説明

シート状部材の巻き付け状態の検査方法及び検査装置

【課題】成形ドラムに巻き付けられたシート状部材の巻き付け状態を精度良く測定する。
【解決手段】ドラム周方向Cに沿った検出範囲Dを持つ二次元レーザセンサ12を用い、成形ドラム50をドラム幅方向Xに移動させながら、成形ドラム50に巻き付けられたシート状部材70に対し、シート状部材70の全幅を含む範囲で二次元レーザセンサ12によりレーザ光Lを照射して、反射面までの距離データを取得し、得られた距離データに基づいてシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置を求める。好ましくは、成形ドラム50の全幅を含む範囲で上記距離データを取得し、成形ドラム50の幅方向両端部62,64の位置も求めることである。また、シート状部材70の接合部76が二次元レーザセンサ12の検出範囲D内に入るように位置合わせした上で、上記距離データを取得して、接合部76を検査することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用タイヤの製造工程において、成形ドラムに巻き付けられたカーカスプライなどのシート状部材の巻き付け状態を検査するための検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシート状部材の巻き付け状態を検査するための検査方法として、下記特許文献1には、成形ドラムを一定速度で回転させながら、成形ドラムに巻き付けたシート状部材の先端部と後端部のジョイント(接合部)の重なり代を、一次元レーザセンサにより計測することが開示されている。しかしながら、一次元レーザセンサでは、成形ドラムに巻き付けられたシート状部材を、ドラム周方向の全周にわたって(即ち360°で)測定したとしても、ドラム幅方向には計測値は1点のみである。そのため、接合部におけるシート状部材の端部形状や部材幅、幅方向の貼付位置を精度よく測定することはできない。また、シート状部材の左端から右端までにわたって接合状態を測定することは非常に困難である。
【0003】
一方、下記特許文献2には、二次元レーザセンサを用いて、成形ドラムに巻き付けられたシート状部材の幅方向端部における厚さ方向の輪郭データをシート状部材の長さ方向に連続的に検出することで、シート状部材の幅方向端部位置を測定する方法が開示されている。このように二次元レーザセンサを用いることが開示されているものの、従来は、ドラム軸方向に沿った検出範囲を持つようにセットした上で、成形ドラムの回転により、周方向に沿って面状に検出するよう構成されている。そのため、シート状部材の幅方向両端部の位置を正確に測定するためには、両端部にそれぞれ二次元レーザセンサを配置した上で、両二次元レーザセンサ間の距離を正確に位置合わせする必要がある。また、カーカスプライのような幅広のシート状部材の接合状態を全幅にわたって測定するためには、当該幅方向の全体にわたって二次元レーザセンサの検出範囲を確保するべく複数台の二次元レーザセンサが必要となってしまう。
【0004】
他方、下記特許文献3には、一対の一次元レーザセンサをシート状部材の幅方向に移動させながら、シート状部材の幅方向両端部の位置を測定する方法が開示されている。この文献では、コンベア上に載置されたシート材の端部位置を検出しており、このようなシート材であれば、一次元レーザセンサでも端部位置を測定することは可能である。しかしながら、成形ドラムに巻き付けられたシート状部材では接合部が不連続な形状となるため、一次元レーザセンサでは精度良く測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−354258号公報
【特許文献2】特開2009−294182号公報
【特許文献3】特開2001−201335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、成形ドラムに巻き付けられたシート状部材の巻き付け状態を、二次元レーザセンサを用いて精度良く測定することができる検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る検査方法は、成形ドラムに巻き付けられたシート状部材の巻き付け状態を検査する方法であって、ドラム周方向に沿った検出範囲を持つ二次元レーザセンサを用い、前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方をドラム幅方向に移動させながら、前記成形ドラムに巻き付けられたシート状部材に対し、前記シート状部材の全幅を含む範囲で前記二次元レーザセンサによりレーザ光を照射して、反射面までの距離データを取得し、前記距離データに基づいて前記シート状部材の幅方向両端部の位置を求めるものである。
【0008】
本発明に係る検査装置は、成形ドラムに巻き付けられたシート状部材の巻き付け状態を検査する装置であって、ドラム周方向に沿った検出範囲を持つ二次元レーザセンサと、前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方をドラム幅方向に移動させる移動手段と、前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方の前記ドラム幅方向への移動に伴って、前記二次元レーザセンサにより前記成形ドラムに巻き付けられたシート状部材に対して当該シート状部材の全幅を含む範囲でレーザ光を照射して反射面までの距離データを取得するデータ取得部と、前記距離データに基づいて前記シート状部材の幅方向両端部の位置を求めるデータ処理部と、を備えるものである。
【0009】
