説明

エポキシ樹脂シール剤およびX線検出器

【課題】外部から浸入する水分を抑え、耐湿性、接着性、貯蔵安定性、低温硬化性にすぐれたシール剤を提供し、X線検出用シンチレータ膜の劣化を防止して長期安定性の高いX線検出器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるエポキシ樹脂シール剤は、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、下記化学式で示されるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂と、からなる混合物と、
【化1】


(上記化学式中、R1はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、nはそれぞれ0〜10の整数を示す。)
カチオン重合触媒と、無機質充填剤と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂シール剤およびX線検出器に関し、特に電子機器の外部から浸入する水分を抑え、高い耐湿性を保有するエポキシ樹脂シール剤およびX線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
新世代のX線診断用検出器として、アクティブマトリクスを用いた平面検出器が開発されている。この平面検出器は、X線照射量を検出することにより、X線撮影像、あるいはリアルタイムのX線画像をデジタル信号として出力するセンサである。そして、この平面検出器では、X線をシンチレータ膜により可視光すなわち蛍光に変換し、この蛍光をアモルファスシリコン(a−Si)フォトダイオード、あるいはCCD(Charge Coupled
Device)などの光電変換素子で電気信号に変換することで画像を取得する。
【0003】
シンチレータ膜は、材料として、一般的にヨウ化セシウム(CsI):ナトリウム(Na)、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、あるいは硫酸化ガドリニウム(GdS)などを用い、ダイシングなどにより溝を形成したり、柱状構造が形成されるように蒸着法で堆積したりすることで、X線検出時の解像度特性を向上させることができる。そして、シンチレータ膜からの蛍光の利用効率を高めてX線感度特性を改善する為に、シンチレータ膜の外側に反射層を形成する方法がある。即ち、この方法は、光電変換素子側と反対側に発光した蛍光を反射層で反射して光電変換素子側に到達する蛍光を増大させるものである。
【0004】
上記X線検出器でシンチレータ膜に用いられる材料は、強い吸湿性を示すものが多く、大気雰囲気下に放置すると水分の浸入によって結晶構造が崩れ、X線感度特性や解像度特性が劣化してしまうことがある。そこで、これら直接方式の平面検出器に用いるX線変換膜や、間接方式の平面検出器に用いるシンチレータ膜の特性の劣化を防ぐために、大気や水分に対する遮蔽性とともに、X線に対する透過性を有する防湿層が必要とされている。そして、この防湿層としては、真空あるいは不活性ガス雰囲気下での蒸発堆積法によってキシリレン系樹脂などで形成される有機膜が、特許文献1に開示されている。また、酸窒化珪素などで形成される無機膜が、特許文献2に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公平5−39558号公報
【特許文献2】特公平6−58440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなキシレン系樹脂などで形成される有機膜は、充分な防湿性能を有していない。更に、無機膜の課題は薄膜の場合、ピンホールが発生する。厚膜形成に長時間を要する。膜が硬くてもろいなどの欠点を有している。X線吸収の小さい金属製キャップが防湿層として水分を抑え、該金属製キャップの端部を遮蔽するためにエポキシ樹脂系シール剤を用いて防湿性を向上する方法もある。しかし、この防湿構造は、従来公知のシール剤を用いて端部を遮蔽した場合、充分な防湿性能を得られなかった。また、上記防湿構造は、金属製キャップや半導体基板表面層との接着力が弱く、接着部の界面から水分が浸入する課題を有していた。また、従来のシール剤は低温硬化性に劣っており、高温での熱処理が必要となるため半導体基板有機層への影響があった。さらに、常温環境での粘度変化が大きく、シール剤の反応が進行してしまうためシール剤の膜厚が不安定であった。
【0007】
上述のように、従来のシール剤は、耐湿性、接着性、貯蔵安定性および低温硬化性に十分な性能を有していなかった。上記シール剤の防湿性能が劣る場合、X線検出器ではシンチレータ膜の劣化が進行し、発光性、解像度の低下を招き、X線検出器の性能上大きな課題を有していた。さらに上記シール剤の接着性が劣る場合も外部からの水分の浸入を抑えきれず、同様に発光性、解像度の低下を招く。また、防湿層の端部遮蔽時に、シール剤の粘度が上昇し、シール剤の膜厚が不安定となりX線画像出力を安定させることが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、外部から浸入する水分を抑え、X線を可視光に変換するシンチレータ膜の劣化を防止し長期に渡って高いX線検出性能を維持するX線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明にかかるエポキシ樹脂シール剤およびX線検出器は次のように構成されている。
【0010】
(1)本発明にかかるエポキシ樹脂シール剤は、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、下記化学式で示されるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物と、
【化2】

(上記化学式中、R1はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、nはそれぞれ0〜10の整数を示す。)
カチオン重合触媒と、無機質充填剤とを備えたことを特徴とする。
【0011】
(2)上記(1)に記載の前記エポキシ樹脂シール剤において、上記液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂混合物中におけるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂の割合が20〜40質量%の範囲にあることが好ましい。
【0012】
(3)上記(1)に記載の前記エポキシ樹脂シール剤は、前記液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、前記ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物が常温環境において液状であることが望ましい。
