説明

ケースモールド型コンデンサ

【課題】コンデンサ素子の発熱を積極的に外部に放熱し、耐熱性が高く信頼性に優れたケースモールド型コンデンサを提供する。
【解決手段】本発明のケースモールド型コンデンサ1では、コンデンサ素子2を収容した金属ケース12に樹脂13を充填し、この樹脂13にフィラーを含有させるとともにフィラーの樹脂13に対する含有率が金属ケース12の内底面12bから開口面12aに向かって漸減する構成とした。すなわち、本発明のケースモールド型コンデンサ1は熱伝導性の高いフィラーを、比較的放熱性の高い金属ケース12下部(底部側)付近に多く存在させることにより、コンデンサ素子2から発生した熱を外部に積極的に放熱する構成となっている。この結果、ケースモールド型コンデンサ1の耐熱性が高まり、ケースモールド型コンデンサ1の信頼性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特にハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサをケース内に収容し、さらにこれを樹脂でモールドしたケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、電気モータに関連して使用されるコンデンサとして高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、このようにHEV用として用いられる金属化フィルムコンデンサには、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化等が強く要求されるため、バスバーによって並列接続した複数の金属化フィルムコンデンサをケース内に収納し、このケース内にモールド樹脂を注型したケースモールド型コンデンサが開発され、実用化されている。
【0005】
図8はこの種の従来のケースモールド型コンデンサ100の構成を示した断面図であり、図8において、コンデンサ素子101は誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成した2枚の金属化フィルム(図示せず)を巻回することによって構成されたものであり、両端面に一対のメタリコン電極102が形成されている。
【0006】
メタリコン電極102には一対のバスバー103が接続され、このバスバー103のメタリコン電極102との接続部とは異なる方向の一端には外部接続端子部103aが設けられている。
【0007】
そして、上面開放型の樹脂ケース104内に上記一対のバスバー103が接続されたコンデンサ素子101を収容し、このコンデンサ素子101と樹脂ケース104の内壁間の隙間にモールド樹脂105を充填することにより、バスバー103の一端に設けた外部接続端子部103aが外部に表出したケースモールド型コンデンサ100が構成されているものである。
【0008】
なお、上記モールド樹脂105は、製品としての耐湿性の向上等を目的としてコンデンサ素子101を被覆するものであり、これによって周囲からの湿度(水分)の浸入を阻止することができるばかりでなく、強度や耐衝撃性が強い樹脂の特性を活かして強固な筐体を実現するという役割も兼ねるものである。
【0009】
すなわち、このように構成された従来のケースモールド型コンデンサ100は、樹脂ケース104内にコンデンサ素子101を収容し、隙間にモールド樹脂105を充填して硬化させることにより、製品としての耐湿性向上と、機械的強度や耐衝撃性の向上が図れるというものであった。
【0010】
なお、この出願の発明の先行技術文献情報としては、例えば特許文献1、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−58380号公報
【特許文献2】特開2000−323352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
確かに、上記従来のケースモールド型コンデンサは耐湿性や機械的強度、あるいは耐衝撃性にある程度優れたものであったが、コンデンサとして十分な性能を発揮するためには、より過酷な環境においても長期間に渡って特性劣化が少ないことが必要とされており、従来の構造ではこの要求を十分に満足することができなかった。
【0013】
特に自動車用途として用いられるコンデンサはその設置場所等の要因により高温・多湿の環境に曝されることが多い。したがって、コンデンサとして長期間に亘る特性の維持を図るためには、素子からの発熱を外部へ放熱させることによる耐熱性の向上や、あるいは耐湿性の向上が極めて重要となる。
【0014】
また、ケースモールド型コンデンサをHEV用として使用する場合には、直流電源の交流成分を平滑化する目的で使用されるために直流電源への平滑リプル電流が大きくなる。このため、素子の発熱量が多くなり、HEV用ケースモールド型コンデンサでは熱余裕度が少ないものになってしまうという課題もあった。この点からも素子の放熱性を高めることは重要である。
【0015】
この素子の放熱性を解決する手段としては、一般にモールド樹脂に無機フィラーを添加する方法が知られている。しかし、より優れた放熱性を得るために無機フィラーを多く添加した場合、モールド樹脂の粘度が高くなり、モールド樹脂を樹脂ケースの内部に十分に充填できない可能性がある。
【0016】
そこで、本発明は優れた耐熱性と耐湿性を有し、かつモールド樹脂を樹脂ケース内部に十分に充填させた信頼性に優れたケースモールド型コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そして、この課題を解決するために本発明のケースモールド型コンデンサは、誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した一対の金属化フィルムを巻回または積層して形成したコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容した上面開口型の金属ケースと、前記金属ケースに充填された樹脂を備えたケースモールド型コンデンサであり、前記樹脂はフィラーを含有し、前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が、前記金属ケースの内底面から前記金属ケースの開口面に向かって漸減する構成とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成によると、ケースモールド型コンデンサの放熱性を高めることができる。
