説明

ジェット推進艇

【課題】 簡単な構造で、スロットルを閉じる操作と同時に行われる旋回のための推進力を維持することができるジェット推進艇を提供する。
【解決手段】 エンジン4の回転力でジェット水流を噴射し、このジェット水流により推進力を得るとともに、ジェット水流の噴射方向を変えて旋回を行うジェット推進艇1に、吸気管21に設けられ、スロットルバルブ23をバイパスする補助吸気通路24を開閉する補助吸気バルブ25と、コントロールユニット(EUC)29とを設け、ECU29が、エンジン4の回転数が所定の閾値以上のときの補助吸気バルブ25の開度を、アイドル回転数のときの補助吸気バルブ25の開度より大きくなるように制御し、また、回転数が閾値以上であるときに、スロットルバルブ23の開度が0となり、且つ、ステアリング機構12が所定の角度以上転舵されたことが検出されると、現在の補助吸気バルブ25の開度を維持するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルによりジェット水流を噴射することにより推進力を得るとともに、このノズルを左右に揺動させて艇体を旋回させることができるジェット推進艇に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェット推進艇は、ジェット水流を噴射して推進力を得るとともに、このジェット水流の噴射方向を変えることにより艇体の方向を変えるように構成されている。従って、ジェット水流が噴射されていないと、方向転換をすることができない。このようなジェット推進艇に搭乗している操縦者は、障害物を回避する場合に、艇速を落とす操作とともにハンドルを切って艇体の方向転換をする傾向にある。艇速を落とす操作、すなわち、スロットルレバーを戻してスロットルバルブを閉じると、ジェット水流も噴射されず方向転換ができなくなる。そのため、ジェット推進艇においては、スロットルバルブが全閉されても、旋回操作が行われているときは艇体の方向転換のためのジェット水流の噴射を維持するように構成する必要がある。
【0003】
スロットルバルブが全閉されるとともにハンドルが切られているときにジェット水流による推進力を維持するための方法としては、スロットルバルブを閉じる操作がされたとしても、所定時間だけスロットルバルブを開いておくことにより、ジェット水流を噴射させるように構成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−303170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スロットルバルブを閉じる操作と同時に旋回操作が行われた時に、スロットルバルブを所定時間だけ開放させておくという構成にすると、燃料噴射装置の構造が複雑となり、また、それらを制御するための制御装置も複雑となるという課題がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、スロットルバルブを閉じる操作と同時に行われる旋回操作に応じた推進力を維持することができるジェット推進艇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係るジェット推進艇は、エンジンによりジェット水流を噴射し、このジェット水流により推進力を得るとともに、ジェット水流の噴射方向を変えて旋回制御を行うものであり、エンジンに空気を供給するための吸気管と、この吸気管に設けられ、空気の量を調整するスロットルバルブと、吸気管に設けられ、スロットルバルブをバイパスする補助吸気通路と、補助吸気通路を開閉する補助吸気バルブと、エンジンの回転数を検出する回転数センサーと、補助吸気バルブの開閉を制御するコントロールユニットとを有して構成される。そして、コントロールユニットが、回転数センサーにより検出された回転数が所定の閾値以上のときの補助吸気バルブの開度を、エンジンをアイドル回転させているときの補助吸気バルブの開度より大きくなるように制御する。
【0008】
