説明

TFT平坦化膜形成用組成物及び表示装置

【課題】比較的低温の焼成温度でTFT素子上に低誘電率の平坦化膜を形成することが可能なTFT平坦化膜形成用組成物、及びそのような平坦化膜を有する表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物は、(A)シロキサン樹脂、(B)重合促進剤、及び(C)有機溶剤を含有する。(B)重合促進剤としてはオニウム塩が好ましく、その含有量は、(A)シロキサン樹脂のSiO換算質量に対して120〜1000質量ppmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TFT素子上に平坦化膜を形成するために用いられるTFT平坦化膜形成用組成物、及びそのような平坦化膜を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や液晶素子の基板製造において使用される層間絶縁膜や平坦化膜としてシリカ系被膜がよく用いられている。このシリカ系被膜は、アルコキシシランの加水分解縮合物等を含有するシリカ系被膜形成用組成物を、基材上にスピンコート法等により塗布した後、焼成することにより形成される。これまで、このようなシリカ系被膜形成用組成物に関して種々の提案がなされている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2001−131479号公報
【特許文献2】特開2001−115029号公報
【特許文献3】特開2004−96076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のシリカ系被膜形成用組成物は、低誘電率のシリカ系被膜を得るために比較的高温での焼成が必要であったため、TFT素子上の平坦化膜といった高温焼成が好ましくないディスプレイ用途には不向きであった。
【0004】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、比較的低温の焼成温度でTFT素子上に低誘電率の平坦化膜を形成することが可能なTFT平坦化膜形成用組成物、及びそのような平坦化膜を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その結果、従来のシリカ系被膜形成用組成物に重合促進剤を含有させることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0006】
本発明の第一の態様は、(A)シロキサン樹脂、(B)重合促進剤、及び(C)有機溶剤を含有するTFT平坦化膜形成用組成物である。
【0007】
本発明の第二の態様は、本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物を用いてTFT素子上に形成された平坦化膜を有する表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物によれば、比較的低温の焼成温度で低誘電率のシリカ系被膜を形成することができるため、TFT素子上に平坦化膜を形成する際に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
≪TFT平坦化膜形成用組成物≫
本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物は、(A)シロキサン樹脂、(B)重合促進剤、及び(C)有機溶剤を含有するものである。以下、TFT平坦化膜形成用組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0010】
<(A)シロキサン樹脂>
本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物は、(A)シロキサン樹脂を含有する。この(A)シロキサン樹脂としては、下記式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物の加水分解縮合物が挙げられる。
【0011】
【化1】

(式(1)中、RはH原子若しくはF原子、若しくはB原子,N原子,Al原子,P原子,Si原子,Ge原子,若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示す。nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
上記式(1)中、Rで示される炭素数1〜20の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等や、これらの置換基をグリシジル基、グリシジルオキシ基等のエポキシ含有基、アミノ基、アルキルアミノ基等のアミノ含有基等で置換した基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等の炭素数1〜6のものが好ましく、特にはメチル基及びフェニル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0013】
上記式(1)中、Xで示される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、ビニロキシ基、2−プロペノキシ基等のアルケノキシ基、フェノキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、ブタノキシム基等のオキシム基、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、特に加水分解縮合時の制御の容易さから、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が好ましい。
【0014】
上記式(1)中、nは0又は1であることが好ましく、nが0であるシラン化合物とnが1である化合物とを組み合わせて使用することがより好ましい。これにより架橋密度が向上し、被膜特性が向上する。
【0015】
Xで示される加水分解性基がアルコキシ基であるシラン化合物(アルコキシシラン)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等の4官能シラン化合物(n=0の化合物);