【0019】
これは、熱伝導性の高いフィラーを金属ケースの内底面付近のモールド樹脂に比較的多く存在させることにより、コンデンサ素子から発生した熱がこのフィラーを介して金属ケースの底部に伝わり、金属ケースの底部から外部に向けて放熱されることによる。
【0020】
すなわち、本発明は上面開放型の金属ケースにおいて、上部(開放面側)よりも放熱性の高い下部(底面側)にコンデンサ素子から発生した熱を積極的に伝導させることによってケースモールド型コンデンサの放熱性を高めるものである。
【0021】
また、このように本発明によるケースモールド型コンデンサは放熱性に優れたものであるが、用いられるモールド樹脂は十分に流動性を有したものであり、このモールド樹脂は金属ケース内部に満遍なく充填された状態となっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のコンデンサ素子の構成を示した断面図
【図2】実施例1のコンデンサ素子に用いられる一対の金属化フィルムを示した平面図
【図3】実施例1のケースモールド型コンデンサの構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は断面図
【図4】実施例1のケースモールド型コンデンサのフィラーの含有状態を示す図であり、(a)はケースモールド型コンデンサの断面図、(b)はフィラーの含有率の変化を示す図
【図5】実施例2のフィラーの含有率の変化を示す図
【図6】実施例3のフィラーの含有率の変化を示す図
【図7】実施例4のフィラーの含有率の変化を示す図
【図8】従来のケースモールド型コンデンサの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)
まず、本実施例のケースモールド型コンデンサ1に用いるコンデンサ素子2について図1および図2を用いて説明する。
【0024】
ここで、図1はコンデンサ素子2の構成を示した断面図であり、図2はコンデンサ素子2に用いられる一対の金属化フィルムを示した平面図である。
【0025】
図1と図2において、例えば第1の金属化フィルム3はP極用の金属化フィルム、第2の金属化フィルム4はN極用の金属化フィルムである。そしてこれらを一対として重ね合わせ、複数回巻回することによってフィルムコンデンサであるコンデンサ素子2が形成される。
【0026】
図1に示されるように、第1の金属化フィルム3は、誘電体となるポリプロピレンフィルム5aの片面上に一端の絶縁マージン6aを設けて金属蒸着電極7aが形成されており、この金属蒸着電極7aは端面に形成されたメタリコン電極8aと接続されて電極を外部へ引き出している。ここで、このポリプロピレンフィルム5aの厚みは2〜4μm程度であり、コンデンサ素子2の容量はポリプロピレンフィルム5aの幅や巻回数を適宜選択することによって所望の値とすることができる。
【0027】
金属蒸着電極7aは、容量を形成する有効電極部の幅Wの略中央部から絶縁マージン6aに向かう側に、オイル転写により形成された金属蒸着電極を有しない非蒸着のスリット9aにより複数の分割電極10aに夫々区分されている。さらに、図2(a)に示されるように、これら分割電極10aは、有効電極部の幅Wの略中央部から絶縁マージン6aと反対側でメタリコン電極8aに近い側に位置するポリプロピレンフィルム5aの片面全体に蒸着された金属蒸着電極7aにヒューズ11aで並列接続しているものである。
【0028】
このヒューズ11aは、コンデンサ素子2の自己保安機能を担うものである。すなわち、コンデンサ素子2の動作時に異常が発生した際に、異常の原因となっている分割電極10aに接続されたヒューズ11aが蒸発し、分割電極10aが金属蒸着電極7aから切り離されることによって、絶縁破壊することなく容量減少を最小限に止めてコンデンサ素子2のコンデンサとしての機能を維持するものである。
【0029】
なお、第2の金属化フィルム4も図1および図2(b)に示されるように第1の金属化フィルム3と同様の構成となっている。したがって、第2の金属化フィルム4の構成の説明は省略する。
【0030】
また、第2の金属化フィルム4も第1の金属化フィルム3と同様にヒューズ11bを備えており、異常時にはこのヒューズ11bを切り離すことによって、コンデンサ素子2のコンデンサとしての機能を維持する。
【0031】
ここで、これまでに説明した金属蒸着電極7a、分割電極10a、金属蒸着電極7b、分割電極10bについて詳しく述べる。
【0032】
金属蒸着電極7a、分割電極10a、金属蒸着電極7b、分割電極10bはアルミニウムとマグネシウムからなる合金を蒸着することによって形成されたものであり、特に本実施例においてはアルミニウムとマグネシウムの混合比率を95:5としている。
【0033】
一般的に金属の水に対する熱力学的安定性はプールベイ図にて表されるが、このプールベイ図にて表される熱力学安定性が低い物質ほど水分と反応しやすい、すなわち水分除去能力があるものである。ここで、マグネシウムは熱力学安定性が低く、水分除去能力が優れた物質であるため、マグネシウムを用いた合金を蒸着した本実施例のコンデンサ素子2では第1の金属化フィルム3、第2の金属化フィルム4の内部や表面の水分を除去することができ、漏れ電流の経路を少なくすることを可能としている。この結果、コンデンサ素子2の特性劣化を抑制することができる。
【0034】
なお、上述したプールベイ図によるとマグネシウム以外にもチタン、マンガン等の金属も熱力学安定性が低く、水分除去能力が優れたものであるが、コンデンサ製造時の蒸着プロセスを考えると、沸点が低く蒸気圧が高いものが好ましいため、チタン、マンガンよりも蒸気圧が高いマグネシウムが特に好ましいものである。