【0013】
(4)上記(1)に記載の前記エポキシ樹脂シール剤において、前記カチオン重合触媒は、熱および紫外線で硬化する触媒であることが望ましい。
【0014】
(5)上記(1)に記載の前記エポキシ樹脂シール剤において、前記無機質充填剤は、平均粒径が40nm以下のシリカ(SiO)を1質量%以上含有することが望ましい。
【0015】
(6)本発明にかかるX線検出器は、光電変換素子と、前記光電変換素子の感光面を被覆し、X線照射により蛍光を発生させるシンチレータ膜と、前記シンチレータ膜の露出面を被覆し、前記シンチレータ膜に発生する蛍光を前記光電変換素子の感光面に向けて反射する反射層と、前記反射層の露出面を被覆し、前記シンチレータ膜と前記反射層を保護する防湿層と、前記防湿層の端部を遮蔽し接着する上記(1)に記載の前記エポキシ樹脂シール剤とを備えたことを特徴とする。
【0016】
(7)上記(5)に記載のX線検出器において、前記エポキシ樹脂シール剤硬化後の膜厚が100μm以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物と、カチオン重合触媒と、無機質充填剤とを備えたエポキシ樹脂シール剤を使用してX線検出器内部の防湿層の端部を遮蔽することにより、外部から浸入する水分を抑え、耐湿性、接着性、貯蔵安定性および低温硬化性に優れた遮蔽効果を得られ、長期に渡って高いX線検出性能を維持するX線検出器を提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかるエポキシ樹脂シール剤およびX線検出器についての実施の形態につき、添付図面に基づき説明する。
【0019】
以下、本実施の形態にかかるX線検出器1の全体構成について詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかるX線検出器1の概略構成を示す構成図である。図1において、X線検出器1は、X線の放射線画像を検出し、画像信号に変換するX線検出平面センサであり、例えば一般医療用途などに用いられる。ここで、X線検出器1は、光電変換部5と、TFT(Thin Film
Transistor)アレイ基板2と、X線変換部3と、ガラス基板4と、制御ライン6と、データライン7と、を備えている。
【0020】
TFTアレイ基板2は、フォトダイオード11と薄膜トランジスタ12を対として、例えば、格子状に平面配置させた半導体基板である。また、光電変換部5は、フォトダイオード11と薄膜トランジスタ12を対として形成したものであり、照射光を電気信号に光電変換する機能を有する。従って、照射光は、照射光量に比例した電気信号に変換される。
【0021】
フォトダイオード11は、感光面に光が照射されると、電荷が発生し電流を発生させることにより、光電変換機能を有する。また、薄膜トランジスタ12は、フォトダイオード11に発生した電荷の蓄積、および転送を制御する半導体素子である。このフォトダイオード11と、薄膜トランジスタ12が一対となって、1つ1つの画素10を構成している。
【0022】
制御ライン6は、フォトダイオード11からの電気信号の取り出し、または転送を薄膜トランジスタ12に指示する動作制御線である。また、データライン7は、光電変換部5から電気信号を取り出す電気信号線である。また、ガラス基板4は、光電変換部5、制御ライン6、データライン7における電気信号の蓄積、または転送等が正常に行われるように上記主要部を絶縁している。
【0023】
X線変換部3は、TFTアレイ基板2の一主面である表面上に対向して設けられている。以下、X線変換部3の内部構造を詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかるX線検出器1の内部構造を示す拡大断面図である。X線検出器1は、その内部にフォトダイオード11と、薄膜トランジスタ12と、ゲート電極13と、ソース電極14と、ドレイン電極15と、X線変換部3と、を備えている。X線変換部3は、入射するX線を可視光に変換するものであり、シール剤層16と、シンチレータ膜17と、反射層8と、防湿層9と、を備えている。図1と同じ符号は、同じ要素を示し、説明を省略する。なお、ゲート電極13と、ソース電極14と、ドレイン電極15は、薄膜トランジスタ12の動作を制御するための電極を示している。
【0024】
シンチレータ膜17は、フォトダイオード11の感光面を被覆し、図2の上側であるフォトダイオード11の感光面に対向する側からのX線照射により蛍光を発生させる蛍光膜である。また、反射層8は、シンチレータ膜17の露出面を被覆し、X線を透過させシンチレータ膜17で発生した蛍光による可視光をフォトダイオード11側に反射させることによりX線検出器1のX線検知効率を向上する機能を有する。また、防湿層9は、反射層8の露出面を被覆し、シンチレータ膜17と反射層8を外部から保護する機能を有する。また、シール剤層16は、防湿層9の端部を遮蔽し接着する機能を有する。なお、反射層8、防湿層9、シンチレータ膜17、シール剤層16の材料については、詳細を後述する。
【0025】
シール剤層16は、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、下記化学式で示されるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物と、
【化3】

(上記化学式中、R1はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、nはそれぞれ0〜10の整数を示す。)カチオン重合触媒と、無機質充填剤とを備えている。また、シール剤層16に含まれる液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物は常温環境において液状であることが好ましい。さらに、シール剤層16硬化後の膜厚は100μm以下が好ましい。この膜厚が、100μmを超えると、水分透過率が高くなり、不都合が生じる。
【0026】
上述の構成により、X線変換部3は、入射するX線を可視光すなわち蛍光に変換する機能を有し、例えば、柱状シンチレータと溝部とを交互に有する柱状構造に形成されている。ここで、X線変換部3内部のシンチレータ膜17は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、あるいはヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)等により真空蒸着法で柱状シンチレータを形成したもの、あるいは硫酸化ガドリニウム(GdS)蛍光体粒子をバインダ樹脂と混合し、TFTアレイ基板2上に塗布して焼成することにより硬化させ、ダイサによりダイシングするなどで溝部を形成して柱状シンチレータを四角柱状に形成したものである。そして、これら溝部には、大気、あるいは酸化防止用の窒素(N)などの不活性ガスが封入されている。