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、トリ−tert−ブトキシシラン、トリフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ジビニルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の3官能シラン化合物(n=1の化合物);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン等の2官能シラン化合物(n=2の化合物)が挙げられる。
【0016】
また、Xで示される加水分解性基がアルケノキシ基、アシロキシ基、オキシム基、又はアミノ基であるシラン化合物の具体例としては、上述したアルコキシシランにおけるアルコキシ基がこれらの基で置換された化合物が挙げられる。
【0017】
これらのシラン化合物から(A)シロキサン樹脂を製造するには、例えば、上記式(1)で表されるシラン化合物の1種以上を、酸触媒、水、有機溶剤の存在下で加水分解縮合させればよい。酸触媒としては、硫酸、硝酸等の無機酸や、ギ酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。この加水分解縮合反応により製造された(A)シロキサン樹脂は、Si原子がO原子を介して、すなわちシロキサン結合を介して直鎖状又は3次元網目状に結合され、Si原子の少なくとも一部に上記Rで示される基が結合した構造を有するものとなる。
【0018】
ここで、(A)シロキサン樹脂においては、シロキサン結合を構成しているSi原子1モルに対する、Si原子に結合しているH原子,F原子,B原子,N原子,Al原子,P原子,Si原子,Ge原子,Ti原子,及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(以下、「特定原子」という。)の総含有割合Mが0.50〜1.5モルであることが好ましい。すなわち、シロキサン結合を構成しているSi原子1原子あたりに結合している特定原子の数が、平均して0.50〜1.5原子であることが好ましい。Mの値を0.50モル以上とすることにより、得られる平坦化膜の誘電率を下げることができ、かつ、平坦性及びクラック耐性を向上させることができる。また、Mの値を1.5モル以下とすることにより、得られる平坦化膜の膜強度を高めることができる。Mの値は、0.65〜1.2モルであることがより好ましい。
【0019】
このMの値は、(A)シロキサン樹脂の原料であるシラン化合物の仕込み量から、例えば、
M=[M+(M/2)+(M/3)]/MSi
という式を用いて算出することができる。式中、Mは1つのSi原子とのみ結合している特定原子の数を示し、Mは2つのSi原子と結合している特定原子の数を示し、Mは3つのSi原子と結合している特定原子の数を示し、MSiはシロキサン結合を構成しているSi原子の総数を示す。
【0020】
(A)シロキサン樹脂の質量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算質量。本明細書において同じ。)は、特に限定されないが、1000〜3000であることが好ましく、1200〜2700であることがより好ましい。
【0021】
<(B)重合促進剤>
本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物は、(B)重合促進剤を含有する。この(B)重合促進剤を含有することにより、TFT平坦化膜形成用組成物を塗布した後の重合反応が促進される。その結果、比較的低温の焼成温度で平坦化膜を形成することができる。また、得られる平坦化膜の誘電率を下げることができ、かつ、平坦化膜からの脱ガス量を低減することができる。この(B)重合促進剤としては、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、オニウム塩がより好ましい。これらの(B)重合促進剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
オニウム塩としては、アンモニウムヒドロキシド、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、燐酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アンモニウム塩、フタル酸アンモニウム塩、マロン酸アンモニウム塩、コハク酸アンモニウム塩、酒石酸アンモニウム塩、リンゴ酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、酢酸アンモニウム塩、プロピオン酸アンモニウム塩、ブタン酸アンモニウム塩、ペンタン酸アンモニウム塩、ヘキサン酸アンモニウム塩、ヘプタン酸アンモニウム塩、オクタン酸アンモニウム塩、ノナン酸アンモニウム塩、デカン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、アジピン酸アンモニウム塩、セバシン酸アンモニウム塩、酪酸アンモニウム塩、オレイン酸アンモニウム塩、ステアリン酸アンモニウム塩、リノール酸アンモニウム塩、リノレン酸アンモニウム塩、サリチル酸アンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、安息香酸アンモニウム塩、p−アミノ安息香酸アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸アンモニウム塩、メタンスルホン酸アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム塩、トリフルオロエタンスルホン酸アンモニウム塩等のアンモニウム塩化合物等が挙げられる。また、オニウム塩としては、上記アンモニウム塩化合物のアンモニウム部位が、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等に置換されたアンモニウム塩化合物等も挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が好ましい。
【0023】
(B)重合促進剤の含有量は、(A)シロキサン樹脂のSiO換算質量に対して120〜1000質量ppmであることが好ましい。含有量を120質量ppm以上とすることにより重合促進剤としての十分な効果が得られ、1000質量ppm以下とすることにより組成物の安定性を高めることができる。この含有量は、150〜900質量ppmであることがより好ましい。
【0024】
<(C)有機溶剤>
