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項11】
前記式(IV)で表される化合物が、下記式:

〔式中、R44、R45は、請求項10の記載のそれらと同じである。〕からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項10に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項12】
下記一般式(V)

〔式中、R51、R52は、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−C10アリールC−Cアルキル基またはC−C10アリールC−Cアルケニル基を示し;
または、R51、R52は互いに結合して隣接する窒素原子と一緒になって、ヘテロ環式基を形成していてもよい。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項13】
前記式(V)で表される化合物が、下記式:

で表される、請求項12に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項14】
下記一般式(VI)

〔式中、R61は、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示し;
62は、フェニル基、フェニルC−Cアルキル基またはフェニルC−Cアルケニル基を示し、フェニル部分は−COOR64(R64は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)で表される置換基を有していてもよく;
63は、C−Cアルキル基、ハロゲン化C−Cアルキル基、ハロゲン化C−Cアルケニル基または−COOR65(R65は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項15】
前記式(VI)で表される化合物が、下記式:

で表される化合物から選ばれる、請求項14に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項16】
下記一般式(VII)

〔式中、R71は、フェニル基、フェニルC−Cアルキル基またはフェニルC−Cアルケニル基を示し、フェニル部分は−OR72(R72は水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を示す。)で表される置換基を有していてもよい。〕で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項17】
前記式(VII)で表される化合物が、下記式:

で表される化合物から選ばれる、請求項15に記載のPim−1活性阻害剤。
【請求項18】
下記式:

で表されるいずれかの化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含有する、Pim−1活性阻害剤。
【請求項19】
前記Pim−1の活性阻害剤が、アポトーシス誘導剤である、請求項1〜18のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤を含有する、Pim−1関連性疾患の予防または治療剤。
【請求項21】
前記Pim−1関連性疾患が、癌、心臓障害、心筋梗塞、動脈硬化症、閉塞性循環器障害、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性網膜症、神経変性疾患、自己免疫病、炎症性疾患、糖尿病またはウイルス性疾患である、請求項20に記載の予防または治療剤。
【請求項22】
前記癌が、固形癌である、請求項21に記載の予防または治療剤。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれかに記載の式(I−a)〜(VIII−4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物またはその医薬的に許容される塩と、抗癌化合物とを組み合わせてなる、癌治療剤。
【請求項24】
請求項1〜18のいずれかに記載のPim−1活性阻害剤の医薬的に有効な量を、Pim−1関連性疾患の患者に投与することを含む、Pim−1活性を阻害する方法。
【請求項25】
請求項1〜18のいずれかに記載のPim−1活性阻害剤の医薬的に有効な量を、Pim−1関連性疾患の患者に投与することを含む、Pim−1関連性疾患の予防または治療方法。
【請求項26】
Pim−1活性阻害剤の製造のための、請求項1〜18のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤の使用。
【請求項27】
Pim−1関連性疾患の予防または治療剤の製造のための、請求項1〜18のいずれかに記載のPim−1の活性阻害剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−84494(P2007−84494A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276648(P2005−276648)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(504283301)株式会社オンコレックス (7)
【Fターム(参考)】