説明

ディスプレイ用フィルム基板の製造方法

【課題】寸法安定性に優れたディスプレイ用フィルム基板の製造方法を提供する。
【解決手段】バリア層を設ける前の段階において、プラスチックフィルムに張力を加えることなくガラス転移温度より低い温度であって、前記ディスプレイ用フィルム基板上にカラーフィルタまたは駆動素子等のディスプレイ部材を形成する工程の温度以上の所定の温度で加熱処理して、歪みを解消し、その後の工程での寸法安定性を維持可能とした。そして、プラスチックフィルムの両面にバリア層を設けるようにして、さらに寸法安定性を増すとともに、ガス透過の防止をした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイ用フィルム基板の製造方法に関し、より詳細にはフレキシブルディスプレイに使用されて好ましい寸法安定性に優れたフィルム基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示ディスプレイにはガラス基板が用いられていた。近年では、表示ディスプレイの薄型軽量化のために、ガラス基板にかえてプラスチックフィルムの基板が用いられ始めている。
【0003】
このプラスチックフィルムからなるディスプレイ用フィルム基板の材料としては、ポリカーボネートやポリエーテルスルホン等が上げられる。ところが、これら材料からなるプラスチックフィルムは単独ではガス透過性がある。プラスチックフィルムを透過して空気や水蒸気が表示ディスプレイの内部に侵入すると画素欠陥が生じる。この侵入を防止するためには、プラスチックフィルムの表面にバリア層が必要となる。
【0004】
また、カラー表示に必要となるカラーフィルタや駆動素子を形成する際には、いずれも数十ミクロンの精密パターンを精度良く形成することが必要である。そのため、基板に対する寸法安定性の要求が高く、この点からもバリア層が必要となる。
【0005】
このバリア層としては、ポリビニルアルコールやポリエチレンビニルアルコールなどのポリマーの溶液を塗布して成膜したものや、酸化ケイ素やアルミナの無機薄膜を蒸着,スパッタリング,CVDなどで成膜したものが一般的である。
【0006】
また、バリア性を向上させるために、このバリア層の上にさらにオーバーコート層を設けることや、密着性およびバリア性を向上させるためにバリア層とプラスチックフィルム間にアンダーコート層を設けることが知られている。オーバーコート層やアンダーコート層(アンカー層ともいう)を設けることは、信頼性が重要な表示ディスプレイ用基板では多数提案されている。(例えば、特許文献1乃至9参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−254690号公報
【特許文献2】特開平10−25357号公報
【特許文献3】特開2000−338901号公報
【特許文献4】特開2003−89165号公報
【特許文献5】特開2003−260749号公報
【特許文献6】特開2005−288851号公報
【特許文献7】特開2005−324406号公報
【特許文献8】特開2006−95783号公報
【特許文献9】特開2006−123288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プラスチックフィルムの表面にバリア層やオーバーコート層、アンダーコート層等を設けても、プラスチックフィルムの内部に有する不規則な歪みにより、熱履歴が加わるとこの歪みが顕在化して寸法安定性が損なわれるという不都合があった。
【0009】
本発明の目的は、フレキシブルディスプレイに使用される寸法安定性に優れたディスプレイ用フィルム基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0011】
本発明は、ディスプレイ用フィルム基板の製造方法に関する。
そして、透明性を有する樹脂から構成されるプラスチックフィルムを、ガラス転移温度より低い温度であって、ディスプレイ用フィルム基板上にカラーフィルタまたは駆動素子等のディスプレイ部材を形成する工程の温度以上の所定の温度で所定時間加熱処理する工程と、加熱処理工程により加熱処理されたプラスチックフィルムの両面にバリア層を形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、プラスチックフィルムが連続したロール状態で加熱処理工程に供給され、加熱処理工程においてこのロール状態のままでプラスチックフィルムが加熱処理されることを特徴とする。
【0013】
また、加熱処理においては、プラスチックフィルムに張力がかからない状態で行われることを特徴とする。
【0014】
また、プラスチックフィルムのガラス転移温度が150℃以上、全光線透過率が85%以上であり、両面にバリア層を成膜したものの全光線透過率が80%以上、水蒸気透過率が0.3g/m2/day以下であることを特徴とする。
【0015】
また、プラスチックフィルムとバリア層間の少なくとも一方にアンダーコート層を形成する工程を備えることを特徴とする。
【0016】
また、バリア層上の少なくとも一方にオーバーコート層を形成する工程を備えることを特徴とする。
【0017】
また、アンダーコート層を形成する工程、およびオーバーコート層を形成する工程がそれぞれマイクログラビア、ダイなどの塗布方式により連続的に行われることを特徴とする。
【0018】
また、バリア層が真空成膜により連続形成されることを特徴とする。
【0019】
また、バリア層が、Si,Ta,Alから選ばれる1種以上を含む酸化物または窒化物または酸化窒素化物を主成分とするものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上述の特徴を有することから、下記に示すことが可能となる。
【0021】
すなわち、ディスプレイ用フィルム基板の製造方法において、透明性を有する樹脂から構成されるプラスチックフィルムを、ガラス転移温度より低い温度であって、ディスプレイ用フィルム基板上にカラーフィルタまたは駆動素子等のディスプレイ部材を形成する工程の温度以上の所定の温度で所定時間加熱処理する工程と、加熱処理工程により加熱処理されたプラスチックフィルムの両面にバリア層を形成する工程とを備えているので、後の工程で熱履歴が加えられてもディスプレイ用フィルム基板の寸法が保たれる。