【0027】
なお、上記溝部は真空状態とすることも可能である。後述の実施例では、CsI:Tl膜の蒸着膜を用いた。この膜厚は約600μmで、CsI:Tl膜の柱状構造結晶(ピラー)の太さは最表面で8〜12μm程度であった。次に、反射層8は、シンチレータ膜17上に被覆されており、シンチレータ膜17からフォトダイオード11と反対面側に発せられた蛍光を反射して、フォトダイオード11面側に到達する蛍光光量を増加させるものである。
【0028】
なお、反射層8の材料は、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂材料、或いはアクリル等メタクリル系樹脂やブチラール系等のポリビニルアセタール系樹脂など熱可塑性樹脂材料をバインダ材とし、平均粒径がサブミクロン程度のTiO粉体、Al粉体、SiO粉体などの光散乱性粒子を含有している。特に、ブチラール系のバインダ材は、塗膜にクラックを生じ難く、高品位の反射層8を形成できる。反射層8は、筆塗り、ブレード、ディスペンサー、コンタクトメタルスクリーン印刷などの方法でシンチレータ膜17上に形成され、常温放置又は乾燥炉にて乾燥させる。
【0029】
以下、本実施の形態にかかる防湿構造について説明する。防湿層9として、金属、ガラス、樹脂を使用可能であるが、加工性および防湿性の点からキャップ状に加工された金属が好ましい。さらに、X線の吸収ができるだけ少ない軽金属が好ましく、特に加工性の点で、例えばアルミニウム、アルミニウム合金などが好ましい。これら金属をキャップ状に加工する方法は、キャップ端部にシワの無い状態で絞り加工を行う方法が好ましい。さらに、シール剤層16は、本実施の形態にかかるエポキシ樹脂シール剤からなり、上記キャップ状金属からなる防湿層9の端部を遮蔽し、水分の浸入を抑える。遮蔽時の作業雰囲気は特に湿度が低く調湿された、クリーンルームが好ましい。上記シール剤の塗布方法は筆塗り、ブレード、ディスペンサー、コンタクトメタルスクリーン印刷が適しており、遮蔽部を加圧しながら熱および紫外線の付与により、シール剤を硬化させることが好ましい。加圧0.5kgf/cm以上で、紫外線照射条件は、例えば、発光波長365nmで4J/cm以上で硬化させることが均一な遮蔽性、防湿性の点から好ましい。
【0030】
以下、本実施の形態にかかるシール剤層16の材料について詳細に説明する。エポキシ樹脂シール剤の一成分であるビスフェノール型エポキシ樹脂の具体例としては、低粘度で取扱い易い樹脂組成物を調製する観点から、常温環境における粘度が500ポアズ以下、さらには常温環境における粘度が300ポアズ以下の液状のエポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
なお、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社製の製品名エピコート825,エピコート827,エピコート828,エピコート828EL,エピコート828XA,エピコート834,エピート801,エピコート801P,エピコート802,エピコート802XA,エピコート815,エピコート815XA,エピコート816A,エピコート819が該当する。
【0032】
また、大日本インキ化学株式会社製の製品名850−S,EXA−850CRP,830−S,EXA−830CRP,EXA−835LVが該当する。
また、旭電化工業株式会社製の製品名EP−4100,EP−4100G,EP−4100E,EP−4100TX,EP−4300E,EP−4340が該当する。
また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の製品名エピコート806,エピコート806L,エピコート807が該当する。
また、旭電化工業株式会社製の製品名EP−4901,EP−4901E,EP−4950が該当する。
【0033】
本発明に用いるビスフェノール型エポキシ樹脂と混合するジシクロペンタジエンエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンおよびフェノール化合物の重付加物にエピクロルヒドリンを反応させた反応物であって、下記一般式で示されるものを用いることができる。
【0034】
【化4】

【0035】
かかるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂は、通常常温で固形である。
【0036】
その具体例としては、大日本インキ工業(株)社製のHP−7200L,HP−7200,HP−7200H,HP7200HHなどや、その他、溶媒を含有したHP−7200−80M,HP−7200H−75Mなどが挙げられる。
上記一般式において、上記品番の製品は、R1が、水素原子で、nが0〜6の範囲で、平均官能基数(個/分子)が2.2〜3.3のものに相当している。
【0037】
本発明における液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、下記化学式で示されるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂との混合物において、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂の配合される割合が、20〜40質量%の範囲であることが好ましい。上記ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂の量が、上記範囲より少ないと、耐湿性の点で不都合であり、一方、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂の量が上記範囲より多いと、硬化性が劣る点で不都合が生じる。
【0038】
本発明の混合物を得るには、ビスフェノール型エポキシ樹脂にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂を均一に加熱混合することが好ましい。混合方法は、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂に固形ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂を均一に分散させ、加熱により溶解する方法、加熱したビスフェノールエポキシ樹脂にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂を少量づつ加え均一にする方法などがあり、均一性はガラス容器で不溶物がなく均一に溶解されていることを目視で確認する。加熱温度は50℃〜100℃の範囲が好ましい。加熱温度が高い場合や、長時間の加熱の場合は、エポキシ樹脂の反応および劣化が進行し、好ましくない。
【0039】
その他、本発明のシール剤には、以下に示すエポキシ樹脂を添加することも可能である。