このような本発明に係るジェット推進艇は、ハンドル操作に応じてジェット水流の噴射方向を変えるステアリング機構と、ハンドルが直線走行位置から旋回操作されたことを検出する転舵検出機構と、スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサーとを有し、コントロールユニットが、回転数が閾値以上であるときに、スロットルセンサーによりスロットルバルブの開度が全閉あるいは所定値以下となったことを検出し、且つ、転舵検出機構によりハンドルが旋回操作されたことを検出すると、現在の補助吸気バルブの開度を維持するように制御することが好ましい。
【0009】
このとき、コントロールユニットが、転舵検出機構によりハンドルが直線走行位置に戻されたことを検出すると、補助吸気バルブの開度を、所定の減少率で減少させてエンジンをアイドル回転させる開度になるように制御することが好ましい。あるいは、コントロールユニットが、回転数が閾値以上であるときに、スロットルバルブの開度が全閉あるいは所定値以下となったことを検出し、且つ、ハンドルが旋回操作されたことを検出して現在の補助吸気バルブの開度を所定の時間だけ維持した後、補助吸気バルブの開度を所定の減少率で減少させて、アイドル回転数のときの開度になるように制御することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るジェット推進艇は、ハンドル操作に応じてジェット水流の噴射方向を変えるステアリング機構と、ハンドルが直線走行位置から旋回操作されたことを検出する転舵検出機構と、スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサーとを有し、コントロールユニットが、スロットルセンサーによりスロットルバルブの開度が全閉あるいは所定値以下となったことを検出し、且つ、転舵検出機構によりハンドルが略直線走行位置にあることを検出すると、補助吸気バルブの開度を、暫時減少させてエンジンをアイドル回転させる開度になるように制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るジェット推進艇を以上のように構成すると、エンジンをアイドル運転するために空気を供給する補助吸気通路に補助吸気バルブを設けて開度を制御することにより、簡単な構造で旋回のための推進力を維持する制御(これを「OTS制御」と呼ぶ)を行うことができる。また、エンジンの回転数が所定の閾値以上のときに補助吸気バルブの開度を大きくしておくことにより、スロットルバルブが急閉されてもエンジン回転数がアイドル回転数を大幅に下回ることを防止することができる。
【0012】
また、スロットルバルブが閉じられるとともにハンドルが切られたときに、その時点の補助吸気バルブの開度を維持することにより、旋回に必要な推進力を得るための特別な装置を必要とせず、OTS制御への移行をスムーズに行うことができる。
【0013】
このとき、ハンドルが直進走行位置に戻されたときに、補助吸気バルブの開度を所定の減少率で小さくすることにより、OTS制御からの離脱をスムーズに行うことができる。あるいは、所定の時間だけ補助吸気バルブの開度を維持し、そこから、所定の減少率で小さくすることにより、必要な旋回を終了後、エンジン回転数が自動的にアイドル回転数まで低下するので、操縦者がスロットルバルブを閉じた意図に近い操縦間隔を得ることができる。
【0014】
また、スロットルバルブの開度が全閉あるいは所定値以下となり、且つ、ハンドルが切られていないときに、エンジン回転数をフィードバックしてアイドル回転数になるように補助吸気バルブの開度を小さくするように制御することにより、エンジンをアイドル回転へスムーズに移行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明に係るジェット推進艇の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。ジェット推進艇1は、艇体2を有し、この艇体2の内部に、前方部分に設けられた燃料タンク3、燃料タンク3の後方に設けられたエンジン4、エンジン4の後方に設けられたポンプ室5、ポンプ室5に設けられたジェット推進機6、および、エンジン4に吸気側が取り付けられ、ポンプ室5に排気側が取り付けられた排気ユニット7を有して構成される。また、エンジン4の上方には、ステアリング機構12が設けられ、このステアリング機構12の後方で艇体2の上部にシート13が設けられている。このジェット推進艇1は、シート13に座った操縦者がステアリング機構12を操作して走行される。