【0022】
また、プラスチックフィルムが連続したロール状態で加熱処理工程に供給され、加熱処理工程においてこのロール状態のままでプラスチックフィルムが加熱処理されので、生産性が向上する。
【0023】
また、加熱処理においては、プラスチックフィルムに張力がかからない状態で行われる
ので、プラスチックフィルム内部の歪みを除去できる。
【0024】
また、プラスチックフィルムのガラス転移温度が150℃以上、全光線透過率が85%以上であり、両面にバリア層を成膜したものの全光線透過率が80%以上、水蒸気透過率が0.3g/m2/day以下であるので、透明性と寸法安定性に優れたディスプレイ用フィルム基板が得られる。
【0025】
また、プラスチックフィルムとバリア層間の少なくとも一方にアンダーコート層を形成する工程を備えるので、より強力に水蒸気等の透過を防止したディスプレイ用フィルム基板が得られる。
【0026】
また、バリア層上の少なくとも一方にオーバーコート層を形成する工程を備えるので、より強力に水蒸気等の透過を防止して、耐候性が向上したディスプレイ用フィルム基板が得られる。
【0027】
また、アンダーコート層を形成する工程、およびオーバーコート層を形成する工程がそれぞれマイクログラビア、ダイなどの塗布方式により連続的に行われるので、生産性が向上し、併せてコストダウンできる。
【0028】
また、バリア層が真空成膜により連続形成されるので、基板フィルム形成の生産性が向上し、併せてコストダウンできる。
【0029】
また、バリア層が、Si,Ta,Alから選ばれる1種以上を含む酸化物または窒化物または酸化窒素化物を主成分とするものであるので、優れた水蒸気透過率を発現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図2】本発明の実施例2に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図3】本発明の実施例3に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図4】本発明の実施例4に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図5】本発明の実施例5に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図6】本発明の実施例6に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図7】本発明の実施例7に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図8】本発明の実施例8に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【図9】本発明の実施例9に係るディスプレイ用フィルム基板の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態であるディスプレイ用フィルム基板の製造方法について、説明する。
【0032】
本実施形態においては、表示ディスプレイの薄型軽量化および可撓性付与を可能とするため基板としてプラスチックフィルムを採用している。フィルム、およびプラスチックフィルムは、比較的厚みの薄いものを指すのが普通であるが、ここでは、厚みの厚いもの、および薄いものの両方の意味を含めて、フィルム、およびプラスチックフィルムと言うこととする。
【0033】
プラスチックフィルムは、合成ポリマーを延伸処理、キャスト処理等によって連続薄膜フィルム化したものである。これらの工程により、プラスチックフィルムは流れ方向と垂直方向とで異なった伸縮がなされ、フィルムの内部に不規則な歪みを有することになる。例えば、カラーフィルタのパターニング工程等で熱履歴が加わると、この歪みが顕在化して寸法安定性が損なわれる。
【0034】
プラスチックフィルム内部に不規則な歪を有していると、バリア層を設けたとしても、寸法が不安定となる。本実施形態では、バリア層を設ける前の素材の段階においてプラスチックフィルムをガラス転移温度より低い温度であって、ディスプレイ用フィルム基板上にカラーフィルタまたは駆動素子等のディスプレイ部材を形成する工程の温度以上の所定の温度で所定時間加熱処理を加えることにより、歪みを解消し、その後の工程で熱履歴が加えられても寸法が保たれる。加熱処理をしたプラスチックフィルムに、プラスチックフィルムの両面にバリア層を設けるようにして、さらに寸法安定性を増すとともに、ガス透過の防止をした。
【0035】
このように処理することにより、ディスプレイ用フィルム基板として、100℃加熱、1時間での寸法変動が±50ppm以内、および温度20〜25℃、湿度40〜50%の環境下における寸法変動が±20ppm以内となった。
【0036】
また、加熱処理に当たっては、ロール状態のプラスチックフィルムを、張力がかからない状態で、連続的にロール状態のまま加熱処理を行った。
【0037】
一般に、ロール状態のものを連続的に処理するにはロール・ツー・ロールで行う。すなわち、送り出しロールでプラスチックフィルムを送り出し、途中をローラ等でガイドし、プラスチックフィルムを搬送しながら処理し、巻き取りロールで巻き取ることになる。そうすると、処理がされる途中の状態では、プラスチックフィルムを搬送するためや、ローラ間のプラスチックフィルムの自重によりプラスチックフィルムに所定の張力がかかることになる。
【0038】
本実施形態では、まず、連続加熱装置内部に略水平にキャリアフィルムを配設した。次に、このキャリアフィルムの上面にロール・ツー・ロールの途中のプラスチックフィルムを載置するように静置して、キャリアフィルムを移動させた。キャリアフィルムが移動すると、キャリアフィルムの上面に対して下面が接しているプラスチックフィルムも移動する。
【0039】
プラスチックフィルムは、上面が平面であるキャリアフィルムにより張力が加わることなく平面に保持された状態で搬送され、加熱処理により内部の歪みが解消される。
ここで、必要に応じ、プラスチックフィルムの上面にローラを当てるように構成してもよい。より確実に平面に保持するためである。平面に保持しながら加熱処理を行うのは、内部の歪みが解消するときにプラスチックフィルムが変形して、丸まったりしわが寄ったりするのを防ぐためである。