CEL−2021P(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量128〜140、粘度200〜350cP/25℃)、CEL−2021A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量130〜145、粘度200〜450cP/25℃)、CEL−2000(1−ビニル−3,4−エポキシシクロヘキサン、1.5cP/25℃)、CEL−3000(1,2,8,9−ジエポキシリモネン、エポキシ当量93.5以下、粘度5〜20cP/25℃)(以上ダイセル化学工業製)や、デナコールEX−421、201(レゾルシンジグリシジルエーテル)、211(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)、911(プロピレングリコールジグリシジルエーテル)、701(アジピン酸ジグリシジルエステル)(以上ナガセ化成工業製)等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は粘度、耐熱性、接着性および表面硬度の点から、混合して使用することができる。
【0040】
その他のエポキシ樹脂として、エポキシ基を持つ(メタ)アクリレートとして広く使用されているものも使用できる。その具体例としては、グリシジルメタクリレート、2−メチル−グリシジルメタクリレート、エポキシ化イソプレニルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキサンメタノール(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキサンメタノールのε−カプロラクトン変性物の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ダイセル化学工業株式会社製、サイクロマーM100(エポキシ当量196〜213)、同A200(エポキシ当量182〜195)、同M101(エポキシ当量326〜355))等も単独、又は、他の共重合可能な重合性単量体と共重合して用いることができる。共重合に用いられる重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸芳香族エステル、環内に3級炭素を含み炭素数が7〜20である脂環式メタクリル酸エステル等の不飽和脂肪酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;N−アルキル基置換マレイミド、N−シクロアルキル置換マレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド等がある。
【0041】
エポキシ基を持つ(メタ)アクリレート等を単独で又は他の共重合可能な重合性単量体と重合させる場合、開始剤を用いることができる。開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2、4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、アセチルパーオシキド、メチルエチルケトンパーオキシド、コハク酸パーオキシド、ジセチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、ABN−E(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))、ABN−V(2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル))、パーブチルO(t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)などを使用することができる。
【0042】
また、上記エポキシ樹脂の重合温度は、40〜150℃、好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは、80〜120℃の温度範囲である。重合温度が上記温度範囲の上限温度より高いと、重合が不安定になり高分子量の化合物が多く生成し、上記温度範囲の下限温度未満では、反応時間がかかりすぎ好ましくない。
【0043】
以上のように、本実施の形態においては、各種エポキシ樹脂を採用することができるが、エポキシ樹脂以外の重合成分を含まないエポキシ樹脂ホモポリマーを構成するエポキシ樹脂が、特に耐溶剤性に優れ、かつ、機械的特性も電子機器用コーティング剤として優れているため好ましい。
【0044】
また、本実施の形態にかかるカチオン重合触媒は、熱および紫外線が付与されることにより硬化する触媒である。カチオン重合触媒は、熱および紫外線の付与によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であり、特に好ましいものは、熱および紫外線の付与によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩又はその誘導体である。その具体例としては、以下のものが適用できる。
【0045】
フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のジアリールヨードニウム塩トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩。また、その他に好ましいものとしては、(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6,−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェート等の鉄−アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物も挙げられる。
【0046】
これらの中でも、実用面の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、脂肪族スルホニウム塩、アルミニウム錯体やジルコニウム錯体とトリフェニルシラノールまたはフェノール化合物が挙げられ、これらのカチオン重合触媒に光開始剤として、安息香酸系又は第三級アミン系等の従来公知の光重合促進剤の1種又は2種以上と組み合わせて用いても良い。
【0047】
また、本実施の形態にかかるカチオン重合触媒は、熱および紫外線の付与による硬化性を考慮して適宜調整することが可能で、全カチオン重合触媒の添加量は、本実施の形態にかかるエポキシ樹脂シール剤中に0.1〜10質量%含有させることが好ましい。0.1質量%未満では添加効果が得られずエポキシ樹脂が硬化しないことがあり、10質量%より多いと硬化物の吸湿性が影響し、機械強度が低下するので好ましくない。 熱の付与による重合の場合、150℃以下の温度の加熱が基板構成材料の劣化を進行させない点で好ましく、さらに好ましくは、120℃以下の温度である。