【0035】
次に、図3(a)および図3(b)を用いて上述したコンデンサ素子2を用いた本実施例のケースモールド型コンデンサ1の構成について述べる。
【0036】
ここで、図3(a)は本実施例のケースモールド型コンデンサ1の上面図であり、図3(b)はケースモールド型コンデンサ1の断面図である。
【0037】
図3(a)、図3(b)に示されるように、ケースモールド型コンデンサ1はコンデンサ素子2を隣接させた状態でアルミ製のケース12に収容することで構成される。
【0038】
ケース12は図3(a)、図3(b)に示されるように、一端が外部に向けて開口した開口面12aを有する箱型形状となっている。この開口面12aは、後述する樹脂13を注型するための注型面となる。
【0039】
コンデンサ素子2のメタリコン電極8aおよびメタリコン電極8bにはバスバー14が溶接されており、このバスバー14にてケース12に収容されたコンデンサ素子2どうしは電気的に接続されている。なお、図3(b)に示されるように、バスバー14はケース12に内蔵される内蔵部14aと、ケース12外に表出した表出部14bとで構成され、これら内蔵部14aと表出部14bは一体化されている。なお、内蔵部14aは前述したようにコンデンサ素子2のメタリコン電極8aおよびメタリコン電極8bに溶接される部分であり、表出部14bは外部機器等(図示せず)と接続される部分である。
【0040】
このコンデンサ素子2のケース12における固定は、ケース12内の所定の位置にコンデンサ素子2を配置した後、樹脂13を充填し固化させることで行われる。本実施例ではケース12内に充填させる樹脂13としてエポキシ樹脂を用いている。コンデンサ素子2のケース12内における位置決めは図3(b)に示すように、ケース12の内底面12bに設けられた複数の支持体15によって行われる。すなわち、樹脂13を充填する前に、例えば支持体15をケース12の内底面12bの所定の位置に設けられた穴に嵌入し固定させ、さらにコンデンサ素子2を支持体15の位置に従ってケース12内に配置する。そして、樹脂13を注入することによってコンデンサ素子2は所定の位置に位置決めされた状態で、ケース12内に固定されることになる。
【0041】
ここで、この支持体15としては熱伝導性に優れた絶縁材料を用いることが望ましい。具体的には、絶縁体としてのシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミから選ばれる絶縁材料、半導体としての酸化亜鉛または炭化珪素を混入した樹脂、表面を絶縁体で被覆した導体としての銅またはアルミニウムまたは鉄、等の材料が使用できるものであり、コスト面等から判断すると、アルミナ、酸化マグネシウムが適しているものである。
【0042】
また、支持体15として、炭素繊維、ガラス繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、液晶性樹脂繊維等の絶縁性繊維材料の繊維方向を熱伝導したい方向に揃え、これらを結束するように樹脂で被覆した構成のもの(熱伝導は繊維方向で極めて高く、繊維間で低い)を用いることも可能である。
【0043】
取り付け脚16は、ケースモールド型コンデンサ1を外部機器に取り付けるために用いられる。この取り付け方法は特に限定されるものではないが、例えば図3(a)に示されるように取り付け脚16の先端部分に取り付け孔16aを設け、この取り付け孔16aにボルトを通すことで、外部機器に取り付けてもよい。なお、図3(a)、図3(b)に示されるように、樹脂13をケース12に注入する際は、ケース12の開口面12aを上側とし、ケース12の上部からケース12内部に樹脂を充填するものであるが、実際に外部機器に取り付ける際は特にこの態様に限られることはない。すなわち、外部機器に取り付ける際はケース12の開口面12aを下側としてもよい。樹脂13が十分に固化してさえいれば、ケース12の開口面12aを下側とし外部機器に取り付けたとしても、固化した樹脂13がケース12内部から剥離することはない。
【0044】
次に、本願発明のポイントである樹脂13について図4(a)および図4(b)を用いて説明する。ここで、図4(a)はケースモールド型コンデンサ1の断面図であり、図4(b)は樹脂13のフィラーの含有率の変化を示す図である。なお、図4(a)では樹脂13の状態をわかりやすく示すため、図3(b)で示したケースモールド型コンデンサ1の断面図よりも簡略化して図示している(すなわちバスバー14、支持体15等は図示していない)。また、図4(b)ではケース12の内底面12bの位置を基点(すなわち、0)とし、開口面12aを終点(すなわち、1)とした場合の内底面12bから開口面12aにかけてのフィラーの含有率(vol%)の変化を示している。含有率は、所定の位置の樹脂を切り出し、断面をSEMで観察すること、また、600〜800℃で加熱し灰分を測定することにより求めた。
【0045】
本実施例においては上述したように樹脂13としてエポキシ樹脂を用いている。エポキシ樹脂は耐水性、耐湿性に比較的優れているため、エポキシ樹脂を樹脂13として用いることで本実施例のコンデンサ素子2は外部湿気の影響を受けにくく、その特性の劣化が抑制されたものとなっている。
【0046】
また、本実施例の樹脂13はフィラーを含有している。フィラーとしては高い熱導電性と絶縁性を有するものが望ましく、例えばシリカ、窒化ホウ素、アルミナ、酸化チタン、ホワイトカーボン、マイカ、グラスファイバー等、あるいはこれらの混合物を用いることが望ましい。中でも熱導電性に優れた窒化ホウ素や、信頼性やコスト面からシリカを用いることが望ましい。
【0047】
ここで樹脂13の本実施例特有の特徴について説明する。
【0048】