【0016】
ジェット推進機6は、艇体2の底部に開口した吸水口8aと連通して内部を後方に向かって延び、艇体2の後端部で開口するように形成された空間を有するハウジング部8、このハウジング部8の空間内に回転自在に配設されたインペラ9、および、ハウジング部8の後端開口部8bに取り付けられた操舵管10から構成されている。インペラ9はエンジン4の駆動軸4aに連結されており、エンジン4を駆動してインペラ9を回転させることにより、吸水口8aから吸引した水を操舵管10から艇体2の後方へジェット水流として噴射して推進力を得るように構成されている。
【0017】
ステアリング機構12は、艇体2に回転自在に取り付けられたステアリングシャフト15、ステアリングシャフト15の上端に取り付けられたハンドル16、ハンドル16の左右端部に取り付けられた左右のハンドルグリップ17R,17L、右のハンドルグリップ17Rの内端側に取り付けられたスロットルレバー18、および、ステアリングシャフト15の下端に取り付けられた転舵検出機構19から構成される。
【0018】
操舵管10は、ハウジング部8に対して左右方向に揺動可能に取り付けられており、ステアリング機構12のハンドル16を直線走行位置から左右いずれかの方向に切る操作することによりこの操舵管10を左右に揺動させてジェット水流の噴射方向を変えることにより、艇体2の旋回方向をコントロールする。なお、ハウジング部8の後端部には上下に揺動可能にリバースバスケット11が取り付けられており、ステアリング機構12の近傍の艇体2に設けられた操作ノブ14を操作することにより、リバースバスケット11を後方に揺動させて操舵管10に後方から被せるように位置させて、操舵管10から噴射されたジェット水流をこのリバースバスケット11で前方斜め下方に流して艇体2をバックさせることができる。
【0019】
次に、図3を用いて、このジェット推進艇1のエンジン4に燃料を噴射する燃料噴射装置20の構成について説明する。燃料噴射装置20は、一端がエンジン4の吸気口に接続された吸気管21、吸気管21の他端に配設されたエアクリーナ22、吸気管21に配設され吸気量を調整するスロットルバルブ23、スロットルバルブ23の近傍に配設されこのスロットルバルブ23をバイパスするように吸気管21に設けられた補助吸気通路24、補助吸気通路24に設けられた補助吸気バルブ25、および、吸気管21におけるエンジン4の吸気口近傍に設けられたインジェクタ26から構成される。補助吸気バルブ25は、ステップモータ(2相励磁型)27に連結されており、このステップモータ27の回転に応じて補助吸気バルブ25を弁座28に向けて前進あるいは後退させることにより、補助吸気通路24が開閉される。このような構成の燃料噴射装置20により、エアクリーナ22を通過した空気が、スロットルバルブ23および補助吸気バルブ25で流量の調整が行われ、インジェクタ26から噴射された燃料と混合されてエンジン4に供給される。
【0020】
この燃料噴射装置20において、スロットルバルブ23の開度は、ステアリング機構12のスロットルレバー18により調整される。また、インジェクタ26の燃料噴射量やタイミング等はエンジン制御装置(以下、ECU29」と呼ぶ)により制御される。なお、スロットルバルブ23が閉じられている状態でもエンジン4が運転(アイドル運転)可能なように、補助吸気バルブ25は所定の開度だけ開けられており(この開度を「アイドル開度」と呼ぶ)、スロットルバルブ23が全閉状態でも、補助吸気通路24からエンジン4に空気が供給されるように構成されている。
【0021】
以上のように構成されたジェット推進艇1には、走行中にスロットルバルブ23を全閉したときでも旋回のために必要な所定のジェット水流を維持するOTS(Off Throttle Steering system)制御装置30が搭載されており、これについて説明する。OTS制御装置30は、ECU29、転舵検出機構19、スロットルバルブ23の開度THを検出するスロットルセンサー31、エンジン4の回転数Neを検出する回転数センサー32、ステップモータ27、および、表示装置33から構成され、スロットルバルブ23の開度THとステアリング機構12のハンドル16が旋回操作されているか否かにより、必要に応じてステップモータ27を制御して補助吸気バルブ25の開度BTHを変えることにより、所定のジェット水流を維持するものである。なお、ECU29によりOTS制御が行われているときは、表示装置33に運転情報として表示される。