【0048】
なお、紫外線硬化タイプの光開始剤を用いる場合の重合に用いる光源としては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の従来公知の光源を用いることができ、紫外線の照射により上記光開始剤からルイス酸を放出させることで、上記エポキシ化合物を硬化させる。光源としては、400nm以下の波長を有する光源が有効である。本実施の形態にかかるエポキシ樹脂組成物には、従来公知のエポキシ樹脂の硬化方法のいずれも適用が可能である。
【0049】
以下、無機質充填剤について詳細に説明する。本実施の形態にかかるエポキシ樹脂シール剤に用いる無機質充填剤としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス、タルク、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マグネシア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、雲母などが使用でき、これらのうち特に溶融シリカ、結晶性シリカが好ましい。また、無機質充填剤の形状としては破砕状、球状、亜球状、繊維状、もしくは鱗片状のものが使用でき、特に、液状樹脂の細部間隙への充填性、紫外線光の透過性を考慮して、シール剤層16に含まれる無機質充填剤は、平均粒径が40nm以下のシリカ(SiO)を1質量%以上含有することが、水分遮蔽性、樹脂の低吸水化の点で特に好ましい。シリカの平均粒径が上記範囲を超えると、紫外線光の透過性が劣り、特に厚膜の場合、硬化不良が発生する点で不都合である。
【0050】
なお、平均粒径40nm以下のシリカ充填剤の具体例としては、アエロジル130,アエロジル200,アエロジル200V,アエロジル200CF,アエロジル200FAD,アエロジル300,アエロジル300CF,アエロジル380,アエロジルR972,アエロジルR972V,アエロジルR972CF,アエロジルR974,アエロジルR202,アエロジルR805,アエロジルR812,アエロジルR812S,アエロジルOX50,アエロジルTT600,アエロジルMOX80,アエロジルMOX170,アエロジルCOK84,アエロジルRX200,アエロジルRY200(以上日本アエロジル(株)社製)などがあり、また、耐クラック性の補強効果を狙って繊維状の充填剤も併用することができる。
【0051】
繊維状の充填剤としては、チタニア、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、マグネシア、硫酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、α−アルミナ、クリソタイル、ワラストナイトなどのウィスカー類、また、Eガラス繊維、シリカアルミナ繊維、シリカガラス繊維などの非晶質繊維の他チラノ繊維、炭化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、γアルミナ繊維、α−アルミナ繊維、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などの結晶性繊維などがある。以上の繊維状充填材としては、平均繊維径5μm以下、最大繊維長10μm以下のものが細部への充填性の点で好ましい。
【0052】
本実施の形態にかかる無機質充填剤は、コーティング用エポキシ樹脂組成物の総量に対して0.5質量%以上の範囲で使用できる。無機質充填剤が少ない場合、硬化物の熱膨張率が大きくなり、耐熱衝撃性が充分得られなくなる。また、80質量%を越えると樹脂組成物の流動性が不十分となり、間隙への充填性が低下し、未充填などが発生する原因となるので好ましくない。
【0053】
以下、他の添加剤について詳細に説明する。さらに、耐クラック性を向上させるため、本組成物の弾性率を下げる目的で熱可塑性樹脂、ゴム成分、各種オリゴマーなどを添加しても良い。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂等があり、また、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどにより変性させることができる。また、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などを添加し、低応力性を付与することも可能である。低応力性を付与する成分の最大粒子サイズとしては、10μm以下で、好ましくは、5μm以下である。本実施の形態にかかる液状エポキシ樹脂組成物中の各種変性剤のエポキシ樹脂コーティング材料の粒子サイズが大きい場合には、コーティングした表面が劣化し、細部への充填性が低下しボイドが発生してしまう。この他、必要に応じてさらにプリント基板、実装された半導体パッケージ、もしくは金属端子との接着性を向上させるための接着性付与剤、界面活性剤、カップリング剤、着色剤等を配合することもできる。さらに粘度調整剤として反応型低分子エポキシ樹脂、溶媒などを添加することができる。本実施の形態にかかる液状エポキシ樹脂組成物は、三本ロール、ボールミル、らいかい機、ホモジナィザー、自公転式混合装置、万能混合機、押出し機、ヘンシェルミキサー等を用いてフィラー成分と樹脂成分とを均一に混合後、ディスペンサー等に充填し、使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。
実施例および比較例において用いるシール剤の組成を、下記表1および表2に示す。
【0055】
【表1】

【表2】

【0056】
なお、上記の表1および表2で使用されている材料として、主に下記のようなものが挙げられる。
エポキシ樹脂A: ジャパンエポキシレジン(株)社製エピコート807 ビスフェノールF型エポキシ樹脂
エポキシ樹脂B: ジャパンエポキシレジン(株)社製エピコート828 ビスフェノールA型エポキシ樹脂
エポキシ樹脂C: 大日本インキ化学工業(株)社製HP−7200 ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂
エポキシ樹脂D: 大日本インキ化学工業(株)HP−7200L ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂
硬化剤A: 旭電化工業(株)社製アデカオプトンCP−77 熱カチオン重合触媒(スルフォニウム塩)
硬化剤B: 旭電化工業(株)社製アデカオプトマーSP−170 光カチオン重合触媒(スルフォニウム塩)
硬化剤C: 旭電化工業(株)社製アデカオプトマーSP−150 光カチオン重合触媒(スルフォニウム塩)
充填剤A: 日本アエロジル(株)社製アエロジル200(平均粒径12nm)
充填剤B: 株式会社アドマテックス社製合成シリカアドマファインSOE5(平均粒径1.2μm)