本発明の好ましい態様として、前記距離データは、前記ドラム幅方向に並んだ複数個の距離データを行とし、前記ドラム周方向に並んだ複数個の距離データを列とするマトリクス状に取得されてもよい。この場合、前記行毎に前記シート状部材の幅方向端を検出し、該検出結果に基づいて前記シート状部材の前記幅方向両端部の位置を求めることができる。また、前記行毎に検出した前記幅方向端に基づき、その幅方向位置のばらつきを導出してもよい。また、前記行毎に検出した前記幅方向端のうち最も多い幅方向位置を、前記シート状部材の幅方向端部の位置と特定してもよい。更に、前記シート状部材の前記幅方向両端部の位置から前記シート状部材の幅寸法を算出してもよい。
【0010】
本発明の好ましい態様として、前記成形ドラムの全幅を含む範囲で前記二次元レーザセンサにより前記距離データを取得し、取得した前記距離データに基づいて、前記シート状部材の幅方向両端部の位置とともに、前記成形ドラムの幅方向両端部の位置を求めてもよい。この場合、前記二次元レーザセンサの測定限界を超える距離データを持つ非検出点の数を前記ドラム周方向で合計し、合計数を閾値と比べることにより前記成形ドラムの前記幅方向両端部の位置を求めることが好ましい。また、前記シート状部材の幅方向両端部の位置と前記成形ドラムの幅方向両端部の位置とからそれぞれの幅方向中心位置を算出し、前記成形ドラムの幅方向中心位置に対する前記シート状部材の幅方向中心位置のずれ量を算出してもよい。
【0011】
本発明の好ましい態様として、また、前記成形ドラムに巻き付けられた前記シート状部材の先端部と後端部との接合部が、前記二次元レーザセンサの前記検出範囲内に入るように、前記成形ドラムの回転位置と前記二次元レーザセンサとを位置合わせした上で、前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方を前記ドラム幅方向に移動させながら、前記距離データを取得し、取得した前記距離データに基づいて前記接合部を検出してもよい。この場合、前記列毎に前記シート状部材の先端部と後端部との接合位置を検出し、検出した前記接合位置のばらつきを導出することが好ましい。また、前記列毎に前記ドラム周方向で互いに隣接する距離データ間の変化を求め、前記ドラム周方向において前記変化が最大となる位置を前記シート状部材の前記接合位置として検出してもよい。また、前記列毎に前記ドラム周方向で互いに隣接する距離データ間の差を算出し、前記列毎に前記差が絶対値で閾値以上のものを加算することにより、前記ドラム周方向において前記シート状部材の前記接合部に口開きに起因する凹部が存在するかどうかを検出してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドラム周方向に沿った検出範囲を持つ二次元レーザセンサを用いて、シート状部材の全幅にわたってドラム幅方向にスキャンして距離データを取得するので、成形ドラムに巻き付けられたシート状部材に対し、接合部であっても巻き付け状態を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る検査装置の模式的な構成図である。
【図2】該検査装置の側面図である。
【図3】空気入りタイヤの一例を示す半断面図である。
【図4】該検査装置における演算処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】成形ドラムの端部位置を検出する方法を説明するための図である。
【図7】シート状部材の端部位置を検出する方法を説明するための図である。
【図8】シート状部材の端部ばらつきを検出する方法を説明するための図である。
【図9】シート状部材の接合位置のばらつきを検出する方法を説明するための図である。
【図10】シート状部材の接合部の口開きを検出する方法を説明するための図である(口開きがある場合)。
【図11】シート状部材の接合部の口開きを検出する方法を説明するための図である(口開きがない場合)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の検査装置10は、空気入りタイヤの製造過程において、成形ドラム50に巻き付けられたシート状部材70の巻き付け状態を検査する装置であり、成形ドラム50のドラム面52に近接して配された二次元レーザセンサ12と、コンピュータ14と、工程制御用コンピュータ15を備えてなる。
【0016】
成形ドラム50は、空気入りタイヤを製造する際に用いる円筒状部材である。成形ドラム50には、空気タイヤの一部を構成するシート状部材70が巻き付けられている。この例では、シート状部材70はカーカスプライである。一般に、カーカスプライT1は、図3に示すように、空気入りタイヤTにおいて、トレッド部T2から両側のサイドウォール部T3を経て一対のビード部T4にて係止される部材であり、トレッド部T2ではベルトT5の径方向内側に配されている。カーカスプライT1は、多数の有機繊維コード(即ち、カーカスコード)をタイヤ周方向に対して実質上直角に配列し、被覆ゴムで被覆してなる帯状部材からなり、巻き付け前の状態では前記多数の有機繊維コードが幅方向に沿って配列している。
【0017】
図1,2に示す製造過程では、カーカスプライを構成する帯状のシート状部材70は、円筒状の成形ドラム50の外周面に巻き付けられており、全体として円筒状をなしている。このように帯状のシート状部材70を巻き付けることにより、図1に示すように、巻き付けられたシート状部材70には、巻き付け時の先端部72と後端部74とを上下に重ね合わせてなる接合部76(ジョイント部とも称される)が形成されている。接合部76は、ドラム幅方向(即ち、成形ドラム50の幅方向、ドラム軸方向と同じ。)Xに沿って延びており、シート状部材70の全幅にわたって形成されている。図1に示す例では、巻き始め端である図中で上側の先端部72の上に、巻き終わり端である図中で下側の後端部74が重ね合わせられることにより、接合部76が形成されている。
【0018】