【0040】
この内部の歪みの解消は、プラスチックフィルムの素材の段階で行うだけでなく、バリア層等を設けた後の段階で行っても有効である。また、プラスチックフィルムを搬送する搬送体はキャリアフィルムに限定されず、上面が平面であるベルトコンベアのような構成でもよい。
【0041】
また、バリア層を成膜したプラスチックフィルム上にカラーフィルタ、駆動素子、等のディスプレイ部材を100℃以下の低温の工程で形成した。部材形成を低温でおこなうことにより、ディスプレイ用フィルム基板の寸法変動を抑制した。
【0042】
また、ディスプレイ部材を形成する工程内の環境を温度20〜25℃、湿度40〜50%に維持した。工程内の保存環境によるディスプレイ用フィルム基板の寸法変動を抑制した。
【0043】
また、プラスチックフィルムのガラス転移温度が150℃以上、全光線透過率が85%以上であり、両面にバリア層を成膜したときの全光線透過率が80%以上、水蒸気透過率が0.3g/m2/day以下となった。
【0044】
以上のように構成することにより、寸法安定性に優れたディスプレイ用フィルム基板を製造することができた。
【0045】
なお、本実施形態に用いるプラスチックフィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。このようなプラスチックフィルムの材質の例を挙げると、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,ポリシクロオレフィン,アクリル系架橋性樹脂,エポキシ系架橋性樹脂架橋性樹脂,不飽和ポリエステル系架橋性樹脂などの樹脂であるがこれらに限定されるものではない。また、樹脂と無機物を複合したプラスチックフィルムでもよく、この場合、線膨張係数を低減することができる。無機物の例を挙げると、シリカ,アルミナ,ガラスなどであるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
また、本実施形態におけるバリア層として用いることができる無機薄膜の材質の例を挙げると、Si,Al,In,Sn,Zn,Ti,Cu,Ce,Mg,La,Cr,Ca,Zr,Taから選ばれる1種以上を含む酸化物、窒化物、酸化窒化物またはハロゲン化物を主成分とするものなどが考えられるが、特にこれに限定されるものではない。無機バリア層は1層であっても2層であってもよく、連続成膜されていてもよい。Si,Ta,Alから選ばれる1種以上を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物を主成分とするものは、水蒸気の透過防止に特に効果がある。
【0047】
また、バリア層は、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの真空等で成膜するPVD(物理蒸着)法、プラズマ等によるCVD(化学蒸着)法、またはゾルゲル法などで作製することができる。中でもスパッタリング法で作製すると、密着力が高く、緻密でガスバリア性の高い膜が得られ易く好ましい。
【0048】
また、無機ガスバリア層の成膜工程は、枚葉あるいはロール・ツー・ロールいずれも適用できる。プラスチックフィルム上で成膜を行うため、ロール・ツー・ロールで行うと生産性が向上するため好ましい。
【0049】
また、本実施形態の両面にバリア層を設けたプラスチックフィルムは、バリア特性として水蒸気透過率0.3g/m2/day以下であることが好ましい。これより大きな値であると、湿熱条件で部材の寸法変動の原因となる。
【0050】
また、ケイ素の酸化物、窒化物または酸化窒素化物のスパッタリング成膜は、DC(直流)スパッタリング法、RF(高周波)スパッタリング法、またはこれにマグネトロンスパッタリングを組み合わせた方法、さらに中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタリング法などの従来技術を、単独でまたは組み合わせて用いることができる。スパッタリング雰囲気中には、He、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガス、酸素、窒素のうち少なくとも1種のプロセスガスを用いることができる。
【0051】
また、DCスパッタリングやDMSスパッタリングでケイ素の酸化物、窒化物または酸化窒素化物のスパッタリングを行なう際には、そのターゲットにSiを用いることができる。プロセスガス中に酸素や窒素を導入することで、ケイ素の酸化物、窒化物または酸化窒素化物の薄膜を作ることができる。
【0052】
また、RF(高周波)スパッタリング法でこれらを成膜する場合は、SiO2やSi34などのセラミックターゲットを用いることもできる。生産性の観点から、Siターゲットを用い、DCスパッタリングやDMSスパッタリング等で、酸素や窒素を導入しながら成膜することが好ましい。
【0053】
また、本実施形態においては、プラスチックフィルムとバリア層との一方または両方の間にアンダーコート層を有する構成とすることもできる。アンダーコート層に使用される材料としては、プラスチックフィルムおよびバリア層との密着性に優れること、透明であること、変色がないこと、などの性能が要求され、好ましいものの例を挙げると、アクリル系に代表される紫外線硬化型樹脂やエポキシ系の熱硬化型樹脂などであるがこれらに限定されるものではない。プラスチックフィルムとバリア層の種類にもよるが、アンダーコート層を用いることによりバリア層の密着性をより向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態においては、バリア層上にオーバーコート層を有する構成とすることもできる。オーバーコート層に使用される材料としては、バリア層との密着性に優れること、透明であること、変色がないこと、などの性能が要求され、好ましいものの例を挙げると、アクリル系に代表される紫外線硬化型樹脂やエポキシ系及び架橋ポリビニルアルコール樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられ、バリア性向上及び保護の目的から、孔の少ない平滑な膜が使用される。オーバーコートを用いることにより、バリア性の向上と共にフレキシブルディスプレイ構成時のハードコート機能も付与することができる。