本実施例の樹脂13においては、樹脂13内に含まれるフィラーの含有率がケース12の内底面12bから開口面12aにかけて連続的に変化したものとなっている。すなわち、本実施例のケースモールド型コンデンサ1は、図4(a)に示されるようにケース12の中空部においてその内底面12bから側壁の上端部(開口面12a)まで樹脂13が満遍なく充填された構成であるが、樹脂13が含有するフィラーの含有率は図4(b)に示されるように、ケース12の内底面12bから開口面12aにかけて漸減するように変化している。特に本実施例では、ケース12の内底面12bからコンデンサ素子2の下端部までの領域では、この領域に含まれるフィラーの含有率が40vol%以上となるように調整している。なお、この領域は図4(a)において破線によって囲まれる領域であり、図4(a)、図4(b)では領域Aとして示している。
【0049】
一方、上述したように樹脂13においてフィラーの含有率は連続的に漸減していく構成であるため、コンデンサ素子2の下端部から上端部にかけての領域におけるフィラーの含有率は、ケース12の内底面12bからコンデンサ素子2の下端部にかけてのフィラーの含有率よりも低くなる。
【0050】
さらに、樹脂13に含まれるフィラーの含有率は、コンデンサ素子2の上端部から開口面12aにかけての領域が最も小さく、ケース12の開口面12a付近(図4(b)の曲線の右端部)において最も低い構成となっている。この開口面12a付近のフィラーの含有率はケースモールド型コンデンサ1が曝される環境によって適宜調整するとよい。例えば、実使用時において、開口面12aが蓋等の何らかの手段で封止され、ケースモールド型コンデンサ1内部に熱衝撃が加わりにくいような状況であればフィラーの含有率を20vol%以下の低いものとしても構わない。
【0051】
以下、本実施例のケースモールド型コンデンサ1の構成による効果について述べる。
【0052】
まず、本実施例のケースモールド型コンデンサ1ではその放熱性が優れたものとなっている。これは、樹脂13が含有したフィラーの含有率が、ケース12の内底面12bから開口面12aにかけて漸減した構成となっていることによる。
【0053】
すなわち、本実施例のケース12は金属であるアルミニウムにて形成されており放熱性の優れたものであるが、図2(b)にて示されるように上面開口型の構成のため、開口面12a側よりもケース12を構成するアルミニウム板を介して外部に放熱が可能な内底面12b側の方が放熱性に優れている。したがって、本実施例のケースモールド型コンデンサ1ではこの放熱性に優れる内底面12b側の樹脂13に多くのフィラーを含有させることで、コンデンサ素子2からの発熱をフィラーを介してケース12の内底面12bに伝導させ、外部への放熱を積極的に行っている。
【0054】
この結果、本実施例では樹脂13内のフィラーの分布状態を特徴的なものにすることによって、同じ量のフィラーを樹脂13内に均一に分散させた場合と比較して効率的に放熱することを可能としている。
【0055】
このように本実施例のケースモールド型コンデンサ1では、駆動時のケースモールド型コンデンサ1の熱を効果的に外部に放熱し、その耐熱性を高めることによってコンデンサ特性の劣化が抑制された信頼性の高いものとなっている。
【0056】
特に本実施例において、ケース12の内底面12bからコンデンサ素子2の下端部までの領域Aでは、この領域に含まれるフィラーの含有率が40vol%以上となるように調整している。ケースモールド型コンデンサ1と領域Aのフィラーの含有率について検証した結果について(表1)に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
(表1)に示されるように、本実施例において領域Aのフィラーの含有率を30vol%、40vol%、50vol%とするために粘度が60℃にて1000mPa/s、1700mPa/s、2000mPa/sである樹脂13をそれぞれ用いた。一方、従来のケースモールド型コンデンサのごとく、樹脂13全体のフィラーの含有率が一定である場合、領域Aの含有率を30vol%、40vol%、50vol%とするためには、粘度が60℃にて1600mPa/s、4000mPa/s、7500mPa/sである樹脂13を用いなくてはならなかった。このことより従来のケースモールド型コンデンサの構成では樹脂13の粘度が高いため、ケース12内部に十分に樹脂13を充填させることが難しくなることがわかる。
【0059】
そして、各条件のコンデンサ素子2(25μF)に10Arms、10KHzにて電流を流したところ、コンデンサ素子2は(表1)のΔTに示すような温度上昇が見受けられた。
【0060】
ここで固化した樹脂13を走査型電子顕微鏡(SEM)にて断面観察したところ、実施例1のケースモールド型コンデンサ1ではどの条件においてもボイドが発生しなかったことに対し、従来のケースモールド型コンデンサでは40vol%、50vol%の条件下においてボイドが発生していた。このようにボイドが発生した場合、部分放電が発生し、絶縁不良の原因となる。あるいは、ボイドに外部から水分が浸入し、完成品としてのケースモールド型コンデンサ1の品質を低下させてしまう可能性がある。
【0061】
すなわち、領域Aのフィラーの含有率を40vol%以上とした場合、従来のケースモールド型コンデンサではボイドが発生することに対し、本実施例の構成ではボイドが発生することなく、放熱性を確保した上で優れた信頼性も有していることがわかる。
【0062】
また、本実施例のケースモールド型コンデンサ1では、図3(b)に示されるように熱伝導性に優れた支持体15が設けられており、コンデンサ素子2から発生した熱はこの支持体15を伝導して外部に放熱されている。このように、熱伝導性に優れた支持体15を設けることによっても本実施例のケースモールド型コンデンサ1の耐熱性はさらに優れたものとされている。
【0063】