成形ドラム50には、当該成形ドラム50をドラム幅方向Xに沿う方向Eに移動させる移動手段として、ドラム幅方向Xに延びる走行レール54と、走行レール54に沿って成形ドラム50を駆動する走行駆動用のモータ56とが設けられている。走行レール54は、成形ドラム50の下に設けられたレールであり、モータ56の駆動により成形ドラム50がドラム幅方向Xに走行(スライド)するように案内する。
【0019】
成形ドラム50には、回転駆動用のモータ58が設けられ、該モータ58により回転可能となっている。また、成形ドラム50の回転位置を検知する回転検知手段として回転位置センサ60が設けられている。
【0020】
二次元レーザセンサ12は、面状の拡がりを有する二次元のレーザ光Lを照射し、反射光を受けることにより、反射面までの空間距離を測定する位置センサ(変位計)であり、公知の二次元レーザセンサを用いることができる。二次元レーザセンサ12は、図1,2に示すように、成形ドラム50の径方向外方側において、ドラム周方向Cに沿った線状の検出範囲Dを有するように設置されている。すなわち、二次元レーザセンサ12から照射されるレーザ光Lがドラム幅方向Xに対して垂直になるように、二次元レーザセンサ12は設置されている。検出範囲Dとしては、特に限定されないが、上記接合部76が検出範囲D内に入るように、20〜100mmであることが好ましく、より好ましくは30〜60mmである。
【0021】
二次元レーザセンサ12には、成形ドラム50との間の距離が一定になるように、二次元レーザセンサ12を位置決めするためのサーボモータ16が設けられている。このように、二次元レーザセンサ12と成形ドラム50との間の距離をサーボモータ16で位置決めすることにより、成形ドラム50のドラム径が変わっても、自動で距離を一定に保つことができる。
【0022】
二次元レーザセンサ12はコンピュータ14に接続されている。サーボモータ16と、成形ドラム50側のモータ56,58及び回転位置センサ60は、工程制御用コンピュータ15に接続されている。工程制御用コンピュータ15はコンピュータ14に接続されており、サーボモータ16と成形ドラム50のモータ56,58と回転位置センサ60の情報をコンピュータ14に送る。該コンピュータ14としては、通常のパソコンが用いられる。工程制御用コンピュータ15は、空気入りタイヤの製造工程を制御するコンピュータの一部である。
【0023】
工程制御用コンピュータ15は、その機能として、サーボモータ16と成形ドラム50のモータ56,58を制御して成形ドラム50と二次元レーザセンサ12を位置合わせする位置決め部17と、走行駆動用モータ56を制御して成形ドラム50をドラム幅方向Xに沿う方向Eに移動させる移動制御部19とを有する。そして、位置決め部17により成形ドラム50と二次元レーザセンサ12を位置合わせした上で、移動制御部19により成形ドラム50を移動させる。また、それと同時に、移動開始信号をコンピュータ14に送信する。
【0024】
コンピュータ14は、演算処理部(CPU)18と、周知のハードディクス等からなる記憶部20と、キーボード等からなる入力部22と、モニター等の表示部24とを備えてなる。
【0025】
演算処理部18は、コンピュータ14の起動時に、記憶部20から処理プログラムを読み込み、データ取得部26、データ処理部28および判定部30などとして作用する。
【0026】
データ取得部26は、成形ドラム50のドラム幅方向Xへの移動に伴って、二次元レーザセンサ12により成形ドラム50に巻き付けられたシート状部材70に対してレーザ光Lを照射して反射面までの距離データ(Z方向変位)を取得する。より詳細には、データ取得部26は、移動制御部19からの移動開始信号に基づいて、成形ドラム50の移動開始と同時に二次元レーザセンサ12により距離データを取得する。レーザ光Lの照射による距離データの取得は、シート状部材70の全幅を含む範囲で行われる。この例では、図1において符号Fで示す鎖線の枠内が距離データの取得範囲である。このように成形ドラム50の幅方向全体が二次元レーザセンサ12による測定フレーム数内に収まるように、成形ドラム50の全幅を含む範囲(即ち、成形ドラム50の全幅を含むより広いドラム幅方向範囲)で、距離データの取得が行われるよう設定されている。
【0027】
これにより距離データは、ドラム幅方向Xに並んだ複数個(例えば10〜800点)の距離データを「行」とし、ドラム周方向Cに並んだ複数個(例えば10〜300点)の距離データを「列」とするマトリクス状に取得される。このマトリクスにおいて、上記行を構成するドラム幅方向Xに並んだデータ配列が、二次元レーザセンサ12の各レーザ発信要素の測定フレーム数に対応しており、この配列方向をX軸方向とする。また、上記列を構成するドラム周方向Cに並んだデータ配列が、二次元レーザセンサ12の検出範囲Dに対応しており、この配列方向をY軸方向とする。
【0028】
データ処理部28は、得られた距離データに基づいて、シート状部材70の幅方向両端部78,80の位置を求める。図4に示すように、データ処理部28は、この例では、部材端部検出部32と、成形ドラム端部導出部34と、部材貼付位置ずれ量算出部36と、接合部検出部38とを備えてなる。
【0029】
部材端部検出部32は、上記の距離データに基づいてシート状部材70の幅方向両端部78,80を検出するものであり、部材端部位置導出部40と、部材端部ばらつき導出部41と、部材幅算出部42とで構成されている。
【0030】
部材端部位置導出部40では、マトリクス状に取得された距離データに基づき、上記X軸方向に沿う行毎に、シート状部材70の幅方向端を検出し、該検出結果に基づいてシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置を求める。この例では、上記行毎に検出した幅方向端のうち、最も多い幅方向位置を、それぞれシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置と特定する。
【0031】