本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物は、(C)有機溶剤を含有する。この(C)有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル若しくはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;ジオキサン等の環状エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。これらの(C)有機溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
(C)有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、(A)シロキサン樹脂の濃度が3〜35質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。
【0026】
<(D)シリコーン系界面活性剤>
本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物は、さらに、(D)シリコーン系界面活性剤を含有することが好ましい。この(D)シリコーン系界面活性剤としては、フッ素変性シリコーン系界面活性剤が特に好ましく、例えばSH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA、ST94PA(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)等の市販品を好適に用いることができる。その中でも、SH7PA、SH28PA、SH30PA、FS1265、KS−604に相当するフッ素変性シリコーン系界面活性剤が特に好ましい。フッ素変性シリコーン系界面活性剤を用いることで、平坦性及び基材との密着性を高めることができる。
【0027】
(D)シリコーン系界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、TFT平坦化膜形成用組成物の全量に対して100〜10000質量ppmであることが好ましい。
【0028】
≪表示装置≫
本発明に係る表示装置は、本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物を用いてTFT素子上に形成された平坦化膜を有するものである。TFT素子上に平坦化膜を形成する際には、先ず、本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物をスピンコート法等によりTFT素子上に塗布する。次いで、ホットプレート等を用いてこの塗膜にベーク処理を施す。ベーク温度は、80〜300℃が好ましい。このベーク処理は、ベーク温度を変えつつ複数段階で行ってもよい。その後、この塗膜を焼成することにより平坦化膜を得る。焼成温度は、通常は400℃程度であるが、本発明に係るTFT平坦化膜形成用組成物では、250〜350℃という比較的低温の焼成温度で4.0以下、好ましくは3.5以下といった低誘電率の平坦化膜を形成することができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>
メチルトリメトキシシラン 95.1g、テトラメトキシシラン 45.6g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 140.6gを混合して撹拌し、シラン化合物の溶液を調製した。この溶液に水 118.7g及び60%硝酸 11μLを加え、さらに4時間撹拌した。その後、23℃で1日間静置し、シラン化合物の加水分解縮合反応を進行させた。反応後に得られた溶液をエバポレーターで235.8gまで濃縮し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 161.4g及び1%TMAH水溶液 1.8gを加えて混合することにより、シリカ系被膜形成用組成物を調製した。
得られたシリカ系被膜形成用組成物をスピンコート法によりSiウエハ上に塗布し、80℃−150℃−200℃の3段階の温度のホットプレート上で1分間ずつベークした。さらに、窒素雰囲気下、300℃で2時間焼成し、膜厚520nmのシリカ系被膜を形成した。誘電率を測定したところ3.3であった。結果を表1にまとめる。
【0031】
<実施例2>
メチルトリメトキシシラン 507.7g、テトラメトキシシラン 241.8g、及びプロピレングリコールジメチルエーテル 613.6gを混合して撹拌し、シラン化合物の溶液を調製した。この溶液に水 236.9g及び60%硝酸 58μLを加え、さらに3時間撹拌した。その後、23℃で3日間静置し、シラン化合物の加水分解縮合反応を進行させた。反応後に得られた溶液のうち40gを取り、さらにプロピレングリコールジメチルエーテル 8.3g、1%TMAH水溶液 0.3g、1%シリコーン系界面活性剤のイソプロパノール溶液(製品名:FS1265、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製) 1.5g、及び60%硝酸 2.9μLを加えて混合することにより、シリカ系被膜形成用組成物を調製した。
得られたシリカ系被膜形成用組成物をスピンコート法によりSiウエハ上に塗布し、80℃−150℃−200℃の3段階の温度のホットプレート上で1分間ずつベークした。さらに、窒素雰囲気下、350℃で30分間焼成し、膜厚860nmのシリカ系被膜を形成した。誘電率を測定したところ3.1であった。
また、得られたシリカ系被膜形成用組成物をライン/スペース=3.5μm/3.4μm、段差1μmのパターン上に塗布し、上記と同様にベークし、焼成した。このシリカ系被膜の断面をSEMで観察したところ、パターントップとパターンボトムとの差は400Åであった。結果を表1にまとめる。また、SEM像を図1に示す。
【0032】
<実施例3>
メチルトリメトキシシラン 507.7g、テトラメトキシシラン 241.8g、及びプロピレングリコールジメチルエーテル 613.6gを混合して撹拌し、シラン化合物の溶液を調製した。この溶液に水 236.9g及び60%硝酸 58μLを加え、さらに3時間撹拌した。その後、23℃で3日間静置し、シラン化合物の加水分解縮合反応を進行させた。反応後に得られた溶液のうち40gを取り、さらにプロピレングリコールジメチルエーテル 8.3g、1%硝酸テトラメチルアンモニウム水溶液 0.3g、1%シリコーン系界面活性剤のイソプロパノール溶液(製品名:FS1265、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製) 1.5gを加えて混合することにより、シリカ系被膜形成用組成物を調製した。