また、フィラーにはケースモールド型コンデンサ1の耐熱性を高める以外にも外部からの水分の浸入を防ぐ効果も見込まれるが、本実施例のケースモールド型コンデンサ1では開口面12a側の樹脂13のフィラーの含有率が比較的低くなっているため、開口面12a側から水分がケースモールド型コンデンサ1内部に浸入してしまうことがあり得る。このため、本実施例のコンデンサ素子2の金属蒸着電極7a、分割電極10a、金属蒸着電極7b、分割電極10bをアルミニウムと水分除去能力に優れたマグネシウムからなる合金を用いて形成しているのである。このため、仮にケースモールド型コンデンサ1内に水分が浸入したとしてもこの水分は除去され、漏れ電流の経路を少なくすることができる。したがって、本実施例のケースモールド型コンデンサ1は上述したように耐熱性に優れると同時に、その耐湿性においても十分な特性を有するものであり、信頼性の高いものとなっている。なお、樹脂13として耐湿性に優れたエポキシ樹脂を用いることによっても、ケースモールド型コンデンサ1の耐湿性はさらに高められている。
【0064】
また、樹脂13内のフィラーの分布に上述したような特性を持たせるためには、粒径が大きいフィラーを用いることが望ましい。粒径が大きいフィラーは比較的沈降しやすく、樹脂13のフィラーの含有率を内底面12b側から開口面12a側にかけて漸減する状態とすることができる。粒径の大きさとしては30μm以上のフィラーが好ましい。この大きさのフィラーを用いることで上記のようなフィラーの分散状態とすることができる。
【0065】
具体的には、30μm以上の粒径のシリカをエポキシ樹脂中に分散処理し、このエポキシ樹脂をケース12の中空部に注入し、加熱、固化することで上述のようなフィラーの分散状態としている。加熱方法としては恒温槽を用いて、漸次熱をかける。これは時間をかけて加熱した方が、シリカがケース12の内底面12bに沈降し、図4(b)で示すようなフィラーの分布としやすいためである。すなわち樹脂13内のフィラーの分布は、分散処理条件、加熱時間を適宜変更することのみで調整することが可能である。例えば、内底面12b付近のフィラーの含有率を大きくしたいときは、加熱にかける時間を長くすればよい。
【0066】
なお、比重の大きいフィラーを用いることでも上記のようなフィラーの分散状態とすることができる。例えばアルミナは比較的比重が大きく沈降し易いため、これをフィラーとして用いることで上記のような分散状態を形成できる。
【0067】
また、フィラーの含有率を内底面12b側が高く、開口面12a側が低い構成とするためには、本実施例以外の構成として例えば樹脂13を複数層に分け、それぞれの層に含有されるフィラーの量を変えることでも可能であるが、この場合は、ケースモールド型コンデンサ1の作製時にフィラーの含有率を異ならせた複数の樹脂13を準備する必要がある。一方、本実施例のケースモールド型コンデンサ1は上述したように、作製時の加熱方法を適宜変更することのみでフィラーの含有率を内底面12b側が高く、開口面12a側が低い構成とすることができ、その作製も容易であるため、生産性も優れている。
【0068】
また、一般的にエポキシ樹脂等にフィラーを大量に含有させた場合、樹脂13の流動性が悪くなり、ケース12の中空部の隅々まで十分に樹脂を充填できない可能性があるが、本実施例の樹脂13ではフィラーの分布に特徴があるものであり、フィラーの含有量自体は従来と同等であるため流動性を損なうことはなく、ケース12の中空部の隅々にまで満遍なく樹脂13を充填させることができる。また、樹脂13をケース12に注入する際に、充填前の樹脂13が含有するフィラーの分布に偏りがあるとその充填時の流動性に影響を及ぼすことが考えられる。しかしながら、本実施例のフィラーの分布はケース12の中空部に樹脂13を充填した後、フィラーを沈降させることで形成するものであるため、ケース12に注入する前の樹脂13にはフィラーが満遍なく分布している。したがって、注入時における樹脂13は十分な流動性を有しており、このことからもケース12への樹脂13の充填は問題なく行える。
【0069】
このように本実施例のケースモールド型コンデンサ1は、耐熱性に優れるとともに十分な耐湿性を有した信頼性の高いものであり、またその生産性においても優れたものである。
【0070】
(実施例2)
以下、本実施例におけるケースモールド型コンデンサ21の構成について説明する。
【0071】
本実施例におけるケースモールド型コンデンサ21では、樹脂22内のフィラーの分布の状態が実施例1と異なるものであり、これ以外の構成は実施例1と同様であるためその詳細な説明は省略して同じ符号を付し、異なる部分のみについて図面を用いて説明する。
【0072】
本実施例の樹脂22のフィラーの分布について図5を用いて説明する。
【0073】
ここで、図5は樹脂22のフィラーの含有率の変化を示す図である。なお、図5では実施例1と同様にケース12の内底面12bの位置を基点とし、開口面12aを終点とした場合の内底面12bから開口面12aにかけてのフィラーの含有率の変化を示している。
【0074】
図5に示されるように、本実施例のケース12に充填された樹脂22はフィラーの含有率が略一定である第1の領域と、フィラーの含有率がケース12の開口面12aに向かって漸減する第2の領域に区分される。
【0075】
第1の領域は、内底面12bからコンデンサ素子2の下端部付近にかけて存在する。この第1の領域ではフィラーの含有率は略一定であり、また樹脂22内においてこの第1の領域がフィラーを最も多く含有する領域となっている。
【0076】
そして、第1の領域の上端部から開口部12aにかけては第2の領域が存在する。この第2の領域ではフィラーの含有率は第1の領域のフィラーの含有率と連続しており、第1の領域の上端部からケース12の開口面12aに向かって漸減している。第2の領域は図5に示されるように領域Aの一部と、コンデンサ素子2の下端部から開口面12aに渡って存在する。ただし、第2の領域は領域Aを含まなくてもよい。すなわちこの場合は、領域Aは第1の領域に含まれ、領域Aにおけるフィラーの含有率は略一定となっている。
【0077】
なお、領域Aにおけるフィラーの含有率は実施例1と同様の理由から40vol%以上とすることが望ましい。
【0078】
本実施例の構成による効果について以下に述べる。
【0079】