部材端部ばらつき導出部41では、上記の行毎に検出した幅方向端に基づき、シート状部材70の幅方向両端部78,80における幅方向位置のばらつきを導出する。幅方向位置のばらつきを導出することにより、ばらつきが大きければ、接合部76(即ち、先端部72と後端部74の重ね合わせ)がドラム幅方向Xにずれていると検知することができる。
【0032】
部材幅算出部42では、上記のようにして特定したシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置から、シート状部材70の幅寸法を算出する。
【0033】
成形ドラム端部導出部34では、上記の距離データに基づいて成形ドラム50の幅方向両端部62,64の位置を導出する。より詳細には、マトリクス状に取得された距離データに基づき、二次元レーザセンサ12の測定限界を超える距離データを持つ非検出点の数をドラム周方向Cで合計し、合計数を閾値と比べることにより成形ドラム50の幅方向両端部62,64の位置を求める。
【0034】
部材貼付位置ずれ量算出部36では、成形ドラム50に対してシート状部材70がドラム幅方向Xにおいてどれだけずれて貼付されているかを検出する。詳細には、上記で求めたシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置と、成形ドラム50の幅方向両端部62,64の位置と、からそれぞれの幅方向中心位置(即ち、ドラム幅方向Xにおける中心位置)を算出する。そして、成形ドラム50の幅方向中心位置に対するシート状部材70の幅方向中心位置のずれ量を算出する。
【0035】
接合部検出部38は、上記の距離データに基づいてシート状部材70の接合部76の接合状態を検出するものであり、接合位置ばらつき導出部44と、口開き検出部45とで構成されている。
【0036】
接合位置ばらつき導出部44では、マトリクス状に取得された距離データに基づき、上記Y軸方向に沿う列毎にシート状部材70の先端部72と後端部74との接合位置を検出し、検出した接合位置のばらつき(接合位置のドラム周方向Cへのずれによるばらつき)を導出する。接合位置の検出は、詳細には、上記の列毎に、ドラム周方向Cで互いに隣接する距離データ間の変化を求め、ドラム周方向Cにおいて前記変化が最大となる位置を、シート状部材70の接合位置として検出する。このように接合位置のばらつきを導出することにより、ばらつきが大きければ、接合部76が乱れていると検知することができる。
【0037】
口開き検出部45は、シート状部材70の接合部76における口開き部82(図10(a)参照)を検出するものである。口開き部82は、接合部76において先端部72と後端部74とが幅方向の一部で重なり合っていないことにより生じる凹部であり、接合部76の一部に形成された未接合部である。口開き検出部45は、マトリクス状に取得された距離データに基づき、上記列毎にドラム周方向Cで互いに隣接する距離データ間での差を算出し、該差が絶対値で閾値以上のものを列毎に加算することにより、ドラム周方向Cにおいて接合部76に口開き部82に起因する凹部が存在するかどうかを検出する。
【0038】
判定部30では、予め入力部22を通じて入力された判定基準に基づき、シート状部材70の幅、貼付位置のずれ量、端部位置のばらつき、接合部76における接合位置のばらつき、及び口開き部82の有無、の各測定結果についての良否判定を行う。そして、良否判定の結果を、上記各測定結果とともに、表示部24に表示させるとともに、記憶部20に記憶させる。
【0039】
次に、図5のフローチャートに基づいて、処理の流れについて、更に説明する。
【0040】
まず、ステップa1において、工程制御用コンピュータ15の位置決め部17により、図1,2に示すように、二次元レーザセンサ12と成形ドラム50との位置決めを行う。詳細には、二次元レーザセンサ12と成形ドラム50との間の距離が一定の距離になるように、サーボモータ16で位置決めする。
【0041】
また、成形ドラム50に巻き付けられたシート状部材70の接合部76が、二次元レーザセンサ12の検出範囲D内に入るように、回転位置センサ60とモータ58を用いて、成形ドラム50の回転位置と二次元レーザセンサ12を位置合わせする。この例では、接合部76が二次元レーザセンサ12の検出範囲Dの中心に位置するように、成形ドラム50の回転角度を位置合わせする。
【0042】
次いで、ステップa2において、成形ドラム50をドラム幅方向Xに移動させながら、成形ドラム50に巻き付けられたシート状部材70に対し、二次元レーザセンサ12によりレーザ光Lを照射して、反射面までの距離データを取得する。
【0043】
詳細には、成形ドラム50を二次元レーザセンサ12の手前の測定開始位置で一旦停止させてから、移動制御部19により成形ドラム50をドラム幅方向Xに一定速度で走行させる。また、該成形ドラム50の移動開始と同時に、データ取得部26により、二次元レーザセンサ12による測定を開始する。その際、二次元レーザセンサ12の測定フレーム数内にシート状部材70の全幅、この例では更に成形ドラム50の幅方向全体が収まるように、測定開始位置と走行速度を決めておく。図1に示すように、測定開始位置では、二次元レーザセンサ12によるレーザ光の照射位置はドラム幅方向Xにおいて成形ドラム50の範囲内にはなく、成形ドラム50の移動方向Eにおける先端部62(図1では右端)よりも、移動方向前方(図1では右側)に該照射位置が配されている。この測定開始位置から成形ドラム50をドラム幅方向Xに移動させながら、二次元レーザセンサ12による測定を行う。測定は、ドラム周方向Cに測定範囲Dを持つ二次元レーザセンサ12により、成形ドラム50の幅方向Xに端から端まで連続的に行う。
【0044】
これにより、成形ドラム50の全幅にわたってドラム幅方向Xに一定間隔で並んだ複数個の距離データを、X軸方向に沿う「行」とし、二次元レーザセンサ12の検出範囲Dに対応してドラム周方向Cに一定間隔で並んだ複数個の距離データを、Y軸方向に沿う「列」とするマトリクス状に、距離データ(Z方向変位)が取得される。このようにして取得した距離データは、一旦、記憶部20に格納される。