カップリング剤: 東レ・ダウコーニング株式会社製Z−6040(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0057】
以下、各実施例および比較例について詳細に説明する。
(実施例1)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールF型エポキシ樹脂88質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂4.7質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合し、均一な樹脂系を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例1のシール剤を作成した。
【0058】
(実施例2)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールF型エポキシ樹脂83.4質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂9.3質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合し、実施例1のシール剤を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例2のシール剤を作成した。
【0059】
(実施例3)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールF型エポキシ樹脂74.2質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂18.5質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合し、実施例1のシール剤を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例3のシール剤を作成した。
【0060】
(実施例4)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールA型エポキシ樹脂88質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂4.7質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合し、実施例1のシール剤を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例4のシール剤を作成した。
【0061】
(実施例5)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールA型エポキシ樹脂83.4質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂9.3質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合し、実施例1のシール剤を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例5のシール剤を作成した。
【0062】
(実施例6)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールA型エポキシ樹脂74.2質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂18.5質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合し、実施例1のシール剤を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例6のシール剤を作成した。
【0063】
(実施例7)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールA型エポキシ樹脂83.4質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂9.3質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−150をそれぞれ1質量%配合し、実施例1のシール剤を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例7のシール剤を作成した。
【0064】
(実施例8)
表1の組成表に従って、あらかじめビスフェノールA型エポキシ樹脂42.9質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂4.8質量%を配合し、80℃で加熱し、均一なエポキシ樹脂を作成した。次いでエポキシ樹脂混合品を室温まで冷却し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−150をそれぞれ1質量%配合し、実施例1のシール剤を作成した。次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、実施例8のシール剤を作成した。
【0065】
(比較例1)
表2の組成表に従って、あらかじめビスフェノールF型エポキシ樹脂92.7質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂を配合せずに残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合後、均一混合し、次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、比較例1のシール剤を作成した。
【0066】
(比較例2)
表2の組成表に従って、あらかじめビスフェノールA型エポキシ樹脂92.7質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂を配合せずに残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合後、均一混合し、次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、比較例2のシール剤を作成した。
【0067】
(比較例3)
表2の組成表に従って、あらかじめビスフェノールF型エポキシ樹脂92.7質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂を配合せずに残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合後、均一混合し、次いで充填剤としてSO−E5を50質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、比較例3のシール剤を作成した。