本実施例におけるケースモールド型コンデンサ21では、さらに放熱性を高めることができる。これは内底面12b付近に十分な量のフィラーを含有させ、フィラーの含有率を略一定とした第1の領域を形成したことによる。
【0080】
本実施例のケースモールド型コンデンサ21の放熱性について検証した結果を(表2)に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
(表2)における検証では、領域Aにおけるフィラーの含有率を50vol%を最大値(すなわち内底面12b付近におけるフィラー含有率が50vol%であり、開口面12aに向けて漸次減少する構成)とした実施例1のケースモールド型コンデンサ1と、領域A内にフィラーを均一に分散させ、領域A内のフィラーの含有率を50vol%の一定値(すなわち領域Aが第5の領域内に含まれる)としたケースモールド型コンデンサ21との放熱性を比較した。なお、この検証では静電容量25μFのコンデンサ素子2に10Arms、10KHzの電流を流した際の温度の上昇値を計測した。
【0083】
(表2)に示されるように、実施例1のケースモールド型コンデンサ1では7.5℃の温度上昇が見受けられたことに対し、本実施例のケースモールド型コンデンサ21では6.8℃の温度上昇が見受けられた。このことより明らかなように、本実施例の態様によると放熱性をさらに向上させることができる。
【0084】
また、図5で示されるようなフィラーの分布とするためには、ケース12に樹脂22を注入した後、実施例1よりもさらに時間をかけて加熱すればよい。加熱に時間をかけることでさらに多くのフィラーが沈降し、沈降したフィラーが内底面12b付近に蓄積されることで図5に示されるようなフィラーの分布状態とすることができる。
【0085】
なお、用いるフィラーとしては実施例1と同様に30μm以上の粒径のシリカや、あるいは比重が比較的大きいアルミナ等のフィラーが好ましい。
【0086】
(実施例3)
以下、本実施例におけるケースモールド型コンデンサ31の構成について説明する。
【0087】
本実施例におけるケースモールド型コンデンサ31では、樹脂32内のフィラーの分布の状態が実施例1や実施例2と異なるものであり、これ以外の構成は同様であるためその詳細な説明は省略して同じ符号を付し、異なる部分のみについて図面を用いて説明する。
【0088】
本実施例の樹脂32のフィラーの分布について図6を用いて説明する。
【0089】
ここで、図6は樹脂32のフィラーの含有率の変化を示す図である。なお、実施例1、実施例2と同様に図6ではケース12の内底面12bの位置を基点とし、開口面12aを終点とした場合の内底面12bから開口面12aにかけてのフィラーの含有率の変化を示している。
【0090】
図6に示されるように、本実施例のケース12に充填された樹脂32はフィラーの含有率がケース12の開口面12aに向かって漸減する第3の領域と、フィラーの含有率が略一定である第4の領域に区分される。そして、第3の領域および第4の領域は図6に示されるように、ケース12の内底面12b側に第3の領域が、開口面12a側に第4の領域が位置している。
【0091】
ここで、本実施例の樹脂32は30μm以上の粒径のシリカの他に粒径の小さなフィラーを含有している。より具体的には、本実施例においては粒径が5μm以下のシリカをさらに含有している。粒径の小さなフィラーは粒径の大きなフィラーと比べ沈降しにくい特性を有しており、これに分散処理条件、表面処理を加味することにより図6で示されるようなフィラーの分布を形成している。
【0092】
すなわち、本実施例では実施例1、実施例2と同様に、樹脂32を固化させる際に時間をかけて加熱を行うことにより内底面12b付近のフィラーの含有率を高めているものであるが、本実施例で用いている粒径の小さなフィラーは沈降しにくいため、加熱終了後も開口面12a付近に残存し、略均一に樹脂32内に分散した状態となる。一方、30μm以上の粒径の大きいシリカは、実施例1と同様に樹脂32内にその含有率が内底面12bから開口面12aに向かって漸減するように分散する。
【0093】
この結果、図6で示されるようなフィラーの分布状態となる。
【0094】
したがって、本実施例の樹脂32においては内底面12b付近には粒径の大きいフィラーが多く存在し、開口面12a付近には粒径の小さいフィラーが多く存在した状態となる。
【0095】
また、実施例1および実施例2と同様の理由から領域Aにおけるフィラーの含有率は40vol%以上とすることが望ましい。
【0096】
本実施例の構成による効果について以下に述べる。
【0097】
本実施例のケースモールド型コンデンサ31は、実施例1のケースモールド型コンデンサ1と同様に優れた放熱性を有するとともに優れた耐熱衝撃性も有する。
【0098】
本実施例のケースモールド型コンデンサ31の耐熱衝撃性に関して検証した温度サイクル試験の結果を(表3)に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
この検証は、内底面12b付近のフィラーの含有率を50vol%とした際の、第4の領域におけるフィラーの各含有率(10vol%、20vol%、30vol%、40vol%)における樹脂32が割れない温度幅を求めたものである。なお、使用したケース12の大きさは10cm×10cm×10cmであり、サイクル回数は1000サイクルである。例えば、第4の領域におけるフィラーの各含有率が10vol%である場合、90℃の温度幅にて1000回温度を変化させてもクラック等は生じなかった。
【0101】
この結果から、本実施例のケースモールド型コンデンサ31は耐熱衝撃性が優れていることが明らかであり、また第4の領域におけるフィラーの含有率を高めることでさらに優れた耐熱衝撃性が得られることがわかった。
【0102】
このように、本実施例では粒径の異なる2種類のフィラーを用いることによって樹脂32内のフィラーの分布の状態を適宜調整することができ、放熱性、耐湿性、耐熱衝撃性に優れたケースモールド型コンデンサ31を提供することができる。
【0103】