【0045】
次に、ステップa3において、成形ドラム端部導出部34により、上記取得した距離データに基づき、成形ドラム50の幅方向両端部62,64の位置を導出する。導出は、二次元レーザセンサ12の測定限界を超える距離データを持つ非検出点の数をドラム周方向C(Y軸方向)で合計し、この合計数を閾値と比べることにより行う。
【0046】
この幅方向端部位置の導出方法の一例について、図6に基づき詳細に説明する。マトリクス状に取得した距離データに対し、ドラム幅方向Xにおいて、中心位置から両端に向かって(図6(a)の矢印j,k参照)、二次元レーザセンサ12の測定限界を超える大きさの距離データを持つ測定点(非検出点)をチェックしていく。二次元レーザセンサ12は、照射対象までの距離が所定値を超えると、反射光が検出されなくなるので、この測定点を非検出点とする。図6に示すように、中心位置から矢印j,kに向けてチェックしていくと、成形ドラム50の幅方向両端部62,64を越えた外側では、反射光を検出できず、そのため非検出点となる。従って、かかる非検出点が現れた点をドラム端として認識すればよい。
【0047】
但し、図6(a)にも示されるように、実際には、成形ドラム50の範囲内であるにもかかわらず、反射光が検出されない非検出点が得られる場合がある。そこで、このような測定エラーを考慮して、この例では、次のようにして成形ドラム50の幅方向端部位置を導出する。すなわち、同じX軸上(即ち、上記各行)において、非検出点が何点あるかをチェックする。非検出点の数をドラム周方向C(即ち、Y軸方向)に合計して、合計数が閾値未満であれば、当該幅方向位置は成形ドラム50の幅方向端部位置ではないと判断する。一方、非検出点の合計数が閾値以上であれば、当該幅方向位置を成形ドラム50の幅方向端部位置として特定することができる。より好ましくは、非検出点の合計数が閾値以上のラインが複数(例えば3つ)連続して現れたときに、その一番内側のラインの幅方向位置を成形ドラム50の幅方向端部位置として特定することである。これにより、成形ドラム50の幅方向端部62,64の検出精度を更に高めることができる。なお、閾値は、例えば、ドラム周方向Cにおける距離データ(測定点)の数に対してその半分とすることができる(図6(b)の例では、ドラム周方向Cで20点の測定点に対して閾値を10点としている)。
【0048】
次に、ステップa4において、部材端部位置導出部40により、シート状部材70の幅方向両端部78,80の位置を導出する。導出は、マトリクス状に取得された距離データに基づき、上記行毎にシート状部材70の幅方向端を検出し、該検出結果に基づいてシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置を求める。
【0049】
この部材端部位置の導出方法の一例について、図7に基づき詳細に説明する。マトリクス状に取得した距離データに対し、ドラム幅方向Xにおいて、中心位置から両端に向かって(図7(a)の矢印j,k参照)、測定点2点毎の差を求めていき、その差がシート状部材70の厚みを検出するのに必要な閾値以上となる測定点を、有効点とする。この有効点の幅方向位置を、各行におけるシート状部材70の幅方向端として検出する。各行については、このような閾値以上を検出した時点でチェック完了とし、全ての行について有効点をチェックする。なお、有効点のチェックは、上記で導出した成形ドラム50の幅方向端部位置まで至らない、その手前で終了すればよい。
【0050】
このようにして行毎にシート状部材70の幅方向端としての有効点を検出した後、行毎に検出した幅方向端のうち最も多い幅方向位置を、シート状部材70の幅方向端部位置として特定する。例えば、図7(a)における左側の端部では、図7(b)に示すように、ドラム周方向Cに合計した有効点数が最も多い幅方向位置が部材端部位置として特定される。一方、図7(a)における右側の端部では、図7(c)に示す最も有効点数が多い幅方向位置を、部材端部位置として特定することもできる。しかしながら、この右側の端部では、図7(a)において枠Rで囲んで示すように、有効点数の総数が明らかに少ない。このように有効点数の総数が少ない場合、測定エラーを含んでいる可能性があるので、有効点数の総数が所定の閾値以下の場合には、部材端部未検出として再測定等の手順にまわすことができる。ここで、閾値は、例えば、ドラム周方向Cにおける距離データの数に対してその半数とすることができる。なお、最も有効点数が多い幅方向位置が2つ以上検出された場合、例えば、シート状部材70の幅方向中心により近い幅方向位置を部材端部位置として特定することができる。
【0051】
次に、ステップa5において、部材端部ばらつき導出部41により、シート状部材70の幅方向両端部78,80のばらつきを導出する。導出は、上記の行毎に検出した幅方向端に基づいて、その幅方向位置のばらつきを求める。
【0052】
この部材端部ばらつきの導出方法の一例について、図8に基づき説明する。図8(a)は、ステップa4と同様にして、有効点をチェックしたデータを示したものである。このようにして各行について有効点(幅方向端)を検出した後、図8(b)及び(c)に示すように、それぞれの幅方向端部78,80において、有効点の幅方向位置をデータとして、ばらつきの指標としての標準偏差σを求める(図中のμは平均値である)。標準偏差σが所定の閾値以下であれば、シート状部材70の幅方向端部78,80における幅方向位置のばらつきは小さく、シート状部材70の巻き付け状態が良好であることを示す。この例では、図8(b)に示す左側の端部80ではばらつきが小さいが、図8(c)に示す右側の端部78ではばらつきが大きく、不良であることを示す。
【0053】