【0022】
ここで、転舵検出機構19は、ステアリングシャフト15の下端に取り付けられたスイッチカム19aと、このスイッチカム19aにより押圧されるスイッチ19bとから構成され、ハンドル16が略直線走行位置から左右いずれかの方向に切られてステアリングシャフト15が左右いずれかの方向に所定の角度以上回転するとスイッチカム19aによりスイッチ19bが押圧され、その出力(以下、「転舵信号SW」と呼ぶ)がECU29に入力される。
【0023】
それでは、図4を用いて、ECU29によるOTS制御について説明する。ECU29は、図4に示すOTS処理S100を所定の時間間隔で繰り返し実行しており、エンジンの回転数Ne、スロットルバルブ23の開度TH、および、転舵検出機構19の転舵信号SWによりステップモータ27の位置(すなわち、補助吸気バルブ25の開度BTH)を制御する。
【0024】
OTS処理S100が実行させると、まず、エンジン回転数Neが所定の閾値Nth以上であるか否かが判断され(ステップS101)、エンジン回転数Neが閾値Nthより小さいときは、補助吸気バルブ25の開度BTHはアイドル開度Loに制御され(ステップS102)、一回の処理が終了する。また、ステップS101で、エンジン回転数Neが閾値Nth以上であるときは、補助吸気バルブ25の開度BTHはアイドル開度Loより大きい開度(これを「走行開度Hi」と呼ぶ)に制御される(ステップS103)。そして、スロットルバルブ23が全閉であるか、すなわち、スロットルバルブ23の開度THが0であるか否かが判断され(ステップS104)、開度THが0でないときはそのまま一回の処理を終了する。また、ステップS104で開度THが0であるときは、転舵信号SWがオンか否か(ステアリング機構12が所定の角度以上切られているか否か)が判断される(ステップS105)。なお、スロットルバルブ23の状態は、開度THが所定値以下であるときに全閉であると判断するように構成しても良い。
【0025】
このステップS105において、転舵信号SWがオンであるときは、転舵信号SWがオフになるまで待ち(ステップS106)、転舵信号SWがオフになると(ハンドル16が略直進走行位置に戻されると)、所定の減少率で補助吸気バルブ25の開度BTHをアイドル開度Loまで減少させ(ステップS107)、一回の処理が終了する。一方、ステップS105において、転舵信号SWがオフであるときは、エンジン4の回転数Neをフィードバックしながら補助吸気バルブ25の開度BTHを制御して(これを「アイドルフィードバック制御」と呼ぶ)、回転数Neをアイドル回転数N0にまで戻すように、すなわち、補助吸気バルブ25の開度BTHがアイドル開度Loに戻され(ステップS108)、一回の処理が終了する。
【0026】
それでは、このようなOTS制御を行うときのエンジン4の状態について説明する。まず、図5を用いて、スロットルバルブ23が閉じられるとともに、ハンドル16が切られてステアリングシャフト15が所定の角度以上回転された場合について説明する。エンジン4が始動した状態で、且つ、スロットルバルブ23が閉じた状態(TH=0)においては、エンジン4がアイドル回転数N0で回転しており、このとき補助吸気バルブ25の開度BTHはLoに設定されている(時刻t0)。
【0027】
時刻t1において、スロットルバルブ23が開かれると、それに応じてエンジン回転数Neが上昇し、閾値Nth以上になったところで補助吸気バルブ25の開度BTHが走行開度Hiに設定される。その結果、エンジン4は回転数N2で回転する。そして、時刻t2において、スロットルバルブ23を全閉するとともにハンドル16を切ると、転舵信号SWがオンになる。このとき、補助吸気バルブ25の開度BTHは走行開度Hiに維持されるため、エンジン4はアイドル回転数N0よりは大きい回転数N1で回転する。そのため、操舵管10からはジェット水流が噴射され、艇体2を旋回させることができる。さらに、時刻t3において、ハンドル16を略直線走行位置に戻すと、転舵信号SWがオフになり、所定の減少率で開度BTHがアイドル開度Loに戻されるので、エンジン4がアイドル運転状態となり時刻t4において推進力が0になって、艇体2が停止する。