【0068】
(比較例4)
表2の組成表に従って、あらかじめビスフェノールF型エポキシ樹脂90.7質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂2.0を配合し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合後、均一混合し、次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、比較例3のシール剤を作成した。
【0069】
(比較例5)
表2の組成表に従って、あらかじめビスフェノールF型エポキシ樹脂42.7質量%にジシクロペンタジエンエポキシ樹脂50質量%を配合し、残りの原料の熱カチオン重合触媒CP−77と光カチオン重合触媒SP−170をそれぞれ1質量%配合後、均一混合し、次いで充填剤としてアエロジル200を5質量%、カップリング剤0.3質量%を配合し、自公転式混合機で混合し、比較例3のシール剤を作成した。
【0070】
(比較例7)
シール剤として化学蒸着法によるキシリレン樹脂を防湿膜としてX線変換膜全面蒸着し、比較例7のサンプルを作成した。
【0071】
(評価試験)
以下、作成した各シール剤の評価結果を詳細に説明する。ここで、樹脂物性はテフロン(登録商標)シート貼りガラス板を用いた注型法により、熱機械分析用(TMA)、吸水特性、曲げ試験用に、ぞれぞれ2mm厚の成形体サンプルを作成し、物理特性測定および外観評価を実施した。下記に物理特性測定および外観評価の手順を説明する。
【0072】
(a)ゲル・タイム
100℃熱板上での硬化時間(sec)を測定した。
(b)貯蔵安定性
コーティング材の貯蔵安定性のテストとして、25℃雰囲気中でサンプルを保管し、初期粘度の2倍値になる粘度変化を発生させる日数を測定した。
(c)粘度(25℃)
東機産業製E型粘度計により粘度(mPa・sec)を測定した。
(d)ガラス転移点
セイコー電子社製TMAにより温度(℃)を測定した。
(e)熱膨張率
セイコー電子社製TMAにより熱膨張率(×10−51/℃)を測定した。
(f)曲げ強度及び曲げ弾性率
JIS K−6911により25℃環境で曲げ強度(Mpa)および弾性率(GPa)を測定した。
(g)吸水率
TABAI社製高温恒湿槽にて、60℃、90%RH環境下で200時間放置した後、吸水率(ppm)を測定した。
(h)シール剤の外観
コーティングした樹脂を顕微鏡による表面観察により、ボイドの発生、剥離箇所の発生の有無、塗膜の均一性を外観評価した。
(i)接着性(レッドインクテスト)
レッドインクの入ったプレッシャクッカーにシール剤サンプルでシールしたテスト基板を入れ、121℃、2.0atm雰囲気で2時間処理し、水洗浄、水分拭き取りの後、シール剤サンプルとアルミ合金箔および基板界面へのインクの浸入を顕微鏡で外観評価した。
(j)紫外線硬化性
発光波長365nmの紫外線を72mW/cm、120秒照射後の試料の硬化性を外観評価した。
以上の物理特性測定および外観評価を各組成例について行った結果を下記表2に列記する。
【0073】
【表3】

【表4】

【0074】
上記の表3および表4に示すように、実施例1〜8と比較例1〜7の各組成例に対する評価結果から、比較例1〜7に対して実施例1〜8の方が全般的に吸水率、接着性の点で優れていることがわかる。すなわち、本実施の形態にかかるエポキシ樹脂シール剤の優位性が証明されたといえる。
【0075】
以下、X線変換部3の遮蔽構造の試作と評価方法に関して詳細に説明する。X線検出器1としては、前述の通り、フォトダイオード付きTFTなどのアレイ基板上にシンチレータ膜17、反射層8、防湿層9、シール剤層16を順次形成する。その際のX線変換部3の発光性および解像度の変化を簡易的に評価する。そのサンプル作成手段は、ガラス基板上に、例えばCsI:Tlからなるシンチレータ膜を形成し、その上部に種々の反射層を形成してさらにその上に、ディスペンサーを用いてシール剤を周辺に塗布して加工されたアルミ合金キャップ(80μm厚)を被せる。その後、圧力20g/cmの加圧と、紫外線照射量72mW/cm、120秒で紫外線をガラス基板側から照射する紫外線照射方法により硬化させた。次いで80℃、1時間の熱処理を行い、実施例1〜8及び比較例1〜7のサンプルを作成した。
【0076】
以下、X線変換部3のX線検出性能を測定する方法を詳細に説明する。本実施の形態においては、X線検出性能として発光性と解像度特性を測定する。発光性は標準とする増感紙を感光させる相対光量を測定する。一方、解像度特性の測定方法は、X線をアルミ合金キャップ側から入射させ、ガラス基板側からガラス基板とCsI:Tl膜等シンチレータ膜の界面に焦点を合わせたCCD(Charge Coupled Device)カメラによるX線画像を入力し測定する方法を用いた。X線質条件としては加速電圧70KVでRQA−5相当を用い、解像度は解像度チャートの2line pair/mmのCTF(Contrast Transfer Function)パターン像に対するX線画像から画像処理により求めた。なお、解像度は、上記CTFパターン像の明暗における画素値から最大値Maxと最小値Minを読み取り、解像度=(Max−Min)/(Max+Min)に従って算出したものとする。
【0077】
以下、防湿層9の水蒸気透過率測定に関して詳細に説明する。実施例1〜8および比較例1〜7に用いたシール剤について、PET(Polyethylene Terephthalate)フィルムに塗布し、傷、ボイド、折れのない箇所を選び、米国のMOCON社製の水蒸気透過率測定装置によって、40℃、90%RH雰囲気での質量変化から吸湿量を測定して水分透過率を算出した。
【0078】
以下、シンチレータ膜17の吸水率測定について詳細に説明する。ガラス基板上に実施例1〜8および比較例1〜7に用いた防湿層9を形成し、60℃、90%RH雰囲気に500時間放置した後の吸水率を測定した。
【0079】
以下、解像度の維持率測定について詳細に説明する。実施例1〜8および比較例1〜3のコーニング社製商品名:コーニング1737からなるガラス基板上のシンチレータ膜17に防湿層9を形成した構造物を60℃、90%RH雰囲気に500時間放置した後、X線照射条件は加速電圧70KV、1mA、かつ軟X線除去用アルミ製フィルタを挿入した条件で、解像度チャートの2line pair/mmのCTF(Contrast Transfer Function)パターン像を用いてX線画像の鮮明性を評価する指標として、上述と同様、解像度を測定し、初期値に対する変化率を解像度の維持率とした。
【0080】
以下、シンチレータ膜17のSEM観察について詳細に説明する。実施例1〜8および比較例1〜3のガラス基板上のシンチレータ膜17に防湿層9を形成した構造物を60℃、90%RH雰囲気に500時間放置した後、防湿層9を除去してシンチレータ膜17の形状をSEMで観察した。