次に、ステップa6において、部材幅算出部42により、シート状部材70の幅寸法を算出する。詳細には、上記で特定したシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置、成形ドラム50の走行速度、及び二次元レーザセンサ12の測定フレーム数から、シート状部材70の幅を算出することができる。
【0054】
次いで、ステップa7において、部材貼付位置ずれ量算出部36により、シート状部材70の貼付位置のずれ量を算出する。詳細には、上記で求めたシート状部材70の幅方向両端部78,80の位置と、成形ドラム50の幅方向両端部62,64の位置と、からそれぞれの幅方向中心位置(即ち、ドラム幅方向Xにおける中心位置)を算出する。これにより、成形ドラム50の幅方向中心位置に対するシート状部材70の幅方向中心位置のずれ量が求められる。
【0055】
次のステップa8では、接合位置ばらつき導出部44により、マトリクス状に取得した距離データに基づき、上記列毎にシート状部材70の先端部72と後端部74との接合位置を検出し、検出した接合位置のばらつきを導出する。接合位置の検出は、上記の列毎に、ドラム周方向Cで互いに隣接する距離データ間の変化を求めていき、ドラム周方向Cにおいて前記変化が最大となる位置を、シート状部材70の接合位置として検出する。
【0056】
かかる接合位置ばらつきの導出方法の一例について、図9に基づき詳細に説明する。マトリクス状に取得した距離データに対し、ドラム周方向C(Y軸方向)の一端から他端に向かって隣接する2点間の距離データ(Z方向変位)の差(差分値)を算出する。図9に示す例では、矢印mで示すように、Y軸方向の上端から下端に向かって、隣接する2点間の距離データの差を算出する。そして、該差の大きさが最大となる位置を、有効点として、シート状部材70の接合位置を検出する。図2に示されるように、ドラム周方向Cに検出範囲Dを持つ二次元レーザセンサ12では、ドラム周方向Cに並ぶ距離データ間において、仮にシート状部材70の厚みが一定であっても、成形ドラム50の湾曲形状に応じた寸法差が生じる。そのため、ドラム周方向Cで隣接する2点間の距離データの変化(差)を求めており、これにより、接合位置を検出することができる。接合位置では、シート状部材70の厚み1枚分に相当する急激な厚み変化があり、距離データに顕著な違いがあるためである(図11参照)。
【0057】
ここで、図9に示すように接合部76に口開き部が存在しない場合、隣接する2点間の距離データの差が最大になるのは、接合位置であるが、仮に、接合部76に口開き部82が存在する場合には、図10に示すように上記差が最大になるのがドラム周方向Cにおいて2箇所となる可能性がある。ステップa8では、口開きではなく、接合位置のばらつきのみを導出するため、このような可能性を排除することが好ましい。そこで、接合部76の重なりの向きに応じて、上記差が正(プラス)の値となるか、負(マイナス)の値となるか、設定しておいて、これに応じて接合位置を検出することが好ましい。
【0058】
例えば、図1に示すように、上側の先端部72の上に下側の後端部74が重ね合わせられた接合部76であれば、図9(a)のように上端から下端に向けて有効点を求めていくと、接合位置では厚みが大きく増加するので、図11(b)に示すように、接合位置での上記差は正の値となる。そのため、正の値の最大値を有効点とするように規定しておくことで、有効点が2つ検出されるという可能性を排除することができる。
【0059】
以上の有効点の検出を、ドラム幅方向Xの全体に対して、例えば、シート状部材70の左端80から右端78まで繰り返して行う。このようにして各列について有効点(接合位置)を検出した後、図9(b)に示すように、有効点のドラム周方向C(Y軸方向)での位置をデータとして、ばらつきの指標としての標準偏差σを求める(図中のμは平均値である)。標準偏差σが所定の閾値以下であれば、接合部76の乱れは小さく、接合状態が良好であることを示す。
【0060】
次に、ステップa9では、口開き検出部45により、接合部76の口開きの有無を検出する。詳細には、マトリクス状に取得された距離データに基づき、上記列毎に、ドラム周方向Cで互いに隣接する距離データ間での差を算出し、該差が絶対値で閾値以上のものを列毎に加算することにより、ドラム周方向Cにおいて接合部76に口開き部82に起因する凹部が存在するかどうかを検出する。
【0061】
かかる口開きの検出方法の一例について、図10,11に基づき詳細に説明する。マトリクス状に取得した距離データに対し、上記ステップa8と同様に、ドラム周方向C(Y軸方向)の一端から他端に向かって隣接する2点間の距離データ(Z方向変位)の差(差分値)を算出する。すると、図11に示すように、口開きのない通常の接合部76では、上記差は接合位置において正(プラス)又は負(マイナス)の値が大きくなるが、それ以外の位置では成形ドラム50の曲面形状に応じた小さい値となる。一方、図10に示すように、口開き部82に起因する凹部があると、上記差は、凹部の落ち込みに対応する負(マイナス)の大きな値と、その後の立ち上がりに対応する正(プラス)の大きな値をとることになる。そこで、成形ドラム50の曲面形状に相当する差よりも絶対値が大きく、かつ、シート状部材70の厚みに相当する差よりも絶対値が小さい値を、正負それぞれ閾値として定める。そして、上記算出した差のうち、絶対値として閾値以上の値を持つものを、上記列毎に加算する。これにより、図11に示す口開きのない通常の接合部76では、上記差が絶対値で閾値を超えるものは1つだけであるため、この場合には、上記差の加算値は正又は負に大きくなる(加算値は、少なくとも絶対値で閾値よりも大きくなる。図11(b)では「+2」)。一方、図10に示す口開きを有する場合では、上記差が絶対値で閾値を超えるものは、負に大きな値(図10(b)では「−2」)と、正に大きな値(図10(b)では「+2」)であるので、両者を加算すると、0に近くなる(加算値は、少なくとも絶対値で閾値よりも小さくなる)。従って、このように閾値以上の差を加算して、加算値を閾値と比べることにより、口開きに起因する凹部の有無を検出することができる。