【0028】
このように、エンジン回転数Neが所定の閾値Nth以上となっているときに、補助吸気バルブ25をアイドル開度Loより大きい走行開度Hiにすることにより、スロットルバルブ23が急激に閉じられたとしても、補助吸気通路24を介してアイドル回転時よりも多い空気が供給されるため、エンジン回転数Neがアンダーシュートしてアイドル回転数N0を大幅に下回ることはなく、エンジンストップを防止し、エンジン4を安定して運転することができる。
【0029】
また、旋回操作されたハンドル16が略直線走行位置に戻されるまで補助吸気バルブ25の開度BTHを走行開度Hiに維持することにより、特別な装置を必要とせずに、艇体2の旋回に必要なジェット水流を得ることができる。このとき、補助吸気バルブ25の開度BTHがアイドル開度Loであるとすると、スロットルバルブ23を閉じることによりアイドル回転数N0まで落ちたエンジン4の回転数Neを、旋回に必要な回転数N1まで上昇させるために補助吸気バルブ25を開く制御が必要となりタイムラグが発生するが、上述のように、補助吸気バルブ25は走行開度Hiに設定されているため、OTSへの移行をスムーズに行うことができる。さらに、スロットルバルブ23が全閉されたときは、徐々に補助吸気バルブ25の開度をアイドル開度Loまで戻すことにより、OTSモードからの離脱をスムーズに行うことができる。
【0030】
次に、図6を用いて、スロットルバルブ23が閉じられたが、ハンドル16が旋回操作されていない場合について説明する。なお、時刻t2までは、図5の場合と同様であるため、時刻t2以降の状態について説明する。
【0031】
時刻t2でスロットルバルブ23が全閉されると、転舵信号SWはオフであるため(ハンドル16が切られていないため)、補助吸気バルブ25の開度BTHはアイドルフィードバック制御により、エンジン回転数Neをフィードバックしてアイドル回転数N0になるように制御されるため、アイドル開度Loになる。なお、ステップS105において、図6(c)に示すように、スロットルバルブ23が閉じられるとすぐに転舵信号SWがオンであるかを判断するのではなくて、所定の時間Δtだけ待つ(時刻t3′から開始する)ように構成すると、スロットルバルブ23を閉じる操作とハンドル16を切る操作の間のタイムラグを吸収することができる。
【0032】
このように、ハンドル16が切られておらず、旋回のための推進力が不要な場合でも、アイドルフィードバック制御によりエンジン4の回転数Neをアイドル回転数N0になるように、補助吸気バルブ25の開度BTHを制御することにより、エンジン回転数Neのアンダーシュートを防止してスムーズに移行させることができる。
【0033】
なお、図4に示したOTS処理S100は、ステップS106において、ハンドル16が略直線走行位置に戻されるまで補助吸気バルブ25の開度BTHを走行開度Hiに維持するように構成したが、ハンドル16の状態に拘わらず、所定の時間が経過したときに補助吸気バルブ25の開度BTHをアイドル開度Loまで減少させるように構成することも可能である。このような構成によると、必要な旋回を終了後、エンジン4の回転数Neがアイドル回転数N0まで自動的に低下するので、操縦者がスロットルレバー18を戻してスロットルバルブ23を閉じた意図に近い操縦感覚を得ることができる。
【0034】
以上のように、ジェット推進艇1のエンジン4をアイドル運転するための補助吸気通路24に補助吸気バルブ25を設けて開度を制御することにより、簡単な構造でOTS制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るジェット推進艇の側面図である。
【図2】本発明に係るジェット推進艇の平面図である。
【図3】OTS制御装置のブロック図である。
【図4】OTS制御の処理を示すフローチャートである。
【図5】スロットルバルブが閉じられ、且つ、ステアリングが切られたときのOTS制御を説明する説明図であり、(a)はスロットルバルブの開度を示す図であり、(b)は転舵信号の状態を示す図であり、(c)は補助吸気バルブの開度を示す図であり、(d)はエンジンの回転数を示す図である。