【0055】
また、アンダーコート層やオーバーコート層に用いられる溶媒としては、その組成物の溶解性、分散性、塗布性などの点から、適宜選択して使用されるものであり、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジクライム、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0056】
そして、アンダーコート層やオーバーコート層は、マイクログラビアコート、ダイコート、コンマコート等、任意の塗布方法で形成できる。また、バリア層と同様にロール・ツー・ロールで行うと生産性が向上するため好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を更に詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で120℃、3時間相当の加熱処理を施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして、膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。(図1参照)
【0059】
<実施例2>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。(図2参照)
【0060】
<実施例3>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の両面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。(図3参照)
【0061】
<実施例4>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
両面バリア成膜したプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉,紫外線照射装置を有する塗工機を用いて、多官能アクリレート樹脂,光開始剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥した後紫外線を照射して硬化し、オーバーコート層4を成膜した。(図4参照)
【0062】
<実施例5>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
両面バリア成膜したプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉,紫外線照射装置を有する塗工機を用いて、多官能アクリレート樹脂,光開始剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥した後紫外線を照射して硬化し、オーバーコート層4を成膜した。(図5参照)
【0063】
<実施例6>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の両面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
両面バリア成膜したプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉,紫外線照射装置を有する塗工機を用いて、多官能アクリレート樹脂,光開始剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥した後紫外線を照射して硬化し、オーバーコート層4を成膜した。(図6参照)
【0064】
<実施例7>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
両面バリア成膜したプラスチックフィルム1の両面に、コーターヘッド,乾燥炉,紫外線照射装置を有する塗工機を用いて、多官能アクリレート樹脂,光開始剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥した後紫外線を照射して硬化し、オーバーコート層4を成膜した。(図7参照)
【0065】
<実施例8>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
両面バリア成膜したプラスチックフィルム1の両面に、コーターヘッド,乾燥炉,紫外線照射装置を有する塗工機を用いて、多官能アクリレート樹脂,光開始剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥した後紫外線を照射して硬化し、オーバーコート層4を成膜した。(図8参照)
【0066】
<実施例9>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の両面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
両面バリア成膜したプラスチックフィルム1の両面に、コーターヘッド,乾燥炉,紫外線照射装置を有する塗工機を用いて、多官能アクリレート樹脂,光開始剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥した後紫外線を照射して硬化し、オーバーコート層4を成膜した。(図9参照)
【0067】
<比較例1>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、加熱処理は行わず、同フィルムの両面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして、膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
【0068】
<比較例2>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で120℃、3時間相当の加熱処理を施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の片面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして、膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