【0081】
実施例1〜8、および比較例1〜7のシール剤をX線検出器1に適用した場合の上記項目の評価結果を下記表5に示す。表5に示すように、実施例1〜8の評価結果は、比較例1〜7よりも防湿層9の水分透過率、シンチレータ膜17の吸水率が低く、解像度の維持率が高く、更にシンチレータ膜17に潮解が発生していないことを示している。この結果から、4項目全てにおいて実施例の維持性が比較例より優れていることが判明した。
【0082】
【表5】

【0083】
上述のように、反射層8を形成後に、シンチレータ膜17の吸湿による特性劣化を防ぐために防湿層9を形成した。防湿層9はアルミ合金箔80μmをキャップ状に加工したものであり、シンチレータ膜17と反射層8の表面全体を覆い、エポキシ樹脂シール剤で端部を覆う防湿構造を用いた。防湿構造としては、X線の吸収の少ない軽金属のアルミラミネートフィルムやアルミ箔、無機膜と有機膜の積層防湿シート、或いはガラス板など水蒸気バリア性の高い防湿層部材と、シンチレータ膜17周辺部に配する枠状の防湿層部材とを用い、シンチレータ膜17及び反射層8を覆うようにアレイ基板とシール剤を用いて接着封止する方法などがあり、これら種々の方法により防湿層を形成することが可能である。
【0084】
防湿層9を形成することにより、X線検出器1は完成する。引き続いて、制御ライン、信号ラインの各電極パッド部にTAB(Tape Automated Bonding)接続による熱圧着で配線を繋いで、アンプ以降の回路に接続し、さらに筐体構造に組み込んで本実施の形態にかかるX線検出器1として評価可能となる。本実施の形態にかかるX線検出器1の主要特性として、X線強度に対する信号電荷量の割合を画像信号回路系の増幅率など補正する事で求めてX線感度特性を評価した。また、解像度チャートのCTF(Contrast Transfer Function)パターン像を用いて解像度特性を評価した。
【0085】
以上述べたように、本実施の形態によれば、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物と、カチオン重合触媒と、無機質充填剤とを備えたエポキシ樹脂シール剤を使用して、X線検出器内部の防湿層の端部を遮蔽することにより、外部から浸入する水分を抑え、耐湿性、接着性、貯蔵安定性および低温硬化性に優れた遮蔽効果を得られ、長期に渡って高いX線検出性能を維持するX線検出器を提供することを可能とする。
【0086】
以上、具体例を参照しつつ本実施の形態にかかるX線検出器1について説明した。本実施の形態に関する説明においては、X線検出器に照射されたX線を画像信号に変換する主構成要素を詳細に説明し、本実施の形態の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、画像センサ、および画像センサを動作させるために必要とされる画像センサ駆動回路等の構成要素を適宜選択して用いることができる。
【0087】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのX線検出器、X線変換器およびそれらを内蔵した検査装置は、本発明の範囲に包含される。

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施の形態にかかるX線検出器1の概略構成を示す構成図。
【図2】本実施の形態にかかるX線検出器1の内部構造を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0089】
1 X線検出器
2 TFTアレイ基板
3 X線変換部
4 ガラス基板
5 光電変換部
6 制御ライン
7 データライン
8 反射層
9 防湿層
10 画素
11 フォトダイオード
12 薄膜トランジスタ
13 ゲート電極
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 シール剤層
17 シンチレータ膜



【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、下記化学式で示されるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物と、
【化1】

(上記化学式中、R1はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、nはそれぞれ0〜10の整数を示す。)
カチオン重合触媒と、
無機質充填剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂シール剤。
【請求項2】
前記液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、下記化学式で示されるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂とからなる混合物において、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂の配合される割合が、2〜40質量%の範囲であって、常温環境下で上記混合物が液状あることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂シール剤。
【請求項3】
前記カチオン重合触媒は、熱及び紫外線により硬化する触媒であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂シール剤。
【請求項4】
前記無機質充填剤は、平均粒径が40nm以下のシリカ(SiO)を1質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂シール剤。
【請求項5】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の感光面を被覆し、X線照射により蛍光を発生させるシンチレータ膜と、
前記シンチレータ膜の露出面を被覆し、前記シンチレータ膜に発生する蛍光を前記光電変換素子の感光面に向けて反射する反射層と、
前記反射層の露出面を被覆し、前記シンチレータ膜と前記反射層を保護する防湿層と、
前記防湿層の端部を遮蔽し、膜厚が100μm以下で接着する請求項1に記載の前記エポキシ樹脂シール剤とを備えたことを特徴とするX線検出器。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235217(P2009−235217A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82445(P2008−82445)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】