【0062】
上記の口開きの検出をシート状部材70の全幅にわたって行う。すなわち、例えば、図9(a)において、シート状部材70の左端位置から右端位置まで1列毎に測定を行う。そして、ドラム幅方向Xの全体において、凹部が検出された列の数をカウントすることにより、接合部76における口開き部82の有無を検出することができる。
【0063】
以上により得られた各測定結果に基づき、判定部30により、シート状部材70の巻き付け状態の良否判定を行う(ステップa10)。詳細には、ステップa6で得られたシート状部材70の幅寸法、ステップa7で得られたシート状部材70の貼付位置のずれ量、ステップa5で得られたシート状部材70の端部位置のばらつき、ステップa8で得られた接合部76における接合位置のばらつき、ステップa9で得られた接合部76における口開き部82の有無の各測定結果を、判定基準と比較することにより、良否判定を行う。
【0064】
そして、良否判定の結果を、上記各測定結果とともに、表示部24に表示させるとともに、記憶部20に記憶させる(ステップa11)。測定結果を表示部24に表示する場合、上記で取得した距離データを波形処理して表示してもよく、これにより視覚的にも不良箇所の判別が容易になる。また、このように波形処理した画像データを、各測定結果とともに記憶部20に記憶してもよい。また、測定結果を記憶する際には、各タイヤに貼り付けられるバーコード番号などの識別番号を、上記測定結果に関連づけて記憶させてもよく、これにより、測定結果と完成タイヤの追従が容易になる。
【0065】
以上よりなる検査方法は、空気入りタイヤの製造工程に組み込むことができ、検査に合格したものについては、その後のタイヤの成形工程に進み、最終的に加硫成形することにより、空気入りタイヤを得ることができる。
【0066】
以上説明した本実施形態であると、ドラム周方向Cに沿った検出範囲Dを持つ二次元レーザセンサ12を用いて、シート状部材70に対してドラム幅方向Xに端から端まで連続で測定する。そのため、シート状部材70を面で検出することができ、シート状部材70の貼付状態を正確に測定することができる。また、シート状部材70の全幅にわたって、接合部76の状態、シート状部材70の幅及び貼付位置を、一度に測定することができる。
【0067】
特に、本実施形態であると、成形ドラム50の両端を測定範囲に含めるようにドラム幅方向Xで連続して測定することにより、成形ドラム50と二次元レーザセンサ12をドラム幅方向Xにおいて正確に位置決めしておかなくても、成形ドラム50に対するシート状部材70の貼り付け位置を精度良く測定することができる。すなわち、上記距離データから成形ドラム50とシート状部材70について、それぞれの中心位置を求めることにより、中心位置の差から成形ドラム50上のシート状部材70の貼付位置(ずれ量)を精度良く測定することができる。
【0068】
また、本実施形態であると、ドラム周方向Cに沿った検出範囲Dを持つ二次元レーザセンサ12の当該検出範囲Dに接合部76が入るようにして、二次元レーザセンサ12によりシート状部材70上をスキャンするので、接合部76の全体を面で検出することができ、接合部76の状態を正確に測定することができる。
【0069】
また、本実施形態であると、シート状部材70の幅方向端として認識した位置のばらつきを導出することにより、ばらつきが大きければ、接合部76がドラム幅方向Xにずれていると検知することができ、ジョイントの幅方向におけるずれを検知することができる。
【0070】
また、マトリクス状に取得した距離データについて、列毎に接合位置を検出して、その位置のばらつきを導出することにより、接合部76の接合状態が乱れているかを検知することができる。また、列毎にドラム周方向Cでの凹部を検出することにより、接合部76における口開きの有無を検出することができる。
【0071】
なお、上記実施形態では、二次元レーザセンサ12を固定し、成形ドラム50をドラム幅方向Xに移動させたが、これに代えて、成形ドラム50を固定した上で、二次元レーザセンサ12をドラム幅方向Xに移動させながら、レーザ光照射による測定(即ち、距離データの取得)を行ってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、シート状部材70の接合部76を含む周方向箇所を検査対象としたが、接合部76以外の周方向箇所を検査対象としてもよい。例えば、周方向に均等配置された複数箇所(例えば、3〜6箇所)を検査対象とし、そのうちの1つに接合部76が含まれるようにして、接合部76での接合状態の検査とともに、その他の周方向箇所での貼り付け状態(貼付位置や幅寸法)の検査を行ってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、検査対象となるシート状部材70としてカーカスプライの例について説明したが、成形ドラムに巻き付けられるものであれば、インナーライナーやベルトなどの他のシート状部材を検査対象としてもよい。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10…検査装置 12…二次元レーザセンサ 14…コンピュータ
15…工程制御用コンピュータ 17…位置決め部 19…移動制御部
18…演算処理部 26…データ取得部 28…データ処理部
32…部材端部検出部 34…成形ドラム端部検出部
36…部材貼付位置ずれ量算出部 38…接合部検出部
40…部材端部位置導出部 41…部材端部ばらつき導出部
42…部材幅算出部 44…接合位置ばらつき導出部 45…口開き検出部
50…成形ドラム 62,64…成形ドラムの幅方向両端部
70…シート状部材 72…先端部 74…後端部 76…接合部
78,80…シート状部材の幅方向両端部 82…口開き部