得られたシリカ系被膜形成用組成物をスピンコート法によりSiウエハ上に塗布し、80℃−150℃−200℃の3段階の温度のホットプレート上で1分間ずつベークした。さらに、窒素雰囲気下、350℃で30分間焼成し、膜厚860nmのシリカ系被膜を形成した。誘電率を測定したところ3.3であった。結果を表1にまとめる。
【0033】
<実施例4>
メチルトリメトキシシラン 317.4g、テトラメトキシシラン 354.6g、及びプロピレングリコールジメチルエーテル 613.6gを混合して撹拌し、シラン化合物の溶液を調製した。この溶液に水 293.9g及び60%硝酸 51μLを加え、さらに3時間撹拌した。その後、23℃で3日間静置し、シラン化合物の加水分解縮合反応を進行させた。反応後に得られた溶液のうち40gを取り、さらにプロピレングリコールジメチルエーテル 8.3g、1%TMAH水溶液 0.3g、1%シリコーン系界面活性剤のイソプロパノール溶液(製品名:FS1265、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製) 1.5g、及び60%硝酸 2.9μLを加えて混合することにより、シリカ系被膜形成用組成物を調製した。
得られたシリカ系被膜形成用組成物をスピンコート法によりSiウエハ上に塗布し、80℃−150℃−200℃の3段階の温度のホットプレート上で1分間ずつベークした。さらに、窒素雰囲気下、350℃で30分間焼成し、膜厚860nmのシリカ系被膜を形成した。誘電率を測定したところ3.5であった。
また、得られたシリカ系被膜形成用組成物をライン/スペース=3.5μm/3.4μm、段差1μmのパターン上に塗布し、上記と同様にベークし、焼成した。このシリカ系被膜の断面をSEMで観察したところ、パターントップとパターンボトムとの差は2200Åであった。結果を表1にまとめる。また、SEM像を図2に示す。
【0034】
<比較例1>
メチルトリメトキシシラン 95.1g、テトラメトキシシラン 45.6g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 140.6gを混合して撹拌し、シラン化合物の溶液を調製した。この溶液に水 118.7g及び60%硝酸 11μLを加え、さらに4時間撹拌した。その後、23℃で1日間静置し、シラン化合物の加水分解縮合反応を進行させた。反応後に得られた溶液をエバポレーターで235.8gまで濃縮し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 161.4gを加えて混合することにより、シリカ系被膜形成用組成物を調製した。
得られたシリカ系被膜形成用組成物をスピンコート法によりSiウエハ上に塗布し、80℃−150℃−200℃の3段階の温度のホットプレート上で1分間ずつベークした。さらに、窒素雰囲気下、300℃で2時間焼成し、膜厚520nmのシリカ系被膜を形成した。誘電率を測定したところ4.3であった。結果を表1にまとめる。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から分かるように、重合促進剤を含有する実施例1〜4のシリカ系被膜形成用組成物を用いた場合には、300〜350℃という比較的低い焼成温度で誘電率3.5以下という低誘電率のシリカ系被膜を形成することができた。また、シロキサン樹脂のMの値が0.70である実施例2のシリカ系被膜形成用組成物を用いた場合には、Mの値が0.50である実施例4のシリカ系被膜形成用組成物を用いた場合よりもシリカ系被膜の平坦性が高かった。一方、重合促進剤を含有しない比較例1のシリカ系被膜形成用組成物を用いた場合、300℃の焼成温度では、誘電率を低くすることが困難であった。これらのことから、重合促進剤を含有する実施例1〜4のシリカ系被膜形成用組成物は、TFT素子上の平坦化膜といった高温焼成が好ましくないディスプレイ用途に好適であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例2で形成されたシリカ系被膜の断面を示すSEM像である。
【図2】実施例4で形成されたシリカ系被膜の断面を示すSEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シロキサン樹脂、(B)重合促進剤、及び(C)有機溶剤を含有するTFT平坦化膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(B)重合促進剤がオニウム塩である請求項1記載のTFT平坦化膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(B)重合促進剤の含有量が、前記(A)シロキサン樹脂のSiO換算質量に対して120〜1000質量ppmである請求項1又は2記載のTFT平坦化膜形成用組成物。
【請求項4】
前記(A)シロキサン樹脂のシロキサン結合を構成しているSi原子1モルに対する、Si原子に結合しているH原子,F原子,B原子,N原子,Al原子,P原子,Si原子,Ge原子,Ti原子,及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子の総含有割合が0.50〜1.5モルである請求項1から3のいずれか1項記載のTFT平坦化膜形成用組成物。
【請求項5】
さらに、(D)シリコーン系界面活性剤を含有する請求項1から4のいずれか1項記載のTFT平坦化膜形成用組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のTFT平坦化膜形成用組成物を用いてTFT素子上に形成された平坦化膜を有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−302087(P2009−302087A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151279(P2008−151279)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】