【図6】スロットルバルブが閉じられ、且つ、ステアリングが切られていないときのOTS制御を説明する説明図であり、(a)はスロットルバルブの開度を示す図であり、(b)は転舵信号の状態を示す図であり、(c)は補助吸気バルブの開度を示す図であり、(d)はエンジンの回転数を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ジェット推進艇
4 エンジン
12 ステアリング機構
15 ステアリングシャフト
19 転舵検出機構
21 吸気管
23 スロットルバルブ
24 補助吸気通路
25 補助吸気バルブ
29 ECU(コントロールユニット)
31 スロットルセンサー
32 回転数センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによりジェット水流を噴射し、前記ジェット水流により推進力を得るとともに、前記ジェット水流の噴射方向を変えて旋回制御を行うジェット推進艇であって、
前記エンジンに空気を供給するための吸気管と、
前記吸気管に設けられ、前記空気の量を調整するスロットルバルブと、
前記吸気管に設けられ、前記スロットルバルブをバイパスする補助吸気通路と、
前記補助吸気通路を開閉する補助吸気バルブと、
前記エンジンの回転数を検出する回転数センサーと、
前記補助吸気バルブの開閉を制御するコントロールユニットとを有して構成され、
前記コントロールユニットが、
前記回転数センサーにより検出された前記回転数が所定の閾値以上のときの前記補助吸気バルブの開度を、前記エンジンをアイドル回転させているときの前記補助吸気バルブの開度より大きくなるように制御することを特徴とするジェット推進艇。
【請求項2】
ハンドル操作に応じて前記ジェット水流の噴射方向を変えるステアリング機構と、
前記ハンドルが直線走行位置から旋回操作されたことを検出する転舵検出機構と、
前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサーとを有し、
前記コントロールユニットが、
前記回転数が前記閾値以上であるときに、前記スロットルセンサーにより前記スロットルバルブの開度が全閉あるいは所定値以下となったことを検出し、且つ、前記転舵検出機構により前記ハンドルが旋回操作されたことを検出すると、
現在の前記補助吸気バルブの開度を維持するように制御することを特徴とする請求項1に記載のジェット推進艇。
【請求項3】
前記コントロールユニットが、
前記転舵検出機構により前記ハンドルが直線走行位置に戻されたことを検出すると、
前記補助吸気バルブの開度を、所定の減少率で減少させて前記エンジンをアイドル回転させる開度になるように制御することを特徴とする請求項2に記載のジェット推進艇。
【請求項4】
前記コントロールユニットが、
前記回転数が前記閾値以上であるときに、前記スロットルバルブの開度が全閉あるいは所定値以下となったことを検出し、且つ、前記ハンドルが旋回操作されたことを検出して現在の前記補助吸気バルブの開度を所定の時間だけ維持した後、
前記補助吸気バルブの開度を所定の減少率で減少させて、前記アイドル回転のときの前記開度になるように制御することを特徴とする請求項2に記載のジェット推進艇。
【請求項5】
ハンドル操作に応じて前記ジェット水流の噴射方向を変えるステアリング機構と、
前記ハンドルが直線走行位置から旋回操作されたことを検出する転舵検出機構と、
前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサーとを有し、
前記コントロールユニットが、
前記スロットルセンサーにより前記スロットルバルブの開度が全閉あるいは所定値以下となったことを検出し、且つ、前記転舵検出機構により前記ハンドルが略直線走行位置にあることを検出すると、
前記補助吸気バルブの開度を、暫時減少させて前記エンジンをアイドル回転させる前記開度になるように制御することを特徴とする請求項1に記載のジェット推進艇。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−85308(P2007−85308A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278296(P2005−278296)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】