X…ドラム幅方向 Y…ドラム周方向 D…検出範囲 L…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ドラムに巻き付けられたシート状部材の巻き付け状態を検査する方法であって、
ドラム周方向に沿った検出範囲を持つ二次元レーザセンサを用い、前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方を前記ドラム幅方向に移動させながら、前記成形ドラムに巻き付けられたシート状部材に対し、前記シート状部材の全幅を含む範囲で前記二次元レーザセンサによりレーザ光を照射して、反射面までの距離データを取得し、
前記距離データに基づいて前記シート状部材の幅方向両端部の位置を求める
ことを特徴とするシート状部材の巻き付け状態の検査方法。
【請求項2】
前記成形ドラムの全幅を含む範囲で前記二次元レーザセンサにより前記距離データを取得し、取得した前記距離データに基づいて、前記シート状部材の幅方向両端部の位置とともに、前記成形ドラムの幅方向両端部の位置を求める
ことを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記成形ドラムに巻き付けられた前記シート状部材の先端部と後端部との接合部が、前記二次元レーザセンサの前記検出範囲内に入るように、前記成形ドラムの回転位置と前記二次元レーザセンサとを位置合わせした上で、前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方を前記ドラム幅方向に移動させながら、前記距離データを取得し、
取得した前記距離データに基づいて前記接合部を検出する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の検査方法。
【請求項4】
前記距離データが、前記ドラム幅方向に並んだ複数個の距離データを行とし、前記ドラム周方向に並んだ複数個の距離データを列とするマトリクス状に取得され、
前記行毎に前記シート状部材の幅方向端を検出し、該検出結果に基づいて前記シート状部材の前記幅方向両端部の位置を求める
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項5】
前記行毎に検出した前記幅方向端に基づき、その幅方向位置のばらつきを導出する
ことを特徴とする請求項4記載の検査方法。
【請求項6】
前記行毎に検出した前記幅方向端のうち最も多い幅方向位置を、前記シート状部材の幅方向端部の位置と特定する
ことを特徴とする請求項4又は5記載の検査方法。
【請求項7】
前記シート状部材の前記幅方向両端部の位置から前記シート状部材の幅寸法を算出する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項8】
前記距離データが、前記ドラム幅方向に並んだ複数個の距離データを行とし、ドラム周方向に並んだ複数個の距離データを列とするマトリクス状に取得され、
前記二次元レーザセンサの測定限界を超える距離データを持つ非検出点の数を前記ドラム周方向で合計し、合計数を閾値と比べることにより前記成形ドラムの前記幅方向両端部の位置を求める
ことを特徴とする請求項2記載の検査方法。
【請求項9】
前記シート状部材の幅方向両端部の位置と前記成形ドラムの幅方向両端部の位置とからそれぞれの幅方向中心位置を算出し、前記成形ドラムの幅方向中心位置に対する前記シート状部材の幅方向中心位置のずれ量を算出する
ことを特徴とする請求項2又は8記載の検査方法。
【請求項10】
前記距離データが、前記ドラム幅方向に並んだ複数個の距離データを行とし、ドラム周方向に並んだ複数個の距離データを列とするマトリクス状に取得され、
前記列毎に前記シート状部材の先端部と後端部との接合位置を検出し、検出した前記接合位置のばらつきを導出する
ことを特徴とする請求項3記載の検査方法。
【請求項11】
前記列毎に前記ドラム周方向で互いに隣接する距離データ間の変化を求め、前記ドラム周方向において前記変化が最大となる位置を前記シート状部材の前記接合位置として検出する
ことを特徴とする請求項10記載の検査方法。
【請求項12】
前記距離データが、前記ドラム幅方向に並んだ複数個の距離データを行とし、ドラム周方向に並んだ複数個の距離データを列とするマトリクス状に取得され、
前記列毎に前記ドラム周方向で互いに隣接する距離データ間での差を算出し、前記列毎に前記差が絶対値で閾値以上のものを加算することにより、前記ドラム周方向において前記シート状部材の前記接合部に口開きに起因する凹部が存在するかどうかを検出する
ことを特徴とする請求項3、10又は11に記載の検査方法。
【請求項13】
成形ドラムに巻き付けられたシート状部材の巻き付け状態を検査する装置であって、
ドラム周方向に沿った検出範囲を持つ二次元レーザセンサと、
前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方を前記ドラム幅方向に移動させる移動手段と、
前記二次元レーザセンサと前記成形ドラムのいずれか一方の前記ドラム幅方向への移動に伴って、前記二次元レーザセンサにより前記成形ドラムに巻き付けられたシート状部材に対して当該シート状部材の全幅を含む範囲でレーザ光を照射して反射面までの距離データを取得するデータ取得部と、
前記距離データに基づいて前記シート状部材の幅方向両端部の位置を求めるデータ処理部と、
を備えるシート状部材の巻き付け状態の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−15455(P2013−15455A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149408(P2011−149408)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】