【0069】
<比較例3>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の片面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
【0070】
<比較例4>
プラスチックフィルム1としては、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、Q65FA)を使用し、このフィルムロールを連続加熱装置のキャリアフィルム上に静置し、順次繰り出しながら張力が掛からない状態で連続加熱を実施した。
加熱処理を行ったプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉を有する塗工機を用いて、エポキシ樹脂,硬化剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥すると共に熱硬化し、アンダーコート層3を成膜した。
アンダーコート層3を設けたプラスチックフィルム1の片面に、DCスパッタ成膜を行うスパッタロールコート装置により、酸素を反応ガスに用いたリアクティブスパッタでSiをターゲットとして用いて膜厚50nmのSiOx(xは1.5〜1.8)を成膜しバリア層2とした。
両面バリア成膜したプラスチックフィルム1の片面に、コーターヘッド,乾燥炉,紫外線照射装置を有する塗工機を用いて、多官能アクリレート樹脂,光開始剤,レベリング剤、溶剤からなる液を塗布し、溶剤を乾燥した後紫外線を照射して硬化し、オーバーコート層4を成膜した。
【0071】
以上のようにして得られたディスプレイ用フィルム基板を下記基準に基づいて評価した。
【0072】
〜バリア性〜
MOCON法に準じた測定装置で水蒸気透過率を測定し、下記基準で評価した。
◎:水蒸気透過率が0.01g/m2/day以内
○:水蒸気透過率が0.01g/m2/dayを超えて0.3g/m2/day以内
×:水蒸気透過率が0.3g/m2/dayを超えるもの
【0073】
〜寸法安定性〜
加熱環境下(100℃,1時間)および一定環境下(23℃、45%RH、7日間)での寸法変化を測定し、下記基準で評価した。
◎:寸法変動が±20ppm以内
○:寸法変動が±20を超えて50ppm以内
△:寸法変動が±50を超えて100ppm以内
×:寸法変動が±100ppmを超えるもの
【0074】
評価基準に基づく、実施例1〜9、比較例1〜4の評価結果一覧を下表1に示す。
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は微細パターンを精度良く形成する用途、例えば液晶ディスプレイや電子ペーパー等に使用されるカラーフィルタ、駆動素子用の基板として利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 プラスチックフィルム
2 バリア層
3 アンダーコート層
4 オーバーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用フィルム基板の生産方法において、
透明性を有する樹脂から構成されるプラスチックフィルムを、ガラス転移温度より低い温度であって、前記ディスプレイ用フィルム基板上にカラーフィルタまたは駆動素子等のディスプレイ部材を形成する工程の温度以上の所定の温度で所定時間加熱処理する工程と、
前記加熱処理工程により加熱処理された前記プラスチックフィルムの両面にバリア層を形成する工程と
を備えることを特徴とするディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項2】
前記プラスチックフィルムが連続したロール状態で前記加熱処理工程に供給され、前記加熱処理工程においてこのロール状態のままで前記プラスチックフィルムが加熱処理される
ことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項3】
前記加熱処理工程は、前記プラスチックフィルムに張力がかからない状態で行われる
ことを特徴とする請求項2記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項4】
前記プラスチックフィルムのガラス転移温度が150℃以上、全光線透過率が85%以上であり、両面にバリア層を成膜したものの全光線透過率が80%以上、水蒸気透過率が0.3g/m2/day以下である
ことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項5】
前記プラスチックフィルムと前記バリア層間の少なくとも一方にアンダーコート層を形成する工程を備える
ことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項6】
前記バリア層上の少なくとも一方にオーバーコート層を形成する工程を備える
ことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項7】
前記アンダーコート層を形成する工程、および前記オーバーコート層を形成する工程がそれぞれマイクログラビア、ダイなどの塗布方式により連続的に行われる
ことを特徴とする請求項5または6記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項8】
前記バリア層が真空成膜により連続形成される
ことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。
【請求項9】
前記バリア層が、Si,Ta,Alから選ばれる1種以上を含む酸化物または窒化物または酸化窒素化物を主成分とするものである
ことを特徴とする請求項8記載のディスプレイ用フィルム基板の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207265(P2012−207265A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73430(P2011−73430)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】