なお、内底面12b付近に沈降させるフィラーとして、実施例1、実施例2と同様にアルミナ等の比重の大きいフィラーを用いてもよい。
【0104】
(実施例4)
以下、本実施例におけるケースモールド型コンデンサ41の構成について説明する。
【0105】
本実施例におけるケースモールド型コンデンサ41では、樹脂42内のフィラーの分布の状態が実施例1、実施例2、実施例3と異なるものであり、これ以外の構成は同様であるためその詳細な説明は省略して同じ符号を付し、異なる部分のみについて図面を用いて説明する。
【0106】
本実施例の樹脂42のフィラーの分布について図7を用いて説明する。
【0107】
ここで、図7は樹脂42のフィラーの含有率の変化を示す図である。なお、実施例1、実施例2、実施例3と同様に図7ではケース12の内底面12bの位置を基点とし、開口面12aを終点とした場合の内底面12bから開口面12aにかけてのフィラーの含有率の変化を示している。
【0108】
図7に示されるように、本実施例のケース12に充填された樹脂42は第5の領域、第6の領域、および第7の領域に区分され、これらの領域はケース12の内底面12bから第5の領域、第6の領域、第7の領域の順に位置している。
【0109】
上述した実施例2では、内定面12b付近にフィラーの含有率が略一定であり、かつフィラーの含有率が最も高い第1の領域を設けることで、ケースモールド型コンデンサ21の放熱性をさらに高めたものであったが、本実施例のケースモールド型コンデンサ41においては実施例2の態様に加え、開口面12a付近のフィラーの含有率も略一定のものとしている。
【0110】
すなわち、第5の領域はフィラーの含有率が略一定、かつ最も高く、第6の領域はケースの開口面12aに向かってフィラーの含有率が漸減している。これら第5の領域、第6の領域はそれぞれ実施例2の第1の領域、第2の領域に該当する。さらに本実施例では第6の領域の上方から開口面12aにかけて、さらに第7の領域を備えている。この第7の領域ではフィラーの含有率が略一定となっている。
【0111】
フィラーの含有率を図7に示されるような分布とするためには、樹脂42に含有されるフィラーとして実施例3と同様に粒径の異なる2種類のフィラーを混合した樹脂32を用いることで形成される。あるいは内底面12b付近に沈降させるフィラーとして比重の比較的大きいアルミナ等を用いてもよい。ここで、実施例3のケースモールド型コンデンサ31では、本実施例と同様の2種類のフィラーを用いて図6で示すようなフィラーの分布としたものであるが、本実施例と実施例3では樹脂を固化させる際の加熱方法が異なり、この加熱方法の違いにより本実施例では図7に示されるようなフィラーの分布としている。つまり、本実施例では実施例3と比較してさらに時間をかけて加熱を行っている。このように加熱に時間をかけることでさらに多くのフィラーが沈降し、内底面12b付近に蓄積されることで内底面12b付近のフィラーの分布状態が図7で示されるような状態となる。粒径の小さいフィラーは沈降しにくい性質を有するため、時間をかけて加熱を行っても、加熱終了後にはケース12の開口部12a付近には多くの球体状のフィラーが残存している。この結果、図7で示されるようなフィラーの分布状態となる。
【0112】
なお、実施例1〜実施例3と同様の理由から領域Aにおけるフィラーの含有率は40vol%以上とすることが望ましい。
【0113】
本実施例の構成による効果について以下に述べる。
【0114】
本実施例におけるケースモールド型コンデンサ41では、さらに放熱性を高めることができる。これは内底面12b付近に十分な量のフィラーを含有させ、フィラーの含有率を略一定とした第5の領域を形成したことによる。
【0115】
ここで、本実施例のケースモールド型コンデンサ41と実施例3のケースモールド型コンデンサ31の放熱性について検証した結果を(表4)に示す。
【0116】
【表4】

【0117】
(表4)に示される検証では、領域Aにおけるフィラーの含有率を50vol%を最大値(すなわち内底面12b付近におけるフィラー含有率が50vol%であり、開口面12aに向けて漸次減少する構成)とした実施例3のケースモールド型コンデンサ31と、領域A内にフィラーを均一に分散させ、領域A内のフィラーの含有率を50vol%の一定値(すなわち領域Aが第5の領域内に含まれる)としたケースモールド型コンデンサ41との放熱性を比較した。なお、この検証では静電容量25μFのコンデンサ素子2に10Arms、10KHzの電流を流した際の温度の上昇値を計測した。
【0118】
この検証の結果、実施例3のケースモールド型コンデンサ31では7.1℃の温度上昇が計測されたことに対し、本実施例のケースモールド型コンデンサ41では6.6℃の温度上昇が計測された。この結果からも、本実施例の構成によると、よりケースモールド型コンデンサ41の放熱性を向上できることがわかる。
【0119】
そして、本実施例のケースモールド型コンデンサ41ではさらに第7の領域を備えた構成であるため、実施例3のケースモールド型コンデンサ31と同様に優れた耐熱衝撃性を有するものとなっている。
【0120】
このように、本実施例のケースモールド型コンデンサは優れた放熱性および耐熱衝撃性を有し、信頼性の高いものとなっている。
【0121】
なお、上記実施例1〜実施例4では、ケース12の開口面12aを上側として説明したが、実施例1で述べたように実際に外部機器に取り付ける際は必ずしも開口面12aを上側とした態様に限られるものではない。すなわち、開口面12aを下側として取り付けてもよい。
【0122】
また、上記実施例1〜実施例4では、誘電体フィルムとしてポリプロピレンフィルムを用いた例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリプロピレンフィルム以外にもポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等のフィルムであっても本発明の効果を奏することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によるケースモールド型コンデンサは、放熱性、耐湿性、耐熱衝撃性に優れ信頼性の高いものとなっている。したがって、本発明のケースモールド型コンデンサは各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に用いられる各種コンデンサとして好適に採用でき、特に高耐熱性、高耐湿性が求められる自動車用分野に有用である。
【符号の説明】
【0124】
1 ケースモールド型コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 第1の金属化フィルム
4 第2の金属化フィルム
5a、5b ポリプロピレンフィルム
6a、6b 絶縁マージン
7a、7b 金属蒸着電極
8a、8b メタリコン電極
9a、9b スリット
10a、10b 分割電極
11a、11b ヒューズ
12 ケース
12a 開口面
12b 内底面
13 樹脂
14 バスバー
14a 内蔵部
14b 表出部
15 支持体
16 取り付け脚
16a 取り付け孔
21 ケースモールド型コンデンサ
22 樹脂
31 ケースモールド型コンデンサ
32 樹脂
41 ケースモールド型コンデンサ
42 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した一対の金属化フィルムを巻回または積層して形成したコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容した上面開口型の金属ケースと、
前記金属ケースに充填された樹脂を備えたケースモールド型コンデンサであり、
前記樹脂はフィラーを含有し、
前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が、前記金属ケースの内底面から前記金属ケースの開口面に向かって漸減するケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した一対の金属化フィルムを巻回または積層して形成したコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容した上面開口型の金属ケースと、
前記金属ケースに充填された樹脂を備えたケースモールド型コンデンサであり、
前記樹脂は、フィラーを含有するとともに前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が略一定である第1の領域と、前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が前記金属ケースの開口面に向かって漸減する第2の領域に区分され、第2の領域は第1の領域よりも開口面側に位置するケースモールド型コンデンサ。
【請求項3】
誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した一対の金属化フィルムを巻回または積層して形成したコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容した上面開口型の金属ケースと、
前記金属ケースに充填された樹脂を備えたケースモールド型コンデンサであり、
前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が前記金属ケースの開口面に向かって漸減する第3の領域と、前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が略一定である第4の領域に区分され、第4の領域は第3の領域よりも開口面側に位置するケースモールド型コンデンサ。
【請求項4】
誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した一対の金属化フィルムを巻回または積層して形成したコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容した上面開口型の金属ケースと、
前記金属ケースに充填された樹脂を備えたケースモールド型コンデンサであり、
前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が略一定である第5の領域と、前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が前記金属ケースの開口面に向かって漸減する第6の領域と、前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が略一定である第7の領域に区分され、これら第5の領域、第6の領域、および第7の領域は前記金属ケースの内底面から前記開口面に向かって第5の領域、第6の領域、第7の領域の順に位置するケースモールド型コンデンサ。
【請求項5】
前記一対の金属化フィルムのうち少なくとも一方の前記金属蒸着電極が、アルミニウムとマグネシウムからなる合金を用いた請求項1〜4のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項6】
前記フィラーは、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素の少なくともいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項7】
前記樹脂としてエポキシ樹脂を用いた請求項1〜4のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項8】
前記金属ケースはアルミニウムからなる請求項1〜4のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−69840(P2012−69840A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214886(P2010−214886)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】